説明

現像装置、プロセスユニット、及び画像形成装置

【課題】印字中、常にフレア状態を一定にすることが出来、画像不良等の不具合が発生しにくい現像装置を提供する。
【解決手段】トナー層規制部材104に印加するバイアスを電気的にフロートにし、画像上にスジ状地汚れが発生しないようにする。トナー層規制部材104を電気的にフロートにした場合、トナー層規制部材104とトナー間の摩擦で発生した電荷が、トナー層規制部材104に蓄積し、一定以上蓄積すると異常放電が発生してトナー担持ローラ103の表面を傷つけたり、トナー担持ローラ103上のトナー薄層を乱したりし、異常画像の原因となるので、予め異常放電が発生する量の電荷が蓄積する前に、電荷を逃がすために、トナー層規制部材104と画像形成装置本体のグランドとの間にスイッチを配し、そのスイッチをON、OFFさせることで、電気的にフロートにしたり、電荷を逃がしたりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤が現像剤担持体外周表面移動することにより現像剤を現像領域へ搬送する現像剤担持体を備えた現像装置、この現像装置を備えたプロセスユニット、及びこれらのいずれかを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに異なる電圧が印加される複数の電極を備えた現像剤担持体を有する現像装置が知られている。例えば、現像剤担持体上の現像剤を感光体等の潜像担持体に直接接触させないで、現像剤を潜像担持体上の潜像に供給して現像を行う現像装置がある。そして、この現像装置の一例としては、現像剤担持体上の一成分現像剤(トナー)をクラウド化させることによってトナーを潜像担持体上に供給する方式を採用するものがある。
【0003】
この方式に使用される現像剤担持体は、外周面に沿って複数種類の電極が所定のピッチで配置され、その複数種類の電極の外周面側を保護層で覆ったものである。この複数種類の電極に対し、時間的に変化する互いに異なる電圧をそれぞれ印加して、時間的に変化する電界を互いに近接する複数種類の電極間に形成する。すると、この電界により現像剤担持体上のトナーを互いに近接する複数種類の電極間で飛翔させることができる。このようにトナーが飛翔する現象を、本願では「フレア」と称する。)。これにより、現像剤担持体の外周面近傍の空間でトナーがクラウド化した状況となる。
【0004】
以上のような方式を用いた現像装置において、トナーの帯電量が十分でない場合、トナーがブレードをすり抜けて、現像剤担持体、例えば現像ローラ上でスジ状の塊になって汚し、これが画像上の地肌部に転写されてしまい、スジ状の地肌汚れを発生させたり、機内汚れ等の不具合を発生させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、このような不具合の発生を防止するために、印字中、常にフレア状態を一定にすることが出来、画像不良等の不具合が発生しにくい現像装置、プロセスユニット、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の現像装置のうち請求項1に係るものは、静電潜像担持体に対向して配置され、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像するための現像剤を担持する現像剤担持体を有する現像装置において、前記現像剤担持体外周面に担持された現像剤を現像領域へ搬送するため、前記現像剤担持体に複数種類の電極部材を配置し、各電極部材間に絶縁層を介在させ、該電極部材と前記現像剤担持体の電極間に電界を形成し、該形成した電界により前記現像剤担持体上の現像剤を飛翔させる電界形成手段を備え、前記現像剤担持体は前記電極よりも外周面側に、現像剤に所望の荷電を付与する表層を持ち、顔現像剤担持体上の表層厚さを規制する現像剤規制部材を有し、前記現像剤規制部材を電気的にフロートとすることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係るものは、請求項1に記載の現像装置において、前記現像剤規制部材に蓄積された電荷を逃がす手段を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係るものは、請求項2に記載の現像装置において、前記蓄積された電荷を逃がす際は、前記現像剤担持体と該現像剤担持体の電極間に印加している電界をオフとして行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係るものは、請求項2に記載の