説明

現像装置及びプロセスカートリッジ

【課題】 現像剤供給ローラに対して過剰な現像剤が付着することがなく、現像ローラ上の現像剤を十分に帯電することができ、現像剤の劣化を低減する。
【解決手段】 現像剤供給ローラの弾性層に押圧する押圧部材を有し、この押圧部材が現像剤供給ローラに接触することで現像剤供給ローラに働く回転トルクは、現像ローラが現像剤供給ローラに接触することで現像剤供給ローラに働く回転トルクよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式を利用したレーザプリンタ、複写機、ファクシミリのような画像形成装置などに用いることができる現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を利用した画像形成装置では、像担持体である電子写真感光体(感光体)の表面が帯電手段で帯電され、その後この感光体の表面に光が照射されることによって、感光体の表面上に静電像(潜像)が形成される。この静電像は、現像装置から供給される現像剤であるトナーによりトナー像として現像される。このトナー像は、転写手段で感光体から転写材(記録用紙、OHPシート、布等)に転写された後、定着手段によって定着処理を受ける。
【0003】
静電像をトナー像とするための現像方法として、例えば一成分現像方式が提案され、実用化されている。一成分現像方式においては、多くは、画像形成装置において現像剤を担持して回転し感光体へと搬送する現像剤担持体を、回転する感光体に対して適当な相対速度差で押圧または接触させることで、静電像を現像している。
【0004】
そして、現像剤として、実質的に樹脂トナー粒子(トナー)のみから成る一成分現像剤が使用される。またトナーの帯電性の安定化や流動性の調整などのために、トナー粒子には外添剤(補助粒子)が加えられることがある。またトナー内部にはワックスを内包している。これはトナーを転写材に定着させる時、定着オイルによる記録紙等の記録媒体(転写材)のぎらつきを防止するためである。このように定着オイルをなくす代わりトナー内部にワックスを内包させることで定着装置と転写材を離型させる役目も果たす。非磁性一成分現像剤を用いる現像方法は、現像剤に磁性材料が不要であり、マグネットを設けることも不要であり、装置の簡略化及び小型化が容易である。また、非磁性一成分現像剤を使用する現像方法は、色味が良好であることからフルカラー画像形成装置への応用が容易である等の多くの利点を有している。
【0005】
図12に従来の現像装置の概略構成を示す。
【0006】
図12において、現像剤担持体としては、弾性及び導電性を有する現像ローラ21を使用している。即ち、像担持体に押圧もしくは接触させて現像を行うため、特に像担持体が剛体である場合、これを傷つけることを避けるために、現像ローラ21の表面を弾性体により構成する。また、現像ローラ21表面もしくは表面近傍に導電層を設け、現像バイアスを印加して使用することもできる。
【0007】
更に、トナーへの電荷付与及び均一なトナー薄層の形成を目的とし、現像ローラに現像剤規制部材として現像ブレード22を当接させる。この場合、現像ブレード22は、ブレード支持板金に支持され、自由端側の先端近傍を現像ローラの外周面に面接触するように当接するゴム、またはバネ弾性を有する金属薄板の弾性ブレードを用いることが可能である。現像ブレード22が現像容器の開口部に設置されない場合は、次に説明する供給ローラ23の現像容器内部において下流側に設けられる。
【0008】
そして、現像容器内部にて、供給ローラ23が現像ローラ21に当接し、回転駆動する。供給ローラ23はスポンジローラであり、現像ローラ21へトナーの供給、且つ、現像されずに現像ローラ21上に残ったトナーの剥ぎ取りを目的とする。
【0009】
上述した構成の現像装置において、現像ローラ21上に非磁性トナーの薄層を良好に形成することができ、感光ドラム24上の静電潜像を良好に現像することができた。なお、過剰なトナーが供給ローラに付着することなく、トナーを十分に帯電させるために供給ローラに規制部材を設ける特許文献1がある。
【特許文献1】特開2004−4731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来例では高画質の画像を得るため、供給ローラに規制部材を設けて過剰なトナーを供給ローラに付着することを防止していた。これによりトナーを十分に帯電させることができる。その結果、現像ローラ上のトナーは帯電量が多くなり高画質な画像を得ることができる。しかしながら、規制部材により供給ローラ上のトナー量が規制されるため、長期間の使用によりトナーの流動性等が悪化する。これにより、供給ローラのトナー搬送量が低下し、トナー搬送量が低下してくると、濃度が薄くなり、要求される画像に対して画像追従性も悪化してしまった。また、装置が連続的に使用された場合には、現像ローラと供給ローラの接触部における摺擦力や熱に加え、供給ローラと規制部材の接触における摺擦力や熱が発生するためトナー劣化が進む。トナー劣化とは、所謂、トナーの外周部に付着している外添剤がトナー中に埋め込まれたり、外添剤がトナーから遊離したりすることである。その結果、トナーの単位重量当たりの帯電電荷量の低下や凝集度が高まり、ゴースト等の画像欠陥が生じることである。
【0011】
特に、現像剤担持体である現像ローラを感光体に接触させて現像を行う接触現像方式の場合、現像領域においても現像剤が摺擦を受けるため、トナー劣化がより生じやすくなる。
【0012】
本発明の目的は、供給ローラに対して過剰な現像剤が付着することがない現像装置を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、現像剤担持体上の現像剤を十分に帯電することができる現像装置を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、現像剤の劣化を低減する現像装置を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、長期間使用しても安定した画像濃度を維持できるように供給ローラの現像剤の搬送量を適性に行える現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、像担持体に接触して設けられ、前記像担持体に形成された静電像を現像剤で現像するために現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に接触して設けられ、前記現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給ローラであって、その表面に複数のセル開口部が設けられた弾性層を備える現像剤供給ローラと、を有する現像装置において、前記弾性層に押圧する押圧部材を有し、この押圧部材が前記現像剤供給ローラに接触することで前記現像剤供給ローラに働く回転トルクは、前記現像剤担持体が前記現像剤供給ローラに接触することで前記現像剤供給ローラに働く回転トルクよりも大きいことを特徴とする現像装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、供給ローラのセル開口部内に現像剤を強制的に吸収させ、安定して現像剤担持体へ現像剤が搬送され、長期間使用しても、高画像濃度、現像剤追従性を維持できる。また、強制的に供給ローラ内に現像剤を含ませ、現像剤担持体への現像剤供給量を増やすため、従来よりも供給ローラの働きが増し、供給ローラを小型化にすることが可能である。そして、現像剤担持体と供給ローラ間の侵入量を従来よりも抑え現像剤へのストレスを少なくすることもできるので、現像剤劣化を抑制させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施形態1)
