生分解性エラストマー
種々の態様における本発明は、エラストマー性生分解性ポリマーを提供する。種々の実施態様において、ポリマーは、多官能性アルコール又はエーテルと、二官能性又は高次の酸との反応により、架橋されてエラストマー性生分解性ポリマーを形成するプレポリマーを形成することによって製造される。好ましい実施態様において、プレポリマーの1個以上のOR基とビニルとの官能化、それに続く光重合によりエラストマー性生分解性ポリマー組成物又は材料を製造することにより架橋される。好ましくは、アクリレートは、1個以上のビニルをプレポリマーの骨格に加えてアクリル化プレポリマーを形成するために用いられる。種々の実施態様において、アクリル化プレポリマーは1種以上のアクリル化コポリマーと共重合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
米国政府は、本発明の1つ以上の開発に利用された補助金の支援を提供した。特に、National Institute of Health(NIH)コンタクトナンバーDE013023およびNational Science Foundation(NSF)コンタクトナンバーNIRT0609182は、この出願の1つ以上の発明の開発を支援した。米国政府は、これらの発明に一定の権利を有し得る。
【0002】
関連出願への相互参照
この出願は、同時係属中の2006年1月12日に出願された米国仮出願第60/758,973号および2006年5月25日に出願された米国仮出願第60/803,223号の利益およびそれらへの優先権を主張する。これらの出願の全体の内容は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
生分解性ポリマーは、細胞播種構築物が、損傷組織、又は病変組織を置換するために設計される再生医療を含む、広範囲の生物医学的応用における必須材料である。これらの構築物は、しばしば、宿主に対して炎症を起こすことなく、機械的に動的な環境内で、安定性及び構造的完全性をもたらす必要がある。従って、軟組織の機械的特性と同等の特性を示す強力な生分解性エラストマーを開発する、相当の必要性及び興味がある。一般的な生分解性エラストマーには、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリ(クエン酸ジオール)、星型ポリ(ε−カプロラクトン−co−D,L−ラクチド)、ポリ(トリーメチレンカルボネートーco−ε−カプロラクトン)及びポリ(トリーメチレンカルボネートーco−D,L−ラクチド)が含まれる。
【0004】
しかし、これらのエラストマーは、それらの生分解性が維持される場合、多くの生物医学的応用には不十分とする、例えば、伸長%及びヤング率において反映されるような機械的特性を有している。例えば、機械的強度は、しばしばポリマーの架橋密度に比例するが、分解性は架橋密度に反比例し、受け入れられる機械的強度及び分解性を備えた材料を供給するのは困難である。
【0005】
更に、これらの生分解性エラストマーは、許容される機械的特性を有する材料を製造するために、しばしば、真空下、長時間(例えば、24時間)高温で硬化しなければならない。しかし、これは、薬剤、成長因子、細胞等の温度感受性成分を取り込む用途における、それらの使用を不可能にする。更に、高温による硬化における融液相を通じてポリマーは転移し、生成された泡によって実現可能な形態の複雑さが制限される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
種々の態様において、本発明は、エラストマー性ポリマー組成物、及びその製造方法及び使用方法を提供する。種々の態様において、本発明は、インプラント、及び本発明のエラストマー性ポリマー組成物の種々の実施態様を用いた、このようなインプラントの製造方法を提供する。本発明の更なる態様及び使用を下記に記述する。
【0007】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、in vitro及びin vivoでの生体適合性を有する生分解性エラストマーを提供する。更に、種々の実施態様において、本発明は、得られる組成物の物理的及び化学的性質を調整する方法、ひいては組成物を「調製」する能力を提供する。例えば、種々の実施態様及び組成物において、例えば、エラストマーの引張強度、分解及び膨潤特性の1種以上を、ヒドロゲルを取り込むことで、ポリマーマトリクス中のアクリレート部分の密度を変えることにより、調節することができる。
【0008】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、比較的安価な生分解性光硬化性エラストマー、ポリ(グリセロールセバケートアピジケート)PGSAから製造することができる。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、例えば、in situでの形成を促進する光重合によって数秒で製造することができる。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、アクリル化プレポリマーの成型及び/又は注入を促進し、材料、構造及び種々の装置を形成する、粘性の液状のアクリル化プレポリマーから製造することができる。更に、種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料を形成するために用いられる光開始架橋反応は溶媒を必要としない。
【0009】
種々の態様において、本発明は一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含む架橋ポリエステルを含むエラストマー組成物であって、nが1より大きい整数を表わし、Aが置換又は非置換エステルを表わし、Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わすエラストマー組成物を提供する。架橋の少なくとも一部は、A成分の間でジオイック酸(dioic acid)エステルを形成するポリマー単位の間で架橋する。
【0010】
図1を参照すると、一般式(−A−B−)nの繰り返しポリマー単位を含むエラストマー組成物の実施態様が示されており、置換又は非置換エステルを含むA成分(102)、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む置換又は非置換酸エステルを含むB成分(104)、及び少なくとも一部のA成分(102)の間にジオイック酸エステルを形成する架橋(106)を含む。
【0011】
種々の実施態様において、これらのエラストマー組成物は、下記一般式(I)
【0012】
【化4】
(式中、m、n、p、q及びvは、それぞれ独立して1より大きい整数である)により表わすことのできる部分を含む。
【0013】
種々の好ましい実施態様において、一般式(I)により表わされるエラストマー組成物は、架橋反応を開始するためのアクリレートの光開始剤(又は他のフリーラジカル開始系)の存在下での、UV励起を用いたポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート(PGSA)の架橋に由来する。本発明の方法の種々の実施態様において、1種以上のヒドロゲル、又は他のポリマー前駆体(例えば、アクリレート基を含むために修飾され得る前駆体、例えば、ポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、例えば、アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリロニトリル、n−ブタノール、メタクリル酸メチル、及びTMPTAを含む他のアクリレートをベースとする前駆体、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、Bis−GMA(ビスフェノールAグリシダルメタクリレート)、及びTEGDMA(トリエチレン、グリコールジメタクリレート)、ショ糖アクリレート、及びそれらの組み合わせ)は、ポリマー鎖間の架橋を修飾するためにラジカル重合の前、又はその間にアクリル化プレポリマー(例えばPGSA)と反応することができる。
【0014】
種々の態様において、本発明は、ポリエステルのA成分の少なくとも一部と、一般式−(D)k−C−の少なくとも一部を含む連結を形成する架橋との間で架橋された一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含む架橋ポリエステルを含むエラストマー組成物であって、 Aが置換又は非置換エステルを表わし、Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、Cが置換又は非置換ジオイック酸エステルを表わし、Dが1個以上の置換又は非置換エステルを表わし、kが0より大きい整数であり、nが1より大きい整数であるエラストマー組成物を提供する。エラストマー組成物は、ジオイック酸及びエステルを含む架橋に加え、1種以上の架橋を含み得ることが理解される。
【0015】
図2を参照すると、一般式(−A−B−)nの繰り返しポリマー単位を含むエラストマー組成物の種々の実施態様が示されており;置換又は非置換エステル(202)を含むA成分、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む置換又は非置換酸エステルを含むB成分(204)、及び置換又は非置換ジオイック酸エステルを形成する架橋(206)、ならびにA成分(202)の少なくとも一部の間の置換又は非置換エステル(208)を含む。種々の実施態様において、エステル結合はポリエステルを形成し、例えば、図2におけるpは1を超える整数である。
【0016】
種々の実施態様において、これらのエラストマー組成物は、下記一般式(II)
【0017】
【化5】
(式中、k、m、n、p、q及びvは、それぞれ独立して1より大きい整数である)により表わすことのできる部分を含む。
【0018】
種々の好ましい実施態様において、一般式(II)により表わされるエラストマー組成物は、PGSAと、種々の割合のアクリル化ポリエステル、例えば、一般式−(D)k−C−(ポリマー鎖の間で、Cはジオイック酸エステルを表わし、Dはエステルを表わし、kは1より大きい整数を表わす)の1種以上の架橋を形成するためのPEGDとの共重合に由来する。種々の実施態様において、PGSAに対するPEGDの割合を選択することにより、エラストマー組成物の材料特性を選択することができる。例えば、種々の実施態様において、PGSA−PEG組成物は、弾性特性を有するヒドロゲル材料(例えば、約30%を超える平衡含水率)を提供することができる。
【0019】
種々の実施態様において、本発明は架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、前記エラストマー性生分解性材料が、全体的な架橋密度の関数として実質的に非単調的である分解速度を有する材料を提供する。種々の実施態様において、分解速度はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、又は酸性又はアルカリ性条件中においてin vitroでの分解速度である。種々の実施態様において、分解速度はin vivoでの分解速度である。種々の実施態様において、本発明は、架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、前記エラストマー性生分解性材料が、全体的な架橋密度を増加することによって増加することのできる分解速度を有する材料を提供する。種々の実施態様において、本発明は、架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、前記エラストマー性生分解性材料が、材料の引張ヤング率を実質的に低下させることなく、増加することのできる分解速度を有する材料を提供する。
【0020】
種々の態様において、本発明は、下記工程を含む、生分解性エラストマー性材料の製造方法を提供する。(a)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分を、2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分と反応させて、約300Da〜約75,000Daの範囲の分子量を有するプレポリマーの混合物を形成する工程;(b)前記プレポリマーの混合物をアクリレートと反応させて、アクリル化プレポリマーの混合物を形成する工程;及び(c)前記アクリル化プレポリマー混合物を紫外線で照射して、前記アクリル化プレポリマーの少なくとも一部を架橋し生分解性エラストマー性材料を形成する工程であって、照射の間、前記プレポリマー混合物を約45℃を超えて、好ましくは37℃を超えて、更に好ましくは25℃を超えて加熱しない工程。
【0021】
種々の実施態様において、前記方法は、プレポリマー混合物とアクリレートとの反応の間、又はアクリル化プレポリマー混合物に、1種以上の追加のアクリル化分子(本明細書において、アクリル化コポリマーと呼ばれる)を加えることを含む。デキストラン、ヒアルロン酸、キトサン、及びポリ(エチレングリコール)を含むがこれらに限定されない、種々のコポリマーを用いることができる。
【0022】
種々の態様において、本発明は、下記工程を含む、生分解性エラストマー性材料の製造方法を提供する。(a)(i)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分;及び(ii)2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分を含むプレポリマーを含む溶液を提供する工程;(c)光延反応、熱開始剤を用いた熱開始重合、酸化還元対(redox−pair)開始重合、及び二官能性スルフヒドリル化合物を用いたミカエル型付加反応の1種以上を用いてプレポリマーの少なくとも一部を架橋する工程。
【0023】
本発明の組成物及び材料は広範囲の用途に適している。種々の実施態様において、これらの材料及び組成物の化学的及び機械的特性(及びそれらを調整する能力)のため、それらを、心疾患を治療するための、存在する移植材料が厳しい限界を示す神経欠損を埋めるための有用性を見出すことのできるエラストマーのための興味深い候補となる。
【0024】
例えば、末梢神経が約0.45MPaのヤング率を有し、胸大動脈が0.53MPaのヤング率を有することが報告されている。種々の実施態様において、本発明は、このような生物学的構造を有する機械的整合性を実現することのできる組成物及び材料を提供する。更に、種々の実施態様において、本発明は、例えば、組成物又は材料の膨潤及び/又は分解を、ヤング率を実質的に変化させずに調整することのできる組成物及び材料を提供する。
【0025】
本発明の組成物の及び材料の種々の実施態様は、生物活性剤送達媒体(例えば、抗生物質、薬剤等の送達)、糖尿病性潰瘍のためのパッチ、付着を防止するための腹部インプラント、生分解性接着剤、in vivo及びin vitroセンサー、カテーテル、外科用接着剤、心臓、胆管、腸管ステント、金属用コーティング、微細加工用途(例えば、毛細管ネットワーク)、標的薬剤送達、血液代用等を含む用途のための長期循環粒子、機械的に負担のかかる環境(例えば、関節内)のための注射用薬剤送達システムを含むがこれらに限定されない、種々の医療用途において用いることができ、例えば、材料は、動的又は静的な外部架橋、分解可能なO−リング、セプタム等により妥協することのない制御された方法で薬剤を放出するように構成することができる。
【0026】
本発明の組成物及び材料の種々の実施態様は、吸収性衣類(例えば、使い捨ておむつ、失禁用プロテクター、パンティーライナー、生理用ナプキン等)、チューイングガム(例えば、栄養物の送達のため)、インフレータブル・バルーン、疑似餌、毛針、使い捨てバッグ、可食性フィルム(例えば、食品の新鮮味を保護するが、消化管内で生分解されるフィルム)、分解可能なフィルム(サランラップ/セロファンに代わるもの)、一般的な包装(例えば、たい肥又は埋め立て地において分解可能なもの)、香り及び芳香のあるバリア、食品容器、包装用途のための分解可能な発泡体、分解可能なフィルター、毛髪製品(例えば、従来のワックスに代わるもの)、農業用の播種用ストリップ及びテープ、化粧品、材料(例えば、木材)の防腐、制限された及び/又は1回使用のCD、DVD等(例えば、記述されているがコピーできないもの)を含むがこれらに限定されない種々の非医療的用途に用いることができる。
【0027】
種々の実施態様において、本発明は、本発明の架橋ポリエステル組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、粒子、管、球、ストランド、コイル状のストランド、毛管ネットワーク、フィルム、繊維、メッシュ又はシートの形態の前記エラストマー性生分解性材料を提供する。
【0028】
種々の実施態様において、本発明は、本発明のエラストマー性生分解性材料から形成される医療装置を提供する。種々の実施態様において、前記医療装置は、長期にわたる生物活性剤の送達をもたらす。種々の実施態様において、前記医療装置は、in situ移植及び/又は形成される。例えば、種々の実施態様において、前記医療装置は、医療装置を要する部位で本発明のアクリル化プレポリマーを注入し、注入されたアクリル化プレポリマーを紫外線で照射することによって形成される。種々の実施態様において、前記医療装置は、組織修復及び/又は再生を促進するための移植片及び/又はインプラントを含む。
【0029】
種々の実施態様において、本発明の架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、増殖因子、細胞接着配列、ポリヌクレオチド、多糖類、ポリペプチド、細胞外マトリクス成分、及びそれらの組み合わせの1種以上を含む前記材料が提供される。種々の実施態様において、本発明の架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、結合組織細胞、器官細胞、筋細胞、神経細胞及びそれらの組み合わせに播種される前期材料が提供される。種々の実施態様において、本発明の架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、腱細胞、線維芽細胞、靭帯細胞、内皮細胞、肺細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、島細胞、神経細胞、肝細胞、腎細胞、膀胱細胞、尿路上皮細胞、軟骨細胞、及び造骨細胞の1種以上とともに播種される前期材料が提供される。
【0030】
本発明の、前述の、及び他の態様、実施態様及び特徴は、以下の記述及び図面から完全に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
種々の実施形態の詳細な説明
本発明を更に開示する前に、本明細書で用いられる特定の用語の意味を示すために、それらへの理解を与えることが有用と思われる。
【0032】
本明細書で用いられるように、「a」なる冠詞は、「1以上」又は「少なくとも1」を意味するための不明確な意味において用いられる、すなわち、「a」なる冠詞を不明確とすることによる現在の教示のあらゆる成分への言及は、1種以上の成分が存在する可能性を排除しない。
【0033】
本明細書で用いられるように、「生体分子」なる用語は、細胞及び組織内によく見られる、天然又は人工的に生成された(例えば合成又は組換え法により)分子(例えば、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、炭水化物、糖類、脂質、核タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイド等)を意味する。生体分子の特定のクラスには、酵素、受容体、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、成長因子及び化学走化因子等の細胞応答修飾因子、抗体、ワクチン、ハプテン、毒素、インターフェロン、リボザイム、アンチセンス剤、プラスミド、DNA、及びRNAが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書で用いられるように、「生体適合性」なる用語は、in vivoでの実質的に有害な応答を誘発しない物質を表わすことを意図する。
【0035】
本明細書で用いられるように、「生分解性」ポリマーは、生理的又はエンドームな(endosomal)条件下で単量体種に分解されるポリマーである。種々の好ましい実施態様において、ポリマー及びポリマーが生分解された副産物は生体適合性である。生分解性ポリマーは、必ずしも加水分解で分解可能ではなく、完全な分解には酵素の作用を要する。
【0036】
本明細書で用いられるように、「生理的条件」なる用語は、組織の細胞内及び細胞外体液中で遭遇しそうな化学的(例えば、pH,イオン強度)及び生化学的(例えば、酵素濃度)条件の範囲に関する。ほとんどの組織について、生理的pHは、約7.0〜7.4の範囲である。
【0037】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、又は「オリゴヌクレオチド」なる用語は、ヌクレオチドのポリマーを意味する。「ポリヌクレオチド」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」なる用語は同じ意味で用いられる。通常、ポリヌクレオチドは少なくとも3個のヌクレオチドを含む。DNA及びRNAはポリヌクレオチドである。ポリマーには、天然のヌクレオチド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)、ヌクレオシド類似体(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、C5−プロピニルシチジン、C5−プロピニルウリジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、及び2−チオシチジン)、化学的に修飾された塩基、生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基)、挿入塩基、修飾糖類(例えば、2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)、又は修飾リン酸基(例えば、ホスホロチオエート、及び5’−N−ホスホラミダイト結合)が含まれる。
【0038】
本明細書で用いられるように、「ポリペプチド」、「ペプチド」、又は「タンパク質」には、ペプチド結合によって一緒に結合した少なくとも3個のアミノ酸の配列が含まれる。ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」なる用語は同じ意味で用いられる。ペプチドは、個々のペプチド又はペプチドの集合を意味し得る。本発明のペプチドには、好ましくは天然のアミノ酸のみが含まれるが、当該技術分野において公知であるような非天然のアミノ酸(すなわち、天然には発生しないが、ポリペプチド鎖に挿入され得る化合物、例えば、機能的イオンチャンネルに首尾良く挿入される非天然のアミノ酸の構造を示す、http://www.cco.caltech.edu/〜dadgrp/Unnatstruct.gif参照)及び/又はアミノ酸類似体が代わりに用いられ得る。また、本発明のペプチド中の1個以上のアミノ酸は、例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、結合のためのリンカー、官能基化、又は他の修飾等の化学物質の付加によって、修飾されてもよい。好ましい実施態様において、ペプチドの修飾は、より安定なペプチド(例えば、in vivoでのより長い半減期)をもたらす。これらの修飾には、ペプチドの環化、D−アミノ酸の挿入等が含まれる。修飾は、ペプチドの所望の生物学的活性を実質的に妨害すべきでない。
【0039】
「多糖類」、「炭水化物」、又は「オリゴ糖」なる用語は、糖のポリマーを意味する。「多糖類」、「炭水化物」、及び「オリゴ糖」なる用語は同じ意味で用いられる。通常、多糖類には、少なくとも3個の糖が含まれる。ポリマーには、天然の糖(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、リボース、及びキシロース)及び/又は修飾糖類(例えば、2’−フルオロリボース、2’−デオキシリボース、及びヘキソース)が含まれる。
【0040】
本明細書で用いられるように、「生物活性剤」は、生物学的又は化学的現象を、変更、阻害、活性化又は影響する、化合物又は構成要素を意味するものとして用いられる。例えば、生物活性剤には、抗−AIDS物質、抗癌物質、抗生物質、免疫抑制剤、抗−ウイルス物質、酵素阻害剤、神経毒、オピオイド、睡眠薬、抗−ヒスタミン剤、滑沢剤、トランキライザー、抗−痙攣薬、筋弛緩薬及び抗−パーキンソン物質、抗痙攣薬及びチャンネル遮断薬、縮瞳薬及び抗−コリン作用薬を含む筋収縮薬、抗−緑内障化合物、抗寄生虫薬及び/又は抗−原生動物化合物、細胞増殖阻害剤及び抗−接着分子を含む細胞−細胞外マトリクス阻害の修飾因子、血管拡張薬、DNA、RNA又はタンパク質合成阻害剤、抗−高血圧薬、鎮痛薬、抗−発熱薬、ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症剤、抗血管新生因子、抗分泌性因子、血液凝固阻止薬及び/又は抗血栓剤、局所麻酔薬、点眼剤、プロスタグランジン、抗うつ剤、抗−精神病物質、抗嘔吐剤及び造影剤が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施態様において、生物活性剤は薬剤である。
【0041】
本発明において用いるのに適した、生物活性剤及び特定の薬剤の具体例のより完成されたリストは、開示内容全体が参考として本明細書で援用される“Pharmaceutical Substances:Syntheses,Patents,Applications”by Axel Kleemann and Jurgen Engel,Thieme Medical Publishing,1999;the“Merck Index:An Encyclopedia of Chemicals,Drugs,and Biologicals”,Edited by Susan Budavari et al.,CRC Press,1996,及びthe United States Pharmacopeia−25/National Formulary−20,published by the United States Pharmcopeial Convention,Inc.,Rockville MD,2001に見られる。
【0042】
本明細書で用いられるように、「組織」なる用語は、特定の機能を実行するために結合した同じ細胞の集合、及び細胞の周囲のあらゆる細胞外マトリクスを意味する。
【0043】
「置換される」なる用語は、例えば、炭素、窒素、酸素等の分子の1個以上の原子の水素を置換する置換基を有する基を表わすことが意図される。置換基には、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルコキシ、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族又はヘテロ芳香族基が含まれる。従って、「本明細書で記載されたような置換基」等の語句は、1個以上の前記置換基、及びそれらの組み合わせを意味する。
【0044】
「アルキル」なる用語には、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を含む飽和脂肪族基が含まれ、後者は炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル基を意味する。「アルキル」なる用語には、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、及びシクロアルキル置換アルキル基が含まれる。「アルキル」なる用語には、天然及び非天然のアミノ酸の側鎖も含まれる。
【0045】
「アルキルアリール」又は「アラルキル」基は、アリールで置換されたアルキル基(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。
【0046】
「アリール」なる用語には、5−及び6−員環の単環芳香族基、及び多複素環アリール基、例えば、三環系、二環系、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が含まれる。芳香環は、1個以上の環部位において、前述したような置換基と置換され得る。アリール基は、例えば、多環式を形成するために芳香族でない脂環式又は複素環と融合又は架橋することもできる。
【0047】
「アルケニル」なる用語には、前記アルキルへの長さ及び可能な置換における不飽和脂肪族基類似体であるが、少なくとも1個の二重結合を含む不飽和脂肪族基類似体が含まれる。例えば、「アルケニル」なる用語には、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等)、分岐鎖アルケニル基、シクロアルケニル基(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキル又はアルケニル置換シクロアルケニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換アルケニル基が含まれる。用語、アルケニルには、「非置換アルケニル」及び「置換アルケニル」の両方が含まれ、後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素における水素を置換する置換基を有するアルケニル基を意味する。
【0048】
「アルキニル」なる用語には、前記アルキルへの長さ及び可能な置換における不飽和脂肪族基類似体であるが、少なくとも1個の三重結合を含む不飽和脂肪族基類似体が含まれる。例えば、「アルキニル」なる用語には、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、へプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等)、分岐鎖アルキニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換アルキニル基が含まれる。用語、アルキニルには、「非置換アルキニル」及び「置換アルキニル」の両方が含まれ、後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素における水素を置換する置換基を有するアルキニル基を意味する。
【0049】
「アシル」なる用語には、アシル基(CH3CO−)又はカルボニル基を含む化合物及び置換基が含まれる。「置換アシル」なる用語には、1個以上の水素原子を置換する置換基を有するアシル基が含まれる。
【0050】
「アシルアミノ」なる用語には、アシル基がアミノ基に結合している置換基が含まれる。例えば、前期用語には、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイド基が含まれる。
【0051】
「アロイル」なる用語には、カルボニル基に結合したアリール又はヘテロ芳香族基を有する化合物及び置換基が含まれる。アロイル基の具体例には、フェニルカルボニル、ナフチルカルボキシ等が含まれる。
【0052】
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」、及び「チオアルコキシアルキル」なる用語には、酸素、窒素又はイオウ原子などの炭化水素骨格の1個以上の炭素を置換する、酸素、窒素又はイオウを更に含む、前記アルキル基が含まれる。
【0053】
「アルコキシ」なる用語には、酸素原子に共有結合した、置換及び非置換アルキル、アルケニル、及びアルキニル基が含まれる。アルコキシ基の具体例には、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びペントキシ基が含まれ、シクロペントキシ等の環状基が含まれる。
【0054】
「アミン」又は「アミノ」なる用語には、窒素原子が、少なくとも1個の炭素又はヘテロ原子に共有結合した、化合物が含まれる。「アルキルアミノ」なる用語には、窒素が、少なくとも1個の追加のアルキル基に結合した置換基及び化合物が含まれる。「ジアルキルアミノ」なる用語には、窒素原子が少なくとも2個の追加のアルキル基に結合した置換基が含まれる。「アリールアミノ」及び「ジアリールアミノ」なる用語には、それぞれ、窒素が少なくとも1個又は2個のアリール基に結合した置換基が含まれる。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、又は「アリールアミノアルキル」なる用語は、少なくとも1個のアルキル基及び少なくとも1個のアリール基に結合したアミノ基を意味する。「アルカミノアルキル」なる用語は、アルキル基にも結合した窒素原子に結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を意味する。
【0055】
「アミド」又は「アミノカルボキシ」なる用語には、カルボニル又はチオカルボニル基の炭素に結合した窒素原子を含む化合物又は置換基が含まれる。用語には、カルボキシル基に結合したアミノ基に結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を含む「アルカミノカルボキシ」基が含まれる。それには、カルボニル又はチオカルボニル基に結合する炭素に結合するアミノ基に結合するアリール又はヘテロアリール基を含むアリールアミノカルボキシ基が含まれる。「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」、及び「アリールアミノカルボキシ」なる用語には、それぞれ、カルボニル基の炭素に順々に結合する窒素原子に結合するアルキル、アルケニル、アルキニル及びアリール基が含まれる。
【0056】
「カルボニル」又は「カルボキシ」なる用語には、酸素原子に二重結合で結合した炭素を含む化合物及び置換基、及びそれらの互変異性型が含まれる。カルボニルを含む置換基の具体例には、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物等が含まれる。「カルボキシ基」又は「カルボニル基」なる用語は、アルキル基がカルボニル基に共有結合した「アルキルカルボニル」基、アルケニル基がカルボニル基に共有結合した「アルケニルカルボニル」基、アルキニル基がカルボニル基に共有結合した「アルキニルカルボニル」基、アリール基がカルボニル基に共有結合した「アリールカルボニル」基等の置換基を意味する。更に、用語は、1個以上のヘテロ原子がカルボニル基に共有結合した置換基をも意味する。例えば、用語には、例えば、アミノカルボニル基(窒素原子がカルボニル基の炭素に結合している、例えばアミド)、酸素及び窒素原子が両方ともカルボニル基に結合している、アミノカルボニルオキシ基(例えば、「カルバメート」とも呼ばれる)等の置換基が含まれる。更に、アミノカルボニルアミノ基(例えば、尿素)には、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、イオウ等、また炭素原子)に結合したカルボニル基の他の組み合わせも含まれる。更に、ヘテロ原子は、更に、1個以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アシル等の置換基で置換されていてもよい。
【0057】
「エーテル」なる用語には、2個の異なる炭素原子又はヘテロ原子に結合した酸素を含む化合物又は置換基が含まれる。例えば、用語には、他のアルキル基に共有結合している酸素原子と共有結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を意味する「アルコキシアルキル」が含まれる。
【0058】
「エステル」なる用語には、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子に結合している炭素又はヘテロ原子を含む化合物及び置換基が含まれる。「エステル」なる用語には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルキル、アルケニル、又はアルキニル基は前述した通りである。
【0059】
「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」なる用語には、−OH又は−O−を含む置換基が含まれる。
【0060】
「ハロゲン」なる用語には、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素等が含まれる。「過ハロゲン化」なる用語は、一般に、全ての水素がハロゲン原子によって置換された置換基を意味する。
【0061】
「ヘテロ原子」なる用語には炭素又は水素以外のあらゆる分子の原子が含まれる。好ましいヘテロ原子は、窒素及び酸素である。「複素環」又は「複素環式」なる用語には、1個以上のヘテロ原子を含む飽和、不飽和の芳香族(「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」)及び多環式環が含まれる。複素環式基は置換されても、置換されていなくてもよい。複素環式基の具体例には、例えば、ベンゾジオキサゾール、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾキサゾール、クロメン、デアザプリン、フラン、インドール、インドリジン、イミダゾール、イソキサゾール、イソインドール、イソキノリン、イソチアゾール、メチレンジオキシフェニル、ナフトリジン、オキサゾール、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キノリン、テトラゾール、チアゾール、チオフェン、及びトリアゾールが含まれる。他の複素環には、モルホリノ、ピプラジン、ピペリジン、チオモルホリノ、及びチオアゾリジンが含まれる。
【0062】
「多環式環」及び「多環構造」なる用語には、通常、2個以上の炭素により、環が隣接している、例えば、「融合環」である、2個以上の環を有する置換基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又はヘテロシクリル)が含まれる。隣接していない原子を通じて結合している環は、「架橋した」環と呼ばれる。多環式環のそれぞれの環は、前記置換基によって置換されていてもよい。
【0063】
