説明

現像装置及びカートリッジ

【課題】 長期にわたり安定した画像濃度を保ち、現像剤劣化、カブリ悪化を抑制した、高品位な画像形成を提供すること。
【解決手段】 本発明は、接触現像方式において、現像剤の色材含有量C(wt%)と、現像剤担持体における、像担持体の周速に対する周速比V(%)と、現像担持体上に搬送される現像剤搬送量M(mg/cm)との関係が下記式を満足する。
110≦V≦140
−0.71×V+257≦V×M×C≦−1.13×V+410

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式のような画像形成装置などに用いられる現像装置及びカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ・複写機等の電子写真装置における潜像の現像方式として、像担持体と現像剤担持体が非接触の状態で現像を行う非接触現像方式と、特許文献1や特許文献2に開示されているように、像担持体と現像剤が接触した状態で現像を行う接触現像方式とがあるが、接触現像方式の方が高画質なカラー画像の出力が可能であるため、接触現像方式に基づく現像装置が多々提案されている。
【0003】
図6に接触現像方式による画像形成装置の概略構成を示す。即ち、従来、画像形成装置の概略中心部には、像担持体としての、例えばドラム状とされる電子写真感光体(以下、単に「感光ドラム」と呼ぶ。)、即ち、感光ドラム1が設けられる。感光ドラム1は矢印方向Aに回転可能に支持されており、画像形成動作が開始すると、感光ドラム1の表面は帯電手段2によって一様に帯電され、その後この表面に、露光手段としての例えばLED3が画像情報に対応した露光を行い、該表面に静電潜像が形成する。この静電潜像はその後、現像装置4によって感光ドラム1に供給される現像剤により可視化され、トナー像が形成される。次いでこのトナー像は、転写手段としての例えば転写ローラ9によって感光ドラム1と転写ローラ9との間に形成される転写電界により静電的に記録材13上に転写される。その後、記録材P上の未定着トナー像は定着装置6によって熱及び圧力によって記録材13上に永久定着される。
【0004】
又、トナー像の転写を終了した感光ドラム1の表面に残留する転写残現像剤などは、例えば、ブレード状のクリーニング部材を備えるクリーニング装置11により除去され、感光ドラム1は引き続き画像形成を行える状態となる。
【0005】
上記従来の画像形成装置にて用いられる現像装置4について更に説明する。従来、現像装置4には、現像剤Tを感光ドラム1へと搬送するために、弾性体からなる現像剤担持体10を用い、これを感光ドラム1の表面に当接させて静電潜像の現像を行うものが知られている。
【0006】
現像装置4は、例えば、現像剤として一成分現像剤を用いるものであり、特に、非磁性一成分現像剤を用いる。
【0007】
現像装置4において、現像容器8内には現像剤Tが収容されている。又、現像容器8は、感光ドラム1と対向する側の一部が開口しており、この開口部から一部露出するようにして、現像剤担持体としての現像ローラ10が矢印方向Bに回転可能に支持されている。現像ローラ10は弾性体にて形成され、感光ドラム1に当接している。
【0008】
現像容器8の開口部と反対側の奥部には、現像剤を攪拌及び搬送する手段である攪拌パドル14が、矢印方向に回転可能に設けられており、現像剤を攪拌すると共に現像ローラ10と後述の供給ローラ12とが当接部近傍の領域へと現像剤を供給している。
【0009】
現像ローラ10に対する現像剤の供給及び除去手段として作用する供給ローラ12は、弾性体にて形成され、現像ローラ10に当接回転するように設けられる。攪拌パドル14によって搬送された現像剤は、供給ローラ12の矢印方向Cの回転に伴って、現像ローラ10へ供給され、その後、互いにカウンター回転にて当接する現像ローラ10と供給ローラ12との摺擦に伴い、現像剤には摩擦により電荷が付与される。ここで、カウンター回転とは、対向面(摺擦面)が互いに逆方向に進行する回転をいう。
【0010】
