説明

現像ローラ及び画像形成装置

【課題】トナー担持層の摩耗を防止するとともに、トナー成分のフィルミングの発生を防止することにより、白画像のかぶり、ハーフトーン画像のざらつき、或いは黒画像の濃淡むら等の画像不良の発生を防止できる高精細で高画質の印刷画像が得られる現像ローラ及びこのような表面の耐久性が向上した現像ローラを使用した画像形成装置を提供する。
【解決手段】 導電性軸体2と、前記導電性軸体2の外側に位置する導電性弾性層3と、該導電性弾性層3の外周部に設けたトナー担持層4とを有する現像ローラ1において、前記トナー担持層4はポリウレアとポリウレタンとの反応物を含有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性軸体とその外側に位置する導電性弾性層を具備し、更にこの導電性弾性層の外周部に設けたトナー担持層上に薄膜状態で担持されたトナーを層形成部材によって所定のトナー層厚に層形成した後、潜像担持体上に形成された静電潜像を可視化する画像形成装置に用いられる現像ローラ及びそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンター等の電子写真方式や、静電記録方式等の画像形成装置において、潜像担持体の静電潜像にトナーを付着させて潜像を可視化する現像方法として、接触現像法が知られている。
【0003】
また、導電性軸体の周りに弾性体からなる導電性弾性層及び樹脂からなるトナー担持層をこの順に同心円状に積層して構成される現像ローラが知られている。
【0004】
このように、導電性軸体とその外側に位置する導電性弾性層とトナー担持層とを具備する現像ローラと、この現像ローラのトナー担持層上に薄膜状態で担持されたトナーによって、潜像担持体上に形成された静電潜像を可視化する画像形成装置において、現像ローラは潜像担持体に密着した状態を保持しつつ回転しなければならない。そのため、現像ローラの表面を覆うトナー担持層には、トナーに対する帯電性や付着性の制御、潜像担持体及び層形成部材との摩擦力の制御、或いは、潜像担持体の汚染防止等が要求される。
【0005】
さらに、近年、プリンター等の高速化、微細画像化、カラー画像化等の要求が非常に厳しくなってきており、従来のトナー担持体では対応できない問題が顕在化してきている。即ち、トナー担持体を画像形成装置に組み込んで長期的に使用した場合、印刷枚数が増加すると、白画像のかぶり、ハーフトーン画像のざらつき、或いは黒画像の濃淡むら等の画像不良が発生するという問題点がある(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0006】
これは、画像形成装置により現像ローラ等のトナー担持体を長期的に使用した場合に、トナー、トナー塗布用ローラ或いは成層ブレードとの摩擦によって、トナー担持体の表面のトナー担持層が摩耗したり、トナー成分のフィルミングが発生することにより、トナー担持層の性状が変化して、トナーの帯電量や搬送量が変わり、白画像のかぶり、ハーフトーン画像のざらつき、或いは黒画像の濃淡むら等の画像不良を生じることが原因であることが知られている。
【0007】
上記した問題に対して、導電性弾性層上にポリアミン化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて硬化させたポリウレア樹脂からなる被覆層を設けることが提案されている(特許文献1を参照のこと)。
【0008】
しかしながら、ポリアミン化合物とポリイソシアネート化合物とを混合して一液型塗料としたときには、ポットライフが短く不都合であった。
【特許文献1】特開平11−352770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、以上のような従来の問題点を解消すべく、現像ローラの表面のトナー担持層が、トナーに対する摩擦力及び/又は摩擦熱を低減させることにより、トナー成分のフィルミングの発生を防止し、白画像のかぶり、ハーフトーン画像のざらつき、或いは黒画像の濃淡むら等の画像不良の発生を防止でき、またトナー担持層を形成する化合物反応時のポットライフを長くし安定化させる事が可能な高精細で高画質の印刷画像が得られる現像ローラ及びこのような表面の耐久性が向上した現像ローラを使用した画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を実現するために以下の手段を採用した。
【0011】
