説明

現像装置および画像形成装置

【課題】 現像履歴の発生を抑え、現像剤を滞留させることなく流し板上を移動させることが可能な、現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】 規制部材7によって規制された二成分現像剤を、現像ローラ3から離間する方向へと案内する流し板9を備える。流し板9は、非磁性オーステナイト系ステンレス合金の矩形状薄板で構成され、短手方向一端部である先端部9aが、現像ローラ3の表面に対向するように設けられる。先端部9aは、加工誘起マルテンサイト相に変態させて強磁性化され、現像ローラ3の表面に対向する領域で、反発磁界を形成するように磁場配向が施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分現像剤を用いる電子写真方式の現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電電子写真方式を利用した画像形成装置は、一般に帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電、および定着の各工程からなる。画像を形成する工程は、たとえば、帯電装置によって回転駆動される感光体ドラムの表面を均一に帯電され、露光装置によって帯電した感光体表面にレーザ光を照射され静電潜像が形成される。続いて、現像装置によって感光体上の静電潜像が現像され感光体表面上にトナー像が形成される。転写装置によって感光体上のトナー像は転写材上に転写され、その後、定着装置によって加熱されることによって、トナー像は転写材上に固定される。また感光体表面上に残った転写残留トナーはクリーニング装置により除去され所定の回収部に回収されると共に、クリーニングされた後の感光体表面は除電装置により残留電荷が除去され次の画像形成に備える。
【0003】
感光体上の静電潜像を現像する現像剤としては、トナーのみからなる一成分現像剤やトナーとキャリアとからなる2成分現像剤が一般に用いられる。一成分現像剤は、キャリアを用いないため、トナーとキャリアとを均一に混合するための撹拌機構などを必要とせず、現像装置がシンプルになるといった利点を有するが、トナーの帯電量が安定しにくい等の欠点がある。二成分現像剤は、トナーとキャリアとを均一に混合するための撹拌機構などを必要とすることから、現像装置の構成が複雑になるといった欠点を有するが、帯電量の安定性に優れることから、高速画像形成装置やカラー画像形成装置によく使用されている。
【0004】
二成分現像剤を用いる現像装置としては、一般に、現像槽、現像ローラ、撹拌部材、規制部材、流し板などを含む現像装置が用いられる。現像槽は、現像ローラおよび撹拌部材を回転自在に支持するとともに、その内部に現像剤を貯留する。現像ローラは表面に現像剤層を担持して回転し、感光体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する。撹拌部材は現像槽内の現像剤を均一に撹拌して現像ローラに向けて搬送する。規制部材は現像ローラ表面の現像剤層の層厚を規制する。
【0005】
また、感光体上の静電潜像を現像する現像剤としては、トナーを主成分とする一成分現像剤、トナーおよびキャリアを主成分とする二成分現像剤が一般に用いられる。一成分現像剤は、キャリアを用いないため、トナーとキャリアとを均一に混合するための撹拌機構などを必要とせず、現像装置の構成がシンプルになるといった利点を有するものの、トナーの帯電量が安定しにくいなどの欠点がある。このため、高速画像形成装置やカラー画像形成装置には一般に二成分現像剤が使用されることが多い。
【0006】
一方、二成分現像剤は、現像ローラ上において、該現像剤中のトナー含有率(以下、トナー濃度と呼ぶ)が変化すると、トナー濃度が変化した部分で現像した画像の画像濃度が変わるため、二成分現像剤を扱う現像装置は、常にトナー濃度の均一な現像剤で感光体上に現像することが要求される。そのため、現像装置は、トナー濃度を均一にするため、二成分現像剤(キャリアおよびトナー)を十分に撹拌した後、現像ローラで感光体表面にトナーを供給している。
【0007】
ところが、現像に供されてトナーが消費された(即ちトナー濃度が変化した部分を有する)二成分現像剤が、現像ローラスリーブ表面から離れることなく、再度、現像ローラから感光体表面への現像に供されると、トナー濃度が変化した部分で画像濃度が不均一になる画像不良、いわゆる現像履歴の問題がある。
【0008】
このような問題は、現像後に現像ローラのスリーブ上に残存してしまった現像剤や低帯電のトナーに起因している場合が多く、現像スリーブ上の現像剤の剥離性向上や現像スリーブの残存トナーを除去させる必要がある。
【0009】
