説明

現像剤担持体及び現像装置

【課題】トナーの摩擦帯電量分布が均一で、チャージアップによるブロッチやカブリの如き画像不良の発生がなく、高品位な画像を得ることのできる現像剤担持体を提供する。
【解決手段】基体及び基体上に形成された樹脂被覆層を有し、樹脂被覆層は、炭素粒子とカーボンブラックを含有し、樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時、炭素粒子の算術平均粒子径dna1が70nm以上200nm以下で、カーボンブラックの算術平均粒子径dnb1が15nm以上60nm以下で、dna1/dnb1が2超7未満であり、かつ、下記にて算出される炭素粒子の形状係数SF1の平均値が100超120未満である現像剤担持体。
SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4)
[ここで、MXLNGは炭素粒子の投影図における最大長さ(nm)であり、AREAはその投影面積(nm2)である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンタの如き電子写真法を用いた画像形成装置において使用される、現像剤担持体及び該現像剤担持体を有する現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法は、一般的に光導電性物質を利用し、種々の手段により静電潜像担持体(感光体ドラム)上に静電潜像を形成する。次いで現像領域に現像バイアスを作用させ、静電潜像を現像剤(トナー)にて現像してトナー像を形成し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー像を転写した後、熱・圧力により転写材にトナー画像を定着して複写物を得る。電子写真法における現像方法は、主としてキャリアが不要な一成分現像方法とキャリアを有する二成分現像方法に分けられる。
【0003】
一成分現像方法を用いた現像装置は、キャリアが不要なため、現像剤劣化による現像剤交換を少なくすることができると共に、現像装置にトナーとキャリアの濃度調整機構等が不必要なため、現像装置自体を小型化・軽量化できるという利点がある。
【0004】
一成分現像方式に用いられるトナーとしては、従来、合成樹脂中に着色剤を分散させた微粉体が使用されている。例えば、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂の如き結着樹脂中に各種顔料、染料、カーボンブラック、酸化鉄の如き着色粒子を分散し、微粒子化させたものがトナーとして用いられている。
【0005】
最近では、更なる高画質化やトナー消費量の低減化のために、トナーの微粒子化や球形化が広く行われている。
【0006】
このようなトナーの微粒子化や球形化に伴い、現像剤担持体上のトナーの摩擦帯電量分布が不均一になりやすく、また、必要以上にチャージアップしたトナーも発生し、ブロッチやカブリといった画像不良が発生しやすくなる。この摩擦帯電量分布の不均一を改善する方法として、現像剤担持体の樹脂被覆層に、カーボンブラックやグラファイトなどの導電剤を分散させて、樹脂被覆層の導電性を高める方法が、広く知られている(特許文献1〜3)。
【0007】
しかし、前記樹脂被覆層中への導電剤として、カーボンブラックを単体で使用すると、導電性を向上させるために、多量のカーボンブラックを樹脂被覆層中に分散する必要がある。その結果、カーボンブラック同士の凝集が発生しやすくなり、樹脂被覆層の強度低下やトナーの摩擦帯電量の不均一化を招く場合がある。
【0008】
一方、グラファイトを単体で、もしくはカーボンブラックと一緒に樹脂被覆層中に分散させた現像剤担持体とすると、グラファイトの粒径や形状が不均一であるため、トナーの摩擦帯電量分布を十分に均一化できない場合がある。
【0009】
そこで、サーマルブラックと、ケッチェンブラック又はアセチレンブラックを樹脂被覆層に含有してなる現像剤担持体が提案されている(特許文献4、5)。すなわち、ストラクチャーの異なるカーボンブラックを一緒に樹脂被覆層中に分散することで、樹脂被覆層中のカーボンブラックの含有量を少なくしたまま、導電性をある程度向上させている。しかし、この場合、カーボンブラックは一次粒子としてほとんど存在しておらず、数個の一次粒子でストラクチャーを形成し、二次粒子として存在しているため、均一に分散させることが難しく、カーボンブラック同士の凝集が起きやすい。その結果、トナーの摩擦帯電量分布が不均一に成りやすく、ブロッチやカブリなどの画像不良が発生する場合がある。
【0010】
特に近年の微粒子化・球形化したトナーを用いる場合において、現像剤担持体上の現像剤層の形成は使用環境状態、トナーの物性、現像剤担持体表面の状態に依存し、制御しにくくなってきている。また、次世代の超高画質化に向けた現像システムにおいては、静電潜像に対し、忠実に現像するべく、より安定してトナーの摩擦帯電量分布を均一に制御することが切望されている。
【0011】
以上説明したように、従来例でのトナーチャージアップ対策は、ある程度の効果は確認されている。しかしながら、いかなる環境下においてもトナーを均一に摩擦帯電することができ、画像濃度低下、カブリ、画像濃度ムラの如き画像不良の発生が少なく、低コストで安定して良好な現像性を満足できるよう改善された現像剤担持体が望まれている。
【特許文献1】特開平5−61299号公報
【特許文献2】特開平11−125966号公報
【特許文献3】特開平5−6089号公報
【特許文献4】特開平10−254215号公報
【特許文献5】特開2005−132969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、表面上に担持した現像剤(トナー)が均一な摩擦帯電量分布を達成して、チャージアップによるブロッチ、カブリの如き画像不良の発生がなく、高品位な画像を得ることのできる現像剤担持体、及びそれを用いた現像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討した結果、現像剤担持体の樹脂被覆層中の導電剤の分散状態を微細かつ均一に形成することが有効であることを見出した。すなわち、本発明は、以下の構成である。
【0014】
(1)静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像剤により現像してトナー画像を形成する際に用いられ、現像剤を担持し、現像領域に担持した現像剤を搬送する現像剤担持体であって、該現像剤担持体は、少なくとも基体及び基体上に形成された樹脂被覆層を有し、該樹脂被覆層は、少なくとも炭素粒子とカーボンブラックを含有しており、樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時に、該炭素粒子の算術平均粒子径dna1が70nm以上200nm以下、該カーボンブラックの算術平均粒子径dnb1が15nm以上60nm以下、dna1/dnb1が2超7未満であり、かつ、該炭素粒子の下記(式1)にて算出される形状係数SF1の平均値(以降「SF1−1」ともいう)が100超120未満であることを特徴とする現像剤担持体。
SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) (式1)
[(式1)において、MXLNGは炭素粒子の投影図における最大長さ(nm)であり、AREAはその投影面積(nm2)を意味する。]
【0015】
(2)前記炭素粒子は、樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時のdna1(nm)に対する標準偏差s1(nm)の比(s1/dna1)が、0.1超0.3未満であることを特徴とする上記(1)の現像剤担持体。
【0016】
(3)前記樹脂被覆層より抽出される炭素粒子のストークス径Dst1(nm)と前記樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時の炭素粒子のdna1(nm)との比(Dst1/dna1)が、1.0超1.2以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)の現像剤担持体。
【0017】
(4)前記カーボンブラックのpHが、2以上5以下であることを特徴とする上記(1)乃至(3)の現像剤担持体。
【0018】
(5)前記樹脂被覆層中の炭素粒子の含有率C1(質量%)とカーボンブラックの含有率C2(質量%)の比(C1/C2)が、2超20未満であることを特徴とする上記(1)乃至(4)の現像剤担持体。
【0019】
(6)前記樹脂被覆層中の樹脂の含有率B(質量%)、に対する炭素粒子及びカーボンブラックの合計の含有率(C1+C2)の比((C1+C2)/B)が、0.3超1.0未満であることを特徴とする上記(1)乃至(5)の現像剤担持体。
【0020】
(7)少なくともトナーを有する現像剤を収容するための容器及び該容器に貯蔵された現像剤を担持搬送するための現像剤担持体を有し、現像剤層厚規制部材により層状に現像剤担持体上に形成された現像剤を静電潜像担持体と対向する現像領域へと搬送し、該静電潜像担持体の静電潜像を現像剤により現像して、トナー画像を形成する現像装置において、該現像剤担持体が、上記(1)乃至(6)のいずれかの現像剤担持体であることを特徴とする現像装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、樹脂被覆層中にカーボンブラックと共に炭素粒子を共存させて分散させることにより、炭素粒子がカーボンブラックの分散を促進するメディアとして作用し、カーボンブラックの樹脂被覆相中での分散性が一段と向上する。また、炭素粒子がカーボンブラック同士の凝集を阻害するスペーサーとして作用し、カーボンブラックの分散安定性が増す。さらに、炭素粒子自身が樹脂被覆相中で導電剤として均一に分散しやすいため、樹脂被覆層の導電性が向上する。その結果、樹脂被覆層中の導電剤としての炭素粒子とカーボンブラックの分散状態が微細かつ均一であり、トナーの摩擦帯電量分布をより均一化して、ブロッチやカブリの如き画像不良を低減する効果が一段と向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、好ましい実施の態様を挙げて本発明について詳述する。
【0023】
本発明の現像剤担持体は、静電潜像担持体表面の静電潜像を現像剤で現像するための現像剤担持体である。現像剤担持体は、少なくとも基体及び該基体上に形成された樹脂被覆層を有する。
【0024】
該樹脂被覆層は、少なくとも炭素粒子とカーボンブラックを含有している。
【0025】
該炭素粒子の形状は球状であることが特徴であり、具体的には、該樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時に、下記(式1)にて算出される炭素粒子の形状係数SF1の平均値(SF1−1)が100超120未満である。
SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) (式1)
[(式1)において、MXLNGは炭素粒子の投影図における最大長さ(nm)であり、AREAはその投影面積(nm2)を意味する。]
【0026】
ここで、炭素粒子の形状係数SF1の平均値(SF1−1)が100とは、すべての粒子の形状が真球形状であることを意味するので、そのような粒子を得ることは、実質的に不可能である。また、SF1の平均値(SF1−1)が120未満であると、炭素粒子の形状が真球状に近づくため、樹脂被覆層中に分散しやすく、樹脂被覆層中での導電剤、特にカーボンブラックの凝集の発生を抑制することができる。
【0027】
炭素粒子のSF1の平均値(SF1−1)を100超120未満に制御するためには、樹脂被覆層に含有させる前の材料自体で測定した形状係数SF1の平均値(SF1−2)が100超118未満である炭素粒子を用いることが好ましい。
【0028】
また、本発明に用いる炭素粒子は、樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時、その算術平均粒子径dna1が70nm以上200nm以下にあることが特徴である。dna1が70nm以上200nm以下では、樹脂被覆層中でカーボンブラックの分散性を向上させやすく、かつ炭素粒子自体の分散性も良好であり、導電剤としての炭素粒子とカーボンブラックが微細かつ均一に存在し、トナーの摩擦帯電量分布が均一化しやすい。
【0029】
樹脂被覆層中で炭素粒子のdna1を70nm以上200nm以下に制御するには、樹脂被覆層に含有させる前の、炭素粒子自体から測定した算術平均粒子径dna2が75nm以上205nm以下である炭素粒子を用いることが好ましい。
【0030】
また、本発明に用いられる炭素粒子は、樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時のdna1に対する標準偏差s1(nm)の比(s1/dna1)が0.1超0.3未満であることが好ましい。比(s1/dna1)が0.1を超えることで、粒度分布がシャープな炭素粒子が安定して製造し易く、本発明の現像剤担持体を容易に製造することが可能となる。また比(s1/dna1)が0.3未満であることで、炭素粒子の粒度分布が広くなりすぎず、樹脂被覆層中でカーボンブラックの分散性が向上し、その結果、現像剤担持体上のトナーの摩擦帯電量分布がより均一になる。
【0031】
比(s1/dna1)を0.1超0.3未満に制御するためには、樹脂被覆層に含有させる前の材料自体で求めた算術平均粒子径dna2に対する標準偏差s2(nm)の比(s2/dna2)が0.1超0.3未満である炭素粒子を用いることが好ましい。
【0032】
また、樹脂被覆層より抽出される炭素粒子のストークス径Dst1(nm)と炭素粒子の算術平均粒子径dna1(nm)の比(Dst1/dna1)は1.0超1.2以下であることが好ましい。
【0033】
ストークス径Dstは、炭素粒子が凝集した凝集構造体の大きさを表すパラメータとなるもので、この値が大きくなると、凝集した炭素粒子の大きさが大きく、かつ、凝集している炭素粒子の個数が多くなることを意味する。したがって、ストークス径と算術平均粒子径の比は、単一の炭素粒子に対する凝集した炭素粒子の大きさ、すなわち凝集度を表すパラメータとなる。炭素粒子の凝集が全くなく単一粒子のみとすれば、ストークス径=算術平均粒子径(ストークス径/算術平均粒子径=1.0)となり、凝集した炭素粒子数が多くなるに伴いこの値は大きくなる。
【0034】
樹脂被覆層中で、Dst1/dna1=1.0であることは、すべての粒子が凝集していないことを意味するため、実質的に不可能である。Dst1/dna1が1.2以下であることで、炭素粒子がストラクチャーを構成したり、過剰な凝集状態にあったりすることが少ない。このため、樹脂被覆層中での導電剤の分散状態が良好となり、現像剤担持体上のトナーの摩擦帯電量分布が均一に成りやすい。Dst1/dna1を1.0超1.2以下とするには、樹脂被覆層に含有させる前の、材料自体から測定したストークス径Dst2(nm)と算術平均粒子径dna2(nm)の比Dst2/dna2が1.0超1.2以下である炭素粒子を用いることが好ましい。
【0035】
ここで、本発明で使用する炭素粒子は下記のようにして製造することができる。
【0036】
本発明で使用する炭素粒子は、粒子が融着結合した凝集構造体が殆どなく、実質的に単一球である。このような炭素粒子は炭化水素を水素とともに熱分解することにより製造することができる。原料となる炭化水素は、以下のものが挙げられる。メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、ブタジエンの如き脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンの如き単環式芳香族炭化水素;ナフタレン、アントラセンの如き多環式芳香族炭化水素;これらの混合物や液化天然ガス(LNG)。なお、原料炭化水素が常温で液体又は固体の場合には、その沸点以上の温度に加熱して気化させ、ガス状で熱分解炉に供給する。