種々の態様において、本発明は、エラストマー性生分解性ポリマーを形成するために架橋されるプレポリマーを形成するための(図3A参照)、多官能性アルコール又はエーテル(2個以上のOR基(各Rは独立してH及びアルキルである)を有する化合物である)、及び二官能性又は高次の酸(例えば二酸)の反応によって形成される、エラストマー性生分解性ポリマー組成物及び材料を提供する。好ましい実施態様において、架橋は、プレポリマーの骨格における1個以上のOR基とビニルとの官能化(図3B参照)、それに続く光重合によりエラストマー性生分解性ポリマー組成物又は材料を形成することによって実施される。好ましくは、アクリレートは、1個以上のビニルをプレポリマーの骨格に付加し、アクリル化プレポリマーを形成するために用いられる。
【0064】
図3A〜D及び4を参照すると、この製造スキームが概略的に示されている。アクリル化及び重合反応は、ポリマーネットワーク内にいくつかの型の架橋をもたらすことができる。例えば、光重合によるアクリル化ヒドロキシルは、アルキル鎖に酸エステル架橋を(当該技術分野においてメチレン鎖としても知られている)(例えば、図3C参照)、また、例えば、2個のアルキル化ヒドロキシドが反応した場合、ジオイック酸エステル架橋(例えば、図3D参照)を生産し得る。
【0065】
二酸成分
グルタル酸(炭素5個)、アジピン酸(炭素6個)、ピメリン酸(炭素7個)、スベリン酸(炭素8個)、及びアゼライン酸(炭素9個)を含むが、これらに限定されない、多種多様の二酸、又は高次の酸を、本発明の種々の態様のエラストマー性生分解性ポリマー組成物及び材料の形成において用いることができる。具体的な長鎖二酸には、10個を超える、15個を超える、20個を超える、25個を超える炭素原子を有する二酸が含まれる。非脂肪族二酸を用いることができる。例えば、1個以上の二重結合を有する前記二酸の形態を、グリセロール−二酸−コポリマーを生成するために用いることができる。アミン及び芳香族基を炭素鎖中に組み入れることができる。具体的な芳香族二酸には、テレフタル酸及びカルボキシフェノキシプロパンが含まれる。また、二酸は置換基を含んでもよい。例えば、種々の実施態様において、アミン及びヒドロキシル等の反応基を、架橋に利用できる部位を増やすために用いることができる。種々の実施態様において、アミノ酸及び他の生体分子を、ポリマーの生物学的特性を修飾するために用いることができる。種々の実施態様において、芳香族基、脂肪族基及びハロゲン原子を、ポリマー内の鎖内相互作用を修飾するために用いることができる。
【0066】
プレポリマー
種々の実施態様において、本発明のプレポリマーには、ジオール、又は高次の部分及び二酸、又は高次の酸、部分が含まれる。種々の実施態様において、プレポリマーには、テトラデカ−2,12−ジエン−1,14−ジオール等の不飽和ジオール、ポリエチレンオキシド、及びN−メチルジエタノアミン(MDEA)等のマクロモノマージオールを含む他のジオールが含まれる。これらのプレポリマーへの取り込みに加え、例えば、アクリレート化学によって、得られた架橋ポリマーにジオールを取り込むことができる。例えば、ジオールは最初にアクリル化され、次いで、ラジカル重合反応を用いてアクリル化プレポリマーと結合し得る。種々の実施態様において、例えば、タンパク質及び成長因子をプレポリマーに結合させるために、アルデヒド及びチオールを用いることができる。
【0067】
プレポリマーへのビニル付加
ビニルを有するプレポリマーを官能化するために、種々の技術を用いることができる。種々の好ましい実施態様において、アクリレートは例えばアクリレートモノマーである。適切なアクリレートモノマーの具体例には、メタクリレート、メタクリル酸ビニル、マレイン酸メタクリレート(maleic methacrylate)、及び構造
【0068】
【化6】
(式中、R1はメチル又は水素であってよく;R2、R2’及びR2’’はアルキル、アリール、複素環、シクロアルキル、芳香族複素環、多環式アルキル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、ハライド、カルボン酸、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、アミド、カルバモイルチオエーテル、チオール、アルコキシ、又はウレイド基であり得る)を有するものが含まれるが、これらに限定されない。R2、R2’及びR2’’は、アルキル、アリール、複素環、シクロアルキル、芳香族複素環、多環シクロアルキル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、ハライド、カルボン酸、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、アミド、カルバモイル、チオエーテル、チオール、アルコキシ、又はウレイド基を含む分岐又は置換基を含んでもよい。適切なアクリレートモノマーの具体例には、
【0069】
【化7】
が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
アクリレートモノマーに加え、本発明の種々の実施態様に従う光重合により架橋され得る、官能化されたプレポリマーを形成するために、他の試薬を用いることができる。このような試薬の具体例には、グリシジル、エピクロロヒドリン、トリフェニルホスフィン、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、ジビニルアジペート、及び触媒として酵素を用いたジビニルセバケート、ホスゲン型試薬、二酸塩化物、ビス酸無水物、ビスハライド、金属表面、及びそれらの組み合わせがが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
種々の実施態様において、例えば、プレポリマーのフリーカルボキシル基を用いて、プレポリマー骨格にビニル基を組み入れることができることが理解される。例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートは、カルボニルジイミダゾール活性化化学を用いて、プレポリマーのCOOH基を通じて組み入れることができる。
【0072】
ビニル基は、プレポリマーの骨格に、触媒を用いても用いずとも組み入れることができるが、触媒の使用が好ましい。種々の実施態様において、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、N−ヒドロキシスクシンイミド、カルボジイミド、及びピリジンを含むがこれらに限定されない、多種多様の触媒を用いることができる。好ましくは、反応は溶媒中で実施され、適切な溶媒の具体例には、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
種々の実施態様において、プレポリマーのアクリル化は、無水ジクロロメタン中におけるプロポリマーと塩化アクリロイルとの反応(触媒としてトリエチルアミン及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(4−DMAP)の存在下)によって実施することができる。これらの試薬を用いて、この反応を非常に乾燥した状況で実施することが好ましい。得られたアクリル化の具体例を、図3Bに概略的に示す。全ての結合の可能性、及び得られる生成物が図3Bに示されるとは限らないことを理解すべきである。例えば、プレポリマーの骨格のOH基が優先的にアクリル化されるが、カルボン酸基も修飾され得ると考えられる。
【0074】
プレポリマーのアクリル化の程度は、得られる架橋ポリマーの特性を調整するために用いることができる。従って、種々の態様において、本発明は、特定の物理的及び機械的特性を有するエラストマー性ポリマーの製造方法を提供する。種々の実施態様において、アクリル化の程度、及びアクリレート基における置換基の使用を、分解及び膨潤及び機械的特性等の特性を制御するために用いることができる。
【0075】
得られるヒドロキシル基に対する塩化アクリロイルのモル比は、アクリル化の程度を調整するために変化し得る。種々の実施態様において、アクリル化プレポリマーは、溶媒なしで硬化し得る粘稠液である。従って、種々の実施態様において、本発明は、エラストマー性生分解性組成物又は材料を形成するための、アクリル化プレポリマーのin vivoでの硬化方法を提供する。
【0076】
光重合
種々の実施態様において、アクリル化プレポリマーは、例えば、光開始重合、光重合等のフリーラジカル開始反応を用いて、ポリマーネットワークに導入される。種々の好ましい実施態様において、アクリル化プレポリマーを、光開始剤の存在下に光(通常は紫外線(UV))で照射し、反応を促進する。適切な光開始剤の具体例には、2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン、2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(Irgacure2959)、1−ヒドロキシシクロヘキシル−1−フェニルケトン(Irgacure184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(Darocur1173)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure369)、メチルベンゾイルホルメート(Darocur MBF)、オキシーフェニルー酢酸−2−[2−オキソ−2−フェニルーアセトキシーエトキシ]−エチルエステル(Irgacure754)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(Irgacure907)、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(Darocur TPO)、ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)(Irgacure819)、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。種々の好ましい実施態様において、反応を促進するために、アクリル化プレポリマーは、光開始剤の存在下に可視光(通常は青色光)で照射される。可視光のための光開始剤の具体例には、中でもカンファーキノンが含まれる。
【0077】
種々の実施態様において、例えば、in vivoでの光重合及び他の医療用途では、細胞適合性のある光開始剤の使用が好ましく、 制御因子によって要求される可能性がある。広範囲のほ乳類細胞タイプ及び種にわたって、光開始剤Irgacure2859は最小の細胞毒性(細胞死)を引き起こすことが報告されている;
架橋及びポリマーネットワーク
ポリマーネットワークの形成において、ネットワークの架橋及びポリマーらせん構造は同質でないことが理解される。例えば、図3C及び3Dは、PGSAを用いて本発明の光重合法により形成されたポリマーネットワークの部分の具体例を概略的に示す。
【0078】
本発明の種々の態様において、ポリマーネットワークにおける異なる架橋の形成は、得られるポリマーの特性を調節、又は「調整」するために用いられる。例えば、図4は、PGSA及びPEGDを用いて本発明の光重合法により形成されたポリマーネットワークの部分の具体例を概略的に示し、図3C及び3Dに示したように、架橋は、実質的にPGSA−PEGポリマーネットワーク中にも存在することが理解される。
【0079】
種々の実施態様において、コポリマーを含まない本発明の組成物から形成される生分解性材料は、以下の特性の1以上、すなわち、(a)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約1.5MPa未満の引張ヤング率;(b)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.05MPaを超える引張ヤング率、及び約45%より大きい伸長;(c)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.4MPa〜約0.55MPaの範囲のヤング率;(d)約170%を超える最大伸長;(e)約0.25〜約0.35の範囲のアクリル化の程度、ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、0.3〜0.5MPaの範囲のヤング率;(f)約0.35〜約0.45の範囲のアクリル化の程度、ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.7〜1MPaの範囲のヤング率;(g)約0.25〜約0.5の範囲のアクリル化の程度、及び約40%を超える伸長を有して提供される。
【0080】
「コポリマー」ネットワーク
種々の態様において、本発明は、本発明のアクリル化プレポリマー、及びアクリル化プレポリマーのアクリル化プレポリマー及び/又はヒドロキシル基のアクリレートに官能化された1種以上の分子(本明細書においてコポリマーと呼ばれる)から形成される、エラストマー性生分解性ポリマー組成物、及び材料を提供する。1種以上のヒドロゲル、又は他のポリマー前駆物質(例えば、ポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、例えば、アクリル酸、アクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリロニトリル、n−ブタノール、メタクリル酸メチル、及びTMPTAを含む、アクリレートをベースとする前駆体、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、Bis−GMA(ビスフェノールAグリシダルメタクリレート)、及びTEGDMA(トリエチレン、グリコールジメタクリレート)等の、アクリレート基を含むように修飾され得る前駆体、アクリル酸ショ糖等、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。多種多様のコポリマーは、ポリマー鎖間の架橋を修飾するためのラジカル重合の前、又はその間に、アクリル化プレポリマー(例えば、PGSA)と反応することができる。
【0081】
種々の実施態様において、本発明は、プレポリマーを形成するための、多官能性アルコール又はエーテル(2個以上のOR基を有し、Rが独立してH及びアルキルである組成物)及び二官能性又は高次の酸(例えば、二酸)の反応によって形成されるエラストマー性生分解性ポリマー組成物及び材料を提供する(例えば、図3Aを参照)。種々の実施態様において、プレポリマーの少なくとも一部がビニル基で官能化され、形成される1種以上のコポリマーと反応するアクリル化プレポリマーの混合物を形成する。アクリル化反応の前、反応の間、プレポリマーのアクリル化の後、又はそれらの組み合わせに、コポリマーを加えられることが理解される。次いで、得られた混合物は光重合され、ポリマーネットワークを形成する。種々の好ましい実施態様において、コポリマーはアクリル化され、アクリル化コポリマーはアクリル化プレポリマーと結合する。種々の実施態様において、コポリマー及び/又はプレポリマーの、非対称性モノアクリレート分子(例えば、アクリロイル−ポリ(エチレングリコール)−N−ヒドロキシスクシンイミド)とのアクリル化は、例えば、更に修飾(例えば、細胞接着分子の付加)することのできる固定部分(anchoring moeity)をもたらす。
【0082】
本発明の種々の態様において、ポリマーネットワーク中の種々の架橋の形成が、得られるポリマーの特性を調節又は「調整」するために用いられる。例えば、種々の実施態様において、2種以上のタイプの架橋(例えば、炭素の数、置換基の種々のタイプ、例えば、芳香族基はより強固である)が、得られるポリマーネットワークの特性を調整するために用いられる。種々の実施態様において、アクリル化プレポリマー(例えば、PGSA)は、例えば、架橋ポリエステルの1種以上の膨潤の調整、分解の調整及び抗汚染特性をもたらす割合でコポリマー(例えば、PEG)と結合し得る。
【0083】
例えば、種々の実施態様において、アクリル化プレポリマーの他のアクリル化コポリマーとの結合は、柔軟なヒドロゲルへの硬い分解性エラストマーを剛体材料とする特性を有する分解性材料を得るために用いられ得る。図5A及び5Bは、材料中のアクリル化プレポリマー及びコポリマーの比を調節することにより、種々の化学的及び物理的特性を調整することができる範囲を概略的に示す。図5Aは、PGSA−PEG組成物又は材料についての調整を示し、図5Bは、PGSA−デキストランについての調整を示す。更に、本明細書で議論するように、更なる特性の調整は、プレポリマー、コポリマー又は両方ののDAを調整することによって実現することができる。
【0084】
種々の実施態様において、液状のアクリル化プレポリマーマトリクスが、アクリル化ヒドロゲル前駆体と結合され、通常は典型的であるヒドロゲル材料と関連のない機械的、生分解的及び膨潤特性を付与する(図12参照)。20%(w/w)ポリ(エチレングリコール)ジ−アクリレート(PEGD、700Da)から形成されるヒドロゲルは、例えば、水中で14%の伸長、0.54MPAのヤング率、及び0.063MPaの極限強度を示す。PEGをPGSA(DA=0.5)と組み合わせることにより、ヤング率、極限強度、伸長及び膨潤比を正確に制御することができる(図12参照)。アクリル化プレポリマー濃度を上昇させることにより、伸長は4%から60%に、ヤング率は20MPaから0.6MPaに、極限強度は0.890MPaから0.027MPaになる(図12参照)。PEGDのアクリル化プレポリマー(DA=0.5)(50:50)との共重合により形成されるネットワークは、破断点伸びを維持しながら、10倍高いヤング率、通常のPEGDAヒドロゲルよりも優れた極限強度を示す(図12参照)。伸長の向上は、50%を超えるPEGDAを含む材料において見出された。また、アクリル化プレポリマーの濃度を10%〜90%の間に調整することにより、これらのネットワークの膨潤挙動は、40%から10%に調整することができる。PGSAエラストマー性ネットワークは、生理的条件において分解可能であり、細胞接着性及び非細胞毒性作用を示す。以上のように、種々の実施態様における本発明は、2種以上のタイプの架橋の取り込みの理論に拘束されることがないため、機械的強度を減少することなく分解速度を増加し得る材料及び組成物を提供する。また、以上のように、種々の実施態様における本発明は、全ての架橋密度と実質的に無関係であり、及び/又は全ての架橋密度の範囲内での全ての架橋密度と実質的に無関係である分解速度を提供することができる。
【0085】
種々の実施態様において、以下の特性の1以上、すなわち、(a)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約17MPa未満の引張ヤング率;(b)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.5MPaを超える引張ヤング率;(c)両方ともASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.6MPaを超える引張ヤング率、及び約20%を超える伸長;(d)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25MPaを超える引張ヤング率及び約1%を超える水中での膨潤;(e)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25MPaを超える引張ヤング率、及び約20%を超える水中での膨潤;(f)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25MPaを超える引張ヤング率、及び約40%を超える水中での膨潤;(g)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25MPaを超える引張ヤング率、及び約80%を超える水中での膨潤;(h)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.4MPa〜約0.55MPaの範囲のヤング率;(i)約60%を超える最大伸長;(j)約100%を超える最大伸長;(k)約160%を超える最大伸長;(l)約0.25〜約0.35の範囲のアクリル化の程度、及びASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.6〜1.0MPaの範囲のヤング率;(m)約0.25〜約0.5の範囲のアクリル化の程度、及び約40%を超える伸長;(n)約0.25〜約0.35の範囲のアクリル化の程度、及びASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.6〜1.0MPaの範囲のヤング率、及び約90〜120の範囲の架橋密度を有する、コポリマーを含む本発明の組成物から形成される生分解性材料が提供される。
【0086】
種々の形態の形成及び製造
本発明の液状アクリル化プレポリマー、及びアクリル化プレポリマー/コポリマー組成物を、多種多様の型及び形状内で加工する。図7A〜Dを参照すると、アクリル化プレポリマーは、加工条件(熱硬化)のために、以前は例えばPGSを用いては不可能であった、本発明の組成物及び材料のナノ粒子及び/又はマイクロナノ粒子を製造するために用いることができる(図7A)。種々の実施態様において、このような粒子は、例えば、関節、又は他の機械的動的環境において、薬物の放出を制御するのに用いることができる。アクリル化プレポリマーは、本発明の組成物及び材料の非常に薄い薄肉管を製造するために用いることができ(図7B)、管は、約1mmの内径、及び約0.2mmの管厚を有することが示される。種々の実施態様において、このような管は、例えば、小さい直径の人工血管を製造するために用いることができる。アクリル化プレポリマーは、マイクロパターン化表面(図7C)、及び多孔質足場(図7D)を有する本発明の組成物及び材料を提供するために加工することができる。アクリル化プレポリマーは、より厚い(>6mm)形態に加工することもできる。例えば、泡形成のために以前は熱硬化PGSを用いての製造は不可能であった、20mm厚の形態が製造された。種々の実施態様において、実質的に泡の形成のない、より厚い構造への本発明の材料及び組成物を形成する能力は、複雑な構造の形成を容易にする。
【0087】
図7A〜Dに示す構造は、以下のように、0.1%の光開始剤を含むアクリル化プレポリマーを種々の形態内に成型することにより実質的に製造された。足場については、マクロマー溶液をポロゲン(例えば、糖、塩)の上部に注ぎ入れ、次いで、水中におけるUV重合化、及びポロゲン浸出である。マイクロパターン化PGSAについては、アクリル化プレポリマーの薄層を微細パターン化シリコンマスター上にレプリカ成型し、光重合する。管の形成については、アクリル化プレポリマー溶液をガラス鋳型に注ぎ入れ、光硬化する。ナノ/マイクロ粒子は、水中油型乳剤溶媒蒸発法(単一エマルジョン法、single emulsion method)を用いて、アクリル化ポリマーから製造した。
【0088】
製造法
種々の態様において、本発明は、生分解性エラストマー組成物、材料及び装置の製造方法を提供する。種々の実施態様において、室温で光硬化性生分解性エラストマーを製造するために、以下の工程、すなわち(1)例えば、グリセロール及びセバシン酸からプロポリマーを製造し;(2)プレポリマーの骨格上の官能性ヒドロキシル基をアクリル化し、次いで反応生成物を精製し;(3)アクリル化プレポリマーを、光開始剤の存在下に紫外線を用いて光重合する工程を用いることができる。プレポリマーを形成するためにグリセロール及びセバシン酸を用いる場合、得られるエラストマーは、ポリ(グリセロールセバケートアジペート)PGSAと呼ばれる。種々の実施態様において、PGSプレポリマーは、23kDaの重量平均分子量(Mw)、及び約1:1のグリセロール:セバシン酸のモル組成を有する。プレポリマーをビニル基で官能化するために、室温で、種々のモル比の塩化アクリロイルと反応させることができる。
【0089】
種々の実施態様において、プレポリマーを形成するためにグリセロール及びセバシン酸を用い、アクリル化が塩化アクリロイルによる場合、グリセロール−セバケートに対する塩化アクリロイルのモル比が0.3〜0.8であれば、アクリル化の程度(DA)は実質的に直線的に増加し(例えば、図10参照)、PGSAにおけるDAが0.3〜0.8に増加すると、架橋密度を、例えば、約6モル/m3から約185モル/m3に増加させ、架橋間の相対分子量が減少し得る。
【0090】
種々の態様において、室温で生分解性エラストマーを製造するために、プレポリマーを架橋するための、光延反応、熱開始剤を用いた重合、酸化還元対重合反応、二官能性スルフヒドリル化合物を用いたミカエル型付加反応が提供される。
【0091】
種々の実施態様において、光延反応が、プレポリマーを架橋されるために用いられる。例えば、図6Aを参照すると、室温及び圧力条件で、THFに溶解したPGSプレポリマーを、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート及びトリフェニルホスフィンと反応させる。約1時間の反応時間の間に、最終的なエラストマー性架橋ポリエステル組成物生成物が形成された。例えば、この反応の穏和な条件は、例えば、エステル、エポキシド、ハライド等の種々の官能基のエラストマー性架橋ポリエステル組成物への取り込みをも可能にする。
【0092】
種々の実施態様において、一酸はエステル結合側鎖を導入するために用いることができ、モノアルコールは、エーテル結合側鎖を製造するために用いることができる(図6B参照)。
種々の実施態様において、ポリ−βアミノエステルは、遺伝子送達において約束された生体材料のクラスを生成し得る。臨床応用のためのポリ−βアミノエステルの開発における1つの可能性の限界は、高分子量の生成物を合成できない点にある。本発明の光延反応の応用は、側鎖の架橋により高分子量製剤を製造する、この障害を克服するのに有用であり得る(例えば、図6C参照)。従って、種々の実施態様において、本発明には、ポリ−βアミノエステル微粒子を含む遺伝子送達のための粒子が含まれる。
【0093】
更なる用途及び応用
そのエラストマー特性のため、本発明の組成物及び材料は、組織、特に筋組織、動脈及び心臓弁の再生医療を含む多種多様の用途における応用を見出し得る。
【0094】
例えば、種々の実施態様において、本発明の生分解性エラストマー組成物及び材料は、例えば、末梢神経再生のための管の形態で用いることができる。好ましくは、管は、周囲の組織の圧力に耐えるように構成され、その増殖において神経をもたらし、瘢痕組織形成によって実質的に制約されない。末梢神経再生の応用において、材料が官能化され(例えば、GRGDにより)、シュワン細胞の接着及びガイダンスを促進することが好ましい。
【0095】
例えば、種々の実施態様において、本発明の生分解性エラストマー組成物及び材料は、細胞接着及び/又は封入のためのマトリクス、足場又は構造として用いることができる。種々の実施態様において、短いペプチド(例えば、GRGD)は光硬化ポリマーに取り込まれ、細胞接着を増強することができる。これらの短いペプチドの光硬化ポリマーへの取り込みは、官能化ペプチドをPGSAと混合し、次いで光硬化することによって実施することができる。例えば、種々の実施態様において、GRGDペプチドは、ポリ(エチレングリコール)スペーサー及びアクリレート基によって官能化され得る。種々の実施態様において、材料の表面は、例えば、ガイド細胞に対して管の内側でナノパターン化することができる。例えば、神経移植の場合、材料はナノパターン化され、神経移植の間の細胞の誘導、及びシュワン細胞の誘導を増強することができる。
【0096】
種々の実施態様において、本発明は、細胞の封入及び増殖のための3Dマトリクスとしての生分解性エラストマー組成物及び材料を提供する。種々の実施態様において、これらのマトリクスは、幹細胞として構成される。
【0097】
例えば、種々の実施態様において、グリセロールからなる、液状ポロゲン/細胞送達媒体は、封入された幹細胞を保護し、得られたPGSAネットワーク内に多孔を形成するために一時的な基板として形成される。PGSAをグリセロールと混合し、次いでUV硬化し、浸水し、多孔の足場を形成し、これは、水性溶液中で300%以下に膨潤する。グリセロールに分散させたヒト胎児幹細胞をPGSAと混合し、UV硬化し、封入された細胞を接着し、増殖するための環境を整える細胞培養液に入れた。特に、24時間以内に、幹細胞は、足場にグリセロールが拡散したPGSAネットワークに付着し、細胞培養液が足場中に拡散するのが観察された。細胞増殖は7日目まで観察された。多孔性の足場は、試in vitroにおける最小の分解を示し、その3D構造を30日まで維持した。
【0098】
本発明の組成物及び材料のヒドロキシル基は、分子が、バルク又は材料の表面特性を修飾するために接着し得る部位を提供する。例えば、種々の実施態様において、分解速度を低下させるために、tert−ブチル、ベンジル、又は他の疎水基を材料に付加することができる。種々の実施態様において、分解速度及び親水性の調節を容易にするために、メトキシ等の極性有機基を用いることができる。種々の実施態様において、分解速度を上昇させるために、これらの部位における糖類等の親水基の付加を用いることができる。
【0099】
種々の実施態様において、材料の特性を修飾するために、酸をポリマーに加えることができる。例えば、カルボン酸又はリン酸基又は酸性糖を有する分子を加えることができる。種々の実施態様において、硫酸塩及びアミン等の電荷を有する置換基をポリマーに結合させることができる。ポリマーに付加した置換基は、例えば、結合を通じてヒドロキシル基(水素と置換される)に付加され、ヒドロキシル基を置換することによって、ポリマーに結合する有機基に組み込まれることにって、及び/又は結合の一部として、又は結合上の置換基として組み込まれることによって、ポリマー骨格に直接結合される。
【0100】
種々の実施態様において、ポリマーへのこのような非タンパク質性有機又は無機基の結合は、ポリマーの親水性、及び分解速度、及びメカニズムを修飾するために用いることができる。種々の実施態様において、材料の親水性を修飾するために保護基化学を用いることができる。
【0101】
種々の実施態様において、例えば、ポリマーの細胞との相互作用の制御及び/又は制御を容易にするために、生体分子及び/又は生物活性剤をヒドロキシル基に結合するか、ポリマー骨格に組み込むことができる。種々の実施態様において、生体分子及び/又は生物活性剤は、本発明の組成物及び材料に封入される。種々の実施態様において、生体分子及び/又は生物活性剤は、例えば共有結合的、非共有結合的にポリマーに結合し、それにより放出速度が低下する。
【0102】
1種以上の生体分子及び/又は生物活性剤を含む本発明の組成物及び材料の種々の実施態様において、アクリル化の程度、1種以上のコポリマーの割合、又はその両方を調節することによって、1種以上のタイプの架橋の架橋密度が調節され、所望の生体分子及び/又は生物活性剤の放出速度、放出プロフィール、又はその両方を有するエラストマー組成物又は材料が提供される。
【0103】
種々の実施態様において、例えば、傷口に細胞を補充し、及び/又は現場にある、及び/又はマトリクス内に播種された細胞内での特定の代謝的及び/又は増殖的挙動を促進するために、本発明の組成物又は材料を含む創傷包帯/封止剤に、成長因子等の生体分子を組み入れることができる。具体的な成長因子には、TGF−β、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、IGF−I及びII、血管内皮由来成長因子、骨形成蛋白質、血小板由来成長因子、ヘパリン結合性増殖因子、造血成長因子、及びペプチド成長因子が含まれるが、これらに限定されない。種々の実施態様において、インテグリン及び細胞接着配列(例えばRGD配列)は、細胞接着を促進するために、本発明の組成物及び材料に結合することができる。種々の実施態様において、細胞の補充、移動、及び材料の代謝及び分解及び機械的特性をコントロールするために、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン等の細胞外マトリクス成分を、本発明の組成物及び材料と組み合わせることができる。種々の実施態様において、プロテオグリカン及びグリコサミノグリカンは、本発明の組成物及び材料と共有結合的又は非共有結合的に結合することができる。
【0104】
組織工学への応用
本発明の組成物及び材料の化学的及び物理的特性を「調整」する弾性及び能力は、種々の組織の再生における使用のための種々の実施態様を推奨する。種々の実施態様において、例えば、本発明の組成物及び材料は、上皮細胞、結合組織、神経、筋肉、器官、及び他の組織、並びに動脈、靭帯、皮膚、腱、腎臓、神経、肝臓、膵臓、膀胱及び他の組織を再生するために用いることができる。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、骨の石灰化及び形成のための鋳型として用いることができる。
【0105】
組織は、通常、毎日の利用において機械的な力及び変形を経験し、組織の再構築は、しばしば機械的な力に影響される。例えば、心臓及び他の筋肉は、頻繁に使用されると密度や大きさが増加し、使用されないと萎縮する。機械的な力は、ECMの産生及び分解のいずれかを促進する成長因子を産生するための細胞外マトリクス成分を産生する細胞を刺激する。本発明の組成物及び材料の種々の実施態様のように、機械的な力に対する正常な生理的反応を模倣する物質の使用は、機械的な促進が、組織工学によって作製された構築物の培養初期に適用できるよう、正常組織の再生を促進する。
【0106】
例えば、本発明の組成物及び材料の種々の実施態様は、患者の膀胱の一部を組織工学によって作製、又は再生するために用いることができる。種々の実施態様において、平滑筋細胞及び尿路上皮細胞は本発明の組成物及び材料に播種される。インプラントが患者に埋め込まれる前に、細胞は増殖を開始する。軟骨の置換又は再生のために、軟骨が関節の屈曲のように受ける繰り返し剪断及び圧縮力に耐えることのできる本発明の組成物及び材料の種々の実施態様に軟骨細胞を播種することができる。
【0107】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、人工心臓弁を製造するためにも用いることができる。心臓弁は非常に柔軟であり、心拍の周期的な変形を受ける。身体は、通常の生理学的メカニズムを通じて心臓弁中の裂け目を修復し、その結果、生分解性材料で製造された心臓弁を再生することができる。本発明の種々の実施態様において、本発明は、心臓弁の形態に製造され、平滑筋細胞及び内皮細胞を用いて播種され、身体において、新規な非合成的心臓弁の再生を促進する本発明の組成物及び材料を提供する。種々の実施態様において、線維芽細胞を加えることが好ましい。好ましい実施態様において、再生は3ヶ月にわたって起こり、ポリマーの分解速度は、架橋密度を調節することによって、コポリマーの割合を調節することによって、またはその両方によって調節することができる。
【0108】
本発明の組成物及び材料の形態は、特定の組織の再生への応用、並びに他の応用のためにコントロールすることができる。特定の形態の例としては、粒子状、管状、球状、鎖状、コイル状の鎖状、フィルム状、シート状、繊維状、網の目状等が含まれる。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料から毛細血管状ネットワークを形成するために微細加工を用いることができる。例えば、シリコンウェハは、所望のパターンを有する毛細血管状ネットワークを製造するための標準的微細加工技術を用いて加工される。ネットワークは、例えばショ糖等の犠牲層でコーティングされる。アクリル化プレポリマー混合物(コポリマーを含んでもよい)は、犠牲層の上に鋳造され、本明細書に記載された方法に従って硬化される。犠牲層を溶解し、シリコンウェハ中に形成された毛細管状ネットワークのパターンを緩和する本発明の重合した組成物及び材料を放出するために水を用いることができる。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料におけるチャンネルの直径は約7μm、深さは約5μmである。チャンネルについてのサイズの限界は、微細加工技術の分解能により決定されるが、生物学的用途は、5〜10、又は100ミクロン又はそれ以上のオーダーのチャンネルサイズから利益を得る可能性があることが理解される。毛細管状ネットワークは、本発明の組成物及び材料の平らなシートでそれらを覆い、硬化することによってそれらに接近し得る。例えば、架橋されていないポリマーの層は、パターン化された層及び平らな層の間の接着剤として用いることができる。「接着剤」の重合は、2個の片を一緒に組み合わせることができる。アセンブリの更なる硬化は、接着剤の架橋密度を増加させ、接着剤と、本発明の層の平らなパターン化された組成物及び材料との間に共有結合を形成する。種々の実施態様において、本発明の架橋されていない平らな組成物及び材料は、チャンネルを覆うために、パターン化フィルムを覆って硬化される。
【0109】
これらの形態は、多種多様の組織を再生するために用いることができる。例えば、神経の再生を促進するために、ポリマーを管状に製造することができる。傷ついた部位を横切って軸索の移動を導く管の末端に、損傷した神経を注ぎ込む。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、肝臓の組織構造を製造するために用いることができる。例えば、発生した組織に栄養分を輸送する栄養供給源に接触し得る血管及び毛細管ネットワークを模倣する管のネットワークに形成される。細胞は、in vivoでの管のネットワークに補充され、及び/又は血管細胞を播種することができる。管のネットワークの周囲に、本発明の組成物及び材料は、肝臓細胞における細胞外マトリクスの配列を模倣するネットワークに形成し、肝細胞に播種することができる。同様に、本発明の組成物及び材料の種々の実施態様は、繊維状ネットワークに形成し、島細胞に播種し、膵臓の再生医療に用いることができる。本発明の組成物及び材料は、他の様々な細胞、例えば、腱細胞、線維芽細胞、靱帯細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、神経細胞、腎臓細胞、膀胱細胞、腸管細胞、軟骨細胞、造骨細胞、ヒト胎児性幹細胞又は間充織幹細胞等の幹細胞等に播種することもできる。
【0110】
医学的応用
