生体内留置用ステントおよび生体器官拡張器具
【課題】内外面に金属表面を持ち、かつ、生理活性物質の放出を可能とすることにより、生体内留置後における再狭窄率が極めて低い生体内留置用ステントを提供する。
【解決手段】生体内留置用ステント1は、金属材料により形成された外面側ステント基体11と、金属材料により形成され、かつ、外面側ステント基体11内に位置する内面側ステント基体12と、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12間に位置し、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12とを接着する樹脂性接着層13とを備える。そして、樹脂製接着層13は、生理活性物質を放出可能に含有している。
【解決手段】生体内留置用ステント1は、金属材料により形成された外面側ステント基体11と、金属材料により形成され、かつ、外面側ステント基体11内に位置する内面側ステント基体12と、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12間に位置し、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12とを接着する樹脂性接着層13とを備える。そして、樹脂製接着層13は、生理活性物質を放出可能に含有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部、もしくは閉塞部の改善に使用される生体内留置用ステントおよび生体器官拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内留置用ステントは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するためにそこに留置する一般的には管状の医療用具である。
ステントは、体外から体内に挿入するため、そのときは直径が小さく、目的の狭窄もしくは閉塞部位で拡張させて直径を大きくし、かつその管腔をそのままで保持する物である。
【0003】
ステントとしては、金属線材、あるいは金属管を加工した円筒状のものが一般的である。カテーテルなどに細くした状態で装着され、生体内に挿入され、目的部位で何らかの方法で拡張させ、その管腔内壁に密着、固定することで管腔形状を維持する。ステントは、機能および留置方法によって、セルフエクスパンダブルステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントはステント自体に拡張機能はなく、ステントを目的部位に挿入した後、ステント内にバルーンを位置させてバルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。
ステント留置の目的は、PTCA等の手技を施した後に起こる再狭窄の予防、およびその低減化を図るものである。そして、近年では、このステントに生理活性物質を担持させることによって、管腔の留置部位で長期にわたって局所的にこの生理活性物質を放出させ、再狭窄率の低減化を図るものが利用されている。
例えば、特開平8−33718号公報(特許文献1)にはステント本体の表面に治療のための物質とポリマーの混合物をコーティングしたステントが開示されており、特開平9−56807号公報(特許文献2)には、ステント本体の表面に薬剤層を設け、さらにこの薬剤層の表面に生分解性ポリマー層を設けたステントが提案されている。
【0004】
さらに、本願出願人は、特開2004−41704号(特許文献3)、特開2005−168937号(特許文献4)、特開2006−87704号(特許文献5)を提案している。
金属製ステント自体は、従来から利用されており、再狭窄率は高いものではない。しかし、金属単体からなるステントでは、付加的作用を発揮するものではないため、その表面に、生理活性物質を含有するポリマーを被覆することにより、付加的作用を発揮させている。
上記のステントは、十分な効果を有する。しかし、血管壁にポリマーが直接的に接触するため、炎症反応を生じることが危惧され、また、ポリマー層が露出しているため、狭窄部への留置作業時に、ポリマー層の破損、剥がれ、クラックが発生することも考えられる。そして、金属製のステント本体部分は、狭窄部において留置時の形態のまま存在し続けるため、金属製のステント本体部分が再狭窄の原因となることも考えられる。
また、ポリマーのみによりステントを形成することも考えられるが、樹脂では強度が不十分であるため、血管を支持するための強度が十分に得られない。血管支持力を確保するためには、ポリマー量を多くする必要があり、ポリマー量を多くすると炎症が起こりやすくなると共に、肉厚になるため再狭窄の要因となる虞れがある。
【0005】
【特許文献1】特開平8−33718号公報
【特許文献2】特開平9−56807号公報
【特許文献3】特開2004−41704号公報
【特許文献4】特開2005−168937号公報
【特許文献5】特開2006−87704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、金属の持つ比較的高い生体的親和性を備え、生理活性物質の放出を可能とし、さらに、生体内への留置後、ある程度の期間が経過することにより、ステント自体が薄肉化し、再狭窄要因となる可能性が極めて少ない生体内留置用ステントおよびそれを備える生体器官拡張器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 金属材料により形成された外面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体と、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置し、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマー含有樹脂製接着層とを備え、前記樹脂製接着層は、生理活性物質を放出可能に含有している生体内留置用ステント。
(2) 前記外面側ステント基体は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、前記内面側ステント基体は、前記外面側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記外面側ステント基体内にステント形態が重なるように配置されている上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(3) 前記樹脂製接着層は、実質的に前記生分解性ポリマーにより形成されており、前記樹脂製接着層は、前記生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものである上記(1)または(2)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(4) 前記樹脂製接着層は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体との接着状態を維持するものである上記(1)または(2)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0008】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(5) 金属材料により形成された外面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置する内部側ステント基体と、前記外面側ステント基体と前記内部側ステント基体間に位置し、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマーを含有する第1の樹脂性接着層と、前記内部側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置し、前記内部側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマーを含有する第2の樹脂性接着層とを備え、前記第1の樹脂製接着層は、生理活性物質を放出可能に含有している生体内留置用ステント。
(6) 前記第2の樹脂製接着層は、前記第1の樹脂製接着層に含有された生理活性物質と異なる生理活性物質を放出可能に含有している上記(5)に記載の生体内留置用ステント。
【0009】
(7) 前記外面側ステント基体は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、前記内部側ステント基体は、前記外面側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記外面側ステント基体内にステント形態が重なるように配置され、前記内面側ステント基体は、前記内部側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記内部側ステント基体内にステント形態が重なるように配置されている上記(5)または(6)に記載の生体内留置用ステント。
(8) 前記第1および第2の樹脂製接着層は、実質的に前記生分解性ポリマーにより形成されており、前記第1および第2の樹脂製接着層は、前記生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものである上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(9) 前記第1および第2の樹脂製接着層は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、前記外面側ステント基体と前記内部側ステント基体との接着状態および前記内面側ステント基体と前記内部側ステント基体との接着状態を維持するものである上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0010】
(10) 前記内面側ステント基体は、内表面より前記第2の樹脂製接着層まで延びる多数の細孔を備えている上記(5)ないし(9)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(11) 前記内部側ステント基体は、外面側および内面側が金属により形成された金属表面層となっているとともに、内部が、樹脂製接着層と金属層とが交互に積層した多層構造となっている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(12) 前記外面側ステント基体は、表面より前記樹脂性接着層まで延びる多数の細孔を備えている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0011】
(13) 前記生理活性物質が、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド、カロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質からなる群から選択される少なくとも1つである上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(14) 前記第1の生理活性物質は、抗癌剤、免疫抑制剤、レチノイド、フラボノイド、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種のものであり、前記第2の生理活性物質は、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、カロチノイド、脂質改善薬、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質からなる群より選択される少なくとも1種のものである上記(6)ないし(12)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(15) 前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該ステントの内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張するものである上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0012】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(16) チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の前記バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張される上記(15)に記載のステントとを備える生体器官拡張器具。
【発明の効果】
【0013】
本発明の生体内留置用ステントは、金属材料により形成された外面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体と、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置し、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマー含有樹脂製接着層とを備え、前記樹脂製接着層は、生理活性物質を放出可能に含有している。
このため、本発明のステントは、内外面ともに金属表面を備え、樹脂製接着層は、留置される生体内面には接触しないものであり、さらに、生理活性物質を放出可能であり、かつ、生体内への留置後、ある程度の期間が経過することにより、ステント自体が薄肉化するため、生体内留置後における再狭窄率が極めて低いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の生体内留置用ステントについて以下の好適実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例の生体内留置用ステントの正面図である。図2は、図1の生体内留置用ステントの展開図である。図3は、図2のA−A線拡大断面図である。図4は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。図5は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。図6は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。図7は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。図8は、図2の部分拡大図である。図9は、図1に示すステントの製造時の展開図である。
【0015】
本発明の生体内留置用ステント1は、金属材料により形成された外面側ステント基体11と、金属材料により形成され、かつ、外面側ステント基体11内に位置する内面側ステント基体12と、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12間に位置し、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12とを接着する生分解性ポリマー含有樹脂性接着層13とを備える。そして、生分解性ポリマー含有樹脂製接着層13は、生理活性物質を放出可能に含有している。
そして、この実施例の生体内留置用ステント1では、外面側ステント基体11は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、内面側ステント基体12は、外面側ステント基体11のステント形態に対応した形態を備え、かつ、外面側ステント基体11内にステント形態が重なるように配置されている。
