説明

生体液のウイルス不活性化に用いる使い捨てバッグのセット

【課題】血漿あるいは血漿分画製剤のような小プールの生体液のウイルス不活性化を可能にする、簡便かつ費用効率の高い手段を提供すること。更にタンパク質の変性及び失活を回避すること。
【解決手段】使い捨てバッグのセットのシステムであり、少なくとも一つのウイルス不活性化バッグ1で一つの内部区画4一つの入口部5及び一つの出口部6を有し、両方は前記内部区画4と連結され、前記バッグ1は、前記内部区画4が卵形の長手断面を有し、少なくとも一つの漏斗型バッグ9及び/又は一つのクロマトカラムバッグ15を有し、前記それぞれのバッグが互いに連結可能であり、並びに前記使い捨てバッグのセットのシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス不活性化バッグを有する使い捨てバッグのセットのシステム、及び前記使い捨てバッグのセットを、治療用タンパク質の更なる精製並びに製造のために、必要に応じて他のバッグ及び装置と併用する方法に関する。
【0002】
本発明は、無菌状態での単一ユニット又は小プールの形におけるヒト又は動物の血漿、血清及び血漿分画製剤のような生体液のウイルス不活性化に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト及び動物の血漿並びに血漿分画製剤は、近代医学において重要な役割を演じている。それらは主に出血症状、感染症状の治療、又はある臨床的状況における、手術前の患者の感染予防又は前処理のための輸血の目的に使用される。
【0004】
ヒト又は動物の血漿又は血漿分画製剤の使用における主要な欠点として、ヒトの免疫不全症ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及び西ナイルウイルスのような血液感染性ウイルスの伝播の危険性の存在が挙げられる。それゆえ、血漿及び/又は血漿分画製剤のウイルス不活性化に関して、様々な方法が開発されている。例えば、メチレンブルーで処理し、次いで可視光線で照射する処理は、新たに開発された血漿のウイルス不活性化法であって、個別の献血に適用することができる。
【0005】
ただしこの方法は、特にVIII因子、フィブリノーゲン及びフォンビルブランド因子(VWF)のタンパク質活性のある程度の損失を引き起こし、また、より高用量のメチレンブルーによりタンパク質の変性を生じさせることがある。更にメチレンブルーの突然変異誘起性についての問題も提起されている。
【0006】
特許文献1及び特許文献2は、有機溶媒/界面活性剤の組合せ、又は溶媒の単独使用により、血漿及び血漿製剤に含まれ又はそれらに添加された肝炎ウイルス又は他のエンベロープを有するウイルスの感染性を数桁の規模で低下させる技術について記載している。
【0007】
特許文献3は、無害の天然オイル又は合成トリグリセリドへの分配によって血漿及び血漿製剤から有機溶媒/界面活性剤の組合せ、又は溶媒単独を除去する方法を開示している。
【0008】
特許文献4は、血漿及び血漿製剤から緩和な条件下、すなわち、本来の濃度のタンパク質、塩類及び他の生理学的構成成分の存在下での、疎水性クロマトグラフィーによる溶媒/界面活性剤の組合せを除去する方法を記載している。
【0009】
試薬の濃度、温度及び接触時間の適当な条件下での、溶媒/界面活性剤の組合せ又は溶媒単独処理によって、脂質に結合したエンベロープタンパク質を有するウイルスは効果的に分解することが可能で、なおかつデリケートな血漿タンパク質の高次構造及び生理活性に対する影響は無視できる程小さい。
【0010】
しかしながら、溶媒/界面活性剤、又は溶媒単独処理によるヒト血漿の前記ウイルス不活性化は、常に多数の献血に由来する大きなプール(100から500リットル以上)の処理が関わり、大規模で高価な医薬品製造施設が必要であった。更に、前記の溶媒/界面活性剤、又は溶媒単独処理は、現在知られている血漿感染性ウイルスであるパルボウイルスB19又はA型肝炎ウイルス(HAV)のようなエンベロープを持たないウイルスに対しては無効である。それゆえ、血漿プールの献血の一つでもエンベロープを持たないウイルスで汚染されているならば、そのプール全体が汚染されることになる。
【0011】
更に、解明されてはいないが、大きなプールの血漿に適用されるような工業的な溶媒/界面活性剤処理は、恐らくは大規模で行われる苛酷な工業的処理工程のため、プロテアーゼ阻害剤、プロテインS及びα2アンチプラスミンのような抗血栓性/抗凝血性タンパク質の喪失並びにフォンビルブランド因子の高分子多量体の減少を引き起こすことが知られている。
【特許文献1】米国特許第4,481,189号明細書
【特許文献2】米国特許第4,540,573号明細書
【特許文献3】米国特許第4,789,545号明細書
【特許文献4】米国特許第5,094,960号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題の一つは、血漿又は血漿分画製剤のような小プールの生体液のウイルス不活性化を可能にする、簡便で使い易く、かつ費用効率の高い手段を提供することにある。本発明の更なる課題は、タンパク質の変性並びにタンパク質の活性の消失を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、本発明者らは鋭意研究の結果、本発明の課題が、内部区画、入口部及び出口部からなり、その後二者とも前記の内部区画に連結されている、少なくとも一つのウイルス不活性化バッグを含む、使い捨てバッグのセットによって解決され得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち前記バッグの形状は、前記の内部区画が卵形の長手断面を持つことを特徴としており、必要に応じてこのバッグは一個又は数個の漏斗型バッグ、及び/又は種々のタンパク質吸収バッグ、及び/又は種々のタンパク質処理バッグ、及び/又は種々のクロマトグラフィー吸収用のバッグ、カラム又は装置のセットのような他の処理装置に連結することが可能であり、前記のそれぞれのバッグ又は処理システムは互いに連結することが可能であり、処理段階の間に無菌性を維持してタンパク質の喪失を引き起こす細菌濾過工程の必要性を「低減し」又は「排除する」ことができる。
【0014】
ウイルス不活性化バッグの前記卵形の長手断面は、楕円形であることが望ましい。
【0015】
前記楕円形の長手断面は、水平方向の第一軸a及び垂直方向の第二軸bを持ち、a/bの比が1より大きいのが望ましい。なお、水平及び垂直という用語は、出口部が垂直下方に向けられて使用されている場合の、前記バッグの位置関係に関して使用される。前記の軸aは水平の横断面に相当し、前記の軸bは垂直の横断面に相当する。
【0016】
前記内部区画の卵形の、望ましくは楕円形の長手断面は、何ら角を持たず、また生体液を幾分引き止めてそれがウイルス不活性化剤と徹底的に混合されることを回避できるという利点がある。
【0017】
前記ウイルス不活性化バッグは、治療上容認し得る柔軟な物質から作られている。柔軟な物質とは、例えばバッグの充填と振動による圧力又は応力を受けた場合に変形し得る物質のことを指す。前記物質は、5℃から60℃の範囲の、より望ましくは、溶媒/界面活性剤の併用又は溶媒単独によるウイルス不活性化処理が通常行われる20℃から37℃の範囲の温度において、その柔軟性を維持するのが望ましい。
【0018】
適当な物質とは、血液及び血漿製剤並びにそれらの誘導体との接触に適切な物質、例えば、血液及び血漿産業で使用されるような通常の医療/医薬品グレードのポリ塩化ビニル(PVC)である。
【0019】
前記ウイルス不活性化バッグは、治療上容認し得る柔軟な物質の二枚の積層シートから作られていることが望ましく、前記二枚のシートはそれらの周辺部で溶接され、少なくとも2個の入口部としての開口と1個の出口部としての開口をそれぞれ有する卵形の内部区画を形成する。前記溶接は、特に前記バッグに生体液を充填して振動する際に生じる圧力及び応力に耐えうるものでなければならない。前記シートを例えば超音波シール又は高周波(高エネルギー)シールによって溶接することにより、前記内部区画を化学製品による汚染から回避するのが望ましい。
【0020】
前記ウイルス不活性化バッグは、出口部の近傍に一つの少なくとも半透明の部分を有するのが望ましい。特にバッグ全体が半透明であることが望ましい。
【0021】
ある一つの実施形態において、前記ウイルス不活性化バッグは、バッグを垂直に懸垂する手段を備えており、前記出口部は下方を向いている。バッグを懸垂する前記手段は、バッグの上部周縁領域に設けられ、バッグが変形せずに懸垂又は横たえられるものであるのが望ましい。また、(例えば、温度制御の下、緩和な振動によるウイルス不活性化工程を行うために)バッグを水平に置くための手段を設けることもできる。
【0022】
前記内部区画の容積は処理すべき生体液の量に左右される。前記内部区画の容積は、ウイルスを不活性化すべき血漿又は血漿分画製剤又は出発プールとして使用される血漿単位数により、50mlから20リットルの範囲、望ましくは50mlから5,000ml、より望ましくは100mlから3,000mlの範囲、更に望ましくは200mlから2,000mlの範囲である。
【0023】
前記入口部及び出口部は、それぞれウイルス不活性化バッグの反対側に位置するように配置されることが望ましい。
【0024】
一つの望ましい実施形態において、前記入口部は二つのポート、すなわち一つ目は生体液移送用ポートであり二つ目は処理化合物添加用ポート、からなっている。処理化合物とはウイルス不活性化の際に使用される何らかの化学物質のことである。都合のよいことに、第一のポートは、少なくとも一個の最新式のバッグスパイク又はルアーロック、例えば1個又は2個又は3個のバッグスパイク又はルアーロック、を備えることにより、生体液の貯蔵又は収集バッグからウイルス不活性化バッグ内への容易な移送を可能にしている。
【0025】
前記出口部は、ウイルス不活性化バッグからもう一つの容器、例えば使い捨ての漏斗型バッグへの直接又はフレキシブルチューブを介しての移送を可能にする。
【0026】
ウイルス不活性化剤の除去に使用される前記の使い捨ての漏斗型バッグは、内部区画、入口部及び出口部からなり、後二者は前記内部区画に連結されており、前記内部区画は漏斗型の下部を有し、これが出口部に符合し、また前記内部区画は分離媒体を含むことを特徴とする。
【0027】
漏斗型バッグの内部区画は、実質的には三角形の下部を有する長手断面を有し、前記三角形は前記内部区画の長手断面の下方に向けて窄めさせることによって形成することが望ましい。前記の下方収束は実質的に線状であって、その角αは15度から170度、望ましくは30度から150度、なお更に望ましくは50度から130度、例えば120度の角度である。前記角αは漏斗型バッグの出口部に符合する。
【0028】
前記三角形部分の高さは、角αを含む頂点と漏斗型バッグの入口部の下端との間の全高の、10から100%、望ましくは15から50%、更により望ましくは20から40%、例えば25%であることが望ましい。
【0029】
漏斗形状の前記内部区画の下部は、例えば上層の油相と生体液を含む下相との間の最適の相分離という利点、並びに内容物の規則正しくかつ一定の排出及び十分に制御された、恐らくは機械を利用した生体液画分(下層)の油相(頂層)からの分離を可能にするという利点を有する。
【0030】
前記漏斗型バッグは、治療上許容されかつ柔軟な物質から作られる。柔軟な物質とは、例えばバッグの充填と振動による圧力又は応力を受けた場合に変形し得る物質のことである。前記物質は、5℃から60℃の範囲の、より詳しくは、熱安定剤の非存在下のタンパク質溶液の安定性に最適の温度である20から37℃の範囲の温度において、その柔軟性を維持するのが望ましい。
【0031】
適切な物質は、例えば医療用/医薬用の通常のポリ塩化ビニル(PVC)である。
【0032】
前記漏斗型バッグは、治療上許容されかつ柔軟な物質の二枚のシートから作製され、これらのシートは互いに緊密に重ね合わされ、それらの周辺で互いに溶接され、それぞれ入口部及び出口部としての2個の開口を含む区画が形成される。前記溶接は、特に前記バッグを生体液によって充填して振動する際に生じる圧力及び応力に耐えなければならない。これらのシートは互いに超音波シールによって溶接することにより、化学物質による前記区画の汚染を回避することが望ましい。
【0033】
