説明

現像装置、画像形成装置および画像形成方法

【課題】表面に凸部および凹部を配したトナー担持ローラーを有する現像装置、画像形成装置および該ローラーを用いて画像を形成する画像形成方法において、トナー担持ローラーからのトナー飛散を防止しながら、良好な画像品質を得る。
【解決手段】内部にトナーを収容するハウジングと、前記ハウジングに軸着され、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成されて、該表面に前記ハウジングから供給される帯電トナーを担持しながら回転するトナー担持ローラーとを備え、前記トナー担持ローラー表面のうち前記凸部に担持されるトナーの体積平均粒径Dave1が、前記ハウジング内のトナーの体積平均粒径Dave0よりも小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面に凸部および凹部を配したトナー担持ローラーを有する現像装置、画像形成装置および該ローラーを用いて画像を形成する画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電潜像をトナーにより現像する技術においては、略円筒形状に形成されたトナー担持ローラーの表面にトナーを担持させるものがある。本願出願人は、このようなトナー担持ローラーの表面に担持されるトナーの特性を改善するため、円筒形状に形成されたローラーの表面に規則的に配置された凸部と、該凸部の周囲を取り囲む凹部とを設けたトナー担持ローラーの構造について先に開示した(特許文献1参照)。このような構造は、表面の凹凸パターンが管理されて均一であるために、ローラー表面に担持されるトナー層の厚さや帯電量等を制御しやすいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−299011号公報(例えば、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載の技術においては、トナー担持ローラー表面のうち凸部にはごく僅かなトナー付着を許容しているものの、ほとんど全てのトナーを凹部に担持させるようにしている。これは、凸部に担持された粒径が小さく帯電の立ち上がりの遅いトナーで現像を行うことによって生じる画像の現像メモリ現象を防止するためである(特許文献1の段落0085参照)。また、トナー担持ローラーの表面から後退した凹部にトナーを収容した状態とすることにより、ローラーの回転に伴う風圧でトナーが飛散するのを防止することが可能である。
【0005】
一方、このような構成では、トナー担持ローラーの表面積に対するトナーの搬送量が絶対的に少なくなるため、高い現像濃度を得ることが難しくなる。また、トナー担持ローラー表面でのトナー搬送量の粗密が画像に反映されて、画像にトナー担持ローラー表面の凹凸パターンが現れることがある。このように、規則的な凹凸を設けたトナー担持ローラーを用いて画像を形成する技術においては、トナー担持ローラーからのトナー飛散防止と良好な画像品質を得ることとの両立が課題となっている。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、表面に凸部および凹部を配したトナー担持ローラーを有する現像装置、画像形成装置および該ローラーを用いて画像を形成する画像形成方法において、トナー担持ローラーからのトナー飛散を防止しながら、良好な画像品質を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる現像装置は、上記目的を達成するため、内部にトナーを収容するハウジングと、前記ハウジングに軸着され、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成されて、該表面に前記ハウジングから供給される帯電トナーを担持しながら回転するトナー担持ローラーとを備え、前記トナー担持ローラー表面のうち前記凸部に担持されるトナーの体積平均粒径が、前記ハウジング内のトナーの体積平均粒径よりも小さいことを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、内部にトナーを収容するハウジングと、前記ハウジングに軸着され、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成されて、該表面に前記ハウジングから供給される帯電トナーを担持しながら回転するトナー担持ローラーと、前記トナー担持ローラーと対向配置され、表面に静電潜像を担持する潜像担持体とを備え、前記トナー担持ローラー表面のうち前記凸部に担持されるトナーの体積平均粒径が、前記ハウジング内のトナーの体積平均粒径よりも小さいことを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するため、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成したトナー担持ローラーの表面に、トナーを収容するハウジングからトナーを供給して担持させ、静電潜像を担持させた潜像担持体と前記トナー担持ローラーとを対向させて前記静電潜像をトナーにより現像し、しかも、前記トナー担持ローラー表面のうち前記凸部に担持されるトナーの体積平均粒径を、前記ハウジング内のトナーの体積平均粒径よりも小さくすることを特徴としている。
【0010】
これらの発明では、トナー担持ローラーの凸部に担持されるトナーの体積平均粒径が、ハウジングに収容されている元のトナーの体積平均粒径よりも小さい。つまり、ハウジング内のトナーのうち、比較的粒径の小さなものが選択的に凸部に担持される。粒径の小さなトナーは、その小ささゆえに同じ帯電量でも粒径の大きなトナーよりも鏡像力が強く作用する。したがってトナー担持ローラーへの静電的な付着力が強く、飛散しにくいという特徴がある。このようなトナーを選択的に凸部に付着させ、凹部に担持されるトナーとともに現像に寄与させることによって、この発明では、トナー担持ローラーからのトナー飛散を防止しながら、良好な画像品質を得ることが可能である。
【0011】
また、本願発明者らの知見によれば、本発明のような現像装置による現像対象である静電潜像が細線や孤立ドットなど微細なものである場合、粒径の大きなトナーは付着しにくく小粒径のものが付着しやすいという傾向が確認されている。小粒径のトナーは凸部、凹部の双方に担持されているため、上記のような態様でトナー担持ローラーに担持されるトナー層により、このような潜像を良好な画像品質で現像することが可能である。一方、例えばベタ潜像のように比較的面積の大きな潜像には粒径の大きなトナーが付着しやすいことも確認されており、この点では凸部に小粒径のトナーのみを担持させることは画像の均一性の観点から不利であるが、このように面積の広い潜像に対しては凹部からのトナーが回り込むので、トナー担持ローラー表面の凹凸パターンが画像に現れることにはならない。
【0012】
ここで、前記トナー担持ローラー表面のうち前記凹部に担持されるトナーの体積平均粒径が、前記ハウジング内のトナーの体積平均粒径よりも大きくてもよい。比較的小粒径のトナーが選択的に凸部に担持されることにより、凹部に担持されるトナーの粒径は必然的により大きなものとなることが多いと考えられるが、構造上凹部は凸部よりも後退した位置にあるため、回転による風圧を受けにくい。したがって凹部に担持された粒径の大きなトナーが離脱して飛散する可能性は低くなっている。また、粒径が大きく顔料を多く含むトナーを現像に寄与させることにより、高い現像濃度を得ることができる。
【0013】
上記のようなトナー担持を実現させるために、例えば、前記ハウジング内で、自由端が前記トナー担持ローラーの回転方向上流側を向くとともに該自由端に隣接する隣接部位が前記トナー担持ローラー表面に当接する規制ブレードを有し、該規制ブレードが前記トナー担持ローラー表面に担持されるトナーの量を規制する規制手段を備え、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が0より大きく前記トナーの体積平均粒径以下であり、かつ、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凹部との間隔が前記体積平均粒径以上であるようにしてもよい。
【0014】
