説明

現像ロール

【課題】ベースゴム層の外周部に形成される絶縁層の影響を防止した現像ロールを提供する。
【解決手段】軸体1の外周面に、金型成形によりベースゴム層2が形成され、その金型の型面の転写面となるベースゴム層2の外周面に、レーザエッチングによる多数の凹部Aが、その開口縁部が重なり合った状態で分布形成されて外周面の少なくとも一部が削除され、その削除された部分が元の外周面の表面積の80%以上に設定されている。そして、その外周に最外層3が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンター等の電子写真機器類に用いられる現像ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンター等の電子写真機器に用いられる現像ロールは、通常、図7に示すように、軸体1の外周面にベースゴム層2が形成され、このベースゴム層2の外周に直接もしくは他の層を介して(図7では直接)最外層3が形成されている(例えば、特許文献1参照)。そして、上記ベースゴム層2および最外層3等の抵抗調整を行うことにより、ゴースト(本来印刷すべき画像に前回印刷した画像が残る現象)の発生を抑制している。
【特許文献1】特開平10−239985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ゴーストは、上記のようにしても、依然として発生することがあった。そこで、本発明者らは、そのゴーストの原因について研究を重ねた。その結果、ベースゴム層2の外周面に絶縁層21が形成されており、それが原因となって、現像ロールの表面に電荷が残留し易くなっていることを突き止めた。また、この絶縁層21が形成される原因は、ベースゴム層2を成形する際に、金型の型面に接する外周面から所定の厚みの部分が加硫の熱により加硫が促進されることにあることも突き止めた。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ベースゴム層の外周部に形成される絶縁層の影響を防止した現像ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の現像ロールは、軸体と、この軸体の外周面に金型成形により形成されたベースゴム層と、このベースゴム層の外周に直接もしくは他の層を介して形成された最外層とを有する現像ロールであって、金型の型面の転写面となるベースゴム層の外周面に、レーザエッチングによる多数の凹部が、その開口縁部が重なり合った状態で分布形成されて外周面の少なくとも一部が削除され、その削除された部分が元の外周面の表面積の80%以上に設定されているという構成をとる。
【0006】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づき、さらに研究を重ねてなされたものである。すなわち、本発明は、金型成形によりベースゴム層を形成した後、その金型の型面の転写面以下の所定厚みに形成される絶縁層にレーザエッチングを施し、そのレーザエッチングにより形成される凹部を、その開口縁部が重なり合うよう多数分布形成することにより、上記絶縁層の殆どが削除され、ゴーストの発生が防止されるようになる。このレーザエッチングは、上記金型の型面の転写面(元の外周面)の表面積の80%以上が削除されるよう行うことにより、ゴースト発生が防止されるようになる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の現像ロールは、金型の型面の転写面となるベースゴム層の外周面に、レーザエッチングによる多数の凹部が、その開口縁部が重なり合った状態で分布形成されて外周面の少なくとも一部が削除され、その削除された部分が元の外周面の表面積の80%以上に設定されているため、ベースゴム層の外周部に形成された絶縁層の殆どが、上記レーザエッチングにより削除されている。このため、現像ロールの表面に電荷が殆ど残留しなくなり、その結果、ゴーストを防止することができ、良質の画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。但し、本発明は、これに限定されるわけではない。
【0009】
図1は、本発明の現像ロールの一実施の形態を示している。この実施の形態の現像ロールは、円柱状の軸体1と、この軸体1の外周面に形成されたベースゴム層2と、このベースゴム層2の外周面に形成された最外層3とから構成されている。上記ベースゴム層2は、金型成形により形成されたものであり、この実施の形態では、その金型の型面の転写面となるベースゴム層2の元の外周面全体(元の外周面の表面積の100%)に、レーザエッチングによる凹部Aが、その開口縁部が重なり合った状態で多数分布形成されている。この凹部Aの形成により、ベースゴム層2は、その外周部に形成されていた絶縁層が全体的に削除されたものとなっている。特に、この実施の形態のように、ベースゴム層2の元の外周面(金型の型面の転写面)全体にレーザエッチングが施されると、ベースゴム層2の外周面は、算術平均粗さ(Ra)0.3〜0.5μm程度の粗面に形成される。そして、そのレーザエッチング処理面に、上記最外層3が形成され、その最外層3の算術平均粗さ(Ra)は、0.09〜0.30μm程度の粗面に形成され、現像ロールとして適正な表面粗さに形成される。