他の医学的応用は、本発明のポリマーの弾性からも有利である。例えば、腹部の手術後、腸管及び他の腹部臓器は、お互いに、及び腹壁と付着しやすい傾向にある。この付着は手術後の炎症が原因であると思われるが、腹部領域に直接送達された抗炎症剤は急速に分散する。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料が、抗炎症剤を腹部領域に送達するために用いられ得る。実施態様において、柔軟で順応性のある生分解性を有する本発明の組成物及び材料を提供することができるため、感染をもたらす内部の臓器を切断することなく、例えば、腹壁に接触させることにより、腹壁と腸管臓器との間に埋め込むことができる。抗炎症剤は、本発明の組成物及び材料から、長期間にわたって、例えば数ヶ月間、放出され得る。この問題を解決するために、以前の研究者はヒドロゲル、ヒアルロン酸をベースとする膜、及び他の材料を用いることを試みたが、これらの材料は体内で急速に分解する傾向にあり、付着を防止するには、より長い期間、存在する必要がある。
【0111】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、金属ステントをコーティングするために用いることができる。実施態様において、柔軟な本発明の組成物及び材料を提供することができるため、ステントを破ることなく拡張させるが、金属ステントの硬さは、本発明の組成物及び材料が、以前の形態を弾力的にとることを防止すると思われる。本発明の組成物及び材料は、例えば、血塊又は瘢痕組織の形成の防止を促進するための1種以上の凝固防止剤及び/又は抗炎症剤を含んでもよい。血管形成剤は、ステント周囲の血管の再形成を促進するために含まれ得る。
【0112】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、「長期間」の医療装置を製造するためにも用いることができる。通常の持続性の医療装置とは異なり、本発明の組成物及び材料は時間がたてば分解するように製造することができ、例えば、生分解性心臓ステントに製造することができる。好ましくは、本発明の組成物及び材料は、ステントの製造のための可塑的に形成する、より硬いポリマーと混合される。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は可塑剤として作用し、移植後に、ステントが所望の形態に拡大される。ステントは、容易な循環を許容するために血管の直径を大きくするが、ステントは生分解性であるため、血栓症なしで周囲の血管の直径を大きくするか、血管を再び閉塞する瘢痕組織によりステントを覆う。ステントが、分解前に同じ場所に残留し、その形態を維持する時間は、患者毎に変化し、患者の血管の閉塞及び年齢(例えば、高齢の患者は治るのにより多くの時間を必要とする)に部分的に依存する。本明細書に示される教示を用いて、当業者は、分解速度を調節するために、例えば、DA、架橋密度、コポリマーを有する実施態様におけるコポリマーの割合の1以上を調節することができる。コーティングされたステントについては、本発明の生分解性ステントは、in situにおいて、生体分子、生物活性剤、又はこれらの組み合わせを放出することもできる。
【0113】
種々の実施態様において、本発明の組成物は、手術用接着剤として用いることができる。生体適合性、生分解性の手術用接着剤は、手術の間の出血を停止するために用いることができるが、外科医が傷を閉じる縫合の前に除去される必要はなく、時間がたてば分解する。現在の手術用接着剤は、しばしば、ウシの組織由来のフィブリンを用いており、合成の手術用接着剤は、クロイツフェルト−ヤコブ症候群(「狂牛病」)の危険を減少する。接着剤を製造するために、ヒドロキシル基の数を増加(例えば、架橋密度を減少することにより)し、生成物を非常に粘着性にすることが好ましい。種々の実施態様において、本発明の手術用接着剤は、1%未満、好ましくは0.5%未満、更に好ましくは0.05%未満の架橋密度を有する。
【0114】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、in vivoでのセンサー及びカテーテルを支持するために用いることができる。ポリマーは、光ファイバーをベースとするセンサーのためのチャンバー内で製造することができ、興味のある領域に挿入されるカテーテルをコーティングすることができる。センサーにおいて、チャンバーは、興味のある分子のための特定の発色団が結合した受容体を含み得る。検体が受容体に付着する場合、発色団は特定の波長で光を放射又は吸収する。吸収又は放射は、光ファイバーに結合した装置によって検出することができる。例えば、センサーは、短期間、10〜15日間の連続的な監視のために用いられる。同様に、カテーテルは、薬剤又は他の低分子又は生物活性剤を特定の部位又は静脈内で定期的に送達するために用いられ得る。本発明の組成物及び材料の種々の実施態様の使用は、2週間以上にわたって用いられるシャント又は他のインプラント周囲に通常に形成される瘢痕組織の形成を減少し得る。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料の分解速度は、それが患者内に設置されている間に有意に分解しないように選択されることが好ましい。
【0115】
薬剤放出用途
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、薬物放出用途のために、例えば、薬物を保持するマトリクスが柔軟である必要がある用途において用いることができる。本発明の組成物及び材料は、弾性である実施態様を提供し得るため、彼/彼女が歩き、走り、座る等につれ、患者と共に移動し得る。本発明の組成物及び材料は分解するにつれ、機械的整合性を維持する実施態様を提供し得るため、装置は、生存期間の終わりに向かって破滅的に失敗する可能性が低く、薬物の急速な放出の危険を減らす。生体分子及び生物活性剤は、全て、供給結合又は非共有結合相互作用を用いて、本発明の組成物及び材料の種々の実施態様と結合し得る。具体的な非共有結合相互作用には、水素結合、静電相互作用、疎水性相互作用及びファンデルワールス相互作用が含まれる。
【0116】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、縫合が困難であるか、通常の生理的メカニズムを通じて適切に治癒されない他の創傷にも用いることができる。例えば、糖尿病は、しばしば下肢において、治癒に長期間かかるか、循環が悪いために適切に治癒しない皮膚損傷(糖尿病性潰瘍)を伴う。これらの損傷に抗生物質又は抗炎症剤を送達するための本発明の組成物及び材料の種々な実施態様の使用は、治癒を助け、創傷の被覆をもたらす。
【0117】
非医療的用途
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、非医療的用途に用いることができる。例えば、おむつは、強靱なエラストマー、及び吸収剤を包む、液体透過性トップシートから製造される。現在、エラストマー性「包装材」に、ポリプロピレンが用いられている。ポリプロピレンは分解性でなく、埋め立て地での分解に10年以上を要する。対称的に、本発明の組成物及び材料は、乾燥した環境では安定であるが、湿潤して2〜4週間以内に埋め立て地に分解される実施態様を提供する。本発明の組成物及び材料の生分解性を利用することのできる同様の生産物には、失禁プロテクター、生理用ナプキン、パンティーライナー、及び創傷包帯が含まれる。同様に、プラスチックバッグ、例えば、ごみ袋を、一部又は全体の本発明のポリマーの種々の態様から製造することができる。本発明の組成物及び材料が単独で用いられる場合、バッグが埋め立て地に到達する前に、架橋密度の上昇、及び/又はコポリマーの割合の増加、及び/又は分解時間を上昇し、有意な分解を防止するためのヒドロキシル基の修飾を実施することが好ましい。
【0118】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、天然資源のみならず、これらの天然資源に依存する動物を保護するために用いることができる。例えば、種々の公開イベントにおいて、ヘリウムを充填したバルーンを開放することが非常に一般的である。バルーンは、最終的には飛び出して、それらを食しようと試みた場合に窒息してしまう動物のいる地球に戻る。対称的に、本発明の組成物及び材料の種々の実施態様で製造されたバルーンは、風雨にさらされることによって分解する。このようなバルーンは、最終的にそれを食した動物によって消化され、いったん分解した動物に対して、継続的に息を詰まらせる危険性は存在しない。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、疑似餌及び毛針を製造するために用いることができる。漁師が疑似餌を紛失した場合、疑似餌は、小川又は湖の底に容易に沈み、最終的に分解される。
【0119】
他の非医療的用途において、本発明の組成物及び材料の種々の実施態様は、チューイングガム用の基礎剤として用いることができる。例えば、材料は、着色剤、調味料、又はガムを製造するための他の添加剤と混合される。咀嚼の間に心地よい口の感触をもたらす適切な微細構造は、種々の分子量、及び架橋密度のポリマーの重合化、及び得られる材料の数分間の咀嚼によって決定することができる。
【0120】
ガムは、ガムをかむヒトに、栄養分(例えば、ビタミン)又は薬剤を送達するためにも適用することができる。栄養分には、健康食品店で入手可能なビタミン及びミネラル、アミノ酸、又は種々の栄養剤等の、FDAが薦める栄養分が含まれる。このような添加剤は、ガムを製造するために、アクリル化プレポリマー(コポリマーを有するか有しない)と容易に混合することができる。種々の実施態様において、栄養分は、共有結合、好ましくは加水分解性の結合によってポリマーに結合し、それは口中に検出される酵素によって溶解する。ガムが咀嚼されると、栄養分又は薬剤は放出され、嚥下される。
【実施例】
【0121】
本発明の態様は、包括的でなく、決して本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきでない、以下の実施例を考慮に入れ、更に理解される。
【0122】
以下の実施例はPGSAネットワークの製造の具体例を提供し、(a)熱硬化ポリ(グリセロールセバケート)(PGS);(b)光硬化ポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート(PGSA);及び(c)光硬化ポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート−コポリ(エチレングリコール)(PGSA−PEG)ネットワークの特性を比較する。実施例において、これらのポリマーは、それらの分解特性(in vitro及びin vivo)、機械的特性及びin vivoでの生体適合性について試験された。
【0123】
(実施例1):PGS、PGSA及びPGSA−PEGコポリマー
プレポリマー及びアクリル化プレポリマーの合成
全ての化学薬品は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI,USA)から購入した。プレポリマーは、等モルのグリセロール及びセバシン酸(Fluka,Buchs,Switzerland)を、120℃のアルゴン雰囲気下で24時間重縮合し、圧力を1トールから40ミリトールに5時間かけて減圧し、粘性液体を得ることによって合成した。プレポリマーのアクリル化は、更に精製することなくプレポリマーから製造した。重縮合を更に24時間継続し、粘性のプレポリマーを得た。この材料を更に精製することなく用いた。
【0124】
火力乾燥丸底フラスコを、PGSプレポリマー(20g、78ミリモルのヒドロキシル基を有する)、200mLの無水ジクロロメタンでチャージし、10%(w/v)溶液を作製した。20mg(0.18ミリモル)の触媒4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(DMAP)を加えた後、反応フラスコを窒素の陽圧下で0℃に冷却し、撹拌した。いったん冷却し、0.1:1.1(モル/モル)の、グリセロールセバケートに対する塩化アクリロイル(PGSプレポリマーにおける0.25〜0.80モル/モルのヒドロキシル基)をゆっくりと加えて反応を開始し、塩化アクリロイルに対して等モル量のトリエチルアミンを同時に加えた。混合物を室温に加温し、窒素雰囲気下で更に24時間撹拌した。生成物を酢酸エチルに溶解し、塩化物を沈殿させ、ろ過し、45℃及び5Paで乾燥し、粘性液体を得た。
【0125】
プレポリマー及びアクリル化プレポリマーの特徴づけ
プレポリマー及びアクリル化プレポリマー試料をCCl3Dに溶解し、1H核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトルを、Varian Unity−300 NMR分光計で記録した。NMRスペクトルについてのppmによる化学シフトを、7.27ppmにおけるCCl3Dの相対基準とした。セバシン酸についての1.2、1.5、2.2ppmにおける−COCH2CH2−CH2−、グリセロールについての3.7、4.2及び5.2ppmにおける−CH2−CH−、及びメチレン基上のプロトンについての5.9ppm、6.1ppm及び6.5ppmにおける−CH=CH2のシグナル強度を計算することにより、組成を決定した。セバシン酸(1.2ppm)のメチレン基、及びアクリル基(5.9、6.1及び6.5ppmの平均シグナル強度)のシグナル強度を、アクリル化の程度(DA)を計算するために用いた。
【0126】
GPC及び1H−NMR分析により確認したように、PGSプレポリマーは23kDaの重量平均分子量(Mw)、及び約1:1のグリセロール:セバシン酸のモル組成を有する。具体的なスペクトルを図8A及び8Bに示す。図8AはPGSプレポリマーのスペクトルを、図8BはPGSAのスペクトルを示す。図8A及び8Bを参照すると、ポリマーマトリクス中のセバシン酸及びグリセロールは、ポリマーマトリクス中のセバシン酸及びグリセロールは、図中、「a」から「e」で標識した炭素上に位置する水素により1.2、1.5、2.2ppm及び3.7、4.2及び5.2ppmで特定された。PGSA上に位置するビニル基は、図中、「f」〜「i」で標識した5.9ppm、6.1ppm及び6.4ppmで特定され、g、f及びI周囲の領域を差し込み図8X02で拡大した。
【0127】
図9A及び9Bは、PGSプレポリマーPGSプレポリマー(902);0.20のDAを有するPGSA(904);PGSA(DA=0.54)(906);熱硬化PGS(908);光硬化PGSA(DA=0.20)(910);及び光硬化PGSA(DA=0.54)(912)のATR−FTIRスペクトルを比較する。PGSAの光硬化後のポリマーネットワークの形成は、メチレン基の振動に関連する2930cm−1におけるバンドの増大、及びビニル結合の振動に関連する1375cm−1におけるバンドの消失によって確認される。
【0128】
アクリレート基の取り込みは、5.9、6.1及び6.4ppmにおけるピークの出現(図8A及び8Bの比較)、ビニル結合の振動に関連する1375cm−1におけるバンドの出現(図9A及び9Bの比較)によるATR−FTIRによって確認された。1H−NMRのシグナル強度から計算したように、加えられた約66%の塩化アクリロイルがプレポリマーに取り込まれ、その結果として図10に示すようにアクリル化の程度は0.17〜0.54の範囲である。更に、NMRデータは、塩化アクリロイルが、セバシン酸由来のカルボキシレート基と比較してグリセロール由来のヒドロキシル基と明らかに優先的に反応することを示す。これは、増加するDAを有する三置換グリセロール由来のプロトンの共鳴に関連する5.2ppmにおけるシグナル強度の増大、及びモノ置換グリセロール由来のプロトンの共鳴に関連する3.7ppmにおけるシグナル強度の減少により示された(図8A及び8Bの比較)。1H−1HCOSY NMR;及び定量的13C−NMR解析は、末端カルボキシレート基の最小(<5%)の置換を示した(データは示さず)。アクリル化後に、PGSAのMwは実質的に変化せずに維持されていた。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、Styragelカラム(HR−4、HR−3、HR−2、及びHR−1のシリーズ、Waters Corp.,Milford,MA,USA)におけるTHFを用いて、PGSプレポリマー及びPGSAのサイズを測定した。
【0129】
光硬化PGSAネットワークの製造
PGSAネットワークは、PGSAを、0.1%(w/w)の光開始剤(2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン)と混合し、1.2mmのスペーサーを有する2枚のスライドガラスの間で、約4mW/cm2における紫外線により開始する、長波長の紫外線ランプ(モデル100AP,Blak−Ray)を用いた10分間の重合反応により製造した。減衰全反射−フーリエ変換赤外分光分析(ATR−FTIR)解析をNicolet Magna−IR 500分光光度計により実施し、架橋反応を確認した。最初にクロロホルムに溶解し、次いで結晶の上部に配置した(a)熱硬化PGSスラブ;(b)光硬化PGSAスラブ;(c)PGSプレポリマー、及び(d)PGSAについて試料を解析した。
【0130】
PEGジアクリレート及びPGSAの共重合
PGSA−PEGジアクリレートのネットワークを、10、50、90%(wt/wt)のPGSA(DA=0.34)を、0.1%(w/w)の光開始剤を含むPEGジアクリレート(MW=700Da)と混合し、次いで、1.2mmのスペーサーを有する2枚のスライドガラスの間で、紫外線を10分間照射する光重合により製造した。機械的検査の前に、光硬化ネットワークを100%エタノールに24時間浸漬し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に24時間浸漬した。ポリ(エチレングリコール)ヒドロゲルを、前述した条件を用いた光重合により、0.1%(w/w)の光開始剤を含むPEGジアクリレート溶液(20%、w/w、水中)から製造した。PBS中での膨潤を以下のようにして決定した。
【0131】
熱的及び機械的特性
熱硬化PGS、光硬化PGSA(DA=0.31、0.54)、及びPGSA(DA=0.34+5%PEGジアクリレート)由来のディスクの熱的特性を、−90℃〜250℃の温度範囲で、10℃の加熱/冷却速度を用いて、示差走査熱量計(DSC)、DSCQ1000、2サイクルを用いて特徴づけた。ガラス転移温度(Tg)を、第二の加熱ランからの熱容量における、中間の記録された階段状の変化として決定した。
【0132】
引張強度試験を、光硬化PGSAシートから切り取った犬の骨の形態のポリマーストリップ(115×25×1.2mm)で実施し、実質的にASTM標準D412−98aに従うInstron 5542を用いて試験を行った。伸長速度は50mm/分であり、全ての試料は伸長に失敗した。値を応力ひずみに変換し、引張ヤング率を、初期傾斜(0〜10%)から計算した。全ての機械的検査は、ゾル内容物の除去後の湿潤条件(PBSに24時間浸漬)で実施した。PGSAシートをエタノール中に24時間浸漬することにより、ゾル内容物、又は未反応のマクロマーを除去した。光硬化したPGSAのゾル含有量、膨潤特性及び乾燥質量を評価するため、ディスク(10×2mm)(n=3)の重量を測定し(W0)、5mLのエタノールに浸漬した。試料をエタノール中に24時間浸漬した後、ポリマーを90℃で7日間乾燥し、再び重量を測定し(W1)、以下の式、Wsol=[((W0−W1)/W1)×100]により、未反応のマクロマーの割合、ゾル含有量(Wsol)を求めた。光硬化PGSAディスク(ゾル内容物なし)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に24時間浸漬し、表面のPBSをティッシュペーパーで除去し、再び重量を測定した(Ws)。膨潤比(SR)をSR=[(WS−W0)/(W0)×100]により求め、W0の割合で表した。エタノール中の光硬化PGSAの膨潤比を同様の方法で評価した。
【0133】
光硬化PGSAの密度を決定するため、50mLの比重びん(Humboldt,MFG.Co)を用いて、予め重量を測定したポリマー試料(n=10)の用量を測定した。開示内容全体が参考として本明細書で援用される、Wang Y,Ameer GA,Sheppard BJ,Langer R.,Nat.Biotechnol 20(6):pp602−6(2002)に実質的に開示されたように、試料の密度及びヤング率を用いて、架橋間(Mc)の架橋密度及び相対分子量を計算した。
【0134】
in vitro分解
試料間の加水分解による全分解及び相対的分解速度を評価するため、熱乾燥硬化PGS、光硬化PGSA(DA=0.31、0.54)、及びPGSA(DA=0.34+5%PEGジアクリレート)ポリマーのディスク(直径10’1.6mm)の重量を測定し(W0)、20mLの0.1mM NaOHに37℃で浸漬した。分解試験の前に、前述のようにしてゾル含有量を除去した。5つの異なる時点(0、1.5、3、4.5及び6時間)に、試料(n=3)を0.1mM NaOHから除去して脱イオン水で洗浄した。試料を90℃で7日間乾燥し、再度重量を測定した(Wt)。残存する乾燥重量[(Wt/W0)’100]を計算した。走査電子顕微鏡による分解試料の表面解析のため、乾燥試料を白金/パラジウムでスパッタコーティングし(厚さ約250オングストロームの層)、カーボンテープを用いてアルミニウムスタブに乗せ、JEOL JSM−5910走査電子顕微鏡で試験を行った。
【0135】
in vitroでの細胞接着及び増殖
ジメチルスルホキシド(DMSO)中で、3,400rpmで5分間、次いで10分間のUV重合によって、20%PGSAを用いて製造した、光硬化PGSA(DA=0.34)スピンコートディスク(直径18、1mm)(n=3)をこの試験に用いた。成功したPGSAスピンコーティング及びそれに続く光硬化を確実にするため、UV硬化を行ったディスク、及び行っていないディスクをクロロホルムに24時間浸し、未反応のマクロマーを溶解させた。得られた表面を光学顕微鏡を用いて試験した。10%ウシ胎仔血清、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を増殖培地として用いた。ヒト包皮線維芽細胞(ATCC CRL−2522)に播種する前に、光開始剤、残存するDMSO、及びあらゆる未反応のモノマーを除去するために、光硬化スピンコートPGSAディスクを、12ウェルプレート中の増殖培地でインキュベートした。2mLの増殖培地を用いて、各ディスクを5,000細胞/cm2に播種した。細胞を、加湿したインキュベータで、37℃、5%CO2中でインキュベートした。4時間のインキュベート後、培養物をPBSで2回洗浄し、付着していない細胞を除去し、細胞培養液でインキュベートした。細胞を4%ホルムアルデヒド溶液で10分間固定し、PBSで、4時間、2.5及び12日間洗浄した。次いで、光学顕微鏡で、ランダムの9箇所の同じサイズのスポット(0.005cm2)で細胞をカウントし、細胞密度を計算した。
【0136】
硬化PGS及びPGSAの特性の特徴づけ及び比較
光開始剤2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノンの存在下におけるPGSAのUV重合は、エラストマー性ネットワークをもたらす。光硬化PGSAエラストマーのATR−FTIR解析(図9A)は、メチレン基の振動に相当する2930cm−1におけるバンドの増加、及びビニル結合の振動に相当する1375cm−1におけるバンドの減少を示す。これは、ほとんどのビニル基が架橋反応に関係していることを示す。3475cm−1における広いピークは、水素結合したヒドロキシル基に帰する。これらの水素結合したヒドロキシル基は、塩化アクリロイルにより修飾されていないフリーのヒドロキシル基から生じると思われる。熱硬化PGS、光硬化PGSA(DA=0.31、0.54)、及びPGSA(DA=0.34+5%PEGジアクリレート)のTgは、それぞれ、−28.12、−32.2、−31.1及び−31.4℃であった。これらの結果は、熱硬化PGS及び光硬化PGSAが37℃で非晶質であることを示す。光硬化PGSAの物理的性質についての更なるデータを表1に示す。
【0137】
【表1】
光硬化PGSAのヤング率及び極限強度はDAに直線的に比例し(データを、図11A、11B及び表1に示す);機械的検査後に持続的な変形は観察されなかった。光硬化PGSAの機械的特性は、約0.05MPA(DA=0.17)から約1.38MPa(DA=0.54)に変化するポリマーの引張ヤング率によって決定されるように、柔軟から相対的に強度にまでわたる。最終の引張強度は、約0.06MPa〜約0.47MPa(図3B)の範囲であるが、光硬化に失敗した光硬化PGSAのストレインは、DAの上昇を伴い、約189%〜約42%である。エタノール及び水中でのエラストマー性ネットワークの膨張率の程度は、それぞれ、約50〜約70%、約8〜約12%である。この程度はDAの関数としては目に見えるほど変化しなかった。エタノール中での膨張率の高い程度は、未反応のモノマーの除去、又は特定の因子の潜在的な取り込みを促進することができる。水中での膨張率の低い程度は、例えば、移植による機械的特性の維持等を促進することができる。
【0138】
ポリマーのゾル含有量は、DAを約0.20から0.54に増加させることによって、約40%から約10%未満に減少する(データを図11Cに示す)。これは、ポリマー鎖間の新規な架橋の数の増加の結果であり、それ故架橋密度に直接関係すると思われる。より低いDA(より柔軟な材料)を用いて達成される高いゾル含有量は、例えば、未反応のマクロマーが周囲の組織に拡散する場合に、in situでの重合に不都合である。機械的特性(ゾル含有量と関係なく測定された)は、DAに実質的に直線的に比例し、これは、ポリマーネットワーク内での新規な架橋の形成と関連する。
【0139】
光硬化エラストマー性ディスクの密度は、DAの増加によりわずかに減少すると思われ(データを表1に示す)、密度が硬化時間に反比例する、他の熱硬化エラストマーと同様である。試料の密度及びヤング率は、架橋密度、及び架橋間の相対分子量(Mc)を計算するために用いられた(データを表1に示す)。光硬化PGSAにおけるDAの約0.17から約0.54へ増加することにより、架橋密度は約6.4から約185モル/m3に増加し、架橋間の相対分子量は約18kDaから約0.6kDaに減少した。
【0140】
PEGジアクリレート及びPGSAの共重合
種々の実施態様において、本発明はアクリル化ヒドロゲル前駆体を含む、光硬化性PGSA組成物を提供する。種々の実施態様において、アクリル化ヒドロゲルの包含は、例えば、一般的なヒドロゲル材料に通常に関連しない、例えば、1種以上の機械的、生分解性、及び膨潤特性を与えるために用いることができる。図12は、種々の割合のアクリル化ヒドロゲルを含む光硬化性PGSA組成物の種々の特性におけるいくつかのデータを示す。ほとんどのヒドロゲル材料は非常に脆弱であり、機械的特性に乏しい。例えば、水中で、20%(w/w)のポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(700Da)から形成されたヒドロゲルは、14%の伸長、0.54MPaのヤング率、及び0.063MPaの極限強度を示す。PEGジアクリレートとPGSA(DA=0.34)の組み合わせにより、ヤング率、極限強度、伸長及び膨潤比は変化し得る(図12に示すデータを参照)。例えば、PGSAの濃度上昇により、伸長は約4%から約60%に増加し、ヤング率は約20MPaから約0.6MPaに低下し、極限強度は0.890MPaから約0.270MPaに低下した。PEGジアクリレートとPGSA(DA=0.34)(50:50)との共重合により形成されたネットワークは、伸長を維持する間、10倍高いヤング率、及び通常のPEGジアクリレートヒドロゲルよりも高い極限強度を示した。更に、ネットワークの膨張特性は、約10%から約90%へのPGSA濃度変化により、約40%から約10%に調整された。
【0141】
in vitro分解結果
PGS及びPGSAポリマーネットワークの間の分解に関する相対的差異を調べるため、高いpHを用いて分解試験を実施し加水分解を促進した。従って、光硬化PGSA(DA=0.31及び0.54)、PGSA(DA=0.34、5%PEGジアクリレートと共重合された)、及びPGSを、開示内容全体が参考文献として本明細書で援用される、Yang J,Webb AR,Pickerill SJ,Hageman G,Ameer GA.Biomaterials;27(9),pp.1889−98(2006)に実質的に開示されているような、水酸化ナトリウム(0.1mM)溶液中で分解した。光硬化PGSA(DA=0.31及び0.54)は、PGSと同様の分解プロフィールを示した。しかし、PGSA(DA=0.31)の重量損失は、PGS及びPGSA(DA=0.54)に比べて有意に高い(P<0.01)。水酸化ナトリウム中における分解の3時間後に、PGSA(DA=0.34、5%PEGジアクリレートと共重合された)の重量損失は、PGS及びPGSA(DA=0.54)に比べて有意に低い(P<0.01)。図13に示すように、5%PEGジアクリレートのPGSA(DA=0.34)との共重合は、光硬化PGSA(DA=0.54)及びPGSと比較して同等の機械的特性を有する(前記及び図12を参照)が、遅い分解速度を有するポリマーをもたらす。これらの結果は、光硬化PGSAのin vitroでの加水分解速度が、開始機械的強度に依存して減少し得ることを示す。水酸化ナトリウム中での3時間後の全ての分解材料のSEM解析は、全体の形態の観察可能な劣化、又は材料の表面における亀裂又は裂け目の形成を示さない(SEMデータを図14Aに示す)。水酸化ナトリウム中で3時間後の全ての分解材料の熱分析は、Tgにおける明らかな変化を示さなかった。
【0142】
in vitroでの細胞接着
in vitroでの細胞培養は、本発明の光硬化PGSAエラストマーの種々の実施態様が細胞接着及び増殖を補助することを示す。光硬化PGSAに播種した、ヒト包皮線維芽細胞の59±12%が4時間後に接着し、生存が観察された。接着した細胞が増殖して密集する細胞単層を形成し(図14A、14B及び14Cを参照)、これは、種々の実施態様において、本発明の光硬化PGSAが細胞接着生体材料として機能し得ることを示す。
【0143】
(実施例2):in vivoでのデータ及び生体適合性
この実施例は、本発明のPGSA組成物の種々の実施態様の機械的特性及び分解速度の調節におけるデータを示す。データは、ポリマー骨格におけるアクリレート基の密度を変化させる効果を示し、データは、低分子量のポリ(エチレングリコール)ジアクリレートの種々の割合と共重合したPGSAの組成物について表わす。データは、生体材料の分解メカニズム及び速度(in vitro内及びin vivo)、及びin vivoでの機械的特性及び生体適合性における、これらの調節の影響を表わす。
【0144】
材料及び方法
プレポリマー及びアクリル化プレポリマーの合成
特に明記しない限り、全ての化学薬品は、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI,USA)から購入した。PGS及びPGSAは、両方とも、開示内容全体が参考として本明細書で援用される、Wang Y.Ameer GA,Sheppard BJ, Langer R.,Nat,Biotechnol 20(6):pp 602−6(2002)に実質的に開示されているように合成した。PGSプレポリマーは、アルゴン雰囲気下での120℃、24時間にわたる、等モルのグリセロール及びセバシン酸(Fluka,Buchs,Switzerland)の縮合、それに続く1トールから40ミリトールの圧力で5時間還元することによって合成された。重縮合を更に24時間続け、粘性のプレポリマーを得た。PGSA合成について、PGSプレポリマーを更に精製することなく用いた。PGSAを、実質的に実施例1に記載されたように、骨格における少ない数のアクリレート基(PGSA−LA)、及び多い数のアクリレート基(PGSA−HA)を用いて合成した。この目的のために、20gのPGSプレポリマー(78ミリモルのヒドロキシル基を有する)、200mLの無水ジクロロメタン、及び4(ジメチルアミノ)−ピリジン(DMAP)(20mg、1.8(10−4)モル)を反応フラスコ中でチャージした。窒素の陽圧下で、反応フラスコを0℃に冷却した。PGSA−LAについて、等モル量のトリエチルアミンと平行して、塩化アクリロイル(37ミリモル)をゆっくりと加えた。PGSA−HAについて、等モル量のトリエチルアミンと平行して、塩化アクリロイル(48ミリモル)をゆっくりと加えた。反応物を室温にし、更に24時間撹拌した。得られた混合物を酢酸エチルに溶解し、ろ過し、45℃及び5Paで乾燥した。
【0145】
光硬化PGSA−LA及びPGSA−HAシートは、PGSAを0.1%(wt/wt)の光開始剤(2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン)と混合し、10分間1.6mmのスペーサーを有する2枚のスライドガラスの間で紫外線ランプ(モデル100AP,Blak−Ray)からの約4mW/cm2のパワー密度で、紫外線により重合反応を開始することによって製造された。0.1%(wt/wt)の光開始剤、及び5%(wt/wt)のPEG−ジアクリレート(Mw=700Da)と混合されたPGSA−LAは、PGSA−LA/HAについて開示されたようにして光硬化された。1.6mmのPGSプレポリマーシートを、40ミリトール、140℃で16時間熱硬化した。ポリマーシートを、100%エタノール中で、24時間洗浄した。未反応のマクロマー及び光開示剤を除去するため、60℃のオーブン中で24時間乾燥させた。in vivoでの移植の48時間前、ポリマーシートを、層状のフローフード内で40分間UV照射してシートを滅菌し、次いで、100、70、50、30%(エタノール/無菌のリン酸緩衝食塩水(PBS))中で10分間洗浄し、無菌のPBS中に入れた。
【0146】
プレポリマー及びアクリル化プレポリマーの特徴づけ
プレポリマー及びポリマーの特徴づけは、実質的に実施例1に記載したように実施した。
【0147】
移植
体重200〜250gの若い成熟雌ルイスラット(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)を2つのグループに収容し、自由に水及び食餌を与えた。実験動物の世話及び使用についてのNIHのガイドライン(NIH publication #85−23,reviewed1985)に従う、マサチューセッツ工科大学のアニマルケア委員会の認可されたプロトコールに従って、動物を世話した。連続的な2%イソフルラン/O2吸入を用いて動物を麻酔した。各時点で1グループにつき2匹のラットに移植した。これは、ラットの背側における2本の正中切開により実施し、鈍的切開により生成された横側の皮下ポケットに導入される。止め金又は単一2−0エチロン縫合糸を用いて皮膚を縫合する。頭蓋インプラントを組織学のために用い、全体として周囲の組織を切除した。分解及び機械的検査の評価のために、尾側のインプラントを集めた。ラットの各側面は、PGS、PGSA−LA、PGSA−HA又はPGSA−PEGインプラントを保有する。傷の治癒の問題及び全体のインプラントの寸法を評価するため、インプラントの検査及び触診のために、7日毎に、動物を簡単に麻酔し剪毛した。
【0148】
in vitro及びin vivo分解
in vitroでの加水分解及び酵素による分解を評価するため、乾燥したPGS、PGSA−LA、PGSA−HA及びPGSA−PEG(直径10×1.6mm)(n=3)の円筒状のスラブの重量を測定し(W0)、5mLのPBS、pH7.4、及び2mLの、40ユニット(94.7mg)のコレステロール−エステラーゼを含むPBSに、37℃で浸漬した。PBS中の分解について、時点は0及び10週にとり、酵素分解については4、5、9、14、24及び48時間にとった。全ての試料を脱イオン水で洗浄し、表面の水分をティシュペーパーで除去した。次いで、試料を90℃で3日間乾燥し、再度重量を測定した(Wt)。重量損失[((Wt−W0)/W0)×100]を計算した。
in vitroでの分解試験のために、乾燥した光硬化PGS、PGSA−LA、PGSA−HA及びPGSA−PEG(直径10×1.6mm)(n=4)の円筒状のスラブを移植した。in vivoでの分解を評価するために、PGS、PGSA−LA、PGSA−HA及びPGSA−PEGインプラントを、周囲の組織から分離し、PBS中に集めた。摘出手術後、2枚の顕微鏡カバースライド間の移植片の重量(Wt)及びサイズ(St)を測定した。実質的にASTM標準D575−91に従い、Instron5542を用いて、5mm/分の圧縮速度で50Nの加重で移植片(湿潤)について圧縮試験を実施した。試料を40%に圧縮し、応力−ひずみ曲線の初期傾斜(0〜10%)から圧縮係数を計算した。次いで、移植片の重量を測定し(Ww)、90℃で3日間乾燥し、再度、重量を測定した(Wt)。水分含有量[((Ww−Wt)/Wt)×100]、重量損失[((Wt−W0)/W0)×100]、及び長期にわたるサイズ[((St−S0)/S0)×100](S0は移植前のインプラントのサイズである)を計算した。
【0149】
全ての移植片を、かみそりの刃によって半分に切断した。各半分の移植片を走査電子顕微鏡(SEM)のために準備し、白金/パラジウム(約250オングストローム層)でスパッターコーティングし、カーボンテープを用いてアルミニウムスタブに乗せ、JEOL JSM−5910(走査電子顕微鏡)で試験を行った。他の半分は、材料のゾル含有量を評価するために用いた。この目的のため、乾燥した移植片の重量を測定し(Wd)、オービタルシェーカー中の100%エタノール中に3日間浸漬し、90℃で3日間乾燥し、再度重量を測定し(Ws)、[((Wd−Ws)/Ws)×100]により移植片のゾル含有量を求めた。
【0150】
in vivoでの生体適合性
組織学のための試料を10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、免疫組織化学的染色解析のために準備した。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)を用いて切片を染色した。インプラントのポリマー含有量について知らされていない病理学に熟練している医師によって、H&E切片を解析した。材料、材料に接触しているマクロファージ周辺のカプセル中の線維芽細胞の存在、多核巨細胞、材料への細胞の内方成長、及び材料の食作用の存在を解析するために、H&E染色を用いた。
【0151】