たとえば、特許文献1には、現像剤返送案内板の、現像剤流れの上流側にマグネットシートを設け、マグネットシートと第1の磁石のつくる磁力線の影響により、現像剤は、余すことなく現像剤返送案内板に受け渡される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−214668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1記載の現像装置では、マグネットシートに現像剤が磁気的に吸引されやすく、特に現像ローラのスピードを可変して使用する装置ではマグネットシートの磁力設定が困難であることや、マグネットシートの端部と平面部とでは磁力ベクトルが異なることから、この板厚方向への漏れ磁界部からの現像剤の滞留が進行しやすいといった問題がある。
【0012】
本発明の目的は、現像履歴の発生を抑え、現像剤を滞留させることなく流し板上を移動させることが可能な、現像装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像を現像する現像装置において、
表面に二成分現像剤を担持した状態で回転し、前記感光体ドラム表面にトナーを供給して、前記静電潜像を現像する現像ローラと、
前記現像ローラの表面に担持された二成分現像剤の担持量を規制する規制部材と、
前記規制部材によって規制された二成分現像剤を、前記現像ローラから離間させる方向へと案内する流し板とを備え、
前記流し板は、非磁性オーステナイト系ステンレス合金の矩形状薄板で構成され、短手方向一端部が前記現像ローラの表面に対向するように設けられ、
前記短手方向一端部は、加工誘起マルテンサイト相に変態させて強磁性化され、前記現像ローラの表面に対向する領域で、反発磁界を形成するように磁場配向が施されることを特徴とする現像装置である。
【0014】
また本発明は、前記流し板は、板厚1.0〜1.5mmであり、前記短手方向一端部は、ヘミング曲げ加工されていることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記短手方向一端部は、二成分現像剤の前記現像ローラへの磁気拘束力がほぼ無くなる位置で前記現像ローラの表面に対向し、前記現像ローラの表面と前記短手方向一端部との隙間が0.5mm以上1.0mm以下となるように設けられることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記流し板は、前記流し板の主面が、前記磁気拘束力がほぼ無くなる位置において、現像ローラの回転により二成分現像剤に加わる遠心力の印加方向と平行となるように設けられることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記短手方向一端部は、ヘミング加工によって折り返した部分と、この折り返した部分に重なる部分とが同じ磁極となるように、磁場配向が施されることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記短手方向一端部の長手方向幅は、感光体ドラムの静電潜像が形成される領域の幅以上であり、二成分現像剤が搬送される搬送幅以下としたことを特徴とする。
【0019】
また本発明は、表面に静電潜像が形成される感光体と、
感光体表面を帯電させる帯電装置と、
感光体表面に静電潜像を形成する露光装置と、
前記現像装置と、
感光体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
感光体表面を清浄化するクリーニング装置と、
トナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを含むことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、規制部材によって規制された二成分現像剤を、現像ローラから離間する方向へと案内する流し板を備え、前記流し板は、非磁性オーステナイト系ステンレス合金の矩形状薄板で構成され、短手方向一端部が前記現像ローラの表面に対向するように設けられる。前記短手方向一端部は、加工誘起マルテンサイト相に変態させて強磁性化され、前記現像ローラの表面に対向する領域で、反発磁界を形成するように磁場配向が施される。
【0021】
現像履歴の発生は、現像後にも現像ローラに残存する二成分現像剤が原因であるので、現像後の二成分現像剤を現像ローラから剥離することで解消できる。
【0022】
上記のように流し板を構成することで、現像ローラから流し板への二成分現像剤の移動が促進され現像後の二成分現像剤を現像ローラから剥離することができるので、現像履歴の発生を抑え、二成分現像剤を滞留させることなく流し板上を移動させることが可能となる。
【0023】
