説明

現像装置、並びに、これを備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】現像装置内の限られた現像剤量で、高速回転する現像剤担持体に対し、現像剤を不足なく安定して供給し続けることが可能な供給回収分離方式の現像装置を提供することを課題とする。
【解決手段】現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向下流側端部まで搬送された現像剤を、現像剤回収搬送路を介して、現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向上流側端部へ搬送する循環搬送機構を有し、この循環搬送機構は、現像剤が循環搬送される搬送路の中で、現像剤供給搬送路内における現像剤の平均搬送速度が最も遅くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤を用いる現像装置、並びに、これを備えたプロセスカートリッジ、及び、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の現像装置は、一般に、現像剤担持体に沿って現像剤担持体回転軸方向に延びる現像剤供給搬送路中を搬送されている二成分現像剤(以下、単に「現像剤」という。)を、回転している現像剤担持体の表面に担持させ、現像剤担持体の回転により現像剤を現像領域へ供給する。従来の現像装置の中には、現像領域でトナーを消費した現像済み現像剤を再び現像剤供給搬送路へ戻す供給回収一体方式を採用するものがある。この供給回収一体方式の現像装置は、現像剤供給搬送路を流れる現像剤のトナー濃度が現像剤搬送方向下流(以下、単に「下流」という。)側ほど低くなるため、現像領域に供給される現像剤において現像剤担持体回転軸方向にトナー濃度のムラが生じるという欠点がある。このようなトナー濃度のムラは、記録材上に形成される画像の濃度ムラとなって現れやすいので、解消することが望まれる。
【0003】
この欠点を解消し得る現像装置としては、現像領域でトナーを消費した現像済み現像剤を現像剤供給搬送路とは別の搬送路である現像剤回収搬送路へ回収する供給回収分離方式を採用するものがある(例えば特許文献1)。この供給回収分離方式の現像装置は、現像剤供給搬送路を流れる現像剤のトナー濃度が現像剤搬送方向にわたって一定に維持される。よって、現像領域に供給される現像剤において現像剤担持体回転軸方向にトナー濃度のムラが生じることはなく、上述した欠点が解消される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の画像形成装置に対しては、画像形成スピードの高速化が強く望まれている。画像形成スピードの高速化に対応するためには、現像装置の現像剤担持体の回転速度を高速化することが必要となる。現像剤担持体の回転速度が高いほど、現像剤担持体に対して現像剤を不足なく安定して供給し続けることが困難となるので、現像剤担持体への現像剤供給不足による画像濃度の低下等の画質劣化を引き起こしやすい。特に、近年の画像形成装置に対しては小型化の要請が強いことから、これに搭載される現像装置の小型化も強く望まれており、そのために現像装置内に収容可能な現像剤の量は制限される傾向にある。そのため、現像装置内の限られた量の現像剤を有効活用して、現像剤担持体へ現像剤を不足なく安定して供給し続けることが必要となる。したがって、画像形成装置の小型化と画像形成スピードの高速化とを両立するためには、現像装置内の限られた現像剤量で、高速回転する現像剤担持体に対し、現像剤を不足なく安定して供給し続けることが望まれる。
【0005】
しかしながら、上述した供給回収分離方式を採用する現像装置において、現像剤供給搬送路内の現像剤は、その現像剤供給搬送路に沿って配置される現像剤担持体に汲み上げられながら下流側端部まで搬送される。そのため、現像剤供給搬送路内を流れる現像剤の量は、下流側ほど少なくなる。よって、上述したように現像剤担持体の回転速度を高速化すると、単位時間あたりの汲み上げ量が多くなって、現像剤供給搬送路の下流側端部まで到達できる現像剤の量が少なくなり、現像剤供給搬送路の下流側において現像剤の量が不足する事態が起こり得る。
【0006】
従来、現像剤供給搬送路の下流側で現像剤の量が不足する事態に対しては、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送速度を速めることで対応してきた。これによれば、上流側端部から搬送開始された単位量の現像剤が下流側端部まで搬送されるまでの間に現像剤担持体へ汲み上げられる量が少なくなるので、現像剤供給搬送路の下流側で現像剤の量が不足する事態が起きにくい。しかしながら、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送速度を速めるには限界があるため、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送速度を速める方法では、現像剤担持体の更なる高速化には対応できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、現像装置内の限られた現像剤量で、高速回転する現像剤担持体に対し、現像剤を不足なく安定して供給し続けることが可能な供給回収分離方式の現像装置、並びに、これを備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、現像剤担持体に沿って現像剤担持体回転軸方向に延びる現像剤供給搬送路中を搬送部材によって搬送されているトナーとキャリアとを含んだ二成分現像剤を、回転している該現像剤担持体の表面に担持させることにより、該現像剤担持体の表面に担持された二成分現像剤を現像領域へ搬送し、現像領域にて二成分現像剤中のトナーを潜像担持体表面上の潜像に付着させて該潜像を現像するとともに、現像領域を通過した二成分現像剤を該現像剤担持体から該現像剤供給搬送路とは別の搬送路である現像剤回収搬送路に回収する現像装置において、上記現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向下流側端部まで搬送された二成分現像剤を、上記現像剤回収搬送路を介して又は該現像剤回収搬送路とは別の搬送路を介して、該現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向上流側端部へ搬送する循環搬送機構を有しており、二成分現像剤を現像剤担持体回転軸方向へ搬送する搬送部材を内部に備えた搬送路の中で、該現像剤供給搬送路内部の搬送部材による二成分現像剤の平均搬送速度が最も遅くなるように構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の現像装置において、上記循環搬送機構は、上記現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向下流側端部まで搬送された二成分現像剤を上記現像剤回収搬送路へ受け渡し、該現像剤回収搬送路の現像剤搬送方向下流側端部まで搬送された二成分現像剤を該現像剤供給搬送路へ受け渡すように、二成分現像剤を循環搬送するものであることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の現像装置において、上記循環搬送機構は、上記現像剤回収搬送路内における二成分現像剤の搬送速度について、現像剤搬送方向下流側よりも上流側の方が遅くなるように構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の現像装置において、上記循環搬送機構は、螺旋状の羽根部を回転軸に有し、その回転軸方向に沿って二成分現像剤を搬送する搬送スクリューを、上記現像剤回収搬送路内に備えており、該搬送スクリューは、補給用トナーを供給するためのトナー補給口から補給用トナーが供給される箇所又は該箇所よりも現像剤搬送方向下流側の箇所に設けられる上流側羽根部を、該箇所よりも現像剤搬送方向下流側に設けられる下流側羽根部よりも、二成分現像剤の分散性能が高く、かつ、二成分現像剤の搬送性能が低くなるように、そのリード角を大きくしたものであることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の現像装置において、上記搬送スクリューの上記上流側羽根部のリード角は、55°以上70°以下の範囲内に設