説明

現像処理装置、現像処理方法、プログラム及びコンピュータ記憶媒体

【課題】基板上のレジスト膜を高精度で現像しつつ、当該レジスト膜にレジストパターンを適切に形成する。
【解決手段】現像処理装置30は、ウェハWを収容して処理する処理容器110と、ウェハWを保持して回転させるスピンチャック140と、ウェハW上に有機溶剤を含有する現像液を供給する現像液ノズル160と、ウェハW上にリンス液を供給するリンス液ノズル164と、処理容器110内に酢酸ブチルガスを供給する処理ガス供給部122と、処理容器110内に窒素ガスを供給するパージガス供給部126と、処理容器110内の酢酸ブチルガスの濃度を測定する濃度測定器130と、処理容器110内のガス濃度を所定の濃度に制御する濃度制御部131と、処理容器110から流出した酢酸ブチルガスを再度処理容器110内に供給して循環させるガス循環部151と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の現像処理装置、現像処理方法、プログラム及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、当該レジスト膜に所定のパターンを露光する露光処理、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などが順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成される。
【0003】
上述した現像処理では、例えばウェハ上にアルカリ性のTMAH現像液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド現像液)を供給して、ウェハ表面上に現像液の液膜を形成することにより、ウェハの現像処理が行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−32604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、上述したレジストパターンを形成する際には、半導体デバイスのさらなる高集積化を図るため、当該レジストパターンの微細化が求められている。また、このように微細なレジストパターンを高い寸法精度で形成するため、上述した現像処理においてレジスト膜をより高い精度で現像することが要求されている。
【0006】
ここで、特許文献1に記載された現像処理では、アルカリ性のTMAH現像液がウェハ上に供給されるので、この現像液によって露光されたレジスト膜が溶解する。そうすると、露光処理では、レジスト膜が溶解する部分(レジストパターンのトレンチ部分)が露光されるため、当該部分に対応する開口部が形成されたマスクを用いてレジスト膜が露光される。かかる場合、レジストパターンのトレンチの微細化に伴い、マスクの開口部も微細化するので、露光処理においてマスクの開口部で光の回折等が生じて露光コントラストが不足する。そうすると、レジスト膜を高い精度で露光及び現像できず、レジストパターンの形状が所望の形状にならない場合があった。
【0007】
そこで、発明者らは、有機溶剤を含有する現像液を用いることを考えた。この現像液をウェハ上に供給すると、露光されていないレジスト膜が溶解し、露光されたレジスト膜がレジストパターンとして残る。このため、露光処理のマスクの開口部を大きくでき、露光コントラストを向上させることができる。
【0008】
しかしながら、有機溶剤を含有する現像液は、従来のアルカリ性の現像液よりも揮発し易いという性質を有する。現像液の揮発及び乾燥が進行すると、レジスト成分が再度析出し、現像欠陥が生じる場合がある。また、このような現像液の揮発を補填するためには、多量の現像液が必要となる場合があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、基板上のレジスト膜を高精度で現像しつつ、当該レジスト膜にレジストパターンを適切に形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明は、基板の現像処理装置であって、基板を収容して処理する処理容器と、前記処理容器内で基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板上に、有機溶剤を含有する現像液を供給する現像液供給部と、前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給部と、前記処理容器から流出した処理ガスを再度処理容器内に供給して循環させるガス循環部と、を有することを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、現像液供給部から基板上に供給される現像液は有機溶剤を含有するので、露光されていないレジスト膜を溶解し、露光されたレジスト膜をレジストパターンとして形成することができる。このため、レジストパターンの所望の寸法が微細であっても、露光処理におけるマスクの開口部を大きくすることができるので、露光コントラストが向上する。したがって、レジスト膜を高い精度で現像し当該レジスト膜に形成されるレジストパターンの寸法精度を向上させることができる。また、現像処理装置は処理容器内に処理ガスを供給するガス供給部を備えているので、現像処理中の処理容器内を処理ガスで充填することができる。この処理ガスによって、現像液の揮発を抑制することができる。さらに、現像処理装置は処理ガスを循環させるガス循環部を有しているので、処理容器内に処理ガスの気流を形成することができる。この処理ガスの気流によって、現像液の揮発をさらに抑制することができる。このように現像液の揮発を抑えることができるので、現像欠陥を抑制することができる。また、現像液の揮発を抑えることで、現像液の供給量を低減することもできる。さらに、ガス循環部により処理ガスを循環させるので、当該処理ガスを有効利用することもできる。以上のように本発明によれば、基板上のレジスト膜を高精度で現像しつつ、当該レジスト膜に現像欠陥が抑制されたレジストパターンを適切に形成することができる。
【0012】
前記処理ガスは気化した有機溶剤であってもよい。
【0013】
前記現像処理装置は、前記処理容器内の処理ガスの濃度を測定する濃度測定器と、当該処理ガスの濃度が所定の濃度になるように前記ガス供給部を制御する制御部と、を有していてもよい。