前記漏斗型バッグは前記出口部の近傍に、少なくとも半透明な部分を含むのが望ましい。また、バッグ全体が半透明であることが望ましい。
【0034】
ある一つの実施形態において、前記漏斗型バッグは、バッグを垂直に懸垂する手段を備えており、前記出口部が下方に向いている。バッグを懸垂する前記手段は、バッグの上部周辺部に設けられているため、バッグを変形させずに懸垂することができる。
【0035】
前記内部区画の容積は、本質的に生体液を含む処理溶液の容積に左右される。前記内部区画の容積は、前記ウイルス不活性化バッグの容積よりも10%大きく、ウイルス不活性化の対象となる血漿又は血漿分画製剤又は出発プールとして使用される血漿単位数により55mlから22リットルの範囲、望ましくは55mlから5,500mlの範囲、より望ましくは110mから3,300mlの範囲、なおより望ましくは220mlから2,200mlの範囲である。
【0036】
前記入口部及び出口部それぞれは、前記漏斗型バッグの反対側に位置するように配置されることが望ましい。前記入口部は最新式の血漿バッグスパイクからなり、混合物を抽出バッグ内に容易に移送可能にできるのが望ましい。この目的のために、ウイルス不活性化バッグの出口部は、前記スパイクで穿刺され、前記混合物は重力によって抽出バッグ内に移送される。
【0037】
前記ウイルス不活性化バッグの出口部及びその下流側に位置する漏斗型バッグの入口部は、チューブによって連結され、かつ破壊可能なバルブとクランプの両者で制御されているのが望ましい。
【0038】
前記漏斗型バッグの出口部は、シールされていることが望ましい。
【0039】
前記漏斗型バッグは、無菌の医薬グレードのオイルを包含しうるように作製され、オイル抽出及びそれに続く相分離を行う。ある一つの実施形態において、前記オイルは、オイル抽出に先立ち、漏斗型バッグ内で、例えば高圧滅菌によって無菌化される。
【0040】
前記医薬グレードのオイルには、例えば植物又は動物から抽出された天然由来のオイル又は同様の構造を持つ合成化合物が使用可能である。前記天然由来のオイルとしては、ひまし油(又ヒマ油としても知られている)、大豆油、ひまわり油、綿実油が適当なものとして挙げられる。望ましい合成化合物としては、合成トリグリセリドが挙げられる。適当な前記合成トリグリセリドの例としては、トリオレイン、トリステアリン、トリパルミチン、トリミリスチン、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0041】
前記バッグ内に存在する医薬グレードのオイルの量は、処理の対象となる脂溶性の化合物の少なくとも80%の抽出を可能にする量であって、前記オイルは生体液の重量に基づき、2から20重量%、望ましくは5から15重量%、より望ましくは5から10重量%、例えば7.5重量%の量で使用される。
【0042】
前記漏斗型バッグは、クロマトグラフィーの固相と組合せて使用することもできる。この場合、他の形式の使い捨てバッグもまた想定され得る。すなわち、クロマトグラフィーの固相を前記使い捨てバッグ内に充填した場合、それは使い捨てのカラムクロマトグラフィー装置となる。
【0043】
生体生成物の更なる処理に使用し得る適当な固相は、ウイルス不活性化剤としての溶媒又は界面活性剤の除去に使用されるマトリックスのような逆相(疎水性相互反応)マトリックス、又はイオン交換(陰イオン及び陽イオン交換)及びアフィニティーマトリックス(免疫アフィニティー又は固定化ヘパランマトリックス)のようなタンパク質吸着マトリックス、又はサイズ排除マトリックスから構成される。望ましい逆相マトリックスはC18シリカ充填剤、又はSDR(溶媒−界面活性剤−除去)ハイパーDである。望ましい陰イオン交換マトリックスは、精製すべきタンパク質にも依存するが、DEAEセファデックスA−50、DEAEセファロースFF、Qセファロース、DEAEトヨパール650M、DEAEハイパーDのような陰イオン交換ゲルである。
【0044】
経済的理由から、安価な固相を本発明に記載の「使い捨てバッグ」内に使用し、使い捨てカラムクロマトグラフィーバッグ装置を構成することが望ましい。より高価な固相は再生利用されることが望ましく、それにより、従来のクロマトグラフィーカラムに充填して本発明に記載の使い捨てバッグに接続し、無菌的に使用することが可能である。
【0045】
前記使い捨てカラムクロマトグラフィーバッグ装置は、より詳しくはDEAEセファデックスA−50を用いてプロトロンビン複合体濃縮物の精製に使用することができる。
【0046】
前記カラムクロマトグラフィーバッグは、治療上容認される半剛体物質から作られる。半剛体物質とは、例えばバッグの充填や振動のような圧力又は応力を受ける場合に、変形し得る物質のことである。前記物質は、4℃から50℃の範囲の温度においてその半剛体性を維持しなければならない。
【0047】
ある一つの実施形態において、本発明に記載のバッグのセットは、二つのウイルス不活性化バッグを有する。ここで、もう一つのウイルス不活性化バッグの使用は、他のもう一つのバッグの使用により既に完全にウイルスを不活性化してしまってはいるものの、すべての生体液が前記のウイルス不活性化剤に接触する確率を更に増大させるのに役立つ。
【0048】
ある望ましい実施形態において、本発明に記載の使い捨てバッグのセットの各バッグは、例えば柔軟なチューブで互いに連結されている。これらのチューブは一つのバッグからもう一つのバッグへの生体液の流れを停止、結果的には制御する手段、例えばクランプ又はバルブを備えているのが望ましい。
【0049】
輸血に使用される全血漿のウイルス不活性化に係る一つの実施形態において、使い捨てバッグのセットは本発明に記載の少なくとも1個、望ましくは2個のウイルス不活性化バッグ、望ましくはそれに続く1個から3個、望ましくは2個、より望ましくは3個の、無菌の医薬グレードのオイルで予め充満された本発明に記載の漏斗型バッグ、並びに一つの、カラムクロマトグラフィー用の固相が充填された本発明に記載の漏斗型バッグを有して構成される。望ましくは、バッグは互いに連結される。すなわち、ウイルス不活性化バッグの出口部は第一の漏斗型バッグの入口部に連結され、第一の漏斗型バッグの出口部は第二の漏斗型バッグの入口部に連結され、第二の漏斗型バッグの出口部は第三の漏斗型バッグの入口部に連結されている。第三の漏斗型バッグの出口部はクロマトグラフィーの系に連結される。このようなクロマトグラフィーの系もまた、精製用緩衝液又は溶媒を含むプラスチックバッグからなる。前記使い捨てバッグのセットが二つのウイルス不活性化バッグを有する場合には、追加のウイルス不活性化バッグは第一のウイルス不活性化バッグの前に設置され、すなわちその出口部は前記第一のウイルス不活性化バッグの入口部に連結される。
【0050】
輸血に使用される全血漿、脱クリオ血漿又はクリオプレシピテートのウイルス不活性化のための別の実施形態において、前記使い捨てバッグのセットは、少なくとも一つの、望ましくは二つの本発明に記載のウイルス不活性化バッグ、それに続く1個から3個の、望ましくは2個、より望ましくは3個の、無菌の医薬グレードのオイルで予め充填されている本発明に記載の漏斗型バッグを有して構成されている。望ましくは、各バッグは互いに連結される。すなわち、ウイルス不活性化バッグの出口部は第一の漏斗型バッグの入口部に連結され、第一の漏斗型バッグの出口部は第二の漏斗型バッグの入口部に連結され、第二の漏斗型バッグの出口部は第三の漏斗型バッグの入口部に連結される。第三の漏斗型バッグの出口部は、漏斗型の形態を持つ必要のない四つ目のバッグの入口部に連結される。使い捨てバッグのセットが二つのウイルス不活性化バッグを有する場合は、その追加のウイルス不活性化バッグは、第一のウイルス不活性化バッグの前に設置され、すなわちその出口部は前記第一のウイルス不活性化バッグの入口部に連結される。
【0051】
PCCの精製に使用される脱クリオ血漿、又は脱クリオ血漿に存在する何らかの他のタンパク質又はクリオプレシピテートのウイルスを不活性化する一つの実施形態において、前記使い捨てバッグのセットは、少なくとも一つの、望ましくは二つの、本発明に記載のウイルス不活性化バッグ、それに続く1個から3個の、望ましくは2個の、より望ましくは3個の、医薬グレードのオイルで予め充填された本発明に記載の漏斗型バッグ、並びに一つの、カラムクロマトグラフィー用の固相で予め充填された本発明に記載の漏斗型バッグを有して構成されている。望ましくは、バッグは互いに連結されている。すなわち、ウイルス不活性化バッグの出口部は第一の漏斗型バッグの入口部に連結され、第一の漏斗型バッグの出口部は第二の漏斗型バッグの入口部に連結され、第二の漏斗型バッグの出口部は第三の漏斗型バッグの入口部に連結され、第三の漏斗型バッグの出口部は固相を包含する漏斗型バッグの入口部に連結される。固相を包含する漏斗型バッグの出口部はシールされている。使い捨てバッグのセットが二つのウイルス不活性化バッグからなる場合は、その追加のウイルス不活性化バッグは、前記第一のウイルス不活性化バッグの前に設置され、すなわち、その出口部は第一のウイルス不活性化バッグの入口部に連結される。
【0052】
使い捨てバッグのセットの厳密な実施形態に拘わらず、前記の各バッグはフレキシブルチューブによって連結される。前記のチューブは、一つのバッグから別のバッグへの生体液の流れを停止、最終的には制御するためのクランプ又はバルブのような装置を備えているのが望ましい。
【0053】
前記チューブ、クランプ又はバルブのような使い捨てバッグのセットの内部に、又は前記セットと共に使用される何れの装置又は付属品も、医療上及び医薬上許容し得る物質で作製される。
【0054】
本発明に記載の使い捨てバッグのセットは、多様な使用が可能である。すなわち、スペースを取らず、運搬が容易であり、それゆえ生体液のウイルス不活性化が必要となりそうないかなる場所でも使用することができる。使い捨てバッグのセットを使用するために、製薬工場のような何らかの工業施設を処分する必要はない。むしろ、この単回使用の使い捨てバッグシステムは、製造施設内で血漿誘導体の製造に使用する際、ステンレススチール製の装置の使用を低減し、洗浄及び無菌化の必要性を排除することさえ可能となる。
【0055】
更に、前記使い捨てバッグのセットの構成は、容易に変更することができる。すなわち、必要となる製造工程に最もよく適合する形で、漏斗型バッグの有無、及び/又はカラムクロマトグラフィー装置の有無を選択することができる。また、前記ウイルス不活性化バッグ及び漏斗型バッグの数も変更することができる。それゆえ、バッグのセットは個々の必要性及び要望に適合させることができる。
【0056】
本発明に記載のバッグのセットのもう一つの利点は、バッグが各使用後に廃棄されることである。これにより、他のバッチ処理における汚染の危険を回避することができる。
【0057】
本発明はまた、前記の使い捨てバッグのセットの使用方法に関する。特に本発明は、以下の工程からなる生体液のウイルス不活性化法に関する。
a.本発明に記載のウイルス不活性化バッグを少なくとも1個用いた、生体液のウイルス不活性化工程、及び必要に応じて、
b.本発明に記載の医薬グレードのオイルを含むバッグ内における、生体液のオイル抽出工程、及び/又は
c.本発明に記載のクロマトカラムバッグ内における、生体液のカラムクロマトグラフィー工程。
【0058】
本発明に記載の生体液は、哺乳類の血液、血漿、血清、血漿分画製剤、血液分画による沈殿物及び上清、脱血小板血漿、脱クリオ血漿(脱クリオ上清)からなる。望ましい生体液は例えば回収された血漿(全血からの血漿)及びアフェレーシス血漿、脱クリオ血漿、VIII因子、フォンビルブランド因子、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、プロトロンビン複合体、IX因子、VII因子、プロテインC、プロテインS、アンチトロンビン、αアンチトリプシン、Cl−抑制因子、免疫グロブリン、アルブミンの精製の際に得られる血漿分画製剤を含む血漿;血漿クリオプレシピテート若しくはポリエチレングリコール、カプリル酸、又は硫酸アンモニウムによる沈殿により得られた血漿からの沈殿物及びそれに対応する上清;又は脱クリオ上清、上清I+II+III、沈殿I+II+III、上清II+III、沈殿II+III、上清I+III、沈殿II,上清IV、沈殿Vのような血漿分画から得られるあらゆる沈殿物又は若しくは上清である。血漿分画製剤、沈殿及び上清は、回収血漿(全血からの血漿)並びにアフェレーシス血漿から得ることが可能である。1回の全血献血からの回収血漿の容量は、通常100から240mlであるが、一方、アフェレーシス血漿の場合、1献血容量は通常500と900mlの間である。