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の現像装置において、上記循環搬送機構は、上記現像剤供給搬送路内における二成分現像剤の搬送速度が現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方を遅くするように構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、潜像担持体と該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置とを一体的に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジにおいて、上記現像装置として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、潜像担持体と、該潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤により該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置とを有し、該現像装置により該潜像担持体上に形成されたトナー像を最終的に記録材へ転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、上記現像装置として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、循環搬送機構により二成分現像剤が循環搬送される搬送路であって二成分現像剤を現像剤担持体回転軸方向へ搬送する搬送部材を内部に備えた搬送路の中で、現像剤供給搬送路内における二成分現像剤の平均搬送速度が最も遅い。これにより、現像装置内で現像剤を循環搬送させると、その循環経路上における現像剤量の分布は、現像剤供給搬送路の上流側端部で現像剤量が最も多くなる。これにより、現像剤供給搬送路の上流側端部では、限られた現像剤量の中で最大限の量を現像剤供給搬送路下流側へ送り出すことが可能となる。この結果、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送速度を従来よりも遅く設定しても、現像剤供給搬送路内の現像剤を下流側端部まで到達させることができ、高速回転する現像剤担持体に対して現像剤を安定供給できる。したがって、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送速度を速める方法では対応できないような高速な現像剤担持体に対しても、現像剤を安定供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、供給回収分離方式の現像装置内の限られた現像剤量で、高速回転する現像剤担持体に対し、現像剤を不足なく安定して供給し続けることが可能となるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】同プリンタの画像形成部の概略構成を示す説明図である。
【図3】同プリンタの現像装置における現像剤循環搬送機構による現像剤の流れを説明するために、現像装置内を横方向から見たときの模式図である。
【図4】同現像装置の現像剤回収搬送路の下流側端部における断面を示す説明図である。
【図5】同現像装置の現像ローラ表面上における磁束密度分布を、現像装置の概略構成に重ね合わせて表示した説明図である。
【図6】同現像装置の現像ローラの構造を示す断面図である。
【図7】同現像装置に設けられる現像剤循環搬送機構の構成を説明するための斜視図である。
【図8】同現像剤循環搬送機構の分解図である。
【図9】同現像装置の現像剤供給搬送路内の下流側端部において現像剤不足が発生している状態を示す模式図である。
【図10】同現像装置の現像剤回収搬送路の一部を切り出し、その切り出し部分である回収路セルを現像剤搬送方向に対して直交する水平方向から見たときの説明図である。
【図11】搬送スクリューの羽根部のリード角と現像剤搬送速度との関係の一例を示すグラフである。
【図12】同搬送スクリューの羽根部のリード角と現像剤の分散性との関係の一例を示すグラフである。
【図13】変形例における現像剤循環搬送機構の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、画像形成装置としてのカラープリンタに適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
本プリンタは、記録材としての転写紙8を搬送する搬送ベルト15に沿って、複数の画像形成部17K,17M,17Y,17Cが配列された、いわゆるタンデム型の画像形成装置である。なお、各画像形成部の配列順序は、これに限らず、例えば、黒の画像形成部17Kを転写紙8の搬送方向最下流に配置し、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、黒(K)の順に作像するようにしてもよい。
【0013】
これらの画像形成部17K,17M,17Y,17Cは、それぞれが潜像担持体としての感光体を有し、各感光体上にそれぞれの色のトナー像を形成する。各画像形成部17K,17M,17Y,17Cは、必ずしもユニットとして構成されている必要はないが、本実施形態では、ユニット化されていてプリンタ本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジとなっている。これらの画像形成部17K,17M,17Y,17Cは、使用するトナーの色が異なる以外は、その構成がほぼ同一である。
【0014】
図2は、本実施形態に係るプリンタの画像形成部17K,17M,17Y,17Cの概略構成を示す説明図である。
感光体1は、図中時計まわりの向きに回転駆動する。この感光体1の上方には帯電装置2が配置されている。この帯電装置2は、本実施形態では、帯電バイアスが印加された帯電ローラを感光体の表面に接触して感光体表面を所定電位に一様に帯電させる接触帯電方式を採用しているが、非接触帯電方式を採用してもよい。帯電装置2により一様に帯電された感光体1の表面部分は、図1に示した対応する露光装置16K,16M,16Y,16Cからの書込光Lの照射を受けて静電潜像が形成される。本実施形態では、帯電装置2及び露光装置16K,16M,16Y,16Cによって潜像形成手段が構成されている。
【0015】
感光体1上の静電潜像は、感光体1の回転に伴って現像装置3と対向する現像領域へと移動する。現像装置3は、現像剤担持体としての現像ローラ302に沿って現像ローラ回転軸方向(図2中紙面垂直方向)に延びる現像剤供給搬送路中を搬送されているトナーとキャリアとを含んだ二成分現像剤320を、回転している現像ローラ302の表面に担持させることにより、現像ローラ302の表面に担持された現像剤320を現像領域へ搬送し、現像領域にて現像剤中のトナーを感光体1上の静電潜像に付着させて現像処理するものである。
【0016】
現像装置3のケーシング301の一部は、現像ローラ302を露出させるために開口している。ケーシング301から露出した現像ローラ302の部分は、感光体1に対して横方向(図2中左右方向)から近接して対向している。これにより、現像ローラ302と感光体1との対向領域に現像領域Aが形成される。ケーシング301内の現像剤320は現像ローラ302に担持されて現像領域Aへ搬送される。現像領域Aで感光体1の表面に形成されている静電潜像に現像剤320中のトナーが付着してトナー像として顕像化される。
【0017】
このトナー像は、感光体1の回転に伴って搬送ベルト15との対向領域(転写領域B)へ搬送される。搬送ベルト15を挟んで感光体1の反対側(搬送ベルト15の内周面側)には、転写装置5が配置されている。転写装置5は、転写バイアスが印加された転写ローラを用いたものであるが、コロナ放電タイプのものでもよい。搬送ベルト15は、2つの支持ローラ18,19に張架されている。これらの支持ローラ18,19のうちの一方は駆動ローラであり、他方が従動ローラである。駆動ローラが回転駆動することで、搬送ベルト15は図中矢印の向きに走行する。
【0018】
搬送ベルト15の下方には、転写紙8が収納された3つの給紙トレイ20,21,22が備えられている。例えば給紙トレイ20に収納された転写紙8のうち最上位置にある転写紙8は、画像形成時に送り出されてレジストローラ23で一旦待機させられ、画像形成部17Kにおける画像形成とタイミングを合わせて送り出され、静電吸着により搬送ベルト15に吸着される。こうして搬送ベルト15に吸着された転写紙8は、最初の画像形成部17Kに搬送され、ここで黒の画像が転写される。