【0014】
前記現像処理装置は、前記処理容器内に、不活性ガスを供給する他のガス供給部を有していてもよい。
【0015】
前記処理ガスは不活性ガスであり、前記処理容器の内部は、前記処理ガスによって所定の圧力に維持されていてもよい。
【0016】
前記現像処理装置は、前記処理容器内の処理ガスの圧力を測定する圧力測定器と、当該処理ガスの圧力が前記所定の圧力になるように前記ガス供給部を制御する制御部と、を有していてもよい。
【0017】
前記処理容器内であって基板保持部の上方には、前記ガス供給部からの処理ガスを拡散させて処理容器内に供給するガス拡散部が設けられ、前記ガス拡散部の基板保持部側の表面には、前記処理ガスが供給される供給口が複数形成されていてもよい。
【0018】
前記ガス供給部には、前記処理ガスの温度を調節する温度調節機構が設けられていてもよい。
【0019】
前記現像処理装置は、前記処理容器内において、前記基板保持部に保持された基板の側方を囲むように設けられたカップを有し、前記ガス循環部は、前記カップから流出した処理ガスを前記処理容器内に循環させてもよい。
【0020】
前記現像処理装置は、前記基板保持部に保持された基板上に、現像液のリンス液を供給するリンス液供給部を有していてもよい。
【0021】
別な観点による本発明は、基板の現像処理方法であって、処理容器内に基板を収容して、基板保持部に基板を保持した後、ガス供給部から前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給工程と、その後、前記基板保持部に保持された基板上に、有機溶剤を含有する現像液を供給して現像処理を行う現像処理工程と、を有し、前記現像処理工程において、前記処理容器から流出した処理ガスを再度処理容器内に供給して循環させることを特徴としている。
【0022】
前記処理ガスは気化した有機溶剤であってもよい。
【0023】
前記現像処理工程において、前記処理容器内の処理ガスの濃度は所定の濃度に維持されていてもよい。
【0024】
前記処理ガスは不活性ガスであり、前記現像処理工程において、前記処理容器の内部は前記処理ガスによって所定の圧力に維持されていてもよい。
【0025】
前記現像処理工程において、前記処理容器に供給される処理ガスは所定の温度に調節されていてもよい。
【0026】
前記現像処理方法は、前記現像処理工程の後、前記基板保持部に保持された基板上に、現像液のリンス液を供給するリンス工程を有していてもよい。
【0027】
前記リンス工程中、前記処理容器内に不活性ガスを供給してもよい。
【0028】
また別な観点による本発明によれば、前記現像処理方法を現像処理装置によって実行させるために、当該現像処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0029】
さらに別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、基板上のレジスト膜を高精度で現像しつつ、当該レジスト膜にレジストパターンを適切に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施の形態にかかる現像処理装置を備えた塗布現像処理システムの内部構成の概略を示す平面図である。
【図2】塗布現像処理システムの内部構成の概略を示す側面図である。
【図3】塗布現像処理システムの内部構成の概略を示す側面図である。
【図4】現像処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図5】現像処理装置の構成の概略を示す横断面図である。
【図6】現像処理の主な工程を示すフローチャートである。
【図7】他の実施の形態にかかる現像処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図8】他の実施の形態にかかる現像処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明にかかる現像処理装置を備えた塗布現像処理システム1の内部構成の概略を示す平面図である。図2及び図3は、塗布現像処理システム1の内部構成の概略を示す側面図である。
【0033】
塗布現像処理システム1は、図1に示すように例えば外部との間で複数枚のウェハWを収容したカセットCが搬入出されるカセットステーション2と、フォトリソグラフィー処理の中で枚葉式に所定の処理を施す複数の各種処理装置を備えた処理ステーション3と、処理ステーション3に隣接する露光装置4との間でウェハWの受け渡しを行うインターフェイスステーション5とを一体に接続した構成を有している。
【0034】
カセットステーション2には、カセット載置台10が設けられている。カセット載置台10には、複数、例えば4つのカセット載置板11が設けられている。カセット載置板11は、水平方向のX方向(図1中の上下方向)に一列に並べて設けられている。これらのカセット載置板11には、塗布現像処理システム1の外部に対してカセットCを搬入出する際に、カセットCを載置することができる。
【0035】
カセットステーション2には、図1に示すようにX方向に延びる搬送路20上を移動自在なウェハ搬送装置21が設けられている。ウェハ搬送装置21は、上下方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各カセット載置板11上のカセットCと、後述する処理ステーション3の第3のブロックG3の受け渡し装置との間でウェハWを搬送できる。
【0036】
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数例えば4つのブロックG1、G2、G3、G4が設けられている。例えば処理ステーション3の正面側(図1のX方向負方向側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のX方向正方向側)には、第2のブロックG2が設けられている。また、処理ステーション3のカセットステーション2側(図1のY方向負方向側)には、第3のブロックG3が設けられ、処理ステーション3のインターフェイスステーション5側(図1のY方向正方向側)には、第4のブロックG4が設けられている。