また本発明によれば、前記流し板は、板厚1.0〜1.5mmであり、前記短手方向一端部は、ヘミング曲げ加工されている。端部にヘミング曲げを行うことで、曲げ部はマルテンサイト相に変態して強磁性化され、任意の磁場配向を施すことが可能となる。
【0024】
また本発明によれば、前記短手方向一端部は、二成分現像剤の前記現像ローラへの磁気拘束力がほぼ無くなる位置で前記現像ローラの表面に対向し、前記現像ローラの表面と前記短手方向一端部との隙間が0.5mm以上1.0mm以下となるように設けられる。
【0025】
これにより、現像ローラと流し板とが対向する領域において、二成分現像剤の詰まりや凝集といった不具合をおこすことなく、現像ローラから二成分現像剤を流し板へと移動させることができる。
【0026】
また本発明によれば、前記流し板の主面が、前記磁気拘束力がほぼ無くなる位置において、現像ローラの回転により二成分現像剤に加わる遠心力の印加方向と平行となるように設けられる。
【0027】
これにより、現像ローラから流し板への二成分現像剤の移動および流し板表面での二成分現像剤の移動を効率よく行うことができる。
【0028】
また本発明によれば、前記短手方向一端部は、ヘミング加工によって折り返した部分と、この折り返した部分に重なる部分とが同じ磁極となるように、磁場配向が施される。
【0029】
これにより、現像ローラから流し板への二成分現像剤の移動をさらに効率よく行うことができる。
【0030】
また本発明によれば、前記短手方向一端部の長手方向幅は、感光体ドラムの静電潜像が形成される領域の幅以上であり、二成分現像剤が搬送される搬送幅以下とした。
【0031】
これにより、流し板の長手方向両端部における現像ローラの移動をさらに効率よく行うことができる。
【0032】
また本発明によれば、上記の現像装置によって感光体ドラム表面の静電潜像を現像して画像形成を行うので、現像履歴により画質劣化がない高画質の画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態である画像形成装置100の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態である現像装置1の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】先端部9aの拡大図である。
【図4】現像ローラ3近傍を拡大した拡大断面図である。
【図5】流し板9の先端部9a近傍を拡大した拡大断面図である。
【図6】現像ローラ3の回転軸線を含む平面で切断した現像装置1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態である画像形成装置100の全体構成を示す概略図である。この画像形成装置100は、原稿用紙から読取られた画像データを取得したり、或いは、外部から受信した画像データを取得し、この画像データによって示されるモノクロ画像を記録用紙に形成するものであり、その構成を大別すると、原稿用紙搬送部(ADF)101、画像読取り部102、印刷部103、記録用紙搬送部104、および給紙部105からなる。
【0035】
原稿用紙搬送部101では、少なくとも1枚の原稿用紙が原稿セットトレイ11にセットされると、原稿用紙を1枚ずつ原稿セットトレイ11から引き出して搬送し、この原稿用紙を画像読取り部102の原稿読取り窓102aに導いて通過させ、この原稿用紙を排紙トレイ10に排出する。
【0036】
原稿読取り窓102aの上方には、CIS(Contact Image Sensor)30を配設している。このCIS30は、原稿読取り窓102aを原稿用紙が通過する際に、原稿用紙裏面の画像を主走査方向に繰り返し読取り、原稿用紙裏面の画像を示す画像データを出力する。
【0037】
また、画像読取り部102は、原稿用紙が原稿読取り窓102aを通過する際に、第1走査ユニット15のランプによって原稿用紙表面を露光し、第1および第2走査ユニット15、16のミラーによって原稿用紙表面からの反射光を結像レンズ17へと導き、結像レンズ17によって原稿用紙表面の画像をCCD(Charge Coupled Device)18上に結像する。CCD18は、原稿用紙表面の画像を主走査方向に繰り返し読取り、原稿用紙表面の画像を示す画像データを出力する。
【0038】
原稿用紙が画像読取り部102上面のプラテンガラス上に置かれた場合は、第1および第2走査ユニット15、16を相互に所定の速度関係を維持しつつ移動させ、第1走査ユニット15によってプラテンガラス上の原稿用紙表面を露光し、第1および第2走査ユニット15、16によって原稿用紙表面からの反射光を結像レンズ17へと導き、結像レンズ17によって原稿用紙表面の画像をCCD18上に結像する。
【0039】
