説明

現像ローラー、画像形成装置

【課題】リークを生じにくい現像ローラーを提供する。
【解決手段】本発明の現像ローラー3は、表面に周期的に溝部371が形成され溝部371の内側にトナーを担持可能なシャフト30aと、溝部371に追従してシャフト30aを被覆しており、シャフト30aよりも導電率が低い熱収縮チューブからなる被覆材30bと、を含んでいる。被覆材30bが熱収縮チューブからなっているので、均一な厚みでシャフト30aを被覆することができる。被覆材30bは、シャフト30aよりも導電率が低いので、リークを生じることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラー、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンター等の電子写真方式の画像形成装置が知られている。電子写真方式の画像形成装置は、感光ドラムや感光ドラムの表面を帯電させる帯電装置、帯電した感光ドラムに潜像を形成する書込装置、潜像に対応させて感光ドラムにトナーを付着させる現像装置、感光ドラムに付着したトナーを転写する転写装置等を含んでいる。
【0003】
現像装置は、感光ドラム表面に近接して回転する現像ローラー、トナーを帯電させるとともに現像ローラー表面に一様にトナーを付着させる規制ブレード等を含んでいる。現像ローラーが回転すると、現像ローラー表面の一部が順に感光ドラム表面に近接する。感光ドラム表面に近接した現像ローラー表面のトナーは、現像ローラーと感光ドラムとの間の電界により飛翔して感光ドラムに付着する。
【0004】
現像ローラーの表面には、トナーを良好に担持可能にするために、凹凸が設けられている。凹凸を設ける手法の1つとして、現像ローラーの表面をブラスト処理する手法が知られている。ブラスト処理により形成された凹凸は、規制ブレードとの接触により磨耗しやすいこと、帯電性が不均一になりやすいこと等の不都合がある。このような不都合を解決する技術として、特許文献1に記載されている技術が挙げられる。
【0005】
特許文献1の画像形成装置において、現像ローラー表面には転造加工により複数の溝部が周期的に形成されており、溝部の内側にトナーを担持可能になっている。ブラスト処理による凹凸と比較して、現像ローラーの溝部間の表面に尖った構造がなくなり、現像ローラーの耐摩耗性が格段に改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−116543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
転造加工により溝部が形成された現像ローラーを用いれば、現像装置を長寿命にすることができるが、一方で現像ローラーと感光ドラムとの間でリークが生じやすくなってしまう。これは、溝部に起因して周期的にエッジが存在することや溝部間の凸部上の面積が大きいこと等に起因すると考えられる。リーク部分では現像ローラーと感光ドラムとの間の電界が弱くなり、トナーを感光ドラムに良好に付着させることができなくなってしまう。
本発明は、このような事情に鑑み成されたものであって、リークを生じにくい現像ローラーを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の現像ローラーは、表面に周期的に溝部が形成され該溝部の内側にトナーを担持可能なシャフトと、前記溝部に追従して前記シャフトを被覆しており前記シャフトよりも導電率が低い熱収縮チューブからなる被覆材と、を含んでいること特徴とする。
【0009】
このようにすれば、シャフトが、シャフトよりも導電率が低い材質からなる被覆材により被覆されているので、シャフトと感光ドラムとの間のリークが格段に低減される。また、被覆材が熱収縮チューブからなっているので、シャフトを均一な厚みで被覆することができる。したがって、現像ローラーと感光ドラムとの間に所望の電界を作用させることができ、感光ドラムに良好にトナーを付着させることができる。よって、高品質な画像を形成することが可能になる。
【0010】
また、シャフトが規制ブレード等と直接接触しないので、現像ローラーの使用に伴ってシャフト自体が磨耗しなくなる。したがって、被覆材が磨耗した場合には被覆材を交換することにより現像ローラーを再生することができ、シャフト自体が磨耗する場合に比べて現像ローラーを低コストで容易に再生することができる。
【0011】
また、前記溝部が転造加工により形成されていることが好ましい。
