説明

環境的影響の少ない、グルクロノ−3,6−ラクトンの製造

myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させる方法を開示する。この方法は、myo-イノシトールオキシゲナーゼと硫黄非含有型還元剤とを含む混合物を、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下でインキュベートすることを含む。また、myo-イノシトール、myo-イノシトールオキシゲナーゼ、および酸素を含む混合物を、混合物の1リットル当たり5グラムのD-グルクロン酸〜混合物の1リットル当たり400グラムのD-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすることを含む、D-グルクロン酸およびグルクロノ- -ラクトンの製造方法も開示する。グルクロノ- -ラクトンはD-グルクロン酸産物から製造することができる。また、このような方法に使用するのに適した生物および核酸を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康サプリメントのグリーンケミストリー生産に関する。より詳細には、本発明は、グルクロノ-γ-ラクトンの製造方法およびかかる方法において有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然の健康製品および健康サプリメントはますます普及しつつある。これらは個人がより長生きをし、より活動的な人生を送るのを助けるために使用することができる。D-グルクロノ-γ-ラクトン(グルクロノ-3,6-ラクトンとも命名されている)(「GGL」)は、正の健康効果を有しうる健康サプリメントの一例である。GGLはいくつかの正の健康効果、すなわち、関節の健康の増進、皮膚に対する抗炎症効果の提供、異常に高いコレステロールまたはトリグリセリド血漿濃度の低減、骨髄健康の改善、および消化の助けを含む健康効果を有すると考えられている。さらに、GGLは、グルコサミン、コンドロイチン硫酸、または他のよく出回っている健康サプリメントと相乗効果を有すると考えられている。
【0003】
現在、GGLは典型的には、デンプンの硝酸酸化を伴う方法により製造されている。この方法は、生産されるGGLの1kg当たり最大0.5kgの濃硝酸を使用しうる。そのため、硝酸法は関連する重大な環境リスクおよび安全性リスクを有する。この製造方法は、濃硝酸の使用、および該製造方法により生成される廃液の流れゆえに、大きな環境的影響を有する。さらに、濃硝酸の使用は、労働者に対して重大な健康および安全性の問題をもたらし、しばしば広範囲な安全対策が必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
安全で、環境に優しく、かつコスト効率の良い、GGL製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させる方法に関する。ある態様において、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させる方法は、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下で、myo-イノシトールオキシゲナーゼおよび還元剤を含む混合物をインキュベートすることを含む。還元剤は、硫黄非含有型還元剤でありうる。還元剤は水溶性でありうる。還元剤には、L-アスコルビン酸またはD-イソアスコルビン酸が含まれうる。還元剤は、L-システインを欠いてもよい。いくつかの実施形態において、還元剤は約1 mM〜約10 mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、還元剤は約−200 mVより大きな還元電位、約-100 mVより大きな還元電位、約0 mVより大きな還元電位、または約+25 mVより大きな還元電位を有する。還元剤は約500 mV未満の還元電位を有しうる。Myo-イノシトールオキシゲナーゼは約1 mg/ml〜約200 mg/mlの濃度で存在しうる。インキュベーション混合物中のmyo-イノシトールオキシゲナーゼは固定化されていてもよい。インキュベーション混合物は、他の成分、例えばFe(II)またはバッファーを含んでもよい。含まれる場合、Fe(II)は、硫酸第一鉄アンモニウム、アスコルビン酸第一鉄、硫酸第一鉄、または塩化第一鉄として添加されうる。Fe(II)は、0 mM〜約10 mM、または約1 mM〜約5 mMの濃度で存在しうる。バッファーは3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸または酢酸ナトリウムであり得る。バッファーは0 mM〜約100 mMの濃度で存在しうる。インキュベーション混合物は細胞溶解物を含みうる(例えばmyo-イノシトールオキシゲナーゼを細胞溶解物の1成分として混合物に添加するとき)。細胞溶解物は、機械的破砕または化学的破砕により生成され得る。細胞溶解物を形成するために機械的破砕を用いるのであれば、細胞を破砕前に20℃未満まで冷却してもよい。あるいはまた、インキュベーション混合物は全細胞を含みうる(例えばmyo-イノシトールオキシゲナーゼを、全細胞の1成分として混合物に添加するとき)。かかる全細胞は、酵母細胞、グラム陽性細胞、グラム陰性細胞、または糸状菌細胞でありうる。インキュベーションは約−5℃〜約20℃の温度で行われうる。インキュベーションには、混合物を約10分〜約360分、または約15分〜約150分インキュベートすることが含まれ得る。
【0006】
別の態様において、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させる方法には、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下で、myo-イノシトールオキシゲナーゼおよびFe(II)を含む混合物をインキュベートすること;ならびに該混合物に制御電圧を加えること、が含まれる。
【0007】
本発明はまたD-グルクロン酸の製造方法に関する。D-グルクロン酸の製造方法の1つとしては、myo-イノシトール、myo-イノシトールオキシゲナーゼ、および酸素を含む混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすることが挙げられる。適当なmyo-イノシトールオキシゲナーゼとしては、ファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、クリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)、クリプトコッカス・ラクタチボラス(Cryptococcus lactativorus)、またはアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)由来のmyo-イノシトールオキシゲナーゼが挙げられる。Myo-イノシトールオキシゲナーゼは、1回添加、連続添加、または断続的添加により混合物に添加することができる。myo-イノシトールは、1リットル当たり約20グラムより高濃度、1リットル当たり約30グラムより高濃度、または1リットル当たり約40グラムより高濃度、しかし1リットル当たり約500グラム未満の濃度で混合物中に存在しうる。myo-イノシトールは1リットル当たり20グラムより高濃度で最初に存在しうる。あるいはまた、myo-イノシトールは断続的にまたは連続的に添加されうる。酸素は、混合物の1リットル当たり約10 μmolより高濃度、または混合物の1リットル当たり約140 μmolより高濃度で存在しうる。酸素は、混合物の1リットル当たり約6500 μmol未満、または混合物の1リットル当たり約1550 μmol未満の濃度で存在しうる。酸素は、10%〜80%飽和で混合物中に存在しうる。インキュベーションは純酸素のヘッドスペースにおいて行われうる。インキュベーションには、混合物中に空気をスパージングすること、混合物中に酸素富化空気をスパージングすること、または混合物中に酸素をスパージングすることが含まれうる。酸素は混合物1リットル当たり1時間あたり20 mmolの酸素利用率を達成するために十分な量で存在しうる。D-グルクロン酸は、1リットル当たり約5グラム〜1リットル当たり約400グラムの濃度、例えば1リットル当たり約10グラムより高濃度、または1リットル当たり約20グラムより高濃度で存在しうる。D-グルクロン酸は1リットル当たり約400グラム未満の濃度で存在しうる。D-グルクロン酸濃度はmyo-イノシトール濃度よりも高くてもよく、また、myo-イノシトール濃度の少なくとも2倍であってもよい。
【0008】
いくつかの実施形態において、混合物はFe(II)を含む。Fe(II)は、約0.01 mM〜約40 mM、例えば0.01 mM〜20 mM、0.01 mM〜10 mM、0.01 mM〜5 mM、または0.01 mM〜2 mMの濃度で存在しうる。いくつかの実施形態において、混合物は還元剤(例えばL-アスコルビン酸またはD-イソアスコルビン酸)を含む。還元剤の濃度は、約10 mM未満、例えば0.01 mM〜10 mM、または0.01 mM〜5 mMでありうる。別の態様において、混合物はバッファーを含みうる。バッファーは0 mMまたはそれより高濃度で存在しうる。バッファーは、約20 mM未満、約10 mM未満、約5 mM未満、または約2 mM未満の濃度で存在しうる。いくつかの態様においては、いかなる追加のバッファーも混合物に添加されない。
【0009】
混合物はまた、塩のような他の成分、例えば無機塩または有機塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、またはD-グルクロン酸ナトリウムを約0.01 M〜約2.0 Mの濃度で含みうるか、または消泡剤を含みうる。いくつかの実施形態においては、塩基(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)がインキュベーション混合物に添加される。混合物は細胞溶解物または全細胞を含みうる(例えばmyo-イノシトールオキシゲナーゼが、溶解物または細胞の1成分として混合物に添加されるとき)。細胞はセルベッド(cell bed)中に存在してもよい。インキュベーションは、約0℃より高い温度、例えば約15℃〜約50℃、または約15℃〜約35℃で行うことができる。いくつかの実施形態において、方法はまた、混合物を清澄化すること、混合物を脱塩すること、またはインキュベーション中に形成されるD-グルクロン酸を結晶化させることを含む。いくつかの実施形態において、方法はまた、混合物を清澄化すること、D-グルクロン酸の塩を結晶化させること、混合物を脱塩すること、またはインキュベーション中に形成されるD-グルクロン酸を結晶化させることを含む。この方法はD-グルクロン酸からグルクロノ-γ-ラクトンを形成させることをさらに含みうる。
【0010】
方法は、D-グルクロン酸からグルクロノ-γ-ラクトンを形成することをさらに含みうる。グルクロノ-γ-ラクトンを形成させることは、混合物を清澄化すること、混合物を脱塩すること、または混合物由来のD-グルクロン酸を酸性pHにて加熱することを含みうる。グルクロノ-γ-ラクトンは、D-グルクロン酸の加熱後に結晶化することができる。
【0011】
D-グルクロン酸を製造する別の方法には、myo-イノシトールオキシゲナーゼと還元剤を含む第1混合物を、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下でプレインキュベートすることが含まれる。次に、myo-イノシトール、第1混合物、および酸素を含む第2混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートする。還元剤は、硫黄非含有型還元剤であってもよく、または還元剤は約−200 mVより大きな還元電位を有しうる。D-グルクロン酸は、第2混合物のリットル当たり約5〜約400グラムの濃度で存在しうる。
【0012】
本発明はまた、上記方法のいずれかにより製造されたD-グルクロン酸を含む組成物に関する。
【0013】
本発明はまたグルクロノ-γ-ラクトンの製造方法に関する。グルクロノ-γ-ラクトンの製造方法は、myo-イノシトールオキシゲナーゼと還元剤を含む第1混合物を、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下でプレインキュベートすることを含む。次いで、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下で、myo-イノシトール、第1混合物、および酸素を含む第2混合物をインキュベートする。第2混合物を、清澄化し、脱塩し、および酸性pHで加熱して、グルクロノ-γ-ラクトンを形成させる。このようにして形成されたグルクロノ-γ-ラクトンは、酸性溶液から結晶化させることができる。
【0014】
ある態様において、還元剤は硫黄非含有型還元剤である。別の態様において、還元剤は約−200 mVより大きな還元電位を有する。別の態様において、D-グルクロン酸は、第2混合物をインキュベートする際に、第2混合物の1リットル当たり約5〜約400グラムの濃度で存在する。
【0015】
本発明はまた、全可溶性タンパク質の約15重量%〜約50重量%のmyo-イノシトールオキシゲナーゼ含有率を有する微生物細胞に関する。myo-イノシトールオキシゲナーゼはファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium) myo-イノシトールオキシゲナーゼ、クリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans) myo-イノシトールオキシゲナーゼ、クリプトコッカス・ラクタチボラス(Cryptococcus lactativorus) myo-イノシトールオキシゲナーゼ、またはアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans) myo-イノシトールオキシゲナーゼであり得る。細胞は、T7プロモーター、T7lacプロモーター、またはT5プロモーターに機能的に連結されたmyo-イノシトールオキシゲナーゼコード配列を含みうる。細胞はグラム陽性またはグラム陰性細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)のK-12株でありうる。myo-イノシトールオキシゲナーゼは大腸菌(E. coli)細胞の染色体に組み込まれうる。大腸菌(E. coli)細胞の染色体にmyo-イノシトールオキシゲナーゼ遺伝子を挿入するためにはトランスポゾンを使用することができる。大腸菌(E. coli)細胞は、metE変異体、緩和(relA)変異体、組換え欠損(recA)変異体、プロテアーゼ欠損変異体、ompT変異体、lon変異体、clpP変異体、またはuxaC変異体でありうる。いくつかの実施形態において、細胞はガラクトースを代謝しうる。myo-イノシトールオキシゲナーゼコード配列の転写はラクトースにより誘導されうる。本発明はまた細胞溶解物に関する。未精製細胞溶解物は、全可溶性タンパク質の約15重量%〜約100重量%、例えば全可溶性タンパク質の約20重量%〜約100重量%のmyo-イノシトールオキシゲナーゼ含有率を有しうる。
【0016】
本発明はまた、縦列のアルギニン用CGAコドンを欠いたクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans) mioコード配列を含む単離された核酸に関する。
【0017】
本発明はまた、抗生物質選択マーカーを欠き、かつ縦列のアルギニン用CGAコドンを欠いたクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans) mioコード配列を含む単離されたプラスミド(例えば、ATCC寄託番号PTA-6449の細菌株中に存在するpCNARと命名されたプラスミド)に関する。本発明はまた、縦列のアルギニン用CGAコドンを欠いたクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans) mioコード配列を有するグラム陰性細菌株に関する。クリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans) mioコード配列はプラスミド中に存在しうる。細菌株は、ATCC寄託番号PTA-6449の大腸菌(E. coli) BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC::pCNARでありうる。
【0018】
本発明の別の態様は、宿主細胞中のmyo-イノシトールオキシゲナーゼの発現を増大させることを提供する。発現は、myo-イノシトールオキシゲナーゼコード配列の最初の21ヌクレオチドの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%を変化させることにより増大させる。いくつかの実施形態において、核酸配列中の変更は、アミノ酸配列の変化をもたらさない。したがって、本発明の別の態様は、該方法により作製される核酸配列を含み、このときかかる核酸配列はmyo-イノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。
【0019】
特に断らない限り、本明細書に使用するすべての技術的用語および科学的用語は、本発明の属する分野の通常の技術を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載する方法および材料と類似または均等な方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、以下に適当な方法および材料を記載する。その上、材料、方法、および実施例は例証的なものにすぎず、限定的であることを意図したものではない。本明細書に記載したすべての刊行物、特許出願、特許および他の引用文献は、参照によりその全内容を本明細書に組み入れる。不一致が生じた場合、定義を含め、本明細書が優先する。
【0020】
本発明の1以上の実施形態の詳細を、添付された図面および以下の記載に示す。本発明の他の構成、目的、および効果は、明細書および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0021】
配列表
配列番号1および2は大腸菌(E. coli) metE遺伝子に特異的なプライマーである。
【0022】
配列番号3および4はアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans) mio オープンリーディングフレームを増幅するためのプライマーである。
【0023】
配列番号5および6はC. neoformans mio遺伝子突然変異を生じさせるために用いたプライマーである。
【0024】
配列番号7および8は、β-ラクタマーゼ遺伝子中にPsiI制限部位を挿入するために用いたプライマーである。
【0025】
配列番号9および10は、pKD3のcat遺伝子を増幅するために用いたプライマーである。
【0026】
配列番号11および12は、pKD3のcat遺伝子を増幅するために用いたプライマーである。
【0027】
配列番号13および14は、挿入遺伝子座の側部につく(flank)プライマーである。
【0028】
配列番号15および16は、プロファージの存在を同定するために用いたプライマーである。
【0029】
配列番号17および18はpKD4のkan遺伝子を増幅するために用いたプライマーである。
【0030】
配列番号19および20は、kan遺伝子の存在を確認するために用いたプライマーである。
【0031】
配列番号21および22は、A. niger mio配列を増幅するために用いたプライマーである。
【0032】
配列番号23および24は、A. niger mio配列からイントロンを除去するために用いたプライマーである。
【0033】
配列番号25〜44は、A. niger mioの発現を増大させるために用いたプライマーである。
【0034】
配列番号45〜54は、A. niger mio配列の突然変異から生じた配列である。
【0035】
配列番号55は、A. niger mio核酸配列である。
【0036】
配列番号56は、A. niger mioアミノ酸配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
I 定義
最小培地。無機塩、単純な炭素源(例えば二酸化炭素またはグルコース)、および水のみを含む培地であり、特定の生物の要求する最小限または限定的な栄養を供給する培地。
【0038】
富栄養培地。増殖因子を含む、多種多様な栄養物に富む培地であり、多種多様な微生物の増殖を助ける培地。
【0039】
Luria-Bertani培地(「LB」)。LB培地は、水中に10 g/L Bactoトリプトン、5 g/L Bacto酵母エキス、および10 g/L 塩化ナトリウムを含む。
【0040】
還元電位。還元電位は、Ball EG, (1937) Studies on Oxidation-Reduction XXIII. Ascorbic Acid, J. Biol. Chem., 118:219-239に記載されているBallの方法を用いて計算する。還元電位の数値は、−100 mVの還元電位が−200 mVの還元電位よりも大きい、といった具合に通常どおりに進む。
【0041】
ブリックス度。溶液中の糖濃度と密度を相関させるために用いる測定値。各度数は溶液中の1パーセントw/v 糖に等しい。いくつかの溶液において、ブリックスは全固形物と相関させることが可能である。
【0042】
水溶性。水溶性とは、化合物の溶解度が1リットルの水当たり0.5グラムと等しいかそれを超えることを意味する。可溶性化合物の例としては、330グラム/リットル水の可溶度を有するL-アスコルビン酸および280グラム/リットル水の可溶度を有するD-イソアスコルビン酸が挙げられる。
【0043】
有機性。本明細書に用いる、有機化合物とは、炭素および水素、ならびに場合により他の原子(例えば酸素、窒素など)を含みうる化合物である。
【0044】
D-グルクロン酸。D-グルクロン酸という用語は、典型的には遊離酸およびそのあらゆる塩を含む。
【0045】
L-アスコルビン酸。L-アスコルビン酸という用語は、典型的には遊離酸およびそのあらゆる塩を含む。
【0046】
D-イソアスコルビン酸。D-イソアスコルビン酸という用語は、典型的には遊離酸およびそのあらゆる塩を含む。
【0047】
II Myo-イノシトールオキシゲナーゼ遺伝子を有する細胞
本発明のある態様は、myo-イノシトールオキシゲナーゼ(「MIO」)産生の増大した細胞に関する。MIOは、Fe(II)含有酵素であり、酸素を使用し、追加的な補因子を必要とせずにmyo-イノシトールをD-グルクロン酸へと変換する酵素である。
【0048】
細胞中のMIO産生を増大させることは、GGL製造のよりコスト効率のよい経路を可能にした。しかしながら、ほとんどの細胞中では、MIOは典型的には低レベルで存在するのみであるかまたは全く存在しない。したがって、MIOの産生を増大させるためには、MIO遺伝子を過剰発現するように改変された遺伝子組み換え細胞中でMIOを産生させることが可能である。この組み換え宿主は、細菌宿主細胞でありうる。過剰発現は、細胞中で産生されるMIOの量を増大させ、細胞質量当たりより多くのMIOをもたらす。多数の代謝遺伝子操作改良を行うことができる(例えば、宿主細胞における改良、MIO遺伝子における改良、または発現系における改良)。
【0049】
微生物細胞は、MIO産生を増大させるように改変することができ、また、全可溶性タンパク質の約15重量%〜約50重量%のMIO含有率を有しうる。他の改変細胞においては、MIO含有率は全可溶性タンパク質の約20重量%〜約50重量%を構成しうる、またはMIO含有率は全可溶性タンパク質の約25重量%〜約50重量%を構成しうる。
