説明

生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造方法

生分解性ポリエステル樹脂組成物である。脂肪族ポリエステル(A)100質量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)を0.01〜5質量部を含有する熱可塑性重合体にて構成され、ゲル化指数1が0.1%以上でかつゲル化指数2が0.5%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ゲルが極めて少なく、品位の高い架橋された生分解性ポリエステル樹脂からなり、機械的強度及び耐熱性に優れ、操業性及び品位に問題のない発泡体、押出成形体、射出成形体、ブロー成形体等の成形に有利なレオロジー特性を有する、生分解性ポリエステル樹脂組成物、その製造方法、及びそれらから得られる発泡体ならびに成形体に関する。
【背景技術】
従来からプラスチックは、ボトル、トレイ、各種容器、各種成形部品として、極めて多くの分野で用いられている。しかしながら、これらはほとんどが生分解性を持たず、しかも多量に使用されているため、廃棄物処理の問題を起こしたり、自然環境を汚染する可能性があったりするため、社会問題となっている。
一方、近年、生分解性プラスチックが研究されている。その中でも生分解性を有する脂肪族ポリエステルは、実用化段階まで進捗してきている。しかし、生分解性を有する脂肪族ポリエステルは、一般的に融点や溶融粘度が低く、このため耐熱性や機械的強度が低い。また結晶化速度が遅いために、成形時にドローダウンする問題や十分な発泡倍率が得られない問題がある。したがって、実用に供するためには、溶融張力の向上及び伸長粘度測定時の歪み硬化性の発現が必要であり、また結晶化速度の向上が必要である。
一般に、樹脂に歪み硬化性を発現させるには、高重合度ポリマーを添加する方法や長鎖分岐を有するポリマーを用いることが有効と考えられている。しかし、高重合度ポリマーを製造する場合は、重合に長時間を要して生産効率が悪いばかりか、長時間の熱履歴によりポリマーに着色や分解等が見られる。また、分岐脂肪族ポリエステルの中でポリ乳酸を製造する方法としては、重合時に多官能性開始剤を添加する方法が知られているが(JP−A−10−7778、JP−A−2000−136256)、重合時に分岐鎖を導入してしまうと、ポリマーの払出しなどに支障が出たり、分岐の度合いを自由に変更できない等の点で問題がある。
一方、一般的な生分解性樹脂を用い、過酸化物や反応性化合物等との溶融混練により架橋を生じさせる方法は、簡便で、分岐度合いを自由に変更できる点から、多くの研究が行われている。しかしながら、酸無水物や多価カルボン酸を用いるJP−A−11−60928の方法では、反応性にムラが生じやすかったり、減圧にする必要があるなど、実用的でない。多価イソシアネートを使用するJP−B−2571329やJP−A−2000−17037の方法は、再溶融時に分子量が低下しやすかったり、操業時の安全性に問題があるなど、実用化レベルに達した技術として確立されていない。JP−A−10−324766に開示されているところの、有機過酸化物を用いるか又は有機過酸化物と不飽和結合を有する2個以上の化合物とを用いて架橋させてゲル化させる方法は、重合斑が生じやすく、また高粘度であるためポリマーの払い出しに難がある。しかも、生産効率が良くなく着色や分解も生じやすい。さらにまたゲルの存在で成形体や発泡体の品位が低下する問題がある。
一方、生分解性を有する脂肪族ポリエステルは、結晶化速度が遅いため成形加工において操業性が悪いという欠点を有している。この対策としての結晶化速度を向上させる方法としては、通常、無機微粉体を添加する等の方法しか検討されておらず、抜本的解決がなされていない。
そこで本発明者等は、これらの問題に鑑み、JP−A−2003−128901において、有用な素材として、生分解性ポリエステル樹脂組成物、それより得られる発泡体、成形体を提起した。しかし、これら組成物、発泡体、成形体には相対的に比較的大きなゲルが存在するため、美観を有し品位のある発泡体、成形体を得るには、用途の展開に制約がある。
【発明の開示】
本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであり、特に品位に優れかつ機械的強度、耐熱性に優れ、また操業性に問題のない発泡体、押出成形体、射出成形体、ブロー成形体等の成形に有利なレオロジー特性を有する、生分解性ポリエステル樹脂組成物、その製造方法、及びそれらから得られる発泡体ならびに成形体を提供することを目的とする。
この目的を達成するため、本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル(A)100質量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)を0.01〜5質量部を含有する熱可塑性重合体にて構成され、ゲル化指数1が0.1%以上でかつゲル化指数2が0.5%以下である。
本発明によれば、脂肪族ポリエステル(A)がポリ乳酸系重合体であることが好適である。本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物は、溶融粘度がメルトフローレート値で0.2〜10g/10分であることが好適である。
本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、脂肪族ポリエステル(A)と、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)と、有機過酸化物(C)とを溶融混練することで、脂肪族ポリエステル(A)100質量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)を0.01〜5質量部を含有する熱可塑性重合体にて構成され、ゲル化指数1が0.1%以上でかつゲル化指数2が0.5%以下である生分解性ポリエステル樹脂組成物を得るものである。
本発明の製造方法によれば、脂肪族ポリエステル(A)を溶融混練させ、この脂肪族ポリエステル(A)の溶融混練中に、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)と、有機過酸化物(C)との溶解液または分散液を注入して溶融混練することが好適である。又は、脂肪族ポリエステル(A)と有機過酸化物(C)とを溶融混練させ、この脂肪族ポリエステル(A)と有機過酸化物(C)との溶融混練中に、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)の溶解液または分散液を注入して溶融混練することが好適である。
さらに本発明の製造方法によれば、混練機を使用し、この混練機における脂肪族ポリエステル(A)が溶融した後の位置に圧力低下領域を形成して、この圧力低下領域にて注入を行い、前記混練機における前記注入を行う位置及び/又はこの位置よりも溶融樹脂の進行方向の流れ沿った下流側において、最終的に得られる生分解性ポリエステル樹脂組成物のゲル化指数1が0.1%以上でかつゲル化指数2が0.5%以下となるように、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)を撹拌混練することが好適である。
本発明の生分解性時油脂成形体は、上記生分解性ポリエステル樹脂組成物を、発泡成形又は押出成形又は射出成形又はブロー成形して得られるものである。
本発明によれば、大きなゲルを含有していなく、機械的強度、耐熱性に優れ、しかも発泡体等の成形に有利なレオロジー特性を有する生分解性ポリエステル樹脂組成物を、簡便に、コストも低く製造することが出来る。この樹脂を用いた成形品としては、表面がフラットで、美観があり、発泡性に優れた発泡体、成形性に優れた射出成形体、ブロー成形体、押出成形体を挙げることができる。本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物や成形体は、自然分解やコンポスト分解などのクリーンで有効な分解が行え、環境面からも望まれる製品を、問題なく提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