請求項1に記載の発明は、導電性軸体と、前記導電性軸体の外側に位置する導電性弾性層と、前記導電性弾性層の外周部に設けたトナー担持層とを有する現像ローラにおいて、前記トナー担持層はポリウレア化合物とポリウレタン化合物との反応物を含有するものであることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記反応物は、MDI系イソシアネート、エーテル系ポリオール、及びアミンの反応により生成したものであることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記反応物は、予めMDI系イソシアネートとエーテル系ポリオールとを予備反応してプレポリマーを形成させた後、アミンと反応したものであることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに一つに記載の構成に加え、前記トナー担持層表面のJIS(B0601)十点平均粗さ(Rz)は2〜15μmであることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに一つに記載の構成に加え、前記導電性軸体と前記トナー担持層の表面との間の電気抵抗値が、DC100Vで1×10〜10Ωであることを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の現像装置に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに一つに記載の現像ローラのトナー担持層の表面にトナーを担持して前記トナーの薄膜を形成した後、前記トナーを潜像担持体の表面に付着させ、前記潜像担持体の表面に可視画像を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、以上のような構成を採用しているため、請求項1に記載の発明によれば、現像ローラの導電性弾性層の外周部に設けたトナー担持層がポリウレア化合物とポリウレタン化合物との反応物を含有するものであるので、現像ローラの表面のトナー担持層が、トナーに対する摩擦力及び/又は摩擦熱を低減させることから、トナー成分のフィルミングの発生を防止し、白画像のかぶり、ハーフトーン画像のざらつき、或いは黒画像の濃淡むら等の画像不良の発生を防止でき、またトナー担持層を形成する化合物反応時のポットライフを長くし安定化させる事が可能な高精細で高画質の印刷画像が得られる現像ローラを提供することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、ポリウレア化合物とポリウレタン化合物との反応物を、MDI系イソシアネート、エーテル系ポリオール、及びアミンの反応により生成したものであるので、現像ローラの表面の摩耗に対する耐久性をより一層向上させた現像ローラが得られる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、ポリウレア化合物とポリウレタン化合物との反応物を予めMDI系イソシアネートとエーテル系ポリオールとを予備反応してプレポリマーを形成させた後、アミンと反応したものであるので、請求項1又は2の発明の効果に加えて、より品質の安定した現像ローラが得られる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、前記トナー担持層表面のJIS(B0601)十点平均粗さ(Rz)は2〜15μmであるので、請求項1乃至3のいずれか一つの発明の効果に加えて、より高精細で高画質の印刷画像が得られる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、導電性軸体とトナー担持層の表面との間の電気抵抗値を1×10〜10Ωに規定することで、適度な現像バイアスが得られるため、請求項1乃至4のいずれか一つの発明の効果に加えて、トナーのかぶりやかすれを生じることなく、明瞭な印刷物が得られる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5のいずれか一つに記載した現像ローラのトナー担持層の表面にトナーを担持して前記トナーの薄膜を形成した後、前記トナーを潜像保持体の表面に付着させ、前記潜像保持体の表面に可視画像を形成するので、高精細で高画質の印刷画像が得られる画像形成装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態に係る現像ローラ及びそれを用いた画像形成装置について説明を示す。ただし、この発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、この発明の実施の形態に係る現像ローラの横断面図である。
【0025】
図1に示したように、現像ローラ1は、円柱状の導電性軸体2と、この導電性軸体2の表面を被覆する円筒状の導電性弾性層3とを有している。導電性弾性層3の外周部には、トナーを薄膜状態で担持できるトナー担持層4を有している。
【0026】
導電性軸体2は、例えば、(1)鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で形成された金属製の軸体の他、(2)熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の芯体表面に金属皮膜をメッキ処理した軸体、(3)熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の芯体表面に金属皮膜を蒸着処理した軸体、(4)熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に導電性付与剤としてカーボンブラックや金属粉末等を配合した樹脂組成物により一体に形成した軸体等、であればよい。
