説明

環状化合物の製造方法

【課題】カルボキシル基を有するカリックスレゾルシナレン化合物を、少ない反応工程で得られる製造方法を提供する。
【解決手段】酸触媒下、下記式(1)で表わされるアルデヒド化合物と、下記式(2)で表わされる芳香族化合物を縮合反応させる工程を含む、下記式(3)で表わされる環状化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性化合物又はその前駆体として有用な、環状化合物の製造方法に関する。また、本発明は、半導体等の電気・電子分野や光学分野等で用いられるフォトレジスト組成物、特に超微細加工用フォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
極端紫外光(Extream Ultra Violet Light:以下、EUVLと表記する場合がある)又は電子線によるリソグラフィーは、半導体等の製造において、高生産性、高解像度の微細加工方法として有用であり、それに用いる高感度、高解像度のフォトレジストが求められている。フォトレジストは、所望する微細パターンの生産性、解像度等の観点から、その感度を向上させることが欠かせない。
【0003】
EUVLによる超微細加工の際に用いられるフォトレジストとしては、例えば、他のレジスト化合物と比較して光酸発生剤の濃度が高い化学増幅ポジ型フォトレジストを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、実施例のフォトレジストは、ラインエッジラフネスの観点から、電子線を用いた場合で例示された100nmまでの加工が限界であると考えられる。これは、基材として用いる高分子化合物の集合体又は各々の高分子化合物分子が示す立体的形状が大きいため、作製ライン幅及びその表面粗さに影響を及ぼすことがその主原因と推定される。
【0004】
本発明者は既に高感度、高解像度のフォトレジスト材料としてカリックスレゾルシナレン化合物を提案している(特許文献2及び3参照)。また、特許文献4には、カリックスレゾルシナレン化合物が開示されている。しかしながら、これらの化合物は一部溶解性が不十分と考えられ、また、化合物の用途については、フォトレジスト基材用途は記載されておらず、公知の高分子からなるフォトレジスト基材に加える添加剤としての用途しか記載されていない。
一方、現行の半導体製造工程において、フォトレジスト基材は溶媒に溶解させて使用するため、塗布溶媒に対する高い溶解性が求められている。従って、本発明者らは、塗布溶媒溶解性を改良したカリックスレゾルシナレン化合物も提案している(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−055457号公報
【特許文献2】特開2004−191913号公報
【特許文献3】特開2005−075767号公報
【特許文献4】米国特許6093517号
【特許文献5】特開2007−197389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上述した化合物に加え、塗布溶媒への溶解性、レジストパターン強度及び基板との密着性を向上させたフォトレジスト基材に用いるカリックスレゾルシナレン化合物を見出している(特願2008−158769)。
しかし、このカリックスレゾルシナレン化合物の前駆体化合物の製造方法では、原料より2工程で生成物を得る必要があった。上記の製造方法では、カルボキシル基を有するカリックスレゾルシナレン化合物を合成する場合、原料化合物が有するカルボキシル基を、事前にエステル基等の保護基とする必要があった。そのため、カルボキシル基を保護基とする工程や、反応後に脱保護する工程を考慮すると、最終化合物の収率は低かった。また、目的物の着色や副生成物の生成に伴う精製工程の煩雑化等の問題があった。
本発明の目的は、カルボキシル基を有するカリックスレゾルシナレン化合物を、より少ない工程で得られる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の環状化合物の製造方法等が提供される。
1.酸触媒下、下記式(1)で表わされるアルデヒド化合物と、下記式(2)で表わされる芳香族化合物を縮合反応させる工程を含む、下記式(3)で表わされる環状化合物の製造方法。
【化1】