現像ローラ10と供給ローラ12との摺擦域にて電荷を付与された現像剤は、この帯電電荷により鏡映力を受けて現像ローラ10上へと供給される。更に、現像容器8には、現像剤層厚規制部材としての現像ブレード7が現像ローラ10に押圧して設けられており、現像ローラ10上の現像剤は、現像ローラ10の回転に伴ってブレード7との当接域を通り抜けることで層厚を規制されて現像ローラ10上に薄層状に塗布される。又、現像剤は、この時の現像ローラ10及びブレード7との摩擦によって現像に十分な電荷を付与される。
【0011】
その後、現像剤は、現像ローラ10の回転に伴って、感光ドラム1と現像ローラ10とが当接する現像領域(現像ニップ)へと搬送される。一方、感光ドラム1と現像ローラ10との間には、電源15から現像ローラ10へ電圧が印加され、感光ドラム1と現像ローラ10との間に現像電界が形成される。従って、現像ローラ10上の現像剤は、この現像電界の作用によって感光ドラム1上の静電潜像に転移し、感光ドラム1上には、トナー像が形成される。このとき、図6に示すように、例えば感光ドラム1表面に現像ローラ10が当接回転する方式を採用する現像装置の場合、潜像に選択的に付着しトナー像を形成する現像剤、即ち現像に寄与する現像剤のみならず、現像ローラ10上に担持された現像剤は感光ドラム1との摺擦を受けることになる。このように、現像ローラ10は現像ニップで感光ドラムに押圧接触された状態で、現像ローラ10に担持された現像剤は感光ドラム1と接触することになる。
【0012】
現像ローラ10上に塗布されて現像ニップへと担持搬送された現像剤のうち、現像に寄与せずに現像ローラ10上に残留した現像剤は、供給ローラ(現像剤供給及び除去手段)12による摺擦で現像ローラ10上から剥ぎ取られ、その一部は新たに供給ローラ12に供給された現像剤と共に、再び供給ローラ12によって現像ローラ10上へと供給され、残りは現像容器8内へと戻される。
【0013】
以上のような一連の動作によって、従来の画像形成装置は画像を形成する。
【特許文献1】特開昭62−223771号
【特許文献2】特開平1−239566号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、例えば上記従来の画像形成装置のように、現像剤を像担持体に接触させた状態で現像を行う構成を有する画像形成装置では、以下のような問題点がある。
【0015】
即ち、現像剤は現像容器8から現像ローラ10へ搬送される順に、供給ローラ12と現像ローラ10との間の摺擦、現像ブレード7と現像ローラ10との間で現像剤の層厚を規制される際の摺擦、及び感光ドラム1と現像ローラ10との間で現像の際の摺擦をそれぞれ受けて現像に供される。更に、現像に寄与しなかった現像剤は、現像ローラ10から剥ぎ取られて現像容器8に回収されるために、供給ローラ12による摺擦を再び受ける。
【0016】
このように、画像形成動作に伴うこれら一連の動作は、いずれも現像剤と他の部材との接触を伴うものであり、このような接触の度に現像剤は機械的負荷を繰り返し受ける。このような負荷により、現像容器8内の現像剤の一部或は全部が損傷を受け、現像剤表面に外添されたシリカなどの添加剤が現像剤粒子自体に埋め込まれたり、或は遊離したりすることによって、現像剤は現像剤として求められる流動性、帯電性などの性能が次第に劣化してくる。
【0017】
このように劣化した現像剤は、帯電性、流動性などが低下することにより、劣化していない現像剤に比べて、感光ドラム1上のトナー像を記録材13に転写する際、トナー像全てを転写されずに、感光ドラム1上に転写残現像剤として残留、つまり転写効率が悪化してしまい、均一な濃度画像を得られることが出来なくなる。さらに図7に示すように、印刷枚数が増加するとともに、現像剤劣化が進行し、その現像剤劣化進行に伴い帯電量、転写効率が悪化していく。
【0018】
また本発明者らの検討によれば、感光ドラム1の周速に対する現像ローラ10の周速の回転周速比150%における、現像ローラ10を中心とする、感光ドラム1、現像ブレード7、供給ローラ12の3種部材による現像剤劣化への影響度合いを実測により算出した。算出は、それぞれの部材の要因有り無しの状態で、それら接触部での摺擦により現像剤劣化を故意に促進させ、その転写効率の増減から比を出している。
【0019】
A:B:C=3:1:1
(A:現像ローラ10と感光ドラム1との摺擦による現像剤劣化度)