このようにすると、規制ブレードの自由端先端とトナー担持ローラーの凸部との間が、0より大きくトナーの体積平均粒径以下の大きさで開口することになる。このため、凸部にはこの開口部における規制ブレードとトナー担持ローラーとの間隔(開口高さ)以下の粒径を有するトナーの担持が許容される。これにより、粒径の小さなトナーのみを凸部に担持させることができる。
【0015】
また、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が、当該トナーの体積基準の粒度分布における標準偏差の3倍を前記トナーの体積平均粒径から差し引いた値以上となるようにしてもよい。トナーの粒度分布において、トナーの体積平均粒径から標準偏差の3倍を差し引いた値よりも小さな粒径を有するトナーはごく僅かである。また、当然にその粒径は極めて小さい。したがって、開口高さを極めて小さくしてこのように小さく少量のトナーのみの担持を凸部に許容したとしても、上記したような効果は薄い。そこで、十分な効果を得られるような量のトナーを凸部に担持させるためには、少なくともトナーの体積平均粒径から標準偏差の3倍を差し引いた値以上の開口高さとすることが望ましい。
【0016】
一方で、開口高さを大きくしすぎると、粒径の大きなトナーが凸部に担持され飛散の原因となってしまう。そこで、例えば、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が、当該トナーの体積基準の粒度分布における標準偏差の3倍を前記トナーの体積平均粒径から差し引いた値の2倍以下となるようにしてもよい。このようにすると、凸部へは体積平均粒径よりは十分に小さなトナーのみの担持が許容され、しかも、トナーの体積平均粒径から標準偏差の3倍を差し引いた値よりも小さなトナー2層以上にわたって凸部に付着することが防止される。2層以上のトナー層では、トナー担持ローラーに直接接触していないトナーが離脱しやすいが、凸部のトナー層を1層以下に規制することにより、このようなトナーによる飛散を防止することができる。
【0017】
また、前記ハウジング内のトナーのうち前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔以下の粒径を有するトナーの含有比率が、前記トナー担持ローラー表面のうちトナー担持に寄与する有効面積に占める前記凸部頂面の面積比以上となるようにしてもよい。詳しくは後述するが、このような構成では、ハウジング内のトナーに凸部全体を覆うのに十分な量の小粒径トナーが含まれていることとなるので、凸部に小粒径のトナーを確実に担持させることができる。
【0018】
また、前記規制ブレードが、導電性を有する弾性材料により形成されてもよい。こうすることで、トナー担持ローラー表面のトナーの電荷移動を促進してトナー帯電量の均一性をより高めることができ、画像品質を向上させることができる。
【0019】
また、前記トナー担持ローラーの表面が金属製であってもよい。こうすることで、トナー担持ローラーが鏡像力により帯電トナーをその表面に引き付けることができ、トナー飛散をより確実に防止することができる。
【0020】
この発明は、前記トナーの体積平均粒径が5μm以上である場合に特に有効である。このようなトナーはより小粒径のものと比べて帯電量が上昇しやすいため、凸部にトナーを担持させこれを現像に利用する本発明の構成と好適に組み合わせることができる。一方で、平均粒径の大きなトナーはその粒度分布および帯電量分布の広がりも大きくなるが、この発明では、凸部および凹部のトナーを規制ブレードと摺擦させることで帯電量のばらつきを抑えているので、帯電量のばらつきに起因するカブリを抑えて良好な画像品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明を適用した画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】現像器の外観を示す図。
【図4】現像器の構造および現像バイアス波形を示す図。
【図5】現像ローラーおよびその表面の部分拡大図を示す図。
【図6】トナー粒子径と現像ローラーへの付着力との関係を示す図。
【図7】本実施形態におけるトナー層規制を説明するための図。
【図8】規制ニップの詳細を模式的に表す図。
【図9】この実施形態におけるトナー層規制の様子を模式的に示す図。
【図10】凸部および凹部に担持されるトナーの違いを示す図。
【図11】凸部および凹部に担持されるトナーそれぞれの粒度分布を示す図。
【図12】本発明の実施例と比較例とにおける評価結果を示す図。
【図13】トナーの粒度分布と凸部開口高さとの関係の第1のモデルを示す図。
【図14】トナーの粒度分布と凸部開口高さとの関係の第2のモデルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1はこの発明を適用した画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)を重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像信号がメインコントローラー11に与えられると、このメインコントローラー11からの指令に応じてエンジンコントローラー10に設けられたCPU101がエンジン部EG各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、シートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0023】
このエンジン部EGでは、感光体22が図1の矢印方向D1に回転自在に設けられている。また、この感光体22の周りにその回転方向D1に沿って、帯電ユニット23、ロータリー現像ユニット4およびクリーニング部25がそれぞれ配置されている。帯電ユニット23は所定の帯電バイアスを印加されており、感光体22の外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。クリーニング部25は一次転写後に感光体22の表面に残留付着したトナーを除去し、内部に設けられた廃トナータンクに回収する。これらの感光体22、帯電ユニット23およびクリーニング部25は一体的に感光体カートリッジ2を構成しており、この感光体カートリッジ2は一体として装置本体に対し着脱自在となっている。
【0024】
そして、この帯電ユニット23によって帯電された感光体22の外周面に向けて露光ユニット6から光ビームLが照射される。この露光ユニット6は、外部装置から与えられた画像信号に応じて光ビームLを感光体22上に露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。
【0025】
こうして形成された静電潜像は現像ユニット4によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では、現像ユニット4は、図1紙面に直交する回転軸中心に回転自在に設けられた支持フレーム40、支持フレーム40に対して着脱自在のカートリッジとして構成されてそれぞれの色のトナーを内蔵するイエロー用の現像器4Y、シアン用の現像器4C、マゼンタ用の現像器4M、およびブラック用の現像器4Kを備えている。この現像ユニット4は、エンジンコントローラー10により制御されている。そして、このエンジンコントローラー10からの制御指令に基づいて、現像ユニット4が回転駆動されるとともにこれらの現像器4Y、4C、4M、4Kが選択的に感光体22と対向する所定の現像位置に位置決めされると、当該現像器に設けられて選択された色のトナーを担持する現像ローラー44が感光体22に対し所定のギャップを隔てて対向配置され、その対向位置において現像ローラー44から感光体22の表面にトナーを付与する。これによって、感光体22上の静電潜像が選択トナー色で顕像化される。
【0026】
図3は現像器の外観を示す図である。また、図4は現像器の構造および現像バイアス波形を示す図である。より詳しくは、図4(a)は現像器の構造を示す断面図である。また、図4(b)は現像バイアス波形と感光体表面電位との関係を示す図である。各現像器4Y、4C、4M、4Kはいずれも同一構造を有している。したがって、ここでは、現像器4Kの構成について図3および図4(a)を参照しながらさらに詳しく説明するが、その他の現像器4Y、4C、4Mについてもその構造および機能は同じである。