つまり、本発明のステント1は、外表面および内表面が金属層であり、その両者間が生分解性ポリマー含有接着性樹脂層である多層構造を持つものとなっている。
【0016】
そして、樹脂製接着層13は、実質的に前記生分解性ポリマーにより形成されており、前記樹脂製接着層は、前記生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものであることが好ましい。このようなものであれば、生体内への留置後、樹脂製接着層13の消失により、その消失分肉厚が薄くなり、再狭窄の要因となる可能性が少ないものとなる。
なお、樹脂製接着層13は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12との接着状態を維持するものであってもよい。この場合には、生分解性ポリマー含有接着性樹脂層は、接着性を有しかつ所定量の非生分解性成分を含有するものとなる。この場合においても、樹脂製接着層13中の生分解性ポリマーの消失により、その消失分肉厚が薄くなり、再狭窄の要因となる可能性を少なくする。
【0017】
また、外面側ステント基体11は、図4に示すステント1aのように、表面より樹脂性接着層13まで延びる多数の細孔11aを備えているものであってもよい。このようにすることにより、樹脂製接着層13に含有されている生理活性物質の放出がより良好なものとなる。
また、図5に示すステント1bのように、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12の周縁部は、近接する方向に湾曲するものであってもよい。このようにすることにより、ステント全体の保形性が高いものとなる。なお、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12の周縁部は、図5に示すように、隙間16が形成されるようにし、完全に密着しないものとすることが好ましい。
さらに、図6に示すステント1cのように、外面側ステント基体11は、表面より樹脂性接着層13まで延びる多数の細孔11aを備え、さらに、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12の周縁部は、近接する方向に湾曲するものであってもよい。このようにすることにより、ステント全体の保形性が高いものとなる。そして、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12の周縁部は、図6に示すように、完全に密着するものであってもよい。この場合、樹脂製接着層13に含有されている生理活性物質は、細孔11aのみより流出するものとなり、良好な徐放が可能となる。
【0018】
そして、上述した3層構造の実施例のステント1において、外面側ステント基体11の厚さとしては、0.03〜0.25mm程度が好適であり、好ましくは、0.05〜0.10mmである。内面側ステント基体12の厚さとしては、0.03〜0.25mm程度が好適であり、好ましくは、0.05〜0.10mmである。樹脂製接着層13の厚さとしては、0.001〜0.050mm程度が好適であり、好ましくは、0.005〜0.030mmである。
【0019】
さらに、本発明のステントとしては、図7に示すステント1dのように、金属材料により形成された外面側ステント基体11と、金属材料により形成され、かつ、外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体12と、金属材料により形成され、かつ、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12間に位置する内部側ステント基体14と、外面側ステント基体11と内部側ステント基体間14に位置し、外面側ステント基体11と内部側ステント基体14とを接着する生分解性ポリマーを含有する第1の樹脂性接着層13と、内部側ステント基体14と内面側ステント基体12間に位置し、内部側ステント基体14と内面側ステント基体12とを接着する生分解性ポリマーを含有する第2の樹脂性接着層15とを備え、第1の樹脂製接着層13は、生理活性物質を放出可能に含有しているものであってもよい。
【0020】
そして、第1樹脂製接着層13および第2の樹脂製接着層15は、実質的に生分解性ポリマーにより形成されており、第1樹脂製接着層13および第2の樹脂製接着層15は、生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものであることが好ましい。
また、第1樹脂製接着層13および第2の樹脂製接着層15は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、外面側ステント基体11と内部側ステント基体14との接着状態および内面側ステント基体12と内部側ステント基体14との接着状態を維持するものであってもよい。この場合には、第1樹脂製接着層13および第2の樹脂製接着層15は、接着性を有しかつ所定量の非生分解性成分を含有するものとなる。
【0021】
この実施例のステント1dにおいて、外表面および内表面が金属層であり、その両者間が接着性樹脂層である多層構造を持つものとなっている。具体的には、3つの金属層と、それぞれの間に配置された2つの樹脂製接着層からなる5層構造となっている。なお、本発明のステントとしては、このような5層構造に限定されるものではなく、さらに多層構造となっているものであってもよい。具体的には、内部側ステント基体が、外面側および内面側が金属により形成された金属表面層となっているとともに、内部が、樹脂製接着層と金属層とが交互に積層した多層構造となっているものであってもよい。
この実施例のステント1dにおいて、外面側ステント基体11は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、内部側ステント基体14は、外面側ステント基体11のステント形態に対応した形態を備え、かつ、外面側ステント基体11内にステント形態が重なるように配置され、内面側ステント基体12は、内部側ステント基体14のステント形態に対応した形態を備え、かつ、内部側ステント基体14内にステント形態が重なるように配置されている。
【0022】
そして、このような多層構造のものにおいても、図7に示すステント1dのように、外面側ステント基体11は、表面より第1の樹脂性接着層13まで延びる多数の細孔11aを備えているものであってもよい。このようにすることにより、樹脂製接着層13に含有されている生理活性物質の放出がより良好なものとなる。
また、第2の樹脂製接着層15は、第1の樹脂製接着層13に含有された生理活性物質と異なる生理活性物質を放出可能に含有していることが好ましい。さらに、内面側ステント基体12は、図7に示すステント1dのように、表面より第2の樹脂性接着層15まで延びる多数の細孔12aを備えるものであってもよい。このようにすることにより、第2の樹脂製接着層15に含有されている生理活性物質の放出がより良好なものとなる。
【0023】
そして、第1の樹脂製接着層13および第2の樹脂製接着層15は、生理活性物質を徐々に放出するために配合された生分解性材料を含有するとともに、生分解性材料の分解後においても外面側ステント基体12と内部側ステント基体14と内面側ステント基体12との接着状態を維持するものであることが好ましい。
そして、上述した5層構造の実施例のステント1dにおいて、外面側ステント基体11の厚さとしては、0.03〜0.15mm程度が好適であり、好ましくは、0.05〜0.10mmである。内面側ステント基体12の厚さとしては、0.03〜0.15mm程度が好適であり、好ましくは、0.05〜0.10mmである。内部側ステント基体14の厚さとしては、0.03〜0.15mm程度が好適であり、好ましくは、0.05〜0.10mmである。第1の樹脂製接着層13の厚さとしては、0.001〜0.050mm程度が好適であり、好ましくは、0.005〜0.030mmである。第2の樹脂製接着層15の厚さとしては、0.001〜0.050mm程度が好適であり、好ましくは、0.005〜0.030mmである。
【0024】
そして、本発明のステントとしては、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なステント、いわゆるバルーン拡張型ステントであることが好ましい。
この場合におけるステント基体11,12,14を形成する金属材料としては、ある程度の生体適合性を有するものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、コバルトベース合金、コバルトクロム合金、チタン合金、ニオブ合金等が考えられる。またステント形状を作製した後に貴金属メッキ(金、プラチナ)をしてもよい。ステンレス鋼としては、最も耐腐食性のあるSUS316Lが好適である。
また、ステントの非拡張時の直径は、0.8〜1.8mm程度が好適であり、特に、0.9〜1.6mmがより好ましい。また、ステントの非拡張時の長さは、8〜40mm程度が好適である。また、一つの波線状環状体2の長さは、1.0〜2.5mm程度が好適である。
【0025】
樹脂製接着層13,15の形成材料としては、ゴム、エラストマー、可撓性樹脂が好ましい。ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ラテックスゴムなどが好ましい。エラストマーとしては、フッ素系樹脂エラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)などが好ましい。可撓性樹脂としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体)などが好ましい。特に、エラストマー、ゴムが好適である。ゴムとしては、シリコーンゴムが好適である。さらに、シリコーンゴムとしては、低温硬化型もしくは常温硬化型シリコーンゴムが好ましい。
【0026】
そして、上述したように、樹脂製接着層は、生理活性物質を徐々に放出するために配合された生分解性材料を含有する。なお、生分解性材料は、生分解性材料の分解後においても、樹脂製接着層は、ステント基体間の接着状態(ステント構造)を維持可能な程度含有される。樹脂製接着層形成材料中に含有される生分解性材料は、使用する接着層形成材および生分解性材料によっても相違するが、30〜50重量%程度が好ましい。
生分解性材料としては、生体内で酵素的、非酵素的に分解され、分解物が毒性を示さないものであれば特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸−ポリカプロラクトン共重合体、ポリオルソエステル、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリリンゴ酸、ポリα−アミノ酸、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ヘパラン硫酸、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ポリペプチド、キチン、キトサンなどが使用できる。
【0027】
生理活性物質としては、内膜肥厚を抑制する薬剤、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症剤、抗炎症剤、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイドおよびカロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、血管平滑筋増殖抑制薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロンおよび遺伝子工学により生成される上皮細胞などが使用される。そして、上記の薬剤等の2種以上の混合物を使用してもよい。
【0028】
抗癌剤としては、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、イリノテカン、ピラルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート等が好ましい。免疫抑制剤としては、例えば、シロリムス、タクロリムス、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、グスペリムス、ミゾリビン等が好ましい。抗生物質としては、例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン、ドキソルビシン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、エピルビシン、ペプロマイシン、ジノスタチンスチマラマー等が好ましい。抗リウマチ剤としては、例えば、メトトレキサート、チオリンゴ酸ナトリウム、ペニシラミン、ロベンザリット等が好ましい。抗血栓薬としては、例えば、ヘパリン、アスピリン、抗トロンビン製剤、チクロピジン、ヒルジン等が好ましい。HMG−CoA還元酵素阻害剤としては、例えば、セリバスタチン、セリバスタチンナトリウム、アトルバスタチン、ニスバスタチン、イタバスタチン、フルバスタチン、フルバスタチンナトリウム、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン等が好ましい。ACE阻害剤としては、例えば、キナプリル、ペリンドプリルエルブミン、トランドラプリル、シラザプリル、テモカプリル、デラプリル、マレイン酸エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル等が好ましい。カルシウム拮抗剤としては、例えば、ニフェジピン、ニルバジピン、ジルチアゼム、ベニジピン、ニソルジピン等が好ましい。抗高脂血症剤としては、例えば、プロブコールが好ましい。抗アレルギー剤としては、例えば、トラニラストが好ましい。レチノイドとしては、例えば、オールトランスレチノイン酸フラボノイドおよびカロチノイドとしては、例えば、カテキン類、特にエピガロカテキンガレート、アントシアニン、プロアントシアニジン、リコピン、β−カロチン等が好ましい。チロシンキナーゼ阻害剤としては、例えば、ゲニステイン、チルフォスチン、アーブスタチン等が好ましい。抗炎症剤としては、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のステロイドが好ましい。生体由来材料としては、例えば、EGF(epidermal growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)、PDGF(platelet derived growth factor)、bFGF(basic fibroblast growth factor)等が好ましい。
【0029】
そして、上述した実施例のステント1dのように、外表面側となる第1の接着性樹脂層に含有される生理活性物質としては、抗癌剤、免疫抑制剤、レチノイド、フラボノイド、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種などが好適である。
また、内面側となる第2の接着性樹脂層に含有される生理活性物質としては、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、カロチノイド、脂質改善薬、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質からなる群より選択される少なくとも1種などが好適である。
【0030】
