説明

環境情報計測装置、環境情報計測システム、及び環境情報計測方法

【課題】測定対象箇所の環境情報を、低消費電力な回路構成で測定できる環境情報計測装置を提供する。
【解決手段】電源部20は、環境情報収集装置51から受信した電波を基に電源の電力を生成する。サーミスタRSMは、環境(温度)に応じてインピーダンスが変化する回路素子である。そして、最初に、第1のスイッチSW1を閉、第2のスイッチSW2を開とし、電源部20によりコンデンサCを充電する。次に、第1のスイッチSW1を開、第2のスイッチSW2を閉とし、サーミスタRSMを通してコンデンサCの放電を開始する。その後、計時部40により、コンデンサCの電位が所定の基準電圧Vrefになるまでの時間(サーミスタの温度により変化する時間)を、計測データとして測定する。この計測データを、通信部10により環境情報収集装置51に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定対象箇所の環境情報を測定することができる、環境情報計測装置、環境情報計測システム、及び環境情報計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広範囲に分散した測定対象箇所ごとの環境情報をそれぞれ測定することが必要とされる場合がある。測定される環境情報には、温度、湿度、気圧などの情報があり、環境情報計測装置がそれらの情報を測定する。測定する情報に対応できる様々な測定方法が知られている。例えば、温度を測定する場合では、被測定対象の温度を非接触で測定する方法としては、赤外線カメラを用いる方法が知られている(非特許文献1を参照)。また、被計測対象に接触して計測する方法には、示温ラベルを用いる方法がある。示温ラベルを用いる方法は、目視で表示色を検出することが必要とされ、示温ラベルを確認できる位置まで測定者が接近して観測している。これらの被測定対象の温度を測定する方法は、間接的な測定であるが気温を測定する方法として用いることができる。
【0003】
ただし、上記のような方法では、測定者による作業が必要になることから、測定対象箇所、測定頻度が多くなる用途や、測定者が接近できない場所の測定には適さない場合がある。そこで、被計測対象に温度センサを接触させて計測する記録装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3966779号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】浜松フォトニクス株式会社、”近赤外〜赤外用カメラ/画像計測装置”、[online]、平成22年7月、浜松フォトニクス株式会社、[平成22年7月28日検索]、インターネット<URL:http://jp.hamamatsu.com/products/camera/0001/index_ja.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電力系統における送電線や配電線の温度管理(例えば、送電線や配電線等の接続点の温度管理)や、電車線へ電力を供給するためのき電線の温度管理(例えば、き電線の接続点の温度管理)を行うことが求められている。測定対象箇所は、広範囲に分散しており、繰り返して測定することが必要とされ測定頻度の要求も高い。
【0007】
非特許文献1に示されるような赤外線カメラを用いる方法では、測定箇所と被計測対象との間の距離を置いて計測することができる。赤外線カメラを測定箇所ごとに定点設置する場合では、必要とされる設備規模が大きくなり実現困難である。また、赤外線カメラを測定箇所に移動させて測定する場合では、連続的な測定ができなくなり、測定者が、被計測対象に赤外カメラを向けて計測することが必要とされることから、測定箇所ごとの計測時間も長くなる。
また、示温ラベルを用いる方法は、目視で表示色を確認できる位置まで測定者が接近して観測することが必要とされることから、充電状態の電線の温度計測には、安全上の理由で適用条件が制限される場合がある。
そこで、特許文献1に記載の記録装置を用いることにより、測定者の作業量を低減させるとともに、安全に測定を行うことができる。
【0008】
しかしながら、被測定対象箇所(温度測定対象箇所)がさらに増大する場合や、あるいは測定頻度がさらに高めることが必要となる場合がある。このような要求に応じるために、記録した測定データを通信する時間が長くなり、また、環境情報計測装置の消費電力が増加し、大規模な装置が必要となるなど実現が困難な場合が生じる。上記は、温度計測の場合を示したものであるが、被測定対象箇所の環境情報を収集する場合においても同様の問題が生じる。つまり、気温、湿度や気圧などの環境情報を収集する被測定対象箇所(温度測定対象箇所)が多い場合や、あるいは測定頻度が高い場合には、上記のように温度を計測することが困難であるのと同様に実現が困難な場合が生じる。また、気温以外の測定項目の環境情報(湿度、気圧など)の測定においても、同様に実現が困難な場合が生じるという問題がある。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、被測定対象箇所の環境情報を測定できる低消費電力な環境情報計測装置、環境情報計測システム及び環境情報計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の環境情報計測装置は、受信した電波に基づいて、負荷に供給する電源の電力を生成する電源部と、検出した環境に応じてインピーダンスが変化する回路素子又は静電容量が変化する回路素子のうちいずれかを備える検出部を有しており、前記検出部において形成される回路網の応答特性に応じて変化する信号を出力する環境情報検出部と、前記信号の電圧が、計測開始から予め定められる検知電圧に達するまでの時間を計測し、前記計測された結果に基づいて前記環境に応じた環境情報を生成する計時部と、前記環境情報検出部の動作を制御する制御部と、を備え、前記負荷には、前記環境情報検出部、前記計時部、及び前記制御部が含まれることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の環境情報計測装置は、前記環境に応じて生成された前記環境情報を要求に応じて送信する通信部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の環境情報計測装置は、前記制御部は、前記生成された電源の電圧に応じて、前記検出部に含まれる容量への充電と、前記計時部による時間の計測とを制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の環境情報計測装置は、前記制御部は、前記生成された電源の電圧が、予め定められる所定の充電開始電圧に達した場合、前記検出部に含まれる容量への充電を開始させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の環境情報計測装置は、前記計時部は、前記検出部に含まれる容量からの放電を開始してから、前記信号の電圧が前記検知電圧に低下するまでの時間を計測することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の環境情報計測装置は、前記環境情報検出部が、前記電源部から前記検出部に含まれる容量への充電を遮断する第1のスイッチと、前記検出部に含まれる容量からの放電を遮断する第2のスイッチと、を備え、前記制御部は、前記容量に充電する場合に、前記第1のスイッチを接続状態にして前記電源部から前記容量への充電を行い、前記第2のスイッチを開放状態にして前記容量からの放電を停止し、前記容量から放電する場合に、前記第1のスイッチを開放状態にして前記電源部から前記容量への充電を停止し、前記第2のスイッチを接続状態にして前記容量から放電を行い、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の環境情報計測装置は、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとにおける接続状態と開放状態は、互いに相補の関係が保たれることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の環境情報計測装置は、前記計時部が、前記検出部に含まれる容量から放電を開始する前に、前記容量への充電を行う過程において、前記信号の電圧が前記検知電圧に達してから、前記充電を停止するまでの時間を計測することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の環境