このようにすれば、ブラスト処理と異なり、シャフトの溝部の間に尖った形状の構造が形成されなくなる。したがって、シャフト表面に追従してシャフトを被覆している被覆材の表面に尖った形状がなくなり、現像ローラーの耐摩耗性を格段に向上させることができる。
【0012】
また、前記シャフトの軸方向において前記トナーが担持される領域の外側に凹部が形成されており、前記被覆材が前記シャフトの軸方向において前記凹部の内側まで連続して設けられていることが好ましい。この場合には、前記被覆材を前記凹部内に押圧する押圧部が設けられていることが好ましい。
【0013】
シャフトの端部に凹部が形成されていれば、凹部内に被覆材が引っかかることにより、被覆材がシャフトの軸方向においてずれにくくなる。したがって、被覆材がシャフトの軸方向にずれることによる被覆材のたるみを低減することができ、被覆材のたるみにより被覆材がシャフトから剥離することが低減される。また、凹部の側壁と被覆材との摩擦力により、被覆材がシャフトから剥離しにくくなる。このように、シャフトから被覆材が剥離することが防止されるので、剥離部分において現像ローラーと感光ドラムとの間の電界が歪むことが防止され、感光ドラムに良好にトナーを付着させることが可能になる。
【0014】
凹部内に押圧部が設けられていれば、被覆材が押圧部により凹部内に押圧されるので、現像ローラーの使用に伴って被覆材がシャフトから剥離することが防止される。また、凹部内に押圧部が設けられていれば、押圧部が凹部に引っかかることによりシャフトの軸方向においてずれにくくなる。
【0015】
また、前記溝部の寸法が、前記トナーの粒径と前記被覆材の厚みとに基づいて選択されていることが好ましい。
このようにすれば、現像ローラー表面での溝部の内寸をシャフトの溝部の寸法により規定することができ、現像ローラー表面での溝部の内寸をトナーの粒径に高精度に対応させることができる。したがって、現像ローラー表面にトナーを良好に担持させることができ、高品質な画像を形成することが可能になる。
【0016】
本発明の画像形成装置は、前記の本発明の現像ローラーを含んで構成された現像装置を備えていることを特徴とする。
本発明の現像ローラーを含んで構成された現像装置は、良好に潜像を現像することが可能であり、しかも長寿命のものになっているので、本発明の画像形成装置は、高品質な画像を形成可能であり、しかも長寿命のものになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の現像ローラーを含んだプリンターの構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の現像ローラーを含んだ現像装置の構成を示す模式的断面図である。
【図3】第1実施形態の現像ローラーの概略構成を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態の現像ローラーの(a)は断面図、(b)は拡大図である。
【図5】第2実施形態の現像ローラーの(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図6】(a)は、第3実施形態の断面図、(b)は第4実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。なお、説明に用いる図面において、特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造の寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせている場合がある。また、実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0019】
図1は、本発明に係るプリンター1(画像形成装置)の概略構成を模式的に示す断面図である。図1に示すようにプリンター1は、図示矢印方向(図1では時計回り)に回転する感光体110を有している。プリンター1において、感光体110の周囲には、その回転方向に沿って帯電ユニット120、露光ユニット130、現像ユニット140、一次転写ユニット150および中間転写体160、クリーニングユニット170が順に配設されている。プリンター1は、図1の下部に、紙などの記録媒体P1を給紙する給紙トレイ180を有している。記録媒体P1は、給紙ローラー181、レジローラー182によって搬送される。記録媒体P1の搬送方向下流に、二次転写ユニット183、定着ユニット184が順次配設されている。
【0020】