【0037】
炭化水素は水素をキャリアガスとして水素とともに熱分解炉に供給され、炭化水素と水素の混合ガスを比較的低温で、緩やかに熱分解させることにより、粒度分布がシャープで粒子凝集構造が殆どない、実質的に単一な球状形態の粒子を製造することができる。
【0038】
例えば、トルエンと水素との混合ガスを熱分解させた場合、トルエンは水素中で下記の反応式により熱分解して炭素を生成するものと想定される。
65CH3 → 6C+2H2+CH4
【0039】
すなわち、反応式に見られるように、トルエンの熱分解反応は水素の存在により抑制されることになる。一方、熱分解反応により生成したメタンもさらに熱分解するが、温度が低い場合には分解速度が遅く、トルエンの熱分解により生成した水素、メタンは共にトルエンの熱分解反応を抑制する方向に機能することになる。その結果、トルエンは緩やかに熱分解して単一球状で粒度分布がシャープな炭素粒子の生成が可能となる。
【0040】
また、炭化水素の濃度を低く設定すると、分解反応の過程における炭素粒子の前駆体である中間生成粒子の濃度も低くなり、中間生成粒子の衝突機会が回避される結果粒子間の結合が抑制され、粒子凝集体の形成が防止される。すなわち、単一球状で粒度分布もシャープな炭素微粒子の生成が可能となる。
【0041】
さらに、炭化水素と水素の混合ガスの流速が遅く、層流状態で熱分解反応させると、分解反応過程における炭素粒子の前駆体である中間生成粒子相互間の衝突機会が減少するので、粒子間の凝集が抑制される。したがって、粒度分布がシャープで単一球状形態の炭素粒子を生成することができる。
【0042】
このような理由によりこの製造方法においては、原料となる炭化水素の濃度を0.01vol%乃至40vol%に、炭化水素と水素の混合ガスのレイノルズ数を1乃至20に、分解温度を1100℃乃至1300℃に設定して熱分解反応することが好ましい。
【0043】
混合ガスのレイノルズ数Reは、管の直径L(cm)、流体の密度ρ(g/cm3)、流体の粘度η(Pa・s)、流れの速さU(cm/s)とすると下記式2と定義される。
Re = ρUL/η (式2)
【0044】
従って、混合ガスの混合比、流速を制御することにより、レイノルズ数を制御することができる。レイノルズ数が1000未満である低レイノルズ流体では、層流と呼ばれる規則的な流れが形成される。一方、レイノルズ数が1000以上である高レイノルズ流体は、乱流と呼ばれる不規則な流れが形成されやすい。乱流状態で混合ガスを熱分解反応すると、分解反応過程における炭素粒子の前駆体である中間粒子相互の衝突機会が不均一になり、粒子間で凝集が促進され、粒度分布がシャープで球形度の高い炭素粒子を生成し難い。また、レイノルズ数が1000未満である低レイノルズ流体であっても、そのレイノルズ数の値よって、流れが異なってくる。レイノルズ数が1未満では、まったく淀みのなく定常で対称な流れを形成する。レイノルズ数が1以上20以下では、炭素製造装置内の加熱帯の内壁や反応管においてレイノルズ数の大きさに依存する双子渦ができる。レイノルズ数が20超1000未満になると、双子渦が大きくなり、かつ振動し、カルマン渦列が形成される。本発明で使用する炭素粒子の製造には、レイノルズ数は1以上20以下に設定するのが望ましい。この理由は、双子渦が形成される程度の淀みが炭素粒子を形成する上で必要であるからである。レイノルズ数が1未満では、淀みが形成し難く炭素粒子の生成効率が低下する。レイノルズ数が20超では、双子渦が大きくなりカルマン渦列が形成し、粒度分布がシャープで球形度の高い炭素粒子を生成し難くなるからである。
【0045】
原料ガス中の炭化水素濃度〔(炭化水素ガス流量)/(炭化水素ガス流量+水素ガス流量)〕が40vol%を越えると、微細な粒子径で、粒子凝集体の小さい炭素粒子を生成し難くなる。一方0.01vol%未満の低いガス濃度では炭素粒子の製造効率が低いばかりでなく反応ガス中における炭化水素が少ないために炭素粒子の生成反応が円滑に進まず、粒子性状等が不均一化して、球形度が低くかつ粒度分布もブロードとなり易い。
【0046】
熱分解温度が1100℃未満では炭素粒子の生成効率が低下する場合があり、1300℃超では、熱分解反応が促進されすぎるため、中間生成粒子の相互衝突する機会が増え、凝集粒子が生成しやすくなり、単一球状の炭素粒子を生成することが困難となる。
【0047】
さらに本発明の炭素粒子は、熱分解で生成した粒子を、さらに無酸素雰囲気等で600℃乃至2000℃の温度で熱処理して、不純物を除去することが炭素粒子の導電性を均一にし、しかも樹脂被覆層中での分散性を向上するために好ましい。
【0048】
炭素粒子を液状の炭化水素を用いて製造する製造装置の概要を図3に示す。
【0049】
高純度水素ガスが充填されたガスボンベ301、302があり、その一方のガスボンベ301は流量計303、配管306を経て、液状の炭化水素を貯蔵する原料タンク305に接続されている。他方のガスボンベ302は流量計304、配管307を経て、炭化水素を加熱分解する分解炉310に接続されている。原料タンク305からは原料炭化水素がガスボンベ301から供給された水素により気化して水素と共に導出される配管308が結合しており、この配管308は分解炉310の手前で配管307と結合されている。なお、配管307には、配管308と結合し、分解炉310との間に、分解炉310内の反応圧力を測定するための圧力計309が取り付けられている。
【0050】
分解炉310は、炉内が予熱帯域311と加熱帯域313に分けられている。炉外部に予熱帯域311加熱用ヒータ312が設けられ、熱電対(不図示)でコントロールされている温度調節器316により調節できるようになっている。加熱帯域314には、反応ガスの流速を調製するための反応管314が設けられ、さらに炉外部に該加熱帯域313加熱用ヒータ315が設けられている。加熱帯域311の温度を測るために分解炉310の原料ガス導入側末端には放射温度計318が設けられ、この放射温度計によりヒータ315がコントロールされている。なお、ヒータ312、315には電熱加熱方式や高周波誘導加熱方式が使用される。
【0051】
分解炉310からは、反応後の炭素球を含む反応済ガスを冷却するための冷却管319を経て、炭素球を捕集する捕集室320へ繋がる配管が出ている。捕集室320には圧力調節弁321が取り付けられ、分解炉310の圧力を調節できるようになっている。圧力調節弁321の先には減圧ポンプ322が接続され、さらに反応済ガス中の顆粒を捕集するための水槽323が設けられ、反応済ガスが前記水層323中でバブリングするようになっている。水槽323から出た反応済ガスは焼却炉324にて燃やされて、排出される。
【0052】
一方、捕集された炭素球は捕集室320から取り出される。得られた炭素球を無酸素雰囲気の加熱炉(不図示)で、600℃乃至2000℃の温度で熱処理して、炭素球表面に残留したタール状の未分解炭素物質を除去し、冷却・捕集して、本発明に用いる炭素粒子を得る。
【0053】
本発明の現像剤担持体は、樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時のカーボンブラックの算術平均粒子径dnb1が15nm以上60nm以下にあることが望ましい。樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時のカーボンブラックの算術平均粒子径dnb1とは、裁断面のカーボンブラックの投影画像から観察されるカーボンブラックの一次粒子径を計測した値である。このカーボンブラックの算術平均粒子径dn2を15nm以上にすることで、樹脂被覆層中でのカーボンブラックの分散性が均一となり、樹脂被覆層の導電性を低い状態に制御しやすくなる。その結果、カーボンブラックの樹脂被覆層中での含有量を少なくすることができ、樹脂被覆層としたときの強度を高くすることができるため、現像装置に用いた時の耐久性が向上する。また、60nm以下にすることで、導電剤のネットワーク構造が形成しやすくなり、現像剤担持体としたときの体積抵抗を低くすることができ、トナーのチャージアップによるカブリの発生を低減しやすくなる。
【0054】
カーボンブラックの算術平均粒子径dnb1を、15nm以上60nm以下に制御するには、樹脂被覆層に含有させる前の、材料自体で測定した算術平均粒子径dnb2が20nm以上65nm以下であるカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0055】
カーボンブラックのpHとしては、2以上5以下であることが好ましい。pHを5以下にすることで、カーボンブラック自体の分散性も向上させることができるので、炭素粒子と共存させて樹脂被覆層中に分散させた時の分散均一性の効果が一段と高まり、現像剤担持体上のトナーの摩擦帯電量分布がより均一になりやすい。また、pHが2より小さいカーボンブラックは、実質的に製造が困難である。
【0056】
また、本発明のカーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどの公知のカーボンブラックを用いることができるが、DBP吸油量の比較的大きいケッチェンブラック、アセチレンブラックを用いることが好ましい。DBP吸油量は、カーボンブラックのストラクチャーの発達度合いを示すパラメータの一つであり、好ましくは50cm3/100g以上、より好ましくは90cm3/100g以上である。DBP吸油量が50cm3/100g以上であることで、カーボンブラックのストラクチャーにより、導電剤のネットワーク構造が形成しやすく、現像剤担持体としたときの体積抵抗を低くすることができ、カブリの発生を低減しやすい場合がある。
【0057】
樹脂被覆層中の炭素粒子のdna1とカーボンブラックのdnb1の比(dna1/dnb1)が、2超7未満であることが本発明の特徴である。比(dna1/dnb1)がこの範囲内であることで、樹脂被覆層中において炭素粒子とカーボンブラックによって形成される導電剤のネットワーク構造が形成しやすくなる。これにより現像剤担持体の樹脂被覆層の体積抵抗は低くかつ均一に制御することができ、トナーのチャージアップによるカブリの発生を低減しやすくなる。
【0058】
樹脂被覆層中の炭素粒子の含有率C1(質量%)とカーボンブラックの含有率C2(質量%)の比(C1/C2)が、2超20未満であることが好ましい。比(C1/C2)が2を超えることで、炭素粒子とカーボンブラックの樹脂被覆層中での分散均一性が促進され、現像剤担持体上のトナーの摩擦帯電量分布が均一に制御しやすくなる。また、比(C1/C2)が20未満であることで、樹脂被覆層中において炭素粒子とカーボンブラックによって形成される導電剤のネットワーク構造が形成しやすくなる。これにより現像剤担持体の樹脂被覆層の体積抵抗は低くかつ均一に制御することができ、トナーのチャージアップによるカブリの発生を低減しやすくなる。
【0059】
なお、樹脂被覆層の体積抵抗は、好ましくは104Ω・cm以下、より好ましくは10-3Ω・cm以上103Ω・cm以下である。樹脂被覆層の体積抵抗が104Ω・cmを超えると、トナーのチャージアップによる帯電付与不良が発生しやすく、その結果ブロッチやカブリが発生しやすくなる場合がある。
【0060】
また、樹脂被覆層中で、樹脂の含有率B(質量%)に対する炭素粒子とカーボンブラック合計の含有率(C1+C2)の比((C1+C2)/B)が、0.3超1.0未満であることが好ましい。比((C1+C2)/B)が0.3を超えることで、現像剤担持体としたときの樹脂被覆層の体積抵抗を低くすることができ、トナーのチャージアップを防止しやすい。また、比((C1+C2)/B)を1.0未満にすることで、現像剤担持体としたときの樹脂被覆層の強度が増し、耐久前後における現像性の変化が少なくなりやすい。
【0061】
また、本発明の樹脂被覆層中に炭素粒子、カーボンブラック以外に、さらに、以下に挙げる導電性粒子を含有させても良い。アルミニウム、銅、ニッケル、銀の如き金属粉体、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズの如き金属酸化物、カーボンファイバー、グラファイトの如き炭素物。
【0062】
本発明の現像剤担持体を構成する樹脂被覆層に用いられる樹脂としては、従来から現像剤担持体の樹脂被覆層に一般に用いられている公知の樹脂を使用することができ、以下のものが挙げられる。スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂の如き熱あるいは光硬化性樹脂。中でも、シリコーン樹脂、フッ素樹脂のような離型性のあるものが好ましい。あるいは、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂のような機械的性質に優れたものが好ましい。
【0063】
本発明においては、現像剤担持体の帯電付与性を調整するために、上記樹脂被覆層中に荷電制御剤をさらに含有させてもよい。その場合、荷電制御剤の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して1質量部乃至100質量部とすることが好ましい。1質量部未満では添加による荷電制御剤添加の効果が見られず、100質量部を超えると樹脂被覆層中で分散不良が起き、被膜強度の低下を招き易い。
【0064】
荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、これらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物)、高級脂肪酸の金属塩、グアニジン類、イミダゾール化合物。
【0065】
これらの荷電制御剤の中でも、特に粒子径の小さいネガトナーを用いる場合は、荷電制御剤として鉄粉に対して正摩擦帯電性である第4級アンモニウム塩化合物を樹脂被覆層中に含有させることが、トナーへの良好な摩擦帯電付与性を向上させる点でより好ましい。このとき、前記樹脂被覆層は、樹脂構造中にアミノ基、=NH基、又はNH−結合の少なくともいずれかを有する樹脂を含有することが、粒子径の小さいネガトナーへの良好な摩擦帯電付与性の点でさらに好ましい。
【0066】
現像剤担持体上に上記の第4級アンモニウム塩化合物と前記の特定の構造を有する樹脂を併用して形成した樹脂被覆層を現像剤担持体上に設けることで、ネガトナーの過剰な摩擦帯電を防ぐ方向に働く。その結果、ネガトナーへの摩擦帯電付与をコントロールすることができる。これにより、現像剤担持体上でのトナーのチャージアップを防ぎ、トナーの均一な摩擦帯電安定性を保持できる。その結果、環境安定性及び長期安定性を有する高精細画像を提供することが可能となる。
【0067】
明確な理由は定かではないが、それ自身が鉄粉に対して正摩擦帯電性である第4級アンモニウム塩化合物は、構造中にアミノ基、=NH又はNH−の少なくとも1つを含む樹脂中に均一に分散され得る。更に、樹脂被覆層を形成する際に樹脂の構造中に取り込まれ、上記化合物を有する結着樹脂組成物自身が負摩擦帯電性を持つようになるものと考えられる。そのため負摩擦帯電性トナーに対しては、トナーに負摩擦帯電量が過剰となることを妨げる方向に働き、結果として負摩擦帯電量を適宜にコントロールすることが可能となる。
【0068】
第4級アンモニウム塩化合物としては、鉄粉に対して正摩擦帯電性を有するものであればいずれのものでもよいが、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【化1】