【0050】
MIOコード配列は種々の細胞供給源から取得することができる。適当な供給源としては、クリプトコッカス・テレウス(Cryptococcus terreus)、クリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans), クリプトコッカス・ラクタチボラス(Cryptococcus lactativorus)、ファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、およびアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)、ウシ(Bos taurus)、ラット(Rattus norvegicus)、マウス(Mus musculus)、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、シロイナズナ(Arabidopsis thaliana)、ラジアータマツ(Pinus radiata)、トウモロコシ(Zea mays)およびダイズ(Glycine max)が挙げられる。例えばWO 02/074926を参照のこと。遺伝暗号の縮重は、対応するアミノ酸配列の変更なしにコドンを改変することを可能にする。このことから、所望であれば、特定の生物中での発現を最適化するために、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更することなく、MIO核酸中のコドンを改変することができる。いくつかの実施形態において、特定の生物中での発現を最適化するために、MIOポリペプチドのアミノ酸配列が改変される。
【0051】
酵素の特性を変更するために、MIOコード配列を、N末端またはC末端タグをコードする配列と融合させることができる。適当な末端タグの例としては、マルトース結合タンパク質、Strep-tag(登録商標) (IBA, Goettingen, Germany; カタログ番号 2-1345-000)、ペクチン酸リアーゼB (pelB)のペリプラズム輸送シグナル配列、セルロース結合ドメイン(CBD)、チオレドキシン(trxA)、ジスルフィドオキシドレダクターゼ(dsbA)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(dsbC)、およびポリ-His6が挙げられる。MIO遺伝子はまた、天然の、非タグ化状態で使用することもできる。
【0052】
MIOはまた、種々のプロモーターにより発現されうる。特定のプロモーターにより産生されるMIOの量は、全タンパク質1mg当たりの産生されたMIO活性の単位として測定することができ、またはSDS-PAGEの密度分析により測定することができる。適当なプロモーターとしては、T7、T7Lac、およびT5、trc、trp、lacならびにaraBADが挙げられる。
【0053】
MIOの産生のために種々の宿主細胞が使用可能である。適当な細胞としては、細菌細胞、酵母細胞および糸状菌細胞が挙げられる。細菌宿主細胞は、活発であり、耐性であり、迅速に複製され、また種々の細胞培地で増殖可能であることから、使用することができる。適当な細菌宿主細胞の例としては、大腸菌(Escherichia coli)(「E. coli」)、ザイモノナス(Zymomonas)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、バチルス(Bacillus)種(例えば、枯草菌(B. subtilis)、バチルス・メガテリウム(B. megaterium)またはバチルス・リチェニホルミス(B. licheniformis))、シュードモナス(Pseudomonas)種、およびパントエア(Pantoea)(エルウィニア(Erwinia))種が挙げられる。大腸菌(E. coli)の適当な菌株の例としては、B株、例えばB834(DE3)、B834、BL21(DE3)、BL21、BL21(DE3)STAR、BL21(DE3)AI、BL21(DE3)pLysS、BLR(DE3)、BLR(DE3)pLysS、BLR、Rosetta(DE3)、Rosetta、およびK-12株、例えばHMS174(DE3)、HMS174、HMS174(DE3)pLysE、Origami(DE3)、Origami、NovaBlue(DE3)、NovaBlue、W3110(DE3)、W3110、MG1655(DE3)、MG1655、BW30384(DE3)、BW30384が挙げられる。
【0054】
さらに、宿主株はT7リゾチームを発現する第2ベクターを有しうる。T7リゾチームは細胞の基質(myo-イノシトールなど)および産物(グルクロン酸)の浸透性を増大させるのを助ける。T7リゾチームは、pLysEまたはpLysSのようなプラスミドから発現させることができる。MIOは、細菌細胞の染色体中に組込まれうる。これはトランスポゾンを用いて細菌細胞の染色体中に該遺伝子を挿入することにより行われうる。これはまた、DatsenkoおよびWanner (Datsenko KA and Wanner BL, (2000) PNAS 97(12): 6640-6645)に記載の方法により行われうる。同方法はまた、Reid, JL and Collmer, A, (1987) Gene; 57(2-3) 239-246に記載のsacB選択に基づく方法を用いて行われうる。
【0055】
組込まれたMIO遺伝子が宿主細菌中で維持されていることを確認するためには、選択マーカーを使用することができる。例えば、MIO DNA構築物は、高コピー数プラスミド中に存在しうる。かかるプラスミドは典型的には選択マーカーも有する。適当な選択マーカーとしては、抗生物質選択マーカー、栄養要求性選択マーカー、および他の化学物質に対する耐性または感受性を付与する他のマーカー(例えばD-alaおよびD-serに対する耐性、ならびにD-ileおよびD-valに対する感受性を付与するD-アミノ酸オキシゲナーゼ)が挙げられる。
【0056】
適当な抗生物質耐性マーカーとしては、カナマイシンおよびネオマイシンに対する耐性を付与するアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH[3’]-II)、ならびに50〜150 ug/mlおよびそれ以上のアンピシリン濃度に対する耐性を付与するβ-ラクタマーゼが挙げられる。その上、こうしたマーカーは1種以上の抗生物質に対する耐性を付与することができる(例えばβ-ラクタマーゼはアンピシリンおよびカルベニシリンに対する耐性を付与する)。
【0057】
適当な栄養要求性選択マーカーとしては、metE (テトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸・ホモシステイン・メチルトランスフェラーゼ)、trpA (トリプトファンシンターゼのαサブユニット)、glnA(グルタミンシンターゼ)、thrC (トレオニンシンターゼ)およびpyrE (オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ)が挙げられる。
【0058】
MIOの産生を調節しかつ制御するためには、誘導物質を使用することができる。適当な誘導物質としては、ラクトース、アラビノース、およびイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(「IPTG」)が挙げられる。
【0059】
誘導物質の効果を増強するために、選択した誘導物質と併用して他の化合物もまた場合により使用可能である。例えば、場合により誘導物質と併用してクエン酸第二鉄を使用することができる。
【0060】
さらに、MIOの産生を最適化するために、他の方法で細胞を改変することができる。例えば、ラクトース加水分解により生じるグルコースとガラクトースの両方が栄養物質として利用されうるように、細胞をガラクトース代謝するように改変することができる。別の例として、細胞は、D-グルクロン酸の代謝を阻害または抑制する改変(例えばuxaC遺伝子座における突然変異)を有しうる。かかる改変は、溶解物中の溶解処理を生き延びた細胞によるD-グルクロン酸の代謝を阻害または抑制し、そのことにより変換反応中のD-グルクロン酸の収率を向上させることができる。
【0061】
III myo-イノシトールからのGGLの製造
myo-イノシトールからのGGLの製造は、次の工程の1以上を伴う。すなわち、MIO含有細胞の発酵、MIO含有細胞を溶解させることによるMIOの解放、かかる細胞由来のMIOの活性化、MIOを用いたmyo-イノシトールのD-グルクロン酸への酵素変換、清澄化、脱塩、加熱、および回収。
【0062】
1) 発酵
MIO遺伝子を有する細胞の発酵は、バッチ法、フェッドバッチ法、半連続法、または連続法の発酵を用いて行うことができる。発酵は一般的には、温度、pH、酸素レベルおよび培地組成を含む変数を制御することにより最適化される。場合により、細胞は、別の組成の培地に移すか、または経時的に培地組成を変更することができる。
【0063】
種々の細胞密度測定法を用いて、myo-イノシトールオキシゲナーゼ(「MIO」)酵素の産生を誘導するために適当な時期を決定することができる。材料を移すことなく、かつ培養を最小限にしか乱さずに行うことのできる試験、例えば光学密度を用いた試験が好ましい。
【0064】
適当な時間の後に、用いる方法に依存して、MIOは処理を続けることができるレベルに達するであろう。例えば、細胞に誘導をかけて、増大したMIOの産生を開始させることができる。MIOが所望のレベルに達したならば、細胞の一部または全部を回収することができる。回収は、適当な技術(例えば濾過、遠心分離など)により行うことができる。細胞は、回収中または回収後に洗浄することができる。回収した後に、細胞は後の使用のために貯蔵することができ、または直接使用することができる。所望であれば、回収細胞を液体から分離してもよい。回収細胞または液体を伴う細胞を、MIOの著しい分解を伴うことなく、0〜10℃で約1週間貯蔵するか、またはより長い貯蔵期間については冷凍することができる。
【0065】
2) MIO活性化
本発明のある態様は、myo-イノシトールの導入前に、MIOを用意するために用いる混合物に関する。細胞を回収した後、細胞中のMIO酵素を、使用のために調製することができる。MIOは全細胞として用いるか、または細胞を破砕することにより抽出することができる。細胞破砕は、遊離の、可溶性MIOを伴う破砕された細胞の懸濁物をもたらす。細胞を破砕する場合、酵素溶液を使用する前に細胞残渣を除去することは必須ではない。
【0066】
MIOが全細胞中に存在する場合であれ、混合物中に懸濁されている場合であれ、MIOは好ましくは使用前に下準備する。この下準備を多くの場合、MIO活性化という。MIO酵素が最も効果的かつ効率的に機能するためには、酵素をまず活性化するべきである。活性化はMIOの比活性を増大させ、MIOをD-グルクロン酸形成に関してより効率的にする。MIO比活性は、用いたタンパク質抽出物の重量当たりの形成されるD-グルクロン酸の重量として測定することができる。
【0067】
適当な活性化混合物はMIOおよび還元剤を含む。場合により、活性化混合物はFe(II)をも含みうる。場合により他の成分も存在してよい。かかる混合物において、MIOは化学的還元剤を使用することにより、または還元当量の代替的供給源を用意することにより活性化することができる。代替的還元当量は、例えば混合物に電圧勾配をかけることによりもたらすことができる。
【0068】
MIOは、最大で飽和濃度で混合物中に存在してもよく、または飽和を超過して存在してもよい。MIOは約1 mg/mlより高い、約2 mg/mlより高い、約3 mg/mlより高い、約5 mg/mlより高い、約7 mg/mlより高い、または約9 mg/mlより高い濃度で存在しうる。MIOは、飽和未満、約200 mg/ml未満、約150 mg/ml未満、約100 mg/ml未満、約75 mg/ml未満、約50 mg/ml未満、または約20 mg/ml未満、の濃度で存在しうる。
【0069】
MIOは混合物中に、全細胞として、細胞溶解物を伴って、精製された細胞溶解物として、または固体マトリックス上に固定化されて存在しうる。MIOが全細胞中に存在するときは、細胞壁と細胞膜は、混合物の成分が細胞壁と細胞膜を透過してMIOが活性化されうるように透過性であるべきである。適当な全細胞としては、酵母細胞、糸状菌細胞、ならびにグラム陽性およびグラム陰性細菌が挙げられる。全細胞中に存在するときは、MIO含有率は全可溶性タンパク質の約15重量%〜約50重量%、全可溶性タンパク質の約20重量%〜約50重量%、または全可溶性タンパク質の約25重量%〜約50重量%を構成しうる。
【0070】
あるいはまた、MIOを含有する細胞は、混合物へのMIOの添加の前に、溶解させることができる。溶解細胞とは、細胞壁と細胞膜の破砕により破壊されて開かれた細胞であり、このことは活性化のためにMIOの直接的なアクセスを可能にする。細胞は機械的または化学的作用により溶解させることができる。適当な機械的破砕の手段としては、超音波処理、液体窒素を用いた凍結、ビーズを用いた撹拌(bead beating)、フレンチプレス、またはホモジェナイザー(例えばMicrofluidizer細胞破砕機またはガウリン型(Gaulin-type)ホモジェナイザー)が挙げられる。化学的溶解に適当な化合物としては、Bug Buster抽出試薬(Novagenより入手可能)のような界面活性剤を用いた処理、リゾチームを用いた処理、またはTritonもしくはTweenのような界面活性剤への曝露が挙げられる。細胞を機械的に溶解させるときは、ありうるMIOに対する影響を最小化させることができる。さらに、いくつかの場合には、機械的破砕を用いると、より高い酵素濃度が達成される。
【0071】
場合により、細胞の機械的破砕の前に細胞を冷却することができる。例えば、機械的破砕の前に細胞を20℃未満へと冷却することができる。
【0072】
場合により、破砕前に細胞を水またはバッファー中に懸濁することができる。いくつかの場合、任意選択的なバッファー中での懸濁は、安定性を増大させうる。また、任意選択的な水またはバッファー中での再懸濁の前に、発酵培養液を全て除去することは必要はない。種々の懸濁物比およびバッファー濃度を用いることができる。適当な懸濁物比としては、3:1、2:1、1:1、1:2、および1:3のバイオマス対水またはバッファーの比が挙げられる。バッファーを使用するのであれば、適当なバッファー濃度の例としては1 mM、10 mM、25 mM、50 mM、100 mM、および200 mMが挙げられる。適当なバッファーとしてはMOPS、HEPES、EPPSほよび酢酸ナトリウムが挙げられる。その上、(例えば遠心分離を用いた)細胞残渣の除去は必要ではない。
【0073】
細胞を溶解させるときには、細胞の内容物は溶解溶液中に希釈されるが、タンパク質のパーセンテージは不変のままである。したがって、未精製の細胞溶解物中では、MIOは、全可溶性タンパク質の約15重量%〜約50重量%、全可溶性タンパク質の約20重量%〜約50重量%、または全可溶性タンパク質の約25重量%〜約50重量%を構成しうる。溶解物を精製することもできる。適当な精製方法の例としては遠心分離および濾過が挙げられる。精製は、遠心分離、濾過、または他の手段によるものであれ、溶解物から一部のタンパク質を除去する。したがって、精製された細胞溶解物中では、MIOは全可溶性タンパク質の約25重量%〜約100重量%を構成しうる。MIOはまた、精製された細胞溶解物中の全タンパク質の少なくとも26%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上を構成しうる。
【0074】
MIO活性化のためには、溶解細胞混合物を、精製状態または未精製状態のいずれかとして混合物に添加することができる。所望により、MIOを含有するサンプルを使用前に貯蔵してもよい。MIOを含むサンプルは、著しいMIO分解を伴うことなく、短期間については低温で貯蔵することができ、または長期間の貯蔵については凍結することができる。例えば、精製されたHis6タグ化MIO、無細胞抽出物、および溶解されたバイオマスのサンプルを、2回の−80℃への凍結融解サイクルに供し、このとき有意の活性喪失はなかった。しかしながら、さらなる凍結融解サイクルは、MIO活性を減少させた。長期間の貯蔵については、サンプルのMIO活性は、数ヶ月に渡る−80℃での継続的貯蔵後にも安定であり続けた。
【0075】
His6タグ化MIOは、約200 mgの純粋MIOのバッチとして精製することができる。この精製は、His結合キットユーザープロトコル; 出版番号TB054 Rev.D.0303 (Novagenより入手可能)に沿って行うことができる。純粋酵素の寿命は、種々の環境要因、例えば温度、酸化的状態などに依存しうる。その上、溶解されたバイオマスは無細胞抽出物とほぼ同じ比活性を有することが見出された。
【0076】
任意選択的に、いくつかの態様においては、活性化混合物のさらなる成分は鉄でありうる。典型的には、鉄はFe(II)の塩として活性化に添加される。Fe(II)を含有する適当な化合物の例としては、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸第一鉄、および第一鉄ハロゲン化物(例えば塩化第一鉄およびヨウ化第一鉄)が挙げられる。あるいはまた、Fe(III)塩を含む溶液を用いることができる。そのような場合には、Fe(III)還元反応中に酵素が破壊される可能性を避けるために、Fe(III)をまずFe(II)に還元し、次いでmyo-イノシトールオキシゲナーゼを含有する溶液に添加すべきである。このことから、Fe(II)は、直接添加、または還元反応後のいずれかにより、活性化溶液中に存在しうる。
【0077】
適当に、Fe(II)は0 mM以上の濃度で存在しうる。Fe(II)は、約0.2 mMより高い、約0.5 mMより高い、または約1 mMより高い濃度として存在しうる。Fe(II)は、約50 mM未満、約40 mM未満、約30 mM未満、約20 mM未満、約15 mM未満、約10 mM未満、約7 mM未満、約5 mM未満、または約2 mM未満の濃度で存在しうる。
【0078】
活性化混合物のさらなる成分は還元剤である。典型的には、MIOの活性化に用いられてきた還元剤はシステインであった。システインは、pH 7において−230 mVの還元電位を有する。しかしながら、MIOを効率的かつ効果的に活性化するためにはシステイン以外の物質を用いることができることが見出された。適当な物質としては、約−200mVより大きい還元電位を有する還元剤が挙げられる。該物質はまた、約−150 mVより大きい、約−100 mVより大きい、約−50 mVより大きい、0 mVより大きい、または25 mVより大きい還元電位を有しうる。該物質はまた、約500 mV未満、約300 mV未満、約200 mV未満、約100 mV未満、または75 mV未満の還元電位を有しうる。他の適当な物質としては、硫黄非含有型還元剤が挙げられる。硫黄非含有型還元剤は、有機性の硫黄非含有型還元剤でありうる。還元剤は水溶性でありうる。適当な還元剤の例としては、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスコルビン酸2-O-α-グルコシド(Aα-2G)、アスコルビン酸パルミトイル、アスコルビン酸2-リン酸、5炭素アナログ(エリトロアスコルビン酸など)、およびその誘導体(塩、エステル、エーテル、グリコシド、リン酸エステルなどを含む)が挙げられる。2種以上の還元剤を用いることができる。用いる還元剤は、L-アスコルビン酸またはD-イソアスコルビン酸を含みうる。
【0079】
種々の濃度の還元剤が使用可能である。還元剤は0 mM以上、約0.5 mMより高い、約1 mMより高い、約2 mMより高い、または約5 mMより高い濃度として存在しうる。還元剤は約1 M未満、約900 mM未満、約500 mM未満、約100 mM未満、約25 mM未満、または約10 mM未満の濃度として存在しうる。
【0080】
化学的活性化の他に、他の種類のMIO活性化も可能である。例えば、MIOの電気的活性化を行うこともできる。そのような場合には、MIOを活性化するために、MIOとFe(II)を含有する混合物に電圧勾配を加える。場合により、伝導度を増強するための化学的イオンを混合物に添加してもよい。
【0081】
また、場合により他の成分も活性化混合物中に存在しうる。存在しうる他の成分の例としては、バッファー、および他のタンパク質、ならびにバイオマスが挙げられる。
【0082】
MIOの活性化は、バッファー溶液中または水中で行うことができる。MIO活性レベルは、インキュベーションを水中でかつ緩衝化しない場合であれ緩衝化する場合であれ、無細胞抽出物の氷上での1時間に渡るインキュベーション後にもほぼ同じである。適当なバッファーの例としては、3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸(「MOPS」)および酢酸ナトリウムが挙げられる。場合により、バッファーが混合物の一部であるならば、それは最大1 Mの濃度で存在しうる。バッファーが混合物の一部であるならば、それは最大500 mM、最大200 mM、または最大100 mMの濃度で存在しうる。
【0083】
MIOが溶解細胞から得られたものでありうることから、混合物中には他のタンパク質およびバイオマスが存在しるう。典型的には、存在する全可溶性タンパク質は約1 mg/ml〜約250 mg/mlの濃度である。
【0084】
活性化工程中に、混合物は液体状態のままであるべきである。それに加え、インキュベーション条件は、活性化反応およびMIO酵素のために適切に維持されるべきである。このことから温度は、約−5℃〜約20℃、または約0℃〜約10℃に維持することができる。
【0085】
さらに、インキュベーション時間はMIO酵素を活性化するのに適切であるべきである。適当なインキュベーション時間は、約1分〜約10時間またはそれ以上に及ぶ。例えば、インキュベーション時間は、約10分〜約6時間、または約15分〜約150分でありうる。
【0086】
3) myo-イノシトールのD-グルクロン酸への酵素変換
myo-イノシトールのD-グルクロン酸への変換は、MIO、myo-イノシトール、および酸素を含む混合物中で行われる。場合により他の成分も存在しうる。Myo-イノシトールのD-グルクロン酸への変換は、バッチ処理、フェッドバッチまた半バッチ処理、半連続処理、または連続処理の一部として行われうる。
【0087】
好ましくは、MIOは反応における使用の前に活性化される。MIOの濃度は最大で飽和であってもよく、また、飽和を超過してもよい。濃度は、選択された処理および添加方法の両方に応じて変化する。例えば、MIOを、変換の開始時に添加することができ、定期的に添加することができ、または反応に連続的に添加することができる。あるいはまた、固定化されたMIOに溶液を通す(pass across)ことができる。
【0088】
混合物に添加する場合、MIOは、全細胞中に存在することができ、または混合物中で自由に利用可能でありうる。MIOが全細胞中に存在する場合、全細胞は、混合物中に、セルベッド(cell bed)として、または何らかの方法で固定化されて存在しうる。場合により、myo-イノシトールトランスポーター(ITR1およびITR2)、化学的透過化、またはT7 リゾチームのような透過性を増大させる遺伝子の発現により、myo-イノシトール透過性を増強することができる。
【0089】
全細胞として添加しないのであれば、MIOは、精製溶解物または未精製溶解物として混合物中に添加することができる。未精製溶解物は、他のタンパク質および細胞残渣を含みうる。溶解されたバイオマスおよび無細胞抽出物は、myo-イノシトールの酵素的酸化中に同じ半減期を有すること、および同じ初速度で酸化を行うことが見出された。あるいはまた、MIOは何らかの方法で固定化されうる。
【化1】