また、本発明の金属製のステント基体は、接着性樹脂層との接着性を高めるために、接着性樹脂層と向かい合う面の全体もしくは一部が前処理されても良い。前処理としては、親和性の高い材料をプライマーとして表面に被覆する方法が好ましい。プライマー材料としては、種々のものが使用可能であるが、最も好ましいものは加水分解性基と有機官能基とを有するシランカップリング剤である。シランカップリング剤の加水分解性基(たとえばアルコキシ基)の分解により生成したシラノール基は金属製のステント 本体と共有結合等により結合され、シランカップリング剤の有機官能基(例えばエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、メタクリロキシ基)は、樹脂製接着層中のポリマーと化学結合により結合することができる。具体的なシランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤以外のプライマー材料としては、例えば有機チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、クロム系カップリング剤、有機リン酸系カップリング剤、ポリパラキシレン等の有機蒸着膜、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系のペーストレジン等が挙げられる。
【0031】
また、ステントとしては、挿入時に縮径可能であり、かつ、体内放出時に拡径(復元)するいわゆるセルフ拡張型ステントであってもよい。
この場合、金属製ステント基体の構成材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0032】
そして、本発明のステントは、例えば、以下のようにして製造することができる。
最初に所定の内径を有する金属管状体(具体的には、金属パイプ)とこの金属管状体の内径より若干小さい外径を有する金属管状体(具体的には、金属パイプ)を準備し、それら金属パイプよりステント構造体(線状体により形成されるフレーム形態)が同じでありかつ径のみが異なる2つのステント基体を作製する。これは、金属パイプより、ステント構造体となる部分以外を除去することにより作製できる。具体的には、金属パイプを、例えば、フォトファブリケーションと呼ばれるマスキングと化学薬品を使用したエッチング方法、型による放電加工法、切削加工(例えば、機械研磨、レーザー切削加工)などにより不要部分を除去することにより行われる。また、ステント構造体を作製した後に、化学研磨あるいは電解研磨を用いて、構造体のエッジを研磨することが好ましい。
【0033】
そして、上記のようにして作製された小径側のステント基体の表面に、生理活性物質を含有した(好ましくは、生分解性材料も含有する)接着性樹脂層形成材料を塗布し、接着性樹脂層形成材料の硬化前に、大径側のステント基体を被嵌し、圧着させることにより、製造することができる。そして、大径側のステント基体の形成素材としては、多孔性金属パイプを用いることにより、形成されるステントの外面側ステント基体を多孔性のものとすることができる。
【0034】
また、ステントの製造方法は、上記のものに限定されるものではなく、例えば、最初に所定の内径を有する金属管状体(具体的には、金属パイプ)とこの金属管状体の内径より若干小さい外径を有する金属管状体(具体的には、金属パイプ)を準備し、小径側の金属パイプの表面に、接着性樹脂層形成材料(好ましくは、生分解性材料を含有)を塗布し、接着性樹脂層形成材料の硬化前に、大径側の金属パイプを被嵌し、圧着させることにより、内外面が金属により構成された多層パイプを作製する。そして、多層パイプより、ステント構造体となる部分以外を除去する。ステント構造体となる部分以外を除去は、上述の方法により行うことができる。このようにして、作製されたステント構造物を生理活性物質を溶解した溶液中に浸漬し、生理活性物質を接着性樹脂層形成材料中に担持(具体的には、移行、吸着)させることにより、本発明のステントを製造することができる。なお、生理活性物質を溶解した溶液としては、接着性樹脂層形成材料を膨潤もしくは若干溶解するものが用いられる。なお、この場合には、大径側のステント基体の形成素材としては、多孔性金属パイプを用いることが好ましく、このようにすることにより、接着性樹脂層形成材料中への生理活性物質の担持量を多くすることができる。なお、上述したすべての製造方法において、金属製ステント構造体もしくは金属パイプは、接着性樹脂層との接着性を高めるために、上述したようなプライマー被覆を処理を行ってもよい。
【0035】
また、本発明のステントにおけるステントの形態(線状体により構成されるフレーム形態)としては、どのようなものであってもよい。
図1に示す実施例の生体内留置用ステント1では、波線状環状体2がステントの軸方向に隣り合うように複数配列され、隣り合う波線状環状体2が接続された形態を有する略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なものとなっている。そして、波線状環状体2は、ステント1の拡張前および拡張後において、ステント1の中心軸と平行に伸びる平行直線状部21を備え、ステント1は、隣り合う波線状環状体2の平行直線状部21の端部同士を接続する接続部3を備えている。
この実施例のステント1は、略管状体に形成され、生体内への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向外方に広がる力が付与されたときに伸長可能なものであり、いわゆるバルーン拡張型ステントである。
【0036】
本発明のステント1は、図1および図2に示すように、複数の波線状環状体2を軸方向に隣り合うように配列するとともに、それぞれを接続した形態となっている。
ステント1を形成する波線状環状体2の数としては、図1、図2、図8および図9に示すものでは、14となっている。波線状環状体2の数としては、ステントの長さによって相違し、4〜50が好ましく、特に、10〜35が好ましい。
そして、各波線状環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部25,27およびステント1の軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部26,28を有するとともに、環状に連続した無端の波線状体により構成されている。環状体2における一端側屈曲部25,27と他端側屈曲部26,28は、交互に形成されており、かつそれぞれの数は同じとなっている。
【0037】
そして、波線状環状体2は、図1、図2、図8および図9に示すように、平行直線状部21の一端と屈曲部25(25a)を介して接続し、かつ、少なくともステント1の拡張時にステント1の中心軸に対して所定角度斜めとなる第1の傾斜直線状部22と、第1の傾斜直線状部22の一端と屈曲部26を介して接続し、かつ、ステントの中心軸に対して所定角度斜めに伸びる傾斜線状部(この実施例では、傾斜曲線状部)23と、傾斜曲線状部23の一端と屈曲部27を介して接続し、かつ、少なくともステント1の拡張時にステント1の中心軸に対して所定角度斜めとなる第2の傾斜直線状部24の4つの線状部からなる変形M字線状部20が複数連続したものとなっている。そして、隣り合う変形M字線状部20は、第2の傾斜直線状部24の一端と平行直線状部21の他端を接続する屈曲部28(28a)により接続されることにより、無端の波線状環状体2を構成している。このため、ステントの拡張時における波線状環状体2の軸方向長のショートニングを抑制するとともに、波線状環状体2に十分な拡張保持力を付与する。
【0038】
また、この実施例のステント1では、一端側屈曲部25,27の頂点および他端側屈曲部26,28の頂点が、ステントの軸方向に対してほぼ直線状に並んだものとなっている。
そして、隣り合う波線状環状体2は、接続部3により接続されている。特に、この実施例のステント1では、隣り合う波線状環状体2の平行直線状部21の端部同士は、近接しかつ短い接続部3により接続されている。このため、隣り合う波線状環状体2間の距離が短いものとなり、隣り合う波線状環状体2間に起因する低拡張力部分の形成が極めて少ないものとなる。
【0039】
また、この実施例のステント1では、図1、図2、図8および図9に示すように、接続部3で接続された2つの平行直線状部21は、ほぼ直線状となっている。このため、ステントの拡張時における隣り合う波線状環状体間におけるステントのショートニングを防止できる。そして、このステント1では、隣り合う波線状環状体2を接続する複数の接続部3を備えている。このため、隣り合う波線状環状体が不必要に離間することがなく、ステント全体として十分な拡張力を発揮する。
そして、この実施例では、軸方向に連続する2つを越える(言い換えれば、3以上)平行直線状部21が、接続部により連結され一体化した部分を持たないものとなっている。つまり、接続部3により2本のみの平行直線状部21が接続された状態となっており、3本の平行直線状部21が一体化した部分を持たないものとなっている。このため、一つの波線状環状体が血管の変形に追従するように変化した時の負荷が、隣り合わない波線状環状体にまで直接的(もしくは直線的)に伝達されることを抑制でき、波線状環状体個々の独立した拡張機能を発揮する。
【0040】
また、ステント1は、隣り合う波線状環状体2を接続する複数の接続部3を備えている。このため、隣り合う波線状環状体が不必要に離間することがなく、ステント全体として十分な拡張力を発揮する。なお、接続部3は、隣り合う波線状環状体間に一つのみ設けてもよい。また、接続部3のステント1の軸方向長さとしては、1.0mm以下程度が好ましく、特に、0.1〜0.4mmが好ましい。
そして、このステント1では、隣り合う波線状環状体2を接続する2つの接続部3を備えており、2つの接続部は、向かい合う位置に設けられている。また、接続部3は、ステント1の軸方向に連続しないように配置されている。具体的には、この実施例のステント1では、図1、図2、図8および図9に示すように、2つの接続部3は向かい合う位置に設けられており、この接続部3と軸方向に隣り合う2つの接続部3は、向かい合うとともに、上記の接続部とステント1の中心軸に対して約90°ずれたものとなっている。
【0041】
ステント1は、図1および図2に示した状態より外径の大きい状態に形成した後、拡張可能なバルーンを有する器具のバルーン上に縮径させることにより装着される。そして、ステント1は、バルーンを拡張することにより、拡張する。
また、ステントの非拡張時の直径は、0.8〜1.8mm程度が好適であり、特に、0.9〜1.6mmがより好ましい。また、ステントの非拡張時の長さは、8〜40mm程度が好適である。また、一つの波線状環状体2の長さは、1.0〜2.5mm程度が好適である。
【0042】
なお、本発明のステントの形態(線状体により構成されるフレーム形態)としては、上述したものに限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。例えば、図10に示すように、波線状環状体ではなく、半径方向に広がる力が付加された時に伸張する多数の線状屈曲部と開口を有する複数のリング状線状体43を環状に配置したものであってもよい。
この実施例のステント40は、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加された時に拡張可能なステントである。ステント40は、半径方向に広がる力が付加された時に伸張する多数の線状屈曲部と開口を有する複数のリング状線状体43を環状となるように複数の接続部46により接続した環状ユニット44がステントの軸方向に複数配列され、かつ、隣り合う環状ユニット44を接続部にて連結するとともにステントの軸方向に連続しない連結部45を備え、さらに、連結部は、隣り合う環状ユニット間に複数かつ向かい合う位置もしくはステントの中心軸に対してほぼ等角度配置となるように設けられている。
【0043】
ステント40は、展開図である図10に示すように、ステント40の軸方向に長くかつ線状屈曲部41aと中央部開口を有するリング状線状体43が、ステントの中心軸に対してほぼ等角度配置にて略円周上に配列され、かつ、リング状線状体43の円周方向の隣接部(側部)間が接続部46にて接続された環状ユニット44からなり、かつ、複数の環状ユニット44がステント40の軸方向に並んでいる。さらに、一つの環状ユニット44の接続部46と隣り合う環状ユニット44の接続部46とが連結部45により少なくとも2カ所連結されている。ステント40は、見方を変えれば、多数の環状ユニット44が、連結部45により連結したことにより構成された管状体である。
【0044】
環状ユニット44は、この実施例では、ほぼ等角度間隔に配置された6つのリング状線状体43を有する。一つのリング状線状体43は、ステント40の軸方向に長い略菱形状に形成され、かつ、中央がリング状線状体43の形状に対応して、略菱形に開口し、ステントの軸方向の両端部が線状屈曲部41aとなっている。このように、各リング状線状体43は、個々独立した閉鎖系をなす形状、言い換えれば、リング状線状体43は、ステント40の側面にて開口するリング状要素である。リング状線状体43がこのような形状を有するため、強い拡張保持力を発揮する。また、各リング状線状体43は、ステント40の中心軸より全体がほぼ等距離となるように、円周方向に湾曲している。
【0045】
リング状線状体43は、ステント40の軸方向の側部の中心と半径方向に隣り合う他のリング状線状体43の軸方向の側部の中心とが短い接続部46により接続されている。つまり、接続部46は、各リング状線状体43を円周方向にて接続している。接続部46は、ステント40が拡張されても実質的に変化しないので、拡張する時の力が各リング状線状体43の中心にかかりやすく、各リング状線状体43は均一に拡張(変形)可能である。
環状ユニット44の接続部46と隣り合う環状ユニット44の接続部46とは、比較的長く(接続部に比べて長く)、ステント40の軸方向に平行に形成された連結部45により連結されている。具体的には、環状ユニット44と隣り合う環状ユニット44とは、接続部46間を連結する連結部45により連結されている。また、ステント40の両端に位置するリング状線状体43の外側部分43bは、略半楕円状となっている。
【0046】
次に、本発明の血管拡張器具を図面に示す実施例を用いて説明する。
図11は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の正面図である。図12は、図11に示した生体器官拡張器具の先端部の拡大部分断面図である。図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
本発明の血管拡張器具100は、チューブ状のシャフト本体部102と、シャフト本体部102の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーン103と、折り畳まれた状態のバルーン103を被包するように装着され、かつバルーン103の拡張により拡張されるステント101とを備えるものである。
【0047】
ステント101としては、上述したステント1のようなものが使用される。なお、ここで使用されるステントは、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能ないわゆるバルーン拡張型ステントが用いられる。ステントとしては、バルーン103に装着された状態におけるステントの線状体部分が占める面積は、ステントの空隙部を含む外周面の面積の60%〜80%であることが好ましい。さらに、本発明の血管拡張器具100では、シャフト本体部102は、一端がバルーン103内と連通するバルーン拡張用ルーメンを備える。生体器官拡張器具100は、ステントの中央部となる位置のシャフト本体部の外面に固定されたX線造影性部材もしくはステントの中央部分の所定長の両端となる位置のシャフト本体部の外面に固定された2つのX線造影性部材を備えている。
【0048】
