説明

球面収差補正制御装置および光ディスク装置および光ピックアップ装置

【課題】光ディスクのカバー層の厚み誤差によって生じる球面収差を精度良く検出することで、適切に球面収差補正を行ない、光ディスクの記録/再生性能を向上する光ディスクドライブ装置を提供する。
【解決手段】光ディスクで発生している球面収差量の測定もしくは球面収差補正素子の制御は、フォーカス制御を行った状態において、対物レンズのラジアル方向の位置が光軸の中心位置になった場合に行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球面収差補正制御装置および光ディスク装置および光ピックアップ装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、例えば特開2000−182254(特許文献1)、特開2002−157771公報(特許文献2)がある。特許文献1には、「未記録ディスクに記録を行なう場合には再生信号が得られないので、球面収差を補償することができない。また、ジッタ、エラーレート、変調度等は例えば、基板の傾き、複屈折等によっても影響を受け、このような要因が存在する場合にはジッタ、エラーレート、変調度等が増大してサーボ系が誤動作してしまうという問題があった。」とあり、解決手段として「本発明のピックアップ装置は、記録面上を透過基板で覆われた光ディスクに対して情報の書き込み或いは読み取りを行なうピックアップ装置であって、光ビームを第1の所定開口数の対物レンズを介して記録面に照射し、記録面からの反射光を対物レンズを介して得る反射光抽出手段と、反射光抽出手段から得られた反射光のうち、第1の所定開口数より小なる第2の所定開口数以下の部分のみを介して照射された第1照射光による第1反射光を検出し、記録面における第1照射光の焦点ずれを示す第1エラー信号を生成する第1焦点誤差検出手段と、反射光抽出手段から得られた反射光のうち、第2の所定開口数より大なる所定開口数以下の部分を介して照射された第2照射光による第2反射光を検出し、記録面における第2照射光の焦点ずれを示す第2エラー信号を生成する第2焦点誤差検出手段と、第1及び第2エラー信号の少なくとも一方を用いて球面収差に対応する信号を得る手段と、を備えたことを特徴としている。」と記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、「光ビームを適切に分離することで、各光ビームのスポット径が最も小さくなる位置の相違を大きくして、それぞれの光ビームの焦点位置すれ量を大きくし、感度よく球面収差を検出できる収差検出装置を提供する。」とあり、解決手段として「光ディスク6から反射した2要素対物レンズ9を透過した光ビームを、第1の光ビームと第2の光ビームに分離するホログラム2と、第1の光ビームおよび第2の光ビームを受光して焦点位置ずれを検出する検出装置7、8とを備える。光ビームが光ディスク6の情報記録層6cまたは6d上で最良像点となる場合の波面を曲線で表したとき、この曲線の極値を境界線として得られるホログラム2の第1の領域2aおよび第2の領域2bにより、該ホログラム2に入射される光ビームを上記第1の光ビームと第2の光ビームに分離する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−182254公報
【特許文献2】特開2002−157771公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ピックアップ装置においては、光ディスク上のスポットを小さくすることで高密度光ディスクの記録/再生を可能としている。例えば、BDなどでは、光ディスク上のスポットを小さくするために、DVDに対して短波長のレーザや高開口数(以下、NAと呼ぶ)の対物レンズを採用している。ところが、対物レンズのNAが大きくなると光ディスクのカバー層の厚み誤差による球面収差が大きく発生する。球面収差が発生すると光ディスク上のスポットが大きくなってしまうため、光ディスク上に情報の記録や、光ディスク上の情報の再生ができなくなってしまう。このため、BDなどの高NAの記録システムでは球面収差補正素子を搭載している。これにより、光ディスク上のカバー層の厚み誤差による球面収差を補正し、安定した記録/再生を行なっている。ただし、球面収差を補正するには光ディスク上で発生する球面収差量を検出する必要がある。この光ディスク上に発生する球面収差量を検出する球面収差補正信号検出技術として、例えば特許文献1、特許文献2がある。特許文献1、特許文献2ともに光ディスクから反射した光ビームを、ホログラム素子によって光軸に近い第1のビームと、その外側の第2のビームに分割し、2つの光ビームの集光位置の違いを検出することで球面収差補正信号を得ている。この方式は、球面収差が発生すると光軸中心の光ビームと光軸中心以外の光ビームの集光位置が異なる物理現象を利用している。