[式中、Rは下記式(4)又は(5)で表される基である。
は水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーロキシ基、アルコキシアルキロキシ基、シロキシ基、又はこれらの基と二価の基(置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、置換もしくは無置換のアリーレンオキシ基、置換もしくは無置換のシリレンオキシ基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル結合、炭酸エステル結合、エーテル結合が結合した基)とが結合した構造を有する基である。
はそれぞれ水素、Rで表される基、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族基である。
式(1)内及び式(2)内に複数あるR、R及びRは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【化2】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基、又は1以上のアルキレン基及び1以上のエーテル結合基の少なくとも一方と、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を組み合せた基であり、置換基を有する場合の置換基は、臭素、フッ素、ニトリル基、炭素数1〜10のアルキル基である。
、Rはそれぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせて構成される基である。
は、アルキレン基、エーテル結合、アルキレン基を2以上組み合わせた基、又はアルキレン基1以上とエーテル結合1以上を組み合わせた基である。
xは1〜5、yは0〜3、zは0〜4の整数を表す。複数のR、R、Ar、A、x、y及びzは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)]
2.前記酸触媒が、ルイス酸性を有する触媒である1に記載の製造方法。
3.前記ルイス酸性を有する触媒が、三フッ化ホウ素を含有するルイス酸性組成物、又は、スズもしくはアルミニウムを中心金属として有するルイス酸性化合物である、2に記載の製造方法。
4.上記1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造した環状化合物、及び/又は、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造した環状化合物を原料に用いて製造した下記式(3’)で表わされる環状化合物と、溶剤を含有するフォトレジスト組成物。
【化3】

[式中、Rは下記式(4’)又は(5’)で表される基である。
は水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーロキシ基、アルコキシアルキロキシ基、シロキシ基、又はこれらの基と二価の基(置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、置換もしくは無置換のアリーレンオキシ基、置換もしくは無置換のシリレンオキシ基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル結合、炭酸エステル結合、エーテル結合が結合した基)とが結合した構造を有する基である。
はそれぞれ水素、Rで表される基、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族基。
式(3’)内に複数あるR、R及びRは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【化4】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基、又は1以上のアルキレン基及び1以上のエーテル結合の少なくとも一方と、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を組み合せた基であり、置換基を有する場合の置換基は、臭素、フッ素、ニトリル基、炭素数1〜10のアルキル基である。
、Rはそれぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせて構成される基である。
は酸解離性溶解抑止基である。
は、アルキレン基、エーテル結合、アルキレン基を2以上組み合わせた基、又はアルキレン基1以上とエーテル結合1以上を組み合わせた基である。
xは1〜5、yは0〜3、zは0〜4の整数を表す。複数のR、R、R、Ar、A、x、y及びzは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)]
5.上記1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造した環状化合物を含む薄膜。
6.上記4に記載のフォトレジスト組成物を用いた微細加工方法。
7.上記6に記載の微細加工方法により作製した半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によって、フォトレジスト基材又はその前駆体化合物として有用な環状化合物を、少ない工程で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で合成した化合物(A)のH−NMRスペクトルである。
【図2】比較例1で合成した化合物(B)のH−NMRスペクトルである。
【図3】比較例1で合成した化合物(A)のH−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の環状化合物(下記式(3))の製造方法は、酸触媒下、下記式(1)で表わされるアルデヒド化合物と、下記式(2)で表わされる芳香族化合物を縮合反応させる工程を含むことを特徴とする。
【化5】

【0011】
式(1)で表わされるアルデヒド化合物において、Rは下記式(4)又は(5)で表される基である。
【0012】
【化6】

【0013】
式中、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基、又は1以上のアルキレン基及び1以上のエーテル結合の少なくとも一方と、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を組み合せた基であり、置換基を有する場合の置換基は、臭素、フッ素、ニトリル基、炭素数1〜10のアルキル基である。
例えば、フェニレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、テトラメチルフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、オキシジフェニレン基が好ましい。
なかでもフェニレン基、ビフェニレン基、オキシジフェニレン基が好ましい。
【0014】
は、アルキレン基、エーテル結合、アルキレン基を2以上組み合わせた基、又はアルキレン基1以上とエーテル結合1以上を組み合わせた基である。
アルキレン基としては、メチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等、炭素数1〜4のものが好ましい。
アルキレン基1以上とエーテル結合1以上を組み合わせた基としては、オキシメチレン基、オキシジメチルメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
は単結合又はオキシメチレン基(−O−CH−)であることが好ましい。
【0015】
、Rはそれぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせて構成される基である。
【0016】
炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が好ましい。
炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基としては、t−ブチル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましい。
炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基としては、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビアダマンチル基、ジアマンチル基等が好ましい。
炭素数6〜12の芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましい。
【0017】
xは1〜5、yは0〜3、zは0〜4の整数を表す。
尚、式(3)及び式(4)内に、R、R、Ar、A、x、y及びzがそれぞれ複数ある場合は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
Rとしては、下記の基が好ましい。
【化7】

