説明

現像ロール

【課題】トナーに対するストレスを低減することができ、かつ、トナー搬送性を均一にすることができる現像ロールを提供する。
【解決手段】軸体1と、この軸体の外周面に形成された弾性層2と、この弾性層の外周に直接または他の層を介して形成された円筒状の最外層3とを有する現像ロールであって、上記最外層3の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で多数の凹部Aが分布形成されて粗面が形成され、上記凹部Aが形成されていない最外層3の外周面部分Bは、円筒状の残部を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンター等の電子写真機器類に用いられる現像ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンター等の電子写真機器類では、近年、複写やプリントの高速化の要請から、使用されるトナーは、早期に定着する必要があり、低融点化してきている。また、複写やプリントの高画質化の要請から、トナーは小径化し、さらに、複写画像やプリント画像の長寿命化の要請から、トナーは高帯電性のものが使用されてきている。このようなトナーは、ストレスに対して抵抗力が弱いため、最近では、トナーに対するストレスを緩和するため、現像ロールは、ソフトタイプが主流となってきている。
【0003】
上記ソフトタイプの現像ロールは、一般に、軸体の外周面に、ゴム等からなる弾性層が形成され、さらにその弾性層の外周面にコート層(最外層)が形成されており(例えば、特許文献1参照)、このコート層に、層形成部材と相俟ってトナーを均一に層形成させる機能をもたせ、さらに帯電機能,搬送機能等をもたせている。
【0004】
これら各機能のうち、トナーを搬送する機能は、一般に、現像ロールの外周のコート層を粗面化することにより付与される。その粗面化の方法としては、様々であるが、例えば、現像ロールのコート層内にウレタン樹脂等の硬質粒子(砂質粒子)を分散させることにより、コート層の外周面を粗面化する方法が賞用されている。
【特許文献1】特開平10−239985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コート層内に硬質粒子を分散させると、その硬質粒子により、表面硬度が高くなり、トナーにストレスを与えてしまう。このため、トナーが劣化し易くなる。上記ストレスに対する抵抗力が小さいトナーは、より劣化し易くなる。
【0006】
また、硬質粒子を分散させて形成された粗面は、通常、硬質粒子の部分が凸部、硬質粒子が存在しない部分が凹部に形成された凹凸粗面になるため、硬質粒子の添加量および分散密度等の管理を厳正に行わなければ、凸部の高さや凹部の深さがばらつき、コート層の外周面の表面粗さのばらつきが大きくなり易い。しかも、硬質粒子の凝集による表面粗さの経時的変化が起こり、長期にわたって均一な表面粗さを維持することが困難になっている。これらのため、硬質粒子により外周面を粗面化した現像ロールは、トナー搬送性が不均一になり易く、画質に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、トナーに対するストレスを低減することができ、かつ、トナー搬送性を均一にすることができる現像ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の現像ロールは、軸体と、この軸体の外周面に形成された弾性層と、この弾性層の外周に直接もしくは他の層を介して形成された円筒状の最外層とを有する現像ロールであって、上記最外層の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で多数の凹部が分布形成されて粗面が形成されているという構成をとるものを第1の要旨とし、軸体と、この軸体の外周面に形成された弾性層または、この弾性層の外周に直接もしくは他の層を介して形成された円筒状の最外層とを有する現像ロールであって、上記弾性層の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で多数の凹部が分布形成され、その凹部により、現像ロールの外周表面が粗面に形成されているという構成をとるものを第2の要旨とする。
【0009】
すなわち、本発明の現像ロールは、円筒状の弾性層または最外層の外周面に、多数の凹部を分布させることにより、現像ロールの外周表面が粗面に形成されており、上記粗面形成には硬質粒子を用いていない。このため、表面硬度を低く維持することができ、トナーに対するストレスを低減することができる。しかも、硬質粒子の凝集が起こらないため、表面粗さの経時的変化が起こらず、長期にわたって表面粗さを一定に維持することができる。また、上記凹部の形成は、その凹部の分布密度や凹部の大きさ等の制御が比較的簡単にできるため、現像ロールの外周面における表面粗さを比較的簡単に制御することができる。そして、その表面粗さのばらつきを小さくすることが比較的簡単にでき、トナー搬送性を均一にすることができる。さらに、上記粗面は、凹部の開口縁部が相互に重なり合わないように形成されており、凹部が形成されていない外周面部分は、円筒状の残部を形成している。そして、本発明の現像ロールと圧接する層形成ブレード,感光ドラム等に対しては、それぞれの圧接が、上記凹部が形成されていない外周面部分(円筒状の残部)で行われる。このため、その圧接は、軸方向一端縁から他端縁までいわば面接触するようになり、圧接圧力のばらつきを小さくすることができる(硬質粒子の分散による粗面では、その粗面を形成する複数の凸部の頂部の高さがばらつき、高い頂部のところが上記感光ドラム等と点接触する)。これにより、濃度むら,画像すじ,画像荒れ等のない良質の画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の現像ロールは、円筒状の弾性層または最外層の外周面に多数の凹部が分布形成されて外周表面が粗面に形成され、硬質粒子を用いていないため、トナーに対するストレスを低減することができ、しかも、硬質粒子の凝集等が生じず、表面粗さのばらつきを小さくしてトナー搬送性を均一化することができる。さらに、上記粗面は、凹部の開口縁部が相互に重なり合わないように形成されており、その凹部が形成されていない外周面部分は、円筒状の残部を形成しているため、層形成ブレード,感光ドラム等とそれぞれ略均一にいわば面接触状態で圧接することができ、良質の画像を得ることができる。