図1は、屈曲点が現れるまでの伸長初期の線形領域の傾きa1と屈曲点以降の伸長後期の傾きa2との比(a2/a1、歪み硬化係数)を求める際の伸長時間と伸長粘度と関係を示す図、
図2は、最終的に到達する結晶化度(θ)の2分の1に到達するまでの時間(分)で示される結晶化速度係数を求める際の、結晶化度(θ)と時間との関係を示す図、
図3は本発明における二軸混練機の代表的スクリューパーツを示す図、そして
図4は本発明における二軸混練機の他の代表的スクリューパーツを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル(A)と、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)とを含有することが必要である。
脂肪族ポリエステル(A)は、下記の熱可塑性の脂肪族ポリエステルを主体成分とするものである。詳しくは、脂肪族ポリエステル(A)を構成するための主体となる熱可塑性の脂肪族ポリエステルとしては、(1)グリコール酸、乳酸、ヒドロキシブチルカルボン酸などのヒドロキシアルキルカルボン酸、(2)グリコリド、ラクチド、ブチロラクトン、カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン、(3)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどの脂肪族ジオール、(4)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレン/プロピレングリコール、ジヒドロキシエチルブタンなどのようなポリアルキレンエーテルのオリゴマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレンエーテルなどのポリアルキレングリコール、(5)ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、ポリヘキサンカーボネート、ポリオクタンカーボネート、ポリデカンカーボネート等のポリアルキレンカーボネートグリコール及びそれらのオリゴマー、(6)コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸など、脂肪族ポリエステル重合原料に由来する成分を主成分として70質量%以上有するものであって、脂肪族ポリエステルのブロック及び/またはランダム共重合体、および脂肪族ポリエステルに也の成分、例えば芳香族ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルガノシロキサン等を30質量%以下(ブロックまたはランダム)共重合したもの及び/またはそれらを混合したもの、をすべて包含することができる。
これらの熱可塑性の脂肪族ポリエステル類の中でも、前記(1)に示したヒドロキシアルキルカルボン酸由来の脂肪族ポリエステルは、融点が高く、耐熱性の観点から好適である。
さらにこの中でもポリ乳酸は、融点が高く、本発明に関与するポリマーとしては最適である。ポリ乳酸としては、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、ポリD、L−乳酸またはこれらの混合物を用いることができる。これらのポリ乳酸の中で、光学活性のあるL−乳酸、D−乳酸の単位が90モル%以上であると融点がより高く、耐熱性の観点からより好適に用いることができる。この乳酸系重合体の性能を損なわない程度にヒドロキシカルボン酸類、ラクトン類等のコモノマーと共重合した共重合体を用いてもよい。共重合可能なヒドロキシカルボン酸類、ラクトン類としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ絡酸、4−ヒドロキシ絡酸、4−ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、グリコリド、プロピオラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトン等が挙げられる。
これらの乳酸系の重合体は、従来公知の方法で乳酸を重合して、製造することができる。重合法の例としては、例えば、乳酸を直接脱水縮合して行う方法や、乳酸の環状二量体であるラクチドを開環重合して得る方法等が挙げられる。また、これらの重合反応を溶媒中で行ってもよく、必要な場合には触媒や開始剤を用いて効率よく反応を行ってもよい。いずれの方法を選択するかは、必要な分子量や溶融粘度を考慮して適宜決定すればよい。
本発明において脂肪族ポリエステル(A)は、主体となる成分としての前記熱可塑性の脂肪族ポリエステル類を50質量%以上含有したものであればよく、同種、異種の成分を混合したものであっても一向に差し支えない。
本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル(A)に、架橋剤である(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)と、架橋助剤つまりラジカル反応の開始剤である有機過酸化物(C)とを溶融混練反応させることにより、製造することができる。
本発明における(メタ)アクリル酸エステル(B1)成分としては、生分解性樹脂との反応性が高く、モノマーが残りにくく、毒性が比較的少なく、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、又は1個の以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。具体的な化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、(これらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレンの共重合体でも構わない)、ブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレート等が挙げられる。
本発明におけるグリシジルエーテル(B2)成分としては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセリン、エピクロルヒドリン1モル以下付加物のポリグリシジルエーテル、エチレングリコール、エピクロルヒドリン2モル以下付加物のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル(B1)を単独で用いる場合に、その配合量は、脂肪族ポリエステル(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であることが必要で、0.05〜3質量部が好ましい。0.01質量部未満では、本発明の目的とする機械的強度、耐熱性、寸法安定性の改良効果が得られない。反対に5質量部を超える場合には、架橋の度合いが強すぎて、操業性に支障が出る。
グリシジルエーテル(B2)を単独で用いる場合に、その配合量は脂肪族ポリエステル(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であることが必要で、0.01〜3質量部が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(B1)とグリシジルエーテル(B2)との両者を用いる場合は、両者の合計が、脂肪族ポリエステル(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であることが必要で、0.05〜3質量部であることが好ましい。