[式(1)において、R1乃至R4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、アルアルキル基を表し、X-は酸の陰イオンを表す。]
【0070】
式1で、X-の酸イオンの具体例としては、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機リン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、モリブデン原子或いはタングステン原子を含むヘテロポリ酸が挙げられる。
【0071】
本発明に好適に用いられる、それ自身が鉄粉に対して正摩擦帯電性である第4級アンモニウム塩化合物として下記表1乃至表3に記載するものが挙げられる。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
これら第4級アンモニウム塩との組合せで構造中にアミノ基、=NH又はNH−の少なくとも1つを含む好ましい樹脂として、以下のものが挙げられる。その製造工程において触媒として含窒素化合物を用いて製造されたフェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドを硬化剤として用いたエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、或いはこれらの樹脂を一部に含んだ共重合体。これら結着樹脂との混合物の成膜時に第4級アンモニウム塩化合物が結着樹脂の構造中に容易に取り込まれる。
【0076】
現像剤担持体表面、すなわち樹脂被覆層表面の粗さは、その現像方式によって異なるが、一般的には、算術平均粗さRa(JIS B0601(2001))が0.15μm乃至3.00μmであることが好ましい。
【0077】
例えば、図4に示されるような、磁性トナーを用い、現像剤層厚規制部材として現像剤担持体と間隙をもって配置された磁性ブレードを有するような現像装置では、Raが0.15μm乃至2.00μmであることが好ましい。Raが0.15μm以上であると、現像剤の搬送量を十分にすることができるので、現像剤の搬送量不足による画像濃度薄や現像剤コート層の不均一による画像不良の発生が容易に防止される。また、Raが2.00μm以下であると、現像剤の搬送量が安定し、かつ、現像剤の融着の影響となりうる鋭角な突起を少なくすることができるので、現像剤の搬送量ムラによる現像剤の摩擦帯電不良や、鋭角な突起を基点とした現像剤の融着の発生を防止しやすい。
【0078】
また、図5や図6に示されるような、現像剤層規制部材として弾性部材を現像剤担持体に接触して配置するような現像装置では、Raが0.30μm乃至3.00μmであることが好ましい。Raが0.30μm以上であると、現像剤の搬送量を十分にすることができるので、現像剤の搬送量不足による画像濃度薄や現像剤コート層の不均一による画像不良の発生が容易に防止される。また、Raが3.00μm以下であると、現像剤の搬送量が安定し、かつ、現像剤の融着の影響をなりうる鋭角な突起を少なくすることができるので、現像剤の搬送量ムラによる現像剤の摩擦帯電不良や、鋭角な突起を基点とした現像剤の融着の発生を防止しやすい。
【0079】
樹脂被覆層の粗さを好ましい範囲にする方法としては、樹脂被覆層を形成する基体にサンドブラストにより表面粗度を付与し、その上に樹脂被覆層を形成する方法や、樹脂被覆層に凹凸付与粒子を含有させて表面粗度を得る方法がある。表面粗度の制御の容易さ、精度から樹脂被覆層に凹凸付与粒子を含有させる方法が好ましい。
【0080】
凹凸付与粒子は、現像剤担持体の樹脂被覆層の表面に適度な表面粗度を保持させて現像剤の搬送性を向上し、現像剤と樹脂被覆層との接触機会を増やすと共に樹脂被覆層の耐摩耗性を向上する効果がある。
【0081】
凹凸付与粒子としては、添加することによる効果をより良好に発揮させるためには、その個数平均粒径が1μm以上20μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。個数平均粒径が1μmを超えることで、樹脂被覆層中の含有量が少なくても樹脂被覆層表面に粗さを付与する効果が期待できる。なお、凹凸付与粒子の個数平均粒径が20μmを超える場合には、樹脂被覆層の表面の粗さが不均一になると共に粗さが大きくなりすぎて現像剤の摩擦帯電が不十分となる。さらに、凹凸付与粒子の近傍で現像剤の融着が起こりやすくなって、カブリや濃度薄の如き画質悪化を招く場合がある。
【0082】
このような凹凸付与粒子としては、以下のものが挙げられる。樹脂粒子、金属酸化物粒子、炭素化物粒子。また、本発明の効果を生かすためには、凹凸付与粒子としては、球状及びそれに類する形状のものを用いた方が好ましい。
【0083】
樹脂被覆層は、例えば、樹脂被覆層用の各成分を溶剤中に分散混合して塗料化し、基体上に塗工し、乾燥固化あるいは硬化することにより形成することが可能である。各成分の塗料液中への分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如きビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。この時、ビーズの粒径としては、500μm以下が各成分を塗料液中へ均一に分散混合するために好ましく、100μm以下がより好ましい。また、塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法の如き公知の方法が適用可能である。
【0084】
なお、樹脂被覆層の膜厚は、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは4μm以上20μm以下とすることで、均一な膜厚に成り易い。このような厚さは、樹脂被覆層に使用する材料にもよるが、付着質量として4000mg/m2以上20000mg/m2以下にすれば得られる。
【0085】
本発明に用いる現像剤担持体の基体としては、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材がある。中でも金属のような剛体の円筒管もしくは中実棒は、加工精度と耐久性が優れているため好ましい。このような基体はアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮の如き非磁性の金属又は合金を円筒状あるいは円柱状に成型し、研磨、研削の如き加工を施したものが好適に用いられる。また、前記基体上にゴム層又は樹脂層を形成したものを、本発明の基体として用いても良い。
【0086】
これらの基体は画像の均一性を良くするために、高精度に成型あるいは加工されて用いられる。例えば長手方向の真直度が30μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下であることが望ましい。現像剤担持体(スリーブ)と感光ドラムとの間隙の振れとしては、垂直面に対し均一なスペーサーを介して突き当て、スリーブを回転させた場合の垂直面との間隙の振れも30μm以下、好ましくは20μm以下、さらには10μm以下であることが好ましい。現像担持体の基体は、材料コストや加工のしやすさからアルミニウムが好ましく用いられる。
【0087】
次に、本発明の現像装置について説明する。
【0088】
図4は、磁性一成分現像剤を用いた場合の本発明の現像装置における実施形態の一例を示す模式図である。
【0089】
図4に示した現像装置は、現像剤を収容するための容器(現像容器)413と、該容器413に貯蔵された現像剤(不図示)を担持搬送するための現像剤担持体409を有している。この現像装置は現像剤層厚規制部材(磁性ブレード)411により現像剤担持体409上に現像剤を層状にしながら静電潜像担持体410と対向する現像領域Dへと搬送する。そして該領域Dで、静電潜像担持体410の静電潜像へ現像剤を転送することにより現像し、トナー像を形成する。本発明の現像装置では、現像剤担持体409が本発明の現像剤担持体であることを特徴とする。
【0090】
静電潜像担持体410は、公知のプロセスにより形成することができる。静電潜像を担持する静電潜像担持体410、例えば、感光ドラム410は、矢印B方向に回転する。現像剤担持体409は、現像容器413に収容された磁性トナー粒子を有する磁性一成分現像剤を担持して、矢印A方向に回転することによって、現像剤担持体409と感光ドラム410とが対向している現像領域Dに現像剤を搬送する。現像剤担持体409においては、磁性一成分現像剤を現像剤担持体409上に磁気的に吸引しかつ保持するため、現像スリーブ406内に磁石(マグネットローラ)407が配置されている。なお、現像スリーブ406は、基体405である金属円筒管上に樹脂被覆層404が被覆形成されている。
【0091】
現像容器413内へ、現像剤補給容器(不図示)から現像剤供給部材(スクリューなど)418を経由して磁性一成分現像剤が送り込まれてくる。現像容器413は、第一室416と第二室415に分割されており、第一室416に送り込まれた磁性一成分現像剤は攪拌搬送部材414により現像容器413及び仕切り部材417により形成される隙間を通過して第二室415に送られる。磁性一成分現像剤はマグネットローラ407による磁力の作用により現像剤担持体409上に担持される。第二室415中には現像剤が滞留するのを防止するための攪拌部材418が設けられている。
【0092】
磁性一成分現像剤は、磁性トナー粒子相互間及び現像剤担持体409表面の樹脂被覆層404との摩擦により、感光ドラム410上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。現像領域Dに搬送される現像剤の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材411としての強磁性金属製の磁性ブレード(ドクターブレード)が装着されている。磁性ブレード411は、通常、現像剤担持体409の表面から50μm以上500μm以下の間隙を有して現像剤担持体409に対向するように現像容器413に装着される。マグネットローラ407の磁極N1からの磁力線が磁性ブレード411に集中することにより、現像剤担持体409上に磁性一成分現像剤の薄層が形成される。なお、本発明においては、この磁性ブレード411に替えて非磁性の現像剤層厚規制部材を使用することもできる(図5参照)。
【0093】
現像剤担持体409上に形成される磁性一成分現像剤の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像剤担持体409と感光ドラム410との間の最小間隙よりもさらに薄いものであることが好ましい。
【0094】
また、現像剤担持体409に担持された磁性トナーを有する磁性一成分現像剤を飛翔させるため、現像剤担持体409にはバイアス手段としての現像バイアス電源412により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電潜像の画像部(現像剤が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像剤担持体409に印加するのが好ましい。
【0095】
現像された画像の濃度を高め、かつ階調性を向上させるためには、現像剤担持体409に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位との中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像剤担持体409に印加するのが好ましい。
【0096】
この時、高電位部と低電位部を有する静電潜像の高電位部にトナーを付着させて可視化する、いわゆる正規現像の場合には、静電潜像の極性と逆極性に摩擦帯電する磁性一成分現像剤を使用する。高電位部と低電位部を有する静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、いわゆる反転現像の場合には、静電潜像の極性と同極性に摩擦帯電する磁性一成分現像剤を使用する。この場合、高電位、低電位というのは、絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、磁性一成分現像剤(磁性トナー粒子)は少なくとも現像剤担持体409表面の樹脂被覆層404との摩擦により帯電する。
【0097】
図4には、現像剤担持体409上の磁性一成分現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材411として、現像剤担持体409から離間されて配置された磁性ブレード411を用いた例を示した。図5は、磁性一成分現像剤を使用する本発明の現像装置の実施形態の他の例の構成を示す模式図である。図5に示したように、本発明の現像装置は、ウレタンゴム、シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、あるいはリン青銅、ステンレス鋼の如き金属弾性を有する材料の弾性板からなる弾性ブレード519を使用する実施形態としてもよい。この弾性ブレード519は、現像剤担持体509に対して、磁性一成分現像剤を介して接触あるいは押し当てても良い。このような現像剤層厚規制部材519を接触又は押し当てるタイプの現像装置では、現像剤層はさらに強い規制を受けながら現像剤担持体509上に薄い層を形成する。このため、現像剤担持体409上に、磁性ブレード411を使用した図4に示した実施形態の場合よりもさらに薄い現像剤層となり、それぞれの現像剤の摩擦帯電のばらつきを拾いやすく、現像剤の摩擦帯電量分布がブロードになりやすい。本発明では、このような系においても現像剤担持体表面の導電剤の分布が均一なため、現像剤の摩擦帯電量分布をシャープにすることができる。なお、現像剤担持体509に対する弾性ブレード519の当接圧力は、線圧0.049N/cm以上0.49N/cm以下であることが、磁性一成分現像剤の規制を安定化させ、磁性現像剤層の厚みを好適に規制できる点で好ましい。弾性ブレード519の当接圧力を線圧0.049N/cm以上とすると、磁性一成分現像剤の規制が充分となり、カブリや磁性一成分現像剤もれを防止することができる。また、線圧0.49N/cm以下とすると、磁性一成分現像剤の摺擦力が適度な大きさとなり、磁性一成分現像剤の劣化や現像剤担持体509及び現像剤層厚規制部材519への融着を防止することができる。
【0098】
本発明の現像剤担持体は、以上の様な磁性一成分現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、すなわち非接触型現像装置に組み込むことが有効である。また、非磁性一成分現像剤を用いた非接触型現像装置や非磁性一成分接触型現像装置及び、二成分現像装置も本発明の現像剤担持体を使用することができる。
【0099】
図6は、非磁性一成分現像剤を使用する本発明の現像装置の実施形態の一例の構成を示す模式図である。図6に示した実施形態において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する静電潜像担持体610、例えば感光ドラムは、矢印B方向に回転される。現像剤担持体606としての現像スリーブは、基体(金属製円筒管)604とその表面に形成される導電性樹脂被覆層605から構成されている。非磁性一成分現像剤を用いているので基体604の内部には磁石は内設されていない。基体として金属製円筒管の替わりに円柱状部材を用いることもできる。
【0100】
現像容器613内には非磁性一成分現像剤622を撹拌搬送するための撹拌搬送部材614が設けられている。
【0101】