【0037】
例えば第1のブロックG1には、図3に示すように複数の液処理装置、例えばウェハWを現像処理する現像処理装置30、ウェハWのレジスト膜の下層に反射防止膜(以下、「下部反射防止膜」という)を形成する下部反射防止膜形成装置31、ウェハWにレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布装置32、ウェハWのレジスト膜の上層に反射防止膜(以下、「上部反射防止膜」という)を形成する上部反射防止膜形成装置33が下から順に重ねられている。
【0038】
例えば現像処理装置30とレジスト塗布装置32は、それぞれ水平方向に3つ、上下方向に2層に並べて配置されている。また、例えば下部反射防止膜形成装置31と上部反射防止膜形成装置33は、それぞれ水平方向に3つ並べて配置されている。なお、現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト塗布装置32及び上部反射防止膜形成装置33の数や配置は、任意に選択できる。
【0039】
例えば第2のブロックG2には、図2に示すようにウェハWの熱処理を行う熱処理装置40や、ウェハWを疎水化処理するアドヒージョン装置41、ウェハWの外周部を露光する周辺露光装置42が上下方向と水平方向に並べて設けられている。熱処理装置40は、ウェハWを載置して加熱する熱板と、ウェハWを載置して冷却する冷却板を有し、加熱処理と冷却処理の両方を行うことができる。なお、熱処理装置40、アドヒージョン装置41及び周辺露光装置42の数や配置は、任意に選択できる。
【0040】
例えば第3のブロックG3には、複数の受け渡し装置50、51、52、53、54、55、56が下から順に設けられている。また、第4のブロックG4には、複数の受け渡し装置60、61、62が下から順に設けられている。
【0041】
図1に示すように第1のブロックG1〜第4のブロックG4に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域Dが形成されている。ウェハ搬送領域Dには、例えばウェハ搬送装置70が配置されている。
【0042】
ウェハ搬送装置70は、例えばY方向、X方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置70は、ウェハ搬送領域D内を移動し、周囲の第1のブロックG1、第2のブロックG2、第3のブロックG3及び第4のブロックG4内の所定の装置にウェハWを搬送できる。
【0043】
ウェハ搬送装置70は、例えば図2に示すように上下に複数台配置され、例えば各ブロックG1〜G4の同程度の高さの所定の装置にウェハWを搬送できる。
【0044】
また、ウェハ搬送領域Dには、第3のブロックG3と第4のブロックG4との間で直線的にウェハWを搬送するシャトル搬送装置80が設けられている。
【0045】
シャトル搬送装置80は、例えばY方向に直線的に移動自在になっている。シャトル搬送装置80は、ウェハWを支持した状態でY方向に移動し、第3のブロックG3の受け渡し装置52と第4のブロックG4の受け渡し装置62との間でウェハWを搬送できる。
【0046】
図1に示すように第3のブロックG3のX方向正方向側の隣には、ウェハ搬送装置90が設けられている。ウェハ搬送装置90は、例えばX方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置90は、ウェハWを支持した状態で上下に移動して、第3のブロックG3内の各受け渡し装置にウェハWを搬送できる。
【0047】
インターフェイスステーション5には、ウェハ搬送装置100と受け渡し装置101が設けられている。ウェハ搬送装置100は、例えばY方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置100は、例えば搬送アームにウェハWを支持して、第4のブロックG4内の各受け渡し装置、受け渡し装置101及び露光装置4との間でウェハWを搬送できる。
【0048】
次に、上述した現像処理装置30の構成について説明する。現像処理装置30は、図4に示すように内部を密閉することができる処理容器110を有している。処理容器110の内部は後述する酢酸ブチルガスの引火点以上の雰囲気になる場合があるため、処理容器110は防爆仕様とする。また、処理容器110の一の側面には、図5に示すようにウェハWの搬入出口111が形成され、搬入出口111には、開閉シャッタ112が設けられている。
【0049】
処理容器110の底面には、図4に示すように当該処理容器110の内部の雰囲気を排気するための排気管113が接続されている。排気管113は、バルブ114を介して例えば真空ポンプなどの負圧発生装置(図示せず)に連通している。
【0050】
処理容器110内の天井面には、ガス拡散部120が設けられている。ガス拡散部120には、供給管121を介して、処理容器110内に処理ガスを供給するガス供給部としての処理ガス供給部122が接続されている。本実施の形態では、処理ガスとして気化した有機溶剤、例えば酢酸ブチルガスが用いられる。処理ガス供給部122は、その内部に液体状の酢酸ブチルを貯留している。処理ガス供給部122では、内部に窒素ガスが供給されることで液体状の酢酸ブチルが気化して、酢酸ブチルガスが生成される。また、供給管121には、処理ガス供給部122で生成された酢酸ブチルガスの流れを制御するバルブ123が設けられている。さらに、供給管121において、後述する循環路150より処理ガス供給部122側には、酢酸ブチルガスが処理ガス供給部122に逆流するのを防止する逆止弁124が設けられている。
【0051】
また、ガス拡散部120には、供給管125を介して、処理容器110内をパージするためのパージガスを供給する他のガス供給部としてのパージガス供給部126が接続されている。本実施の形態では、パージガスとして不活性ガス、例えば窒素ガスが用いられる。パージガス供給部126は、その内部に窒素ガスを貯留している。また、供給管125には、パージガス供給部126からの窒素ガスの流れを制御するバルブ127が設けられている。なお、供給管121と供給管125はその下流側において合流し、上記ガス拡散部120に接続されている。
【0052】