以下、本発明に係る現像装置を図面に則して更に詳しく説明する。
図1は本発明を適用した画像形成装置の概略断面図、図2は現像装置の概略断面図である。
【0019】
まず、図1を参照して、本発明に従って構成される現像装置が適用される画像形成装置1の全体構成及び動作について説明する。
【0020】
本実施例では、画像形成装置1はレーザビームプリンタである。レーザビームプリンタは、画像形成装置の装置本体に対して通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ、原稿読み取り装置等からの画像情報信号に従って、電子写真方式を利用して転写材(記録用紙、OHPシート、布等)に画像を形成して出力する。又、本実施例の画像形成装置1は、非磁性一成分現像剤を使用する現像装置4を備えている。
【0021】
図1において像担持体としてのドラム状の電子写真感光体(以下、感光ドラム2という)は図示矢印方向に回転する。回転する感光ドラム2の表面は、帯電手段としての帯電ローラ3によって所定の極性(本実施例では負極性)・電位に帯電される。その後、露光手段であるレーザー光学装置5aからのレーザー光5により露光され、その表面に静電像(潜像)が形成される。感光ドラム2には現像剤担持体が所定の侵入量をもって押圧、接触して設けられ、静電潜像を、現像剤像(トナー像)として可視化する。図1において感光ドラム2、帯電ローラ3、現像装置4は、画像形成装置1の本体に着脱可能なプロセスカートリッジに設けられる。カートリッジとしては、感光ドラム2を備えず、現像装置4だけで構成されても良い。
【0022】
可視化された感光ドラム2上のトナー像は転写ローラ7によって転写材としての記録媒体に転写される。転写されずに感光ドラム2に残存した転写残トナーは、クリーニング手段を構成するクリーニング部材であるクリーニングブレード8により掻き取られ、廃トナー容器に収納される。クリーニングされた感光ドラム2は上述作用を繰り返し、画像形成を行う。
【0023】
一方、トナー像が転写された記録媒体は、定着装置9によって加熱され、トナー像は記録媒体に溶融定着される。定着された記録媒体は機外に排紙される。
【0024】
この画像形成装置に備えられた現像装置について、図2に基づき説明する。
【0025】
図2において、現像装置4は、現像剤として負帯電性の非磁性一成分トナーを収容する現像剤収容室と、現像室との2つからなる現像容器で構成される。現像容器の長手方向に延在する現像室の開口部には、感光ドラム2と接触配置された現像剤担持体としての現像ローラ11を備え、現像ローラ11は感光ドラム2上の静電潜像を現像、可視化する。
【0026】
現像剤としては、非磁性一成分現像剤が使用されている。トナー内部にはワックスを内包している。これはトナーを転写材に定着させる時、定着オイルによる記録紙等の記録媒体(転写材)のぎらつきを防止するためである。定着オイルをなくす代わりにトナー内部にワックスを内包させることで定着装置9と転写材を離型させる役目も果たす。また高画質化をはかるために、転写効率を向上させるため、流動性付与剤としてシリカを外添している。トナー表面を外添剤によって被膜することで、負性帯電性能の向上、且つ、トナー間に微小な隙間を設けることによる流動性の向上を達成している。本実施例に使用される外添剤としては、たとえば、以下のようなものが用いられる。金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化錫、酸化亜鉛など)・窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)・金属塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)・脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなど)・カーボンブラック・シリカなどである。これらの外添剤は、トナー粒子100重量部に対し、0.01〜10重量部が用いられ、好ましくは、0.05〜5重量部が用いられる。これらの外添剤は、単独で用いても、又、複数併用しても良い。それぞれ疎水化処理を行ったものがより好ましい。外添剤の添加量が0.01重部未満の場合には、一成分系現像剤の流動性が悪化し、転写及び現像の効率が低下してしまい、画像の濃度ムラや画像部周辺にトナーが飛び散ってしまう、所謂飛び散りが発生する。一方、外添剤の量が10重量部を超える場合には、過多な外添剤が感光ドラム2や現像ローラ11に付着してトナーへの帯電性を悪化させたり、画像を乱したりする。また、このようなトナーの外形の状態は、画像解析装置で測定される球形度を表す形状係数SF−1の値が100〜160であることが好ましく、形状係数SF−2の値は100〜140であるのが好ましい。これらの範囲内であれば、トナーは、球形状で且つ平滑な表面形状を有する。なお、形状係数SF−1、SF−2を求めるために、日立製作所製FE−SEM(S−800)を用い倍率500倍に拡大したトナー像を100個、無作為にサンプリングした。そして、その画像情報はインターフェースを介してニコレ社製画像解析装置(Luzex3)に導入し解析を行い以下に定義されるSF−1、SF−2の式に基づき得られた値である。
SF−1={(MXLNG)/AREA}×(π/4)×100
SF−2={(PERI)/AREA}×(1/4π)×100
AREA:トナー投影面積、MXLNG:絶対最大長、PERI:周長
【0027】
なお、形状係数と、実際の形状との対応関係は、SF−1はトナー粒子の丸さの度合いを示し、数値が大きくなるに従い、球形から徐々に不定形になることに対応する。また、SF−2はトナー粒子の凸凹度合いを示し、同様に、数値が大きくなるに従い、トナー表面の凸凹が顕著となることに対応するものである。これにより、トナーは良好な転がり性を有し、摩擦帯電において、均一な帯電が行われやすい。そのため、画像かぶりの原因となる、未帯電ないしは反転トナーの量を低減しやすく有利である。また、トナーが均一に帯電されることで、電界に対する一様な追従性に優れるため、良好な現像性能及び転写性能が発揮される。従って、高画質化にあたって、微小な静電潜像の再現が要求される場合においても有利であり、良好な転写性能によって残トナー量も少なくすることができる。