(B:現像ローラ10と現像ブレード7との摺擦による現像剤劣化度)
(C:現像ローラ10と供給ローラ12との摺擦による現像剤劣化度)
以上の結果より、現像剤劣化における主要因は、現像ローラ10と感光ドラム1との摺擦であることがわかった。
【0020】
また近年、省エネルギーの観点から、「オンデマンドプリンティング(on demand printing)」の要請に答えるべく、現像剤の低融点化、低軟化点化も著しく進んでおり、これまで以上に機械的摺擦に対して弱くなっている。
【0021】
そこで、現像剤劣化を抑制し、長期にわたり良好な画像を形成するためには、現像ローラ10と感光ドラム1との機械的摺擦を低減することが必須である。
【0022】
このような機械的摺擦を低減する手段として、現像ローラ10と感光ドラム1との回転周速差を下げることが挙げられる。しかし、現像ローラ10と感光ドラム1との周速差を下げることで、現像ローラ10からの現像剤供給量が減少し、記録材13へ到達する現像剤量が不十分となり、良好な画像濃度を実現することができなくなる可能性がある。
【0023】
またそのような問題を改善するための手段として、現像ローラ10の表面形状と、現像ブレード7と現像剤担持体10との最上流当接位置と現像ブレード自由端間の距離NEを適切にすることで、現像ローラ10上にコートされる現像剤搬送量を増加させる手段が挙げられるが、現像剤搬送量を上げすぎると、現像ブレード7との摩擦による現像剤への帯電付与が不十分になり、白地部への画像カブリが発生してしまう恐れがある。
【0024】
従って、本発明の目的は、画像形成を通して現像剤に対する負荷を低減する現像装置及びカートリッジを提供することにある。
【0025】
本発明の他の目的は、現像剤の機械的損傷又は劣化を防止し、長期にわたり画像濃度の安定した良好な画像を形成することが可能な現像装置及びカートリッジを提供することにある。
【0026】
本発明の他の目的は、像担持体の周速に対する現像剤担持体の周速を小さくしても、良好な画像濃度を実現することができる現像装置及びカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を達成するため、本発明は、色材を有する現像剤を担持する現像剤担持体であって、像担持体と接触し、前記像担持体に形成された静電像を前記現像剤で現像する現像剤担持体を有し、前記現像剤担持体は前記像担持体との接触位置において前記像担持体と同じ方向に移動する現像装置において、前記現像剤中の色材含有率をC(wt%)、前記像担持体の周速に対する前記現像剤担持体の周速比をV(%)、前記現像剤担持体上の現像剤搬送量をM(mg/cm)とすると、下記式を満足することを特徴とする現像装置である。
110≦V≦140
−0.71×V+257≦V×M×C≦−1.13×V+410
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、接触現像方式の現像装置において、長期にわたり安定した画像濃度を保ち、現像剤劣化、カブリ悪化を抑制した、高品位な画像形成を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0030】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。図1を参照して、実施の形態にかかわる現像装置及びカートリッジについて説明する。
【0031】
本例の電子写真画像形成装置100は、クリーニング機構を有する非磁性一成分接触現像方式のレーザービームプリンタである。図中の1は静電潜像担持体である感光ドラム、2が帯電手段である接触帯電部材であり、ここではローラ形状の帯電部材を示した。3は露光手段としての、画像信号に応じて感光ドラム1を露光するレーザービーム光源である。8は現像容器であり、この中には現像剤Tが収容され、現像剤供給及び除去部材である現像剤供給ローラ12、現像剤規制部材である現像ブレード7、現像剤担持体である現像ローラ10が設けられる。ここで、感光ドラム1と、現像ローラ10とが圧接して回転している。
【0032】