統計的解析
統計的有意性について0.05の最小信頼水準を有する等分散性両側スチューデントのt検定を用いて、統計的解析を実施した。全ての値を、平均及び標準偏差として報告する。
【0152】
結果
実施例2の結果に関する以下の議論において、略語PGSAは、光硬化ポリ(グリセロールセバケート)−アクリレートエラストマーを意味し、連続的な略語LA及びHAは、PGSプレポリマーの骨格におけるアクリル化(低又は高)の程度を意味する。PGSA−PEGは、PGSA−LA(アクリル化の程度は低い)、及び5%(wt/wt)のポリ(エチレングリコール)PEGジアクリレート由来の光架橋コポリマーを意味し、PGSは、熱硬化エラストマーを意味する。
【0153】
ポリマーの特徴づけ
1H−NMR解析に証明されるように、PGSプレポリマーは、約1:1のグリセロール:セバシン酸のモル組成比を有していた。アクリレート基の取り込みは、5.9、6.1及び6.4ppmにおけるピークの出現によって、1H−NMRにより確認した。プレポリマーの骨格におけるアクリル化の程度(すなわち、グリセロール部分に対するアクリレート基の比)は、1H−NMRのシグナル強度から計算し、PGSA−LAについて0.31±0.02であり、PGSA−HAについて0.41±0.03であった。
【0154】
光開始剤2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノンの存在下でのPGSAのUV重合は、熱硬化したPGSのようなエラストマー性ネットワークをもたらす。粘性のPGSAプレポリマーは、10分以内に透明のエラストマー性のスラブを生成したが、PGSは硬化に16時間を要した。理論に拘束されないが、プレポリマーにおけるアクリレート基の密度の増加は、形成されるネットワークにおけるメチレン鎖の長さ及び密度を増加すると考えられており、理論に拘束されないが、生体材料の分解を遅くすることができると考えられている。エラストマーの機械的及び熱的特性を表2に要約する。
【0155】
【表2】
in vitroでの分解の結果
光硬化PGSA及びPGSA−PEG試料は、10週間にわたりPBS中で5〜10%の質量減少を示した。PEGが取り込まれる場合または、アクリル化の程度が増加する場合、PGSAの加水分解が観察された。これらのエラストマーの分解に対する酵素活性の潜在的寄与は、2mLのPBS中の、40単位の膵臓コレステロールエステラーゼ中におけるインキュベーションによって評価した。膵臓コレステロールエステラーゼは、ポリエステルを分解することが知られているマクロファージ(炎症細胞)と関連するエステラーゼと実質的に同一であることが報告されている。PGS及びPGSA−LAは、長期にわたり重量減少を示したが、PGSA−HA及びPGSA−PEGは示さなかった。PEGは48時間にわたり60%に分解するが、低い架橋度を有するPGSA−LAは40%しか分解しなかった(データは図15に示す)。結果は、アクリレート基から生成される長いメチレン架橋が、PGS中で生成される架橋よりもコレステロールエステラーゼに対して感受性が低いことを示唆する。
【0156】
in vivoでの分解の結果
in vivoでの、PGS、PGSA及びPGSA−PEGコポリマーの分解特性を評価するために、架橋材料のディスクを、ラットの皮下に移植し、予め決めた間隔で収集した。切開において、尾側のインプラントは、周囲の組織から容易に分離された。移植片の形状特性及び表面特性を調べ、長期にわたる質量、水分含有量、ゾル含有量及び機械的強度を観察した(データを図16A〜D及び17に示す)。
【0157】
骨格へのアクリレート基又はPEGの導入は、材料の分解を減少することが観察され(図16Aを参照)、5週間以内に80%のPGSの質量が分解したが、PGSA−LAについての同様の質量減少は9週間にわたって生じた。PGSA−HAは、最初の5週間で、初期の5%質量減少を有して遅く分解し、11週目では60%に加速した質量減少を示した。分解は、ポリマー鎖内のPEGの導入で更に遅延し、in vivoで12週後に約20%の質量減少を示す。in vivoでの3週間後、PGSA−PEG、及びPGSA−HAの質量減少は有意に異なり、PGS及びPGSA−LAよりも有意に低いが、PGSA−PEGコポリマーの分解特性の質量減少は、PGSA−LA(p=0.034)よりも有意に高い。11週後、in vivoでのPGSA−HAの質量減少は、in vivoでの12週後におけるPGSA−PEGコポリマーの分解特性よりも有意に高い(P<0.001)。
【0158】
PGSは長期にわたり水分含有量を示すが、全ての光硬化エラストマーの水分含有量は最初に上昇し、次いで減少する(図16Bを参照)。水分含有量がピークに達する時間は、以下の順番、PGSA−LA<PGSA−HA<PGSA−PEGで観察された。
【0159】
PGSA−HA及びPGSA−PEGのゾル含有量(マクロマーが材料の骨格に結合しない)を、PGSのゾル含有量と比較した(P>0.05)(図16C参照)。長期にわたるPGSA−LAの平均ゾル含有量は、他のエラストマーよりも有意に高かった(P<0.001)。
【0160】
PGS及びPGSA−LAの移植されたディスクの厚みは急速に減少した(図16Dを参照)。7週目で、PGSA−HAディスクの厚みは、インプラントの初期の厚みよりも有意に薄くなった(P<0.01)。PGSA−PEGディスクの厚みは、長期にわたり、基本的に変化しなかった(P>0.05)。こうした結果は、残存する乾燥質量のパターンと関連する(図16A参照)。
【0161】
PGSA−LA及びPGSの機械的強度は低下した(データを図17に示す)。3週目で、in vivoでのPGS及びPGSAは40%減少したが、PGSA−HA及びPGSA−PEGの両方は、最初の強度の13%しか減少しなかった(P<0.004)。11週目におけるin vivoでのPGSA−HAは最初の強度の>90%が減少したが、PGSA−PEGは、12週目にin vivoで、最初の強度の40%しか減少しなかった(P<0.001)。ポリマーディスクの厚みと同様、in vivoでの長期にわたる機械的強度(図17を参照)は、残存する質量とほぼ同じパターンを示した(図16Aを参照)。
【0162】
PGS、PGSA−LA及びPGSA−HAの断面のSEM解析(データを図18A〜Hに示す)は、材料の80%まで分解する間に、構造的強度が維持されることを示す。対照的に、PGSA−PEGは、in vivoで9週間後に、材料のバルク内の穴の形成を示す。PGS、PGSA−LA、PGSA−HA及びPGS−PEGの表面のSEM解析は、比較できるほどの表面トポグラフィーを示す(データを図19A〜Dに示す)。
【0163】
PGSの分解(表面浸食ポリマーについての陽性コントロール)は、残存する質量における直線的減少(図16Aを参照)、長期にわたる移植片の一定及び低い水分含有量(図16B参照)、ディスク厚みの直線的減少(図16D参照)、及び長期にわたる機械的強度の直線的減少(図17参照)を示した。表面における相対的に早い分解のため、質量減少は直線的であり、ゾル含有量及び水分含有量は、低く一定のままであった。機械的強度における減少(図17参照)は、結合がバルク内で切断される加水分解によるものと思われる。これらの結果は、PBS中での遅いin vitro分解と共に、PGSのin vivo分解メカニズムが、主に酵素的表面分解であることを示唆する。しかし、酵素的表面分解中、結合は、材料のバルクにおける加水分解のために切断されると思われる。
【0164】
光硬化エラストマーについて、PGSプレポリマーへのアクリレート基の取り込み、及びそれに続く光硬化はin vivoにおける分解速度を低下させた(図16A参照)。PGSA−LAの架橋密度はPGSよりも低いが(表1参照)、PGSA−LAの分解は遅い。理論に拘束されないが、一部は、最初のPGS架橋よりも遅い、PGSAの分解におけるメチレン架橋の分解によるものと思われる。メチレン架橋は分解プロフィールに影響することが観察され、PGSA−LAは、長期にわたり直線的な質量減少を示すがPGSA−HAは、最初の5週間で初期5%の質量減少を示し、次いで、直線的な質量減少を加速した(図16A〜D参照)。
【0165】
これらの光硬化ポリマーの分解メカニズムは明らかでない。PGSA−LAは、表面分解について典型的な分解プロフィール、分解の間の構造的完全性(図18B及び18F参照)、長期にわたる直線的質量減少及び直線的サイズの減少を示す(図16A及び16D参照)。しかし、水分含有量及びゾル含有量は、長期にわたり急激に変化する(図16B及び16C参照)。従って、理論に拘束されないが、PGSA−LAの分解は、表面及びバルク分解によるものと思われる。
【0166】
PGSA−HAは、最初に増加する水分含有量、次いで時間内に加速する質量減少を有するバルク分解プロフィールを示した。PGSA−HA試料の機械的特性は、5週目で最初の強度の77%であるが、質量減少はわずか5%であった。しかし、長期にわたるPGSA−HAディスクの構造的完全性及びゾル含有量はバルク分解に集中しない(図16C、18C及び18H参照)。理論に拘束されないが、PGSA−HAの初期の5%の質量減少(最初の5週間)は、バルクにおける加水分解が主因であり、その架橋密度(及び機械的強度)を減少させ、PGSA−HA移植片の水分含有量を増加させると思われる。5週間後の、水分含有量、及びおそらくはメチレン架橋の露出における変化は、表面における光硬化架橋の分解を促進する。
【0167】
最初の5週間に、PGSA−LA及びPGSA−HAについて観察される異なるプロフィールは、in vitroにおいて観察されるものに匹敵する。最初に、PGSA−LAはコレステロールエステラーゼによって分解されるが、PGSA−HAは分解されない。これは、表面におけるメチレン架橋の分解(5週間後のPGSA−LA及びPGSA−HA)も、同様に酵素によるものだが、PGSA−LA及びPGSA−HAについての材料のバルクにおける分解が加水分解によるものであることを示唆する。それらは、表面からのポリエステルのin vitro内及びin vivoでの酵素的分解の両方によって支持される。更に、in vitro及びin vivoでの加水分解は、表面のバルクにおいて観察される。
【0168】
PEG−ジアクリレートとPGSA−LAとの共重合は、長いメチレン架橋(アクリレート基による)、及び生体材料のネットワークにおける低分子量PEG鎖をもたらす。生体材料へのPEG鎖の取り込みは、実質的に分解速度を低下させる(図16A参照)。PGSA−HAと同様、PGSA−PEGは、初期の遅い質量減少、及び長期にわたる水分含有量の増加を示す。PGSA−PEGの水分含有量は9週間後に最大に到達するが(図16B参照)、in vivoで12週間後に、質量減少の加速は観察されない(図16A参照)。12週目までにin vivoでPGSA−PEGについて観察された分解は、加水分解的バルク分解主因すると思われる。in vivoで、12週間後のPGSA−PEGの分解は20%であったが、同じ架橋密度を有するPGSA−HAについては、分解は50%を超えた。以上のように、これらの実施態様は、架橋密度に依存しない、PGSAの分解速度の減少をもたらした。PGSA−PEG移植片の断片のSEM画像は、in vivoで、9週間後に穴を形成し(図18D及び18H参照)、これは、バルク分解メカニズムを支持する。PGSA−PEGのゾル含有量は、PGSA−LAを浸食するバルクほど高くないことが観察された。しかし、これは、短いPEG鎖を含むマクロマーの高い溶解度により、PGSA−PEG及びPGSAのゾル含有量の比較を困難にする。
【0169】
移植されたスラブの分解速度は、材料中の架橋のタイプに依存することが観察された。光誘導性メチレン架橋の増加は、分解速度の低下をもたらすことが観察された。PGSに比べ、PGSAの分解速度は遅い。PEGの取り込みは、実質的に架橋密度に依存するPGSAの分解速度の低下を促進するといった大きな影響を及ぼす。
【0170】
移植されたPGSAスラブの分解メカニズムも影響を受ける。PGSは表面分解により分解されることが観察された。PGS骨格へのアクリレート基の取り込みは、分解メカニズムの変化をもたらすことが観察された。PGSA−LA及びPGSA−HAは、両方とも、おそらく加水分解によるバルク分解を示し、酵素によると思われる、相対的に高速の表面分解を示した。しかし、PGSA−HAについて、表面分解は5週間後に観察されたが、PGSA−LAは、実質的に持続するバルク及び表面分解の両方を示した。生体材料へのPEG鎖の取り込みは、主にin vivoで12週までの加水分解によるバルク分解をもたらした。
【0171】
in vivo生体適合性
分析において、材料のディスクを、ある程度血管が分布した半透明の組織カプセルに入れた。その他の点では、周囲の組織は外観上正常であり、より早い時点における移植工程に起因し得る変化がみとめられる。全時点において、ポリマーディスクはカプセルから容易に分離された。外観検査において、表面は最初平滑であり、長期にわたる質量減少に匹敵する時間的経過を伴い(図16A参照)、長期にわたり次第に粗くなる(図18A〜H参照)。架橋材料及び周囲の組織の組織学的評価は、最終的に、長期にわたって繊維性カプセル内に移行する全てのディスクの周囲に、同程度の軽い炎症を示した。線維芽細胞は、主に繊維性カプセル中に存在し、ポリマーディスク中での細胞増殖は観察されなかった。全てのポリマーディスクの周囲の組織は、観察できる損傷を示さなかった。炎症細胞は、通常、組織及び分解ポリマーの間の界面に見られる。特に、PGSとPGSA−HAを比較した場合(図20A〜Fを参照)、PGSは、1週目及び3週目に、PGSA−HAよりも高い炎症活性を示し、これは、PGSの高い質量損失及びPGSA−HAの初期の低い質量損失に対応する。しかし、5週間後に、PGSA−HAは、1週目及び3週目におけるPGSに比べ、同等の炎症応答を示した。PGSA−LAは、PGSA−PEGと比べ、1週目からより大きな炎症活性を示し(図21A〜Fを参照)、炎症細胞は、主に、繊維性カプセルと、PGS、PGSA−LA及びPGSA−HAの組織ポリマー界面との間に位置する(5週間後)。PGSA−HA(7週間前)及びPGSA−PEGについて、繊維性カプセルは、組織ポリマー界面上に直接存在する(図20A〜F、21A〜F参照)。これは、炎症細胞の存在が、PGS、PGSA−LA及びPGSA−HAの分解と関連することを示す(5週間後)。炎症細胞がコレステロールエステラーゼの高い活性と関連すると思われるため、こうした結果は、in vivoでの高い質量損失が酵素分解によるものであるという推論を支持する。
【0172】
特許、特許出願、論文、書籍、学術論文、及びウェブページを含むが、これらに限定されない本出願に引用された全ての文献及び同様の材料は、このような文献及び同様の材料のフォーマットの如何を問わず、明白に、その開示内容全体が参考として本明細書で援用される。用語、用語の使用、開示された技術等を含むが、これらに限定されないものについて、1種以上の組み入れられた文献及び同様の材料が、本出願と異なるかあるいは矛盾する場合、本出願は制御される。
【0173】
本明細書で用いられるセクションの見出しは、組織的な目的のためだけであり、決して、開示された主題を限定することと理解すべきでない。
【0174】
本発明を、種々の実施態様及び実施例と関連して説明したが、本発明は、これらの実施態様又は実施例に限定されることを意図しない。それどころか、本発明は、当業者に理解されるように、種々の変形、修飾、及び同等物を含む。
【0175】
本発明を、特定の実例となる実施態様を参照して説明したが、本発明の精神及び範囲を逸脱せずに、形態及び詳細における種々の変形をなし得ることを理解すべきである。従って、本発明の範囲及び精神、及びその同等物の範囲内にある全ての実施態様は特許請求の範囲に記載されている。本発明の方法、システム及びアッセイの特許請求の範囲、詳細な説明及び図は、その効果を示さない限り、要素の開示された順に限定するものとして読むべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、本発明のエラストマー組成物の種々の実施態様を概略的に示す。
【図2】図2は、本発明のエラストマー組成物の種々の実施態様を概略的に示す。
【図3】図3A〜Dは、本発明の種々の実施態様のエラストマー組成物又は材料の製造スキームを概略的に示す。図3Aは、RがH、及びアルキル、アルケニル、又はアルキニルである、プレポリマー(低分子量ポリマーを図示する)を製造するための、グリセロール及びセバシン酸の重縮合を説明する。図3Bは、プレポリマー骨格の、ビニル基による官能化を説明し、ここでは、アクリル化を示す。図3C及び3Dは、PGSAの架橋ポリマーの種々の実施態様において形成されるポリマーネットワークの一部の具体例を概略的に示す。
【図4】図4は、PGSA−PEGの架橋ポリマーの種々の実施態様において形成されるポリマーネットワークの一部の具体例を概略的に示す。
【図5】図5A〜Bは、PGSAの割合に基づく、ポリマーの物理的特性の調整を概略的に示す。図5Aは、PGSA−PEGについての調整を示し、図5Bは、PGSA−デキストランコポリマーについて示す。
【図6】図6A〜Cは、本発明の種々の実施態様のエラストマー組成物又は材料の製造スキームを概略的に示す。
【図7】図7A〜Dは、(図7A)ナノ/ミクロ粒子;(図7B)管状;(図7C)マイクロパターン、及び(図7D)足場を含む種々の形状及び形態に製造することのできる、本発明の種々の実施態様のエラストマー組成物を示す。
【図8】図8A及び8Bは、1H−NMRスペクトルを示す。図8AはPGSプレポリマー、図8BはPGSAのスペクトルを示す。
【図9】図9A及び9Bは、PGSプレポリマー、PGSプレポリマー(902);0.20のDAを有するPGSA(904);PGSA(DA=0.54)(906);熱硬化PGS(908);光硬化PGSA(DA=0.20)(910);及び光硬化PGSA(DA=0.54)(912)のATR−FTIRスペクトルを比較する。
【図10】図10は、グリセロール−セバケート(−)の1モルに対するプレポリマーに加えられた塩化アクリロイルの1モルに対するPGSAのアクリル化の程度のプロットである。
【図11】図11A〜Cは、実施例1の光硬化PGSAの種々のアクリル化の程度(DA)についての種々の特性についてのデータを示す。ここで、図11Aは、引張強度及び伸長を示し、図11Bは、ヤング率及び極限強度を示し、図11Cはエタノール中での膨張率、水中での膨張率、及びゾル含有量を示す。
【図12】図12は、PEG鎖がPGSA間の架橋として取り込まれるPGSA(DA=0.34)及びPEGジアクリレート(Mw=700Da)との共重合について、PEGD中のPGSAの種々の重量割合についてのヤング率、極限強度、伸長%及び膨潤%を示す。
【図13】図13は、NaOH(1mM)中における、37℃での0、1.5、3、4.5及び6時間にわたる、PGS(黒い菱形)、光硬化PGSA(DA=0.31、0.54)(DA=0.31について白い四角、DA=0.54について白い菱形)、及びPGSA(DA=0.34+5%PEGジアクリレート)(X)のin vitroでの分解のデータを示す(標準偏差は平均の5%未満であった)。
【図14】図14A〜Cは、in vitroでの細胞接着及び分解のデータを示す。図14A及び14Bは、それぞれ、37℃で0.1mM NaOH中で3時間後、及び12日後の光硬化PGSA(DA=0.31)(PGSA−LA)の表面のSEM画像である。図14Cは、光硬化PGSA表面における長期にわたる、細胞密度のプロットである。
【図15】図15は、実施例2において更に記載したような、コレステロールエステラーゼによる酵素分解(pH7.2、37℃)(n=3)のデータを示す。
【図16】図16A〜Dは、実施例2において更に記載したような、比較のデータを示す。図16Aは質量における変化を、図16Bは水分含有量を、図16Cはゾル含有量を、図16Dは、in vivoでの分解後のPGS、PGSA−LA、PGSA−HA、PGSA−PEGインプラントのサイズを示す。PGS及びPGSA−LAは、それぞれ、in vivoで7週間後及び12週間後に、インプラント部で完全に分解された(n=4)。
【図17】図17は、実施例2において更に記載したような、in vivoでの分解中の、PGS、PGSA−LA、PGSA−HA、及びPGSA−PEGの機械的強度の変化を示す(n=4)。
【図18】図18A〜Hは、実施例2において更に記載したような、ポリマーディスクのSEM断面図画像を示す。(図18A及びE)in vivoでの3及び5週目におけるPGS、(図18B及びF)in vivoでの3及び9週目におけるPGSA−LA、(図18C及びG)in vivoでの3及び11週目におけるPGSA−HA、及び(図18D及びH)in vivoでの3及び9週目におけるPGSA−PEG(n=4)。
【図19】図19A〜Dは、実施例2において更に記載したような、ポリマーディスク表面のSEM画像を示す。(図19A)in vivoでの5週目におけるPGS、(19B)in vivoでの6週目におけるPGSA−LA、(図19C)in vivoでの5週目におけるPGSA−HA、及び(図19D)in vivoでの6週目におけるPGSA−PEG(n=4)。
【図20】図20A〜Fは、実施例2において更に記載したような、組織反応における周囲組織のエラストマー性インプラントのH&E切片の顕微鏡写真(400倍)を表わす。(図20A及びC)in vivoでの1、3及び5週間後のPGS(陽性コントロール)、及び(図20D〜F)in vivoでの1、3及び11週間後のPGSA−HA(n=4)。矢印は、ポリマー−組織界面を示す。
【図21】図21A〜Fは、実施例2において更に記載したような、組織反応における周囲組織のエラストマー性インプラントのH&E切片の顕微鏡写真(400倍)及び差し込み図(50倍)を表わす。(図21A〜C)in vivoでの3、6及び6週間後のPGS−LA、及び(図21D〜F)in vivoでの3、6及び9週間後のPGSA−HA(n=4)。矢印は、ポリマー−組織界面を示す。
【技術分野】
【0001】
政府の支援
米国政府は、本発明の1つ以上の開発に利用された補助金の支援を提供した。特に、National Institute of Health(NIH)コンタクトナンバーDE013023およびNational Science Foundation(NSF)コンタクトナンバーNIRT0609182は、この出願の1つ以上の発明の開発を支援した。米国政府は、これらの発明に一定の権利を有し得る。
【0002】
関連出願への相互参照
この出願は、同時係属中の2006年1月12日に出願された米国仮出願第60/758,973号および2006年5月25日に出願された米国仮出願第60/803,223号の利益およびそれらへの優先権を主張する。これらの出願の全体の内容は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
生分解性ポリマーは、細胞播種構築物が、損傷組織、又は病変組織を置換するために設計される再生医療を含む、広範囲の生物医学的応用における必須材料である。これらの構築物は、しばしば、宿主に対して炎症を起こすことなく、機械的に動的な環境内で、安定性及び構造的完全性をもたらす必要がある。従って、軟組織の機械的特性と同等の特性を示す強力な生分解性エラストマーを開発する、相当の必要性及び興味がある。一般的な生分解性エラストマーには、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリ(クエン酸ジオール)、星型ポリ(ε−カプロラクトン−co−D,L−ラクチド)、ポリ(トリーメチレンカルボネートーco−ε−カプロラクトン)及びポリ(トリーメチレンカルボネートーco−D,L−ラクチド)が含まれる。
【0004】
しかし、これらのエラストマーは、それらの生分解性が維持される場合、多くの生物医学的応用には不十分とする、例えば、伸長%及びヤング率において反映されるような機械的特性を有している。例えば、機械的強度は、しばしばポリマーの架橋密度に比例するが、分解性は架橋密度に反比例し、受け入れられる機械的強度及び分解性を備えた材料を供給するのは困難である。
【0005】
更に、これらの生分解性エラストマーは、許容される機械的特性を有する材料を製造するために、しばしば、真空下、長時間(例えば、24時間)高温で硬化しなければならない。しかし、これは、薬剤、成長因子、細胞等の温度感受性成分を取り込む用途における、それらの使用を不可能にする。更に、高温による硬化における融液相を通じてポリマーは転移し、生成された泡によって実現可能な形態の複雑さが制限される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
種々の態様において、本発明は、エラストマー性ポリマー組成物、及びその製造方法及び使用方法を提供する。種々の態様において、本発明は、インプラント、及び本発明のエラストマー性ポリマー組成物の種々の実施態様を用いた、このようなインプラントの製造方法を提供する。本発明の更なる態様及び使用を下記に記述する。
【0007】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、in vitro及びin vivoでの生体適合性を有する生分解性エラストマーを提供する。更に、種々の実施態様において、本発明は、得られる組成物の物理的及び化学的性質を調整する方法、ひいては組成物を「調製」する能力を提供する。例えば、種々の実施態様及び組成物において、例えば、エラストマーの引張強度、分解及び膨潤特性の1種以上を、ヒドロゲルを取り込むことで、ポリマーマトリクス中のアクリレート部分の密度を変えることにより、調節することができる。
【0008】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、比較的安価な生分解性光硬化性エラストマー、ポリ(グリセロールセバケートアピジケート)PGSAから製造することができる。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、例えば、in situでの形成を促進する光重合によって数秒で製造することができる。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、アクリル化プレポリマーの成型及び/又は注入を促進し、材料、構造及び種々の装置を形成する、粘性の液状のアクリル化プレポリマーから製造することができる。更に、種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料を形成するために用いられる光開始架橋反応は溶媒を必要としない。
【0009】
種々の態様において、本発明は一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含む架橋ポリエステルを含むエラストマー組成物であって、nが1より大きい整数を表わし、Aが置換又は非置換エステルを表わし、Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わすエラストマー組成物を提供する。架橋の少なくとも一部は、A成分の間でジオイック酸(dioic acid)エステルを形成するポリマー単位の間で架橋する。
【0010】
図1を参照すると、一般式(−A−B−)nの繰り返しポリマー単位を含むエラストマー組成物の実施態様が示されており、置換又は非置換エステルを含むA成分(102)、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む置換又は非置換酸エステルを含むB成分(104)、及び少なくとも一部のA成分(102)の間にジオイック酸エステルを形成する架橋(106)を含む。
【0011】
種々の実施態様において、これらのエラストマー組成物は、下記一般式(I)
【0012】
【化4】
(式中、m、n、p、q及びvは、それぞれ独立して1より大きい整数である)により表わすことのできる部分を含む。
【0013】
種々の好ましい実施態様において、一般式(I)により表わされるエラストマー組成物は、架橋反応を開始するためのアクリレートの光開始剤(又は他のフリーラジカル開始系)の存在下での、UV励起を用いたポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート(PGSA)の架橋に由来する。本発明の方法の種々の実施態様において、1種以上のヒドロゲル、又は他のポリマー前駆体(例えば、アクリレート基を含むために修飾され得る前駆体、例えば、ポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、例えば、アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリロニトリル、n−ブタノール、メタクリル酸メチル、及びTMPTAを含む他のアクリレートをベースとする前駆体、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、Bis−GMA(ビスフェノールAグリシダルメタクリレート)、及びTEGDMA(トリエチレン、グリコールジメタクリレート)、ショ糖アクリレート、及びそれらの組み合わせ)は、ポリマー鎖間の架橋を修飾するためにラジカル重合の前、又はその間にアクリル化プレポリマー(例えばPGSA)と反応することができる。
【0014】
種々の態様において、本発明は、ポリエステルのA成分の少なくとも一部と、一般式−(D)k−C−の少なくとも一部を含む連結を形成する架橋との間で架橋された一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含む架橋ポリエステルを含むエラストマー組成物であって、 Aが置換又は非置換エステルを表わし、Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、Cが置換又は非置換ジオイック酸エステルを表わし、Dが1個以上の置換又は非置換エステルを表わし、kが0より大きい整数であり、nが1より大きい整数であるエラストマー組成物を提供する。エラストマー組成物は、ジオイック酸及びエステルを含む架橋に加え、1種以上の架橋を含み得ることが理解される。
【0015】
図2を参照すると、一般式(−A−B−)nの繰り返しポリマー単位を含むエラストマー組成物の種々の実施態様が示されており;置換又は非置換エステル(202)を含むA成分、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む置換又は非置換酸エステルを含むB成分(204)、及び置換又は非置換ジオイック酸エステルを形成する架橋(206)、ならびにA成分(202)の少なくとも一部の間の置換又は非置換エステル(208)を含む。種々の実施態様において、エステル結合はポリエステルを形成し、例えば、図2におけるpは1を超える整数である。
【0016】
種々の実施態様において、これらのエラストマー組成物は、下記一般式(II)
【0017】
【化5】
(式中、k、m、n、p、q及びvは、それぞれ独立して1より大きい整数である)により表わすことのできる部分を含む。
【0018】
種々の好ましい実施態様において、一般式(II)により表わされるエラストマー組成物は、PGSAと、種々の割合のアクリル化ポリエステル、例えば、一般式−(D)k−C−(ポリマー鎖の間で、Cはジオイック酸エステルを表わし、Dはエステルを表わし、kは1より大きい整数を表わす)の1種以上の架橋を形成するためのPEGDとの共重合に由来する。種々の実施態様において、PGSAに対するPEGDの割合を選択することにより、エラストマー組成物の材料特性を選択することができる。例えば、種々の実施態様において、PGSA−PEG組成物は、弾性特性を有するヒドロゲル材料(例えば、約30%を超える平衡含水率)を提供することができる。
【0019】
種々の実施態様において、本発明は架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、前記エラストマー性生分解性材料が、全体的な架橋密度の関数として実質的に非単調的である分解速度を有する材料を提供する。種々の実施態様において、分解速度はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、又は酸性又はアルカリ性条件中においてin vitroでの分解速度である。種々の実施態様において、分解速度はin vivoでの分解速度である。種々の実施態様において、本発明は、架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、前記エラストマー性生分解性材料が、全体的な架橋密度を増加することによって増加することのできる分解速度を有する材料を提供する。種々の実施態様において、本発明は、架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、前記エラストマー性生分解性材料が、材料の引張ヤング率を実質的に低下させることなく、増加することのできる分解速度を有する材料を提供する。
【0020】
種々の態様において、本発明は、下記工程を含む、生分解性エラストマー性材料の製造方法を提供する。(a)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分を、2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分と反応させて、約300Da〜約75,000Daの範囲の分子量を有するプレポリマーの混合物を形成する工程;(b)前記プレポリマーの混合物をアクリレートと反応させて、アクリル化プレポリマーの混合物を形成する工程;及び(c)前記アクリル化プレポリマー混合物を紫外線で照射して、前記アクリル化プレポリマーの少なくとも一部を架橋し生分解性エラストマー性材料を形成する工程であって、照射の間、前記プレポリマー混合物を約45℃を超えて、好ましくは37℃を超えて、更に好ましくは25℃を超えて加熱しない工程。
【0021】
種々の実施態様において、前記方法は、プレポリマー混合物とアクリレートとの反応の間、又はアクリル化プレポリマー混合物に、1種以上の追加のアクリル化分子(本明細書において、アクリル化コポリマーと呼ばれる)を加えることを含む。デキストラン、ヒアルロン酸、キトサン、及びポリ(エチレングリコール)を含むがこれらに限定されない、種々のコポリマーを用いることができる。
【0022】
種々の態様において、本発明は、下記工程を含む、生分解性エラストマー性材料の製造方法を提供する。(a)(i)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分;及び(ii)2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分を含むプレポリマーを含む溶液を提供する工程;(c)光延反応、熱開始剤を用いた熱開始重合、酸化還元対(redox−pair)開始重合、及び二官能性スルフヒドリル化合物を用いたミカエル型付加反応の1種以上を用いてプレポリマーの少なくとも一部を架橋する工程。
【0023】
本発明の組成物及び材料は広範囲の用途に適している。種々の実施態様において、これらの材料及び組成物の化学的及び機械的特性(及びそれらを調整する能力)のため、それらを、心疾患を治療するための、存在する移植材料が厳しい限界を示す神経欠損を埋めるための有用性を見出すことのできるエラストマーのための興味深い候補となる。
【0024】
例えば、末梢神経が約0.45MPaのヤング率を有し、胸大動脈が0.53MPaのヤング率を有することが報告されている。種々の実施態様において、本発明は、このような生物学的構造を有する機械的整合性を実現することのできる組成物及び材料を提供する。更に、種々の実施態様において、本発明は、例えば、組成物又は材料の膨潤及び/又は分解を、ヤング率を実質的に変化させずに調整することのできる組成物及び材料を提供する。
【0025】
本発明の組成物の及び材料の種々の実施態様は、生物活性剤送達媒体(例えば、抗生物質、薬剤等の送達)、糖尿病性潰瘍のためのパッチ、付着を防止するための腹部インプラント、生分解性接着剤、in vivo及びin vitroセンサー、カテーテル、外科用接着剤、心臓、胆管、腸管ステント、金属用コーティング、微細加工用途(例えば、毛細管ネットワーク)、標的薬剤送達、血液代用等を含む用途のための長期循環粒子、機械的に負担のかかる環境(例えば、関節内)のための注射用薬剤送達システムを含むがこれらに限定されない、種々の医療用途において用いることができ、例えば、材料は、動的又は静的な外部架橋、分解可能なO−リング、セプタム等により妥協することのない制御された方法で薬剤を放出するように構成することができる。
【0026】
本発明の組成物及び材料の種々の実施態様は、吸収性衣類(例えば、使い捨ておむつ、失禁用プロテクター、パンティーライナー、生理用ナプキン等)、チューイングガム(例えば、栄養物の送達のため)、インフレータブル・バルーン、疑似餌、毛針、使い捨てバッグ、可食性フィルム(例えば、食品の新鮮味を保護するが、消化管内で生分解されるフィルム)、分解可能なフィルム(サランラップ/セロファンに代わるもの)、一般的な包装(例えば、たい肥又は埋め立て地において分解可能なもの)、香り及び芳香のあるバリア、食品容器、包装用途のための分解可能な発泡体、分解可能なフィルター、毛髪製品(例えば、従来のワックスに代わるもの)、農業用の播種用ストリップ及びテープ、化粧品、材料(例えば、木材)の防腐、制限された及び/又は1回使用のCD、DVD等(例えば、記述されているがコピーできないもの)を含むがこれらに限定されない種々の非医療的用途に用いることができる。
【0027】
種々の実施態様において、本発明は、本発明の架橋ポリエステル組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、粒子、管、球、ストランド、コイル状のストランド、毛管ネットワーク、フィルム、繊維、メッシュ又はシートの形態の前記エラストマー性生分解性材料を提供する。
【0028】
種々の実施態様において、本発明は、本発明のエラストマー性生分解性材料から形成される医療装置を提供する。種々の実施態様において、前記医療装置は、長期にわたる生物活性剤の送達をもたらす。種々の実施態様において、前記医療装置は、in situ移植及び/又は形成される。例えば、種々の実施態様において、前記医療装置は、医療装置を要する部位で本発明のアクリル化プレポリマーを注入し、注入されたアクリル化プレポリマーを紫外線で照射することによって形成される。種々の実施態様において、前記医療装置は、組織修復及び/又は再生を促進するための移植片及び/又はインプラントを含む。
