説明

現像剤担持体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】高い帯電付与性を有し、さらに帯電付与性が耐久後半においても良好な、高品位の現像剤担持体を提供する。
【解決手段】特定の構造を有するブロックコポリマーを含有している表面層4を具備している現像剤担持体1により、高温高湿環境においても高い帯電性付与性をし、多数枚の耐久使用においても現像剤に対して高い帯電量を安定に付与できる、高品位の現像剤担持体及びプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられる現像剤担持体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において、電子写真感光体(以降「感光体」ともいう)上に形成された静電潜像を、現像剤を担持してなる現像剤担持体と感光体とを近接させて現像する方式がある。このような現像法に用いられる現像剤担持体は、例えば金属の芯体の周囲に、弾性層を介して、あるいは介さずに表面層を設けてなる現像ローラが用いられている。このような現像剤担持体は、摩擦によって現像剤を帯電させる機能を担っている。
【0003】
そこで、現像剤担持体の表面層には、現像剤の帯電量を制御するために種々の帯電付与剤が含有させられている。特許文献1はメチルメタクリレートモノマーと含窒素ビニルモノマーの共重合体を含有する表面被覆層を有する現像剤担持体を開示している。また、特許文献2は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー及びアミノ基含有モノマーを共重合して得られる正帯電付与樹脂を含有する現像ローラを開示している。さらに、特許文献3は、アミノ基含有モノマーとフッ素含有モノマーとビニル基含有カップリング剤成分からなる共重合体を含有する現像スリーブを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−125966号公報
【特許文献2】特開2005−031657号公報
【特許文献3】特開平10−055109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今後、電子写真装置の高性能化が進むにつれて、現像剤担持体に必要とされる性能はより高度になり、より厳しい使用環境における安定した帯電付与性、あるいは、帯電付与性の持続性が要求される。本発明者らの検討によれば、特許文献1〜3はいずれも窒素含有モノマー成分を含有するランダム共重合体を現像剤担持体に添加することで現像剤の帯電量の増大が認められた。しかしながら、これらの現像剤担持体では高温高湿環境における帯電付与性やその持続性において、今後要求される水準を達成できない可能性があるとの認識を得た。
【0006】
そこで、本発明の目的は、高温高湿環境においても高い帯電付与性を有し、多数枚耐久使用においても現像剤に対して高い帯電量を安定に付与できる高品位の現像剤担持体及び該現像剤担持体を用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的にかなう現像剤担持体を提供するため鋭意研究、検討を重ね本発明に至った。すなわち本発明は
下記構造式(1)および(2)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一方の構成単位からなる第1のポリマーブロックと、
下記構造式(3)および(4)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一方の構成単位からなる第2のポリマーブロックと、
下記構造式(1)および(2)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一方の構成単位からなる第3のポリマーブロックとを有し、かつ、該第2のポリマーブロックが該第1のポリマーブロックと該第3のポリマーブロックによって挟まれるブロックコポリマーを含有している表面層を具備していることを特徴とする現像剤担持体。
【0008】
【化1】