【0059】
本発明に記載のウイルス不活性化バッグを用いて実施し得る望ましいウイルス不活性化法は、S/D(溶媒/界面活性剤)法、溶媒単独による方法又は界面活性剤単独による方法であって、ここで生体液に添加される処理化合物は、溶媒/界面活性剤の組合せ、溶媒又は溶媒のみの組合せ、又は界面活性剤又は界面活性剤のみの組合せである。
【0060】
適切な溶媒は、リン酸トリ−n−ブチル、リン酸トリ−t−ブチル、リン酸トリ−n−ヘキシル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリ−n−デシル、リン酸ジ−n−ブチル、リン酸ジ−t−ブチル、リン酸ジ−n−ヘキシル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジ−n−デシルのようなリン酸ジ又はトリアルキル並びに異なったアルキル鎖を持つリン酸ジアルキルである。異なるアルキル鎖を有するリン酸ジ又はトリアルキル、例えばリン酸エチル−ジ−n−ブチルを採用することができる。特に望ましいリン酸トリアルキルはリン酸トリ−n−ブチル(TnBP)である。
【0061】
適切な界面活性剤としては、脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体でソルビトール無水物の部分エステル、例えば、「Tween(登録商標)80」の商品名で市販されている、「ポリソルベート80」としても知られている製品(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、「Tween20」(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、並びに、「Triton X−100」(ポリオキシエチレン(9−10)p−t−オクチルフェノール、分子式:t−Oct−C−(OCHCHOH、x=9−10)及び「Triton X−45」(ポリオキシエチレン(4−5)p−t−オクチルフェノール、又4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール4−tert−オクチルフェニルエーテルとも呼ばれ、分子式:t−Oct−C−(OCHCHOH、x=〜5)の商品名で販売されているオキシエチル化されたアルキルフェノールのような非イオン性・脂溶性の水性界面活性剤が挙げられる。
【0062】
更に想定される界面活性剤としては、デオキシコール酸ナトリウム及びN−ドデシル−N,N−ジメチル−2−アンモニオ−1エタンスルホネートのようなスルホベタインである。特に望ましい界面活性剤は「Tween80」、「Triton X−100」及び「Triton X−45」である。
【0063】
前記溶媒は、単独で使用する場合には、生体液の重量に対して0.1から3重量%、望ましくは0.3から2.5重量%、なおより望ましくは2重量%の量で使用するのが望ましい。
【0064】
前記溶媒は、界面活性剤との組合せで使用する場合には、血漿、脱クリオ血漿、又はクリオプレシピテートのような複雑な混合物のウイルス不活性化には生体液の重量に対して0.1から2重量%、望ましくは0.3から1重量%、なおより望ましくは1重量%で使用するのが望ましく、又は、VIII因子のようなより精製された画分についてウイルス不活性化を行う場合は、0.3重量%で使用するのが望ましい。
【0065】
前記界面活性剤は、溶媒との組合せで使用する場合には、血漿、脱クリオ血漿又は血漿クリオプレシピテートのような複雑な混合物のウイルス不活性化のためには生体液の重量に対して0.1から2重量%、望ましくは0.3から1.5重量%、なおより望ましくは1重量%で使用するのが望ましく、又は、VIII因子のようなより精製された画分についてウイルス不活性化を行う場合は、1重量%の量で使用するのが望ましい。
【0066】
前記界面活性剤は、単独で使用される場合には、生体液の重量に対して0.5から2重量%、望ましくは1重量%の量で使用するのが望ましい。
【0067】
血漿、脱クリオ血漿又はクリオプレシピテートのウイルス不活性化処理を行うには、前記生体液を前記溶媒/界面活性剤の組合せ、溶媒のみ又は界面活性剤のみによって4から8時間、望ましくは4から6時間、例えば4時間、例えば1%のTnBP、及び1%のTriton X−45若しくはTriton X−100を用いて処理し、VIII因子画分のウイルス不活性化処理を行うには、6時間、例えば0.3%のTnBP及び1%のTween80を用いて処理する。一つ以上のウイルス不活性化バッグが使用される場合、処理時間はそれぞれのバッグごとに分割される。例えば、全体で4.5時間の処理時間の場合、第一と第二のバッグで、例えば第一のバッグで30分、第二のバッグ内で4時間のように分割してもよい。全体処理時間のこのような配分は、第一のバッグにおいて生体液と処理化合物との混合及びウイルス不活性化の開始を行い、一方、第二のバッグにおいて最終的なウイルス不活性化を行うことになるので、優れた製造作業を確実に行うことが可能となる。
【0068】
溶媒及び/又は界面活性剤は、生体液から医薬グレードのオイルによるオイル抽出によって抽出することができる。この目的のために、溶媒及び/又は界面活性剤を含む生体液は、無菌の医薬グレードのオイルを含む本発明に記載の漏斗型バッグ内に移送されることが望ましい。
【0069】
前記内部区画の下部を漏斗型に設計する一つの利点は、オイルと生体液間の接触表面が出口部に向かって縮小すること及び上相の厚さが出口部に向かって増大することである。それゆえ、界面(二つの移動相間の部分)は下相の排出口の端に向かって益々明瞭となり、また前記二つの相は容易に分離され、それによりウイルス不活性化物質の除去と血漿の回収を最適に行うことができる。
【0070】
前記医薬グレードのオイルは、例えば植物又は動物から抽出された天然由来のオイル、又は同様の構造を持つ合成化合物であってもよい。適当な天然由来のオイルとしては、ひまし油(ヒマ油としても知られている)、大豆油、ひまわり油、綿実油が挙げられる。望ましい合成化合物としては合成トリグリセリドであり、その適当な合成トリグリセリドの例としてはトリオレイン、トリステアリン、トリパルミチン、トリミリスチン及びそれらの組合せが挙げられる。
【0071】
バッグ内に存在する医薬グレードのオイルの量は、脂溶性の処理化合物の少なくとも80%の抽出を可能にする量が望ましく、前記オイルは、生体液の重量に対して2から20重量%、望ましくは5から15重量%、より望ましくは5から12重量%、例えば7.5又は10重量%で使用される。
【0072】
オイル抽出は、特にオイルの濃度、並びに溶媒及び/又は界面活性剤の除去に用いられる更なる精製手段の能力に応じ、1回以上、例えば1回から3回、望ましくは2回、より望ましくは3回行うことが可能である。
【0073】
前記抽出処理は、2重量%以下のオイルでも実施可能であるが、それでは抽出処置を何度も反復して所望の純度の生体液を得なければならず、時間がかかり、かつ物質の損失を引き起こすので望ましくない。
【0074】
前記溶媒及び/又は界面活性剤はまた、カラムクロマトグラフィー用の固相を含む漏斗型バッグを使用するカラムクロマトグラフィー、又は前記システムに連結された本発明に記載の使い捨てクロマトグラフィーカラム装置、又は他のクロマトグラフィーシステムを用いて生体液から除去してもよい。
【0075】
前記カラムクロマトグラフィーは、オイル抽出に続いて、又は溶媒/界面活性剤処理の直後に行ってもよい。
【0076】
ある場合には、オイル抽出後に追加のカラムクロマトグラフィーを実施してウイルス不活性化に使用した処理化合物を十分に除去を可能にする必要がある。オイル抽出によって十分には除去できず、ゆえにカラムクロマトグラフィーによる分離を要する場合に用いられる界面活性剤は、例えばTriton X−100である。
【0077】
カラムクロマトグラフィーは一般に、又VIII因子を含む血漿分画製剤のウイルスを不活性化した際に使用した処理化合物を除去し、VIII因子の精製及びVIII因子の濃縮を行う場合にも使用される。適当なタイプのカラムクロマトグラフィーとしては、陰イオン交換免疫アフィニティー、固定化VIII因子又は固定化ヘパリンを有するリガンドを用いたアフィニティクロマトグラフィーが挙げられる。一般に、ウイルスを不活性化されたVIII因子のカラムクロマトグラフィー精製は、ウイルスの不活性化の直後に、オイル抽出の前処理なしで行われる。
【0078】
本発明に記載の使い捨てウイルス不活性化バッグはまた、他の処理化合物、例えば、メチレンブルー処理、リボフラビン(ビタミンB2)処理、酸性pH処理(一般に塩酸による、pH=4)、又はカプリル酸処理(一般にpH<6.5)を用いる生体液の他のウイルス不活性化法にも用いることができる。
【0079】
生体液、特に血漿、脱クリオ血漿、クリオプレシピテート及びVIII因子含有血漿分画製剤のような他の血漿分画製剤のウイルス不活性化処理は、本発明に記載のバッグのセットにおいては少量の前記生体液のウイルス不活性化にも使用可能である。
【0080】
このことは、エンベロープを持たないウイルスに対する溶媒/界面活性剤処理の場合のように、前記不活性化法がすべてのタイプのウイルスに対して有効ではない場合に特に重要である。このようにして、数千リットルに及ぶ生体液の大プールが汚染される危険が回避される。
【0081】
更に、先行技術の溶媒/界面活性剤(SD)による大プールの生体液のウイルス不活性化とは対照的に、個別献血又は本発明に記載のような小プールの生体液のウイルス不活性化により、機械処理によって生じる、凝集、複合体形成又は酸化など、タンパク質を変性するあらゆる現象が回避される。
【0082】
少量処理のもう一つの利点は、ウイルスを不活性化された生体液を必要に応じて生産することが可能なことである。したがって、例えばただ一人又は少数の献血者から採取されたウイルス不活性化血漿分画製剤によって患者を治療することが可能であり、それゆえ何らかの血漿感染性の感染作因に曝される危険を減少することができる。
【0083】
本発明に記載の前記処理における別の利点としては、HCV(C型肝炎ウイルス)陽性血漿、SARS(重症急性呼吸器症候群(ウイルス))陽性血漿、又は他のウイルスに潜在的に感染した、他の患者を治療するためのデリケートな中和抗体を含む血漿を、臨床的検討の目的で一個人の献血又は小プールで処理してウイルスを不活性化し得る可能性の存在が挙げられる。したがって、例えば一人の献血者又は少数の献血者から採取されたHCV陽性又はSARS陽性の血漿分画製剤についてウイルスを不活性化し、それを用いて患者を治療することが可能となり、それゆえHCV又はSARS又は何らかの血漿伝染性の感染作因に曝される危険を排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
本発明に係る前記及びその他の課題、特徴、並びに利点は、以下の記載により更に明確にされる。
図1は本発明の一実施態様に係るウイルス不活性化バッグの長手断面図である。
【0085】
図1aは本発明の他の実施態様に係るウイルス不活性化バッグの長手断面図である。
【0086】
図1bは、前記図1の実施態様について、空の状態でAA’の線に沿って切断したときの断面図である。
【0087】
図1cは、前記図1の実施態様について、バッグが充満した状態でAA’の線に沿って切断したときの断面図である。
【0088】
図2は本発明に係る抽出バッグの一実施態様の長手断面図である。
【0089】
図2aは本発明に係る抽出バッグの他の実施態様の長手断面図である。
【0090】
図2bは前記図2の実施態様について、前記バッグが空の状態でAA’の線に沿って切断したときの断面図である。
【0091】
図2cは前記図2の実施態様について、バッグが充満した状態でAA’の線に沿って切断したときの断面図である。
【0092】
図3は使い捨てクロマトカラムバッグの一実施態様の長手断面図である。
【0093】
図4は本発明に係る使い捨てバッグのセットの一実施態様の長手断面図である。
【0094】
図5は本発明に係る使い捨てバッグのセットの他の実施態様の長手断面図である。
【0095】