【0090】
基質であるmyo-イノシトールは上の化学式に示す構造を有する。選択された処理パラメーターに応じて、myo-イノシトールは変換工程の開始時に、定期的に、または変換の間中継続的に、混合物に添加することができる。濃度は、選択された処理および添加方法の両方に応じて変化する。しかしながら、myo-イノシトールは、最大で飽和濃度まで、または飽和濃度を超過してさえも存在しうる。myo-イノシトールは、液体混合物、スラリー、または粉末として添加されうる。myo-イノシトールは約1 g/lより高い、約5 g/lより高い、約10 g/lより高い、約25 g/lより高い、約50 g/lより高い、または約100 g/lより高い濃度で存在しうる。myo-イノシトールは、飽和濃度未満、または約500 g/l未満、約450 g/l未満、約400 g/l未満、約300 g/l未満、または約200 g/l未満の濃度で存在しうる。変換中に、myo-イノシトールはD-グルクロン酸に変換され、これは混合物中のmyo-イノシトールの濃度にも影響を及ぼすであろう。
【0091】
適当なmyo-イノシトール材料の例としては、NF12グレード(SinoChem Hebai Import and Export Corporation, Shijiazhuang, Chinaより入手可能)、FCCIVグレード(Changzhou Whole Fortune Pharmaceutical Co. Ltd, ChangZhou, Chinaより入手可能)、およびUSPグレードならびにコーンスティープ水由来の粗製myo-イノシトール(USP 2615053を参照のこと)が挙げられる。
【0092】
USPグレード(>99%純粋myo-イノシトール)および粗製myo-イノシトール(25 g/l myo-イノシトール-含有液(USP 2615053))の両方が基質として適当である。なぜならばいずれの基質も反応混合物中で同じ様なレベルの酸化をもたらすからである。しかしながら、下流の処理工程への影響を最小化するためには、粗製myo-イノシトールの使用は、変換後にさらなる精製処理を必要とすることがある。
【0093】
酸素は反応混合物の別の成分である。酸素は、処理が進行するにしたがい反応混合物に添加することができる。混合物中の酸素含量は、酸素が変換反応の制限的要素とならないような含量であるべきである。例えば、酸素は、1リットル当たり1時間当たり20 mmolまたはそれ以上の酸素利用率を支持するのに十分な量として存在しうる。酸素は、種々の方法により混合物に添加されうる。例えば、高い酸素含量を維持するためには、反応混合物の上のヘッドスペースを継続的に更新することができる。別の方法として、酸素を含む気体を、変換混合物中に泡立てるまたはスパージングする。酸素は空気、酸素富化空気、または純酸素として添加することができる。
【0094】
混合物の溶存酸素(「DO」)含量は変換速度に影響を及ぼすようである。なぜならばDOの高い混合物は、低いDOレベルの混合物よりも変換速度が速いからである。しかしながら、形成される産物の最終量は、高いおよび低いDOレベルを有する混合物の両方で類似するようである。このことから、反応媒体中のDOレベルを変化させることは反応速度に影響を及ぼすが、産物の総量にはほとんど影響がないようである。
【0095】
反応混合物の温度もまた変換速度に影響を及ぼしうる。適切には、温度は約0℃〜約50℃、約10℃〜約35℃、約15℃〜約30℃、または約15℃〜約20℃となるであろう。一般に、約15℃〜20℃の温度は同じ変換速度を示す。この範囲から外れる温度は、低温であれ高温であれ、温度の逸脱が大きくなるにつれて速度が低下し変換の喪失が増大する。しかしながら、過剰量まで酸素含量を増大させることは、該温度範囲を約15℃〜約30℃へと拡張する。
【0096】
先行文献報告では、myo-イノシトールのD-グルクロン酸への変換中に、反応媒体中にFe(II)が必要であることが指摘された。しかしながら、反応媒体に追加のFe(II)の添加されないサンプル変換では、初期酵素速度または反応中の比活性のいずれにも悪影響が見られなかった。
【0097】
先行文献報告では、myo-イノシトールのD-グルクロン酸への変換中に、反応媒体中に還元剤が必要であることが指摘された。追加の還元剤が全く添加されていない反応媒体を含む混合物では、初期酵素速度または反応中の全比活性のいずれにもほとんど影響が見られなかった。実際には、追加の還元剤が全く添加されなかった反応媒体中の変換速度と比べて、反応媒体に追加の還元剤が添加されたときには、myo-イノシトール変換の初速度は、著しい遅延を示した。
【0098】
場合により、反応混合物にバッファーまたは水を添加することができる。一般的には、myo-イノシトールのD-グルクロン酸への変換中に反応混合物のpHを制御するために過剰量のバッファーが使用されてきた。しかしながら、pHレベルを維持するために、水酸化ナトリウム添加を用いたpH制御も使用されてきた。能動的pH制御を使用するときには、myo-イノシトール酸化において、水がバッファーと同じくらい効果的であることが見出された。このことから、反応媒体のpHが適切に維持される限り、バッファーの欠如は酵素活性に有害ではない。適切には、pHは約pH 6.2より高く、または約pH 7.4より高く維持される。適切には、pHは約pH 8.5未満、または約7.6未満に維持される。適当な能動的pH制御化合物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および水酸化アンモニウムが挙げられる。
【0099】
場合により、消泡剤を反応混合物に添加することができる。このことは、スパージング技術を用いて反応混合物に酸素を添加するときに特に望ましいことがある。適当な消泡剤としては、myo-イノシトールのMIO-触媒酸化に対して全くあるいは最小限の抑制的影響しか有しないものが挙げられる。適当な消泡剤の例としては、Sigma 204(有機消泡剤)、Sigma O-25(多価アルコール; シリコンポリマー)、Clerol FBA 265(アルコキシ化ポリオール)、Clerol FBA 975(アルコキシル化グリセロールトランスエステル)、Ivanhoe XF8-1163B、またはSAG 471が挙げられる。適当ではない消泡剤の例としては、Sigma O-30(脂肪酸エステル)およびClerol FBA 5057が挙げられる。なぜならばこれらは著しい抑制的影響を示したからである。
【0100】
場合により、他の添加物を反応混合物に添加することができる。例えば、MIOの反応速度または活性を増大させるために添加物を加えることができる。速度添加物の例としては、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、ウシ血清アルブミン、およびカルシウム塩が挙げられる。
【化2】

【0101】
産物のD-グルクロン酸を上に示す。D-グルクロン酸濃度は、用いる処理方法および酵素変換のために選択されたパラメーターに応じて変化する。D-グルクロン酸の濃度は0 g/l 以上、約0.1 g/lより高く、約1 g/lより高く、約2 g/lより高く、約5 g/lより高く、約10 g/lより高く、または約20 g/lより高くてもよい。産物のD-グルクロン酸の量は、飽和に達してもよくまたは飽和を超えることさえもできる。D-グルクロン酸濃度はmyo-イノシトール濃度よりも大きくてもよく、またmyo-イノシトール濃度の少なくとも2倍であり得る。
【0102】
4) 清澄化
所望の時点において、反応混合物を清澄化して、清澄化された混合物を得ることができる。反応混合物を清澄化するための適当な方法としては、真空濾過、遠心分離、限外濾過、膜濾過、または懸濁固形物を除去する他の技術が挙げられる。清澄化工程の一部として洗浄工程を追加することにより、産物回収を増大させることができる。固形物の除去は、固形物が沈殿を形成しないまたは処理を妨害しないことから、脱塩のような下流の工程がより効率的に進行するようにする。
【0103】
懸濁固形材料には不溶性タンパク質が含まれる可能性があり、このことから清澄化工程は典型的には混合物からタンパク質をも除去する。清澄化中に除去されるタンパク質の量は、種々の要因(清澄化に用いた方法、用いた温度、種々の方法に用いた特定の選択(例えば細孔の大きさ)を含む)に依存する。例えば、清澄化の前に混合物にヒートショックを加えることは、多くの場合、清澄化中によりタンパク質含有率のより大きな低減をもたらす。いくつかのケースでは、清澄化工程により、反応混合物のタンパク質含有率を25%、35%、またはそれ以上低減することができる。
【0104】
5) 脱塩
混合物から塩およびイオンを低減または除去するために、反応混合物または清澄化された混合物を脱塩することができる。さらに、混合物のタンパク質含有率は、脱塩中にさらに低減され得る。脱塩にはほとんどどのような種類のカチオン交換樹脂も使用可能である。適当なカチオン交換樹脂の例はRelite C206である。
【0105】
脱塩は、低下させた温度、周囲温度、または上昇させた温度で行うことができる。上昇させた温度で行う場合、得られる酸の一部はラクトンに変換される。
【化3】