この実施例の生体器官拡張器具100では、図11に示すように、シャフト本体部102は、シャフト本体部102の先端にて一端が開口し、シャフト本体部102の後端部にて他端が開口するガイドワイヤールーメン115を備えている。
この生体器官拡張器具100は、シャフト本体部102と、シャフト本体部102の先端部に固定されたステント拡張用バルーン103と、このバルーン103上に装着されたステント101とを備える。シャフト本体部102は、内管112と外管113と分岐ハブ110とを備えている。
【0049】
内管112は、図11に示すように、内部にガイドワイヤーを挿通するためのガイドワイヤールーメン115を備えるチューブ体である。内管112としては、長さは、100〜2500mm、より好ましくは、250〜2000mm、外径が、0.1〜1.0mm、より好ましくは、0.3〜0.7mm、肉厚10〜250μm、より好ましくは、20〜100μmのものである。そして、内管112は、外管113の内部に挿通され、その先端部が外管113より突出している。この内管112の外面と外管113の内面によりバルーン拡張用ルーメン116が形成されており、十分な容積を有している。外管113は、内部に内管112を挿通し、先端が内管112の先端よりやや後退した部分に位置するチューブ体である。
外管113としては、長さは、100〜2500mm、より好ましくは、250〜2000mm、外径が、0.5〜1.5mm、より好ましくは、0.7〜1.1mm、肉厚25〜200μm、より好ましくは、50〜100μmのものである。
【0050】
この実施例の生体器官拡張器具100では、外管113は、先端側外管113aと本体側外管113bにより形成され、両者が接合されている。そして、先端側外管113aは、本体側外管113bとの接合部より先端側の部分において、テーパー状に縮径し、このテーパー部より先端側が細径となっている。
先端側外管113aの細径部での外径は、0.50〜1.5mm、好ましくは0.60〜1.1mmである。また、先端側外管113aの基端部および本体側外管113bの外径は、0.75〜1.5mm、好ましくは0.9〜1.1mmである。
そして、バルーン103は、先端側接合部103aおよび後端側接合部103bを有し、先端側接合部103aが内管112の先端より若干後端側の位置に固定され、後端側接合部103bが外管の先端に固定されている。また、バルーン103は、基端部付近にてバルーン拡張用ルーメン116と連通している。
内管112および外管113の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用でき、好ましくは上記の熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、ポリオレフィンである。
【0051】
バルーン103は、図12に示すように、折り畳み可能なものであり、拡張させない状態では、内管112の外周に折り畳まれた状態となることができるものである。バルーン103は、図13に示すように、装着されるステント101を拡張できるようにほぼ同一径の筒状部分(好ましくは、円筒部分)となった拡張可能部を有している。略円筒部分は、完全な円筒でなくてもよく、多角柱状のものであってもよい。そして、バルーン103は、上述のように、先端側接合部103aが内管112にまた後端側接合部103bが外管113の先端に接着剤または熱融着などにより液密に固着されている。また、このバルーン103では、拡張可能部と接合部との間がテーパー状に形成されている。
バルーン103は、バルーン103の内面と内管112の外面との間に拡張空間103cを形成する。この拡張空間103cは、後端部ではその全周において拡張用ルーメン116と連通している。このように、バルーン103の後端は、比較的大きい容積を有する拡張用ルーメンと連通しているので、拡張用ルーメン116よりバルーン内への拡張用流体の注入が確実である。
【0052】
バルーン103の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアリレーンサルファイド(例えば、ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。特に、延伸可能な材料であることが好ましく、バルーン103は、高い強度および拡張力を有する二軸延伸されたものが好ましい。
バルーン103の大きさとしては、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部)の外径が、2〜4mm、好ましくは2.5〜3.5mmであり、長さが10〜50mm、好ましくは20〜40mmである。また、先端側接合部103aの外径が、0.9〜1.5mm、好ましくは1〜1.3mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは1〜1.3mmである。また、後端側接合部103bの外径が、1〜1.6mm、好ましくは1.1〜1.5mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは、2〜4mmである。
【0053】
そして、この血管拡張器具100は、図12に示すように、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部)の両端となる位置のシャフト本体部の外面に固定された2つのX線造影性部材117、118を備えている。なお、ステント101の中央部分の所定長の両端となる位置のシャフト本体部102(この実施例では、内管112)の外面に固定された2つのX線造影性部材を備えるものとしてもよい。さらに、ステントの中央部となる位置のシャフト本体部の外面に固定された単独のX線造影性部材を設けるものとしてもよい。
X線造影性部材117、118は、所定の長さを有するリング状のもの、もしくは線状体をコイル状に巻き付けたものなどが好適であり、形成材料は、例えば、金、白金、タングステンあるいはそれらの合金、あるいは銀−パラジウム合金等が好適である。
【0054】
そして、バルーン103を被包するようにステント101が装着されている。ステントは、ステント拡張時より小径かつ折り畳まれたバルーンの外径より大きい内径の金属パイプを加工することにより作成される。そして、作成されたステント内にバルーンを挿入し、ステントの外面に対して均一な力を内側に向けて与え縮径させることにより製品状態のステントが形成される。つまり、上記のステント101は、バルーンへの圧縮装着時により完成する。
【0055】
内管112と外管113との間(バルーン拡張用ルーメン116内)には、線状の剛性付与体(図示せず)が挿入されていてもよい。剛性付与体は、生体器官拡張器具100の可撓性をあまり低下させることなく、屈曲部位での生体器官拡張器具100の本体部102の極度の折れ曲がりを防止するとともに、生体器官拡張器具100の先端部の押し込みを容易にする。剛性付与体の先端部は、他の部分より研磨などの方法により細径となっていることが好ましい。また、剛性付与体は、細径部分の先端が、本体部外管113の先端部付近まで延びていることが好ましい。剛性付与体としては、金属線であることが好ましく、線径0.05〜1.50mm、好ましくは0.10〜1.00mmのステンレス鋼等の弾性金属、超弾性合金などであり、特に好ましくは、ばね用高張力ステンレス鋼、超弾性合金線である。
【0056】
この実施例の生体器官拡張器具100では、図11に示すように、基端に分岐ハブ110が固定されている。分岐ハブ110は、ガイドワイヤールーメン115と連通しガイドワイヤーポートを形成するガイドワイヤー導入口109を有し、内管112に固着された内管ハブと、バルーン拡張用ルーメン116と連通しインジェクションポート111を有し、外管113に固着された外管ハブとからなっている。そして、外管ハブと内管ハブとは、固着されている。この分岐ハブ110の形成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
なお、生体器官拡張器具の構造は、上記のようなものに限定されるものではなく、生体器官拡張器具の中間部分にガイドワイヤールーメンと連通するガイドワイヤー挿入口を有するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の一実施例の生体内留置用ステントの正面図である。
【図2】図2は、図1の生体内留置用ステントの展開図である。
【図3】図3は、図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。
【図8】図8は、図2の部分拡大図である。
【図9】図9は、図1に示すステントの製造時の展開図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの製造時の展開図である。
【図11】図11は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の正面図である。
【図12】図12は、図11に示した生体器官拡張器具の先端部の拡大部分断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1、40 生体内留置用ステント
11 外面側ステント基体
12 内面側ステント基体
13 樹脂製接着層
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部、もしくは閉塞部の改善に使用される生体内留置用ステントおよび生体器官拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内留置用ステントは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するためにそこに留置する一般的には管状の医療用具である。
ステントは、体外から体内に挿入するため、そのときは直径が小さく、目的の狭窄もしくは閉塞部位で拡張させて直径を大きくし、かつその管腔をそのままで保持する物である。
【0003】
ステントとしては、金属線材、あるいは金属管を加工した円筒状のものが一般的である。カテーテルなどに細くした状態で装着され、生体内に挿入され、目的部位で何らかの方法で拡張させ、その管腔内壁に密着、固定することで管腔形状を維持する。ステントは、機能および留置方法によって、セルフエクスパンダブルステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントはステント自体に拡張機能はなく、ステントを目的部位に挿入した後、ステント内にバルーンを位置させてバルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。
ステント留置の目的は、PTCA等の手技を施した後に起こる再狭窄の予防、およびその低減化を図るものである。そして、近年では、このステントに生理活性物質を担持させることによって、管腔の留置部位で長期にわたって局所的にこの生理活性物質を放出させ、再狭窄率の低減化を図るものが利用されている。
例えば、特開平8−33718号公報(特許文献1)にはステント本体の表面に治療のための物質とポリマーの混合物をコーティングしたステントが開示されており、特開平9−56807号公報(特許文献2)には、ステント本体の表面に薬剤層を設け、さらにこの薬剤層の表面に生分解性ポリマー層を設けたステントが提案されている。
【0004】
さらに、本願出願人は、特開2004−41704号(特許文献3)、特開2005−168937号(特許文献4)、特開2006−87704号(特許文献5)を提案している。
金属製ステント自体は、従来から利用されており、再狭窄率は高いものではない。しかし、金属単体からなるステントでは、付加的作用を発揮するものではないため、その表面に、生理活性物質を含有するポリマーを被覆することにより、付加的作用を発揮させている。
上記のステントは、十分な効果を有する。しかし、血管壁にポリマーが直接的に接触するため、炎症反応を生じることが危惧され、また、ポリマー層が露出しているため、狭窄部への留置作業時に、ポリマー層の破損、剥がれ、クラックが発生することも考えられる。そして、金属製のステント本体部分は、狭窄部において留置時の形態のまま存在し続けるため、金属製のステント本体部分が再狭窄の原因となることも考えられる。
また、ポリマーのみによりステントを形成することも考えられるが、樹脂では強度が不十分であるため、血管を支持するための強度が十分に得られない。血管支持力を確保するためには、ポリマー量を多くする必要があり、ポリマー量を多くすると炎症が起こりやすくなると共に、肉厚になるため再狭窄の要因となる虞れがある。
【0005】
【特許文献1】特開平8−33718号公報
【特許文献2】特開平9−56807号公報
【特許文献3】特開2004−41704号公報
【特許文献4】特開2005−168937号公報
【特許文献5】特開2006−87704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、金属の持つ比較的高い生体的親和性を備え、生理活性物質の放出を可能とし、さらに、生体内への留置後、ある程度の期間が経過することにより、ステント自体が薄肉化し、再狭窄要因となる可能性が極めて少ない生体内留置用ステントおよびそれを備える生体器官拡張器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 金属材料により形成された外面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体と、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置し、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマー含有樹脂製接着層とを備え、前記樹脂製接着層は、生理活性物質を放出可能に含有している生体内留置用ステント。
(2) 前記外面側ステント基体は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、前記内面側ステント基体は、前記外面側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記外面側ステント基体内にステント形態が重なるように配置されている上記(1)に記載の生体内留置用ステント。
(3) 前記樹脂製接着層は、実質的に前記生分解性ポリマーにより形成されており、前記樹脂製接着層は、前記生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものである上記(1)または(2)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(4) 前記樹脂製接着層は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体との接着状態を維持するものである上記(1)または(2)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0008】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(5) 金属材料により形成された外面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置する内部側ステント基体と、前記外面側ステント基体と前記内部側ステント基体間に位置し、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマーを含有する第1の樹脂性接着層と、前記内部側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置し、前記内部側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマーを含有する第2の樹脂性接着層とを備え、前記第1の樹脂製接着層は、生理活性物質を放出可能に含有している生体内留置用ステント。