【0011】
また、弾性層と最外層との間に、レーザ反射層が形成されている場合には、そのレーザ反射層よりも外側の層(最外層等)にのみ、レーザエッチングにより、凹部を形成することができる。
【0012】
特に、各凹部の開口径が20〜200μmの範囲、各凹部の深さが1.5〜20μmの範囲に設定されている場合には、現像ロールとして好適なトナー搬送性を有するような表面粗さに形成することができ、かぶり現象(用紙等の白地部分に不要トナーが付着して黒点等を生じる現象)の発生を防止することができる。
【0013】
また、凹部が周方向および軸方向に規則的に分布形成されている場合には、現像ロールの表面粗さをより均一にすることができ、トナー搬送性をより均一にすることができる。
【0014】
また、一端から他端まで延びる、凹部を連ねてなる凹部列が、現像ロールの中心軸に対して傾斜している場合には、感光ドラム等の接触部材に対して、現像ロールの回転に伴って、凹部列が一端から他端まで徐々に接触するようになるため、その接触状態が連続的となり、すじむら等の画像不具合をより一層発生し難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。但し、本発明は、これに限定されるわけではない。
【0016】
図1(a),(b)は、本発明の現像ロールの第1の実施の形態を示している。この実施の形態の現像ロールは、円柱状の軸体1と、この軸体1の外周面に形成された円筒状の弾性層2と、この弾性層2の外周面に形成された円筒状の最外層3とから構成されている。通常、上記円筒状の最外層3は、横断面(軸に直交する面)が真円状に形成される。そして、上記最外層3の外周面には、多数の凹部(ディンプル)Aが、相互に開口縁部が重なり合わない状態で、分布形成されており、それにより、その外周面が粗面に形成されている。そして、上記凹部Aが形成されていない外周面部分Bは、円筒状の残部を形成している。
【0017】
より詳しく説明すると、上記各凹部Aの形状は、形成容易性の観点から、開口形状が略円形であり、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(例えば、半球面状)であることが好ましい。また、上記各凹部Aの大きさは、現像ロールとして好適なトナー搬送性を有するような表面粗さにできる観点から、各凹部Aの開口径Dが20〜200μmの範囲、各凹部Aの深さFが1.5〜20μmの範囲に設定されていることが好ましく、より好ましくは、各凹部Aの開口径Dが50〜120μmの範囲、各凹部Aの深さFが3〜10μmの範囲である。ここで、「各凹部Aの開口径D」は、現像ロールの外周面を電子顕微鏡で見て、凹部Aの開口径Dを任意の10個所で測定し、それらの平均値で表される。また、「各凹部Aの深さF」は、現像ロールを厚み方向に切断し、その断面を電子顕微鏡で見て、凹部Aの深さFを任意の10個所で測定し、それらの平均値で表される。ただし、上記開口部は円に限定されるものではなく、楕円,四角形,ひし形でもよく、本発明における「疑似円」とは、それらを含む意味である。
【0018】
さらに、凹部Aの開口縁部は、相互に重なり合わないように形成されており、隣り合う凹部Aの開口縁間の距離Eは、現像ロールとして好適な表面粗さにする観点から、0〜50μmの範囲に設定されていることが好ましく、より好ましくは0〜10μmの範囲である。「隣り合う凹部Aの開口縁間の距離E」は、現像ロールの外周面を電子顕微鏡で見て、任意の10個所の開口縁間を測定し、それらの平均値で表される。
【0019】
また、現像ロールの表面粗さを外周全面にわたって均一にする観点から、凹部Aの分布形成は、周方向および軸方向に規則的になされていることが好ましい。例えば、凹部Aの形成ピッチを周方向で一定にしたり、軸方向で一定にしたりする。
【0020】
また、凹部Aの分布は、特に限定されるものではなく、凹部Aを軸方向に連ねてなる凹部列が軸に対して傾斜して形成されていてもよい。また、一の凹部列の凹部Aの一部が、隣り合う他の凹部列の凹部Aと凹部Aとの間に入り込んだ状態になって凹部Aの密度を高めるようにしてもよい。
【0021】
例えば、上記凹部列を軸に対して傾斜させる場合は、つぎのようにして、その傾斜角度を設定する。すなわち、図2に示すように、第1凹部列L1上で隣り合う凹部A0,A1間の中心間距離をaとし、そのうちの一つの凹部A0と、その凹部A0に最も近い、上記第1凹部列L1に周方向で隣り合う第2凹部列L2上の凹部A2との中心間距離をbとし、これら中心間距離a,bをそれぞれ有する各直線のなす角度をαとし、上記第1凹部列L1および第2凹部列L2を、第1凹部列L1の一つの凹部A0を中心に角度θだけ傾斜させたとすると、その傾斜により移動した2つの凹部A1,A2の、元の(傾斜前の)第1凹部列L1からの各距離〔a・sinθとb・sin(α+θ)〕が等しくなった〔下記式(1)参照〕とき、再度、軸と平行な凹部列(2つの凹部A1,A2を連ねてなる凹部列)が形成される。したがって、その再度平行な凹部列が形成される角度θ〔下記式(2)参照〕未満であると、凹部列は、一端から他端まで、現像ロールの中心軸に対して傾斜した状態となる。
【0022】
すなわち、下記式(1)をθについて求めると、下記式(2)になる。例えば、a=b=55μm,α=90°とすると(凹部が軸方向にも周方向にも等ピッチで形成されている場合)、θ=45°となり、傾斜角度を45°未満に設定するとよいことになる。
【0023】
【数1】

【0024】
【数2】

【0025】