【0029】
種々の実施態様において、本発明の架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、増殖因子、細胞接着配列、ポリヌクレオチド、多糖類、ポリペプチド、細胞外マトリクス成分、及びそれらの組み合わせの1種以上を含む前記材料が提供される。種々の実施態様において、本発明の架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、結合組織細胞、器官細胞、筋細胞、神経細胞及びそれらの組み合わせに播種される前期材料が提供される。種々の実施態様において、本発明の架橋ポリエステルから形成されるエラストマー性生分解性材料であって、腱細胞、線維芽細胞、靭帯細胞、内皮細胞、肺細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、島細胞、神経細胞、肝細胞、腎細胞、膀胱細胞、尿路上皮細胞、軟骨細胞、及び造骨細胞の1種以上とともに播種される前期材料が提供される。
【0030】
本発明の、前述の、及び他の態様、実施態様及び特徴は、以下の記述及び図面から完全に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
種々の実施形態の詳細な説明
本発明を更に開示する前に、本明細書で用いられる特定の用語の意味を示すために、それらへの理解を与えることが有用と思われる。
【0032】
本明細書で用いられるように、「a」なる冠詞は、「1以上」又は「少なくとも1」を意味するための不明確な意味において用いられる、すなわち、「a」なる冠詞を不明確とすることによる現在の教示のあらゆる成分への言及は、1種以上の成分が存在する可能性を排除しない。
【0033】
本明細書で用いられるように、「生体分子」なる用語は、細胞及び組織内によく見られる、天然又は人工的に生成された(例えば合成又は組換え法により)分子(例えば、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、炭水化物、糖類、脂質、核タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイド等)を意味する。生体分子の特定のクラスには、酵素、受容体、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、成長因子及び化学走化因子等の細胞応答修飾因子、抗体、ワクチン、ハプテン、毒素、インターフェロン、リボザイム、アンチセンス剤、プラスミド、DNA、及びRNAが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書で用いられるように、「生体適合性」なる用語は、in vivoでの実質的に有害な応答を誘発しない物質を表わすことを意図する。
【0035】
本明細書で用いられるように、「生分解性」ポリマーは、生理的又はエンドームな(endosomal)条件下で単量体種に分解されるポリマーである。種々の好ましい実施態様において、ポリマー及びポリマーが生分解された副産物は生体適合性である。生分解性ポリマーは、必ずしも加水分解で分解可能ではなく、完全な分解には酵素の作用を要する。
【0036】
本明細書で用いられるように、「生理的条件」なる用語は、組織の細胞内及び細胞外体液中で遭遇しそうな化学的(例えば、pH,イオン強度)及び生化学的(例えば、酵素濃度)条件の範囲に関する。ほとんどの組織について、生理的pHは、約7.0〜7.4の範囲である。
【0037】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、又は「オリゴヌクレオチド」なる用語は、ヌクレオチドのポリマーを意味する。「ポリヌクレオチド」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」なる用語は同じ意味で用いられる。通常、ポリヌクレオチドは少なくとも3個のヌクレオチドを含む。DNA及びRNAはポリヌクレオチドである。ポリマーには、天然のヌクレオチド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)、ヌクレオシド類似体(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、C5−プロピニルシチジン、C5−プロピニルウリジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、及び2−チオシチジン)、化学的に修飾された塩基、生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基)、挿入塩基、修飾糖類(例えば、2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)、又は修飾リン酸基(例えば、ホスホロチオエート、及び5’−N−ホスホラミダイト結合)が含まれる。
【0038】
本明細書で用いられるように、「ポリペプチド」、「ペプチド」、又は「タンパク質」には、ペプチド結合によって一緒に結合した少なくとも3個のアミノ酸の配列が含まれる。ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」なる用語は同じ意味で用いられる。ペプチドは、個々のペプチド又はペプチドの集合を意味し得る。本発明のペプチドには、好ましくは天然のアミノ酸のみが含まれるが、当該技術分野において公知であるような非天然のアミノ酸(すなわち、天然には発生しないが、ポリペプチド鎖に挿入され得る化合物、例えば、機能的イオンチャンネルに首尾良く挿入される非天然のアミノ酸の構造を示す、http://www.cco.caltech.edu/〜dadgrp/Unnatstruct.gif参照)及び/又はアミノ酸類似体が代わりに用いられ得る。また、本発明のペプチド中の1個以上のアミノ酸は、例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、結合のためのリンカー、官能基化、又は他の修飾等の化学物質の付加によって、修飾されてもよい。好ましい実施態様において、ペプチドの修飾は、より安定なペプチド(例えば、in vivoでのより長い半減期)をもたらす。これらの修飾には、ペプチドの環化、D−アミノ酸の挿入等が含まれる。修飾は、ペプチドの所望の生物学的活性を実質的に妨害すべきでない。
【0039】
「多糖類」、「炭水化物」、又は「オリゴ糖」なる用語は、糖のポリマーを意味する。「多糖類」、「炭水化物」、及び「オリゴ糖」なる用語は同じ意味で用いられる。通常、多糖類には、少なくとも3個の糖が含まれる。ポリマーには、天然の糖(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、リボース、及びキシロース)及び/又は修飾糖類(例えば、2’−フルオロリボース、2’−デオキシリボース、及びヘキソース)が含まれる。
【0040】
本明細書で用いられるように、「生物活性剤」は、生物学的又は化学的現象を、変更、阻害、活性化又は影響する、化合物又は構成要素を意味するものとして用いられる。例えば、生物活性剤には、抗−AIDS物質、抗癌物質、抗生物質、免疫抑制剤、抗−ウイルス物質、酵素阻害剤、神経毒、オピオイド、睡眠薬、抗−ヒスタミン剤、滑沢剤、トランキライザー、抗−痙攣薬、筋弛緩薬及び抗−パーキンソン物質、抗痙攣薬及びチャンネル遮断薬、縮瞳薬及び抗−コリン作用薬を含む筋収縮薬、抗−緑内障化合物、抗寄生虫薬及び/又は抗−原生動物化合物、細胞増殖阻害剤及び抗−接着分子を含む細胞−細胞外マトリクス阻害の修飾因子、血管拡張薬、DNA、RNA又はタンパク質合成阻害剤、抗−高血圧薬、鎮痛薬、抗−発熱薬、ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症剤、抗血管新生因子、抗分泌性因子、血液凝固阻止薬及び/又は抗血栓剤、局所麻酔薬、点眼剤、プロスタグランジン、抗うつ剤、抗−精神病物質、抗嘔吐剤及び造影剤が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施態様において、生物活性剤は薬剤である。
【0041】
本発明において用いるのに適した、生物活性剤及び特定の薬剤の具体例のより完成されたリストは、開示内容全体が参考として本明細書で援用される“Pharmaceutical Substances:Syntheses,Patents,Applications”by Axel Kleemann and Jurgen Engel,Thieme Medical Publishing,1999;the“Merck Index:An Encyclopedia of Chemicals,Drugs,and Biologicals”,Edited by Susan Budavari et al.,CRC Press,1996,及びthe United States Pharmacopeia−25/National Formulary−20,published by the United States Pharmcopeial Convention,Inc.,Rockville MD,2001に見られる。
【0042】
本明細書で用いられるように、「組織」なる用語は、特定の機能を実行するために結合した同じ細胞の集合、及び細胞の周囲のあらゆる細胞外マトリクスを意味する。
【0043】
「置換される」なる用語は、例えば、炭素、窒素、酸素等の分子の1個以上の原子の水素を置換する置換基を有する基を表わすことが意図される。置換基には、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルコキシ、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族又はヘテロ芳香族基が含まれる。従って、「本明細書で記載されたような置換基」等の語句は、1個以上の前記置換基、及びそれらの組み合わせを意味する。
【0044】
「アルキル」なる用語には、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を含む飽和脂肪族基が含まれ、後者は炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル基を意味する。「アルキル」なる用語には、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、及びシクロアルキル置換アルキル基が含まれる。「アルキル」なる用語には、天然及び非天然のアミノ酸の側鎖も含まれる。
【0045】
「アルキルアリール」又は「アラルキル」基は、アリールで置換されたアルキル基(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。
【0046】
「アリール」なる用語には、5−及び6−員環の単環芳香族基、及び多複素環アリール基、例えば、三環系、二環系、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が含まれる。芳香環は、1個以上の環部位において、前述したような置換基と置換され得る。アリール基は、例えば、多環式を形成するために芳香族でない脂環式又は複素環と融合又は架橋することもできる。
【0047】
「アルケニル」なる用語には、前記アルキルへの長さ及び可能な置換における不飽和脂肪族基類似体であるが、少なくとも1個の二重結合を含む不飽和脂肪族基類似体が含まれる。例えば、「アルケニル」なる用語には、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等)、分岐鎖アルケニル基、シクロアルケニル基(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキル又はアルケニル置換シクロアルケニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換アルケニル基が含まれる。用語、アルケニルには、「非置換アルケニル」及び「置換アルケニル」の両方が含まれ、後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素における水素を置換する置換基を有するアルケニル基を意味する。
【0048】
「アルキニル」なる用語には、前記アルキルへの長さ及び可能な置換における不飽和脂肪族基類似体であるが、少なくとも1個の三重結合を含む不飽和脂肪族基類似体が含まれる。例えば、「アルキニル」なる用語には、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、へプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等)、分岐鎖アルキニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換アルキニル基が含まれる。用語、アルキニルには、「非置換アルキニル」及び「置換アルキニル」の両方が含まれ、後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素における水素を置換する置換基を有するアルキニル基を意味する。
【0049】
「アシル」なる用語には、アシル基(CH3CO−)又はカルボニル基を含む化合物及び置換基が含まれる。「置換アシル」なる用語には、1個以上の水素原子を置換する置換基を有するアシル基が含まれる。
【0050】
「アシルアミノ」なる用語には、アシル基がアミノ基に結合している置換基が含まれる。例えば、前期用語には、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイド基が含まれる。
【0051】
「アロイル」なる用語には、カルボニル基に結合したアリール又はヘテロ芳香族基を有する化合物及び置換基が含まれる。アロイル基の具体例には、フェニルカルボニル、ナフチルカルボキシ等が含まれる。
【0052】
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」、及び「チオアルコキシアルキル」なる用語には、酸素、窒素又はイオウ原子などの炭化水素骨格の1個以上の炭素を置換する、酸素、窒素又はイオウを更に含む、前記アルキル基が含まれる。
【0053】
「アルコキシ」なる用語には、酸素原子に共有結合した、置換及び非置換アルキル、アルケニル、及びアルキニル基が含まれる。アルコキシ基の具体例には、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びペントキシ基が含まれ、シクロペントキシ等の環状基が含まれる。
【0054】
「アミン」又は「アミノ」なる用語には、窒素原子が、少なくとも1個の炭素又はヘテロ原子に共有結合した、化合物が含まれる。「アルキルアミノ」なる用語には、窒素が、少なくとも1個の追加のアルキル基に結合した置換基及び化合物が含まれる。「ジアルキルアミノ」なる用語には、窒素原子が少なくとも2個の追加のアルキル基に結合した置換基が含まれる。「アリールアミノ」及び「ジアリールアミノ」なる用語には、それぞれ、窒素が少なくとも1個又は2個のアリール基に結合した置換基が含まれる。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、又は「アリールアミノアルキル」なる用語は、少なくとも1個のアルキル基及び少なくとも1個のアリール基に結合したアミノ基を意味する。「アルカミノアルキル」なる用語は、アルキル基にも結合した窒素原子に結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を意味する。
【0055】
「アミド」又は「アミノカルボキシ」なる用語には、カルボニル又はチオカルボニル基の炭素に結合した窒素原子を含む化合物又は置換基が含まれる。用語には、カルボキシル基に結合したアミノ基に結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を含む「アルカミノカルボキシ」基が含まれる。それには、カルボニル又はチオカルボニル基に結合する炭素に結合するアミノ基に結合するアリール又はヘテロアリール基を含むアリールアミノカルボキシ基が含まれる。「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」、及び「アリールアミノカルボキシ」なる用語には、それぞれ、カルボニル基の炭素に順々に結合する窒素原子に結合するアルキル、アルケニル、アルキニル及びアリール基が含まれる。
【0056】
「カルボニル」又は「カルボキシ」なる用語には、酸素原子に二重結合で結合した炭素を含む化合物及び置換基、及びそれらの互変異性型が含まれる。カルボニルを含む置換基の具体例には、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物等が含まれる。「カルボキシ基」又は「カルボニル基」なる用語は、アルキル基がカルボニル基に共有結合した「アルキルカルボニル」基、アルケニル基がカルボニル基に共有結合した「アルケニルカルボニル」基、アルキニル基がカルボニル基に共有結合した「アルキニルカルボニル」基、アリール基がカルボニル基に共有結合した「アリールカルボニル」基等の置換基を意味する。更に、用語は、1個以上のヘテロ原子がカルボニル基に共有結合した置換基をも意味する。例えば、用語には、例えば、アミノカルボニル基(窒素原子がカルボニル基の炭素に結合している、例えばアミド)、酸素及び窒素原子が両方ともカルボニル基に結合している、アミノカルボニルオキシ基(例えば、「カルバメート」とも呼ばれる)等の置換基が含まれる。更に、アミノカルボニルアミノ基(例えば、尿素)には、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、イオウ等、また炭素原子)に結合したカルボニル基の他の組み合わせも含まれる。更に、ヘテロ原子は、更に、1個以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アシル等の置換基で置換されていてもよい。
【0057】
「エーテル」なる用語には、2個の異なる炭素原子又はヘテロ原子に結合した酸素を含む化合物又は置換基が含まれる。例えば、用語には、他のアルキル基に共有結合している酸素原子と共有結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を意味する「アルコキシアルキル」が含まれる。
【0058】
「エステル」なる用語には、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子に結合している炭素又はヘテロ原子を含む化合物及び置換基が含まれる。「エステル」なる用語には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルキル、アルケニル、又はアルキニル基は前述した通りである。
【0059】
「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」なる用語には、−OH又は−O−を含む置換基が含まれる。
【0060】
「ハロゲン」なる用語には、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素等が含まれる。「過ハロゲン化」なる用語は、一般に、全ての水素がハロゲン原子によって置換された置換基を意味する。
【0061】
「ヘテロ原子」なる用語には炭素又は水素以外のあらゆる分子の原子が含まれる。好ましいヘテロ原子は、窒素及び酸素である。「複素環」又は「複素環式」なる用語には、1個以上のヘテロ原子を含む飽和、不飽和の芳香族(「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」)及び多環式環が含まれる。複素環式基は置換されても、置換されていなくてもよい。複素環式基の具体例には、例えば、ベンゾジオキサゾール、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾキサゾール、クロメン、デアザプリン、フラン、インドール、インドリジン、イミダゾール、イソキサゾール、イソインドール、イソキノリン、イソチアゾール、メチレンジオキシフェニル、ナフトリジン、オキサゾール、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キノリン、テトラゾール、チアゾール、チオフェン、及びトリアゾールが含まれる。他の複素環には、モルホリノ、ピプラジン、ピペリジン、チオモルホリノ、及びチオアゾリジンが含まれる。
【0062】
「多環式環」及び「多環構造」なる用語には、通常、2個以上の炭素により、環が隣接している、例えば、「融合環」である、2個以上の環を有する置換基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又はヘテロシクリル)が含まれる。隣接していない原子を通じて結合している環は、「架橋した」環と呼ばれる。多環式環のそれぞれの環は、前記置換基によって置換されていてもよい。
【0063】
種々の態様において、本発明は、エラストマー性生分解性ポリマーを形成するために架橋されるプレポリマーを形成するための(図3A参照)、多官能性アルコール又はエーテル(2個以上のOR基(各Rは独立してH及びアルキルである)を有する化合物である)、及び二官能性又は高次の酸(例えば二酸)の反応によって形成される、エラストマー性生分解性ポリマー組成物及び材料を提供する。好ましい実施態様において、架橋は、プレポリマーの骨格における1個以上のOR基とビニルとの官能化(図3B参照)、それに続く光重合によりエラストマー性生分解性ポリマー組成物又は材料を形成することによって実施される。好ましくは、アクリレートは、1個以上のビニルをプレポリマーの骨格に付加し、アクリル化プレポリマーを形成するために用いられる。
【0064】
図3A〜D及び4を参照すると、この製造スキームが概略的に示されている。アクリル化及び重合反応は、ポリマーネットワーク内にいくつかの型の架橋をもたらすことができる。例えば、光重合によるアクリル化ヒドロキシルは、アルキル鎖に酸エステル架橋を(当該技術分野においてメチレン鎖としても知られている)(例えば、図3C参照)、また、例えば、2個のアルキル化ヒドロキシドが反応した場合、ジオイック酸エステル架橋(例えば、図3D参照)を生産し得る。
【0065】
二酸成分
グルタル酸(炭素5個)、アジピン酸(炭素6個)、ピメリン酸(炭素7個)、スベリン酸(炭素8個)、及びアゼライン酸(炭素9個)を含むが、これらに限定されない、多種多様の二酸、又は高次の酸を、本発明の種々の態様のエラストマー性生分解性ポリマー組成物及び材料の形成において用いることができる。具体的な長鎖二酸には、10個を超える、15個を超える、20個を超える、25個を超える炭素原子を有する二酸が含まれる。非脂肪族二酸を用いることができる。例えば、1個以上の二重結合を有する前記二酸の形態を、グリセロール−二酸−コポリマーを生成するために用いることができる。アミン及び芳香族基を炭素鎖中に組み入れることができる。具体的な芳香族二酸には、テレフタル酸及びカルボキシフェノキシプロパンが含まれる。また、二酸は置換基を含んでもよい。例えば、種々の実施態様において、アミン及びヒドロキシル等の反応基を、架橋に利用できる部位を増やすために用いることができる。種々の実施態様において、アミノ酸及び他の生体分子を、ポリマーの生物学的特性を修飾するために用いることができる。種々の実施態様において、芳香族基、脂肪族基及びハロゲン原子を、ポリマー内の鎖内相互作用を修飾するために用いることができる。
【0066】
プレポリマー
種々の実施態様において、本発明のプレポリマーには、ジオール、又は高次の部分及び二酸、又は高次の酸、部分が含まれる。種々の実施態様において、プレポリマーには、テトラデカ−2,12−ジエン−1,14−ジオール等の不飽和ジオール、ポリエチレンオキシド、及びN−メチルジエタノアミン(MDEA)等のマクロモノマージオールを含む他のジオールが含まれる。これらのプレポリマーへの取り込みに加え、例えば、アクリレート化学によって、得られた架橋ポリマーにジオールを取り込むことができる。例えば、ジオールは最初にアクリル化され、次いで、ラジカル重合反応を用いてアクリル化プレポリマーと結合し得る。種々の実施態様において、例えば、タンパク質及び成長因子をプレポリマーに結合させるために、アルデヒド及びチオールを用いることができる。
【0067】
プレポリマーへのビニル付加
ビニルを有するプレポリマーを官能化するために、種々の技術を用いることができる。種々の好ましい実施態様において、アクリレートは例えばアクリレートモノマーである。適切なアクリレートモノマーの具体例には、メタクリレート、メタクリル酸ビニル、マレイン酸メタクリレート(maleic methacrylate)、及び構造
【0068】
【化6】
(式中、R1はメチル又は水素であってよく;R2、R2’及びR2’’はアルキル、アリール、複素環、シクロアルキル、芳香族複素環、多環式アルキル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、ハライド、カルボン酸、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、アミド、カルバモイルチオエーテル、チオール、アルコキシ、又はウレイド基であり得る)を有するものが含まれるが、これらに限定されない。R2、R2’及びR2’’は、アルキル、アリール、複素環、シクロアルキル、芳香族複素環、多環シクロアルキル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、ハライド、カルボン酸、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、アミド、カルバモイル、チオエーテル、チオール、アルコキシ、又はウレイド基を含む分岐又は置換基を含んでもよい。適切なアクリレートモノマーの具体例には、
【0069】
【化7】
が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
アクリレートモノマーに加え、本発明の種々の実施態様に従う光重合により架橋され得る、官能化されたプレポリマーを形成するために、他の試薬を用いることができる。このような試薬の具体例には、グリシジル、エピクロロヒドリン、トリフェニルホスフィン、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、ジビニルアジペート、及び触媒として酵素を用いたジビニルセバケート、ホスゲン型試薬、二酸塩化物、ビス酸無水物、ビスハライド、金属表面、及びそれらの組み合わせがが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
種々の実施態様において、例えば、プレポリマーのフリーカルボキシル基を用いて、プレポリマー骨格にビニル基を組み入れることができることが理解される。例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートは、カルボニルジイミダゾール活性化化学を用いて、プレポリマーのCOOH基を通じて組み入れることができる。
【0072】
ビニル基は、プレポリマーの骨格に、触媒を用いても用いずとも組み入れることができるが、触媒の使用が好ましい。種々の実施態様において、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、N−ヒドロキシスクシンイミド、カルボジイミド、及びピリジンを含むがこれらに限定されない、多種多様の触媒を用いることができる。好ましくは、反応は溶媒中で実施され、適切な溶媒の具体例には、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
種々の実施態様において、プレポリマーのアクリル化は、無水ジクロロメタン中におけるプロポリマーと塩化アクリロイルとの反応(触媒としてトリエチルアミン及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(4−DMAP)の存在下)によって実施することができる。これらの試薬を用いて、この反応を非常に乾燥した状況で実施することが好ましい。得られたアクリル化の具体例を、図3Bに概略的に示す。全ての結合の可能性、及び得られる生成物が図3Bに示されるとは限らないことを理解すべきである。例えば、プレポリマーの骨格のOH基が優先的にアクリル化されるが、カルボン酸基も修飾され得ると考えられる。
【0074】
プレポリマーのアクリル化の程度は、得られる架橋ポリマーの特性を調整するために用いることができる。従って、種々の態様において、本発明は、特定の物理的及び機械的特性を有するエラストマー性ポリマーの製造方法を提供する。種々の実施態様において、アクリル化の程度、及びアクリレート基における置換基の使用を、分解及び膨潤及び機械的特性等の特性を制御するために用いることができる。
【0075】
得られるヒドロキシル基に対する塩化アクリロイルのモル比は、アクリル化の程度を調整するために変化し得る。種々の実施態様において、アクリル化プレポリマーは、溶媒なしで硬化し得る粘稠液である。従って、種々の実施態様において、本発明は、エラストマー性生分解性組成物又は材料を形成するための、アクリル化プレポリマーのin vivoでの硬化方法を提供する。
【0076】
光重合
種々の実施態様において、アクリル化プレポリマーは、例えば、光開始重合、光重合等のフリーラジカル開始反応を用いて、ポリマーネットワークに導入される。種々の好ましい実施態様において、アクリル化プレポリマーを、光開始剤の存在下に光(通常は紫外線(UV))で照射し、反応を促進する。適切な光開始剤の具体例には、2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン、2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(Irgacure2959)、1−ヒドロキシシクロヘキシル−1−フェニルケトン(Irgacure184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(Darocur1173)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure369)、メチルベンゾイルホルメート(Darocur MBF)、オキシーフェニルー酢酸−2−[2−オキソ−2−フェニルーアセトキシーエトキシ]−エチルエステル(Irgacure754)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(Irgacure907)、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(Darocur TPO)、ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)(Irgacure819)、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。種々の好ましい実施態様において、反応を促進するために、アクリル化プレポリマーは、光開始剤の存在下に可視光(通常は青色光)で照射される。可視光のための光開始剤の具体例には、中でもカンファーキノンが含まれる。
【0077】
種々の実施態様において、例えば、in vivoでの光重合及び他の医療用途では、細胞適合性のある光開始剤の使用が好ましく、 制御因子によって要求される可能性がある。広範囲のほ乳類細胞タイプ及び種にわたって、光開始剤Irgacure2859は最小の細胞毒性(細胞死)を引き起こすことが報告されている;
架橋及びポリマーネットワーク
ポリマーネットワークの形成において、ネットワークの架橋及びポリマーらせん構造は同質でないことが理解される。例えば、図3C及び3Dは、PGSAを用いて本発明の光重合法により形成されたポリマーネットワークの部分の具体例を概略的に示す。
【0078】
本発明の種々の態様において、ポリマーネットワークにおける異なる架橋の形成は、得られるポリマーの特性を調節、又は「調整」するために用いられる。例えば、図4は、PGSA及びPEGDを用いて本発明の光重合法により形成されたポリマーネットワークの部分の具体例を概略的に示し、図3C及び3Dに示したように、架橋は、実質的にPGSA−PEGポリマーネットワーク中にも存在することが理解される。
【0079】
種々の実施態様において、コポリマーを含まない本発明の組成物から形成される生分解性材料は、以下の特性の1以上、すなわち、(a)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約1.5MPa未満の引張ヤング率;(b)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.05MPaを超える引張ヤング率、及び約45%より大きい伸長;(c)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.4MPa〜約0.55MPaの範囲のヤング率;(d)約170%を超える最大伸長;(e)約0.25〜約0.35の範囲のアクリル化の程度、ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、0.3〜0.5MPaの範囲のヤング率;(f)約0.35〜約0.45の範囲のアクリル化の程度、ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.7〜1MPaの範囲のヤング率;(g)約0.25〜約0.5の範囲のアクリル化の程度、及び約40%を超える伸長を有して提供される。
【0080】
「コポリマー」ネットワーク
種々の態様において、本発明は、本発明のアクリル化プレポリマー、及びアクリル化プレポリマーのアクリル化プレポリマー及び/又はヒドロキシル基のアクリレートに官能化された1種以上の分子(本明細書においてコポリマーと呼ばれる)から形成される、エラストマー性生分解性ポリマー組成物、及び材料を提供する。1種以上のヒドロゲル、又は他のポリマー前駆物質(例えば、ポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、例えば、アクリル酸、アクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリロニトリル、n−ブタノール、メタクリル酸メチル、及びTMPTAを含む、アクリレートをベースとする前駆体、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、Bis−GMA(ビスフェノールAグリシダルメタクリレート)、及びTEGDMA(トリエチレン、グリコールジメタクリレート)等の、アクリレート基を含むように修飾され得る前駆体、アクリル酸ショ糖等、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。多種多様のコポリマーは、ポリマー鎖間の架橋を修飾するためのラジカル重合の前、又はその間に、アクリル化プレポリマー(例えば、PGSA)と反応することができる。
【0081】
種々の実施態様において、本発明は、プレポリマーを形成するための、多官能性アルコール又はエーテル(2個以上のOR基を有し、Rが独立してH及びアルキルである組成物)及び二官能性又は高次の酸(例えば、二酸)の反応によって形成されるエラストマー性生分解性ポリマー組成物及び材料を提供する(例えば、図3Aを参照)。種々の実施態様において、プレポリマーの少なくとも一部がビニル基で官能化され、形成される1種以上のコポリマーと反応するアクリル化プレポリマーの混合物を形成する。アクリル化反応の前、反応の間、プレポリマーのアクリル化の後、又はそれらの組み合わせに、コポリマーを加えられることが理解される。次いで、得られた混合物は光重合され、ポリマーネットワークを形成する。種々の好ましい実施態様において、コポリマーはアクリル化され、アクリル化コポリマーはアクリル化プレポリマーと結合する。種々の実施態様において、コポリマー及び/又はプレポリマーの、非対称性モノアクリレート分子(例えば、アクリロイル−ポリ(エチレングリコール)−N−ヒドロキシスクシンイミド)とのアクリル化は、例えば、更に修飾(例えば、細胞接着分子の付加)することのできる固定部分(anchoring moeity)をもたらす。
【0082】
本発明の種々の態様において、ポリマーネットワーク中の種々の架橋の形成が、得られるポリマーの特性を調節又は「調整」するために用いられる。例えば、種々の実施態様において、2種以上のタイプの架橋(例えば、炭素の数、置換基の種々のタイプ、例えば、芳香族基はより強固である)が、得られるポリマーネットワークの特性を調整するために用いられる。種々の実施態様において、アクリル化プレポリマー(例えば、PGSA)は、例えば、架橋ポリエステルの1種以上の膨潤の調整、分解の調整及び抗汚染特性をもたらす割合でコポリマー(例えば、PEG)と結合し得る。
【0083】
例えば、種々の実施態様において、アクリル化プレポリマーの他のアクリル化コポリマーとの結合は、柔軟なヒドロゲルへの硬い分解性エラストマーを剛体材料とする特性を有する分解性材料を得るために用いられ得る。図5A及び5Bは、材料中のアクリル化プレポリマー及びコポリマーの比を調節することにより、種々の化学的及び物理的特性を調整することができる範囲を概略的に示す。図5Aは、PGSA−PEG組成物又は材料についての調整を示し、図5Bは、PGSA−デキストランについての調整を示す。更に、本明細書で議論するように、更なる特性の調整は、プレポリマー、コポリマー又は両方ののDAを調整することによって実現することができる。
【0084】