【0019】
式(1)で表わされるアルデヒド化合物は、工業的に市販されているものを使用してもよいし、また、式(1)で表されるアルデヒド化合物の合成前駆体となる化合物をホルミル化したり、酸化、還元等によりホルミル基を導入したり、また、合成前駆体となるアルデヒド化合物に対して公知の置換基導入反応、置換基変換反応、骨格変換反応等を行うことにより合成できる。
【0020】
上記式(2)で表わされる芳香族化合物において、Rは水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーロキシ基、アルコキシアルキロキシ基、シロキシ基、又はこれらの基と二価の基(置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、置換もしくは無置換のアリーレンオキシ基、置換もしくは無置換のシリレンオキシ基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル結合(−CO−)、炭酸エステル結合(−CO−)、エーテル結合が結合した基)とが結合した構造を有する基である。
【0021】
炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基等が好ましい。
炭素数3〜12の分岐アルコキシ基としては、t−ブトキシ基、iso−プロポキシ基、iso−ブトキシ基、2−エチルヘキソキシ基等が好ましい。
炭素数3〜20の環状アルコキシ基としては、シクロヘキソキシ基、ノルボルニルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ビアダマンチルオキシ基、ジアマンチルオキシ基等が好ましい。
炭素数6〜10のアリーロキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が好ましい。
アルコキシアルキロキシ基としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、アダマンチルオキシメトキシ基等が好ましい。
シロキシ基としては、トリメチルシロキシ基、t-ブチルジメチルシロキシ基等が好ましい。
尚、上記の各基は置換基を有していてもよく、具体的には、メチル基、エチル基等のアルキル基、ケトン基、エステル基、アルコキシ基、ニトリル基、ニトロ基、水酸基等が挙げられる。
【0022】
はそれぞれ水素、Rで表される基、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族基である。
上記各基の具体例は、上述したR、R等と同様である。
好ましくは、Rは水素である。
【0023】
式(2)内に2つずつあるR及びRは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0024】
式(2)の化合物の具体例としては、レゾルシノール、ピロガロール、3位にRを有するフェノール、2位にRを有する1,3−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。
【0025】
式(2)で表わされる芳香族化合物は、工業的に市販されているものを使用してもよいし、また、式(2)で表される芳香族化合物の合成前駆体となる化合物を酸化、加水分解等して水酸基を導入したり、その他の公知の置換基導入反応、置換基変換反応、骨格変換反応等を行うことにより合成できる。
【0026】
本発明では、上述した式(1)及び式(2)の化合物を、酸触媒下で反応させる。
酸触媒としては、ルイス酸性を有する触媒が好ましい。ここで、「ルイス酸性を有する」とは、低エネルギーの空軌道をもつ化学種が電子対を受容する性質を有するという、広義の酸の定義の内、プロトン供与能を有さない(すなわち、ブレンステッド酸ではない)化学種が発現する酸性を有することを意味する。
このような触媒の例としては、トリフルオロホウ素を含有するルイス酸性組成物、四塩化スズ、ジラウリル二塩化スズ、ジブチル二塩化スズ、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、トリアルキルアルミニウム、トリアルコキシアルミニウム、四塩化チタン、塩化鉄の他、金属置換へテロポリ酸、金属トリフラート等が挙げられる。
好ましい触媒としては、トリフルオロホウ素を含有するルイス酸性組成物、又は、スズあるいはアルミニウムを中心金属として有するルイス酸性化合物が挙げられる。
特に好ましい触媒としては、三フッ化ホウ素・エーテル付加体、四塩化スズ、ジラウリル二塩化スズ、ジブチル二塩化スズ、塩化アルミニウム、臭化アルミニウムが挙げられる。これらを使用すると、得られる環状化合物の収率を向上できる。
【0027】
酸触媒の添加量は、上記式(1)で表わされるアルデヒド化合物に対して、0.1当量〜10当量が好ましい。0.1当量未満では、反応速度が遅いため十分な生産性が得られないおそれがある。一方、10当量を超えると、副反応の進行による不純物の生成や着色が見られる場合がある。
【0028】
反応は、溶媒内で行うことが好ましい。溶媒は、使用する上記式(1)及び式(2)の化合物にあわせて適宜選択すればよいが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル等が使用できる。
【0029】
反応終了後、必要により精製することにより、上記式(3)で表わされる環状化合物が得られる。尚、式(3)内に複数あるR、R及びRは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
従来の製造方法では、式(3)に表わされるような、カルボキシル基を有するカリックスレゾルシナレン化合物を合成する場合、原料化合物が有するカルボキシル基を、事前にエステル基等の保護基とする必要があった。そのため、カルボキシル基を保護基とする工程や、反応後に脱保護する工程を考慮すると、最終化合物の収率は低かった。また、目的物の着色や副生成物の生成に伴う精製工程の煩雑化等の問題があった。
一方、本発明の製造方法では、原料化合物、即ち、上記式(1)のアルデヒド化合物が有するカルボキシル基を保護する必要がない。従って、保護工程なしで、カルボキシル基を有するカリックスレゾルシナレン化合物を製造できる。
【0030】
本発明の製造方法で得られる環状化合物は、Rがカルボキシル基を有する。例えば、この環状化合物を前駆体として、前駆体のカルボキシル基に、酸解離性溶解抑止基等を導入することで、フォトレジスト組成物用材料として好適な化合物が得られる。
【0031】
具体的には、下記式(3’)で表わされる環状化合物が得られる。
【化8】