【0019】
カラー画像の画像形成に際し、各画像形成部17K,17M,17Y,17Cでは、各感光体1の周面が暗中にて各帯電装置2により一様に帯電された後、各露光装置16からの書込光Lにより露光され、それぞれの静電潜像が形成される。これらの静電潜像は、各現像装置3によってそれぞれの色のトナーにより可視像化され、各感光体1上に各色のトナー像がそれぞれ形成される。
【0020】
これらのトナー像は、各転写装置5により、搬送ベルト15上の転写紙8に対して、互いに重なり合うように順次転写される。こうしてフルカラーの重ね画像が形成された転写紙8は、搬送ベルト15から剥離されてから定着装置24で一対の定着ローラ間を通過する間に定着された後、排紙トレイ25へ排紙される。
【0021】
一方で、転写を終えた各感光体1は、感光体1の周面に残留した不要なトナーがクリーニング装置6により除去され、次の画像形成に備えられる。クリーニング装置6は、転写紙8に転写されずに感光体1の表面に残ったトナーを、クリーニングブレード601により除去する。クリーニング装置6を通過した感光体1の表面は、その後、帯電装置2により表面を一様に帯電され、次の画像形成工程を繰返す。
【0022】
なお、感光体上のトナー像を中間転写体(中間転写ベルトなど)にいったん転写し、その後多色トナーを一括して転写紙に転写する中間転写ベルト方式にも適用は可能であり、その場合は転写領域Bで感光体上のトナーを中間転写体(中間転写ベルト)に転写することになる。
【0023】
次に、現像装置3について詳しく説明する。
本実施形態における現像装置3は、図2に示すように、現像領域を通過した現像剤320を現像ローラ302から現像剤供給搬送路とは別の搬送路である現像剤回収搬送路に回収する、いわゆる供給回収分離方式を採用している。現像装置3は、現像剤供給搬送路内の現像剤を搬送するための第1搬送スクリュー304と、現像剤回収搬送路内の現像剤を搬送するための第2搬送スクリュー305とを備えている。現像剤供給搬送路及び現像剤回収搬送路は、ケーシング301を仕切板306によって仕切ることで形成されている。
【0024】
図3は、本実施形態の現像装置3における現像剤循環搬送機構による現像剤の流れを説明するために、現像装置内を横方向から見たときの模式図である。
本実施形態の現像装置3は、現像剤供給搬送路の下方に現像剤回収搬送路が配置された縦攪拌構成である。第1搬送スクリュー304によって現像剤供給搬送路の下流端まで搬送された現像剤は、現像剤供給搬送路の下流側端部の底面に開口した連通孔309を通じて現像剤回収搬送路の上流端に移動し、第2搬送スクリュー305によって現像剤回収搬送路の下流端まで搬送された現像剤は、図4に示すように、現像剤供給搬送路の上流側端部の底面に開口した開口部307を通じて現像剤供給搬送路の上流端に移動する。
【0025】
図5は、現像ローラ302の表面上における磁束密度分布を、現像装置の概略構成に重ね合わせて表示した説明図である。
現像ローラ302は、円周方向に複数の磁石MG(図の煩雑化防止のため1個についてのみ符号で示す。)を配置したマグネットローラ302dが内部に固定配置され、その周囲を円筒状のスリーブ302cが回転軸302eと一体的に回転する構成となっている。スリーブ302cは、アルミ等の非磁性の金属で形成されている。マグネットローラ302dは、各磁石MGが所定の方向を向くように、例えばケーシング301に固定されている。現像ローラ302は、磁石MGの磁力によってスリーブ302cの表面に引き付けた現像剤320を担持し、これをスリーブ302cの回転に伴って周方向へ搬送する。
【0026】
図6は、現像ローラ302の構造を示す断面図である。
現像ローラ302は、主として、ケーシング301に固定されている固定軸302aと、この固定軸302aと一体の円柱状をしたマグネットローラ302dと、マグネットローラ302dのまわりをギャップを介して覆っているスリーブ302cと、このスリーブ302cと一体的な回転軸302eとから構成されている。固定軸302aに対して回転軸302eは軸受302fを介して回転自在であり、回転軸302eは図示省略の回転駆動手段から動力を伝達されて回転駆動される。
【0027】
マグネットローラ302dの外周部には、図6に示すように、所定の間隔をおいて複数の磁石MGが固定されている。これらの磁石MGの周囲をスリーブ302cが回転されるわけである。これらの磁石MGは、スリーブ302cの表面に現像剤を穂立ちさせ、また穂切りなどさせるように磁界を形成するためのものである。本実施形態では、図5に示すように、スリーブ302cの内部に5つの磁石MGを有し、5つの磁極(磁力分布)が生じる。現像ローラ302の中心O−1と感光体の中心O−2とを結ぶ仮想線上に配置される磁極をP1極とし、以下、現像ローラ302の回転方向に沿って、各磁極をP2極、P3極、P4極、P5極とする。
【0028】
各磁極の極性は、P1極から順に、N極、S極、N極、N極、S極となっているが、これらは各磁極が反対の極性であっても構わない。現像ローラ302上で、各磁極は、その中心が、図5において、P1極は時計文字盤の8時、P2極は同7時、P3極は同5時、P4極は同1時の各位置に略位置している。
【0029】
現像ローラ302と感光体1とは現像領域Aで直接には接触せずに、現像に適する一定の間隔、現像ギャップGP1を保持して対向している。現像ローラ302上において、P1極で現像剤320を穂立ちさせ、現像剤320を感光体1に接触させることで、感光体1表面の静電潜像にトナーを付着させて顕像化する。
【0030】
現像装置3では、図5に示すように、固定軸302aには接地された現像バイアス用の電源VPが接続されている。固定軸302aに接続された電源VPの電圧は、導電性の軸受、導電性の回転軸302eを経てスリーブ302cに印加される。一方、図5に示すように、感光体1を構成する最下層の導電性支持体31は接地されている。こうして、現像領域Aには、キャリアから離脱したトナーを感光体1側へ移動させる電界を形成しておき、スリーブ302cと感光体1の表面に形成された静電潜像との電位差によりトナーを感光体1側に向けて移動させることに供している。
【0031】
なお、本例の現像装置は露光用の光Lで書き込む方式の画像形成装置と組み合わせた例としている。帯電装置2により感光体1上に一様に負極性の電荷を乗せ、書込量を少なくするために画像部を露光用の光Lで露光することで、低下した電位の画像部(静電潜像)に負極性のトナーで現像する所謂反転現像方式を採用している。これは一例であり、本発明の現像方式の中で、感光体1に乗せる帯電電荷の極性は大きな問題ではない。
【0032】
現像領域Aで現像を終えた現像剤320は、P2極の磁力によって現像ローラ302上に担持されたまま、現像ローラ302の回転に伴ってケーシング301の内部へ搬送される。P2極に対応する位置にはケーシング301の一部があり、このケーシング301の一部はスリーブ302cの周面に近接して沿う湾曲形状をしており、シール効果により所謂トナー飛散防止機能を果たしている。
【0033】
P2極に対して現像ローラ回転方向下流側に位置するP3極及びP4極は、互いに同極性になっている。そのため、P3極とP4極との間では、それまで現像ローラ302の表面に引き寄せていた磁力が少なくなっており、これにより現像剤320を現像ローラ302から引き離す"剤離し"の作用が働く。現像ローラ302から現像剤320を引き離す剤離し領域を、図2や図4では符号9にて示している。感光体1にトナーを付着させた現像後の現像剤320は、現像剤中のトナー濃度が下がっているため、仮に、このトナー濃度が低下した現像剤が現像ローラ302から離れずに再び現像領域Aに搬送されて現像に供されると、狙いの画像濃度を得ることができないという不具合が生じてしまう。これを防止するため、本実施形態では、剤離し領域9で、現像ローラ302から現像剤を引き離すとともに、引き離した現像剤を現像剤供給搬送路とは別の現像剤回収搬送路へ回収するようにしている。
【0034】
こうして、現像剤が引き離された現像ローラ302の表面は、現像ローラ302の回転に伴って現像剤供給搬送路との対向箇所へ移動する。この箇所には、P4極が存在しており、このP4極の磁力により、現像ローラ上の剤汲み上げ領域10に、現像剤供給搬送路を流れている現像剤が汲み上げられ、担持される。P4極の磁力により現像ローラ302に汲み上げられた現像剤は、現像剤規制部材である現像ドクタ303を通過することにより、所定の厚さに整えられて現像領域Aに搬送される。P4極とP1極との間に位置するP5極は、現像ドクタ303を通過してから現像領域に至るまでの間、現像剤を現像ローラ302の表面に担持させるための搬送極の機能を担っている。
