説明

現像ローラ及びその製造方法及びそれを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】 本発明の目的とするところは、外部材からのしみだしをはじき、画像耐久性に優れた現像ローラを提供すること、またはこのような現像ローラを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【解決手段】 本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究・検討を進めたところ、軸芯体と、前記軸芯体の周囲に設けられた少なくとも一層以上の弾性層とを有する現像ローラにおいて、前記現像ローラの最表面層が、下記(a)、(b)及び(c)を重合させてなるウレタン樹脂からなり、(a)は主鎖がシロキサン骨格を有するものであり、且つ数平均分子量が500以上2000以下であり、且つ重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときのMw/Mnが1.1以上2.0以下である現像ローラにより本発明の課題を解決できる。
(a)シリコーンポリオール
(b)アクリルポリオール
(c)イソシアネート

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に使用される現像ローラ、及びその製造方法、及びこれを用いたプロセスカートリッジや画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリ、プリンター等の電子写真装置には、感光体を帯電させたり、静電潜像を顕像化するため、103〜1010Ωの半導電性領域でその目的にあった導電性(電気抵抗)を有する弾性ローラが一般に用いられている。たとえば、非磁性一成分接触現像方式の電子写真装置では、互いに圧接されている現像ローラから感光体(ドラム)へ現像剤(トナー)を移動させて静電潜像を顕像化し、現像が成される。このような電子写真装置に用いられる弾性ローラはより高いレベルの要求品質を満たした半導電性ローラにするために、導電性ゴム層上に単または複数の樹脂層を形成した構成の半導電性ローラが多く用いられる。
【0003】
また現像ローラとして用いる場合、ローラは安定したトナー搬送性、また耐久前半、後半にみられる画像不良の抑制が要求される。ここで耐久前半においては次のような画像不良が起こる場合がある。現像器内における現像ローラは、隣接する部材に接する状態である場合がある。例えば、現像剤供給ローラ、現像材規制部材、または感光ドラム等が挙げられる。一例として、現像剤供給ローラと現像ローラが接している場合、短期間、或は長期間の放置により、接触部分の現像ローラ上には現像剤供給ローラから発生する低分子量成分が付着する場合がある。この時、付着が極微量であっても、接触部分の現像ローラ上の抵抗がわずかに変化する場合がある。昨今、電子写真分野における画像の高解像度化が進むなかで、そのようなわずかな変化においても、それに起因した画像不良が発生する場合がある。
【0004】
これらに対し、本発明においてはシリコーンポリオールからなるウレタンを使用することにより、その疎水性を利用し、部材からのしみだしをはじくことで現像ローラの汚染を防ぎ、それによる、画像不良の発生を抑えるものである。
【0005】
導電性シャフトの周りに積層して構成される現像ローラの表面層の主成分がポリシロキサン骨格を含むポリウレタン樹脂からなる現像ローラは(特許文献1)で報告されている。
【0006】
ローラ部材がポリオールとイソシアネートからなるウレタンエラストマ−であり、前記ポリオールが活性水素を末端に有するポリシロキサンを含有する現像ローラは(特許文献2)で報告されている。
【0007】
アゾ基を持つシリコーンポリオールから誘導されるものと、アクリル系単量体から誘導されるものを構成成分とするブロック共重合体からなる組成物 (特許文献3)で報告されている。
【0008】
しかし、これらの発明はいずれもポリシロキサンのポリウレタン樹脂中の分散性が十分ではないため、本発明の目的とする上記画像不良の発生を抑えることは困難である。
【特許文献1】特開平11−212354号公報
【特許文献2】特開平11−249412号公報
【特許文献3】特開2000−178444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的とするところは、現像ローラが接触している部材からのしみだしをはじき、耐久前後半時における画像特性に優れた現像ローラを提供すること、またはこのような現像ローラを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、このような現像ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するため、本出願に係わる第1の発明は、すなわち軸芯体と、前記軸芯体の周囲に設けられた少なくとも一層以上の弾性層とを有する現像ローラにおいて、前記現像ローラの最表面層が、下記(a)、(b)及び(c)を重合させてなるウレタン樹脂からなり、(a)は主鎖がシロキサン骨格を有するものであり、且つ数平均分子量が500以上2000以下であり、且つ重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときのMw/Mnが1以上2以下であることを特徴とする現像ローラである。