本発明においては、ポリエステル樹脂組成物の製造工程において有機過酸化物(C)をラジカル反応の開始剤として添加することが好ましい。このような有機過酸化物(C)の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)メチルシクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメン等が挙げられる。
有機過酸化物(C)の配合量は、脂肪族ポリエステル(A)100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。0.01質量部未満では本発明の目的とする機械的強度、耐熱性、寸法安定性の改良効果が得られにくく、10質量部を超えると未利用のものが多くなってコスト面で不利である。
脂肪族ポリエステル(A)の融点は、耐熱性の観点から、100℃以上であることが好ましい。100℃未満であると、耐熱性が悪くなって、実用範囲が極めて狭くなり、よくない。融点の上限は、特に規制しないが、脂肪族ポリエステルでは230℃程度である。溶融粘度については、低いほど架橋時の分岐度が向上するので好ましく、通常、温度190℃、2.16kg荷重下におけるメルトフローレート値(以下、「MFR値」と記す)が3〜150g/10分程度である溶融粘度のものが好ましい。
生分解性ポリエステル樹脂組成物としての溶融粘度は、MFR値で0.1〜10g/10分であることが必要である。MFR値が0.1g/10分未満では、樹脂の流動性が低下するため、操業性が劣る問題が生ずる。10g/10分を超えると、溶融粘度が低すぎて発泡体や成形体の機械的物性の低下や操業性が低下する。このためMFR値は、好ましくは0.2〜10g/10分である。より好ましくは0.5〜8g/10分、さらに好ましくは、0.7〜6g/10分である。
また、本発明における生分解性ポリエステル樹脂組成物のゲル化度合いとしての後述のゲル化指数1は0.1%以上であることが必要で、かつ後述のゲル化指数2が0.5%以下であることが必要である。本発明において、ゲルとは、架橋剤や低分子モノマー等により分子が互いに繋がりあって立体網状構造をとり、流動性を失って固化した状態をいう。このゲルが、成形時に異物状の欠点となって現れ、美観、品位を損なうことになる。中でも特にゲルの大きさが重要である。本発明は、このゲルを極めて微細化させる技術を構築したものである。本発明によれば、ゲル粒子径が例えば90μm以下であれば、美観を損なうことなく、品位の優れた発泡体や成形体が得られる。
本発明におけるゲル化指数は、次のようにして測定され、定義されるものである。すなわち、2個の300mlのフラスコに、架橋された樹脂組成物の試料、又は架橋された樹脂組成物からなる発泡体あるいは成形体の試料約10gを精評し、各フラスコに250mlのクロロホルムを個別に入れ、20℃、大気圧下で12時間適度に撹拌溶解する。そして、1480メッシュの金網と200メッシュの金網とを有する吸引濾過装置を用いて、得られた2個のフラスコの溶液について金網別の濾過処理を行う。濾過により得られた金網上の濾過処理物を、真空乾燥機によって、70℃中、101.3kPa(760トール)の条件下で8時間乾燥する。得られた乾燥物の質量W1(1480メッシュ濾過)、W2(200メッシュ濾過)を測定する。本発明においては、質量W1の、溶解前の試料質量W0に対する質量比率(W1/W0×100)%をゲル化指数1といい、質量W2の、溶解前の試料質量W0に対する質量比率(W2/W0×100)%をゲル化指数2という。
1480メッシュ及び200メッシュの通過開き目は、10μm及び90μmである。大きさが10μm〜90μmの極めて小さなゲル粒子は、多い方が、樹脂組成物の伸長粘度特性が向上する方向であり、好ましい。これに対し、90μmを超える大きさのゲル粒子は、再溶融時に二次凝集等で更に大きくなるので、一定量以下であることが必要である。このため、大きさが10μm以上のすべてのゲル粒子に関するゲル化指数1は、0.1%以上であることが必要であり、ただし、90μmを超える大きさのゲル粒子の量を制限するために、ゲル化指数2は、0.5%以下であることが必要である。大きなゲルを多く含有する樹脂組成物は、次に展開する発泡体や成形体の美観を損ない、品位の劣る製品となる。したがって本発明では、上記のようにゲル化指数1が0.1%以上でかつゲル化指数2が0.5%以下とするが、好ましくはゲル化指数1が0.2%以上、ゲル化指数2が0.4%以下、最も好ましくはゲル化指数1が0.3%以上、ゲル化指数2が0.3%以下がよい。
また、本発明における生分解性樹脂組成物は、図1に示されるところの、その融点より10℃高い温度での伸長粘度測定で得られる時間−伸張粘度の対数プロットの曲線において、屈曲点が現れるまでの伸張初期の線形領域の傾きa1と屈曲点以降の伸長後期の傾きa2との比(a2/a1)で表される歪み硬化係数が1.05以上かつ50未満であるような、歪み硬化性が発現されることが好ましい。より好ましい歪み硬化係数は1.5〜30である。
歪み硬化係数が1.05未満であると、発泡成形時に破泡を起こしたり、発泡成形体に偏肉を生じたりしやすい。反対に歪み硬化係数が50以上であると、成形時にゲルの凝集が強くなり、流動性も大きく低下して、成形性が悪くなる。
本発明の生分解性樹脂組成物は、DSC装置において、一旦200℃で溶融した後、130℃にて等温結晶化させた時の結晶化速度指数が50分以下であることが好ましい。結晶化速度指数は、図2に示すように、樹脂を200℃の溶融状態から130℃にて結晶化させたときに、最終的に到達する結晶化度θの2分の1に到達するまでの時間(分)で示され、この指数が低いほど結晶化速度が速いことを意味する。結晶化速度指数が50分よりも高い程度に結晶化速度が遅いと、結晶化するのに時間がかかり過ぎ、成形体の所望形状が得られなかったり、射出成形などでのサイクルタイムが長くなって生産性が悪くなったりする。これに対し結晶化速度指数が低過ぎて結晶化速度が速すぎると、成形性が悪くなるため、結晶化速度指数の下限は0.1分程度であることが好ましい。結晶化速度指数は架橋剤量及び/又は過酸化物量が増加するほど低くなって、結晶化を速くすることが出来る。また架橋剤の官能基数を多くするほど低くなって、結晶化を速くすることが出来る。結晶核剤として下記に示すような核剤を添加すると、相乗効果でより低くすなわち結晶化をより速くすることが出来る。
この核剤としては、無機系では、珪藻土、焼成パーライト、カオリンゼオライト、ベントナイト、クレイ、シリカ微粉末、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、タルク、ガラス、石灰石、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸第二鉄等が挙げられる。有機系では、木炭、セルロース、でんぷん、クエン酸、セルロース誘導体等の有機系充填剤等が挙げられる。これらは併用しても差し支えない。核剤の添加量は0.1〜10質量%が好ましい。0.1質8%未満では核剤としての効果が認められなく、また10質量%を超えると添加効果が薄れる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる架橋剤・架橋助剤・過酸化物やその他添加剤は、固体状であればドライブレンドや粉体フィーダーを用いて供給することが望ましく、液体状の場合には液体注入ポンプを用いて混練機に注入することができる。
この場合に、(メタ)アクリル酸エステル及び/又はグリシジルエーテルと過酸化物とは、ともに注入してもよいし、あるいは別々に注入してもよい。詳細には、生分解性樹脂と過酸化物とを溶融混練中に(メタ)アクリル酸エステル及び/又はグリシジルエーテルの溶解液又は分散液を注入したり、生分解性ポリエステル樹脂を溶融混練中に、(メタ)アクリル酸エステル及び/又はグリシジルエーテルと過酸化物の溶解液又は分散液を注入したりしたうえで、さらに溶融混練することが好ましい。特に、架橋剤である(メタ)アクリル酸エステル及び/又はグリシジルエーテルと過酸化物とをともに媒体に溶解又は分散してから混練機に注入すると、定量性の観点からも望ましく、操業性が大幅に向上する。
