説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】現像ロール64と規制部材66との間を通過する現像剤の粒子間で生じる摩擦を低減する。
【解決手段】付与装置74が、支持部材72を介して超音波振動を規制部材66へ付与する。これにより、現像剤Gの各粒子間、現像剤Gの粒子と規制部材66との間で超音波振動周期に応じた離間と接触がおこる。このため、現像ロール64(円筒部材70A)と規制部材66との間を通過する現像剤Gの粒子間で生じる摩擦及び、現像剤Gと規制部材66との間で生じる摩擦が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、以下に示す現像装置が開示されている。この現像装置では、振動子4に繊維ブラシ3を接合させ、現像スリーブ1と間隔をおいて配置する。振動子4は駆動回路9によって駆動され、繊維ブラシ3と現像スリーブ1との間にはバイアス電源10によるバイアス電圧の印加で電界が発生している。振動子4の振動で繊維ブラシ3により撹乱され摩擦帯電したトナー8は、前記電界による静電引力を受けて現像スリーブ1に搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−19614号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、現像剤を搬送する搬送体と、その現像剤に接触して現像剤層の厚みを規制する規制部材との間を通過する現像剤の粒子間で生じる摩擦を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、現像剤を外周に保持すると共に自らが回転して、潜像へ向けて該現像剤を搬送する搬送体と、前記搬送体の外周に対向され、前記搬送体が搬送する現像剤に接触して、前記搬送体に形成される現像剤層の厚みを規制する規制部材と、前記現像剤の粒子径よりも振幅が小さい力学的な超音波振動を、前記搬送体に保持された現像剤、前記搬送体及び前記規制部材の少なくとも一つに付与する付与手段と、を備える現像装置である。
【0006】
請求項2の発明は、像を保持可能な像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置によって帯電した前記像保持体を露光し、静電潜像を形成する露光装置と、前記露光装置によって前記像保持体に形成された静電潜像を現像する請求項1に記載の現像装置と、を備える画像形成装置である。
【0007】
請求項3の発明は、各画像形成モードにおける前記搬送体の搬送速度に応じて、前記付与手段が付与する振動の振幅を制御する制御手段を備える請求項2に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1の構成によれば、振動を付与する付与手段を備えない場合に比べ、搬送体と規制部材との間を通過する現像剤の粒子間で生じる摩擦を低減することができる。
【0009】
本発明の請求項2の構成によれば、振動を付与する付与手段を備えない場合に比べ、搬送体と規制部材との間を通過する現像剤の粒子間で生じる摩擦熱に起因する画像劣化を抑制することができる。
【0010】
本発明の請求項3の構成によれば、搬送体の搬送速度に応じて振幅を制御する制御手段を備えない場合に比べ、搬送体と規制部材との間を通過する現像剤の粒子間で生じる摩擦熱による昇温を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る現像装置の構成を示す概略図である。
【図3】図3は、現像ロールを駆動するための駆動トルクに現像ロールの回転数を乗じた値と、筐体内の現像剤温度との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、本実施形態に係る現像装置における摩擦熱の発生部分を示す斜視図である。
【図5】図5は、現像ロールを駆動するための駆動トルクと、付与装置が付与する振動の振幅との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、第1変形例に係る現像装置の構成を示す概略図である。
【図7】図7は、第1変形例に係る現像装置における振動子の構成を示す斜視図である。
【図8】図8は、第1変形例に係る現像装置における振動子への配線の構成を示す斜視図である。
【図9】図9は、第1変形例に係る現像装置における振動子の変形例の構成を示す斜視図である。
【図10】図10は、第2変形例に係る現像装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0013】
(本実施形態に係る画像形成装置の構成)
まず、本実施形態に係る画像形成装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。なお、図中に示す矢印UPは鉛直方向上方を示す。
【0014】
画像形成装置10は、図1に示すように、各構成部品が内部に収容される画像形成装置本体11を備えている。
【0015】