現像スリーブ606に現像剤を供給し、かつ現像後の現像スリーブ606の表面に残存する現像剤を剥ぎ取るための現像剤供給・剥ぎ取り部材620が現像スリーブ606に当接している。現像剤供給・剥ぎ取り部材(現像剤供給・剥ぎ取りローラ)620が現像スリーブ606と同じ方向(矢印C方向)に回転することにより、供給・剥ぎ取りローラ620の表面は、現像スリーブ606の表面とカウンター方向に移動する。これにより、現像容器613内で非磁性一成分現像剤は、現像剤スリーブ606に供給される。現像スリーブ606は、供給された非磁性一成分現像剤を担持して、矢印A方向に回転することにより、現像スリーブ606と感光ドラム610とが対向した現像部Dに非磁性一成分現像剤を搬送する。現像スリーブ606に担持されている非磁性一成分現像剤は、現像スリーブ606の表面に対して現像剤層を介して押し当てられた現像剤層厚規制部材619によりその厚みが規定される。非磁性一成分現像剤は現像スリーブ606との摩擦により、感光ドラム610上の静電潜像を現像するのに十分な帯電をする。現像スリーブ606上に形成される非磁性一成分現像剤の薄層の厚みは、現像部における現像スリーブ606と感光体ドラム610との間の最小の間隙より、さらに薄いものであることが好ましい。このような非接触型現像装置に本発明は特に有効である。しかし、現像剤の薄層の厚さが、現像部における現像スリーブ606と感光体ドラム610との間の最小の間隙以上の厚さとなる接触型現像装置にも、本発明は適用することができる。なお、煩雑を避けるため、非接触型現像装置を例にとって、以下、説明を行う。
【0102】
現像スリーブ606には、これに担持された非磁性一成分現像剤を飛翔させるために、電源612より現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電潜像の画像部(非磁性現像剤が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧が現像スリーブに印加されることが好ましい。現像画像の濃度を高めたり、階調性を向上させたりするために、現像スリーブ606に交番バイアス電圧を印加して、現像部に向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合、上記画像部の電位と背景部の電位間の値を有する直流電圧成分が重畳された交番バイアス電圧を現像スリーブ606に印加することが好ましい。
【0103】
高電位部と低電位部を有する静電潜像の高電位部にトナーを付着させて可視化するいわゆる正規現像では、静電潜像の極性と逆極性に摩擦帯電する非磁性一成分現像剤を使用する。静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化するいわゆる反転現像では、静電潜像の極性と同極性に摩擦帯電する非磁性一成分現像剤を使用する。高電位と低電位というのは、絶対値による表現である。いずれにしても、非磁性一成分現像剤は現像スリーブとの摩擦により静電潜像を現像するための極性で帯電する。
【0104】
現像剤供給・剥ぎ取り部材620としては、樹脂、ゴム、スポンジの如き弾性ローラ部材が好ましい。現像剤供給・剥ぎ取り部材620として、弾性ローラに代えてベルト部材又はブラシ部材を用いることもできる。現像剤供給・剥ぎ取り部材620として弾性ローラからなる現像剤供給・剥ぎ取りローラを用いる場合には、現像剤供給・剥ぎ取りローラの回転方向は現像スリーブ606に対して適宜同方向若しくはカウンター方向を選択することができる。通常、カウンター方向に回転することが、剥ぎ取り性及び供給性の点でより好ましい。
【0105】
現像スリーブ606に対する現像剤供給・剥ぎ取り部材620の侵入量は、0.5mm以上2.5mm以下であることが、現像剤の供給及び剥ぎ取り性の点で好ましい。現像剤供給・剥ぎ取り部材620の侵入量を0.5mm以上とすると、剥ぎ取り性が向上し、ゴーストの発生を抑えることができる。侵入量を2.5mm以下とすると、トナーのダメージがなく、トナー劣化や融着やカブリを抑えることができる。
【0106】
図6に示した現像装置では、ウレタンゴム、シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、あるいはリン青銅、ステンレス銅の如き金属弾性を有する材料の弾性ブレード619を使用している。この弾性ブレード619は、現像スリーブ606の回転方向と逆の姿勢で現像スリーブ606に押し当てられている。
【0107】
この弾性ブレード619としては、特に安定した規制力とトナーへの安定した(負)摩擦帯電付与性のために、安定した加圧力の得られるリン青銅板表面にポリアミドエラストマー(PAE)を貼り付けた構造のものを用いることが好ましい。ポリアミドエラストマー(PAE)としては、ポリアミドとポリエーテルの共重合体が挙げられる。
【0108】
現像スリーブ606に対する現像剤層厚規制部材619の当接圧は、本例においても磁性一成分現像剤を使用する図5に示したものと同様に、線圧0.049N/cm以上0.49N/cm以下であることが好ましい。このような当接圧にすると、現像剤の規制を安定化させ、現像剤層厚を好適にさせることができる点で好ましい。現像剤層厚規制部材619の当接圧力を線圧0.049N/cm以上とすると、現像剤の規制が適切なものとなり、カブリや非磁性一成分現像剤のもれを防止することができる。また、線圧0.49N/cm以下とすると、非磁性一成分現像剤へのダメージを軽減し、非磁性一成分現像剤の劣化やスリーブ606及びブレード619への融着を防止することができる。
【0109】
次に、本発明の現像装置にて用いられる現像剤(トナー)について説明する。
【0110】
本発明に使用する現像剤(トナー)は、現像剤用結着樹脂に着色剤、荷電制御剤、離型剤、無機微粒子を配合したもので、形式として、磁性材料を必須成分とする磁性一成分現像剤と磁性材料を含まない非磁性一成分現像剤がある。形式は現像装置に適応して適宜選択される。
【0111】
また、本発明で使用する現像剤(トナー)は、いずれの形式であっても、重量平均粒径が4μm乃至11μmの範囲にあることが好ましい。トナーの重量平均粒径が11μmを超えるような場合は、微小ドット画像の再現性が低下する場合がある。一方、トナーの重量平均粒径が4μm未満の場合は、帯電不良によるカブリ、濃度薄等の問題が発生することがある。
【0112】
このようなものを使用すれば、トナーの摩擦帯電量あるいは画質及び画像濃度がバランスのとれたものとなる。
【0113】
現像剤(トナー)用結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能であり、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が挙げられるが、この中でもビニル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0114】
現像剤(トナー)には摩擦帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤をトナー粒子に包含させる(内添)、又はトナー粒子と混合して用いる(外添)ことができる。これは、荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適の荷電量コントロールが可能となるためである。
【0115】
正の荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン、トリアミノトリフェニルメタン系染料及び脂肪酸金属塩による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩。これらを単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0116】
また、負の荷電制御剤としては、有機金属化合物、キレート化合物が有効である。その例としては、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロムがある。特にアセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体又は塩が好ましい。
【0117】
現像剤(トナー)が、磁性現像剤(トナー)である場合、磁性材料を配合する。磁性材料としては、以下のものが挙げられる。マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き酸化鉄系金属酸化物;Fe、Co、Niのような磁性金属;これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金;及びこれらの混合物。この際は、これら磁性材料を、着色剤としての役目を兼用させても構わない。
【0118】
現像剤(トナー)に配合する着色剤として、従来からこの分野で使用している顔料、染料を使用することが可能であり、適宜選択して使用すればよい。
【0119】
現像剤(トナー)には離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス、モンタンワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。
【0120】
さらに、現像剤(トナー)には、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上及びクリーニング性向上のために、シリカ、酸化チタン、アルミナの如き無機微粉体を外添すること、すなわち現像剤表面近傍に存在させていることが好ましい。中でも、シリカ微粉体が好ましい。
【0121】
無機微粉体以外の外添剤をさらに加えて用いても良い。無機微粉体以外の外添剤としては、テフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンのような滑剤(中では、ポリフッ化ビニリデン)、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウムの如き研磨剤がある。
【0122】
現像剤(トナー)を作成するには、まず、結着樹脂、着色剤としての顔料又は染料、離型剤、必要に応じて磁性材料や荷電制御剤、その他の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミキサーの如き混合機により充分に混合する。次いで、これを加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融して樹脂類を互いに相溶せしめた中に離型剤、顔料、染料、磁性体を分散又は溶解せしめる。この溶融物を、冷却固化した後、粉砕及び分級を行ってトナー粒子を得る。さらに、必要に応じて添加剤を加え、ヘンシェルミキサーの如き混合機により充分に混合して、現像剤(トナー)とすることもできる。
【0123】
このような現像剤は、種々の方法で、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いると、転写性が良好となり好ましい。そのような方法としては、以下の方法が挙げられる。
・攪拌羽根又はブレード、及びライナー又はケーシングを有する装置で、例えば、現像剤をブレードとライナーの間の微小間隙に通過させる際に、機械的な力により表面を平滑化したり現像剤を球形化したりする方法。
・温水中にトナーを懸濁させ球形化する方法。
・熱気流中にトナーを曝し、球形化する方法。
【0124】
また、球状の現像剤を直接作る方法としては、水中に現像剤結着樹脂となる単量体を主成分とする混合物を懸濁させ、重合してトナーとする方法がある。一般には、重合性単量体、着色剤、重合開始剤、さらに必要に応じて架橋剤、磁性材料、荷電制御剤、離形剤、その他の添加剤を均一に溶解又は分散せしめて単量体組成物とする。その後、この単量体組成物を分散安定剤含有の連続層、例えば水相中に適当な攪拌機を用いて適度な粒滴に分散し、さらに重合反応を行わせ、所望の粒子径を有する現像剤を得る方法である。
【0125】
トナー粒子表面に外添される外添剤としては、公知の外添剤を用いることができる。そのうちの一つが無機微粒子であり、少なくとも、酸化チタン、酸化アルミナ、シリカのうちいずれか一種類以上を用いることが好ましい。無機微粒子の粒径は個数分布基準のピーク値で80nm乃至200nmであることが、キャリアとのトナー離れを良化するためのスペーサー粒子として機能させる上で好ましい。また、前記外添剤には、平均粒径が個数分布基準のピーク値で50nm以下の微粒子を併用して用いることが、トナーの帯電性及び流動性を向上させる上で好ましい。さらには、上記無機微粒子に疎水化処理を行ったものがよい。疎水化処理を行う場合には、各種チタンカップリング剤、シランカップリング剤の如きカップリング剤やシリコーンオイル等を用いることが好ましい。
【0126】
疎水化処理を行うための表面処理剤の例としては、チタンカップリング剤として、以下のものが挙げられる。テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート。
【0127】
さらに、シランカップリング剤としては、以下のものが挙げられる。γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン。
【0128】
脂肪酸及びその金属塩としては、以下のものが挙げられる。ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸の如き長鎖脂肪酸。その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムの如き金属との塩。
【0129】
さらに、シリコーンオイルとしては、以下のものが挙げられる。ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル。
【0130】
これらの表面処理剤は、無機微粒子に対して1質量%乃至10質量%添加し被覆することが良く、好ましくは、3質量%乃至7質量%である。また、これらの材料を組み合わせて使用することもできる。
【0131】
この無機微粒子の添加量は、トナー中に0.1質量%乃至5.0質量%、好ましくは0.5質量%乃至4.0質量%である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0132】
2成分現像剤である場合、キャリアは個数平均粒径(Dv)が15.0μm乃至70.0μmであることが好ましい。上記範囲内に制御することによって、磁性キャリアの形状を略球形かつ均一な大きさに制御することができるため、良好な帯電付与性能を維持できる。より好ましくは、個数平均粒径(Dv)が、20.0μm乃至50.0μmであることが高画質化と耐久安定性の面で優れる。
【0133】
キャリアの真比重は、3.0g/cm3乃至5.0g/cm3であるものが好ましく、より好ましくは、3.2g/cm3乃至4.0g/cm3である。真比重がこの範囲にあると、キャリアとトナーとの撹拌混合においてトナーへの負荷が少なく、キャリアへのトナースペントが抑制され、トナー離れを長期間良好に維持することができ、また感光ドラムへのキャリア付着が抑制されるので好ましい。
【0134】
磁性キャリアは、少なくともその表面に樹脂成分を有するものが用いられる。例えば、鉄、銅、ニッケル、コバルトの如き磁性金属、マグネタイト、フェライトの如き磁性酸化物の芯材に樹脂被覆層を有したもの、又は上述したような磁性微粒子を樹脂中に分散した磁性微粒子分散型キャリアなどが使用可能である。
【0135】
キャリアは十分な円形度を得るために、磁性微粒子を結着樹脂中に分散させたキャリアコアを用いた磁性微粒子分散型樹脂キャリアを用いることが好ましい。中でも、重合工程を経て直接製造されたキャリアコアを用いた、磁性微粒子分散型樹脂キャリアを使用することが平均円形度を上げ、円形度分布を狭くする上でも好ましい。用いる磁性微粒子の粒径は、個数分布基準でピーク値が80nm乃至800nm程度のものが磁性微粒子の脱離防止、キャリア強度を高めるため、さらにキャリア形状をほぼ球形とするため、形状のばらつきを抑えるために好ましい。