[R1は水素原子もしくはメチル基、R2は炭素数1以上13以下の直鎖または分岐を有するアルキル基またはシクロアルキル基を表す。]
【0009】
【化2】

[R3は水素原子もしくはメチル基、R4は炭素数1あるいは2のアルキレン基、R5は炭素数1以上8以下のパーフルオロアルキル基を表す。]
【0010】
【化3】

[R6は水素原子もしくはメチル基、R7,R8は各々独立して炭素数1以上12以下のアルキル基を表す。]
【0011】
【化4】

[R9は水素原子もしくはメチル基、R10,R11,R12は各々独立して炭素数1以上12以下のアルキル基、Xはハロゲンイオンあるいはパラトルエンスルホン酸イオンを表す。]
【0012】
また本発明は、少なくとも現像剤担持体が装着されてなり、電子写真装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、該現像剤担持体が上記の現像剤担持体であることを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
さらに本発明は、潜像を担持する感光体に対向した状態で現像剤を担持する現像剤担持体を備え、該現像剤担持体が前記感光体に現像剤を付与することにより該潜像を現像する電子写真装置において、請求項1乃至4のいずれかに記載の現像剤担持体を具備することを特徴とする電子写真装置に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現像剤担持体の表面層が、トリブロックコポリマーと特定の構造を有する樹脂とを含有することにより、良好な帯電付与性を有し、初期から多数枚耐久使用後においても良好な帯電付与性を維持することが可能な、高品位の現像剤担持体が得られる。また、前記の現像剤担持体を用いることで高品位なプロセスカートリッジ、及び電子写真装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の現像剤担持体の一例を示す概念図である。
【図2】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の電子写真装置の一例を示す概略構成図である
【図4】液循環型浸漬塗工装置の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の現像剤担持体は、図1に示すように、円柱状あるいは中空円筒状の軸芯体2、及び表面層4を有している。また、軸芯体2が円柱状の場合には、図1に示すように導軸芯体2と表面層4の間に弾性層3を有する。特に非磁性一成分接触現像系プロセスでは、弾性層3を有する現像剤担持体が好適に用いられる。
<軸芯体>
軸芯体2は、現像剤担持体1の電極および支持部材として機能するもので、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属または合金、クロム又はニッケルで鍍金(めっき)処理を施した鉄の如き導電性の材質で構成される。
【0016】
<弾性層>
弾性層3には、従来より導電性ゴムローラに用いられている種々のゴム材を用いることができる。ゴム材に使用するゴムとしては、以下のものが挙げられる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム。これらは単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。この中でも、特にセット性能の観点からシリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらのシロキサンの共重合体が挙げられる。
【0017】
弾性層3の中には、導電性付与剤、非導電性充填剤、触媒の如き各種添加剤が適宜配合される。導電性付与剤としてはアルミニウム、銅の如き導電性金属の微粒子、または酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタンの如き、導電性金属酸化物の微粒子、またはカーボンブラックを用いることができる。このうち、カーボンブラックは比較的容易に入手でき、良好な導電性が得られるので特に好ましい。導電性付与剤としてカーボンブラックを用いる場合は、ゴム材中のゴム100質量部に対して10〜80質量部配合される。非導電性充填剤としては、シリカ、石英粉末、酸化チタン、酸化亜鉛または炭酸カルシウムが挙げられる。架橋剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンまたはジクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0018】
<表面層>
表面層4は、構造式(1)および(2)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一方の構成単位からなる第1のポリマーブロックと、構造式(3)および(4)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一方の構成単位からなる第2のポリマーブロックと、構造式(1)および(2)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一方の構成単位からなる第3のポリマーブロックとを有し、かつ、該第2のポリマーブロックが該第1のポリマーブロックと該第3のポリマーブロックによって挟まれているブロックコポリマーを含有している。
【0019】
【化5】

[R1は水素原子もしくはメチル基、R2は炭素数1以上13以下の直鎖または分岐を有するアルキル基またはシクロアルキル基を表す。]、
【0020】
【化6】

[R3は水素原子もしくはメチル基、R4は炭素数1あるいは2のアルキレン基、R5は炭素数1以上8以下のパーフルオロアルキル基を表す。]、
【0021】
【化7】

[R6は水素原子もしくはメチル基、R7,R8は各々独立して炭素数1以上12以下のアルキル基を表す。]、
【0022】
【化8】

[R9は水素原子もしくはメチル基、R10,R11,R12は各々独立して炭素数1以上12以下のアルキル基、Xはハロゲンイオンあるいはパラトルエンスルホン酸イオンを表す。]。
【0023】
通常、現像剤担持体による現像剤への帯電付与は、現像剤担持体の表面における摩擦帯電によって行われる。このため、現像剤担持体に添加する帯電付与剤は現像剤担持体の表面に局在させることが重要となる。表面に局在させる方法としては、バインダー樹脂との極性差を利用する方法が挙げられる。即ち、極性の高いバインダー樹脂に対し、添加する帯電付与剤の極性が低い場合、この帯電付与剤は表面に局在する傾向が高くなる。
【0024】
一般的に電子写真装置に用いられる帯電付与剤は、その構造内に窒素を有するものが多い。帯電付与剤添加による現像剤の帯電制御の詳細なメカニズムは明らかではないが、窒素原子の正電荷傾向が寄与をしていると考えられる。窒素を含有する構造としては、3級アミノ基や4級アンモニウム塩基が挙げられるが、これらの構造は高い極性を有するため表面に局在する傾向は非常に弱い。表面への局在性を向上させる方法として、3級アミノ基や4級アンモニウム塩基を含有するモノマーとアルキルエステルモノマーとの共重合体とすることで、極性を低下させる手法が考えられる。しかしながら、ランダムコポリマーの場合では、表面への局在性と帯電付与性の両立が難しく、充分な帯電付与性が得られない場合がある。また、AB型ジブロックコポリマーの場合では、低極性のブロックの存在により、分子が現像剤担持体の表面に局在させることが可能である。しかし、多数枚の耐久使用の間に帯電付与性を有するアミノ基あるいは4級アンモニウム塩基含有の高極性のブロックがバインダー内部に潜りこみ、耐久使用後に充分な帯電性が得られない場合がある。
【0025】
本発明の現像剤担持体の表面層が含有するブロックコポリマーが高帯電付与性を有し、多数枚耐久使用後においても良好な帯電付与性を維持する理由は明らかではないが、以下のように推定される。
該ブロックコポリマーは、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたは(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーから構成される低極性のブロックを両末端に有する。さらに、これらのブロックの間に挟まれる形で3級アミノ基または4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルエステルモノマーから構成される帯電付与性のブロックを有している。帯電付与性のブロックは高い極性を有するため、帯電付与ブロックは内部に向きやすい傾向にあるが、表面に向かう傾向が強い低極性ブロックが両末端に存在するため、間に挟まれる帯電付与性のブロックは表面に引き上げられる。このため、該ブロックコポリマーは表面に局在し、さらに帯電付与性のブロックは内部に埋もれることなく、表面近傍に存在することができる。このため、該ブロックコポリマーは高い帯電付与性を有する。
また、両末端の低極性ブロックがアンカーとなり、分子の運動性が制限される。このため、耐久使用における帯電付与性のブロックの潜りこみが抑制され、多数枚耐久使用においても帯電付与性が保たれると考えられる。
【0026】
第1のポリマーブロックおよび第3のポリマーブロックを構成するモノマーは、構造式(1)または(2)に示す構造を有する。具体的なモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、「(メタ)アクリレート」はメタクリレートあるいはアクリレートを意味する(以下、同様)。
【0027】
第2のポリマーブロックを構成するモノマーは、構造式(3)または(4)に示す構造を有する。具体的にはN,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ドデシルメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸トリメチルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸トリメチルアミノメチルカチオン、(メタ)アクリル酸ジメチルブチルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸トリエチルアミノエチルカチオン(メタ)アクリル酸ジメチルオクチルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸ジエチルオクチルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸ジメチルラウリルアミノエチルカチオン、(メタ)アクリル酸トリブチルアミノエチルカチオン等の臭化物、塩化物、パラトルエンスルホン酸塩、等が挙げられる。
また、第1のポリマーブロックおよび第3のポリマーブロックとして構造式(5)に示す構造を有し、かつ第2のポリマーブロックが構造式(6)に示す構造を有するとき、各ポリマーブロック間の極性のバランスが優れ、特に好適な帯電付与性を有する。
【0028】
【化9】