感光ドラム1は帯電部材2によって、一様に帯電された後、レーザービーム光源3によって露光され、静電潜像が形成される。帯電部材2は帯電用のバイアス電圧を印加する電源16に接続されている。感光ドラム1に形成された静電潜像は、現像剤Tを用いて現像装置4によって現像され、トナー像として可視化される。なお、本実施の形態では静電潜像の露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像(帯電部材による帯電極性と現像剤Tの帯電極性が同じ極性)を行っている。現像ローラ10は、電源15によって現像時に静電潜像の暗部電位と明部電位との間の現像バイアス電圧が印加される。
【0033】
可視化された感光ドラム1上のトナー像は、カセット13から搬送された記録媒体である転写材13へ、転写手段である転写ローラ9によって転写され、転写されずに感光体1上に残存した転写残現像剤はクリーニングブレード5によりかきとられ廃現像剤収容容器11に収納される。クリーニングを終えた感光ドラム1は再び接触帯電部材2によって帯電さる。これら一連の動作が連続して繰り返されることによって、画像形成が行われるものである。転写材13上のトナー像は、定着器6によって、転写材13上へ定着される。
【0034】
ここで、現像装置4は画像形成装置本体に着脱可能に設けられるカートリッジとして構成される。なお、電源15は画像形成装置本体に設けられる。カートリッジとしては、現像装置4の他に感光ドラム1も一緒に設けても良い。
【0035】
ここで、感光ドラム1は、アルミ素管上に厚さ0.3〜1.0μmの電荷発生層、及び厚さ5〜20μmの電荷輸送層を塗工された、その直径が30mmのものを用いており、周速100mm/sでA方向に回転している。
【0036】
次に、本実施の形態にかかる現像装置4について更に説明する。
【0037】
感光ドラム1と現像ニップ(接触位置)で接触し、現像剤を現像ニップへ担持搬送する現像剤担持体である現像ローラ10について説明する。
【0038】
現像ローラ10は現像ニップにおいて感光ドラム1と同じ方向であるB方向に回転し、現像ローラ10の周速は感光ドラム1の周速よりも大きく(感光ドラムの周速に対する現像ローラの周速の比が100%より大きく)、現像バイアスが印加されることによって、現像ローラ10に担持された現像剤は、感光ドラム1へ付与される。現像ローラ10は、一成分現像剤用の接触現像方式に用いられるものであれば特に限定するものではないが、好ましくは、弾性層を有する現像ローラが用いられる。現像ローラ10には、弾性ローラ表面の弾性層硬度としては、現像性と耐久性の両立の観点から20〜60度(ASKER−C)程度が好ましい。弾性ローラの材質としては公知の材質、構造のものが使用可能である。特にシリコーンゴム、ウレタンゴム、NBRの如きソリッドのゴム弾性体、あるいはこれらの発泡弾性体が好ましく使用される。また、表面に中心部と異なるコート層を有する公知の多層構造ローラも使用できる。
【0039】
現像ローラ10の表面形状としては、その表面粗度を適正に設定することが高画質及び高耐久性を両立するために好ましい。現像剤担持体の表面粗度として、たとえば算術平均粗さRa(μm)「JIS B 0601」(1994年)を0.2〜2.0となるように設定すると、高画質を実現できる。現像ローラ10の表面粗度Raが2.0を超えると、現像ローラ10上の現像剤搬送量が多くなってしまい、現像ブレード7との摩擦による現像剤への帯電付与が不十分になり、白地部への画像カブリが発生してしまう恐れがある。
【0040】
また、感光ドラム1表面に対し現像ローラへの侵入量は、安定した現像ニップを得るために、現像ローラ10の表面から中心方向へ40μm以上が好ましい。しかし、100μmより大きくすると、現像ローラ10に担持された現像剤に対する機械的ストレスが大きすぎるため、現像剤劣化が顕著になる。そこで、感光ドラム1の現像ローラ10への侵入量は40μm以上、100μm以下であることが好ましい。本実施例においては、感光ドラム1表面は、現像ローラ10の表面から中心方向へ40μm侵入させて当接させている。
【0041】
次に現像ローラ10上の現像剤の層厚を規制する規制部材7について述べる。現像ローラ10上の現像剤は、現像剤担持体表面に圧接するよう配置されている規制部材7(現像ブレード)により規制され、現像剤担持体上の現像剤層を形成する。
【0042】