【0027】
この現像器4Kでは、その内部に非磁性一成分トナーTを収容するハウジング41に供給ローラー43および現像ローラー44が回転自在に軸着されており、当該現像器4Kが上記現像位置に位置決めされると、現像ローラー44が感光体2と現像ギャップDGを隔てて対向位置決めされるとともに、これらのローラー43、44が本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転する。供給ローラー43は例えば発泡ウレタンゴム、シリコンゴムなどの弾性材料により円筒状に形成されている。また、現像ローラー44は、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属または合金により円筒状に形成されている。この実施形態では、鉄製の円筒表面を無電解ニッケル・リンめっき処理したものを使用している。そして、2つのローラー43、44が接触しながら回転することでトナーが現像ローラー44の表面に擦り付けられて所定厚みのトナー層が現像ローラー44表面に形成される。この実施形態では負帯電トナーを用いるが、正帯電トナーであってもよい。
【0028】
ハウジング41の内部空間は隔壁41aによって第1室411および第2室412に仕切られている。供給ローラー43および現像ローラー44はともに第2室412に設けられており、これらのローラーの回転に伴って第2室412内のトナーが流動し攪拌されながら現像ローラー44の表面に供給される。一方、第1室411に貯留されているトナーは、供給ローラー43および現像ローラー44とは隔離されているので、これらの回転によっては流動しない。このトナーは、現像ユニット4が現像器を保持したまま回転することによって、第2室412に貯留されたトナーと混合され攪拌される。
【0029】
このように、この現像器では、ハウジング内部を2室に仕切り、供給ローラー43および現像ローラー44の周囲をハウジング41の側壁および隔壁41aで囲み比較的容積の小さい第2室412を設けることにより、トナー残量が少なくなった場合でも、トナーが効率よく現像ローラー44の近傍に供給されるようにしている。また、第1室411から第2室412へのトナー供給およびトナー全体の攪拌を現像ユニット4の回転によって行うようにすることで、現像器内部にトナー攪拌のための攪拌部材(オーガ)を省いたオーガレス構造を実現している。
【0030】
また、この現像器4Kでは、現像ローラー44の表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード46が配置されている。この規制ブレード46は、ステンレスやリン青銅などの弾性を有する板状部材461と、板状部材461の先端部に取り付けられたシリコンゴムやウレタンゴムなどの樹脂部材からなる弾性部材462とで構成されている。弾性部材462にはカーボン粒子などの導電性粒子が分散されて、その抵抗率が約105Ωcmに調整されている。
【0031】
この板状部材461の後端部はハウジング41に固着されており、図4の矢印に示す現像ローラー44の回転方向D4において、板状部材461の先端部に取り付けられた弾性部材462が板状部材461の後端部よりも上流側に位置するように配設されている。つまり、規制ブレード46は、一方端(後端部)が固定されるとともにこれとは反対側の自由端である先端部が現像ローラー44の回転方向D4において上流側に向かうように取り付けられており、弾性部材462が現像ローラー44表面に対しいわゆるカウンタ方向に弾性的に当接することで規制ニップを形成し、現像ローラー44の表面に形成されるトナー層を最終的に所定の厚みに規制する。現像ローラー44表面への規制ブレード46の当接圧、すなわち規制荷重は15gf/cmに調整されている。
【0032】
このようにして現像ローラー44の表面に形成されたトナー層は、現像ローラー44の回転によって順次、その表面に静電潜像が形成されている感光体22との対向位置に搬送される。そして、エンジンコントローラー10に制御されるバイアス用電源140からの現像バイアスが現像ローラー44に印加される。図4(b)に示すように、感光体22の表面電位Vsは、帯電ユニット23により均一に帯電された後露光ユニット6からの光ビームLの照射を受けた露光部では残留電位Vr程度にまで低下し、光ビームLが照射されなかった非露光部ではほぼ均一の電位Voとなっている。一方、現像ローラー44に与えられる現像バイアスVbは直流電位を重畳した矩形波交流電圧であり、そのピーク間電圧を符号Vppにより表す。このような現像バイアスVbが印加されることにより、現像ローラー44上に担持されたトナーは現像ギャップDGにおいて飛翔して感光体22の表面各部にその表面電位Vsに応じて部分的に付着し、こうして感光体22上の静電潜像が当該トナー色のトナー像として顕像化される。
【0033】
現像バイアス電圧Vbとしては、例えば、ピーク間電圧Vppが1000Vで3〜4kHz程度の周波数を有する矩形波電圧を用いることができる。現像バイアスVbの交流成分の繰り返し周期Tcのうち、電位が正側に振れている期間を符号Tp、負側に振れている期間を符号Tnにより表すとともに、現像バイアスVbの波形デューティWDを次式:
WD=Tp/(Tp+Tn)=Tp/Tc
により定義すると、この実施形態ではTp>Tnとなるように、つまり波形デューティWDが50%より大きくなるように、バイアス波形が定められている。代表的には、WD=60%程度とすることができる。
【0034】
矩形波交流電圧に重畳された直流成分に、上記波形デューティに起因して生じる直流成分を加えた、現像バイアスVbの加重平均電圧Vaveは、感光体22の残留電位Vrとの電位差がいわゆる現像コントラストとなり画像濃度に影響を与えるので、所定の画像濃度を得るために必要な値とすることができる。代表的には、例えば(−200)V程度とすることができる。
【0035】
さらに、ハウジング41には、現像ローラー44の回転方向において感光体22との対向位置よりも下流側で現像ローラー44表面に圧接されたシール部材47が設けられている。シール部材47は、ポリエチレン、ナイロンまたはフッ素樹脂などの柔軟性を有する樹脂材料により形成され、現像ローラー44の回転軸に平行な方向Xに沿って延びる帯状のフィルムであり、長手方向Xに直交する短手方向(現像ローラー44の回転方向に沿った方向)における一方端部がハウジング41に固着されるとともに、他方端部が現像ローラー44表面に当接されている。他方端部は現像ローラー44の回転方向D4における下流側に向かうように、いわゆるトレイル方向に現像ローラー44に当接されており、感光体22との対向位置を通過した現像ローラー44表面に残留しているトナーをハウジング41内に案内するともに、ハウジング内のトナーが外部へ漏れ出すのを防止している。
【0036】
図5は現像ローラーおよびその表面の部分拡大図を示す図である。現像ローラー44は略円筒形のローラー状に形成されており、その長手方向の両端にはローラーと同軸にシャフト440が設けられており、該シャフト440が現像器本体により軸支されて現像ローラー44全体が回転自在となっている。現像ローラー44表面のうちその中央部44aには、図5の部分拡大図(点線円内)に示すように、規則的に配置された複数の凸部441と、それらの凸部441を取り囲む凹部442とが設けられている。
【0037】
複数の凸部441のそれぞれは、図5紙面の手前側に向けて突出しており、各凸部441の頂面は、現像ローラー44の回転軸と同軸である単一の円筒面の一部をそれぞれ成している。また、凹部442は凸部441の周りを網目状に取り囲む連続した溝となっており、凹部442全体も現像ローラー44の回転軸と同軸かつ凸部のなす円筒面とは異なる1つの円筒面をなす。そして、凸部441とそれを取り囲む凹部442との間は緩やかな側面443によって繋がれている。すなわち、該側面443の法線は現像ローラー44の半径方向外向き(図において上方)、つまり現像ローラー44の回転軸から遠ざかる方向の成分を有する。
【0038】
この実施形態では、現像ローラー44表面における凸部441の配列ピッチPは、周方向、軸方向(X方向)とも80μmである。凹部442の深さ、つまり凸部441と凹部442との高低差は8μmである。また、現像位置における感光体22と現像ローラー44とのギャップ(現像ギャップ)は100μmとする。