【0106】
6) 加熱
D-グルクロン酸をGGLへと変換するために脱塩混合物を加熱することができる。GGLの構造を上に示す。D-グルクロン酸を含む混合物を加熱すると、該有機酸はラクトンに変換される。酸の存在故に、加熱中に混合物は酸性pHを有する。変換の程度は、種々の要因(酸の濃度、混合物の温度、およびその温度に混合物を維持した時間を含む)に依存する。適切には、混合物の温度は、周囲温度より高温、または約50℃、75℃、90℃、もしくは120℃よりも高温となるであろう。
【0107】
加熱は混合物の着色をもたらし得る。それに加えて、色はそれより前の処理工程の結果として、または原材料に由来して存在しうる。適切な材料で処理することにより、加熱された混合物から色を除くことができる。例えば、混合物に脱色物質(例えば粉末状炭素、粘度、珪藻土、樹脂など)を接触させることができる。
【0108】
結晶化をいくらか上昇させた温度(例えば45℃以上、または55℃以上)で蒸発結晶化により行う場合には、加熱工程を省略することができる。こうした条件下では、ラクトン化と結晶化が同時に進行する。
【0109】
7) 回収
産物は、反応混合物、清澄化された混合物、脱塩された混合物、または加熱された混合物から回収されうる。このことから、D-グルクロン酸もしくはその塩またはGGLのいずれかを、適当な混合物から回収することができる。産物を、蒸留のような液体分離技術、膜拡散法または結晶化により回収することができる。
【0110】
結晶化によりGGLを混合物から回収することができる。GGLの結晶化は、混合物の濃縮および冷却により行うことができる。濃縮は好ましくは、着色を最小化するために減圧下(大気圧より低い)で行う。濃度の1つの指標は、混合物中に存在する溶解固形物の量である。適切には、25%、33%、50%、60%、67%、またはそれ以上の溶解固形物を含有するまで混合物を濃縮する。さらに、結晶化は、着色を最小化し回収を最大化するためには、好ましくは、低下させた温度下で行われる。適切には、温度は約100℃未満、約75℃未満、約50℃未満、または約45℃未満であろう。結晶化に次いで、適当な方法(遠心分離、濾過などを含む)を用いて混合物からGGL結晶を除くことができる。
【0111】
回収を最大化するためには、結晶化の後に残留する液を追加の処理に供してもよい。この追加処理には、残留混合物を反復される加熱、濃縮、冷却、および回収に供して、残留するD-グルクロン酸をラクトンに変換し、ラクトン結晶を回収することが含まれる。液の酸またはラクトンがほぼ完全に枯渇するまでこの処理を反復することができる。
【0112】
IV 用途および効果
myo-イノシトールのD-グルクロン酸への酵素変換にはいくつかの利点がある。この方法は、多量の濃硝酸の使用を回避する。このことから、この方法の環境的影響は低減される。なぜならばこの方法は、濃硝酸廃液の流れがなく、硝酸の使用により必要となる安全対策ももはや不必要であるからである。この方法は、価値の低い作物加工副産物(myo-イノシトール)を用いて、より価値の高い産物であるD-グルクロン酸を生成する。酵素変換方法は、現在の硝酸方法よりも著しく少ない廃液副産物を生じる。酵素方法により生成されたD-グルクロン酸は、汚染性副産物が少ないようであり、それ故、大規模な下流工程処理の必要性が少なくて済む。
【実施例】
【0113】
V 実施例
実施例1 MIOアッセイ手法
MIO活性は、Reddy ら(Reddy, C.C., Swan, J.S., Hamilton, G.A., J. Biol. Chem., 256, 8510 (1981))の方法の変法を用いて定型的に決定した。このアッセイは、オルシノールと産物D-グルクロン酸との反応に基づく。標準アッセイ混合物は、50 mM MOPS、pH 6.5〜6.6、60 mM myo-イノシトール、および適当な量の活性化酵素を全容量0.5 mL中に含むものであった。50 mM MOPS (約pH 6.5)中の5.0 mMアスコルビン酸および2.0 mM 硫酸第一鉄アンモニウムと混合すること、および氷上で1〜2時間インキュベートすることにより、全可溶性タンパク質濃度20 mg/mL〜125 mg/mLにて酵素を活性化した。アスコルビン酸(0.50 Mを0.5 M MOPS中で溶解、pH 6.5)および硫酸第一鉄アンモニウム(0.50 MをH2O中で溶解)のストック溶液は毎日新しく調製した。次いで氷上に貯蔵されたmyo-イノシトールおよびバッファーの溶液に活性化酵素を添加し、酵素反応を開始させた。成分を渦状撹拌して混合した後に、大気雰囲気下で15〜30℃にて250rpmで振とうしながら反応を進行させた。時間間隔をおいてアリコート(5〜300 μL)を移し、トリクロロ酢酸(45 μLの20%トリクロロ酢酸を含む最終容量345 μL)の溶液に加えた。渦状撹拌による混合および21,000 rpmで3分(室温にて)の遠心分離後に、0.3 mLのアッセイ上清を新たな1.5 mLポリプロピレン製微小遠心チューブに移し、D-グルクロン酸形成について分析した。
【0114】
0.3 mLのアッセイ上清、0.6 mLの新しく調製したオルシノール試薬(濃HCl中の0.4%(w/v)オルシノール、0.09%(w/v)三塩化第二鉄六水和物)を含む混合物を一緒に加え、渦状撹拌して混合し、次いで沸騰する水浴中で30分インキュベートした。室温に冷却後、21,000×gにて3分の遠心分離によりアッセイ混合物を清澄化した。上清を使い捨てのキュベットに移し、660 nmにおける吸光を測定した。反応の産物をD-グルクロン酸(0〜50 μg/mL)に置き換えて上記アッセイを行うことにより、標準曲線を作成した。標準としては、0、10、26.67、40および50 μg /ml D-グルクロン酸を用いた。すべての反応を二重反復して行い、酵素活性が低いときには基質ありおよび基質なしで反応を行った。基質を含むアッセイ混合物の吸光の測定値の平均から、基質を含まないアッセイ混合物の吸光測定値の平均を差し引いた。測定値の違いを用いて、比活性をタンパク質1mg当たり1分あたり形成されるD-グルクロン酸μgとして計算した。
【0115】
全可溶性タンパク質濃度は、96ウェルプレートフォーマットにおいてBio-Rad Protein Assay Kit I(Bio-Rad カタログ番号500-0001)を用いて推定した。1ウェル当たりの全アッセイ容量は250 μLであった。200 μLのサンプルまたは標準溶液に50μLの濃縮試薬を加え直ちに混合した。標準曲線測定(0〜50 μg/mL)のためには、ウシγグロブリン(Bio-Rad カタログ番号500-0005)を利用した。アッセイサンプルおよび標準物の595 nmにおける吸光を測定した。このアッセイはクマシーブリリアントブルーG-250を用いたBradford色素結合手法(Bradford, M., Anal. Biochem., 72, 248 (1976))に基づく。
【0116】
D-グルクロン酸およびmyo-イノシトールの濃度は、屈折率検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを用いて測定した。該システムはWaters 2690およびWaters 2414屈折率検出器から構成される。該2種の化合物の分離は、Aminex(登録商標) HPX-87H, 300×7.8 mm イオン排除カラムを用いて、35℃におけるイソクラティック溶出により行った。溶離液は水中の0.01N硫酸であり、流速は0.5 mL/分であった。0.2ミクロンナイロンフィルターを通過させる濾過の後にサンプルを分析した。D-グルクロン酸とmyo-イノシトールはそれぞれ、9.65分と11.25分に溶出した。対象の2種のアナライトはよく分解されており、該2種の化合物のいずれにも他の化合物との共溶出は見出されなかった。複数レベルの標準は、対象の濃度範囲に渡り良好な線形性を裏付けた。
【0117】
実施例2:プラスミドpCN-1およびpAN-1の構築
大腸菌(E. coli) DH10B ElectroMAX細胞は、Invitrogen Life Technologies, Inc. (Carlsbad, CA; カタログ番号18290-015)から、またプラスミドpET23dとpET28aはNovagen Inc.(Madison, WI; カタログ番号69748-3)から購入した。制限酵素はNew England Biolabs(Beverly, MA)から購入した。細菌用増殖培地成分はDifcoまたはFisher Scientific製であり、他の試薬は分析グレードまたは市販されている中で最も高いグレードのものであった。DNA電気泳動はBio-Rad Mini-Sub Cell GTシステム(Hercules, CA; カタログ番号170-4405)を用いて行った。PCR実験については、Eppendorf Mastercycler Gradient(Hamburg, DE)サーマルサイクラーを使用した。UV-可視分光分析はUltrospec 3100 pro (Biochrom Ltd., Cambridge, England)を用いて行った。エレクトロポレーションはBio-Rad Gene Pulser IIシステムを用いて行った。プライマーはIntegrated DNA Technologies, Inc (Coralville, IA)から購入した。自動DNA配列決定はAgencourt (Beverly, MA)を用いて行った。
【0118】
クリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)mio遺伝子を有する6μgのpET30(詳細については実施例6またはWO 02/074926 A2を参照されたい)をNcoI/XhoIを用いて一晩消化したのに対して、2.5 μgのpET23dも同様にNcoI/XhoIを用いて一晩消化し、次いで仔牛腸アルカリホスファターゼ(「CIP」)を用いたさらなる2時間の消化を行った。消化DNAサンプルは、QIAquick Gel Extraction kit (Qiagen Inc.; Valencia CA; カタログ番号28704)を用いて1%アガロースゲルからゲル精製し、次いで各サンプルを30 μlのEBバッファー(10 mM Tris Cl (pH 8.5))に溶出させた。Rapid DNA Ligation Kit (Roche Molecular Biochemicals; Indianapolis, IN)を用いて、120 ngのXhoI/NcoI消化mio(Cr. neoformans)を、120 ngのXhoI/NcoI/CIP 消化pET23dに連結させて、ベクター構築物pET23d:mio (Cr.neo)を作製した。pET23d:mio (Cr.neo)構築物を作製するための得られた連結混合物は、QIAquick PCR Purification kit (Qiagen Inc.; Valencia CA; カタログ番号 28104)を用いて脱塩し、30 μlのEBバッファーに溶出させた。1 μlの連結混合物のエレクトロコンピテントDH10B内への形質転換は、Bio-Radのグラム陰性細菌用エレクトロポレーションマニュアルに記載されている標準条件下で行った。推定pET23d:mio (Cr.neo)構築物含有クローンをNcoI/XhoI制限分析により同定し、配列決定により確認した。
【0119】
同様に、pET28a:mio(Cr. neo)構築物は、NcoI/XhoI消化クリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)遺伝子とNcoI/XhoI/CIP 消化pET28aベクターを用いて作製した。連結条件およびエレクトロコンピテントDH10B細胞内への形質転換条件は上に記載した条件と同じであった。推定pET28a:mio(Cr. neo)構築物含有クローンをNcoI/XhoI 制限分析により同定し、配列決定により確認した。1μlのpET28a:mio(Cr. neo)構築物を、製造者の指示に従い、化学的コンピテント大腸菌(E. coli) B834(DE3)、BLR(DE3)、BL21(DE3)、(Novagen Inc.; Madison, WI; それぞれカタログ番号第69041-3番、第69053-3番および第69450-3番)、BL21-AIおよびBL21Star(DE3) (Invitrogen Life Technologies; Carlsbad, CA; それぞれカタログ番号第C6070-03番および第C6010-03番)に形質転換した。NcoI/XhoI制限分析により推定形質転換体をスクリーニングした。
【0120】
栄養要求性選択マーカー系を用意するために、metE遺伝子をベクターpET23d:mio(Cr.neo)中に挿入した。
【0121】
大腸菌(E. coli) metE遺伝子に特異的なPCRプライマーを設計し、Puregene DNA精製システム(Gentra Systems; Minneapolis, MN)を用いて調製した大腸菌(E. coli)DH10BゲノムDNAサンプルから所望のgDNA断片を増幅した。
【0122】
プライマー:
5' プライマー: 5’-CGCGGCCGGCTTACTTCGATCATGAAAGTC-3’
3' プライマー: 5’-CGCGGCCGGCAGAAGTCGCTGTAATGAGAA-3’
(それぞれ配列番号1および2)
(NgoMIV制限部位には下線を施した)。
【0123】
PCR条件には次のものが含まれた。反応は、最終濃度1 μMの各プライマー、0.2 mMのdATP、dCTP、dGTP、およびdTTP、2.5単位のExpand High Fidelity PCRポリメラーゼ(Roche Molecular Biochemicals)、5 μlの10×Expandバッファー(MgCl2あり)ならびに200 ngの大腸菌(E. coli)gDNA(菌株DH10B)を、50 μl反応液中に含んだ。サーマルサイクラープログラムには、96℃で2分のホットスタート、次いで30サイクルに渡る、96℃での変性ステップ(30秒)、52.5℃でのアニーリングステップ(1分)、および68℃での伸長ステップ(3分30秒)、ならびに最後に、72℃での終了ステップ(7分)を用いた。6つの独立した50 μl PCR反応液をプールして、ほぼ2.5 Kbpの大きさの増幅DNAを、QIAquick PCR clean-up kitを用いて精製し、次いで30 mlのEBバッファーに溶出させ、約17μgのPCR産物を得た。NgoMIVを用いて、4μgのmetE PCR産物を一晩消化した。NgoMIVを用いて、先に作製したpET23d:mio (Cr. neo)の2.5 μgサンプルを同様に一晩消化し、次いでCIPと共に2時間インキュベートした。QIAquick Gel Extraction kitを用いて1%アガロースゲルから消化DNAサンプルをゲル精製し、次いで30 μlのEBバッファーに溶出させた。Rapid DNA Ligation Kit (Roche Molecular Biochemicals)を用いて、56 ngの消化された精製pET23d:mio(Cr.neo)のサンプルを160 ngの消化された精製metE PCR産物に連結し、ベクター構築物pCNを作製した。QIAquick PCR Cleanup Kitを用いて、pCN構築物を作製するための得られた連結混合物を脱塩し、30 μlのEBバッファーに溶出させた。1 μlの連結混合物のエレクトロコンピテントDH10Bへの形質転換を、上に記載のように行った。推定pCN構築物含有クローンをEcoRV制限分析により同定した。metE遺伝子のクローニングは方向性ではなかったため、2つの異なる構築物が得られた。pCN-7構築物(EcoRV消化は約1.0 Kbpおよび約6.0 KbpのDNA断片を生じた)は、metE遺伝子とクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)mio遺伝子が両方とも同じ方向に転写される構築物を示し、これに対してpCN-1構築物(EcoRV消化は約2.5 Kbpおよび約4.5 KbpのDNA断片を生じた)は、metE遺伝子とクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)mio遺伝子が反対の方向に転写される構築物を示した。いずれの構築物もDNA配列決定により確認した。
【0124】
1μlのpCN-1構築物を製造者の指示に従い化学的コンピテント大腸菌(E. coli) B834(DE3)およびHMS174(DE3)(Novagen Inc.; Madison, WI; それぞれカタログ番号第69041-3番および第69453-3番)に形質転換した。推定形質転換体を、NcoI/XhoI制限分析によりスクリーニングした。
【0125】
アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)由来のmio遺伝子を発現する、類似プラスミド(pAN-1)を構築した。アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)mioオープンリーディングフレームは、上に記載した条件と類似する条件および次のプライマーを使用するPCRにより増幅した:
5’-CCATACATGTCGCCTCACTCCAACG -3’
5’-GGCCCTCGAGCTACCACTTGATCTGCTTATTAGGGAAGAAC -3’
(それぞれ配列番号3および4、PciIおよびNcoI部位には下線を施した)。
【0126】
用いた鋳型は、Fungal Genetics Stock Center, University of Kansas Medical CenterからのA. nidulans フォスミドクローン8223 B10であった。得られたPCR産物は、QIAquick Gel Extraction Kitを用いて1%アガロースゲルからゲル精製し、次いでPciI/XhoIを用いて消化した。その後、消化されたPCR産物はQIAquick PCR Cleanup Kitを用いて脱塩した。
【0127】
NcoI/XhoI/CIPを用いて上記のようにpCN-1構築物を消化してクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans) mioを切り出し、QIAquick Gel Extraction Kitを用いて1%アガロースゲルからゲル精製した。ベクター構築物pAN-1を作製するために、Rapid DNA Ligation Kit (Roche Molecular Biochemicals)を用いてA. nidulans mioをNcoI/XhoI/CIP消化pCN-1構築物に連結した。QIAquick PCR Purification kit を用いてpAN-1構築物を作製するための得られた連結混合物を脱塩し、次いで30 μlのEBバッファーに溶出させた。1μlの連結混合物のエレクトロコンピテントDH10Bへの形質転換は、Bio-Radのグラム陰性細菌用エレクトロポレーションマニュアルに記載されている標準条件下で行った。推定pAN-1構築物含有クローンをSmaI 制限分析により同定し、配列決定により確認した。
【0128】
製造者の指示に従い1μlのpAN-1構築物を化学的コンピテント大腸菌(E. coli) B834(DE3) (Novagen Inc.; Madison, WI; カタログ番号 69041-3)に形質転換した。NcoI/XhoI制限分析を用いて推定形質転換体をスクリーニングした。
【0129】
図8は、種々の宿主菌株由来のMIOの活性レベルを示す。
【0130】
実施例3 バッチ発酵におけるmyo-イノシトールオキシゲナーゼ(MIO)の産生
4Lスケールの発酵槽中で、フラスコで得られる細胞密度よりも高い密度を達成するバッチ方法を用いてMyo-イノシトールオキシゲナーゼを産生した。この効果を実証するために、クリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)オキシゲナーゼ (pET28a:mio (Cr. neo))の発現用の遺伝子を有する大腸菌(E.coli)菌株 BLR(DE3)::pET28bの培養物を培養した。凍結培養物ストックから開始して、細胞を、(1) 50μg/mlカナマイシンを含む25 mlのLuria-Bertani培地(「LB」)で37℃、250 rpmにて6〜8時間増殖させ、(2)同じ条件の同じ培地200 mlに移し、ならびに(3)該細胞混合物を用いて、(1リットル当たり)2 g (NH4)2SO4; 1.6 g KH2PO4; 9.9 g Na2HPO4-7H2O; 0.65 クエン酸Na; 20 g NZ アミンA; 20 g グルコース; 0.24 g MgSO4および50 mgカナマイシンから構成される4リットルの培地を含む発酵槽に接種した。発酵は37℃に維持し、1分当たり2リットルの空気を供給し、かつ溶存酸素が40%飽和より高く維持されるように撹拌を調節した。pHは水酸化アンモニウム水溶液を用いて制御し7.0とした。光学密度(OD600)が3単位に達したら、温度を30℃に低下させ、30 μMクエン酸第二鉄を添加し、0.4 mM IPTGの添加により酵素の産生を誘導した。誘導の4時間後に、遠心分離により細胞ペーストを回収した。こうした条件下で5.9 g/L乾燥細胞重量(DCW)を得た。MIOの発現をSDSゲル電気泳動を用いて追跡したところ、発酵の終了時の総タンパク質の20〜25%と推定され、これは低細胞密度でのフラスコ中の増殖において観察された結果よりわずかに低かった。酵素活性は実施例1に記載したように測定した。
【0131】
実施例4 フェッドバッチ発酵におけるmyo-イノシトールオキシゲナーゼ(MIO)の産生
発酵工程で産生されるMIOの量を増加させるために、フェッドバッチプロトコルを開発した。この方法を、複数種の異なる大腸菌(E.coli)菌株を用いて行った。大腸菌(E.coli)菌株B834(DE3)::pCN-1の増殖の、プロトコルと結果を下に記載する。凍結培養物ストックから出発して、100μg/mlアンピシリンを含む25 mlのLB培地に接種し、37℃で250 rpmにて6〜8時間インキュベートすることにより接種材料を増殖させた。次に培養物を200 mLのNeidhardt最小培地に移し、同じ条件下で12〜16時間インキュベートした。この培地は(1リットル当たり)8.37 g MOPS; 0.72 g トリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)-メチルグリシン)、5 ml 1.9 M NH4OH; 1 ml 0.276 M K2SO4; 0.025 ml 0.02 M CaCl2・2H2O; 0.21 ml 2.5M MgCl2・6H2O; 10 ml 5 M NaCl; 10 ml 0.132 M K2HPO4および0.02 ml Neidhardt微量栄養素溶液を含む。Neidhardt微量栄養素溶液は、0.18 g/L (NH4)6(MO7)24・4H2O; 1.24 g/L H3BO3 ; 0.36 g/L CoCl2・6H2O; 0.12 g/L CuSO4・5H2O; 0.80 g/L MnCl2・4H2O;および0.14 g/L ZnSO4・7H2Oを含むものであった。
【0132】
OD600 が約2単位に達したら、培養物を5%比率にて発酵槽へと移した。発酵培地は、2.0g/L(NH4)2SO4; 8.0g/L K2HPO4; 2.0g/L NaCl; 1.0g/Lクエン酸Na3・2H2O; 1.0g/L MgSO4・7H2O; 0.025g/L CaCl2・2H2O; 0.05g/L FeSO4・7H2O; 0.4ml/L Neidhardt微量栄養素および2.0 g/Lグルコースからなるものであった。接種から2〜3時間時間後、60%グルコース溶液を用いて、指数関数的グルコース・フィードを設定した。フィードは、0.15 h-1の指数関数的割合での微生物増殖を支持するのに必要な速度で供給した。OD600が30という値(接種後20時間前後、15〜16g DCW/Lの細胞バイオマスに対応)に達したときに、温度を30℃に低下させ、30μMクエン酸第二鉄を添加し、フィードをグルコースから50%グルコースと10%ラクトースの混合物に切り換えた。この指数関数的フィードを8時間維持した。発酵の終了時に細胞濃度は28 g DCW/Lであり、このとき酵素発現レベルは全タンパク質の約25%であった。
【0133】
実施例5 細胞増殖および酵素発現に対する種々の変数の影響
細胞密度および酵素発現を向上させるために、実施例4に記載のフェッドバッチプロトコルを用いて、複数の異なる変数を試験した。一部の変数とその影響を下に説明する。
【0134】
誘導スキームの影響。次の条件同士の比較を行った。すなわち、(1)グルコースとラクトースの混合物を用いた継続的フィードによる低速誘導(対照);(2) 20 g/l ラクトースの1回添加とそれに次いで行う継続的指数関数的グルコースフィード;ならびに(3) 1mM IPTGの1回添加とそれに次いで行う同じグルコースフィード。表1に示す結果からは、この特定の菌株および構築物に対してはラクトースを用いた誘導が非常に効果的であり、高価なIPTGの使用を回避することができることが示された。
【表1】

【0135】
誘導後のラクトース濃度およびフィード速度の影響。種々の誘導スキームを検討するために、ラクトース添加のバリエーションを試験した。ラクトースは、20 g/Lの1回用量として、10%ラクトース/50%グルコース混合物を用いて、または20%ラクトース/40%グルコース混合物を用いて添加した。これに加え、培地中のグルコースの蓄積を避けるために0.1 h-1以下の増殖速度を維持するために、誘導後にフィード速度を低下させた。結果を表2に示す。誘導後にフィード速度を低下させることは、より多いタンパク質産生を可能にし、ラクトースの低速添加もまた酵素発現の増大に寄与するようである。
【表2】

【0136】
温度の影響。3種の異なる温度スキームについて、発酵の2つの相(誘導前および誘導後)における温度の影響を調べた。すなわち、(1)細胞を37℃で増殖させ、誘導時に温度を30℃まで低下させた;(2)発酵の全期間中、細胞を37℃で増殖させた;ならびに(3)発酵の全期間中、細胞を30℃で増殖させた。結果を表3に示す。結果は、酵素蓄積に関して、30℃での増殖が、37℃において増殖させ次いで誘導中に温度を下げること、と同程度に効果的であることを実証した。誘導後も37℃を維持することは酵素活性に有害であった。
【表3】

【0137】
種々の酵素および宿主菌株の試験。実施例4に説明したプロトコルを使用し、誘導後に0.1 h-1という増殖速度を維持するためのフィード速度の低下という改変を加えつつ、2種の異なる供給源ならびに異なる宿主細胞由来の酵素の産生を、酵素発現について評価した。こうした結果の一部を表4にまとめた。
【表4】

【0138】
実施例6 myo-イノシトールからのD-グルクロン酸の生物触媒製造
myo-イノシトールからのグルクロン酸の生物触媒製造を開発するために、小スケールプロトコルを用いた。myo-イノシトールオキシゲナーゼを有する細胞を上に記載したように増殖させ、遠心分離により回収し、50 mM MOPSバッファー中でpH 7.0にて洗浄した。使用するまで細胞ペーストを凍結したままにした。反応用に酵素を調製するために、細胞をpH 6.5にて2容量の同じバッファーに再懸濁し、次いでフレンチプレスまたはMicrofluidicsホモジェナイザー(Microfluidizer細胞破砕機M-110L、Microfluidics, MAより入手可能)のいずれかを用いて破砕した。20,000 psiにおいて2〜3回圧力をかけることにより破砕を行い、次いで顕微鏡を用いて視覚的に確認した。細胞残渣を除去するために、細胞抽出物を20分、15,000 rpmにて遠心分離した。実施例1に記載のようにして、清澄上清中の全可溶性タンパク質を測定した。75 mg/mlのタンパク質濃度まで細胞抽出物を希釈し、それぞれ5および2 mMの濃度のアスコルビン酸および硫酸第一鉄アンモニウムの存在下で、氷上で1時間、酵素をインキュベートした。
【0139】
温度、pH、撹拌および溶存酸素を制御しながら、酵素反応を0.7 L反応器中で行った。標準プロトコルでは、pH 6.5 (200 mL)の50 mM MOPS中の50 g/L myo-イノシトールの溶液を用いた。温度は制御して15℃とした。反応が進行するために十分な酸素を供給するために、純粋空気、酸素富化空気、または純酸素を用いた。空気は、反応器のヘッドスペースに供給するか、さもなくば液中にスパージングした。グルクロン酸の形成は、培地pHの低下をもたらす。pHを所望の値であるpH 6.5に維持するために、該酸を4 N NaOHで中和した。2g可溶性タンパク質/Lという初期濃度を達成するように酵素溶液を添加した。反応は、酵素添加の直後から非常に速く進行し、速度は経時的に減衰した。種々の実験において酵素添加の回数および/または量を変化させた。反応の進行はHPLC分析により追跡した。
【0140】
図2は、反応過程における反応物質および産物の経時的な濃度を示すグラフである。
【0141】
このプロトコルを用いて、反応性に対する複数種のパラメーターの影響力を調べた。
【0142】
溶存酸素の影響。酸素富化空気もしくは純酸素のいずれかをオーバーヘッド空間に吹き込むことにより、または消泡剤の存在下で培地に空気を泡立てて通すことにより、反応における種々の溶存酸素(「DO」)レベルを維持した。撹拌は一定速度に保った。
【0143】
DOを5%未満または20%飽和より多い状態に保つ一連の実験において、過剰の酸素が好ましい条件であることを究明した。過剰の酸素の存在下では8時間で30 g/Lおよび25時間では33 g/Lのグルクロン酸が産生されたのに対して、酸素が制限されるときは10 g/Lおよび22 g/Lしか産生されなかった。
【0144】
続けて行った実験では、反応器のヘッドスペースに空気の代わりに純酸素を維持することにより、高度に酸化的な環境の影響を試験した。純酸素が酵素に有害ではないこと、および、反応は純酸素を用いるとずっと速く進行することが決定された。空気の存在下では、2時間で7 g/Lのグルクロン酸しか産生されなかったのに対して、酸素を用いると13 g/L産生された。しかしながら、22時間において測定した場合、最終変換パーセンテージは同じままであった。反応の全期間中溶存酸素が50%より高く維持されるようにする、培地に空気をスパージングして通過させる方法からは、純酸素を用いて得られたのと同様の結果が得られた。
【0145】
図3は、反応工程に用いた酸素と空気の相対的影響を示す。
【0146】
pHの影響。鉄および還元剤を伴った酵素インキュベーションにおける細胞抽出物のpHの影響、および反応中のpHの影響を別々の実験において検討した。
【0147】
酵素インキュベーション中、アスコルビン酸と鉄の添加前に、細胞抽出物のpHをpH 6.0〜pH 8.0の種々の値に調整し、インキュベーションの期間中その値に維持した。6.0〜7.0でインキュベートされた細胞抽出物については酵素活性に差異は観察されなかったが、pH 7.0を超えるpHでインキュベートされた細胞抽出物では、わずかな酵素活性の減少が測定された。
【0148】
反応中のpHの影響を決定するために一連の試験を行った。細胞抽出物をpH 6.5にてインキュベートし、次いで反応中のpHを制御してpH 6.0、pH 6.5、pH 7.0、pH 7.5、pH 8.0、およびpH 8.5とした。反応のpHに応じて、活性に著しい差異が見られた。結果を表5に示す。さらなる最適化試験からは、反応の至適pHが、約pH 7.4〜pH 7.6の範囲であることが示された。
【表5】