情報計測装置は、前記環境情報検出部は、前記検出部に設けられる回路素子に応じて、前記環境における温度、気圧又は湿度のいずれかを検出することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の環境情報計測装置は、前記環境情報検出部は、温度測定対象である電線と熱的に結合するように設けられることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の環境情報計測システムは、前記検出した環境情報に基づいて計測された情報を送信する上記のいずれかに記載の環境情報計測装置と、前記送信された情報を収集する環境情報収集装置とを備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の環境情報計測方法は、受信した電波に基づいて、負荷に供給する電源の電力を生成する電力生成過程と、環境情報検出部によって検出した環境に応じてインピーダンス又は静電容量が変化する環境情報検出過程と、前記環境情報検出部において前記検出部を含んで形成される回路網の応答特性に応じて変化する信号の電圧が、計測開始から予め定められる検知電圧に達するまでの時間を計時部によって計測する時間計測過程とを含み、前記負荷には、前記環境情報検出部及び前記計時部が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の環境情報計測装置においては、電源部が、受信した電波に基づいて、負荷に供給する電源の電力を生成する。環境情報検出部は、検出した環境に応じてインピーダンスが変化する回路素子又は静電容量が変化する回路素子のうちいずれかを備える検出部を有しており、検出部において形成される回路網の応答特性に応じて変化する信号を出力する。計時部は、信号の電圧が、計測開始から予め定められる検知電圧に達するまでの時間を計測し、計測された結果に基づいて前記環境に応じた環境情報を生成する。制御部は、環境情報検出部の動作を制御する。また、上記負荷には、環境情報検出部、計時部、及び制御部が含まれる。
これにより、被測定対象箇所の環境情報を低消費電力な回路構成で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の環境情報計測装置が設備される電車線の例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係わる環境情報計測装置の構成を示すブロック図である。
【図3】環境情報計測部30の構成例を示す図である。
【図4】環境情報計測装置1の動作を説明するための図である
【図5】受信検出とコンデンサCへの充電タミングの例を示す図である。
【図6】サーミスタの温度特性の一例を示す図である。
【図7】倍電圧整流回路21の構成例を示す図である。
【図8】環境情報計測システムの構成例を示す図である。
【図9】環境情報計測部30Aの構成例を示す図である。
【図10】検出部35を等価回路で示した動作モデルを示す図である。
【図11】温度ごとに計算された結果を示す図である。
【図12】環境情報計測部30Aを用いて測定した温度の実測値と理論値とを比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0025】
[第1実施形態]
本実施の形態に示す環境情報計測装置は、き電線の接続点(例えば、電線同士を圧着して接続する圧着スリーブ)等に装着されるものであり、通信手段とするRFIDタグを備えている。そして、車上等に設置した環境情報収集装置(タグリーダ)は、環境情報計測装置と無線通信を行うことにより、環境情報計測装置によって計測された環境情報を自動で収集して設備管理を行うものである。最初に、環境情報計測装置が、温度を計測する例をあげて説明する。温度の計測と同様の方法を用いることにより、環境情報計測装置が配置された箇所の気温の測定に適用することができる。
【0026】
(環境情報計測装置が設備される例についての説明)
この実施の形態に示す環境情報計測装置は、電力系統における送電線や配電線の温度管理(例えば、配電線や配電線等の接続点の温度管理)や、電車線へ電力を供給するためのき電線の温度管理(例えば、き電線の圧着スリーブ等による接続点の温度管理)を行うために使用されるものである。
【0027】
例えば、図1は、本実施形態における環境情報計測装置が設備される電車線の例を示す図である。電車線100は、き電線101、トロリー線102、補助吊架線103、吊架線104、トロリー線102と補助吊架線103を連結するハンガー105、き電線101と補助吊架線103を接続するき電分岐部107aを有し、吊架線104は支持点104aにおいて、図示しない電柱に固定されている。き電分岐部107aの一端はき電線101にクランプ108aにより固定されており、き電分岐部107aの他端は補助吊架線103にクランプ108bにより固定されている。
そして、環境情報計測装置1は、き電線101のき電分岐部107aのクランプ108aに装着されている。さらに、環境情報計測装置1は、き電線101の接続点、例えば、圧着スリーブを用いた接続箇所(圧着スリーブ101a)に装着されている。このように装着することにより、環境情報計測装置1は、温度測定対象である電線と熱的に結合するように設けることができる。
【0028】
上記、き電分岐部107aのクランプ108aや、き電線101の接続箇所(圧着スリーブ101a)では、接触抵抗を有しており、常時又は不連続に電流が通過することにより、大なり小なりの熱が発生する。また、その発熱による温度上昇が激しくなくても、長時間にわたり高い温度が続くと、腐蝕、疲労により電気抵抗が増大し、そのまま放置すると発熱により接続箇所の切断が起き、給電に障害が生じることがある。このため、き電分岐部107aや、き電線101の接続箇所101aに環境情報計測装置1を設備して、き電分岐部107aのクランプ108aや、き電線101の接続箇所101aにおける温度上昇を監視する。なお、環境情報計測装置1は、き電分岐部107aのクランプ108aと、き電線101の接続箇所101aとのうちのいずれか一方に設備するようにしてもよい。
【0029】
(環境情報計測装置の構成例の説明)
図2は、本発明の実施形態に係わる環境情報計測装置1の構成を示すブロック図である。この図の環境情報計測装置1は、アンテナ13を通して無線により環境情報収集装置(タグリーダ)51と通信を行う通信部10と、アンテナ13により受信した電波の電力から電源(直流電源)を生成する電源部20と、サーミスタを用いて温度計測を行う環境情報計測部30と、環境情報計測部30において検出された結果に基づいて温度計測データを生成する計時部40と、この環境情報計測装置1の全体を制御する制御部2と、記憶部3とを備えている。
【0030】
なお、この環境情報計測装置1は、通信部、CPU、ROM等と、その他の関連するIC回路(集積回路)とを備え、アンテナ13を通して無線により外部装置と通信を行うパッシブタイプのRFID(Radio Frequency IDentification)タグを用いて実現されるものである。なお、RFIDタグは、近年、小さなワンチップのICで実現できるようになってきたため、ICタグとも呼ばれる。
【0031】
通信部10は、受信部11と送信部12とで構成される。受信部11は、アンテナ13を通して、外部装置(環境情報収集装置51)から送られる予め定められた変調方式の電波を受信し、受信した電波を復調して、信号を受信する。また、送信部12は、環境情報計測部30で計測された温度計測データに基づく変調波を生成して、この変調波を増幅して、アンテナ13を通して無線電波として外部装置に送信する。なお、アンテナ13は、RFIDの基板状部材の表面に銅箔のパターン等により形成されるアンテナであり、例えば、アンテナ13の長さは、無線送信周波数のλ/4長となるように形成されている。
【0032】
制御部2は、環境情報計測装置1の各部の動作を統括して制御する。例えば、この制御部2は、環境情報計測部30における温度計測を制御し、また、環境情報計測部30で計測された温度計測データを信号波として無線送信するための制御を行う。なお、この環境情報計測装置1には、それぞれ固有の識別番号(センサID)が付与されており、この識別情報は記憶部3にRFID識別情報として記憶されている。
【0033】