CIS30もしくはCCD18から出力された画像データは、マイクロコンピュータ等の制御回路により各種の画像処理を施されてから、印刷部103に出力される。
【0040】
印刷部103は、画像データによって示される原稿を用紙に記録するものであって、感光体ドラム20、帯電器22、光書込みユニット23、現像装置1、転写ユニット25、クリーニングユニット24、および定着ユニット27等を備えている。
【0041】
感光体ドラム20は、一方向に回転しており、その表面をクリーニングユニット24によりクリーニングされてから、その表面を帯電器22により均一に帯電される。帯電器22は、チャージャー型のものであっても、感光体ドラム20に接触するローラ型やブラシ型のものであっても良い。
【0042】
光書込みユニット23は、2つのレーザ照射部28a、28b、および2つのミラー群29a、29bを備えるレーザスキャニングユニット(LSU)である。この光書込みユニット23では、画像データを入力して、この画像データに応じたレーザ光を各レーザ照射部28a、28bからそれぞれ出射し、これらのレーザ光を各ミラー群29a、29b介して感光体ドラム20に照射して、均一に帯電された感光体ドラム20表面を露光し、感光体ドラム20表面に静電潜像を形成する。
【0043】
この光書込みユニット23は、高速印字処理に対応するために2つのレーザ照射部28a、28bを備えた2ビーム方式を採用して、照射タイミングの高速化に伴う負担を軽減している。
【0044】
光書込みユニット23として、レーザスキャニングユニットの代わりに、発光素子をアレイ状に並べたEL書き込みヘッドやLED書き込みヘッドを用いることもできる。
【0045】
現像装置1は、トナーを感光体ドラム20表面に供給して、静電潜像を現像し、トナー像を感光体ドラム20表面に形成する。転写ユニット25は、感光体ドラム20表面のトナー像を用紙搬送部104により搬送されてきた記録用紙に転写する。定着ユニット27は、記録用紙を加熱および加圧して、記録用紙上のトナー像を定着させる。この後、記録用紙は、用紙搬送部104により排紙トレイ47へと更に搬送されて排出される。また、クリーニングユニット24は、現像、転写後に感光体ドラム20の表面に残留したトナーを除去して回収する。
【0046】
ここで、転写ユニット25は、転写ベルト31、駆動ローラ32、従動ローラ33、および弾性導電性ローラ34等を備えており、転写ベルト31を該各ローラ32〜34と他のローラに張架して回転させている。転写ベルト31は、所定の抵抗値(たとえば、1×10〜1×1013Ω/cm)を有しており、その表面に載せられた記録用紙を搬送する。弾性導電性ローラ34は、転写ベルト31を介して感光体ドラム20表面に押し付けられており、転写ベルト31上の記録用紙を感光体ドラム20表面に押し付ける。この弾性導電性ローラ34には、感光体ドラム20表面のトナー像の電荷とは逆極性の電界が印加されており、この逆極性の電界により感光体ドラム20表面のトナー像が転写ベルト31上の記録用紙に転写される。たとえば、トナー像が(−)極性の電荷を有している場合は、弾性導電性ローラ34に印加されている電界の極性が(+)極性にされる。
【0047】
定着ユニット27は、加熱ローラ35および加圧ローラ36を備えている。加熱ローラ35内部には、該加熱ローラ35表面を所定温度(定着温度:概ね160〜200℃)に設定するための熱源を設けている。また、加熱ローラ35に対して加圧ローラ36が所定圧で圧接されるように、加圧ローラ36の両端に図示しない加圧部材を配置している。加熱ローラ35と加圧ローラ36間の圧接部(定着ニップ部と称される)に記録用紙が搬送されて来ると、各ローラ35、36により記録用紙が搬送されつつ、記録用紙上の未定着トナー像が加熱溶融され加圧されて、トナー像が記録用紙上に定着される。
【0048】
用紙搬送部104は、記録用紙を搬送するための複数対の搬送ローラ41、一対のレジストローラ42、搬送経路43、反転搬送経路44、複数の分岐爪45、および一対の排紙ローラ46等を備えている。
【0049】
搬送経路43では、記録用紙を給紙部105から受け取り、記録用紙の先端がレジストローラ42に達するまで該記録用紙を搬送する。このときレジストローラ42を一時的に停止させているので、記録用紙の先端がレジストローラ42に達して当接し、記録用紙が撓む。この撓んだ記録用紙の弾性力により該記録用紙の先端をレジストローラ42と平行に揃える。この後、レジストローラ42の回転を開始して、レジストローラ42により記録用紙を印刷部103の転写ユニット25へと搬送し、更に排紙ローラ46により記録用紙を排紙トレイ47へと搬送する。
【0050】
レジストローラ42の停止および回転は、レジストローラ42と駆動軸間のクラッチをオンオフに切り替えたり、レジストローラ42の駆動源であるモータをオンオフに切り替えてなされる。