現像装置において、前記蓄積された電荷を逃がす際は、前記現像剤担持体の動作を停止させて行うことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係るものは、請求項3または4に記載の現像装置において、前記蓄積された電荷を逃がすタイミングを印字タイミングのジョブ間としたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に係るプロセスユニットは、潜像担持体と、請求項1から5のいずれかに記載の現像装置とを、1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能に構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る画像形成装置は、請求項1から5のいずれかに記載の現像装置を画像形成装置本体に備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る画像形成装置は、請求項6に記載のロセスユニットを画像形成装置本体に着脱可能に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フレア状態を安定にすることが可能なため、画像不良が無くなるといった優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る現像装置とプロセスカートリッジユニットを備える画像形成装置の要部断面図
【図2】図1に示した本発明に係る現像装置とプロセスカートリッジの拡大断面図
【図3】図2の要部平面断面図
【図4】同トナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図5】同トナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図
【図6】トナー担持ローラの内側電極及び外側電極に印加する電圧の一例を示す図
【図7】実施例と比較データを実験した際の印加バイアスの説明図
【図8】実施例と比較データの実験結果
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の現像装置は、静電潜像担持体に対向して配置され、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像するための現像剤を担持する現像剤担持体を有するタイプのものである。現像剤担持体外周面に担持された現像剤を現像領域へ搬送するため、現像剤担持体に複数種類の電極部材を配置し、各電極部材間に絶縁層を介在させた現像剤担持体と現像剤担持体の電極間に電界を形成して、電界により現像剤担持体上の現像剤を飛翔させる電界形成手段を備えている。そして、電極よりも、現像剤担持体外周面側に現像剤に所望の荷電を付与する表層を持ち、現像剤担持体上の層厚を規制する現像剤規制部材を有する。そして、現像剤規制部材を電気的にフロートとさせ、フレア現像を用いた場合でも、画像上スジ状地汚れが発生しにくくする。
【0017】
また本発明は、現像剤規制部材に蓄積された電荷を逃がす構成を持ち、現像剤規制部材を電気的にフロートにすることで、現像剤規制部材に蓄積した電荷が、リークを発生させて、現像剤担持の表層破壊等の異常が起こることを未然に防ぐものである。
【0018】
また本発明は、電荷を逃がす際は、現像剤担持体に複数種類の電極部材を配置した、各電極部材間に絶縁層を介在させた現像剤担持体と現像剤担持体の電極間にかけている電界をオフとして行い、機内汚れを防止するものである。
【0019】
また本発明は、電荷を逃がす際は、現像剤担持体である現像ローラの回転を停止させて行い、新たな電荷の蓄積や、トナー劣化を抑制する。
【0020】
さらに本発明は、電荷を逃がすタイミングを印字タイミングのジョブ間に行い、一枚当たりの印字時間を短縮する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置である複写機について適用した実施例を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施例に係る現像装置とプロセスカートリッジユニットを備える画像形成装置の要部断面図である。各プロセスカートリッジユニット1は、感光体ドラム2、帯電部材3、現像手段4、および感光体クリーニング手段5を一体に結合して備える構成になっている。各プロセスカートリッジユニット1は図示しない画像形成装置本体からいくつかのストッパーを解除することにより取り出して交換できる、すなわち着脱可能な構成にもなっている。