電源部20は、タグリーダ(受信機)50からアンテナ13を通して受信した電波をエネルギー源として、RFIDタグ内の各部へ電力を供給するための電源部である。この電源部20は、倍電圧整流回路21と充電制御部22とを備える。倍電圧整流回路21は、アンテナ13を通して受信した電波を倍電圧整流して直流電圧を生成するとともに、この直流電圧を所望の電圧まで上昇させる。また、充電制御部22は、所望の電圧まで上昇させた直流電圧により環境情報計測部30内のコンデンサCなどの静電容量成分を充電する。この充電制御部22は、倍電圧整流回路21により生成された電源電圧の大きさを検出する電源電圧検出部22Aを備える。
【0034】
この電源電圧検出部22Aは、図5(A)及び(B)に示すように、無線電波から生成した電源の電圧(電源電圧)が所定の閾値電圧Vth1を超えた場合に、環境情報収集装置(タグリーダ)51から電波を受信したことを検出し、この受信検出の情報を制御部2に通知する。また、電源電圧検出部22Aは、図5(A)に示すように、電源電圧が所定の閾値電圧Vth2(充電開始電圧)を超えた場合に、この情報を制御部2に通知する。制御部2は、電源電圧検出部22Aにより電源電圧が閾値電圧Vth2(充電開始電圧)を超えたことが検出された場合に、充電制御部22により環境情報計測部30内のコンデンサCの充電を開始する。また、コンデンサCに充電を開始するタイミングは、図5(B)に示すように、電源電圧が所定の閾値電圧Vth1を超えた後、制御部2において所定時間Tをタイマにより計数し、この所定時間Tの経過後にコンデンサCへの充電を開始するようにしてもよい。なお、倍電圧整流回路21の構成例については、後述する。
【0035】
(環境情報計測部30と計時部40の構成と動作の説明)
続いて、環境情報計測部30と計時部40の構成と動作について説明する。
図3は、環境情報計測部30と計時部40の構成例を示す図である。図3(A)に示すように、環境情報計測部30は、スイッチSW1(31)及びSW2(32)と、電源部20により生成された電源(電圧Vcc)により充電されるコンデンサC(33)と、温度に応じて抵抗値が変化する温度センサであるサーミスタRSM(34)と、電源電圧を分圧する抵抗R1(38)及びR2(39)を備える。
このコンデンサC(33)と、サーミスタRSM(34)とを含んで構成される回路網により検出部35が形成される。
また、スイッチSW1(31)及びSW2(32)は、実際には、MOSトランジスタやアナログスイッチ等で構成される半導体スイッチである。
また、計時部40は、コンパレータ46と、カウンタ47と、基準クロック発生回路47Aと、を備える。コンパレータ46、カウンタ47、及び基準クロック発生回路47Aは、コンデンサCの放電開始から、コンデンサCの充電電位が基準電圧Vrefに至るまでの時間を計測(計時)する。
【0036】
この図において、スイッチSW1は、一端がコンデンサCの正極端子に接続され、他端が電源線V+を通して電源部(電圧Vcc)20の正極端子に接続される。スイッチSW2は、一端がコンデンサCの正極端子に接続され、他端がコンパレータ46の非反転入力端子Vin(+)に接続される。また、温度センサとなるサーミスタRSMは、一端がコンパレータ46の非反転入力端子Vin(+)に接続され、他端が電源線V−を通して電源部20の負極端子に接続される。また、コンデンサCの負極端子が電源線V−を通して電源部20の負極端子に接続される。
【0037】
抵抗R1は、一端が電源線V+に接続され、他端がノードN1を通して抵抗R2の一端に接続され、抵抗R2の他端は、電源線V−に接続されている。したがって、ノードN1は、電源部20の出力電圧Vccの抵抗分圧点となる。また、このノードN1は、コンパレータ46の反転入力端子Vin(−)に接続される。また、コンパレータ46の出力側はカウンタ47の計数制御端子aに接続されている。また、カウンタ47のクロック入力端子bは基準クロック発生回路47Aの出力端子に接続されており、このクロック入力端子bに基準クロック発生回路47Aから基準クロックCLKが入力される。
【0038】
上記、サーミスタRSMは、例えば、環境情報計測装置1の装着面(温度測定対象箇所への装着面)側に露出されるようにして配置される。そして、環境情報計測装置1は、このサーミスタRSMが温度監視対象箇所(例えば、き電線101とき電を接続する圧着スリーブ101aの表面)にシリコンゴムコンパウンド(電気絶縁性と熱伝導性を高めるためのシリコンゴムコンパウンド)あるいはシリコングリース等を介して密着するようにして固定される。なお、サーミスタRSMを環境情報計測装置1の本体から分離し、信号線を介して引き出せるように構成し、サーミスタRSMを単体で温度監視対象箇所に固定するようにしてもよい。
【0039】
以下、図3(A)及び図3(B)を参照して、環境情報計測部30の動作について説明する。なお、この図の説明において、電源部20から環境情報計測部30に電源電圧Vcc(充電開始電圧)が供給可能な状態にあるものとする。
【0040】
この状態において、制御部2からの制御指令により、スイッチSW1を閉にし、SW2を開にすることにより、コンデンサCを電源電圧Vccに充電する(図3(B)の時刻t0の状態)。次に、同じく制御部2からの制御指令により、スイッチSW1を開にし、SW2を閉にすることにより、コンデンサCに蓄積された電荷を、サーミスタRSMを通して放電する。コンデンサCの充電電圧は次第に低下し、時刻t1において、基準電圧Vrefに等しくなる。そして、コンデンサCの充電電圧が基準電圧Vref以下となった際にコンパレータ46の出力信号VoutがH状態(コンパレータへの電源供給電圧V+相当の電位)からL状態(コンパレータへの電源供給電圧V−相当の電位)に反転する。
【0041】
カウンタ47は、制御部2からの制御指令により、コンデンサCの放電開始からコンパレータ46の出力信号がH状態からL状態に遷移するまでの時間tdの間、基準クロック発生回路47Aから出力される基準クロックCLKを計数する。このように、環境情報計測部30では、コンデンサCの放電開始からコンパレータ46が動作するまで時間(基準クロック数)をカウントすることにより温度を時間に変換して測定している。
【0042】
例えば、サーミスタRSMは、図6に示すように、温度が上昇するに従い、その抵抗値が減少する。したがって、温度が上昇するに従い、コンデンサCの充電電荷の放電速度が早くなり、カウンタ47で計数される基準クロックの数が減少する。このように、カウンタ47で計数される基準クロックの数を基に、サーミスタRSMの温度(すなわち、温度測定対象箇所の温度)を測定することができる。
なお、図3(A)に示す環境情報計測部30の回路構成を採用した背景と、図3(B)に示される数式等については、後述する。
【0043】
また、図4は、環境情報計測装置1の全体の動作を説明するための図である。なお、この例では、環境情報収集装置(タグリーダ)51が環境情報計測装置(RFIDタグ)1に遠方から次第に接近し、環境情報収集装置(タグリーダ)51と環境情報計測装置(RFIDタグ)1とが互い交信可能な距離に接近した状態において、環境情報収集装置51が環境情報計測装置1から温度データを受信する例を示している。以下、図4を参照して、環境情報計測装置1の動作について説明する。
【0044】
タグリーダ(環境情報収集装置)51は、環境情報計測装置(RFIDタグ)1に対して、温度情報の送信を要求する信号を電波により送信しつつ(ステップS11)、環境情報計測装置1に接近する。環境情報計測装置1は、環境情報収集装置51から送信される電波を受信し(ステップS21)、電源部20により、この受信した電波により得られる電力から電源(直流電源)を生成する。なお、この電源の電圧は、環境情報収集装置51が環境情報計測装置1に接近するにつれて増大する。
【0045】
そして、電源部20では、生成した電源の電圧を電源電圧検出部22Aにより検出し(ステップS22)、図5(A)に示すように所定の閾値電圧Vth1以上になったことを検出した場合に、環境情報収集装置51からの電波を受信検出したことを制御部2に通知する。その後、電源電圧が増大し、電源電圧が図5(A)に示すように所定の閾値電圧Vth2以上になったことを検出した場合(充電開始電圧に到達したことを検出した場合)に、これを制御部2に通知する。
【0046】
制御部2では、電源電圧が所定の閾値電圧Vth2以上になったことを検知した場合に、環境情報計測部30中のスイッチSW1を閉、スイッチSW2を開にすることにより、コンデンサCを、電源電圧により充電する(ステップS23)。そして、所定の時間の経過後、すなわちコンデンサCへの充電が完了した後に、制御部2は環境情報計測部30内のスイッチSW1を開、スイッチSW2を閉にすることにより、サーミスタRSMを通して、コンデンサCに充電された電荷の放電を開始する(ステップS24)。
【0047】
