説明

甘味料組成物及び該組成物を含有する可食性製品並びに甘味増強方法。

【課題】甘味料特有の苦味を低減し、甘味強度が増大し、きわめて良質な甘味質を有する甘味料組成物及び該組成物を含有する可食性製品を提供する。
【解決手段】アセスルファムカリウム1重量部に対して、スクラロース0.1〜2.3重量部を含有させてアセスルファムカリウムの苦味低減低減させ該組成物の甘味を増強させた甘味組成物を得る。該組成物を含有させた可食性製品としてはアップル果汁入り飲料、コーヒー、ガムシロップ、たくあん漬けがあげられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、甘味料組成物、特に、特定の2種類の甘味料の相乗作用に基づく甘味料組成物及び該組成物を含有する可食性製品に関する。詳細には、特定の2種類の甘味料を特定の比率で含有することにより、甘味料特有の苦味が低減され、甘味強度が増大し、きわめて良質な甘味質を有する甘味料組成物及び該組成物を含有する可食性製品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、可食性製品への甘味付与に際し、複数の甘味料の併用が種々検討されている。例えば、特公昭63−61909号公報(テイトアンドライル社)によると、サッカリンナトリウムやアセスルファムカリウム等の特有の苦みを有する甘味剤及びスクラロースを、本発明にいう単独化した甘味寄与比(後述)4:1から1:4の比率で含有する組成物において、サッカリンナトリウムやアセスルファムカリウム等の特有の苦みがマスキングされた良好な甘味質となり、しかも混合比により甘味強度が最大10%増大する相乗作用を有することが記載されている。しかし、上記発明においては、アセスルファムカリウムの特有の苦味のマスキング効果は充分でなかった。
【0003】また、アセスルファムカリウムとアスパルテームとを併用すると、相乗効果を有する旨の記載はあるが(特公昭59−51262号)、なお、充分とは言えなかった。
【0004】なお、本発明では、2種の甘味料の相乗作用を評価する際に、その手法として、同等甘味強度に調整した甘味料溶液の混合比を100:0から0:100まで変じて、それぞれの混合比における甘味の増強度合いを評価した。本発明にいう「単独化した甘味寄与比」とは、この混合比を意味している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、アセスルファムカリウムの特有の苦みが軽減され、甘味強度が増大し、きわめて良質な甘味質を有する甘味料組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、アセスルファムカリウム特有の苦みを軽減し、甘味を増強する方法について鋭意研究を重ねていたところ、アセスルファムカリウムとスクラロースを必須成分として含有することで、アセスルファムカリウムの特有の苦味を低減されることを見出した。更に、アセスルファムカリウムとスクラロースを特定の比率で混合することで、更なる苦味の低減効果を発揮し、甘味強度が増大し、きわめて良質な甘味質を有することがわかった。
【0007】また、かかる知見を発端として、更に幅広い研究を重ねたところ、塩味を有する可食性製品に使用すると、いわゆる塩慣れ効果も示し、風味を格段に引き立てることがわかった。
【0008】すなわち本発明は、かかる知見に基づいて開発されたものであり、下記の態様を含むものである。
(1)アセスルファムカリウム及びスクラロースを必須成分として含有することを特徴とする甘味料組成物。
(2)アセスルファムカリウム1重量部に対して、スクラロース0.1〜2.3重量部含有することを特徴とする(1)に記載の甘味料組成物。
(3)(1)または(2)に記載の甘味料組成物を含有する可食性製品。
(4)可食性製品が塩味を有するものである、(3)に記載の可食性製品。
(5)甘味料組成物中、アセスルファムカリウム1重量部に対して、スクラロース0.1〜2.3重量部含有することを特徴とする、該組成物中のアセスルファムカリウムの苦味低減方法及び該組成物の甘味増強方法。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明でいう、アセスルファムカリウム 6-methyl-1,2,3-oxathiazin-4(3H)-one-2,2-dioxide potassium salt(示性式: C4H4KNO4S、分子量: 201.24、CAS番号: 55589-62-3、INS番号: 950)は、ショ糖の約200倍の甘味を示す高甘味度甘味料であり、その味質で他の甘味料、中でも他の高甘味度甘味料と大きく異なるのは、甘味の立上がり及び消失が非常にシャープであり、また特有の苦みを有することである。
【0010】本発明でいう、スクラロースとは、ショ糖分子内のフルクトース残基の1,6位およびグルコースから変換されたガラクトース残基の4位の三つの水酸基を塩素分子で置換した構造をしており、ショ糖の約600倍の良質の甘味を示す高甘味度甘味料である(英国特許第1543167号)。