種々の実施態様において、液状のアクリル化プレポリマーマトリクスが、アクリル化ヒドロゲル前駆体と結合され、通常は典型的であるヒドロゲル材料と関連のない機械的、生分解的及び膨潤特性を付与する(図12参照)。20%(w/w)ポリ(エチレングリコール)ジ−アクリレート(PEGD、700Da)から形成されるヒドロゲルは、例えば、水中で14%の伸長、0.54MPAのヤング率、及び0.063MPaの極限強度を示す。PEGをPGSA(DA=0.5)と組み合わせることにより、ヤング率、極限強度、伸長及び膨潤比を正確に制御することができる(図12参照)。アクリル化プレポリマー濃度を上昇させることにより、伸長は4%から60%に、ヤング率は20MPaから0.6MPaに、極限強度は0.890MPaから0.027MPaになる(図12参照)。PEGDのアクリル化プレポリマー(DA=0.5)(50:50)との共重合により形成されるネットワークは、破断点伸びを維持しながら、10倍高いヤング率、通常のPEGDAヒドロゲルよりも優れた極限強度を示す(図12参照)。伸長の向上は、50%を超えるPEGDAを含む材料において見出された。また、アクリル化プレポリマーの濃度を10%〜90%の間に調整することにより、これらのネットワークの膨潤挙動は、40%から10%に調整することができる。PGSAエラストマー性ネットワークは、生理的条件において分解可能であり、細胞接着性及び非細胞毒性作用を示す。以上のように、種々の実施態様における本発明は、2種以上のタイプの架橋の取り込みの理論に拘束されることがないため、機械的強度を減少することなく分解速度を増加し得る材料及び組成物を提供する。また、以上のように、種々の実施態様における本発明は、全ての架橋密度と実質的に無関係であり、及び/又は全ての架橋密度の範囲内での全ての架橋密度と実質的に無関係である分解速度を提供することができる。
【0085】
種々の実施態様において、以下の特性の1以上、すなわち、(a)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約17MPa未満の引張ヤング率;(b)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.5MPaを超える引張ヤング率;(c)両方ともASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.6MPaを超える引張ヤング率、及び約20%を超える伸長;(d)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25MPaを超える引張ヤング率及び約1%を超える水中での膨潤;(e)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25MPaを超える引張ヤング率、及び約20%を超える水中での膨潤;(f)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25MPaを超える引張ヤング率、及び約40%を超える水中での膨潤;(g)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25MPaを超える引張ヤング率、及び約80%を超える水中での膨潤;(h)ASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.4MPa〜約0.55MPaの範囲のヤング率;(i)約60%を超える最大伸長;(j)約100%を超える最大伸長;(k)約160%を超える最大伸長;(l)約0.25〜約0.35の範囲のアクリル化の程度、及びASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.6〜1.0MPaの範囲のヤング率;(m)約0.25〜約0.5の範囲のアクリル化の程度、及び約40%を超える伸長;(n)約0.25〜約0.35の範囲のアクリル化の程度、及びASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.6〜1.0MPaの範囲のヤング率、及び約90〜120の範囲の架橋密度を有する、コポリマーを含む本発明の組成物から形成される生分解性材料が提供される。
【0086】
種々の形態の形成及び製造
本発明の液状アクリル化プレポリマー、及びアクリル化プレポリマー/コポリマー組成物を、多種多様の型及び形状内で加工する。図7A〜Dを参照すると、アクリル化プレポリマーは、加工条件(熱硬化)のために、以前は例えばPGSを用いては不可能であった、本発明の組成物及び材料のナノ粒子及び/又はマイクロナノ粒子を製造するために用いることができる(図7A)。種々の実施態様において、このような粒子は、例えば、関節、又は他の機械的動的環境において、薬物の放出を制御するのに用いることができる。アクリル化プレポリマーは、本発明の組成物及び材料の非常に薄い薄肉管を製造するために用いることができ(図7B)、管は、約1mmの内径、及び約0.2mmの管厚を有することが示される。種々の実施態様において、このような管は、例えば、小さい直径の人工血管を製造するために用いることができる。アクリル化プレポリマーは、マイクロパターン化表面(図7C)、及び多孔質足場(図7D)を有する本発明の組成物及び材料を提供するために加工することができる。アクリル化プレポリマーは、より厚い(>6mm)形態に加工することもできる。例えば、泡形成のために以前は熱硬化PGSを用いての製造は不可能であった、20mm厚の形態が製造された。種々の実施態様において、実質的に泡の形成のない、より厚い構造への本発明の材料及び組成物を形成する能力は、複雑な構造の形成を容易にする。
【0087】
図7A〜Dに示す構造は、以下のように、0.1%の光開始剤を含むアクリル化プレポリマーを種々の形態内に成型することにより実質的に製造された。足場については、マクロマー溶液をポロゲン(例えば、糖、塩)の上部に注ぎ入れ、次いで、水中におけるUV重合化、及びポロゲン浸出である。マイクロパターン化PGSAについては、アクリル化プレポリマーの薄層を微細パターン化シリコンマスター上にレプリカ成型し、光重合する。管の形成については、アクリル化プレポリマー溶液をガラス鋳型に注ぎ入れ、光硬化する。ナノ/マイクロ粒子は、水中油型乳剤溶媒蒸発法(単一エマルジョン法、single emulsion method)を用いて、アクリル化ポリマーから製造した。
【0088】
製造法
種々の態様において、本発明は、生分解性エラストマー組成物、材料及び装置の製造方法を提供する。種々の実施態様において、室温で光硬化性生分解性エラストマーを製造するために、以下の工程、すなわち(1)例えば、グリセロール及びセバシン酸からプロポリマーを製造し;(2)プレポリマーの骨格上の官能性ヒドロキシル基をアクリル化し、次いで反応生成物を精製し;(3)アクリル化プレポリマーを、光開始剤の存在下に紫外線を用いて光重合する工程を用いることができる。プレポリマーを形成するためにグリセロール及びセバシン酸を用いる場合、得られるエラストマーは、ポリ(グリセロールセバケートアジペート)PGSAと呼ばれる。種々の実施態様において、PGSプレポリマーは、23kDaの重量平均分子量(Mw)、及び約1:1のグリセロール:セバシン酸のモル組成を有する。プレポリマーをビニル基で官能化するために、室温で、種々のモル比の塩化アクリロイルと反応させることができる。
【0089】
種々の実施態様において、プレポリマーを形成するためにグリセロール及びセバシン酸を用い、アクリル化が塩化アクリロイルによる場合、グリセロール−セバケートに対する塩化アクリロイルのモル比が0.3〜0.8であれば、アクリル化の程度(DA)は実質的に直線的に増加し(例えば、図10参照)、PGSAにおけるDAが0.3〜0.8に増加すると、架橋密度を、例えば、約6モル/m3から約185モル/m3に増加させ、架橋間の相対分子量が減少し得る。
【0090】
種々の態様において、室温で生分解性エラストマーを製造するために、プレポリマーを架橋するための、光延反応、熱開始剤を用いた重合、酸化還元対重合反応、二官能性スルフヒドリル化合物を用いたミカエル型付加反応が提供される。
【0091】
種々の実施態様において、光延反応が、プレポリマーを架橋されるために用いられる。例えば、図6Aを参照すると、室温及び圧力条件で、THFに溶解したPGSプレポリマーを、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート及びトリフェニルホスフィンと反応させる。約1時間の反応時間の間に、最終的なエラストマー性架橋ポリエステル組成物生成物が形成された。例えば、この反応の穏和な条件は、例えば、エステル、エポキシド、ハライド等の種々の官能基のエラストマー性架橋ポリエステル組成物への取り込みをも可能にする。
【0092】
種々の実施態様において、一酸はエステル結合側鎖を導入するために用いることができ、モノアルコールは、エーテル結合側鎖を製造するために用いることができる(図6B参照)。
種々の実施態様において、ポリ−βアミノエステルは、遺伝子送達において約束された生体材料のクラスを生成し得る。臨床応用のためのポリ−βアミノエステルの開発における1つの可能性の限界は、高分子量の生成物を合成できない点にある。本発明の光延反応の応用は、側鎖の架橋により高分子量製剤を製造する、この障害を克服するのに有用であり得る(例えば、図6C参照)。従って、種々の実施態様において、本発明には、ポリ−βアミノエステル微粒子を含む遺伝子送達のための粒子が含まれる。
【0093】
更なる用途及び応用
そのエラストマー特性のため、本発明の組成物及び材料は、組織、特に筋組織、動脈及び心臓弁の再生医療を含む多種多様の用途における応用を見出し得る。
【0094】
例えば、種々の実施態様において、本発明の生分解性エラストマー組成物及び材料は、例えば、末梢神経再生のための管の形態で用いることができる。好ましくは、管は、周囲の組織の圧力に耐えるように構成され、その増殖において神経をもたらし、瘢痕組織形成によって実質的に制約されない。末梢神経再生の応用において、材料が官能化され(例えば、GRGDにより)、シュワン細胞の接着及びガイダンスを促進することが好ましい。
【0095】
例えば、種々の実施態様において、本発明の生分解性エラストマー組成物及び材料は、細胞接着及び/又は封入のためのマトリクス、足場又は構造として用いることができる。種々の実施態様において、短いペプチド(例えば、GRGD)は光硬化ポリマーに取り込まれ、細胞接着を増強することができる。これらの短いペプチドの光硬化ポリマーへの取り込みは、官能化ペプチドをPGSAと混合し、次いで光硬化することによって実施することができる。例えば、種々の実施態様において、GRGDペプチドは、ポリ(エチレングリコール)スペーサー及びアクリレート基によって官能化され得る。種々の実施態様において、材料の表面は、例えば、ガイド細胞に対して管の内側でナノパターン化することができる。例えば、神経移植の場合、材料はナノパターン化され、神経移植の間の細胞の誘導、及びシュワン細胞の誘導を増強することができる。
【0096】
種々の実施態様において、本発明は、細胞の封入及び増殖のための3Dマトリクスとしての生分解性エラストマー組成物及び材料を提供する。種々の実施態様において、これらのマトリクスは、幹細胞として構成される。
【0097】
例えば、種々の実施態様において、グリセロールからなる、液状ポロゲン/細胞送達媒体は、封入された幹細胞を保護し、得られたPGSAネットワーク内に多孔を形成するために一時的な基板として形成される。PGSAをグリセロールと混合し、次いでUV硬化し、浸水し、多孔の足場を形成し、これは、水性溶液中で300%以下に膨潤する。グリセロールに分散させたヒト胎児幹細胞をPGSAと混合し、UV硬化し、封入された細胞を接着し、増殖するための環境を整える細胞培養液に入れた。特に、24時間以内に、幹細胞は、足場にグリセロールが拡散したPGSAネットワークに付着し、細胞培養液が足場中に拡散するのが観察された。細胞増殖は7日目まで観察された。多孔性の足場は、試in vitroにおける最小の分解を示し、その3D構造を30日まで維持した。
【0098】
本発明の組成物及び材料のヒドロキシル基は、分子が、バルク又は材料の表面特性を修飾するために接着し得る部位を提供する。例えば、種々の実施態様において、分解速度を低下させるために、tert−ブチル、ベンジル、又は他の疎水基を材料に付加することができる。種々の実施態様において、分解速度及び親水性の調節を容易にするために、メトキシ等の極性有機基を用いることができる。種々の実施態様において、分解速度を上昇させるために、これらの部位における糖類等の親水基の付加を用いることができる。
【0099】
種々の実施態様において、材料の特性を修飾するために、酸をポリマーに加えることができる。例えば、カルボン酸又はリン酸基又は酸性糖を有する分子を加えることができる。種々の実施態様において、硫酸塩及びアミン等の電荷を有する置換基をポリマーに結合させることができる。ポリマーに付加した置換基は、例えば、結合を通じてヒドロキシル基(水素と置換される)に付加され、ヒドロキシル基を置換することによって、ポリマーに結合する有機基に組み込まれることにって、及び/又は結合の一部として、又は結合上の置換基として組み込まれることによって、ポリマー骨格に直接結合される。
【0100】
種々の実施態様において、ポリマーへのこのような非タンパク質性有機又は無機基の結合は、ポリマーの親水性、及び分解速度、及びメカニズムを修飾するために用いることができる。種々の実施態様において、材料の親水性を修飾するために保護基化学を用いることができる。
【0101】
種々の実施態様において、例えば、ポリマーの細胞との相互作用の制御及び/又は制御を容易にするために、生体分子及び/又は生物活性剤をヒドロキシル基に結合するか、ポリマー骨格に組み込むことができる。種々の実施態様において、生体分子及び/又は生物活性剤は、本発明の組成物及び材料に封入される。種々の実施態様において、生体分子及び/又は生物活性剤は、例えば共有結合的、非共有結合的にポリマーに結合し、それにより放出速度が低下する。
【0102】
1種以上の生体分子及び/又は生物活性剤を含む本発明の組成物及び材料の種々の実施態様において、アクリル化の程度、1種以上のコポリマーの割合、又はその両方を調節することによって、1種以上のタイプの架橋の架橋密度が調節され、所望の生体分子及び/又は生物活性剤の放出速度、放出プロフィール、又はその両方を有するエラストマー組成物又は材料が提供される。
【0103】
種々の実施態様において、例えば、傷口に細胞を補充し、及び/又は現場にある、及び/又はマトリクス内に播種された細胞内での特定の代謝的及び/又は増殖的挙動を促進するために、本発明の組成物又は材料を含む創傷包帯/封止剤に、成長因子等の生体分子を組み入れることができる。具体的な成長因子には、TGF−β、酸性線維芽細胞成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、IGF−I及びII、血管内皮由来成長因子、骨形成蛋白質、血小板由来成長因子、ヘパリン結合性増殖因子、造血成長因子、及びペプチド成長因子が含まれるが、これらに限定されない。種々の実施態様において、インテグリン及び細胞接着配列(例えばRGD配列)は、細胞接着を促進するために、本発明の組成物及び材料に結合することができる。種々の実施態様において、細胞の補充、移動、及び材料の代謝及び分解及び機械的特性をコントロールするために、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン等の細胞外マトリクス成分を、本発明の組成物及び材料と組み合わせることができる。種々の実施態様において、プロテオグリカン及びグリコサミノグリカンは、本発明の組成物及び材料と共有結合的又は非共有結合的に結合することができる。
【0104】
組織工学への応用
本発明の組成物及び材料の化学的及び物理的特性を「調整」する弾性及び能力は、種々の組織の再生における使用のための種々の実施態様を推奨する。種々の実施態様において、例えば、本発明の組成物及び材料は、上皮細胞、結合組織、神経、筋肉、器官、及び他の組織、並びに動脈、靭帯、皮膚、腱、腎臓、神経、肝臓、膵臓、膀胱及び他の組織を再生するために用いることができる。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、骨の石灰化及び形成のための鋳型として用いることができる。
【0105】
組織は、通常、毎日の利用において機械的な力及び変形を経験し、組織の再構築は、しばしば機械的な力に影響される。例えば、心臓及び他の筋肉は、頻繁に使用されると密度や大きさが増加し、使用されないと萎縮する。機械的な力は、ECMの産生及び分解のいずれかを促進する成長因子を産生するための細胞外マトリクス成分を産生する細胞を刺激する。本発明の組成物及び材料の種々の実施態様のように、機械的な力に対する正常な生理的反応を模倣する物質の使用は、機械的な促進が、組織工学によって作製された構築物の培養初期に適用できるよう、正常組織の再生を促進する。
【0106】
例えば、本発明の組成物及び材料の種々の実施態様は、患者の膀胱の一部を組織工学によって作製、又は再生するために用いることができる。種々の実施態様において、平滑筋細胞及び尿路上皮細胞は本発明の組成物及び材料に播種される。インプラントが患者に埋め込まれる前に、細胞は増殖を開始する。軟骨の置換又は再生のために、軟骨が関節の屈曲のように受ける繰り返し剪断及び圧縮力に耐えることのできる本発明の組成物及び材料の種々の実施態様に軟骨細胞を播種することができる。
【0107】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、人工心臓弁を製造するためにも用いることができる。心臓弁は非常に柔軟であり、心拍の周期的な変形を受ける。身体は、通常の生理学的メカニズムを通じて心臓弁中の裂け目を修復し、その結果、生分解性材料で製造された心臓弁を再生することができる。本発明の種々の実施態様において、本発明は、心臓弁の形態に製造され、平滑筋細胞及び内皮細胞を用いて播種され、身体において、新規な非合成的心臓弁の再生を促進する本発明の組成物及び材料を提供する。種々の実施態様において、線維芽細胞を加えることが好ましい。好ましい実施態様において、再生は3ヶ月にわたって起こり、ポリマーの分解速度は、架橋密度を調節することによって、コポリマーの割合を調節することによって、またはその両方によって調節することができる。
【0108】
本発明の組成物及び材料の形態は、特定の組織の再生への応用、並びに他の応用のためにコントロールすることができる。特定の形態の例としては、粒子状、管状、球状、鎖状、コイル状の鎖状、フィルム状、シート状、繊維状、網の目状等が含まれる。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料から毛細血管状ネットワークを形成するために微細加工を用いることができる。例えば、シリコンウェハは、所望のパターンを有する毛細血管状ネットワークを製造するための標準的微細加工技術を用いて加工される。ネットワークは、例えばショ糖等の犠牲層でコーティングされる。アクリル化プレポリマー混合物(コポリマーを含んでもよい)は、犠牲層の上に鋳造され、本明細書に記載された方法に従って硬化される。犠牲層を溶解し、シリコンウェハ中に形成された毛細管状ネットワークのパターンを緩和する本発明の重合した組成物及び材料を放出するために水を用いることができる。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料におけるチャンネルの直径は約7μm、深さは約5μmである。チャンネルについてのサイズの限界は、微細加工技術の分解能により決定されるが、生物学的用途は、5〜10、又は100ミクロン又はそれ以上のオーダーのチャンネルサイズから利益を得る可能性があることが理解される。毛細管状ネットワークは、本発明の組成物及び材料の平らなシートでそれらを覆い、硬化することによってそれらに接近し得る。例えば、架橋されていないポリマーの層は、パターン化された層及び平らな層の間の接着剤として用いることができる。「接着剤」の重合は、2個の片を一緒に組み合わせることができる。アセンブリの更なる硬化は、接着剤の架橋密度を増加させ、接着剤と、本発明の層の平らなパターン化された組成物及び材料との間に共有結合を形成する。種々の実施態様において、本発明の架橋されていない平らな組成物及び材料は、チャンネルを覆うために、パターン化フィルムを覆って硬化される。
【0109】
これらの形態は、多種多様の組織を再生するために用いることができる。例えば、神経の再生を促進するために、ポリマーを管状に製造することができる。傷ついた部位を横切って軸索の移動を導く管の末端に、損傷した神経を注ぎ込む。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、肝臓の組織構造を製造するために用いることができる。例えば、発生した組織に栄養分を輸送する栄養供給源に接触し得る血管及び毛細管ネットワークを模倣する管のネットワークに形成される。細胞は、in vivoでの管のネットワークに補充され、及び/又は血管細胞を播種することができる。管のネットワークの周囲に、本発明の組成物及び材料は、肝臓細胞における細胞外マトリクスの配列を模倣するネットワークに形成し、肝細胞に播種することができる。同様に、本発明の組成物及び材料の種々の実施態様は、繊維状ネットワークに形成し、島細胞に播種し、膵臓の再生医療に用いることができる。本発明の組成物及び材料は、他の様々な細胞、例えば、腱細胞、線維芽細胞、靱帯細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、神経細胞、腎臓細胞、膀胱細胞、腸管細胞、軟骨細胞、造骨細胞、ヒト胎児性幹細胞又は間充織幹細胞等の幹細胞等に播種することもできる。
【0110】
医学的応用
他の医学的応用は、本発明のポリマーの弾性からも有利である。例えば、腹部の手術後、腸管及び他の腹部臓器は、お互いに、及び腹壁と付着しやすい傾向にある。この付着は手術後の炎症が原因であると思われるが、腹部領域に直接送達された抗炎症剤は急速に分散する。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料が、抗炎症剤を腹部領域に送達するために用いられ得る。実施態様において、柔軟で順応性のある生分解性を有する本発明の組成物及び材料を提供することができるため、感染をもたらす内部の臓器を切断することなく、例えば、腹壁に接触させることにより、腹壁と腸管臓器との間に埋め込むことができる。抗炎症剤は、本発明の組成物及び材料から、長期間にわたって、例えば数ヶ月間、放出され得る。この問題を解決するために、以前の研究者はヒドロゲル、ヒアルロン酸をベースとする膜、及び他の材料を用いることを試みたが、これらの材料は体内で急速に分解する傾向にあり、付着を防止するには、より長い期間、存在する必要がある。
【0111】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、金属ステントをコーティングするために用いることができる。実施態様において、柔軟な本発明の組成物及び材料を提供することができるため、ステントを破ることなく拡張させるが、金属ステントの硬さは、本発明の組成物及び材料が、以前の形態を弾力的にとることを防止すると思われる。本発明の組成物及び材料は、例えば、血塊又は瘢痕組織の形成の防止を促進するための1種以上の凝固防止剤及び/又は抗炎症剤を含んでもよい。血管形成剤は、ステント周囲の血管の再形成を促進するために含まれ得る。
【0112】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、「長期間」の医療装置を製造するためにも用いることができる。通常の持続性の医療装置とは異なり、本発明の組成物及び材料は時間がたてば分解するように製造することができ、例えば、生分解性心臓ステントに製造することができる。好ましくは、本発明の組成物及び材料は、ステントの製造のための可塑的に形成する、より硬いポリマーと混合される。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は可塑剤として作用し、移植後に、ステントが所望の形態に拡大される。ステントは、容易な循環を許容するために血管の直径を大きくするが、ステントは生分解性であるため、血栓症なしで周囲の血管の直径を大きくするか、血管を再び閉塞する瘢痕組織によりステントを覆う。ステントが、分解前に同じ場所に残留し、その形態を維持する時間は、患者毎に変化し、患者の血管の閉塞及び年齢(例えば、高齢の患者は治るのにより多くの時間を必要とする)に部分的に依存する。本明細書に示される教示を用いて、当業者は、分解速度を調節するために、例えば、DA、架橋密度、コポリマーを有する実施態様におけるコポリマーの割合の1以上を調節することができる。コーティングされたステントについては、本発明の生分解性ステントは、in situにおいて、生体分子、生物活性剤、又はこれらの組み合わせを放出することもできる。
【0113】
種々の実施態様において、本発明の組成物は、手術用接着剤として用いることができる。生体適合性、生分解性の手術用接着剤は、手術の間の出血を停止するために用いることができるが、外科医が傷を閉じる縫合の前に除去される必要はなく、時間がたてば分解する。現在の手術用接着剤は、しばしば、ウシの組織由来のフィブリンを用いており、合成の手術用接着剤は、クロイツフェルト−ヤコブ症候群(「狂牛病」)の危険を減少する。接着剤を製造するために、ヒドロキシル基の数を増加(例えば、架橋密度を減少することにより)し、生成物を非常に粘着性にすることが好ましい。種々の実施態様において、本発明の手術用接着剤は、1%未満、好ましくは0.5%未満、更に好ましくは0.05%未満の架橋密度を有する。
【0114】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、in vivoでのセンサー及びカテーテルを支持するために用いることができる。ポリマーは、光ファイバーをベースとするセンサーのためのチャンバー内で製造することができ、興味のある領域に挿入されるカテーテルをコーティングすることができる。センサーにおいて、チャンバーは、興味のある分子のための特定の発色団が結合した受容体を含み得る。検体が受容体に付着する場合、発色団は特定の波長で光を放射又は吸収する。吸収又は放射は、光ファイバーに結合した装置によって検出することができる。例えば、センサーは、短期間、10〜15日間の連続的な監視のために用いられる。同様に、カテーテルは、薬剤又は他の低分子又は生物活性剤を特定の部位又は静脈内で定期的に送達するために用いられ得る。本発明の組成物及び材料の種々の実施態様の使用は、2週間以上にわたって用いられるシャント又は他のインプラント周囲に通常に形成される瘢痕組織の形成を減少し得る。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料の分解速度は、それが患者内に設置されている間に有意に分解しないように選択されることが好ましい。
【0115】
薬剤放出用途
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、薬物放出用途のために、例えば、薬物を保持するマトリクスが柔軟である必要がある用途において用いることができる。本発明の組成物及び材料は、弾性である実施態様を提供し得るため、彼/彼女が歩き、走り、座る等につれ、患者と共に移動し得る。本発明の組成物及び材料は分解するにつれ、機械的整合性を維持する実施態様を提供し得るため、装置は、生存期間の終わりに向かって破滅的に失敗する可能性が低く、薬物の急速な放出の危険を減らす。生体分子及び生物活性剤は、全て、供給結合又は非共有結合相互作用を用いて、本発明の組成物及び材料の種々の実施態様と結合し得る。具体的な非共有結合相互作用には、水素結合、静電相互作用、疎水性相互作用及びファンデルワールス相互作用が含まれる。
【0116】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、縫合が困難であるか、通常の生理的メカニズムを通じて適切に治癒されない他の創傷にも用いることができる。例えば、糖尿病は、しばしば下肢において、治癒に長期間かかるか、循環が悪いために適切に治癒しない皮膚損傷(糖尿病性潰瘍)を伴う。これらの損傷に抗生物質又は抗炎症剤を送達するための本発明の組成物及び材料の種々な実施態様の使用は、治癒を助け、創傷の被覆をもたらす。
【0117】
非医療的用途
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、非医療的用途に用いることができる。例えば、おむつは、強靱なエラストマー、及び吸収剤を包む、液体透過性トップシートから製造される。現在、エラストマー性「包装材」に、ポリプロピレンが用いられている。ポリプロピレンは分解性でなく、埋め立て地での分解に10年以上を要する。対称的に、本発明の組成物及び材料は、乾燥した環境では安定であるが、湿潤して2〜4週間以内に埋め立て地に分解される実施態様を提供する。本発明の組成物及び材料の生分解性を利用することのできる同様の生産物には、失禁プロテクター、生理用ナプキン、パンティーライナー、及び創傷包帯が含まれる。同様に、プラスチックバッグ、例えば、ごみ袋を、一部又は全体の本発明のポリマーの種々の態様から製造することができる。本発明の組成物及び材料が単独で用いられる場合、バッグが埋め立て地に到達する前に、架橋密度の上昇、及び/又はコポリマーの割合の増加、及び/又は分解時間を上昇し、有意な分解を防止するためのヒドロキシル基の修飾を実施することが好ましい。
【0118】
種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、天然資源のみならず、これらの天然資源に依存する動物を保護するために用いることができる。例えば、種々の公開イベントにおいて、ヘリウムを充填したバルーンを開放することが非常に一般的である。バルーンは、最終的には飛び出して、それらを食しようと試みた場合に窒息してしまう動物のいる地球に戻る。対称的に、本発明の組成物及び材料の種々の実施態様で製造されたバルーンは、風雨にさらされることによって分解する。このようなバルーンは、最終的にそれを食した動物によって消化され、いったん分解した動物に対して、継続的に息を詰まらせる危険性は存在しない。種々の実施態様において、本発明の組成物及び材料は、疑似餌及び毛針を製造するために用いることができる。漁師が疑似餌を紛失した場合、疑似餌は、小川又は湖の底に容易に沈み、最終的に分解される。
【0119】
他の非医療的用途において、本発明の組成物及び材料の種々の実施態様は、チューイングガム用の基礎剤として用いることができる。例えば、材料は、着色剤、調味料、又はガムを製造するための他の添加剤と混合される。咀嚼の間に心地よい口の感触をもたらす適切な微細構造は、種々の分子量、及び架橋密度のポリマーの重合化、及び得られる材料の数分間の咀嚼によって決定することができる。
【0120】
ガムは、ガムをかむヒトに、栄養分(例えば、ビタミン)又は薬剤を送達するためにも適用することができる。栄養分には、健康食品店で入手可能なビタミン及びミネラル、アミノ酸、又は種々の栄養剤等の、FDAが薦める栄養分が含まれる。このような添加剤は、ガムを製造するために、アクリル化プレポリマー(コポリマーを有するか有しない)と容易に混合することができる。種々の実施態様において、栄養分は、共有結合、好ましくは加水分解性の結合によってポリマーに結合し、それは口中に検出される酵素によって溶解する。ガムが咀嚼されると、栄養分又は薬剤は放出され、嚥下される。
【実施例】
【0121】
本発明の態様は、包括的でなく、決して本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきでない、以下の実施例を考慮に入れ、更に理解される。
【0122】
以下の実施例はPGSAネットワークの製造の具体例を提供し、(a)熱硬化ポリ(グリセロールセバケート)(PGS);(b)光硬化ポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート(PGSA);及び(c)光硬化ポリ(グリセロールセバケート)−アクリレート−コポリ(エチレングリコール)(PGSA−PEG)ネットワークの特性を比較する。実施例において、これらのポリマーは、それらの分解特性(in vitro及びin vivo)、機械的特性及びin vivoでの生体適合性について試験された。
【0123】
(実施例1):PGS、PGSA及びPGSA−PEGコポリマー
プレポリマー及びアクリル化プレポリマーの合成
全ての化学薬品は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI,USA)から購入した。プレポリマーは、等モルのグリセロール及びセバシン酸(Fluka,Buchs,Switzerland)を、120℃のアルゴン雰囲気下で24時間重縮合し、圧力を1トールから40ミリトールに5時間かけて減圧し、粘性液体を得ることによって合成した。プレポリマーのアクリル化は、更に精製することなくプレポリマーから製造した。重縮合を更に24時間継続し、粘性のプレポリマーを得た。この材料を更に精製することなく用いた。
【0124】
火力乾燥丸底フラスコを、PGSプレポリマー(20g、78ミリモルのヒドロキシル基を有する)、200mLの無水ジクロロメタンでチャージし、10%(w/v)溶液を作製した。20mg(0.18ミリモル)の触媒4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(DMAP)を加えた後、反応フラスコを窒素の陽圧下で0℃に冷却し、撹拌した。いったん冷却し、0.1:1.1(モル/モル)の、グリセロールセバケートに対する塩化アクリロイル(PGSプレポリマーにおける0.25〜0.80モル/モルのヒドロキシル基)をゆっくりと加えて反応を開始し、塩化アクリロイルに対して等モル量のトリエチルアミンを同時に加えた。混合物を室温に加温し、窒素雰囲気下で更に24時間撹拌した。生成物を酢酸エチルに溶解し、塩化物を沈殿させ、ろ過し、45℃及び5Paで乾燥し、粘性液体を得た。
【0125】
プレポリマー及びアクリル化プレポリマーの特徴づけ
プレポリマー及びアクリル化プレポリマー試料をCCl3Dに溶解し、1H核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトルを、Varian Unity−300 NMR分光計で記録した。NMRスペクトルについてのppmによる化学シフトを、7.27ppmにおけるCCl3Dの相対基準とした。セバシン酸についての1.2、1.5、2.2ppmにおける−COCH2CH2−CH2−、グリセロールについての3.7、4.2及び5.2ppmにおける−CH2−CH−、及びメチレン基上のプロトンについての5.9ppm、6.1ppm及び6.5ppmにおける−CH=CH2のシグナル強度を計算することにより、組成を決定した。セバシン酸(1.2ppm)のメチレン基、及びアクリル基(5.9、6.1及び6.5ppmの平均シグナル強度)のシグナル強度を、アクリル化の程度(DA)を計算するために用いた。
【0126】
GPC及び1H−NMR分析により確認したように、PGSプレポリマーは23kDaの重量平均分子量(Mw)、及び約1:1のグリセロール:セバシン酸のモル組成を有する。具体的なスペクトルを図8A及び8Bに示す。図8AはPGSプレポリマーのスペクトルを、図8BはPGSAのスペクトルを示す。図8A及び8Bを参照すると、ポリマーマトリクス中のセバシン酸及びグリセロールは、ポリマーマトリクス中のセバシン酸及びグリセロールは、図中、「a」から「e」で標識した炭素上に位置する水素により1.2、1.5、2.2ppm及び3.7、4.2及び5.2ppmで特定された。PGSA上に位置するビニル基は、図中、「f」〜「i」で標識した5.9ppm、6.1ppm及び6.4ppmで特定され、g、f及びI周囲の領域を差し込み図8X02で拡大した。
【0127】
図9A及び9Bは、PGSプレポリマーPGSプレポリマー(902);0.20のDAを有するPGSA(904);PGSA(DA=0.54)(906);熱硬化PGS(908);光硬化PGSA(DA=0.20)(910);及び光硬化PGSA(DA=0.54)(912)のATR−FTIRスペクトルを比較する。PGSAの光硬化後のポリマーネットワークの形成は、メチレン基の振動に関連する2930cm−1におけるバンドの増大、及びビニル結合の振動に関連する1375cm−1におけるバンドの消失によって確認される。
【0128】
アクリレート基の取り込みは、5.9、6.1及び6.4ppmにおけるピークの出現(図8A及び8Bの比較)、ビニル結合の振動に関連する1375cm−1におけるバンドの出現(図9A及び9Bの比較)によるATR−FTIRによって確認された。1H−NMRのシグナル強度から計算したように、加えられた約66%の塩化アクリロイルがプレポリマーに取り込まれ、その結果として図10に示すようにアクリル化の程度は0.17〜0.54の範囲である。更に、NMRデータは、塩化アクリロイルが、セバシン酸由来のカルボキシレート基と比較してグリセロール由来のヒドロキシル基と明らかに優先的に反応することを示す。これは、増加するDAを有する三置換グリセロール由来のプロトンの共鳴に関連する5.2ppmにおけるシグナル強度の増大、及びモノ置換グリセロール由来のプロトンの共鳴に関連する3.7ppmにおけるシグナル強度の減少により示された(図8A及び8Bの比較)。1H−1HCOSY NMR;及び定量的13C−NMR解析は、末端カルボキシレート基の最小(<5%)の置換を示した(データは示さず)。アクリル化後に、PGSAのMwは実質的に変化せずに維持されていた。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、Styragelカラム(HR−4、HR−3、HR−2、及びHR−1のシリーズ、Waters Corp.,Milford,MA,USA)におけるTHFを用いて、PGSプレポリマー及びPGSAのサイズを測定した。
【0129】
光硬化PGSAネットワークの製造
PGSAネットワークは、PGSAを、0.1%(w/w)の光開始剤(2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン)と混合し、1.2mmのスペーサーを有する2枚のスライドガラスの間で、約4mW/cm2における紫外線により開始する、長波長の紫外線ランプ(モデル100AP,Blak−Ray)を用いた10分間の重合反応により製造した。減衰全反射−フーリエ変換赤外分光分析(ATR−FTIR)解析をNicolet Magna−IR 500分光光度計により実施し、架橋反応を確認した。最初にクロロホルムに溶解し、次いで結晶の上部に配置した(a)熱硬化PGSスラブ;(b)光硬化PGSAスラブ;(c)PGSプレポリマー、及び(d)PGSAについて試料を解析した。
【0130】
PEGジアクリレート及びPGSAの共重合
PGSA−PEGジアクリレートのネットワークを、10、50、90%(wt/wt)のPGSA(DA=0.34)を、0.1%(w/w)の光開始剤を含むPEGジアクリレート(MW=700Da)と混合し、次いで、1.2mmのスペーサーを有する2枚のスライドガラスの間で、紫外線を10分間照射する光重合により製造した。機械的検査の前に、光硬化ネットワークを100%エタノールに24時間浸漬し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に24時間浸漬した。ポリ(エチレングリコール)ヒドロゲルを、前述した条件を用いた光重合により、0.1%(w/w)の光開始剤を含むPEGジアクリレート溶液(20%、w/w、水中)から製造した。PBS中での膨潤を以下のようにして決定した。