【0149】
酵素濃度および細胞残渣の影響。初期酵素濃度の影響を1.87、2.80および3.75 gタンパク質/Lについて観察し、また遠心分離されていない細胞抽出物を添加した場合と比較した。5時間後のD-グルクロン酸の最終濃度は添加された酵素量に比例し、値はそれぞれ25.1、39.8および51.9 g/Lであった。細胞残渣の存在下で産生されたD-グルクロン酸の量は、清澄化細胞抽出物を用いて産生されたそれと同じであった。
【0150】
図5は濃度および細胞残渣の相対的影響を示すグラフである。
【0151】
バッファー濃度およびイオン強度の影響。説明した実施例6のプロトコルを用いてバッファー濃度の影響を試験した。これにはバッファー無し、5 mM MOPSの使用、および50 mM MOPSの使用の試験が含まれる。良好なpH制御がなされる限り、反応速度にも反応の程度についても、反応性の違いは観察されなかった。
【0152】
さらに、NaClもしくはグルクロン酸ナトリウムのいずれかを0.25 Mもしくは0.5 Mにて用いて、またはその両方の混合物を用いて、塩を添加することにより培地のイオン強度を増大させることに関する研究は、高いイオン強度でより酵素性能が高いことを示した。0.25 Mよりも高い塩濃度において、産生されるD-グルクロン酸の初期反応速度および最終濃度の約50%の増大が観察された。高濃度の市販のグルクロン酸ナトリウムについてはいくらかの阻害が検出されたが、0.5 Mの塩濃度を達成するために本方法により産生されたD-グルクロン酸をNaClと混合したときには、産生されるD-グルクロン酸の80%増大が達成された。
【0153】
温度の影響。初期の研究からは酵素活性が15℃においてより高温と比べて長く保たれることが示されたが、この影響をさらに上の実施例6に記載のプロトコルを用いて200 mlスケールにて検討した。15℃と20℃とでは酵素活性に違いはないが、しかし25℃では24時間に渡り約50%少ないグルクロン酸が産生されたことが決定された。しかしながら、最大反応速度を保証するのに十分な酸素供給の元で反応を行い、かつ反応を完了させるために必要な酵素をアリコートとして添加したときには、15℃〜30℃の範囲の温度については最大100 g/L myo-イノシトールの完全な変換を達成するためには、同じ量の酵素が必要であったことが検証された。
【0154】
基質濃度の影響
【0155】
図4は、myo-イノシトール濃度の反応の進行に対する影響を示す。myo-イノシトール濃度50と100 g/Lの間には酵素活性の違いは見られなかった。さらなる試験から、酵素に負の影響を及ぼすことなく、最大で飽和濃度(160 g/L)のmyo-イノシトールを用いることができることが示された。
【0156】
実施例7 3リットルスケールにおけるD-グルクロン酸の産生
この実施例は、myo-イノシトールオキシゲナーゼを使用する生物触媒によるmyo-イノシトールからのD-グルクロン酸の産生の完全なプロトコルを記載する。
【0157】
pCN-1発現プラスミドを有するE.coli B834(DE3)を、実施例4に記載したとおりのフェッドバッチ様式を用いて3リットル発酵槽中で増殖させ、このとき実施例5に記載の改良条件を用いた。温度は30℃に維持し、増殖速度は誘導前には制御して0.15 h-1 とし、ただし誘導中に用いた50%グルコースと10%ラクトースの混合フィードは、最大0.1 h-1の増殖速度を維持する速度で供給した。誘導から8時間後に遠心分離を用いてバイオマスを回収した。得られた細胞ペーストは乾燥固形物が約22%であり、これをさらなる使用まで−80℃で凍結した。
【0158】
150 gの細胞ペーストのサンプルを合計450 mlの5 mM MOPS、pH 7.0中に再懸濁し、温度を20℃未満に維持しながらMicrofluidic細胞破砕機に(20000〜21000 psiにて)3回かけた。細胞抽出物中の全可溶性タンパク質は80 mg/mlと測定された。この細胞抽出物は−80℃に凍結することが可能であり、少なくとも数ヶ月は活性を保つ。
【0159】
実験の当日に細胞抽出物を解凍した。2 mM硫酸第一鉄アンモニウムおよび5 mMアスコルビン酸を含むpH 6.5の5 mM MOPSの混合物中で、1時間〜2.5時間に渡り、35 mg/mlタンパク質の濃度で酵素をインキュベートした。
【0160】
温度、pHおよび溶存酸素を制御しながら、150 g/Lのmyo-イノシトールの水溶液を4リットル反応器に入れた。温度を20℃に保ち、4 N NaOHを用いてpHを制御して6.5とし、空気を反応器1リットル当たり1分当たり0.5リットルでスパージングし、反応期間中のすべての時点において過剰の溶存酸素が維持されるように撹拌を調節して十分高くした。泡を制御するために、SAG 471消泡剤(0.5 mL/L)を添加した。インキュベート後、酵素溶液を7時間の間に段階的に添加し、反応を29時間継続させた。1リットルの初期反応器容量当たり3.7gの可溶性タンパク質という濃度で最初に酵素を添加し、次いで7時間の間に1リットルの初期反応器容量当たり1.7g/Lの可溶性タンパク質の添加をさらに3回行った。反応を塩基および酸素消費、ならびに産生されたD-グルクロン酸と消費されたmyo-イノシトールのHPLC測定により追跡した。
【0161】
塩基利用率によると、反応の90%は16.8時間で完了し、95%が21.8時間で、および99%が25.5時間で完了した。29時間において、myo-イノシトールは完全に消費され、HPLCにより検出される唯一の成分はグルクロン酸であった。酵素および塩基の添加により生じる培地の希釈を考慮すると、測定された最終グルクロン酸濃度は107 g/Lであった。この材料を、D-グルクロン酸のさらなる精製、およびグルクロノ-γ-ラクトンの製造に用いた。
【0162】
実施例8 清澄化
0.2ミクロンの孔径のセラミック膜を用いて上記反応混合物を清澄化したところ、清明な液が得られた。産物回収は、下に記載のように、濃縮物の洗浄により最大化した。清澄化工程において反応混合物のタンパク質含有率は40%減少した。
【0163】
典型的な濾過は次のように行った:
ATZ膜0.2μ(220 cm2)中のCeramを用いた精密濾過
供給: 10.45%dsにて3500 g
可溶性N含量: DS(乾燥固形物)に基づき4616 ppm(0.45μ濾過サンプル)
グルクロン酸: 97.8 g/l。
【0164】
濾過および500 mlの水を用いた濃縮物の洗浄後、9.65%DSの3805 gの濾液および7.1%DSにて196.7 gの濃縮物を得た。
【0165】
濾液の吸光度は、1cmキュベット中で660 nmにおいて0.009であり、窒素(N)含量(DSに基づくppm)は2912であった。窒素含量決定は三菱化学株式会社からの全窒素分析器TN-100を用いて行った。
【0166】
実施例9 脱塩
典型的な脱塩は、次のように行った:
実施例8の濾液の脱塩は、1.8 L強カチオン樹脂(Relite C260)を用いて、流速3.4 L/hにて、樹脂の洗浄に1850 mlの水を用いて行った。6.5 Brix、N含量(DSに対するppm)2040、およびpH=1.7の、4404.6 gという量の脱塩産物が得られた。
【0167】
実施例10 加熱
精製された液中の主な不純物は、酵素調製の際に使用したMOPSである。精製後の典型的な組成物を表6に示す。
【0168】
120℃で30分の加熱後、酸の一部はラクトンに変換され、表6に示す組成物が得られた。同じ時間に渡る95℃のようなより低い温度での加熱は、同じ様な組成物をもたらした。
【表6】

【0169】
60℃にて40分、粉末状炭素を1 g炭素/100 g DSの用量で用いて処理し、次いで40gのセライト珪藻土製品でプレコートされたブフナー漏斗にかけて濾過することにより、液から色を除いた。420 nmにおける吸光から測定した色は、1.94から0.22へと低減された。
【0170】
実施例11 結晶化
圧力を減少させながら55℃という温度を維持することにより実施例10からの液を68%溶解固形物まで濃縮した。混合物を濃縮した後に、混合物を55℃から40℃へと冷却した。このことはGGL結晶の形成をもたらし、次いでそれらの結晶を混合物の遠心分離により回収した。この方法で、溶解していたラクトンの86.5%を純粋結晶質グルクロノ-γ-ラクトンとして回収した。これは溶液中の全酸およびラクトンの40%に相当する。
【0171】
混合物の加熱、濃縮、冷却および遠心分離により、追加の結晶が得られた。この反復法の使用により、D-グルクロン酸の55.2%を純粋GGL結晶として回収することができた。さらに、D-グルクロン酸の22.9%が不純グルクロノ-γ-ラクトン結晶として回収され、それらは追加の再結晶化によりさらに精製可能である。したがって、GGL結晶としてのD-グルクロン酸の総回収率は78.1%であった。
【0172】
実施例12 還元電位計算
アスコルビン酸の還元電位はBall(Ball EG, (1937) Studies on Oxidation-Reduction XXIII. Ascorbic Acid, J. Biol. Chem., 118:219-2391937)の方法を用いて決定する。該方法では、仲介物質(mediator)チオニン(0.001 M)の存在下でヘキサシアノ鉄(III)酸塩(0.04 M)を用いて、酢酸ナトリウムバッファー(0.1 M)中のアスコルビン酸(0.002 M)を滴定する。手短に説明すると、成分を混合しその後一連の電極を有するチャンバー内に流す。最後の電極を流れ過ぎるときに、混合物は、飽和塩化カリウムカロメル半電池と直接接触している、塩化カリウムで飽和された溶液とジャンクション(junction)を形成する。観測される電極からの電位をゼロ時間に外挿する。記録された電位を水素標準へと標準化する。この方法を用いると、アスコルビン酸の還元電位は25℃で+54 mVであり、30℃で+51.2 mVである。これはWilliamsおよびYandell (Williams NH & Yandell JK, (1982) Outer-Sphere Electron-Transfer Reactions of Ascorbate Anions, Aust. J. Chem., 135:1133-1144.1982)によって計算され証明されたとおりである。
【0173】
図7では、MIO活性化に対するシステインとアスコルビン酸の有効性を比較する。
【0174】
実施例13 MIO活性に対する消泡剤の影響
図6は、実施例1に記載のようにアッセイした反応混合物に種々の消泡剤を用いたときのMIO活性を示す比較図である。
【0175】
実施例14 変換速度添加物
ウシ血清アルブミンおよびCa(II)塩はMIO比活性および変換速度に対して最小限の影響しか及ぼさないことが見出された。しかしながら、カタラーゼを含む変換混合物が6.5時間に渡る変換において18%の改善を示したことから、カタラーゼはMIO活性を増大させることが見出された。スーパーオキシドジスムターゼも試験したところ、6.5時間後にMIO活性をわずかに増加させることが見出された。カタラーゼとスーパーオキシドジスムターゼの両方の組み合わせを変換混合物中で一緒に試験したところ、6.5時間に渡る変換において26%の改善が示された。変換速度は上昇したものの、最終変換パーセンテージは、同じこれらの添加物を有しない変換混合物のそれと似ていた。
【0176】
実施例15 タンパク質濃度
種々のタンパク質濃度にて、混合物中で無細胞抽出物のサンプルを活性化させた。用いたタンパク質濃度は25 mg/ml、75 mg/ml、および125 mg/mlであった。75 mg/mlのタンパク質濃度の混合物から最も高いレベルのMIO活性が得られた。
【0177】
実施例16 インキュベーション時間
2 mM Fe(II)および5 mM L-アスコルビン酸を有する混合物中で無細胞抽出物のサンプルを活性化させた。活性化反応中は混合物を氷上でインキュベートした。インキュベーション時間を変化させ、20、70、130、190および250分にてインキュベートし、各インキュベーション時間後に活性を測定した。20分のインキュベーション後に最も高い活性が測定され、これに対して最も低い活性は130分のインキュベーション時間後について測定された。20分のインキュベーション時間を用いた最も高い活性は、測定された最も低い活性と比べて約25%高かった。しかしながら、20分〜120分の間に一般的な傾向は特に見られなかった。
【0178】
実施例17 基質濃度
USPグレードmyo-イノシトール基質の濃度を増大させながらMIO活性を試験した。約1%乾燥固形物myo-イノシトールの場合と比べて、基質が約8.5%乾燥固形物myo-イノシトールからなるときは、MIOは少なくとも50%高い活性を示した。
【0179】
実施例18 活性喪失
反応工程の開始から5時間後および7時間後の反応混合物のSDS-PAGE分析からは、MIOについての適切な分子量の明確なバンドが示された。こうした結果は、経時的な反応において観察された酵素活性の喪失がプロテアーゼの作用によるものではないことを示す。
【0180】
実施例19 生成物阻害
変換における産物の濃度の影響を試験するために、最大180 g/l(0.93 M)の市販のD-グルクロン酸(Sigma Chemical, カタログ番号G-5269, St. Louis MO)の存在下で、無細胞抽出物を用いて5 mM myo-イノシトールをD-グルクロン酸に変換した。こうした条件下でのMIO活性は、添加D-グルクロン酸の不在下でアッセイされたMIO活性の約50%であった。
【0181】
60 g/lの添加D-グルクロン酸(0.31 M)を含む変換混合物(D-グルクロン酸は実施例6にしたがって調製)において、MIOは、添加D-グルクロン酸の不在下で見られた活性の92.5%であった。この反応において、MIOはmyo-イノシトールを100%、産物に変換した。
【0182】
こうした結果は、実施例6に記載の方法により生成されたD-グルクロン酸を含む組成物が、他の市販のグルクロン酸組成物と異っていることを示しうる。なぜならばMIO活性は、この2種の組成物により異なる影響を受けたからである。
【0183】
実施例20 プラスミド構築
大腸菌(E. coli) DH10B ElectroMAX細胞は、Invitrogen Life Technologies, Inc. (Carlsbad, CA; カタログ番号18290-015)から購入した。制限酵素はNew England Biolabs(NEB, Beverly, MA)から購入した。細菌用増殖培地成分はDifcoまたはFisher Scientific社製であり、他の試薬は分析グレードまたは市販されている中で最も高いグレードのものであった。DNA電気泳動はBio-Rad Mini-Sub Cell GTシステム(Hercules, CA; カタログ番号170-4405)を用いて行った。タンパク質電気泳動はBio-Rad Mini PROTEAN 3電気泳動細胞(カタログ番号 165-3301)を用いて行った。PCR実験については、Eppendorf Mastercycler Gradient(Hamburg, DE)サーマルサイクラーを使用した。UV-可視分光分析はUltrospec 3100 pro (Biochrom Ltd., Cambridge, England)を用いて行った。エレクトロポレーションはBio-Rad Gene Pulser IIシステムを用いて行った。プライマーはIntegrated DNA Technologies, Inc (Coralville, IA)から購入した。自動化DNA配列決定はAgencourt (Beverly, MA)を用いて行った。
【0184】
第I部 縦列レア・アルギニンコドン修復
pCN-1ベクターを鋳型として用いて、2つのレア・アルギニンコドンが一般的大腸菌(E. coli)アルギニンコドンに突然変異されているクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)mio遺伝子の改変形態を作製した。位置139および140の縦列レア・アルギニンコドン(CGA CGA)を一般的大腸菌(E. coli)アルギニンコドン(CGC CGT)と置き換えるための突然変異原性PCRプライマーを、QuikChange II XL Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene カタログ番号 200522; La Jolla, CA)に記載の指針に沿って合成した。この2種のプライマーの配列は次のとおりであった:プライマー1: 5’-CGCTGAGGCTATTCGCCGTGACGGCAAGCCTGAATG -3’; プライマー2: 5’-CATTCAGGCTTGCCGTCACGGCGAATAGCCTCAGCG -3’。縦列アルギニンコドンには下線を引いた。それぞれ配列番号5および6である。
【0185】
pCN-1ベクターに含まれるクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)mio遺伝子を、上記PCRプライマーを用いて、次のPCR反応混合物中で突然変異させた:
10×反応バッファー: 5 μL
pCN-1ベクター鋳型(18 ng/μL): 0.5 μL
プライマー1 (10 μM): 1.0 μL
プライマー2 (10 μM) 1.0 μL
dNTP (各10 mM): 1.0 μL
Quik溶液: 3.0 μL
水: 38.5 μL
Pfuポリメラーゼ(2.5 U/μL): 1.0 μL