ガス拡散部120の内部には、処理ガス供給部122から供給された酢酸ブチルガスやパージガス供給部126から供給された窒素ガスが導入される内部空間128が設けられている。ガス拡散部120の下面(ウェハW側の表面)には、内部空間128に導入された酢酸ブチルガスや窒素ガスを処理容器110内に供給する複数の供給口129が形成されている。複数の供給口129は、ガス拡散部120の下面全体に均一に分布するように形成されている。そして、ガス拡散部120は、内部空間128内の酢酸ブチルガスや窒素ガスが複数の供給口129を介して供給され、処理容器110の内部全体に拡散するように配置されている。また、ガス供給部120を介することで、後述するスピンチャック140に保持されたウェハW上にも酢酸ブチルガスや窒素ガスを均一に供給することができる。
【0053】
処理容器110には、当該処理容器110内の酢酸ブチルガスの濃度を測定する濃度測定器130が設けられている。濃度測定器130の測定結果は、濃度制御部131に出力される。濃度制御部131では、測定結果に基づいて、酢酸ブチルガスの濃度が所定の濃度、例えば1%〜20%になるように、例えばバルブ123やバルブ114、あるいは後述するガス循環部151やバルブ153等を制御する。なお、所定の濃度は、例えば処理容器110内の現像液の揮発速度が、常圧下の現像液の揮発速度に対して例えば10%以下となるように設定される。また、所定の濃度は、レジストの種類や有機溶剤の種類によって設定されるものである。
【0054】
処理容器110の内部であって、ガス拡散部120の下方には、ウェハWを保持して回転させる基板保持部としてのスピンチャック140が設けられている。スピンチャック140は、水平な上面を有し、当該上面には、例えばウェハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウェハWをスピンチャック140上に吸着保持できる。
【0055】
スピンチャック140は、例えばモータなどを備えたチャック駆動部141を有し、そのチャック駆動部141により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動部141には、シリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック140は上下動可能になっている。
【0056】
スピンチャック140の下方には断面形状が山形のガイドリング142が設けられており、このガイドリング142の周縁部は下方側に屈曲して延びている。スピンチャック140、スピンチャック140に保持されたウェハW及びガイドリング142の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ143が設けられている。
【0057】
このカップ143は上面にスピンチャック140が昇降できるようにウェハWよりも大きい開口部が形成されていると共に、側周面とガイドリング142の周縁部との間に排出路をなす隙間144が形成されている。カップ143の下部は、ガイドリング142の周縁部分と共に屈曲路を形成して気液分離部を構成している。
【0058】
カップ143の底部の内側領域には、カップ143内(処理容器110内)の酢酸ブチルガスを循環させるための循環路150が接続されている。循環路150は、カップ143の底部に対して複数箇所に設けられていてもよいし、環状に設けられていてもよい。循環路150は、酢酸ブチルガスの供給管121に接続されている。また循環路150には、カップ143内の酢酸ブチルガスを供給管121に循環させ、さらに処理容器110内に循環させるためのガス循環部151が設けられている。ガス循環部151には、例えばファンが用いられる。
【0059】
また、カップ143の底部の内側領域には、カップ143内の雰囲気を排気するための排気管152が接続されている。排気管152は、バルブ153を介して例えば真空ポンプなどの負圧発生装置(図示せず)に連通している。
【0060】
さらにカップ143の底部の外側領域には、当該カップ143で回収した液体を排出するための排液管154が接続されている。排液管154は、回収した廃液を一旦貯留する廃液容器155に連通している。なお、廃液容器155はバルブ(図示せず)を介して塗布現像処理システム1の外部の廃液回収装置(図示せず)に連通している。
【0061】
処理容器110の内部であって、スピンチャック140の上方には、ウェハW上に現像液を供給する現像液供給部としての現像液ノズル160が配置されている。現像液ノズル160には、現像液供給源161に連通する供給管162が接続されている。現像液供給源161内には、有機溶媒、例えば酢酸ブチルを含有する現像液、いわゆる有機現像液が貯留されている。供給管162には、現像液の流れを制御するバルブ163が設けられている。
【0062】
また、処理容器110の内部であって、スピンチャック140の上方には、ウェハW上に現像液のリンス液を供給するリンス液供給部としてのリンス液ノズル164が配置されている。リンス液ノズル164には、リンス液供給源165に連通する供給管166が接続されている。リンス液供給源161内には、現像液のリンス液が貯留されている。本実施の形態では、リンス液として例えばMIBC(メチルアミルアルコール)が用いられる。MIBCは、レジストにダメージを与えずに現像液中の有機溶剤を置換して排出することができる。また、供給管166には、リンス液の流れを制御するバルブ167が設けられている。
【0063】
現像液ノズル160は、図5に示すようにアーム168を介してノズル駆動部169に接続されている。アーム168は、ノズル駆動部169により、処理容器110のY方向(図5の左右方向)に延伸するガイドレール170に沿って、カップ143のY方向正方向(図5の右方向)側の外方に設けられた待機部171からカップ143内のウェハWの中心部上方まで移動でき、さらに当該ウェハWの表面上をウェハWの径方向に移動できる。また、アーム168は、ノズル駆動部169によって昇降自在であり、現像液ノズル160の高さを調整できる。
【0064】
同様にリンス液ノズル164も、アーム172を介してノズル駆動部173に接続されている。アーム172は、ノズル駆動部173により、上記ガイドレール170に沿って、カップ143のY方向負方向(図5の左方向)側の外方に設けられた待機部174からカップ143内のウェハWの中心部上方まで移動でき、さらに当該ウェハWの表面上をウェハWの径方向に移動できる。また、アーム172は、ノズル駆動部173によって昇降自在であり、リンス液ノズル164の高さを調整できる。