【0027】
導電性弾性層3は、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム、ポリウレタンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム等、及びこれらの混合物である、いわゆるゴム或いはエラストマーから選ばれるいずれか一種以上を主成分としている。
【0028】
これらのゴム或いはエラストマーには、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、補強性カーボン等の充填材や、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属粉末や、酸化亜鉛、酸化錫等の金属酸化物や、硫酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カリウム等の芯材に酸化錫をコーティングした導電性充填材等を配合し、パーオキサイド、白金触媒存在下でのハイドロジェンシロキサン、イソシアネート等の加硫剤と一緒に混練したものが用いられる。
【0029】
トナー担持層4を形成する材料としては、ポリウレア化合物とポリウレタン化合物との反応物を使用する。ポリウレア化合物とポリウレタン化合物との反応物によりトナー担持層4を形成するには、これらの反応物を導電性弾性層3の表面にコーティングする方法が採用される。つまり、この発明の実施の形態に係る現像ローラ1は、導電性軸体2上に導電性弾性層3を有し、この導電性弾性層3の外周部にコーティングにより形成したトナー担持層4を有するものであることが好ましい。
【0030】
前記したポリウレア化合物としては、MDI系、TDI系、XDI系、NDI系、TMXDI系、IPDI系、H6XDI系、H12MDI系、HDI系、DDI系、NBDI系、TMDI系及び1、3−PDO系等のイソシアネートと、エーテル系、PPG系、PTMG系、エステル系、POP系、PCL系、PCD系、1、4−BD系、1.5−PD系、1.6−HD系、PBP系、TMP系、NPG系、MPD系等のポリオールとの反応物が挙げられる。中でも感光体に対する汚染性、耐久性の面からMDI系イソシアネートと耐摩耗性、耐熱性、耐湿性、電気特性の面からポリエーテル系ポリオールとからなる反応物が好ましい。
【0031】
また、前記したポリウレタン化合物としては、MDI系、TDI系、XDI系、NDI系、TMXDI系、IPDI系、H6XDI系、H12MDI系、HDI系、DDI系、NBDI系、TMDI系及び1、3−PDO系等のイソシアネートと、アミンとの反応物が挙げられる。中でも感光体に対する汚染性、耐久性の面からMDI系イソシアネートとアミンとからなる反応物が好ましい。
【0032】
また、この発明の実施の形態に係る現像ローラ1において、後述する実験例により、トナー担持層4の表面粗さ(JIS(B0601)十点平均粗さ(Rz)。以下、表面粗さRzと表現する。)を所定の範囲に規定することで良好な画像が得られることが確認された。
【0033】
つまり、トナー担持層4の表面粗さRzが2μm未満では、黒ベタ印字サンプルの画像濃度が低くなり、表面粗さRzが15μmを越えると、黒ベタ印字サンプルの画像濃度が高くなりすぎて、トナーのかぶりも生じ易くなり、解像度も低下する。したがって、トナー担持層4の表面粗さRzを2〜15μmとすることにより、良好な画像が得られるといえる。
【0034】
現像ローラ1の表面のトナー担持層4の表面粗さRzを、上述したような所定の範囲に調整するには、(1)導電性弾性層3に樹脂コート層を形成する方法の他、(2)導電性弾性層3を構成するゴム材料や添加剤成分等の種類を選択する方法、(3)導電性弾性層3の仕上げ研磨時の研磨条件を変更する方法等が挙げられる。
【0035】
また、この発明の実施の形態に係る現像ローラ1において、後述する実験例により、現像ローラ1の導電性軸体2と現像ローラ1の表面のトナー担持層4との間の電気抵抗値を所定の範囲に規定することで良好な画像が得られることが確認された。
【0036】
つまり、現像ローラ1の導電性軸体2と現像ローラ1の表面のトナー担持層4との間の電気抵抗値が1×10Ω未満では、現像バイアスがかかりすぎるために、黒ベタ印字サンプルの画像濃度が高くなりすぎて、トナーのかぶりを生じ易くなり、解像度も低下する。また、この電気抵抗値が1×10Ωを越えると、現像バイアスがかからず現像性が低下して黒ベタ印字サンプルの画像濃度が低く、印字媒体である紙が透けて見えてしまい、良好な画像を得ることが困難となる。したがって、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値が、1×10〜10Ωの範囲であれば良好な画像が得られるといえる。
【0037】
この発明の実施の形態に係る現像ローラは、電子写真方式における画像形成装置に用いられるものであり、図2に現像ローラを組み込んだ画像形成装置の一実施の形態を示す。
【0038】