架橋剤である(メタ)アクリル酸エステル及び/又はグリシジルエーテルと架橋助剤である過酸化物とを溶解又は分散させるときの媒体としては、一般的なものが用いられ、特に限定されないが、本発明の脂肪族ポリエステルとの相溶性に優れた可塑剤が好ましく、また生分解性のものが好ましい。例えば、脂肪族多価カルボン酸エステル誘導体、脂肪族多価アルコールエステル誘導体、脂肪族オキシエステル誘導体、脂肪族ポリエーテル誘導体、脂肪族ポリエーテル多価カルボン酸エステル誘導体などから選ばれた1種以上の可塑剤などが挙げられる。具体的な化合物としては、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、トリエチレングリコールアジペート、トリエチレングリコールジアセテート、アセチルリシノール酸メチル、アセチルトリブチルクエン酸、ポリエチレングリコール、ジブチルジグリコールサクシネートなどが挙げられる。可塑剤の使用量は、樹脂量100質量部に対し20質量部以下が好ましく、0.1〜10質量部が更に好ましい。架橋剤の反応性が低い場合には可塑剤を使用しなくても良いが、その反応性が高い場合には0.1質量部以上用いることが好ましい。
本発明においては、生分解性ポリエステル樹脂組成物中に、必要に応じて、例えば熱安定剤、艶消し剤、顔料、可塑剤、耐光剤、耐候剤、滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、帯電防止剤、香料、染料、末端封鎖剤、界面活性剤、難燃剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、充填材その他類似のものを、樹脂組成物の特性を損なわない範囲でに添加することができる。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物或いはこれらの混合物を使用することが出来る。無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、ワラステナイト、炭酸亜鉛、珪藻土、焼成パーライト、カオリンゼオライト、ベントナイト、クレイ、シリカ微粉末、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ガラス、石灰石、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシュウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ハイドロタルサイト、酸化アルミニウム、炭酸第二鉄、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。また有機系充填材としては、木炭、セルロース、でんぷん、木粉、おから、籾殻、フスマ、セルロース誘導体等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品が挙げられる。
次に、本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造法について説明する。しかし、特に以下の方法に限ったものでない。
本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物は、主体成分が前記脂肪族ポリエステル(A)からなる熱可塑性重合体と架橋剤としての(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)とをエクストルーダーにより溶融混練反応させることで、製造が可能である。その溶融混練反応のための機台としては、単軸型溶融混練機、二軸型溶融混練機ともに適用できるが、二軸混練機が一般的に最も有用である。二軸混練機のスクリュータイプには主に深溝2条ネジ、標準2条ネジ、3条ネジ等があり、いずれのものでも適用できる。
これらの溶融混練機を用いる際は、重合体を供給して溶融させた後の部分に圧力低下領域を設けて、その領域に架橋剤を注入するという工程が不可欠である。本発明に係る圧力低下領域とは、正リードスクリューで且つ深溝のスクリュー構成部等を設けることにより、それよりも前のスクリュー部に比べて実質的に圧力が低下するように構成された領域を云う。
架橋剤としての前記した(メタ)アクリル酸エステル及び/又はグリシジルエーテルと、過酸化物とを、媒体に溶解又は分散させたものを適用し、液体高圧定量ポンプにより注入する方法は、操業性よく安定した製造を可能とすることができる。この架橋剤を含む溶液を上記の圧力低下領域に注入すると、安定な溶液の供給が出来、安定な操業性を保つことができる。更に、その工程以降で、溶融樹脂の進行方向の流れに対し、正リードミキシングディスク、ニュートラルミキシングディスク、逆リードミキシングディスク等を組み合わせた構成の混練部を設ける工程を必要とする。
図3は、2条ネジタイプの混練機に適応するスクリューパーツの一例を示す。図3において、(a1)(a2)は逆リードスクリュー(以下、単に「(a)」と称することがある)を示し、(b1)(b2)は最も一般的な正リードスクリュー(以下、単に「(b)」と称することがある)を示し、(c1)(c2)は正リード切り欠きスクリュー(以下、単に「(c)」と称することがある)を示す。(d1)(d2)は正リードニーディングディスク(以下、単に「(d)」と称することがある)、(e1)(e2)はニュートラルニーディングディスク(以下、単に「(e)」と称することがある)、(f1)(f2)は逆リードニーディングディスク(以下、単に「(f)」と称することがある)をそれぞれ示す。
正リードは、正規移送用である。逆リードは、逆移送用や樹脂シール用として適用される。ニュートラルは、その中間で、溶融樹脂をその位置で混練滞留させる目的に適用される。ニュートラルニーディングディスクの中には広幅ディスクもあり、これは混練する際にすりつぶし効果を持たせるものである。
練りの強さは(f)>(e)>(a)>(d)>(c)>(b)であり、これらを組み合わせることや個数を増やすことで、樹脂の練り効果をより上げることができる。
図4は、3条ネジタイプの混練機に適応するスクリューパーツの一例を示す。図4において、(a1)(a2)は逆リードスクリューを示し、(b1)(b2)は正リードスクリューを示す。(c1)(c2)はシールリングを示し、図示のように二軸混練機において一対を互いに逆向きに配置して使用することで、所要のシール機能を発揮する。(d1)(d2)は正リードニーディングディスク、(e1)(e2)は逆リードニーディングディスク、(f1)(f2)はニュートラルニーディングディスクをそれぞれ示す。
本発明においては、これら正リードニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク、逆リードニーディングディスク、正リードスクリュー、逆リードスクリュー、ストップリング等の内から所要のものを組み合わせた構成の混練部を設けることが必要である。特に、正リードニーディングディスクを2個以上と、ニュートラルニーディングディスクを2個以上と、逆リードニーディングディスクとを組み合わせて用いると、より混練度が向上し、分散性が上がるため、好ましい。もちろん、混練部の前後に、水分や低揮発成分などを脱気するためのベント吸引機構を設けてもよい。その際には、正リードスクリューに、シールリング、逆リードスクリュー、切り欠きミキシングスクリュー等を組み合わせて用いることもできる。