感光体110は、円筒状の導電性基材と、その外周面に形成された感光層とを有し、その中心軸周りに回転可能になっている。帯電ユニット120は、コロナ帯電などにより感光体110の表面を一様に帯電させる装置である。露光ユニット130は、例えば図示略のパーソナルコンピュータなどの信号源から供給される画像情報に基づいて、感光体120にレーザー照射することにより静電気的な潜像を書き込む(形成する)ものである。
【0021】
現像ユニット140は、感光体110上にて潜像をトナー像として可視化(現像)する装置である。現像ユニット140の中心軸140aの周囲には、保持部141〜144が設けられている。保持部141〜144には、それぞれ現像装置2a〜2dが着脱可能に保持されている。現像装置2a〜2dは、それぞれブラック、マゼンダ、シアン、イエローの各色に対応している。現像装置2a〜2dの詳細な構成については後述する。
【0022】
現像ユニット140は、概略すると以下のように動作する。現像ユニット140は、中心軸140a周りに保持部141〜144を回転させる。保持部141〜144の回転に伴って、現像装置2a〜2dは、互いの相対位置を維持した状態で中心軸140a周りに回転する。このようにして現像ユニット140は、潜像に対応させて現像装置2a〜2dを選択的に感光体110に対向させる。感光体110に対向した現像装置2a〜2dは、感光体110の表面に各色のトナーを潜像に対応したパターンで付着させてトナー像を形成する。
【0023】
一次転写ユニット150は、感光体110に形成されたトナー像を中間転写体160に転写する装置である。
中間転写体160は、エンドレスのベルトであり、図1に示す矢印方向(図1では反時計回り)に、感光体110とほぼ同じ周速度にて回転駆動される。中間転写体160上には、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのうちの1色以上のトナー像が転写される。例えばフルカラー画像の形成時には、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4色のトナー像が順次重ねて転写されて、フルカラーのトナー像が形成される。
【0024】
二次転写ユニット183は、中間転写体160上に形成された単色やフルカラーなどのトナー像を、紙、フィルム、布等の記録媒体P1に転写する装置である。
定着ユニット184は、トナー像の転写を受けた記録媒体P1を加熱および加圧することにより、トナー像を記録媒体P1に融着させて永久像として定着させる装置である。
【0025】
クリーニングユニット170は、感光体110上のトナー像が中間転写体160上に転写された後に、感光体110上に残存したトナーを除去する装置である。クリーニングユニット170は、一次転写ユニット150と帯電ユニット120との間で感光体110の表面に当接するゴム製のクリーニングブレード171を有している。クリーニングブレード171が、感光体110の表面に当接して残存したトナーを掻き落とすようになっている。
【0026】
次に、現像ユニット140の現像装置2a〜2dについて詳細に説明する。現像装置2a〜2dはいずれもほぼ同一の構成である。ここでは、現像装置2aの構成を説明し、現像装置2b〜2dの構成についてはその詳細な説明を省略する。
【0027】
図2は、本発明に係る現像装置の概略構成を示す模式的断面図である。図2に示すように、現像装置2aは、ハウジング21を有している。ハウジング21は、その内部空間である収容部22にトナーTを収容可能になっている。収容部22は、外部に通じる開口を有している。収容部22の内部における開口近傍には、トナー供給ローラー23が回転可能に支持されている。収容部22の外部における開口近傍には、現像ローラー3が回転可能に支持されている。
【0028】
現像ローラー3の回転方向において収容部22の内部を起点とすると、回転方向の下流側における収容部22の開口近傍に、現像ローラー3の一部に当接させて規制ブレード24が配置されている。回転方向の上流側における収容部22の開口近傍に、現像ローラー3の一部に当接させてシール部材25が配置されている。
【0029】
現像ローラー3は、本発明を適用したものであり、その詳細な構造については後述する。現像ローラー3の表面は、感光体110の表面と非接触に対向している。現像ローラー3は、その表面にトナーTを担持可能になっている。現像ローラー3と感光体110との間には、電界を印加することが可能になっている。トナーTは、例えばポリエステル等の樹脂からなり帯電性を有する粒状体に、顔料や電荷制御材等の微粒子を付着させたものである。トナーTの粒径は、例えば7±3μm程度である。