現像ブレード7を現像ローラ10表面へ圧接し現像ローラ10上の層厚を規制する圧力は、現像剤のコート層厚を一定に規制し、且つ、上述の第一の摩擦帯電を適切に行うように、当接圧や形状を調節することが好ましい。
【0043】
現像ブレード7を現像ローラ10表面へ圧接し現像ローラ10上の層厚を規制する圧力は、9.8N/m(10g/cm)から58.8N/m(60g/cm)が好ましく、より好ましくは19.6N/m(20g/m)から39.2N/m(30g/m)である。このような範囲に現像ブレード7がある場合は、現像ブレード7への現像剤の現像剤融着を防ぎつつ、現像ローラ10上にコートされた現像剤に対して適当な帯電を付与できる。
【0044】
現像ブレードの材質としては、特に限定するものではなく公知の金属製板状部材、あるいは金属ブレード表面に有機層を有するものが使用できる。特に有機層としては、現像剤に対し所望の帯電を付与する摩擦帯電系列の材質を選択することが好ましく、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ナイロンの如きゴム材料か、バネ弾性を有するSUS又はリン青銅の金属薄板を基体とし、現像ローラ10への当接面側にゴム材料を接着したもの等からなっている。また、当接方向としては、当接部に対してブレード先端側が現像ローラ10の回転方向上流側に位置するいわゆるカウンター方向になっている。本実施の形態において弾性ブレード7は、リン青銅の金属板を基体とし、その現像ローラ10への当接面に厚さ0.5mmの板状のナイロンゴムを接着した構成になっている。
【0045】
現像剤供給ローラ12は、現像ブレード7と現像ローラ10表面との当接部に対し、現像ローラ10の回転方向に対して上流側に当接され、かつC方向に回転可能に支持されている。供給ローラ12の回転方向は、現像後の現像ローラ10上の現像剤を剥ぎ取り能力向上のために、現像ローラ10との接触部において逆方向であることが望ましい。供給ローラ12の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や芯金上にレーヨン、ナイロン等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ10に対する現像剤の供給及び未現像現像剤の剥ぎ取りの点から好ましい。
【0046】
供給ローラ12は、本実施の形態においては、芯金上にポリウレタンフォームを設けた直径12mmの弾性ローラを用いた。この弾性ローラ12の現像ローラ10に対する当接幅としては、1〜8mmが有効で、本実施の形態おいては、当接幅を3mmに設定し、回転駆動させた。
【0047】
現像容器8の開口部と反対側の奥部には、現像剤を攪拌及び搬送する手段である攪拌パドル14が、矢印D方向に回転可能に設けられており、現像剤を攪拌すると共に現像ローラ10と供給ローラ12とが当接部近傍の領域へと現像剤を供給している。
【0048】
さらに実施例において、転写後の感光ドラム1表面をブレードクリーニングする機構を有するものであるが、ブレードクリーニングのクリーニング部材としては、公知のブレードが使用できる。
【0049】
また、ブレードクリーニング後の感光体の帯電方法としては、公知の接触あるいは非接触の帯電方式が使用可能であるが、帯電時にオゾンの発生を抑制する効果のある接触帯電方式がより好ましい。
【0050】
次に、本発明の重要な特徴である、像担持体と現像剤担持体との回転周速比について述べる。
【0051】
現像剤の劣化を防ぐ手段として、現像ローラ10と感光ドラム1との回転周速比を適切に設定することが重要である。図2に感光ドラム1の周速に対する現像ローラ10の周速の比である回転周速比と、印刷枚数15,000枚時における転写効率との関係を示す。現像剤劣化を抑制し、均一な濃度画像を得るためには、転写効率は90%以上であることが必要であり、図2の結果から感光ドラム1の周速に対する現像ローラの周速の回転周速比を140%より大きい周速差に設定すると、接触部分の機械的ストレスが増大し、転写効率が90%より低い値になる。また図3に、感光ドラム1の周速に対する現像ローラ10の周速の回転周速比(%)と白地部への画像カブリ(%)との関係を示す。これにより、感光ドラム1の周速に対する現像ローラ10の周速の回転周速比を110%より小さい周速比に設定すると、カブリが悪化することがわかる。