【0035】
以下、必要に応じて、現像装置の内部の構成を組み立て状態で示した図7及び分解状態で示した図8等をも参照しつつ、各部材の配置構成などを説明する。
図7及び図8に示すように、現像剤供給搬送路に配置される第1搬送スクリュー304は、その回転軸の回りに螺旋状の羽根部を備えたスクリュー形状をしており、現像ローラ302の中心O−302を通る中心線O−302aと平行な中心線O−304aを中心に図中矢印で示す時計まわりの向きに回転駆動する。これにより、中心線O−304aの図中奥側から図中手前側に向けて矢印11で示すように現像剤を撹拌しながら搬送する。つまり、第1搬送スクリュー304は、回転軸の回転により現像剤をその回転軸方向へ図中奥側から図中手前側に向けて搬送する。
【0036】
図7に示すように、現像剤回収搬送路に配置される第2搬送スクリュー305は、その回転軸の回りに螺旋状の羽根部を備えたスクリュー形状をしており、現像ローラ302の中心O−302を通る中心線O−302aと平行な中心線O−305aを中心に図中矢印で示す反時計まわりの向きに回転駆動する。これにより、中心線O−305aの図中手前側から図中奥側に向けて矢印12で示すように現像剤を撹拌しながら搬送する。つまり、第2搬送スクリュー305は、回転軸の回転により現像剤を第1搬送スクリュー304による搬送方向と逆向きの図中手前側から図中奥側に向けて搬送する。
【0037】
第1搬送スクリュー304と第2搬送スクリュー305との間であって、現像ローラ302の長手方向両端部を除く中央部で、第1搬送スクリュー304が配置される現像剤供給搬送路と第2搬送スクリュー305が配置される現像剤回収搬送路とを仕切る仕切板306が、ケーシング301の現像ローラ302から離れる側の内壁と一体に片持ち支持状に形成されている。仕切板306は、その長手方向については、現像ローラ302の長手方向両端部を除く中央部に位置し、現像ローラ302の長手方向両端部に対応する部位には無い。一方、第1搬送スクリュー304及び第2搬送スクリュー305の各長手方向端部は現像ローラ302の長手方向両端部まで及んでいる。
【0038】
第2搬送スクリュー305で矢印12の向きに現像剤回収搬送路中を搬送された現像剤は、その搬送方向下流端でケーシング301の側壁で進路を絶たれるため、その側壁に沿って盛り上がり、開口部307を介して矢印13に沿って第1搬送スクリュー304が配置された現像剤供給搬送路へ移動する。一方、第1搬送スクリュー304で矢印11の向きに現像剤供給搬送路中を搬送された現像剤は、現像剤供給搬送路の下流側端部の底面に設けられた連通孔309から矢印14に沿って現像剤回収搬送路へ降下する。
【0039】
仕切板306は、その長手方向については、現像ローラ302の長手方向両端部を除く中央部に位置するようにしている。これにより、その長手方向の端部での矢印13,14の現像剤の流れを可能にして、全体として矢印11,14,12,13に沿うような現像剤の循環搬送路を形成することができる。また、仕切板306は、第1搬送スクリュー304が撹拌搬送する現像剤320を下から支えて現像剤供給搬送路を形成するとともに、剤離し領域9で現像ローラ302から離されて現像剤回収搬送路へ回収された現像剤が現像剤供給搬送路へ移動するのを防止している。このような機能をより確実にするため、現像ローラ302の外周部と仕切板306との間隔、仕切板ギャップGP2は、0.2〜1mm程度に保持するのが好ましい。0.2mm未満では現像ローラ302の回転時の偏心により仕切板306が現像ローラに接触するおそれがあり、1mmを超えると回収した現像剤が現像剤供給搬送路へ移動するのを防止する機能が不十分になるからである。
【0040】
さらに、剤離し領域9からずれた配置としても、仕切板としての機能を得ることは可能である。しかし、剤離し領域9からずれた配置とした場合には、仕切板が多量の現像剤を規制するケースも生じ得ることから、現像剤が受けるストレスが大となり、好ましくない。そこで、現像ローラ302を間にして感光体1と反対側の現像ローラ302まわりの下部に剤離し領域9が位置し、現像ローラの回転方向上剤離し領域9の下流側に隣接して剤汲み上げ位置10が位置する構成とし、剤離し領域9と剤汲み上げ位置10との間で、現像ローラ302の周囲に現像剤が付着する量が最も少ない位置に、第1搬送スクリュー304周囲の空間と、第2搬送スクリュー305周囲の空間を遮蔽するようにして、仕切板306を設け、かつ、仕切板306の現像ローラ302側の端部を現像ローラ302に対向させた構成とする。このように構成すれば、前記仕切板ギャップGP2の0.2〜1mmの設定をしなくてもこの仕切板が設けられる部位では現像ローラ302の周囲に現像剤が付着する量が最も少ない位置であるので、仕切板306の機能を発揮できるし、また、該仕切板により規制されることで現像剤が受けるストレスを最小限にすることができる。つまり、仕切板設定時のギャップ管理を緩和できる。尤も、その上で仕切板ギャップGP2を0.2〜1mmの設定にする条件をさらに付加した構成とすれば、現像剤に与えるストレスをより少なくすることが
【0041】
また、本実施形態では、現像ローラ302と仕切板306の最近接位置は、第1搬送スクリュー304と第2搬送スクリュー305との間であって、現像ローラ302に現像剤が付く量が最も少ない領域、すなわち、P3極とP4極との間で、現像ローラ表面の磁束密度が、10mT以下の剤離し領域9内に設定している。
【0042】
また、本実施形態では、図8に示すように、第2搬送スクリュー305による現像剤搬送方向下流部では、開口部307に対応する範囲で、螺旋状の羽根部に代えて、羽根車308が形成されている。この羽根車308は、第2搬送スクリュー305の軸部305Jについて軸心(中心線O−305a)から放射状に延びる複数枚の板部材であり、第2搬送スクリュー305の回転に伴って現像剤320を上方に跳ね上げる機能を有する。
【0043】
図4に示すように、第1搬送スクリュー304の中心O−304と第2搬送スクリュー305の中心O−305とは略同一鉛直線上にあり、羽根車308は反時計回りの向きに回転し、ケーシング301の内壁に沿って現像剤320を跳ね上げる。開口部307はこの跳ね上げによる現像剤の進路を妨げないように、かつ、せっかく跳ね上げた現像剤が第2搬送スクリュー305へ落下することのないように、中心O−304と中心O−305とを結ぶ略鉛直線よりも僅かにケーシング内壁寄りの位置からケーシング内壁部に及ぶように形成してある。つまり、開口部307は仕切板306の一部に穴を開けた如き状態で形成されているので、第2搬送スクリュー305から第1搬送スクリュー304へ現像剤を持ち上げる部分には上下の空間をつなげる開口部307があるが、この開口部307に対応する現像ローラ側の部位には、現像ローラ軸方向中央部と同様に仕切板が存在する。この残りの仕切板部により、開口部307を通って下から上に移動した現像剤は再び下方に落下することなく現像ローラ302に引き寄せられ、現像ローラ302によって第2搬送スクリュー305に搬送されるか、または、第1搬送スクリュー304により搬送されていくので、効率の良い現像剤循環を行うことができる。
【0044】
第1搬送スクリュー304の回転方向は、反時計まわりの向きに回転する現像ローラ302と逆向きの時計回りの向きにしてある。一般に、スクリューは、被搬送物を軸方向に送りながら、回転方向に寄せる作用があるので、第1搬送スクリュー304は現像剤320を現像剤供給搬送路で現像ローラ302側に寄せながら搬送することになる。従って、現像ローラ302に接触する現像剤量を多く確保することができ、現像ローラ302に対する安定した現像剤供給が可能になる。
【0045】
第2搬送スクリュー305は、現像ローラ302と同じ向きに回転させている。本実施形態では反時計方向である。これにより、第2搬送スクリュー305は現像剤320を現像ローラ302から離れた方向に寄せながら搬送することになる。よって、剤離し領域9で磁気力や仕切板306などにより一度現像ローラ302から離された現像剤が現像ローラ302に再度付着することが抑制される。よって、現像後のトナー濃度が低下した現像剤が第1搬送スクリュー304の領域に移動することを防ぐことができる。
【0046】