【0022】
感光体ドラム2は、矢印方向に回転している。帯電部材3は、感光体ドラム2の表面に圧接されており、感光体ドラム2の回転により従動回転している。帯電部材3には図示しない高圧電源により所定のバイアスが印加され、感光体ドラム2の表面を帯電している。なお本実施例においては、帯電部材3にローラ状の部材を用いているが、コロナ帯電などの非接触帯電方式を用いても良い。
【0023】
帯電部材3は感光体ドラム2に対して画像情報に基づいて露光し、該感光体ドラム2の表面に静電潜像を形成する。本実施例においては帯電部材3にレーザーダイオードを用いたレーザービームスキャナ方式を用いているがLEDアレイなどを用いる構成でも良い。感光体クリーニング手段5は感光体ドラム2表面の転写残トナーのクリーニングを行う。
【0024】
イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色ごとのプロセスカートリッジユニット1が中間転写ベルト7の移動方向に並列に4個配設され、順に該中間転写ベルト7上に可視像を形成する。一次転写ローラ8と感光体ドラム2の間では図示しない高圧電源により一次転写バイアスが印加され、感光体ドラム2表面の現像剤の画像を中間転写ベルト7の表面に転写する。中間転写ベルト7は、図示しない駆動モータによって図中の矢印方向に回転駆動されるようになっており、この中間転写ベルト7に各色の可視像を表面に順次重ねて転写することでフルカラー画像を形成する。
【0025】
形成されたフルカラー画像は、二次転写ローラ9と中間転写ベルト7との間に所定の電圧を印加することにより転写材である用紙10に転写され、定着装置12にて用紙10の上に転写された現像剤の画像が熱と圧力により定着され出力される。二次転写ローラ9で転写されずに中間転写ベルト7上に残留した現像剤は転写ベルトクリーニング手段11に回収される。
【0026】
図2は、図1に示した本発明に係る現像装置とプロセスカートリッジの拡大断面図、図3はその要部平面断面図である。
現像手段4は、現像剤を収容する現像剤収容室であるトナー収容室101と、トナー収容室101の下方に設けられた現像剤供給室であるトナー供給室102から構成され、トナー収容室101とトナー供給室102を仕切るように仕切り部材110が設けられている。仕切り部材110には複数の開口部107が設けられている。開口部107は、現像剤がトナー収容室101からトナー供給室102へ供給する供給口と現像剤をトナー供給室102からトナー収容室101へ戻す返送口とに分かれている。トナー供給室102の下部には、現像剤担持体であるトナー担持ローラ103と、トナー担持ローラ103に当接して設けられたトナー層規制部材104およびトナー担持ローラ103の表面にトナーを供給する現像剤供給部材であるトナー供給ローラ105が設けられる。トナー供給ローラ105はトナー担持ローラ103の表面に当接して設けられている。トナー担持体103は感光体ドラム2に非接触で配置され、以下に示す電圧を高圧電源から印加される。
【0027】
トナー収容室101内にはトナー搬送部材106が設けられている。図3に示すように、現像手段4において、鉛直方向に略直線状に配置された、搬送するトナー搬送部材106、トナー撹拌部材108及びトナー供給ローラ105の回転軸近傍の断面を示している。
【0028】
トナー層規制部材104は、トナー供給室102に設けられた、トナー供給ローラ105によってトナー担持ローラ103の表面上に供給され、感光体2とトナー担持ローラ103との対向部に向かうトナーの層厚を規制するブレード状の部材であり、上述のようにトナー担持ローラ103の表面に当接して設けられている。
【0029】
トナー搬送部材106は、トナー収容室101内に、トナー収容室101内のトナーを感光体2の回転軸に平行な方向(図2の紙面垂直方向)に搬送するように設けられている。
【0030】
なおトナー収容室101に収容するトナーは、重合法で作成したものを用い、平均粒径が6.5[μm]で、円形度が0.98、安息角33[°]、外添剤としてチタン酸ストロンチュームを含有しているトナーである。本発明を適用したプリンタ100に用いるトナーとしては、これに限るものではない。
【0031】