【0051】
また、記録用紙の裏面にも画像を記録する場合は、複数の分岐爪45を回転させて、搬送経路43と反転搬送経路44の分岐路を切り替え、反転搬送経路44で記録用紙の表裏を反転させてから、記録用紙を反転搬送経路44を介して搬送経路43のレジストローラ42へと戻す。これにより、記録用紙の裏面にも画像が記録される。
【0052】
搬送経路43および反転搬送経路44においては、記録用紙の位置等を検出するセンサを各所に配置し、各センサにより検出された記録用紙の位置に基づいて搬送ローラやレジストローラを駆動制御して、記録用紙の搬送および位置決めを行っている。
【0053】
給紙部105は、複数の給紙トレイ40を備えている。各給紙トレイ40は、記録用紙を蓄積しておくためのトレイであり、画像形成装置100の下方に設けられている。また、各給紙トレイ40は、記録用紙を一枚ずつ引き出すためのピックアップローラ等を備えており、引き出した記録用紙を用紙搬送部104の搬送経路43へと送り出す。
【0054】
本実施形態の画像形成装置100は高速印字処理を目的としているため、各給紙トレイ40には、定型サイズの記録用紙を500〜1500枚収納可能な容積を確保している。
【0055】
また、画像形成装置100の側面には、複数種の記録用紙を多量に収納可能な大容量給紙カセット(LCC)48、および主として不定型サイズの記録用紙を供給するための手差しトレイ49を設けている。
【0056】
排紙トレイ47は、手差しトレイ49とは反対側の側面に配置されている。この排紙トレイ47に代えて、排紙用紙の後処理装置(ステープル、パンチ処理等々)や、複数段の排紙トレイをオプションとして配置することも可能な構成となっている。
【0057】
図2は、本発明の実施形態である現像装置1の構成を模式的に示す断面図である。図2において、現像装置1は、現像槽2と、現像ローラ3と、第1撹拌部材4と、第2撹拌部材5と、搬送部材6と、規制部材7と、固定部材8と、流し板9、およびトナー濃度検知センサ12とを含む。
【0058】
現像槽2は内部空間を有するほぼ角柱状の容器部材であり、現像ローラ3、第1撹拌部材4、第2撹拌部材5および搬送部材6を回転自在に支持し、規制部材7、流し板9などを直接的または間接的に支持し、二成分現像剤50を収容する。二成分現像剤50はトナーと磁性体粉であるキャリアとを含む2成分二成分現像剤である。また、現像槽2には、画像形成装置本体に現像装置1を装着する場合に、感光体ドラム20を臨む側面に開口2aが形成される。また、現像槽2の鉛直方向上面には、トナー補給口2bが形成される。
【0059】
現像槽2の鉛直方向上方にはトナーカートリッジおよびトナーホッパ26が設けられる。より詳しくは、鉛直方向上方から下方に向けて、トナーカートリッジ、トナーホッパ26および現像槽2の順番で設けられる。トナーカートリッジは、その内部空間にトナーを収容し、画像形成装置本体に対して着脱可能に設けられる。
【0060】
また、トナーカートリッジは、画像形成装置に設けられる図示しない駆動手段によって、軸線回りに回転駆動する。トナーカートリッジの長手方向側面には長手方向に延びる細長い開口が形成され、トナーカートリッジの回転に伴って前記細長い開口からトナーが落下してトナーホッパ26に供給される。
【0061】
トナーホッパ26は、たとえば、その鉛直方向底面に形成される開口であるトナー供給口が、現像槽2の鉛直方向上面に形成される開口であるトナー補給口2bと鉛直方向に連通するように設けられる。トナーホッパ26内において、トナー供給口の鉛直方向上方には、トナー補給ローラ19が設けられる。トナー補給ローラ19はトナーホッパ26によって回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転駆動する。トナー補給ローラ19の回転駆動は、トナー濃度検知センサ12による現像槽2内のトナー濃度の検知結果に応じて、画像形成装置に設けられる図示しない制御手段により制御される。トナー補給ローラ19の回転駆動によって、トナー供給口およびトナー補給口2bを介して、現像槽2内にトナーが補給される。
【0062】
現像ローラ3は少なくとも一部が現像槽2に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって軸心回りに回転駆動するローラ状部材である。また、現像ローラ3は、現像槽2の開口2aを介して感光体ドラム20に対向する。現像ローラ3は、感光体ドラム20に対して間隙を有して離隔するように設けられ、最近接部分が現像ニップ部である。現像ニップ部において、現像ローラ3表面の二成分現像剤層50aから感光体ドラム20表面の静電潜像にトナーが供給される。現像ニップ部では、現像ローラ3に接続される図示しない電源から現像ローラ3に対して現像バイアス電圧が印加され、現像ローラ3表面の二成分現像剤層50aから感光体ドラム20表面の静電潜像へのトナーの移行が円滑に進行する。