このように凹部列を現像ロールの中心軸に対して傾斜させると、感光ドラム等の接触部材に対して、現像ロールの回転に伴って、凹部列が一端から他端まで徐々に接触するようになるため、その接触状態が連続的となり、すじむら等の画像不具合をより一層発生し難くすることができる。実際、上記a=b=55μm(凹部の開口軽50μm),α=90°,傾斜角度0°の現像ロールと、その傾斜角度を0.1°,22.5°,45°にした現像ロールとをそれぞれ実機に組み込み比較すると、傾斜角度が0°と45°の現像ロールを用いた場合は、画像にすじむらが僅かに確認されたが、傾斜角度が0.1°と22.5°の現像ロールを用いた場合は、すじむらが確認されなかった。a=b=220μm(凹部の開口軽200μm)の現像ロールについても、上記と同様の結果だった。
【0026】
このような現像ロールの作製は、上記最外層3を形成した後に、上記凹部Aを形成することにより行われる。その凹部Aの形成方法としては、電鋳法により作製される転写用型を用いる方法,現像ロールに直接レーザエッチング等のレーザ加工する方法,機械加工で表面に凸部を形成した転写板を熱して押し当てて凹部Aを形成する方法,フォトレジスト材料を用いて光を当てることで任意の微細形状を得る方法等があげられる。例えば、レーザ加工の場合、チタン粒子の添加した反射層を加工する層の下層に配し、レーザを反射させて、凹部を形成したい層にのみ、凹部を設けることも可能である。
【0027】
上記現像ロールの製法の一例について、より詳しく説明する。まず、上記最外層3の外周面に対してレーザエッチングを行う方法は、つぎのようにして行われる。まず、軸体1の外周面に、必要に応じて接着剤等を塗布し、これを成形用金型の中空部に同軸的に設置し、密封した後、弾性層2の形成材料を注入して成形する。ついで、オーブン加硫等により加硫し、上記弾性層2(通常、厚み0.5〜5mm程度)を形成する。このとき用いる上記成形用金型としては、その型面(内周面)が研磨等により鏡面〔十点平均粗さ(Rz)が2μm以下〕になっていることが好ましい。これにより、上記弾性層2の外周面が鏡面に形成される。そして、脱型後、ロールコーティング法,スプレーコーティング法,ディッピング法等により、弾性層2の外周面に、上記最外層3の形成材料を塗布した後、乾燥(硬化)させ、上記最外層3(通常、厚み3〜50μm程度)を形成する。この最外層3の外周面は、上記弾性層2の外周面が鏡面に形成されることにより、平滑面に形成される。このようにして、ロール体を得る。
【0028】
そして、最外層3の外周面の凹部Aを上記レーザエッチング等により形成する。レーザエッチングにより形成する場合は、レーザ光をレンズ系により微小な点状に収束させ、最外層3の外周面にレーザ光密度の高い点状部分を形成することにより、微小な上記凹部Aを形成することができる。例えば、上記レンズ系を上記ロール体の軸方向に沿って直線状に複数個配置し、上記レーザ光が点状に収束した点状部分を、最外層3の外周面に、軸方向に沿って一端縁から他端縁まで直線状に多数点在させるようにすると、それら点在部分を一度に上記凹部Aに形成することができる。さらに、上記ロール体を断続的に軸周りに回転させ、その回転に同調させて断続的にレーザ光を照射すると、上記最外層3の外周面に多数の凹部Aを分布形成することができる。この凹部Aの形成において、レンズ系を調節することにより、レーザ光が点状に収束した点状部分を一定ピッチになるようにし、さらに、ロール体の断続的回転を一定角度になるようにすると、凹部Aを周方向および軸方向に規則的に分布形成させることができる。また、形成される凹部Aの大きさは、レーザ光の出力,照射時間等を調節することにより、設定することができる。上記凹部Aを形成した後、必要に応じて、最外層3の外周面を研磨する。このようにして、上記現像ロールを作製することができる。なお、上記レーザ光としては、通常、Nd−YAGレーザまたはエキシマレーザを用いる。また、上記凹部Aの形成は、1個のレーザ光をロール体の軸方向に走査させ、その走査の過程でレーザ光の照射を断続させるようにしてもよい。
【0029】
また、上記凹部Aの形成において、凹部Aの分布密度は、レーザエッチングにおけるレンズ系の調節やロール体の断続回転の調節等により比較的簡単に制御することができる。また、凹部Aの大きさも、レーザ光の出力,照射時間等の調節により比較的簡単に制御することができる。このように、凹部Aの形成は比較的簡単に制御することができるため、現像ロールの外周面における表面粗さの制御も比較的簡単にできる。そして、その表面粗さのばらつきを小さくすることが比較的簡単にでき、トナー搬送性を均一にすることができる。特に、上記レンズ系の調節やロール体の断続回転の調節等により、凹部Aを周方向および軸方向に規則的に分布形成させることも比較的簡単にでき、この場合は、現像ロールの表面粗さをより均一にすることができ、トナー搬送性をより均一にすることができる。
【0030】
現像ロールの製法の他の例として、最外層3の外周面の凹部Aを転写用型の転写により形成する方法は、その転写用型として、例えば、円筒状に形成され、その内周面に、上記凹部Aに対応する形状の凸部が多数分布形成され、軸方向に沿った分割面により2分割可能なものが用いられる。そして、上記ロール体の最外層3の外周面と転写用型の内周面とが当接するように、上記ロール体を転写用型で挟持し、その状態で加熱することにより、最外層3の外周面に転写用型の凸部を転写し、上記凹部Aを形成することができる。上記凹部Aを形成した後、必要に応じて、最外層3の外周面を研磨する。このようにしても、上記現像ロールを作製することができる。
【0031】
上記転写用型は、例えば、電鋳法により作製することができる。すなわち、まず、目的とする現像ロールと同径のアルミニウム製円柱体を準備する。ついで、上記最外層3の外周面に凹部Aを形成したレーザエッチングと同様にして、上記アルミニウム製円柱体の外周面にレーザエッチングを施し、凹部を形成する。この凹部は、最外層3の外周面に形成する凹部Aと同形状に形成する。つぎに、これを原型として、めっき液に浸漬し、電解めっきを行い、上記原型の表面にニッケル等のめっき層(通常、2〜7mm)を形成する。その後、めっき液から取り出し、洗浄,乾燥等を行う。そして、上記めっき層を軸方向に沿って2個所(中心軸に対して対称な位置の2個所)で切断して2つに分割し、各分割片を上記原型から脱型する。これにより、上記2つの分割片からなる転写用型を得ることができる。この転写用型の内周面には、上記原型(外周面に凹部が形成されたアルミニウム製円柱体)の外周面が転写されており、上記原型の外周面に形成された凹部に対応する凸部が形成されている。このように、上記原型の外周面が転写用型の内周面に転写され、この転写用型の内周面が現像ロールの最外層3の外周面に転写されるため、転写後の最外層3において、凹部Aが形成されていない外周面部分Bが平滑になるよう、準備するアルミニウム製円柱体は、外周面が研磨等により鏡面〔十点平均粗さ(Rz)が2μm以下〕になっていることが好ましい。