制御部2は、コンデンサCの放電を開始するとともに、カウンタ47を起動し、このカウンタ47により基準クロックCLKの計数を開始させる(ステップS25)。そして、コンデンサCの放電に伴い、コンデンサCの電位が基準電圧Vref以下になったか否かをコンパレータ46により検出する(ステップS26)。そして、コンデンサCの充電電位が基準電圧Vref以下になったことが検出された場合に(ステップS26:Yes)、制御部2は、カウンタ47の計数動作を停止させるとともに、カウンタ47の計数値のデータを、時間に変換した温度計測データとして環境情報収集装置51に送信する(ステップS27)。環境情報収集装置51では、環境情報計測装置1から温度計測データを受信し(ステップS12)、この温度データを保存するとともに、ディスプレイ装置等に表示する。
上記手順により、環境情報計測装置1が温度測定対象箇所の温度を測定し、環境情報収集装置(タグリーダ)51は、環境情報計測装置1で測定された温度計測データを自動的に収集することができる。このため、温度測定対象箇所が多数ある場合においても容易かつ自動で温度計測データを収集することができる。
【0048】
(温度計測部の回路構成についての補足説明)
上述したように、環境情報計測部30は、スイッチSW1とSW2、コンデンサC、サーミスタRSM、及び抵抗R1、R2を備え、計時部40は、コンパレータ46、カウンタ47、基準クロック発生回路47Aを備える。このように、環境情報計測装置1では、環境情報計測部30と計時部40とを組み合わせることにより、温度を時間に変換して計測するようにしている。このような回路構成にした理由は、環境情報計測装置1ではRFIDタグを利用しており、このRFIDタグにおいては、タグリーダから受信した電波を基に電源を生成するために、低消費電力の回路が必要とされるためである。この点について補足して説明しておく。
【0049】
温度センサにはいくつかの種類が存在し、動作原理で分類すると、熱電対、PN接合ダイオード、赤外線型、サーミスタなどがある。このうち、熱電対は異種の金属をリング状に接合したときに、二つの接点の温床が異なるときに流れる電流を利用したものである。この方式ではどちらかの接点を測定対象に、もう一方の接点を温度が既知な場所に設置する必要があり、本発明で対象としているRFIDタグに用いるには適していない。
また、PN接合ダイオードを用いる方法は、ダイオードの順方向降下電圧の温度依存性を利用したものであり、IC、LSI中のシリコンダイオードをそのまま温度センサとして使うことができるが、その感度は1mV/℃程度であり、またダイオードに流す電流を一定にする必要があり、取り扱いが難しい。また、赤外線型は、物体が放射する赤外線の量を検出するものであるが、大きさ、消費電力の面からRFIDタグに内蔵するには適さない。
【0050】
一方、サーミスタは温度より抵抗率が変化する材料を用いた抵抗で。温度に対する低効率の変化係数が負の値を示すNTC(Negative Temperature Coeffcient)は、変化係数が正の値を示すものと比べると比較的線形性が良いのでよく用いられている。また、高精度のものも製造可能であり、所望の精度で温度を計測することが可能である。また、抵抗値も100kΩ程度までなら製造が容易である。なお、低消費電力型の温度センサの一例として、図3にサーミスタの温度特性の例を示したが、このサーミスタの消費電力は、12.5μW(2.5V×5μA)と、低消費電力である。
【0051】
ところで、サーミスタを含め、温度センサから得られる情報は、アナログ値であるので、これをデジタル信号に変換する必要がある。そのために、一般的には、アナログ・デジタル(AD)コンバータを用いる。ADコンバータの内部では、2つの入力信号の電圧の大小を比較してその結果をデジタル信号で出力するコンパレータを用いるものが多い。しかしながら、一般にADコンバータの消費電力は、RFIDタグに用いるには非常に大きく、低消費電力型のADコンバータでも数百μW程度である。このためADコンバータをRFIDタグに内蔵させることは困難である。
【0052】
そこで、ADコンバータから出力される信号は、シリアルもしくはパラレルのデジタル信号であるが、本実施形態において必要とされる情報を考えると、必ずしもアナログ信号を逐次デジタル信号にする必要がない。そこで、RC放電回路と、コンパレータと、カウンタとを用いることにより、温度を時間に変換したデジタル量として、温度計測データを得ている。すなわち、図3で示した回路構成を採用している。
【0053】
図3で示したように、最初にスイッチSW1を閉、スイッチSW2を開にし、コンデンサCを電源電圧Vccで充電しておく。そして、測定開始とともに、制御部2により、スイッチSW1を開、スイッチSW2を閉に切り替えて、コンデンサCの充電電荷を、サーミスタRSMを通じて放電させる。このとき、コンデンサCの電圧が基準電圧Vref以下になるまでの時間を計測する。このとき、抵抗R1とR2を使って電源電圧Vccを分圧して、基準電圧Vrefを作成すると、放電開始から基準電圧Vrefに達するまでの放電時間は電源電圧の大きさに関係なくなる。すなわち、放電電圧Vin(t)を式(1)として示す。
【0054】
【数1】

【0055】
式(1)に示された放電電圧Vin(t)は、電源電圧Vccと、時定数(RSMC)とにより、一次応答関数として示される。また、基準電圧Vrefは、抵抗R1とR2から式(2)として示される。
【0056】
【数2】

【0057】
式(2)において、γは分圧比を示す。
式(2)から、放電電圧Vin(t)が、基準電圧Vref以下になるまでの時間tdを求めると、時間tdは、式(3)として示される。
【0058】
【数3】

【0059】
これにより、時間tdは、サーミスタの抵抗値RSMとコンデンサの静電容量Cと分圧比によって示すことができ、電源電圧Vccに依存していないことがわかる。よって、この回路を用いることにより、測定した温度を時間に変換することが可能になる。
さらに、この回路から出力される信号を、RFIDタグ(環境情報計測装置1)からタグリーダ(環境情報収集装置51)ヘの応答信号として直接利用することも可能である。
例えば、RFIDタグがタグリーダにデータの返信を開始するのと同時に温度計測を開始する。つまり、制御部2は、スイッチSW1及びSW2を切り替えて、コンデンサCの放電を開始させる。そして、RFIDタグは、放電電圧Vin(t)が基準電圧Vrefに達してコンパレータの出力が反転するまで、例えば「0」を、コンパレータの出力が反転後に「1」を送信する。タグリーダは、RFIDタグからのデータを復調し、データに含まれる「0」の数をカウントすることで、RFIDタグが測定した温度を算出することが可能となる。
【0060】
また、この環境情報計測部30では、低い電源電圧で動作し、低消費電力型のアナログスイッチ素子を用いる。現在、入手可能なものとしては、例えば、「動作可能電源電圧範囲:1.8V〜5.5V」、「消費電力:1μW」、「動作周波数帯域:250MHz」の仕様のものがある。上記のアナログスイッチと、抵抗R1、R2に数MΩの抵抗を用いたとすると、この回路の消費電力を1μW程度に抑えることができる。
このように、本実施形態の環境情報計測装置1は、RFIDタグを用いて通信するため低消費電力かつ簡単な回路構成が要求される。そのため、環境情報計測部30を図3に示したような回路構成としている。
【0061】
なお、本実施形態では、コンデンサCを予め充電しておき、コンデンサCから放電する際の電圧の変化を検出するようにしている。環境情報計測装置1の電源は、RFIDタグによって、受信した電波に基づいて電力を生成する電源部から供給されるものである。このため、当該電源は通常の電源と異なり、受信した電波の受信電界強度によって変化する不安定な電源である。仮に、コンデンサCを充電する際の電圧の変化を検出するようにした場合には、電波の受信電界強度による変化によって電源電圧が変化して、充電電圧が安定しないため、測定の際に誤差が生じる可能性がある。したがって、本実施形態では、コンデンサCからの放電時の電圧を使用することにより、測定精度を向上させている。
【0062】
(倍電圧整流回路21の構成例の説明)
また、ここで、前述した倍電圧整流回路21の構成例について説明する。
図7は、倍電圧整流回路21の構成例を示す図である。図7に示す倍電圧整流回路21は、ダイオードとコンデンサを組み合わせた昇圧整流回路が多段に積み重ねられたコッククロフト・ウォルトン回路(以下「CW回路」と略称する)で構成される回路であり、周知の構成ものである。この倍電圧整流回路21は、対称形3段CW回路に対して、アンテナの入力インピーダンスを接続した例である。図7において、ショートスタブ(Short−stub)はアンテナと回路を整合させるために用いる。ショートスタブは、その長さによって正負のリアクタンス値を取るため、実際には長さを変化させて負荷電圧を最大にするように調節する。アンテナとして半波長ダイボールアンテナやミアンダアンテナを用いることができる。