以下本発明においては、用語「水平方向」、「垂直方向」、「上部」及び「下部」とは、前記出口部を垂直下向きにして使用される際の前記バッグの位置関係を指す。
【0096】
図1に示す前記ウイルス不活性化バッグ1は実質的に四角形の外部形体を有し、その水平辺2はその垂直辺3よりも長い。
【0097】
前記ウイルス不活性化バッグ1は、内部区画4、入口部5及び出口部6を有する。前記内部区画4は楕円第一軸a及び第二軸bによる楕円形の長手断面を有している。前記第一軸aは前記ウイルス不活性化バッグ1の水平辺2a及び2bに対して平行であり、前記第二軸bはその垂直辺3に対して平行であり、a/bの比は>1である。
【0098】
前記入口部5及び出口部6は、それぞれ分離して内部区画4に連結されている。前記入口部5は上部の水平辺2bの中央に位置しており、前記楕円の第二軸bに符合する。前記出口部6は前記入口部5の正反対側の水平辺2aの中央に位置しており、同様に前記楕円の第二軸bに符合する。
【0099】
前記入口部5は、フレキシブルな管状の入口部からなり、第一ポート5aは前記のラインの端部に連結され、第二ポート5bは前記入口部のラインの反対側に連結される。前記第一ポート5aはバッグのスパイクである。それは生体液を例えば貯蔵又は収集バッグから前記ウイルス不活性化バッグ1の前記内部区画4へ移動させる際に用いる。前記第二ポート5bは反応に用いる化学物質を添加するためのポートである。
【0100】
前記ウイルス不活性化バッグ1は、従来の医学的/医薬グレードのポリ塩化ビニル(PVC)、又は薄膜として合成してその周辺部を溶接することが可能な他の適切な原料により製造された、二枚の四角形のシートにより形成される。それにより、前記入口部5及び出口部6それぞれへ続く二つの開口部を有する前記内部区画4が形成される。
【0101】
前記内部区画4は、そのシートの端まで溶接された境界部7に囲まれている。この境界部7は二つの穴8を有し、それは前記入口部の左右に位置している。前記穴8は前記ウイルス不活性化バッグ1を垂直に懸垂するために用いられる。
【0102】
図1aは、本発明に係るウイルス不活性化バッグのもう一つの実施態様を示す。図1aの前記ウイルス不活性化バッグ1は、前記図1のバッグと異なり、その入口部5が第一ポート5a及び第二ポート5bを有さず、前記ウイルス不活性化バッグ1が第二の入口部1aを、前記上部の水平辺2b上の前記入口部5の隣に有している点で異なる。一般に、この構成において、前記第一の入口部5が反応化学物質の添加に用いられ、前記第二の入口部1aが生体液をウイルス不活性化バッグ1に移動させる用途に用いられる。前記入口部5はシール部5cにてシールされ、例えば針やカニューレなどの貫通の用に適している。
【0103】
前記ウイルス不活性化バッグ1の前記入口部1aは、人工のチューブクランプ部1cを有する。
【0104】
前記ウイルス不活性化バッグ1の前記出口部6は、人工の破壊可能なバルブ6aを有する。
【0105】
図1bは、空のウイルス不活性化バッグ1を示す。図1cは、同じバッグの内部が充満された状態、すなわちそれらのシートが分離し、外部に膨らんだ状態を示す。前記の充満されたバッグの厚さcは二つの軸a及びbの短い方の長さよりも短い。
【0106】
図2に示す前記漏斗型バッグ9は、内部区画10、入口部11及び出口部12を有する。前記入口部11及び出口部12は各々隔離された状態で前記内部区画10に連結されており、互いに前記漏斗型バッグ9の反対側に位置している。
【0107】
前記内部区画10は、漏斗型の下部10aを有する。
【0108】
前記入口部11は、フレキシブルチューブによるラインにより構成され、それは一端において前記内部区画10に連結しており、別のもう一端において血漿バッグの人工のスパイクに連結している。この方法により、生体液を含む前記反応化学物質は容易に重力によって、例えばウイルス不活性化バッグ1から前記漏斗型バッグ9に移動する。
【0109】
前記漏斗型バッグ9は、従来の医学的/医薬グレードのポリ塩化ビニル(PVC)又は他の素材から製造された二枚のシートから構成され、それらは薄膜状に加工され、それらの周辺部において溶接されることにより、それぞれ前記入口部11及び出口部12に続く二つの穴を有する前記内部区画10が形成される。
【0110】
前記内部区画10は、シート端部まで溶接された境界部13により囲まれている。この境界部13は二つの穴14を有し、それらは前記入口部11の左右側に位置している。前記穴14は前記バッグ9を垂直に懸垂するために用いられる。
【0111】
図2aは、本発明に係る漏斗型バッグ9の望ましい実施態様を示す。
【0112】
この実施態様において、前記漏斗型バッグ9の前記内部区画10は、実質的に三角形である下部10aを有する長手断面であり、前記三角形は内部区画10の長手断面の下部境界c及びdにより形成されている。前記下部境界c及びdは、実質的に直線であり、約125°の角αにより閉じている。この角αは前記漏斗型バッグ9の前記出口部12と符号している。
【0113】
前記三角形部分の高さhtriは、全体の高さh(前記三角形の頂点である角αから前記漏斗型バッグ9の前記入口部11の下端部11aまで)の約1/3である。
【0114】
前記漏斗型バッグ9は、更にポート9aを有する。前記ポートは、シール部9cによりシールされ、例えば針やカニューレなどにより貫通するのに適している。
【0115】
前記漏斗型バッグ9の前記入口部11は、人工のチューブクランプ部11cを有する。
【0116】
前記漏斗型バッグ9の前記出口部12は、人工の破壊可能バルブ12aを有する。
【0117】
図2bは、空の状態における漏斗型バッグ9を示す。図2cは、同じバッグの内部が充満されたときの、シートがそれぞれ分離し、外側に膨らんだ状態を示す。
【0118】
図3の前記使い捨てクロマトカラムバッグ15は、クロマトグラフィー固相が充填された筒状の中空体16を有し、前記中空体16の下部にはフィルター17が存在する。前記筒状の物体は、その上端部に入口部18を有し、その反対側の下端部に出口部19を有する。前記入口部は、三つの部分(18a、18b、18c)を有し、一方前記出口部は、三つの部分(19a、19b、19c)を有する。
【0119】
図4に示す前記使い捨てバッグのセットは、本発明に係るウイルス不活性化バッグ1、それに続く三つの、医薬グレードのオイルで満たされた本発明に係る漏斗型バッグ9(そのオイルは記載なし)及びカラムクロマトグラフィー固相で充填された本発明に係る漏斗型バッグ9より構成される。
【0120】
前記バッグのセットは、相互にフレキシブルチューブにより連結されている。すなわち、ウイルス不活性化バッグ1の出口部6が第一の漏斗型バッグ9の入口部11に連結され、前記第一の漏斗型バッグ9の出口部12が第二の漏斗型バッグ9の入口部11に連結され、前記第二の漏斗型バッグ9の出口部12が第三の漏斗型バッグ9の入口部11に連結され、前記第三の漏斗型バッグ9の出口部12が固相を含有する漏斗型バッグ9の入口部11に連結されている。前記固相を含有する漏斗型バッグ9の出口部12はシールされている。
【0121】
図4のバッグのセットのウイルス不活性化バッグ1の前記入口部5の前記第一ポート5aは、前記生体液をウイルス不活性化バッグ1に移すのに用いられる。前記生体液は、前記第一のウイルス不活性化バッグ1に、一つ又は二つ以上の収集バッグから直接移すことにより貯留させることができる。
【0122】
図5の使い捨てバッグセットは、図1aの実施態様に係る二つのウイルス不活性化バッグ1、それに続く、医薬グレードのオイル(前記オイルは記載せず)により満たされた、図2aの実施態様に係る三つの漏斗型バッグ9、及びウイルスが不活化された生体液を収集する通常の血液バッグ20から構成される。
【0123】
前記バッグのセットは、各々フレキシブルチューブにより連結される。すなわち、第一のウイルス不活性化バッグ1の出口部6が第二のウイルス不活性化バッグ1の入口部1aに連結され、前記第二のウイルス不活性化バッグ1の出口部6が第一の漏斗型バッグ9の入口部11に連結され、前記第一の漏斗型バッグ9の出口部12が第二の漏斗型バッグ9の入口部に連結され、前記第二の漏斗型バッグ9の出口部12が第三の漏斗型バッグ9の入口部11に連結され、前記第三の漏斗型バッグ9の出口部12が前記の通常の血液バッグ20の入口部21に連結される。
【0124】
図5におけるバッグセットの、前記第一のウイルス不活性化バッグ1の入口部1aは、前記ウイルス不活性化バッグ1に前記生体液を移送するのに用いられる。前記生体液は、前記第一のウイルス不活性化バッグ1に、一つ又は二つ以上の収集バッグから直接移すことにより貯留させることができる。
【0125】
前記ウイルス不活性化バッグ1、漏斗型バッグ9及び通常の血液バッグ20それぞれが有する前記入口部1a、11、21は、それぞれが前記人工のチューブクランプ部1c、11c、21cを有する。
【0126】
前記ウイルス不活性化バッグ1及び漏斗型バッグ9それぞれが有する前記出口部6、12は、前記人工の破壊可能なバルブ6a、12aを有する。
【0127】
本発明の性質及び実施の方法を更に詳細に示すために、以下に実施例を示すが、本発明はそれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0128】
2%TnBP溶液を用いた1915mlのアフェレーシス血漿のウイルス不活性化:
三名の患者から採集したアフェレーシス血漿約650mlを、容量2,000mlの滅菌済のウイルス不活性化バッグ(図1)に移し、前記バッグを31℃±1℃に加温する。
純粋なトリ(n−ブチル)リン酸(TnBP)を、シリンジに予め充填する。
その後、前記TnBP溶液を、前記シリンジを用いて前記血漿に30分にわたり、前記不活性化バッグの前記第二ポートを経て添加する。前記不活性化バッグは、例えば濃厚血小板振とう機を用いて穏やかに振とうし、総血漿に対して2重量%となるまで行う。
TnBP溶液の添加の後、前記入口部のチューブをヒートシールし、前記不活性化バッグを単離する。その後、30秒間激しく撹拌し、前記バッグを31℃±1℃にて4時間維持しながら、濃厚血小板振とう機又は前記血漿/SD混合液の穏やかで一定の混合が可能な他の適切な機器を用いて穏やかに振とうする。
前記血漿はその後、医薬グレードのヒマシ油100mlを含む図2の漏斗型バッグに移す。ここにおいて、前記ウイルス不活性化バッグの前記出口部を前記漏斗型バッグの前記入口部によって貫通させ、前記TnBPを含有する血漿を重力により移す。
前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルによりTnBPを抽出する。
前記漏斗型バッグを約30分間吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
前記下層を前記出口部を通して重力により排出させ、150mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第二の漏斗型バッグに移す。
前記第二の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBPを抽出する。前記第二の漏斗型バッグを約30分間吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
前記下層の血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、150mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第三の漏斗型バッグに移す。前記界面を、前記第二漏斗型バッグの出口部の位置に設置したUV検出器により検出する。
前記第三の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBPを抽出する。
前記第三の漏斗型バッグを約30分間吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
最後に、前記下層の血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、通常の血漿保存バッグに移す。
【0129】
VIII因子の活性、IX因子の活性、並びに包括的なPT(プロトロンビン時間)及びAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)による凝固検査を、それぞれの工程後の血漿中において行う。
【表1】