【0006】
ところが、特許文献1、特許文献2ともに対物レンズが変位すると対物レンズとホログラム素子の中心位置がずれるため、第1のビームと第2のビームの集光位置の違いが検出できなくなる課題がある。この内容については、特許文献1、特許文献2には記載されておらず、具体的な解決策も記載されていない。また、特許文献1、特許文献2の構成では、第1のビームと第2のビームの集光位置の違いを検出するため、光ピックアップ装置から出力される信号数が多くなってしまう課題もある。出力信号数が増えることで、光ピックアップ装置と光ディスク装置を接続する素子が大きくなってしまうため、光ディスク装置/光ピックアップ装置の小型化の弊害となる。
【0007】
そこで本発明では、これらの課題を解決し、良好に球面収差補正信号を得られる方法及びそれを用いた光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、特許請求の範囲に記載の発明によって達成できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば複数の情報記録面を有する情報記録媒体を記録/再生する場合に、球面収差補正信号を検出することで安定した記録/再生が行なえる光ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1における光学的再生装置を説明する図である。
【図2】実施例1における光ピックアップ装置と光ディスクの配置を説明する図である。
【図3(a)】実施例1における球面収差を説明する図である。
【図3(b)】実施例1における球面収差を説明する図である。
【図4(a)】実施例1における球面収差補正信号検出について説明する図である。
【図4(b)】実施例1における球面収差補正信号検出について説明する図である。
【図5】実施例1における球面収差補正信号検出位置について説明する図である。
【図6】実施例2における球面収差補正のフローチャートである。
【図7】実施例2における別の球面収差補正のフローチャートである。
【図8】実施例3における光ピックアップ装置の受光面および出力信号を示す図である。
【図9】実施例3における従来の球面収差補正信号検出方法を説明する図である。
【図10】実施例3における本発明の球面収差補正信号検出方法を説明する図である。
【図11】実施例3における本発明の球面収差補正信号検出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
図1は光ディスク装置の概略構成である。光ピックアップ装置1は、光ディスク100のRad方向に沿って駆動できる機構が設けられており、アクセス制御回路172からのアクセス制御信号に応じて位置制御される。
【0012】
レーザ点灯回路177からは所定のレーザ駆動電流が光ピックアップ装置1内の半導体レーザに供給され、半導体レーザからは再生に応じて所定の光量でレーザ光が出射される。なお、レーザ点灯回路177は光ピックアップ装置1内に組み込むこともできる。
【0013】
光ピックアップ装置1内の光検出器から出力された信号は、サーボ信号生成回路174および情報信号再生回路175に送られる。サーボ信号生成回路174では光検出器からの信号に基づいてフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号ならびにチルト制御信号などのサーボ信号が生成され、これを基にアクチュエータ駆動回路173を経て光ピックアップ装置1内のアクチュエータを駆動して、対物レンズの位置制御がなされる。また、サーボ信号生成回路174では光検出器からの信号に基づいて球面収差補正信号を生成し、これを基に球面収差補正素子駆動回路179を経て、球面収差の補正が行なわれる。
【0014】
前記情報信号再生回路175では、光検出器からの信号に基づいて光ディスク100に記録されている情報信号が再生される。
【0015】
前記サーボ信号生成回路174および情報信号再生回路175で得られた信号の一部はコントロール回路176に送られる。このコントロール回路176にはスピンドルモータ駆動回路171、アクセス制御回路172、サーボ信号生成回路174、レーザ点灯回路177、球面収差補正素子駆動回路179などが接続され、光ディスク100を回転させるスピンドルモータ180の回転制御、アクセス方向およびアクセス位置の制御、対物レンズのサーボ制御、光ピックアップ装置1内の半導体レーザ発光光量の制御、ディスク基板厚さの違いによる球面収差の補正などが行われる。ここで例えば、情報信号記録回路178を搭載し、記録型の光ディスク装置としてもなんら問題はない。