【0063】
(本発明の環境情報計測装置を用いた温度計測システムについての説明)
図8は、本発明による環境情報計測装置と環境情報収集装置から成る温度計測システムの構成例を示す図である。同図においては、線路に沿って直列に繋がる複数のき電線101(101A、101B、及び101C)の各温度計測対象箇所(き電線の接続点)に環境情報計測装置1(1A、1B、1C)が装着された例を示している。また、環境情報収集装置(タグリーダ)51は、線路上を走行する電車50内に設備されている。
この環境情報収集装置51には、環境情報計測装置(RFIDタグ)1に対して、RFIDシステムによる無線信号を用いて通信を行うタグリーダの機能が搭載されている。この環境情報収集装置51は、アンテナ52、表示部53、操作スイッチ群54によって構成されている。表示部53は液晶ディスプレイ等である。操作スイッチ群54は押釦ボタン型スイッチ等で構成される。
【0064】
各環境情報計測装置1(1A、1B、1C)は、電車50が移動して環境情報収集装置51が接近したときに、環境情報収集装置51から送信された無線信号の電波を受信する。そして、環境情報収集装置51からの電波を受信できた環境情報計測装置1(1A、1B、1C)は、電源部20により、この受信した電波により得られる電力から電源(直流電源)を生成する。各環境情報計測装置1は、生成した電源によって起動する。そして、起動した環境情報計測装置1では、き電線101の温度を計測し、測定した温度計測データを、識別ID情報(RFIDの識別情報)とともに環境情報収集装置51に送信する。
【0065】
図8に示す例では、最初に、環境情報収集装置51と環境情報計測装置1Aとが接近し、環境情報収集装置51が環境情報計測装置1Aから温度計測データを受信する。次に、環境情報収集装置51と環境情報計測装置1Bとが接近し、環境情報収集装置51が環境情報計測装置1Bから温度計測データを受信する。続いて、環境情報収集装置51と環境情報計測装置1Cとが接近し、環境情報収集装置51が環境情報計測装置1Cから温度計測データを受信する。
【0066】
環境情報収集装置51では、各環境情報計測装置1(1A、1B、1C)から送信される温度計測データを受信するごとに、受信した温度計測データ及び関連情報(例えば、RFIDの識別情報)を、表示部53の液晶ディスプレイに表示する。この温度計測データは、数値表、グラフ等として表示され、温度測定対象箇所の温度が正常範囲にあるか否かが判定される。また、判定結果を基に警報信号を生成し、異常の対策に役立てることができる。また、環境情報収集装置51で受信した各温度計測データは、環境情報計測装置1の識別ID情報と、計測日時情報とともに、温度経過データとして保存される。
【0067】
このように、本発明の温度計測システムでは、環境情報収集装置51を各環境情報計測装置1(1A、1B、1C)に接近させるだけで、各環境情報計測装置1(1A、1B、1C)から温度計測データを自動的に収集することができる。このため、温度計測対象箇所が多数ある場合においても、き電線101の接続点の良否を容易に判定することができる。
【0068】
[第2実施形態]
本実施形態では、図3を参照し、環境情報として気圧を検出する場合について示す。
第1実施形態における検出部35において、符号34をサーミスタRSMとして説明したが、符号34をひずみゲージを備える気圧センサに代えることにより、気圧を検出する構成を第1実施形態と同様に構成することができる。
ひずみゲージ(ストレインゲージ)は、弾力性のある絶縁体の上に薄い抵抗体を取り付けた構造になっており、絶縁体が変形すると、抵抗体が伸縮し、その抵抗値が変化する。これを温度センサのサーミスタと置き換えることにより、ひずみ、変位、荷重を測定することができる。また、ひずみゲージを気圧センサに適用することも可能である。
ひずみゲージを適用させた気圧センサでは、内部を真空にした金属密閉容器が、気圧の大小に応じて収縮し、その変位量をひずみゲージによって検出する。これを上記温度センサ回路のサーミスタと置き換えることで気圧センサとすることができる。
このような構成とすることにより、気圧を検出することが可能になる。
【0069】
あるいは、コンデンサの片側の電極が気圧によって変位するようにすることで、気圧に応じて、コンデンサの静電容量を変化させることができる。このようなコンデンサを、検出部35におけるコンデンサ33に適用することで気圧を測定することができる。
【0070】
[第3実施形態]
本実施形態では、図3を参照し、環境情報として湿度を検出する場合について示す。
第1実施形態における検出部35において、符号33を固定値の静電容量を備えるコンデンサCとして、符号34をサーミスタRSMとして説明したが、それぞれを、符号33を変動する静電容量を備える湿度センサ、符号34を順抵抗に代えることにより、湿度を検出する構成を、第1実施形態と同様に構成することができる。
【0071】
湿度センサは、湿度によって静電容量が変化する誘電体を挟んで設けられた電極によって、形成されるコンデンサの構造を備えている。この湿度センサを、環境情報計測装置1における温度センサ回路で用いられていたコンデンサCと置き換え、サーミスタRSMの代わりに通常の抵抗に置き換えることで、環境情報計測装置1によって、湿度を検出することができる。湿度センサを形成する誘電体には、高分子ポリマーが用いられている。
【0072】
[第4実施形態]
本実施形態では、図1、図9を参照し、図3と構成の異なる環境情報計測部30Aを適用する場合について説明する。
図1における環境情報計測部30に代え、図9に示す環境情報計測部30Aを適用する。
(環境情報計測部30Aの構成と動作の説明)
続いて、環境情報計測部30Aの構成と動作について説明する。
図9は、環境情報計測部30Aの構成例を示す図である。図9(A)に示すように、環境情報計測部30Aは、スイッチSW1(31A)及びSW2(32A)と、電源部20により生成された電源(電圧Vcc)により充電されるコンデンサC(33)と、温度に応じて抵抗値が変化する温度センサであるサーミスタRSM(34)と、抵抗R3(37)と、電源電圧を分圧する抵抗R1(38)及びR2(39)を備える。
【0073】
このコンデンサC(33)と、サーミスタRSM(34)と、抵抗R3(37)を含んで構成される回路網により検出部35Aが形成される。
また、スイッチSW1(31A)及びスイッチSW2(32A)を含んで構成されるスイッチ部36が形成される。このスイッチ部36は、実際には、MOSトランジスタ等で構成される半導体スイッチであり、あるいは、CMOSデジタル回路であってもよい。例えば、CMOSデジタル回路は、インバータ回路である。このような、スイッチ部36は、high(ハイ)レベル/low(ロウ)レベルの信号を出力する切り替えスイッチとみなすことができる。つまり、スイッチSW1(31A)及びスイッチSW2(32A)における接続状態と開放状態が、互いに相補の関係が保たれることから、スイッチ部36は、high(ハイ)レベルとlow(ロウ)レベルの信号のいずれか一方の信号を出力する。
【0074】
この図9(A)において、スイッチ部36は、出力端子が抵抗R3(37)に接続され、電源端子が電源線V+を通して電源部(電圧Vcc)20の正極端子に接続され、接地端子が電源線V−を通して電源部(電圧Vcc)20の負極端子に接続される。抵抗R3(37)は、スイッチ部36に接続されている一端に対する他端が、コンデンサCの正極端子と、コンパレータ46の非反転入力端子Vin(+)とに接続される。また、温度センサとなるサーミスタRSMは、一端がコンパレータ46の非反転入力端子Vin(+)に接続され、他端が電源線V−を通して電源部20の負極端子に接続される。また、コンデンサCの負極端子が電源線V−を通して電源部20の負極端子に接続される。
【0075】
抵抗R1(38)は、一端が電源線V+に接続され、他端がノードN1を通して抵抗R2(39)の一端に接続され、抵抗R2(39)の他端は、電源線V−に接続されている。したがって、ノードN1は、電源部20の出力電圧Vccの抵抗分圧点となる。また、このノードN1は、コンパレータ46の反転入力端子Vin(−)に接続される。また、コンパレータ46の出力側はカウンタ47の計数制御端子aに接続されている。また、カウンタ47のクロック入力端子bは基準クロック発生回路47Aの出力端子に接続されており、このクロック入力端子bに基準クロック発生回路47Aから基準クロックCLKが入力される。
