説明

生コンクリート製造プラントのセメント計量方法及び計量装置

【課題】 生コンクリートの製造時に、セメントの計量値が許容誤差範囲を超過した場合でも容易に修正可能とする。
【解決手段】 セメント計量槽2の下端部に計量したセメントをミキサに放出する放出口5を備え、この放出口5にはバタフライバルブ6を開閉自在に備えると共に、計量槽2にて計量されるセメントの計量値に応じて前記バタフライバルブ6の開度を調整する両ロッド式のシリンダ10を備える。そして、セメント計量時に許容誤差範囲を超過する計量誤差が発生した場合には、セメントの計量値に応じてバタフライバルブ6を適宜開度で開放し、計量槽2に超過分のセメントを残すように減算計量することによって修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリート製造プラントにおける各種コンクリート材料のうち特にセメントの計量方法及び計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生コンクリート製造プラントは、砂利、砂、セメント、混和剤、及び混練水などの各種コンクリート材料を貯蔵する貯蔵槽、これら各種コンクリート材料を計量する計量槽、計量した各種コンクリート材料を混練するミキサ、及びこれら各装置を制御する制御装置などから構成され、前記制御装置にはコンクリートの品種などに応じた種々の計量設定値を予め設定しており、生コンクリート出荷時には前記制御装置から所望の計量設定値を読み出し、この計量設定値に基づいて各貯蔵槽から各種コンクリート材料をそれぞれ計量槽に放出して所定量ずつ計量した後、計量した各種コンクリート材料をミキサへ放出して所定時間混練して生コンクリートを製造している。なお、前記計量時には、計量完了信号によって貯蔵槽の材料放出停止後に計量槽に落下する落差量を適正に補正するなどして計量精度を高めることが行われている。
【0003】
こうして製造した生コンクリートは、1乃至数バッチ分をアジテータ車に積載し、その生コンクリートの性状などの各種データが記載された納入書を付して各納入先に納入している。この納入書は、「JIS A 5308」に規定される様式に沿ったもので、納入時刻や容積、コンクリートの種類、呼び強度、スランプまたはスランプフロー、粗骨材の最大寸法、セメントの種類などの各種データが記載されており、例えば特許文献1(特開平10−128734号公報)に示されるように、プラントに備えた印字記録計などにて生コンクリートを出荷する度に出力している。
【0004】
ところで、前記「JIS A 5308」の平成21年3月20日の改正に伴い、平成22年4月1日以降に発行される納入書には上記諸データに加えて配合表を新たに明記する必要が生じると共に、生コンクリートの購入者から要求があれば各種コンクリート材料のバッチ毎の計量記録及びこれらから算出される単位量も併せて提出しなければならなくなるという背景があり、今後、生コンクリートの製造において各種コンクリート材料を計量するときに、例えば「JIS A 5308」にて認められている許容誤差範囲(粗骨材や細骨材、混和剤の場合:3%、セメントや水の場合:1%)を外れるような計量誤差が発生した場合にはそのバッチ分の生コンクリートは廃棄処分を余儀なくされることも予想され、多くの無駄が生じると共に、廃棄した生コンクリ−トを処理する手間やコストも別途必要となる。
【0005】
一方、上記のような計量誤差を極力抑えるために、前記落差補正だけでなく、例えば、特許文献2(特開2007−50623号公報)に示されるように、複数の貯蔵ビンから一基の計量槽に材料を投入して累積計量する場合において、常に一定の順序で投入させるのではなく、配合量の多い材料の貯蔵ビンから順に投入させて累積計量することにより、計量誤差を抑えて計量精度を高めるように図ったものなどもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−128734号公報
【特許文献2】特開2007−50623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記種々の方法によっても供給スピードの変動などによって計量誤差を生じる可能性があり、もしこの計量誤差が「JIS A 5308」にて認められている許容誤差範囲(粗骨材や細骨材、混和剤の場合:3%、セメントや水の場合:1%)を外れれば、前記のように、そのバッチ分の生コンクリートは廃棄処分を余儀なくされることが予想される。
【0008】
