説明

現像装置、及びこれを用いた画像形成装置

【課題】供給ローラの長手方向端部付近の汚れを低減する。
【解決手段】感光ドラム1にトナー8を供給する現像ローラ2と、感光ドラム1にトナー8を供給する供給ローラ3とを備えた現像装置28及び印刷装置27であって、供給ローラ3は、中央部の抵抗値より長手方向端部の抵抗値の方が大きく設定しておく。また、この供給ローラ3は、予測低下量だけ端部の抵抗値を高くし、予測増加量だけ中央部の抵抗値を低くしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に現像剤を供給する現像剤担持体と、この現像剤担持体に現像剤を供給する供給ローラとを備えた現像装置、及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の現像装置は、帯電装置(帯電ローラ)、静電潜像担持体(感光体ドラム)、現像剤(トナー)、現像剤担持体(現像ローラ)、現像剤搬送部材(供給ローラ)、トナー層厚を規制するトナー層厚規制部材(現像ブレード)等で構成されており、供給ローラが現像ローラに所定の圧力で圧接されていた。
なお、特許文献1は、トナー粒子に添加される流動化剤の添加量を適切にする技術を主体として前記従来技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−347446号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の供給ローラを使用した画像形成装置は、連続印刷を行った際に、経時的に印字画像上でローラ長手方向端部付近にて汚れが発生する問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、供給ローラの長手方向端部付近の汚れを低減することができる現像装置、及びこれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の現像装置(28)、及びこれを用いた画像形成装置(印刷装置27)は、像担持体(感光ドラム1)に現像剤(トナー8)を供給する現像剤担持体(現像ローラ2)と、前記現像剤担持体に現像剤を供給する供給ローラ(3)とを備え、前記供給ローラは、該供給ローラ長手方向中央部が持つ抵抗値より該供給ローラ長手方向中央部から端部側にずれた部分が持つ抵抗値が高いことを特徴とする。また、前記供給ローラは、予測低下量だけ端部の抵抗値を高くし、予測増加量だけ中央部の抵抗値を低くしておくことが好ましい。なお、かっこ内の用語、符号は例示である。
【0007】
現像剤担持体と供給ローラとは互いに逆方向に回転するので摩擦が大きく、発熱により現像剤が軟化しやすい。このため、供給ローラの弾性層の発泡セルに現像剤が詰まり、発泡セルの劣化が生じ、印字の汚れが発生する。一方、供給ローラ(現像剤搬送部材)は、劣化により端部の抵抗値が下がり、中央部の抵抗値が上がる傾向がある。供給ローラの抵抗値が小さい場合、供給ローラと現像ローラとの間で電荷が移動しやすくなり、現像剤担持体への現像剤の移動量が増える。これにより、現像剤層厚規制部材による層厚規制が難しくなり、汚れが発生する。また、端部の抵抗値の低下と共に、中央部の抵抗値が高くなるため、印刷品質のギャップが増加する。そこで、経時での端部抵抗値の低下を防ぐため、端部と中央部とで発泡条件を変えて、供給ローラの端部の部分抵抗値を高くし、逆に中央部の部分抵抗値を低くすることで汚れ対策とした。なお、供給ローラの抵抗値を高くすると主にドラムかぶりが悪化する傾向があるため、長手方向端部とは逆に中央部の初期部分抵抗値をあらかじめ低くしておくことで印刷後の画像をより高品質に保つことができる。これにより、供給ローラの長手方向端部付近の印刷汚れを低減することができる。ここで、部分抵抗値とは、供給ローラの弾性層の所定面積部分における対向面間での抵抗値である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、供給ローラの長手方向端部付近の印刷汚れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態である画像形成装置としての印刷装置の概略断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態である現像装置で使用される供給ローラの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態である現像装置で使用される供給ローラの外形図である。