【0039】
このような構造の現像ローラー44については、例えば特開2007−140080号公報に記載のいわゆる転造加工を用いた製造方法により製造することができる。これにより、現像ローラー44の円筒面に規則的かつ均一な凹凸部を形成することができる。そのため、得られる現像ローラー44は、その円筒面に均一かつ最適な量のトナーを担持させることができ、また、現像ローラー44の円筒面でのトナーの転動性(転がりやすさ)も均一なものとすることができる。その結果、トナーの局所的な帯電不良や搬送不良を防止して、優れた現像特性を発揮させることができる。また、型を用いて凹凸部を形成するため、ブラスト加工により得られた一般的な現像ローラーと異なり、得られる凹凸部はその凸部の先端の幅を比較的大きくすることができる。このような凹凸部は優れた機械的強度を有する。特に、型により押圧された部位は機械的強度が向上するので、得られる凹凸部は、切削加工のような処理で得られたものと比しても優れた機械的強度を有する。このような凹凸部を有する現像ローラー44は、優れた耐久性を発揮することができる。また、凹凸部の凸部の先端の幅が比較的大きいと、磨耗しても形状変化が少ないので、現像特性が急激に低下することも防止して、長期にわたり優れた現像特性を発揮することができる。
【0040】
図1に戻って画像形成装置の説明を続ける。上記のようにして現像ユニット4で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。転写ユニット7は、複数のローラー72〜75に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラー73を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向D2に回転させる駆動部(図示省略)とを備えている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体22上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト71上に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、カセット8から1枚ずつ取り出され搬送経路Fに沿って二次転写領域TR2まで搬送されてくるシートS上にカラー画像を二次転写する。
【0041】
このとき、中間転写ベルト71上の画像をシートS上の所定位置に正しく転写するため、二次転写領域TR2にシートSを送り込むタイミングが管理されている。具体的には、搬送経路F上において二次転写領域TR2の手前側にゲートローラー81が設けられており、中間転写ベルト71の周回移動のタイミングに合わせてゲートローラー81が回転することにより、シートSが所定のタイミングで二次転写領域TR2に送り込まれる。
【0042】
また、こうしてカラー画像が形成されたシートSは定着ユニット9によりトナー像を定着され、排出前ローラー82および排出ローラー83を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部89に搬送される。また、シートSの両面に画像を形成する場合には、上記のようにして片面に画像を形成されたシートSの後端部が排出前ローラー82後方の反転位置PRまで搬送されてきた時点で排出ローラー83の回転方向を反転し、これによりシートSは反転搬送経路FRに沿って矢印D3方向に搬送される。そして、ゲートローラー81の手前で再び搬送経路Fに乗せられるが、このとき、二次転写領域TR2において中間転写ベルト71と当接し画像を転写されるシートSの面は、先に画像が転写された面とは反対の面である。このようにして、シートSの両面に画像を形成することができる。
【0043】
また、図2に示すように、各現像器4Y,4C,4Mおよび4Kには該現像器の製造ロットや使用履歴、内蔵トナーの残量などに関するデータを記憶するメモリー91〜94がそれぞれ設けられている。さらに、各現像器4Y,4C,4M、4Kには無線通信器49Y、49C、49M、49Kがそれぞれ設けられている。そして、必要に応じて、これらが選択的に本体側に設けられた無線通信器109と非接触にてデータ通信を行い、インターフェース105を介してCPU101と各メモリー91〜94との間でデータの送受を行って該現像器に関する消耗品管理等の各種情報の管理を行っている。なお、この実施形態では、無線通信等の電磁的手段を用いて非接触にてデータ送受を行っているが、本体側および各現像器側にコネクター等を設け、コネクター等を機械的に嵌合させることで相互にデータ送受を行うようにしてもよい。
【0044】
また、この装置では、図2に示すように、メインコントローラー11のCPU111により制御される表示部12を備えている。この表示部12は、例えば液晶ディスプレイにより構成され、CPU111からの制御指令に応じて、ユーザーへの操作案内や画像形成動作の進行状況、さらに装置の異常発生やいずれかのユニットの交換時期などを知らせるための所定のメッセージを表示する。
【0045】
なお、図2において、符号113はホストコンピューターなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラー11に設けられた画像メモリーである。また、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
【0046】
また、ローラー75の近傍には、クリーナー76が配置されている。このクリーナー76は図示を省略する電磁クラッチによってローラー75に対して近接・離間移動可能となっている。そして、ローラー75側に移動した状態でクリーナー76のブレードがローラー75に掛け渡された中間転写ベルト71の表面に当接し、二次転写後に中間転写ベルト71の外周面に残留付着しているトナーを除去する。
【0047】
さらに、ローラー75の近傍には、濃度センサー60が配置されている。この濃度センサー60は、中間転写ベルト71の表面に対向して設けられており、必要に応じ、中間転写ベルト71の外周面に形成されるトナー像の画像濃度を測定する。そして、その測定結果に基づき、この装置では、画像品質に影響を与える装置各部の動作条件、例えば各現像器に与える現像バイアスや、露光ビームLの強度、さらには装置の階調補正特性などの調整を行っている。
【0048】
この濃度センサー60は、例えば反射型フォトセンサーを用いて、中間転写ベルト71上の所定面積の領域の濃淡に対応した信号を出力するように構成されている。そして、CPU101は、中間転写ベルト71を周回移動させながらこの濃度センサー60からの出力信号を定期的にサンプリングすることで、中間転写ベルト71上のトナー像各部の画像濃度を検出することができる。
【0049】
次に、この実施形態において使用するトナーについて説明する。トナーは公知の粉砕法により製造された非磁性一成分トナーであり、摩擦帯電によって負極性に帯電する性質を有する。粉砕法ではあまり小粒径のトナーを製造することが難しく、またその円形度は比較的低い一方で粒度分布(粒径のばらつき)が大きい。この実施形態では、体積平均粒径(Dave)が約8μm、標準偏差(σ)が1.5程度、円形度が0.92程度のものを使用する。粒径の大きなトナー粒子は低電界での現像性が良好で、かつ多くの顔料を担うことができるため、高い現像濃度を得ることができる。また、次のような利点もある。
【0050】
図6はトナー粒子径と現像ローラーへの付着力との関係を示す図である。トナー粒子を現像ローラー44表面に付着させるべく作用する力としては、帯電トナーに働く静電気的な引力である接触帯電付着力とファンデルワールス力とが主なものである。図6に示すように、トナー粒子径が大きいときには接触帯電付着力とファンデルワールス力とで大きさに顕著な差はない。これに対し、トナー粒子径が小さく、特に5μm以下になるとファンデルワールス力が急激に大きくなる。また、同じ帯電量を有するトナーであっても、近接する導体によって生じる鏡像力は粒径が小さいほど大きくなる。これらのため、現像ローラー44表面からの飛翔しやすさ(飛翔性)は粒径の大きなトナーの方が高い。このため、粒径の大きなトナーでは小粒径のものより現像バイアスVbの振幅が小さくてよい。
【0051】