【0032】
式中、R及びRは、それぞれ上記式(2)のR及びRと同様の基を表わす。
Rは下記式(4’)又は(5’)で表される基である。
【化9】

【0033】
式中、Rを除き、各基は上記式(4)及び式(5)と同様の基を表わす。
は酸解離性溶解抑止基である。酸解離性溶解抑止基は、EUVL及び電子線に対し、高い反応性を有するため、感度の面で優れており、かつエッチング耐性の面でも優れる。そのため、超微細加工用のフォトレジスト基材として好適に使用できる。
酸解離性溶解抑止基としては、下記式(I)〜(IV)のいずれかで示す基が好ましい。
【化10】

【0034】
式(I)〜(IV)において、αは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
【0035】
βは、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基が置換したアルコキシ基である。好ましくは、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基に含まれる三級炭素が、酸素原子に結合する。
【0036】
γは、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基が置換したアルコキシ基、又は芳香族構造、単環状脂肪族構造、複環状脂肪族構造のうち1以上の構造と、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基を組み合わせた基が置換したアルコキシ基である。芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基が置換したアルコキシ基は、好ましくは、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する基に含まれる三級炭素が、酸素原子に結合する。
【0037】
δは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜10の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
【0038】
酸解離性溶解抑止基としては、特に、下記式(6)〜(37)から選択される基が好ましい。
【化11】