【0032】
現像ロールの製法のさらに他の例として、最外層3の外周面の凹部Aを、凸部を形成した転写板を熱して押し当てて形成する方法は、その熱した転写板にロール体を押し当てて、転写板の凸部を最外層3の外周面に転写させる。上記転写板は、金属板にレーザ加工もしくは機械加工により、均一な凸形状を形成することにより得られる。また、上記転写を、最外層3の形成材料を弾性層2の外周面に塗布した後、200℃に熱した上記転写板に押し当てることで架橋と転写とを同時に行うこともできる。
【0033】
このようにして得られた現像ロールは、外周面の粗面形成を、硬質粒子を用いることなく、最外層3の外周面に多数の凹部Aを分布形成することにより行っているため、表面硬度を低く維持することができ、トナーに対するストレスを低減することができる。しかも、硬質粒子の凝集が起こらないため、表面粗さの経時的変化が起こらず、長期にわたって表面粗さを一定に維持することができる。また、この現像ロールは、トナーの離脱性,耐久性を向上させるために、必要に応じて塩素系の表面処理を行ってもよい。
【0034】
そして、上記粗面は、凹部Aの開口縁部が相互に重なり合わないように形成されており、凹部Aが形成されていない外周面部分(円筒状の残部)Bは、元の表面状態(凹部Aを形成する前の表面状態)を維持し、粗面化されていない。そして、本発明の現像ロールと圧接する層形成ブレード,感光ドラム等に対しては、上記凹部Aが形成されていない外周面部分(円筒状の残部)Bで圧接される。このため、その圧接は、軸方向一端縁から他端縁までいわば面接触するようになり、圧接圧力のばらつきを小さくすることができる。これにより、濃度むら,画像すじ,画像荒れ等のない良質の画像を得ることができる。例えば、層形成ブレードに対する圧接では、略均一な圧接圧力となり、現像ロールの外周面に均一な厚みのトナー層を形成することができるようになり、その結果、良質の複写画像を得ることができる。また、凹部Aの開口縁部は、圧接圧力のばらつきに影響を与えない程度であれば、一部分でも重なっていてもよい。
【0035】
つぎに、本発明の現像ロールの第2の実施の形態について説明する。この実施の形態の現像ロールは、図3に示すように、円柱状の軸体1と、この軸体1の外周面に形成された円筒状の弾性層2とから構成されている。そして、上記弾性層2の外周面には、多数の凹部(ディンプル)Aが、相互に開口縁部が重なり合わない状態で、分布形成されており、それにより、その外周面が粗面に形成されている。そして、上記凹部Aが形成されていない外周面部分Bは、円筒状の残部を形成している。上記凹部Aは、上記第1の実施の形態と同様にして、形成することができる。また、電鋳法により得た転写用型を弾性層2の成形用型として用いても上記凹部Aを形成することができる。そして、この第2の実施の形態の現像ロールも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0036】
つぎに、本発明の現像ロールの第3の実施の形態について説明する。この実施の形態の現像ロールは、図4に示すように、上記第2の実施の形態の弾性層2の外周面に、上記第1の実施の形態と同様にして最外層3を形成したものである。そして、弾性層2の外周面に形成した凹部の凹形状を最外層3の表面(現像ロールの外周表面)に現し、最外層3の表面を粗面に形成している。そして、この第3の実施の形態の現像ロールも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0037】
つぎに、本発明の現像ロールの第4の実施の形態について説明する。この実施の形態の現像ロールは、図5に示すように、弾性層2と最外層3との間に、中間層としてレーザ反射層4を形成したものである。このレーザ反射層4は、レーザエッチングにより最外層3の外周面に凹部Aを形成する際に、レーザを反射し、最外層3にのみ凹部Aを形成するようにしたものである。この場合、レーザエッチングにおいて、レーザがレーザ反射層4に達すると、レーザ反射層4はエッチングされず、形成される凹部Aの底は、レーザ反射層4の外周面が現れたものとなる。このことから、上記レーザ反射層4を形成することにより、凹部Aの深さを制御することができる。そして、この第4の実施の形態の現像ロールも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0038】
この第4の実施の形態において、上記レーザ反射層4は、後で説明する中間層の形成材料に、酸化チタン,硫酸バリウム,酸化亜鉛等の白色材料のうち少なくとも一つを混合した材料を用いることにより得られる。この酸化チタン等の混合割合は、レーザを効率よく反射させる観点から、中間層の主材料(ゴム等)100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内とすることが好ましい。また、その際のレーザの波長は、500〜1500nmの範囲内とすることが好ましい。
【0039】
つぎに、本発明の現像ロールの第5の実施の形態について説明する。この実施の形態の現像ロールは、上記第2の実施の形態(図3参照)の弾性層2の外周面に、トナーに対する離型性を高めた表面処理を施したものである。これにより、耐久時(長時間連続使用時)における現像ロール表面へのトナー付着による画像劣化を軽減することができる。さらに、この第5の実施の形態の現像ロールも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0040】
この第5の実施の形態において、上記表面処理としては、イソシアネート処理,シロキサン処理,フッ化物処理,塩素処理,UV処理,プラズマ処理,コロナ処理等があげられる。
【0041】
