説明

生体認証装置の製品認証方法

【課題】認証機関とBSPを提供する企業との間の距離の制約を受けない、第三者認証の方法を提供する。
【解決手段】先ず、試験ツールが認証側フレームワークに指示を送る。次に、認証側フレームワークが、指示を、ネットワークを経て被認証側フレームワークに送る。次に、被認証側フレームワークが、指示を、バイオメトリックサービスプロバイダに送る。次に、バイオメトリックサービスプロバイダが、指示に対応する処理を行い、処理結果を被認証側フレームワークに送る。次に、被認証側フレームワークが、処理結果を、ネットワークを経て前記認証側フレームワークに送る。次に、認証側フレームワークが、処理結果を、試験ツールに送る。次に、試験ツールが、処理結果が、予め設定した条件を満たすか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体認証装置の製品認証方法に関し、特に、生体認証装置が規格に適合していることの認証を、生体認証装置を提供する者、提供される者以外の第三者が行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体認証は、バイオメトリック認証とも称され、指紋や虹彩などの生体情報を用いて個体を識別する技術である。この生体認証を行う装置に関して、生体情報の取得や照合を行う生体認証技術部分と、アプリケーションとの間のインタフェースとして、BioAPI(Biometric Application Programming Interface)の標準化がISO/IEC JTC1/SC37で進められている。
【0003】
図4を参照して、BioAPIを利用した生体認証装置について説明する。図4は、BioAPIを利用した生体認証装置の模式図である。
【0004】
生体認証装置80は、例えば、ソフトウェアとして構成される部分(ソフトウェア部)と、ハードウェアとして構成される部分(ハードウェア部)とを備えて構成される。
【0005】
ハードウェア部には、カメラなど生体情報を取得するデバイス82が設けられている。ソフトウェア部は、BioAPIによって規定されている階層構造の中の、バイオメトリックサービスプロバイダ(BSP:Biometric Service Provider)84と呼ばれる部分である。これ以外に、BioAPIのソフトウェアコンポーネントには、BioAPIフレームワーク(BioAPI Framework)86及びアプリケーション87が規定されている。
【0006】
BSP84は、階層構造の最下層である第1層に位置するソフトウェアであって、デバイス82の制御する機能を含めて、生体情報の取得や照合などを行う機能を有している。BioAPIフレームワーク86は、第1層上の第2層に位置するソフトウェアであって、BioAPIの中核をなしている。アプリケーション87は、第2層上の第3層に位置するソフトウェアである。
【0007】
BioAPIフレームワーク86とBSP84の間のインタフェースは、BioSPI(BioSPI:Biometric Service Provider Interface)と呼ばれる。BSP84は、BioAPIフレームワーク86に対して、BioSPI関数(BioSPI function)を提供する。BioAPIフレームワーク86は、BioSPI関数を呼び出すことにより、BSP84にアクセスする。
【0008】
BioAPIフレームワーク86とアプリケーション87の間のインタフェースは、BioAPIと呼ばれる。BioAPIフレームワーク86は、アプリケーション87に対して、BioAPI関数(BioAPI function)を提供する。アプリケーション87は、BioAPI関数を呼び出すことにより、BioAPIフレームワーク86にアクセスする。
【0009】
なお、多くのBioAPI関数に1対1に対応して、BioSPI関数が存在している。従って、アプリケーション87がBioAPI関数を呼び出すと、BioAPIフレームワーク86が対応するBioSPI関数を呼び出す場合が存在する。この結果、アプリケーション87は、BioAPIフレームワーク86を介して、BSP84にアクセスできる。
【0010】
図4を参照して説明した生体認証装置の製造にあたり、BSP84を提供する企業(ベンダー)は多数存在している。そこで、ベンダーが提供するBSP84が、規格に適合していることを確認するための認証試験が、適合性試験ツール(CTS:Conformance Test Suite)を用いて行われる(例えば、非特許文献1参照)。
【0011】