【0011】
(a)シリコーンポリオール
(b)アクリルポリオール
(c)イソシアネート
本発明者等は、シリコーンポリオールの数平均分子量と、Mw/Mnを特定の範囲とし、且つアクリルポリオールを含有することにより、前記(a)と前記(c)の相溶性が向上させ、前記(a)の持つ、疎水性の効果をより発揮することで、本発明の目的である画像不良の改善を達成できることを見出した。
【0012】
本出願に係わる第2の発明は、前記弾性層の外周に、前記現像ローラの最表面層となる樹脂層が設けられており、前記樹脂層が前記(a)、(b)及び(c)を重合させてなるウレタン樹脂からなり、前記(a)は主鎖がシロキサン骨格を有するものであり、且つ数平均分子量が500以上2000以下であり、且つ重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときのMw/Mnが1以上2以下であることを特徴とする現像ローラである。
また、本出願に係わる第3の発明は、前記(a)が下記化学式(1)である現像ローラである。
【0013】
【化1】

(式中、K、l、m、n、Oは1以上の整数である。R1、R2、R3及びR4は互いに独立にメチル基或は水酸基で置換されていてよく、その際R1が水酸基である場合はR4が水酸基であり、R2、R3はメチル基である。また、R2が水酸基である場合はR3が水酸基であり、R1、R4がメチル基である。すなわち、少なくとも水酸基を2つ有し、且つその位置が上記に示す位置である。)
また、本出願に係わる第4の発明は、前記ウレタン樹脂が、前記(a)100.0質量部に対して、前記(b)を5.0質量部以上100.0質量部以下重合させてなることを特徴とする現像ローラである。
【0014】
また、本出願に係わる第5の発明は、前記(c)の数平均分子量が2000以上5000以下であることを特徴とする現像ローラである。
【0015】
また、本出願に係わる第6の発明は、前記(c)がポリエステルポリオール或いはポリエーテルポリオールで変性したイソシアネートであることを特徴とする現像ローラである。
【0016】
また、本出願に係わる第7の発明は、前記(c)のNCO官能基数が3以上5以下であることを特徴とする現像ローラである。
【0017】
また、本出願に係わる第8の発明は、前記ウレタン樹脂が、溶解度パラメーターがSP(A)である前記(a)と、溶解度パラメーターがSP(B)である前記(b)と、溶解度パラメーターがSP(C)となる前記(c)が下記式1となることを特徴とする現像ローラである。
【0018】
SP(A)<SP(B)<SP(C)・・・・(式1)
また、本出願に係わる発明は、前記現像ローラの製造方法である。
【0019】
また、本出願に係わる発明は、前記現像ローラが装着されたプロセスカートリッジである。
【0020】
また、本出願に係わる発明は、前記現像ローラを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によると、軸芯体と、前記軸芯体の周囲に設けられた少なくとも一層以上の弾性層とを有する現像ローラにおいて、前記現像ローラの最表面層が、下記(a)、(b)及び(c)を重合させてなるウレタン樹脂からなり、(a)は主鎖がシロキサン骨格を有するものであり、且つ数平均分子量が500以上2000以下であり、且つ重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときのMw/Mnが1以上2以下である現像ローラにより効果が発揮される。その効果は、疎水性を示す前記(a)が、外部の部材からのしみだしをはじくことにより、それに起因して起こる画像不良を防止することができる。ここで、前記(a)の数平均分子量及び、分子量分布を特定の範囲にすること及び、(b)を添加することにより、前記(a)と前記(c)の相溶性が向上し、前記(c)の分散性が良化することで、前述の画像不良防止効果を高めることができる現像ローラを提供すること、またはこのような現像ローラを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
【0022】
(a)シリコーンポリオール
(b)アクリルポリオール
(c)イソシアネート
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の現像ローラ15は、図2及び3に示すように、円柱状または中空円筒状の導電性軸芯体16外周面に弾性層17が固定され、この弾性層17の外周面に最表面層として導電性樹脂層18が積層された導電性部材から構成される。図2及び3では、軸芯体16、弾性層17及び導電性樹脂層18のみから構成されているが、弾性層17の内周、弾性層17と導電性樹脂層18の間、または導電性樹脂層18の外周に、さらに他の弾性層または樹脂層を1層以上積層させてもよい。
【0024】
導電性軸芯体16は、導電性部材の電極および支持部材として機能するもので、例えばアルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;導電性を有する合成樹脂などの導電性の材質で構成される。導電性基体の外径は通常4〜10mmの範囲とする。