【図4】本発明の第1実施形態である現像装置で使用される現像ローラの断面図である。
【図5】現像ローラに当接する現像ブレードの断面図である。
【図6】現像ローラと供給ローラとの間のNIP部を説明するための図である。
【図7】本発明の第1実施形態である印刷装置のブロック図である。
【図8】5%デューティの印刷パターンを示す図である。
【図9】40%デューティの印刷パターンを示す図である。
【図10】30000枚印刷時の40%デューティの印刷パターンを示す図である。
【図11】30000枚印刷後の供給ローラの部分抵抗値の分布図である。
【図12】30000枚印刷後の現像ローラ上のトナー表面電位分布図である。
【図13】供給ローラの部分抵抗値分布を規定する図である。
【図14】供給ローラの気泡条件分布を規定する図である。
【図15】供給ローラの部分抵抗値の初期値を示す図である。
【図16】供給ローラの寿命時の部分抵抗値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
(構成)
図1は、本発明の第1実施形態である画像形成装置の概略断面図である。
図1において、画像形成装置としての印刷装置27は、現像装置28と、定着器15と、感光ドラム1に対向して配設され、現像されたトナー像を搬送された記録媒体11に転写する転写ローラ14と、用紙搬送ローラ13a、13b、13cと、制御部20とを備えて構成される。
現像装置28は、トナー8が収容されるトナーカートリッジ7、露光器としてのLEDヘッド10により静電潜像が形成される像担持体(静電潜像担持体)としての感光ドラム1、感光ドラム1に形成された静電潜像をトナー像(現像剤像)として顕像化する、感光ドラム1に対向して配置される回転可能な現像剤担持体としての現像ローラ2、トナーカートリッジ7に貯蔵されているトナー8を現像ローラ2に移動・搬送させる現像剤搬送部材としての供給ローラ3、感光ドラム1を帯電させる帯電装置としての帯電ローラ4、現像ローラ2上に供給されたトナー8を薄層形成する現像剤層厚規制部材としての現像ブレード9、転写されずに感光ドラム1上に残留したトナー8を掻き取り、回収するためのクリーニングブレード5、クリーニングブレ一ド5により掻き落とされた廃トナーを回収容器に搬送するためのスクリュー等の部材6、及びシール材33がその内部に収められている。
【0011】
感光ドラム1、現像ローラ2、供給ローラ3、及び帯電ローラ4はそれぞれ図示する矢印方向に回転する。記録媒体11は矢印12a、12b、12c、12dの方向に搬送される。転写ローラ14は、感光ドラム1に形成されたトナー像を記録媒体11に転写するためのローラである。転写されたトナー像は、定着器15で記録媒体11に定着される。
【0012】
LEDヘッド10は、複数のLEDが直線状に配列されたものであり、印刷パターンにしたがってLEDを選択的に発光させることにより、感光体ドラム1の表面を露光し、静電潜像を形成する。
感光体ドラム1は、金属パイプの導電性支持体と光導電層とを備えて構成され、この光導電層は電荷発生層、及び電荷輸送層を順次積層した有機系感光体で形成されている。
帯電ローラ4は、金属シャフトの回転軸に、弾性層として半導電性エピクロロヒドリンゴム層を金属シャフトの外層に被覆したものであり、感光体ドラム1を帯電させる。トナー8は、結着樹脂としてポリエステル樹脂が用いられ、帯電制御材、離形剤、着色剤が内部添加剤として使用され、流動性向上、画質向上のために表面に添加される外部添加剤としてメラミンが使用され、粒径は6〜7μmである。シール材33は、現像ローラ2と供給ローラ3とを離間し、現像ローラ2と供給ローラ3との圧接部でメラミンが凝集することが防止される。