図5を参照して、適合性試験(製品認証試験)について説明する。図5は、適合性試験について説明するための模式図である。この適合性試験では、CTS88が、BioSPI関数を呼び出して、BSP84に所定の処理を実行させ、その結果が規格に適合しているか否かの判定を行い、適合していれば、そのBSPを製品認証する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】”Information technology - Conformance testing for the biometric application programming interface (BioAPI) - Part 1: Methods and procedures”, ISO/IEC 24709-1の例えばFigure 4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、上述の従来例の適合性試験を行う製品認証方法では、製品認証の対象となるBSPを提供する企業が、そのBSPを認証機関に持ち込んで、その認証機関内で認証試験を行うか、あるいは認証機関の試験実施者がBSPを提供する企業の所在地を訪れて実施する形態が一般的である。
【0014】
しかしながら、BSPの製品認証を行うには、生体認証の専門的な知識が必要であり、設置のための人的および設備的なコストが発生するので、認証機関の開設には様々な制限が生じる。特に、生体認証製品の普及の初期段階においては、国や地域によっては認証機関の設置ができず、結果的に認証機関の数が世界的に見ても数箇所に限られることが考えられる。このため、国内に認証機関が開設されていないなど、認証機関に対して遠隔地のベンダーにとっては、製品認証を受けるために、遠隔地に認証対象となるBSPや装置を技術者とともに移送しなければならないなど不便である。また、一度製品認証を受けたBSPであっても、オプション機能を追加した場合など、更なる認証が必要な場合も多い。このような場合、認証を受けるたびに海外への認証対象製品および技術者の移動が発生してしまい、結果的に認証のコストが大きくなり、製品認証の普及が進まない要因となる。
【0015】
そこで、認証機関とBSPを提供する企業との間の距離の制約を受けない、第三者認証の手法が求められている。
【0016】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、ネットワークを介して接続された、認証試験装置と、試験対象装置とを備えるシステムで、BSPの製品認証を行う生体認証装置の製品認証方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的を達成するために、この発明の生体認証装置の製品認証方法は、ネットワークを介して接続された、認証試験装置と、試験対象装置とを備えるシステムで、バイオメトリックサービスプロバイダの製品認証を行うにあたり実施され、以下の過程を備えている。ここで、認証試験装置は、試験ツール及び認証側フレームワークを有し、試験対象装置は被認証側フレームワーク及びバイオメトリックサービスプロバイダを有する。
【0018】
先ず、試験ツールが認証側フレームワークに指示を送る。次に、認証側フレームワークが、指示を、ネットワークを経て被認証側フレームワークに送る。次に、被認証側フレームワークが、指示を、バイオメトリックサービスプロバイダに送る。次に、バイオメトリックサービスプロバイダが、指示に対応する処理を行い、処理結果を被認証側フレームワークに送る。次に、被認証側フレームワークが、処理結果を、ネットワークを経て認証側フレームワークに送る。次に、認証側フレームワークが、処理結果を、試験ツールに送る。次に、試験ツールが、処理結果が、規格により与えられる条件を満たすか否かを判定する。
【0019】
上述した生体認証装置の製品認証方法の実施にあたり、好ましくは、試験対象装置が、撮影機能を有するデバイスを備えていて、被認証側フレームワークから送られた指示に対応して、バイオメトリックサービスプロバイダが、デバイスを制御することにより被験者に対する撮影処理を行い、処理結果を被認証側フレームワークに送るのが良い。
【0020】
また、予め、被験者の生体情報を認証試験装置に登録しておき、試験ツールが、処理結果と生体情報とにより生体認証を行うのが好適である。
【0021】
また、試験ツールが認証側フレームワークに指示を送る過程の前に、試験ツールが、認証側フレームワーク、ネットワーク及び被認証側フレームワークを経て、バイオメトリックサービスプロバイダに対して、バイオメトリックサービスプロバイダが有する機能を問い合わせる過程と、バイオメトリックサービスプロバイダが、被認証側フレームワーク、ネットワーク及び認証側フレームワークを経て、試験ツールに、機能を通知する過程と、試験ツールが、通知された機能から試験項目を選択する過程とを行うのが良い。