本発明の生分解性ポリエスデル樹脂組成物を得るときには、脂肪族ポリエステル(A)を上記スクリューディメンジョンを具備したエクストルーダー内で[融点(mp)+10]℃から[融点(mp)+60]℃の範囲内に加温させて溶融した後、架橋剤としての(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)を注入する。そして、スクリューの回転数を50〜300rpmとして急速混練することでダイ先端より樹脂を押し出してストランドを形成し、冷却した後にストランドカットを行って、ペレットを製造する。架橋剤の反応は敏感であるため、架橋反応の促進と架橋剤等の分散とが極めて重要であり、混練度と分散度とを急速に高めることにより、大きなゲル状物の発生を抑えることができる。
詳細には、本発明においては、上述のスクリューパーツを適宜に選択してエクストルーダーに使用し、かつ上述の運転温度や運転時のスクリュー回転数を適宜に選択することによって、特に架橋剤の投入位置およびその直後の部分で充分な撹拌を行うことが可能になって、大きなゲル状物の発生を抑えることができる。このためには、特に、架橋剤の投入位置およびその直後の部分に、架橋剤の投入位置から距離をおかずに、撹拌性能の良好なスクリューパーツ配置することが必要である。一度大きなゲル状物が生じてしまうと、その後に破砕するのは困難であるので、ゲルの成長途中でこれを破砕して、大きなゲル状物が生じないようにすることが重要である。また、エクストルーダー内における樹脂の流れ方向に沿った架橋剤の投入位置よりも手前側の部分において、上述した逆リードのスクリューパーツやシールリングを用いてシールを行うと、事前のベント吸引口へ架橋剤が吸引されてその注入量が減少されることを、防止することができる。
このようにすることで、得られる生分解性ポリエステル樹脂組成物に大きなゲルが存在しないようにすることができ、このため、美観を有し品位のある発泡体、成形体を得ることが可能となる。
上述のスクリューの回転数が50rpm未満では、混練、分散の度合いが小さく、大きな粒子のゲルが出易く、後の発泡体や成形体を製造する際に製品の品位を低下させる原因となる。一方300rpmを超えると、スクリューによる樹脂のせん断が大きくなって、逆に重合体全体の粘度低下を引き起こすことになる。従って、スクリューの回転数を50〜300rpmとすることが好ましく、100〜250rpmとすることがより好ましく、120〜230rpmとするのがさらに好ましい。
本発明にもとづき生分解性ポリエステル樹脂組成物から発泡体を製造する際の発泡方法には、一般的な方法を全て適用できる。列えば、押し出し機を用いて、樹脂にこの樹脂の溶融温度で分解する熱分解型発泡剤を予めブレンドしておき、スリット状ダイやサークルダイから押し出してシートにしたり、多数の丸孔から押し出してストランド形状にしたりすることができる。この熱分解型発泡剤の例としては、アゾジカルボンアミドやバリウムアゾジカルボキシレートに代表されるアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンに代表されるニトロソ化合物、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)やヒドラジカルボンアミドに代表されるヒドラジン化合物、炭酸水素ナトリウムなどの無機系の発泡剤などを挙げることができる。また、押し出し機の途中から揮発型発泡剤を注入して発泡することも可能である。この揮発型発泡剤の例としては、無機不活性ガス系の発泡剤、例えば炭酸ガスや窒素、空気等の無機化合物や、揮発性発泡剤、例えばプロパン、ブタン、ヘキサン、メタンなどの各種炭化水素、フロン化合物、エタノールやメタノール等の各種アルコール類に代表される有機溶媒を挙げることが出来る。また、予め樹脂組成物の微粒子を作製し、有機溶媒や水など上記に示した発泡剤を含浸させた後、温度や圧力の変化で発泡させて発泡微粒子を作製することも適用できる。
発泡体を製造する際において、生分解性ポリエステル樹脂組成物中に発泡核剤や発泡助剤がない場合または少ない場合には、発泡時の気泡調整として発泡核剤や発泡助剤を樹脂原料に適宜ブレンドして用いることも重要である。ブレンド方法は、特に限定されるものでなく、発泡核剤や発泡助剤の形態によって適宜選択することができる。詳細には、粉体またはマスターバッチの形態での供給の場合には、例えばナウターミキサー、タンブラーミキサー等を用いてドライブレンド供給する方法や、粉体供給フィーダーによる押し出し機に直接供給する方法が挙げられる。また、マスターバッチの形態での供給の場合には、これをジェットカラー等による計量ミキシング装置を使用して他の原料と混合してから押出機に供給することもよい。
発泡核剤としては、前記した結晶核剤を用いることができる。発泡核剤の添加量は、0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%未満では、気泡の数が少なく発泡体として満足できるものが得られにくい。逆に10質量%を超えると、破泡し易くなって、発泡倍率が高くならないことがある。
発泡助剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等が挙げられる。発泡助剤の添加量は、0.01〜2質量%が好ましい。0.01質量%未満では、発泡助剤としての効果が認められず、反対に2質量%を超えると発泡核及び発泡の成長を阻害することになる。
本発明にもとづき生分解性ポリエステル樹脂組成物から押し出し成形体を製造する際の押し出し成形法について述べる。押し出し成形法としては、Tダイ法、丸ダイ法を適用することが出来る。押し出し成形温度は、生分解性ポリエステル樹脂組成物の融点(Tm)又は流動開始温度以上であることが必要であり、好ましくは(Tm+10)℃〜(Tm+60)℃、更に好ましくは(Tm+15)℃〜(Tm+40)℃の範囲である。成形温度が低すぎると、成形が不安定になったり、過負荷に陥りやすくなったりする。逆に成形温度が高くなりすぎると、生分解性ポリエステル樹脂が分解して、得られる押し出し成形体の強度が低下したり、着色したりする等の問題が発生しやすくなる。押し出し成形により生分解性シートやパイプ等の成形品を作製することができるが、これら成形品の耐熱性を高める目的で、生分解性ポリエステル樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上、(Tm−20℃)以下で熱処理をすることも出来る。
押し出し成形法により製造される生分解性シートやパイプなどについての具体的用途としては、深絞り成形用原反シート、コンテナー、鉄製コンテナーのあて材、通函、函の仕切り板、緩衝材、バインダー、カットファイル、クリアファイル、カットボックス、クリンルーム用制菌性文具、クレジットカード等のカード類、パーテーション用芯材、表示板、緩衝壁材、キャンプ時の敷板、玄関マット、トイレマット、流しマット、風呂マット、家庭植栽マット、病院用院内マット、スダレ材、フェンス等野犬、猫等の放し飼い動物の侵入防止用部材、漁業網用浮き、釣り用浮き、オイルフェンス用浮き、クーラーボックス、ストロー、農業・園芸用パイプ等が挙げられる。生分解性シートは、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の方法を適用することで、食品用容器、農業・園芸用容器、ブリスターバック容器、プレススルーパック容器等を製造することができる。成形の際には、予熱シート温度を(Tg+40℃)〜(Tm−5℃)にした直後に、温度が(20℃)〜(Tm−20℃)の金型で成形することが好ましい。
予熱シートの温度が高すぎるとシートがドローダウンして成形できなくなり、また温度が低すぎると、成形シートの伸びが不足して割れが生じたり、深絞り成形ができなくなったりする問題が生じることがある。一方、金型温度が低すぎると、得られる容器の耐熱性が不十分となる場合があり、また、金型温度が高すぎると、金型にシートが付着し成形物の離型が悪くなることや、成形物に偏肉が生じたり、その耐衝撃性が低下したりすることがある。