トナー収容室101内に設けられたトナー搬送部材106は、図3に示すように搬送スクリュー形状106aと搬送板形状106bとを組み合わせた回転軸を有した部材である。トナー搬送部材106は、搬送スクリュー形状106aの回転動作によりトナー収容室101内のトナーをトナー搬送部材106の回転軸に平行な略水平方向(図3中の矢印C方向)に搬送できる構成となっている。現像手段4では、トナー搬送部材106の回転軸に平行な方向にトナーを搬送する搬送スクリュー形状106aを備えた構成であるが、現像剤搬送部材としてはこれに限ったものでなく、搬送ベルトやコイル状の回転体等の搬送機能を有するものを用いることができる。さらにこれらの搬送機能を有するものと、羽根のような板部材や針金を曲げて構成したパドルのようなもの等のほぐし機能を有するものを組み合わせたものでも良い。
【0032】
また、本実施例の現像手段4では、トナー収容室101からトナー供給ローラ105に向けて、トナーをトナー搬送部材106の回転軸に直交し、且つ、略鉛直下方にトナーを搬送する構成となっている。トナーの搬送方向としては、トナー搬送部材106の回転軸に直交し、且つ、略水平方向に搬送する構成としてもよい。
【0033】
仕切り部材110の鉛直下方のトナー供給室102内にはトナー撹拌部材108が配置されている。トナー撹拌部材108は、図3に示すように撹拌スクリュー形状108aと撹拌板形状108bとを組み合わせた回転軸を有した部材である。トナー撹拌部材108は、撹拌スクリュー形状108aの回転動作によりトナー供給室102内のトナーをトナー撹拌部材108の回転軸に平行な略水平方向(図3中の矢印DまたはE方向)に搬送できる構成となっている。
【0034】
図3に示すように、トナー撹拌部材108の撹拌スクリュー形状108aは、軸方向について供給口111を挟んで外側に向かう方向(図3中の矢印D方向)にトナーを搬送するように螺旋状の羽部が設けられている。さらに、トナー撹拌部材108の撹拌スクリュー形状108aは、軸方向について2つの返送口107よりも外側と内側とは螺旋状の羽部が逆巻きになっている。このため、供給口111からトナー供給室102に供給されたトナーはトナー撹拌部材108の撹拌スクリュー形状108aの回転によって軸方向外側(矢印D方向)に搬送され、返送口107よりも外側に到達したトナーは羽部が逆巻きの撹拌スクリュー形状108aによって返送口107に向かって搬送される。
【0035】
返送口107を挟んで軸方向の外側と内側とでは、撹拌スクリュー形状108aによるトナーの搬送方向が逆であり、返送口107に向かうようにトナーに搬送力を付与するため、返送口107の下方ではトナーが軸方向両側から集められ、山状に押し上げられる。これにより、トナー収容室101から供給口111または返送口107を通過してトナー供給室102に供給されたトナーが過剰である場合は、返送口107で山状に押し上げられたトナーがトナー供給室102から返送口107を通ってトナー収容室101に戻される。
【0036】
また、トナー撹拌部材108は、トナー供給室102にあるトナーを攪拌し、さらに下部にあるトナー担持ローラ103、トナー供給ローラ105へトナーを供給する役割を持つ。また、トナーは重合法で作成したものを用い、平均粒径が6.5μmで、円形度が0.98、安息角33°のトナーを使用した。
【0037】
なお図2、図3に示した現像剤搬送部材であるトナー搬送部材106は、スクリュー形状と板形状を組み合わせた回転軸を有した部材であり回転動作により現像剤搬送部材106の軸線と平行かつ略水平方向に現像剤を搬送できる構成としてあるが、本発明はこれに限定されず、スクリュー、搬送ベルト、コイル状の回転体等の搬送機能を有するものや、それらと羽根のような板部材や針金を曲げて構成したパドルのようなもの等の解し機能を有するものを組み合わせたものでも良い。また、現像剤の搬送方向においても現像剤搬送部材106に垂直かつ略水平方向に現像剤を搬送する構成としても良い。
【0038】
開口部である返送口107は現像剤収容室101にある現像剤を現像剤供給室102へ搬送する入り口であるとともに現像剤供給室102へ過剰に供給された現像剤を現像剤収容室101へ戻す役割とに分かれて現像ローラ103と平行に複数設けられている。現像剤攪拌部材108は、返送口107の下部に設けている。
【0039】
次に、本実施例における現像剤担持体であり現像ローラであるトナー担持ローラ103の具体的構成について説明する。