以上の結果より、PT及びPTTによる包括的な血漿凝固活性は、初発の血漿と比較し、3度のオイル抽出後の前記血漿においても保存されていることが明らかである。同様に、VIII因子及びIX因子のリカバリーも優れている。
また、前記PT及びPTTは、血漿が2%のTnBPを含有するときに長くなり、また2度のオイル抽出により標準化、すなわちTnBPの除去がなされることを示す。
【実施例2】
【0130】
31℃における、2%TnBPを含む回収された血漿200mlのウイルス不活性化:
1名の患者から回収された血漿約200mlを、滅菌済みの200ml容量のウイルス不活性化バッグ(図1)に移し、前記バッグを31℃±1℃に加温する。
純粋なトリ(n−ブチル)リン酸(TnBP)をシリンジに予め充填する。
その後、前記TnBP溶液を、前記シリンジを用いて、前記不活性化バッグの第二ポートを経て前記血漿に30分にわたりゆっくりと添加する。前記不活性化バッグを、例えば濃厚血小板振とう機を用いて穏やかに振とうし、総血漿重量に対して2重量%となるまで行う。
TnBP溶液の添加の後、前記入口部のチューブをヒートシールし、前記不活性化バッグを単離する。
その後、30秒間激しく撹拌し、前記バッグを31℃±1℃にて4時間維持しながら、濃厚血小板振とう機又は前記血漿/SD混合液の穏やかで一定の混合が可能な他の適切な機器を用いて穏やかに振とうする。
前記血漿はその後、10mlの医薬グレードのヒマシ油を含む漏斗型バッグ(図2)に移す。ここにおいて、前記ウイルス不活性化バッグの前記出口部を前記漏斗型バッグの前記入口部によって貫通させ、前記TnBPを含有する血漿を重力により移す。
前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルを用いTnBPを抽出する。
前記漏斗型バッグを約30分間吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
前記下層を前記出口部を通して重力により排出させ、10mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第二の漏斗型バッグに移す。前記第二の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBPを抽出する。
前記第二の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
前記下層の血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、10mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第三の漏斗型バッグに移す。その界面は肉眼で確認することができる。
前記第三の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBPを抽出する。
前記第三の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
最後に、前記下層の血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、通常の血漿保存バッグに移す。
【0131】
前記TnBPは前記血漿中にて各抽出工程の後に測定する。
【表2】