画像形成装置本体11の内部には、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部14と、記録媒体収容部12から画像形成部14へ記録媒体Pを搬送する搬送部16と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、が設けられている。また、画像形成装置本体11の上部には、画像形成部14によって画像が形成された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部18が設けられている。
【0016】
画像形成部14は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット22Y、22M、22C、22K(以下、22Y〜22Kと示す)と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像が転写される転写体の一例としての中間転写ベルト24と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写する第1転写部材の一例としての第1転写ロール26と、第1転写ロール26によって中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を中間転写ベルト24から記録媒体Pへ転写する第2転写部材の一例としての第2転写ロール28と、を備えている。
【0017】
画像形成ユニット22Y〜22Kは、水平方向に沿って画像形成装置10の上下方向中央部に並んで配置されている。また、画像形成ユニット22Y〜22Kは、像を保持する像保持体の一例として、一方向(図1における時計回り方向)へ回転する感光体32をそれぞれ有している。
【0018】
各感光体32の周囲には、感光体32の回転方向上流側から順に、感光体32を帯電させる帯電装置の一例としての帯電ロール34と、帯電ロール34によって帯電した感光体32が露光されて形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置60と、感光体32に形成されたトナー画像が中間転写ベルト24に転写された後に感光体32に残留しているトナーを除去する除去装置40と、が設けられている。
【0019】
また、画像形成ユニット22Y〜22Kの下方には、帯電ロール34によって帯電した各感光体32を露光して静電潜像を形成する露光装置36が設けられている。露光装置36は、制御部20から送られた画像信号に基づき静電潜像を形成するようになっている。制御部20から送られる画像信号としては、例えば、制御部20が外部装置から取得した画像信号がある。
【0020】
中間転写ベルト24は、環状に形成されると共に、画像形成ユニット22Y〜22Kの上側に配置されている。中間転写ベルト24の内周側に、中間転写ベルト24が巻き掛けられる巻掛ロール42,44が設けられている。中間転写ベルト24は、巻掛ロール42,44のいずれかが回転駆動することによって、感光体32と接触しながら一方向(図1における反時計回り方向)へ循環移動(回転)するようになっている。なお、巻掛ロール42は、第2転写ロール28に対向する対向ロールとされている。
【0021】
第1転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで感光体32に対向している。第1転写ロール26と感光体32との間が、感光体32に形成されたトナー画像が中間転写ベルト24に転写される第1転写位置とされている。
【0022】
第2転写ロール28は、中間転写ベルト24を挟んで巻掛ロール42と対向している。第2転写ロール28と巻掛ロール42との間が、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像が記録媒体Pに転写される第2転写位置とされている。
【0023】
搬送部16は、記録媒体収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール46と、送出ロール46に送り出された記録媒体Pが搬送される搬送路48と、搬送路48に沿って配置され送出ロール46によって送り出された記録媒体Pを第2転写位置へ搬送する複数の搬送ロール50と、が設けられている。
【0024】
第2転写位置より搬送方向下流側には、第2転写ロール28によって中間転写ベルト24から記録媒体Pへ第2転写位置で転写されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置30が設けられている。定着装置30よりも搬送方向下流側には、トナー画像が定着された記録媒体Pを記録媒体排出部18へ排出する排出ロール52が設けられている。
【0025】
次に、本実施形態に係る画像形成装置10における、記録媒体Pへ画像を形成する画像形成動作について説明する。
【0026】
本実施形態に係る画像形成装置10では、記録媒体収容部12から送出ロール46によって送り出された記録媒体Pが、複数の搬送ロール50によって第2転写位置へ送り込まれる。
【0027】