【0022】
さらに、試験ツールが、各試験項目についての処理結果が、規格により定められた条件を満たすか否かの判定結果から、バイオメトリックサービスプロバイダを認証するか否かを判断するのが好適である。
【発明の効果】
【0023】
この発明の生体認証装置の製品認証方法によれば、認証試験装置と、試験対象装置がネットワークを介して接続されているシステムで実施されるので、認証側に生体認証の専門的な知識を有する実施者がいれば良く、被認証側には、生体認証の専門的な知識を有する者がいなくても良い。このため、認証機関から遠隔地のベンダーであっても、BSPを認証機関にもちこむことなく製品認証を受けることができる。また、製品認証を行うにあたって、生体認証試験を併用すれば、より信頼性の高い試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】生体認証装置の製品認証システムの概略図である。
【図2】生体認証装置の製品認証方法について説明するためのシーケンス図である。
【図3】生体認証装置の製品認証方法を行うシステムについて説明するための模式図である。
【図4】生体認証装置の模式図である。
【図5】適合性試験について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0026】
(生体認証装置の製品認証システム)
図1を参照して、生体認証装置の製品認証を行うシステム構成について説明する。図1は、生体認証装置の製品認証システムの概略図である。
【0027】
この製品認証システムは、製造者又は供給者である第一者、及び、購入者又は最終使用者である第二者のいずれにも該当しない第三者が製品認証を行う、すなわち、第三者認証を行うシステムである。この第三者認証を行う第三者が、いわゆる認証機関となる。
【0028】
認証機関内には、認証試験装置20が設けられている。認証試験装置20は、階層構造のソフトウェアを有していて、BioAPIフレームワーク26と、BioAPIフレームワーク26が含まれる層の上の層に、アプリケーションを備えている。ここでは、アプリケーションとして、製品認証を行う試験ツールである、適合性試験ツール(CTS:Conformance Test Suit)28が用いられる。
【0029】
認証機関外に、試験対象装置40が設けられている。試験対象装置40は、階層構造のソフトウェアを有していて、BSP44と、BSP44が含まれる層の上の層に、BioAPIフレームワーク46を備えている。この製品認証システムでは、BSP44が製品認証の対象となる。
【0030】
試験対象装置40には、デバイス42が設けられている場合がある。デバイス42は、例えば、カメラなどで構成され、この場合、生体情報を取得するのに用いられる。BSP44は、カメラなどのデバイス42を制御するのに用いられる。
【0031】
試験対象装置40は、例えば、BSP44の製造を行う製造業者の社内や、認証機関としての機能を有さない行政機関などに設けられる。
【0032】
認証試験装置20のBioAPIフレームワーク26及びCTS28は、例えば、認証試験装置20が備えるCPU(図示を省略する。)が所定のプログラムを実行するなど、任意好適な手段でソフトウェアとして実現できる。また、試験対象装置40のBSP44及びBioAPIフレームワーク46も、同様に、ソフトウェアとして実現できる。
【0033】
BioAPIフレームワーク26とアプリケーション(ここでは、CTS)28の間のインタフェースは、BioAPI(Biometric Application Programming Interface)と呼ばれる。CTS28は、BioAPI関数を呼び出すことにより、BioAPIフレームワーク26にアクセスする。
【0034】
BioAPIフレームワーク46とBSP44の間のインタフェースは、BioSPI(Biometric Service Provider Interface)と呼ばれる。BioAPIフレームワーク46は、BioSPI関数を呼び出すことにより、BSP44にアクセスする。
【0035】
認証試験装置20及び試験対象装置40は、インターネット60などネットワークを介して接続される。BioAPIフレームワーク26及び46は、BioAPIインターワーキングプロトコル(BIP:BioAPI Interworking Protocol)30及び50を含んでいる。BIP30及び50は、BioAPI関数をネットワークデータに変換し、ネットワークを経て接続された他のBIPと、ネットワークデータのやり取りをする機能を有している。
【0036】
(生体認証装置の製品認証方法)