(6) 前記第2の樹脂製接着層は、前記第1の樹脂製接着層に含有された生理活性物質と異なる生理活性物質を放出可能に含有している上記(5)に記載の生体内留置用ステント。
【0009】
(7) 前記外面側ステント基体は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、前記内部側ステント基体は、前記外面側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記外面側ステント基体内にステント形態が重なるように配置され、前記内面側ステント基体は、前記内部側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記内部側ステント基体内にステント形態が重なるように配置されている上記(5)または(6)に記載の生体内留置用ステント。
(8) 前記第1および第2の樹脂製接着層は、実質的に前記生分解性ポリマーにより形成されており、前記第1および第2の樹脂製接着層は、前記生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものである上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(9) 前記第1および第2の樹脂製接着層は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、前記外面側ステント基体と前記内部側ステント基体との接着状態および前記内面側ステント基体と前記内部側ステント基体との接着状態を維持するものである上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0010】
(10) 前記内面側ステント基体は、内表面より前記第2の樹脂製接着層まで延びる多数の細孔を備えている上記(5)ないし(9)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(11) 前記内部側ステント基体は、外面側および内面側が金属により形成された金属表面層となっているとともに、内部が、樹脂製接着層と金属層とが交互に積層した多層構造となっている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(12) 前記外面側ステント基体は、表面より前記樹脂性接着層まで延びる多数の細孔を備えている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0011】
(13) 前記生理活性物質が、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド、カロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質からなる群から選択される少なくとも1つである上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(14) 前記第1の生理活性物質は、抗癌剤、免疫抑制剤、レチノイド、フラボノイド、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種のものであり、前記第2の生理活性物質は、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、カロチノイド、脂質改善薬、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質からなる群より選択される少なくとも1種のものである上記(6)ないし(12)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
(15) 前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該ステントの内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張するものである上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【0012】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(16) チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の前記バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張される上記(15)に記載のステントとを備える生体器官拡張器具。
【発明の効果】
【0013】
本発明の生体内留置用ステントは、金属材料により形成された外面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体と、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置し、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマー含有樹脂製接着層とを備え、前記樹脂製接着層は、生理活性物質を放出可能に含有している。
このため、本発明のステントは、内外面ともに金属表面を備え、樹脂製接着層は、留置される生体内面には接触しないものであり、さらに、生理活性物質を放出可能であり、かつ、生体内への留置後、ある程度の期間が経過することにより、ステント自体が薄肉化するため、生体内留置後における再狭窄率が極めて低いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の生体内留置用ステントについて以下の好適実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例の生体内留置用ステントの正面図である。図2は、図1の生体内留置用ステントの展開図である。図3は、図2のA−A線拡大断面図である。図4は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。図5は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。図6は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。図7は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。図8は、図2の部分拡大図である。図9は、図1に示すステントの製造時の展開図である。
【0015】
本発明の生体内留置用ステント1は、金属材料により形成された外面側ステント基体11と、金属材料により形成され、かつ、外面側ステント基体11内に位置する内面側ステント基体12と、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12間に位置し、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12とを接着する生分解性ポリマー含有樹脂性接着層13とを備える。そして、生分解性ポリマー含有樹脂製接着層13は、生理活性物質を放出可能に含有している。
そして、この実施例の生体内留置用ステント1では、外面側ステント基体11は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、内面側ステント基体12は、外面側ステント基体11のステント形態に対応した形態を備え、かつ、外面側ステント基体11内にステント形態が重なるように配置されている。
つまり、本発明のステント1は、外表面および内表面が金属層であり、その両者間が生分解性ポリマー含有接着性樹脂層である多層構造を持つものとなっている。
【0016】
そして、樹脂製接着層13は、実質的に前記生分解性ポリマーにより形成されており、前記樹脂製接着層は、前記生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものであることが好ましい。このようなものであれば、生体内への留置後、樹脂製接着層13の消失により、その消失分肉厚が薄くなり、再狭窄の要因となる可能性が少ないものとなる。
なお、樹脂製接着層13は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12との接着状態を維持するものであってもよい。この場合には、生分解性ポリマー含有接着性樹脂層は、接着性を有しかつ所定量の非生分解性成分を含有するものとなる。この場合においても、樹脂製接着層13中の生分解性ポリマーの消失により、その消失分肉厚が薄くなり、再狭窄の要因となる可能性を少なくする。
【0017】
また、外面側ステント基体11は、図4に示すステント1aのように、表面より樹脂性接着層13まで延びる多数の細孔11aを備えているものであってもよい。このようにすることにより、樹脂製接着層13に含有されている生理活性物質の放出がより良好なものとなる。
また、図5に示すステント1bのように、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12の周縁部は、近接する方向に湾曲するものであってもよい。このようにすることにより、ステント全体の保形性が高いものとなる。なお、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12の周縁部は、図5に示すように、隙間16が形成されるようにし、完全に密着しないものとすることが好ましい。
さらに、図6に示すステント1cのように、外面側ステント基体11は、表面より樹脂性接着層13まで延びる多数の細孔11aを備え、さらに、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12の周縁部は、近接する方向に湾曲するものであってもよい。このようにすることにより、ステント全体の保形性が高いものとなる。そして、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12の周縁部は、図6に示すように、完全に密着するものであってもよい。この場合、樹脂製接着層13に含有されている生理活性物質は、細孔11aのみより流出するものとなり、良好な徐放が可能となる。
【0018】
そして、上述した3層構造の実施例のステント1において、外面側ステント基体11の厚さとしては、0.03〜0.25mm程度が好適であり、好ましくは、0.05〜0.10mmである。内面側ステント基体12の厚さとしては、0.03〜0.25mm程度が好適であり、好ましくは、0.05〜0.10mmである。樹脂製接着層13の厚さとしては、0.001〜0.050mm程度が好適であり、好ましくは、0.005〜0.030mmである。
【0019】
さらに、本発明のステントとしては、図7に示すステント1dのように、金属材料により形成された外面側ステント基体11と、金属材料により形成され、かつ、外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体12と、金属材料により形成され、かつ、外面側ステント基体11と内面側ステント基体12間に位置する内部側ステント基体14と、外面側ステント基体11と内部側ステント基体間14に位置し、外面側ステント基体11と内部側ステント基体14とを接着する生分解性ポリマーを含有する第1の樹脂性接着層13と、内部側ステント基体14と内面側ステント基体12間に位置し、内部側ステント基体14と内面側ステント基体12とを接着する生分解性ポリマーを含有する第2の樹脂性接着層15とを備え、第1の樹脂製接着層13は、生理活性物質を放出可能に含有しているものであってもよい。
【0020】
そして、第1樹脂製接着層13および第2の樹脂製接着層15は、実質的に生分解性ポリマーにより形成されており、第1樹脂製接着層13および第2の樹脂製接着層15は、生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものであることが好ましい。
また、第1樹脂製接着層13および第2の樹脂製接着層15は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、外面側ステント基体11と内部側ステント基体14との接着状態および内面側ステント基体12と内部側ステント基体14との接着状態を維持するものであってもよい。この場合には、第1樹脂製接着層13および第2の樹脂製接着層15は、接着性を有しかつ所定量の非生分解性成分を含有するものとなる。
【0021】
この実施例のステント1dにおいて、外表面および内表面が金属層であり、その両者間が接着性樹脂層である多層構造を持つものとなっている。具体的には、3つの金属層と、それぞれの間に配置された2つの樹脂製接着層からなる5層構造となっている。なお、本発明のステントとしては、このような5層構造に限定されるものではなく、さらに多層構造となっているものであってもよい。具体的には、内部側ステント基体が、外面側および内面側が金属により形成された金属表面層となっているとともに、内部が、樹脂製接着層と金属層とが交互に積層した多層構造となっているものであってもよい。
この実施例のステント1dにおいて、外面側ステント基体11は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、内部側ステント基体14は、外面側ステント基体11のステント形態に対応した形態を備え、かつ、外面側ステント基体11内にステント形態が重なるように配置され、内面側ステント基体12は、内部側ステント基体14のステント形態に対応した形態を備え、かつ、内部側ステント基体14内にステント形態が重なるように配置されている。
【0022】
そして、このような多層構造のものにおいても、図7に示すステント1dのように、外面側ステント基体11は、表面より第1の樹脂性接着層13まで延びる多数の細孔11aを備えているものであってもよい。このようにすることにより、樹脂製接着層13に含有されている生理活性物質の放出がより良好なものとなる。
また、第2の樹脂製接着層15は、第1の樹脂製接着層13に含有された生理活性物質と異なる生理活性物質を放出可能に含有していることが好ましい。さらに、内面側ステント基体12は、図7に示すステント1dのように、表面より第2の樹脂性接着層15まで延びる多数の細孔12aを備えるものであってもよい。このようにすることにより、第2の樹脂製接着層15に含有されている生理活性物質の放出がより良好なものとなる。
【0023】
そして、第1の樹脂製接着層13および第2の樹脂製接着層15は、生理活性物質を徐々に放出するために配合された生分解性材料を含有するとともに、生分解性材料の分解後においても外面側ステント基体12と内部側ステント基体14と内面側ステント基体12との接着状態を維持するものであることが好ましい。
そして、上述した5層構造の実施例のステント1dにおいて、外面側ステント基体11の厚さとしては、0.03〜0.15mm程度が好適であり、好ましくは、0.05〜0.10mmである。内面側ステント基体12の厚さとしては、0.03〜0.15mm程度が好適であり、好ましくは、0.05〜0.10mmである。内部側ステント基体14の厚さとしては、0.03〜0.15mm程度が好適であり、好ましくは、0.05〜0.10mmである。第1の樹脂製接着層13の厚さとしては、0.001〜0.050mm程度が好適であり、好ましくは、0.005〜0.030mmである。第2の樹脂製接着層15の厚さとしては、0.001〜0.050mm程度が好適であり、好ましくは、0.005〜0.030mmである。
【0024】