【0016】
このような光ディスク装置において、例えば特許文献1の光ピックアップ装置が搭載されているとする。ここでは、特許文献1の光ピックアップ装置で説明を行なうが、特許文献2であっても良いし、その他の光ピックアップ装置であっても問題ない。光ピックアップ装置1は、光ディスクから反射した光ビームを、ホログラム素子によって光軸に近い第1のビームと、その外側の第2のビームに分割し、2つの光ビームの集光位置の違いを検出することで球面収差補正信号を得ることが可能となっている。この方式は、球面収差が発生すると光軸中心の光ビームと光軸中心以外の光ビームの集光位置が異なることを利用している。
【0017】
ところが、対物レンズが変位すると光ビームの中心位置がずれるため、第1のビームと第2のビームの集光位置の違いが検出できなくなる課題がある。
【0018】
この課題に対し、本実施例では記録/再生時に対物レンズがレンズセンタになった状態の時のみ球面収差補正信号検出を行なうことで安定した記録/再生することを可能とする。以下、本実施例について説明を行なう。
【0019】
図2は、光ディスク装置内部の光ピックアップ装置1およびピックアップ駆動機構7を示している。光ディスク装置は、光ピックアップ装置1を半径方向に駆動する駆動機構7を有している。また、光ピックアップ装置1は、対物レンズ2を搭載したアクチュエータ3をディスク半径方向に変位することが可能となっている。光ディスクの記録/再生時に光ディスク上のトラックに追従するために光ピックアップ装置1のアクチュエータ3により対物レンズがディスク半径方向に変位する。これに伴って、球面収差補正信号が劣化する。以下、球面収差補正信号の検出原理について説明する。
【0020】
図3は、レンズで集光したときの光線を示したものである。図3(a)は球面収差がある場合で、図3(b)は球面収差がない場合を示している。ここで、本検出方式に関しては幾何光学で説明が可能であるため、幾何光学による説明を行なう。まず、球面収差がない場合には、1点に収束する。それに対し、球面収差が発生した場合には、1点に収束しない。図4(a)、(b)は球面収差が発生している場合のレンズの光軸に近い光ビームと光軸から離れたレンズ周辺部に入射した光ビームの収束位置を示したものである。レンズの光軸に近い光ビームの焦点位置Daに比べ、光軸から離れたレンズ周辺部に入射した光ビームの焦点位置Dbがずれることがわかる。このため、レンズの光軸に近い光ビームと光軸から離れたレンズ周辺部に入射した光ビームを独立に焦点位置ずれ量を検出すれば、その差から球面収差補正信号が得られることがわかる。このような焦点位置は、フォーカス誤差信号を検出することで検出可能である。このフォーカス誤差信号検出方式としては、スポットサイズ検出方式、非点収差方式、ナイフエッジ方式がある。特許文献1ではスポットサイズ検出方式用いている。
【0021】
ここで、特許文献1ではホログラム素子によってレンズの光軸に近い光ビームと光軸から離れたレンズ周辺部に入射した光ビームをホログラム素子により分離することで、2つのフォーカス誤差信号を観測し、その差を演算することで球面収差補正信号を生成している。しかし、上記したように、対物レンズが変位した場合には、安定した球面収差補正信号が得られない。これは、対物レンズが変位によって、ホログラム素子のような分離素子に対して光ビームがずれ、2つビームの集光位置の位置のずれ量を検出することが困難になるためである。
【0022】
そこで、本実施例ではこの課題に対し、対物レンズがレンズセンタになった状態の時のみ球面収差補正信号検出を行なうことで安定した球面収差補正信号を得ることを可能としている。対物レンズがレンズセンタにある場合には光ビームと分離素子との相対位置のずれは発生しないため、安定した球面収差補正信号が得られることは上記説明から明らかである。
【0023】
ここで、ディスクを記録/再生している状態での球面収差検出方法について説明する。図5は、記録/再生時の球面収差補正信号検出の対物レンズ位置について示したものである。図5は、縦軸がピックアップ位置、横軸が対物レンズ(アクチュエータ)位置を示している。ここでは、記録/再生時の対物レンズの最大変位量をレンズセンタに対して±0.1mmとした。また、点77で示した位置は対物レンズがレンズセンタになる位置である。
【0024】