以上の結果より、3度のオイル抽出後の最終の血漿においてTnBPは検出されない(<10ppm)。
【0132】
前記PT、APTT、INR(国際標準比)及びVIII因子及びIX因子の理学的特性を各工程ごとに測定する。
【表3】

以上の結果より、凝固活性に関する優れたリカバリーが得られること、及び3回のオイル抽出後において、すべてのアッセイにおける数値が標準化されていることが明らかとなる。
【実施例3】
【0133】
2%TnBPを含むウイルス不活化アフェレーシス血漿200mlにおける、プロテインC、プロテインS、α2アンチプラスミン、及びフォンビルブランド因子のリストセチン補因子の活性のリカバリー:
1名の患者から回収されたアフェレーシス血漿約200mlを、滅菌済みの200ml容量のウイルス不活性化バッグ(図1)に移し、前記バッグを31℃±1℃に加温する。
純粋なトリ(n−ブチル)リン酸(TnBP)をシリンジに予め充填する。
その後、前記TnBP溶液を、前記シリンジを用いて(前記不活性化バッグの第二ポートを経て)前記血漿に30分にわたりゆっくりと添加する。前記不活性化バッグを、例えば濃厚血小板振とう機を用いて穏やかに振とうし、総血漿重量に対して2重量%となるまで行う。
TnBP溶液の添加の後、前記入口部のチューブをヒートシールし、前記不活性化バッグを単離する。
その後、30秒間激しく撹拌し、前記バッグを31℃±1℃にて4時間維持しながら、濃厚血小板振とう機又は前記血漿/SD混合液の穏やかで一定の混合が可能な他の適切な機器を用いて穏やかに振とうする。
前記血漿はその後、10mlの医薬グレードのヒマシ油を含む漏斗型バッグ(図2)に移す。ここにおいて、前記ウイルス不活性化バッグの前記出口部を前記漏斗型バッグの前記入口部によって貫通させ、前記TnBPを含有する血漿を重力により移す。
前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルを用いTnBPを抽出する。
前記漏斗型バッグを約30分間吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
前記下層を前記出口部を通して重力により排出させ、10mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第二の漏斗型バッグに移す。前記第二の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBPを抽出する。
前記第二の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
前記下層の血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、10mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第三の漏斗型バッグに移す。その界面は肉眼で確認することができる。
前記第三の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBPを抽出する。
前記第三の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
最後に、前記下層の血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、通常の血漿保存バッグに移す。
【0134】
前記プロテインC、プロテインS、α2アンチプラスミン、及びフォンビルブランド因子のリストセチン補因子の活性は各抽出工程の後に測定する。
【表4】

以上の結果より、3回のオイル抽出後において、優れた理学的特性のリカバリーが達成されていることが示される。
【実施例4】
【0135】
1%TnBP及び1%Triton X−45を含む200mlの回収された血漿におけるウイルス不活性化:
1名の患者から回収されたアフェレーシス血漿約200mlを、滅菌済みの200ml容量のウイルス不活性化バッグ(図1)に移し、前記バッグを31℃±1℃に加温する。
純粋なトリ(n−ブチル)リン酸(TnBP)とTriton X−45を1:1で混合した溶液をシリンジに予め充填する。
その後、前記TnBP/Triton X−45溶液を、前記シリンジを用いて(前記不活性化バッグの第二ポートを経て)前記血漿に30分にわたりゆっくりと添加する。前記不活性化バッグを、例えば濃厚血小板振とう機を用いて穏やかに振とうし、1%TnBP及び1%Triton X−45溶液が総血漿重量に対して2重量%となるまで行う。
TnBP/Triton X−45溶液の添加の後、前記入口部のチューブをヒートシールし、前記不活性化バッグを単離する。
その後、30秒間激しく撹拌し、前記バッグを31℃±1℃にて4時間維持しながら、濃厚血小板振とう機又は前記血漿/SD混合液の穏やかで一定の混合が可能な他の適切な機器を用いて穏やかに振とうする。
前記血漿はその後、15ml(前記血漿の重量に対して7.5重量%)の医薬グレードのヒマシ油を含む漏斗型バッグ(図2)に移す。ここにおいて、前記ウイルス不活性化バッグの前記出口部を前記漏斗型バッグの前記入口部によって貫通させ、前記TnBP及びTriton X−45を含有する血漿を重力により移す。
前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルを用いTnBP及びTriton X−45を抽出する。
前記漏斗型バッグを約30分間吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBP及びTriton X−45を含有するオイル相に分離させる。
前記下層を前記出口部を通して重力により排出させ、15mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第二の漏斗型バッグに移す。その界面は肉眼で確認することができる。
前記第二の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBP及びTriton X−45を抽出する。
前記第二の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBP及びTriton X−45を含有するオイル相に分離させる。
前記下層の血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、15mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第三の漏斗型バッグに移す。前記第三漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBP及びTriton X−45を抽出する。
前記第三の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBP及びTriton X−45を含有するオイル相に分離させる。
最後に、前記下層の血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、通常の血漿保存バッグに移す。
【0136】
前記血漿中のTnBP及びTriton X−45の含量を各抽出工程の後に測定する。
【表5】

以上の結果より、2又は3度のオイル抽出後の最終の血漿においてTnBP及びTriton X−45は検出されない(<10ppm)。
【0137】
前記PT、APTT、INR(国際標準比)及びVIII因子及びIX因子の理学的特性を各工程ごとに測定する。
【表6】

以上の結果より、凝固活性に関する優れたリカバリーが得られること、及び3回のオイル抽出後において、すべてのアッセイにおける数値が標準化されていることが明らかとなる。
【実施例5】
【0138】
1%TnBP及び1%Triton X−100を含む200mlの回収された血漿におけるウイルス不活性化:
1名の患者から回収されたアフェレーシス血漿約200mlを、滅菌済みの200ml容量のウイルス不活性化バッグ(図1)に移し、前記バッグを31℃±1℃に加温する。
純粋なトリ(n−ブチル)リン酸(TnBP)とTriton X−100を1:1で混合した溶液をシリンジに予め充填する。
その後、前記TnBP/Triton X−100溶液を、前記シリンジを用いて(前記不活性化バッグの第二ポートを経て)前記血漿に30分にわたりゆっくりと添加する。前記不活性化バッグを、例えば濃厚血小板振とう機を用いて穏やかに振とうし、最終濃度が総血漿重量に対して1%TnBP及び1%Triton X−45となるまで行う。
TnBP/Triton X−100溶液の添加の後、前記入口部のチューブをヒートシールし、前記不活性化バッグを単離する。
その後、30秒間激しく撹拌し、前記バッグを31℃±1℃にて4時間維持しながら、濃厚血小板振とう機又は前記血漿/SD混合液の穏やかで一定の混合が可能な他の適切な機器を用いて穏やかに振とうする。
前記血漿はその後、15ml(前記血漿の重量に対して7.5重量%)の医薬グレードのヒマシ油を含む漏斗型バッグ(図2)に移す。ここにおいて、前記ウイルス不活性化バッグの前記出口部を前記漏斗型バッグの前記入口部によって貫通させ、前記TnBP及びTriton X−100を含有する血漿を重力により移す。
前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルを用いTnBP及び少量のTriton X−100を抽出する。
前記漏斗型バッグを約30分間吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBP及び少量のTriton X−100を含有するオイル相に分離させる。
前記下層を前記出口部を通して重力により排出させ、15mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第二の漏斗型バッグに移す。その界面は肉眼で確認することができる。
前記第二の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBP及び少量のTriton X−100を抽出する。
前記第二の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBP及び少量のTriton X−100を含有するオイル相に分離させる。
前記下層の血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、15mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第三の漏斗型バッグに移す。
前記第三の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBP及び少量のTriton X−100を抽出する。
前記第三の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBP及び少量のTriton X−100を含有するオイル相に分離させる。前記第三のオイル抽出に続き、前記血漿を遠心分離バッグに移し、血液遠心分離機により20℃、3,900rpmにて30分間遠心分離を行なう。
その後、前記血漿をC18クロマトカラムを用いたカラムクロマトグラフィーにかけ、前記の多量のTriton X−100を除去する。
【0139】
前記血漿中のTnBP及びTriton X−100の含量は各抽出工程及びカラムクロマトグラフィーの後に測定する。
【表7】

以上の結果より、3度のオイル抽出及びC18によるクロマトの後の最終的な血漿においてTnBP及びTriton X−100は検出されない(<10ppm)。
【0140】
前記PT、APTT、INR(国際標準比)及びVIII因子及びIX因子の理学的特性を各工程ごとに測定する。
【表8】

以上の結果より、凝固活性に関する優れたリカバリーが得られること、及び3回のオイル抽出後において、すべてのアッセイにおける数値が標準化されていることが明らかとなる。
【実施例6】
【0141】
37℃において2%TnBPを含む200mlの回収された血漿におけるウイルス不活性化:
1名の患者から回収されたアフェレーシス血漿約200mlを滅菌済みの200ml容量のウイルス不活性化バッグ(図1)に移し、前記バッグを31℃±1℃に加温する。
純粋なトリ(n−ブチル)リン酸(TnBP)溶液を、シリンジに予め充填する。
その後、前記TnBP溶液を、前記シリンジを用いて(前記不活性化バッグの第二ポートを経て)前記血漿に30分にわたりゆっくりと添加する。前記不活性化バッグを、例えば濃厚血小板振とう機を用いて穏やかに振とうし、最終濃度が総血漿重量に対して2%TnBPとなるまで行う。
TnBP溶液の添加の後、前記入口部のチューブをヒートシールし、前記不活性化バッグを単離する。
その後、30秒間激しく撹拌し、前記バッグを31℃±1℃にて4時間維持しながら、濃厚血小板振とう機又は前記血漿/SD混合液の穏やかで一定の混合が可能な他の適切な機器を用いて穏やかに振とうする。
前記血漿はその後、10mlの医薬グレードのヒマシ油を含む漏斗型バッグ(図2)に移す。ここにおいて、前記ウイルス不活性化バッグの前記出口部を前記漏斗型バッグの前記入口部によって貫通させ、前記TnBPを含有する血漿を重力により移す。
前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルを用いTnBPを抽出する。
前記漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
前記下層を前記出口部を通して重力により排出させ、15mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第二の漏斗型バッグに移す。その界面は前記第一の漏斗型バッグの出口部の位置に設置したUV検出器により検出することができる。
前記第二の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBPを抽出する。
前記第二の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。
前記下層の血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、15mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第三の漏斗型バッグに移す。
前記第三の漏斗型バッグの前記オイル/血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBPを抽出する。
前記第三の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBPを含有するオイル相に分離させる。前記第三のオイル抽出に続き、前記血漿を遠心分離バッグに移し、血液遠心分離機により20℃、3,700rpmにて30分間遠心分離を行なう。
【0142】
前記TnBPは前記血漿中にて各抽出工程の後に測定する。
【表9】