【0063】
現像ローラ3は、マグネットローラ13とスリーブ14とを含む。マグネットローラ13は、その長手方向の両端部が現像槽2の現像槽壁によって支持され、現像ローラ3の周方向位置に断面形状が長方形の複数の棒磁石である磁極N1,N2,N3および磁極S1,S2,S3,S4が互いに離隔して現像ローラ3の半径方向に放射状に配置される多極着磁型マグネットローラである。各磁極は、現像ローラ3(スリーブ14)の回転方向とは逆方向において、磁極N1、磁極S1、磁極N2、磁極S2、磁極S3、磁極N3、磁極S4の順番に設けられる。
【0064】
スリーブ14は、非磁性材料を用いて形成される。図2では、スリーブ14は紙面に向かって右回り(時計回り)に回転し、感光体ドラム20も右回り(時計回り)に回転する。
【0065】
第1撹拌部材4および第2撹拌部材5は、いずれも、現像槽2によって回転自在に支持されかつ図示しない駆動手段によって軸心回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。本実施の形態では、第1撹拌部材4は反時計回りに回転し、第2撹拌部材5は時計回りに回転する。第1撹拌部材4は、現像ローラ3を介して感光体ドラム20に対向しかつ現像ローラ3よりも鉛直方向下方になる位置に設けられる。第2撹拌部材5は、第1撹拌部材4を介して現像ローラ3に対向しかつ現像ローラ3よりも鉛直方向下方になる位置に設けられる。第1撹拌部材4および第2撹拌部材5は、現像槽2内に貯留される二成分現像剤50を撹拌してトナーに均一な電荷を付与するとともに、帯電状態にある二成分現像剤50を汲み上げて現像ローラ3の周囲に送給する。
【0066】
搬送部材6は、現像槽2によって回転自在に支持されかつ図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。搬送部材6は、第2撹拌部材5を介して第1撹拌部材4に対向し、かつトナー補給口2bの鉛直方向下方に設けられる。搬送部材6は、トナー補給口2bを介して現像槽2内に補給されるトナーを、第2撹拌部材5の周囲に搬送する。
【0067】
トナー濃度検知センサ12は、たとえば、第2撹拌部材5の鉛直方向下方の現像槽2底面に装着され、センサ面が現像槽2の内部に露出するように設けられる。トナー濃度検知センサ12は図示しない制御手段に電気的に接続される。制御手段は、トナー濃度検知センサ12による検知結果に応じて、トナー補給ローラ19を回転駆動させ、現像槽2内部にトナーを補給するように制御する。すなわち、トナー濃度検知センサ12による検知結果がトナー濃度設定値よりも低いと判定すると、トナーカートリッジを回転駆動させる駆動手段に制御信号を送り、トナーカートリッジを回転駆動させる。トナー濃度検知センサ12には一般的なトナー濃度検知センサを使用でき、たとえば、透過光検知センサ、反射光検知センサ、透磁率検知センサなどが挙げられる。これらの中でも、透磁率検知センサが好ましい。
【0068】
透磁率検知センサ12には図示しない電源が接続される。電源は、透磁率検知センサ12を駆動させるための駆動電圧およびトナー濃度の検知結果を制御手段に出力するための制御電圧を透磁率検知センサに印加する。電源による透磁率検知センサへの電圧の印加は、制御手段によって制御される。透磁率検知センサは、制御電圧の印加を受けてトナー濃度の検知結果を出力電圧値として出力する型式のセンサであり、基本的に出力電圧の中央値近傍の感度がよいため、その付近の出力電圧が得られるような制御電圧を印加して用いられる。このような型式の透磁率検知センサは市販されており、たとえば、TS−L、TS−A、TS−K(いずれも商品名、TDK株式会社製)などが挙げられる。
【0069】
制御手段は、現像装置1専用のものを設けてもよく、また現像装置1が装着される画像形成装置に設けられる制御手段によって兼用する構成であってもよい。制御手段は、たとえば、記憶部と演算部と制御部とを含む。記憶部には、各種センサによる検知結果、設定値、画像情報、テーブルデータ、プログラムなどが書き込まれる。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。演算部は、記憶部に入力される各種データ(印刷指令、検知結果、画像情報など)および各種制御を実施するためのプログラムを取り出し、各種検知および判定を行う。制御部は、演算部における判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は、たとえば、中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路である。制御手段は、記憶部、演算部および制御部とともに主電源を含む。