その一方で、トナーが飛翔しやすいということは、現像ローラー44からの飛散が起こりやすいということでもある。小粒径のトナーは飛散しにくいが、現像ギャップへのトナー供給量を多くしなければ高い現像濃度を得ることが難しい。反対に、大粒径のトナーは容易に高い現像濃度を得ることができるが、飛散しやすい。このように、十分な現像濃度と飛散防止とを両立させることは容易でない。本実施形態では、比較的粒径の大きなトナーを使用するとともに、現像ローラー44上でのトナー層規制を以下のように行うことにより、これらの両立を図っている。
【0052】
図7は本実施形態におけるトナー層規制を説明するための図である。より詳しくは、図7(a)は現像ローラー44表面への規制ブレード46の当接の状態を示す図であり、図7(b)はその部分拡大図である。これらの図に示すように、規制ブレード46のうち現像器ハウジング41に固着された一方端とは反対側の自由端46aは、現像ローラー44の回転方向D4の上流側に向かって延びており、現像ローラー44に対向する弾性部材表面462aのうち上流側先端部であるエッジ部462eは現像ローラー44表面には当接しておらず、これより少し下流側で現像ローラー44と当接している。ここでは現像ローラー44と弾性部材462とが当接することで形成されるニップNrを「規制ニップ」、その長さLnを「規制ニップ長さ」と称する。
【0053】
弾性部材462のエッジ部462eと現像ローラー44表面との間は僅かに離間しており、現像ローラー44の回転中心と弾性部材462のエッジ部462eとを結ぶ仮想線Rに沿った現像ローラー44と弾性部材462との間隔を「開口高さ」と称し、符号Hoにより表す。また、規制ニップNrの上流側端部からエッジ部462eまでの長さを「開口長さ」と称し、符号Loにより表す。この実施形態では、ハウジング41に対し規制ブレード46の取り付け位置が図7(b)に矢印で示す調整方向に可変となっており、これにより開口長さLoを増減することで、開口高さHoを調整可能となっている。
【0054】
図8は規制ニップの詳細を模式的に表す図である。上記したように、規制ニップNrの上流側では現像ローラー44と弾性部材462との間が開口している。より詳細に見ると、現像ローラー44の軸方向(X方向)に沿った各位置において、図8(a)に示すように、弾性部材462のエッジ部462eに最近接する現像ローラー44表面が凸部441である場合と、図8(b)に示すように、凹部442がエッジ部462eに最近接する場合とが存在する。図7(b)において示した開口高さHoは現像ローラー44表面を円筒とみた場合の巨視的な開口高さであり、厳密に言えば図8(a)に示すように、現像ローラー44表面の凸部441と弾性部材462のエッジ部462eとの間隔である。以下においてこの点を明確にするために必要な場合には、開口高さHoを「凸部開口高さ」と称する。一方、図8(b)に示すように、現像ローラー44の凹部442と弾性部材462のエッジ部462eとの間隔はより大きく、この間隔を「凹部開口高さ」と称し符号Hpにより表す。図8(c)に示す関係から明らかなように、凹部開口高さHpは、凸部開口高さHoに凸部441と凹部442との高低差Hdを加えたものとなる。
【0055】
この実施形態では、凸部開口高さHoを、0より大きくトナーの体積平均粒径Dave以下の値とする一方、凹部開口高さHpを、凸部開口高さHoよりも大きく、かつトナーの体積平均粒径Daveの1倍以上2倍以下の値としている。具体的には、体積平均粒径Daveが8μmであるトナーに対して、凸部開口高さHoをこれより小さい5μmとしている。前記したように凸部441と凹部442との高低差Hdは8μmであるので、これらを合計した凹部開口高さHpは13μmとなり、トナーの体積平均粒径Daveよりも大きくその2倍よりは小さい。このようにすることで、以下に説明するように、この実施形態では、十分な現像濃度を得ながらも、現像ローラー44からのトナー脱落に起因する飛散や漏れ、さらには画像へのカブリを抑制することが可能となっている。
【0056】
図9はこの実施形態におけるトナー層規制の様子を模式的に示す図である。図9(a)に示す現像ローラー44表面の凸部441と弾性部材462のエッジ部462eとの開口部では、その開口高さHoがトナーの体積平均粒径Dave以下である。このため、開口高さHo以下の粒径を有するトナー(図では斜線によるハッチングを付した丸印で示す)Tsのみが現像ローラー44と弾性部材462との間に入り込み、凸部441に担持されることとなる。これに対し、開口高さHoよりも粒径の大きいトナー、すなわち白丸印で示す平均的な粒径のトナーTaや、網点によるハッチングを付した丸印で示す体積平均粒径Daveよりも大きな粒径を有するトナーTlは凸部441には担持されない。
【0057】
一方、現像ローラー44表面の凹部442と弾性部材462のエッジ部462eとの開口部では、図9(b)に示すように、凹部開口高さHpはトナーの体積平均粒径Dave以上である。したがって、凹部442には凹部開口高さHp以下の粒径を有するトナーが担持されることとなる。ここで、例えば凹部開口高さHpを本発明の要件の上限であるトナーの体積平均粒径Daveの2倍とすると、凹部442には平均的に2層のトナーからなるトナー層が形成されることとなる。なお、凸部441の頂面には凸部開口高さHo以下のトナーが付着して弾性部材462との間に入り込んでいるため、規制ニップ内においても凹部442と弾性部材462との間隔はほぼ凹部開口高さHpに近い値に保たれる。特に、この実施形態では規制荷重を比較的低い値(15gf/cm)にしているため、凸部441と弾性部材462との間でトナーが押し潰されることはない。
【0058】
結果として、規制ニップNrおよびその下流側では、図9(c)に示すように、現像ローラー44の凸部441頂面には1層以下の主に小粒径(凸部開口高さHo以下)のトナーによる薄い(平均的な粒径に換算して1層以下の)トナー層が形成される一方、凹部442には、凹部開口高さHpに対応して、平均的な粒径に換算して1層以上2層以下のトナー層が形成されることとなる。
【0059】
本願発明者らの知見では、現像ローラー44表面に担持されるトナーのうち比較的帯電量の高いものは現像ローラー44表面に直接接触するかそれに近い状態で担持される一方、より帯電量の劣るトナーは現像ローラー44表面から離れた位置で、つまり現像ローラー44表面に直接接触する高帯電トナーの上に付着した状態で担持される傾向にある。これは、帯電量の高いトナーほど導体である現像ローラー44に引き付けられる力が強く作用するためと考えられる。
【0060】
このように帯電量が低く現像ローラー44表面への付着力の弱いトナーが、現像ローラー44の回転に起因して受ける風圧によって現像ローラー44表面から離脱し飛散や漏れの原因となりうる。この問題に対し、この実施形態では、凸部441には鏡像力が強く作用する比較的小粒径のトナーのみを付着させるとともに、トナー層を薄くすることでほぼ全てのトナーを現像ローラー44表面に直接接触させるようにしている。これにより、凸部441からのトナーの離脱を抑制することができる。特に、帯電量の不足したトナーは弾性部材462に摺擦されることによる帯電量の上昇を望めるので、現像ローラー44表面からの離脱を効果的に抑制することができる。
【0061】
また、凹部442においては、凸部441それぞれの頂面を含む包絡的な現像ローラー44の外周面から内側(中心軸に近い側)に後退した領域にトナーを担持させているので、トナーが風圧の影響を受けにくくなっている。また、トナー層を2層以下としているので、帯電量が低く現像ローラー44表面に接触していないトナーは確実に弾性部材462からの摺擦を受けるため帯電量が上昇する。これらの理由により、凹部442においても、現像ローラー44からのトナーの離脱が抑制されて飛散や漏れを防止することができる。
【0062】
なお、凹部442において現像ローラー44表面に直接接触しないトナーのみを弾性部材462と摺擦させてこのようなトナーの帯電量を上昇させることは、現像ローラー44表面に直接接触しているもともと高い帯電量を有するトナーとの帯電量の違いを緩和し、帯電量のばらつきを小さくするという作用も有する。こうして凸部441および凹部442の両方に担持され帯電量のばらつきの小さいトナーを現像に寄与させることによって、十分な現像濃度を得ることができる。
【0063】