食品用容器、農業・園芸用容器、ブリスターバック容器、及びプレススルーパック容器の形態は特に限定されないが、食品、物品、及び薬品等を収容するためには、深さ2mm以上に深絞り成形されていることが好ましい。容器の厚さは、特に限定されないが、強力の観点から50μm以上であることが好ましく、150〜1000μmであることがより好ましい。食品用容器の具体例としては、生鮮食品のトレイ、インスタント食品容器、ファーストフード容器、弁当箱等が挙げられる。農業・園芸用容器の具体例としては、育苗ポット等が挙げられる。ブリスターバック容器の具体例としては、食品以外にも事務用品、玩具、乾電池等の多様な商品の包装容器が挙げられる。
本発明にもとづき生分解性ポリエステル樹脂組成物からブロー成形体を製造する際のブロー成形法について述べる。ブロー成形法としては、原料樹脂から直接成形を行うダイレクトブロー成形法や、先ず射出成形で予備成形体(有底パリソン)を成形し、その後にブロー成形を行う射出ブロー成形法、更には延伸ブロー成形法等も用することができる。また予備成形体を成形した後に連続してブロー成形を行うホットパリソン法、一旦予備成形体を冷却し取り出してから再度加熱してブロー成形を行うコールドパリソン法のいずれの方法も適用出来る。
ブロー成形温度は、(Tg+20℃)〜(Tm−20℃)であることが好ましい。ブロー成形温度が(Tg+20℃)未満では、成形が困難になったり、得られる容器の耐熱性が不十分となる場合があり、逆にブロー成形温度が(Tm−20℃)を超えると、得られる容器に偏肉が生じたり、粘度低下によりブローダウンする等の問題が生じやすくなる。
本発明にもとづき生分解性ポリエステル樹脂組成物から射出成形体を製造する際の射出成形法について述べる。射出成形法としては、一般的な射出成形法を用いることができ、さらにはガス射出成形法、射出成形プレス成形法等も採用できる。射出成形時のシリンダー温度は、原料樹脂である生分解性ポリエステル樹脂組成物の(Tm)又は流動開始温度以上であることが必要であり、好ましくは(Tm+10)℃〜(Tm+60)℃、更に好ましくは(Tm+15)℃〜(Tm+40)℃の範囲である。成形温度が低すぎると、成形にショートが発生して成形が不安定になったり、過負荷に陥ったりしりやすい。逆に成形温度が高すぎると、生分解性ポリエステル樹脂が分解し、得られる押し出し成形体の強度が低下したり、着色する等の問題が発生しやすくなる。一方、金型温度は、(Tm−20℃)以下にすることが好ましい。生分解性樹脂の耐熱性を高める目的で、金型内で結晶化を促進する場合には、(Tg+20℃)〜(Tm−20℃)で所定時間保った後、Tg以下に冷却することが好ましい。これに対し後結晶化する場合には、Tg以下に冷却した後、再度Tg〜(Tm−20℃)で熱処理することが好ましい。
上記射出成形法により製造する射出成形品の形態は、特に限定されず、具体例としては皿、椀、鉢、箸、スプーン、フォーク、ナイフ等の食器、流動体用容器、容器用キャップ、定規、筆記具、クリアケース、CDケース等の事務用品、台所用三角コーナー、ゴミ箱、洗面器、歯ブラシ、櫛、ハンガー等の日用品、植木鉢、育苗ポット等の農業・園芸用資材、プラモデル等の各種玩具類、エアーコンパネル、冷蔵庫トレイ、各種筐体等の電化製品用樹脂部品、バンパー、インパネ、ドアトリム等の自動車用樹脂部品等が挙げられる。なお、流動体用容器の形態は、特に限定されないが、流動体を収容するためには、深さ20mm以上に成形されていることが好ましい。容器の厚さは、特に限定されないが、強力の観点から0.1mm以上であることが好ましく、0.1〜5mmであることがより好ましい。流動体用容器の具体例としては、乳製品や清涼飲料水や酒類等のための飲料用コップ及び飲料用ボトル、醤油、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、食用油等の調味料の一時保存容器、シャンプー・リス等の容器、化粧用容器、農薬用容器等が挙げられる。
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例・比較例における各種特性の測定及び評価は、次の方法により実施した。
(分子量)
示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置(島図製作所社製)を用い、テトラヒドロフランを溶出液として、40℃で、標準ポリスチレン換算で求めた。
(ガラス転移温度、融点(℃))
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−7型を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の初期極値と極値を与える温度を、ガラス転移温度と融点とした。
(溶融粘度[MFR](g/10分))
JIS K7210に従い、付属書A表1のFの条件にて測定した。
(伸長粘度)
伸長粘度測定装置RME(レオメトリック社製)を用い、60mm×7mm×1mmの試験片を作製し、その両端を金属ベルトクランプにより支持した後、樹脂組成物の融点よりも10℃高い温度で、歪み速度0.1sec−1で回転させて測定サンプルに伸長変形を加え、変形中にピンチローラーにかかるトルクを検出することにより、伸長粘度を求めた。
(歪み硬化係数(a2/a1) [図1参照])
伸長時間と伸長粘度の両対数プロットにおいて、屈曲点が現れるまでの伸長初期の線形領域の傾きa1と、屈曲点以降の伸長後期の傾きa2との比(a2/a1)により算出した。
(結晶化速度指数[図2参照])
DSC装置(パ−キンエルマ社製Pyrisl DSC)を用い、20℃から200℃へ(+500℃/分)で昇温した後、200℃で5分間保持し、200℃から130℃へ(−500℃/分)で降温し、その後に130℃で保持し結晶化させた。最終的に到達する結晶化度を1としたとき、結晶化度が0.5に達した時間を結晶化速度指数(分)として求めた。
(曲げ弾性率)
ASTM−790に準じて150mm×10mm×6mmの試験片を作製し、変形速度1mm/分で荷重をかけ、曲げ弾性率を測定した。
(見掛け密度(g/cm))
得られた発泡体を水中に浸漬したときに見掛け上増加した水の体積を、この発泡体の体積とした。そして、この発泡体の質量を、前記のようにして求めた体積で割って、見掛け密度を算出した。
(発泡倍率)
発泡体を構成する樹脂の真の密度を前記発泡体の見掛け密度で割って算出した。
(発泡体外観)
肉眼にて下記の評価結果を求め、その評価結果を下記の記号で表した。
◎:極めて均一な平面状であり、表面に美観がある。
○:均一な平面状であり、表面の肌荒れがない。
△:一部不均一な平面状になるが、表面の肌荒れがない。
×:不均一な平面状になり、破泡による表面の肌荒れがある。
(曲げ弾性率(MPa))
JIS K7171に準じて、長さ80±2.0mm、幅10.0+0.2mmの試験片を作成し、変形速度2mm/分で荷重をかけ,曲げ弾性率を測定した。
(射出成形性の評価)
射出成形装置(東芝機械製IS−100E)を用い離型カップ型(直径38mm、高さ300mm)に射出成形を行い(成形温度200℃、金型温度15℃)、良好にカップが離型できるまでのサイクル時間を調べた。また、成形体の外観につき、肉眼により下記の評価結果を求め、その評価結果を下記の記号で表した。
◎:表面が極めて均一な状態にあり、ゲルが殆ど見られない。
○:表面が均一な状態にあり、ゲルが殆ど見られない。
△:表面に一部不均一な箇所があり、ゲルがやや見られる。
×:表面に不均一な箇所があり、ゲルが見られる。
(ブロー成形性の評価)
ブロー成形装置(日精エーヱスビー社製ASB−50HT)を用い、成形温度200℃で、直径30mm、高さ100mm、厚み3.5mmのブリフォームを作製した。その後、これを表面温度80℃に加温し、ボトル形状の金型(直径90mm、高さ250mm)に向けてブロー成形を行い、厚み0.35mmの成形体を得た。この成形体の外観につき、肉眼により下記の評価結果を求め、その評価結果を下記の記号で表した。