【0052】
従って、現像剤劣化、カブリの抑制を実現するには、感光ドラム1の周速に対する現像ローラ10の周速の比である回転周速比は110%以上、140%以下に設定するのが良い。
【0053】
しかし、以上の回転周速比設定では現像ローラ10からの現像剤供給量が少なく、記録材13へ到達する現像剤量が不十分となり、十分な画像濃度を実現することができなくなる可能性がある。また、そのような問題を改善するための手段として、現像ローラ10の表面形状と、現像ローラ10と現像ブレード7の当接位置のうち最上流当接位置と現像ブレード自由端との間の距離NEを調整することで、現像ローラ10にコートされる現像剤搬送量を増加させる方法が考えられる。
【0054】
以上のように現像ローラ10の表面形状と上記距離NEを調整し、現像ブレード7によって現像ローラ10上にコートされる現像剤搬送量(mg/cm)を変化させたときの白地部への画像カブリ(%)の関係を図4に示す。カブリの測定は東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを用いて測定し、下式より算出した。現像剤搬送量(mg/cm)は、現像ニップ部へ搬送される現像剤量である。
カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−サンプル非画像部の反射率(%)
【0055】
図4より、現像剤搬送量(mg/cm)が増すことで、カブリ(%)の悪化が見られるようになる。また、図4の破線Aに示した結果は、現像剤劣化の少ない印刷初期における状態であり、図4の破線Bに示した結果は、印刷15,000枚時における状態である。これより、長期にわたる印刷で現像剤の劣化によりカブリがさらに悪化することがわかる。以上より、現像ローラ10にコートされる現像剤搬送量をあまり増加させることは好ましくない。現像剤搬送量を0.5mg/cm以下にすることで現像ローラ10表面の現像剤の搬送能力を抑制し、該現像剤担持体上の現像剤層を薄層化すると共に、現像ブレード7と現像剤の摩擦帯電を十分にすることで現像剤の帯電性も改善され、画質が向上する。一方、現像剤搬送量を0.2mg/cmよりも小さくなると、現像剤コート量の調整が難しくなる。以上を総合して、現像ローラ10上の良好な現像剤搬送量として0.2〜0.5mg/cm、現像ローラ10上の現像剤の層厚として5〜15μmの範囲の値が得られるように設定している。
【0056】
良好な画像濃度を実現するもう1つの手段として、現像剤自身の着色力にも着目した。しかし、現像剤の着色力を上げすぎると、ある画像濃度を実現するための現像剤絶対量を減らすことが可能となるが、減りすぎによる印刷画像の粒状性を悪化させる恐れがある。さらにフルカラー現像剤において、着色材の特性が色や材質によってそれぞれ異なり、その違いが現像剤の帯電特性の差となって現れてしまうため、着色力を上げすぎることは、色による帯電特性差をさらに広げてしまう恐れがある。その色差がフルカラー用プリンタにおいて全色同じ現像装置設定を阻害し、色毎のバイアス設定を強いられる恐れがある。
【0057】
以上より、現像剤劣化、カブリ発生を抑制しつつ、良好な画像濃度を実現するためには、現像剤の色材含有量C(wt%)、現像ローラ10と感光ドラム1との回転周速比V(%)、現像ローラ上に搬送される現像剤搬送量M(mg/cm)をそれぞれ適切な値に設定することが必要となる。
【0058】
以下を踏まえて、現像剤について、実施例及び比較例を挙げて、具体的に説明する。
【0059】
なお、実施例中、及び、比較例中の部および%は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0060】
<トナー実施例1>
先ず、下記の手順によって重合法現像剤を作製した。60℃に加温したイオン交換水900gに、リン酸マグネシウム3質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、10,000rpmにて撹拌し、水系媒体を作成した。また、下記処方をTK式ホモミキサー(特殊機化工業製)に投入し、60℃に加温した後、用いて、9,000rpmにて攪拌し、溶解、分散した。結着樹脂としてはスチレン樹脂を用いた。