【0010】
より詳しく説明すると、レーザエッチングにより形成される、重なり合う前の各凹部の形状は、形成容易性の観点から、各凹部の開口形状が好ましくは円形状に形成され、各凹部の凹面形状が好ましくは球面状の一部からなる曲面(例えば、半球面状)に形成される。そして、そのような各凹部の開口縁部が重なり合うように形成されることにより、上記絶縁層が略均一に削除される。また、重なり合う前の各凹部の開口形状としては、上記円形状に限定されず、楕円状,四角形状等でもよい。
【0011】
重なり合う前の各凹部の寸法形状は、上記絶縁層(厚み1〜3μm程度)を削除する観点から、開口形状を直径110〜140μmの範囲内の円形状とし、凹面形状を深さ2〜10μmの範囲内の球面状の一部とすることが好ましい。そして、各凹部の開口縁部の重なり度合いは、凹部直径の0〜12%の範囲内で重なり合うようにすることが好ましい。ここで、「凹部直径の0%で重なり合う」とは、隣り合う凹部の開口縁部が接した状態を意味する。また、重なり合う前の各凹部の開口形状の形状寸法および凹面形状の形状寸法は、各凹部の形成に用いられるレーザマーカーにおいて、レーザ光の出力,レンズによるレーザ光の収束程度,照射時間等を調節することにより設定される。
【0012】
そして、重なり合った後の各凹部Aの寸法は、直径110μm以上、深さ2μm以上にすることが好ましく、より好ましくは直径110〜125μmの範囲内、深さ2〜8.5μmの範囲内である。また、凹部Aの分布形成は、軸方向および周方向に規則的になされてもよいし、ランダムになされていてもよい。ここで、上記直径は、ベースゴム層2の外周面を電子顕微鏡で見て、各凹部Aの最大径と最小径の平均値をとり、それを任意の10個の凹部Aで測定し、それらの平均値で表される。また、上記深さは、ベースゴム層2を厚み方向に切断し、その断面を電子顕微鏡で見て、凹部Aの深さを任意の10個の凹部Aで測定し、それらの平均値で表される。
【0013】
このような現像ロールの作製は、つぎに説明するように、軸体1の外周面にベースゴム層2を形成した後、レーザエッチングにより上記凹部Aを形成し、その後、最外層3を形成することにより行われる。
【0014】
より詳しく説明すると、まず、軸体1の外周面に、必要に応じて接着剤等を塗布し、これを成形用金型の中空部に同軸的に設置し、密封した後、ベースゴム層2の形成材料を注入して成形する。ついで、オーブン加硫等により加硫し、上記ベースゴム層2(通常、厚み0.5〜5mm程度)を形成した後、脱型する。
【0015】
そして、そのベースゴム層2の外周面(金型の型面の転写面)全体に、レーザエッチングを施す。このレーザエッチングは、レーザ光をレンズ系により微小な点状に収束させ、ベースゴム層2の外周面にレーザ光密度の高い点状部分を形成することにより、その点状部分でベースゴム層2がレーザ光を吸収してアブレーション(溶発)を起こし、その点状部分に微小な上記凹部Aを形成することができる。例えば、上記レンズ系を上記ロール体の軸方向に沿って直線状に複数個配置することにより、上記レーザ光が点状に収束した点状部分を、ベースゴム層2の外周面に、軸方向に沿って一端縁から他端縁まで直線状に多数点在させるようにすると、それら点在部分を一度に上記凹部Aに形成することができる。さらに、上記ロール体を断続的に軸周りに回転させ、その回転に同調させて断続的にレーザ光を照射すると、上記ベースゴム層2の外周面に多数の凹部Aを分布形成することができる。このようなレーザエッチングが可能な装置としては、例えば、ミヤチテクノス社製のFine Marker ML-7110Bがある。
【0016】
この凹部Aの形成において、開口縁部の重なり度合いの設定は、隣接する凹部Aと凹部Aとの開口縁部が相互に重なり合うよう、レンズ系を調節してレーザ光の点状収束部分が所定ピッチになるよう調節するとともに、ロール体の断続的回転が所定角度になるよう調節することにより行われる。また、重なり合う前の各凹部の大きさは、上述したように、レーザ光の出力,レンズによるレーザ光の収束程度,照射時間等を調節することにより行われる。このようにして、上記現像ロールを作製することができる。なお、上記レーザ光としては、通常、Nd−YAGレーザまたはエキシマレーザを用いる。また、上記凹部Aの形成は、1個のレーザ光をロール体の軸方向に走査させ、その走査の過程でレーザ光の照射を断続させるようにしてもよい。
【0017】
ついで、上記レーザエッチングされた、ベースゴム層2の外周面に、最外層3の形成材料を、ロールコーティング法,スプレーコーティング法,ディッピング法等により塗布した後、硬化させて最外層3(通常、厚み3〜30μm程度)を形成する。
【0018】