【0039】
上記の酸解離性溶解抑止基を導入した環状化合物は、上述した式(3)で表わされる環状化合物(前駆体)に、酸解離性溶解抑止基を有する化合物を、エステル化反応、エーテル化反応、アセタール化反応等により導入することで合成できる。
【0040】
本発明の製造方法で得られる上記式(3)で表わされる環状化合物及び/又は上記式(3’)で表わされる環状化合物は、フォトレジスト材料として好適に使用できる。
【0041】
本発明のフォトレジスト組成物は、上記式(3)で表わされる環状化合物及び/又は本発明の製造方法で製造した環状化合物を原料に用いて製造した上記式(3’)で表わされる環状化合物と、溶剤を含有する。これらの環状化合物は基材として用いられる。
環状化合物の配合量は、溶剤を除く全組成物中好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは75〜95重量%である。環状化合物をフォトレジスト基材として用いるとき、一種単独で用いてもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲で、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0042】
本発明のフォトレジスト組成物に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル(PE)等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0043】
組成物中の溶剤以外の成分、即ちフォトレジスト固形分の量は所望のフォトレジスト層の膜厚を形成するために適する量とするのが好ましい。具体的にはフォトレジスト組成物の全重量の0.1〜50重量%が一般的であるが、用いる基材や溶剤の種類、あるいは、所望のフォトレジスト層の膜厚等に合わせて規定できる。溶剤は全組成物中好ましくは50〜99.9重量%配合する。
【0044】
本発明のフォトレジスト組成物は、基材の分子が、EUVL及び/又は電子線に対して活性なクロモフォアを含み単独でフォトレジストとしての能力を示す場合には特に添加剤は必要としないが、フォトレジストとしての性能(感度)を増強する必要がある場合は、必要に応じて、クロモフォアとして光酸発生剤(PAG)等を含むことが一般的である。
【0045】
光酸発生剤としては、特に限定されず、化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。
このような酸発生剤としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類等のジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤等多種のものが知られている。
【0046】
これらの光酸発生剤の中で、特に好ましくは活性光線又は放射線の作用により有機スルホン酸を発生する化合物が好ましい。
【0047】
PAGの配合量は、溶剤を除く全組成物中0〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。
【0048】
本発明においては、放射線照射により酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(クエンチャー)をフォトレジスト組成物に配合してもよい。この様な酸拡散制御剤を使用することにより、フォトレジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が向上するとともに、電子線照射前の引き置き時間、電子線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0049】
このような酸拡散制御剤としては、例えば、環状アミン等の窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の電子線放射分解性塩基性化合物が挙げられる。酸拡散制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0050】
クエンチャーの配合量は、溶剤を除く全組成物中0〜40重量%、好ましくは0.01〜15重量%である。
【0051】
本発明においては、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解制御剤、増感剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、顔料等を適宜、添加含有させることができる。
【0052】
溶解制御剤は、環状化合物のアルカリ現像液に対する溶解性が高すぎる場合に、その溶解性を低下させて現像時の溶解速度を適度にする作用を有する成分である。溶解制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。溶解制御剤の配合量は、使用する環状化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜50重量%が好ましく、0〜40重量%がより好ましく、0〜30重量%がさらに好ましい。
【0053】
増感剤は、照射された放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を有し、レジストの見掛けの感度を向上させる成分である。これらの増感剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。増感剤の配合量は、固形成分全重量の0〜50重量%が好ましく、0〜20重量%がより好ましく、0〜10重量%がさらに好ましい。
【0054】
界面活性剤は、本発明のフォトレジスト組成物の塗布性やストリエーション、レジストとしての現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系あるいは両性のいずれでも使用することができる。これらのうち、ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤は、フォトレジスト組成物に用いる溶剤との親和性がよく、より効果がある。界面活性剤の配合量は、固形成分全重量の0〜2重量%が好ましく、0〜1重量%がより好ましく、0〜0.1重量%がさらに好ましい。
【0055】
また、染料あるいは顔料を配合することにより、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できる。さらに、接着助剤を配合することにより、基板との接着性を改善することができる。
【0056】
酸拡散制御剤を配合した場合の感度劣化を防ぎ、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸又はその誘導体を含有させることができる。特に、ホスホン酸が好ましい。尚、これらの化合物は、酸拡散制御剤と併用することもできるし、単独で用いてもよい。
【0057】
レジストパターンを形成するには、まず、シリコンウェハ、ガリウムヒ素ウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の基板上に本発明のフォトレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する。
【0058】
必要に応じて、基板上に表面処理剤を予め塗布してもよい。表面処理剤としては、例えばヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤(重合性基を有する加水分解重合性シランカップリング剤等)、アンカーコート剤又は下地剤(ポリビニルアセタール、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等)、これらの下地剤と無機微粒子とを混合したコーティング剤が挙げられる。
【0059】
必要に応じて、大気中に浮遊するアミン等が侵入するのを防ぐために、レジスト膜に保護膜を形成してもよい。保護膜を形成することにより、放射線によりレジスト膜中に発生した酸が、大気中に不純物として浮遊しているアミン等の酸と反応する化合物と反応して失活し、レジスト像が劣化し感度が低下することを防止できる。保護膜用の材料としては水溶性かつ酸性のポリマーが好ましい。例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸等が挙げられる。
【0060】
高精度の微細パターンを得るため、また露光中のアウトガスを低減するため、放射線照射前(露光前)に加熱するのが好ましい。その加熱温度は、フォトレジスト組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜150℃である。
【0061】
次いで、KrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する。露光条件等は、フォトレジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選定される。本発明においては、高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後(露光後)に加熱するのが好ましい。露光後加熱温度(PEB)は、フォトレジスト組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜150℃である。
【0062】
次いで、露光されたレジスト膜をアルカリ現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成できる。前記アルカリ現像液としては、例えば、モノ−、ジ−あるいはトリアルキルアミン類、モノ−、ジ−あるいはトリアルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等のアルカリ性化合物の1種以上を溶解した、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%のアルカリ性水溶液を使用する。アルカリ現像液には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や前記界面活性剤を適量添加することもできる。これらのうちイソプロピルアルコールを10〜30重量%添加することが特に好ましい。尚、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を用いた場合は、一般に、現像後水で洗浄する。
【0063】
酸解離性溶解抑止基を有する環状化合物をフォトレジスト基材として用いる場合は、KrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光することにより、酸解離性溶解抑止基が脱離ないし構造が変化することにより、アルカリ現像液に溶解するようになる。一方、パターンの露光されていない部分はアルカリ現像液に溶解しないことが好ましい。
【0064】
アルカリ現像液に対する非溶解性については、形成するパターンのサイズ、使用するアルカリ現像液の種類等の現像条件により、好ましい非溶解性が異なるため一概に規定することはできないが、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をアルカリ現像液として用いる場合、フォトレジスト基材からなる薄膜の現像液溶解速度で表される非溶解性としては、1ナノメートル/秒未満が好ましく、0.5ナノメートル/秒未満が特に好ましい。
【0065】
尚、場合によっては上記アルカリ現像後、ポストベーク処理を行ってもよいし、基板とのレジスト膜の間には有機系又は無機系の反射防止膜を設けてもよい。
【0066】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングは、プラズマガスを使用するドライエッチング、アルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等を用いるウェットエッチング等公知の方法で行うことができる。レジストパターンを形成した後、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっき等のめっき処理を行うこともできる。
【0067】
エッチング後の残留レジストパターンは、有機溶剤やアルカリ現像液より強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。上記有機溶剤としては、PGMEA、PGME、EL、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、強アルカリ水溶液としては、例えば、1〜20重量%の水酸化ナトリウム水溶液、及び1〜20重量%の水酸化カリウム水溶液が挙げられる。剥離方法としては、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。またレジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0068】
本発明のフォトレジスト組成物を用いてレジストパターンを形成した後、金属を真空蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶離する方法、すなわちリフトオフ法により配線基板を形成することもできる。
【0069】
本発明のフォトレジスト組成物を用いて微細加工方法により、半導体装置を作製できる。この半導体装置は、テレビ受像機、携帯電話、コンピュータ等の電気製品(電子機器)、ディスプレー、コンピュータ制御する自動車等の様々な装置に備えることができる。
【0070】
本発明の製造方法で得られる環状化合物は、公知の成形方法によって各種成形品(シリコンウェハ等の基板に形成した薄膜、フィルム、薄板、ファイバー等)を製造することができる。
【0071】
成形方法としては、射出成型法、射出圧縮成型法、押出成型法、ブロー成型法、加圧成型法、トランスファー成型法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、蒸着法、熱CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法等が挙げられ、これら成形方法を所望の製品の形態、性能に応じて適宜選択できる。
また、環状化合物を用いて上記の方法により薄膜を得て、得られた薄膜を熱、紫外線、深紫外線、真空紫外線、極端紫外線、電子線、プラズマ、X線等により硬化(環化付加反応)させてもよい。
【0072】
スピンコーティング法等により環状化合物を薄膜状に成形する場合、化合物を有機溶媒に溶解させた塗料を使用することができる。
有機溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アニソール、アセトフェノン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。
【0073】
塗料中における環状化合物の濃度は、塗料の粘度や薄膜形成方法等を考慮して適宜調製すればよい。
薄膜の厚さは特に限定されないが、一般に10nm〜10μm程度のものが好適に使用される。薄膜の膜厚は、エリプソメータ、反射光学式膜厚計等による光学的膜厚測定、触針式膜厚測定器やAFM等による機械的膜厚測定が可能である。
【0074】
本発明の薄膜は、フォトレジスト薄膜としての用途の他、光学レンズ、光ファイバー、光導波路、フォトニック結晶等の種々の光情報処理装置向け光学薄膜、半導体用層間絶縁膜、半導体用保護膜等のULSI装置向け薄膜、液晶ディスプレー、液晶プロジェクター、プラズマディスプレー、ELディスプレー、LEDディスプレー等の画像表示装置向け薄膜、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等に使用される薄膜として有用である。さらにこれら薄膜は、CPU、DRAM、フラッシュメモリ等の半導体装置、情報処理用小型電子回路装置、高周波通信用電子回路装置等の電子回路装置、画像表示装置、光情報処理用装置、光通信用装置等の部材、表面保護膜、耐熱膜において利用することもできる。
【実施例】
【0075】
実施例1
窒素気流下、容量200ミリリットルの丸底フラスコに、3−メトキシフェノール(東京化成工業株式会社製)50.0g(402.8ミリモル)、4−ホルミル安息香酸(東京化成工業株式会社製)60.5g(402.8ミリモル)、脱水ジクロロメタン500ミリリットルを加えて氷水浴に浸漬させ、5℃以下に冷却した。この混合物に対して、三フッ化ホウ素エーテル付加体(和光純薬工業株式会社製)60.8ミリリットル(483.6ミリモル)を内温が15℃を越えないように滴下した後、室温まで昇温して8時間撹拌を継続した。反応溶液を氷水浴で冷却し、ゆっくり水を滴下してクエンチし、析出した固体をろ別した。さらに、ろ別した析出物を中性になるまで水洗し、その後、N−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、酢酸エチルで再沈し、析出した固体をろ別することにより、環状化合物(A)を得た[収量94.4g(収率91%)]。
H−NMR測定の結果を図1に示す。H−NMRスペクトルから、得られた化合物が下記式(A)の構造であることを確認した。
【化12】