次に、トナー補給について説明する。
現像装置3内の現像剤320は、現像動作を繰り返すうちにトナーが消費されていくので、現像装置外部から装置内の現像剤に対してトナーを補給する必要がある。本実施形態では、図8に示したように、連通孔309が設けられている現像剤供給搬送路の下流側端部(現像装置の手前側の端部)の上方に、トナー補給口310が設けられている。このトナー補給口310は、仕切板306が無い手前側の端部上方のケーシング301に形成されている。トナー補給口310から補給されたトナーは、現像ローラ302の現像領域対向部分から外れた現像剤供給搬送路の下流側端部から現像剤320とともに連通孔309を介して降下し、現像剤回収搬送路の上流側端部へ移動して、第2搬送スクリュー305により、現像剤と攪拌されながら現像剤回収搬送路中を搬送される。
【0047】
本実施形態では、供給回収分離方式を採用しており、現像剤回収搬送路を流れる現像剤は現像ローラ302へ供給されることがない。よって、トナー補給口310から新しく補給されたトナーによりトナー帯電量が不十分でトナー濃度が不均一な状態の現像剤が、現像ローラ302へ供給されて現像に供されることはない。補給されたトナーは、現像剤回収搬送路内で、現像ローラ302から回収されたトナー濃度の低い現像剤320と撹拌混合されながら、下流端(現像装置3の奥側の端部)へ搬送されるまでに、トナーが十分に摩擦帯電され、トナー濃度が正常化される。そして、このような現像剤が羽根車308などの作用により開口部307から現像剤供給搬送路へ持ち上げられ、第1搬送スクリュー304により手前側に搬送されながら現像ローラ302に供給され、現像に使用される。
【0048】
なお、ここでは、現像剤供給搬送路の下方に現像剤回収搬送路が配置された2つの搬送路で循環搬送を行う構成について説明したが、供給回収分離方式であれば、現像剤供給搬送路と現像剤回収搬送路とを略水平方向に並んで配置した2つの搬送路で循環搬送を行う構成でもよいし、3つ以上の搬送路で循環搬送を行う構成でもよい。
【0049】
次に、本発明の特徴部分である、現像剤の循環搬送機構について説明する。
図9は、現像剤供給搬送路内の下流側端部において現像剤不足が発生している状態を示す模式図である。
本実施形態の現像装置は、供給回収分離方式を採用しているので、現像剤供給搬送路内の搬送速度が現像剤搬送方向にわたって一定であれば、現像剤の量は、図3に示したように下流側ほど少なくなる。そして、現像ローラ302の回転速度が高速になるほど、現像剤供給搬送路内の現像剤が単位時間当たりに現像ローラ302へ汲み上げられる量が増える。そのため、現像剤供給搬送路内の下流側端部において現像剤が不足し、図9に示すように、現像剤供給搬送路内の下流側端部で現像剤が枯渇する事態が起こりやすくなる。このような現像剤の不足が起きると、現像剤供給搬送路内の下流側端部では現像ローラ302へ供給される現像剤量が不足し、その部分で画像濃度の低下を引き起こす。
【0050】
ここで、現像剤供給搬送路の下流側で現像剤の枯渇が発生しないための最低条件は、平衡状態において下記の式(1)を満たすことである。なお、式(1)中の「Mku」は、第2搬送スクリュー305が設けられた現像剤回収搬送路から、第1搬送スクリュー304が設けられた現像剤供給搬送路への単位時間当たりの現像剤移動量を示す(図中符号13で示す矢印)。また、式(1)中の「Mzs」は、現像ローラ302の回転に伴って搬送される単位時間当たりの現像剤搬送量を示す(図中符号7で示す矢印)。
Mku > Mzs ・・・(1)
【0051】
平衡状態において式(1)を満たす場合、現像剤供給搬送路内へ単位時間当たりに流入する現像剤量は、常に現像剤供給搬送路から単位時間当たりに流出する現像剤量を超えることになるため、現像剤供給搬送路の下流側で現像剤の枯渇が発生しない。そして、現像ローラ302による現像剤搬送量Mzsに対し、現像剤回収搬送路から現像剤供給搬送路への現像剤移動量Mkuが多ければ多いほど、上記式(1)を満たす余裕度が高まるため、現像剤供給搬送路の下流側での現像剤枯渇をより安定して防ぐことができる。
【0052】
ところが、小型の現像装置では、現像装置内に収容できる現像剤量が限られるため、従来の現像装置では、現像ローラ302による現像剤搬送量Mzsに対し、現像剤回収搬送路から現像剤供給搬送路への現像剤移動量Mkuを十分に多くすることが困難であった。そのため、現像装置を小型化すると、上記式(1)を満たす余裕度が低くなって、現像剤供給搬送路の下流側での現像剤枯渇を安定して防ぐことが難しくなる。特に、画像形成スピードの高速化のために現像ローラ302を高速回転させる場合には、現像ローラ302による現像剤搬送量Mzsが増大するため、更に余裕度が低くなり、現像剤供給搬送路の下流側での現像剤枯渇を安定して防ぐことが極めて困難な状況となる。
【0053】
そこで、本実施形態では、現像剤が循環搬送される現像剤供給搬送路と現像剤回収搬送路の2つの搬送路の中で、現像剤供給搬送路内における現像剤の平均搬送速度が最も遅くなるように設定している。これにより、現像剤循環経路上における平衡状態での現像剤量の分布は、現像剤供給搬送路の上流側端部で現像剤量が最も多いものとなる。すなわち、現像装置を小型化した場合における現像装置内の限られた少量の現像剤を、平衡状態において現像剤供給搬送路の上流側端部に偏在させることができる。その結果、現像装置内の限られた現像剤量で、現像剤回収搬送路から現像剤供給搬送路への現像剤移動量Mkuを最大限に大きくすることができ、上記式(1)を満たす余裕度を可能な限り大きくすることができる。
【0054】
そして、上記式(1)を満たす余裕度が大きくなることで、現像剤供給搬送路内の平均搬送速度を遅くしても、現像剤供給搬送路の下流側での現像剤枯渇を安定して防ぐことが可能となる。すなわち、上記式(1)を満たす余裕度が大きくなるということは、現像剤供給搬送路の上流側端部に存在する現像剤量が増えることを意味する。したがって、現像剤供給搬送路の上流側端部から下流側に向けて送り出すことが可能な現像剤量が増えることになる。現像剤供給搬送路の上流側端部から下流側に向けて送り出す現像剤量が増えれば、現像剤供給搬送路内の現像剤搬送速度が遅くても、現像剤供給搬送路の下流側端部まで現像剤が残り、枯渇を発生させないようにすることができる。
【0055】
また、本実施形態において、現像剤回収搬送路内における現像剤搬送速度は、現像剤搬送方向全域にわたって一定ではなく、現像剤搬送方向下流側よりも上流側の方が遅くなるように設定されている。これは、上述したように現像剤供給搬送路内における現像剤の平均搬送速度が最も遅くなるように設定しつつも、現像剤回収搬送路の下流側で発生し得る現像剤連れ回りや現像剤漏れを抑制するためである。
【0056】
本実施形態の現像装置は、供給回収分離方式を採用しているので、現像剤回収搬送路内の搬送速度が現像剤搬送方向にわたって一定であれば、現像剤の量は、図3に示したように下流側ほど多くなる。そのため、現像剤回収搬送路の下流側において、現像剤が滞留して現像剤回収搬送路内の現像剤が現像ローラ302の表面に接触する事態が起こり得る。このような事態が生じると、現像ローラ302の回転に伴って現像領域から搬送されてくる現像済み現像剤を現像ローラ302の表面から剥離させることが困難となる。その結果、現像済み現像剤が現像ローラ302の回転に伴って現像ローラ302に担持されたまま再び現像領域へ搬送される現像剤連れ回りが発生する。また、現像ローラ302の表面から一旦は剥離した現像済み現像剤が再び現像ローラ302の表面に付着する場合もあり、この場合も現像剤連れ回りが発生する。現像剤連れ回りが発生すると、トナー濃度の低い現像済み現像剤が現像に寄与してしまい、その部分で画像濃度の低下が生じる。
【0057】
また、現像剤回収搬送路の下流側に存在する現像剤には、現像剤回収搬送路内を後から搬送されてくる現像剤による押圧力が加わる。この押圧力により現像剤回収搬送路の下流側に存在する現像剤の現像剤供給搬送路への移動が促進されるのであるが、現像剤回収搬送路の下流側で現像剤が滞留する事態が生じると、その滞留現像剤の一部が現像剤供給搬送路側へ移動できない状況が生まれる。このような現像剤は、現像ローラ302と現像ケーシング内壁との間の隙間を通って移動し、現像装置の外部に流出する現像剤漏れを引き起こす。
【0058】