図4は、本実施例におけるトナー担持ローラ103の電極配置を説明するためにトナー担持ローラ103を回転軸に対して直交する方向から見たときの模式図である。なお、説明の都合上、表層36や絶縁層35は図示していない。図5は、本実施例におけるトナー担持ローラ103を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。本実施例のトナー担持ローラ103は、中空状のローラ部材で構成されており、その最内周に位置する最内周電極部材又は内周側電極部材としての内側電極33aと、最外周側に位置していて内側電極33aへ印加される電圧(内側電圧)とは異なる電圧(外側電圧)が印加される最外周電極部材としての櫛歯状の外側電極34aとを備えている。また、内側電極33aと外側電極34aとの間にはこれらの間を絶縁するための絶縁層35が設けられている。また、外側電極34aの外周面側を覆う保護層としての表層36も設けられている。すなわち、本実施例のトナー担持ローラ103は、内周側から順に、内側電極33a、絶縁層35、外側電極34a、表層36の4層構造となっている。
【0040】
内側電極33aは、トナー担持ローラ103の基体としても機能しており、SUSやアルミニウム等の導電性材料を円筒状に成型した金属ローラである。このほか、内側電極33aの構成としては、ポリアセタール(POM)やポリカーボネート(PC)等からなる樹脂ローラの表面にアルミニウムや銅などの金属層等からなる導電層を形成したものが挙げられる。この導電層の形成方法としては、金属メッキ、蒸着等により形成する方法や、ローラ表面に金属膜を接着する方法などが考えられる。
【0041】
内側電極33aの外周面側は絶縁層35に覆われている。本実施例において、この絶縁層35は、ポリカーボネートやアルキッドメラミン等で形成されている。また、本実施例において、絶縁層35の厚みは、3[μm]以上50[μm]以下の範囲内が好ましい。3[μm]よりも小さくなると、内側電極33aと外側電極34aとの間の絶縁性が十分に保てなくなり、内側電極33aと外側電極34aとの間でリークが発生してしまう可能性が高くなる。一方、50[μm]よりも大きくなると、内側電極33aと外側電極34aとの間で作られる電界が表層36よりも外側に形成されにくくなり、表層36の外側に強いフレア用電界(外部電界)を形成することが困難となる。本実施例では、メラミン樹脂からなる絶縁層35の厚みを20[μm]としている。絶縁層35はスプレー法やディップ法等によって内側電極33a上に均一な膜厚で形成することができる。
【0042】
絶縁層35の上には外側電極34aが形成される。本実施例において、この外側電極34aは、アルミニウム、銅、銀などの金属で形成されている。櫛歯状の外側電極34aの形成方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、絶縁層35の上にメッキや蒸着によって金属膜を形成し、フォトレジスト・エッチングによって櫛歯状の電極を形成するという方法が挙げられる。また、インクジェット方式やスクリーン印刷によって導電ペーストを絶縁層35の上に付着させて櫛歯状の電極を形成するという方法も考えられる。
【0043】
なお図5に詳細に示すように、外側電極34a及び絶縁層35の外周面側は、表層36により覆われている。トナーは、表層36上でホッピングを繰り返す際、この表層36との接触摩擦によって帯電する。トナーに正規帯電極性(本実施例ではマイナス極性)を与えるため、本実施例では、表層36の材料として、シリコーン、ナイロン(登録商標)、ウレタン、アルキッドメラミン、ポリカーボネート等が使用される。本実施例ではポリカーボネートを採用している。また、表層36は、外側電極34aを保護する役割も持ち合わせているので、表層36の膜厚としては、3[μm]以上40[μm]以下の範囲内が好ましい。3[μm]よりも小さいと、経時使用による膜削れ等で外側電極34aが露出してしまうおそれがある。一方、40[μm]よりも大きいと、内側電極33aと外側電極34aとの間で作られる電界が表層36よりも外側に形成されにくくなり、表層36の外側に強いフレア用電界を形成することが困難となる。本実施例では、表層の膜厚は20[μm]としている。表層36は、絶縁層35と同様にスプレー法やディッピング法等によって形成することが
できる。
【0044】
現像剤攪拌部材108は、例えばスクリュー形状と板形状を組み合わせた回転軸を有した部材であり、回転動作によりトナー搬送部材106と平行かつ略水平方向に現像剤を搬送できる。さらに、返送口107の返送口の下部にあたる位置では仕切り部材110の下にある現像剤を両側から集めて山状に押し上げるようにするため、現像剤攪拌部材108のスクリューの搬送方向が返送口107の直下で互いに逆向きの形状をしている。また、現像剤攪拌部材は、現像剤供給室にある現像剤を攪拌し、さらに下部にある現像剤担持体103、供給ローラ105へ現像剤を供給する役割を持つ。
【0045】