一方、画像形成ユニット22Y〜22Kでは、帯電ロール34によって帯電した感光体32が、露光装置36によって露光されて感光体32に静電潜像が形成される。その静電潜像が現像装置60によって現像されて感光体32にトナー画像が形成される。画像形成ユニット22Y〜22Kで形成された各色のトナー画像は、第1転写位置にて中間転写ベルト24に重ねられて、カラー画像が形成される。そして、中間転写ベルト24に形成されたカラー画像が、第2転写位置にて記録媒体Pへ転写される。
【0028】
トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置30へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置30により定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、排出ロール52によって記録媒体排出部18に排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0029】
(現像装置60の構成)
次に、現像装置60の構成について説明する。図2は、現像装置60の構成を示す概略図である。
【0030】
現像装置60は、現像剤Gが収容される収容部の一例としての筐体62と、筐体62の内部に設けられ感光体32の静電潜像へ向けて現像剤Gを搬送する搬送体の一例としての現像ロール64と、現像ロール64に形成される現像剤層の厚みを規制する規制部材66と、現像ロール64へ付与される現像剤Gを攪拌しながら搬送する搬送部材67A・67Bと、を備えている。なお、現像剤Gは、例えば、非磁性トナーと、磁性キャリアとを備えて構成されている。
【0031】
搬送部材67A・67Bは、例えば、回転可能な回転軸68Aと、その回転軸68Aにその軸周りに螺旋状に設けられた羽根部材68Bと、を備えて構成されている。搬送部材67Aの回転軸68Aが回転することで、羽根部材68Bが現像剤Gを攪拌しながら回転軸68Aの軸方向の一方へ搬送し、搬送部材67Bの回転軸68Aが回転することで、羽根部材68Bが現像剤Gを攪拌しながら回転軸68Aの軸方向に沿って、搬送部材67Aの搬送方向とは逆方向へ搬送して、現像剤Gを循環させるようになっている。
【0032】
現像ロール64は、筐体62に対して回転可能に支持された円筒状の円筒部材70Aと、円筒部材70Aに内部に設けられ、筐体62に対して固定された円柱状の磁性部材70Bと、を備えている。
【0033】
円筒部材70Aは、筐体62から感光体32側へ露出して、感光体32に対向している。この円筒部材70Aの外周へは、円筒部材70A(現像ロール64)の近い側に配置された搬送部材67Bによって搬送される現像剤Gが、磁性部材70Bの磁力によって付与されるようになっている。
【0034】
現像ロール64では、搬送部材67Bから付与された現像剤Gを、磁性部材70Bの磁力によって円筒部材70Aの外周に保持すると共に、円筒部材70Aが回転することで、感光体32に対向する対向位置へ向けて現像剤Gを搬送するように構成されている。そして、感光体32に対向する対向位置へ搬送された現像剤Gが、静電力等により、感光体32へ供給されるように構成されている。
【0035】
規制部材66は、感光体32と搬送部材67Bとの間で円筒部材70Aに対向する位置に配置されており、円筒部材70Aに保持されて搬送される現像剤Gに接触して、円筒部材70Aに形成される現像剤層の厚みを規制するようになっている。このように、規制部材66が現像剤層の厚みを規制することにより、円筒部材70Aに保持された現像剤Gが円筒部材70Aと規制部材66との間を通過する際に、現像剤Gの粒子間で摩擦が生じると共に、円筒部材70Aに保持された現像剤Gと規制部材66との間で摩擦が生じる。
【0036】
また、規制部材66は、筐体62に対して固定された支持部材72によって支持されている。
【0037】
ここで、本実施形態では、現像剤Gの粒子径(具体的には、トナーの粒子径)よりも振幅が小さい力学的な超音波振動を規制部材66に付与する付与手段の一例としての付与装置74が、支持部材72に対して設けられている。
【0038】
付与装置74は、圧電素子を備え超音波振動を発生させる振動子76と、振動子76で発生した超音波振動の振幅を増幅して規制部材66に伝達する増幅器の一例としての増幅ホーン78と、を備えて構成されている。
【0039】
振動子76には、その圧電素子に電圧を印加する印加部79が、その圧電素子の表面に設けられた電極(図示省略)に電気的に接続されている。振動子76は、印加部79から印加される電圧に応じた振幅の振動を発生させ、印加部79から印加される電圧の周波数に応じた周波数の振動を発生させる構成となっている。なお、付与装置74では、支持部材72を介して規制部材66へ振動を付与する構成となっているが、規制部材66に直接振動を付与する構成であってもよい。
【0040】
なお、超音波振動とは、正常な聴力を持つ人に聴感覚を生じないほど周波数(振動数)が高い音波(弾性波)となる振動であって、具体的には、20kHz以上の振動をいう。また、力学的な振動とは、電気的な振動ではない、機械的な振動をいう。
【0041】