現像ローラ2は、感光体ドラム1に形成された静電潜像にトナー8を付着させ、静電潜像を可視像化してトナー像を形成する。供給ローラ3と現像ローラ2とには、バイアス電圧が印加され、電界の作用によりトナー8を現像ローラに移動させる。
【0013】
定着器15は、加熱ローラ15aと定着ローラ15bとが互いに対向して備えられ、記録媒体11に転写されたトナー像を加熱・圧着して、記録媒体11に定着させる。加熱ローラ15aは、例えば、ハロゲンランプが内蔵されており、精密に温度制御されている。また、加熱ローラ15aと定着ローラ15bとの熱容量は大きく、記録媒体11等に熱が移動しても温度低下しないように構成されている。
【0014】
図2は、供給ローラ3の周方向に沿って切り取った概略断面図であり、供給ローラ3は、導電性シャフト(芯金)3aと、弾性層3bとを備えて形成されている。
導電性シャフト3aは、快削鋼材であるSUM材に無電解ニッケルメッキ処理を施したものであり、弾性層3bは、導電性シリコーンゴム発泡体層を用いて形成される。
弾性層3bの材料としての発砲体度は、発泡倍率、平均セル径により異なるが、100〜400[kg/m]の密度のものが好ましい。弾性層3bは、発泡倍率が5〜7倍であり、平均発泡セル径が200〜300[μm]であり、これらはアスカーF硬度に対応して変動する。発泡セル径は、発泡剤の量や種類を変更し、加硫時間や温度をコントロールすることで所望の値を得た。例えば、発泡セル径を大きくするには、発泡剤の量を増やす、加硫時間を長くする、加硫温度を高くするなどの方法がある。なお、発泡セル径が大きすぎるとトナー8が目詰まりし、小さすぎると弾性層3bが硬くなる。
【0015】
また、弾性層3bは、導電剤としてカーボンブラックを添加することにより、対向面の間の抵抗値が5〜9[10Ω]に調整されている。この抵抗値は、金属の円柱に弾性層3bを加重300[gf]で圧接させ、この金属円柱と導電性シャフト3aとの間にDC−1[V]を印加したときの値である。
【0016】
図3は、供給ローラ3の弾性層3bの形状を示す外観図である。弾性層3bは、長手方向端部の外径が中央部の外径に比べて小さいクラウン形状を成している。中央部の外径(a外径)は、φ15.5mmであり、端部の外径(b外径、c外径)はφ15.1mmであり、中央部の外径に対する端部の外径の比率は約0.975になっている。なお、弾性層3bの硬度は、アスカーF硬度50〜70[°]である。この硬度測定については、JIS Z2245等を参照することができる。
【0017】
図4は、現像ローラ2を周方向に沿って切り取った概略断面図である。
現像ローラ2は、供給ローラ3と同様にSUM材からなる導電性シャフト(芯金)2aと、ウレタンゴム製の弾性層2bと、弾性層2bの表面に帯電性付与剤、表面改質剤等によって処理を行った処理層2cとを同芯的に備えて形成される。本実施形態では、処理層2cの処理液にウレタン溶液の処理液を使用している。現像ローラ2は、外径がφ19.6mmで軸方向略均等なストレート形状であり、ローラ表面の10点平均粗さRz(JIS B0601−1994)が2〜6[μm]である。また、現像ローラ2の長さは348[mm]であり、供給ローラ3の長さは336[mm]である。なお、導電性シャフト2aの径は、φ6mmである。なお、現像ローラ2の弾性層2bは、供給ローラ3の弾性層3bよりも硬く構成されている。
【0018】
図5は、現像ブレード9と現像ローラ2との当接部の断面図である。現像ブレード9は、トナー8を均一な厚さに薄層化するものであり、エッジ部分がL字状に屈曲しているステンレス板である。現像ブレード9は、このエッジ部分で現像ローラ2の外周面に当接しており、この当接部分の曲率半径Rは0.15〜0.35[mm]としている。なお、この現像ブレードは、エッジ部分が平面であってもよく、ローラを用いたものであってもよい。
【0019】
図6は、現像ローラ2と、供給ローラ3との間のNIP部分の拡大図であり、点線部分が両ローラのNIP幅を示している。ここで、NIP幅(ニップ幅)とは、一対のローラが接触している部分に圧力をかけることによりできる接触幅のことである。基本的に、供給ローラ3と現像ローラ2とは同一方向に回転しており、トナー8(図1)を現像ローラ2に供給すると共に、現像ローラ2から感光体ドラム1で現像されないトナー8を掻き取る役割を果たしている。