図2に示したように、画像形成装置12は、トナーを供給するためのトナー供給ローラ5と静電潜像を保持した潜像担持体6との間に、現像ローラ1が配設され、これら現像ローラ1、潜像担持体6及びトナー供給ローラ5がそれぞれ図中矢印方向に回転することにより、トナー7がトナー供給ローラ5により現像ローラ1の表面に供給され、このトナーが層形成部材8により均一な薄層に整えられ、この状態で現像ローラ1が潜像担持体6と接触しながら回転することにより、薄層に形成されたトナーが現像ローラ1から潜像担持体6の潜像に付着して、静電潜像が可視化するようになっている。なお、図中9は転写部であり、ここで紙等の記録媒体にトナー画像を転写するようになっており、また、10はクリーニング部であり、クリーニングブレード11により転写後に潜像担持体6表面に残存するトナーを除去するようになっている。
【0039】
なお、この発明の実施の形態に係る画像形成装置12については、現像ローラ1を除いて、従来のものと同様であるからその詳細については省略する。
【実施例】
【0040】
以下、この発明に係る現像ローラ1の実施例及び比較例の製造方法と評価結果について説明する。
[実施例1]
【0041】
導電性軸体2として、SUM22に無電解ニッケルメッキを施した直径10mm、長さ250mmの金属製シャフトを使用し、この金属製シャフトにシリコーン系プライマー(商品名:プライマーNo.16、信越化学工業(株)製)を塗布し、ギヤオーブン中で150℃、10分間焼き付け処理を施した。
【0042】
導電性弾性層3の材料として、メチルビニルシリコーン生ゴム(商品名:KE−78VBS、信越化学工業(株)製)100質量部、ジメチルシリコーン生ゴム(商品名:KE−76VBS、信越化学工業(株)製)20質量部、カーボンブラック(商品名:アサヒサーマル、旭カーボン(株)製)10質量部、煙霧質シリカ系充填材(商品名:AEROSIL 200、日本アエロジル(株)製)15質量部、白金触媒(商品名:C−19A、信越化学工業(株)製)0.5質量部、ハイドロジェンシロキサン(商品名:C−19B、信越化学工業(株)製)2質量部を添加し、加圧ニーダーで混練してシリコーンゴム組成物を調製した。
【0043】
次に、このシリコーンゴム組成物を、押出機でクロスヘッドを介して分出しし導電性軸体2と一体化し、ギヤオーブン中で150℃、30分間加熱加硫して、導電性軸体2の表面に外径が18mmの円筒状になるように加硫接着成形した。さらに、ギヤオーブン中で200℃、4時間の二次加硫を行って、導電性弾性層3を形成した。
【0044】
二次加硫後、GC#400の砥石を備えた円筒研削盤で導電性弾性層3の外周表面を研磨し、直径16mm、導電性弾性層3の長さ230mmのローラ基材を作製した。仕上げ研磨したローラ表面の表面粗さRzは4.7μmであった。
【0045】
次に、導電性弾性層3の表面に、予めMDI系イソシアネート(商品名:MC−C31、日本ポリウレタン工業(株)製)とエーテル系ポリオール(商品名:ON−F29、日本ポリウレタン工業(株)製)との予備反応物(プレポリマー)にアミン(商品名:KBP−40、信越化学工業(株)製)を反応させて、トナー担持体層3を形成した。その配合比はR=1.05[R:NCO当量/(OH+NH)当量]とし、導電性弾性層3の表面に厚みが2.0μmとなるようにスプレーコーティングし、120℃、90分の条件で加熱硬化した。なお、硬化させた時のポットライフは約1時間であった。このようにして完成した現像ローラ1のトナー担持層4の表面粗さRzは4.0μmであった。また、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値は1×10Ωであった。
[実施例2]
【0046】
実施例2は、実施例1の導電性弾性層3の材料のカーボンブラック添加量を10質量部から7質量部に変更し、また導電性弾性層3の仕上げ研磨条件の変更により表面粗さRzを2.7μmにした他は、すべて実施例1と同じ方法で作製した現像ローラ1であり、現像ローラ1のトナー担持層4の表面粗さRzは2.0μmであった。また、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値は1×10Ωであった。
[実施例3]
【0047】
実施例3は、実施例1の導電性弾性層3の仕上げ研磨条件の変更により表面粗さRzを16.0μmとし、次にトナー担持層4を数回塗布した他は、すべて実施例1と同じ方法で作製した現像ローラ1であり、現像ローラ1のトナー担持層4の表面粗さRzは15.0μmであった。また、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値は1×10Ωであった。
[実施例4]
【0048】
実施例4は、実施例1の導電性弾性層3の材料のカーボンブラック添加量を10質量部から15質量部に変更し、またトナー担持層4の厚みを4.0μmにした他は、すべて実施例1と同じ方法で作製した現像ローラ1であり、現像ローラ1のトナー担持層4の表面粗さRzは8.0μmであった。また、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値は1×10Ωであった。
[比較例1]
【0049】