図10は凸部および凹部に担持されるトナーの違いを示す図である。ハウジング41内に収容されたトナーTは、例えば図10に示すような粒度分布を有している。すなわち、体積平均粒径Dave0を中心として、これより粒径が大きく/小さくなるにつれてその含有量が少なくなるような分布を示している。なお、ここでは、後述する現像ローラー44表面上でのトナーの平均粒径と区別するために、特にハウジング41内に収容するトナー単体での体積平均粒径を符号Dave0により表している。
【0064】
この実施形態では、前記したように凸部開口高さHoをトナーの体積平均粒径以下とする一方、凹部開口高さHpを、凸部開口高さHoよりも大きく、かつトナーの体積平均粒径の1倍以上2倍以下としている。図10の例では、凸部開口高さHoがハウジング41内のトナーの体積平均粒径Dave0よりも小さく、また凹部開口高さHpがトナーの体積平均粒径Dave0よりも大きい場合を示している。
【0065】
ハウジング41内で現像ローラー44の表面に供給されるトナーのうち、凸部開口高さHoよりも大きな粒径を有するものは、凸部441と弾性部材462との間に入り込むことができず、結果として凸部開口高さHo以下の粒径のトナーのみが凸部441表面に担持される(図9(a))。一方、凹部442には凹部開口高さHp以下の粒径を有するトナーが担持される。したがって、図10に示すように、ハウジング41内のトナーのうち粒径が凸部開口高さHo以下のものは、凸部441、凹部442の双方に担持される。一方、トナーのうち粒径が凸部開口高さHo以上で凹部開口高さHp以下のものは凹部442のみに担持されることになる。
【0066】
図11は凸部および凹部に担持されるトナーそれぞれの粒度分布を示す図である。凸部441には凸部開口高さHo以下の粒径を有するトナーが担持され、その粒度分布は図11に破線で示すように凸部開口高さHo以下に広がりを有する。したがってその体積平均粒径Dave1は、凸部開口高さHoよりも少し小さくなり、元のトナーの体積平均粒径Dave0よりも小さな値となる。一方、凹部442では、上記のように凸部441に粒径の小さいトナーのみが選択的に担持された結果、図10に実線で示すように、粒度分布はトナー単体での粒度分布(点線)よりも大粒径側にシフトする。したがって凹部442に担持されたトナーの体積平均粒径Dave2は、トナー単体の体積平均粒径Dave0よりはいくらか大きな値となる。
【0067】
このように、現像ローラー44表面のうち凸部441には選択的に小粒径のトナーを担持させ、凹部442には小粒径から大粒径までのトナーを担持させることにより、次のような利点が得られる。まず、凸部441に小粒径の担持されるトナーを小粒径のものに限定することにより、現像ローラー44の回転に起因するトナーの飛散を抑制することができる。小粒径のトナーはその粒径に比して帯電量が大きいので、現像ローラー44からの鏡像力が強く作用し離脱しにくいからである。そして、現像ギャップにおいては凸部441に担持された小粒径トナーも現像に寄与するため、現像濃度の向上をも図ることができる。
【0068】
凸部441に担持された小粒径トナーによる現像は、特に孤立ドットや細線などを含む画像の品質向上に貢献する。本願発明者らの知見によれば、孤立ドットや細線に対応する潜像のように、露光により感光体22上に形成された露光部が離散的であったりその面積が小さい場合には、小粒径のトナーがこのような露光部に付着する一方、粒径の大きなトナーが付着しにくいという現象が確認されている。また、この実施形態では規則的な凹凸を設けた現像ローラー44を使用しているので、例えば孤立ドットに対応する露光部が現像ギャップにおいて現像ローラー44表面の凸部441と対向するような位置関係となったとき、もし凸部441にトナーがほとんど付着していなければ、この露光部にはトナーが供給されず当該ドットは現像されないこととなってしまう。この問題に対し、この実施形態では凸部441には小粒径のトナーを選択的に付着させるようにしているので、孤立ドットや細線であってもその再現性が確保される。また、大粒径のトナーを凸部441から排除しているので、凸部441からトナーが離脱して飛散することもない。
【0069】
なお、例えばベタ画像に対応する潜像のように、露光部の面積が大きい場合には大粒径トナーの方が現像効率の上で有効であり、この点において大粒径トナーを担持しない凸部441と対向する位置では濃度不足が生じるようにも見える。このことは、画像に現像ローラー44表面の凹凸パターンを反映した濃度ムラが現れることを意味している。しかしながら、実際には、近隣の凹部442から飛翔した粒径の大きなトナーが凸部441との対向位置にも回り込んでくるため、このような濃度ムラは観測されていない。
【0070】
一方、凹部442に担持されるトナーは小粒径から大粒径までのものを広く含んでいるので、画像を十分な濃度で、しかも再現性よく現像することが可能である。凹部442に収容された形で搬送されるトナーは、現像ローラー44の回転に起因する風圧を受けにくいので、飛散が起こりにくい。この実施形態では、特に凹部開口高さHpをトナーの体積平均粒径Dave0の2倍以下としているため、凹部442に担持されるトナーは平均的な粒径のトナーに換算して2層以下である。そのため、規制ニップNrにおいてほとんどのトナーは現像ローラー44または弾性部材462のいずれかと接触することとなり、特に現像ローラー44とは接触していない帯電量の低いトナーが弾性部材462に摺擦されることによって帯電量が上昇するため、現像ローラー44からの離脱が起こりにくくなる。また、トナーの帯電量ばらつきが小さくなるため、主に帯電の不足したトナーにより引き起こされる画像へのカブリも低減され、さらなる画像品質の向上が望める。
【0071】
図12は本発明の実施例と比較例とにおける評価結果を示す図である。いずれも体積平均粒径Dave0が8μmであるが粒度分布が異なる2種類のトナーを用い、凸部開口高さHoを種々に変化させて静電潜像を現像する実験を行い、凸部441へのトナー搬送量、現像濃度、ドット再現性およびトナー飛散量を評価した。ここで、トナーAは粒度分布が大きく、例えば粒径が6μm以下の粒子を25個数%、4μm以下の粒子を8個数%程度含むものである。一方、トナーBは、粒度分布がより小さく、例えば粒径が6μm以下の粒子を10個数%、4μm以下の粒子を4個数%程度含むものである。なお、凸部441と凹部442との高低差Hdはいずれの実験においても8μmである。また、図において、丸印は最も結果が良好であることを示し、三角印はこれよりやや劣り、×印はさらに劣っていることを示している。
【0072】
図12(a)に示すように、凸部開口高さHoを6μm(<Dave0)とした場合、凸部441でのトナー搬送量、現像濃度、ドット再現性および飛散量のいずれの評価項目も比較的良好であり、特に粒度分布の大きなトナーAにおいて良好な結果が得られた。一方、粒度分布の狭いトナーBでは、小粒径トナーの含有量が少ないことに起因して、凸部441でのトナー搬送量がやや不足し、これにより現像濃度およびドット再現性の若干の低下がみられた。特に、現像動作を繰り返しハウジング41内のトナー残量が少なくなった、いわゆる耐久後の現像器では、このような画質の劣化が顕著となった。これは、現像を繰り返すことによって小粒径トナーが選択的に消費され、含有量がさらに少なくなったためと考えられる。この条件では、凹部開口高さHpは14μm(<2Dave0)である。
【0073】
また、凸部開口高さHoを15μm(>Dave0)とした場合、凹部開口高さHpは23μm(>2Dave0)となる。この条件では、図12(b)に示すように、凸部441により多くのトナーが搬送されて現像濃度やドット再現性はよいが、現像ローラー44からのトナー飛散の発生が顕著であった。特に、小粒径のトナーを多く含むトナーAにおいては、凸部441に小粒径のトナーが多層に付着していることに起因すると考えられる顕著な飛散が観測された。
【0074】
さらに、凸部開口高さHoを4μm(<Dave0)とすると、凹部開口高さHpは12μm(<2Dave0)となる。この場合、図12(c)に示すように、凸部441でのトナー搬送量がさらに少なく、しかも粒径が小さくなるためトナー飛散については良好であったが、現像濃度およびドット再現性の低下がみられた。
【0075】