【0076】
実施例2
窒素気流下、100ミリリットルのフラスコに3−メトキシフェノール2.0g(16.11ミリモル)、4−ホルミル安息香酸2.41g(16.11ミリモル)、クロロホルム50ミリリットルを加え、−78℃に冷却した。これに、四塩化スズ11.68ミリリットル(99.8ミリモル)を滴下した後、室温まで自然昇温し、さらに50℃まで加熱し8時間反応させた。反応混合物を氷冷水に投入し、1N塩酸500ミリリットルを加え攪拌を行った。反応混合物をろ過、ろ集物を水洗した後、減圧乾燥を行った。N−メチル−2−ピロリドン、酢酸エチルを用いて再沈殿させることにより環状化合物(A)を得た[収量3.38g(収率82%)]。
H−NMR測定の結果、図1と同様なスペクトルが得られたため、得られた化合物が上記式(A)の構造であることを確認した。
【0077】
実施例3
実施例2において、四塩化スズの代わりに塩化アルミニウム13.3g(99.8ミリモル)用いた以外は、実施例2と同様の操作を行い、環状化合物(A)を得た[収量2.91g(収率70%)]。
H−NMR測定の結果、図1と同様なスペクトルが得られたため、得られた化合物が上記式(A)の構造であることを確認した。
【0078】
比較例1
窒素気流下、容量200ミリリットルの丸底フラスコに、3−メトキシフェノール10.0g(81ミリモル)、4−ホルミル安息香酸メチル13.2g(80.6ミリモル)、脱水ジクロロメタン100ミリリットルを加え、−78℃に冷却した。この混合物に対して、三フッ化ホウ素・エーテル付加体30.8ミリリットル(250ミリモル)を滴下した後、室温まで昇温して8時間撹拌を継続した。反応溶液を−78℃まで冷却し、析出した固体をジクロロメタン80ミリリットル、水200ミリリットル、エタノールで洗浄し、中間体として、環状化合物(B)を得た[収量20.5g(収率94%)]。
H−NMR測定の結果を図2に示す。H−NMRスペクトルから、得られた化合物が下記式(B)の構造であることを確認した。
【化13】