[R13は水素原子あるいはメチル基、R14は炭素数1以上4以下の直鎖または分岐を有するアルキル基またはシクロアルキル基を表す。]
【0029】
【化10】

[R15は水素原子あるいはメチル基、R16,R17,R18は各々独立して炭素数1以上12以下のアルキル基、Xはハロゲンイオンあるいはパラトルエンスルホン酸イオンを表す。]
【0030】
本発明において、該ブロックコポリマーは、前記第1のポリマーブロックは前記構成単位のn回の繰り返しで形成されており、前記第2のポリマーブロックが前記構成単位のm回の繰り返しで形成されており、かつ前記第3のポリマーブロックが前記構成単位のl回の繰り返しで形成されており、mに対する(n+l)の比が、下記で示される関係を満たすことが特に好ましい。
5/95≦(n+l)/m≦50/50
mに対する(n+l)の比が、5/95≦(n+l)/m ≦50/50 である場合、低極性ブロックによる表面への局在作用と、帯電付与性ブロックによる帯電付与作用のバランスが良好であり、より高い帯電付与性能を有する。
【0031】
該ブロックコポリマーの重量平均分子量(Mw)は10000以上100000以下が好ましい。Mwが10000以上の場合、表面層4からのブリードアウトの抑制効果に優れ、100000以下の場合、表面層4に含有されるバインダー樹脂との相溶性に優れる。
該ブロックコポリマーの含有量は、表面層4に含有されるバインダー樹脂固形分100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。含有量が0.2質量部以上の場合、帯電付与効果に優れ、10質量部以下である場合、弊害抑制効果に優れる。
【0032】
本発明においては、表面層4に含有されるバインダー樹脂成分が、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリルから選ばれる少なくとも1種からなるポリオール成分を、ポリイソシアネートおよび/またはメラミンで架橋した樹脂、またはフェノール樹脂であることが特に好ましい。
【0033】
前述したように、本発明においては、前記ブロックコポリマーが現像剤担持体の表面近傍に保持されることで、高い帯電付与性とその効果の持続性が発現していると考えられる。帯電付与性のブロックが表面近傍に存在するのは、前述したように、両末端に存在する低極性のブロックが表面に向かう性質を有するためであると考えられる。バインダー樹脂成分の極性が低いと、前記ブロックコポリマーの両末端の低極性のブロックとの親和性が大きくなるため、前記ブロックコポリマー分子を現像剤担持体の表面へ引き上げる傾向が弱くなると思われる。よって、バインダー樹脂成分として、該ブロックコポリマーと適度な極性差を生じるものを使用することで、前記ブロックコポリマーの帯電付与性はさらに向上する。よって、上記のような比較的高極性のバインダー樹脂成分を用いることで、より高い帯電付与性を与える。
【0034】
上記のようなバインダー樹脂成分の中でも、特に、ポリエーテル系ポリウレタン及び/または脂肪族ポリエステルポリウレタン樹脂を用いた場合、現像剤由来の付着物が特に少なく、前記のブロックコポリマー添加の効果が長期に渡って持続するため、好ましい。具体的にはポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。またポリエステルポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールの如きジオール成分、トリメチロールプロパンの如きトリオール成分と、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸等のジカルボン酸との縮合反応により得られる脂肪族ポリエステルポリオールが挙げられる。これらのポリオール成分は必要に応じてあらかじめ2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,4ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の如きイソシアネートにより鎖延長したプレポリマーとしてもよい。これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネートの如き脂環式ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の如き芳香族イソシアネート及びこれらの共重合物や、そのブロック体を用いることができる。
【0035】
本発明では、表面層4に導電性微粒子を含有させることができる。導電性微粒子としては、カーボンブラックが好ましい。該導電性微粒子の性状としては、一次粒径18nm以上25nm以下、かつDBP吸油量が50ml/100g以上160ml/100g以下であるカーボンブラックであると、導電性分散性のバランスが良好であり好ましい。導電性微粒子の含有率は、表面層を形成する樹脂固形分100質量部に対して10質量部以上30質量部以下が好ましい。
【0036】
現像剤担持体として表面粗度が必要な場合は、表面層4に粗さ制御のための微粒子を添加しても良い。粗さ制御用微粒子としては、体積平均粒径が3〜20μmであることが好ましい。また、表面層4に添加する粒子添加量が、表面層4の樹脂固形分100質量部に対し、1〜50部であることが好ましい。粗さ制御用微粒子には、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
【0037】
表面層4の形成方法としては特に限定されるものではないが、例えば、表面層4の各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、基体2の上に塗工し、乾燥固化あるいは硬化することにより形成することが可能である。分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如きビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。また、得られた塗料の基体2への塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法の如き公知の方法が適用可能である。
【0038】