以上のような現像剤連れ回りや現像剤漏れを抑制するためには、現像剤回収搬送路の下流側に存在する現像剤の量を少なくすればよい。そのためには、現像剤回収搬送路内の現像剤搬送速度を遅くすることが考えられるが、現像剤回収搬送路内の現像剤搬送方向全域にわたって一律に現像剤搬送速度を遅くすると、現像剤供給搬送路内における現像剤の平均搬送速度が最も遅くするという上述した設定を実現するのが困難となり得る。
【0059】
そこで、本実施形態では、現像剤回収搬送路の上流側における現像剤搬送速度を下流側よりも遅くしている。これにより、現像剤回収搬送路内における現像剤の平均搬送速度を、現像剤供給搬送路内における現像剤の平均搬送速度よりも速い状態を維持しつつも、現像剤回収搬送路の下流側に存在する現像剤の量を少なくすることができる。
【0060】
図10は、現像剤回収搬送路の一部を切り出し、その切り出し部分(以下「回収路セル」という。)を現像剤搬送方向に対して直交する水平方向から見たときの説明図である。
現像剤回収搬送路の任意の地点(回収路セル)では、上流側から現像剤量Muが流入し、下流側へ現像剤量Mkが流出し、現像ローラ302から現像剤量Msが流入するという3種類の現像剤の流れが存在する。現像剤の循環搬送中に回収路セル内の現像剤量が変わらない平衡状態になれば、上記3つの現像剤量に対して下記の式(2)が成り立つ。つまり、回収路セル内に流入する現像剤量と回収路セルから流出する現像剤量とが等しくなる。
Mk = Mu + Ms ・・・(2)
【0061】
なお、現像剤流入量Msは、下記の式(3)に示すように、回収路セルの上流側面のうちの現像剤部分の面積(現像剤の上流側断面積)Suと、回収路セルの上流側面を通過する現像剤の搬送速度Vuとの積によって決まる。
Ms = Su × Vu ・・・(3)
同様に、現像剤流出量Mkは、下記の式(4)に示すように、回収路セルの下流側面のうちの現像剤部分の面積(現像剤の下流側断面積)Skと、回収路セルの下流側面を通過する現像剤の搬送速度Vkとの積によって決まる。
Mk = Sk × Vk ・・・(4)
【0062】
VuとVkが同じ速度の場合、現像ローラ302から回収される現像剤の分だけ、現像剤の上流側断面積Suよりも現像剤の下流側断面積Skの方が大きくなる。したがって、Vk=Vu=Vとすると、下記の式(5)が得られる。
Sk × V = Su × V + Ms ・・・(5)
この式(5)を変形すると、下記の式(6)が得られる。
Sk = Su + Ms/V ・・・(6)
この式(6)より、現像剤の下流側断面積Skは現像剤の上流側断面積Suに対してMs/Vだけ大きくなる。
このことから分かるように、供給回収分離方式を採用した本実施形態における現像装置では、現像剤回収搬送路内の搬送速度が現像剤搬送方向にわたって一定であれば、現像剤の量は、図3に示したように下流側ほど多くなる。
【0063】
ここで、上記式(2)、上記式(3)、上記式(4)から、下記の式(7)を導くことができる。
Sk × Vk = Su × Vu + Ms ・・・(7)
上記式(7)より、例えばSk=Su=Sと同じ面積にしたい場合、すなわち、現像剤回収搬送路内の現像剤の嵩を一定にしたい場合には、下記の式(8)を満たすように、回収路セルの上流側面を通過する現像剤の搬送速度Vuと、回収路セルの下流側面を通過する現像剤の搬送速度Vkとを設定すればよい。
Vk = Vu + Ms/S ・・・(8)
【0064】
上記式(8)は、現像剤回収搬送路内の任意の地点における回収路セルの下流側面の現像剤搬送速度Vkを、上流側面の現像剤搬送速度Vuに対してMs/Sだけ大きくしてやればよいことを意味している。このことから、現像剤回収搬送路の下流側に向かうほど現像剤搬送速度が増加するように構成すれば、現像剤回収搬送路内における現像剤の嵩変化を小さくすることができる。その結果、現像剤回収搬送路の下流側で現像剤が滞留する事態を避けることができる。
【0065】
なお、上述した現像剤回収搬送路について原理は、現像ローラ302から回収される現像剤回収量Msを、現像ローラ302へ汲み上げられる現像剤汲み上げ量(−Ms)に置き換えることで、現像剤供給搬送路についても同様に当てはまる。したがって、現像剤供給搬送路の下流側に向かうほど現像剤搬送速度が低下するように構成すれば、現像剤供給搬送路内における現像剤の嵩変化を小さくすることができる。その結果、より安定して現像剤供給搬送路の下流側における現像剤の枯渇を防ぐことができる。
【0066】
次に、現像剤回収搬送路の上流側における現像剤搬送速度を下流側よりも遅くする具体的な構成について説明する。
現像剤回収搬送路の上流側における現像剤搬送速度を下流側よりも遅くする方法としては、第2搬送スクリュー305の軸方向において、羽根部のピッチを異ならせたり、羽根部のリード角(スクリュー軸方向に直交する面と羽根部の面とのなす角度)を異ならせたりするなど、公知の方法を利用できる。一般には、羽根部のピッチを軸方向で異ならせる手法により、現像剤回収搬送路内の現像剤搬送速度を現像剤搬送方向で異なるようにすることが多いが、ここでは、羽根部のリード角を異ならせる手法を採用する。
【0067】
図11は、羽根部のリード角と現像剤搬送速度との関係の一例を示すグラフである。
このグラフの特性を有する第2搬送スクリュー305を用い、その羽根部のリード角を下流側で例えば45°に設定したときに、その上流側の現像剤搬送速度を下流側よりも遅くする場合、一般には、スクリュー軸に対して上流側の羽根部を立てるようにしていた。すなわち、上流側の羽根部のリード角を小さくすることで(例えば20°以上35°以下の範囲)、上流側の現像剤搬送速度を遅くする方法を採用するのが一般的である。しかしながら、図11のグラフに示すように、上流側の羽根部のリード角を大きくしても(例えば55°以上70°以下の範囲)、上流側の現像剤搬送速度を遅くすることができる。
【0068】
図12は、羽根部のリード角と現像剤の分散性との関係の一例を示すグラフである。
現像剤の分散性とは、スクリューによる現像剤の攪拌性能を示すものであり、トナー濃度が均一な現像剤又はトナーを含まない現像剤に対して新しいトナーを追加した後、これをスクリューによって一定距離搬送したときの現像剤中におけるトナー濃度分布を計測し、そのトナー濃度分布の分散σをトナー濃度平均値で割った値を用いている。
従来の考え方は、羽根部のリード角を小さくするほど(すなわちスクリュー軸に対して羽根部を立てるほど)、現像剤の分散性が高まるという考え方であった。本発明者らの研究により、羽根部のリード角が35°を超える当たりからは、リード角が大きくしても(すなわちスクリュー軸に対して羽根部を寝かせるほど)、現像剤の分散性が高まることが判明した。結果を図12に示す。しかも、羽根部のリード角を55°以上の範囲まで大きくすることで、羽根部のリード角を小さくする場合には得られないほどの高い分散性を発揮することも判明した。したがって、現像剤の分散性を高めたい場合には、羽根部のリード角を小さくする従来の考え方よりも、羽根部のリード角を大きくする本発明者らの考え方の方が有利である。
【0069】
ここで、現像剤回収搬送路内では、トナー補給口310から補給されたトナーを現像剤中に取り込んで攪拌し、トナーが十分に混合した状態の現像剤を現像剤回収搬送路へ受け渡すことが重要となる。現像剤回収搬送路内の現像剤攪拌は、一般に、次のような攪拌モデルによって説明できる。
すなわち、現像剤回収搬送路内を、現像剤搬送方向に3つの領域に分割し、最上流側に位置する領域での攪拌工程をフェーズ1とし、中央に位置する領域での攪拌工程をフェーズ2とし、最下流側に位置する領域での攪拌工程をフェーズ3とする。フェーズ1では、最も高い現像剤分散性が要求される箇所であり、現像剤の重ね合わせや現像剤深さ方向への現像剤の動きが支配的となって、現像剤中に補給トナーを大きく取り込むような攪拌を実現する。フェーズ2では、第2搬送スクリュー305の羽根部との接触部分で生じる現像剤のすべりや衝突による攪拌が支配的となり、現像剤中へのトナーの分散を促進する。フェーズ3では、局部的な搬送速度差による近傍粒子間の位置交換が発生し、現像剤搬送方向についての分散が促進される。
特に、本実施形態においては、現像剤回収搬送路の下流側端部に到達した現像剤を現像剤供給搬送路に受け渡す構成であるため、フェーズ2の現像剤のすべりや衝突、あるいは、現像剤回収搬送路から現像剤供給搬送路へ現像剤を受け渡す箇所(現像剤を持ち上げる箇所)での局部的な剤の入れ替えが効果的に生じるので、フェーズ1で補給トナーを現像剤中に良好に取り込むことができれば、効率的な分散性を得ることができる。
【0070】