【0065】
なお、以上の構成では、現像液を供給する現像液ノズル160とリンス液を供給するリンス液ノズル164が別々のアームに支持されていたが、同じアームに支持され、そのアームの移動の制御により、現像液ノズル160とリンス液ノズル164の移動と供給タイミングを制御してもよい。
【0066】
以上の塗布現像処理システム1には、図1に示すように制御部200が設けられている。制御部200は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、現像処理装置30におけるウェハWの現像処理を実行するプログラムが格納されている。またこれに加えて、プログラム格納部には、カセットステーション2、処理ステーション3、露光装置4、インターフェイスステーション5間のウェハWの搬送や、処理ステーション3における駆動系の動作などを制御して、塗布現像処理システム1におけるウェハ処理を実行するプログラムが格納されている。なお、このプログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部200にインストールされたものであってもよい。なお、上述した濃度制御部131はこの制御部200の一部として構成されていてもよいし、濃度制御部131と制御部200は別々に設けられていてもよい。
【0067】
次に、以上のように構成された塗布現像処理システム1を用いて行われるウェハWの処理方法について説明する。
【0068】
先ず、複数枚のウェハWを収容したカセットCが、カセットステーション2の所定のカセット載置板11に載置される。その後、ウェハ搬送装置21によりカセットC内の各ウェハWが順次取り出され、処理ステーション3の第3のブロックG3の例えば受け渡し装置53に搬送される。
【0069】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送され、温度調節される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第1のブロックG1の下部反射防止膜形成装置31に搬送され、ウェハW上に下部反射防止膜が形成される。その後ウェハWは、第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送され、加熱され、温度調節され、その後第3のブロックG3の受け渡し装置53に戻される。
【0070】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置90によって同じ第3のブロックG3の受け渡し装置54に搬送される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2のアドヒージョン装置41に搬送され、アドヒージョン処理される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって熱処理装置40に搬送され、温度調節される。
【0071】
その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第1のブロックG1のレジスト塗布装置32に搬送され、回転中のウェハW上にレジスト液を塗布し、ウェハW上にレジスト膜が形成される。なお、レジスト液には、例えば化学増幅型のレジスト液が用いられる。
【0072】
その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送されて、プリベーク処理される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第3のブロックG3の受け渡し装置55に搬送される。
【0073】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第1のブロックG1の上部反射防止膜形成装置33に搬送され、ウェハW上に上部反射防止膜が形成される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送されて、加熱され、温度調節される。
【0074】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって周辺露光装置42に搬送され、周辺露光処理される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第3のブロックG3の受け渡し装置56に搬送される。
【0075】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置90によって受け渡し装置52に搬送され、シャトル搬送装置80によって第4のブロックG4の受け渡し装置62に搬送される。
【0076】
その後ウェハWは、インターフェイスステーション5のウェハ搬送装置100によって露光装置4に搬送され、露光処理される。
【0077】
次に、ウェハWは、ウェハ搬送装置100によって露光装置4から第4のブロックG4の受け渡し装置60に搬送される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送され、露光後ベーク処理される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第1のブロックG1の現像処理装置30に搬送され、現像処理される。なお、この現像処理装置におけるウェハWの現像処理については、後述において詳しく説明する。
【0078】
その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2の熱処理装置40に搬送され、ポストベーク処理される。
【0079】
その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第3のブロックG3の受け渡し装置50に搬送され、その後カセットステーション2のウェハ搬送装置21によって所定のカセット載置板11のカセットCに搬送される。こうして、一連のフォトリソグラフィー工程が終了する。