本発明のプロセスカートリッジ及び電子写真装置は、上記本発明の現像剤担持体を有するものであれば、複写機、ファクシミリ、またはプリンターに限定されるものではない。本発明の現像剤担持体を搭載した本発明のプロセスカートリッジ及び電子写真装置の一例として、非磁性一成分現像方式のプリンターを以下に説明する。図2に示すように、プロセスカートリッジは、現像装置10、感光体5、帯電部材12、クリ−ニング装置13等を備えている。現像装置10は、一成分現像剤として非磁性現像剤8を収容した現像容器と、現像容器の内部の長手方向に延在する開口部に位置し感光体5と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光体5の上の静電潜像を現像して像を形成する。プロセスカートリッジは電子写真装置に着脱可能に構成される。
【0039】
図3に示すように、プリンターには、図示しない回転機構により回転される感光体5の周りには、感光体5の表面を所定の極性・電位に帯電させる帯電部材12が配置される。更に、帯電された感光体5の表面に画像露光光11を照射して静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置が配置される。更に、感光体5の周りには、形成された静電潜像の上に現像剤を付着させて現像する本発明の現像剤担持体1を有する現像装置10が配置される。更に、紙22に現像剤像を転写した後、感光体5の上をクリーニングするクリーニング装置13が設けられる。紙22の搬送経路上には、転写された現像剤像を紙22の上に定着させる定着装置15が配置される。
【実施例】
【0040】
本発明のトリブロック型のブロックコポリマーの合成には公知の方法を用いることができる。以下にブロックコポリマー合成の参考として合成例を示す。
また、比較例としてランダムコポリマーとジブロック型のブロックコポリマーの合成例も併せて示す。
【0041】
トリブロック型ブロックコポリマーの合成
(合成例1)メチルメタクリレート/ジメチルメチルアミノエチルメタクリレート/メチルメタクリレート ブロックコポリマー(A1〜A11)の合成;
アルゴン雰囲気下において、メチルメタクリレート6.4gと過酸化ベンゾイル1.0gを80gのメチルエチルケトンに溶解し、80℃で4時間反応させた後、室温に急冷した。続いて、この反応溶液に、ジメチルアミノエチルメタクリレート45.2gを加え、80℃で10時間反応させた後、室温に急冷した。さらにメチルメタクリレート6.4gを加え、80℃で6時間反応させた後、メチルエチルケトンで希釈して、固形分濃度50%のブロックコポリマーA1溶液を得た。こうして得られたブロックコポリマーA1の重量平均分子量は9100であった。
同様の方法を用いて、表1に示すブロックコポリマーA2〜A11を合成した。
【0042】
(合成例2)メチルメタクリレート/メタクリル酸ジメチルアミノエチルオクチルブロマイド塩/メチルメタクリレート ブロックコポリマー(A12〜A25)の合成;
アルゴン雰囲気下において、メチルメタクリレート6.4gと過酸化ベンゾイル1.0gを80gのエタノールに溶解し、80℃で4時間反応させた後、室温に急冷した。続いて、この反応溶液に、メタクリル酸ジメチルアミノエチルオクチルブロマイド塩100.5gを加え、80℃で10時間反応させた後、室温に急冷した。さらにメチルメタクリレート6.4gを加え、80℃で6時間反応させた後、エタノールで希釈して、固形分濃度50%のブロックコポリマーA12溶液を得た。こうして得られたブロックコポリマーA12の重量平均分子量は17500であった。
同様の方法を用いて、表1に示すブロックコポリマーA13〜A25を合成した。
【0043】
(合成例3)2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート/ジメチルメチルアミノエチルメタクリレート/2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート ブロックコポリマー(A26〜A33)の合成;
アルゴン雰囲気下において、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート10.8gと過酸化ベンゾイル1.0gを80gのメチルエチルケトンに溶解し、80℃で4時間反応させた後、室温に急冷した。続いて、この反応溶液に、ジメチルアミノエチルメタクリレート45.2gを加え、80℃で10時間反応させた後、室温に急冷した。さらに2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート10.8gを加え、80℃で6時間反応させた後、メチルエチルケトンで希釈して、固形分濃度50%のブロックコポリマーA26溶液を得た。こうして得られたブロックコポリマーA26の重量平均分子量は10800であった。
同様の方法を用いて、表1に示すブロックコポリマーA27〜A33を合成した。
【0044】
(合成例4)2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート/メタクリル酸ジメチルアミノエチルオクチルブロマイド塩/2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート ブロックコポリマー(A34〜A39)の合成;
アルゴン雰囲気下において、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート10.8gと過酸化ベンゾイル1.0gを80gのエタノールに溶解し、80℃で4時間反応させた後、室温に急冷した。続いて、この反応溶液に、メタクリル酸ジメチルアミノエチルオクチルブロマイド塩100.5gを加え、80℃で10時間反応させた後、室温に急冷した。さらに2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート10.8gを加え、80℃で6時間反応させた後、エタノールで希釈して、固形分濃度50%のブロックコポリマーA34溶液を得た。こうして得られたブロックコポリマーA34の重量平均分子量は19100であった。
同様の方法を用いて、表1に示すブロックコポリマーA35〜A39を合成した。
以上の方法で得られたトリブロック型ブロックコポリマーを表1に示す。
【0045】
【表1】