【0061】
・スチレン 160質量部
・n−ブチルアクリレート 40質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3(色材) 15重量部
・サリチル酸アルミニウム化合物 4質量部
(ボントロンE−84:オリエント化学社製)
・ポリエステル樹脂 20質量部
(エチレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物、Tg=66℃、Mw=9800、Mn=6000)
・パラフィンワックス(DSCのメインピーク67℃) 30質量部
・ジビニルベンゼン 0.6質量部
これに重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃、窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサーを用いて8,000rpmで攪拌し、造粒した。その後、プロペラ式攪拌装置に移して攪拌しつつ、2時間かけて70℃に昇温し、更に4時間後、昇温速度40℃/Hrで80℃まで昇温し、80℃で5時間反応を行い、重合体粒子を製造した。重合反応終了後、該粒子を含むスラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してシアントナーの母体粒子1を得た。上記シアントナー母体粒子100質量部に対して、シリカ(アエロジル社製R976)1.3質量部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で混合して本発明の現像剤を得た。
【0062】
<トナー実施例2>
上記実施例1のC.I.ピグメントブルー15:3のみを、
・C.I.ピグメントイエロー17(色材) 18重量部
に変更して現像剤を得た。
【0063】
<トナー実施例3>
上記実施例1のC.I.ピグメントブルー15:3のみを、
・C.I.ピグメントレッド81(色材) 13重量部
に変更して現像剤を得た。
【0064】
<トナー比較例1>
上記実施例1のC.I.ピグメントブルー15:3のみを、
・C.I.ピグメントブルー15:3(色材) 11重量部
に変更して現像剤を得た。
【0065】
そこで、着色剤種、色材含有量C(wt%)の異なる上記の実施例1〜3と比較例1の現像剤を用いて、感光ドラム1に対する現像ローラ10の回転周速比V(%)、現像ローラ上に搬送される現像剤搬送量M(mg/cm)をそれぞれ変更し、それら設定でA4サイズの転写材に画像形成を15,000枚印刷した段階での画像評価を行った。このときの結果を、V×M×Cと現像ローラ10の回転周速比V(%)との関係で図5に示す。画像の評価は転写効率、カブリ悪化を数値化し相対比較結果とした。
【0066】
これにより、回転周速比V(%)は前述の通り110%より小さい周速ではカブリ悪化、140%より大きい周速では転写効率悪化が見られた。また、V×M×C値は、−0.71×V+257(図5の四角形で囲まれた下の線)より小さい値では、着色力不足、もしくは現像剤搬送量不足による画像濃度不良が発生した。一方、−1.13×V+410(図5の四角形で囲まれた上の線)より大きい値では、着色力の上げすぎによる印刷画像の粒状性悪化や、現像剤搬送量の上げすぎによるカブリ悪化が発生した。
【0067】
従って、画像形成を通して現像剤に対する摺擦域にて負荷を低減し、現像剤の機械的損傷又は劣化を防止し、長期にわたり安定した画像濃度、カブリのない良好な画像を形成するためには、色材含有量C(wt%)、感光ドラム1に対する現像ローラ10の回転周速比V(%)、現像ローラ上に搬送される現像剤搬送量M(mg/cm)との関係が下記式(1)及び(2)を満足することで実現できる。
110≦V≦140・・・(1)
−0.71×V+257≦V×M×C≦−1.13×V+410・・・(2)
【0068】
以上より上記設定を満たす現像剤、現像装置を用いることで、長期にわたり安定した画像濃度を保ち、現像剤劣化、カブリ悪化のない高品位な画像形成を提供することができる。
【0069】