以上より、凸部開口高さHoについては、十分な現像濃度およびドット再現性を得ながらも飛散やカブリの発生を抑えるために、使用されるトナーの体積平均粒径およびその粒度分布の大小に対応して適切な範囲があると推測される。つまり、凸部開口高さHoの適切な範囲は、トナーの体積平均粒径およびその粒度分布と相関性があると言える。この相関性についての考察を以下に述べる。
【0076】
図13はトナーの粒度分布と凸部開口高さとの関係を表す第1のモデルを示す図である。上記したように、本発明の目的である、十分な現像濃度およびドット再現性を得ながらも飛散やカブリの発生を抑えるという効果を得るためには、凸部441に小粒径のトナーを薄く、ただし十分な量を付着させておくことが望ましい。粒度分布の裾は0に近い領域まで広がっているので、原理的には凸部開口高さHoは0より大きければ僅かながらでも小粒径のトナーが凸部441に付着すると言えるが、あまりに微量であればその効果が現れない。したがって、ある程度の量のトナーを凸部441に付着させるためには、凸部開口高さHo以下の粒径を有するトナーが確実に含まれていることが必要である。この意味において、凸部開口高さHoの下限値Hominを、例えばトナーの体積平均粒径Dave0からその粒度分布における標準偏差σの3倍を差し引いた値とすることができる。すなわち、
Homin=Dave0−3σ … (式1)
である。統計学的には、この値より小さなトナー粒子は極めて微量である一方、この値より大きなトナー粒子が確実に含まれていると言える。したがって、凸部開口高さHoの下限値をこの値とすることにより、凸部441に一定量以上のトナーを確実に担持させることができる。
【0077】
その一方で、凸部開口高さHoが大きすぎると、凸部441に粒径が大きく離脱しやすいトナーが付着したり、また小粒径のトナーであっても多層にわたり付着することによって飛散が起こりやすくなる。これを確実に防止するためには、小粒径のトナーを2層以下に制限することが望ましい。この意味において、凸部開口高さHoの上限値Homaxについては、上記した下限値Hominの2倍以下とすることが望ましい。すなわち、
Homax=2(Dave0−3σ) … (式2)
である。
【0078】
したがって、(式1)、(式2)より、凸部開口高さHoの好ましい範囲は、次式、
Dave0−3σ≦Ho≦2(Dave0−3σ) … (式3)
によって表すことができる。このようにすることで、凸部441に小粒径のトナーのみを確実に担持させることができ、十分な現像濃度およびドット再現性を得ながら、大粒径トナーや多層の小粒径トナーの担持に起因するトナーの飛散を抑制することができる。
【0079】
図14はトナーの粒度分布と凸部開口高さとの関係を表す第2のモデルを示す図である。ここでは、現像ローラー44表面に占める凸部441の面積の比率と、ハウジング41内のトナーにおける、粒径が凸部開口高さHo以下のトナーの含有比率との関係に着目した。凸部441全体が小粒径トナーによって均一に覆われた状態を理想的な状態とすると、少なくとも、凸部441頂面を全てカバーするだけの量の小粒径トナーが含まれていることが必要である。この観点からは、トナー全体に占める凸部開口高さHo以下の粒径のトナーの含有比率が、現像ローラー44表面の有効面積、すなわち実際にトナー担持に寄与する面積全体のうち凸部441頂面が占める面積比以上であればよい。
【0080】
このうち凸部441頂面の面積比は、図14(a)に斜線を付して示す1つの凸部頂面Aaの面積Saと、同図に破線で示す隣接する各凸部間の中央を通る線によって囲まれる、同図に太い実線で示す菱形領域Abの面積Sbとの比で表される。ここで、これらの面積は現像ローラー44の構造によって予め決まった値である。また、凸部開口高さHo以下の粒径を有するトナーの含有比率については、図14(b)に示す粒度分布曲線と横軸とで囲まれる領域の面積S2と、これらと(粒径=Ho)で表される直線とで囲まれる領域の面積S1との比によって表すことができる。このうち面積S1は、凸部開口高さHoの関数である。
【0081】
これらの関係より、
S1/S2≧Sa/Sb … (式4)
の関係が満たされるように、凸部開口高さHoを定めればよいこととなる。より具体的には、(式4)において等号が成立するときのHoの値以上となるように、凸部開口高さHoを定めればよい。つまり、(式4)は凸部開口高さHoの下限値を示している。あるいは、上式の関係を満たすような(具体的には粒度分布の大きな)トナーを使用すればよい。
【0082】
図12に示した実験結果について検討すると、この実施形態の現像ローラー44における凸部441の面積比(以下、「凸部面積比」という)は表面全体の約20%である。この場合において、図12(a)に示したトナーAのように、凸部開口高さHoが体積平均粒径Dave0以下であり、かつ凸部開口高さHo以下の粒径のトナーの含有比率(以下、「小粒径含有比率」という)が該面積比以上であるトナーでは、現像濃度、ドット再現性および飛散の評価項目がいずれも良好であった。これに対し、凸部開口高さHoが体積平均粒径Dave0以下であっても小粒径含有比率が凸部面積比よりも小さいトナーBでは、現像濃度およびドット再現性の点でトナーAよりも劣っていた。また、凸部開口高さHoがトナーの体積平均粒径Dave0を超えている図12(b)のケースでは、現像濃度は十分であるが飛散が顕著である。さらに、トナーA、Bいずれも小粒径含有比率が凸部面積比よりも小さい図12(c)のケースでは、いずれも現像濃度の不足が認められた。これらの実験結果は、上記モデルから導かれる結論と一致している。
【0083】
以上のように、この実施形態では、表面に規則的な凹凸を設けた現像ローラー44を使用する画像形成装置において、現像ローラー44表面のうち凸部441には、トナーの粒度分布において比較的小粒径のもの、より具体的には体積平均粒径以下のものを選択的に担持させている。一方、現像ローラー44表面のうち凹部442には、小粒径から大粒径までの種々の粒径を有するトナーを担持させている。凸部441には小粒径のトナーのみを積極的に担持させることにより、凸部441からのトナー飛散を防止しながらも、凸部にほとんどトナーを担持させない従来技術において生じうる現像濃度の低下、特にドットの再現性の低下を抑制している。また、現像ローラー44の回転による風圧を受けにくい凹部442には種々の粒系のトナーを担持させているので、やはり飛散を防止しながら、十分な現像濃度を得ることが可能となる。
【0084】
特に、凹部442に担持されるトナー層を1層以上2層以下としているので、規制ニップNrを通過する際にほとんどのトナーは現像ローラー44表面または弾性部材462表面のいずれかに接触する。現像ローラー44表面に接触しているのはもともと帯電量の高いトナーであるが、より帯電量の低いトナーも弾性部材462との摺擦によりその帯電量が上昇するので、結果として帯電量のばらつきが小さくなり、現像効率を上昇させることができるとともにカブリを低減することができる。
【0085】
このようなトナー層を形成するために、この実施形態では、規制ブレード46を現像ローラー44に当接させるに際してその最上流側での開口高さを凸部441においてトナーの体積平均粒径Dave以下、凹部442においてトナーの体積平均粒径Daveの1倍以上2倍以下となるようにしている。こうすることで、十分な現像濃度を得つつ、現像ローラー44からのトナーの飛散や漏れ、カブリ等を抑制することができる。したがって、この実施形態では、良好な画像品質を得ることが可能である。
【0086】
このような構成は、粒径が大きくまたその粒度分布の広がりが大きいトナー、例えば体積平均粒径が5μm以上であるトナーを用いる場合に特に好適である。粒度分布の広がりが大きい、つまり粒径のばらつきが大きいトナーでは現像濃度と飛散等の防止等を両立させることが容易でないが、この実施形態では高低差を管理した規則的な凹凸を設けた現像ローラー44を使用し、しかもトナーに含まれる比較的小粒径のものを選択的に凸部441に担持させ、他を凹部442に担持させているため、現像濃度と飛散等の防止等を両立させることができる。
【0087】
また、上記実施形態では、規制ブレード46を構成する弾性部材462に本来絶縁体である樹脂材料を用いているが、その抵抗率を調整して導電性を持たせているので、規制ニップNrにおいてトナー間での電荷の移動を促進し帯電量のばらつきを小さくすることができる。