サーマルサイクラーは次の条件下で運転した:
1) 95℃ 1分
2) 95℃ 50秒
3) 60℃ 50秒
4) 68℃ 8分
5) ステップ2〜4を17回繰り返す
6) 68℃ 7分
7) 4℃ ホールド。
【0186】
PCRの後に、1 μLのDpnI制限酵素(10 U/μL)を用いて2時間に渡り反応混合物を消化した。製造者の指示にしたがってQIAquick(登録商標) PCR Purification Kit (QIAGEN #28104; Valencia, CA)を用いて反応混合物を脱塩し、DNA産物を30μLのEBバッファーで溶出させた。3μLの溶離液を20μL DH10B ElectroMAX細胞にエレクトロポレーションし、1時間回復させた後、LB +アンピシリン (100 μ g/mL)プレート上に播種した。QIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kit(QIAGEN #27106)を用いて、個々のコロニーの液体培養物(LB +アンピシリン)からプラスミドDNAを精製し、BsmBIを用いた制限消化によりスクリーニングした。野生型pCN-1からは約5.9 Kbpおよび約1.2 Kbpの2種の断片が生じ、これに対してコドン最適化産物からは単一の線状化された約7.1 Kbp DNA断片が生じる。さらに、mio遺伝子の突然変異誘発を自動DNA配列決定により確認した。このベクターをpCN(RR)-1と命名した。
【0187】
第II部 β-ラクタマーゼ(bla)3'末端におけるPsiI制限部位挿入
β-ラクタマーゼ遺伝子(bla)の3'末端にPsiI制限部位を挿入するために、pCN-1ベクターを鋳型として使用した。この部位の挿入は、β-ラクタマーゼ転写プロモーターの上流に既に存在するPsiI部位と併用して用いたときに、blaを欠失させる都合のよい手段を提供する。PsiI部位を挿入するための突然変異誘発性PCRプライマーは、QuikChange II XL Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene, La Jolla, CA)に記載の指針に沿って合成した。プライマーの配列は: プライマー1: 5’-GATAGGTGCCTCACTGATTAAGCATTTATAACTGTCAGACC -3’
プライマー2: 5’-GGTCTGACAGTTATAAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATC -3’であった。PsiI部位に下線を施した。それぞれ配列番号7および8である。
【0188】
上記PCRプライマーを上に記載の条件と類似のPCR条件下で用いて、pCN-1ベクターにPsiI部位を挿入した。PCRの後に、反応混合物をDpnIで消化し、上記のように溶出させた。上に説明したようにして、3μLの溶離液を、20 μL DH10B ElectroMAX細胞中にエレクトロポレーションした。個々のコロニーの液体培養物(LB +アンピシリン)からプラスミドDNAを精製し、PsiIを用いた制限消化によりスクリーニングした。野生型pCN-1は、単一種の線状化された約7.1 Kbp DNA断片を生じ、これに対して突然変異産物からは約6.0 Kbpおよび約1.1 Kbpの2種の断片が生じた。さらに、突然変異産物の第2のPsiI部位はDNA配列決定により確認した。この新規ベクターをpCN(Psi)-1と命名した。
【0189】
第III部 pCN(RR)-1 mio遺伝子を有し、かつbla遺伝子を欠いたプラスミドの構築
NcoIおよびXhoIを用いて、製造者の指示に従いプラスミドpCN(RR)-1およびpCN(Psi)-1(各3 μg)をそれぞれ消化した。37℃で1時間のインキュベーション後に、2 Uのエビ・アルカリホスファターゼ(Roche Molecular Biochemicals; Indianapolis, IN)をpCN(Psi)-1反応物に添加し、インキュベーションを1時間継続させた。1%アガロースゲルから、pCN(RR)-1由来のmio遺伝子バンド(約1 Kbp)およびpCN(Psi)-1由来のベクターバンド(約6 Kbp)を精製した。260 nmの吸光を測定することにより精製DNA産物を定量し、Rapid DNA Ligation Kit (Roche Molecular Biochemicals)を用いて、ベクターと遺伝子挿入物の1対5のモル比にて連結させた。連結混合物を脱塩し、次いで30 μLの0.5×EBバッファーを用いてスピンカラムから溶出させた。連結反応物(1μL)のDH10B ElectroMAX細胞(20μL)への形質転換は、Bio-Radエレクトロポレーションマニュアルに記載のとおりにBio-Rad Gene Pulser IIシステムおよび0.1 cmキュベットを用いて、標準条件下で行った。37℃で1時間の回収後に、形質転換混合物をLB +アンピシリン(100 μg/mL)プレート上に播種した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。QIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kitを用いて個々のコロニーの液体培養物(LB +アンピシリン)からプラスミドDNAを精製し、その後突然変異誘発されたmio遺伝子挿入物(BsmBI消化)およびベクター中の第2のPsiI部位について、制限消化によりスクリーニングした。この新規ベクターをpCN(RR-psi)-1と命名した。
【0190】
製造者の指示にしたがい、ベクターpCN(RR-psi)-1をPsiIで消化した。1%アガロースゲルからベクターバンド(約6 Kbp)を精製し、Rapid DNA Ligation Kit を用いて自己連結させた。連結混合物を脱塩し、30 μLの0.5×EBバッファーを用いてスピンカラムから溶出させ、その後メチオニン栄養要求性宿主に形質転換するまで−20℃で貯蔵した。この新規ベクターをpCNARと命名した。
【0191】
実施例21 大腸菌(E. coli) K-12宿主の構築
DatsenkoおよびWanner (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 6640-5, 2000)の遺伝子不活性化方法を用いて、metE遺伝子座内にクロラムフェニコール耐性マーカー(cat)遺伝子の挿入を有する大腸菌(E. coli)菌株BW25113ΔmetEを構築した。大腸菌(E. coli) 菌株BW25113/pKD46およびBW 25141/pKD3はE. coli Genetic Stock Center, New Haven, CTから入手し、BW25113/pKD46のエレクトロコンピテント細胞は、pKD46上で組換え機能を誘発させるために1 mM アラビノースの存在下で、DatsenkoおよびWannerが記載したように作製した。pKD3のcat遺伝子は次のプライマーを用いて増幅した:
5’-AAAAATGACAATATTGAATCACACCCTCGGTTTCCCTCGCGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’; および
5’-GTGGTATTACCACCCGGTTTGGATTTTACCCCCGACGCAACATATGAATATCCTCCTTAG-3’。それぞれ配列番号9および10である。
【0192】
下線を施したヌクレオチドは、それぞれ、metE遺伝子座の直ちに上流および下流の大腸菌(E. coli)染色体中の領域に対応する。下線を施していないヌクレオチドは、cat遺伝子を有する断片の増幅を可能にするpKD3中の領域に相同である。これらのプライマーは、pKD3を鋳型としてPCR反応に使用した。
【0193】
PCR産物をDpnIで消化し、精製し、濃縮し、そして組換え機能を発現するBW25113/pKD46中に形質転換した。形質転換体は、25 μg/mLクロラムフェニコールを有するLBプレート上に播種した。
【0194】
クロラムフェニコール耐性形質転換体を非選択的LB培地上でシングルコロニー純化し、シングルコロニーを、クロラムフェニコール耐性の保持、アンピシリン耐性の喪失(pKD46の治癒(curing)を示す)、およびM9-グルコース最小培地上での増殖のためのメチオニンの要求性について試験した。cat遺伝子のmetE遺伝子座への正しい挿入の確認は、得られたmetE::cat 菌株と、挿入遺伝子座の両側につくプライマー(GGTGCGTTGGCTGCGTTTCT;およびGCTGGCAGCGTATGCTGGAATG)を用いるコロニーPCRより行った。
【0195】
BW25113ΔompT菌株を同じように構築した。プライマー: TATTCAATCATTAAAACGATTGAATGGAGAACTTTTATGCGGGCGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC; およびTTAAAATGTGTACTTAAGACCAGCAGTAGTGATGAAGTTATAGTTCATATGAATATCCTCCTTAG (それぞれ配列番号11および12)を用いて、pKD3のcat遺伝子を増幅した。ここで下線を施したヌクレオチドは、それぞれompT遺伝子座の直ちに上流および下流の大腸菌(E. coli)染色体中の領域に対応し、下線を施していないヌクレオチドは、cat遺伝子を有する断片の増幅を可能にするpKD3中の領域に相同である。プラスミドpKD3を鋳型として用いてPCR反応を行った。PCR産物をエタノールで沈殿させ、DpnIで消化し、QIAquick PCR Purification kit で精製し、その後、組換え機能を発現するBW25113/pKD46に形質転換した。形質転換体は、25 μg/mL クロラムフェニコールを有するLBプレート上に播種した。
【0196】
クロラムフェニコール耐性形質転換体を非選択的LB培地上でシングルコロニー純化し、シングルコロニーを、クロラムフェニコール耐性の保持、アンピシリン耐性の喪失(pKD46の治癒(curing)を示す)について試験した。cat遺伝子のompT遺伝子座への正しい挿入の確認は、得られたompT::cat菌株と、挿入遺伝子座の両側につくプライマー(TTGCGAGGCCTTATGTGTCT;およびTATGGTGTCACGCCATCTCA、それぞれ配列番号13および14)を用いたコロニーPCRにより行った。
【0197】
DE3 溶原菌化: λDE3 プロファージのBW30384菌株への組込みはNovagen λDE3 Lysogenation Kit (Novagen, Madison, WI)を用いて行った。溶原菌化と溶原性の確認の両方を、製造者のプロトコルに沿って行った。
【0198】
溶解物生成: ノックアウトのBW30384(DE3)産生宿主へのトランスファーを可能にするために、BW25113ΔmetEおよびBW25113ΔompT菌株についてP1ファージ溶解物を生成させた。10 μg/mL クロラムフェニコールを有するLB培地中でドナー菌株を一晩増殖させた。この培養物の1:10希釈物を使用し、5 mM CaCl2を有する5 mLの新鮮な培地に接種した。継代培養を37℃にて70分増殖させた。1mLの培養物を100 μLのファージストックと一緒に室温で20分インキュベートした。次にファージ/培養物を、5 mM CaCl2を有する4 mLのソフトアガーと混合し、LB培地上に重層した。約5時間後に十分なプラーク形成が観察された。ソフトアガーを削り取って遠心チューブに入れ、プレートをリンスするために使用した1 mLのLBと一緒にした。チューブに5滴のクロロホルムを滴下し、チューブを振とうして室温で20分静置した。次にこの混合物を10,000gで10分遠心分離し、その後上清を0.2 umシリンジフィルターで濾過した。すべての溶解物を4℃で貯蔵した。
【0199】
産生宿主への形質導入: metEノックアウトをP1ファージ形質導入によりBW30384(DE3)菌株にトランスファーさせた。10 μg/mL クロラムフェニコールを有するLB培地中でBW25113(DE3)を一晩増殖させた。この培養物の1:20希釈物を用いて、5 mM CaCl2を有する5 mLの新鮮な培地に接種した。継代培養を37℃にて70分増殖させた。培養物を遠心分離し、500μL MCバッファー(0.1M MgSO4, 5 mM CaCl2)に再懸濁し、次いで室温で20分インキュベートした。ドナー溶解物の種々の希釈物(MCバッファー中で1/100〜1×)を、100μLの培養物に等容量で添加した。混合物を37℃で20分インキュベートし、その後200μLのクエン酸バッファーおよび1mLのLBをそれぞれに添加した。クエン酸バッファーは0.1M クエン酸と220 mM NaOHを含みpH 5.5に調整されたものであった。培養物を振とうしながら37℃で1時間増殖させ、次いで遠心分離を行った。細胞ペレットを100μLのクエン酸バッファーに再懸濁し、10μg/mLクロラムフェニコールを有するLB培地上に播種した。
【0200】
選択培地上でクロラムフェニコール耐性コロニーをシングルコロニー純化し、その後、BW25113ノックアウト菌株について上に説明したように、シングルコロニーをPCRにより試験して、metEノックアウトのトランスファーを確認した。プロファージの存在を裏付けるために、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ遺伝子座に相同なプライマーも使用した。プライマー配列のGTGGCATAAGGAAGACTCTATTCおよびCCTTTGGTCATATCGTTACCTTG(それぞれ配列番号15および16)は、プロファージ鋳型から、長さ717ヌクレオチドの増幅産物を生じる。次に、DatsenkoおよびWanner (2000)により記載された方法に従い、metEクロラムフェニコール挿入をループ・アウト(loop out)させた。次に、上に説明した方法を用いて上記ompTノックアウトをBW30384(DE3)ΔmetE菌株にトランスファーさせ、産生宿主菌株BW30384DE3ΔmetE ΔompT(cat)を作製した。
【0201】
DatsenkoおよびWanner (2000)に記載の方法に従い、pCP20(FLPリコンビナーゼ酵素合成の熱誘導を示す、温度感受性複製およびbla-含有型プラスミド)を用いて、ompTクロラムフェニコール挿入カセットを除いた。得られた菌株BW30384(DE3)ΔompTΔmetEを、クロラムフェニコールおよびアンピシリンに対する耐性の喪失(pCP20の治癒(curing))、およびグルコース(4 mg/mL)を含むNeidhardt最小培地(実施例4に記載)上での増殖におけるメチオニンの要求性(0.1 mg/mLにて添加)について試験した。
【0202】
BW25113ΔompTおよびBW25113ΔmetEについて用いたのと類似の方法で、BW25113ΔuxaC菌株を構築した。大腸菌(E. coli)菌株BW 25141/pKD4はE. coli Genetic Stock Center, New Haven, CTから入手した。プライマー5’-GCCCGCCGTCTGTATCACGACTACGCAAAAGACCAGCCGACATATGAATATCCTCCTTAG-3’および5’-CCGATCATCTGGCACAGAATG CGGCGGAAGTATTCGTGA CGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’(それぞれ配列番号17および18)を用いて、カナマイシン耐性を付与するpKD4中のkan遺伝子を増幅した。ここで、下線を施したヌクレオチドは、大腸菌(E. coli)染色体のuxaC遺伝子座のそれぞれ5’および3’末端における領域に対応し、また、下線を施していないヌクレオチドは、kan遺伝子を含む断片の増幅を可能にするpKD4中の領域に相同である。PfuTurbo(登録商標) DNAポリメラーゼ(Stratagene)を添加し、pKD4ベクターを鋳型として、Expand High Fidelity PCR System (Roche Molecular Biochemicals カタログ番号1 732 650)を用いて、3種のPCR反応を行った。該3種のPCR反応は50、53および56℃のアニーリング温度で行った。
【0203】
PCR産物を1%アガロースゲルから精製した。すべてのPCR反応は同じような量の産物を生じ、ゲルからの抽出後に一緒にされた。次に一緒にしたPCR産物をDpnIで消化し、精製し、その後、組換え機能を発現するBW25113/pKD46中に形質転換した。形質転換体は、25μg/mL カナマイシンを有するLBプレート上に播種した。
【0204】
非選択的LB培地上でカナマイシン耐性形質転換体をシングルコロニー純化し、その後シングルコロニーを、カナマイシン耐性の保持およびアンピシリン耐性の喪失(pKD46の治癒(curing)を示す)について試験した。kan遺伝子のuxaC遺伝子座への正しい挿入の確認は、得られたuxaC::kan菌株と、挿入遺伝子座の両側につくプライマー(5'-GTGCTAATTCGGCTTCCGTA-3';および5'-ATGTCCACGAGCAACATCCT-3'、それぞれ配列番号19および20)を用いるコロニーPCRにより行った。
【0205】
溶解物生成: uxaCノックアウトのBW30384(DE3)ΔompTΔmetE(cat)産生宿主へのトランスファーを可能にするために、BW25113ΔuxaC菌株についてP1ファージ溶解物を調製した。25μg/mL カナマイシンを有するLB培地中で、BW25113ΔuxaC(kan)菌株を一晩増殖させた。この培養物の1:10希釈物を使用し、5 mM CaCl2を有する5 mLの新鮮な培地に接種した。継代培養を37℃にて70分増殖させた。1mLの培養物を100 μLのファージストックと一緒に室温で20分インキュベートした。次にファージ/培養物を5 mM CaCl2を有する4 mLのソフトアガーと混合し、固形LB培地上に重層した。約4時間後に十分なプラーク形成が観察された。ソフトアガーを削り取って遠心チューブに入れ、プレートをリンスするために使用した1 mLのLBと一緒にした。チューブに数滴のクロロホルムを滴下し、チューブを振とうして室温で20分静置した。次にこの混合物を10,000gで10分遠心分離し、その後上清を0.2 umシリンジフィルターで濾過した。この溶解物を4℃で貯蔵した。
【0206】
産生宿主への形質導入: uxaCノックアウトをP1ファージ形質導入によりBW30384(DE3)ΔompTΔmetE(cat)菌株にトランスファーさせた。10 μg/mL クロラムフェニコールを有するLB培地中で受容菌株を一晩増殖させた。この培養物の1:20希釈物を用いて、5 mM CaCl2を有する5 mLの新鮮な培地に接種した。継代培養を37℃にて70分増殖させた。培養物を遠心分離し、500μL MCバッファー(0.1M MgSO4, 5 mM CaCl2)に再懸濁し、次いで室温で20分インキュベートした。ドナー溶解物の種々の希釈物(MCバッファー中で0.01〜1×)を、100μLの培養物に等容量で添加した。混合物を37℃で20分インキュベートし、その後200μLのクエン酸バッファーおよび1mLのLBをそれぞれに添加した。クエン酸バッファーは、0.1M クエン酸と220 mM NaOHを含みpH 5.5に調整された。培養物を37℃で1時間、振とうしながら増殖させ、その後、遠心分離を行った。細胞ペレットを100μLのクエン酸バッファーに再懸濁し、25μg/mLカナマイシンを有する固形LB培地上に播種した。
【0207】
選択培地上でカナマイシン耐性コロニーをシングルコロニー純化し、その後BW25113ノックアウト菌株について上に説明したようにシングルコロニーをPCRにより試験して、uxaCノックアウトのトランスファーを確認し、菌株BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC(cat,kan)を作製した。
【0208】
次にDatsenkoおよびWanner (2000)に記載の方法に従い、pCP20を用いることにより、ompTクロラムフェニコールおよびuxaCカナマイシン挿入カセットを除去した。得られた、BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaCと命名された菌株を、カナマイシン、クロラムフェニコールおよびアンピシリンに対する耐性の喪失(pCP20の治癒(curing))、グルコース(4 mg/mL)を含むNeidhardt 最小培地上での増殖におけるメチオニン要求性(0.1 mg/mLにて添加)、ならびに炭素源としてのグルクロン酸(4 mg/mL)およびメチオニン(0.1 mg/mL)を含むNeidhardt培地上で増殖できないこと、について試験した。
【0209】
実施例22 大腸菌(E. coli) K-12メチオニン栄養要求性宿主中での遺伝子発現
実施例21に記載のプラスミドpCNAR 連結混合物を、次のエレクトロコンピテント大腸菌(E. coli) K-12菌株種に形質転換した: 大腸菌(E. coli)BW30384(DE3)ΔmetE(cat); 大腸菌(E. coli)BW30384(DE3)ΔompTΔmetE(cat); 大腸菌(E. coli)BW30384(DE3)ΔompTΔmetE; 大腸菌(E. coli)BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC(cat,kan); および大腸菌(E. coli)BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC。形質転換は、Bio-Rad エレクトロポレーションマニュアルに記載のようにBio-Rad Gene Pulser IIシステムおよび0.1 cmキュベットを用いて標準条件下で行った。連結混合物を、製造者の指示に従い、Novagen大腸菌(E. coli) B834(DE3)化学的コンピテント細胞中にも形質転換した。SOC中で37℃、1時間の回復後、形質転換混合物を、0.4%グルコースを含みかつ2 mL/LのBalchのビタミン溶液が添加されたNeidhardt培地上に播種した。プレートを37℃で36〜48時間インキュベートした。QIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kitを用いて個々のコロニーの液体培養物からプラスミドDNAを精製し、その後XhoI/XbaI(mio遺伝子挿入物について)およびPsiI(bla遺伝子の欠失について)を用いた制限消化によりスクリーニングした。さらに、上に説明したようにして、プラスミドpCN(RR)-1を大腸菌(E. coli) BW30384(DE3)ΔmetE(cat)に形質転換した。SOC中で37℃、1時間の回復後、形質転換混合物をLB+アンピシリン(100 μg/mL)上に播種し、37℃で一晩インキュベートした。QIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kitを用いて個々のコロニーの液体培養物からプラスミドDNAを精製し、その後XhoI/XbaIを用いた制限消化によりスクリーニングして、mio遺伝子挿入物の存在を確認した。
【0210】
遺伝子発現:0.4%グルコースを含みかつ2 mL/LのBalchのビタミン溶液および1.5 g/Lのアミノ酸混合物を添加したNeidhardt培地の液体培地(5 mL)に、上に記載したpCNAR含有菌株を新鮮なプレートからまたは凍結グリセロールストックから接種した。培養物を、37℃にて230 rpmで6〜8時間インキュベートした。各培養物のOD600 を測定し、25 mLにて0.05のOD600を達成するために必要な培養物の容量を計算した。計算された容量の各液体培養物を、25 mLのNovagen Overnight ExpressTM Autoinduction System 2 (カタログ番号 71366-3; solutions 1-5)を含むフラスコに移し、230 rpmで振とうしながら30℃ で18時間インキュベートした。細胞を遠心分離により回収し、冷却50 mM MOPS、pH 7.0を用いて1回洗浄した。次に、1 μL/mL ベンゾナーゼヌクレアーゼ、5 μL/mL プロテアーゼ阻害剤カクテル セットII (Novagen)および0.33 μL/10 mL r-リゾチーム(Novagen)を含むBugbuster(商標)(一級アミンフリー)抽出試薬(Novagen カタログ番号70923-3)をNovagen推奨プロトコルに沿って使用して、細胞を溶解させた。穏やかに振とうしながら25℃で15分インキュベートした後に、各懸濁物からの細胞残渣を21,000gで15分、4℃での遠心分離によりペレット化させた。発現したmyo-イノシトールオキシゲナーゼの可溶性タンパク質レベルを検出するために、4〜15% グラジエントゲル(Bio-Rad # 161-1104)を用いたSDS-PAGEにより上清(無細胞抽出物)を分析した。結果は、すべての菌株について、MIOが全可溶性タンパク質の約40%を構成することを示した。
【0211】
Balchのビタミン溶液(Balch, W. E., G. E. Fox, L. J. Magrum, C. R. Woese, and R. S. Wolfe. 1979. Microbiol. Rev. 43:260-296)の成分は、p-アミノ安息香酸5.0 mg、葉酸2.0 mg、ビオチン2.0 mg、ニコチン酸5.0 mg、パントテン酸カルシウム5.0 mg、リボフラビン5.0 mg、チアミンHCl 5.0 mg、ピリドキシンHCl(vit B6)10.0 mg、シアノコバラミン(vit B12)100.0 mg、チオクト酸(リポ酸) 5.0 mgである。1M NaOHを用いてpHを7.0に調整し、蒸留水を用いて容量を1Lに調整する。フィルター滅菌し、暗所で4℃で貯蔵する。
【0212】
アミノ酸混合物:
次のアミノ酸をそれぞれ1g一緒に混合する:アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレニン、トリプトファンおよびバリン。1.5 gのこの固形物混合物を1 Lの媒体に添加し、滅菌する。各アミノ酸の最終濃度は100 mg/媒体Lである。
【0213】
実施例23 A. niger配列の最適化
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(ATCC菌株9029)由来のゲノムDNAは、YPAD培地(30℃)中で増殖させた菌株の液体培養物から、PuregeneゲノムDNA kit (Gentra Systems; Minneapolis, MN)を用いて単離した。YPAD培地は、酵母エキス(10 g/L)、ペプトン(20 g/L)、グルコース(20g/L)、およびアデニンヘミスルフェート(adenine hemisulfate)(100 mg/mL)を含み、pH 6.0に調整されている。実施例2に記載の標準PCR条件に従って、ゲノムDNAから遺伝子をクローニングするために用いたプライマーは次のものであった:
5’-CACGCCATGGCACCAGTCGCTGTGT-3’ (NcoI部位には下線を施してある)
5’-TGCGGTCGACCTACCACTTGATCACCTTGTTGG-3’ (SalI部位には下線を施してある)
(それぞれ配列番号21および22)。
【0214】
A. niger mio遺伝子を、pCN(Psi)-1 (実施例20に記載)中のマルチクローニング部位のNcoIおよびXhoI認識部位へと挿入した。pCN(Psi)-1をNcoIとXhoIで消化し、仔牛腸アルカリホスファターゼで処理し、その後、線状ベクターバンド(約6kB)を1%アガロースゲルから精製した。A. niger mio挿入物をNcoIとSalIで消化し、1%アガロースゲルから精製した。Rapid DNA Ligation Kit (Roche Molecular Biochemicals)を用いて、1:6のモル比にてベクターDNAとA. niger mio挿入物DNAを連結させた。1 μlの連結混合物の大腸菌(E. coli) K-12 One Shot(登録商標) TOP10 化学的コンピテント細胞(Invitrogen; Carlsbad, CA)への形質転換は、42℃で30秒の熱ショックに続き、SOC培地中での37℃、1時間の回復(Invitrogenが記載する標準プロトコル)により行った。推定構築物含有クローンは制限分析により同定し、配列決定(Agencourt Bioscience Corporation, Beverly, MA) により確認した。正しい配列を有する単離体由来のプラスミドDNAを、QIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kit (Qiagen Incorporated, Valencia, CA; カタログ番号27106)を用いて精製した。次のプライマーおよびQuikChange(登録商標)II XL Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene, La Jolla, CA)を用いて唯一のイントロン(bp 892〜949)を除去した:
5’-CCTGAGGAACTCAAGCCATACTACCTCGACCTGATC-3’
5’-GATCAGGTCGAGGTAGTATGGCTTGAGTTCCTCAGG-3’(それぞれ配列番号23および24)。
【0215】
PCRプロトコルはQuikChange(登録商標) II XL Site-Directed Mutagenesis Kit中に説明されている。
【0216】
上に記載のようにして、2 mLの反応混合物(DpnI消化後)をTOP10化学的コンピテント細胞に形質転換した。正しい挿入配列を有するクローンを制限分析により同定し、配列決定(Agencourt Bioscience Corporation, Beverly, MA)により確認した。正しい配列を有する2種の構築物由来のプラスミドDNA (Qiagen QIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kitを用いて単離)を、実施例21に記載のBW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC宿主のエレクトロコンピテント細胞に形質転換した。
【0217】
遺伝子発現:100 mg/Lのアンピシリンを含むLBの液体培地(5 mL)に、BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaCのA. niger mio構築物を新鮮なプレートから接種した。培養物を37℃、225 rpmにて6〜8時間インキュベートした。各培養物のOD600を測定し、その後20 mL中で0.05のOD600を得るのに必要な培養物の容量を計算した。計算された容量の各液体培養物を、20 mLのNovagen Overnight ExpressTM Autoinduction System 2 (EMD Biosciences, Novagen Brand, Madison, WI, カタログ番号 71366-3; solutions 1-5)を含むフラスコに移し、その後30℃にて225 rpmで振とうしながら一晩インキュベートした。細胞を遠心分離により回収し、冷却50 mM MOPS, pH 7.0で1回洗浄した。次に、1 mL/mLベンゾナーゼヌクレアーゼ、5 mL/mLプロテアーゼ阻害剤カクテルセットII(Novagen)および0.33 mL/10 mL r-リゾチーム(Novagen)を含むBugbuster(商標)(一級アミンフリー)抽出試薬(EMD Biosciences, Novagen Brand, Madison, WI, カタログ番号70923-3)をNovagen推奨プロトコルに沿って使用して細胞を溶解させた。穏やかに振とうしながら25℃にて15分インキュベートした後、各懸濁物由来の細胞残渣を21,000gにて15分、4℃で遠心分離することによりペレット化させた。上清(無細胞抽出物)は、4〜15%グラジエントゲル(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA; カタログ番号 161-1104)を用いたSDS-PAGEにより、またはBioRad ExperionTM Pro260 自動電気泳動システムを(製造者の指示に従い)用いることにより分析し、発現myo-イノシトールオキシゲナーゼの可溶性タンパク質レベルを検出した。SDS-PAGEゲル分析およびExperionシステム分析は、発現のレベルが、同じ宿主に形質転換されたpCNAR構築物について観察された発現レベルの半分未満であることを示した(実施例22を参照されたい)。
【0218】
大腸菌(E. coli)中で遺伝子発現を増大させるために、DNAコード配列中のコドン3〜7を、Roche ProteoExpert RTS E. coli HYアルゴリズムを用いた野生型配列の分析からの提案された変更へと変異させた。変更は、次のプライマーおよびQuikChange(登録商標)II XL Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いて行った:

【0219】

【0220】

【0221】
(それぞれ配列番号25〜44)。
【0222】
上記のようにして、2μLの各反応混合物(DpnI消化後)をTOP10 化学的コンピテント細胞に形質転換した。正しい挿入配列を有するクローンを配列決定により同定した(Agencourt, Beverly, MA)。コドン3〜7に対する変更は、タンパク質配列の変更をもたらさなかった。正しいProteoExpert配列を有するクローン由来のプラスミドDNA (Qiagen QIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kitを用いて単離)を、実施例21に記載のBW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC宿主のエレクトロコンピテント細胞に形質転換した。
【0223】
遺伝子発現:A. niger ProteoExpert構築物およびA. niger野生型構築物(対照)のmio遺伝子は、Novagen Overnight ExpressTM Autoinduction System 2を用いて上記のように発現させた。細胞抽出物は、1 mL/mL ベンゾナーゼ ヌクレアーゼ、5 mL/mL プロテアーゼ阻害剤カクテルセットII(Novagen)および0.33 mL/10 mL r-リゾチーム(Novagen)を含むBugbuster(商標)(一級アミンフリー)抽出試薬(Novagen)をNovagen推奨プロトコルに沿って使用して調製した。無細胞抽出物は、4〜15%グラジエントゲル(Bio-Rad)のSDS-PAGEにより、またはBioRad ExperionTM Pro260自動電気泳動システムを(製造者のプロトコルに従って)用いて分析し、発現したmyo-イノシトールオキシゲナーゼの可溶性タンパク質レベルを検出した。ProteoExpert (PE)構築物1〜5、7および10は元の野生型構築物よりもよい発現を示し、これに対して構築物6、8および9は元の野生型構築物ほどの発現を示さなかった。PE構築物1〜5および7〜10の細胞抽出物はまた、実施例1に記載のようにしてMIO活性についてもアッセイした。アッセイの結果を表7にまとめた。よく発現され、高い比活性を示すPE構築物の1つであるPE #2 (pANGopt2(Psi))を、さらなる研究のために選択した。
【表7】

【0224】
ベクターpANGopt2(psi)を製造者の指示(New England Biolabs; Beverly, MA)に従ってPsiIで消化した。ベクターバンド(約6 Kbp)を1%アガロースゲルから精製し、その後Rapid DNA Ligation Kit を用いて自己連結させた。連結混合物を脱塩し、その後、実施例21に記載のBW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC宿主のエレクトロコンピテント細胞に形質転換した。形質転換は、Bio-Radのグラム陰性細菌のためのエレクトロポレーションマニュアルに記載の標準条件下で行った。SOC培地中での回復後、メチオニンを含まない所定培地の寒天プレートに形質転換混合物を播種した。Qiagen QIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kitを用いて、形質転換細胞の一晩培養物(グルコース(4 mg/mL)および実施例22に記載のアミノ酸混合物を有するNeidhardt 最小培地中で増殖)からプラスミドDNAを精製し、その後、配列をDNA配列決定(Agencourt, Beverly, MA)により確認した。このベクターをpANGopt2と命名した。
【0225】
遺伝子発現:接種材料液体培養物の培地がグルコース(4 mg/mL)および実施例22に記載のアミノ酸混合物を含むNeidhardt最小培地である以外は上記のようにして、Novagen Overnight ExpressTM Autoinduction System 2を使用して、A. niger mio pANGopt2構築物のmio遺伝子を発現させた。細胞抽出物は、1 mL/mLベンゾナーゼ ヌクレアーゼ、5 mL/mL プロテアーゼ阻害剤カクテルセットII (Novagen)および0.33 mL/10 mL r-リゾチーム(Novagen)を含むBugbuster(商標)(一級アミンフリー)抽出試薬(Novagen)をNovagen推奨プロトコルに従って用いて調製した。無細胞抽出物は、4〜15%グラジエントゲル(Bio-Rad # 161-1104)を用いたSDS-PAGEにより、またはBioRad ExperionTM Pro260自動電気泳動システム(製造者のプロトコルに従い)を用いることにより分析し、発現されたmyo-イノシトールオキシゲナーゼの可溶性タンパク質レベルを検出した。SDS-PAGEゲル分析およびExperionシステム分析は、発現レベルが、同じ宿主に形質転換されたpANGopt2(psi)構築物よりも約50%高いことを示した。細胞抽出物を、実施例1に記載のようにしてMIO活性についてアッセイした。pANGopt2細胞抽出物の比活性もまた、pANGopt2(psi)の細胞抽出物よりも50%高かった。すなわち、1mgタンパク質当たり1分あたり572 μgのD-グルクロン酸が形成されたのに対して、1mgタンパク質当たり1分あたり376 μgのD-グルクロン酸が形成された。
【0226】
実施例24 D-グルクロン酸の産生のためのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)MIOの利用
培地および基質フィード速度にいくつかの改変を加えつつ実施例5に記載のプロトコルを用いて、実施例23に記載のように構築された菌株BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC ::pANGopt2(Psi)を、フェッドバッチ発酵にて増殖させた。培地組成における改変は次のとおりであった:10.0 g/L K2HPO4; 0.1 g/L FeSO4 ・H2O および0.015 g/LのMnSO4・4H2O。誘導後のフィードは、先のプロトコルに用いた指数関数的速度の代わりに、一定に保った。細胞は非常によく増殖し、誘導から8時間後に最終細胞密度は30 gDCW/Lであった。MIOの発現は、細胞の全可溶性タンパク質の32.6%という含有率と推定された。細胞ペーストは、さらなる使用まで−80℃で凍結した。
【0227】
細胞ペーストの100 gサンプルを、合計280 mlの5 mMリン酸バッファー、pH 7.0中に再懸濁し、その後、温度を20℃より低く維持しながらMicrofluidic細胞破砕機に4回かけた(20000〜21000 psiにて)。この細胞抽出物は−80℃にて凍結することができる。
【0228】
細胞抽出物は実験当日に解凍した。酵素を、2 mM アスコルビン酸第一鉄を含む5 mMリン酸、pH 7.0の混合物中でインキュベートした。
【0229】
150 g/L myo-イノシトールの水溶液を、温度、pHおよび溶存酸素の制御された4リットル反応器に加えた。温度を20℃に維持し、pHは4 N NaOHを用いて制御して7.5とし、空気は、反応器の1リットル当たり1分当たり0.5リットルにてスパージングし、そして撹拌は反応の全期間中過剰の溶存酸素を維持するように十分高く調節した。泡を抑えるためにSAG 471消泡剤(0.5 mL/L)を添加した。インキュベーション後に、酵素溶液を7時間にわたり段階的に添加し、反応を31時間継続させた。反応は、塩基および酸素消費、ならびに産生されたD-グルクロン酸および消費されたmyo-イノシトールのHPLC測定により追跡した。残ったイノシトールが約1.4 g/Lの濃度であり、グルクロン酸が98.2 g/Lの濃度に達したときに、反応を停止させた。
【0230】
実施例25 2種のバッファー中でのアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)MIOの触媒活性の試験
BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC::pANGopt2(Psi)により発現されたMIOの触媒活性を、実施例6に記載の小規模プロトコルを用いて試験した。バッファーの酵素活性への影響を比較するために、細胞(実施例3に記載のように増殖および誘導)を5 mM MOPSまたは5 mMリン酸バッファーのいずれかの中で破砕した。次に、酵素が破砕されたのと同じバッファー中で反応を行った。pHを制御して7.5とし、温度を制御して20℃とした。反応を6時間にわたり追跡し、また、クリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)酵素(実施例21および22に記載の構築物pCNARを菌株BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC中に形質転換)を参照として用いた。得られた結果を下の表8に示す。
【表8】