【0028】
弾性を有する現像ローラ11は、上記開口部にて図2に示す右略半周を現像容器10に突入し、左略半周面を現像容器10から露出して横設される。この現像容器10から露出した面は、現像装置4の左方に位置する感光ドラム2に所定の侵入量となるように押圧、接触するようにするように対向している。
【0029】
像担持体としての感光ドラム2はアルミシリンダーを基体とし、その周囲に所定厚みの感光層を塗工した剛体である。画像形成時において画像工程に至る前に、帯電工程において帯電される。帯電した感光ドラム2の表面は、露光手段(画像書き込み手段)としてのレーザスキャナによって画像情報信号に応じて走査露光される。これにより、感光ドラム2上に静電像が形成される。感光ドラム2に形成された静電像は、次いで、現像装置4によって現像剤であるトナーが供給されて、可視像、即ち、トナー像として可視化される。
【0030】
現像剤担持体としての現像ローラ11は、トナーを担持して感光ドラム2の現像領域に搬送する。現像ローラ11は、感光ドラム2に対して現像領域で接触して配置され、図示矢印A方向に回転する。
【0031】
本実施例では、現像ローラ11は、外径6mmの円筒状金属棒(導電性芯金)の外周に、弾性層を約3mm積層して外径12mmである。弾性層としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の一般的なゴムが使用可能である。尚、現像ローラ11としては、弾性層自身を最表層としてもよいが、トナーに与える帯電性を考慮して、弾性層と異なる材料にて表層を形成してもよい。負帯電性トナーを用いる場合には、表層としてウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂等が使用可能である。又、正帯電性のトナーを用いる場合には、表層としてフッ素樹脂等が使用可能である。
【0032】
本実施例においては、現像ローラ11として、シリコーンゴムから成る弾性層に、表層としてウレタン樹脂を20μm塗工し、表面粗さが十点平均粗さRz(JIS B0601)5〜8μm、電気抵抗値1.0×10〜2.0×10Ωであるローラを使用した。尚、表面粗さの測定には小坂研究所の表面粗さ試験機「SE−30H」を使用した。現像ローラ11の電気抵抗値は、次のようにして測定した。つまり、外径30mmのステンレス円筒部材と現像ローラ11を接触対向させて、現像ローラ11の芯金とステンレス円筒部材の間に100Vの直流電圧を印加した場合の電流値から、現像ローラ11の電気抵抗値を算出した。
【0033】
又、現像ローラ11の導電性芯金には、現像バイアス印加手段(電源)15が接続されている。現像動作時には、この現像バイアス印加手段から現像ローラ11に印加される現像バイアスによる電界の作用で、現像ローラ11上のトナーは、静電像に応じて感光ドラム2上に供給される。本実施例では、感光ドラム2上の帯電電荷が露光により減衰した部分(明部)に感光ドラム2の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを付着させる。
【0034】
現像ローラ11の上方には、現像ローラ11上の現像剤の層厚を規制するために、弾性を有する規制部材としての現像ブレード12が取り付けられている。現像ブレード12はステンレス鋼、リン青銅等の金属性薄板や安定した規制力とトナーへの安定した(負)帯電付与性のあるポリアミドエストラマー(TPAE)などの樹脂で構成する。金属性薄板やポリアミドエラストマーは、支持板金に支持され、自由端側の先端近傍を現像ローラ11の外周面に面接触にて当接するように設けられている。このときの現像ローラ11に対する接触圧は線圧約10〜45g/cmが好適である。10g/cm以下になると、トナーに対して適切な帯電付与ができず、非画像部にトナーが付着する「かぶり」となって画質を低下させる。45g/cm以上になると、圧力等によりトナーに混合されている外添剤がトナー表面から剥離しやすくなり、トナーを劣化させ、トナーの帯電性が低下していくことになる。線圧の測定方法としては、引き抜き板として長さ100mm×幅15mm×厚さ30μmのステンレス薄板と、挟み板として長さ180mm×幅30mm×厚さ30μmのステンレス薄板の長さを半分にするように折ったものを用意した。そして、挟み板の間に引き抜き板を挿入し、挟み板を現像ローラ11と現像ブレード12の間に挿入する。その状態でバネばかり等で引き抜き圧を一定速度で引き抜き、その時のバネばかりの値(単位:g)を読む。バネばかりの値を1.5で除算して、単位をg/cmにした場合の線圧が求められる。本実施例では、安定した加圧力の得られるリン青銅版表面にポリアミドエラストマー(TPAE)を貼り付けた構造等のものを用いたが、現像ブレード12にバネ弾性を有する金属薄板等の弾性導電性薄板を使用してもよい。当接方向としては、当接部に対して自由端側の先端が、現像ローラ11の回転方向上流側に位置するカウンタ方向となっている。現像ブレード12の支持板金への支持方法は特に限定されるものではないが、ビス等による締め付けあるいは溶接等である。そして、現像ブレード12の平均表面粗さRaは0.2μm〜0.3μm程度のものを使用した。また、本実施例では現像ローラ11と現像ブレード12間の電位差はない。しかしながら、ベタ黒画像濃度に有利な方向に作用させるために、リン青銅等の金属性薄板の現像ブレード12に対して、現像ローラ11よりも、トナーの正規帯電極性と同じ極性側のブレードバイアスを印加してもよい。
【0035】
現像ローラ11の下方には、現像ローラ11へトナーを供給する供給ローラ13が当接され、回転可能に支持されて現像ローラ11と同一方向(矢印B)に回転駆動する。供給ローラ13は現像ローラ11へのトナーの供給、かつ現像されずに現像ローラ11上に残ったトナーの剥ぎ取りを目的とする。供給ローラ13は表面が内部から連通した複数のセル開口部を有する発泡弾性体の材料である。それぞれの発泡セルどうしが連なって穴のようになった連泡の方が、供給ローラ13内部に多くのトナーを含むことができるため有利である。本実施例においては連泡性ウレタンスポンジを使用した。また、発泡弾性部材として、シリコンゴム、エチレンプロピレエンゴム(EPDMゴム)等を発泡させた発泡ゴム等を使用してもよい。
【0036】
供給ローラ13のセル開口径は10μm〜1000μmであることが好ましく、200μm〜600μmであることがより好ましい。セル開口径が10μm未満であるとスポンジの目が小さすぎて、供給ローラ13内にトナーが入りづらい。また1000μmよりも大きいセル開口径であると、スポンジの隔壁と現像ローラ11表面との接触機会が減るため、供給ローラ13の剥ぎ取り作用が低下してしまう。
【0037】