つぎに、本発明の現像ロールの第6の実施の形態について説明する。この実施の形態の現像ロールは、上記第1の実施の形態(図1参照)の最外層3の外周面に、上記第5の実施の形態における表面処理を施したものである。このようにしても、上記第5の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0042】
つぎに、本発明の現像ロールを構成する軸体1,弾性層2,最外層3の形成材料等について説明する。
【0043】
上記軸体1は、特に限定されるものではなく、中実でも中空でもよい。また、上記軸体1の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄,鉄にめっきを施したもの,ステンレス,アルミニウム等があげられる。そして、上記軸体1の表面には、通常、接着剤やプライマー等が塗布される。さらに、上記接着剤やプライマー等は、必要に応じて、導電化してもよい。
【0044】
上記弾性層2の形成材料としては、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系エラストマー,エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM),スチレン−ブタジエンゴム(SBR),シリコーンゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR),クロロプレンゴム(CR)等があげられる。なかでも、低硬度でへたりが少ないという点から、導電性シリコーンゴムを用いることが好ましい。また、必要に応じて、シリコーンオイル,加硫剤,加硫促進剤,滑剤,助剤等を適宜に添加してもよい。そして、上記弾性層2の厚みは、特に限定されないが、通常、0.5〜5mm程度に設定される。
【0045】
上記最外層3の形成材料としては、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン樹脂,ポリアミド樹脂,アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂(PVB),アルキッド樹脂,ポリエステル樹脂,フッ素ゴム,フッ素樹脂,フッ素ゴムとフッ素樹脂の混合物,シリコーン樹脂,シリコーングラフトアクリルポリマー,アクリルグラフトシリコーンポリマー,ニトリルゴム,ウレタンゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、耐摩耗性の点で、ウレタン樹脂が好ましい。
【0046】
なお、場合により、弾性層2と最外層3との間には、中間層を形成してもよい。この中間層の形成材料としては、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(水素化ニトリルゴム:H−NBR),アクリロニトリル−ブタジエンゴム(ニトリルゴム:NBR),ポリウレタン系エラストマー,クロロプレンゴム(CR),天然ゴム,ブタジエンゴム(BR),アクリルゴム(ACM),イソプレンゴム(IR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR),ヒドリンゴム(ECO,CO),ウレタンゴム,フッ素ゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、接着性およびコーティング液の安定性の点から、H−NBR,ポリウレタン系エラストマーが特に好ましい。
【0047】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0048】
下記のように、軸体,各層の形成材料,電鋳法により作製した転写用型を用いて、軸体の外周面に弾性層を成形してロール体を作製した後、最外層を形成し、現像ロールを作製した。
【0049】
〔軸体〕
外径8mm、長さ350mmの鉄製の中実円柱状の軸体を準備した。
【0050】
〔弾性層の形成材料〕
導電性シリコーンゴム(X34−270A/B、信越化学工業社製)をニーダーにより混練して弾性層2の形成材料を調製した。
【0051】
〔最外層の形成材料〕
ポリカーボネートジオール系ウレタン樹脂(ニッポラン5196、日本ポリウレタン社製)100重量部に対して、カーボンブラック(デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)40重量部の割合で用い、ボールミルにより混練した後、MEK400重量部を加えて混合,攪拌して最外層の形成材料を調製した。
【0052】
〔転写用型の作製〕
上記実施の形態と同様にして、弾性層の外径と同径のアルミニウム製円柱体を準備し、そのアルミニウム製円柱体に、レーザエッチングを施すことにより、多数の凹部を分布形成した。このときの上記レーザエッチングの条件は、レーザ光の種類:Nd−YAGレーザ、出力:50Wとし、アルミニウム製円柱体を出力:35A、周波数:5kHz、照射スピード:1030mm/秒にて回転させながら、幅50mmずつアルミニウム製円柱体の外周面にレーザを照射した。このようにしてアルミマスターロールを得、それを用いて電鋳法により転写用型を作製した。
【0053】
〔ロール体の作製〕
上記転写用型を用いて成形(190℃×30分間)することにより、軸体の外周面に弾性層(厚み4mm、長さ240mm)を形成した。これにより、弾性層の外周面に、多数の凹部を分布形成した。この凹部は、開口縁部が相互に重なり合っていず、周方向および軸方向に一定のピッチ(周方向に隣り合う凹部の開口縁間の距離および軸方向に隣り合う凹部の開口縁間の距離をいずれも5μm)とした。
【0054】
〔現像ロールの作製〕
上記弾性層の外周面に、最外層の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、乾燥(硬化)させ、最外層(厚み5μm)を形成した。これにより、現像ロールを得た。この現像ロールの最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。なお、この十点平均粗さ(Rz)の測定は、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコム1400D)を用いた。また、最外層形成後の各凹部の形状は、開口形状が略円形(開口径200μm)であり、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(凹部の深さ5μm)であった。