図1及び図2を参照して、生体認証装置の製品認証方法について説明する。図2は、生体認証装置の製品認証方法について説明するためのシーケンス図である。
【0037】
製品認証試験の準備として、認証試験装置20と試験対象装置40との間の、ネットワーク接続確認が行われる。ネットワークの接続確認が行われた後、試験項目を決定する。
【0038】
試験項目の決定は、オフライン及びオンラインのいずれの方法で行っても良い。試験項目の決定をオフラインで行う場合は、例えば、試験対象装置40の提供者が、製品認証の申し込みの際、又は、申し込み後に、試験対象装置40のBSP44がサポートしている機能の情報を認証機関に提出する。認証機関では、試験担当者が、認証試験装置20が備える入力装置を用いてCTS28に対して試験項目の入力を行う。
【0039】
一方、試験項目の決定をオンラインで行う場合は、ネットワークの接続確認後、CTS28が、BioAPIフレームワーク26及び46とインターネット60とを介して、BSP44に対して、BSP44がサポートしている機能の情報を要求する指示を送る。この指示を受けたBSP44は、自己がサポートしている機能の情報を、BioAPIフレームワーク26及び46とインターネット60とを介して、CTS28に通知する。CTS28は、試験対象のBSP44がサポートしている機能の情報に基づいて、試験項目を決定する。
【0040】
ここで、BSP44がサポートしている機能は、BSP44が提供するBioSPI関数と、BioSPI関数を呼び出す際に用いられるパラメータなどで与えられる。
【0041】
試験項目が決定された後、製品認証試験が行われる。製品認証試験は、決定した試験項目のそれぞれに対して、CTS28がBSP44に所定の指示を送り、BSP44での処理結果を受け取り、この結果が、規格の要件を満たしているか否かを判定することで行われる。具体的には、以下の過程で行われる。
【0042】
先ず、CTS28が所定のBioAPI関数を呼び出すことにより、認証試験装置20内のBioAPIフレームワーク26(認証側フレームワーク26と称することもある。)に指示を送る(図2中、Iで示す)。
【0043】
認証側フレームワーク26は、CTS28から指示を受けると、その指示を、インターネット60などネットワークを経て試験対象装置40のBioAPIフレームワーク(被認証側フレームワークと称することもある。)46に送る(図2中、IIで示す)。この動作は、認証側フレームワーク26のBioAPI関数が呼び出されると、認証側フレームワーク26内のBIP30が、BioAPI関数の情報をネットワークデータに変換して、インターネット60を介して被認証側フレームワーク46に送ることで行われる。
【0044】
被認証側フレームワーク46は、認証側フレームワーク26から受け取った指示を、BSP44に送る(図2中、IIIで示す)。この動作は、BioAPI関数の情報を受け取った被認証側フレームワーク46が、BSP44の、BioAPI関数に対応するBioSPI関数を呼び出すことで行われる。
【0045】
BSP44は、被認証側フレームワーク46から受けた指示に対応する処理を行う。BSP44は、BioSPI関数の実行結果を、BSP44での処理結果として被認証側フレームワーク46に送る(図2中、IVで示す)。
【0046】
製品認証の対象であるBSP44が、生体情報の取得に用いられるカメラなどのデバイス42に対応して製造されたものの場合は、BSP44は、デバイス42を制御して、例えば、撮影処理を行う。その撮影された画像データが、処理結果として、被認証側フレームワーク46に送られる。
【0047】
なお、撮影など生体情報を取得する際に、被験者による操作など、試験対象装置40側で、操作が必要な場合がある。この場合、CTS28からの指示により、BSP44がデバイス42を制御して所定の表示を行うなどして、被験者に指示すればよい。
【0048】
被認証側フレームワーク46は、BSP44から処理結果を受けると、その処理結果を、インターネット60を経て認証側フレームワーク26に送る(図2中、Vで示す)。この過程では、被認証側フレームワーク46が、BSP44での処理結果として、BioSPI関数の実行結果を受け取ると、被認証フレームワーク46は、BioSPI関数の実行結果を、このBioSPI関数に1対1で対応するBioAPI関数の実行結果に変換する。被認証フレームワーク46のBIP50は、このBioAPI関数の実行結果の情報をネットワークデータに変換した後、インターネット60を介して認証側フレームワーク26に送る。
【0049】