比較例1は、トナー担持層4をポリウレタン(MDI系イソシアネート(商品名:MC−C31、日本ポリウレタン工業(株)製)とエーテル系ポリオール(商品名:ON−F29、日本ポリウレタン工業(株)製)との反応物にした他は、すべて実施例1と同じ方法で作製した現像ローラ1であり、現像ローラ1のトナー担持層4の表面粗さRzは4.0μmであった。また、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値は1×10Ωであった。
[比較例2]
【0050】
比較例2は、トナー担持層4をポリウレア(MDI系イソシアネート(商品名:MC−C31、日本ポリウレタン工業(株)製)とアミン(商品名:KBP−40、信越化学工業(株)製)との反応物にし、120℃、90分の条件で加熱硬化した。尚、硬化させた時のポットライフは約5分間であった。他は、すべて実施例1と同じ方法で作製した現像ローラ1であり、現像ローラ1のトナー担持層4の表面粗さRzは4.0μmであった。また、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値は1×10Ωであった。
【0051】
[比較例3]
比較例3は、実施例1の導電性弾性層3の材料のカーボンブラック添加量を10質量部から5質量部に変更し、また導電性弾性層3の仕上げ研磨条件の変更により、表面粗さRzを2.0μmにした他は、すべて実施例1と同じ方法で作製した現像ローラ1であり、現像ローラ1のトナー担持層4の表面粗さRzは1.5μmであった。また、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値は3×10Ωであった。
[比較例4]
【0052】
比較例4は、実施例1の導電性弾性層3の材料のカーボンブラック添加量を10質量部から8.5質量部に変更し、また導電性弾性層3の仕上げ研磨条件の変更により、表面粗さRzを17.0μmにした他は、すべて実施例1と同じ方法で作製した現像ローラ1である。比較例4の現像ローラ1のトナー担持層4の表面粗さRzは16.0μmであった。また、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値は3×10Ωであった。
[比較例5]
【0053】
比較例5は、実施例1の導電性弾性層3の材料のカーボンブラック添加量を10質量部から18質量部に変更し、またトナー担持層4の厚みを0.7μmにした他は、すべて実施例1と同じ方法で作製した現像ローラ1であり、現像ローラ1のトナー担持層4の表面粗さRzは4.5μmであった。また、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値は8×10Ωであった。
[試験方法]
【0054】
実施例及び比較例についての表面粗さRz、電気抵抗値は以下の測定方法によって取得し、さらに、耐久性及び画像の評価のために以下の試験を行った。
(1)表面粗さRz
【0055】
先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名:590A、(株)東京精密製)に現像ローラ1をセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、表面粗さRzを測定した。測定頻度は、一本の現像ローラ1のトナー担持層4につき三箇所とし、その平均値を表面粗さRzとした。
(2)電気抵抗値
【0056】
アドバンテスト社製の電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A)を用い、現像ローラ1を水平に置き、厚さ5mm、幅30mm、長さはゴム部(導電性弾性層3)全体を載せることのできるアルミニウム製板を電極とし、500gの荷重を現像ローラ1の導電性軸体2の両端で支持させた状態にして、導電性軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を電気抵抗値とした。
(3)印字耐久性
【0057】
現像ローラ1の表面のトナー担持層4の耐久性を確認する試験として、印字試験機を使用した連続印刷試験を行い、印刷画像に生じる筋の有無を目視で判定することとした。ここで、フィルミングが発生している場合には印刷画像に筋が見えることになる。
【0058】
具体的には、市販のプリンター(HL−1850 ブラザー工業(株)製)の黒トナーカートリッジの位置に、実施例及び比較例で作製した現像ローラを組み込んだ試験用カートリッジを装着し、室温23±2℃、湿度50±5%の常温常湿の環境下で一昼夜放置した後、黒ベタ印刷を行い、500枚毎にその画像を観察し、その耐久性の評価を行った。
(4)画像評価
【0059】
市販のプリンター(HL−1850 ブラザー工業(株)製)の黒トナーカートリッジの位置に、実施例及び比較例で作製した現像ローラを組み込み後、黒ベタ・網点・5%デューティ・白地印字の4項目の評価用画像パターンを印字し、初期の評価データとした。その後、5%デューティ画像を20,000枚印字し、その後更に初期と同様に評価用画像パターン4項目を印字し、印字後の評価データとした。
・印字濃度
【0060】