【0020】
供給ローラ3は、対向する現像ローラ2に接触していない発泡セルに、供給されたトナー8が入り込み、貯留トナーとして蓄えられる。そして、供給ローラ3の回転と共に、現像ローラ2からの圧力を受けて、発泡セル(図2)のセル壁が変形し、内部に蓄えられていた貯留トナーが外部に放出される。供給ローラ3は、現像ローラ2と同一方向に回転しながら放出した貯留トナーを現像ローラ2に供給する。
【0021】
また、供給ローラ3と現像ローラ2とは同一方向に回転しているので、相対速度が加算され、NIP部分の摩擦が大きく、トナー8が軟化しやすく劣化につながっている。それに、両ローラの周速比に応じて現像ローラ2と供給ローラ3との間の摩擦力が支配される構造になっている。本実施形態では、現像ローラ2と供給ローラ3との周速比は約0.90であり現像ローラ2の方が速い。ここで、周速比とは、各ローラの外周の速度の比である。また、供給ローラ3は、その長手方向端部で現像ローラ2とのNIP量が中央部に比べて強く、端部のNIP幅が中央のNIP幅の約1.2倍になっている。したがって、供給ローラ3は、その中央部に比べて長手方向端部の方が発泡セルが劣化しやすい傾向にある。
【0022】
図7は、印刷装置27の構成を示すブロック図である。
印刷装置27は、前記した帯電ローラ4、現像ローラ2、供給ローラ3、及び転写ローラ14の他に、帯電ローラ用電源18、現像ローラ用電源19,供給ローラ用電源21,転写ローラ用電源22、及びこれらの電源を制御する制御部20を備えている。
【0023】
帯電ローラ用電源18は、帯電ローラ4に負電圧を印加し、感光ドラム1の表面を帯電させる。現像ローラ用電源19は、現像ローラ2に所定の負電圧を印加し、静電潜像にトナー8を付着させる。供給ローラ用電源21は、供給ローラ3に所定の負電圧を印加し、現像ローラ2と供給ローラ3との間の電位差を用いて、現像ローラ2にトナー8を供給する。転写ローラ用電源22は、転写ローラ14にトナー8の帯電極性と逆極性である所定の正電圧を印加し、感光体ドラム1と転写ローラ14との間の電界の作用により、感光ドラム1に形成されたトナー像を記録媒体11に転写する。また制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びプログラムから構成され、各部を制御すると共に、ドラムカウンタ16の機能を備え、印刷枚数を計数することができるようになっている。
【0024】
次に、本実施形態で使用した供給ローラ3の製造方法を説明する。供給ローラ3は、有機溶剤等で洗浄し、油分を除去した導電性シャフト(芯金)3aと、弾性層3bとしての導電性シリコーンゴム発泡体とを押し出し成形機にて一体化し、次いで赤外線オーブン等に通し発泡、硬化させて形成される。その後、供給ローラ3は、約180〜225[℃]で5〜10[時間]程度、2次加硫処理を行い、研磨機にて所望の外径を得る。
【0025】
印刷装置27は、次の条件で印刷を行い経時劣化の試験を行うようにしている。
まず、印刷装置27は、従来の供給ローラ3(3A)を使用し、5%デューティのパターン(図8に示した面積デューティが5%となるようなべタのパターン)を30000[枚]印刷した後、図9に示すような40%デューティのハーフトーンパターンを印刷する。印字環境は、温度22[℃]、湿度50[%]である。印刷時に各部材に印加した印加電圧は、現像ローラ2が−200[V]であり、供給ローラ3が−300[V]であり、帯電ローラ4が−1100[V]であり、現像ブレード9が−300[V]である。使用した印刷装置27の印刷速度は、一般的な普通紙(坪量68〜75[g/cm])で片面印刷38[ppm(pages per minute)]である。
【0026】
30000[枚]印刷後、図10で示されているような、40%デューティのハーフトーンパターン上でローラ長手方向について端部汚れが発生する。図11は、初期値及び30000[枚]印刷後の抵抗値分布を示す図であり、縦軸が抵抗値[logΩ]を示し、横軸が供給ローラ3の長手方向の測定位置を示す。通常、印刷前の供給ローラ3の長手方向の抵抗値分布は図11の破線Aのようにフラットな状態である。しかし、30000[枚]印刷後の抵抗値分布は、図11の実線Bのように端部に行くにつれて抵抗値が初期値よりも低下し、逆に中央部の抵抗値は初期値よりも増加するようになっている。また、中央部での抵抗値の増加量は、端部での低下量の約2倍になっている。この抵抗値の変化は、長期間の印刷により供給ローラの弾性層3bの発泡セルが劣化したことが大きな要因である。