認証側フレームワーク26は、被認証側フレームワーク46からインターネット60を経て受け取ったBSP44での処理結果、すなわち、BioAPI関数の実行結果をCTS28に送る(図2中、VIで示す)。CTS28は、認証側フレームワーク26に対して、BioAPI関数を呼び出すことにより与えた指示に基づく処理結果を、BioAPI関数の実行結果として、認証側フレームワーク26から受け取る。
【0050】
CTS28は、BioAPI関数の実行結果が、予め設定された条件を満たすか否か、すなわち、規格により定められる値となっているか否かを判定する。
【0051】
各試験項目について、それぞれ上述の過程を行う。各試験項目について、CTS28が呼び出したBioAPI関数の実行結果が、予め設定された条件を満たしている場合は、試験対象のBSP44の製品認証がなされる。
【0052】
認証側フレームワーク26と、被認証側フレームワーク46とは、それぞれBIP30及び50を備えていて、このBIP30及び50が、BioAPI関数についての情報をネットワークデータに変換して、インターネット60を介して送受信を行っている。このように、認証側フレームワーク26及び被認証側フレームワーク46内のBIP30及び50を用いることで、CTS28は、インターネット60の存在を意識することなく、認証機関外のBSP44に指示を送り、その指示に基づいてBSP44で処理された処理結果を受け取ることができる。
【0053】
上述した実施形態の生体認証装置の製品認証方法によれば、認証試験装置と、試験対象装置がインターネットなどネットワークを介して接続して実施されるので、認証試験装置が設置されている認証機関内に製品認証試験を実施するための生体認証に関する専門的な知識を有する実施者がいれば良く、試験対象装置が設置される認証機関外には、生体情報取得の指示に従うだけであるため生体認証の専門的な知識を有する者がいなくても良い。このため、認証機関から遠隔地のベンダーであっても、BSPを認証機関にもちこむことなく製品認証を受けることができる。
【0054】
なお、生体情報の取得には、被験者が必要になるが、被験者には、生体認証を行う一般の使用者と同程度の知識があれば良く、生体認証に関する専門的な知識は不要である。
【0055】
また、この生体認証装置の製品認証方法によれば、認証試験装置と、試験対象装置がインターネットなどネットワークを介して接続されたシステムで行うことができる。この場合、BioAPI関数に関する情報はネットワークデータとしてBioAPIフレームワーク間でやり取りされる。このため、認証試験装置と試験対象装置のプログラムが同じプラットフォームで作成されていなくても良く、Windows(登録商標)と、Unix(登録商標)など、異なるプラットフォームで作成されていても、この実施形態の生体認証装置の製品認証方法の実施が可能になる。従って、認証機関では1つのプラットフォームについてのCTSを用意すれば良く、プラットフォームごとにCTSを用意する必要はない。
【0056】
ここで、試験対象装置40には、BioAPIフレームワーク46が設けられているが、BioAPIフレームワーク46が規格を満たしているか否かについては、標準化が進められている試験手順に従って認証試験を行うなどして、予め、規格を満たしていることの認証試験を行っておけばよい。
【0057】
また、一般に、BioAPIフレームワークには、BioAPI関数のパラメータが規定の範囲に入っているかなど、エラーチェックを行う機能が設けられている。しかしながら、BSPの製品認証試験を行うに当たっては、BioAPIフレームワークでのエラーチェックを行わずに、呼び出されたBioAPI関数の情報をそのまま、他のBioAPIフレームワークに送る、スルーモードを設けるのが良い。このスルーモードを設けることで、想定外のパラメータがBioSPI関数に与えられた場合の振る舞いに関して、試験の透明性が高まる。
【0058】
(生体認証装置の製品認証方法の他の構成例)
上述した製品認証方法により、BioSPI関数が規格に準拠していることの認証、すなわちBSPの製品認証を行うことができる。
【0059】
なお、例えばカメラなど、生体情報の取得機能を有するデバイス42の制御に用いられるBSPの製品認証を行う場合は、被験者に対する撮影など生体情報を取得することがある。そこで、製品認証を行うにあたり、生体認証を組み合わせるのが良い。
【0060】
図3を参照して、生体認証装置の製品認証方法の他の構成例について説明する。図3は、生態認証を併用した、生体認証装置の製品認証方法を行うシステムについて説明するための模式図である。
【0061】
この構成例は、認証試験装置21内に、データベース(DB)32とBSP24が設けられている点が、図1を参照して説明した製品認証システムと異なっている。その他の点は、図1を参照して説明した製品認証システムと同様なので、重複する説明を省略する。