【0080】
次に、上述した現像処理装置30においてウェハW上のレジスト膜を現像する一連の現像処理について説明する。図6は、ウェハWの現像処理の主な工程を示すフローチャートである。
【0081】
現像処理装置30に搬入されたウェハWは、先ず、スピンチャック140に吸着保持される(図6の工程S1)。その後、シャッタ111を閉じ、処理容器110内を密閉する。続いて、バルブ123を開いて、処理ガス供給部122から処理容器110内に酢酸ブチルガスを供給する(図6の工程S2)。このとき、処理ガス供給部122からの酢酸ブチルガスは、ガス拡散部120の複数の供給口129から処理容器110内に供給されるので、当該処理容器110の内部全体に拡散する。また、酢酸ブチルガスは、スピンチャック140に保持されたウェハWに対して均一に供給される。
【0082】
処理ガス供給部122からの酢酸ブチルガスの供給は、濃度測定器130と濃度制御部131によって制御される。すなわち、処理容器110内の酢酸ブチルガスの濃度が濃度測定器130によって測定される。そして濃度制御部131において、測定結果に基づいてガス濃度が所定の濃度、例えば1%〜20%になるようにバルブ123が制御される(図6の工程S3)。このように処理容器110内のガス濃度が所定の濃度に制御されることで、当該処理容器110内に供給される現像液の揮発速度が常圧下の現像液の揮発速度に対して10%以下になり、当該現像液の揮発が抑制される。なお、酢酸ブチルガスが処理容器110の外部に漏れるのを防止するため、当該処理容器110内の酢酸ブチルガスの圧力は負圧になっているのが好ましい。
【0083】
処理容器110内の雰囲気が所定のガス濃度の酢酸ブチルガスに置換されると、アーム168により待機部171の現像液ノズル160がウェハWの中心部上方まで移動する。その後、スピンチャック140によってウェハWを所定の回転数で回転させながら、現像液ノズル160からウェハW上に現像液が供給される。そして、供給された現像液は遠心力によってウェハWの表面全面に拡散する。所定時間経過後、ウェハW上の露光されたレジスト膜は、現像液によって現像される(図6の工程S4)。すなわち、現像液によって露光されていないレジスト膜が溶解し、露光されたレジスト膜がレジストパターンとして残る。
【0084】
なお、この工程S4において、カップ143内(処理容器110内)の酢酸ブチルガスは、ガス循環部151によって循環路150を介して供給管121に循環される。すなわち、処理容器110内に供給された酢酸ブチルガスは、排気されることなく再利用される。また、工程S4においては、原則として、バルブ123を閉じて酢酸ブチルガスの供給を停止すると共に、バルブ114、153を閉じて処理容器110とカップ143からの排気も停止する。そして、処理容器110内の酢酸ブチルガスの濃度は所定の濃度に維持されている。なお、工程S4においても、濃度測定器130によって処理容器110内の酢酸ブチルガスの濃度は測定されており、例えば外的要因等で当該ガス濃度が所定の濃度から外れた場合には、酢酸ブチルガスの供給又は排気を行って、処理容器110内のガス濃度を制御する。
【0085】
また、工程S4では、上述したようにカップ143内において循環路150への酢酸ブチルガスの気流が生じている。この気流によって、ウェハW上から発生するミストが処理容器110内に飛散するのが抑制される。また、この酢酸ブチルガスの気流によって、ウェハW上から飛散する液体がカップ143の内側面に付着するのを抑制できる。このため、カップ143のメンテナンスの頻度を低減することができる。さらに、工程S4では、カップ143内で回収された廃液は、廃液容器155内に一旦貯留される。すなわち、廃液容器155が設けられていることで、処理容器110内の雰囲気を制御しつつ、カップ143内の廃液を回収することができる。
【0086】
このようにウェハW上のレジスト膜が現像されると、アーム168により現像液ノズル160がウェハWの中心部上方から待機部171に移動する。同時に、アーム172により待機部174のリンス液ノズル164がウェハWの中心部上方まで移動する。その後、ウェハWを回転させると共に、リンス液ノズル164からリンス液がウェハWの中心部に供給され、ウェハWのリンス処理が行われる(図6の工程S5)。
【0087】
なお、この工程S5では、バルブ123を閉じ、且つガス循環部151を停止して、処理容器110内への酢酸ブチルガスの供給を停止する。同時に、バルブ127を開いて、パージガス供給部126から処理容器110内に窒素ガスを供給する(図6の工程S6)。さらにバルブ114、153を開いて、排気管113、152から処理容器110とカップ143内の雰囲気を排気する。こうして、処理容器110内の雰囲気が窒素ガスに置換される。なお、工程S5のリンス処理中に処理容器110内の雰囲気を窒素ガスに置換するのは、処理容器110内に残存する酢酸ブチルガスによって、ウェハW上のレジスト膜の現像が進行するのを防止するためである。
【0088】
また、工程S5では、廃液容器155の下流側のバルブを開き、廃液容器155に貯留された廃液が、塗布現像処理システム1の外部の廃液回収装置に回収される。
【0089】
ウェハWのリンス処理後、リンス液ノズル164からのリンス液の供給を停止すると共に、ウェハWを加速回転させて、ウェハW上のリンス液を振り切り乾燥させて除去する(図6の工程S7)。その後、処理容器110内は大気開放され、ウェハWは現像処理装置30から搬出される(図6の工程S8)。こうして一連のウェハWの現像処理が終了する。
【0090】
以上の実施の形態によれば、工程S4において、現像液ノズル160からウェハW上に供給される現像液は有機溶剤を含有するので、露光されていないレジスト膜を溶解し、露光されたレジスト膜をレジストパターンとして形成することができる。このため、レジストパターンの所望の寸法が微細であっても、露光処理におけるマスクの開口部を大きくすることができるので、露光コントラストが向上する。したがって、レジスト膜を高い精度で現像し当該レジスト膜に形成されるレジストパターンの寸法精度を向上させることができる。
【0091】