このような現像ロールは、上記レーザエッチングによる凹部Aの形成により、ベースゴム層2の外周部に形成されていた絶縁層が全体的に削除されているため、実機での使用において、現像ロールの表面に電荷が殆ど残留しなくなり、その結果、ゴースト発生を防止することができ、良質の画像を得ることができる。
【0019】
特に、この実施の形態のように、ベースゴム層2の外周面全体にレーザエッチングが施されると、ベースゴム層2の外周面の表面粗さは比較的小さく〔上記算術平均粗さ(Ra)0.3〜0.5μm程度〕なり、これにより、上記最外層3の外周面の表面粗さも比較的小さく〔上記算術平均粗さ(Ra)0.09〜0.30程度〕なるため、トナーの劣化が抑制される。
【0020】
ここで、本発明の現像ロールを構成する軸体1,ベースゴム層2,最外層3の形成材料等について説明する。
【0021】
上記軸体1は、特に限定されるものではなく、中実でも中空でもよい。また、上記軸体1の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄,鉄にめっきを施したもの,ステンレス,アルミニウム等があげられる。そして、上記軸体1の表面には、通常、接着剤やプライマー等が塗布される。さらに、上記接着剤やプライマー等は、必要に応じて、導電化してもよい。
【0022】
上記ベースゴム層2の形成材料としては、通常、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系エラストマー,エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM),スチレン−ブタジエンゴム(SBR),シリコーンゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR),クロロプレンゴム(CR)等があげられる。なかでも、低硬度でへたりが少ないという観点から、シリコーンゴムを用いることが好ましい。また、必要に応じて、シリコーンオイル,加硫剤,加硫促進剤,滑剤,助剤等を適宜に添加してもよい。
【0023】
上記最外層3の形成材料としては、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン樹脂,ポリアミド樹脂,アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂(PVB),アルキッド樹脂,ポリエステル樹脂,フッ素ゴム,フッ素樹脂,フッ素ゴムとフッ素樹脂の混合物,シリコーン樹脂,シリコーングラフトアクリルポリマー,アクリルグラフトシリコーンポリマー,ニトリルゴム,ウレタンゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、耐摩耗性の観点から、ウレタン樹脂が好ましい。
【0024】
図2は、本発明の現像ロールの他の実施の形態を示している。この実施の形態の現像ロールは、レーザエッチングにより凹部Aが形成される部分が、金型の型面の転写面(ベースゴム層2の元の外周面)2aの表面積の80%以上100%未満となっており、残部は、上記型面の転写面2aのまま残っている。このようにレーザエッチングが施されると、表面粗さが上記実施の形態よりも大きくなり、ベースゴム層2の外周面は、算術平均粗さ(Ra)0.5〜2.0μm程度の粗面に形成され、最外層3の外周面は、算術平均粗さ(Ra)0.3〜1.0μm程度の粗面に形成される。
【0025】
このように、ベースゴム層2の外周面に型面の転写面2aが残っていたとしても、それが僅か(転写面2aの表面積の20%以下)であれば、図1に示す現像ロールと同様に、ゴースト発生を防止することができ、良質の画像を得ることができる。
【0026】
上記金型の型面の転写面(ベースゴム層2の外周面)2aにおけるレーザエッチングが施される割合は、レーザエッチングにより形成する凹部の外径と、各凹部の開口縁部の重なり度合いとの設定値から、計算により算出することができる。また、その割合の確認は、電子顕微鏡で観ることにより行うことができる。
【0027】
なお、上記各実施の形態において、場合により、ベースゴム層2と最外層3との間には、中間層を形成してもよい。この中間層の形成材料としては、通常、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(水素化ニトリルゴム:H−NBR),アクリロニトリル−ブタジエンゴム(ニトリルゴム:NBR),ポリウレタン系エラストマー,クロロプレンゴム(CR),天然ゴム,ブタジエンゴム(BR),アクリルゴム(ACM),イソプレンゴム(IR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR),ヒドリンゴム(ECO,CO),ウレタンゴム,フッ素ゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、接着性およびコーティング液の安定性の観点から、H−NBR,ポリウレタン系エラストマーが特に好ましい。
【0028】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0029】
〔軸体〕