なお、スイッチ部36は、制御部2(図1)から供給される制御指令に応じて出力端子に出力する電圧を切り替える。
【0076】
以下、図9(A)及び図9(B)を参照して、環境情報計測部30Aの動作について説明する。
図9(B)は、環境情報計測部30Aの動作を示すタイミングチャートである。この図9(B)において、縦軸が各信号の電圧を示し、横軸が時間の経過を示す。この図に示される信号波形において、制御部2からの制御指令に応じてスイッチ部36が検出部35Aに供給する入力パルスをVin、コンデンサCの電位をVc、電源と固定抵抗(抵抗R1とR2)によって作られる基準電位をVref、コンパレータの出力をVoutとしている。tonは、コンデンサCの充電を開始してから時刻t2に到る期間の入力パルスがhighレベルの時間である。また、tdはコンパレータがlowレベルを出力している時間、つまりVc > Vrefとなる時間である。
また、この図の説明において、電源部20から環境情報計測部30Aに電源電圧Vcc(充電開始電圧)が供給可能な状態にあり、コンデンサCが放電された状態にあるものとする。
【0077】
この初期状態において、制御部2からの制御指令により、スイッチ部36は、highレベルの信号を出力する。つまり、スイッチ部36において、スイッチSW1を閉にし、SW2を開にすることにより、コンデンサCの充電を開始する(図9(B)の時刻tの状態)。
この充電状態を保持することにより、コンデンサCに徐々に電荷が蓄積され、抵抗R37を介しての充電が進行する。コンデンサCの充電電圧は次第に上昇し、時刻tにおいて、基準電圧Vrefに等しくなる。そして、コンデンサCの充電電圧が基準電圧Vref以上となった際にコンパレータ46の出力信号VoutがL状態(コンパレータへの電源供給電圧V−相当の電位)からH状態(コンパレータへの電源供給電圧V+相当の電位)に反転する。
次に、同じく制御部2からの制御指令により、スイッチ部36は、lowレベルの信号を出力する(図9(B)の時刻tの状態)。つまり、スイッチ部36において、スイッチSW1を開にし、SW2を閉にすることにより、コンデンサCに蓄積された電荷を、サーミスタRSMを通して放電する。コンデンサCの充電電圧は次第に低下し、時刻tにおいて、基準電圧Vrefに等しくなる。そして、コンデンサCの充電電圧が基準電圧Vref以下となった際にコンパレータ46の出力信号VoutがH状態(コンパレータへの電源供給電圧V+相当の電位)からL状態(コンパレータへの電源供給電圧V−相当の電位)に反転する。
【0078】
上記の充放電の制御に並行して、カウンタ47は、制御部2からの制御指令により、基準クロック発生回路47Aから出力される基準クロックCLKを計数する。カウンタ47は、コンデンサCの充電開始(時刻t)からコンパレータ46の出力信号がH状態からL状態に遷移する時刻tまでの時間td1、コンデンサCの充電開始(時刻t)から放電を開始(時刻t)するまでの時間ton、コンデンサCの放電開始(時刻t)からコンパレータ46の出力信号がL状態からH状態に遷移する時刻tまでの時間td2についてそれぞれ測定する。
このように、環境情報計測部30Aでは、制御部2からの制御指令と、コンパレータ46の出力状態とに応じて、コンパレータ46の出力状態がL状態を示す時間(基準クロック数)をカウントすることにより温度を時間に変換して測定している。
【0079】
このように、この環境情報計測部30Aは、検出した温度に基づいて時間を示す情報に変換する。環境情報計測部30Aは、変換された情報をRFIDタグからタグリーダへの返信信号に直接利用することができる。
また、基準電位が、抵抗によって電源電圧を分圧して生成されると仮定すると、コンパレータにより判定された結果は、電源電圧の変動に依存して変化しなくなる。なお、実験回路のコンパレータ46、National Semiconductor社製LPV7215(商標)を用いている。このコンパレータは、電源電圧を2V(ボルト)にして動作させた場合の消費電力が1.2 μW(マイクロワット)と極めて小さく、この環境情報計測部30A(センサ回路)の低消費電力化に貢献できる。
【0080】
(検出部の動作モデル)
検出部35Aは、コンデンサCの充電時と放電時とにおいて異なる動作モデルを用いることにより、応答特性の説明を簡略化することができる。
図10は、検出部35Aを等価回路で示した動作モデルを示す図である。
最初に、図10(A)を参照し、充電時の動作モデルについて説明する。
制御部2からの制御指令により、スイッチ部36から供給される入力信号(入力パルス)がhighレベルであるとき、これを電源とみなすと、コンパレータ46の非反転入力端子に接続されている回路は、図10(A)に示す回路に変換することができる。
【0081】
この等価回路の過渡応答Vc(t)は、式(4)として示すことができる。
【0082】
【数4】

【0083】
この式(4)を解くことにより、入力信号Vinがhighレベルになってから、Vc(t) = Vrefとなるまでの時間td1は、式(5)として示すことができる。
【0084】
【数5】

【0085】
続いて、図10(B)を参照し、放電時の動作モデルについて説明する。
制御部2からの制御指令により、スイッチ部36から供給される入力信号(入力パルス)がlowレベルであるとき、これを接地しているとみなすと、コンパレータ46の非反転入力端子に接続されている回路は、図10(B)に示す回路に変換することができる。
【0086】
この等価回路の過渡応答Vc(t)は、式(6)として示すことができる。
【0087】
【数6】

【0088】
なお、放電開始時には、コンデンサCは、Vc(ton)として示される電圧に充電されているとしている。したがって、この式(6)を解くことにより、入力信号Vinがlowレベルになってから、Vc(t)がVc(ton)から減少し、Vc(t) = Vrefとなるまでの時間td2は、式(7)として示すことができる。
【0089】
【数7】

【0090】
また、図9(B)に示したように、時間tdは、式(8)として示すことができる。
【0091】
【数8】

【0092】
すなわち、式(5)、(7)、(8)に基づいて、時間tdの理論値を計算することができる。
【0093】
図11を参照し、上記に示した各式に基づいて導かれた時間tdの理論値について示す。
式(5)、(7)、(8)を用いて、試作に用いたサーミスタの温度特性から時間tdについて、温度ごと計算を行った。温度ごとに計算された結果をグラフ化して示す。
図11は、温度ごとに計算された結果を示す図である。
この図11の縦軸は、時間tdを示し、横軸は、温度を示す。
このグラフに示されるように、時間tdの値は、温度が高くなるにしたがって単調に減少し、温度と時間tdの値が一対一に対応することが示されている。
本実施形態に示した環境情報計測部30Aの構成を、図10に示した等価回路と、そのモデルに基づいた式(4)から式(8)の演算式よってモデル化することにより、温度の計測が可能となる。
【0094】
続いて、上記の理論値の妥当性を評価するために、環境情報計測部30Aを用いて実測した温度と上記の理論値とを比較した結果を示す。
図12は、環境情報計測部30Aを用いて測定した温度の実測値と理論値とを比較する図である。
この図12の縦軸は、時間tdを示し、横軸は、温度を示す。
この図12に示された結果から、測定温度の実験値(図中「×」印)と理論値(図中に実線で示すグラフ)とは概ね一致しており、この環境情報計測部30Aの構成によって、温度の計測が行えることが示されている。
またこの評価に用いた構成においては、制御部2と境情報計測部30Aとを駆動して温度の計測を行う場合、合計8W(ワット)の消費電力に省電力化することが可能である。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここで本発明と上記実施形態との対応関係について補足して説明しておく。上記実施形態において、本発明における環境情報計測装置は、環境情報計測装置1が対応する。また、本発明における通信部は、通信部10が対応し、本発明における電源部は電源部20が対応する。また、本発明における環境情報検出部は、検出部35、35A(サーミスタRSM(34)とコンデンサC(33)を有する)が対応し、本発明における計時部は、計時部40(コンパレータ46及びカウンタ47等で構成される部分)が対応する。また、本発明における第1のスイッチは、スイッチSW1(31)が対応し、本発明における第2のスイッチは、スイッチSW2(32)が対応する。また、本発明における環境情報は、環境情報計測装置1で計測された温度測定対象箇所の温度計測データが対応する。