【0027】
なお、図11で記載している抵抗値は、外径6[mm]、幅1.5[mm]のボールベアリングを、図14に記載した供給ローラ3の長手方向におけるa〜eの5箇所に配設し、10.8[gf]の圧力で供給ローラ3の表面に押し当て、導電性シャフト3aとの間にDC−300[V]の電圧を印加して測定した時の抵抗値である。以下、この抵抗値を「部分抵抗値」と呼ぶ。すなわち、部分抵抗値とは、供給ローラ3の弾性層の所定面積部分における対向面間での抵抗値のことである。使用したトナー8は、粒径が約6〜7[μm]の微粉砕トナーであり、外添剤としてメラミンを使用している。
【0028】
供給ローラ3の長手方向において部分抵抗値が増加する領域は、印刷画像上で汚れが発生している領域に対応する。図12は、30000[枚]印刷後の現像ローラ2上のトナー8の表面電位の分布図であり、横軸が長手方向測定位置を示し、縦軸が表面電位[−V]を示す。表面電位は、トレック・ジャパン製の表面電位計MODEL354を用いて、印加電圧−300[V]をかけて測定している。主に、トナー8の表面電位が高いと印刷画像に汚れが発生するリスクが高いとされているが、長手方向端部の表面電位が高い傾向を示していることから、部分抵抗値が低い部分は端部が汚れやすい状況であると説明することができる。すなわち、現像装置28は、供給ローラ3の抵抗値が小さい場合、供給ローラ3と現像ローラ2との間で電荷が移動しやすくなり、現像ローラ2へのトナー移動量が増える。これにより、現像装置28は、現像ブレード9によるトナー層規制が難しくなり、汚れが発生する。端部の抵抗値の低下と共に、中央部の抵抗値が高くなるため、印刷品質のギャップが増加する。そこで、現像装置28は、長期間印刷したときの端部抵抗値の低下を防ぐため、端部と中央部とで発泡条件を変えて、供給ローラ3の初期部分抵抗値分布においてあらかじめ端部の抵抗値を高くし、逆に中央部の抵抗値を低く設定することで汚れ対策とした。また、供給ローラ3の抵抗値を高くすると主にドラムかぶりが悪化する傾向があるため、長手方向端部とは逆に中央部の初期部分抵抗値をあらかじめ低く作成しておくことで印刷後の画像をより高品質に保つことができる。ここで、「かぶり」とは、記録媒体11の白地部にトナー8が微量転写されてしまい、白地部が多少汚れて灰色に見える現象を言う。
【0029】
すなわち、供給ローラ3は、劣化により長手方向端部の抵抗値が下がり、中央部の抵抗値が上がる傾向がある。したがって、供給ローラ3は、中央部の抵抗値より端部の抵抗値の方を大きく設定しておくことにより、中央部と端部との差を低減することができる。この結果、供給ローラ3の長手方向端部付近の汚れを低減することができる。また、供給ローラ3は、予め予測した予測低下量だけ端部の抵抗値を高くし、予め予測した予測増加量だけ中央部の抵抗値を低くしておくことが好ましく、この予測増加量は予測低下量のほぼ2倍である。
【0030】
(動作説明)
図13は、供給ローラ3の概略図であり、軸方向のローラ長さをLとしたとき、図中のa〜eの部分(a:片側端から3/100×L[mm]の位置、b:片側端から25/100×L[mm]の位置、c:片側端から50/100×L[mm]の位置、d:片側端から75/100×L[mm]の位置、e:片側端から97/100×L[mm]の位置)で部分抵抗値に差を持たせている。また、それぞれの位置の部分抵抗値の値をRa〜Reとしたとき、Ra=Re、Rb=Rdとなっている。
【0031】
弾性層3bの生成方法としては、導電性シリコーンゴム発泡体を発泡させる際に、図14のような区分けを行い各領域で発泡条件を変えている。印刷後の部分抵抗値の変化は中央を基準に左右対称性が保たれているため、部分抵抗値の分布としてはRa=Re、Rb=Rdとしても差し支えない。この方法により作成した供給ローラサンプルリストを表1に示す。