※表中のR1〜R12及びXは、前記構造式(1)〜(4)中の記号に対応する。
【0046】
ランダムコポリマーの合成
(合成例5)メチルメタクリレート/ジメチルアミノエチルメタクリレート ランダムコポリマー(B1〜B24)の合成;
アルゴン雰囲気下において、ドデシルメタクリレート25.6g、ジメチルアミノエチルメタクリレート40.2g、酸化ベンゾイル1.0gを85gのエタノールに溶解し、80℃で4時間反応させた。その後、室温に急冷し、エタノールで希釈して、固形分濃度50%のランダムコポリマーB1溶液を得た。こうして得られたランダムコポリマーB1の重量平均分子量は10200であった。
【0047】
以下同様の手順で、ランダムコポリマーB2〜B4を得た。得られたランダムコポリマーを表2に示す。表中のx/yの値は、各ランダムコポリマーを構成するモノマーのうち、構造式(1)、構造式(2)から選ばれるモノマーxmolと、構造式(3)、構造式(4)から選ばれるモノマーymolの比、x/yの値を表している。
【0048】
【表2】

※表中のR1〜R12及びXは、前記構造式(1)〜(4)中の記号に対応する。
【0049】
ジブロック型ブロックコポリマーの合成
(合成例6)メチルメタクリレート/ジメチルアミノエチルメタクリレート ジブロックコポリマー(B5〜B8)の合成;
アルゴン雰囲気下において、メチルメタクリレート25.6gと過酸化ベンゾイル1.0gを100gのエタノールに溶解し、80℃で5時間反応させた後、室温に急冷した。続いて、この反応溶液に、ジメチルアミノエチルメタクリレート40.2gを加え、80℃で8時間反応させた後、室温に急冷し、エタノールで希釈して固形分濃度50%のジブロックコポリマーB5溶液を得た。こうして得られたジブロックコポリマーB5の重量平均分子量は10000であった。
【0050】
以下同様の手順で、ジブロックコポリマーB6〜B8を得た。得られたジブロック型ブロックコポリマーを表3に示す。表中のx’/y’の値は、各ジブロック型ブロックコポリマーを構成するモノマーのうち、構造式(1)、構造式(2)から選ばれるモノマーx’molと、構造式(3)、構造式(4)から選ばれるモノマーy’molの比、x’/y’の値を表している。
【0051】
【表3】