【0096】
(1)そして、本発明の実施形態によれば、環境情報計測装置1は、受信した電波に基づいて、負荷に供給する電源の電力を生成する電源部20と、検出した環境に応じてインピーダンスが変化する回路素子又は静電容量が変化する回路素子のうちいずれかを備える検出部35を有しており、検出部35において形成される回路網の応答特性に応じて変化する信号を出力する環境情報検出部30と、その変化する信号の電圧が、計測開始から予め定められる検知電圧に達するまでの時間を計測する計時部(コンパレータ46及びカウンタ47等)40と、環境情報検出部30の動作を制御する制御部2と、を備え、上記負荷には、環境情報検出部30、計時部40、及び制御部2が含まれる。
このような構成の環境情報計測装置1においては、電源部20は、受信した電波の電力を変換して負荷を機能させる電源の電力を生成する。環境情報検出部30は、環境に応じてインピーダンスが変化する回路素子又は静電容量が変化する回路素子のうちいずれかを備える検出部35を備える。環境情報検出部30は、検出部35において形成される回路網の応答特性に応じて変化する信号を出力する。そして、計時部40は、検出部35において形成される回路網によって生成された信号の電圧が、計測開始から予め定められる検知電圧に達するまでの時間を計測する。
これにより、測定対象箇所の環境情報、例えば、温度(電力系統における送電線や配電線、あるいは電車線におけるき電線の接続点の温度)、湿度又は気圧を、低消費電力かつ簡単な回路構成で容易に測定できる。
【0097】
(2)また、上記実施形態において、環境に応じて生成された計測データを要求に応じて送信する通信部10を備える。
このような構成の環境情報計測装置1では、環境情報検出部30により計測された環境情報に基づいて生成された計測データ(例えば、より正確には温度を時間した温度計測データ)を、通信部10により外部の装置(例えば、環境情報収集装置)に送信する。
これにより、測定対象箇所の環境情報、例えば、温度(電力系統における送電線や配電線、あるいは電車線におけるき電線の接続点の温度)、湿度又は気圧を、低消費電力かつ簡単な回路構成で容易に測定できる効果に加えて、測定対象箇所が多数ある場合においても容易かつ自動で測定(計測データを収集)することができる。
【0098】
(3)また、上記実施形態において、制御部2は、生成された電源の電圧に応じて、検出部35に含まれる容量への充電と、計時部40による時間の計測とを制御する制御部2と、を備える。
このような構成の環境情報計測装置1では、制御部2では、生成された電源の電圧が所定の電圧(充電開始電圧)に到達した場合に、検出部35に含まれる容量(コンデンサC)への充電を行う、その後、検出部35に含まれる容量(コンデンサC)の放電を開始し、計時部40では、検出部35に含まれる容量(コンデンサC)の充電電位が所定の基準値Vrefに低下するまでの時間を計測する。
これにより、CR放電回路を用いて、測定対象箇所の環境情報を時間に変換して測定することが可能になる。このため、低消費電力かつ簡易な回路で温度測定を行える。
【0099】
(4)また、上記実施形態において、制御部2は、生成された電源の電圧が、予め定められる所定の充電開始電圧に達した場合、充電部(コンデンサC)への充電を開始させる。
このような構成の環境情報計測装置1では、電源部20で生成される電源電圧が所定の充電開始電圧に到達した場合に、検出部に含まれる容量(コンデンサC)へ充電を行い、その後、検出部35に含まれる容量(コンデンサC)の放電を開始する。
これにより、CR放電回路を用いて、測定対象箇所の環境情報を時間に変換して測定することが可能になる。このため、低消費電力かつ簡易な回路で環境情報の測定を行える。
【0100】
(5)また、上記実施形態において、計時部40は、検出部35に含まれる容量(コンデンサC)からの放電を開始してから、上記信号の電圧が上記検知電圧に低下するまでの時間を計測する。
このような構成の環境情報計測装置1では、電源部20で生成される電源電圧が所定の充電開始電圧に到達した場合に、検出部に含まれる容量(コンデンサC)への充電を行い、その後、検出部に含まれる容量(コンデンサC)の電荷の放電を開始し、計時部40では、環境情報(コンデンサC)の充電電位が所定の基準電圧Vrefに低下するまでの時間を計測する。
これにより、CR放電回路を用いて、測定対象箇所の環境情報を時間に変換して測定することが可能になる。このため、低消費電力かつ簡易な回路で温度測定を行える。
【0101】
(6)また、上記実施形態において、環境情報検出部30は、電源部20検出部に含まれる容量(コンデンサC)への充電を遮断するスイッチSW1と、検出部に含まれる容量(コンデンサC)からの放電を遮断するスイッチSW2と、を備え、制御部2は、容量(コンデンサC)を充電する場合に、スイッチSW1を接続状態にして電源部20から容量(コンデンサC)への充電を行い、スイッチSW2を開放状態にして容量(コンデンサC)からの放電を停止し、容量(コンデンサC)から放電する場合に、スイッチSW1を開放状態にして電源部20から容量(コンデンサC)への充電を停止し、スイッチSW2を接続状態にして容量(コンデンサC)から放電を行う。
このような構成の環境情報計測装置1では、例えば、電源部20により容量(コンデンサC)を充電する際には、スイッチSW1により電源部20と容量(コンデンサC)との間を接続し、スイッチSW2により容量(コンデンサC)と温度検出部(サーミスタRSM)との間を遮断する。そして、容量(コンデンサC)を放電する際には、スイッチSW1により電源部20と容量(コンデンサC)との間を遮断し、スイッチSW2により容量(コンデンサC)と温度検出部(サーミスタRSM)との間を接続する。
これにより、制御部2によりスイッチSW1とスイッチSW2を制御することにより、容量(コンデンサC)への充電と、温度検出部(サーミスタRSM)による放電とを容易に行うことができる。このため、低消費電力かつ簡単な回路構成で、測定対象箇所の環境情報を時間に変換して計測することができる。
【0102】
(7)また、上記実施形態において、スイッチSW1とスイッチSW2とにおける接続状態と開放状態は、互いに相補の関係に保たれる。
このような構成の環境情報計測装置1では、スイッチSW1とスイッチSW2とを組み合わせることにより、1つのSPDT(Single Pole Double Throw)スイッチとすることができる。また、本実施形態に示したようにスイッチSW1とスイッチSW2をSPDTスイッチとして機能させて、電源電圧又は基準電位のいずれかの電位を選択して出力させることができる。このようなスイッチであれば、CMOS構造を有するデジタル回路素子(半導体装置)に代えることが可能となる。
これにより、制御部2によりスイッチSW1とスイッチSW2を制御することにより、容量(コンデンサC)への充電と、温度検出部(サーミスタRSM)による放電とを容易に行うことができる。このため、スイッチSW1とスイッチSW2の構成をより簡素化することができ、低消費電力かつ簡単な回路構成で、測定対象箇所の環境情報を時間に変換して計測することができる。
【0103】
(8)また、上記実施形態において、計時部40は、検出部35に含まれる容量から放電を開始する前に、容量(コンデンサC)への充電を行う過程において、信号の電圧が検知電圧に達してから、充電を停止するまでの時間を計測する。
このような構成の環境情報計測装置1では、計測する時間を長くすることができることから、構成を簡素化したままで、検出精度を向上させることができる。
【0104】
(9)また、上記実施形態において、環境情報検出部30は、検出部35に設けられる回路素子に応じて、環境における温度、気圧又は湿度のいずれかを検出する。
このような構成の環境情報計測装置1では、検出部35に設けられた回路素子に応じて、環境における温度、気圧又は湿度のいずれかを検出する環境情報検出部30を構成することができる。この場合に、例えば、温度検出部(サーミスタRSM)を設けることにより、温度を検出することができ、湿度検出部を設けることにより、湿度を検出することができ、気圧センサを設けることにより、気圧を検出することができる。
これにより、低消費電力かつ簡単な回路構成で、測定対象箇所の環境情報を時間に変換して計測することができる。
【0105】
(10)また、上記実施形態において、環境情報検出部30は、温度測定対象である電線と熱的に結合するように設けられる。