【表1】

表1 供給ローラの部分抵抗値(表内の数値単位は[logΩ])
【0032】
供給ローラを現像装置28に実装し、同条件下において汚れ、ドラムかぶりの評価を行った。評価の手順として、表1の供給ローラを使用した印刷装置27を用い、5%デューティのパターンを30000[枚]印刷した後、100%デューティのパターンと40%デューティのハーフトーンパターンを印刷する。印字環境は温度22[℃]、湿度50[%]である。印刷時に各部材に印加した印加電圧はそれぞれ、現像ローラ2:−200[V]、供給ローラ3:−300[V]、帯電ローラ4:−1100[V]、現像ブレード9:−300[V]である。
【0033】
図15、及び図16は、表1の供給ローラを使用し上記評価を行った際の結果を示した図である。各図共に、縦軸が部分抵抗値[logΩ]であり、横軸が長手方向測定位置を示す。図15は、初期の部分抵抗値を示す図であり、図16は30000[枚]印刷時の部分抵抗値を示す図である。評価結果は各ローラにおいてa〜eの各ポイントでの汚れ、ドラムかぶりの判定を示しており、○は問題なしを示し、△はドラムかぶりが許容できる境界レベルであることを示し、▲は汚れが許容できる境界レベルであることを示す。
この結果から、端部部分抵抗値を上げすぎると30000[枚]印字後にドラムかぶりがNGとなり、中央部分抵抗値を下げすぎると30000[枚]印字後に汚れがNGとなる危険性があることが分かる。汚れ、かぶりを考慮した上で部分抵抗値の許容範囲は6.3<Ra<8.0、5.8<Rc<7.4、6.3<Re<8.0となる。また、Ra>Rb>Rc、Re>Rb>Rcとする。
また、中央部の部分抵抗値Rcの常用対数値を1.0としたときに、Ra,Reの抵抗値の常用対数値は1.086から1.081の範囲(すなわち、部分抵抗値が12.19倍から12.05倍の範囲)になっている。
【0034】
また、従来のフラットな抵抗分布供給ローラ(表1でNo.4に該当)に対して端部初期部分抵抗値を高くした供給ローラ(表1でNo.6に該当)が汚れ始める印刷枚数は約2倍である。したがって、端部初期部分抵抗値を高くすることで、汚れに対するローラ寿命を約2倍まで伸ばすことができるといえる。
【0035】
以上説明したように第1実施形態によれば、供給ローラ3の端部において、初期部分抵抗値を高くした供給ローラを画像印刷装置に実装することにより経時において端部汚れ、ドラムかぶりをいずれも回避することができる。
【0036】
(第2実施形態)
経時で供給ローラ3の端部の抵抗値が低下する原因として、現像ローラ2との摩擦によるセルの劣化が考えられる。実際に30000[枚]印刷後に供給ローラ3のセル状態を観察すると、中央に比べて端部のセルは状態が悪く、セルが千切れている傾向が強い。供給ローラ3において、中央に比べ端部の方が現像ローラとのNIP幅(以下、対現像ローラ間NIP幅と示す)が広いことは第1実施形態にて前記している。したがって、供給ローラ端部での対現像ロ一ラ間NIP幅を軽減することで、経時後における供給ローラのセルの劣化を防ぎ、抵抗値の低下を抑えることができるはずである。そこで、第2実施形態では、供給ローラ端部での対現像ローラ間NIP幅を軽減させるため、供給ローラ3の外径を小さくすることを試みた。
【0037】
表2は、供給ローラ3の外径を変えたサンプルについて、各NIP部分での対現像ローラ間NIP幅の相対比率を示した表である。
【表2】

表2 供給ローラの中央外径/現像供給ローラ間軸間距離をパラメータとしたときの基準サンプル中央部に対する対現像ローラ間NIP幅の相対比率

相対比率の基準は、表2内の基準サンプルの中央部の対現像ローラ間NIP幅の値である。測定に使用した現像ローラ2は、第1実施形態と同様のものを使用し、供給ローラ3と現像ローラ2との間の軸間距離は一定に保たれている。この軸間距離は、現像ローラ2の半径と供給ローラ3の半径との和よりも小さく設定されており、現像ローラ2の弾性層が供給ローラ3の弾性層に食い込むように設定されている。また、測定に使用した供給ローラ3は、硬度がアスカーFで60[度]であり、図2で図示しているように中央に対して端部付近の外径が0.975倍であるクラウン形状をなしている。対現像ローラ間NIP幅の測定位置は図14のa、c、eの位置で測定している。供給ローラ3の中央の外径を現像ローラ2と供給ローラ3との軸間距離で割った値をパラメータAとして振って測定した。