そして、本発明のステントとしては、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なステント、いわゆるバルーン拡張型ステントであることが好ましい。
この場合におけるステント基体11,12,14を形成する金属材料としては、ある程度の生体適合性を有するものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、コバルトベース合金、コバルトクロム合金、チタン合金、ニオブ合金等が考えられる。またステント形状を作製した後に貴金属メッキ(金、プラチナ)をしてもよい。ステンレス鋼としては、最も耐腐食性のあるSUS316Lが好適である。
また、ステントの非拡張時の直径は、0.8〜1.8mm程度が好適であり、特に、0.9〜1.6mmがより好ましい。また、ステントの非拡張時の長さは、8〜40mm程度が好適である。また、一つの波線状環状体2の長さは、1.0〜2.5mm程度が好適である。
【0025】
樹脂製接着層13,15の形成材料としては、ゴム、エラストマー、可撓性樹脂が好ましい。ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ラテックスゴムなどが好ましい。エラストマーとしては、フッ素系樹脂エラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)などが好ましい。可撓性樹脂としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体)などが好ましい。特に、エラストマー、ゴムが好適である。ゴムとしては、シリコーンゴムが好適である。さらに、シリコーンゴムとしては、低温硬化型もしくは常温硬化型シリコーンゴムが好ましい。
【0026】
そして、上述したように、樹脂製接着層は、生理活性物質を徐々に放出するために配合された生分解性材料を含有する。なお、生分解性材料は、生分解性材料の分解後においても、樹脂製接着層は、ステント基体間の接着状態(ステント構造)を維持可能な程度含有される。樹脂製接着層形成材料中に含有される生分解性材料は、使用する接着層形成材および生分解性材料によっても相違するが、30〜50重量%程度が好ましい。
生分解性材料としては、生体内で酵素的、非酵素的に分解され、分解物が毒性を示さないものであれば特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸−ポリカプロラクトン共重合体、ポリオルソエステル、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリリンゴ酸、ポリα−アミノ酸、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ヘパラン硫酸、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ポリペプチド、キチン、キトサンなどが使用できる。
【0027】
生理活性物質としては、内膜肥厚を抑制する薬剤、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症剤、抗炎症剤、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイドおよびカロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、血管平滑筋増殖抑制薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロンおよび遺伝子工学により生成される上皮細胞などが使用される。そして、上記の薬剤等の2種以上の混合物を使用してもよい。
【0028】
抗癌剤としては、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、イリノテカン、ピラルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート等が好ましい。免疫抑制剤としては、例えば、シロリムス、タクロリムス、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、グスペリムス、ミゾリビン等が好ましい。抗生物質としては、例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン、ドキソルビシン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、エピルビシン、ペプロマイシン、ジノスタチンスチマラマー等が好ましい。抗リウマチ剤としては、例えば、メトトレキサート、チオリンゴ酸ナトリウム、ペニシラミン、ロベンザリット等が好ましい。抗血栓薬としては、例えば、ヘパリン、アスピリン、抗トロンビン製剤、チクロピジン、ヒルジン等が好ましい。HMG−CoA還元酵素阻害剤としては、例えば、セリバスタチン、セリバスタチンナトリウム、アトルバスタチン、ニスバスタチン、イタバスタチン、フルバスタチン、フルバスタチンナトリウム、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン等が好ましい。ACE阻害剤としては、例えば、キナプリル、ペリンドプリルエルブミン、トランドラプリル、シラザプリル、テモカプリル、デラプリル、マレイン酸エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル等が好ましい。カルシウム拮抗剤としては、例えば、ニフェジピン、ニルバジピン、ジルチアゼム、ベニジピン、ニソルジピン等が好ましい。抗高脂血症剤としては、例えば、プロブコールが好ましい。抗アレルギー剤としては、例えば、トラニラストが好ましい。レチノイドとしては、例えば、オールトランスレチノイン酸フラボノイドおよびカロチノイドとしては、例えば、カテキン類、特にエピガロカテキンガレート、アントシアニン、プロアントシアニジン、リコピン、β−カロチン等が好ましい。チロシンキナーゼ阻害剤としては、例えば、ゲニステイン、チルフォスチン、アーブスタチン等が好ましい。抗炎症剤としては、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のステロイドが好ましい。生体由来材料としては、例えば、EGF(epidermal growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)、PDGF(platelet derived growth factor)、bFGF(basic fibroblast growth factor)等が好ましい。
【0029】
そして、上述した実施例のステント1dのように、外表面側となる第1の接着性樹脂層に含有される生理活性物質としては、抗癌剤、免疫抑制剤、レチノイド、フラボノイド、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種などが好適である。
また、内面側となる第2の接着性樹脂層に含有される生理活性物質としては、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、カロチノイド、脂質改善薬、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質からなる群より選択される少なくとも1種などが好適である。
【0030】
また、本発明の金属製のステント基体は、接着性樹脂層との接着性を高めるために、接着性樹脂層と向かい合う面の全体もしくは一部が前処理されても良い。前処理としては、親和性の高い材料をプライマーとして表面に被覆する方法が好ましい。プライマー材料としては、種々のものが使用可能であるが、最も好ましいものは加水分解性基と有機官能基とを有するシランカップリング剤である。シランカップリング剤の加水分解性基(たとえばアルコキシ基)の分解により生成したシラノール基は金属製のステント 本体と共有結合等により結合され、シランカップリング剤の有機官能基(例えばエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、メタクリロキシ基)は、樹脂製接着層中のポリマーと化学結合により結合することができる。具体的なシランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤以外のプライマー材料としては、例えば有機チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、クロム系カップリング剤、有機リン酸系カップリング剤、ポリパラキシレン等の有機蒸着膜、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系のペーストレジン等が挙げられる。
【0031】
また、ステントとしては、挿入時に縮径可能であり、かつ、体内放出時に拡径(復元)するいわゆるセルフ拡張型ステントであってもよい。
この場合、金属製ステント基体の構成材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0032】
そして、本発明のステントは、例えば、以下のようにして製造することができる。
最初に所定の内径を有する金属管状体(具体的には、金属パイプ)とこの金属管状体の内径より若干小さい外径を有する金属管状体(具体的には、金属パイプ)を準備し、それら金属パイプよりステント構造体(線状体により形成されるフレーム形態)が同じでありかつ径のみが異なる2つのステント基体を作製する。これは、金属パイプより、ステント構造体となる部分以外を除去することにより作製できる。具体的には、金属パイプを、例えば、フォトファブリケーションと呼ばれるマスキングと化学薬品を使用したエッチング方法、型による放電加工法、切削加工(例えば、機械研磨、レーザー切削加工)などにより不要部分を除去することにより行われる。また、ステント構造体を作製した後に、化学研磨あるいは電解研磨を用いて、構造体のエッジを研磨することが好ましい。
【0033】
そして、上記のようにして作製された小径側のステント基体の表面に、生理活性物質を含有した(好ましくは、生分解性材料も含有する)接着性樹脂層形成材料を塗布し、接着性樹脂層形成材料の硬化前に、大径側のステント基体を被嵌し、圧着させることにより、製造することができる。そして、大径側のステント基体の形成素材としては、多孔性金属パイプを用いることにより、形成されるステントの外面側ステント基体を多孔性のものとすることができる。
【0034】
また、ステントの製造方法は、上記のものに限定されるものではなく、例えば、最初に所定の内径を有する金属管状体(具体的には、金属パイプ)とこの金属管状体の内径より若干小さい外径を有する金属管状体(具体的には、金属パイプ)を準備し、小径側の金属パイプの表面に、接着性樹脂層形成材料(好ましくは、生分解性材料を含有)を塗布し、接着性樹脂層形成材料の硬化前に、大径側の金属パイプを被嵌し、圧着させることにより、内外面が金属により構成された多層パイプを作製する。そして、多層パイプより、ステント構造体となる部分以外を除去する。ステント構造体となる部分以外を除去は、上述の方法により行うことができる。このようにして、作製されたステント構造物を生理活性物質を溶解した溶液中に浸漬し、生理活性物質を接着性樹脂層形成材料中に担持(具体的には、移行、吸着)させることにより、本発明のステントを製造することができる。なお、生理活性物質を溶解した溶液としては、接着性樹脂層形成材料を膨潤もしくは若干溶解するものが用いられる。なお、この場合には、大径側のステント基体の形成素材としては、多孔性金属パイプを用いることが好ましく、このようにすることにより、接着性樹脂層形成材料中への生理活性物質の担持量を多くすることができる。なお、上述したすべての製造方法において、金属製ステント構造体もしくは金属パイプは、接着性樹脂層との接着性を高めるために、上述したようなプライマー被覆を処理を行ってもよい。
【0035】
また、本発明のステントにおけるステントの形態(線状体により構成されるフレーム形態)としては、どのようなものであってもよい。
図1に示す実施例の生体内留置用ステント1では、波線状環状体2がステントの軸方向に隣り合うように複数配列され、隣り合う波線状環状体2が接続された形態を有する略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能なものとなっている。そして、波線状環状体2は、ステント1の拡張前および拡張後において、ステント1の中心軸と平行に伸びる平行直線状部21を備え、ステント1は、隣り合う波線状環状体2の平行直線状部21の端部同士を接続する接続部3を備えている。
この実施例のステント1は、略管状体に形成され、生体内への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向外方に広がる力が付与されたときに伸長可能なものであり、いわゆるバルーン拡張型ステントである。
【0036】
本発明のステント1は、図1および図2に示すように、複数の波線状環状体2を軸方向に隣り合うように配列するとともに、それぞれを接続した形態となっている。
ステント1を形成する波線状環状体2の数としては、図1、図2、図8および図9に示すものでは、14となっている。波線状環状体2の数としては、ステントの長さによって相違し、4〜50が好ましく、特に、10〜35が好ましい。
そして、各波線状環状体2は、ステント1の軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部25,27およびステント1の軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部26,28を有するとともに、環状に連続した無端の波線状体により構成されている。環状体2における一端側屈曲部25,27と他端側屈曲部26,28は、交互に形成されており、かつそれぞれの数は同じとなっている。
【0037】
そして、波線状環状体2は、図1、図2、図8および図9に示すように、平行直線状部21の一端と屈曲部25(25a)を介して接続し、かつ、少なくともステント1の拡張時にステント1の中心軸に対して所定角度斜めとなる第1の傾斜直線状部22と、第1の傾斜直線状部22の一端と屈曲部26を介して接続し、かつ、ステントの中心軸に対して所定角度斜めに伸びる傾斜線状部(この実施例では、傾斜曲線状部)23と、傾斜曲線状部23の一端と屈曲部27を介して接続し、かつ、少なくともステント1の拡張時にステント1の中心軸に対して所定角度斜めとなる第2の傾斜直線状部24の4つの線状部からなる変形M字線状部20が複数連続したものとなっている。そして、隣り合う変形M字線状部20は、第2の傾斜直線状部24の一端と平行直線状部21の他端を接続する屈曲部28(28a)により接続されることにより、無端の波線状環状体2を構成している。このため、ステントの拡張時における波線状環状体2の軸方向長のショートニングを抑制するとともに、波線状環状体2に十分な拡張保持力を付与する。
【0038】
また、この実施例のステント1では、一端側屈曲部25,27の頂点および他端側屈曲部26,28の頂点が、ステントの軸方向に対してほぼ直線状に並んだものとなっている。
そして、隣り合う波線状環状体2は、接続部3により接続されている。特に、この実施例のステント1では、隣り合う波線状環状体2の平行直線状部21の端部同士は、近接しかつ短い接続部3により接続されている。このため、隣り合う波線状環状体2間の距離が短いものとなり、隣り合う波線状環状体2間に起因する低拡張力部分の形成が極めて少ないものとなる。
【0039】