【0030】
トナー供給ローラー23は、ポリウレタンフォーム等からなり、弾性変形(圧縮)された状態で現像ローラー3に圧接されている。現像ローラー3の回転に伴ってトナー供給ローラー23が回転し、現像ローラー3にトナーが供給される。
【0031】
規制ブレード24は、現像ローラー3表面のトナーTの厚みを規制するとともに、このトナーTに電荷を付与するものである。規制ブレード24は、現像ローラー3の軸方向に沿って現像ローラー3に当接するゴム部241と、ゴム部241を支持するゴム支持部242とを有している。
【0032】
ゴム部241は、シリコンゴム、ウレタンゴム等を主材料として構成される。収容部22の内部側におけるゴム部241の端部は、端縁が現像ローラー3の表面から離れている。ゴム部241は、この端縁よりも収容部22の外部側の部分が、現像ローラー3と当接している。このように、ゴム部241の端縁が現像ローラー3の回転に巻き込まれないようになっている。
【0033】
ゴム支持部242は、リン青銅、ステンレス等の弾性薄板により構成される。ゴム支持部242は、ゴム部241を現像ローラー3側に付勢して設けられている。ゴム支持部242は、その一端がブレード支持板金27に固定されている。ブレード支持板金27は、ハウジング21に取り付けられている。規制ブレード24の現像ローラー3と反対側に、ブレード裏部材26が設けられている。ブレード裏部材26により、ゴム支持部242とハウジング21との間にトナーTが入り込まないようになっている。ゴム部241は、ゴム支持部242やブレード裏部材26により、現像ローラー3に押圧されている。
【0034】
収容部22の開口は、おおむね現像ローラー3により塞がれている。収容部22は、現像ローラー3の軸方向に沿った部分において、回転方向の上流側がシール部材25により封止されており、回転方向の下流側が規制ブレード24により封止されている。収容部22の開口は、現像ローラー3の周方向に沿った部分において図示略のシール部材により封止されている。このシール部材は、現像ローラー3の両端部にそれぞれ配置されて、現像ローラー3の端部に当接させて設けられている。このように、収容部22は、その内部から外部にトナーが漏れ出さないように封止されている。
【0035】
以上のような構成の現像装置2aは、概略すると以下のように動作する。
現像ローラー3は、感光体110に対応して回転する。すると、現像ローラー3に連動してトナー供給ローラー23が回転し、現像ローラー3の表面にトナーTが供給される。現像ローラー3表面のトナーTは、余分な厚み部分が規制ブレード24によりそぎ落とされるとともに、規制ブレード24との摩擦により帯電する。
【0036】
帯電したトナーTは、現像ローラー3と感光体110との間の電界により、現像ローラー3の表面上から感光体110の表面上に飛翔する。現像ローラー3と感光体110との間の電界の強さは、潜像のパターンと対応した分布になるので、トナーTが潜像に対応したパターンで飛翔して感光体110の表面に付着する。これにより、感光体110の表面に、潜像に対応したトナー像が形成(現像)される。
【0037】
[第1実施形態]
次に、図3、及び図4(a)、(b)を参照しつつ現像ローラー3の第1実施形態について説明する。図3は現像ローラー3の概略構成を示す斜視図である。図4(a)は、図3のC−C’線を含んだ面における現像ローラー3の断面図であり、図4(b)は、中央領域34における現像ローラー3表面の拡大図である。図4(b)では、被覆材の一部を破断して表層を模式的に示している。
【0038】
図3に示すように、現像ローラー3は、C−C’線を中心軸とする略円柱状のものである。現像ローラー3は、主部31と、主部31の軸方向両端にそれぞれ設けられた副部32、33とを含んでいる。主部31、副部32、33はいずれも略円柱状のものであり、主部31の径は副部32、33の径よりも大きくなっている。主部31は、現像ローラー3の使用時にトナーを担持する部分である。副部32、33は、現像ローラー3の製造時や使用時に主部31を支持する部分である。ここでは、副部32、33が主部31と一体に形成されている。
【0039】