【実施例2】
【0055】
上記実施例1において、アルミニウム製円柱体の凹部形成条件を、出力:28A、周波数:5kHz、照射スピード:625mm/秒にすることにより、最外層の外周面における凹部の開口径を120μmとした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【実施例3】
【0056】
上記実施例1において、アルミニウム製円柱体の凹部形成条件を、出力:24.5A、周波数:5kHz、照射スピード:425mm/秒にすることにより、最外層の外周面における凹部の開口径を80μmとした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【実施例4】
【0057】
上記実施例2において、アルミニウム製円柱体の凹部形成条件を、出力:28A、周波数:5.9kHz、照射スピード:741mm/秒にすることにより、最外層の外周面における凹部の深さを1.5μmとした。それ以外は、上記実施例2と同様にした。
【実施例5】
【0058】
上記実施例2において、アルミニウム製円柱体の凹部形成条件を、出力:28A、周波数:3.7kHz、照射スピード:460mm/秒にすることにより、最外層の外周面における凹部の深さを10μmとした。それ以外は、上記実施例2と同様にした。
【実施例6】
【0059】
上記実施例2において、アルミニウム製円柱体の凹部形成条件を、出力:28A、周波数:1kHz、照射スピード:120mm/秒にすることにより、最外層の外周面における凹部の深さを20μmとした。それ以外は、上記実施例2と同様にした。
【実施例7】
【0060】
上記実施例2において、アルミニウム製円柱体上に♯400ステンレス製金網(穴径約30μm)を設置し、その上からレーザエッチングを施した。また、アルミニウム製円柱体の凹部形成条件を、出力:24.5A、周波数:1kHz、照射スピード:100mm/秒にすることにより、最外層の外周面における凹部の開口径を20μmとした。それ以外は、上記実施例2と同様にした(ただし、最外層の厚みは20μmとし、周方向に隣り合う凹部の開口縁間の距離は20μmとした)。
【実施例8】
【0061】
下記のように、軸体,弾性層,最外層からなるロール体を作製した後、そのロール体の外周面をレーザエッチングにより粗面に形成し、現像ロールを作製した。なお、軸体ならびに弾性層および最外層の形成材料は、実施例1と同様のものを用いた。
【0062】
〔ロール体の作製〕
上記実施の形態と同様にして、円筒状金型を用いて成形(190℃×30分間)することにより、軸体の外周面に弾性層(厚み4mm、長さ240mm)を形成した。そして、その弾性層の外周面に、最外層の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、乾燥(硬化)させ、最外層(厚み10μm)を形成した。これにより、ロール体を得た。このロール体の最外層の外周面の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【0063】
〔現像ロールの作製〕
上記ロール体の外周面(最外層の外周面)に、レーザエッチングを施すことにより、多数の凹部を分布形成した。この凹部形成は、凹部の開口縁部が相互に重なり合わないように行うとともに、周方向および軸方向に一定のピッチ(周方向に隣り合う凹部の開口縁間の距離および軸方向に隣り合う凹部の開口縁間の距離をいずれも5μm)になるように行った。また、各凹部の形状は、開口形状を略円形(開口径200μm)とし、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(凹部の深さ5μm)とした。なお、このときの上記レーザエッチングの条件は、レーザ光の種類:Nd−YAGレーザ、出力:25A、周波数:30kHz、照射スピード:3700mm/秒とした。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【実施例9】
【0064】
上記実施例8において、レーザエッチングの条件を、出力:30A、周波数:30kHz、照射スピード:2000mm/秒にすることにより、最外層の外周面に形成する凹部の開口径を120μm、凹部の深さを5μmとした。それ以外は、上記実施例8と同様にした。
【実施例10】
【0065】
上記実施例8において、レーザエッチングの条件を、出力:22A、周波数:30kHz、照射スピード:2500mm/秒にすることにより、最外層の外周面に形成する凹部の開口径を80μm、凹部の深さを5μmとした。それ以外は、上記実施例8と同様にした。
【実施例11】
【0066】
機械加工により、表面に、凸部径140μm、高さ7μmに制御された凸部を形成した転写板を作製した。これを200℃に加熱し、上記実施例8と同様にして得られた軸体,弾性層,最外層からなるロール体を、上記転写板に98Nの圧力にて押し当てて回転させることにより、最外層の外周面に、開口径200μm、深さ5μmの凹部を形成した。
【実施例12】
【0067】
上記実施例11において、転写板表面の凸部を、凸部径220μm、高さ7μmとした。そして、上記実施例11と同様にして最外層の外周面に凹部を作製し、その凹部の開口径を120μm、凹部の深さを5μmとした。それ以外は、上記実施例11と同様にした。
【実施例13】
【0068】
上記実施例11において、転写板表面の凸部を、凸部径90μm、高さ7μmとした。そして、上記実施例11と同様にして最外層の外周面に凹部を作製し、その凹部の開口径を80μm、凹部の深さを5μmとした。それ以外は、上記実施例11と同様にした。
【実施例14】
【0069】
軸体,弾性層からなる現像ロールを作製した。すなわち、上記実施例2において、アルミニウム製円柱体の凹部形成条件を、出力:27A、周波数:5kHz、照射スピード:625mm/秒にすることにより、弾性層の外周面に形成する凹部の開口径を120μm、凹部の深さを5μmとした。それ以外は、上記実施例2と同様にした。