本発明は上記の点に鑑み、生コンクリートの製造時に、各種コンクリート材料のうち、特にセメントの計量値が許容誤差範囲を超過した場合でも容易に修正可能とした生コンクリート製造プラントのセメント計量方法及び計量装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の生コンクリート製造プラントのセメント計量方法では、生コンクリート製造プラントに搭載されるセメント計量槽の下端部に計量したセメントをミキサに放出する放出口を備えると共に、該放出口には開閉バルブを開閉自在に備え、セメント計量時にセメントの計量値が予め設定した許容誤差範囲を超過した場合には、前記開閉バルブを開放して放出口からセメントをミキサに放出しながら減算計量し、計量槽に超過分のセメントを残すように開閉バルブを閉鎖して所定量計量すると共に、次バッチでは計量槽に超過分のセメントを残したままで累積計量するようにしたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載の生コンクリート製造プラントのセメント計量方法では、減算計量時にセメント計量値が予め設定した微放出開始ポイントになれば開閉バルブの開度を絞ってセメントの放出量を減じるようにしたことを特徴としている。
【0011】
また、請求項3記載の生コンクリート製造プラントのセメント計量装置では、砂利、砂、セメント、混和剤、及び混練水を各計量槽にて所定量計量し、これら材料をミキサに順次投入して所定時間混練して生コンクリートを製造する生コンクリート製造プラントにおいて、セメント計量槽の下端部に計量したセメントをミキサに放出する放出口を備え、該放出口には開閉バルブを開閉自在に備えると共に、計量槽にて計量されるセメントの計量値に応じて前記開閉バルブの開度を調整する開度調整手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る請求項1記載の生コンクリート製造プラントのセメント計量方法によれば、生コンクリート製造プラントに搭載されるセメント計量槽の下端部に計量したセメントをミキサに放出する放出口を備えると共に、該放出口には開閉バルブを開閉自在に備え、セメント計量時にセメントの計量値が予め設定した許容誤差範囲を超過した場合には、前記開閉バルブを開放して放出口からセメントをミキサに放出しながら減算計量し、計量槽に超過分のセメントを残すように開閉バルブを閉鎖して所定量計量すると共に、次バッチでは計量槽に超過分のセメントを残したままで累積計量するようにしたので、セメント計量時に許容誤差範囲を超過する計量誤差が発生しても、計量槽に超過分のセメントを残すように減算計量することによって容易に修正できると共に、計量槽に残した超過分のセメントは次バッチで無駄なく利用できる。
【0013】
また、請求項2記載の生コンクリート製造プラントのセメント計量方法によれば、減算計量時にセメント計量値が予め設定した微放出開始ポイントになれば開閉バルブの開度を絞ってセメントの放出量を減じるようにしたので、減算計量時の計量精度を高めることができる。
【0014】
また、請求項3記載の生コンクリート製造プラントのセメント計量装置では、セメント計量槽の下端部に計量したセメントをミキサに放出する放出口を備え、該放出口には開閉バルブを開閉自在に備えると共に、計量槽にて計量されるセメントの計量値に応じて前記開閉バルブの開度を調整する開度調整手段を備えたので、セメント計量時に許容誤差範囲を超過する計量誤差が発生しても、計量槽に超過分のセメントを残すように減算計量することによって容易に修正できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る生コンクリート製造プラントのセメント計量方法及び計量装置の概略説明図である。
【図2】セメントの計量及び修正手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る生コンクリート製造プラントのセメント計量方法及び計量装置にあっては、セメントを計量するセメント計量槽の下端部に、計量したセメントを下位のミキサに放出する放出口を備え、該放出口には開閉バルブを開閉自在に備えていると共に、計量槽にて計量されるセメントの計量値に応じて前記開閉バルブの開度を調整する開度調整手段を備えている。
【0017】
そして、前記セメント計量槽にセメントを投入して計量したときに、計量ミスによってセメントの計量値が予め設定した許容誤差範囲(例えば、「JIS A 5308」にて認められている許容誤差範囲で、セメントは1%以内)を超過した場合には、放出口の開閉バルブを開放して計量槽からセメントをミキサに放出しながら減算計量を行い、計量槽に超過分のセメントが残っているタイミングで開閉バルブを閉鎖してセメントの放出を停止する。