黒ベタ印字のマクベス濃度を、マクベス濃度計を用いて測定した。初期、印字後ともに、マクベス濃度が1.3以上を「○」、1.3未満を「×」とする。
・白画像のかぶり
【0061】
5%デューティ画像の白地部のマクベス濃度を、マクベス濃度計にて測定した。初期、印字後ともに、マクベス濃度が0.015未満を「○」、0.015以上を「×」とする。
[試験結果]
【0062】
実施例及び比較例について、表面粗さRz、電気抵抗値、印字耐久性び画像評価の結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

(注)1.印字耐久性
○:印字画像に筋が発生し始めた印刷枚数が15,000枚以上のも の。
×:印字画像に筋が発生し始めた印刷枚数が15,000枚未満のも の。
2.画像評価
○:「印字濃度」,「白画像のかぶり」の評価結果が共に「○」のもの。
×:「印字濃度」,「白画像のかぶり」の評価結果で少なくとも一つが 「×」のもの。
【0064】
実施例1〜4のように、導電性弾性層3の表面に、予めMDI系イソシアネートとエーテル系ポリオールとの予備反応物(プレポリマー)にアミンを反応させた反応物をスプレーコーティングして、120℃、90分の条件で加熱硬化したものであって、現像ローラ1のトナー担持層4の表面の表面粗さRzが2〜15μmの範囲に調整されている場合には、印字耐久性を向上させることができるため、現像工程の高速化と長期化といった環境下であっても、クリーニングブレードを用いたクリーニング性が良好に維持される。このような現像ローラ1を使用した画像形成装置にあっては、耐フィルミング性が良好であって(印字耐久性:○)、高精細で高画質の印刷画像を得ることが確認できた(画像評価:○)。
【0065】
現像ローラ1のトナー担持層4を、ポリウレタン(MDI系イソシアネートとエーテル系ポリオールとの反応物)とした比較例1及びポリウレア(MDI系イソシアネートとアミンとの反応物)とした比較例2では、現像ローラ1の表面のトナー担持層4の表面粗さRzで4.0μm、電気抵抗値が1×10Ωに調整されているものの印字耐久性が劣り、印刷試験機による印刷画像は、印字枚数が15,000枚目になる前に黒ベタ印刷で筋が確認されてしまった(印字耐久性×)。
【0066】
また、実施例1の導電性弾性層3のカーボンブラック配合量及び仕上げ研磨条件を変更した比較例3〜比較例5の現像ローラ1は、印字耐久性は良好であったが、印字濃度に影響し、良好な画像を得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の実施の形態に係る現像ローラの横断面図である。
【図2】この発明に係る画像形成装置の一実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1 現像ローラ
2 導電性軸体
3 導電性弾性層
4 トナー担持層
5 トナー供給ローラ
6 潜像担持体
7 トナー
8 層形成部材
9 転写部
10 クリーニング部
11 クリーニングブレード
12 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体と、前記導電性軸体の外側に位置する導電性弾性層と、前記導電性弾性層の外周部に設けたトナー担持層とを有する現像ローラにおいて、前記トナー担持層はポリウレア化合物とポリウレタン化合物との反応物を含有するものであることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
前記反応物は、MDI系イソシアネート、エーテル系ポリオール、及びアミンの反応により生成したものであることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記反応物は、予めMDI系イソシアネートとエーテル系ポリオールとを予備反応してプレポリマーを形成させた後、アミンと反応したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記トナー担持層表面のJIS(B0601)十点平均粗さ(Rz)は2〜15μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記導電性軸体と前記トナー担持層の表面との間の電気抵抗値が、DC100Vで1×10〜10Ωであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の現像ローラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の現像ローラのトナー担持層の表面にトナーを担持して前記トナーの薄膜を形成した後、前記トナーを潜像担持体の表面に付着させ、前記潜像担持体の表面に可視画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−225832(P2007−225832A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46128(P2006−46128)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】