【実施例15】
【0070】
軸体,弾性層からなる現像ロールを作製した。すなわち、上記実施例8と同様にして、弾性層を形成した後、この弾性層の外周面をレーザエッチングにより粗面に形成した。レーザエッチングの条件は、出力:25A、周波数:30kHz、照射スピード:3700mm/秒とすることにより、弾性層の外周面に形成する凹部の開口径を120μm、凹部の深さを5μmとした。それ以外は、上記実施例8と同様にした。
【実施例16】
【0071】
軸体,弾性層,中間層,最外層からなる現像ロールを作製した。軸体ならびに弾性層および最外層の形成材料は、実施例1と同様のものを用い、中間層は、下記の形成材料を用いた。また、弾性層は、実施例2と同様にして、転写用型を用いて成形することにより、軸体の外周面に形成した。これにより、弾性層の外周面に多数の凹部が分布形成されたロール体を作製した。さらに、その弾性層の外周面に、下記の中間層の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、架橋(180℃×60分間)させ、中間層(厚み10μm)を形成した。そして、その中間層の外周面に、実施例1と同様にして、最外層(厚み5μm)を形成し、現像ロールを作製した。最外層の外周面における凹部の開口径は120μm、凹部の深さは5μmとした。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0072】
〔中間層の形成材料〕
H−NBR(アクリロニトリル量:50重量%、ヨウ素価:23mg/100mg)100重量部に対して、ステアリン酸0.5重量部、亜鉛華(ZnO)5重量部、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤(BZ)1重量部、スルファンアミド系架橋促進剤(CZ)2重量部、硫黄1重量部の割合で配合し、ロールを用いて混練した後、MEKとトルエンの混合有機溶剤〔MEKとトルエン(重量比)=2:1 〕を加えて混合,攪拌して20重量%の中間層の形成材料を調製した。
【実施例17】
【0073】
下記のように、上記軸体,各層の形成材料等を用いて3層構造のロール体を作製した後、そのロール体の外周面(最外層の外周面)をレーザエッチングにより粗面に形成し、現像ロールを作製した。このときのレーザエッチングの条件は、上記実施例8において、出力:25A、周波数:30kHz、照射スピード:1800mm/秒とした。これにより、最外層の外周面に形成する凹部の開口径を120μm、凹部の深さを5μmとした。それ以外は、上記実施例8と同様にした。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【0074】
〔ロール体の作製〕
円筒状金型を用いて成形(170℃×30分間)することにより、軸体の外周面に弾性層(厚み3mm)を形成した。そして、その弾性層の外周面に、中間層の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、架橋(180℃×60分間)させ、中間層(厚み10μm)を形成した。そして、その中間層の外周面に、最外層の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、乾燥(硬化)させ、最外層(厚み10μm)を形成した。これにより、ロール体を得た。このロール体の最外層の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【実施例18】
【0075】
実施例17と同様にして3層構造のロール体を作製した後、そのロール体の外周面を、熱した転写板に押し当てて転がし、現像ロールを作製した。
【0076】
〔転写板の作製〕
アルミニウム製板を準備し、そのアルミニウム製板(230mm×50mm)に、レーザエッチングを施すことにより、多数の凹部を分布形成した。このときの上記レーザエッチングの条件は、レーザ光の種類:Nd−YAGレーザ、出力:28A、周波数:5kHz、照射スピード:625mm/秒とした。これにより、アルミマスター板を得、それを用いて電鋳法により転写板を作製した。この転写板の表面には、均一な凸形状が分布形成されていた。
【0077】
〔現像ロールの作製〕
上記転写板を200℃に熱し、その表面に、上記ロール体を98Nの荷重で均等に押し当てて転がし、転写板の凸部を最外層の外周面に転写させた。この凹部形成は、凹部の開口縁部が相互に重なり合わないように行うとともに、周方向および軸方向に一定のピッチ(周方向に隣り合う凹部の開口縁間の距離および軸方向に隣り合う凹部の開口縁間の距離をいずれも5μm)になるように行った。また、各凹部の形状は、開口形状を略円形(開口径120μm)とし、凹面形状が略球面の一部からなる曲面状(凹部の深さ5μm)とした。また、最外層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【実施例19】
【0078】
実施例17において、中間層をレーザ反射層とした。すなわち、中間層の形成材料として、実施例17の中間層の形成材料に、酸化チタン(ET−300W、石原産業社製)を30重量部(H−NBR100重量部に対して)加えたものを用いた。それ以外は、上記実施例17と同様にした。
【実施例20】
【0079】
実施例16の転写用型、実施例1の軸体および弾性層の形成材料を用いて、軸体の外周面に弾性層を形成することにより、弾性層の外周面に多数の凹部が分布形成されたロール体を作製し、その外周面に、トナー離型性を高める表面処理を施した。すなわち、上記弾性層の外周面に、コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製)を塗布した後、熱処理(160℃×1時間)するという表面処理(イソシアネート処理)を施した。弾性層の外周面における凹部の開口径は120μm、凹部の深さは5μmとした。また、弾性層の外周面のうち凹部が形成されていない部分の十点平均粗さ(Rz)は2.5μmであった。