まず、レンズセンタにあった対物レンズは、ディスクを記録/再生するために外周方向に変位する。ここで、対物レンズの変位量が+0.1mmとなった場合には、図2の駆動機構11によりピックアップ自体が外周方向に変位する。このとき、対物レンズの変位量は、−0.1mmとなる。このように、対物レンズと光ピックアップがそれぞれ変位することで光ディスクを内周から外周または外周から内周に記録/再生することが可能となる。本実施例では、点77で示した位置付近で球面収差補正信号を検出する。このとき、球面収差補正信号が安定的に検出できる場合には、必ずしも点77の位置に限定されない。例えば、対物レンズに対してホログラム素子がずれている場合や、スポットに対して検出器がずれている場合には、それに応じて球面収差補正信号検出位置を変えることが望ましい。
【0025】
球面収差補正については、球面収差補正信号を検出している間に補正を行っても良いし、球面収差補正信号を検出後に球面収差補正信号の信号量に応じた球面収差補正を行っても良い。
【0026】
このようにすることで、安定した球面収差補正信号を検出することが可能となる。ここで、本実施例によれば、球面収差補正信号を一定間隔ごとに検出する構成となっていため、対物レンズがレンズセンタから大きく変位している場合には、球面収差補正信号を検出しない。このため、対物レンズがレンズセンタを離れてから次にレンズセンタに変位するまでの間に関しては、ディスクで発生している球面収差量を検出できない。ただし、その間のディスクカバー層の厚みの変化が小さいため、実用上問題とならない。また、球面収差補正信号の検出間隔については、対物レンズの最大変位量を変えることで変化させることが可能である。なお、ここでは光ディスクの記録/再生時で説明を行なったが、それだけに限定されず、球面収差信号を検出する(または補正する)場合には予め対物レンズがレンズセンタとなるようにしてあれば同様の効果が得られることは言うまでもない。さらに、本実施例では、特許文献1を例にして説明を行ったが、光束の内側と外側の収束位置の差を検出する方式である限り、他の構成であっても同様の効果が得られることは言うまでもない。また、特許文献1では、球面収差補正信号検出にスポットサイズ検出方式により検出していたが、本実施例はこの検出方式のみ効果があるわけではなく、例えば非点収差検出方式やナイフエッジ検出方式であっても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【実施例2】
【0027】
図6は本発明の第2の実施例に係る球面収差補正のフローチャートを示したものである。構成については、実施例1と同様である。以下、球面収差補正の流れについて説明していく。
【0028】
まずステップ1で、対物レンズとホログラム素子の中心位置がディスク半径方向で略一致するよう対物レンズを変位して調整する。本来、対物レンズはホログラム素子と半径方向に略一致させるよう光ピックアップ装置で調整されるが、現実には調整時のずれが残留し、対物レンズとホログラム素子が半径方向に略一致しないことがある。このため、対物レンズを半径方向に駆動することで対物レンズとホログラム素子の半径方向の位置を略一致させるのである。このとき、対物レンズの半径方向の位置は、例えば光ディスク装置が出荷される前に球面収差信号が安定的に得られる対物レンズ位置を記憶しておき、それに従って対物レンズの半径方向の位置を決めても良いし、例えば、光ピックアップ装置の信号から位置を決めても良い。
【0029】
次にステップ2で対物レンズのフォーカス制御を行なう。この時、球面収差補正信号に基準電位からのDC信号が出力されればディスク上に球面収差があると判断する。もし球面収差補正信号がない場合には、球面収差補正を終了する。それに対し、球面収差補正信号が出力されれば、球面収差補正素子を駆動することでディスク上の球面収差を補正する。(ステップ3)
このように、対物レンズとホログラム素子が半径方向に略一致するようにしてから球面収差補正信号を検出し、球面収差補正を行なうことで安定した記録/再生を行なうことが可能となる。
【0030】
このことから例えば、図7のフローチャートに示すようにステップ1で対物レンズのフォーカス制御を行なった後、ステップ2で対物レンズを半径方向に駆動し、対物レンズとホログラム素子の半径方向の位置を略一致させ、ステップ3で球面収差補正信号量に応じた球面収差補正を行なっても同様の効果が得られることは言うまでもない。また、各ステップの間に他の動作を行なっても良く、最終的に対物レンズとホログラム素子が半径方向に略一致するようにすれば同様の効果が得られることは言うまでもない。さらに、球面収差補正のタイミングに関しては限定されず、例えば光ディスク挿入時、光ディスクの記録/再生前などであっても良い。ここで、本実施例は球面収差補正素子に関しては、限定されないことは言うまでもない。さらに、本実施例では、特許文献1を例にして説明を行ったが、光束の内側と外側の収束位置の差を検出する方式である限り、他の構成であっても同様の効果が得られることは言うまでもない。また、特許文献1では、球面収差補正信号検出にスポットサイズ検出方式により検出していたが、本発明はこの検出方式のみ効果があるわけではなく、例えば非点収差検出方式やナイフエッジ検出方式であっても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【実施例3】