外径8mm、長さ350mmの鉄製の中実円柱状の軸体を準備した。
【0030】
〔ベースゴム層の形成材料〕
導電性シリコーンゴム(X34−270A/B、信越化学工業社製)をニーダーにより混練してベースゴム層の形成材料を調製した。
【0031】
〔最外層の形成材料〕
ポリカーボネートジオール系ウレタン樹脂(ニッポラン5196、日本ポリウレタン社製)100重量部に対して、カーボンブラック(デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)40重量部の割合で用い、ボールミルにより混練した後、MEK400重量部を加えて混合,攪拌して最外層の形成材料を調製した。
【0032】
〔現像ロールの作製〕
成形用金型を用いて成形(190℃×30分間)することにより、軸体の外周面にベースゴム層(厚み4mm、長さ240mm)を形成した。そして、Nd−YAGレーザを用い、そのベースゴム層の外周面(金型の型面の転写面)の80%に、レーザエッチングを施すことにより、多数の凹部を開口縁部が重なるよう分布形成した。つぎに、このようにして得られたロール体の外周面に、上記最外層の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、乾燥(硬化)させ、最外層(厚み30μm)を形成した。なお、上記レーザエッチングには、レーザエッチング装置としてミヤチテクノス社製のFine Marker ML-7110Bを用いた。また、レーザエッチングの条件は、出力:26A、周波数:17.6kHz、スピード:2050mm/秒、ベースゴム層の外周面(金型の型面の転写面)とレーザ光収束用レンズとの距離:360mm(レーザ光収束用レンズの本来の焦点距離350mm)とした。
【実施例2】
【0033】
上記実施例1において、レーザエッチングを施す部分をベースゴム層の外周面(金型の型面の転写面)全体(100%)とした。また、レーザエッチングの条件のうちベースゴム層の外周面(金型の型面の転写面)とレーザ光収束用レンズとの距離を370mmとした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【実施例3】
【0034】
上記実施例2において、レーザエッチングの条件のうちベースゴム層の外周面(金型の型面の転写面)とレーザ光収束用レンズとの距離を375mmとした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【実施例4】
【0035】
上記実施例2において、レーザエッチングの条件のうちベースゴム層の外周面(金型の型面の転写面)とレーザ光収束用レンズとの距離を380mmとした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0036】
〔比較例1〕
上記実施例1において、レーザエッチングを施す部分をベースゴム層の外周面(金型の型面の転写面)の70%とした。また、レーザエッチングの条件のうちベースゴム層の外周面(金型の型面の転写面)とレーザ光収束用レンズとの距離を350mmとした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0037】
〔比較例2〕
上記実施例1において、レーザエッチングを施すことなく、最外層を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0038】
〔ベースゴム層の表面抵抗および体積抵抗〕
上記実施例1〜4および比較例1,2において、最外層の形成に先立って、ベースゴム層の表面抵抗および体積抵抗を測定した。
【0039】
そのうち表面抵抗は、つぎのようにして測定した。すなわち、図3に示すように、隙間をあけて平行に設置された2本の金属ローラ(外径12mm)21,22の上に、測定対象となる上記ロール体10を載置し、60rpmで回転させるとともに、軸体1の両端部に下方向に合計9.8N(各端部に4.9Nずつ)の荷重Wをかけた。この状態で、一方の金属ローラ21から上記ロール体10の表面に−10Vの直流電圧を印加して、他方の金属ローラ22から基準抵抗R2 にかかる電位差V2 を検出し、上記ロール体10(ベースゴム層2)の表面の周方向に流れる電流値I2 (=V2 /R2 )を算出した。そして、この電流値I2 と上記印加電圧(−10V)から上記ロール体10(ベースゴム層2)の表面抵抗R1 (=10/I2 )を算出した。そして、その表面抵抗R1 を下記の表1に併せて表記した。なお、上記基準抵抗R2 は、上記ロール体10と比較して非常に低い抵抗であり、測定結果に影響を与えないものである。
【0040】
また、体積抵抗は、図4に示すように、1本の金属ローラ(外径30mm)23の上に、測定対象となる上記ロール体10を載置し、60rpmで回転させるとともに、軸体1の両端部に下方向に合計9.8N(各端部に4.9Nずつ)の荷重Wをかけた。この状態で、上記ロール体10の軸体1から−10Vの直流電圧を印加して、金属ローラ23から基準抵抗R4 にかかる電位差V4 を検出し、上記ロール体10(ベースゴム層2)の厚み方向に流れる電流値I4 (=V4 /R4 )を算出した。そして、この電流値I4 と上記印加電圧(−10V)から上記ロール体10(ベースゴム層2)の体積抵抗R3 (=10/I4 )を算出した。