【0131】
熱的及び機械的特性
熱硬化PGS、光硬化PGSA(DA=0.31、0.54)、及びPGSA(DA=0.34+5%PEGジアクリレート)由来のディスクの熱的特性を、−90℃〜250℃の温度範囲で、10℃の加熱/冷却速度を用いて、示差走査熱量計(DSC)、DSCQ1000、2サイクルを用いて特徴づけた。ガラス転移温度(Tg)を、第二の加熱ランからの熱容量における、中間の記録された階段状の変化として決定した。
【0132】
引張強度試験を、光硬化PGSAシートから切り取った犬の骨の形態のポリマーストリップ(115×25×1.2mm)で実施し、実質的にASTM標準D412−98aに従うInstron 5542を用いて試験を行った。伸長速度は50mm/分であり、全ての試料は伸長に失敗した。値を応力ひずみに変換し、引張ヤング率を、初期傾斜(0〜10%)から計算した。全ての機械的検査は、ゾル内容物の除去後の湿潤条件(PBSに24時間浸漬)で実施した。PGSAシートをエタノール中に24時間浸漬することにより、ゾル内容物、又は未反応のマクロマーを除去した。光硬化したPGSAのゾル含有量、膨潤特性及び乾燥質量を評価するため、ディスク(10×2mm)(n=3)の重量を測定し(W0)、5mLのエタノールに浸漬した。試料をエタノール中に24時間浸漬した後、ポリマーを90℃で7日間乾燥し、再び重量を測定し(W1)、以下の式、Wsol=[((W0−W1)/W1)×100]により、未反応のマクロマーの割合、ゾル含有量(Wsol)を求めた。光硬化PGSAディスク(ゾル内容物なし)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に24時間浸漬し、表面のPBSをティッシュペーパーで除去し、再び重量を測定した(Ws)。膨潤比(SR)をSR=[(WS−W0)/(W0)×100]により求め、W0の割合で表した。エタノール中の光硬化PGSAの膨潤比を同様の方法で評価した。
【0133】
光硬化PGSAの密度を決定するため、50mLの比重びん(Humboldt,MFG.Co)を用いて、予め重量を測定したポリマー試料(n=10)の用量を測定した。開示内容全体が参考として本明細書で援用される、Wang Y,Ameer GA,Sheppard BJ,Langer R.,Nat.Biotechnol 20(6):pp602−6(2002)に実質的に開示されたように、試料の密度及びヤング率を用いて、架橋間(Mc)の架橋密度及び相対分子量を計算した。
【0134】
in vitro分解
試料間の加水分解による全分解及び相対的分解速度を評価するため、熱乾燥硬化PGS、光硬化PGSA(DA=0.31、0.54)、及びPGSA(DA=0.34+5%PEGジアクリレート)ポリマーのディスク(直径10’1.6mm)の重量を測定し(W0)、20mLの0.1mM NaOHに37℃で浸漬した。分解試験の前に、前述のようにしてゾル含有量を除去した。5つの異なる時点(0、1.5、3、4.5及び6時間)に、試料(n=3)を0.1mM NaOHから除去して脱イオン水で洗浄した。試料を90℃で7日間乾燥し、再度重量を測定した(Wt)。残存する乾燥重量[(Wt/W0)’100]を計算した。走査電子顕微鏡による分解試料の表面解析のため、乾燥試料を白金/パラジウムでスパッタコーティングし(厚さ約250オングストロームの層)、カーボンテープを用いてアルミニウムスタブに乗せ、JEOL JSM−5910走査電子顕微鏡で試験を行った。
【0135】
in vitroでの細胞接着及び増殖
ジメチルスルホキシド(DMSO)中で、3,400rpmで5分間、次いで10分間のUV重合によって、20%PGSAを用いて製造した、光硬化PGSA(DA=0.34)スピンコートディスク(直径18、1mm)(n=3)をこの試験に用いた。成功したPGSAスピンコーティング及びそれに続く光硬化を確実にするため、UV硬化を行ったディスク、及び行っていないディスクをクロロホルムに24時間浸し、未反応のマクロマーを溶解させた。得られた表面を光学顕微鏡を用いて試験した。10%ウシ胎仔血清、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を増殖培地として用いた。ヒト包皮線維芽細胞(ATCC CRL−2522)に播種する前に、光開始剤、残存するDMSO、及びあらゆる未反応のモノマーを除去するために、光硬化スピンコートPGSAディスクを、12ウェルプレート中の増殖培地でインキュベートした。2mLの増殖培地を用いて、各ディスクを5,000細胞/cm2に播種した。細胞を、加湿したインキュベータで、37℃、5%CO2中でインキュベートした。4時間のインキュベート後、培養物をPBSで2回洗浄し、付着していない細胞を除去し、細胞培養液でインキュベートした。細胞を4%ホルムアルデヒド溶液で10分間固定し、PBSで、4時間、2.5及び12日間洗浄した。次いで、光学顕微鏡で、ランダムの9箇所の同じサイズのスポット(0.005cm2)で細胞をカウントし、細胞密度を計算した。
【0136】
硬化PGS及びPGSAの特性の特徴づけ及び比較
光開始剤2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノンの存在下におけるPGSAのUV重合は、エラストマー性ネットワークをもたらす。光硬化PGSAエラストマーのATR−FTIR解析(図9A)は、メチレン基の振動に相当する2930cm−1におけるバンドの増加、及びビニル結合の振動に相当する1375cm−1におけるバンドの減少を示す。これは、ほとんどのビニル基が架橋反応に関係していることを示す。3475cm−1における広いピークは、水素結合したヒドロキシル基に帰する。これらの水素結合したヒドロキシル基は、塩化アクリロイルにより修飾されていないフリーのヒドロキシル基から生じると思われる。熱硬化PGS、光硬化PGSA(DA=0.31、0.54)、及びPGSA(DA=0.34+5%PEGジアクリレート)のTgは、それぞれ、−28.12、−32.2、−31.1及び−31.4℃であった。これらの結果は、熱硬化PGS及び光硬化PGSAが37℃で非晶質であることを示す。光硬化PGSAの物理的性質についての更なるデータを表1に示す。
【0137】
【表1】
光硬化PGSAのヤング率及び極限強度はDAに直線的に比例し(データを、図11A、11B及び表1に示す);機械的検査後に持続的な変形は観察されなかった。光硬化PGSAの機械的特性は、約0.05MPA(DA=0.17)から約1.38MPa(DA=0.54)に変化するポリマーの引張ヤング率によって決定されるように、柔軟から相対的に強度にまでわたる。最終の引張強度は、約0.06MPa〜約0.47MPa(図3B)の範囲であるが、光硬化に失敗した光硬化PGSAのストレインは、DAの上昇を伴い、約189%〜約42%である。エタノール及び水中でのエラストマー性ネットワークの膨張率の程度は、それぞれ、約50〜約70%、約8〜約12%である。この程度はDAの関数としては目に見えるほど変化しなかった。エタノール中での膨張率の高い程度は、未反応のモノマーの除去、又は特定の因子の潜在的な取り込みを促進することができる。水中での膨張率の低い程度は、例えば、移植による機械的特性の維持等を促進することができる。
【0138】
ポリマーのゾル含有量は、DAを約0.20から0.54に増加させることによって、約40%から約10%未満に減少する(データを図11Cに示す)。これは、ポリマー鎖間の新規な架橋の数の増加の結果であり、それ故架橋密度に直接関係すると思われる。より低いDA(より柔軟な材料)を用いて達成される高いゾル含有量は、例えば、未反応のマクロマーが周囲の組織に拡散する場合に、in situでの重合に不都合である。機械的特性(ゾル含有量と関係なく測定された)は、DAに実質的に直線的に比例し、これは、ポリマーネットワーク内での新規な架橋の形成と関連する。
【0139】
光硬化エラストマー性ディスクの密度は、DAの増加によりわずかに減少すると思われ(データを表1に示す)、密度が硬化時間に反比例する、他の熱硬化エラストマーと同様である。試料の密度及びヤング率は、架橋密度、及び架橋間の相対分子量(Mc)を計算するために用いられた(データを表1に示す)。光硬化PGSAにおけるDAの約0.17から約0.54へ増加することにより、架橋密度は約6.4から約185モル/m3に増加し、架橋間の相対分子量は約18kDaから約0.6kDaに減少した。
【0140】
PEGジアクリレート及びPGSAの共重合
種々の実施態様において、本発明はアクリル化ヒドロゲル前駆体を含む、光硬化性PGSA組成物を提供する。種々の実施態様において、アクリル化ヒドロゲルの包含は、例えば、一般的なヒドロゲル材料に通常に関連しない、例えば、1種以上の機械的、生分解性、及び膨潤特性を与えるために用いることができる。図12は、種々の割合のアクリル化ヒドロゲルを含む光硬化性PGSA組成物の種々の特性におけるいくつかのデータを示す。ほとんどのヒドロゲル材料は非常に脆弱であり、機械的特性に乏しい。例えば、水中で、20%(w/w)のポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(700Da)から形成されたヒドロゲルは、14%の伸長、0.54MPaのヤング率、及び0.063MPaの極限強度を示す。PEGジアクリレートとPGSA(DA=0.34)の組み合わせにより、ヤング率、極限強度、伸長及び膨潤比は変化し得る(図12に示すデータを参照)。例えば、PGSAの濃度上昇により、伸長は約4%から約60%に増加し、ヤング率は約20MPaから約0.6MPaに低下し、極限強度は0.890MPaから約0.270MPaに低下した。PEGジアクリレートとPGSA(DA=0.34)(50:50)との共重合により形成されたネットワークは、伸長を維持する間、10倍高いヤング率、及び通常のPEGジアクリレートヒドロゲルよりも高い極限強度を示した。更に、ネットワークの膨張特性は、約10%から約90%へのPGSA濃度変化により、約40%から約10%に調整された。
【0141】
in vitro分解結果
PGS及びPGSAポリマーネットワークの間の分解に関する相対的差異を調べるため、高いpHを用いて分解試験を実施し加水分解を促進した。従って、光硬化PGSA(DA=0.31及び0.54)、PGSA(DA=0.34、5%PEGジアクリレートと共重合された)、及びPGSを、開示内容全体が参考文献として本明細書で援用される、Yang J,Webb AR,Pickerill SJ,Hageman G,Ameer GA.Biomaterials;27(9),pp.1889−98(2006)に実質的に開示されているような、水酸化ナトリウム(0.1mM)溶液中で分解した。光硬化PGSA(DA=0.31及び0.54)は、PGSと同様の分解プロフィールを示した。しかし、PGSA(DA=0.31)の重量損失は、PGS及びPGSA(DA=0.54)に比べて有意に高い(P<0.01)。水酸化ナトリウム中における分解の3時間後に、PGSA(DA=0.34、5%PEGジアクリレートと共重合された)の重量損失は、PGS及びPGSA(DA=0.54)に比べて有意に低い(P<0.01)。図13に示すように、5%PEGジアクリレートのPGSA(DA=0.34)との共重合は、光硬化PGSA(DA=0.54)及びPGSと比較して同等の機械的特性を有する(前記及び図12を参照)が、遅い分解速度を有するポリマーをもたらす。これらの結果は、光硬化PGSAのin vitroでの加水分解速度が、開始機械的強度に依存して減少し得ることを示す。水酸化ナトリウム中での3時間後の全ての分解材料のSEM解析は、全体の形態の観察可能な劣化、又は材料の表面における亀裂又は裂け目の形成を示さない(SEMデータを図14Aに示す)。水酸化ナトリウム中で3時間後の全ての分解材料の熱分析は、Tgにおける明らかな変化を示さなかった。
【0142】
in vitroでの細胞接着
in vitroでの細胞培養は、本発明の光硬化PGSAエラストマーの種々の実施態様が細胞接着及び増殖を補助することを示す。光硬化PGSAに播種した、ヒト包皮線維芽細胞の59±12%が4時間後に接着し、生存が観察された。接着した細胞が増殖して密集する細胞単層を形成し(図14A、14B及び14Cを参照)、これは、種々の実施態様において、本発明の光硬化PGSAが細胞接着生体材料として機能し得ることを示す。
【0143】
(実施例2):in vivoでのデータ及び生体適合性
この実施例は、本発明のPGSA組成物の種々の実施態様の機械的特性及び分解速度の調節におけるデータを示す。データは、ポリマー骨格におけるアクリレート基の密度を変化させる効果を示し、データは、低分子量のポリ(エチレングリコール)ジアクリレートの種々の割合と共重合したPGSAの組成物について表わす。データは、生体材料の分解メカニズム及び速度(in vitro内及びin vivo)、及びin vivoでの機械的特性及び生体適合性における、これらの調節の影響を表わす。
【0144】
材料及び方法
プレポリマー及びアクリル化プレポリマーの合成
特に明記しない限り、全ての化学薬品は、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI,USA)から購入した。PGS及びPGSAは、両方とも、開示内容全体が参考として本明細書で援用される、Wang Y.Ameer GA,Sheppard BJ, Langer R.,Nat,Biotechnol 20(6):pp 602−6(2002)に実質的に開示されているように合成した。PGSプレポリマーは、アルゴン雰囲気下での120℃、24時間にわたる、等モルのグリセロール及びセバシン酸(Fluka,Buchs,Switzerland)の縮合、それに続く1トールから40ミリトールの圧力で5時間還元することによって合成された。重縮合を更に24時間続け、粘性のプレポリマーを得た。PGSA合成について、PGSプレポリマーを更に精製することなく用いた。PGSAを、実質的に実施例1に記載されたように、骨格における少ない数のアクリレート基(PGSA−LA)、及び多い数のアクリレート基(PGSA−HA)を用いて合成した。この目的のために、20gのPGSプレポリマー(78ミリモルのヒドロキシル基を有する)、200mLの無水ジクロロメタン、及び4(ジメチルアミノ)−ピリジン(DMAP)(20mg、1.8(10−4)モル)を反応フラスコ中でチャージした。窒素の陽圧下で、反応フラスコを0℃に冷却した。PGSA−LAについて、等モル量のトリエチルアミンと平行して、塩化アクリロイル(37ミリモル)をゆっくりと加えた。PGSA−HAについて、等モル量のトリエチルアミンと平行して、塩化アクリロイル(48ミリモル)をゆっくりと加えた。反応物を室温にし、更に24時間撹拌した。得られた混合物を酢酸エチルに溶解し、ろ過し、45℃及び5Paで乾燥した。
【0145】
光硬化PGSA−LA及びPGSA−HAシートは、PGSAを0.1%(wt/wt)の光開始剤(2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン)と混合し、10分間1.6mmのスペーサーを有する2枚のスライドガラスの間で紫外線ランプ(モデル100AP,Blak−Ray)からの約4mW/cm2のパワー密度で、紫外線により重合反応を開始することによって製造された。0.1%(wt/wt)の光開始剤、及び5%(wt/wt)のPEG−ジアクリレート(Mw=700Da)と混合されたPGSA−LAは、PGSA−LA/HAについて開示されたようにして光硬化された。1.6mmのPGSプレポリマーシートを、40ミリトール、140℃で16時間熱硬化した。ポリマーシートを、100%エタノール中で、24時間洗浄した。未反応のマクロマー及び光開示剤を除去するため、60℃のオーブン中で24時間乾燥させた。in vivoでの移植の48時間前、ポリマーシートを、層状のフローフード内で40分間UV照射してシートを滅菌し、次いで、100、70、50、30%(エタノール/無菌のリン酸緩衝食塩水(PBS))中で10分間洗浄し、無菌のPBS中に入れた。
【0146】
プレポリマー及びアクリル化プレポリマーの特徴づけ
プレポリマー及びポリマーの特徴づけは、実質的に実施例1に記載したように実施した。
【0147】
移植
体重200〜250gの若い成熟雌ルイスラット(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)を2つのグループに収容し、自由に水及び食餌を与えた。実験動物の世話及び使用についてのNIHのガイドライン(NIH publication #85−23,reviewed1985)に従う、マサチューセッツ工科大学のアニマルケア委員会の認可されたプロトコールに従って、動物を世話した。連続的な2%イソフルラン/O2吸入を用いて動物を麻酔した。各時点で1グループにつき2匹のラットに移植した。これは、ラットの背側における2本の正中切開により実施し、鈍的切開により生成された横側の皮下ポケットに導入される。止め金又は単一2−0エチロン縫合糸を用いて皮膚を縫合する。頭蓋インプラントを組織学のために用い、全体として周囲の組織を切除した。分解及び機械的検査の評価のために、尾側のインプラントを集めた。ラットの各側面は、PGS、PGSA−LA、PGSA−HA又はPGSA−PEGインプラントを保有する。傷の治癒の問題及び全体のインプラントの寸法を評価するため、インプラントの検査及び触診のために、7日毎に、動物を簡単に麻酔し剪毛した。
【0148】
in vitro及びin vivo分解
in vitroでの加水分解及び酵素による分解を評価するため、乾燥したPGS、PGSA−LA、PGSA−HA及びPGSA−PEG(直径10×1.6mm)(n=3)の円筒状のスラブの重量を測定し(W0)、5mLのPBS、pH7.4、及び2mLの、40ユニット(94.7mg)のコレステロール−エステラーゼを含むPBSに、37℃で浸漬した。PBS中の分解について、時点は0及び10週にとり、酵素分解については4、5、9、14、24及び48時間にとった。全ての試料を脱イオン水で洗浄し、表面の水分をティシュペーパーで除去した。次いで、試料を90℃で3日間乾燥し、再度重量を測定した(Wt)。重量損失[((Wt−W0)/W0)×100]を計算した。
in vitroでの分解試験のために、乾燥した光硬化PGS、PGSA−LA、PGSA−HA及びPGSA−PEG(直径10×1.6mm)(n=4)の円筒状のスラブを移植した。in vivoでの分解を評価するために、PGS、PGSA−LA、PGSA−HA及びPGSA−PEGインプラントを、周囲の組織から分離し、PBS中に集めた。摘出手術後、2枚の顕微鏡カバースライド間の移植片の重量(Wt)及びサイズ(St)を測定した。実質的にASTM標準D575−91に従い、Instron5542を用いて、5mm/分の圧縮速度で50Nの加重で移植片(湿潤)について圧縮試験を実施した。試料を40%に圧縮し、応力−ひずみ曲線の初期傾斜(0〜10%)から圧縮係数を計算した。次いで、移植片の重量を測定し(Ww)、90℃で3日間乾燥し、再度、重量を測定した(Wt)。水分含有量[((Ww−Wt)/Wt)×100]、重量損失[((Wt−W0)/W0)×100]、及び長期にわたるサイズ[((St−S0)/S0)×100](S0は移植前のインプラントのサイズである)を計算した。
【0149】
全ての移植片を、かみそりの刃によって半分に切断した。各半分の移植片を走査電子顕微鏡(SEM)のために準備し、白金/パラジウム(約250オングストローム層)でスパッターコーティングし、カーボンテープを用いてアルミニウムスタブに乗せ、JEOL JSM−5910(走査電子顕微鏡)で試験を行った。他の半分は、材料のゾル含有量を評価するために用いた。この目的のため、乾燥した移植片の重量を測定し(Wd)、オービタルシェーカー中の100%エタノール中に3日間浸漬し、90℃で3日間乾燥し、再度重量を測定し(Ws)、[((Wd−Ws)/Ws)×100]により移植片のゾル含有量を求めた。
【0150】
in vivoでの生体適合性
組織学のための試料を10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、免疫組織化学的染色解析のために準備した。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)を用いて切片を染色した。インプラントのポリマー含有量について知らされていない病理学に熟練している医師によって、H&E切片を解析した。材料、材料に接触しているマクロファージ周辺のカプセル中の線維芽細胞の存在、多核巨細胞、材料への細胞の内方成長、及び材料の食作用の存在を解析するために、H&E染色を用いた。
【0151】
統計的解析
統計的有意性について0.05の最小信頼水準を有する等分散性両側スチューデントのt検定を用いて、統計的解析を実施した。全ての値を、平均及び標準偏差として報告する。
【0152】
結果
実施例2の結果に関する以下の議論において、略語PGSAは、光硬化ポリ(グリセロールセバケート)−アクリレートエラストマーを意味し、連続的な略語LA及びHAは、PGSプレポリマーの骨格におけるアクリル化(低又は高)の程度を意味する。PGSA−PEGは、PGSA−LA(アクリル化の程度は低い)、及び5%(wt/wt)のポリ(エチレングリコール)PEGジアクリレート由来の光架橋コポリマーを意味し、PGSは、熱硬化エラストマーを意味する。
【0153】
ポリマーの特徴づけ
1H−NMR解析に証明されるように、PGSプレポリマーは、約1:1のグリセロール:セバシン酸のモル組成比を有していた。アクリレート基の取り込みは、5.9、6.1及び6.4ppmにおけるピークの出現によって、1H−NMRにより確認した。プレポリマーの骨格におけるアクリル化の程度(すなわち、グリセロール部分に対するアクリレート基の比)は、1H−NMRのシグナル強度から計算し、PGSA−LAについて0.31±0.02であり、PGSA−HAについて0.41±0.03であった。
【0154】
光開始剤2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノンの存在下でのPGSAのUV重合は、熱硬化したPGSのようなエラストマー性ネットワークをもたらす。粘性のPGSAプレポリマーは、10分以内に透明のエラストマー性のスラブを生成したが、PGSは硬化に16時間を要した。理論に拘束されないが、プレポリマーにおけるアクリレート基の密度の増加は、形成されるネットワークにおけるメチレン鎖の長さ及び密度を増加すると考えられており、理論に拘束されないが、生体材料の分解を遅くすることができると考えられている。エラストマーの機械的及び熱的特性を表2に要約する。
【0155】
【表2】
in vitroでの分解の結果
光硬化PGSA及びPGSA−PEG試料は、10週間にわたりPBS中で5〜10%の質量減少を示した。PEGが取り込まれる場合または、アクリル化の程度が増加する場合、PGSAの加水分解が観察された。これらのエラストマーの分解に対する酵素活性の潜在的寄与は、2mLのPBS中の、40単位の膵臓コレステロールエステラーゼ中におけるインキュベーションによって評価した。膵臓コレステロールエステラーゼは、ポリエステルを分解することが知られているマクロファージ(炎症細胞)と関連するエステラーゼと実質的に同一であることが報告されている。PGS及びPGSA−LAは、長期にわたり重量減少を示したが、PGSA−HA及びPGSA−PEGは示さなかった。PEGは48時間にわたり60%に分解するが、低い架橋度を有するPGSA−LAは40%しか分解しなかった(データは図15に示す)。結果は、アクリレート基から生成される長いメチレン架橋が、PGS中で生成される架橋よりもコレステロールエステラーゼに対して感受性が低いことを示唆する。
【0156】
in vivoでの分解の結果
in vivoでの、PGS、PGSA及びPGSA−PEGコポリマーの分解特性を評価するために、架橋材料のディスクを、ラットの皮下に移植し、予め決めた間隔で収集した。切開において、尾側のインプラントは、周囲の組織から容易に分離された。移植片の形状特性及び表面特性を調べ、長期にわたる質量、水分含有量、ゾル含有量及び機械的強度を観察した(データを図16A〜D及び17に示す)。
【0157】
骨格へのアクリレート基又はPEGの導入は、材料の分解を減少することが観察され(図16Aを参照)、5週間以内に80%のPGSの質量が分解したが、PGSA−LAについての同様の質量減少は9週間にわたって生じた。PGSA−HAは、最初の5週間で、初期の5%質量減少を有して遅く分解し、11週目では60%に加速した質量減少を示した。分解は、ポリマー鎖内のPEGの導入で更に遅延し、in vivoで12週後に約20%の質量減少を示す。in vivoでの3週間後、PGSA−PEG、及びPGSA−HAの質量減少は有意に異なり、PGS及びPGSA−LAよりも有意に低いが、PGSA−PEGコポリマーの分解特性の質量減少は、PGSA−LA(p=0.034)よりも有意に高い。11週後、in vivoでのPGSA−HAの質量減少は、in vivoでの12週後におけるPGSA−PEGコポリマーの分解特性よりも有意に高い(P<0.001)。
【0158】
PGSは長期にわたり水分含有量を示すが、全ての光硬化エラストマーの水分含有量は最初に上昇し、次いで減少する(図16Bを参照)。水分含有量がピークに達する時間は、以下の順番、PGSA−LA<PGSA−HA<PGSA−PEGで観察された。
【0159】
PGSA−HA及びPGSA−PEGのゾル含有量(マクロマーが材料の骨格に結合しない)を、PGSのゾル含有量と比較した(P>0.05)(図16C参照)。長期にわたるPGSA−LAの平均ゾル含有量は、他のエラストマーよりも有意に高かった(P<0.001)。
【0160】
PGS及びPGSA−LAの移植されたディスクの厚みは急速に減少した(図16Dを参照)。7週目で、PGSA−HAディスクの厚みは、インプラントの初期の厚みよりも有意に薄くなった(P<0.01)。PGSA−PEGディスクの厚みは、長期にわたり、基本的に変化しなかった(P>0.05)。こうした結果は、残存する乾燥質量のパターンと関連する(図16A参照)。
【0161】
PGSA−LA及びPGSの機械的強度は低下した(データを図17に示す)。3週目で、in vivoでのPGS及びPGSAは40%減少したが、PGSA−HA及びPGSA−PEGの両方は、最初の強度の13%しか減少しなかった(P<0.004)。11週目におけるin vivoでのPGSA−HAは最初の強度の>90%が減少したが、PGSA−PEGは、12週目にin vivoで、最初の強度の40%しか減少しなかった(P<0.001)。ポリマーディスクの厚みと同様、in vivoでの長期にわたる機械的強度(図17を参照)は、残存する質量とほぼ同じパターンを示した(図16Aを参照)。
【0162】
PGS、PGSA−LA及びPGSA−HAの断面のSEM解析(データを図18A〜Hに示す)は、材料の80%まで分解する間に、構造的強度が維持されることを示す。対照的に、PGSA−PEGは、in vivoで9週間後に、材料のバルク内の穴の形成を示す。PGS、PGSA−LA、PGSA−HA及びPGS−PEGの表面のSEM解析は、比較できるほどの表面トポグラフィーを示す(データを図19A〜Dに示す)。
【0163】
PGSの分解(表面浸食ポリマーについての陽性コントロール)は、残存する質量における直線的減少(図16Aを参照)、長期にわたる移植片の一定及び低い水分含有量(図16B参照)、ディスク厚みの直線的減少(図16D参照)、及び長期にわたる機械的強度の直線的減少(図17参照)を示した。表面における相対的に早い分解のため、質量減少は直線的であり、ゾル含有量及び水分含有量は、低く一定のままであった。機械的強度における減少(図17参照)は、結合がバルク内で切断される加水分解によるものと思われる。これらの結果は、PBS中での遅いin vitro分解と共に、PGSのin vivo分解メカニズムが、主に酵素的表面分解であることを示唆する。しかし、酵素的表面分解中、結合は、材料のバルクにおける加水分解のために切断されると思われる。
【0164】
光硬化エラストマーについて、PGSプレポリマーへのアクリレート基の取り込み、及びそれに続く光硬化はin vivoにおける分解速度を低下させた(図16A参照)。PGSA−LAの架橋密度はPGSよりも低いが(表1参照)、PGSA−LAの分解は遅い。理論に拘束されないが、一部は、最初のPGS架橋よりも遅い、PGSAの分解におけるメチレン架橋の分解によるものと思われる。メチレン架橋は分解プロフィールに影響することが観察され、PGSA−LAは、長期にわたり直線的な質量減少を示すがPGSA−HAは、最初の5週間で初期5%の質量減少を示し、次いで、直線的な質量減少を加速した(図16A〜D参照)。
【0165】
これらの光硬化ポリマーの分解メカニズムは明らかでない。PGSA−LAは、表面分解について典型的な分解プロフィール、分解の間の構造的完全性(図18B及び18F参照)、長期にわたる直線的質量減少及び直線的サイズの減少を示す(図16A及び16D参照)。しかし、水分含有量及びゾル含有量は、長期にわたり急激に変化する(図16B及び16C参照)。従って、理論に拘束されないが、PGSA−LAの分解は、表面及びバルク分解によるものと思われる。
【0166】
PGSA−HAは、最初に増加する水分含有量、次いで時間内に加速する質量減少を有するバルク分解プロフィールを示した。PGSA−HA試料の機械的特性は、5週目で最初の強度の77%であるが、質量減少はわずか5%であった。しかし、長期にわたるPGSA−HAディスクの構造的完全性及びゾル含有量はバルク分解に集中しない(図16C、18C及び18H参照)。理論に拘束されないが、PGSA−HAの初期の5%の質量減少(最初の5週間)は、バルクにおける加水分解が主因であり、その架橋密度(及び機械的強度)を減少させ、PGSA−HA移植片の水分含有量を増加させると思われる。5週間後の、水分含有量、及びおそらくはメチレン架橋の露出における変化は、表面における光硬化架橋の分解を促進する。
【0167】
最初の5週間に、PGSA−LA及びPGSA−HAについて観察される異なるプロフィールは、in vitroにおいて観察されるものに匹敵する。最初に、PGSA−LAはコレステロールエステラーゼによって分解されるが、PGSA−HAは分解されない。これは、表面におけるメチレン架橋の分解(5週間後のPGSA−LA及びPGSA−HA)も、同様に酵素によるものだが、PGSA−LA及びPGSA−HAについての材料のバルクにおける分解が加水分解によるものであることを示唆する。それらは、表面からのポリエステルのin vitro内及びin vivoでの酵素的分解の両方によって支持される。更に、in vitro及びin vivoでの加水分解は、表面のバルクにおいて観察される。
【0168】
PEG−ジアクリレートとPGSA−LAとの共重合は、長いメチレン架橋(アクリレート基による)、及び生体材料のネットワークにおける低分子量PEG鎖をもたらす。生体材料へのPEG鎖の取り込みは、実質的に分解速度を低下させる(図16A参照)。PGSA−HAと同様、PGSA−PEGは、初期の遅い質量減少、及び長期にわたる水分含有量の増加を示す。PGSA−PEGの水分含有量は9週間後に最大に到達するが(図16B参照)、in vivoで12週間後に、質量減少の加速は観察されない(図16A参照)。12週目までにin vivoでPGSA−PEGについて観察された分解は、加水分解的バルク分解主因すると思われる。in vivoで、12週間後のPGSA−PEGの分解は20%であったが、同じ架橋密度を有するPGSA−HAについては、分解は50%を超えた。以上のように、これらの実施態様は、架橋密度に依存しない、PGSAの分解速度の減少をもたらした。PGSA−PEG移植片の断片のSEM画像は、in vivoで、9週間後に穴を形成し(図18D及び18H参照)、これは、バルク分解メカニズムを支持する。PGSA−PEGのゾル含有量は、PGSA−LAを浸食するバルクほど高くないことが観察された。しかし、これは、短いPEG鎖を含むマクロマーの高い溶解度により、PGSA−PEG及びPGSAのゾル含有量の比較を困難にする。
【0169】
移植されたスラブの分解速度は、材料中の架橋のタイプに依存することが観察された。光誘導性メチレン架橋の増加は、分解速度の低下をもたらすことが観察された。PGSに比べ、PGSAの分解速度は遅い。PEGの取り込みは、実質的に架橋密度に依存するPGSAの分解速度の低下を促進するといった大きな影響を及ぼす。
【0170】
移植されたPGSAスラブの分解メカニズムも影響を受ける。PGSは表面分解により分解されることが観察された。PGS骨格へのアクリレート基の取り込みは、分解メカニズムの変化をもたらすことが観察された。PGSA−LA及びPGSA−HAは、両方とも、おそらく加水分解によるバルク分解を示し、酵素によると思われる、相対的に高速の表面分解を示した。しかし、PGSA−HAについて、表面分解は5週間後に観察されたが、PGSA−LAは、実質的に持続するバルク及び表面分解の両方を示した。生体材料へのPEG鎖の取り込みは、主にin vivoで12週までの加水分解によるバルク分解をもたらした。
【0171】
in vivo生体適合性
分析において、材料のディスクを、ある程度血管が分布した半透明の組織カプセルに入れた。その他の点では、周囲の組織は外観上正常であり、より早い時点における移植工程に起因し得る変化がみとめられる。全時点において、ポリマーディスクはカプセルから容易に分離された。外観検査において、表面は最初平滑であり、長期にわたる質量減少に匹敵する時間的経過を伴い(図16A参照)、長期にわたり次第に粗くなる(図18A〜H参照)。架橋材料及び周囲の組織の組織学的評価は、最終的に、長期にわたって繊維性カプセル内に移行する全てのディスクの周囲に、同程度の軽い炎症を示した。線維芽細胞は、主に繊維性カプセル中に存在し、ポリマーディスク中での細胞増殖は観察されなかった。全てのポリマーディスクの周囲の組織は、観察できる損傷を示さなかった。炎症細胞は、通常、組織及び分解ポリマーの間の界面に見られる。特に、PGSとPGSA−HAを比較した場合(図20A〜Fを参照)、PGSは、1週目及び3週目に、PGSA−HAよりも高い炎症活性を示し、これは、PGSの高い質量損失及びPGSA−HAの初期の低い質量損失に対応する。しかし、5週間後に、PGSA−HAは、1週目及び3週目におけるPGSに比べ、同等の炎症応答を示した。PGSA−LAは、PGSA−PEGと比べ、1週目からより大きな炎症活性を示し(図21A〜Fを参照)、炎症細胞は、主に、繊維性カプセルと、PGS、PGSA−LA及びPGSA−HAの組織ポリマー界面との間に位置する(5週間後)。PGSA−HA(7週間前)及びPGSA−PEGについて、繊維性カプセルは、組織ポリマー界面上に直接存在する(図20A〜F、21A〜F参照)。これは、炎症細胞の存在が、PGS、PGSA−LA及びPGSA−HAの分解と関連することを示す(5週間後)。炎症細胞がコレステロールエステラーゼの高い活性と関連すると思われるため、こうした結果は、in vivoでの高い質量損失が酵素分解によるものであるという推論を支持する。
【0172】
特許、特許出願、論文、書籍、学術論文、及びウェブページを含むが、これらに限定されない本出願に引用された全ての文献及び同様の材料は、このような文献及び同様の材料のフォーマットの如何を問わず、明白に、その開示内容全体が参考として本明細書で援用される。用語、用語の使用、開示された技術等を含むが、これらに限定されないものについて、1種以上の組み入れられた文献及び同様の材料が、本出願と異なるかあるいは矛盾する場合、本出願は制御される。
【0173】
本明細書で用いられるセクションの見出しは、組織的な目的のためだけであり、決して、開示された主題を限定することと理解すべきでない。
【0174】
本発明を、種々の実施態様及び実施例と関連して説明したが、本発明は、これらの実施態様又は実施例に限定されることを意図しない。それどころか、本発明は、当業者に理解されるように、種々の変形、修飾、及び同等物を含む。
【0175】
本発明を、特定の実例となる実施態様を参照して説明したが、本発明の精神及び範囲を逸脱せずに、形態及び詳細における種々の変形をなし得ることを理解すべきである。従って、本発明の範囲及び精神、及びその同等物の範囲内にある全ての実施態様は特許請求の範囲に記載されている。本発明の方法、システム及びアッセイの特許請求の範囲、詳細な説明及び図は、その効果を示さない限り、要素の開示された順に限定するものとして読むべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、本発明のエラストマー組成物の種々の実施態様を概略的に示す。
【図2】図2は、本発明のエラストマー組成物の種々の実施態様を概略的に示す。
【図3】図3A〜Dは、本発明の種々の実施態様のエラストマー組成物又は材料の製造スキームを概略的に示す。図3Aは、RがH、及びアルキル、アルケニル、又はアルキニルである、プレポリマー(低分子量ポリマーを図示する)を製造するための、グリセロール及びセバシン酸の重縮合を説明する。図3Bは、プレポリマー骨格の、ビニル基による官能化を説明し、ここでは、アクリル化を示す。図3C及び3Dは、PGSAの架橋ポリマーの種々の実施態様において形成されるポリマーネットワークの一部の具体例を概略的に示す。
【図4】図4は、PGSA−PEGの架橋ポリマーの種々の実施態様において形成されるポリマーネットワークの一部の具体例を概略的に示す。
【図5】図5A〜Bは、PGSAの割合に基づく、ポリマーの物理的特性の調整を概略的に示す。図5Aは、PGSA−PEGについての調整を示し、図5Bは、PGSA−デキストランコポリマーについて示す。
【図6】図6A〜Cは、本発明の種々の実施態様のエラストマー組成物又は材料の製造スキームを概略的に示す。
【図7】図7A〜Dは、(図7A)ナノ/ミクロ粒子;(図7B)管状;(図7C)マイクロパターン、及び(図7D)足場を含む種々の形状及び形態に製造することのできる、本発明の種々の実施態様のエラストマー組成物を示す。
【図8】図8A及び8Bは、1H−NMRスペクトルを示す。図8AはPGSプレポリマー、図8BはPGSAのスペクトルを示す。