【0018】
このとき、前記開閉バルブの開度は開度調整手段によって計量槽のセメント量に応じて調整され、例えば、セメントの計量値が予め設定した微放出開始ポイント(例えば、50kg程度)より多く残っている間は開閉バルブの開度を全開にしてセメントの放出スピードを最大に維持させる一方、計量値が微放出開始ポイントになれば開閉バルブの開度を絞ってセメントの放出スピードを緩めるようにしており、効率をあまり下げずに計量精度を高めるように図っている。
【0019】
こうして減算計量が完了したときにはミキサには所定量のセメントが放出されており、他のコンクリート材料と共に所定時間混練して生コンクリートを製造する。そして、次バッチでは、計量槽に超過分のセメントを残したままで次バッチ分のセメントを投入して累積計量を行う。
【0020】
このように、生コンクリート製造プラントにおいて生コンクリートを製造するときに、コンクリート材料であるセメントの計量値が計量ミスによって許容誤差範囲を超過するような事態が生じても、減算計量によって容易に修正できると共に、計量槽に残った超過分のセメントは次バッチにて無駄なく利用できる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】
図中の1は生コンクリート製造プラントのセメント計量用の計量装置であって、セメントを計量するセメント計量槽2を計量器であるロードセル3にて支持し、該セメント計量槽2の上位にはセメント貯蔵用のセメント貯蔵槽(図示せず)を備えている一方、セメント計量槽2の下位にはセメントと共に、砂利や砂などの骨材、混和剤、混練水などの各種コンクリート材料を混練して生コンクリートを製造するミキサ(図示せず)を備えている。
【0023】
前記セメント計量槽2の上端部にはセメント貯蔵槽から排出されるセメントを計量槽2内に投入する投入口4を備えている一方、計量槽2の下端部には計量したセメントを下位のミキサに放出する放出口5を備えていると共に、該放出口5には開閉バルブとして、例えばバタフライバルブ6を備えている。
【0024】
前記バタフライバルブ6は、略円盤状のバルブ本体7の両側部を軸体8にて放出口5に回転自在に軸支していると共に、前記軸体8に固着したアーム9の他端部を開度調整手段である両ロッド式のシリンダ10の一方のロッド11先端部と軸着している一方、シリンダ10の他方のロッド12先端部は架台13上に立設した支持片14と軸着しており、シリンダ10の各ロッド11、12の伸縮(図1中の矢印A1、A2)に応じてバルブ本体7を回転させて(図1中の矢印B)、バタフライバルブ6の開度を調節可能としている。
【0025】
前記バタフライバルブ6の開度調整方法について詳細に説明すると、バタフライバルブ6を全閉する場合には、シリンダ10の両ロッド11、12を共に伸長させ(バルブ本体7は図中の7a位置に停止)、バタフライバルブ6を微開する場合には、ロッド11を伸長させかつロッド12は短縮させ(バルブ本体7は図中の7b位置に停止)、またバタフライバルブ6を全開する場合には、両ロッド11、12を共に短縮させる(バルブ本体7は図中の7c位置に停止)。なお、開度調整手段としては、前記両ロッド式のシリンダ以外に、例えばロッドが二段階に伸縮可能な二段階伸縮式のシリンダなども好適に採用できる。
【0026】
次に、上記構成のセメント計量装置1にて、セメントの計量及び修正を行うときの手順を図2のフローチャートに基づいて説明する。なお、図中のS1〜S20は各ステップを表している。
【0027】
先ず、プラントに備え付けの操作盤(図示せず)に初期設定として、計量設定値を設定登録すると共に(S1)、その許容誤差範囲(例えば、「JIS A 5308」にて認められている許容誤差範囲で、セメントは1%以内)を設定登録し(S2)、更にセメントを投入した計量槽2にて減算計量する際にバタフライバルブ6の開度を全開から微開状態に切り替えるタイミングである微放出開始ポイント(例えば50kg)を設定登録し(S3)、続いて設定終了するか否かを判断し(S4)、終了しない場合にはステップ1に戻って再度設定登録する。
【0028】