【0038】
ここで基準サンプルとは、パラメータAが0.477のものである。基準サンプルの中央部を1.00として各測定値の相対比率を計算している。測定結果から、供給ローラ3の外径が大きくなるにつれて端部付近の対現像ローラ間NIP幅が大きくなることが判る。したがって、供給ロ一ラ3の外径を小さくすることで供給ローラ3と現像ローラ2との問の摩擦力を軽減させることができる。端部の摩擦力が低下すれば、経時での部分抵抗値の低下も抑えることができ、結果として汚れに対する両広範囲の拡大に繋がる。
【0039】
(動作説明)
表3は、研磨時間、押し当て距離等を調整することで外径を変えて印刷したサンプルと評価結果とを示した表である。
【表3】

表3 供給ローラ外径を変更したときの印刷後における汚れ、かぶりNG閾抵抗値

表中のサンプル番号は、第1実施形態の表1と同様の抵抗値分布を持ったサンプルであることを示す。構成と同様に、供給ローラ3の中央の外径を現像ローラ2と供給ローラ3との軸間距離で割った値をパラメータAとして表示している。それぞれのサンプルにおいて汚れ、ドラムかぶりがNGとなるときの閾抵抗値をAについてのパラメータとして表示してある。評価の手順は、第1実施形態と同様であり、表1の供給ローラを使用した印刷装置27を用い、5%デューティのパターンを30000[枚]印刷した後、100%デューティのパターンと40%デューティのハーフトーンパターンを印刷する。印字環境は温度22[℃]、湿度50[%]である。印刷時に各部材に印加した電圧はそれぞれ、現像ローラ2:−200[V]、供給ロ一ラ3:−300[V]、帯電ローラ4:−1100[V]、現像ブレード9:−300[V]である。
【0040】
結果として、供給ロ一ラ3の外径を下げたことによって、ドラムかぶりの閾抵抗値についてはそれほど変化ないものの、汚れの閾抵抗値が大幅に下がることが分かる。現像ローラ2の表面と供給ローラ3の表面との間の距離(接触距離)が離れることでトナー8の供給性が弱くなるためAの値は現状の条件下では0.431が最低値となる。それよりも小さくしてしまうと印字上にカスレが目立ってしまう。表3の結果から線形直線を用いてA値に対する汚れの境界閾値下記の式で表した。
Ra、Reの汚れ閾値をRan、Rcの汚れ閾値をRcnとすると
Ran=36.352×A−11.079
Rcn=36.698×A−9.3268
(A>0.431)
となる。
ここで、汚れ閾値Rcnを1.0に規格化すると、
Rans=0.9905×A−1.188
となる。
【0041】
以上説明したように、第2実施形態によれば、供給ローラ3の外径を小さくすることで経時での汚れを軽減することができる。
【0042】
(変形例)
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような種々の変形が可能である。
(1)前記各実施形態の画像形成装置は、黒色トナーのみを用いた単色の印刷装置27として説明したが、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄(Y)のトナーを用いたタンデム方式のカラー直接印刷方式としてもよい。このタンデム方式は、記録媒体11を搬送する搬送ベルトにイメージドラムユニットを併設して配置し、感光ドラム1に形成されたトナー像を順次媒体上に転写する方式である。また、本発明は、いわゆる中間転写方式の画像形成装置でも適用可能であり、MFP(Multi Function Peripheral(又は、Product))、ファックス及び複写機にも適用できる。
(2)前記実施形態は、露光装置としてLEDヘッド10を用いたが、レーザ発振器、及びポリゴンミラーを用い、レーザ光をポリゴンミラーで反射させて感光体上に静電潜像を形成する方式を採用することもできる。