【0088】
また、この実施形態では、現像ローラー44が金属製で転造加工により凹凸を形成されたものであるため、凹凸の高低差を精密に管理することが可能である。これによりトナー層についても精度よく制御することが可能となり、本発明の効果をより確実なものとする上で大きな効果を果たしている。
【0089】
以上説明したように、この実施形態においては、感光体22、現像ローラー44および規制ブレード46がそれぞれ本発明の「潜像担持体」、「トナー担持ローラー」および「規制手段」として機能している。また、これらを備える現像器4Y、4M、4Cおよび4Kが本発明の「現像装置」に相当している。
【0090】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態は感光体22と現像ローラー44とを所定のギャップを隔てて対向させ両者の間でトナーを飛翔させる、いわゆるジャンピング現像方式の画像形成装置であるが、両者を当接させた状態で交流現像バイアスを印加する装置に対しても、本発明を適用することが可能である。
【0091】
また、例えば、上記実施形態の現像ローラー44の凸部441は略菱形に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば凸部を円形や三角形など他の形状となるようにしてもよい。また、各凸部の形状が同一である必要はなく、異なる形状のものが混在していてもよい。ただし、いずれの場合においても、本発明にかかるトナー層制御の効果を得るためには、少なくとも各凸部の頂面については、互いに同一の円筒面を一部をそれぞれなすような構造であることが望ましい。また凹部の深さも概ね一定であることが望ましい。この点において、元は平滑な円筒面に凹部を刻み込むことによって凹凸を形成した構造のものが特に有効である。
【0092】
また、上記実施形態では体積平均粒径が5μm以上の粉砕トナーを使用している。これは、本発明が、粒径のばらつきが大きく、また円形度も低い粉砕トナーを用いた場合に特に優れた効果を発揮するものであるからである。しかしながら、この発明を適用した画像形成装置に使用可能なトナーは上記に限定されるものではなく、例えば重合法により製造されたトナーや、より小さな粒径を持つトナーを用いる装置であっても、本発明は有効である。
【0093】
また、上記実施形態の画像形成装置は、ロータリー現像ユニット4に現像器4K等を装着したカラー画像形成装置であるが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。例えば、中間転写ベルトに沿って複数の現像器を並べたいわゆるタンデム方式のカラー画像形成装置や、現像器を1個だけ備えてモノクロ画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
22…感光体(潜像担持体)、 41…ハウジング、 44…現像ローラー(トナー担持ローラー)、 46…規制ブレード(規制手段)、 46a…(規制ブレードの)自由端、 441…(現像ローラー表面の)凸部、 442…(現像ローラー表面の)凹部、 462…弾性部材(規制手段)、 462e…(弾性部材の)エッジ部、 Hd…(凸部と凹部との)高低差、 Ho…凸部開口高さ、 Hp…凹部開口高さ、 T…トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にトナーを収容するハウジングと、
前記ハウジングに軸着され、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成されて、該表面に前記ハウジングから供給される帯電トナーを担持しながら回転するトナー担持ローラーと
を備え、
前記トナー担持ローラー表面のうち前記凸部に担持されるトナーの体積平均粒径が、前記ハウジング内のトナーの体積平均粒径よりも小さいことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記トナー担持ローラー表面のうち前記凹部に担持されるトナーの体積平均粒径が、前記ハウジング内のトナーの体積平均粒径よりも大きい請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記ハウジング内で、自由端が前記トナー担持ローラーの回転方向上流側を向くとともに該自由端に隣接する隣接部位が前記トナー担持ローラー表面に当接する規制ブレードを有し、該規制ブレードが前記トナー担持ローラー表面に担持されるトナーの量を規制する規制手段を備え、
前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が0より大きく前記トナーの体積平均粒径以下であり、かつ、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凹部との間隔が前記体積平均粒径以上である請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記ハウジング内で、自由端が前記トナー担持ローラーの回転方向上流側を向くとともに該自由端に隣接する隣接部位が前記トナー担持ローラー表面に当接する規制ブレードを有し、該規制ブレードが前記トナー担持ローラー表面に担持されるトナーの量を規制する規制手段を備え、
前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が、当該トナーの体積基準の粒度分布における標準偏差の3倍を前記トナーの体積平均粒径から差し引いた値以上である請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が、当該トナーの体積基準の粒度分布における標準偏差の3倍を前記トナーの体積平均粒径から差し引いた値の2倍以下である請求項3または4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記ハウジング内のトナーのうち前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔以下の粒径を有するトナーの含有比率が、前記トナー担持ローラー表面のうちトナー担持に寄与する有効面積に占める前記凸部頂面の面積比以上である請求項3ないし5のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
前記規制ブレードが、導電性を有する弾性材料により形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の現像装置。
【請求項8】
前記トナー担持ローラーの表面が金属製である請求項1ないし7のいずれかに記載の現像装置。
【請求項9】
前記トナーの体積平均粒径が5μm以上である請求項1ないし8のいずれかに記載の現像装置。
【請求項10】
内部にトナーを収容するハウジングと、
前記ハウジングに軸着され、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成されて、該表面に前記ハウジングから供給される帯電トナーを担持しながら回転するトナー担持ローラーと、
前記トナー担持ローラーと対向配置され、表面に静電潜像を担持する潜像担持体と
を備え、
前記トナー担持ローラー表面のうち前記凸部に担持されるトナーの体積平均粒径が、前記ハウジング内のトナーの体積平均粒径よりも小さい
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成したトナー担持ローラーの表面に、トナーを収容するハウジングからトナーを供給して担持させ、
静電潜像を担持させた潜像担持体と前記トナー担持ローラーとを対向させて前記静電潜像をトナーにより現像し、しかも、
前記トナー担持ローラー表面のうち前記凸部に担持されるトナーの体積平均粒径を、前記ハウジング内のトナーの体積平均粒径よりも小さくする
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−217290(P2010−217290A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61249(P2009−61249)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】