主部31において、軸方向の中央領域34はトナーを担持させる領域になっており、軸方向両端の周縁領域35、36はそれぞれシール部材28が当接する領域になっている。中央領域34には、トナーを担持可能な複数のトナー担持溝37が設けられている。トナー担持溝37は、主部31の軸方向において一方の端から他方の端に向かって螺旋状に設けられている。トナー担持溝37は、主部31の一方の端を起点として互いに反対方向に捩れた2つの溝群を含んでいる。2つの溝群の各々は、軸方向において略等間隔で並ぶ複数のトナー担持溝37により構成されている。2つの溝群の一方を構成する2つのトナー担持溝37と、他方を構成する2つのトナー担持溝37とに囲まれる面領域38は、規制ブレード24に直接的に、あるいはトナーを介して間接的に摩擦される部分である。
【0040】
図4(a)に示すように、現像ローラー3は、シャフト30aと被覆材30bとを含んでいる。シャフト30aは、アルミ合金や鉄合金等からなる円柱状部材を母材にして形成されている。シャフト30aは、母材表面に複数の溝部371が転造加工により形成されたものである。転造加工によれば、溝部371の形状や位置を高精度にすることができる。軸方向におけるシャフト30aの両端部は、溝部371の非形成領域になっている。シール部材28は、図2に示した現像装置2aにおいて、現像ローラー3の軸方向の両端における収容部22の内部と外部と隙間を塞ぐ部材である。周縁領域35、36は、溝部371が形成されていないので凹凸がほとんどない。したがって、収容部22の内部をシール部材28により良好に封止することができる。
【0041】
被覆材30bは、被覆材30bは、溝部371の底面372と、溝部371の側面373と、2つの溝部371間の頂面381とに、追従させてかつ当接させて設けられている。ここでは、被覆材30bが主部31の両端の各々を覆って連続して設けられている。被覆材30bは、シャフト30aよりも導電率が低い導電材料あるいは絶縁材料からなる略円筒状の熱収縮チューブにより形成されている。熱収縮チューブの材質としては、例えば導電性ゴムや導電性樹脂等が挙げられる。熱収縮チューブの具体例としては、導電性スーパーテレチューブ(帝人化成製) 等が挙げられる。
【0042】
絶縁材料からなる熱収縮チューブを採用する場合には、トナー担持溝37内にトナーを担持可能になるように、熱収縮チューブの材質や肉厚を選択するとよい。簡単なモデルに基づいて説明すると、現像ローラー3の回転時にトナーに作用する遠心力は、トナーの質量、現像ローラー3の回転速度、現像ローラー3の中心軸からトナー担持溝37内のトナーまでの距離等により求まる。また、トナーを現像ローラー3に吸着させる静電気力は、シャフト30aの電位や、トナーの電荷量、被覆材30bの肉厚、被覆材30bの誘電率等により求まる。この静電気力が前記の遠心力以上であれば、トナーをトナー担持溝37に保持することができる。被覆材30bの肉厚、及び被覆材30bの誘電率は、熱収縮チューブの材質や肉厚により定まるので、これらを選択することによりトナーをトナー担持溝37内に担持可能になる。
【0043】
図4(b)に示すように、主部31の表面を平面状に展開した状態で2つの溝群は互いに略直交しており、面領域38の平面形状は略正方形になっている。面領域38の頂面からトナー担持溝37の底面までの距離(図4(a)参照)、すなわちトナー担持溝37の深さは、トナーの体積平均粒径よりも大きくなっている。被覆材30bは、底面372と頂面381とを略均一な厚みで被覆しており、トナー担持溝37の深さは、頂面381から底面372までの深さとほぼ一致している。トナー担持溝37の幅は、溝部371の幅よりも被覆材30bの厚みに応じた寸法だけ狭くなっている。本実施形態では、被覆材の厚みを考慮して溝部371の幅や深さ等の寸法が選択されている。前記のように、溝部371は転造加工により寸法や位置が高精度になっており、被覆材30bがシャフト30aの表面形状にならって形成されている。したがって、トナー担持溝37の寸法が高精度になり、トナー担持溝37内にトナーを良好に担持させることが可能になっている。
【0044】
現像ローラー3の製造方法の一例としては、以下のような方法が挙げられる。溝部371が形成されたシャフト30aを熱収縮チューブに挿通する。次いで、熱収縮チューブを加熱して収縮させることにより現像ローラー3が得られる。熱収縮チューブの加熱時に熱収縮チューブの円筒内側の圧力を円筒外側の圧力よりも低くすると、熱収縮チューブとシャフト30aとの間のガスが溝部371を通って排気される。これにより、熱収縮チューブをシャフト30aの溝部371に良好に追従させることができる。円筒内側の圧力を円筒外側の圧力よりも低くする方法としては、円筒内側の圧力を減圧する手法や円筒外側の圧力を加圧する手法、これらの手法を併用する手法等が挙げられる。円筒外側の圧力を加圧する手法は、円筒外側の雰囲気圧力を高めることや、圧縮可能な弾性部材により円筒外側を押圧することにより行うことができる。