この供給ローラ105の表面には空孔(セル)を有した構造の発泡材料が被覆されており、現像剤供給室102内に運ばれてきた現像剤を効率よく付着させて取り込むと共に、現像ローラであるトナー担持ローラ103との当接部での圧力集中によるトナー劣化を防止している。発泡材料は3乗〜14乗Ωの電気抵抗値に設定される。また供給ローラ105には、供給バイアスが印加され、トナー担持ローラ103との当接部で予備帯電された現像剤をトナー担持ローラ103に押し付ける作用を補助する。供給ローラ105は図中において反時計回りの方向に回転し、表面に付着させた現像剤をトナー担持ローラ103の表面に塗布供給する。
【0046】
トナー層規制部材104は、SUS304CSPやSUS301CSPまたはリン青銅等の金属板バネ材料を用い、自由端側をトナー担持ローラ103の表面に10〜100N/mの押圧力で当接させるもので、その押圧力下を通過した現像剤を薄層化すると共に摩擦帯電によって電荷を付与する。さらにトナー層規制部材104には、摩擦帯電を補助する為に、バイアスが印加される。
【0047】
感光体ドラム2は現像剤担持体であるトナー担持ローラ103と非接触で時計回りの方向に回転しており、従ってトナー担持ローラ103の表面は感光体ドラム2との対向位置において感光体ドラム2の進行方向と同方向に移動する。そして、トナー担持ローラ103上の薄層化された現像剤は、トナー担持ローラ103の回転によって感光体ドラム2との対向位置へ搬送され、トナー担持ローラ103に印加されたバイアスと感光体ドラム2上の静電潜像によって形成される潜像電界に応じて、感光体ドラム2表面に移動し現像される。
【0048】
感光体ドラム2上に現像されずにトナー担持ローラ103上に残された現像剤が再び現像剤供給室102内へと戻る部分には、除電シール109が現像ローラ103に当接して設けられ、現像剤が現像装置外部に漏れ出ないように封止している。除電シール109には、除電能力を補助するためバイアスが印加される。
【0049】
ところで本実施例では、内側電極33aと外側電極34aとの間で作られる電界、より詳しくは、内側電極33aの外側電極34aとは対向していない部分(外側電極34aの櫛歯間に位置する内側電極33aの部分)と外側電極34aの櫛歯部分との間で作られる電界が、表層36の外側に形成されることで、トナー担持ローラ103上のトナーをホッピングさせ、これによりトナーをクラウド化させる。このとき、トナー担持ローラ103上のトナーは、内側電極33aに絶縁層35を介して対向した表層部分と、これに隣接する外側電極34aに対向した表層部分との間を、飛翔しながら往復移動するように、ホッピングすることになる。
【0050】
本実施例によれば、内側電極33aと外側電極34aとの間を安定かつ有効に絶縁することができ、比較的大きな電圧をトナー担持ローラ103に印加する場合でもリークを効果的に防止することができる。また、本実施例においては、外側電極34aの電極幅(各櫛歯部分の幅)は、10[μm]以上120[μm]以下であることが好ましい。10[μm]よりも小さいと、細すぎて電極が途中で断線してしまうおそれがある。一方、120[μm]より大きいと、外側電極34aの図示しない現像剤担持体端部に位置する被給電部からの距離が遠い箇所の電圧が低くなり、その箇所でトナーを安定かつ有効にホッピングさせることが困難となる。
【0051】
また、本実施例では、外側電極34aの電極ピッチ(櫛歯部分間の距離)は、電極幅と同じか広いのが好ましい。電極幅よりも小さいと、内側電極33aからの電気力線の多くが表層36の外側に出る前に外側電極34aへ収束してしまい、表層36の外側に形成されるフレア用電界が弱くなってしまうからである。一方、電極ピッチが大きいと、電極間中央のフレア用電界が弱くなってしまう。本実施例において、電極ピッチは、電極幅以上であって電極幅の5倍以下の範囲内であることが好ましい。例えば、この点を考慮し、一実施例としては、電極幅及び電極ピッチをいずれも80[μm]に設定することが考えられる。
【0052】
また、本実施例では、外側電極34aの電極ピッチが、トナー担持ローラ103の周方向にわたって一定となるように設定されている。電極ピッチを一定とすることで、内側電極33aと外側電極34aとの間で作られるフレア用電界がトナー担持ローラ103上の周方向にわたってほぼ均一となる。よって、現像位置で周方向に均一なトナーのホッピングを実現することが可能となり、均一な現像が可能となる。
【0053】
次に、内側電極33a及び外側電極34aに印加する電圧について説明する。