【0031】
図10は本発明の第3の実施例に係る球面収差補正信号検出に関する信号出力に関して示したものである。その他の構成については、実施例1と同様である。このような光ディスク装置において、例えば特許文献1の光ピックアップ装置が搭載されているとする。ここでは、特許文献1の光ピックアップ装置で説明を行なうが、特許文献2であっても良いし、その他の光ピックアップ装置であっても問題ない。このような構成において以下では球面収差補正信号検出方法について説明を行なう。
【0032】
実施例1で説明したように、球面収差が発生すると、レンズの光軸に近い光ビームの焦点位置に比べ、光軸から離れたレンズ周辺部に入射した光ビームの焦点位置がずれる。このため、レンズの光軸に近い光ビームと光軸から離れたレンズ周辺部に入射した光ビームを独立に検出すると、レンズの光軸に近い光ビームから検出したフォーカス誤差信号Iと、光軸から離れたレンズ周辺部に入射した光ビームから検出したフォーカス誤差信号Aにずれが生じる。本実施例は、このずれ量検出に関する。
【0033】
まず、特許文献1の信号検出方式について説明する。図8は、特許文献1と同様の方式での受光面と出力信号を示したものである。このとき、特許文献1ではフォーカス誤差信号I(特許文献1ではFE)とフォーカス誤差信号A(特許文献1ではTH)を検出するために、受光面60〜71の12面から得られる信号Fa〜Fmの信号12つを出力している。図9に、光ピックアップ装置から出力された信号から光ディスク装置でどのように信号演算処理が行なわれるかについて示す。光ピックアップ装置から出力された12本の出力信号は、フォーカス誤差信号Iを生成するための信号Fa〜Ffと、フォーカス誤差信号Aを生成するための信号Fg〜Fmとに分けられ、差動演算処理が行なわれる。このとき、フォーカス誤差信号I、フォーカス誤差信号Aは以下の演算により生成される。
【0034】
【数1】


この2つのフォーカス誤差信号を検出することにより球面収差補正信号を検出することができる。詳細については特許文献1に記載されているので省略する。ここで、上記説明でもわかるように2つのフォーカス誤差信号を生成するための出力信号数が多くなることが課題となる。
【0035】
次に本実施例について更に詳しく説明する。本実施例では、図10に示すように、光ピックアップ装置内にスイッチ33を搭載しており、選択的にフォーカス誤差信号Iとフォーカス誤差信号Aを切り替えることが可能となっている。ここで、信号演算処理回路は、端子S1からS6に対し以下の演算を行なう。
【0036】
【数2】


このような構成において、球面収差補正信号を検出する場合について説明する。球面収差補正信号を検出するには、まずフォーカス制御を行なう。例えば、ここでフォーカス制御には、フォーカス誤差信号Iを用いるとする。このため、光ピックアップ装置の出力は図10(1)に示すようになっており、この状態でフォーカス制御が行なわれているとする。本実施例では、球面収差補正信号を検出するために、一定の間フォーカス制御を停止することを特徴としている。フォーカス制御を停止するとき、対物レンズはフォーカス制御を停止する直前の位置に固定する。この間に、図10(2)に示すようにスイッチ33を切り替え、フォーカス誤差信号Aを検出する。図11は、フォーカス制御から対物レンズを固定するまでの時刻の検出信号を示している。球面収差が発生していない場合には、対物レンズを固定しても図11(a)のようにフォーカス誤差信号Aの出力は0のままである。それに対し、球面収差が発生している場合には、図11(b)のようにフォーカス誤差信号にオフセットが生じる。このオフセットは、上記したように、レンズの光軸に近い光ビームから検出したフォーカス誤差信号Iと、光軸から離れたレンズ周辺部に入射した光ビームから検出したフォーカス誤差信号Aのフォーカス位置の違いを検出したことに相当する。このため、対物レンズを固定した直後のフォーカス誤差信号Aが球面収差補正信号であり、このオフセットがなくなるよう球面収差補正を行なうことで、安定した記録/再生が行なえる。球面収差補正については、球面収差補正信号を検出している間に補正を行っても良いし、球面収差補正信号を検出後に球面収差補正信号の信号量に応じた球面収差補正を行っても良い。また、球面収差補正信号を検出した後は、再びフォーカス誤差信号Iを検出し、フォーカス制御を行なうことで光ディスクの記録/再生が可能となる。