【0045】
絶縁材料からなる熱収縮チューブを採用する場合には、現像ローラー3の製造方法の一例として以下のような方法が挙げられる。例えば、ポリイミド前駆体からなる熱収縮チューブを用意する。ポリイミド前駆体の重合度を調整することにより、熱収縮チューブを変形可能な硬さに調整しつつ成形することができる。このような熱収縮チューブでシャフト30aを被覆するとともに、加熱等によりポリイミド前駆体の重合度を高めることにより、溝部371に追従しつつ強固な被覆材30bを形成することができる。
【0046】
以上のような構成の現像ローラー3において、被覆材30bの導電率がシャフト30aの導電率よりも低くなっている。したがって、シャフト30aと感光体110との間のリークが格段に低減され、現像ローラー3と感光体110との間に所望の電界を作用させることができる。よって、感光ドラムに良好にトナーを付着させることができ、高品質な画像を形成することが可能になる。
【0047】
また、被覆材30bが、熱収縮チューブからなっているので、シャフト30aを均一な厚みで被覆することが可能になっている。
例えば、シャフトの表面に塗装等により被覆膜を形成すると、シャフトの外面が曲面になっており塗料の流動することにより、重力方向において被覆膜の厚みを均一にすることが難しくなる。また、シャフト表面の凸部(例えば頂面381上)から凹部(例えば溝部371内)に塗料が流動することにより、被覆膜の厚みが凸部上で凹部内よりも薄くなりやすくなる。すると、凸部は凹部よりも感光ドラムに接近する部分であるが、凸部上の非腹膜の厚みが相対的に薄くなっているのでリークを防止する効果が薄れてしまう。また、凹部はトナーが担持される部分であるが、凹部内の被覆膜が相対的に厚くなってので、トナーを静電吸着させる力が弱まり、トナーを良好に担持させることができなくなる。
前記のように本実施形態によれば、被覆材30bの厚みが均一であるので、リークが低減されるとともにトナーを良好に担持させることが可能になる。したがって、感光ドラムに良好にトナーを付着させることができ、高品質な画像を形成することが可能になる。
【0048】
シャフト30aが規制ブレード24等と直接接触しないので、現像ローラー3の使用に伴ってシャフト30a自体が磨耗しなくなる。被覆材30bが磨耗した場合には、被覆材30bを交換することにより現像ローラー3を再生することができる。したがって、被覆材30bが設けられていない場合に比べてシャフト30aを再生する必要性が低くなり、現像ローラー3を低コストで容易に再生することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の現像ローラーの第2実施形態を説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、トナーが担持される領域の外側に凹部が形成されており、被覆材がシャフトの軸方向において凹部まで延設されている点である。
【0050】
図5(a)は、第2実施形態の現像ローラー4の概略構成を示す斜視図であり、図5(b)は、現像ローラー4の中心軸を通る面における現像ローラー4の断面構造を模式的に示す図である。図5(a)に示すように、現像ローラー4の周縁領域35、36には、それぞれ凹部41、42が設けられている。凹部41、42は、主部31の周方向に沿って設けられている。
【0051】
図5(b)に示すように、凹部41、42は、トナー担持溝37よりも深く形成されている。本実施形態では凹部41、42は、現像ローラー4がシール部材28と当接する部分に対して軸方向の外側に設けられており、使用時に凹部41、42にトナーが入り込まないようになっている。被覆材30bは、凹部41、42の側面と底面とに追従するとともに当接して、主部31の両端まで延設されている。
【0052】
以上のような構成の現像ローラー4にあっては、被覆材30bが凹部41、42の側面に引っかかることにより、被覆材30bの軸方向のずれが防止される。凹部41、42がトナー担持溝37よりも深く形成されているので、被覆材30bにトナー担持溝37よりも効果的にアンカー効果を生じさせることができ、被覆材30bがシャフト30aから剥離することが防止される。
【0053】
なお、凹部41、42は、現像ローラー4がシール部材28と当接する部分に対して軸方向の内側に配置されていてもよい。また、凹部41、42の少なくとも一方が、複数設けられていてもよい。
【0054】