【0070】
規制部材7は、現像ローラ3の軸線方向(長手方向)に平行に延び、短手方向の先端部のエッジ部7aを有する略直方体形状の板状部材であり、現像ローラ3の鉛直方向上方において、現像ローラ3表面に対して所定の間隙を設けるように、固定部材8により現像槽2に固定される。
【0071】
規制部材7は、たとえば、ステンレス鋼、アルミニウムなどの弾性を有する非磁性金属、合成樹脂などによって形成される。本実施の形態では、規制部材7には薄板状のステンレス鋼を使用する。
【0072】
流し板9は、現像槽2内において、現像ローラ3の回転方向における規制部材7よりも現像剤搬送方向下流側であって、第1撹拌部材4および第2撹拌部材5の鉛直方向上方に設けられる板状部材である。流し板9は、短手方向の一端の先端部が現像ローラ3のスリーブ14表面に対向し、スリーブ14と間隙を有して離隔され、短手方向の他端部が現像ローラ3から離反する方向に延びるように設けられる。
【0073】
流し板9は、材質がオーステナイト系ステンレス鋼(SUS300番台)からなる薄板を使用し、板厚は1.0〜1.5mmが好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼(SUS300番台)は基本的に常磁性であるが、厳しい曲げやプレス加工による破断面は組織がマルテンサイトに変化し、組織が変化したマルテンサイト相部分が強磁性化される。
【0074】
流し板9の製造工程ではまず、プレスによる外形抜きを行うが、外形破断面は前述のようにマルテンサイト相に変化する。現像装置1内を磁力によって搬送される現像剤50においては、この流し板9の破断面に磁力吸着されると現像剤50の滞留が進行し、循環不良となる可能性がある。
【0075】
したがって、本発明では、流し板9の製造工程において、プレスによる外形破断後に、現像ローラ3のスリーブ14に対向する先端部9aを除き、外形破断面に対して脱磁処理を行った後、ヘミング曲げを行うこととしている。
【0076】
流し板9の外形破断面を脱磁処理した後、ヘミング曲げ加工した先端部9aに対して着磁機により着磁処理を行う。図3の先端部9aの拡大図に示すように、先端部9aの曲げ部分、すなわちスリーブ14に最も近接する部分をS極に着磁させ、折返した破断面付近をN極に着磁させる。このように着磁処理したときの磁力線9bも図3に示す。各磁極の磁力についてはN極、S極いずれも10〜20mT程度としている。
【0077】
図4は、現像ローラ3近傍を拡大した拡大断面図である。現像ローラ3の磁気パターン55は、マグネットローラ13の各磁石の放射状配置により発生するパターンであり、スリーブ14表面における各磁極のスリーブ中心方向への磁気的吸引力の強さを絶対値で表している。
【0078】
この磁気パターン55の磁力バランスにより、現像剤50を磁極S2でスリーブ14上に吸着させ、スリーブ14が紙面向かって右回り(時計回り)に回転することで、磁極S3まで現像剤50を搬送する構成としている。また、磁極S3〜磁極S2の同極間は反発磁界となりスリーブ14上での現像剤50の吸着力は概ね無くなり、スリーブ14が回転することで発生する遠心力により現像剤50はスリーブ14から剥離されやすい状態となる。現像剤50に極力ストレスを与えないで流し板9に案内するには、磁極S3によるスリーブ14への磁気拘束力が略ゼロである位置55aに、流し板9の先端部9aを対向させ、かつ位置55aにおける遠心力の向かう接線方向へ斜面が形成されることが望ましく、本実施形態では図4に表す位置関係とした。先端部9aとスリーブ14との隙間が0.5mm以上1.0mm以下となるように設けられることが好ましい。
【0079】
図5は、流し板9の先端部9a近傍を拡大した拡大断面図である。先端部9aのスリーブ14に最近接する部分は、S極に着磁するように構成され、磁極S3よりも下流側に対向するように配置している。スリーブ14に汲み上げられた現像剤50は、スリーブ14の回転によって移動し、磁極S3の位置を通過後徐々にスリーブ14に向かう方向にかかる磁気的吸着力、すなわちスリーブ14表面の現像剤保持力が減衰する。また、流し板9の先端部9aは、スリーブ14との反発磁界となるため、現像剤50は、先端部9aとスリーブ14表面とが最も近接する位置である最狭部にまで入り込むよりも前に流し板9上へと順次移動する。移動した現像剤50は、流し板9のS極とN極間の磁力線により流し板9表面において拘束力が加えられる。しかし、この磁気的な拘束力は、非常に弱い力であり、流れてくる現像剤50の搬送自体は阻害されない。この拘束力によって、スリーブ14から流し板9に移動する現像剤50の移動速度よりも流し板9の表面を移動する現像剤50の移動速度のほうが遅くなり、スリーブ14表面から流し板9へと現像剤50が移動し始める位置14aでは、現像剤50がスリーブ14上でスリップし、スリーブ14表面と流し板9との間にわたるブリッジ状の現像剤50によって位置14aにおける現像剤層50aを掻き取ることで、現像履歴等の画像不良を防止できる。