【0025】
弾性層17は、導電性部材が適切なニップ幅ないしニップ圧をもって被帯電体表面に押圧して被帯電体表面を均一に帯電できるよう、適切な硬度および電気抵抗値を有する材料を使用する。この弾性層は、通常ゴム材の成型体により形成される。上記ゴム材としては、従来より導電性ゴムローラに用いられている種々のゴム材を用いることができる。ゴム材に使用するゴムとしては、具体的には、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等のゴムを単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。この中でも、特にセット性能等の観点からシリコーンゴムを用いることが好ましい。シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等が挙げられる。
【0026】
ゴム材中には、導電性付与剤を必須成分とし、非導電性充填剤、架橋剤、触媒等の各種添加剤が適宜配合される。導電性付与剤としては、グラファイト、カーボンブラック、アルミニウム、銅等の導電性金属;酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン等の導電性金属酸化物などの微粒子を用いることができる。このうち、カーボンブラックは比較的容易に入手でき、良好な帯電性が得られるので好ましい。非導電性充填剤としては、珪藻土、シリカ、石英粉末、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム等が挙げられる。架橋剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0027】
弾性層17の体積固有抵抗率は、100Vの直流電圧印加時で103〜1010Ω・cmの範囲にあることが好ましい。例えば、導電性付与剤としてカーボンブラックを用いる場合は、ゴム材中のゴム100.0質量部に対して5.0〜80.0質量部配合される。また、弾性層3の厚さはゴムの成型コストを低く抑える上で、1.0〜6.0mmの範囲にあことが好ましく、2.0〜5.0mmの範囲にあることがより好ましい。
【0028】
最表面層である導電性樹脂層18には、導電性を付与するために導電性付与剤が含有されることが好ましい。導電性付与剤としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの導電性樹脂層中の含有量は、導電性樹脂層を形成する基体樹脂100.0質量部に対して、0.5〜50.0質量部であることが、現像ローラとしての導電性を好ましい範囲にすることができるため好ましい。使用するカーボンブラックの平均粒径およびDBP吸油量に特に制限はないが、皮膜強度と導電付与性の点から、平均粒径15〜50nm、DBP吸油量70〜150ml/100gであることが好ましい。
【0029】
また、導電性樹脂層18にはローラ表面の粗さ制御のために微粒子を添加してもよい。粗さ制御用微粒子としては、体積平均粒径が8〜30μmであることが好ましい。また、樹脂層に添加する粒子添加量が、樹脂層の樹脂固形分100.0質量部に対し、1.0〜50.0質量部であることが好ましい。
【0030】
さらに、粗さ制御用微粒子の成分としてはポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
【0031】
本発明において、軸芯体と、前記軸芯体の周囲に設けられた少なくとも一層以上の弾性層とを有する現像ローラにおいて、前記現像ローラの最表面層が、下記(a)、(b)及び(c)を重合させてなるウレタン樹脂からなり、(a)は主鎖がシロキサン骨格を有するものであり、且つ数平均分子量が500以上2000以下であることが好ましく、より好ましくは1000以上1500以下であることが好ましい。
【0032】
(a)シリコーンポリオール
(b)アクリルポリオール
(c)イソシアネート
例えば、最表面層となる樹脂成分は、上記(a)、(b)、(c)をMEKに溶解、混合し、サンドミルにて分散させて作成する。その際、前記(a)と(c)は互いの極性差から相溶し難い。ここで、前記(a)は極性が低く、前記(c)は極性が高い。この状態で分散液を作成した場合、樹脂成分中の前記(a)の分散性が不十分のため、それのもつ疎水性による外部からのしみだしをはじく効果にムラが生じ、画像不良を抑制する効果が十分に得られず好ましくない。
【0033】
本発明において、上記相溶性の問題に対し、前記(a)、(c)の極性差を小さくすること、及び両者の中間の極性を持つアクリルポリオールを添加することをあわせて行うことにより、両者の相溶性を向上させた分散液を得ることを見出した。両者の極性差を小さくする方法は、前記(a)の数平均分子量を500以上2000以下の低分子領域に設定すること及び、分子量分布Mw/Mnを1.1以上2.0以下とし、低分子量で且つ分布の狭い前記(a)を使用することで達成されることを見出した。前記(a)の数平均分子量が500未満である場合、また、 Mw/Mnが1.1未満である場合、どちらの場合においてもイソシアネートとの架橋が三次元的に進行しやすく、ウレタン樹脂全体の硬度が高くなりすぎる。これによるローラ表面の硬度の上昇によりフィルミングを起こし、画像にかぶりが発生する場合があり好ましくない。また、前記(a)の数平均分子量が2000超である場合、またMw/Mnが2超である場合には、前記(a)と前記(c)との相溶性が不十分となり、そのためシロキサンの疎水性による外部からのしみだしをはじく効果が得られにくいため好ましくない。また、前記(a)において、入手しやすさの点から市販のものでもよく、また、従来公知の製造方法により作成されるものでもよい。例えば前記(a)のMw/Mnの調整はリチウム触媒を使用した非平衡開環重合があるが、これに限られたものではない。