[第3実施形態]
次に、本発明の現像ローラーの第3実施形態を説明する。第3実施形態が第2実施形態と異なる点は、凹部の内側に被覆材を押圧する押圧部が設けられている点である。
【0055】
図6(a)は、第3実施形態の現像ローラー5の断面構造を模式的に示す図である。図6(a)に示すように、凹部41、42の内側には、それぞれ、被覆材30bに当接して押圧部51、52が設けられている。本実施形態の押圧部51、52は、ゴム等の弾性材料からなるリング状のものである。押圧部51、52は、伸長等により張力を発現させられて凹部41、42に取り付けられている。押圧部51、52が収縮する力により、被覆材30bは凹部41、42の内側に押圧される。
【0056】
以上のような構成の現像ローラー5にあっては、被覆材30bが押圧部51、52により押圧され、被覆材30bがシャフト30aから剥離することや軸方向にずれることが防止される。また、押圧部51、52が凹部41、42内に配置されているので、押圧部51、52が軸方向にずれることも防止される。これにより、押圧部51、52を良好に機能させることができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の現像ローラーの第4実施形態を説明する。第4実施形態が第3実施形態と異なる点は、押圧部が凹部の内側全体に埋め込まれている点、押圧部がシール部材28を兼ねている点である。
【0057】
図6(b)は、第4実施形態の現像ローラー6の断面構造を模式的に示す図である。図6(b)に示すように、本実施形態の凹部41、42は、周縁領域35、36のほぼ全域に設けられている。凹部41、42内には、それぞれ押圧部61、62が埋め込まれている。押圧部61、62は、発泡ウレタンやバルクゴム等の圧縮性を有する材質からなっている。押圧部61、62は、使用時に現像装置2aのハウジング21(図2参照)側と当接して圧縮されるように、厚みが選択されている。押圧部61、62は、圧縮されると反発力により被覆材30bをシャフト30aに押し付けるようになっている。
【0058】
以上のような構成の現像ローラー6にあっては、被覆材30bが押圧部61、62により押圧され、被覆材30bの剥離やずれることが防止される。また、押圧部61、62が凹部41、42内に配置されているので、押圧部51、52のずれも防止される。
【符号の説明】
【0059】
1・・・プリンター(画像形成装置)、2a、2b、2c、2d・・・現像装置、3、4、5、6・・・現像ローラー、30a・・・シャフト、30b・・・被覆材、371・・・溝部、41、42・・・凹部、51、52、61、62・・・押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に周期的に溝部が形成され該溝部の内側にトナーを担持可能なシャフトと、
前記溝部に追従して前記シャフトを被覆しており前記シャフトよりも導電率が低い熱収縮チューブからなる被覆材と、を含んでいること特徴とする現像ローラー。
【請求項2】
前記溝部が転造加工により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラー。
【請求項3】
前記シャフトの軸方向において前記トナーが担持される領域の外側に凹部が形成されており、前記被覆材が前記シャフトの軸方向において前記凹部の内側まで連続して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像ローラー。
【請求項4】
前記被覆材を前記凹部内に押圧する押圧部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の現像ローラー。
【請求項5】
前記溝部の寸法が、前記トナーの粒径と前記被覆材の厚みとに基づいて選択されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の現像ローラー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の現像ローラーを含んで構成された現像装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−164758(P2010−164758A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6637(P2009−6637)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】