◎:表面が極めて均一な状態にあり、良好で目的通り。
○:表面が均一な状態にあり、良好でほぼ目的通り。
△:表面に一部不均一な箇所があるがほぼ目的通り。
×:表面に不均一な箇所があり、目的通り成形が出来なかった。
××:全く形をなさなかった。
(生分解性評価)
試料片(縦10cm×横5cm×厚み2cm)を探取し、家庭用生ゴミよりなる発酵コンポストにて、ISOL4855に準じてコンポスト処理を行った。すなわち、試料片を温度58℃で45日処理した後にコンポスト中より掘り出して、その生分解率から生分解性を評価すると共に、目視観察も行って、総合的に生分解性を判定した。下記の判定結果を下記の記号で表した。
×:形態は全く変化なし。生分解率10%未満
△:形態を保持しているが、生分解率10%以上40%未満。
○:部分的又は半分程度崩壊し、生分解率40%以上70%未満
◎:殆ど崩壊しており、生分解率70%以上。
以下の実施例及び比較例に用いた原料は、次の通りである。
(A) 生分解性ポリエステル樹脂
A1:ポリL−乳酸(重量平均分子量10万、L体99モル%、D体1モル%、結晶化速度指数95、カーギル・ダウ社製)
A2:ポリL−乳酸(重量平均分子暈10万、L体90モル%、D体10モル%、結晶化速度指数>100)
A3:ブタンジオールとアジピン酸とテレフタル酸の割合(モル比)が50/27.8/22.2、ガラス転移温度が−28℃、融点が110℃、MFRが10g/10分のコポリエステル樹脂。
A4:ポリブチレンサクシネートアジペート[PBSA](ブタンジオールとコハク酸とアジピン酸との割合(モル比)が100/80/20、ガラス転移温度が−45℃、融点が105℃、MFRが25g/10分)。
A5:ポリブチレンサクシネート[PBS](ブタンジオールとコハク酸の割合(モル比)が50/50、ガラス転移温度が−32℃、融点が115℃、MFRが30g/10分)。
(B1) (メタ)アクリル酸エステル:
PEGDM:ポリエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂社製)
TMPTM:トリメチロールプロパントリメタクリレート(日本油脂社製)
PEGDA:ポリエチレングリコールジアクリレート(日本油脂社製)
GM:グリシジルメタクリレート(日本油脂社製)
(B2) グリシジルエーテル
PEGDGE:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製)
(C) 過酸化物
C1:ジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂社製)
C2:2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂社製、可塑剤であるアセチルトリブチルクエン酸に10%溶液となるよう溶解して用いた。)
実施例1
スクリューが2条ネジ形状の二軸混練機(東芝機械社製TEM−37BS)を用いて、樹脂組成物を得た。この二軸混練機の構成は、次のようにした。つまり、樹脂供給部が、深溝の正リードスクリューから浅溝の正リードスクリューに移行するものとした。そして、その後に、ニュートラルニーディングディスク2個、逆リードスクリューを設けた後、正リードスクリュー部で液注を行うことができるものとした。さらに、その直後から、回3に示すようなスクリューやニーディングディスクを混練部として用いた。詳細には、(d)、(d)、(e)、(e)、(d)、(d)、(e)、(b)、(c)、(a)の順の混練部を経由した後、ベント吸引してから、0.4mm径×3孔のダイスよりストランドを押し出すものとした。
このような二軸混練機を準備したうえで、生分解性ポリエステル樹脂A1を用い、これに結晶核剤としての平均粒径2.5μmのタルクを1.0質量%ドライブレンドしたのち、温度200℃の上記二軸混練機に供給した。そして混練機から押し出したストランドを、引き続き冷却バスで冷却した後、ペレタイザーでカットして、生分解性ポリエステル樹脂のペレットを採取した。液注に供した溶液は、(メタ)アクリル酸エステル(B1)成分としてのポリエチレングリコールジメタルリレート(PEGDM)と、過酸化物C1と、希釈剤成分としてのアセチルトリブチルクエン酸とを、質量比1/2/5で配合したものとした。この溶液を、液体定量ポンプにて、表1に示すような条件で注入した。混練機からの吐出量は20kg/hr、スクリューの回転数は150rpmの条件で製造した。得られた組成物を乾燥して、その物性を試験した。その結果を表1に示す。
【表1】

次に、発泡試験を行った。この発泡試験に際しては、発泡剤として液化炭酸ガスを用い、連続押し出し発泡シート化装置(二軸混練機PCM−45(池貝社製)、サークルダイのリップ巾0.7mm、ダイ孔径65mm)を用い、押し出し温度200℃、冷却ゾーン温度150℃、ダイ温度160℃、吐出量20kg/hrとして、炭酸ガス濃度を変更しながら最大発泡倍率になる条件でシート化を行った。その結果も表1に示す。
実施例2〜15、比較例1〜5
生分解性ポリエステル樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル(B1)、グリシジルエーテル(B2)及び過酸化物(C)をそれぞれ表1に示す種類と量に変えた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、組成物を得た。また、実施例1と同様に発泡試験を行った。この発泡試験に際しては、実施例10〜14における冷却ゾーン温度とダイ温度とは、実施例1のそれらよりも20℃低い温度を適用した。得られた組成物の物性と、発泡試験の結果とを表1に示す。
実施例2、6、7、11、15及び比較例1、2、5で得られた生分解性ポリエステル樹脂組成物についての、射出成形性、ブロー成形性の評価結果を、表1に示す。表1には、生分解性の評価結果もあわせて示す。
表1から明らかなように、実施例1〜9、15の組成物は、生分解性ポリエステル樹脂(A)のほかに、架橋剤としての(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)を含有していたため、曲げ弾性率に優れたものであった。また押出発泡体は、独立気泡で細かな気泡径を有し、またゲル化指数2が低く大きなゲル粒子がほとんど存在しなかったために美観を有するものであった。実施例10〜14のものは、生分解性ポリエステル樹脂を変更しても実用的な曲げ弾性率を持ち、独立気泡で細かな気泡径を有し、しかもゲル化指数2が低く大きなゲル粒子がほとんど存在しなかったために美観を有するものであった。中でも、実施例11〜14のものは、曲げ弾性率が小さく、独立気泡で細かな気泡径を有し、またゲル化指数2が低く大きなゲル粒子がほとんど存在しない柔軟な発泡体であった。
実施例1〜15の樹脂組成物は、結晶化速度指数が低く、つまり結晶化速度が速く、射出成形法、ブロー成形法のいずれにおいても良好な成形体を得ることが出来た。
比較例1、3,5のものは、架橋剤としての、(メタ)アクリル酸エステル(B1)もグリシジルエーテル(B2)も含有していないため、溶融粘度が向上せず、曲げ弾性率を代表とする機械的強度の改善が図れず、歪み硬化係数も低いものであった。これらの樹脂を発泡体に加工しようとしたが、満足な発泡体を得ることができなかった。
比較例2のものは、過酸化物(C)を用いなかったため、曲げ弾性率を代表とする機械的強度の改善が図れず、歪み硬化係数も低いものであった。この樹脂を発泡体に加工しようとしたが、満足な発泡体を得ることができなかった。
実施例16〜19、比較例6〜8
実施例1においては混練部のスクリュー構成及びスクリュー回転数は上述の通りであり、これを表2に再掲する。
これに対し、実施例16〜19、比較例6〜8では、混練部のスクリュー構成及びスクリュー回転数を表2に示すように変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。得られた組成物の物性と、この組成物を用いて各種成形を行ったときの結果と、生分解性とを表2に示す。