【0034】
本発明において、前記(a)の化学構造は両末端、片末端或は、主鎖となるシロキサンの側鎖側に水酸基を有するものいずれの構造でもよいが、本発明の効果を発揮する上でより好ましくは前記化学式1に示す構造である。下記構造によれば、主鎖の側鎖側にイソシアネートが反応することになり、式1に示すメチル基が動きやすくなり、これが表面に向きやすくなることで、より疎水性が高まり、本発明の目的とする効果を得られることになり好ましい。
【0035】
本発明において前記ウレタン樹脂が、前記(a)100.0質量部に対して、前記(b)を5.0質量部以上100.0質量部以下重合させてなることが好ましい。5.0質量部未満では前記(b)による、前記(a)と前記(c)の溶解度の差を小さくし、両者を相溶させる効果が十分に得られず、画像不良の抑制が困難となるため好ましくない。また、100.0質量部超である場合には前記(b)と前記(c)の反応が進みすぎてしまうため、前記(a)と前記(c)を相溶させる効果が十分に得られず好ましくない。
【0036】
本発明において前記(c)の数平均分子量が2000以上5000以下であることが好ましい。数平均分子量が2000未満である場合には、前記(c)の前記(a)及び、前記(b)との架橋が進みすぎてしまう。これにより、現像ローラ表層の硬度が上昇し、画像評価においてフィルミングによる画像不良が発生する場合があり好ましくない。また、数平均分子量が5000超である場合には逆に現像ローラ表層の硬度が下がり、長期放置状態におけるセット性が不十分となる場合があり好ましくない。
【0037】
本発明において前記(c)がポリエステルポリオール或いはポリエーテルポリオールで変性したイソシアネートであることが好ましい。これにより、イソシアネートの数平均分子量を調整することが可能であり、また前記(a)及び、(b)との相溶性が良好となり好ましい。
【0038】
本発明において前記(c)のNCO官能基数が3以上5以下であることが好ましい。NCO官能基数が3未満である場合には、前記(a)及び、(b)とのウレタン反応が進みづらく、未反応成分の発生、或いは表層硬度が下がりすぎてしまうため好ましくない。また、5超である場合には表層硬度が上昇しすぎてしまうため好ましくない。
【0039】
本発明において前記ウレタン樹脂が、溶解度パラメーターがSP(A)である前記(a)と、溶解度パラメーターがSP(B)である前記(b)と、下記式1に示す溶解度パラメーターがSP(C)となる前記(b)からなることが好ましい。SP(c)がSP(A)未満である場合、または
SP(A)<SP(B)<SP(C)・・・・(式1)
SP(B)がSP(C)超である場合、どちらの場合においても前記(b)が前記(a)と前記(c)の溶解度の差を補う効果がなく、両者の相溶性が向上しないため好ましくない。上記関係式である場合には、前記(b)が両者の溶解度の差を縮める効果を果たすことで、前記(a)、前記(c)の相溶性を向上させることが可能となる。
【0040】
以下に本発明に係わる諸物性の測定方法を示す。
【0041】
<分子量及び、分子量分布の測定>
本発明における重量平均分子量の測定は、測定機器としてHLC(登録商標)−8120GPC(東ソー社製)、カラムとしてTSKgel(登録商標) SuperHM−M(東ソー社製)×2本、溶媒としてTHFを用い、温度40℃、THF流速0.6ml/minにて、測定サンプルを0.1質量%のTHF溶液とし、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いて測定を行った。検量線作成用の標準試料として数種の単分散標準ポリスチレン(東ソー社製)を用いて検量線の作成を行い、これを基に得られた測定サンプルの保持時間から重量平均分子量を求めた。
【0042】
<NCO%の測定>
本発明におけるイソシアネートの固形分当たりのNCO%の測定は、イソシアネート合成の際、ブロック剤と反応させる前にサンプリングし測定した。NCO%の値は、試料をトルエンに溶解し、ジブチルアミン0.5mol/lモノクロロベンゼン溶液を加え還流条件下30分間加熱反応させ、室温まで冷却後助溶剤としてメタノールを加え、過剰のアミンを0.5mol/l塩酸で逆滴定して求めた値を固形分換算した。数値はn=3で測定した平均値を用いた。
【0043】
尚、本発明におけるNCO官能基数は、上記測定による、NCO%と分子量から算出した。
【0044】
<SP値測定法>
SP値(溶解度パラメーター)は溶解性の尺度となるものであり、次のようにして測定される。参考文献SUH,CLARKE〔J.P.S.A−1,5,1671−1681(1967)〕