【0037】
以上のように、フォーカス誤差信号を検出する信号成分と球面収差補正信号を検出するもう一つのフォーカス誤差信号の信号成分をスイッチ33で出力を切り替えることで球面収差補正信号が検出可能となる。このようにすることにより、光ピックアップの出力信号数を減らすことが可能となり、小型化が可能となる。
【0038】
本実施例では、12本の信号線を結線しなかったが結線可能な信号を結線したとしても同様の効果が得られることは言うまでもない。また、実際にはディスクは、ディスク平面方向に対して厳密には平面でないため、フォーカス誤差信号の出力信号が変動してしまう可能性があるが、対物レンズを固定する時間を短くするもしくは、球面収差補正信号検出時間を短くすることで対応可能である。さらに本実施例では、レンズの光軸に近い光ビームと、光軸から離れたレンズ周辺部に入射した光ビームで説明を行ったが、例えば、レンズ全面の光ビームと光軸から離れたレンズ周辺部に入射した光ビームでも良いし、レンズ全面の光ビームとレンズの光軸に近い光ビームとのフォーカス位置の違いを検出しても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0039】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:光ピックアップ装置、2:対物レンズ、5:アクチュエータ、7:駆動機構、15:集光レンズ、33:スイッチ、60〜71:受光面、171:スピンドルモータ駆動回路、172:アクセス制御回路、173:アクチュエータ駆動回路、174:サーボ信号生成回路、175:情報信号再生回路、176:コントロール回路、177:レーザ点灯回路、178:情報記録回路、179:球面収差補正素子駆動回路、180:スピンドルモータ、Fa〜Fm:光ピックアップ出力信号、S1〜S6:演算処置回路端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を光ディスクに照射する対物レンズと、
前記対物レンズを半径方向に移動させるアクチュエータと、
前記光ディスクのカバー層厚さ誤差から発生する球面収差を補正するための球面収差補正素子と、
前記光ディスクから反射した前記光束を分離する分離素子と、
前記分離素子で分離された光束を受光する光検出器と、
を備えた光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置を半径方向に移動させる駆動機構と、
前記光ピックアップ装置内における前記半導体レーザを駆動するレーザ点灯回路と、
前記光ピックアップ装置内の前記光検出器から検出された信号を用いてフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号、球面収差補正信号を生成するサーボ信号生成回路と、
前記光ディスクに記録された情報信号を再生する情報信号再生回路と、
を備え、
サーボ信号検出もしくはサーボ制御は、前記対物レンズが所定の位置になった場合に行なうことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
レーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を光ディスクに照射する対物レンズと、
前記対物レンズを半径方向に移動させるアクチュエータと、
前記光ディスクのカバー層厚さ誤差から発生する球面収差を補正するための球面収差補正素子と、
前記光ディスクから反射した前記光束を分離する分離素子と、
前記分離素子で分離された光束を受光する光検出器と、
を備えた光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置を半径方向に移動させる駆動機構と、
前記光ピックアップ装置内における前記半導体レーザを駆動するレーザ点灯回路と、
前記光ピックアップ装置内の前記光検出器から検出された信号を用いてフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号、球面収差補正信号を生成するサーボ信号生成回路と、
前記光ディスクに記録された情報信号を再生する情報信号再生回路と、
を備え、
サーボ信号検出もしくはサーボ制御は、前記対物レンズ位置と前記分離素子の位置が半径方向に略一致した場合に行なうことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
レーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を光ディスクに照射する対物レンズと、
前記対物レンズを半径方向に移動させるアクチュエータと、