また、工程4において、濃度測定器130と濃度制御部131により処理容器110内の雰囲気を所定の濃度の酢酸ブチルガスの雰囲気に維持できるので、現像液ノズル160からウェハW上に供給される現像液の揮発を抑制することができる。しかも、処理容器110内に供給される酢酸ブチルガスは、ガス拡散部120を介して供給されるので、処理容器110全体に拡散する。このため、処理容器110内の雰囲気が均一に所定の濃度の酢酸ブチルガスの雰囲気になる。また、酢酸ブチルガスは、スピンチャック140に保持されたウェハW上に均一に供給される。したがって、現像液の揮発を抑えて、現像欠陥を抑制することができる。さらに、現像液の揮発を抑えることで、現像液の供給量を低減することもできる。
【0092】
しかも、工程S4において、ガス循環部151によってカップ143内(処理容器110内)の酢酸ブチルガスが供給管121に循環されるので、酢酸ブチルガスの気流の流れを形成することができ、この気流によって現像液の揮発をさらに抑制することができる。しかも、酢酸ブチルガスを有効利用することができる。したがって、ウェハW上にレジストパターンを適切に形成することができる。
【0093】
また、工程S5のウェハWのリンス処理中、工程S6において処理容器110内の雰囲気が窒素ガスに置換されるので、酢酸ブチルガスによってウェハW上のレジスト膜が過剰に現像されることがない。したがって、ウェハW上にレジストパターンをより適切に形成することができる。
【0094】
以上の実施の形態の現像処理装置30には、図7に示すように処理容器110内に供給される酢酸ブチルガスの温度を調節する温度調節機構250、例えばヒータが設けられていてもよい。温度調節機構250は、供給管120に設けられている。なお、温度調節機構250は、本実施の形態に限定されず、任意の場所に設けてもよい。例えば温度調節機構250は、ガス拡散部120に設けてもよいし、処理ガス供給部122に設けてもよい。
【0095】
かかる場合、酢酸ブチルガスの温度が所定の温度に調節されるので、当該酢酸ブチルガスが冷却されて液化し、供給管121内やガス拡散部120内が結露するのを防止することができる。したがって、処理容器110内の酢酸ブチルガスのガス濃度を所定の濃度に適切に維持でき、現像液の揮発も適切に抑制することができる。また、現像処理装置30のメンテナンスの頻度を低減することもできる。
【0096】
以上の実施の形態では、処理ガスとして酢酸ブチルガスを用いていたが、他の処理ガスを用いてもよい。例えば酢酸ブチルガス以外の気化した有機溶剤、例えば2ヘプタノン等を用いてもよい。
【0097】
また処理ガスとして、不活性ガス、例えば窒素ガス(又はアルゴンガス)を用いてもよい。かかる場合、図8に示すように現像処理装置30のガス拡散部120には、供給管300を介して、処理容器110内に窒素ガスを供給する処理ガス供給部301が接続されている。処理ガス供給部301は、その内部に窒素ガスを貯留している。また、供給管300には、処理ガス供給部301からの窒素ガスの流れを制御するバルブ302が設けられている。さらに、供給管300には循環路150が接続されている。そして、供給管300において、循環路150より処理ガス供給部301側には、窒素ガスが処理ガス供給部301に逆流するのを防止する逆止弁303が設けられている。なお、本実施の形態では、上記実施の形態の供給管121、処理ガス供給部122、バルブ123、逆止弁124、供給管125、パージガス供給部126、バルブ127が省略される。
【0098】
また、処理容器110には、当該処理容器110内の窒素ガスの圧力を測定する圧力測定器310が設けられている。圧力測定器310の測定結果は、圧力制御部311に出力される。圧力制御部311では、測定結果に基づいて、窒素ガスの圧力が所定の圧力、例えば大気圧より100Pa高い圧力になるように、例えばバルブ302やガス循環部151等を制御する。なお、所定の圧力は、例えば処理容器110内の現像液の揮発速度が、常圧下の現像液の揮発速度に対して例えば10%以下となるように設定される。なお、本実施の形態では、上記実施の形態の濃度測定器130と濃度制御部131が省略される。
【0099】
なお、現像処理装置30のその他の構成は、上記実施の形態の現像処理装置30の構成と同様であるので説明を省略する。
【0100】
かかる場合、工程S2において、バルブ302を開いて、処理ガス供給部301から処理容器110内に窒素ガスを供給する。また、工程S2及び工程S3において、処理ガス供給部310からの窒素ガスの供給は、圧力測定器310と圧力制御部311によって制御される。すなわち、処理容器110内の窒素ガスの圧力が圧力測定器310によって測定される。そして圧力制御部310において、処理容器110内の圧力が所定の圧力、例えば大気圧より100Pa高い圧力になるように制御される。このように処理容器110内のガス圧力が正圧に制御されることで、当該処理容器110内に供給される現像液の揮発が抑制される。その後、工程S4において、処理容器110内のガス圧力を所定の圧力に維持した状態で、現像液ノズル160からウェハW上に現像液を供給し、レジスト膜を現像する。この工程S4においても、カップ143内(処理容器110内)の窒素ガスは、ガス循環部151によって循環路150を介して供給管300に循環される。
【0101】
なお、その他の工程S1、S5〜S8は、上記実施の形態の工程S1、S5〜S8と同様であるので説明を省略する。
【0102】
本実施の形態によっても、工程S4において、処理容器110内のガス圧力が大気圧より高い所定の圧力になっているので、ウェハW上に供給される現像液の揮発を抑制することができる。したがって、現像欠陥を抑制することができ、さらに現像液の供給量を低減することもできる。
【0103】
なお、本実施の形態の現像処理装置30にも、図7に示した温度調節機構250を設け、処理容器110に供給する窒素ガスの温度を調節してもよい。温度調節機構250は、供給管300に設けてもよいし、あるいはガス拡散部120や処理ガス供給部301に設けてもよい。このように処理容器110内の雰囲気温度を調節することによって、ウェハW上のレジスト膜の現像をより効率よく行うことができる。
【0104】