図6に示すように、トナー担持ローラ103上の内側電極33a及び外側電極34aには、それぞれパルス電源25A、25B(図4参照)から第1電圧である内側電圧及び第2電圧である外側電圧が印加される。パルス電源25A、25Bが印加する内側電圧及び外側電圧は、矩形波が最も適している。ただし、これに限らず、例えばサイン波で三角波でもよい。また、本実施例では、フレア用電極を形成するための電極が内側電極33a及び外側電極34aの2相構成であり、各電極33a、34aには互いに位相差180°をもった電圧がそれぞれ印加される。
【0054】
図7は、内側電極33a及び外側電極34aにそれぞれ印加する内側電圧と外側電圧の一例を示すグラフである。
上述のように、本実施例において各電圧は矩形波であり、内側電極33aと外側電極34aにそれぞれ印加される内側電圧と外側電圧は、位相の異なる同じ大きさ(ピークトゥピーク電圧Vpp)の電圧である。よって、内側電極33aと外側電極34aとの間には、Vppだけの電位差が生じる。この電位差によって電極間に電界が発生し、この電界のうち表層36の外側に形成されるフレア用電界によって表層36上をトナーがホッピングする。また、本実施例において、内側電圧と外側電圧の中心値Vdcは、画像部電位(静電潜像部分の電位)と非画像部電位(地肌部分の電位)との間に設定され、現像条件によって適宜変動する。なお内側電圧と外側電圧の中心値Vdcを固定して、Dutyを変動させても同様の効果が得られる。
【0055】
本実施例において、内側電圧と外側電圧の周波数fは、例えば0.1[kHz]以上10[kHz]以下とすることが好ましい。0.1[kHz]より小さいと、トナーのホッピングが現像速度に追いつかなくなるおそれがある。一方、10[kHz]より大きいと、トナーの移動が電界の切り替わりに追従できなくなり、トナーを安定してホッピングさせるのが困難となるからである。本実施例では、例えば周波数fを500[Hz]に設定する。
【0056】
図7(A)は、内側電極33a及び外側電極34aにそれぞれ印加する内側電圧と外側電圧の一例を示すグラフであり、夫々の面積中心の電圧をVavg1とする。本実施例はDuty50%をしようしたが、Dutyを現像量に対応して変化させても良い。図中に実線で示した外側電極に印加する電圧の電位と同位相で面積中心の電圧をVavg1よりもプラス側にシフトさせた内側電極に印加する電圧Vavg2(図中破線で示す。本実施例では、Vavg2-Vavg1=+100〔V〕とした。)をもつAC波形を現像剤規制部材であるトナー層規制部材104に印加した場合、図8に示すように、画像上スジ状地汚れが発生した。
【0057】
次に、実線で示した外側電極と同位相で面積中心の電圧をVavg1よりもマイナス側にシフトさせた電圧Vavg3(本実施例では、Vavg3-Vavg1=−100〔V〕とした。)をもつAC波形をトナー層規制部材104に印加した場合も、図8に示すように、画像上スジ状地汚れが発生した。さらに、実線で示した外側電極と同位相で面積中心の電圧をVavg1と同じ電圧Vavg4(本実施例では、Vavg3-Vavg1=0〔V〕とした。)をもつAC波形をトナー層規制部材104に印加した場合も、図8に示すように、前述の条件よりも改善したが、画像上スジ状地汚れが軽微に発生した。そこで、現像剤規制部材であるトナー層規制部材104に印加するバイアスを本実施例における構成である電気的にフロートにした場合、図8に示すように、画像上スジ状地汚れが発生しなかった。
【0058】
ところで、現像剤規制部材であるトナー層規制部材104を電気的にフロートにした場合、トナー層規制部材104とトナー間の摩擦で発生した電荷が、トナー層規制部材104に蓄積してしまう。この電荷は、一定以上蓄積すると異常放電(リーク)を発生させてしまい、現像剤担持体であるトナー担持ローラ103の表面を傷つけたり、トナー担持ローラ103上のトナー薄層を乱したりし、異常画像の原因となる。そこで、本実施例では、予め異常放電が発生する量の電荷が蓄積する前に、電荷を逃がす構成とした。具体的には、現像剤規制部材であるトナー層規制部材104と図示しない画像形成装置本体のグランドとの間にスイッチを配し、そのスイッチをON、OFFさせることで、電気的にフロートにしたり、電荷を逃がしたりする構成とした。これにより、異常放電を発生させることなく、良好な画像を提供することができる。
【0059】
なお、電荷を逃がす際、図5(A)に示した内側電極33a及び外側電極34aにそれぞれ印加する内側電圧と外側電圧のAC成分をOFFとし、現像剤担持体であるトナー担持ローラ103上のトナーをフレアさせないようにする。これにより、電荷を逃がす際のトナー飛散を防止し、機内汚れ等の不具合を回避できた。