(3)前記実施形態のトナーカートリッジ7は、現像装置28から分離可能であることを前提として、現像装置28の中に供給ローラ3、及び現像ローラ2を備えていたが、トナーカートリッジの中に、供給ローラ3及び現像ローラ2を備えて、一体化することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 感光ドラム(像担持体、静電潜像担持体)
2 現像ローラ(現像剤担持体)
2a 導電性シャフト
2b 弾性層
2c 処理層
3 供給ローラ(現像剤搬送部材)
3a 導電性シャフト
3b 弾性層
4 帯電ローラ(帯電装置)
5 クリーニングブレード
6 部材(スクリュー等)
7 トナーカートリッジ
8 トナー(現像剤)
9 現像ブレード(現像剤層厚規制部材)
10 LEDヘッド(露光器)
11 記録媒体
12a,12b,12c,12d 矢印
13a,13b,13c 用紙搬送ローラ
14 転写ローラ
15 定着器
16 ドラムカウンタ
18 帯電ローラ用電源
19 現像ローラ用電源
20 制御部
21 供給ローラ用電源
22 転写ローラ用電源
27 印刷装置(画像形成装置)
28 現像装置
33 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に現像剤を供給する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に現像剤を供給する供給ローラとを備えた現像装置であって、
前記供給ローラは、該供給ローラ長手方向中央部が持つ抵抗値より該供給ローラ長手方向中央部から端部側にずれた部分が持つ抵抗値が高いことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記供給ローラは、予測低下量だけ長手方向端部の抵抗値を高くし、予測増加量だけ中央部の抵抗値を低くしておくことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記予測増加量の対数値は、前記予測低下量の対数値の略2倍であることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記長手方向端部の抵抗値は、前記中央部の抵抗値の12倍以内に設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の現像装置。
【請求項5】
前記供給ローラは、その軸長をLとした場合に、片側端から3/100×L[mm]の位置での抵抗値の対数値を部分抵抗値Raとし、片側端から25/100×L[mm]の位置での抵抗値の対数値を部分抵抗値Rbとし、片側端から50/100×L[mm]の位置での抵抗値の対数値を部分抵抗値Rcとし、片側端から75/100×L[mm]の位置での抵抗値の対数値を部分抵抗値Rdとし、片側端から97/100×L[mm]の位置での抵抗値の対数値を部分抵抗値Reとしたとき、
6.3<Ra<8.0、5.8<Rc<7.4、6.3<Re<8.0、Ra>Rb>Rc、Re>Rb>Rcとなることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項6】
前記供給ローラは、その中央部の外径を現像ロ一ラとの間の軸間距離で割った値をパラメータAとしたとき、その部分抵抗値が、
36.352×A−11.079<Ra<8.0
36.698×A−9.3268<Rc<7.4(A>0.431)
を満たしていることを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記部分抵抗値は、外径6[mm]、幅1.5[mm]のボールベアリングを、前記供給ローラの長手方向に等間隔に配設し、10.8[gf]の圧力で前記供給ローラの表面に押圧し、導電性シャフト3aとの間にDC−300[V]の電圧を印加して測定した時の抵抗値であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−39312(P2011−39312A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187039(P2009−187039)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】