※表中のR1〜R12及びXは、前記構造式(1)〜(4)中の記号に対応する。
【0052】
以下に本発明に係る具体的な実施例及び比較例について示す。
(実施例1)
−軸芯体2の調製−
軸芯体2として、SUS304製の直径6mmの芯金にプライマ−(商品名:DY35−051;東レ・ダウコーニング社製)を塗布、焼付けしたものを用意した。
【0053】
−弾性層3の調製−
ついで、軸芯体2を金型に配置し、表4に記載の材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。
【0054】
【表4】

続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを150℃で15分間加硫硬化し、脱型した後、さらに180℃で1時間加熱し硬化反応を完結させ、軸芯体2の外周に直径12mmの弾性層3を設けた。
【0055】
−表面層4の調製−
表面層4の材料として、表5に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにトルエンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0056】
【表5】

【0057】
さらに表1に記載のブロックコポリマーA8溶液、1.80質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。 さらに、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例1の現像剤担持体を得た。
【0058】
(実施例2〜4)
ブロックコポリマーA8をブロックコポリマーA17、A30およびA37に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2〜4の現像剤担持体を得た。
【0059】
(実施例5)
実施例1と同様の手順で、軸芯体2を用意し、その外周に弾性層3を設けた。
次に表面層4の材料として、表6に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにメチルエチルケトンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0060】
【表6】

【0061】
さらに表1に記載のブロックコポリマーA8溶液、3.90質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。さらに、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例5の現像剤担持体を得た。
【0062】
(実施例6〜8)
ブロックコポリマーA8をブロックコポリマーA17、A30およびA37に変更した以外は実施例5と同様にして実施例6〜8の現像剤担持体を得た。
【0063】
(実施例9)
実施例1と同様の手順で、軸芯体2を用意し、その外周に弾性層3を設けた。表面層4の材料として表7に記載の材料を撹拌混合した。
【0064】
【表7】

その後、総固形分比が30質量%になるようにメチルエチルケトンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。ブロックコポリマーA8溶液、3.35質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。更に、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に図4に示す液循環型浸漬塗工装置を用いて浸漬塗工した後に乾燥させた。その後、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例9の現像剤担持体を得た。
【0065】
(実施例10〜12)
ブロックコポリマーA8をブロックコポリマーA17、A30およびA37に変更した以外は実施例9と同様にして実施例10〜12の現像剤担持体を得た。
【0066】
(実施例13)
実施例1と同様の手順で、軸芯体2を用意し、その外周に弾性層3を設けた。
次に表面層4の材料として、表8に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにメチルエチルケトンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0067】
【表8】

【0068】
さらに表1に記載のブロックコポリマーA8溶液、7.30質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。さらに、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例13の現像剤担持体を得た。
【0069】
(実施例14〜16)
ブロックコポリマーA8をブロックコポリマーA17、A30およびA37に変更した以外は実施例13と同様にして実施例14〜16の現像剤担持体を得た。
【0070】
(実施例17)
実施例1と同様の手順で、軸芯体2を用意し、その外周に弾性層3を設けた。
次に表面層4の材料として、表9に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにトルエンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0071】
【表9】

【0072】
さらに表1に記載のブロックコポリマーA8溶液、6.70質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。さらに、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例17の現像剤担持体を得た。
【0073】
(実施例18〜20)
ブロックコポリマーA8をブロックコポリマーA17、A30およびA37に変更した以外は実施例17と同様にして実施例18〜20の現像剤担持体を得た。
【0074】
(実施例21)
実施例1と同様の手順で、軸芯体2を用意し、その外周に弾性層3を設けた。
次に表面層4の材料として表10に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにトルエンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0075】
【表10】

【0076】
さらに表1に記載のブロックコポリマーA8溶液、7.07質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。さらに、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例21の現像剤担持体を得た。
【0077】
(実施例22〜24)
ブロックコポリマーA8をブロックコポリマーA17、A30およびA37に変更した以外は実施例21と同様にして実施例22〜24の現像剤担持体を得た。
【0078】
(実施例25)
実施例1と同様の手順で、軸芯体2を用意し、その外周に弾性層3を設けた。
次に表面層4の材料として、表11に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにメチルエチルケトンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0079】
【表11】

【0080】
さらに表1に記載のブロックコポリマーA28、7.8質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。 さらに、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例25の現像剤担持体を得た。
【0081】
(実施例26〜28)
ブロックコポリマーA8をブロックコポリマーA17、A30およびA37に変更した以外は実施例25と同様にして実施例26〜28の現像剤担持体を得た。
【0082】
(実施例29)
実施例1と同様の手順で、軸芯体2を用意し、その外周に弾性層3を設けた。
次に表面層4の材料として、表12に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにトルエンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0083】
【表12】