【0136】
磁性微粒子分散型樹脂キャリアに用いる磁性微粒子の量としては、前記キャリアに対して70質量%乃至95質量%、より好ましくは、80質量%乃至92質量%とすることがキャリアの真比重を小さくし、機械的強度を十分に確保する上で好ましい。また、円形度の低い不定形のキャリアの存在量を抑えるためにも好ましい。さらに、キャリアの磁気特性を変えるために、磁性微粒子分散型コア粒子中には磁性微粒子に加えて非磁性無機化合物を配合してもよい。非磁性無機化合物の粒径は、個数分布基準でピーク値が100nm乃至1000nm程度のものが、キャリアの比抵抗をコントロールしやすいという点で好ましい。
【0137】
非磁性無機化合物を磁性体と併用する場合、磁性微粒子及び非磁性無機化合物の総量に対して、磁性微粒子は50質量%以上含まれていることが、樹脂キャリアの磁化の強さを調整してキャリア付着を防止する上で好ましい。
【0138】
磁性微粒子分散型樹脂キャリアにおいては、磁性微粒子がマグネタイト微粒子であるか、又は、鉄元素及びマグネシウム元素を少なくとも含む磁性フェライト微粒子であることが好ましい。また、非磁性無機化合物はヘマタイト(α−Fe23)の微粒子であることが、キャリアの磁気特性、真比重を調整する上で、より好ましい。
【0139】
キャリアコアを形成する結着樹脂としては、ポリマー鎖中にメチレンユニットを有するビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂及びポリエーテル樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、混合して使用しても良い。
【0140】
磁性微粒子分散型樹脂キャリアコアを製造する好ましい方法としては、結着樹脂のモノマーと磁性微粒子を混合し、前記モノマーを重合して磁性微粒子分散型キャリアコア粒子を得る方法である。このとき、重合に用いられるモノマーとしては、前述したビニル系モノマーの他に、以下のものを用いることができる。エポキシ樹脂を形成するためのビスフェノール類とエピクロルヒドリン;フェノール樹脂を形成するためのフェノール類とアルデヒド類;尿素樹脂を形成するための尿素とアルデヒド類、メラミンとアルデヒド類。例えば、硬化系フェノール樹脂を用いた磁性微粒子分散型コア粒子の製造方法としては、水性媒体に磁性微粒子を入れ、この水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒の存在下で重合して磁性微粒子分散型キャリアコア粒子を得る方法がある。
【0141】
フェノール樹脂を生成するためのフェノール類としては、以下のものが挙げられる。フェノール、m−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−プロピルフェノール、レゾルシノール、ビスフェノールAの如きアルキルフェノール類及びベンゼン核又はアルキル基の一部又は全部が塩素原子や臭素原子で置換されたハロゲン化フェノール類の如きフェノール性水酸基を有する化合物。中でもフェノール(ヒドロキシベンゼン)が、より好ましい。
【0142】
アルデヒド類としては、ホルマリン又はパラアルデヒドのいずれかの形態のホルムアルデヒド及びフルフラール等が挙げられる。中でもホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0143】
アルデヒド類のフェノール類に対するモル比は、1.0乃至4.0が好ましく、1.2乃至3.0であることが、反応性最適化の観点から特に好ましい。
【0144】
フェノール類とアルデヒド類とを縮重合させる際に使用する塩基性触媒としては、通常のレゾール型樹脂の製造に使用されているものが挙げられる。このような塩基性触媒としては、例えば、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン及びジメチルアミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミンの如きアルキルアミンが挙げられる。これら塩基性触媒のフェノール類に対するモル比は、0.02乃至0.30とすることが好ましい。
【0145】
キャリアの個数基準の平均円形度は0.830乃至0.950が好ましく、より好ましくは0.870乃至0.940である。この範囲内にすることで、トナーへの摩擦帯電付与性に優れ、かつ、キャリア付着がしにくくなる。平均円形度が0.830以上0.950以下のほぼ球形のキャリアを得るために、また円形度のばらつきを小さくするための一つの手法として、重合開始時の溶存酸素量をコントロールすることが重要である。重合反応開始時の前記反応媒体中の溶存酸素量は5.0g/m3以下であることが好ましい。重合反応中に溶存酸素の脱気を目的として反応媒体中に導入する不活性ガスは工業的に見て、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスから選ばれる少なくとも1種類以上のものがよい。また、前記不活性ガスの導入量は、重合反応前には反応容器体積の5体積%/min乃至100体積%/minとすることが好ましい。重合反応中の反応媒体中へのガス導入量は1体積%/min乃至20体積%/minとし、重合反応前に比べ重合反応中の導入量を少なくすることが好ましい。このようにすることにより、溶存酸素の置換効率を上げて微粒子の生成を防止し、さらに前記微粒子が通常粒子に取り込まれて異形化するのを防止することができる。
【0146】
さらに、モノマーを重合して磁性微粒子分散型キャリアコア粒子を得るためには、撹拌翼周速を1.0m/s乃至3.5m/sにコントロールすることが重要である。上記範囲内に制御することによって、重合中の粒子の解砕力を一定にし、不定形の粒子生成を抑制することができる。
【0147】
キャリアの表面コートをする樹脂としては、絶縁性の樹脂を用いることが好ましい。この場合に使用し得る絶縁性樹脂は、熱可塑性の樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。
【0148】
熱可塑性の樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートやスチレン−アクリル酸共重合体の如きアクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフロロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースの如きセルロース誘導体、ノボラック樹脂、低分子量ポリエチレン、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレートの如き芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂。
【0149】
また、熱硬化性樹脂としては、以下のものが挙げられる。フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、或いは、無水マレイン酸とテレフタル酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂。
【0150】
これらの樹脂は、単独でも使用できるが、夫々を混合して使用してもよい。また、熱可塑性樹脂に硬化剤を混合し硬化させて使用することもできる。特に好ましい形態は、トナーに対して摩擦帯電付与能力が高く、かつ、より離型性の高い樹脂コート材を用いることが好適である。
【0151】
本発明においては、キャリアコアとの密着性、スペント防止、被覆層の強度の観点から、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂は、単独で用いることもできるが、被覆層の強度を高め、トナーの帯電状態を好ましく制御するために、カップリング剤と併用して用いることが好ましい。さらに、前述のカップリング剤は、その一部が、コート材で被覆される前に、キャリアコア表面に処理される、いわゆるプライマー剤として用いられることが好ましい。キャリアコア表面がカップリング剤により処理されることにより、その後コート材により形成される被覆層が、共有結合を伴った、より密着性の高い状態で形成することができる。
【0152】
カップリング剤としては、アミノシランを用いると良い。その結果、ポジ摩擦帯電性を持ったアミノ基をキャリア表面に導入でき、良好にトナーに高い負摩擦帯電特性を付与できる。
【0153】
また、コート樹脂をキャリア表面に被覆する際には、30℃乃至80℃の温度下において、減圧状態で被覆することが好ましい。
【0154】
さらに、前記コート樹脂中には、コート樹脂100質量部に対して1質量部乃至40質量部の割合で微粒子を含有することがキャリア表面の微小な凹凸をコントロールし、トナー離れを良好にするために好ましい。微粒子としては、有機、無機いずれの微粒子も用いることができるが、キャリアにコートを施す際に粒子の形状を保つことが必要であり、架橋樹脂粒子あるいは、無機の微粒子を好ましく用いることができる。具体的には、有機微粒子としては、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂を用いることができる。また、無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、及びアルミナを用いることができる。これらの有機又は無機微粒子は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。特に、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂、メラミン樹脂を単独あるいは混合して用いることがトナーへの高い負摩擦帯電量付与とトナーとの離型性を両立するために好ましい。
【0155】
前記有機又は無機微粒子の粒径は、個数分布基準でピーク値が100nm乃至500nm、より好ましくは150nm乃至400nmであることが、コート量にも依存するがキャリア表面の微小な凹凸を形成し、トナー離れを良好にするため好ましい。
【0156】
また、コート樹脂100質量部に対し、前記有機又は無機微粒子を1質量部乃至40質量部加え、さらに導電性粒子を1質量部乃至15質量部含有させて用いる。これにより、キャリアの比抵抗を下げすぎず、かつキャリア表面の残留電荷を除去し、トナー離れを良好にするので好ましい。
【0157】
前記導電性粒子としては、比抵抗が1×108Ω・cm以下のものが好ましく、さらには、比抵抗が1×106Ω・cm以下のものがより好ましい。前記導電性粒子は、具体的には、カーボンブラック、マグネタイト、グラファイト、酸化亜鉛、及び酸化錫粒子から選ばれる粒子が好ましい。中でもカーボンブラックが、粒径が小さくキャリア表面の微粒子による凹凸を阻害することなく好ましく用いることができる。前記導電性粒子の粒径は、個数分布基準でピーク値が10nm乃至500nm(より好ましくは20nm乃至200nm)であることが、キャリア表面の残留電荷を良好に除去し、かつキャリアからの脱離を良好に防止するために好ましい。さらには現像剤担持体へのリークを抑制し、長期に渡り安定した磁気ブラシ形成を行うことができる。
【0158】
キャリアコート樹脂のコート量は、キャリアコア粒子100質量部に対し0.3質量部乃至4.0質量部であることが、高い摩擦帯電量付与のため、さらに環境の変化による摩擦帯電量変化を小さくする上で好ましい。さらに好ましくは、現像剤担持体上での均一な穂形成及び融着防止の観点から、0.8質量部乃至3.5質量部であることが良い。
【0159】
本発明に用いられるキャリアとトナーは、比表面積が合う形で混合して用いることが好ましい。トナー濃度としては、二成分系現像剤において、5質量%乃至20質量%であることが、摩擦帯電量付与、カブリ、画像濃度などの観点から好ましい。
【0160】
以下に、本発明に関わる物性の測定方法について説明する。
【0161】
(1)炭素粒子の算術平均粒子径dna1・dna2、標準偏差s1・s2及びカーボンブラックの算術平均粒子径dnb1・dnb2
集束イオンビーム「FB−2000C」(商品名、株式会社日立製作所製)を用いて、現像剤担持体の断面を、現像剤担持体の軸方向に対して垂直面で20nm毎に切断した。切断した各裁断面を、電子顕微鏡「H−7500」(商品名、株式会社日立製作所製)を用いて撮影した。撮影した複数枚の画像より各粒子において、長径と短径の和が最大となる画像の測定値をその粒子の形状として、炭素粒子100個、カーボンブラック100個の粒子径をそれぞれ測定した。当該粒子の粒子径は、測定した粒子の長径と短径の平均値とした。各粒子径により、算術平均粒子径dna1、dnb1を求めた。また、炭素粒子の各粒子径より標準偏差s1を求めた。この時、炭素粒子とカーボンブラックは、形状係数やストラクチャー構造が大きく異なるため、形状係数が小さい物を炭素粒子、ストラクチャー構造が発達している物をカーボンブラックとして、区別した。なお、100nm以上の粒子は10万倍の倍率で撮影した画像を使用して算出し、100nm未満の粒子は50万倍の倍率で撮影した画像を使用して算出した。この時、10nm以上300nm以下の範囲にある粒子のみを、測定対象とした。
【0162】
また、樹脂被覆層に含有させる前の炭素粒子の算術平均粒子径dna2、その標準偏差s2及びカーボンブラックの算術平均粒子径dnb2は、試料台に固定したサンプルを上記と同様の倍率で測定し、算出したものである。
【0163】
(2)炭素粒子の形状係数SF1及びその平均値SF1−1・SF1−2
形状係数SF1は、現像剤担持体の断面を(1)と同様の手法で切断し、(1)と同様の手法で撮影した複数枚の画像より、下記式1に従って計算した。算出した炭素粒子100個の形状係数SF1より平均値(SF1−1)を求めた。なお、ここで、MXLNGとして、算術平均粒子径dna1を求めた各炭素粒子の長径を使用し、AREAはその写真から面積を求めて使用した。
SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) (式1)
【0164】
また、樹脂被覆層に含有させる前の炭素粒子の形状係数SF1の平均値(SF1−2)は、試料台に固定したサンプルを上記と同様に測定し、算出したものである。
【0165】
(3)炭素粒子のストークス径Dst1・Dst2
現像剤担持体から樹脂被覆層のみをカッターナイフで10mg剥ぎ取り、窒素雰囲気中で1000℃/30min保持して樹脂のみ燃焼させ、炭素粒子を抽出する。抽出した炭素粒子を少量の界面活性剤「ノニデットP−40」(商品名、ナカライテスク株式会社製)を含む20容量%エタノール水溶液と混合して炭素分散濃度0.1kg/m3の分散液を作成し、これを超音波で十分に分散させて試料とする。ディスク・セントリフュージ装置(英国Joyes Lobel社製)を100rpsに設定し、スピン液(2重量%グリセリン水溶液、25℃)0.015dm3を加えた後、バッファー液(20容量%エタノール水溶液、25℃)0.001dm3を注入する。次いで、温度25℃の炭素分散液0.0005dm3を注射器で加えた後、遠心沈降を開始し、同時に記録計を作動させて分布曲線(横軸;炭素分散液を注射器で加えてからの経過時間、縦軸;炭素試料の遠心沈降に伴い変化した特定点での吸光度)を作成する。この分布曲線より各時間Tを読み取り、下記(式3)に代入して各時間に対応するストークス径Dstを算出する。
【0166】
【数1】