【0011】本発明に係る甘味料組成物は、アセスルファムカリウムとスクラロースを必須成分とすることを特徴とする。アセスルファムカリウムとスクラロースの配合割合は、使用する可食性製品の種類に応じて、適宜調製することができるが、アセスルファムカリウム1重量部に対して、スクラロース0.1〜2.3重量部、より好ましくは、0.2〜1.5重量部、更に好ましくは、0.05〜1.0重量部含有すると、より優れた苦味低減効果及び甘味増強効果を発揮する。スクラロースの含有量がこれ以上であると、アセスルファムカリウムの特徴的な甘味のシャープさが活かされず、逆にこれより少ないと、特有の苦味が充分にマスキングされず、またふくらみに欠ける甘味質となる傾向になるからである。
【0012】また、単独化した甘味寄与比が、アセスルファムカリウム1に対して、スクラロース0.3〜6.9、より好ましくは、0.6〜4.5、更に好ましくは、0.15〜3.0であると、更に優れたアセスルファムカリウムの苦味低減効果を発揮し、甘味強度が増大し、きわめて良質な甘味質を有する。
【0013】当該組成物の調製方法は、特に制限されず、例えば、粉体同士を混合して粉体混合物として調製する方法、粉末又は顆粒に各物質を含有する溶液を噴霧して調製する方法、逆に各物質を含有する溶液を粉末又は顆粒に噴霧して調製する方法、混合して溶液中に分散させてスラリー状に調製した後、押し出し造粒する方法、及び各物質を混合溶解した溶液を乾燥して調製する方法などを挙げることができる。なお、上記乾燥は任意の方法で行うことができ、例えばスプレードライ、ドラムドライ、凍結乾燥など種々の方法を挙げることができる。また、液状甘味料については、得られた粉末や顆粒等の甘味料組成物を溶解して、溶液状態とすればよい。
【0014】本発明に係る甘味料組成物には、本発明の効果を損なわないことを限度に、例えば上記特定の物質以外に、他の甘味料、香料、着色料、防腐剤、安定化剤等といった成分を含んでいてもよい。
【0015】なお、ここで他の甘味料としては、従来公知若しくは将来知られ得る甘味成分を挙げることができ、具体的には、アスパルテーム、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、α-サイクロデキストリン、β-サイクロデキストリン、N-アセチルグルコサミン、アラビノース、アリテーム、イソトレハロース、イソマルチトール、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース等)、エリスリトール、オリゴ-N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、ガラクトピラノシル (β1-3) ガラクトピラノシル (β1-4) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1-3) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1-6) ガラクトピラノシル (β1-4) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1-6) グルコピラノース、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、キシリトール、キシリトール、キシロース、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオース等)、グリセロール、グリチルリチン酸三アンモニウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、クルクリン、グルコース、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース等)、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、スクロース、スタキオース、ステビア抽出物、ステビア末、ズルチン、ソルビトール、ソルボース、タウマチン(ソーマチン)、テアンデオリゴ、テアンデオリゴ糖、テンリョウチャ抽出物、トレハルロース、トレハロース、ナイゼリアベリー抽出物、ニゲロオリゴ糖(ニゲロース等)、ネオテーム、ネオトレハロース、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、パラチニット、パラチノース、パラチノースオリゴ糖、パラチノースシロップ、フコース、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストース等)、フラクトシルトランスフェラーゼ処理ステビア、フラクトフラノシルニストース、ブラジルカンゾウ抽出物、フルクトース、ポリデキストロース、マルチトール、マルトース、マルトシル β-サイクロデキストリン、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオース等)、マンニトール、ミラクルフルーツ抽出物、メリビオース、ラカンカ抽出物、ラクチトール、ラクチュロース、ラクトース、ラフィノース、ラムノース、リボース、異性化液糖、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウ、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、大豆オリゴ糖、転化糖、水飴、蜂蜜等の甘味成分が例示できる。上記甘味成分の添加量は、調製する甘味料組成物の甘味度の設定、または使用する可食性製品に応じて、適宜調整することができる。