【0084】
さらに表1に記載のブロックコポリマーA8溶液、7.8質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。
さらに、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例29の現像剤担持体を得た。
【0085】
(実施例30〜32)
ブロックコポリマーA8をブロックコポリマーA17、A30およびA37に変更した以外は実施例29と同様にして実施例30〜32の現像剤担持体を得た。
【0086】
(実施例33)
実施例1と同様の手順で、軸芯体2を用意し、その外周に弾性層3を設けた。 次に表面層4の材料として表13に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにメタノールに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0087】
【表13】

【0088】
さらに表1に記載のブロックコポリマーA8溶液、3.6質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。さらに、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例33の現像剤担持体を得た。
【0089】
(実施例34〜36)
ブロックコポリマーA8をブロックコポリマーA17、A30およびA37に変更した以外は実施例33と同様にして実施例34〜36の現像剤担持体を得た。
【0090】
(実施例37)
実施例1と同様の手順で、軸芯体2を用意し、その外周に弾性層3を設けた。次に表面層4の材料として表14に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにメチルエチルケトンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0091】
【表14】

【0092】
さらに表1に記載のブロックコポリマーA1溶液、8.74質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。さらに、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例37の現像剤担持体を得た。
【0093】
(実施例38〜75)
ブロックコポリマーA1をブロックコポリマーA2〜A39に変更した以外は実施例37と同様にして実施例38〜75の現像剤担持体を得た。
【0094】
(実施例76)
実施例1と同様の手順で、軸芯体2を用意し、その外周に弾性層3を設けた。
次に表面層4の材料として、表15に記載の材料を撹拌混合し、総固形分比が30質量%になるようにメチルエチルケトンに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0095】
【表15】

【0096】
さらに表1に記載のブロックコポリマーA1溶液、9.18量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料を得た。さらに、この表面層形成用塗料を粘度10〜13cpsになるようメチルエチルケトンで希釈後、前記弾性層の上に浸漬塗工した後に乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例76の現像剤担持体を得た。
【0097】
(実施例77〜114)
ブロックコポリマーA1をブロックコポリマーA2〜A39に変更した以外は実施例76と同様にして実施例77〜114の現像剤担持体を得た。
【0098】
(比較例1)
実施例1の表面層形成用塗料にブロックコポリマーA1を添加せず、それ以外は実施例1と同様にして、比較例1の現像剤担持体を得た。
(比較例2〜9)
ブロックコポリマーA1をランダムコポリマーB1〜B4およびジブロックコポリマーB5〜8に変更した以外は実施例1と同様にして比較例2〜9の現像剤担持体を得た。
【0099】
以上のようにして得られた実施例1〜114及び比較例1〜9の現像剤担持体について以下の項目を評価した。
【0100】
[分子量測定]
本実施例中における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定に用いた装置、並びに条件は表16に記載のとおりである。
【0101】
【表16】

なお測定サンプルは、0.1質量%のTHFとした。更に検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いて測定を行った。
検量線作成用の標準試料として、TSK標準ポリスチレンA−1000、A−2500、A−5000、F−1、F−2、F−4、F−10、F−20、F−40、F−80、F−128(東ソー社製)を用いて検量線の作成を行い、これをもとに得られた測定サンプルの保持時間から重量平均分子量を求めた。
【0102】
[H/Hかぶり評価]
高温高湿環境下におけるかぶりの評価は、図3のような構成を有するレーザープリンター(商品名:LBP5300;キヤノン社製)に本実施例及び比較例の現像剤担持体を装填し、以下の方法で行った。
気温30℃、相対湿度80%RHの環境(以下H/H)下で白ベタ画像出力中にプリンターを停止した。このとき、感光体の上に付着したトナー(現像剤)をテープではがし取り、反射濃度計(商品名:TC−6DS/A;東京電色社製)にて基準に対する反射率の低下量(%)を測定し、これを初期のかぶり値とした。さらに、ブラックトナーで印字率2%にて12000枚連続印刷後、同様の方法で測定した値を耐久後のかぶり値とした。これらのかぶり値に基づき、以下のように評価した。
A:3%未満
B:3%以上5%未満
C:5%以上
【0103】
[現像剤担持体上のトナーの摩擦帯電量(Q/M)測定]
気温30℃、相対湿度80%RHの環境(以下H/H)下において、現像剤担持体の上に担持されたトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集し、その際に金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、吸引したトナーの重量Mを測定した。これらの値から、単位面積当たりの電荷量Q/M(μC/g)を算出した。
以上の結果を、以下の表17〜表20に示す。
【0104】
【表17】