【0060】
また、電荷を逃がす際、トナー担持ローラ103の回転を止めることで、電荷を逃がす際に新たに発生する電荷の発生を防止することができる。トナー担持ローラ103が回転することで生じるトナー劣化も抑制することができる。
【0061】
さらに、電荷を逃がす際に、トナーをフレアさせないよう、AC成分をOFFとしたり、現像剤担持体であるトナー担持ローラ103の駆動を停止したりする必要がある。このため、印字中や1枚印字毎に電荷を逃がす制御を行うと、1枚当たりのプリント時間がかかってしまう。これを回避するため、例えば印刷JOB(ジョブ)の途中では電荷を逃がす制御を入れず、JOB終了後のみ電荷を逃がす制御を行うことで、1枚当たりのプリント時間を削減することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:プロセスカートリッジユニット
2:感光体ドラム
3:帯電部材
4:現像手段
5:感光体クリーニング手段
7:中間転写ベルト
8:一次転写ローラ
9:二次転写ローラ
10:用紙
12:定着装置
11:転写ベルトクリーニング手段
25A、25B:パルス電源
33a:内側電極
34a:外側電極
35:絶縁層
36:表層
101:トナー収容室
102:トナー供給室
103:トナー担持ローラ
104:トナー層規制部材
105:トナー供給ローラ
106:トナー搬送部材
107:返送口
108:トナー撹拌部材
110:仕切り部材
111:供給口
109:除電シール
110:仕切り部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2007-133387号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体に対向して配置され、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像するための現像剤を担持する現像剤担持体を有する現像装置において、
前記現像剤担持体外周面に担持された現像剤を現像領域へ搬送するため、前記現像剤担持体に複数種類の電極部材を配置し、各電極部材間に絶縁層を介在させ、
該電極部材と前記現像剤担持体の電極間に電界を形成し、
該形成した電界により前記現像剤担持体上の現像剤を飛翔させる電界形成手段を備え、
前記現像剤担持体は前記電極よりも外周面側に、現像剤に所望の荷電を付与する表層を持ち、
顔現像剤担持体上の表層厚さを規制する現像剤規制部材を有し、
前記現像剤規制部材を電気的にフロートとすることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置において、
前記現像剤規制部材に蓄積された電荷を逃がす手段を有することを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の現像装置において、
前記蓄積された電荷を逃がす際は、前記現像剤担持体と該現像剤担持体の電極間に印加している電界をオフとして行うことを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項2に記載の現像装置において、
前記蓄積された電荷を逃がす際は、前記現像剤担持体の動作を停止させて行うことを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の現像装置において、
前記蓄積された電荷を逃がすタイミングを印字タイミングのジョブ間としたことを特徴とする現像装置。
【請求項6】
潜像担持体と、請求項1から5のいずれかに記載の現像装置とを、1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能に構成したことを特徴とするプロセスユニット。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の現像装置を画像形成装置本体に備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6に記載のロセスユニットを画像形成装置本体に着脱可能に備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−180537(P2011−180537A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47176(P2010−47176)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】