また、この実施例のステント1では、図1、図2、図8および図9に示すように、接続部3で接続された2つの平行直線状部21は、ほぼ直線状となっている。このため、ステントの拡張時における隣り合う波線状環状体間におけるステントのショートニングを防止できる。そして、このステント1では、隣り合う波線状環状体2を接続する複数の接続部3を備えている。このため、隣り合う波線状環状体が不必要に離間することがなく、ステント全体として十分な拡張力を発揮する。
そして、この実施例では、軸方向に連続する2つを越える(言い換えれば、3以上)平行直線状部21が、接続部により連結され一体化した部分を持たないものとなっている。つまり、接続部3により2本のみの平行直線状部21が接続された状態となっており、3本の平行直線状部21が一体化した部分を持たないものとなっている。このため、一つの波線状環状体が血管の変形に追従するように変化した時の負荷が、隣り合わない波線状環状体にまで直接的(もしくは直線的)に伝達されることを抑制でき、波線状環状体個々の独立した拡張機能を発揮する。
【0040】
また、ステント1は、隣り合う波線状環状体2を接続する複数の接続部3を備えている。このため、隣り合う波線状環状体が不必要に離間することがなく、ステント全体として十分な拡張力を発揮する。なお、接続部3は、隣り合う波線状環状体間に一つのみ設けてもよい。また、接続部3のステント1の軸方向長さとしては、1.0mm以下程度が好ましく、特に、0.1〜0.4mmが好ましい。
そして、このステント1では、隣り合う波線状環状体2を接続する2つの接続部3を備えており、2つの接続部は、向かい合う位置に設けられている。また、接続部3は、ステント1の軸方向に連続しないように配置されている。具体的には、この実施例のステント1では、図1、図2、図8および図9に示すように、2つの接続部3は向かい合う位置に設けられており、この接続部3と軸方向に隣り合う2つの接続部3は、向かい合うとともに、上記の接続部とステント1の中心軸に対して約90°ずれたものとなっている。
【0041】
ステント1は、図1および図2に示した状態より外径の大きい状態に形成した後、拡張可能なバルーンを有する器具のバルーン上に縮径させることにより装着される。そして、ステント1は、バルーンを拡張することにより、拡張する。
また、ステントの非拡張時の直径は、0.8〜1.8mm程度が好適であり、特に、0.9〜1.6mmがより好ましい。また、ステントの非拡張時の長さは、8〜40mm程度が好適である。また、一つの波線状環状体2の長さは、1.0〜2.5mm程度が好適である。
【0042】
なお、本発明のステントの形態(線状体により構成されるフレーム形態)としては、上述したものに限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。例えば、図10に示すように、波線状環状体ではなく、半径方向に広がる力が付加された時に伸張する多数の線状屈曲部と開口を有する複数のリング状線状体43を環状に配置したものであってもよい。
この実施例のステント40は、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加された時に拡張可能なステントである。ステント40は、半径方向に広がる力が付加された時に伸張する多数の線状屈曲部と開口を有する複数のリング状線状体43を環状となるように複数の接続部46により接続した環状ユニット44がステントの軸方向に複数配列され、かつ、隣り合う環状ユニット44を接続部にて連結するとともにステントの軸方向に連続しない連結部45を備え、さらに、連結部は、隣り合う環状ユニット間に複数かつ向かい合う位置もしくはステントの中心軸に対してほぼ等角度配置となるように設けられている。
【0043】
ステント40は、展開図である図10に示すように、ステント40の軸方向に長くかつ線状屈曲部41aと中央部開口を有するリング状線状体43が、ステントの中心軸に対してほぼ等角度配置にて略円周上に配列され、かつ、リング状線状体43の円周方向の隣接部(側部)間が接続部46にて接続された環状ユニット44からなり、かつ、複数の環状ユニット44がステント40の軸方向に並んでいる。さらに、一つの環状ユニット44の接続部46と隣り合う環状ユニット44の接続部46とが連結部45により少なくとも2カ所連結されている。ステント40は、見方を変えれば、多数の環状ユニット44が、連結部45により連結したことにより構成された管状体である。
【0044】
環状ユニット44は、この実施例では、ほぼ等角度間隔に配置された6つのリング状線状体43を有する。一つのリング状線状体43は、ステント40の軸方向に長い略菱形状に形成され、かつ、中央がリング状線状体43の形状に対応して、略菱形に開口し、ステントの軸方向の両端部が線状屈曲部41aとなっている。このように、各リング状線状体43は、個々独立した閉鎖系をなす形状、言い換えれば、リング状線状体43は、ステント40の側面にて開口するリング状要素である。リング状線状体43がこのような形状を有するため、強い拡張保持力を発揮する。また、各リング状線状体43は、ステント40の中心軸より全体がほぼ等距離となるように、円周方向に湾曲している。
【0045】
リング状線状体43は、ステント40の軸方向の側部の中心と半径方向に隣り合う他のリング状線状体43の軸方向の側部の中心とが短い接続部46により接続されている。つまり、接続部46は、各リング状線状体43を円周方向にて接続している。接続部46は、ステント40が拡張されても実質的に変化しないので、拡張する時の力が各リング状線状体43の中心にかかりやすく、各リング状線状体43は均一に拡張(変形)可能である。
環状ユニット44の接続部46と隣り合う環状ユニット44の接続部46とは、比較的長く(接続部に比べて長く)、ステント40の軸方向に平行に形成された連結部45により連結されている。具体的には、環状ユニット44と隣り合う環状ユニット44とは、接続部46間を連結する連結部45により連結されている。また、ステント40の両端に位置するリング状線状体43の外側部分43bは、略半楕円状となっている。
【0046】
次に、本発明の血管拡張器具を図面に示す実施例を用いて説明する。
図11は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の正面図である。図12は、図11に示した生体器官拡張器具の先端部の拡大部分断面図である。図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
本発明の血管拡張器具100は、チューブ状のシャフト本体部102と、シャフト本体部102の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーン103と、折り畳まれた状態のバルーン103を被包するように装着され、かつバルーン103の拡張により拡張されるステント101とを備えるものである。
【0047】
ステント101としては、上述したステント1のようなものが使用される。なお、ここで使用されるステントは、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能ないわゆるバルーン拡張型ステントが用いられる。ステントとしては、バルーン103に装着された状態におけるステントの線状体部分が占める面積は、ステントの空隙部を含む外周面の面積の60%〜80%であることが好ましい。さらに、本発明の血管拡張器具100では、シャフト本体部102は、一端がバルーン103内と連通するバルーン拡張用ルーメンを備える。生体器官拡張器具100は、ステントの中央部となる位置のシャフト本体部の外面に固定されたX線造影性部材もしくはステントの中央部分の所定長の両端となる位置のシャフト本体部の外面に固定された2つのX線造影性部材を備えている。
【0048】
この実施例の生体器官拡張器具100では、図11に示すように、シャフト本体部102は、シャフト本体部102の先端にて一端が開口し、シャフト本体部102の後端部にて他端が開口するガイドワイヤールーメン115を備えている。
この生体器官拡張器具100は、シャフト本体部102と、シャフト本体部102の先端部に固定されたステント拡張用バルーン103と、このバルーン103上に装着されたステント101とを備える。シャフト本体部102は、内管112と外管113と分岐ハブ110とを備えている。
【0049】
内管112は、図11に示すように、内部にガイドワイヤーを挿通するためのガイドワイヤールーメン115を備えるチューブ体である。内管112としては、長さは、100〜2500mm、より好ましくは、250〜2000mm、外径が、0.1〜1.0mm、より好ましくは、0.3〜0.7mm、肉厚10〜250μm、より好ましくは、20〜100μmのものである。そして、内管112は、外管113の内部に挿通され、その先端部が外管113より突出している。この内管112の外面と外管113の内面によりバルーン拡張用ルーメン116が形成されており、十分な容積を有している。外管113は、内部に内管112を挿通し、先端が内管112の先端よりやや後退した部分に位置するチューブ体である。
外管113としては、長さは、100〜2500mm、より好ましくは、250〜2000mm、外径が、0.5〜1.5mm、より好ましくは、0.7〜1.1mm、肉厚25〜200μm、より好ましくは、50〜100μmのものである。
【0050】
この実施例の生体器官拡張器具100では、外管113は、先端側外管113aと本体側外管113bにより形成され、両者が接合されている。そして、先端側外管113aは、本体側外管113bとの接合部より先端側の部分において、テーパー状に縮径し、このテーパー部より先端側が細径となっている。
先端側外管113aの細径部での外径は、0.50〜1.5mm、好ましくは0.60〜1.1mmである。また、先端側外管113aの基端部および本体側外管113bの外径は、0.75〜1.5mm、好ましくは0.9〜1.1mmである。
そして、バルーン103は、先端側接合部103aおよび後端側接合部103bを有し、先端側接合部103aが内管112の先端より若干後端側の位置に固定され、後端側接合部103bが外管の先端に固定されている。また、バルーン103は、基端部付近にてバルーン拡張用ルーメン116と連通している。
内管112および外管113の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用でき、好ましくは上記の熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、ポリオレフィンである。
【0051】
バルーン103は、図12に示すように、折り畳み可能なものであり、拡張させない状態では、内管112の外周に折り畳まれた状態となることができるものである。バルーン103は、図13に示すように、装着されるステント101を拡張できるようにほぼ同一径の筒状部分(好ましくは、円筒部分)となった拡張可能部を有している。略円筒部分は、完全な円筒でなくてもよく、多角柱状のものであってもよい。そして、バルーン103は、上述のように、先端側接合部103aが内管112にまた後端側接合部103bが外管113の先端に接着剤または熱融着などにより液密に固着されている。また、このバルーン103では、拡張可能部と接合部との間がテーパー状に形成されている。
バルーン103は、バルーン103の内面と内管112の外面との間に拡張空間103cを形成する。この拡張空間103cは、後端部ではその全周において拡張用ルーメン116と連通している。このように、バルーン103の後端は、比較的大きい容積を有する拡張用ルーメンと連通しているので、拡張用ルーメン116よりバルーン内への拡張用流体の注入が確実である。
【0052】
バルーン103の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアリレーンサルファイド(例えば、ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。特に、延伸可能な材料であることが好ましく、バルーン103は、高い強度および拡張力を有する二軸延伸されたものが好ましい。
バルーン103の大きさとしては、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部)の外径が、2〜4mm、好ましくは2.5〜3.5mmであり、長さが10〜50mm、好ましくは20〜40mmである。また、先端側接合部103aの外径が、0.9〜1.5mm、好ましくは1〜1.3mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは1〜1.3mmである。また、後端側接合部103bの外径が、1〜1.6mm、好ましくは1.1〜1.5mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは、2〜4mmである。
【0053】
そして、この血管拡張器具100は、図12に示すように、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部)の両端となる位置のシャフト本体部の外面に固定された2つのX線造影性部材117、118を備えている。なお、ステント101の中央部分の所定長の両端となる位置のシャフト本体部102(この実施例では、内管112)の外面に固定された2つのX線造影性部材を備えるものとしてもよい。さらに、ステントの中央部となる位置のシャフト本体部の外面に固定された単独のX線造影性部材を設けるものとしてもよい。
X線造影性部材117、118は、所定の長さを有するリング状のもの、もしくは線状体をコイル状に巻き付けたものなどが好適であり、形成材料は、例えば、金、白金、タングステンあるいはそれらの合金、あるいは銀−パラジウム合金等が好適である。
【0054】
そして、バルーン103を被包するようにステント101が装着されている。ステントは、ステント拡張時より小径かつ折り畳まれたバルーンの外径より大きい内径の金属パイプを加工することにより作成される。そして、作成されたステント内にバルーンを挿入し、ステントの外面に対して均一な力を内側に向けて与え縮径させることにより製品状態のステントが形成される。つまり、上記のステント101は、バルーンへの圧縮装着時により完成する。
【0055】
内管112と外管113との間(バルーン拡張用ルーメン116内)には、線状の剛性付与体(図示せず)が挿入されていてもよい。剛性付与体は、生体器官拡張器具100の可撓性をあまり低下させることなく、屈曲部位での生体器官拡張器具100の本体部102の極度の折れ曲がりを防止するとともに、生体器官拡張器具100の先端部の押し込みを容易にする。剛性付与体の先端部は、他の部分より研磨などの方法により細径となっていることが好ましい。また、剛性付与体は、細径部分の先端が、本体部外管113の先端部付近まで延びていることが好ましい。剛性付与体としては、金属線であることが好ましく、線径0.05〜1.50mm、好ましくは0.10〜1.00mmのステンレス鋼等の弾性金属、超弾性合金などであり、特に好ましくは、ばね用高張力ステンレス鋼、超弾性合金線である。
【0056】
この実施例の生体器官拡張器具100では、図11に示すように、基端に分岐ハブ110が固定されている。分岐ハブ110は、ガイドワイヤールーメン115と連通しガイドワイヤーポートを形成するガイドワイヤー導入口109を有し、内管112に固着された内管ハブと、バルーン拡張用ルーメン116と連通しインジェクションポート111を有し、外管113に固着された外管ハブとからなっている。そして、外管ハブと内管ハブとは、固着されている。この分岐ハブ110の形成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
なお、生体器官拡張器具の構造は、上記のようなものに限定されるものではなく、生体器官拡張器具の中間部分にガイドワイヤールーメンと連通するガイドワイヤー挿入口を有するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の一実施例の生体内留置用ステントの正面図である。