【0231】
結果は、酵素を使用する条件に依存して、菌株BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC ::pANGopt2(Psi)から発現されたA. niger MIOが、Cryptococcus酵素よりもさらに活性であるを示した。
【0232】
本発明のいくつかの実施形態を記載した。それでもなお、本発明の精神と範囲を離れることなく、種々の改変を行うことができると理解されよう。したがって、他の実施形態も、特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】図1は、記載した方法の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】図2は、記載した方法の1つの態様に従い実行した反応における、反応物質と産物の経時的濃度を示すグラフである。
【図3】図3は、反応工程に対する純粋酸素と空気の相対的影響を示すグラフである。
【図4】図4は、反応工程に対するmyo-イノシトール濃度の影響を示すグラフである。
【図5】図5は、反応工程に対する酵素濃度および細胞残渣の相対的影響を示すグラフである。
【図6】図6は、反応工程に対する消泡剤の相対的影響を示すグラフである。
【図7】図7は、myo-イノシトールオキシゲナーゼの活性化に対するシステインとアスコルビン酸の有効性を示すグラフである。
【図8】図8は、種々の宿主菌株においてPET28B:mioを使用したときの、myo-イノシトールオキシゲナーゼの活性を経時的に示すグラフである。
【図9】図9には、A. niger mioアミノ酸配列の配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
myo-イノシトール、myo-イノシトールオキシゲナーゼ、および酸素を含む混合物を、前記混合物の1リットル当たり5グラムのD-グルクロン酸〜前記混合物の1リットル当たり400グラムのD-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすること、を含むD-グルクロン酸の製造方法。
【請求項2】
前記混合物が細胞溶解物をさらに含み、該細胞溶解物が前記myo-イノシトールオキシゲナーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記myo-イノシトールが1リットル当たり20グラムより高濃度で最初に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記D-グルクロン酸が1リットル当たり20グラム〜1リットル当たり400グラム形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
D-グルクロン酸濃度がmyo-イノシトール濃度よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
D-グルクロン酸濃度がmyo-イノシトール濃度の少なくとも2倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が0〜20 mMのバッファーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物が0〜40 mMのFe(II)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物が、0〜20 mMのバッファー、0〜5 mMのFe(II)、および0〜5 mMの還元剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼが、クリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)myo-イノシトールオキシゲナーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記インキュベーション中に前記酸素が、混合物の1リットル当たり10μmol〜混合物の1リットル当たり6500μmolにて存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記酸素が混合物の1リットル当たり140μmol〜1550μmol存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記インキュベーション中の塩基の添加をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記インキュベーション工程後に前記混合物を清澄化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記清澄化工程後に前記混合物を脱塩することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記インキュベーション工程中に形成された前記D-グルクロン酸を結晶化させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記インキュベーション工程中に形成された前記D-グルクロン酸から、グルクロノ-γ-ラクトンを形成させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記グルクロノ-γ-ラクトンを形成させることが、前記D-グルクロン酸を酸性pHにて加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記グルクロノ-γ-ラクトンを形成させることが、前記加熱工程後にグルクロノ-γ-ラクトンを結晶化させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法により製造されたグルクロノ-γ-ラクトンを含む組成物。
【請求項21】
myo-イノシトールオキシゲナーゼおよび硫黄非含有型還元剤を含む混合物を、前記myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下でインキュベートすることを含む、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させる方法。
【請求項22】
前記還元剤が硫黄非含有型有機還元剤を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記還元剤が25℃において0 mVより大きい還元電位を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記還元剤がL-アスコルビン酸またはD-イソアスコルビン酸を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記還元剤が1 mM〜10 mMの濃度にて存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物が、硫酸第一鉄アンモニウム、アスコルビン酸第一鉄、硫酸第一鉄、または塩化第一鉄からなる群より選択されるFe(II)化合物をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記混合物が、3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸または酢酸ナトリウムからなる群より選択されるバッファーをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記混合物が細胞溶解物をさらに含み、該細胞溶解物が前記myo-イノシトールオキシゲナーゼを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞溶解物が、グラム陰性細胞から調製されたものである、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記インキュベーションが、−5℃〜20℃の温度で前記混合物をインキュベートすることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記インキュベーションが、前記混合物を10分〜360分インキュベートすることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼが1 mg/ml〜200 mg/mlにて存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
単離されたプラスミドであって、抗生物質選択マーカーを欠き、かつ、縦列のアルギニン用CGAコドンを欠いたクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans) mioコード配列を有する、前記単離されたプラスミド。
【請求項34】
pCNARと命名され、ATCC寄託番号PTA-6449として寄託された細菌菌株中に存在する、請求項33に記載のプラスミド。
【請求項35】
縦列のアルギニン用CGAコドンを欠いたクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans) mioコード配列を有するグラム陰性細菌株。
【請求項36】
前記クリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans)mioコード配列がプラスミド中に存在する、請求項35に記載の細菌株。
【請求項37】
前記菌株がATCC 寄託番号pta-6449の大腸菌(E. coli) BW30384(DE3)ΔompTΔmetEΔuxaC::pCNARである、請求項36に記載の細菌株。
【請求項38】
myo-イノシトールオキシゲナーゼ、Fe(II)、および硫黄非含有型還元剤を含む混合物を、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下でインキュベートすることを含む、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させる方法。
【請求項39】
前記硫黄非含有型還元剤が硫黄非含有型有機還元剤を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記硫黄非含有型還元剤が水溶性である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記硫黄非含有型還元剤が約−200 mV〜約+300 mVの酸化還元電位を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記硫黄非含有型還元剤が約−100 mV〜約+200 mVの酸化還元電位を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記硫黄非含有型還元剤が約0 mV〜約+100 mVの酸化還元電位を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記硫黄非含有型還元剤が約+25 mV〜約+75 mVの酸化還元電位を有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記還元剤がL-アスコルビン酸を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記還元剤がD-イソアスコルビン酸を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記混合物がL-システインを欠く、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記還元剤が、約1 mM〜約10 mMの濃度で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記Fe(II)を硫酸第一鉄アンモニウムとして添加する、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記Fe(II)をアスコルビン酸第一鉄として添加する、請求項38に記載の方法。
【請求項51】
前記Fe(II)を硫酸第一鉄として添加する、請求項38に記載の方法。
【請求項52】
前記Fe(II)を塩化第一鉄として添加する、請求項38に記載の方法。
【請求項53】
前記Fe(II)が約0 mM〜約5mMの濃度で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項54】
前記Fe(II)が約1 mM〜約2mMの濃度で存在する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記混合物がバッファーをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項56】
前記バッファーが3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸が約1 mM〜約100 mMにて存在する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記バッファーが酢酸ナトリウムを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記酢酸ナトリウムが約1 mM〜約100 mMにて存在する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼが約0.1 mg/mlよりも高濃度で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項61】
前記 myo-イノシトールオキシゲナーゼが約0.5 mg/mLよりも高濃度で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項62】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼが約10 mg/ml未満の濃度で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項63】
前記 myo-イノシトールオキシゲナーゼが約0.5 mg/ml〜約5 mg/mlの濃度にて存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項64】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼが固定化されている、請求項38に記載の方法。
【請求項65】
前記混合物が未精製細胞溶解物をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項66】
前記未精製細胞溶解物が機械的破砕により生成されたものである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記機械的破砕の前に細胞を20 ℃未満に冷却する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記未精製細胞溶解物が化学的破砕により生成されたものである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記混合物が全細胞をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項70】
前記全細胞が酵母細胞である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記全細胞がグラム陽性細胞である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記全細胞がグラム陰性細胞である、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記全細胞が糸状菌細胞である、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記インキュベーションが前記混合物を約−5℃〜約20℃の温度でインキュベートすることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項75】
前記インキュベーションが前記混合物を約10分〜約360分インキュベートすることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項76】
前記インキュベーションが前記混合物を約15分〜約150分インキュベートすることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項77】
myo-イノシトールオキシゲナーゼ、Fe(II)、および約−200 mV〜約+300 mVの酸化還元電位を有する還元剤を含む混合物を、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下でインキュベートすることを含む、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させる方法。
【請求項78】
前記還元剤が約−100 mV〜約+200 mVの酸化還元電位を有する、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記還元剤が約+25 mV〜約+75 mVの酸化還元電位を有する、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記還元剤がL-アスコルビン酸を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記還元剤がD-イソアスコルビン酸を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項82】
前記Fe(II)が約0 mM〜約5mMの濃度で存在する、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
前記混合物がバッファーをさらに含む、請求項77に記載の方法。
【請求項84】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼが約1 mg/ml〜約200 mg/mlの濃度で存在する、請求項77に記載の方法。
【請求項85】
前記混合物が未精製細胞溶解物をさらに含む、請求項77に記載の方法。
【請求項86】
前記インキュベーションが、前記混合物を約−5℃〜約20℃の温度にてインキュベートすることを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項87】
myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下で、myo-イノシトールオキシゲナーゼおよびFe(II)を含む混合物をインキュベートすることならびに該混合物に電圧をかけることを含む、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させる方法。
【請求項88】
myo-イノシトール、myo-イノシトールオキシゲナーゼ、および酸素を含む混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすること、ここでD-グルクロン酸は1リットル当たり約2グラム〜1リットル当たり約400グラムの濃度で存在する、を含む、6炭素単糖の製造方法。
【請求項89】
前記混合物が細胞溶解物をさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼが固定化されている、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記混合物が全細胞をさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記細胞が固定化されている、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記細胞がセルベッド(cell bed)中に存在する、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記myo-イノシトールが、混合物の1リットル当たり約20グラム〜1リットル当たり約400グラム存在する、請求項88に記載の方法。
【請求項95】
前記myo-イノシトールが、約30 g/l〜約200 g/lの濃度で前記混合物中に存在する、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記myo-イノシトールが約40 g/l〜約150 g/lの濃度で前記混合物中に存在する、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
D-グルクロン酸が1リットル当たり約5グラム〜1リットル当たり約400グラムの濃度で存在する、請求項88に記載の方法。
【請求項98】
D-グルクロン酸が1リットル当たり約10グラム〜1リットル当たり約400グラムの濃度で存在する、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
D-グルクロン酸濃度がmyo-イノシトール濃度よりも高い、請求項88に記載の方法。
【請求項100】
D-グルクロン酸濃度がmyo-イノシトール濃度の少なくとも2倍である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記混合物が約0〜約20 mMバッファーをさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項102】
前記混合物が約0〜約5 mMバッファーをさらに含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記混合物が約0〜約2 mMバッファーをさらに含む、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
いかなる追加のバッファーも添加しない、請求項88に記載の方法。
【請求項105】
前記混合物が約0〜約5 mM Fe(II)をさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項106】
前記混合物が約0〜約2 mM Fe(II)をさらに含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
いかなる追加のFe(II)も添加しない、請求項88に記載の方法。
【請求項108】
前記混合物が約0〜約5 mM 還元剤をさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項109】
前記混合物が約0〜約2 mM 還元剤をさらに含む、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
いかなる追加の還元剤も添加しない、請求項88に記載の方法。
【請求項111】
約0〜約5 mMのバッファー、約0〜約5 mMのFe(II)、約0〜約5 mMの還元剤がさらに含まれ、ここでD-グルクロン酸濃度がmyo-イノシトールオキシゲナーゼ濃度よりも高い、請求項88に記載の方法。
【請求項112】
前記インキュベーションが、前記myo-イノシトールオキシゲナーゼの1回添加を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項113】
前記インキュベーションが、前記myo-イノシトールオキシゲナーゼの連続添加を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項114】
前記インキュベーションが、前記myo-イノシトールオキシゲナーゼの断続的添加を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項115】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼがファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium) myo-イノシトールオキシゲナーゼである、請求項88に記載の方法。
【請求項116】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼがクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans) myo-イノシトールオキシゲナーゼである、請求項88に記載の方法。
【請求項117】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼがクリプトコッカス・ラクタチボラス(Cryptococcus lactativorus) myo-イノシトールオキシゲナーゼである、請求項88に記載の方法。
【請求項118】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼがアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans) myo-イノシトールオキシゲナーゼである、請求項88に記載の方法。
【請求項119】
前記混合物が塩をさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項120】
前記塩が無機塩である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記塩が塩化ナトリウムを含む、請求項119に記載の方法。
【請求項122】
前記塩化ナトリウムが、約0.01 M〜約2.0 Mにて存在する、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記塩がグルクロン酸ナトリウムを含む、請求項119に記載の方法。
【請求項124】
前記グルクロン酸ナトリウムが約0.01 M〜約2.0 Mにて存在する、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記塩がナトリウムを含む、請求項119に記載の方法。
【請求項126】
前記塩がカリウムを含む、請求項119に記載の方法。
【請求項127】
前記混合物が消泡剤をさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項128】
前記消泡剤が、Sigma 204、Sigma O-25、Clerol FBA 265、Clerol FBA 975、Ivanhoe XF8-1163B、SAG 471、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項126に記載の方法。
【請求項129】
前記酸素が、混合物の1リットル当たり約10 μmol〜約6500 μmol存在する、請求項88に記載の方法。
【請求項130】
前記酸素が、混合物の1リットル当たり約140 μmol〜約1550 μmol存在する、請求項88に記載の方法。
【請求項131】
前記酸素が、混合物中で10%〜80%飽和にて存在する、請求項88に記載の方法。
【請求項132】
前記インキュベーションを、純酸素を含むヘッドスペース下で行う、請求項88に記載の方法。
【請求項133】
混合物中に空気をスパージングすることをさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項134】
混合物中に酸素をスパージングすることをさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項135】
混合物中に酸素富化空気をスパージングすることをさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項136】
混合物1リットル当たり1時間当たり20 mmolの酸素利用率を達成するのに十分な量の酸素がさらに含まれる、請求項88に記載の方法。
【請求項137】
前記インキュベーションを約0℃〜約50℃にて行う、請求項88に記載の方法。
【請求項138】
前記インキュベーションを約10℃〜約25℃にて行う、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記インキュベーションを約12℃〜約20℃にて行う、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
前記インキュベーションを約15℃で行う、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記インキュベーションが塩基の添加をさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項142】
前記塩基が水酸化ナトリウムである、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記塩基が水酸化カリウムである、請求項141に記載の方法。
【請求項144】
グルクロノ-γ-ラクトンを形成することをさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項145】
前記グルクロノ-γ-ラクトンを形成させることが、前記混合物を除タンパク質することを含む、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記グルクロノ-γ-ラクトンを形成させることが、前記混合物を脱塩することを含む、請求項144に記載の方法。
【請求項147】
前記グルクロノ-γ-ラクトンを形成させることが、前記混合物由来の前記D-グルクロン酸を酸性pHにて加熱することを含む、請求項144に記載の方法。
【請求項148】
前記グルクロノ-γ-ラクトンを形成させることが、前記D-グルクロン酸の加熱後にグルクロノ-γ-ラクトンを結晶化させることを含む、請求項144に記載の方法。
【請求項149】
myo-イノシトール、myo-イノシトールオキシゲナーゼ、酸素、および0 mM〜約20 mMのバッファーを含む混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすることを含む、6炭素単糖の製造方法。
【請求項150】
前記バッファーが、約0 mM〜約5 mMバッファーにて存在する、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
約0〜約5 mM Fe(II)がさらに含まれる、請求項149に記載の方法。
【請求項152】
前記Fe(II)が約0〜約2 mMのFe(II)である、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
約0〜約5 mM還元剤がさらに含まれる、請求項149に記載の方法。
【請求項154】
D-グルクロン酸がさらに含まれ、ここで該D-グルクロン酸が混合物の1リットル当たり約5グラム〜約400グラム存在する、請求項149に記載の方法。
【請求項155】
myo-イノシトール、myo-イノシトールオキシゲナーゼ、酸素、および0 mM〜約0.5 mMのFe(II)を含む混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすることを含む、6炭素単糖の製造方法。
【請求項156】
前記Fe(II)が約0 mM〜約0.2 mMバッファーにて存在する、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
約0〜約20 mMのバッファーがさらに含まれる、請求項155に記載の方法。
【請求項158】
約0〜約5 mMの還元剤がさらに含まれる、請求項155に記載の方法。
【請求項159】
前記還元剤が約0〜約2 mMの還元剤である、請求項155に記載の方法。
【請求項160】
D-グルクロン酸がさらに含まれ、ここで該D-グルクロン酸が混合物の1リットル当たり約5グラム〜約400グラム存在する、請求項155に記載の方法。
【請求項161】
myo-イノシトール、myo-イノシトールオキシゲナーゼ、酸素、および0 mM〜約0.5 mMの還元剤を含む混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすることを含む、6炭素単糖の製造方法。
【請求項162】
前記還元剤が約0 mM〜約0.2 mM還元剤にて存在する、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
前記還元剤がアスコルビン酸を含む、請求項161に記載の方法。
【請求項164】
前記還元剤がイソアスコルビン酸を含む、請求項161に記載の方法。
【請求項165】
約0〜約5 mMのFe(II)がさらに含まれる、請求項161に記載の方法。
【請求項166】
約0〜約20 mMのバッファーがさらに含まれる、請求項161に記載の方法。
【請求項167】
前記バッファーが約0〜約5 mMのバッファーである、請求項166に記載の方法。
【請求項168】
D-グルクロン酸がさらに含まれ、ここで前記D-グルクロン酸が混合物の1リットル当たり約5グラム〜約400グラムにて存在する、請求項161に記載の方法。
【請求項169】
myo-イノシトール、myo-イノシトールオキシゲナーゼ、および酸素を含む混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすること、ここで前記myo-イノシトールは混合物の1リットル当たり約20グラム〜約400グラム存在する、を含む6炭素単糖の製造方法。
【請求項170】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼが、混合物の1リットル当たり約5グラム〜約400グラムにて存在する、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
約2 g/l〜約400 g/lのD-グルクロン酸がさらに含まれる、請求項169に記載の方法。
【請求項172】
約0〜約5 mMのFe(II)がさらに含まれる、請求項169に記載の方法。
【請求項173】
約0〜約20 mMのバッファーがさらに含まれる、請求項169に記載の方法。
【請求項174】
約0〜約5 mMの還元剤がさらに含まれる、請求項169に記載の方法。
【請求項175】
myo-イノシトールオキシゲナーゼおよび硫黄非含有型還元剤を含む第1混合物を、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下でプレインキュベートすること、ならびに
myo-イノシトール、前記第1混合物、および酸素を含む第2混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすること、
を含むD-グルクロン酸の製造方法。
【請求項176】
myo-イノシトールオキシゲナーゼおよび硫黄非含有型還元剤を含む第1混合物を、myo-イノシトールオキシゲナーゼの比活性を増大させるのに有効な条件下でプレインキュベートすること、
myo-イノシトール、前記第1混合物、および酸素を含む第2混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすること、
前記第2混合物を除タンパク質すること、
前記第2混合物を脱塩すること、
前記第2混合物を酸性pHにて加熱すること、ならびに
前記加熱工程後に形成されたグルクロノ-γ-ラクトンを結晶化させること、
を含むグルクロノ-γ-ラクトンの製造方法。
【請求項177】
myo-イノシトールオキシゲナーゼおよび還元剤を含む第1混合物をプレインキュベートすること、
myo-イノシトール、前記第1混合物、酸素、およびD-グルクロン酸を含む第2混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすること、ここで前記D-グルクロン酸は第2混合物の1リットル当たり約5〜約400グラムにて存在する、
を含むD-グルクロン酸の製造方法。
【請求項178】
myo-イノシトールオキシゲナーゼと還元剤を含む第1混合物をプレインキュベートすること、
myo-イノシトール、前記第1混合物、酸素、およびD-グルクロン酸を含む第2混合物を、D-グルクロン酸を形成するのに有効な条件下でインキュベートすること、ここで前記D-グルクロン酸は第2混合物の1リットル当たり約5〜約400グラムにて存在する、
前記第2混合物を除タンパク質すること、
前記第2混合物を脱塩すること、
前記第2混合物を酸性pHにて加熱すること、ならびに
前記加熱工程後に形成されたグルクロノ-γ-ラクトンを結晶化させること、
を含むグルクロノ-γ-ラクトンの製造方法。
【請求項179】
D-グルクロン酸を含む組成物であって、前記D-グルクロン酸が、myo-イノシトールオキシゲナーゼによるmyo-イノシトールのD-グルクロン酸への変換を阻害しない前記組成物。
【請求項180】
グルクロノ-γ-ラクトンを含む組成物であって、前記グルクロノ-γ-ラクトンがD-グルクロン酸への変換後に、myo-イノシトールオキシゲナーゼによるmyo-イノシトールのD-グルクロン酸への変換を阻害しない、前記組成物。
【請求項181】
全タンパク質の約20重量%〜約50重量%のmyo-イノシトールオキシゲナーゼ含有率を有する微生物細胞。
【請求項182】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼがファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium) myo-イノシトールオキシゲナーゼである、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項183】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼがクリプトコッカス・ネオフォーマンス(Cryptococcus neoformans) myo-イノシトールオキシゲナーゼである、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項184】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼがクリプトコッカス・ラクタチボラス(Cryptococcus lactativorus) myo-イノシトールオキシゲナーゼである、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項185】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼがアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans) myo-イノシトールオキシゲナーゼである、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項186】
T7プロモーターに機能的に連結されたmyo-イノシトールオキシゲナーゼコード配列を含む、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項187】
T7lacプロモーターに機能的に連結されたmyo-イノシトールオキシゲナーゼコード配列を含む、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項188】
T5プロモーターに機能的に連結されたmyo-イノシトールオキシゲナーゼコード配列を含む、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項189】
前記細胞が大腸菌(E. coli)細胞である、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項190】
前記大腸菌(E. coli)細胞が大腸菌(E. coli)のK-12菌株である、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項191】
myo-イノシトールオキシゲナーゼが前記大腸菌(E. coli)細胞の染色体に組み込まれている、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項192】
前記大腸菌(E. coli)細胞の染色体にmyo-イノシトールオキシゲナーゼ遺伝子を挿入するためにトランスポゾンが使用された、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項193】
大腸菌(E. coli)細胞がガラクトースを代謝することができる、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項194】
前記大腸菌(E. coli)細胞が、20種の必須アミノ酸のうちの少なくとも1種を産生することができない、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項195】
前記大腸菌(E. coli)細胞がメチオニンを産生することができない、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項196】
前記大腸菌(E. coli)細胞がmetE変異体である、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項197】
前記大腸菌(E. coli)細胞が、緩和(relA)変異体である、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項198】
前記大腸菌(E. coli)細胞が組換え欠損(recA)変異体である、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項199】
前記大腸菌(E. coli)細胞がプロテアーゼ欠損変異体である、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項200】
前記大腸菌(E. coli)細胞がompT変異体である、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項201】
前記大腸菌(E. coli)細胞がlon変異体である、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項202】
前記大腸菌(E. coli)細胞がclpP変異体である、請求項189に記載の微生物細胞。
【請求項203】
ラクトースにより誘導されるmyo-イノシトールオキシゲナーゼコード配列を有する、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項204】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼコード配列がラクトースにより誘導される、請求項203に記載の微生物細胞。
【請求項205】
前記細胞がグラム陽性である、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項206】
前記細胞がグラム陰性である、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項207】
メチオニンを欠いた培地中で増殖させた、請求項181に記載の微生物細胞。
【請求項208】
全タンパク質の約20重量%〜約50重量%のmyo-イノシトールオキシゲナーゼ含有率を有する未精製細胞溶解物。
【請求項209】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼ含有率がIPTGの不在下で存在する、請求項208に記載の未精製細胞溶解物。
【請求項210】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼ含有率がラクトースにより誘導されたものである、請求項208に記載の未精製細胞溶解物。
【請求項211】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼ含有率が、クエン酸第二鉄の存在下でラクトースにより誘導されたものである、請求項210に記載の未精製細胞溶解物。
【請求項212】
前記myo-イノシトールオキシゲナーゼ含有率がアラビノースにより誘導されたものである、請求項208に記載の未精製細胞溶解物。
【請求項213】
myo-イノシトールオキシゲナーゼコード配列の最初の21ヌクレオチドの少なくとも10%を変更することを含む、myo-イノシトールオキシゲナーゼの発現を増大させる方法。
【請求項214】
myo-イノシトールオキシゲナーゼ配列が配列番号55に記載の配列である、請求項213に記載の方法。
【請求項215】
請求項213に記載の方法により産生されたmyo-イノシトールオキシゲナーゼ核酸配列。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−523814(P2008−523814A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546928(P2007−546928)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/045575
【国際公開番号】WO2006/066072
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(397058666)カーギル インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】