【0080】
〔比較例1〕
上記実施例8において、最外層の形成材料として、下記のもの(粒子入り)を用いた。また、その最外層に対するレーザエッチングは行わなかった。それ以外は、上記実施例8と同様にした。
【0081】
〔最外層の形成材料〕
上記実施例8における最外層の形成材料に、シリカ製粒子〔サイロスフェアC1510(平均粒径10μm)、冨士シリシア社製〕を混合した。このシリカ製粒子の混合割合は、上記最外層の形成材料のポリカーボネートジオール系ウレタン樹脂100重量部に対して、20重量部とした。
【0082】
〔比較例2〕
上記実施例17において、最外層の形成材料として、上記比較例1と同様のもの(粒子入り)を用いた。また、その最外層に対するレーザエッチングは行わなかった。それ以外は、上記実施例17と同様にした。
【0083】
〔濃度むら〕
このようにして得られた実施例1〜20および比較例1,2の各現像ロールを、市販の実機(レーザーショット LBP−2510,キャノン社製)に組み込み、20℃,50%RHの環境下で、黒べた画像の画像出しを行った。そして、その画像について、濃度むらの有無を目視により行った。その結果、画像むらが全く無いものを○、軽微な画像むらが確認できるものを△と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0084】
〔かぶり現象の有無〕
上記画像出しを、32.5℃,85%RHの環境下で、8000枚行った後、感光ドラム表面の白地部の濃度をマクベス濃度計を用いて測定した。その結果、濃度が0.2未満のものはかぶり現象(上記感光ドラム表面の白地部へのトナー付着)が殆ど発生していないとして○、濃度が0.2以上0.4未満のものは僅かにかぶり現象が発生したとして△、濃度が0.4以上のものは明確なかぶり現象が発生したとして×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0085】
〔画像すじの有無〕
上記8000枚の画像出しを行った後の画像について、画像すじの有無を目視により行った。その結果、画像すじが全く無いものを○、画像すじが部分的に確認できるものを△と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0086】
〔画像荒れ〕
上記8000枚の画像出しを行った後の画像について、画像荒れを目視により行った。その結果、画像荒れが全く無いものを○、画像荒れが微かに確認できるものを△、画像荒れが全面にわたって確認できるものを×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
上記表1〜4の結果から、実施例1〜20の現像ロールでは、かぶり現象が僅かしか発生せず、トナー搬送性が適正であることがわかる。これに対して、比較例1,2の現像ロールでは、明確なかぶり現象が発生し、トナー搬送性が適正でないことがわかる。また、実施例1〜20の現像ロールでは、比較例1と比較して、画像荒れが少ないことから、層形成ブレード,感光ドラム等に対して、より均一な圧力で圧接していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の現像ロールの第1の実施の形態を示し、(a)は、その正面図およびその表面を拡大して模式的に示した説明図であり、(b)は、(a)のX−X断面図である。
【図2】凹部列の傾斜角度を算出する際の説明図である。
【図3】本発明の現像ロールの第2の実施の形態を模式的に示す断面図〔図1(a)のX−X断面に相当する断面図〕である。
【図4】本発明の現像ロールの第3の実施の形態を模式的に示す断面図〔図1(a)のX−X断面に相当する断面図〕である。
【図5】本発明の現像ロールの第4の実施の形態を模式的に示す断面図〔図1(a)のX−X断面に相当する断面図〕である。
【符号の説明】
【0093】
1 軸体
2 弾性層
3 最外層
A 凹部
B 外周面部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、この軸体の外周面に形成された弾性層と、この弾性層の外周に直接もしくは他の層を介して形成された円筒状の最外層とを有する現像ロールであって、上記最外層の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で多数の凹部が分布形成されて粗面が形成されていることを特徴とする現像ロール。
【請求項2】
弾性層と最外層との間に、レーザ反射層が形成されている請求項1記載の現像ロール。
【請求項3】
軸体と、この軸体の外周面に形成された弾性層または、この弾性層の外周に直接もしくは他の層を介して形成された円筒状の最外層とを有する現像ロールであって、上記弾性層の外周面に、相互に開口縁部が重なり合わない状態で多数の凹部が分布形成され、その凹部により、現像ロールの外周表面が粗面に形成されていることを特徴とする現像ロール。
【請求項4】
外周表面に、トナー離型性を高める表面処理が施されている請求項3記載の現像ロール。
【請求項5】
現像ロールの外周表面に現れている各凹部の形状が疑似円であり、その各凹部の開口径が20〜200μmの範囲、各凹部の深さが1.5〜20μmの範囲に設定されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の現像ロール。
【請求項6】
凹部が周方向および軸方向に規則的に分布形成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の現像ロール。
【請求項7】
一端から他端まで延びる、凹部を連ねてなる凹部列が、現像ロールの中心軸に対して傾斜している請求項1〜5のいずれか一項に記載の現像ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−309128(P2006−309128A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323829(P2005−323829)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】