[(式3)において、ηはスピン液の粘度(0.935×10-3Pa・s)、Nはディスク回転スピード(100rps)、r1は炭素分散液注入点の半径(0.0456m)、r2は吸光度測定点までの半径(0.0482m)、ρCBは炭素の密度(kg/m3)、ρ1はスピン液の密度(1.00178kg/m3)である。]
【0167】
このようにして得られたストークス径と吸光度の分布曲線における最大頻度のストークス径を当該試料のストークス径Dst1(nm)とする。
【0168】
また、樹脂被覆層に含有させる前の炭素粒子のストークス径Dst2は、現像剤担持体から抽出した炭素粒子を測定するのと同様の手法で求めた。
【0169】
(4)カーボンブラックのpH
JIS K5101(1991)に準拠して、煮沸法により抽出した溶液を、pHメーターで測定した。なお、用いたpHメーターは測定方式がガラス電極法の装置であり、pH測定範囲は0乃至14(分解能0.01)であり、測定温度は20℃乃至25℃とした。
【0170】
(5)カーボンブラックのBET比表面積
カーボンブラックのBET比表面積は、JIS K6217−2(2001)「ゴム用カーボンブラック―基本特性―第2部:比表面積の求め方―窒素吸着法―単点法」の方法Cの規定に従って測定した。なお、測定には、自動比表面積測定装置「ジェミニ2375」(商品名、株式会社島津製作所製)を用いた。
【0171】
(6)カーボンボンブラックのDBP吸油量(OA)
カーボンボンブラックのDBP吸油量(OA)の測定は、JIS K6217−4(2001)に準じて次のように行なった。
【0172】
DBP吸油量測定器「S−410」(商品名、株式会社フロンテックス製)を用い、該測定器のローター回転数を125rpm、トルク用リミットスイッチの目盛を5、トルク目盛が10から0になるまでの所要時間が3秒になるようにダンパーバルブを調節する。ジブチルフタレート(DBP)の滴下速度を4ml/minに設定し、アブソープトメーター混合室に乾燥したカーボンブラック20gを入れ、ビュレットカウンターを0点に合わせ滴下を開始した。トルクが5になり滴下が停止した時のビュレットカウンターの目盛り(V)を読み、下記(式4)で吸油量を算出した。
OA=(V/Wd)×100 (式4)
[(式4)中、OAは吸油量(単位:ml/100g)、Vは終点までに用いたDBPの使用量(ml)及びWdはカーボンブラックの質量(g)である。]
【0173】
(7)現像剤の重量平均粒径(D4
測定装置「コールターマルチサイザーIII」(商品名、ベックマン・コールター株式会社製)を用いて、測定した。電解液として、1級塩化ナトリウムを用いて調製した約1%NaCl水溶液を使用した。電解液約100ml中に、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩液約0.5mlを加え、さらに測定試料約5mgを加え試料を懸濁する。試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1分間分散処理し、前記測定装置により、100μmアパーチャーを用いて、測定試料の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。この結果より、体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)を求めた。
【0174】
(8)現像剤の平均円形度
本発明で、平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものである。測定は、フロー式粒子像測定装置FPIA−2100(商品名、シスメックス株式会社製)を用いて23℃、60%RHの環境下で行った。円相当径0.60μm乃至400μmの範囲内の現像剤を測定し、そこで測定された粒子の個々の円形度aを下記(式5)により求める。なお、当該試料の平均円形度は、円相当径3μm以上400μm以下の粒子の円形度の総和を、積算した粒子の総数で除した値である。
円形度a=L0/L (式5)
[式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長であり、Lは512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子投影像の周囲長である。]
【0175】
なお、「FPIA−2100」(商品名)では、各粒子の円形度を算出した後、平均円形度の算出にあたって、得られた円形度によって、各粒子を円形度0.4乃至1.0の範囲を61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度を算出する。この算出法で算出された平均円形度と、円形度の総和を用いる算出式によって算出される平均円形度との誤差は、非常に小さく、実質的には無視できる程度である。本発明においては、算出時間の短縮化や算出演算式の簡略化の理由で、現像剤の円形度の総和を用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いても良い。
【0176】
(9)凹凸付与粒子の体積平均粒径
凹凸付与粒子の粒径の測定装置として、レーザー回折型粒度分布計「コールターLS−230型粒度分布計」(商品名、ベックマン・コールター株式会社製)を用いた。測定には少量モジュールを用い、測定溶媒はイソプロピルアルコール(IPA)を使用した。まず、IPAにて測定装置の測定系内を約5分間洗浄し、洗浄後バックグラウンドファンクションを実行した。次にIPA50ml中に、測定試料約10mgを加える。試料を懸濁した溶液を超音波分散機で約2分間分散処理し、試料液を得た後、測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、測定装置の画面上のPIDSが45%乃至55%になるように測定系内の試料濃度を調整した。その後に測定を行い、体積分布から算術した体積平均粒径を求めた。
【0177】
(10)現像剤担持体表面の算術平均粗さRa
現像剤担持体表面の算術平均粗さRaはJIS B0601(2001)に基づき、表面粗さ計「サーフコーダーSE−3500」(商品名、株式会社小坂研究所製)を用いて測定した。なお、測定条件として、カットオフ0.8mm、評価長さ4mm、送り速度0.5mm/sとし、軸方向3点×周方向3点=9点について測定し、その平均値を当該試料の現像剤担持体表面の算術平均粗さRaとした。
【0178】
(11)樹脂被覆層の膜厚
樹脂被覆層の膜厚の測定には、レーザー光にて円筒の外径を測定するレーザー寸法測定器(株式会社キーエンス製)を用いた。コントローラLS−5500(商品名)及びセンサーヘッドLS−5040T(商品名)を用いた。現像剤担持体固定治具及び現像剤担持体送り機構を取り付けた装置にセンサー部を別途固定し、現像剤担持体の外径寸法を測定した。なお、測定は、現像剤担持体長手方向に対し30分割して30箇所、さらに現像剤担持体を周方向に90°回転させた後さらに30箇所、計60箇所について行った。得られた測定値の平均値を当該試料の外径寸法とした。樹脂被覆層形成前に基体の外径を測定しておき、樹脂被覆層形成後に再び外径を測定し、その差分を樹脂被覆層の膜厚とした。
【0179】
(12)樹脂被覆層の体積抵抗
100μmの厚さのPETシート上に、7μm乃至20μmの樹脂被覆層を形成し、抵抗率計ロレスタAP(商品名、三菱化学株式会社製)にて4端子プローブを用いて樹脂被覆層の体積抵抗値を測定した。なお、測定環境は、20℃乃至25℃、50%RH乃至60%RHとした。
【実施例】
【0180】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の配合における部、%は、特にことわらない限り、それぞれ質量部、質量%である。
【0181】
製造例1〜9[炭素粒子a−1〜a−9の製造]
図3に示した装置を使用した。原料タンク305にトルエンを入れ、高純度水素ガスボンベ301からステンレス製の配管306を経由して、水素をトルエン中に吹き込み、トルエンをバブリングし、トルエンを水素とともにステンレス製の配管308を経由して加熱炉310に導入した。
【0182】
一方、高純度水素ガスボンベ302からステンレス製の配管307を経由して水素を供給し、水素ガス流量を調整して、混合ガス中のトルエン濃度及び混合ガスの流速を制御した。ここで、トルエンガス濃度、混合ガスのレイノルズ数及び反応温度を表4のように設定して2時間熱分解し、炭素粗粒子を得た。次いで、得られた炭素粗粒子をアルゴン雰囲気中1000℃の温度で2時間熱処理して炭素粒子を得た。作製した炭素粒子の物性を表4に示す。
【0183】
【表4】