【0079】
窒素気流下、得られた中間体の環状化合物(B)0.8g(0.74ミリモル)、水酸化ナトリウム0.74g(18.5ミリモル)、水10ミリリットルを加え、90℃、5時間加熱撹拌を行った後、放冷した。希塩酸水溶液を加え反応溶液を酸性にし、析出した沈殿をろ別し水洗することにより、固体として環状化合物(A)を得た[収量0.68g(収率90%)]。
H−NMR測定の結果(図2)、下記式(A)の構造であることを確認した。
H−NMR測定の結果を図3に示す。H−NMRスペクトルから、得られた化合物が下記式(A)の構造であることを確認した。
【0080】
比較例1では、目的の環状化合物(A)を得るのに出発物質より二段階の反応が必要であり操作が煩雑である。また、二段階反応の総合収率は85%であり、実施例1と比較して低かった。実施例2、3に比べて収率は高かったが、得られた環状化合物(A)の固体は黄褐色に着色しており、好適なものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の環状化合物の製造方法は、フォトレジスト基材又はその前駆体を、少ない反応工程で製造できる。
本発明のフォトレジスト組成物は、半導体装置等の電気・電子分野や光学分野等において好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸触媒下、下記式(1)で表わされるアルデヒド化合物と、下記式(2)で表わされる芳香族化合物を縮合反応させる工程を含む、下記式(3)で表わされる環状化合物の製造方法。
【化14】