上記実施例以外の着色材を用いた際、用いる着色材の種類によって、現像剤の帯電特性に差が生じる可能性があるが、上記範囲を満たした色材含有量C(wt%)、現像ローラ10と感光ドラム1との回転周速比V(%)、現像ローラ上に搬送される現像剤搬送量M(mg/cm)をその特性ごとに設定すれば、着色剤種に左右されず、所望の結果が得られた。
【0070】
なお、図1の画像形成装置は、モノカラーの例を示しているが、フルカラーの画像形成装置とすることも可能である。この場合には、図1に示したような、感光ドラムと感光ドラムにトナー像を形成する手段と感光ドラムから転写材へトナー像を転写する手段とをそれぞれ3つ(マゼンタ、シアン、イエロー用)又は4つ(マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック用)設け、転写材へフルカラートナー像を転写した後で、定着器によって転写材へトナー像を定着すれば良い。トナーはそれぞれ実施例1〜3のものを用いることができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態にかかる現像装置を用いた画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる現像装置における感光ドラムに対する現像ローラの回転周速比と印刷枚数15,000枚時の転写効率との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態にかかる現像装置における感光ドラムに対する現像ローラの回転周速比と紙上カブリとの関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態にかかる現像装置における現像剤担持体上の現像剤搬送量と紙上カブリとの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態にかかる現像装置における感光ドラムに対する現像ローラの回転周速比VとV×M×Cの関係を示すグラフである。
【図6】従来の画像形成装置の概略構成図である。
【図7】従来の画像形成装置における印刷枚数と転写効率の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0072】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ(帯電手段)
3 露光手段
4 現像装置
6 定着器
7 規制部材
8 現像容器
9 転写ローラ(転写手段)
10 現像剤担持体
12 供給ローラ
13 転写材
16 帯電用高圧電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材を有する現像剤を担持する現像剤担持体であって、像担持体と接触し、前記像担持体に形成された静電像を前記現像剤で現像する現像剤担持体を有し、前記現像剤担持体は前記像担持体との接触位置において前記像担持体と同じ方向に移動する現像装置において、
前記現像剤中の色材含有率をC(wt%)、前記像担持体の周速に対する前記現像剤担持体の周速比をV(%)、前記現像剤担持体上の現像剤搬送量をM(mg/cm)とすると、下記式を満足することを特徴とする現像装置。
110≦V≦140
−0.71×V+257≦V×M×C≦−1.13×V+410
【請求項2】
前記現像剤は、非磁性1成分現像剤であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤の色材が、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのいずれかの色材であることを特徴とする請求項1又は2の現像装置。
【請求項4】
画像形成装置本体に着脱可能であって、請求項1乃至3のいずれかの現像装置を備えることを特徴とするカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−343659(P2006−343659A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171007(P2005−171007)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】