【0041】
〔ベースゴム層の表面粗さ〕
また、ベースゴム層の両端からそれぞれ軸方向内側5mmの位置および軸方向中央の3つの位置において、それぞれの位置の外周の任意の3点での算術平均粗さ(Ra)を、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコム1400D)を用いて測定した。そして、その合計9点(3点×3つの位置)での算術平均粗さ(Ra)の平均値を算出し、その結果を下記の表1に併せて表記した。
【0042】
〔現像ロールの表面抵抗および体積抵抗〕
最外層の形成後、現像ロールの表面抵抗および体積抵抗を、上記ベースゴム層の場合と同様にして測定した。すなわち、図3,4において、ロール体10に代えて現像ロールを測定対象とした。そして、その結果を下記の表1に併せて表記した。
【0043】
〔現像ロールの表面粗さ〕
また、最外層の両端からそれぞれ軸方向内側5mmの位置および軸方向中央の3つの位置において、それぞれの位置の外周の任意の3点での算術平均粗さ(Ra)を、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコム1400D)を用いて測定した。そして、その合計9点(3点×3つの位置)での算術平均粗さ(Ra)の平均値を算出し、その結果を下記の表1に併せて表記した。
【0044】
〔残留電荷の減衰率〕
図5(a)に示すように、現像ロールを回転させ、その表面にコロトロンTから100μAの定電流を流し、その電流を流した位置から90°回転した位置での現像ロール表面の電荷を電位として測定した。この測定は、プローブ(電位検出器)Pを用い、軸方向中央の位置で行った。そして、その測定結果を示す図5(b)において、上記定電流停止時の残留電荷値と、0.5秒後の残留電荷値との比率から、下記の式(1)により、減衰率を算出し、その結果を下記の表1に併せて表記した。ここで、減衰率が高い現像ロールほど、減衰率に優れ、ゴースト防止に有効であると言える。
【0045】
【数1】

【0046】
〔ゴースト濃度比率〕
図6に示すように、現像ロール1周目では濃度の濃い色となり、2周目以降は濃度の薄い色となるような画像を印刷した。そして、現像ロール2周目以降の画像Cの濃度(本来印刷されるべき画像Cの濃度)に対し、2周目の画像Bがどの程度の濃度で印刷されたかの比率を、下記の式(2)により算出した。このゴースト濃度比率は100%に近いほどよい。なお、濃度測定には、濃度計として、Macbeth PROCESS MEASUREMENTSを用いた。
【0047】
【数2】

【0048】
【表1】

【0049】
上記表1の結果から、実施例1〜4の現像ロールでは、残留電荷の減衰率が高く、そのため、ゴーストの発生が防止されていることがわかる。これに対して、比較例1,2の現像ロールでは、残留電荷の減衰率が低く、そのため、ゴーストが発生していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の現像ロールの一実施の形態を模式的に示した説明図である。
【図2】本発明の現像ロールの他の実施の形態を模式的に示した説明図である。
【図3】表面抵抗の測定方法を模式的に示した説明図である。
【図4】体積抵抗の測定方法を模式的に示した説明図である。
【図5】(a)は残留電荷の測定方法を模式的に示した説明図であり、(b)はその測定結果を示すグラフである。
【図6】ゴースト濃度の測定方法を示した説明図である。
【図7】従来の現像ロールを示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 軸体
2 ベースゴム層
3 最外層
A 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、この軸体の外周面に金型成形により形成されたベースゴム層と、このベースゴム層の外周に直接もしくは他の層を介して形成された最外層とを有する現像ロールであって、金型の型面の転写面となるベースゴム層の外周面に、レーザエッチングによる多数の凹部が、その開口縁部が重なり合った状態で分布形成されて外周面の少なくとも一部が削除され、その削除された部分が元の外周面の表面積の80%以上に設定されていることを特徴とする現像ロール。
【請求項2】
上記凹部が、直径110μm以上、深さ2μm以上である請求項1記載の現像ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−232760(P2007−232760A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50648(P2006−50648)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】