【0184】
カーボンブラックとして下記ものを使用した。また、これらカーボンブッラクの諸物性値を表5に示した。
・b−1:トーカブラックA100F(商品名、東海カーボン株式会社製)
・b−2:トーカブラックA700F(商品名、東海カーボン株式会社製)
・b−3:トーカブラック#4300(商品名、東海カーボン株式会社製)
・b−4:トーカブラック#4500(商品名、東海カーボン株式会社製)
・b−5:三菱カーボンブラックMA77(商品名、三菱化学株式会社製)
・b−6:三菱カーボンブラック#3030B(商品名、三菱化学株式会社製)
・b−7:ダイアブラックR(商品名、三菱化学株式会社製)
【0185】
【表5】

【0186】
凹凸付与粒子として、下記のものを使用した。
・c−1:ニカビーズICB−0520(商品名、日本カーボン株式会社、体積平均粒径=6.2μm)
・c−2:ニカビーズICB−1020(商品名、日本カーボン株式会社、体積平均粒径=11.3μm)を用いた。
【0187】
製造例10[現像剤e−1の製造]
(ハイブリッド樹脂の製造)
ビニル系重合体原料として、スチレン1.9mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.21mol、フマル酸0.15mol、α−メチルスチレンの2量体0.03mol及びジクミルパーオキサイド0.05molを滴下ロートに入れた。一方、下記組成でポリエステル樹脂原料を酸化ジブチル錫0.2gと共にガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 7.0mol
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 3.0mol
・テレフタル酸 3.0mol
・無水トリメリット酸 1.9mol
・フマル酸 5.0mol。
【0188】
次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、145℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートよりビニル系重合体原料を4時間かけて滴下した。次いで200℃に昇温を行い、4時間反応させてハイブリッド樹脂を得た。
【0189】
(含イオウ樹脂の製造)
温度計、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中にイソプロピルアルコール286部を仕込んだ。一方、スチレン810部、2−エチルヘキシルアクリレート120部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸70部、イソプロピルアルコール401部及び水2575部の単量体混合懸濁溶液を用意した。上記反応槽中にこの単量体混合物と、メチルエチルケトン755部及びアゾビス(2−メチルブチロニトリル)35部の混合溶液を78℃で2時間かけて同時に滴下して重合した。さらに、同一温度にて4時間熟成した後、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを蒸留除去した後、固液分離を行い、乾燥して含イオウ樹脂を得た。
【0190】
(現像剤e−1の調製)
・ハイブリッド樹脂 100部
・磁性酸化鉄(平均粒径:0.18μm、Hc:9.6kA/m、σs:81Am2/kg、σr:13Am2/kg) 90部
・含イオウ樹脂 5部
・ポリエチレンワックス(融点105℃) 5部
上記混合物を、130℃に加熱した二軸エクストルーダーで溶融混練した後、溶融混練した混合物を冷却固化した。冷却固化した混合物をハンマーミルで粗粉砕し、得られた粗粉砕物をターボミル(ターボ工業株式会社製)で微粉砕し、次いで風力分級機で分級して、重量平均粒径7.6μmの磁性トナーを得た。
【0191】
この磁性トナー100部に対して、疎水性シリカ微粉体(BET:180m2/g)1.0部をヘンシェルミキサー「FM−75型」(商品名、三井三池化工機株式会社製)にて外添して円形度0.935の現像剤e−1を得た。
【0192】
製造例11[現像剤e−2の製造]
(スチレン−アクリル酸ブチル共重合体組成物の製造)
スチレン66部、ブチルアクリレート12部、モノブチルマレート9部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド0.8部の混合物を還流(温度:145℃乃至155℃)しているクメン200部中に4時間かけて滴下し、クメン還流下で溶液重合を完了させた。その後、減圧下で200℃まで昇温させながらクメンを除去して、スチレン−アクリル系共重合体た。
【0193】
このスチレン−アクリル系共重合体30部を下記組成の混合物中に溶解し、混合溶液とした。
・スチレン 50部
・ブチルアクリレート 20部
・モノブチルマレート 2部
・ジビニルベンゼン 0.4部
・ベンゾイルパーオキサイド 0.8部
・tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.6部
【0194】
この混合溶液に、ポリビニルアルコール部分ケン化物0.15部を溶解した水170部を加え、激しく撹拌しながら懸濁分散液とした。さらに、水100部を加え、窒素雰囲気に置換した反応器に上記懸濁分散液を移し、約80℃で8時間重合した。重合終了後、濾別し、充分に水洗して後、脱水乾燥し、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体組成物を得た。
【0195】
(現像剤e−2の調製)
上記スチレン−アクリル酸ブチル共重合体100部、磁性体(平均粒径:0.20μm)94.5部、モノアゾ鉄錯体1.5部及びパラフィン(融点:76℃)4部をヘンシェルミキサーで前混合した後、115℃に加熱した2軸エクストルーダーで溶融混練した。その後、冷却固化し、ハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られたトナー粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業株式会社製、回転子及び固定子の表面を炭化クロム含有クロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050))を用いて、機械的に微粉砕した。得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置「エルボジェット分級機」(商品名、日鉄鉱業株式会社製)で微粉及び粗粉を同時に分級除去した。以上の工程を経て、重量平均粒径(D4)6.6μm、平均円形度0.947の負摩擦帯電性トナー粒子を得た。
【0196】
このトナー粒子100部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2部を、ヘンシェルミキサーで混合して現像剤e−2を調製した。
【0197】
製造例12[現像剤e−3の製造]
60℃のイオン交換水900部に、リン酸三カルシウム3部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、10000rpmにて撹拌し、水系媒体を調製した。
【0198】
一方、下記原料をホモジナイザー(日本精機株式会社製)に投入し、60℃に加温した後、9000rpmにて攪拌し、溶解・分散した。これに重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
・スチレン 150部
・n−ブチルアクリレート 50部
・C.I.ピグメントブルー15:3 20部
・サリチル酸アルミニウム化合物「ボントロンE−88」(商品名、オリエント化学株式会社製) 2部
・ポリエステル樹脂(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、Tg=65℃、Mw=10000、Mn=6000) 15部
・ステアリン酸ステアリルワックス(DSCのメインピーク60℃) 32部
・ジビニルベンゼン 0.6部
【0199】
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃、窒素雰囲気下で、TK式ホモミキサーを用いて8000rpmで攪拌し、造粒した。その後、プロペラ式攪拌装置に移して攪拌しつつ、2時間かけて70℃に昇温し、さらに4時間後、昇温速度40℃/hで80℃まで昇温し、80℃で5時間反応を行い、重合体粒子を製造した。重合反応終了後、該粒子を含むスラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してシアントナーの母体粒子(重量平均粒径6.6μm、平均円形度0.982)を得た。
【0200】
このシアントナーの母体粒子100部に対し、下記微粉末を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で5分間乾式混合して、現像剤e−3を得た。
・ヘキサメチレンジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体(平均一次粒子径7nm) 1.0部
・ルチル型酸化チタン微粉体(平均一次粒子径45nm) 0.15部
・ルチル型酸化チタン微粉体(平均一次粒子径200nm) 0.5部
【0201】
実施例1[現像剤担持体f−1の製造]
被覆樹脂原料として、メタノール40%含有のレゾール型フェノール樹脂溶液「J−325」(商品名、大日本インキ株式会社製)を用いた。この樹脂溶液250部(固形分150部)に、炭素粒子a−1 90部、カーボンブラックb−1 10部及びメタノール200部を加え、サンドミル(直径0.1mmのジルコニアビーズを使用)にて処理し分散液を得た。さらにこの分散液をメタノールで希釈して固形分30%の塗工液を得た。
【0202】
この塗工液を、垂直に立てられた、上下端部にマスキングを施され、一定速度で回転している外径24.5mmのアルミニウム製円筒管上に、スプレーガンを一定速度で下降させながら塗布した。続いて150℃の熱風乾燥炉中で30分間加熱して、樹脂被覆層を硬化して現像剤担持体f−1を作製した。現像剤担持体f−1の導電性樹脂被覆層の構成及び導電性樹脂被覆層から測定される炭素粒子及びカーボンブラックの形状をそれぞれ表6、表7に示す。
【0203】
実施例2〜8、比較例1〜6[現像剤担持体f−2〜14]の製造
塗工液の構成を表6に示すように変更する以外は、製造例13と同様に現像剤担持体f−2〜14を作製した。また、導電性樹脂被覆層から測定される炭素粒子及びカーボンブラックの形状を表7に示す。
【0204】
【表6】