【0016】特に、その他の甘味料として、砂糖の概ね50倍以上の甘味倍率を有する高甘味度甘味料を用いるときは、アスパルテームを併用するのが最も好ましい。その際、アスパルテームの単純化した甘味寄与比が、アセスルファムカリウム及びスクラロースそれぞれの各単純化した甘味寄与比の合算値を超えない範囲の添加量で用いるのがよい。
【0017】本発明の甘味料組成物は、甘味料として通常使用される砂糖やその他の甘味料に代替する目的で、それ自身、調理用甘味料又は卓上甘味料として用いることができるとともに、あらゆる可食性製品(例えば、食品、経口医薬品、口内清涼剤、口内洗浄剤、歯磨き剤等)の甘味料としてそれらに配合して用いることができる。また、該組成物の形態は、粉末、錠剤、顆粒及び糖衣錠のような固体の形;及び溶液、縣濁液、シロップ、エマルションのような液体の形で使用することもできる。
【0018】更に、本発明の甘味料組成物は、従来の甘味剤と同様に公知の方法に従って、可食性製品の調製に使用することが出来る。
【0019】本発明に係る可食性製品として、食品の例において、特に制限はされないが、柑橘果汁や野菜果汁等を含む果実飲料又は野菜ジュース、コーラやジンジャエール又はサイダー等の炭酸飲料、スポーツドリンク等の清涼飲料水、コーヒー、紅茶、ココアや抹茶等の茶系飲料、ココアや乳酸菌飲料等の乳飲料などの飲料一般;ヨーグルト、ゼリー、プディング及びムース等のデザート類:クッキー、ケーキや饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子等の製菓:アイスクリームやシャーベット等の冷菓並びに氷菓:その他、チューイングガム、ハードキャンディー、ヌガーキャンディー、ゼリービーンズ等を含む菓子一般;果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類;バタークリームや生クリーム等のクリーム類;イチゴジャムやマーマレード等のジャム;菓子パン等を含むパン;焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレやトマトケチャップ等のソース類;蒲鉾等の練り製品、レトルト食品、麺つゆ、漬物、珍味、佃煮、総菜並びに冷凍食品等を含む農畜水産加工品を広く例示することができる。
【0020】該可食性製品の中でも、酸味を有しないか又はほとんど酸味を有しない可食性製品に対して本発明の甘味料組成物を使用しても、良好な甘味質を呈する。例えば、冷菓、デザート類、乳飲料、茶系飲料、焼菓子、ハードキャンディー、ガムシロップ等、特に、ミルク入りコーヒー、紅茶、バニラアイスクリーム、クッキー、ミントチューイングガム、黒糖飴、ぜんざい、ガムシロップ等の中で、実質的に酸味を有しないかほとんど酸味を有しない食品に使用したところ、最大30%を超える甘味強度の増大と極めて良質な甘味質が得られることを見出した。
【0021】更に、驚くべきことに、本発明の甘味料組成物は、可食性製品に前述のような甘味を付与するのみにとどまらず、塩味を有する可食性製品、例えば、漬物、珍味、佃煮、麺つゆ等において、優れた風味向上効果を発揮することがわかった。
【0022】これら塩味を有する可食性製品は、主に保存性を付与する目的で食塩や酢などの酸類が多く使用されるが、本発明に係る甘味料組成物を使用すると、特に塩辛味や酸味をマイルドにする、いわゆる塩馴れ効果、酢馴れ効果を発揮し、このような塩味や酸味を有する食品の風味を格段に引き立てることを発見した。
【0023】また、本発明に係る甘味料組成物を構成するスクラロースは、従来より安定性のきわめて高い物質として知られているが、それは、該組成物中においても、一切甘味が損なわれることはない。同時に、本発明者らは、該組成物を構成するアセスルファムカリウムは、低pHで殺菌や長期保存によって少なからず分解されるが、それによって生じる甘味の低下は、該組成物もおいては、スクラロースとの官能的な相乗作用により、ほとんど知覚されないほどにカバーされる効果を見出した。
【0024】
【実施例】以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り、単位は重量部とする。なお、処方中で※印があるものは、三栄源エフエフアイ株式会社製であることを示す。
【0025】実施例1:20%アップル果汁入り飲料の調製表1に示す組成で、定法により調製し、これを93℃でガラス瓶に充填し、20%アップル果汁入り飲料を得た。
【0026】
【表1】