【図2】図2は、図1の生体内留置用ステントの展開図である。
【図3】図3は、図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの線状部の拡大断面図である。
【図8】図8は、図2の部分拡大図である。
【図9】図9は、図1に示すステントの製造時の展開図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施例の生体内留置用ステントの製造時の展開図である。
【図11】図11は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の正面図である。
【図12】図12は、図11に示した生体器官拡張器具の先端部の拡大部分断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の作用を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1、40 生体内留置用ステント
11 外面側ステント基体
12 内面側ステント基体
13 樹脂製接着層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料により形成された外面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体と、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置し、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマー含有樹脂製接着層とを備え、前記樹脂製接着層は、生理活性物質を放出可能に含有していることを特徴とする生体内留置用ステント。
【請求項2】
前記外面側ステント基体は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、前記内面側ステント基体は、前記外面側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記外面側ステント基体内にステント形態が重なるように配置されている請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項3】
前記樹脂製接着層は、実質的に前記生分解性ポリマーにより形成されており、前記樹脂製接着層は、前記生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものである請求項1または2のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項4】
前記樹脂製接着層は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体との接着状態を維持するものである請求項1または2のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項5】
金属材料により形成された外面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置する内部側ステント基体と、前記外面側ステント基体と前記内部側ステント基体間に位置し、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマーを含有する第1の樹脂性接着層と、前記内部側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置し、前記内部側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマーを含有する第2の樹脂性接着層とを備え、前記第1の樹脂製接着層は、生理活性物質を放出可能に含有していることを特徴とする生体内留置用ステント。
【請求項6】
前記第2の樹脂製接着層は、前記第1の樹脂製接着層に含有された生理活性物質と異なる生理活性物質を放出可能に含有している請求項5に記載の生体内留置用ステント。
【請求項7】
前記外面側ステント基体は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、前記内部側ステント基体は、前記外面側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記外面側ステント基体内にステント形態が重なるように配置され、前記内面側ステント基体は、前記内部側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記内部側ステント基体内にステント形態が重なるように配置されている請求項5または6に記載の生体内留置用ステント。
【請求項8】
前記第1および第2の樹脂製接着層は、実質的に前記生分解性ポリマーにより形成されており、前記第1および第2の樹脂製接着層は、前記生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものである請求項5ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項9】
前記第1および第2の樹脂製接着層は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、前記外面側ステント基体と前記内部側ステント基体との接着状態および前記内面側ステント基体と前記内部側ステント基体との接着状態を維持するものである請求項5ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項10】
前記内面側ステント基体は、内表面より前記第2の樹脂製接着層まで延びる多数の細孔を備えている請求項5ないし9のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項11】
前記内部側ステント基体は、外面側および内面側が金属により形成された金属表面層となっているとともに、内部が、樹脂製接着層と金属層とが交互に積層した多層構造となっている請求項1ないし10のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項12】
前記外面側ステント基体は、表面より前記樹脂性接着層まで延びる多数の細孔を備えている請求項1ないし11のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項13】
前記生理活性物質が、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド、カロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1ないし12のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項14】
前記第1の生理活性物質は、抗癌剤、免疫抑制剤、レチノイド、フラボノイド、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種のものであり、前記第2の生理活性物質は、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、カロチノイド、脂質改善薬、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質からなる群より選択される少なくとも1種のものである請求項6ないし12のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項15】
前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該ステントの内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張するものである請求項1ないし14のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項16】
チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の前記バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張される請求項15に記載のステントとを備えることを特徴とする生体器官拡張器具。
【請求項1】
金属材料により形成された外面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体と、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置し、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマー含有樹脂製接着層とを備え、前記樹脂製接着層は、生理活性物質を放出可能に含有していることを特徴とする生体内留置用ステント。
【請求項2】
前記外面側ステント基体は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、前記内面側ステント基体は、前記外面側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記外面側ステント基体内にステント形態が重なるように配置されている請求項1に記載の生体内留置用ステント。
【請求項3】
前記樹脂製接着層は、実質的に前記生分解性ポリマーにより形成されており、前記樹脂製接着層は、前記生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものである請求項1または2のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項4】
前記樹脂製接着層は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体との接着状態を維持するものである請求項1または2のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項5】
金属材料により形成された外面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体内に位置する内面側ステント基体と、金属材料により形成され、かつ、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置する内部側ステント基体と、前記外面側ステント基体と前記内部側ステント基体間に位置し、前記外面側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマーを含有する第1の樹脂性接着層と、前記内部側ステント基体と前記内面側ステント基体間に位置し、前記内部側ステント基体と前記内面側ステント基体とを接着する生分解性ポリマーを含有する第2の樹脂性接着層とを備え、前記第1の樹脂製接着層は、生理活性物質を放出可能に含有していることを特徴とする生体内留置用ステント。
【請求項6】
前記第2の樹脂製接着層は、前記第1の樹脂製接着層に含有された生理活性物質と異なる生理活性物質を放出可能に含有している請求項5に記載の生体内留置用ステント。
【請求項7】
前記外面側ステント基体は、線状体により構成された所定のステント形態を備え、前記内部側ステント基体は、前記外面側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記外面側ステント基体内にステント形態が重なるように配置され、前記内面側ステント基体は、前記内部側ステント基体のステント形態に対応した形態を備え、かつ、前記内部側ステント基体内にステント形態が重なるように配置されている請求項5または6に記載の生体内留置用ステント。
【請求項8】
前記第1および第2の樹脂製接着層は、実質的に前記生分解性ポリマーにより形成されており、前記第1および第2の樹脂製接着層は、前記生分解性ポリマーの分解後において、実質的に消失するものである請求項5ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項9】
前記第1および第2の樹脂製接着層は、含有する生分解性ポリマーの分解後においても、前記外面側ステント基体と前記内部側ステント基体との接着状態および前記内面側ステント基体と前記内部側ステント基体との接着状態を維持するものである請求項5ないし7のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項10】
前記内面側ステント基体は、内表面より前記第2の樹脂製接着層まで延びる多数の細孔を備えている請求項5ないし9のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項11】
前記内部側ステント基体は、外面側および内面側が金属により形成された金属表面層となっているとともに、内部が、樹脂製接着層と金属層とが交互に積層した多層構造となっている請求項1ないし10のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項12】
前記外面側ステント基体は、表面より前記樹脂性接着層まで延びる多数の細孔を備えている請求項1ないし11のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項13】
前記生理活性物質が、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド、カロチノイド、脂質改善薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1ないし12のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項14】
前記第1の生理活性物質は、抗癌剤、免疫抑制剤、レチノイド、フラボノイド、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種のものであり、前記第2の生理活性物質は、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、カロチノイド、脂質改善薬、抗血小板薬、抗炎症薬、生体由来材料、インターフェロン、およびNO産生促進物質からなる群より選択される少なくとも1種のものである請求項6ないし12のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項15】
前記ステントは、略管状体に形成され、生体内管腔への挿入のための直径を有し、該ステントの内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張するものである請求項1ないし14のいずれかに記載の生体内留置用ステント。
【請求項16】
チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の前記バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張される請求項15に記載のステントとを備えることを特徴とする生体器官拡張器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−82353(P2009−82353A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254731(P2007−254731)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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