【図9】図9A及び9Bは、PGSプレポリマー、PGSプレポリマー(902);0.20のDAを有するPGSA(904);PGSA(DA=0.54)(906);熱硬化PGS(908);光硬化PGSA(DA=0.20)(910);及び光硬化PGSA(DA=0.54)(912)のATR−FTIRスペクトルを比較する。
【図10】図10は、グリセロール−セバケート(−)の1モルに対するプレポリマーに加えられた塩化アクリロイルの1モルに対するPGSAのアクリル化の程度のプロットである。
【図11】図11A〜Cは、実施例1の光硬化PGSAの種々のアクリル化の程度(DA)についての種々の特性についてのデータを示す。ここで、図11Aは、引張強度及び伸長を示し、図11Bは、ヤング率及び極限強度を示し、図11Cはエタノール中での膨張率、水中での膨張率、及びゾル含有量を示す。
【図12】図12は、PEG鎖がPGSA間の架橋として取り込まれるPGSA(DA=0.34)及びPEGジアクリレート(Mw=700Da)との共重合について、PEGD中のPGSAの種々の重量割合についてのヤング率、極限強度、伸長%及び膨潤%を示す。
【図13】図13は、NaOH(1mM)中における、37℃での0、1.5、3、4.5及び6時間にわたる、PGS(黒い菱形)、光硬化PGSA(DA=0.31、0.54)(DA=0.31について白い四角、DA=0.54について白い菱形)、及びPGSA(DA=0.34+5%PEGジアクリレート)(X)のin vitroでの分解のデータを示す(標準偏差は平均の5%未満であった)。
【図14】図14A〜Cは、in vitroでの細胞接着及び分解のデータを示す。図14A及び14Bは、それぞれ、37℃で0.1mM NaOH中で3時間後、及び12日後の光硬化PGSA(DA=0.31)(PGSA−LA)の表面のSEM画像である。図14Cは、光硬化PGSA表面における長期にわたる、細胞密度のプロットである。
【図15】図15は、実施例2において更に記載したような、コレステロールエステラーゼによる酵素分解(pH7.2、37℃)(n=3)のデータを示す。
【図16】図16A〜Dは、実施例2において更に記載したような、比較のデータを示す。図16Aは質量における変化を、図16Bは水分含有量を、図16Cはゾル含有量を、図16Dは、in vivoでの分解後のPGS、PGSA−LA、PGSA−HA、PGSA−PEGインプラントのサイズを示す。PGS及びPGSA−LAは、それぞれ、in vivoで7週間後及び12週間後に、インプラント部で完全に分解された(n=4)。
【図17】図17は、実施例2において更に記載したような、in vivoでの分解中の、PGS、PGSA−LA、PGSA−HA、及びPGSA−PEGの機械的強度の変化を示す(n=4)。
【図18】図18A〜Hは、実施例2において更に記載したような、ポリマーディスクのSEM断面図画像を示す。(図18A及びE)in vivoでの3及び5週目におけるPGS、(図18B及びF)in vivoでの3及び9週目におけるPGSA−LA、(図18C及びG)in vivoでの3及び11週目におけるPGSA−HA、及び(図18D及びH)in vivoでの3及び9週目におけるPGSA−PEG(n=4)。
【図19】図19A〜Dは、実施例2において更に記載したような、ポリマーディスク表面のSEM画像を示す。(図19A)in vivoでの5週目におけるPGS、(19B)in vivoでの6週目におけるPGSA−LA、(図19C)in vivoでの5週目におけるPGSA−HA、及び(図19D)in vivoでの6週目におけるPGSA−PEG(n=4)。
【図20】図20A〜Fは、実施例2において更に記載したような、組織反応における周囲組織のエラストマー性インプラントのH&E切片の顕微鏡写真(400倍)を表わす。(図20A及びC)in vivoでの1、3及び5週間後のPGS(陽性コントロール)、及び(図20D〜F)in vivoでの1、3及び11週間後のPGSA−HA(n=4)。矢印は、ポリマー−組織界面を示す。
【図21】図21A〜Fは、実施例2において更に記載したような、組織反応における周囲組織のエラストマー性インプラントのH&E切片の顕微鏡写真(400倍)及び差し込み図(50倍)を表わす。(図21A〜C)in vivoでの3、6及び6週間後のPGS−LA、及び(図21D〜F)in vivoでの3、6及び9週間後のPGSA−HA(n=4)。矢印は、ポリマー−組織界面を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリエステルを含むエラストマー組成物であって、該架橋ポリエステルは、該ポリエステルのA成分の少なくとも一部の間で架橋された一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含み、該架橋の少なくとも一部は、ジオイック酸エステルを形成し、
Aが置換又は非置換エステルを表わし、
Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、
nが1より大きい整数を表わす、エラストマー組成物。
【請求項2】
前記架橋ポリエステルが、一般式(I)
【化1】
(式中、m、n、p、p及びvは、それぞれ独立して1より大きい整数を表わす)により表わすことのできる部分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
p=8、q=8、及びv=4である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
(−A−B−)nのポリマー単位の数に対する架橋の数の平均比が、約0.4未満である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
(−A−B−)nのポリマー単位の数に対する架橋の数の平均比が、約0.5より大きい、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
ジオイック酸エステルを形成する前記架橋の少なくとも一部が、1個以上の置換又は非置換アルキルエステル官能基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ジオイック酸エステルを形成する前記架橋の少なくとも一部が、1個以上の置換又は非置換炭酸アルキルエステル官能基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋ポリエステルが、該ポリエステルのA成分の少なくとも一部を介して置換又は非置換アルカンと架橋した一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含み、該架橋の少なくとも一部は酸エステルを形成し、
Aが置換又は非置換エステルを表わし、
Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、
nが1より大きい整数を表わす、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
請求項1記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約1.5Mpa未満の引張ヤング率を有する材料。
【請求項10】
請求項1記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料が共にASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.05Mpaより大きい引張ヤング率、及び約45%より大きい伸長を有する材料。
【請求項11】
請求項1記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.4MPaから約0.55MPaの範囲のヤング率を有する、材料。
【請求項12】
請求項1記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料が約170%を超える最大伸長を有する、材料。
【請求項13】
請求項1記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該生分解性材料がヒトに対して無毒、生体適合性及び生体吸収性のうちの1つ以上である、材料。
【請求項14】
架橋ポリエステルを含むエラストマー組成物であって、該架橋ポリエステルは、
該ポリエステルのA成分の少なくとも一部の間で架橋された一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含み、該架橋は、一般式−(D)k−C−の少なくとも一部を含む連結を形成し、
Aが置換又は非置換エステルを表わし、
Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、
Cが置換又は非置換ジオイック酸エステルを表わし、
Dが1個以上の置換又は非置換エステルを表わし、
nが1より大きい整数を表わし、
kが0より大きい整数を表わす、エラストマー組成物。
【請求項15】
前記架橋ポリエステルが、一般式(II)
【化2】
(式中、m、n、p、q及びvは、それぞれ独立して1より大きい整数を表わし、kは0より大きい整数を表わす)により表わすことのできる少なくとも一部を含む、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
p=8、q=8、及びv=4である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
(−A−B−)nのポリマー単位の数に対する架橋の数の平均比が、約0.4未満である、請求項14記載の組成物。
【請求項18】
(−A−B−)nのポリマー単位の数に対する架橋の数の平均比が、約0.5より大きい、請求項14記載の組成物。
【請求項19】
前記架橋ポリエステルが、該ポリエステルのA成分の少なくとも一部を介して置換又は非置換アルカンと架橋した一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含み、該架橋の少なくとも一部は酸エステルを形成し、
Aが置換又は非置換エステルを表わし、
Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、
nが1より大きい整数を表わす、請求項14記載の組成物。
【請求項20】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約17Mpa未満の引張ヤング率を有する、材料。
【請求項21】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料が共にASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.6Mpaより大きい引張ヤング率、及び約20%より大きい伸長を有する材料。
【請求項22】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25Mpaより大きい引張ヤング率、及び水中において約1%より大きい膨潤を有する、材料。
【請求項23】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25Mpaより大きい引張ヤング率、及び水中において約40%より大きい膨潤を有する、材料。
【請求項24】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.4MPaから約0.55MPaの範囲のヤング率を有する、材料。
【請求項25】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料が約60%を超える最大伸長を有する、材料。
【請求項26】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、前記材料がヒトに対して無毒、生体適合性及び生体吸収性のうちの1つ以上である、材料。
【請求項27】
全体的な架橋密度の関数として実質的に非単調的である分解速度を有する、架橋ポリエステルから形成されたエラストマー性生分解性材料。
【請求項28】
前記架橋エラストマー性ポリエステルが、該ポリエステルのA成分の少なくとも一部の間で架橋された一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含み、該架橋が、一般式−(D)k−C−の少なくとも一部を含む連結を形成し、
Aが置換又は非置換エステルを表わし、
Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、
Cが置換又は非置換ジオイック酸エステルを表わし、
Dが1個以上の置換又は非置換エステルを表わし、
nが1より大きい整数を表わし、
kが0より大きい整数を表わす、請求項27記載のエラストマー性生分解性材料。
【請求項29】
前記分解速度がin vivoでの分解速度である、請求項27記載のエラストマー性生分解性材料。
【請求項30】
前記分解速度が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、又は酸性もしくはアルカリ性条件中におけるin vitroでの分解速度である、請求項27記載のエラストマー性生分解性材料。
【請求項31】
生分解性エラストマー性材料を形成する方法であって、
(a)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分を、2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分と反応させて、約300Da〜約75,000Daの範囲の分子量を有するプレポリマーの混合物を形成する工程;
(b)該プレポリマーの混合物をアクリレートと反応させて、アクリル化プレポリマーの混合物を形成する工程;ならびに
(c)該アクリル化プレポリマー混合物を紫外線で照射して、該アクリル化プレポリマーの少なくとも一部を架橋し生分解性エラストマー性材料を形成する工程であって、照射中、該プレポリマー混合物を約45℃を超えて加熱しない、工程、
を包含する方法。
【請求項32】
前記アクリレートが、
【化3】
(式中、R1はメチル又は水素を表わし;
R2、R2’、及びR2’’は、それぞれ独立して、アルキル、アリール、複素環、シクロアルキル、芳香族複素環、多環アルキル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、ハライド、カルボン酸、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、アミド、カルバモイルチオエーテル、チオール、アルコキシ、又はウレイド基、ならびにそれらの分岐及び置換バージョンを表わす)の1種以上を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
照射中、前記プレポリマー混合物を約25℃を超えて加熱しない、請求項31記載の方法。
【請求項34】
工程(b)が、アクリル化デキストラン、アクリル化ヒアルロン酸、アクリル化キトサン、及びアクリル化ポリ(エチレングリコール)の1種以上を前記反応に加えることを含む、請求項31記載の方法。
【請求項35】
生分解性エラストマー性材料を形成するための方法であって、
(a)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分;及び
2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分を含む溶液を提供する工程;
(b)該プレポリマー溶液に、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート及びトリフェニルホスフィンを加えることによって反応混合物を形成し、該プレポリマーの少なくとも一部を架橋させて生分解性エラストマー性材料を形成する工程であって、該反応混合物を約25℃を超えて加熱しない、工程、
を包含する、方法。
【請求項36】
前記反応混合物を形成する工程が、一塩基酸を加えて、前記生分解性エラストマー性材料中にエステル連結側鎖を提供することを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記反応混合物を形成する工程が、モノアルコールを加えて、前記生分解性エラストマー性材料中にエーテル連結側鎖を提供することを含む、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記第二の成分が、置換又は非置換ジオイック酸エステルである、請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記プレポリマーの第二の成分がアミノエステル官能基を含み、前記生分解性エラストマー性材料がポリ−β−アミノエステルポリマーを含む、請求項35記載の方法。
【請求項40】
生分解性エラストマー性材料を形成するための方法であって、
(a)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分;又は
2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分を含む溶液を提供する工程;
(b)熱開始剤を用いた熱開始重合、酸化還元対開始重合又はその両方によって該プレポリマーの少なくとも一部を架橋させる工程であって、架橋反応を約25℃未満の温度で実施する工程、
を包含する、方法。
【請求項41】
生分解性エラストマー性材料を形成するための方法であって、
(a)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分;及び
2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分を含む溶液を提供する工程;
(b)二官能性スルフヒドリル化合物を用いたミカエル型付加反応を用いて該プレポリマーの少なくとも一部を架橋する工程であって、架橋反応を約25℃未満の温度で実施する工程、
を包含する、方法。
【請求項42】
医療装置を形成するための方法であって、
請求項31記載のアクリル化プレポリマーを、該医療装置が所望される部位に注入する工程;及び
該注入されたアクリル化プレポリマーを紫外線で照射して医療装置を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項43】
前記医療装置が時間をわたって生物活性剤の送達を提供する、請求項42記載の方法。
【請求項44】
請求項1又は請求項14記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、増殖因子、細胞接着配列、ポリヌクレオチド、多糖類、ポリペプチド、細胞外マトリクス成分、及びそれらの組み合わせの1種以上を更に含む、材料。
【請求項45】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該エラストマー性生分解性材料が、結合組織細胞、器官の細胞、筋細胞、神経細胞、及びそれらの組み合わせの1種以上とともに播種される材料。
【請求項46】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該エラストマー性生分解性材料が、腱細胞(tenocyte)、線維芽細胞、靭帯細胞、内皮細胞、肺細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、島細胞、神経細胞、肝細胞、腎細胞、嚢細胞(bladder cell)、尿路上皮細胞、軟骨細胞、及び造骨細胞の1種以上とともに播種される材料。
【請求項47】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、発色団が、架橋ポリエステルに共有結合している材料。
【請求項48】
受容体が発色団に共有結合しているか、又は該発色団と架橋ポリマーとの間に挿入されている、請求項45記載のエラストマー性生分解性材料。
【請求項49】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該エラストマー性生分解性材料が多孔性である、材料。
【請求項50】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該組成物がポロジェン(porogen)を含む、材料。
【請求項51】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該組成物が生物活性剤を含む、材料。
【請求項52】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該エラストマー性生分解性材料が粒子、管、球、ストランド、コイル状のストランド、毛管ネットワーク、フィルム、繊維、メッシュ又はシートの形態である、材料。
【請求項1】
架橋ポリエステルを含むエラストマー組成物であって、該架橋ポリエステルは、該ポリエステルのA成分の少なくとも一部の間で架橋された一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含み、該架橋の少なくとも一部は、ジオイック酸エステルを形成し、
Aが置換又は非置換エステルを表わし、
Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、
nが1より大きい整数を表わす、エラストマー組成物。
【請求項2】
前記架橋ポリエステルが、一般式(I)
【化1】
(式中、m、n、p、p及びvは、それぞれ独立して1より大きい整数を表わす)により表わすことのできる部分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
p=8、q=8、及びv=4である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
(−A−B−)nのポリマー単位の数に対する架橋の数の平均比が、約0.4未満である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
(−A−B−)nのポリマー単位の数に対する架橋の数の平均比が、約0.5より大きい、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
ジオイック酸エステルを形成する前記架橋の少なくとも一部が、1個以上の置換又は非置換アルキルエステル官能基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ジオイック酸エステルを形成する前記架橋の少なくとも一部が、1個以上の置換又は非置換炭酸アルキルエステル官能基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋ポリエステルが、該ポリエステルのA成分の少なくとも一部を介して置換又は非置換アルカンと架橋した一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含み、該架橋の少なくとも一部は酸エステルを形成し、
Aが置換又は非置換エステルを表わし、
Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、
nが1より大きい整数を表わす、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
請求項1記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約1.5Mpa未満の引張ヤング率を有する材料。
【請求項10】
請求項1記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料が共にASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.05Mpaより大きい引張ヤング率、及び約45%より大きい伸長を有する材料。
【請求項11】
請求項1記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.4MPaから約0.55MPaの範囲のヤング率を有する、材料。
【請求項12】
請求項1記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料が約170%を超える最大伸長を有する、材料。
【請求項13】
請求項1記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該生分解性材料がヒトに対して無毒、生体適合性及び生体吸収性のうちの1つ以上である、材料。
【請求項14】
架橋ポリエステルを含むエラストマー組成物であって、該架橋ポリエステルは、
該ポリエステルのA成分の少なくとも一部の間で架橋された一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含み、該架橋は、一般式−(D)k−C−の少なくとも一部を含む連結を形成し、
Aが置換又は非置換エステルを表わし、
Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、
Cが置換又は非置換ジオイック酸エステルを表わし、
Dが1個以上の置換又は非置換エステルを表わし、
nが1より大きい整数を表わし、
kが0より大きい整数を表わす、エラストマー組成物。
【請求項15】
前記架橋ポリエステルが、一般式(II)
【化2】
(式中、m、n、p、q及びvは、それぞれ独立して1より大きい整数を表わし、kは0より大きい整数を表わす)により表わすことのできる少なくとも一部を含む、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
p=8、q=8、及びv=4である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
(−A−B−)nのポリマー単位の数に対する架橋の数の平均比が、約0.4未満である、請求項14記載の組成物。
【請求項18】
(−A−B−)nのポリマー単位の数に対する架橋の数の平均比が、約0.5より大きい、請求項14記載の組成物。
【請求項19】
前記架橋ポリエステルが、該ポリエステルのA成分の少なくとも一部を介して置換又は非置換アルカンと架橋した一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含み、該架橋の少なくとも一部は酸エステルを形成し、
Aが置換又は非置換エステルを表わし、
Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、
nが1より大きい整数を表わす、請求項14記載の組成物。
【請求項20】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約17Mpa未満の引張ヤング率を有する、材料。
【請求項21】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料が共にASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.6Mpaより大きい引張ヤング率、及び約20%より大きい伸長を有する材料。
【請求項22】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25Mpaより大きい引張ヤング率、及び水中において約1%より大きい膨潤を有する、材料。
【請求項23】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.25Mpaより大きい引張ヤング率、及び水中において約40%より大きい膨潤を有する、材料。
【請求項24】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料がASTM標準D412−98aに従って測定した場合に、約0.4MPaから約0.55MPaの範囲のヤング率を有する、材料。
【請求項25】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、該材料が約60%を超える最大伸長を有する、材料。
【請求項26】
請求項14記載の組成物から形成された生分解性材料であって、前記材料がヒトに対して無毒、生体適合性及び生体吸収性のうちの1つ以上である、材料。
【請求項27】
全体的な架橋密度の関数として実質的に非単調的である分解速度を有する、架橋ポリエステルから形成されたエラストマー性生分解性材料。
【請求項28】
前記架橋エラストマー性ポリエステルが、該ポリエステルのA成分の少なくとも一部の間で架橋された一般式(−A−B−)nのポリマー単位を含み、該架橋が、一般式−(D)k−C−の少なくとも一部を含む連結を形成し、
Aが置換又は非置換エステルを表わし、
Bが、少なくとも2個の酸エステル官能基を含む、置換又は非置換酸エステルを表わし、
Cが置換又は非置換ジオイック酸エステルを表わし、
Dが1個以上の置換又は非置換エステルを表わし、
nが1より大きい整数を表わし、
kが0より大きい整数を表わす、請求項27記載のエラストマー性生分解性材料。
【請求項29】
前記分解速度がin vivoでの分解速度である、請求項27記載のエラストマー性生分解性材料。
【請求項30】
前記分解速度が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、又は酸性もしくはアルカリ性条件中におけるin vitroでの分解速度である、請求項27記載のエラストマー性生分解性材料。
【請求項31】
生分解性エラストマー性材料を形成する方法であって、
(a)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分を、2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分と反応させて、約300Da〜約75,000Daの範囲の分子量を有するプレポリマーの混合物を形成する工程;
(b)該プレポリマーの混合物をアクリレートと反応させて、アクリル化プレポリマーの混合物を形成する工程;ならびに
(c)該アクリル化プレポリマー混合物を紫外線で照射して、該アクリル化プレポリマーの少なくとも一部を架橋し生分解性エラストマー性材料を形成する工程であって、照射中、該プレポリマー混合物を約45℃を超えて加熱しない、工程、
を包含する方法。
【請求項32】
前記アクリレートが、
【化3】
(式中、R1はメチル又は水素を表わし;
R2、R2’、及びR2’’は、それぞれ独立して、アルキル、アリール、複素環、シクロアルキル、芳香族複素環、多環アルキル、ヒドロキシル、エステル、エーテル、ハライド、カルボン酸、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、アミド、カルバモイルチオエーテル、チオール、アルコキシ、又はウレイド基、ならびにそれらの分岐及び置換バージョンを表わす)の1種以上を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
照射中、前記プレポリマー混合物を約25℃を超えて加熱しない、請求項31記載の方法。
【請求項34】
工程(b)が、アクリル化デキストラン、アクリル化ヒアルロン酸、アクリル化キトサン、及びアクリル化ポリ(エチレングリコール)の1種以上を前記反応に加えることを含む、請求項31記載の方法。
【請求項35】
生分解性エラストマー性材料を形成するための方法であって、
(a)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分;及び
2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分を含む溶液を提供する工程;
(b)該プレポリマー溶液に、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート及びトリフェニルホスフィンを加えることによって反応混合物を形成し、該プレポリマーの少なくとも一部を架橋させて生分解性エラストマー性材料を形成する工程であって、該反応混合物を約25℃を超えて加熱しない、工程、
を包含する、方法。
【請求項36】
前記反応混合物を形成する工程が、一塩基酸を加えて、前記生分解性エラストマー性材料中にエステル連結側鎖を提供することを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記反応混合物を形成する工程が、モノアルコールを加えて、前記生分解性エラストマー性材料中にエーテル連結側鎖を提供することを含む、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記第二の成分が、置換又は非置換ジオイック酸エステルである、請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記プレポリマーの第二の成分がアミノエステル官能基を含み、前記生分解性エラストマー性材料がポリ−β−アミノエステルポリマーを含む、請求項35記載の方法。
【請求項40】
生分解性エラストマー性材料を形成するための方法であって、
(a)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分;又は
2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分を含む溶液を提供する工程;
(b)熱開始剤を用いた熱開始重合、酸化還元対開始重合又はその両方によって該プレポリマーの少なくとも一部を架橋させる工程であって、架橋反応を約25℃未満の温度で実施する工程、
を包含する、方法。
【請求項41】
生分解性エラストマー性材料を形成するための方法であって、
(a)2個以上の一般式−OR(各基のRは、独立して水素又はアルキルである)の官能基を含む第一の成分;及び
2個以上の酸エステル官能基を含む第二の成分を含む溶液を提供する工程;
(b)二官能性スルフヒドリル化合物を用いたミカエル型付加反応を用いて該プレポリマーの少なくとも一部を架橋する工程であって、架橋反応を約25℃未満の温度で実施する工程、
を包含する、方法。
【請求項42】
医療装置を形成するための方法であって、
請求項31記載のアクリル化プレポリマーを、該医療装置が所望される部位に注入する工程;及び
該注入されたアクリル化プレポリマーを紫外線で照射して医療装置を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項43】
前記医療装置が時間をわたって生物活性剤の送達を提供する、請求項42記載の方法。
【請求項44】
請求項1又は請求項14記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、増殖因子、細胞接着配列、ポリヌクレオチド、多糖類、ポリペプチド、細胞外マトリクス成分、及びそれらの組み合わせの1種以上を更に含む、材料。
【請求項45】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該エラストマー性生分解性材料が、結合組織細胞、器官の細胞、筋細胞、神経細胞、及びそれらの組み合わせの1種以上とともに播種される材料。
【請求項46】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該エラストマー性生分解性材料が、腱細胞(tenocyte)、線維芽細胞、靭帯細胞、内皮細胞、肺細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、島細胞、神経細胞、肝細胞、腎細胞、嚢細胞(bladder cell)、尿路上皮細胞、軟骨細胞、及び造骨細胞の1種以上とともに播種される材料。
【請求項47】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、発色団が、架橋ポリエステルに共有結合している材料。
【請求項48】
受容体が発色団に共有結合しているか、又は該発色団と架橋ポリマーとの間に挿入されている、請求項45記載のエラストマー性生分解性材料。
【請求項49】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該エラストマー性生分解性材料が多孔性である、材料。
【請求項50】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該組成物がポロジェン(porogen)を含む、材料。
【請求項51】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該組成物が生物活性剤を含む、材料。
【請求項52】
請求項1又は請求項14に記載の組成物から形成されたエラストマー性生分解性材料であって、該エラストマー性生分解性材料が粒子、管、球、ストランド、コイル状のストランド、毛管ネットワーク、フィルム、繊維、メッシュ又はシートの形態である、材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A−C】
【図7A−D】
【図8A−B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A−D】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A−C】
【図7A−D】
【図8A−B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A−D】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2009−523864(P2009−523864A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550548(P2008−550548)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/060532
【国際公開番号】WO2007/082305
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(500408935)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/060532
【国際公開番号】WO2007/082305
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(500408935)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (17)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]