また、全表面積に対する開口したセル部分の割合は10〜90%であることが好ましく、30〜80%であることがより好ましい。この下限値以下のセルの割合であると、十分なトナーを供給ローラ13内に含むことができない。またこの上限値以上であるとセル壁が減り、トナーが供給ローラ13内に詰まることによりスポンジ層の圧縮、回復の動きが不十分となってしまう。発泡弾性体の有する諸物性の1つに通気量がある。この通気量は、発泡弾性体内部を流れる空気の流れ度合いを示すもので、測定方法の規格としてJIS L 1096が規定されている。本実施例では通気量は10〜60cc/cm/秒であることが望ましい。通気量の値がこれよりも大きくなってしまうと、供給ローラ13内でトナーは速やかに移動できるが、供給ローラ13内に多くのトナーを含み過ぎることにより、供給ローラ13が硬化し、トナー劣化して十分な摩擦帯電電荷が得られない。結果、画像濃度も画像一様性も悪化してしまう。逆に、通気量の値がこれよりも小さくなってしまうと、供給ローラ13内でのトナーの動きが小さくなり、供給ローラ13内からのトナー供給量が減ることにより濃度低下を招いてしまう。
【0038】
供給ローラ13の抵抗は10Ω〜10Ωの半導電性のスポンジであることが好ましく、本実施例で使用した供給ローラ13の抵抗値は10Ω程度のものを使用した。供給ローラ13の回転軸である芯金には、感光ドラム2上の静電潜像を現像する際、供給ローラ13から現像ローラ11方向へトナーが供給されるように、供給ローラ13バイアス印加手段14である電源によりバイアスを印加した。本実施例では現像ローラ11の芯金には−300V、供給ローラ13の芯金には−500Vの電圧を印加しているため、現像ローラ11に対して、供給ローラ13よりも200Vマイナス側に印加されている。つまり現像ローラ11に対して、供給ローラ13よりも、トナー正規の帯電極性(マイナス)側に印加している。
【0039】
供給ローラ13のスポンジ層の硬さについては、以下の条件で設定するのが良い。芯金の径を5mmとしスポンジ層の外形が円筒形でその外径を16mmとした場合、外形12mm、長さ50mmのアルミ製円柱17(現像ローラ11の外形と同じものを使用)を、供給ローラ13の芯金の中心軸とこの円柱の長さ方向中心線とが平行になるように供給ローラ13のスポンジ層に接触させ、1.0mm/secの速度で、1.0mm圧縮する(図3)。この条件において、供給ローラ13によってアルミ製円柱の垂直方向にかかる荷重が0.5Nから4.0Nであるように、供給ローラ13のスポンジ層の硬さを設定することが好ましく、より好ましくは、1.0N〜2.0Nである。この範囲以下であると、現像で使用されなかった現像ローラ11上のトナー剥ぎ取り不良が生じ、ゴースト等の画像欠陥が生じる。この範囲以上であると、供給ローラ13の部材との接触部分で摩擦力が大きくなり、著しいトナー劣化が生じて画像欠陥が生じてしまう。本実施例では供給ローラ13の硬さは1.5Nのものを使用した。
【0040】
供給ローラ13には、押圧部材としての突起形状の突起部材16が押圧接触している。この突起部材16の供給ローラ13に対する侵入量は、突起部材16が供給ローラ13に接触することで供給ローラ13に働く回転トルクを、供給ローラ13が現像ローラ11と接触することで供給ローラ13に働く回転トルクよりも大きくなるような値とする。こうすることで供給ローラ13が現像ローラ11とのニップ部で受けるよりも大きい力を突起部材16とのニップ部で受け、スポンジが圧縮されるようになる。また、供給ローラ13に突起部材が接触することで接触摩擦力が大きくなり、供給ローラ13に働く回転トルクが大きくなるとトナー劣化が進んでしまう。そこで現像ローラ11と突起部材16に接触する供給ローラ13の全回転トルクは従来構成(0.015N.m)よりも小さくすることが望ましい。
【0041】
本実施例では外径12mmの現像ローラ11に、外径16mmの供給ローラ13が250μm侵入し、供給ローラ13には長手方向に渡って当接する突起部材16が500μm侵入している。突起部材16は厚さ3mm、幅3mmである直方体の発泡弾性部材であるシリコンゴムを使用した。これ以外にも発泡弾性部材として、ウレタンスポンジ、エチレンプロピレンゴム(EPDMゴム)等を発泡させた発泡ゴム等を使用してもよい。この侵入量において、以下の条件で供給ローラ13の回転トルクを測定した。即ち、現像ローラ11の周速が250mm/sec、供給ローラ13の周速が220mm/sec、現像ローラ11と供給ローラ13が非接触時の回転トルクをゼロ基準とした時(以下で示す回転トルクはすべてこれを基準とする)のものである。これにより、供給ローラ13が現像ローラ11の接触において受ける回転トルク(図4)は0.0015N.m、供給ローラ13が突起部材16の接触において受ける回転トルク(図5)は0.0065N.mであった。突起部材16によって受ける供給ローラ13の回転トルクの方が、現像ローラ11との接触によって受ける供給ローラ13の回転トルクよりも大きい値になるようにしている。よって、供給ローラ13にかかる全回転トルクは0.008N.mであり、従来の構成の場合(現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量が1.0mmの場合)に供給ローラ13にかかっていた全回転トルク0.015N.mよりも小さい値である。これにより従来構成よりも供給ローラ13による接触摩擦で生じるトナー劣化を抑えることができる。ここでは現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量は250μmとした。しかしながら、この値よりも小さくすると、供給ローラ13と現像ローラ11の接触摩擦が小さすぎ、現像で使用されなかった現像ローラ11上のトナーが剥ぎ取られず、ゴースト等の画像不良が生じてしまう。一方、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量を500μmよりも大きくしていくと、突起部材16との接触で受ける供給ローラ13の回転トルクの方が、現像ローラ11との接触で受ける回転トルクよりも小さい値になってしまう。このように、突起部材16との接触で受ける供給ローラ13の回転トルクの方が、現像ローラ11との接触で受ける回転トルクよりも小さい値になってしまうのは、耐久と共に濃度が十分得られなく上に、トナー劣化が進み画像不良が生じてしまうため望ましくない。また、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量を500μmよりも大きくし、突起部材16に接触することによって受ける供給ローラ13の回転トルクを、現像ローラ11に接触することによってかかる回転トルクよりも大きくすると、従来構成よりも供給ローラ13に働く全回転トルクが大きくなり、トナーへのストレスが増しトナー劣化が進み、画像不良が生じるため好ましくない。
【0042】