・測定温度 20℃
・サンプル 樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶解10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
【0045】
・溶解 良溶解:ジオキサン、アセトン
・貧溶解:n−ヘキサン、イオン交換水
・濁点測定 50mlビュレットを用いて貧溶解を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
【0046】
・計算 樹脂のSP値δは次式によって与えられる。
【0047】
δ=(Vml1/2δml+Vmh1/2δmh)/(Vml1/2+Vmh1/2)
Vm=V1V2/(φ1V2+φ2V1)
φm=φ1δ1+φ2δ2
V1:溶解の分子容(ml/mol)
φ1:濁点における各溶媒の体積分率
δ1:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶解混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【実施例1】
【0048】
軸芯体2としてSUS製の芯金にニッケルメッキを施し、さらにプライマ−DY35−051(東レ・ダウコーニング社製)を塗布、焼付けしたものを用いた。ついで、軸芯体11を金型に配置し、液状シリコーンゴム材料SE6724A/B(東レ・ダウコーニング社製)100.0質量部に対し、カーボンブラックトーカブラック#7360SB(東海カーボン社製)を35.0質量部、耐熱性付与剤としてシリカ粉体を0.2質量部、および白金触媒0.1質量部を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを150℃、15分間加硫硬化し、脱型した後、さらに180℃、1時間加熱し硬化反応を完結させ、弾性層17を軸芯体16の外周に設けた。
【0049】
導電性樹脂層の材料として、前述の化学式1において、シロキサンが主鎖であり、側鎖であるR1、R4が水酸基である構造を有し、数平均分子量Mn=1500で且つ、分子量分布Mw/Mnが1.4でありシコーンポリオール100.0質量部に対して、数平均分子量Mn=3000であり、且つNCO官能基数が3.4であり、且つあらかじめポリメリックMDIにPPGを変性したイソシアネートC−2549(日本ポリウレタン社製)110.0質量部及び、アクリルポリオール70.0質量部、カーボンブラックMA230(三菱化学社製)を樹脂成分に対し46.0質量部混合し、総固形分比30質量%になるようにMEKに溶解、混合し、サンドミルにて均一に分散し、分散液1を得た。分散液1にPMMA粒子テクポリマーMBX20(積水化成品工業社製)を樹脂固形分に対して16.0質量、撹拌モーターで10分間撹拌し、導電性樹脂層形成用塗料1を得た。各材料の物性を表1に示す。次にこの導電性樹脂層形成用塗料1を前記弾性層上に浸漬塗工した後乾燥させ、150℃にて4時間加熱処理することで弾性層外周に導電性樹脂層を設け、実施例1の現像ローラを得た。
【0050】
また得られた現像ローラについて以下の方法で評価した。部材からのしみだしとしてPEGを0.1g用意し、これを現像ローラの軸方向に綿棒で塗布した。これを図1に示すようなキヤノン製カラーレーザービームプリンタに装填し、通常環境下で1日放置後、画像評価を行った。その結果、初期評価としてハーフトーン画像15枚、べた黒画像15枚通紙で帯状の画像不良は見られず。更に1%印字率で50枚間欠画だし後、初期評価と同様に画像評価を行った結果、帯状の画像不良は見られなかった。評価結果を表1に示す。
【実施例2】
【0051】
前記(a)の数平平均分子量が500であり、分子量分布Mw/Mnが1.1である以外は実施例1と同様にして、実施例2の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例3】
【0052】
前記(a)の数平平均分子量が2000であり、分子量分布Mw/Mnが2.0である以外は実施例1と同様にして、実施例3の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例4】
【0053】
前記(c)の数平平均分子量が2000である以外は実施例1と同様にして、実施例4の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例5】
【0054】
前記(c)の数平平均分子量が5000である以外は実施例1と同様にして、実施例5の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例6】
【0055】
前記(c)のNCO官能基数が3である以外は実施例1と同様にして、実施例6の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例7】
【0056】
前記(c)のNCO官能基数が5である以外は実施例1と同様にして、実施例7の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例8】
【0057】
前記(a)が両末端に水酸基を有する構造である以外は実施例1と同様にして、実施例8の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例9】