[式中、Rは下記式(4)又は(5)で表される基である。
は水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーロキシ基、アルコキシアルキロキシ基、シロキシ基、又はこれらの基と二価の基(置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、置換もしくは無置換のアリーレンオキシ基、置換もしくは無置換のシリレンオキシ基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル結合、炭酸エステル結合、エーテル結合が結合した基)とが結合した構造を有する基である。
はそれぞれ水素、Rで表される基、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族基である。
式(1)内及び式(2)内に複数あるR、R及びRは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【化15】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基、又は1以上のアルキレン基及び1以上のエーテル結合基の少なくとも一方と、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を組み合せた基であり、置換基を有する場合の置換基は、臭素、フッ素、ニトリル基、炭素数1〜10のアルキル基である。
、Rはそれぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせて構成される基である。
は、アルキレン基、エーテル結合、アルキレン基を2以上組み合わせた基、又はアルキレン基1以上とエーテル結合1以上を組み合わせた基である。
xは1〜5、yは0〜3、zは0〜4の整数を表す。複数のR、R、Ar、A、x、y及びzは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)]
【請求項2】
前記酸触媒が、ルイス酸性を有する触媒である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ルイス酸性を有する触媒が、三フッ化ホウ素を含有するルイス酸性組成物、又は、スズもしくはアルミニウムを中心金属として有するルイス酸性化合物である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造した環状化合物、及び/又は、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造した環状化合物を原料に用いて製造した下記式(3’)で表わされる環状化合物と、溶剤を含有するフォトレジスト組成物。
【化16】

[式中、Rは下記式(4’)又は(5’)で表される基である。
は水酸基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状アルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーロキシ基、アルコキシアルキロキシ基、シロキシ基、又はこれらの基と二価の基(置換もしくは無置換のアルキレンオキシ基、置換もしくは無置換のアリーレンオキシ基、置換もしくは無置換のシリレンオキシ基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル結合、炭酸エステル結合、エーテル結合が結合した基)とが結合した構造を有する基である。
はそれぞれ水素、Rで表される基、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族基。
式(3’)内に複数あるR、R及びRは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【化17】

(式中、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基、又は1以上のアルキレン基及び1以上のエーテル結合の少なくとも一方と、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリーレン基を組み合せた基であり、置換基を有する場合の置換基は、臭素、フッ素、ニトリル基、炭素数1〜10のアルキル基である。
、Rはそれぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜12の芳香族基、又はこれら基のうち2種以上を組み合わせて構成される基である。
は酸解離性溶解抑止基である。
は、アルキレン基、エーテル結合、アルキレン基を2以上組み合わせた基、又はアルキレン基1以上とエーテル結合1以上を組み合わせた基である。
xは1〜5、yは0〜3、zは0〜4の整数を表す。複数のR、R、R、Ar、A、x、y及びzは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)]
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造した環状化合物を含む薄膜。
【請求項6】
請求項4に記載のフォトレジスト組成物を用いた微細加工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の微細加工方法により作製した半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−163382(P2010−163382A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5944(P2009−5944)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】