また突起部材16と供給ローラ13の接触位置は、以下の位置とすることが望ましい。即ち、供給ローラ13が現像ローラ11と接して回転することによって生じる供給ローラ13の外径の変位量が、ほとんど変化しない位置で、且つトナーを収容する現像剤収容室18から現像室19へのトナー供給位置の近傍(図6のIII)の位置である。現像ローラ11と供給ローラ13の回転方向が図6に示すように接触部でカウンタ方向で現像ローラ11が供給ローラ13に対して速く回転する場合、供給ローラ13は以下のように変形する。即ち、図6のIの領域(ニップ出口側)ではスポンジがへこむ方向に変形し、図6のIIの領域(ニップ入り口側)ではスポンジが膨らむ方向に変形することが観測されている。この位置にスポンジを配置することにより、スポンジである供給ローラ13が、突起部材16によって圧縮され、解放されるときに周囲にあるトナーを積極的にスポンジ内に吸収することが可能である。また、突起部材16と供給ローラ13の接触によって、接触部通過直後にスポンジの目を開かせ、スポンジが回復する時に強制的にスポンジ内にトナーを吸収することができる。これにより、スポンジ内に多くのトナーを含んだ供給ローラ13から現像ローラ11にトナーが移動する方向に電界が形成されているので、多くのトナーを現像ローラ11へ供給できる。さらに、強制的に供給ローラ13にトナーを含ませ供給量を増やすので、供給ローラ13を小型化にしたり、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量を少なくすることができる。
【0043】
つまり、本実施形態のように、表面が内部から連通した複数のセル開口部を有する材料で構成された供給ローラ13に、現像ローラ11が接触することで供給ローラ13に働く回転トルクよりも大きい回転トルクになるように、突起部材16を供給ローラ13に接触させ、強制的に供給ローラ13のスポンジを圧縮し、スポンジ目を開かせることで、強制的に供給ローラ13内にトナーを満たすことができる。これにより、長期間の使用でも十分な画像濃度、追従性を保つことができ、供給ローラ13の小型化、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量も少なくすることができた。
【0044】
本実施形態の画像形成装置1において画像出力耐久試験を行った。上述のように本実施例の画像形成装置1が備える現像装置4では、装置の連続使用時でも、強制的に供給ローラ13内にトナーを含ませ、バイアスの効果により多くのトナーを現像ローラ11に供給するため、画像濃度アップや画像追従性維持に有利である。また、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量を少なくしても、十分なトナーを現像ローラ11に供給できるため、現像ローラ11と供給ローラ13の接触部における摺擦力や熱は少なくなる。これにより安定して供給ローラ13内にトナーを供給することが可能になることで、長期間使用でも、高濃度、追従性が維持できる装置を提供することができた。
【0045】
≪実施例および比較例≫
実施形態における本発明の有利な効果を明らかにするため、以下に実施形態に適用させた本発明の実施例および比較例について述べる。
【0046】
(実施例1−1)
本実施例の詳しい形態は実施形態1に記載した通りである。再度、簡単に説明すると、現像ローラ11に対して、供給ローラ13が250μm侵入し、供給ローラ13には長手方向に渡って当接する突起部材16が500μm侵入している。この侵入量において、現像ローラ11の周速が250mm/sec、供給ローラ13の周速が220mm/sec、現像ローラ11と供給ローラ13が非接触時の回転トルクをゼロ基準とした時、供給ローラの回転トルクを測定した。供給ローラ13が現像ローラ11の接触において受ける回転トルクは0.0015N.m、供給ローラ13が突起部材16の接触において受ける回転トルクは0.0065N.mであった。突起部材16との接触で受ける供給ローラ13の回転トルクの方が、現像ローラ11との接触で受ける回転トルクよりも大きい値になるようにしている。よって、供給ローラ13にかかる全回転トルクは0.008N.mとなっている。
【0047】
(比較例1)
従来の現像装置(図12)の画像形成装置を用いて、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量を1.0mmから0.6mmに変更した。このときに供給ローラ13が現像ローラ11から受ける回転トルクは0.008N.mであった。
【0048】
(比較例2)
本比較例の現像装置は基本的には実施形態1に準ずるが、以下の点が異なる。
【0049】
具体的には、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量をゼロとした。この時、供給ローラ13が現像ローラ11の接触において受ける回転トルクは0N.mである。
【0050】
(比較例3)
本比較例の現像装置は基本的には実施形態1に準ずるが、以下の点が異なる。
【0051】
現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量を500μmとする。この場合、供給ローラ13が現像ローラ11の接触において受ける回転トルクは0.007N.mとなるため、突起部材16との接触で受ける供給ローラ13の回転トルクの方が、現像ローラ11との接触で受ける回転トルクよりも小さい値になった。
【0052】
(実施例1−2)
現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量を500μm以上とした。侵入量500μmの時の供給ローラ13が現像ローラ11の接触において受ける回転トルクは0.007N.mとなった。この場合、突起部材16に接触することによって受ける供給ローラ13の回転トルクを、現像ローラ11に接触することによってかかる回転トルクよりも大きくするには、突起部材16の供給ローラ13に対する侵入量は600μm以上が必要となる。突起部材16の供給ローラ13に対する侵入量が600μmの時、回転トルクは0.008N.mになった。
【0053】
各実施例及び比較例の評価方法
以下では、本発明と比較例の差異を調べるための画像評価について述べる。
【0054】
a)印字初期のベタ黒画像濃度評価
画像評価はベタ黒画像を連続10枚出力し、10枚目のベタ黒画像の出力先端、中間、後端部のそれぞれ左右、中央の3点、計9点の濃度の平均をX−Rite製spectordensitometer 500を用いて測定した。ベタ黒画像濃度差評価は、評価環境23℃、50%Rhで100枚印字後に行った。印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に通紙して行った。
【0055】
ここでは画像評価を以下の基準で行った。
×:ベタ黒画像・濃度が1.0未満
△:ベタ黒画像・濃度が1.0以上1.3未満
○:ベタ黒画像・濃度が1.3以上
【0056】
b)印字初期のベタ黒画像濃度差評価