【表2】

実施例16〜19においては、混純部のスクリュー構成が、正リードニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク等のニーディングディスクと、逆リードスクリューと、正リードスクリューとを組み合わせて用いていること、及びスクリュー回転が高いことにより、良好な混練・分散が行われて架橋反応が高まった。これにより、実施例1と同様に、溶融粘度、歪み硬化係数が高く且つ結晶化速度指数の低い樹脂組成物を得た。これらの樹脂組成物は、大きなゲルは殆ど見られなく、ゲルが極めて小さい状態で分散していた。また、曲げ弾性率を代表とする機械的強度の改善を図ることが出来た。
発泡成形体は、独立気泡で細かな気泡径を有し、美観を有するものであった。また射出成形法、ブロー成形法のいずれにおいても良好な成形体を得ることが出来た。
比較例6においては、ニーディングディスクの数が少なかったため、樹脂組成物に比較的大きなゲルが存在し、混練・分散が均一になされていないことが分かった。発泡成形を行ったところ、成形体の外観を阻害するようなゲルが目立った。射出成形およびブロー成形ついては評価を行わなかった。
比較例7においては、比較例6と同様にニーディングディスクの数が少なかったため、スクリュー回転が高いにもかかわらず、樹脂組成物に比較的大きなゲルが存在し、混練・分散が均一になされていないことが分かった。発泡成形を行ったところ、成形体の外観を阻害するようなゲルが目立った。これらの樹脂組成物を用いて、射出成形およびブロー成形について評価したところ、射出成形サイクルは長く、射出成形外観も一部に不均一な箇所があり、ブロー成形性も余り良くなかった。
比較例8においては、混練部のスクリュー構成を強混練分散タイプに変更したが、スクリューの回転数を余りにも高くしたため、樹脂の発熱とシェアーにより逆に大幅な粘度低下を引き起こした。従って成形体を得ることができず、その評価ができなかった。
実施例20
実施例1で製造した生分解性ポリエステル樹脂組成物を原料として、タンデム型押出発泡装置(EXT−1=50mmφ、EXT−2=50mmφの単軸スクリュータイプ、ダイス1.5mmφ×28Hls)を用い、溶融温度200℃、EXT−2の温度150℃、ダイス温度135℃、吐出量7.5kg/hrの条件下で、発泡剤としてブタンガスを10%注入混練して、網目状発泡体を得た。気泡形態は連続気泡によるものであるが、発泡倍率は36倍であり、網目状糸条体の表面は均一で極めて美しい外観を有していた。
実施例21
実施例13の生分解性ポリエステル樹脂組成物を原料として、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド系熱分解型発泡剤(永和化成社製ビニホールAC#3)を1.5質量%になるようにドライブレンドして、発泡試験を行った。すなわち、単軸型スクリュー55mm径のTダイ試験機(スルーザー社型スタティツクミキサー3.5段併設、スリット長500mm、スリット巾1.2mm)を用い、溶融温度210℃、Tダイ温度160℃、スクリュー回転数16rpm、引き取り速度3m/分で製膜した。製膜時の発泡状態は、独立気泡で、かつ、均一な発泡倍率5.5倍のシートであった。大きなゲルは全くなく、極めて美観を有するシートであった。
実施例22
実施例2の生分解性樹脂組成物を、単軸型溶融押出装置(30mmφEXT)で200℃で溶融し、1mm径の糸条として引き取り、1mm長にカットして粒子を作製した。この粒子を一旦乾燥した後、発泡剤としてブタンガスを用い、バッチ発泡試験(防爆型耐圧容器を用い、130℃の温度で、10MPaでブタンガスを含浸した後、常圧に戻す)を行った。得られた発泡粒子は極めて均一であり、発泡倍率は45倍で、独立気泡から構成されているものであった。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリエステル樹脂組成物であって、脂肪族ポリエステル(A)100質量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)を0.01〜5質量部を含有する熱可塑性重合体にて構成され、ゲル化指数1が0.1%以上でかつゲル化指数2が0.5%以下である。
【請求項2】
請求項1の生分解性ポリエステル樹脂組成物であって、脂肪族ポリエステル(A)がポリ乳酸系重合体である。
【請求項3】
請求項1の生分解性ポリエステル樹脂組成物であって、溶融粘度がメルトフローレート値で0.2〜10g/10分である。
【請求項4】
生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、脂肪族ポリエステル(A)と、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)と、有機過酸化物(C)とを溶融混練することで、脂肪族ポリエステル(A)100質量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)を0.01〜5質量部を含有する熱可塑性重合体にて構成され、ゲル化指数1が0.1%以上でかつゲル化指数2が0.5%以下である生分解性ポリエステル樹脂組成物を得る。
【請求項5】
請求項4の製造方法であって、脂肪族ポリエステル(A)を溶融混練させ、この脂肪族ポリエステル(A)の溶融混練中に、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)と、有機過酸化物(C)との溶解液または分散液を注入して撹拌混練する。
【請求項6】
請求項4の製造方法であって、脂肪族ポリエステル(A)と有機過酸化物(C)とを溶融混練させ、この脂肪族ポリエステル(A)と有機過酸化物(C)との溶融混練中に、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)の溶解液または分散液を注入して撹拌混練する。
【請求項7】
請求項5または6の製造方法であって、混練機を使用し、この混練機における脂肪族ポリエステル(A)が溶融した後の位置に圧力低下領域を形成して、この圧力低下領域にて注入を行い、前記混練機における前記注入を行う位置及び/又はこの位置よりも溶融樹脂の進行方向の流れ沿った下流側において、最終的に得られる生分解性ポリエステル樹脂組成物のゲル化指数1が0.1%以上でかつゲル化指数2が0.5%以下となるように、(メタ)アクリル酸エステル(B1)及び/又はグリシジルエーテル(B2)を撹拌混練する。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかの生分解性ポリエステル樹脂組成物を発泡成形して得られる生分解性樹脂発泡体。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれの生分解性ポリエステル樹脂組成物を押出成形して得られる生分解性樹脂成形体。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれかの生分解性ポリエステル樹脂組成物を射出成形して得られる生分解性樹脂成形体。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれかの生分解性ポリエステル樹脂組成物をブロー成形して得られる生分解性樹脂成形体。

【国際公開番号】WO2005/085346
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510575(P2006−510575)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002758
【国際出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】