そして、セメントの計量を行うときには、予め設定登録した計量設定値と許容誤差範囲、及び減算計量用の微放出開始ポイントをそれぞれ読み込み(S5)、その計量設定値に基づいて、貯蔵槽から所定量のセメントを排出して計量槽2に投入する(S6)。そして、所定量のセメントの投入が完了し、投入されたセメントが全て計量槽2に落下し終わって安定した計量値が示されるようになればそのときの計量値を検出し(S7)、その計量値と計量設定値との誤差量を演算し(S8)、この誤差量と予め設定した許容誤差範囲と比較し(S9)、前記誤差量が許容誤差範囲内にあるかどうかを判定し(S10)、許容誤差範囲内に収まる場合には合格と見なし、シリンダ10の両ロッド11、12を共に短縮して、計量槽2の放出口5に備えた開閉バルブであるバタフライバルブ6を全開として、計量槽2内のセメントを下位のミキサに放出し(S11)、1バッチ分のセメントの計量を完了する。そして、計量を終了するか否かを判断し(S12)、継続する場合はステップ6に戻って繰り返し計量操作を行う。
【0029】
また、ステップ10において、検出される計量値と計量設定値との誤差量が予め設定した許容誤差範囲を超過する場合(例えば、セメントの誤差量が1%を超過する場合)には、先ずシリンダ10の両ロッド11、12を共に短縮して、計量槽2の放出口5に備えた開閉バルブであるバタフライバルブ6を全開として、計量槽2からセメントをミキサに放出すると共に(S13)、計量値を検出し(S14)、その計量値と減算計量用の微放出開始ポイントとを比較し(S15)、計量値が微放出開始ポイントに達したかどうかを判定し(S16)、達していればシリンダ10の一方のロッド11のみを伸長させて、バタフライバルブ6の開度を微開状態に調整して放出量を抑える一方(S17)、計量値が微放出開始ポイントに達していなければステップ14に戻って計量を続ける。
【0030】
そして、計量値が微放出開始ポイントに達していれば引き続きセメントの計量を続けて計量値を検出し(S18)、その計量値が許容誤差範囲内となったか否かを判定し(S19)、許容誤差範囲内となればシリンダ10の両ロッド11、12を共に伸長して、バタフライバルブ6を全閉してセメントの放出を停止し(S20)、1バッチ分のセメントの計量を完了する。なお、次バッチでは、計量槽2に超過分のセメントを残したままで次バッチ分のセメントを投入して累積計量を行う。
【0031】
また、ステップ10において、検出されるセメントの計量値と計量設定値との誤差量が予め設定した許容誤差範囲より過小な場合には、図示していないが、更に貯蔵槽からセメントを排出して不足分を供給する。
【0032】
このように、生コンクリート製造プラントにおいて生コンクリートを製造するときに、セメントの計量値が許容誤差範囲を超過するような事態が生じても、減算計量によって容易に修正できると共に、計量槽に残った超過分のセメントは次バッチにて無駄なく利用できる。
【符号の説明】
【0033】
1…セメント計量装置 2…セメント計量槽
3…ロードセル 4…投入口
5…放出口 6…バタフライバルブ(開閉バルブ)
7…バルブ本体 10…シリンダ(両ロッド式)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリート製造プラントに搭載されるセメント計量槽の下端部に計量したセメントをミキサに放出する放出口を備えると共に、該放出口には開閉バルブを開閉自在に備え、セメント計量時にセメントの計量値が予め設定した許容誤差範囲を超過した場合には、前記開閉バルブを開放して放出口からセメントをミキサに放出しながら減算計量し、計量槽に超過分のセメントを残すように開閉バルブを閉鎖して所定量計量すると共に、次バッチでは計量槽に超過分のセメントを残したままで累積計量するようにしたことを特徴とする生コンクリート製造プラントのセメント計量方法。
【請求項2】
請求項1記載の生コンクリート製造プラントのセメント計量方法において、減算計量時にセメント計量値が予め設定した微放出開始ポイントになれば開閉バルブの開度を絞ってセメントの放出量を減じるようにしたことを特徴とする生コンクリート製造プラントのセメント計量方法。
【請求項3】
砂利、砂、セメント、混和剤、及び混練水を各計量槽にて所定量計量し、これら材料をミキサに順次投入して所定時間混練して生コンクリートを製造する生コンクリート製造プラントにおいて、セメント計量槽の下端部に計量したセメントをミキサに放出する放出口を備え、該放出口には開閉バルブを開閉自在に備えると共に、計量槽にて計量されるセメントの計量値に応じて前記開閉バルブの開度を調整する開度調整手段を備えたことを特徴とする生コンクリート製造プラントのセメント計量装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−11336(P2011−11336A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154444(P2009−154444)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】