このような構成の環境情報計測装置1では、温度検出部(サーミスタRSM)が温度測定対象箇所の表面に接触するように配置される。この場合に、温度検出部(サーミスタRSM)と温度測定対象箇所との熱的な結合(熱導電性)と電気絶縁性を高めるために、シリコンゴムコンパウンド等を介して接触させる。
これにより、温度測定対象箇所の温度を正確に計測することができる。
【0106】
(11)また、上記実施形態において、環境情報計測システムは、検出した環境情報に基づいて計測された情報を送信する上記のいずれかに記載の環境情報計測装置と、送信された情報を収集する環境情報収集装置とを備える。
このような構成の環境情報計測システムでは、環境情報収集装置51が、環境情報計測装置1から送信される計測データを収集して保存する。
これにより、被測定対象の温度、例えば、電力系統における送電線や配電線、あるいは電車線におけるき電線の温度を、低消費電力の回路で容易に測定できる。また、温度測定対象箇所が多数ある場合においても、容易かつ自動で温度データを測定することができる。このような温度計測方法を用いることにより、気温をはじめとする環境情報の収集に適用することが可能である。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した環境情報計測装置1は、RFIDタグを用いて構成されており、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した各部の処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体(ROM等)に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
【0108】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の環境情報計測装置、及び環境情報計測システムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。
例えば、実施形態4に示した態様に、実施形態2又は3の態様を適用することができる。これにより、測定の対象を温度測定とする場合に限定されず、様々な環境情報計測を行うことが容易となる。
また、本実施形態に示した構成による環境情報計測において、環境情報計測装置の構成などによる偏差を生じる場合が想定される。環境情報計測装置の構成に依存して生じる偏差について、予め特定しておくことにより、その偏差情報を補正することができる。環境情報収集装置は、環境情報収集装置に備える記憶部に、その偏差情報を予め記憶しておき、環境情報計測装置から通知された計測結果に応じて記憶部に記憶されている偏差情報を参照して、環境情報計測装置から通知された計測結果を補正することができる。
【符号の説明】
【0109】
1…環境情報計測装置、2…制御部、3…記憶部、
10…通信部、11…受信部、12…送信部、13…アンテナ、
20…電源部、21…倍電圧整流回路、22…充電制御部、22A…電源電圧検出部、
30、30A…環境情報計測部、31…スイッチSW1、32…スイッチSW2、
33…コンデンサC、34…サーミスタRSM、35、35A…検出部、
36、37、38…抵抗
40…計時部、46…コンパレータ、
47…カウンタ、47A…基準クロック発生回路、
50…電車、51…環境情報収集装置(タグリーダ)、
52…アンテナ、53…表示部、54…操作スイッチ群、
100…電車線、101…き電線、101a…き電線の接続箇所(圧着スリーブ)、
102…トロリー線、107a…き電分岐部、108a…クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した電波に基づいて、負荷に供給する電源の電力を生成する電源部と、
検出した環境に応じてインピーダンスが変化する回路素子又は静電容量が変化する回路素子のうちいずれかを備える検出部を有しており、前記検出部において形成される回路網の応答特性に応じて変化する信号を出力する環境情報検出部と、
前記信号の電圧が、計測開始から予め定められる検知電圧に達するまでの時間を計測し、前記計測された結果に基づいて前記環境に応じた環境情報を生成する計時部と、
前記環境情報検出部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記負荷には、前記環境情報検出部、前記計時部、及び前記制御部が含まれる
ことを特徴とする環境情報計測装置。
【請求項2】
前記環境に応じて生成された前記環境情報を要求に応じて送信する通信部
を備えることを特徴とする請求項1に記載の環境情報計測装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記生成された電源の電圧に応じて、前記検出部に含まれる容量への充電と、前記計時部による時間の計測とを制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の環境情報計測装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記生成された電源の電圧が、予め定められる所定の充電開始電圧に達した場合、前記検出部に含まれる容量への充電を開始させる
ことを特徴とする請求項3に記載の環境情報計測装置。
【請求項5】
前記計時部は、
前記検出部に含まれる容量からの放電を開始してから、前記信号の電圧が前記検知電圧に低下するまでの時間を計測する
ことを特徴とする請求項3から4のいずれか1項に記載の環境情報計測装置。
【請求項6】
前記環境情報検出部は、
前記電源部から前記検出部に含まれる容量への充電を遮断する第1のスイッチと、
前記検出部に含まれる容量からの放電を遮断する第2のスイッチと、
を備え、
前記制御部は、
前記容量に充電する場合に、
前記第1のスイッチを接続状態にして前記電源部から前記容量への充電を行い、
前記第2のスイッチを開放状態にして前記容量からの放電を停止し、
前記容量から放電する場合に、
前記第1のスイッチを開放状態にして前記電源部から前記容量への充電を停止し、
前記第2のスイッチを接続状態にして前記容量から放電を行い、
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の環境情報計測装置。
【請求項7】
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとにおける接続状態と開放状態は、互いに相補の関係が保たれる
ことを特徴とする請求項6に記載の環境情報計測装置。
【請求項8】
前記計時部は、
前記検出部に含まれる容量から放電を開始する前に、前記容量への充電を行う過程において、前記信号の電圧が前記検知電圧に達してから、前記充電を停止するまでの時間を計測する
ことを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載の環境情報計測装置。
【請求項9】
前記環境情報検出部は、
前記検出部に設けられる回路素子に応じて、前記環境における温度、気圧又は湿度のいずれかを検出する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の環境情報計測装置。
【請求項10】
前記環境情報検出部は、
温度測定対象である電線と熱的に結合するように設けられる
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の環境情報計測装置。
【請求項11】
前記検出した環境情報に基づいて計測された情報を送信する請求項1から10のいずれか1項に記載の環境情報計測装置と、
前記送信された情報を収集する環境情報収集装置と
を備えることを特徴とする環境情報計測システム。
【請求項12】
受信した電波に基づいて、負荷に供給する電源の電力を生成する電力生成過程と、
環境情報検出部によって検出した環境に応じてインピーダンス又は静電容量が変化する環境情報検出過程と、
前記環境情報検出部において前記検出部を含んで形成される回路網の応答特性に応じて変化する信号の電圧が、計測開始から予め定められる検知電圧に達するまでの時間を計時部によって計測する時間計測過程と
を含み、
前記負荷には、前記環境情報検出部及び前記計時部が含まれる
ことを特徴とする環境情報計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−64035(P2012−64035A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208452(P2010−208452)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】