印加部79には、付与装置74が規制部材66へ付与する振動の振幅を制御する制御手段の一例としての制御部77が接続されている。制御部77は、印加部79が振動子76の圧電素子へ印加する電圧を制御することで、各画像形成モードにおける現像ロール64の現像剤Gを感光体32へ搬送する搬送速度に応じて振幅を制御する構成となっている。具体的には、制御部77は、現像ロール64の回転数(回転速度)に応じて振幅を制御するようになっている。
【0042】
本実施形態では、画像形成モードは、例えば、画質や記録媒体Pの種類・厚さに応じたモードがあり、モードに応じて、現像ロール64の回転数を含む画像形成速度(プロセススピード)が変化するようになっている。例えば、標準画質モードよりも高画質に画像形成する高画質モードは、標準画質モードよりも現像ロール64の回転数が少なくなり、普通紙よりも厚い厚紙に画像形成する厚紙モードは、普通紙に画像形成する普通紙モードよりも回転数が少なくなるように構成されている。
【0043】
図3に示すように、駆動モータ67(図4参照)が現像ロール64を駆動するための駆動トルクに、現像ロール64の回転数を乗じた値は、筐体62内の現像剤温度と比例関係にある。従って、現像ロール64の回転数及び現像ロール64の駆動トルクの値の少なくとも一方が高くなることで、筐体62内の現像剤温度が上昇することになる。
【0044】
これは、現像ロール64の回転数が上昇すると、現像ロール64(円筒部材70A)と規制部材66との間を通過する現像剤Gの粒子間での摩擦熱H2が上昇するためである。また、現像ロール64における駆動トルクが上昇すると、現像ロール64(円筒部材70A)に設けられたギヤ65における摩擦熱H1が上昇して、その熱が筐体62内の現像剤Gへ伝導するためである。
【0045】
ここで、付与装置74によって超音波振動が付与されると、現像剤Gの粒子間及び現像剤Gと規制部材66との間で摩擦が低減される(文献 粉体工学会 会誌 Vol.46, No.5, pp.330-337 (2009)「超音波による粒子群摩擦低減に及ぼす粒子物性の影響」参照)。これは、超音波振動により現像剤Gの粒子間及び現像剤Gと規制部材66との間で振動周期に応じた離間と接触が発生し、単位時間に作用する摩擦抵抗が低減されるためであると考えられる。また、この超音波振動の振幅が大きくなれば、離間時間が長くなると考えられ、摩擦低減効果は高くなる。そして、この摩擦が小さくなると、現像ロール64に回転抵抗が小さくなり駆動トルクが小さくなる。従って、現像ロール64における駆動トルクは、図5に示すように、付与装置74が規制部材66へ付与する超音波振動の振幅と比例関係にある。
【0046】
以上のことから、現像剤温度の所望の上限温度と、各画像形成モードにおける現像ロール64の回転数とから、現像剤温度の所望の上限温度を超えないようにする駆動トルクが規定され(図3参照)、この駆動トルクから超音波振動の振幅が規定される(図5参照)。なお、現像剤温度の所望の上限温度は、例えば、現像剤G(トナー)が融解する温度によって設定される。
【0047】
そこで、本実施形態では、制御部77において、各画像形成モードにおける現像ロール64の回転数(回転速度)に応じた超音波振動の振幅を予め設定してテーブル化し、制御部77は、入力された画像形成モードに応じた振幅を当該テーブルから参照して、その振幅に対応した電圧が印加されるように印加部79を制御する。
【0048】
なお、制御部77においては、以下の手順のように、テーブルを参照せずに、超音波振動の振幅を決定する構成であってもよい。制御部77は、まず、各画像形成モードにおける現像ロール64の回転数を取得すると、その現像ロール64の回転数と、予め設定された現像剤温度が所望の上限温度とから定まる現像ロール64における許容トルクを得る(図3参照)。次に、制御部77は、その許容トルクから定まる振幅を得る(図5参照)そして、制御部77は、その振幅に対応した電圧が印加されるように印加部79を制御する。
【0049】
また、規制部材66へ付与される振動の振幅は、少なくとも、規制部材66に規制されて形成される現像剤層の厚さよりも小さく、さらに、現像剤Gを構成する粒子の粒子径よりも小さくなっている。例えば、現像剤Gがトナー及びキャリアで構成される場合においては、上記振幅は、トナー及びキャリアのいずれの粒子よりも小さい。
【0050】
具体的には、例えば、現像剤層の厚さが10〜20μmで、トナーの粒子径が5μmに対して、振幅がトナーの粒子径の1/10以下である0.2μmに設定される。
【0051】
なお、制御部77は、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20(図1参照)で構成されていてもよいし、制御部20とは別に構成されたものであってもよい。
【0052】
(本実施形態の作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0053】
搬送部材67Bから現像ロール64の円筒部材70Aへ供給された現像剤Gは、磁性部材70Bの磁力によって円筒部材70Aの外周に保持されると共に円筒部材70Aが回転することで、感光体32に対向する対向位置へ向けて搬送される。
【0054】