【0205】
【表7】

【0206】
実施例9[現像剤担持体f−15の製造]
被覆樹脂原料として、メタノール40%含有のレゾール型フェノール樹脂溶液「J−325」(商品名)を用いた。この樹脂溶液333部(固形分200部)に、炭素粒子a−4 70部、カーボンブラックb−2 30部、凹凸付与粒子c−2 20部及びメタノール250部を加え、サンドミル(直径1mmのガラスビーズを使用)にて処理し分散液を得た。さらにこの分散液をメタノールで希釈して固形分35%の塗工液を得た。
【0207】
この塗工液を、垂直に立てられた、上下端部にマスキングを施され、一定速度で回転している外径12.0mmのアルミニウム製円筒管上に、スプレーガンを一定速度で下降させながら塗布した。続いて150℃の熱風乾燥炉中で30分間加熱して樹脂被覆層を硬化して現像剤担持体f−15を作製した。現像剤担持体f−15の導電性樹脂被覆層の構成及び導電性樹脂被覆層から測定される炭素粒子及びカーボンブラックの形状をそれぞれ表8、表9に示す。
【0208】
実施例10〜12、比較例7[現像剤担持体f−16〜19の製造]
塗工液の構成を表8に示したものとした以外は、実施例9と同様にして現像剤担持体f−16〜19を作製した。また、導電性樹脂被覆層から測定される炭素粒子及びカーボンブラックの形状を表9に示す。
【0209】
【表8】

【0210】
【表9】

【0211】
実施例13[現像剤担持体f−20の製造]
被覆樹脂原料として、メタノール40%含有のレゾール型フェノール樹脂溶液「J−325」(商品名)を用いた。この樹脂溶液300部(固形分180部)に、炭素粒子a−2 90部、カーボンブラックb−5 10部、凹凸付与粒子c−1 5部、荷電制御剤(表1の例示1の化合物)50部及びメタノール250部を加えた。これをサンドミル(直径1mmのガラスビーズを使用)にて処理して分散液を得た。さらにこの分散液をメタノールで希釈して固形分40%の塗工液を得た。
【0212】
この塗工液を、垂直に立てられた、上下端部にマスキングを施され、一定速度で回転している外径12.0mmのアルミニウム製円筒管上に、スプレーガンを一定速度で下降させながら塗した。続いて150℃の熱風乾燥炉中で30分間加熱して樹脂被覆層を硬化して現像剤担持体f−20を作製した。現像剤担持体f−20の導電性樹脂被覆層の構成及び導電性樹脂被覆層に含まれる炭素粒子及びカーボンブラックの形状をそれぞれ表10、表11に示す。
【0213】
実施例14〜17、比較例8[現像剤担持体f−21〜25の製造]
塗工液の構成をそれぞれ表10に示したものとした以外は、実施例13と同様にして現像剤担持体f−21〜25を作製した。また、導電性樹脂被覆層から測定される炭素粒子及びカーボンブラックの形状を表11に示す。
【0214】
【表10】

【0215】
【表11】

【0216】
[評価]
得られた現像剤担持体を用いて、耐久後に評価画像を出力し、得られた画像について、画像濃度、ブロッチ及びカブリを下記により評価した。まず、評価基準いついて示す。
【0217】
(1)画像濃度
プリントアウトにおいてベタ画像を出力し、その濃度を5点測定して平均値を取って画像濃度とし、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。その結果から、下記基準にて評価した。なお、画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて測定した。
A:1.40以上。
B:1.30以上1.40未満。
C:1.00以上1.30未満。
D:1.00未満。
【0218】
(2)ブロッチ
プリントアウトにおいてハーフトーン画像を出力し、その画像に現れる、斑点状、さざ波状又は絨毯状のブロッチ画像の発生及びスリーブ表面にトナーがコーティングされている状況を目視により観察し、下記評価基準に従い評価した。
A:画像上、スリーブ上ともに問題なし。
B:スリーブ上に僅かにブロッチが確認されるが、画像上には影響が出ていない。
C:ハーフトーン画像上の一部に僅かにブロッチ画像が現れている。
D:ハーフトーン画像上の一部にまた、ベタ黒画像でも、明確なブロッチが現れている。
【0219】
(3)カブリ
カブリ測定機「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(商品名、有限現会社東京電色製)により測定したプリントアウト画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出し、画像カブリを下記基準にて評価した。
A:1.0%未満。
B:1.0%以上2.0%未満。
C:2.0%以上3.0%未満。
D:3.0%以上。
【0220】
評価1(現像剤担持体f−1〜14の評価)
実施例1〜8、比較例1〜6で得られた現像剤担持体f−1〜14に、マグネットローラを挿入し、両端にフランジを取り付けて、キヤノン社製デジタル複合機「iR6570」(商品名)の現像器に組み込み、現像装置とした。
【0221】
なお、感光体ドラムの周速に対する現像剤担持体の周速を120%になるようにギア比を調整し、また磁性ドクターブレードと現像剤担持体との間隙を、250μmとした。現像剤e−1を用い、評価環境を25℃/10%RHとして、印字比率5%の文字画像をA4横送りで耐久20000枚の複写を行った。その後評価用画像出力を行い、上記画像評価を行った。得られた評価結果を表12に示す。
【0222】
【表12】

【0223】
評価2(現像剤担持体f−15〜19の評価)
実施例9〜12、比較例7で得られた現像剤担持体f−15〜19にマグネットローラを組み付け、LASER JET4300(商品名、ヒューレットパッカード社製)用の純正カートリッジに組み込み、現像装置とした。現像剤e−2を用い、評価環境を15℃/10%RHとし、印字比率5%の文字画像をA4横送りで耐久5000枚の複写を行った。その後に評価用画像出力を行い、上記画像評価を行った。得られた評価結果を表13に示す。
【0224】
【表13】

【0225】
評価3(現像剤担持体f−20〜25の評価)
実施例13〜17、比較例8の現像剤担持体f−20〜25を、カラーレーザープリンタLBP−2510(商品名、キヤノン株式会社製)を以下のように改造して組み込み、画像評価に供した。
【0226】
シアンカートリッジEP−85(商品名、キヤノン株式会社製)から現像剤担持体上に装着されている帯電補助ローラを外し、現像剤担持体f−20〜25を組み込み、現像剤e−3を充填した。このとき、現像剤担持体の左右についているコロの直径を大きいものに取替え、現像剤担持体と感光体ドラムとの間のS−D間距離を150μmとした。次に改造したシアンカートリッジEP−85(キヤノン株式会社製;商品名)をカラーレーザープリンタLBP−2510(商品名)のシアンステーションに装着し、その他のステーションにはダミーカートリッジを装着して、評価機とした。これを用いて単色評価を実施した。評価環境は、15℃/10%RHとした。
【0227】
上記評価機の感光体ドラムの非画像部の暗部電位(VD)を−500V、静電潜像が形成された画像の明電位(VL)を−100Vに設定した。さらに、現像剤担持体には現像バイアスとして−250Vの直流バイアス(VDC)と、ピーク間の電圧(VPP)1.5kV、周波数3kHzの矩形波からなる交流バイアスを重畳したものを印加して、ジャンピング現像を行った。印字比率5%の文字画像をA4横送りで耐久1000枚の複写をした後に評価用画像出力を行い、上記画像評価を行った。得られた評価結果を表14に示す。
【0228】
【表14】

【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】本発明の現像剤担持体の断面の模式図である。
【図2】従来の現像剤担持体の断面の模式図である。
【図3】本発明に使用する炭素粒子の製造装置の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の磁性一成分現像剤を使用する現像装置の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の磁性一成分現像剤を使用する現像装置の他例を示す模式図である。
【図6】本発明の磁性二成分現像剤を使用する現像装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0230】
101 炭素粒子
102、202 カーボンブラック
103、203 被覆樹脂
104、204 樹脂被覆層
105、205 基体
106、206 現像スリーブ
107、207 マグネットローラ
208 導電性粒子(グラファイト)
301、302 高純度水素ガスボンベ
303、304 流量計
305 原料タンク
306、307 水素ガス配管
308 配管
309 圧力計
310 分解炉
311 予熱帯域
312 予熱帯域加熱用ヒータ
313 加熱帯域
314 反応管
315 加熱帯域加熱用ヒータ
316、317 温度調節器
318 放射温度計
319 冷却管
320 捕集室
321 圧力調節弁
322 減圧ポンプ
323 水槽
324 焼却炉
404、504、604 樹脂被覆層
405、505、605 基体
406、506、606 現像スリーブ
407、507 マグネットローラ
409、509 現像剤担持体
410、510、610 静電潜像担持体(感光体ドラム)
411 現像剤層厚規制部材(磁性ブレード)
412、512、612 現像バイアス電源
413、513、613 現像容器
414、514、614 攪拌搬送部材
415、515 第二室
416、516 第一室
417、517 仕切り部材
418、518 攪拌部材
519、619 現像剤層厚規制部材(弾性ブレード)
620 現像剤供給・剥ぎ取り部材
622 非磁性一成分現像剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像剤により現像してトナー画像を形成する際に用いられ、現像剤を担持し、現像領域に担持した現像剤を搬送する現像剤担持体であって、
該現像剤担持体は、少なくとも基体及び基体上に形成された樹脂被覆層を有し、
該樹脂被覆層は、少なくとも炭素粒子とカーボンブラックを含有しており、
樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時に、該炭素粒子の算術平均粒子径dna1が70nm以上200nm以下、該カーボンブラックの算術平均粒子径dnb1が15nm以上60nm以下で、dna1/dnb1が2超7未満であり、かつ、該炭素粒子の下記(式1)にて算出される形状係数SF1の平均値が100超120未満である
ことを特徴とする現像剤担持体。
SF1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) (式1)
[(式1)において、MXLNGは炭素粒子の投影図における最大長さ(nm)であり、AREAはその投影面積(nm2)を意味する。]
【請求項2】
前記炭素粒子は、樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時のdna1(nm)に対する標準偏差s1(nm)の比(s1/dna1)が0.1超0.3未満であることを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記樹脂被覆層より抽出される炭素粒子のストークス径Dst1(nm)と前記樹脂被覆層の裁断面を電子顕微鏡で観察した時の炭素粒子のdna1(nm)との比(Dst1/dna1)が、1.0超1.2以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
前記カーボンブラックのpHが、2以上5以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の現像剤担持体
【請求項5】
前記樹脂被覆層中の炭素粒子の含有率C1(質量%)とカーボンブラックの含有率C2(質量%)の比(C1/C2)が、2超20未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の現像剤担持体。
【請求項6】
前記樹脂被覆層中の樹脂の含有率B(質量%)に対する炭素粒子及びカーボンブラックの合計の含有率(C1+C2)の比((C1+C2)/B)が、0.3超1.0未満であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の現像剤担持体。
【請求項7】
少なくともトナーを有する現像剤を収容するための容器及び該容器に貯蔵された現像剤を担持搬送するための現像剤担持体を有し、現像剤層厚規制部材により層状に現像剤担持体上に形成された現像剤を静電潜像担持体と対向する現像領域へと搬送し、該静電潜像担持体に形成されている静電潜像を現像剤により現像して、トナー画像を形成する現像装置において、該現像剤担持体が、請求項1乃至6のいずれかに記載の現像剤担持体であることを特徴とする現像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−304786(P2008−304786A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152987(P2007−152987)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】