本実施形態では、現像剤回収搬送路内における上流側の現像剤搬送速度を下流側の現像剤搬送速度よりも遅くするが、現像剤回収搬送路内の上流側の箇所は、フェーズ1を実行する箇所であり、高い現像剤分散性が求められる。そこで、本実施形態において、フェーズ1では、現像剤搬送速度は遅いが高い分散性を発揮できるように、羽根部のリード角を55°以上70°以下の範囲に設定している。羽根部が寝ることにより、剤の跳ね上げ効果が高まり、現像剤深さ方向への剤の動きが活性化して、高い現像剤分散性が得られる。補給トナーがある程度混ざった後のフェーズ2では、羽根部のリード角を、フェーズ1よりも搬送速度が高く、分散性も良好な45°程度に設定する。これにより、現像剤の搬送速度を高めて、現像剤による羽根部の乗り越えや、第2搬送スクリュー305とケーシング内壁との隙間で剤のすべりや衝突による分散を効果的に引き起こす。フェーズ3では、現像剤回収搬送路の下流側端部の現像剤をその上方に位置する現像剤供給搬送路の上流側端部まで持ち上げる必要がある。この現像剤の持ち上げをスムーズに行い、現像剤回収搬送路の下流側端部での現像剤の滞留を防止するため、フェーズ2と同様、羽根部のリード角を45°程度に設定し、高い搬送速度を実現している。
【0071】
〔実験例〕
次に、上述した実施形態に係る画像形成装置を用い、その現像装置における第1搬送スクリュー304と第2搬送スクリュー305のスクリューピッチ(スクリュー軸方向における羽根部間距離)を変えて、現像剤供給搬送路の下流側における現像剤の枯渇の発生と、現像剤回収搬送路の下流側における現像剤連れ回りの発生について評価する実験を行った。
下記の表1は、スクリュー径が14mmであり、スクリュー回転数が1000rpmであるときの、各スクリューピッチにおける現像剤の搬送速度の測定結果を示している。なお、本実験例において、現像剤の搬送速度は、トナー濃度センサを用い、トナーの移動を複数のトナー濃度センサでモニターすることにより、現像剤の移動時間を測定し、その測定結果から現像剤の搬送速度を算出したものである。
【表1】

【0072】
実施例1は、現像剤供給搬送路内の第1搬送スクリュー304として、20mmピッチのスクリューを用いた。一方、現像剤回収搬送路内の第2搬送スクリュー305には、スクリューを軸方向に2分割し、上流側のスクリュー部分を40mmピッチとし、下流側のスクリュー部分を28mmピッチとしたスクリューを用いた。各スクリュー部分のスクリュー径はいずれも14mmであるため、上流側のスクリュー部分のリード角は55°であり、下流側のスクリュー部分のリード角は45°である。その結果、現像剤供給搬送路内における現像剤の平均搬送速度は約14cm/secであり、現像剤回収搬送路内における現像剤の平均搬送速度は約17cm/secであった。この実施例1に係る現像装置を用い、現像装置内に収容される現像剤量とスクリュー回転数とを変えて、現像剤の枯渇および現像剤連れ回りを評価した。その評価結果は、下記の表2に示すとおりである。
なお、下記の表2において、黒塗りの菱形符号は現像剤の枯渇が発生した場合を示し、「×」は連れ回りが発生した場合を示し、「○」は連れ回りも枯渇のいずれも発生しなかった場合を示す。
【表2】

【0073】
実施例2は、現像剤供給搬送路内の第1搬送スクリュー304として、スクリューを軸方向に2分割し、上流側のスクリュー部分を20mmピッチとし、下流側のスクリュー部分を15mmピッチとしたスクリューを用いた。一方、現像剤回収搬送路内の第2搬送スクリュー305には、スクリューを軸方向に2分割し、上流側のスクリュー部分を40mmピッチとし、下流側のスクリュー部分を28mmピッチとしたスクリューを用いた。各スクリュー部分のスクリュー径はいずれも14mmであるため、上流側のスクリュー部分のリード角は55°であり、下流側のスクリュー部分のリード角は45°である。その結果、現像剤供給搬送路内における現像剤の平均搬送速度は約13cm/secであり、現像剤回収搬送路内における現像剤の平均搬送速度は約17cm/secであった。この実施例2に係る現像装置を用い、現像装置内に収容される現像剤量とスクリュー回転数とを変えて、現像剤の枯渇および現像剤連れ回りを評価した。その評価結果は、下記の表3に示すとおりである。
【表3】

【0074】
また、第1搬送スクリュー304及び第2搬送スクリュー305のいずれも28mmピッチのスクリューを用いた比較例1について、同様の評価を行った。その評価結果は、下記の表4に示すとおりである。
【表4】

【0075】
また、上流側スクリュー部分を40mmピッチとし、下流側部分を20mmピッチとした第1搬送スクリュー304と、上流側スクリュー部分を40mmピッチとし、下流側部分を20mmピッチとした第2搬送スクリュー305を用いた比較例2についても、同様の評価を行った。その評価結果は、下記の表5に示すとおりである。
【表5】

【0076】
また、実施例2の現像装置に対し、トナー濃度が5%になるように調整した現像剤を100g入れ、その後、0.4gのトナーを補給位置より補給し、現像ローラ302上の現像剤のトナー濃度を測定した。現像ローラ302上の現像剤のトナー濃度の測定は、何回か時間を変えて行い、平均した。その結果、実施例2では最大でトナー濃度が5.3%の上昇であったのに対し、比較例2では5.8%であった。現像ローラ302上のトナー濃度の上昇が小さいほど早く混ざることを示すため、実施例2の方が比較例2よりも攪拌性能が高いことが言える。
【0077】
〔変形例〕
次に、上記実施形態における現像剤循環搬送機構の一変形例について説明する。
図13は、本変形例における現像剤循環搬送機構の概略構成を示す説明図である。
上記実施形態では、現像剤供給搬送路の下方に現像剤回収搬送路が配置され、これらの2つの搬送路で現像剤を循環搬送する構成であったが、本変形例では、3つの搬送路で現像剤を循環搬送する構成である。なお、3つの搬送路で現像剤を循環搬送する構成は本変形例の構成に限定されない。
【0078】
本変形例では、第1搬送スクリュー304が配置される現像剤供給搬送路と、第2搬送スクリュー304が配置される現像剤回収搬送路と、現像剤供給搬送路及び現像剤回収搬送路の下流端までそれぞれ搬送された現像剤を現像剤供給搬送路の上流端へ戻すための現像剤攪拌搬送路という3つの搬送路が設けられている。現像剤攪拌搬送路には、第3搬送スクリュー315が設けられている。本変形例において、現像剤供給搬送路及び現像剤回収搬送路の現像剤搬送方向は奥側から手前側であり、互いに同じ向きである。一方、現像剤攪拌搬送路の現像剤搬送方向は手前側から奥側であり、現像剤供給搬送路及び現像剤回収搬送路の現像剤搬送方向とは逆向きである。
【0079】
本変形例の構成において、現像剤の循環経路は次の2通りである。
第1は、第1搬送スクリュー304(現像剤供給搬送路)→現像ローラ302→第2搬送スクリュー305(現像剤回収搬送路)→第3搬送スクリュー315(現像剤攪拌搬送路)→第1搬送スクリュー304(現像剤供給搬送路)の順路である。
第2は、第1搬送スクリュー304(現像剤供給搬送路)→第3搬送スクリュー315(現像剤攪拌搬送路)→第1搬送スクリュー304(現像剤供給搬送路)の順路である。
【0080】
本変形例においても、2つの搬送路で現像剤を循環搬送する上記実施形態の構成と同様、現像剤供給搬送路の下流側で現像剤枯渇の問題が生じ得るが、現像剤供給搬送路内における現像剤の平均搬送速度が最も遅くなるように設定している。これにより、上記実施形態の場合と同様に、現像装置内の限られた現像剤量で、現像剤攪拌搬送路から現像剤供給搬送路への現像剤移動量が最大限に大きくなり、現像剤枯渇が発生しない最低条件を満たす余裕度が可能な限り大きくなる。
【0081】