画像評価はベタ黒画像を連続10枚出力し、10枚目のベタ黒画像の出力先端と後端の濃度差から評価をX−Rite製spectordensitometer 500を用いて行った。印字初期のベタ黒画像濃度差評価は、評価環境23℃、50%Rhで100枚印字後に行った。印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に通紙して行った。
【0057】
ここでは画像評価を以下の基準で行った。
×:ベタ黒画像・出力先端と後端の濃度差が0.3以上
△:ベタ黒画像・出力先端と後端の濃度差が0.2以上0.3未満
○:ベタ黒画像・出力先端と後端の濃度差が0.2未満
【0058】
c)耐久後のベタ黒画像濃度差評価
画像評価はベタ黒画像を連続10枚出力し、10枚目のベタ黒画像の出力先端と後端の濃度差から評価をX−Rite製spectordensitometer 500を用いて行った。耐久後のベタ黒画像濃度差評価は、評価環境23℃、50%Rhで2万枚印字後に行った。印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に通紙して行った。
【0059】
ここでは画像評価を以下の基準で行った。
×:ベタ黒画像・出力先端と後端の濃度差が0.3以上
△:ベタ黒画像・出力先端と後端の濃度差が0.2以上0.3未満
○:ベタ黒画像・出力先端と後端の濃度差が0.2未満
【0060】
d)印字初期のゴースト評価
現像ローラ周期で現れるゴースト画像を評価した。具体的にゴーストとは紙先端で25mm×25mm四方のベタ黒パッチ画像を印字後、中間調画像中の現像ローラ周期1周目に現れる濃度差を目視で認識できる場合にゴーストによる画像不良と判断した。印字初期のゴースト評価は、評価環境23℃、50%Rhで100枚印字後に行った。印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に通紙して行った。
【0061】
ここでは画像評価を以下の基準で行った。
×:ゴースト画像を認識できる。
○:ゴースト画像を認識できない。
【0062】
e)耐久後のゴースト評価
現像ローラ周期で現れるゴースト画像を評価した。具体的にゴーストとは紙先端で25mm×25mm四方のベタ黒パッチ画像を印字後、中間調画像中の現像ローラ周期1周目に現れる濃度差を目視で認識できる場合にゴーストによる画像不良と判断した。耐久後のゴースト評価は、評価環境23℃、50%Rhで2万枚枚印字後に行った。印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に通紙して行った。
【0063】
ここでは画像評価を以下の基準で行った。
×:ゴースト画像を認識できる。
○:ゴースト画像を認識できない。
【0064】
従来技術に対する優位性
従来例と実施例1−1とを比較することにより本発明の優位性について述べる(表1)。従来構成の現像装置20は耐久後半において、現像ローラ11と供給ローラ13の接触部における摺擦力や熱によりトナー劣化が進む。その結果、耐久後半において、帯電電荷量の低下や凝集度が高まり、ゴースト等の画像欠陥が生じたり、ベタ黒画像の出力先端と後端で濃度差が生じてしまうという追従不良が発生した。これに対して、本発明である実施例1−1は、耐久後半のゴーストや追従不良の発生を著しく抑制し、画像不良のでない耐久枚数が従来構成の場合よりも1.2倍〜1.5倍増加した。
【0065】
比較技術に対する優位性
実施例1−1と比較例1〜3、実施例1−2を比較することによって、本発明の優位性について述べる(表1)。
【0066】
比較例1は従来例の構成に対して、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量が少ない。これにより、供給ローラ13スポンジ部の圧縮量が減り、供給ローラ13内からのトナーの放出が減少し、供給量が少なくなる。結果、初期からベタ黒の画像濃度は薄く、ベタ黒画像の出力先端と後端で濃度差があるという画像追従不良が生じてしまった。
【0067】
比較例2は実施例1−1に対して、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量がゼロになっている。突起部材16は供給ローラ13に実施例1−1と同様に接触し、強制的に供給ローラ13内にトナーが搬送される。これにより、供給ローラ13にトナーを現像ローラ11へ押し出す方向のバイアスが働けば、比較例1よりも初期濃度は若干濃くなる。しかし、供給ローラ13と現像ローラ11の間に接触摩擦力が働かず、現像で使用されなかった現像ローラ11上のトナーが剥ぎ取られず、ゴースト等の画像不良が初期から生じてしまった。
【0068】
比較例3は実施例1−1に対して、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量が大きくなっている。これにより、供給ローラ13スポンジ部の圧縮量が増え、供給ローラ13内からのトナーの放出量が増え、供給量が多くなる。結果、実施例1−1よりも初期のベタ黒の画像濃度は濃くなった。しかし、現像ローラ11との接触で受ける回転トルクの方が、突起部材16との接触で受ける供給ローラ13の回転トルクよりも大きい値になってしまう。従って、供給ローラ13と現像ローラ11の接触摩擦が大きく、この接触部で耐久と共にトナー劣化が進み、ゴーストや追従不良等の画像不良が耐久後半で生じてしまった。
【0069】
実施例1−2は実施例1−1に対して、現像ローラ11に対する供給ローラ13の侵入量を500μm以上とした(表1内には500μm侵入時のトルクが記載されている)。また、突起部材16に接触することによって受ける供給ローラ13の回転トルクを、現像ローラ11に接触することによってかかる回転トルクよりも大きくなるように設定している。これにより、現像剤収容室18から現像室19へトナーが搬送されると、実施例1−1よりも供給ローラ13と突起部材16接触部通過直後に多量のトナーが供給ローラ13内に強制的に入る。そして、供給ローラ13と現像ローラ11のニップ部におけるスポンジの圧縮により、供給ローラ13内から大量のトナーが現像ローラ11に供給される。結果初期からベタ黒の画像濃度は濃くなった。しかし、供給ローラ13の受ける全回転トルクが、従来例(0.015N.m)と同じか、もしくはそれ以上になってしまうと、耐久と共にトナー劣化が進み、耐久後半でゴーストや追従不良等の画像不良が従来例と同じ程度、もしくはそれ以上に生じてしまった。
【0070】
【表1】

【0071】
(実施形態2)
次に、本発明の他の実施形態における現像装置について、図7に基づき説明する。本実施形態の現像装置及び画像形成装置の基本的構成及び動作は、実施形態1のものとほぼ同じである。従って、実施形態1のものと実質的に同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。本実施形態は、供給ローラ13に押圧接触する押圧部材である突起部材16の形状を図7に示すような三角形状のものとし、突起部材16と供給ローラ13が実施形態1よりも線接触するようにする。