【0027】実施例1は甘味の立上がりがシャープでジューシーなこくに富んだおいしい飲料であったが、比較例1は苦味を感じ、こくに欠け全体に水っぽいものであった。
【0028】実施例2:コーヒーの調製表2に示す組成(単位は重量部)で定法により調製し、これをスチール缶に充填し、121℃25分間レトルト殺菌し、コーヒーを得た。
【0029】
【表2】


【0030】実施例2は甘味の立上がりがシャープでまろやかさも併せ持つバランスの取れた甘味のおいしいコーヒーであったが、比較例2はコーヒーの好ましい風味とは異質な苦味を有し、甘味にも深みがなかった。
【0031】実施例3:ガムシロップの調製表3に示す組成で、定法によりガムシロップを調製し、調製直後のもの及び25℃で180日間保存したものを、アイスコーヒーに10%濃度で加え、評価した結果を表4に示す。
【0032】
【表3】


【0033】
【表4】


【0034】表4より、実施例のものは、甘味が明瞭でまろやかであるのに対し、比較例1のものは、特有の苦味があり好ましくなかった。また、比較例2のものは、調製直後は、甘味が明瞭でまろやかであったが、長期保存後、甘味が減少した。
【0035】実施例4:たくあん漬けの調製表5に示す組成(単位は重量部)で調味液を調製し、調味液2重量部に対して下漬け大根1重量部で一週間漬込んだ。
【0036】
【表5】


【0037】実施例4はこくのある明瞭な甘味を感じ、塩かどが程よく緩和されており、たくあん漬けとしておいしいものであったが、比較例4はやや苦味を感じ、こくに欠け全体に水っぽいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】アセスルファムカリウム及びスクラロースを必須成分として含有することを特徴とする甘味料組成物。
【請求項2】アセスルファムカリウム1重量部に対して、スクラロース0.1〜2.3重量部含有することを特徴とする、請求項1に記載の甘味料組成物。
【請求項3】請求項1または2に記載の甘味料組成物を含有する可食性製品。
【請求項4】可食性製品が塩味を有するものである、請求項3に記載の可食性製品。
【請求項5】甘味料組成物中、アセスルファムカリウム1重量部に対してスクラロース0.1〜2.3重量部含有することを特徴とする、該組成物中のアセスルファムカリウムの苦味低減方法及び該組成物の甘味増強方法。

【公開番号】特開2001−333729(P2001−333729A)
【公開日】平成13年12月4日(2001.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−157329(P2000−157329)
【出願日】平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】