以上、本実施形態(変形例を含む。)に係るプリンタは、潜像担持体としての感光体1と、感光体1上に静電潜像を形成する潜像形成手段としての帯電装置2及び露光装置16と、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤により感光体1上の静電潜像を現像する現像装置3とを有し、現像装置3により感光体1上に形成されたトナー像を最終的に記録材としての転写紙8へ転移させて転写紙上に画像を形成する画像形成装置である。この現像装置3は、現像剤担持体としての現像ローラ302に沿って現像ローラ回転軸方向に延びる現像剤供給搬送路中を搬送されている現像剤320を、回転している現像ローラ302の表面に担持させることにより、現像ローラ302の表面に担持された現像剤320を現像領域Aへ搬送し、現像領域Aにて現像剤中のトナーを感光体表面上の静電潜像に付着させて静電潜像を現像するとともに、現像領域Aを通過した現像剤を現像ローラ302から現像剤供給搬送路とは別の搬送路である現像剤回収搬送路に回収する現像装置である。また、この現像装置は、現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向下流側端部まで搬送された現像剤を、現像剤回収搬送路を介して又は現像剤回収搬送路とは別の搬送路(例えば現像剤攪拌搬送路)を介して、現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向上流側端部へ搬送する循環搬送機構を有している。そして、この循環搬送機構は、現像剤が循環搬送される搬送路の中で、現像剤供給搬送路内における現像剤の平均搬送速度が最も遅くなるように構成されている。これにより、現像装置内の限られた現像剤量で、現像剤攪拌搬送路から現像剤供給搬送路への現像剤移動量が最大限に大きくなり、現像剤枯渇が発生しない最低条件を満たす余裕度が可能な限り大きくなる。その結果、現像剤供給搬送路内の平均搬送速度を遅くしても、現像剤供給搬送路の下流側での現像剤枯渇を安定して防ぐことが可能となる。
特に、本実施形態(変形例を含む。)においては、現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向下流側端部まで搬送された現像剤を現像剤回収搬送路へ受け渡し、現像剤回収搬送路の現像剤搬送方向下流側端部まで搬送された現像剤を現像剤供給搬送路へ受け渡すように、現像剤を循環搬送するものである。このような循環搬送によれば、現像装置の小型化に有利である。
また、本実施形態(変形例を含む。)においては、現像剤回収搬送路内における現像剤搬送速度を、現像剤搬送方向下流側よりも上流側の方が遅くなるように設定している。これにより、現像剤連れ回りや現像剤漏れを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態(変形例を含む。)においては、螺旋状の羽根部を回転軸に有し、その回転軸方向に沿って現像剤を搬送する第2搬送スクリュー305を現像剤回収搬送路内に備えており、この第2搬送スクリュー305は、補給用トナーを供給するためのトナー補給口310から補給用トナーが供給される箇所又は当該箇所よりも現像剤搬送方向下流側の箇所に設けられる上流側羽根部(フェーズ1に対応する部分)を、これよりも現像剤搬送方向下流側に設けられる下流側羽根部よりも、現像剤分散性能(分散性)が高く、かつ、現像剤搬送性能(現像剤搬送速度)が低くなるように、そのリード角を大きくしている。具体的には、そのリード角を55°以上70°以下の範囲内に設定している。これにより、現像剤の高い分散性が求められる箇所で高い分散性を発揮することができる。
また、本実施形態(変形例を含む。)において、現像剤供給搬送路内における現像剤の搬送速度は、現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方を遅くするように構成してもよい。この場合、現像剤供給搬送路の下流側における現像剤の枯渇を抑制する上で有利となる。
【符号の説明】
【0082】
1 感光体
2 帯電装置
3 現像装置
15 搬送ベルト
16 露光装置
17 画像形成部
301 ケーシング
302 現像ローラ
302c スリーブ
302d マグネットローラ
303 現像ドクタ
304 第1搬送スクリュー
305 第2搬送スクリュー
306 仕切板
307 開口部
308 羽根車
309 連通孔
310 トナー補給口
315 第3搬送スクリュー
320 現像剤
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開平11−84874号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤担持体に沿って現像剤担持体回転軸方向に延びる現像剤供給搬送路中を搬送部材によって搬送されているトナーとキャリアとを含んだ二成分現像剤を、回転している該現像剤担持体の表面に担持させることにより、該現像剤担持体の表面に担持された二成分現像剤を現像領域へ搬送し、現像領域にて二成分現像剤中のトナーを潜像担持体表面上の潜像に付着させて該潜像を現像するとともに、現像領域を通過した二成分現像剤を該現像剤担持体から該現像剤供給搬送路とは別の搬送路である現像剤回収搬送路に回収する現像装置において、
上記現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向下流側端部まで搬送された二成分現像剤を、上記現像剤回収搬送路を介して又は該現像剤回収搬送路とは別の搬送路を介して、該現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向上流側端部へ搬送する循環搬送機構を有しており、
二成分現像剤を現像剤担持体回転軸方向へ搬送する搬送部材を内部に備えた搬送路の中で、該現像剤供給搬送路内部の搬送部材による二成分現像剤の平均搬送速度が最も遅くなるように構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の現像装置において、
上記循環搬送機構は、上記現像剤供給搬送路の現像剤搬送方向下流側端部まで搬送された二成分現像剤を上記現像剤回収搬送路へ受け渡し、該現像剤回収搬送路の現像剤搬送方向下流側端部まで搬送された二成分現像剤を該現像剤供給搬送路へ受け渡すように、二成分現像剤を循環搬送するものであることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1又は2の現像装置において、
上記循環搬送機構は、上記現像剤回収搬送路内における二成分現像剤の搬送速度について、現像剤搬送方向下流側よりも上流側の方が遅くなるように構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項3の現像装置において、
上記循環搬送機構は、螺旋状の羽根部を回転軸に有し、その回転軸方向に沿って二成分現像剤を搬送する搬送スクリューを、上記現像剤回収搬送路内に備えており、
該搬送スクリューは、補給用トナーを供給するためのトナー補給口から補給用トナーが供給される箇所又は該箇所よりも現像剤搬送方向下流側の箇所に設けられる上流側羽根部を、該箇所よりも現像剤搬送方向下流側に設けられる下流側羽根部よりも、二成分現像剤の分散性能が高く、かつ、二成分現像剤の搬送性能が低くなるように、そのリード角を大きくしたものであることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項4の現像装置において、
上記搬送スクリューの上記上流側羽根部のリード角は、55°以上70°以下の範囲内に設定されていることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の現像装置において、
上記循環搬送機構は、上記現像剤供給搬送路内における二成分現像剤の搬送速度が現像剤搬送方向上流側よりも下流側の方を遅くするように構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
潜像担持体と該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置とを一体的に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在に構成されたプロセスカートリッジにおいて、
上記現像装置として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
潜像担持体と、該潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤により該潜像担持体上の潜像を現像する現像装置とを有し、該現像装置により該潜像担持体上に形成されたトナー像を最終的に記録材へ転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
上記現像装置として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−170188(P2011−170188A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35041(P2010−35041)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】