【0072】
本実施例ではこの突起部材16に現像容器10と同じ材料であるハイインパクトポリスチレン(HIPS)を使用した。しかしながら、供給ローラ13と突起部材16が接触することで、突起部材16が大きく変形しない材料であれば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などの汎用樹脂を使用してもよい。
【0073】
実施形態1と同じようにこの突起部材16の侵入量は、突起部材16が供給ローラ13に接触することで供給ローラ13に働く回転トルクが、供給ローラ13が現像ローラ11と接触することで供給ローラ13に働く回転トルクよりも大きくなるような値とする。こうすることで供給ローラ13が現像ローラ11とのニップ部で受けるよりも大きいスポンジ圧縮力を、突起部材16とのニップ部で受けるようになる。また、実施形態1と同様に接触摩擦力が大きくなり、供給ローラ13に働く全回転トルクが大きくなるとトナー劣化が進んでしまう。従って、現像ローラ11と突起部材16に接触する供給ローラ13の全回転トルクは従来構成(0.015N.m)よりも小さくすることが望ましい。
【0074】
本実施例2では外径12mmの現像ローラ11に、外径16mmの供給ローラ13が250μm侵入し、供給ローラ13には長手方向に渡って当接する突起部材16が500μm侵入している。
【0075】
本実施例によれば実施形態1の効果に加え、以下のような新たな効果が生じる。突起部材16の形状を三角形状とし、三角形状の頂点部が供給ローラ13に線接触するようにすることで、突起部材16と供給ローラ13のニップ幅は実施形態1よりも狭くなる。よって、実施形態1と同様に、供給ローラ13に突起部材16が500μm侵入していても、突起部材16と供給ローラ13の接触で受ける回転トルクは実施形態1よりも小さくなる。現像ローラ11の周速が250mm/sec、供給ローラ13の周速が220mm/sec、現像ローラ11と供給ローラ13が非接触時の回転トルクをゼロ基準とした時、供給ローラ13が現像ローラ11の接触において受ける回転トルクは0.0015N.m、供給ローラ13が突起部材16の接触において受ける回転トルクは0.0050N.mであった。よって、供給ローラ13にかかる全回転トルクは0.0065N.mであった(表1の実施例2)。
【0076】
これにより、供給ローラ13と突起部材16の接触部において、突起部材16を三角形状とすることで、実施形態1と同じスポンジの圧縮量でも、突起部材16に接触することによって受ける供給ローラ13の回転トルクは小さくなり、耐久劣化に有利となる。また、突起部材16の三角形状の頂点部が供給ローラ13のスポンジ表層部をしごき、より供給ローラ13のスポンジ表層部の目を開かせ、供給ローラ13内にトナーを入れる効果が出ている。
【0077】
本実施形態の画像形成装置1において画像出力耐久試験を行った。上述のようにこの現像装置4では、装置の連続使用時でも、実施形態1よりも小さい回転トルクでありながら、強制的に供給ローラ13内にトナーを含ませ、バイアスの効果によりスポンジ表層部内の多くのトナーを現像ローラ11に供給している。そのため、耐久初期から耐久後半において濃度アップや追従性維持に有利である。その結果、従来構成の現像装置20と比較して、高濃度を維持し、追従不良が発生しない耐久枚数が1.3倍〜1.6倍に増加した。
【0078】
以上のように、実施形態1よりも供給ローラ13に荷重をかけず、安定して供給ローラ13内にトナーを強制的に含ませることが可能になることで、長期間の使用でも、実施形態1よりもさらに高濃度、追従性が維持できる装置を提供することができた。
【0079】
(実施形態3)
次に、本発明の他の実施形態における現像装置について、図8に基づき説明する。本実施形態の現像装置及び画像形成装置の基本的構成及び動作は、実施形態1のものとほぼ同じである。従って、実施形態1、2のものと実質的に同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0080】
本実施形態は、供給ローラ13に押圧接触する押圧部材である突起部材16を現像容器枠体と一体化する。即ち、突起部材16を現像容器の枠体の一部とする。突起部分の材質は現像容器枠体と同一のもので良いが、突起部材16部分の表面を研磨し、供給ローラ13との摩擦力を高め、突起部材16と供給ローラ13の接触によってスポンジの目を開きやすくし、更に強制的にスポンジ内にトナーを吸収させてもよい(図9)。
【0081】
また突起部分の形状は実施形態2に示したような三角形状にして、この突起部材16部分を現像容器枠体と一体化してもよい。この突起部分の供給ローラ13に対する侵入量は、実施形態1と同様に、突起部材16に接触することで供給ローラ13に働く回転トルクが、現像ローラ11と接触することで供給ローラ13に働く回転トルクよりも大きくなるような値とする。また、供給ローラ13に働く全回転トルクが大きくなるとトナー劣化が進むので、現像ローラ11と突起部材16に接触する供給ローラ13の全回転トルクは従来構成(0.015N.m)よりも小さくすることが望ましい。
【0082】
本実施例3では外径12mmの現像ローラ11に、外径16mmの供給ローラ13が250μm侵入し、供給ローラ13には長手方向に渡って当接する突起部材16が500μm侵入している。
【0083】
現像ローラ11の周速が250mm/sec,供給ローラ13の周速が220mm/sec、現像ローラ11と供給ローラ13が非接触時の回転トルクをゼロ基準とした時、供給ローラ13が現像ローラ11の接触において受ける回転トルクは0.0015N.m、供給ローラ13が突起部材16の接触において受ける回転トルクは0.007N.mであった。よって、供給ローラ13にかかる全回転トルクは0.0085N.mであった(表1の実施例3)。
【0084】
以上のように供給ローラ13に接触する突起部材16を現像容器枠体と一体化することで、実施形態1、2で示した効果に加え、新たに突起部材16を現像容器内に接着するという工程がなくなる。さらに突起部分の部材は現像容器枠体と同一のものでよいため、製造コストを抑えることができる。
【0085】
(実施形態4)
次に、本発明の他の実施形態における現像装置について、基づき説明する。本実施形態の現像装置及び画像形成装置の基本的構成及び動作は、実施形態1、2、3のものとほぼ同じである。従って、実施形態1、2、3の図面を使用し、詳しい説明は省略する。
【0086】
本実施形態は、少なくとも表層は半独立の発泡弾性体で構成された現像剤供給ローラ13に10Ω〜10Ω程度の抵抗を与えるために、カーボンブラックや金属酸化物などを添加して分散してつくった電子導電性のものを使用した。電子導電性のものを使用すると、イオン導電性のもの(第4アンモニウム塩や脂肪族アルコールサルフェート塩を添加したもの)を使用した時に比べて、以下のメリットがある。即ち、15℃、10%の低温低湿下における抵抗値と30℃、80%の高温高湿下における供給ローラ13の抵抗値の差がほとんどない。