【0105】
【表18】

【0106】
【表19】

【0107】
【表20】

【0108】
実施例1〜8はいずれも本発明のブロックコポリマーを表面層4に含有するため高い帯電付与性を有し、耐久使用による帯電付与性の低下も抑制されている。また、高い帯電付与性を有するためかぶりも抑制されている。
バインダー樹脂成分として、アクリル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリブタジエン系ポリウレタン、イソプレン系ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリエステル系メラミン樹脂、イソプレン系メラミン樹脂のいずれかを含有している、実施例9〜114では、帯電付与性と効果の持続性が良好である。
中でも、実施例42〜46、実施例51〜55、実施例64〜68、実施例71〜75、実施例81〜85、実施例90〜94、実施例103〜107、実施例110〜114をそれぞれ比較すると、ポリマーブロックの構成比が5/95≦(n+l)/m ≦50/50の範囲のもので帯電付与性が良好である。
【0109】
また、ブロックコポリマーを構成するモノマーとして構造式5、構造式6に示す構造を有する、ブロックコポリマーA12〜14、A16〜18、A20〜23を含有している現像剤担持体、すなわち実施例10、実施例14、実施例18、実施例22、実施例26、実施例30、実施例34、実施例48〜50、実施例52〜54、実施例56〜59、実施例87〜89、実施例91〜93、実施例95〜98は、より高い帯電付与性を有し、耐久使用後においても帯電付与性が高いレベルで維持されている。
【0110】
特に、表面層4のバインダー樹脂成分としてポリエーテルポリウレタン樹脂及び/または脂肪族系ポリエステルポリウレタン樹脂を含有する現像剤担持体、すなわち、実施例48〜50、実施例52〜54、実施例56〜59、実施例87〜89、実施例91〜93、実施例95〜98は、高い帯電付与性を有し、且つ耐久使用後においても帯電付与性が高いレベルで維持されている。
それに対し本発明のブロックコポリマーを含有しない比較例1、ランダムコポリマーを含有する比較例2〜5では初期の帯電量が低く、耐久使用後の帯電量の低下も見られ、かぶりも認められた。ジブロック型のブロックコポリマーを含有する比較例6〜9では耐久使用後の帯電量の低下が見られ、これに伴うかぶりの悪化が認められた。
【符号の説明】
【0111】
1:現像剤担持体
2:導電性軸芯体
3:弾性層
4:表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)および(2)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一方の構成単位からなる第1のポリマーブロックと、
下記構造式(3)および(4)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一方の構成単位からなる第2のポリマーブロックと、
下記構造式(1)および(2)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一方の構成単位からなる第3のポリマーブロックとを有し、かつ、
該第2のポリマーブロックが、該第1のポリマーブロックと該第3のポリマーブロックによって挟まれているブロックコポリマーを含有している表面層を具備していることを特徴とする現像剤担持体:
【化1】

[R1は水素原子もしくはメチル基、R2は炭素数1以上13以下の直鎖または分岐を有するアルキル基またはシクロアルキル基を表す。]、
【化2】

[R3は水素原子もしくはメチル基、R4は炭素数1あるいは2のアルキレン基、R5は炭素数1以上8以下のパーフルオロアルキル基を表す。]、
【化3】

[R6は水素原子もしくはメチル基、R7,R8は各々独立して炭素数1以上12以下のアルキル基を表す。]、
【化4】

[R9は水素原子もしくはメチル基、R10,R11,R12は各々独立して炭素数1以上12以下のアルキル基、Xはハロゲンイオンあるいはパラトルエンスルホン酸イオンを表す。]。
【請求項2】
前記表面層に、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリルから選ばれる少なくとも1種からなるポリオール成分を、ポリイソシアネートおよび/またはメラミンで架橋した樹脂、またはフェノール樹脂を含有する、請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記第1のポリマーブロックが前記構成単位のn回の繰り返しで形成されており、
前記第2のポリマーブロックが前記構成単位のm回の繰り返しで形成されており、かつ
前記第3のポリマーブロックが前記構成単位のl回の繰り返しで形成されており、
mに対する(n+l)の比が下記式で示される関係を満たす請求項1または2のいずれかに記載の現像剤担持体:
5/95≦ (n+l)/m ≦50/50 。
【請求項4】
前記第1および第3のポリマーブロックが、下記式(5)で示される構成単位からなり、前記第2のポリマーブロックが、下記式(6)で示される構成単位からなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の現像剤担持体:
【化5】

[R13は水素原子あるいはメチル基、R14は炭素数1以上4以下の直鎖または分岐を有するアルキル基またはシクロアルキル基を表す。]、
【化6】

[R15は水素原子あるいはメチル基、R16,R17,R18は各々独立して炭素数1以上12以下のアルキル基、Xはハロゲンイオンあるいはパラトルエンスルホン酸イオンを表す。]。
【請求項5】
前記表面層が、ポリエーテルポリウレタン樹脂及び脂肪族ポリエステルポリウレタン樹脂から選ばれる少なくとも一方を含有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の現像剤担持体。
【請求項6】
電子写真装置に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の現像剤担持体を有していることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の現像剤担持体を有していることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−127981(P2012−127981A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276428(P2010−276428)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】