【0080】
図6は、現像ローラ3の回転軸線を含む平面で切断した現像装置1の断面図である。流し板9の先端部9aの長手方向両端部においては、現像剤50の搬送経路として流し板9表面を移動せず直接現像装置撹拌部へと供給するための切り欠き部9dを設けている。ヘミング曲げ先端部9aの着磁と比較し、両端部は外形破断面に対して放射状の磁力を帯びやすく流し板9の長手方向端部全体の着磁状態と異なるので、現像剤の滞留が発生する。この切り欠き部9dをスリーブ14の現像剤搬送幅よりも内側に設けることで長手方向端面からの現像剤の滞留(付着)を防止することが可能となる。本実施形態では紙幅(297mm)から内側2.5mmの位置にヘミング曲げ先端部9aの長手方向端部を設け、紙幅から外側2.5mmの位置まで現像剤が搬送されるような搬送幅(307mm)に設定した。
【符号の説明】
【0081】
1 現像装置
2 現像槽
2a 開口
2b トナー補給口
3 現像ローラ
4 第1撹拌部材
5 第2撹拌部材
6 搬送部材
7 規制部材
7a エッジ部
8 固定部材
9 流し板
9a 先端部
9b 磁力線
13 マグネットローラ
14 スリーブ
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムの表面に形成された静電潜像を現像する現像装置において、
表面に二成分現像剤を担持した状態で回転し、前記感光体ドラム表面にトナーを供給して、前記静電潜像を現像する現像ローラと、
前記現像ローラの表面に担持された二成分現像剤の担持量を規制する規制部材と、
前記規制部材によって規制された二成分現像剤を、前記現像ローラから離間させる方向へと案内する流し板とを備え、
前記流し板は、非磁性オーステナイト系ステンレス合金の矩形状薄板で構成され、短手方向一端部が前記現像ローラの表面に対向するように設けられ、
前記短手方向一端部は、加工誘起マルテンサイト相に変態させて強磁性化され、前記現像ローラの表面に対向する領域で、反発磁界を形成するように磁場配向が施されることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記流し板は、板厚1.0〜1.5mmであり、前記短手方向一端部は、ヘミング曲げ加工されていることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記短手方向一端部は、二成分現像剤の前記現像ローラへの磁気拘束力がほぼ無くなる位置で前記現像ローラの表面に対向し、前記現像ローラの表面と前記短手方向一端部との隙間が0.5mm以上1.0mm以下となるように設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記流し板は、前記流し板の主面が、前記磁気拘束力がほぼ無くなる位置において、現像ローラの回転により二成分現像剤に加わる遠心力の印加方向と平行となるように設けられることを特徴とする請求項3記載の現像装置。
【請求項5】
前記短手方向一端部は、ヘミング加工によって折り返した部分と、この折り返した部分に重なる部分とが同じ磁極となるように、磁場配向が施されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の現像装置。
【請求項6】
前記短手方向一端部の長手方向幅は、感光体ドラムの静電潜像が形成される領域の幅以上であり、二成分現像剤が搬送される搬送幅以下としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の現像装置。
【請求項7】
表面に静電潜像が形成される感光体と、
感光体表面を帯電させる帯電装置と、
感光体表面に静電潜像を形成する露光装置と、
請求項1〜6のいずれか1つに記載の現像装置と、
感光体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
感光体表面を清浄化するクリーニング装置と、
トナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを含むことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−170294(P2011−170294A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36582(P2010−36582)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】