【0062】
予め被験者の生体情報を取得し、認証試験装置21内のデータベース32に、その生体情報(登録情報)を読出し自在に格納しておく。
【0063】
図1及び図2を参照して説明した、各試験項目についてBioSPI関数を呼び出して製品認証試験を行った後、試験対象装置40が被験者の生体情報(試験情報)を取得する。認証試験装置21は、照合用のBSP24を用いて、試験対象装置40が取得した試験情報と、予め認証機関で登録した登録情報を用いて生体認証を行う。
【0064】
このように、製品認証を行うにあたって、生体認証試験を併用することで、より信頼性の高い試験を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
20、21 認証試験装置
24、44、84 BSP
26 BioAPIフレームワーク(認証側フレームワーク)
28、88 CTS
30、50 BIP
32 データベース(DB)
42、82 デバイス
40 試験対象装置
46 BioAPIフレームワーク(被認証側フレームワーク)
60 インターネット(ネットワーク)
80 生体認証装置
86 BioAPIフレームワーク
87 アプリケーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続された、
試験ツール及び認証側フレームワークを有する認証試験装置と、
被認証側フレームワーク及びバイオメトリックサービスプロバイダを有する試験対象装置と
を備えるシステムで、バイオメトリックサービスプロバイダの製品認証を行うにあたり、
前記試験ツールが認証側フレームワークに指示を送る過程と、
前記認証側フレームワークが、前記指示を、前記ネットワークを経て前記被認証側フレームワークに送る過程と、
前記被認証側フレームワークが、前記指示を、前記バイオメトリックサービスプロバイダに送る過程と、
前記バイオメトリックサービスプロバイダが、前記指示に対応する処理を行い、処理結果を前記被認証側フレームワークに送る過程と、
前記被認証側フレームワークが、前記処理結果を、前記ネットワークを経て前記認証側フレームワークに送る過程と、
前記認証側フレームワークが、前記処理結果を、前記試験ツールに送る過程と、
前記試験ツールが、前記処理結果が、規格により与えられる条件を満たすか否かを判定する過程と
を備えることを特徴とする生体認証装置の製品認証方法。
【請求項2】
前記試験対象装置が、撮影機能を有するデバイスを備えていて、
前記被認証側フレームワークから送られた前記指示に対応して、前記バイオメトリックサービスプロバイダが、前記デバイスを制御することにより被験者に対する撮影処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の生体認証装置の製品認証方法。
【請求項3】
予め、前記被験者の生体情報を、登録情報として認証試験装置に登録しておき、
前記試験ツールが、前記撮影処理により得られた生体情報と前記登録情報とにより生体認証を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の生体認証装置の製品認証方法。
【請求項4】
前記試験ツールが認証側フレームワークに指示を送る過程の前に、
前記試験ツールが、前記認証側フレームワーク、前記ネットワーク及び前記被認証側フレームワークを経て、前記バイオメトリックサービスプロバイダに対して、該バイオメトリックサービスプロバイダが有する機能を問い合わせる過程と、
前記バイオメトリックサービスプロバイダが、前記被認証側フレームワーク、前記ネットワーク及び前記認証側フレームワークを経て、前記試験ツールに、前記機能を通知する過程と、
前記試験ツールが、前記通知された機能から試験項目を選択する過程と
を行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体認証装置の製品認証方法。
【請求項5】
前記試験ツールが、前記処理結果が、予め設定した条件を満たすか否かの判定結果から、前記バイオメトリックサービスプロバイダを認証するか否かを判断する過程
を有することを特徴とする請求項4に記載の生体認証装置の製品認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−277515(P2010−277515A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132144(P2009−132144)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】