【0058】
前記(a)100質量部に対して、前記(b)を4.5質量部重合させてなる以外は実施例1と同様にして、実施例9の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例10】
【0059】
前記(a)100質量部に対して、前記(b)を105.0質量部重合させてなる以外は実施例1と同様にして、実施例10の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例11】
【0060】
前記(c)の数平平均分子量が1500である以外は実施例1と同様にして、実施例11の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例12】
【0061】
前記(c)の数平平均分子量が6000である以外は実施例1と同様にして、実施例12の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例13】
【0062】
前記(c)のNCO官能基数が2である以外は実施例1と同様にして、実施例13の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例14】
【0063】
前記(c)のNCO官能基数が6である以外は実施例1と同様にして、実施例14の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例15】
【0064】
前記(b)のSP値(B)が10.8である以外はは実施例1と同様にして、実施例15の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【実施例16】
【0065】
前記(b)のSP値(B)が8.5である以外はは実施例1と同様にして、実施例16の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【0066】
(比較例1)
前記(a)の数平平均分子量が480であり、分子量分布Mw/Mnが1.04である以外は以外は実施例1と同様にして、比較例1の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【0067】
(比較例2)
前記(a)の数平平均分子量が2200であり、分子量分布Mw/Mnが2.2である以外は実施例1と同様にして、比較例2の現像ローラを得た。各物性、評価結果を表1に示す。
【0068】
<画像評価基準>
以下の基準で評価した。
【0069】
初期評価、及び50枚通紙後の画像評価において、
◎ :帯び状の画像不良の発生が認められない。
【0070】
○ :判別しにくい程の極軽微な帯び状の画像不良の発生が認められる。
【0071】
× :画像に大きな影響を及ぼす帯び状の画像不良の発生が認められる。
【0072】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の現像ローラの一例を示す概念図である。
【図3】本発明の現像ローラの一例の断面を示す概念図である。
【符号の説明】
【0074】
1 感光ドラム
2 一次帯電器
3 露光光
4 現像装置
5 転写搬送ベルト
6 転写ローラー
7 転写材ガイド
8 給紙ローラー
9 テンションローラー
11 定着器
12 バイアス電源
13 クリーニング装置
14 一次帯電器電源
15 現像ローラ
16 軸芯体
17 弾性層
18 導電性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、前記軸芯体の周囲に設けられた少なくとも一層以上の弾性層とを有する現像ローラにおいて、前記現像ローラの最表面層が、下記(a)、(b)及び(c)を重合させてなるウレタン樹脂からなり、(a)は主鎖がシロキサン骨格を有するものであり、且つ数平均分子量が500以上2000以下であり、且つ重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときのMw/Mnが1.1以上2.0以下であることを特徴とする現像ローラ。
(a)シリコーンポリオール
(b)アクリルポリオール
(c)イソシアネート
【請求項2】
前記弾性層の外周に、前記現像ローラの最表面層となる樹脂層が設けられており、前記樹脂層が前記(a)、(b)及び(c)を重合させてなるウレタン樹脂からなり、前記(a)は主鎖がシロキサン骨格を有するものであり、且つ数平均分子量が500以上2000以下であり、且つ重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときのMw/Mnが1以上2以下であることを特徴とする請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記(a)が下記化学式(1)である請求項1または請求項2に記載の現像ローラ。
【化1】

(式中、K、l、m、n、Oは1以上の整数である。R1、R2、R3及びR4は互いに独立にメチル基或は水酸基で置換されていてよく、その際R1が水酸基である場合はR4が水酸基であり、R2、R3はメチル基である。また、R2が水酸基である場合はR3が水酸基であり、R1、R4がメチル基である。少なくとも水酸基を2つ有し、且つその位置が上記に示す位置である。)