円筒部材70Aに保持された状態で、対向位置へ搬送される現像剤Gに対して、規制部材66が接触して、円筒部材70Aに形成される現像剤層の厚みが規制される。
【0055】
本実施形態では、付与装置74が、支持部材72を介して超音波振動を規制部材66へ付与する。これにより、現像剤Gの各粒子間、現像剤Gの粒子と規制部材66との間で超音波振動周期に応じた離間と接触がおこると考えられ、現像ロール64(円筒部材70A)と規制部材66との間を通過する現像剤Gの粒子間で生じる摩擦及び、現像剤Gと規制部材66との間で生じる摩擦が低減される。これにより、現像ロール64に保持された現像剤Gが現像ロール64と規制部材66との間を通過する際の通過抵抗、すなわち、現像ロール64の回転抵抗が低減され、現像ロール64を回転駆動する際の駆動トルクの増加が抑制される。
【0056】
現像ロール64と規制部材66との間を通過する現像剤Gの粒子間で生じる摩擦が低減されることにより、その摩擦による摩擦熱H2(図4参照)が低減され、現像剤Gの昇温が抑制される。また、現像ロール64の駆動トルクの増加が抑制されることにより、現像ロール64のギヤ65での摩擦熱が低減され、現像剤Gの昇温が抑制される。これにより、現像剤Gに生じる融解などの劣化による画像劣化が抑制される。
【0057】
なお、現像ロール64のギヤにおける摩擦熱は、筐体62などを通じて現像剤Gへ伝導することで現像剤Gが昇温するものと考えられる。
【0058】
また、本実施形態では、制御部77によって、各画像形成モードにおける現像ロール64の回転数(回転速度)に応じて、付与装置74が規制部材66へ付与する振動の振幅を制御するので、効率よく、現像剤Gの昇温が管理される。これにより、無駄に、規制部材66へ振動を付与しなくなるので、省エネルギーにつながる。
【0059】
また、制御部77による振幅の制御により、摩擦熱による劣化が生じない範囲で、現像剤Gに対して摩擦による帯電を生じさせて、現像剤Gを感光体32へ良好に供給するための静電力が得られるので、画質維持と現像剤Gの昇温との両立が図れる。
【0060】
また、本実施形態では、現像剤Gに接触する規制部材66自体の形状や材質に変更を加えるのではなく、規制部材66の振動によって摩擦を低減するので、規制部材66の現像剤Gに対する接触面の形状を変えて接触面積を小さくする構成や、摩擦係数の小さい材料を規制部材66と現像剤Gとの間に介在させて摩擦を低減する構成に比べて、現像剤層の層形成に影響を与えにくい。
【0061】
また、本実施形態では、発生した熱を逃がすのではなく、熱源となる摩擦熱の発生を抑制するので、空冷することにより現像剤Gの昇温を抑制する構成に比べて、熱を逃がすための経路等を確保する必要がなく、省スペースとなり、装置が小型化される。
【0062】
また、超音波振動の振幅は、規制部材66に規制されて形成される現像剤層及び現像剤Gを構成する粒子の粒子径よりも小さいため、現像剤層の層厚の均一性に影響を与えにくい。
【0063】
なお、付与装置としては、上記の付与装置74に限られず、例えば、下記の変形例に示すものであってもよく、現像剤Gの粒子径よりも振幅が小さい力学的な超音波振動を、現像ロール64に保持された現像剤G、現像ロール64及び規制部材66の少なくとも一つに付与するものであればよい。
【0064】
(第1変形例に係る付与装置)
次に、第1変形例に係る付与装置を説明する。
【0065】
第1変形例に係る付与装置80は、図6に示すように、現像剤Gの粒子径よりも振幅が小さい力学的な超音波振動を現像ロール64に付与する付与手段の一例として構成されている。具体的には、付与装置80では、圧電素子を備え超音波振動を発生させる振動子82が、円筒部材70Aの内周に固定されている。
【0066】
振動子82は、図7に示すように、周方向の一部において、軸方向の一端から他端に渡って隙間Sが形成された円筒状で構成されている。
【0067】
現像ロール64の磁性部材70Bの軸方向両端部に設けられた軸部70Cは、軸受84で支持されると共に、現像装置60の筐体62に対して固定されている。
【0068】
軸受84は、円筒部材70Aに対して固定されており、軸受84が回転することにより、円筒部材70A及び振動子82が一体に回転するようになっている。
【0069】
振動子82には、図6に示すように、その圧電素子に電圧を印加する印加部83が、配線81を介して、その圧電素子の表面に設けられた電極(図示省略)に電気的に接続されている。
【0070】
配線81は、図8に示すように、振動子82の軸方向一端部であって、隙間Sを間に挟む周方向一端部及び他端部に一端部がそれぞれ接続された電線86A、86Bを備えている。電線86A、86Bの他端部は、軸受84の外周に周方向に沿って一対設けられた環状の接続端子88A、88Bにそれぞれ接続されている。
【0071】
接続端子88A、88Bのそれぞれには、接続端子88A、88Bに弾性力等により押し当てられた接続端子89A、89Bが設けられている。接続端子89A、89Bは、軸受84が回転した場合でも接続端子88A、88B上を滑りながら、相対的に動くので接続端子88A、88Bに対する接触状態が維持されようになっている。