前記光ディスクのカバー層厚さ誤差から発生する球面収差を補正するための球面収差補正素子と、
前記光ディスクから反射した前記光束を分離する分離素子と、
前記分離素子で分離された光束を受光する光検出器と、
を備えた光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置を半径方向に移動させる駆動機構と、
前記光ピックアップ装置内における前記半導体レーザを駆動するレーザ点灯回路と、
前記光ピックアップ装置内の前記光検出器から検出された信号を用いてフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号、球面収差補正信号を生成するサーボ信号生成回路と、
前記光ディスクに記録された情報信号を再生する情報信号再生回路と、
を備えた光ディスク装置であって、
サーボ信号を検出するために前記光ピックアップ装置内の前記対物レンズを一時的にフォーカス方向に静止状態にすることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
レーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を光ディスクに照射する対物レンズと、
前記対物レンズを半径方向に移動させるアクチュエータと、
前記光ディスクのカバー層厚さ誤差から発生する球面収差を補正するための球面収差補正素子と、
前記光ディスクから反射した前記光束を分離する分離素子と、
前記分離素子で分離された光束を受光する光検出器と、
を備えた光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置を半径方向に移動させる駆動機構と、
前記光ピックアップ装置内における前記半導体レーザを駆動するレーザ点灯回路と、
前記光ピックアップ装置内の前記光検出器から検出された信号を用いてフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号、球面収差補正信号を生成するサーボ信号生成回路と、
前記光ディスクに記録された情報信号を再生する情報信号再生回路と
を備え、
前記光ピックアップ装置内の出力信号を切り替えることでサーボ信号を生成することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項記載の光ディスク装置であって、
前記サーボ信号は球面収差補正信号であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項記載の光ディスク装置であって、
前記光ピックアップ装置内には、前記光ディスクから反射した前記光束を少なくとも2つに分離する分離素子を搭載していることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
請求項6記載の光ディスク装置であって、
前記光ピックアップ装置内の分離素子は、少なくとも光束の外側と光束の内側に分離し、前記光ピックアップ装置内の分離素子で分離した光束の外側と光束の内側から得られた信号を用いて球面収差補正信号を生成することを特徴とした光ディスク装置。
【請求項8】
レーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を光ディスクに照射する対物レンズと、
前記対物レンズを半径方向に移動させるアクチュエータと、
前記光ディスクから反射した前記光束を受光する光検出器と、
を備え、
前記光検出器から出力された複数の信号を切り替えて光ピックアップ装置の出力とすることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項9】
レーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光束を光ディスクに照射する対物レンズと、
前記対物レンズを半径方向に移動させるアクチュエータと、
前記光ディスクのカバー層厚さ誤差から発生する球面収差を補正するための球面収差補正素子と、
前記光ディスクから反射した前記光束を受光する光検出器と、
を備え、
前記光検出器から出力された複数の信号を切り替えることで球面収差補正信号を生成する光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−113615(P2011−113615A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269427(P2009−269427)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】