以上の結果より、3度のオイル抽出後の最終的な血漿においてTnBP及びTriton X−100は検出されない(<10ppm)。
【0143】
前記PT、APTT、INR(国際標準比)及びVIII因子及びIX因子の理学的特性を工程ごとに測定する。
【表10】

以上の結果より、凝固活性に関する優れたリカバリーが得られること、及び3回のオイル抽出後において、すべてのアッセイにおける数値が標準化されていることが明らかとなる。
【実施例7】
【0144】
1%TnBP及び1%Triton X−45を含有する脱クリオ血漿200mlのウイルス不活性化:
200mlの脱クリオ血漿を、実施例4のプロトコルに従い、1%TnBP及び1%Triton X−45により処理する。
【0145】
各抽出工程後の脱クリオ血漿中のTnBP及びTriton X−45の含有量を測定する。
【表11】

以上の結果より、3度のオイル抽出後の最終的な脱クリオ血漿においてTriton X−45は検出されない(<10ppm)。
【0146】
前記PT、APTT、INR(国際標準比)及びVII因子及びIX因子の理学的特性を各工程ごとに測定する。
【表12】

以上の結果より、凝固活性に関する優れたリカバリーが得られること、及び3回のオイル抽出後において、すべてのアッセイにおける数値が標準化されていることが明らかとなる。血漿と比較したPT及びAPTTにおいて凝結時間が長くなっているが、これは、脱クリオ血漿ではいくつかの凝固因子がなくなっているためである。
【実施例8】
【0147】
1%TnBP及び1%Triton X−100を含む200mlの脱クリオ血漿におけるウイルス不活性化:
200mlの脱クリオ血漿を、実施例5のプロトコルに従い、1%TnBP及び1%Triton X−100により処理する。
1名の患者から回収された脱クリオ血漿約200mlを滅菌済みの200ml容量のウイルス不活性化バッグ(図1)に移し、前記バッグを31℃±1℃に加温する。
純粋なトリ(n−ブチル)リン酸(TnBP)及びTriton X−100を1:1で混合した溶液をシリンジに予め充填する。
その後、前記TnBP/Triton X−100溶液を、前記シリンジを用いて(前記不活性化バッグの第二ポートを経て)前記血漿に30分にわたりゆっくりと添加する。前記不活性化バッグを、例えば濃厚血小板振とう機を用いて穏やかに振とうし、最終濃度が総血漿重量に対して1%TnBP及び1%Triton X−100となるまで行う。
TnBP/Triton X−100溶液の添加の後、前記入口部のチューブをヒートシールし、前記不活性化バッグを単離する。
その後、30秒間激しく撹拌し、前記バッグを31℃±1℃にて4時間維持しながら、濃厚血小板振とう機又は前記脱クリオ血漿/SD混合液の穏やかで一定の混合が可能な他の適切な機器を用いて穏やかに振とうする。
前記脱クリオ血漿はその後、15ml(前記脱クリオ血漿の重量に対して7.5重量%)の医薬グレードのヒマシ油を含む漏斗型バッグ(図2)に移す。ここにおいて、前記ウイルス不活性化バッグの前記出口部を前記漏斗型バッグの前記入口部によって貫通させ、前記TnBP及びTriton X−100を含有する脱クリオ血漿を重力により移す。
前記オイル/脱クリオ血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルを用いTnBP及び少量のTriton X−100を抽出する。
前記漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBP及び少量のTriton X−100を含有するオイル相に分離させる。
前記下層を前記出口部を通して重力により排出させ、15mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第二の漏斗型バッグに移す。その界面は肉眼で確認することができる。
前記第二の漏斗型バッグの前記オイル/脱クリオ血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBP及び少量のTriton X−100を抽出する。
前記第二の漏斗型バッグを吊り下げ、下層のクリオ血漿相及び上層のTnBP及び少量のTriton X−100を含有するオイル相に分離させる。
前記下層の脱クリオ血漿を前記出口部を通して重力により排出させ、15mlの医薬グレードのヒマシ油を含む第三の漏斗型バッグに移す。
前記第三の漏斗型バッグの前記オイル/脱クリオ血漿の混合液を約1分間、エマルジョンが形成されるまで激しく撹拌し、その後室温にて15分穏やかに撹拌し、前記オイルにより更にTnBP及び少量のTriton X−100を抽出する。
前記第三の漏斗型バッグを吊り下げ、下層の血漿相及び上層のTnBP及び少量のTriton X−100を含有するオイル相に分離させる。
前記第三のオイル抽出に続き、前記血漿を遠心分離バッグに移し、血液遠心分離機により20℃、3,900rpmにて30分間遠心分離を行なう。
その後、前記血漿をSDRクロマトカラムを用いたカラムクロマトグラフィーにかけ、多量のTriton X−100を除去する。
【0148】
前記血漿中のTnBP及びTriton X−100の含量を、各抽出工程及びSDRカラムクロマトグラフィーの後に測定する。
【表13】

以上の結果より、3度のオイル抽出及びカラムクロマトグラフィー後の最終的な脱クリオ血漿においてTnBP及びTriton X−100は検出されない(<10ppm)。
【0149】
前記PT、APTT、INR(国際標準比)及びVII因子及びIX因子の理学的特性を各工程ごとに測定する。
【表14】

以上の結果より、凝固活性に関する優れたリカバリー(VII因子及びIX因子)が得られること、及びSDRクロマトグラフィーの工程の後において、すべてのアッセイにおける数値が標準化されていることが明らかとなる。
【実施例9】
【0150】
37℃における、2%TnBP脱クリオ血漿200mlのウイルス不活性化:
200mlの脱クリオ血漿を、実施例6のプロトコルに従い2%TnBPにより処理する。
【0151】
前記脱クリオ血漿中の前記TnBP含量を、各抽出工程の後に測定する。
【表15】

以上の結果より3回のオイル抽出後の最終的な脱クリオ血漿において、TnBPは検出されない(<10ppm)。
【0152】
前記PT、APTT、INR(国際標準比)及びVIII因子及びIX因子の理学的特性を各工程ごとに測定する。
【表16】

以上の結果より、凝固活性に関する優れたリカバリー(VII因子及びIX因子)が得られること、及び3回のオイル抽出の後において、すべてのアッセイにおける数値が標準化されていることが明らかとなる。
【実施例10】
【0153】
1%TnBP及び1%Triton X−45を含むクリオプレシピテート150mlにおけるウイルス不活性化:
150mlのクリオプレシピテートを、実施例4のプロトコルに従い1%TnBP及び1%Triton X−45により処理する。
【0154】
前記クリオプレシピテート中の前記TnBP及びTriton X−45含量を、各抽出工程の後に測定する。
【表17】

以上の結果より3回のオイル抽出後の最終的なクリオプレシピテートにおいて、TnBP及びTriton X−45は検出されない(<10ppm)。
【0155】
前記PT、VIII因子、フィブリノーゲン、フォンビルブランド因子及び因子IXの理学的特性を各工程ごとに測定する。
【表18】

以上の結果より、3回のオイル抽出の後において、VIII因子、フィブリノーゲン、フォンビルブランド因子の活性に関する優れたリカバリーが得られることが明らかとなる。
【実施例11】
【0156】
1%TnBP及び1%Triton X−100を含むクリオプレシピテート150mlにおけるウイルス不活性化:
150mlのクリオプレシピテートを、実施例5のプロトコルに従い1%TnBP及び1%Triton X−45により処理する。
【0157】
前記クリオプレシピテート中の前記TnBP及びTriton X−100含量を、各抽出工程及びカラムクロマトグラフィー工程の後に測定する。
【表19】

以上の結果より3回のオイル抽出及びカラムクロマトグラフィーの後の最終的なクリオプレシピテートにおいて、TnBP及びTriton X−100は検出されない(<10ppm)。
【0158】
VIII因子、フィブリノーゲン及びVWF(フォンビルブランド因子)の理学的特性もまた各工程ごとに測定する。
【表20】

以上の結果より、3回のオイル抽出の後において、凝固活性に関する優れたリカバリーが得られることが明らかとなる。
【実施例12】
【0159】
37℃における、2%TnBPを含むクリオプレシピテート150mlのウイルス不活性化:
150mlのクリオプレシピテートを、実施例6のプロトコルに従い2%TnBPにより処理する。
【0160】
前記クリオプレシピテート中の前記TnBP含量を、各抽出工程の後に測定する。
【表21】

以上の結果より3回のオイル抽出の後の最終的なクリオプレシピテートにおいて、TnBPは検出されない(<10ppm)。
【0161】
VIII因子、フィブリノーゲン及びVWF(フォンビルブランド因子)の理学的特性もまた各工程ごとに測定する。
【表22】