以上の実施の形態では、工程S4において、回転中のウェハW上の中心部に、現像液ノズル160から現像液を供給してウェハW上に拡散させていたが、現像液の供給方法はこれに限定されず種々の方法を取り得る。例えば回転中のウェハWに対して、ウェハWの外周部から中心部に現像液ノズル160を移動させながら現像液を供給してもよい、かかる場合、現像液ノズル160から供給された現像液は、螺旋状にウェハW上に供給される。また、例えばウェハWの径より長いスリット状の供給口を備えた現像液ノズルをウェハWの径方向に移動させながら現像液を供給してもよい。いずれの場合でも、ウェハWの表面全面に現像液が供給され、レジスト膜が適切に現像される。
【0105】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0106】
1 塗布現像処理システム
30 現像処理装置
110 処理容器
120 ガス拡散部
122 処理ガス供給部
126 パージガス供給部
129 供給口
130 濃度測定器
131 濃度制御部
140 スピンチャック
143 カップ
150 循環路
151 ガス循環部
160 現像液ノズル
164 リンス液ノズル
200 制御部
250 温度制御機構
301 処理ガス供給部
310 圧力測定器
311 圧力制御部
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の現像処理装置であって、
基板を収容して処理する処理容器と、
前記処理容器内で基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板上に、有機溶剤を含有する現像液を供給する現像液供給部と、
前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記処理容器から流出した処理ガスを再度処理容器内に供給して循環させるガス循環部と、を有することを特徴とする、現像処理装置。
【請求項2】
前記処理ガスは気化した有機溶剤であることを特徴とする、請求項1に記載の現像処理装置。
【請求項3】
前記処理容器内の処理ガスの濃度を測定する濃度測定器と、
当該処理ガスの濃度が所定の濃度になるように前記ガス供給部を制御する制御部と、を有することを特徴とする、請求項2に記載の現像処理装置。
【請求項4】
前記処理容器内に、不活性ガスを供給する他のガス供給部を有することを特徴とする、請求項2又は3に記載の現像処理装置。
【請求項5】
前記処理ガスは不活性ガスであり、
前記処理容器の内部は、前記処理ガスによって所定の圧力に維持されていることを特徴とする、請求項1に記載の現像処理装置。
【請求項6】
前記処理容器内の処理ガスの圧力を測定する圧力測定器と、
当該処理ガスの圧力が前記所定の圧力になるように前記ガス供給部を制御する制御部と、を有することを特徴とする、請求項5に記載の現像処理装置。
【請求項7】
前記処理容器内であって基板保持部の上方には、前記ガス供給部からの処理ガスを拡散させて処理容器内に供給するガス拡散部が設けられ、
前記ガス拡散部の基板保持部側の表面には、前記処理ガスが供給される供給口が複数形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の現像処理装置。
【請求項8】
前記ガス供給部には、前記処理ガスの温度を調節する温度調節機構が設けられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の現像処理装置。
【請求項9】
前記処理容器内において、前記基板保持部に保持された基板の側方を囲むように設けられたカップを有し、
前記ガス循環部は、前記カップから流出した処理ガスを前記処理容器内に循環させることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の現像処理装置。
【請求項10】
前記基板保持部に保持された基板上に、現像液のリンス液を供給するリンス液供給部を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の現像処理装置。
【請求項11】
基板の現像処理方法であって、
処理容器内に基板を収容して、基板保持部に基板を保持した後、ガス供給部から前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給工程と、
その後、前記基板保持部に保持された基板上に、有機溶剤を含有する現像液を供給して現像処理を行う現像処理工程と、を有し、
前記現像処理工程において、前記処理容器から流出した処理ガスを再度処理容器内に供給して循環させることを特徴とする、現像処理方法。
【請求項12】
前記処理ガスは気化した有機溶剤であることを特徴とする、請求項11に記載の現像処理方法。
【請求項13】
前記現像処理工程において、前記処理容器内の処理ガスの濃度は所定の濃度に維持されていることを特徴とする、請求項12に記載の現像処理方法。
【請求項14】
前記処理ガスは不活性ガスであり、
前記現像処理工程において、前記処理容器の内部は前記処理ガスによって所定の圧力に維持されていることを特徴とする、請求項11に記載の現像処理方法。
【請求項15】
前記現像処理工程において、前記処理容器に供給される処理ガスは所定の温度に調節されていることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の現像処理方法。
【請求項16】
前記現像処理工程の後、前記基板保持部に保持された基板上に、現像液のリンス液を供給するリンス工程を有することを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載の現像処理方法。
【請求項17】
前記リンス工程中、前記処理容器内に不活性ガスを供給することを特徴とする、請求項16に記載の現像処理方法。
【請求項18】
請求項11〜17のいずかに記載の現像処理方法を現像処理装置によって実行させるために、当該現像処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項19】
請求項18に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−21004(P2013−21004A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150661(P2011−150661)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】