【0087】
本実施例4では外径12mmの現像ローラ11に、外径16mmの供給ローラ13が250μm侵入し、供給ローラ13には長手方向に渡って当接する突起部材16が500μm侵入している。現像ローラ11の周速が250mm/sec、供給ローラ13の周速が220mm/sec、現像ローラ11と供給ローラ13が非接触時の回転トルクをゼロ基準とした時、供給ローラ13が現像ローラ11の接触において受ける回転トルクは0.002N.m、供給ローラ13が突起部材16の接触において受ける回転トルクは0.007N.mであった。よって、供給ローラ13にかかる全回転トルクは0.009N.msであった(表1の実施例4)。
【0088】
以上のように、本実施例によれば実施形態1、2、3の効果に加え、以下のような新たな効果が生じる。供給ローラ13を電子導電にすることにより、どのような環境下においても、抵抗値の変動が生じず、現像ローラ11と供給ローラ13間に所望の電位差を安定してかけることができる。よって、供給ローラ13内に強制的に含まれたトナーを安定して現像ローラ11に供給することが可能になるので、どのような環境下での長期間使用でも、高濃度、追従性が維持できる装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に関わる画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に関わる現像装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】スポンジ層の硬度を測定する方法を説明する図である。
【図4】本発明に係る供給ローラに働く回転トルクを示すグラフ。
【図5】本発明に係る供給ローラに働く回転トルクを示すグラフ。
【図6】本発明に係る突起部材の最適位置を示す概略構成図である。
【図7】本発明に係る現像装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明に係る現像装置の一例を示す概略構成図である。
【図9】本発明に係る突起部材の一例を示す概略構成図である。
【図10】本発明に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図11】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図12】従来の現像装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0090】
1 画像形成装置
2 感光ドラム(像担持体)
3 帯電手段
4 現像装置
10 現像容器
11 現像ローラ(現像剤担持体)
12 現像ブレード(現像剤規制部材)
13 供給ローラ
14 供給ローラバイアス印加手段
15 現像バイアス印加手段
16 突起部材
17 アルミ製円柱
18 現像剤収容室
19 現像室
20 従来の現像装置
30 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に接触して設けられ、前記像担持体に形成された静電像を現像剤で現像するために現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に接触して設けられ、前記現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給ローラであって、その表面に複数のセル開口部が設けられた弾性層を備える現像剤供給ローラと、を有する現像装置において、
前記弾性層に押圧する押圧部材を有し、この押圧部材が前記現像剤供給ローラに接触することで前記現像剤供給ローラに働く回転トルクは、前記現像剤担持体が前記現像剤供給ローラに接触することで前記現像剤供給ローラに働く回転トルクよりも大きいことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤担持体は弾性を備えることを特徴とする請求項1の現像装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、突起形状であることを特徴とする請求項1又は2の現像装置。
【請求項4】
前記弾性層を1.0mm圧縮したときにかかる荷重は、0.5Nから4.0Nであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの現像装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体と前記現像剤供給ローラとの間で、現像剤が前記現像剤供給ローラから前記現像剤担持体へ向かう方向の電界が形成されるように、前記現像剤供給ローラに電圧が印加されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの現像装置。
【請求項6】
前記押圧部材は、発泡弾性部材であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの現像装置。
【請求項7】
前記押圧部材は、現像剤を収容する現像容器の枠体の一部であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの現像装置。
【請求項8】
前記現像剤供給ローラの抵抗値は10から10Ωであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかの現像装置。
【請求項9】
前記弾性層は、カーボンを分散した電子導電性であることを特徴とする請求項8の現像装置。
【請求項10】
前記現像剤は、形状係数SF−1の値が100〜160であり、形状係数SF−2の値が100〜140であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかの現像装置。
【請求項11】
前記現像剤供給ローラに働く全回転トルクは、0.015N.mよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかの現像装置。
【請求項12】
前記現像剤担持体は、像担持体に接触して設けられることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかの現像装置。
【請求項13】
画像形成装置の本体に着脱可能であり、前記像担持体と、請求項1乃至12のいずれかの現像装置と、を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−151084(P2009−151084A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328711(P2007−328711)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】