【請求項4】
前記ウレタン樹脂が、前記(a)100.0質量部に対して、前記(b)を5.0質量部以上100.0質量部以下重合させてなることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記(c)の数平均分子量が2000以上5000以下である請求項1〜4の何れか一項記載の現像ローラ。
【請求項6】
前記(c)がポリエステルポリオール或いはポリエーテルポリオールで変性したイソシアネートであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の現像ローラ。
【請求項7】
前記(c)のNCO官能基数が3以上5以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の現像ローラ。
【請求項8】
前記ウレタン樹脂が、溶解度パラメーターがSP(A)である前記(a)と、溶解度パラメーターがSP(B)である前記(b)と、溶解度パラメーターがSP(C)となる前記(c)が下記式1となることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項記載の現像ローラ。
SP(A)<SP(B)<SP(C)・・・・(式1)
【請求項9】
軸芯体と、前記軸芯体の周囲に設けられた少なくとも一層以上の弾性層とを有する現像ローラにおいて、前記現像ローラの最表面層が、下記(a)、(b)及び(c)を重合させてなるウレタン樹脂からなり、(a)は主鎖がシロキサン骨格を有するものであり、且つ数平均分子量が500以上2000以下であり、且つ重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときのMw/Mnが1.1以上2.0以下であることを特徴とする現像ローラの製造方法。
(a)シリコーンポリオール
(b)アクリルポリオール
(c)イソシアネート
【請求項10】
前記弾性層の外周に、前記現像ローラの最表面層となる樹脂層が設けられており、前記樹脂層が前記(a)、(b)及び(c)を重合させてなるウレタン樹脂からなり、前記(a)は主鎖がシロキサン骨格を有するものであり、且つ数平均分子量が500以上2000以下であり、且つ重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときのMw/Mnが1以上2以下であることを特徴とする請求項9記載の現像ローラの製造方法。
【請求項11】
前記(a)が下記化学式(1)である請求項9または請求項10に記載の現像ローラの製造方法。
【化2】

(式中、K、l、m、n、Oは1以上の整数である。R1、R2、R3及びR4は互いに独立にメチル基或は水酸基で置換されていてよく、その際R1が水酸基である場合はR4が水酸基であり、R2、R3はメチル基である。また、R2が水酸基である場合はR3が水酸基であり、R1、R4がメチル基である。少なくとも水酸基を2つ有し、且つその位置が上記に示す位置である。)
【請求項12】
前記ウレタン樹脂が、前記(a)100.0質量部に対して、前記(b)を5.0質量部以上100.0質量部以下重合させてなることを特徴とする請求項9〜11の何れか一項記載の現像ローラの製造方法。
【請求項13】
前記(c)の数平均分子量が2000以上5000以下である請求項9〜12の何れか一項記載の現像ローラの製造方法。
【請求項14】
前記(c)がポリエステルポリオール或いはポリエーテルポリオールで変性したイソシアネートであることを特徴とする請求項9〜13の何れか一項記載の現像ローラの製造方法。
【請求項15】
前記(c)のNCO官能基数が3以上5以下であることを特徴とする請求項9〜14の何れか一項記載の現像ローラの製造方法。
【請求項16】
前記ウレタン樹脂が、溶解度パラメーターがSP(A)である前記(a)と、溶解度パラメーターがSP(B)である前記(b)と、溶解度パラメーターがSP(C)となる前記(c)が下記式1となることを特徴とする請求項9〜15の何れか一項記載の現像ローラの製造方法。
SP(A)<SP(B)<SP(C)・・・・(式1)
【請求項17】
電子写真装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、請求項1〜8の現像ローラを具備することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項18】
潜像を担持する感光対に対向した状態でトナーを担持する現像ローラを備え、前記現像ローラが前記感光体に前記トナーを付与することにより前記潜像を可視化する電子写真装置において、請求項1〜8に記載の現像ローラを具備することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−145853(P2008−145853A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334523(P2006−334523)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】