以上の結果より、3回のオイル抽出の後において、凝固活性に関する優れたリカバリーが得られることが明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1は本発明の一実施態様に係るウイルス不活性化バッグの長手断面図である。図1aは本発明の他の実施態様に係るウイルス不活性化バッグの長手断面図である。図1bは、前記図1の実施態様について、空の状態でAA’の線に沿って切断したときの断面図である。図1cは、前記図1の実施態様について、バッグが充満した状態でAA’の線に沿って切断したときの断面図である。
【図2】図2は本発明に係る抽出バッグの一実施態様の長手断面図である。図2aは本発明に係る抽出バッグの他の実施態様の長手断面図である。図2bは前記図2の実施態様について、前記バッグが空の状態でAA’の線に沿って切断したときの断面図である。図2cは前記図2の実施態様について、バッグが充満した状態でAA’の線に沿って切断したときの断面図である。
【図3】図3は使い捨てクロマトカラムバッグの一実施態様の長手断面図である。
【図4】図4は本発明に係る使い捨てバッグのセットの一実施態様の長手断面図である。
【図5】図5は本発明に係る使い捨てバッグのセットの他の実施態様の長手断面図である。
【符号の説明】
【0163】
1 ウイルス不活性化バッグ
1a 第二入口部
1c チューブクランプ部
2a 水平辺(下部側)
2b 水平辺(上部側)
3 垂直辺
4 内部区画
5 入口部
5a 第一ポート
5b 第二ポート
5c シール部
6 出口部
6a 破壊可能なバルブ
7 境界部
8 穴
9 漏斗型バッグ
9a ポート
9c シール部
10 内部区画
10a 下部
11 入口部
11c チューブクランプ部
12 出口部
12a 破壊可能バルブ
13 境界部
14 穴
15 クロマトカラムバッグ
16 中空体
17 フィルター
18 入口部
18a 入口部a
18b 入口部b
18c 入口部c
19 出口部
19a 出口部a
19b 出口部b
19c 出口部c
21 入口部
21c チューブクランプ部
a 第一軸
b 第二軸
c 厚さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨てバッグのセットのシステムであり、
少なくとも一つのウイルス不活性化バッグ1で、内部区画4、入口部5及び出口部6からなり、上記後二者が前記内部区画4と連結しており、前記内部区画4が卵形の断面を有する、前記ウイルス不活性化バッグ1、
少なくとも一つの漏斗型バッグ9、及び/又は
クロマトカラムバッグ15、
を有し、前記それぞれのバッグが相互に連結可能である、使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項2】
二つの前記ウイルス不活性化バッグ1を有する、請求項1に記載の使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項3】
前記内部区画4の前記断面が楕円形である、請求項1又は2に記載の使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項4】
前記ウイルス不活性化バッグ1の前記入口部5及び前記出口部6が、それぞれ前記ウイルス不活性化バッグ1の反対側に位置する、請求項1から3のいずれか一つに記載の使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項5】
前記ウイルス不活性化バッグ1の前記内部区画4が、第一軸a及び第二軸bにより形成される楕円形の長手断面を有し、前記第一軸aが前記ウイルス不活性化バッグ1の水平辺2に平行であり、前記第二軸bが前記ウイルス不活性化バッグ1の垂直辺3と平行であり、a/b比が1より大きい、請求項3又は4に記載の使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項6】
前記内部区画4の容積が、50mlから20,000mlの範囲であり、望ましくは50mlから5,000mlの範囲であり、より望ましくは100mlから3,000mlの範囲であり、更に望ましくは200mlから2,000mlの範囲である、請求項1から5のいずれか一つに記載の使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項7】
前記漏斗型バッグ9が、内部区画10、入口部11及び出口部12を有し、後二者が前記内部区画10と連結しており、前記内部区画10が前記出口部12とつながった漏斗型の下部を有し、前記内部区画10が分離媒体を有する、請求項1から6のいずれか一つに記載の使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項8】
前記ウイルス不活性化バッグ1、前記漏斗型バッグ9及び前記クロマトカラムバッグ15が、医療/医薬グレードのポリ塩化ビニルからなる、請求項1から7のいずれか一つに記載の使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項9】
分離媒体が医薬グレードのオイルである三連の漏斗型バッグ9、並びに分離媒体がカラムクロマトグラフィー用固相である漏斗型バッグ9一つを更に含む、請求項1から8のいずれか一つに記載の使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項10】
各バッグがフレキシブルチューブにより連結されており、ウイルス不活性化バッグ1の出口部6が第一漏斗型バッグ9の入口部11に連結されており、前記第一漏斗型バッグ9の出口部12が第二漏斗型バッグ9の入口部11に連結されており、前記第二漏斗型バッグ9の出口部12が第三漏斗型バッグ9の入口部11と連結されており、前記第三漏斗型バッグ9の出口部12が固相を含む漏斗型バッグ9の入口部11に連結されている、請求項1から9のいずれか一つに記載の使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項11】
各バッグが、処理される生体液の滅菌性を確保する方式にて連結されている、請求項1から10のいずれか一つに記載の使い捨てバッグのセットのシステム。
【請求項12】
使い捨てのウイルス不活性化バッグ1であり、内部区画4、入口部5及び出口部6を含み、後二者が前記内部区画4と連結され、前記内部区画4が卵形の断面を有し、前記入口部5及び前記出口部6が使い捨ての前記ウイルス不活性化バッグ1のそれぞれ反対側に設置されている、使い捨てのウイルス不活性化バッグ1。
【請求項13】
前記内部区画4が第一軸a及び第二軸bで形成される楕円形の断面を有し、前記第一軸aが前記使い捨てウイルス不活性化バッグ1の水平辺2と平行であり、前記第二軸bが使い捨ての前記ウイルス不活性化バッグ1の垂直辺3と平行であり、その比a/bが1より大きい、請求項12に記載の使い捨てのウイルス不活性化バッグ1。
【請求項14】
内部区画10、入口部11及び出口部12を有し、左記の後二者が前記内部区画10と連結されており、前記内部区画10の下部が前記出口部12に向けて窄まった漏斗型で、かつ分離媒体を内包する、使い捨て漏斗型バッグ9。
【請求項15】
以下の工程、すなわち:
工程a:請求項1に記載された、又は請求項12のウイルス不活性化バッグ1において、生体液の不活性化を行う工程、及び選択的に、
工程b:請求項14の漏斗型バッグ9において、医薬グレードのオイルを用いて前記生体液のオイル抽出を行う工程、及び/又は
工程c:前記生体液を、クロマトグラフィーにより分離する工程、
を含む、生体液のウイルス不活性化方法。
【請求項16】
前記生体液が、哺乳動物の血液、血漿、血清、血漿分画製剤、血液分画による沈殿物及び上清、脱血小板血漿、並びに脱クリオ血漿からなる群から選択される、請求項15に記載のウイルス不活性化方法。
【請求項17】
前記ウイルス不活性化方法が、S/D(溶媒/界面活性剤)法、溶媒のみの方法、界面活性剤のみの方法、メチレンブルー処理、リボフラビン処理、酸性pH処理又はカプリル酸処理からなる群から選択される方法に基づく、請求項15又は16に記載のウイルス不活性化方法。
【請求項18】
前記ウイルス不活性化方法が、前記S/D(溶媒/界面活性剤)法又は前記溶媒のみの方法である、請求項17に記載のウイルス不活性化方法。
【請求項19】
前記溶媒が、トリ−(n−ブチル)リン酸、トリ−(t−ブチル)リン酸、トリ−(n−ヘキシル)リン酸、トリ−(2−エチルヘキシル)リン酸、トリ−(n−デシル)リン酸、ジ−(n−ブチル)リン酸、ジ−(t−ブチル)リン酸、ジ−(n−ヘキシル)リン酸、ジ−(2−エチルヘキシル)リン酸、ジ−(n−デシル)リン酸、エチルジ(n−ブチル)リン酸又はそれらの混合物、からなる群から選択される、請求項18に記載のウイルス不活性化方法。
【請求項20】
前記界面活性剤が、脂肪酸のポリオキシエチレンの誘導体、ソルビトール無水物の部分エステル、非イオン性油脂可溶性水性界面活性剤、デオキシコール酸ナトリウム及び硫酸ベタイン又はそれらの混合物、からなる群から選択される、請求項18又は19に記載のウイルス不活性化方法。
【請求項21】
前記工程aが、4から8時間、望ましくは4から6時間、より望ましくは4時間行われる、請求項18又は19に記載のウイルス不活性化方法。
【請求項22】
前記工程bが、1から3回反復される、請求項18又は19に記載のウイルス不活性化方法。
【請求項23】
前記工程bにおける前記医薬グレードのオイルが、ヒマシ油、大豆油、向日葵油、綿花種油、トリオレイン、トリステアリン、トリパルミチン、トリミリスチン及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項18から21のいずれか一つに記載のウイルス不活性化方法。
【請求項24】
前記工程bにおける前記医薬グレードのオイルが、前記生体液に対して2から20重量%、望ましくは5から15重量%、より望ましくは5から10重量%用いられる、請求項18から22のいずれか一つに記載のウイルス不活性化方法。
【請求項25】
前記生体液が血漿、脱クリオ血漿及びシクロプレシピテートからなる群より選択され、前記ウイルス不活性化方法が前記溶媒のみの方法であり、前記溶媒がトリ−(n−ブチル)リン酸であり、前記工程bが3回行われる、請求項18から23のいずれか一つに記載のウイルス不活性化方法。
【請求項26】
前記生体液が血漿、脱クリオ血漿及びシクロプレシピテートからなる群より選択され、前記ウイルス不活性化方法が前記S/D法であり、前記溶媒がトリ−(n−ブチル)リン酸で、前記界面活性剤が4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール(t−Oct−C−(OCHCHOH、x=5)であり、前記工程bが3回行われる、請求項18から23のいずれか一つに記載のウイルス不活性化方法。
【請求項27】
前記生体液が血漿、脱クリオ血漿及びシクロプレシピテートからなる群より選択され、前記ウイルス不活性化方法が前記S/D法であり、前記溶媒がトリ−(n−ブチル)リン酸であり、前記界面活性剤がポリオキシエチレン(9−10)p−t−オクチルフェノール(t−Oct−C−(OCHCHOH、x=9−10)であり、前記工程bが3回行われ、前記工程cが前記工程bの終了後に行われる、請求項18から23のいずれか一つに記載のウイルス不活性化方法。
【請求項28】
優れたタンパク質のリカバリーを伴う生体液のウイルス不活性化に用いられる、請求項1から11のいずれか一つに記載の使い捨てバッグのセットのシステムの使用。

【図1】
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【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−528148(P2008−528148A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552608(P2007−552608)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001455
【国際公開番号】WO2006/082115
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(506365854)
【Fターム(参考)】