【0072】
接続端子89A、89Bに接続された印加部83から、接続端子89A、89B及び電線86A、86Bを通じて振動子82の圧電素子に電圧が印加されると、振動子82は、円筒部材70Aの径方向へ変形して振動を生じさせるようになっている。振動子82は、印加部83から印加される電圧に応じた振幅の振動を発生させ、印加部83から印加される電圧の周波数に応じた周波数の振動を発生させる構成となっている。印加部83には、図6に示すように、上記の制御部77が接続されており、付与装置74における場合と同様に制御される。
【0073】
なお、現像ロール64に振動を生じさせる構成としては、図9に示すように、圧電素子を備え超音波振動を発生させる振動子82を、円筒部材70Aの軸方向両端部に配置した構成であってもよい。図9に示す構成では、振動子82は、軸部70Cに回転可能に取り付けられると共に、円筒部材70Aの軸方向端部と軸受84との間で、円筒部材70A及び軸受84に固定されている。
【0074】
(第2変形例に係る付与装置)
次に、第2変形例に係る付与装置を説明する。
【0075】
第2変形例に係る付与装置90は、図10に示すように、現像剤Gの粒子径よりも振幅が小さい力学的な超音波振動を、現像ロール64に保持された現像剤Gへ付与する付与手段の一例として構成されている。
【0076】
第2変形例に係る付与装置90は、圧電素子を備え超音波振動を発生させる振動子92と、振動子92で発生した超音波振動の振幅を増幅して現像剤Gへ伝達する増幅器の一例としての導音ダクト94と、を備えて構成されている。
【0077】
導音ダクト94は、具体的には、ダクト内で共鳴させることで増幅させた振動を、現像ロール64と規制部材66との間の近傍であって現像ロール64と規制部材66との間よりも搬送方向上流側に存在する現像剤Gに対して照射するようになっている。これにより、現像ロール64に接触する現像剤G及び規制部材66に接触する現像剤Gが振動するようになっている。
【0078】
振動子92には、その圧電素子に電圧を印加する印加部96が、その圧電素子の表面に設けられた電極(図示省略)に電気的に接続されている。振動子92は、印加部96から印加される電圧に応じた振幅の振動を発生させ、印加部96から印加される電圧の周波数に応じた周波数の振動を発生させる構成となっている。印加部96には、上記の制御部77が接続されており、同様に制御される。
【0079】
なお、現像ロール64に保持された現像剤Gへ力学的な超音波振動を付与する付与手段としては、現像ロール64と規制部材66との間に存在する現像剤Gに振動を照射する構成であってもよく、現像ロール64と規制部材66との間よりも搬送方向下流側に存在する現像剤Gに振動を照射する構成であってもよい。
【0080】
また、本実施形態では、付与装置74、80、90が付与する振動の振幅を制御していたが、振幅を制御せず、予め定められた振幅による超音波振動を付与する構成であってもよい。また、現像装置としては、付与装置74、80、90のいずれかを複数備えた構成であってもよい。
【0081】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 画像形成装置
32 感光体(像保持体の一例)
34 帯電ロール(帯電装置の一例)
36 露光装置
60 現像装置
64 現像ロール(搬送体の一例)
66 規制部材
74 付与装置(付与手段の一例)
77 制御部(制御手段の一例)
80 付与装置(付与手段の一例)
90 付与装置(付与手段の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を外周に保持すると共に自らが回転して、潜像へ向けて該現像剤を搬送する搬送体と、
前記搬送体の外周に対向され、前記搬送体が搬送する現像剤に接触して、前記搬送体に形成される現像剤層の厚みを規制する規制部材と、
前記現像剤の粒子径よりも振幅が小さい力学的な超音波振動を、前記搬送体に保持された現像剤、前記搬送体及び前記規制部材の少なくとも一つに付与する付与手段と、
を備える現像装置。
【請求項2】
像を保持可能な像保持体と、
前記像保持体を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置によって帯電した前記像保持体を露光し、静電潜像を形成する露光装置と、
前記露光装置によって前記像保持体に形成された静電潜像を現像する請求項1に記載の現像装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項3】
各画像形成モードにおける前記搬送体の搬送速度に応じて、前記付与手段が付与する振動の振幅を制御する制御手段を備える請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−197459(P2011−197459A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64940(P2010−64940)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】