説明

生分解性ポリマー系発泡延伸フィルムおよび積層フィルム

【課題】生分解性フィルムの原料であるポリエステルは一般に比重が大きく、従来の原料であるポリオレフィンのフィルムから比較すると、重量が大きくなる分必ずしも環境負荷低減に繋がらない面もある。そこでポリオレフィンのフィルムレベルまで軽量化され、かつ実用的なフィルム物性を有するポリ乳酸などの生分解性ポリマーからなる延伸フィルムを提供する。
【解決手段】ポリ乳酸などの生分解性ポリマーに発泡剤を押出機内で溶融混練しダイスから押出、冷却することで空間率2〜45%、空間径0.01〜1μのポリ乳酸などの生分解性ポリマー発泡シートを成形した後に、延伸フィルムを成形する。また酸化チタンを配合することで白色の発色を更に大きくし、合成紙用途に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸等の生分解性ポリマーからなる軽量性および靭性に優れた発泡延伸フィルムおよびその積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等の生分解性ポリマーから成形したフィルムは、環境にやさしい素材として知られている。しかし、これら生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸は一般に比重が大きいため、その延伸フィルムは従来の原料であるポリオレフィンのフィルムに比べ比重が大きく、その改良が求められていた。
また、ポリ乳酸延伸フィルムの機械的強度、耐久性、厚み精度を改良する方法としてポリ乳酸に無機充填剤を配合して延伸する方法がある(たとえば、特許文献1参照)。しかし無機物の配合や延伸だけでは充分な軽量化を図るまでには至っていない。
一方、ポリ乳酸等の植物資源由来の樹脂成形品の軽量性及び耐熱性を向上させるために発泡体とする方法がある(たとえば、特許文献2参照)しかしポリ乳酸を単に発泡して得られるシート及びフィルムは脆く靭性に劣り、充分な軽量化がされるまでには至っていない。
【特許文献1】特許第3380407号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2005−60689(請求項1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、軽量性および靱性に優れたポリ乳酸などの生分解性ポリマーからなる発泡延伸フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、生分解性ポリマーと発泡剤からなる組成物を発泡成形して得られるシートを、延伸してなる空間率が20〜75%であることを特徴とする延伸フィルムに関する。
さらに本発明は、ポリ乳酸などの生分解性ポリマーと発泡剤からなる組成物を発泡成形で得られる空間率が2〜45%、空間径が0.01〜5ミクロンメータ(μm)のシートを、延伸して得られる空間率が20〜75%の延伸フィルムに関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、生分解性ポリマーからなる軽量かつ靱性のある延伸フィルムを得ることができ、包装材、合成紙、フィルターなどの種々の用途に好適な延伸フィルムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の延伸フィルムは、ポリ乳酸などの生分解性ポリマーと発泡剤からなる組成物を発泡成形して得られるシートを、延伸して得られる空間率が20〜75%の延伸フィルムである。
本発明において、原料として用いる組成物には、さらに平均粒径が0.1から1ミクロンメータ(μm)の無機充填剤、中でも酸化チタンを3〜20質量%含有することが望ましい。シートの成形は、一般にこのような組成物を溶融しダイスから押出し、シート状に成形することにより行われる。得られたシートは、一般に厚さ15〜5000ミクロンメータ(μm)、好ましくは300〜3000ミクロンメータ(μm)である。
次にシートは、一軸方向に又は二軸方向に、それぞれ1.3〜5倍に延伸処理される。二軸方向に延伸する場合は、2.5〜3.5倍(面積比では6.3〜12.3倍)に延伸処理することが望ましい。
【0007】
このように延伸されたフィルムは、空間率が20〜75%であり、空間径が0.01〜5ミクロンメータ(μm)の範囲内にあり、軽量性と靱性に優れたフィルムとなる。延伸フィルムは、一般に平均厚みが30〜2000ミクロンメータ(μm)であり、密度は一般に0.60〜1.00(g/cm)である。
【0008】
本発明の延伸フィルムは、表面平滑性の向上及び溶断シール強度の向上、ラミ強度の向上、低温シール性の付与のため、例えばその片面または両面に発泡剤が含まれてなく、空間率が2%未満であることを特徴とする生分解性ポリマーからなる被覆層を積層して積層フィルムとして用いることが望ましい。
被覆層の空間率が2%以上であると溶断シール強度の向上、ラミ強度の向上、低温シール性付与の効果が損なわれるおそれがある。
また被覆層には発泡剤が含まれないことが望ましく、被覆層の空間率は0%であることが好ましい。
尚、被覆層面の表面粗さ(SRa)は一般に0.0〜0.5ミクロンメータ(μm)である。
以下に本発明をさらに説明する。
【0009】
生分解性ポリマー
本発明に用いられる生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、カプロラクトン―ブチレンサクシレート、ポリブチレンアジペート・テレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペートサクシネート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレートなどの種々の生分解性のポリマーから成形される。なかでもポリ乳酸が好適である
【0010】
ポリ乳酸
本発明に用いられるポリ乳酸には、主にD−乳酸からなるポリマー、主にL−乳酸からなるポリマー、ポリ乳酸共重合体などがある。
主にL−乳酸からなりポリマーは、D−乳酸若が6質量%未満、好ましくは3質量%未満で、融点が150〜170℃、好ましくは160〜170℃の範囲のものである。D−乳酸の含有量が6質量%以上のものは延伸成形性が劣るおそれがある。
主にD−乳酸からなるポリマーには、L−乳酸が6質量%未満、好ましくは3質量%未満で、融点が150〜170℃、好ましくは160〜170℃の範囲のものである。L−乳酸の含有量が6質量%以上のものは延伸成形性が劣るおそれがある。
なお、ポリ乳酸におけるD−乳酸含有量は、クロムバック社製ガスクロマトグラフCP CYCLODEX B 236Mを用いて測定した値である。
さらに、ポリ乳酸共重合体としては、D−乳酸若しくはL−乳酸以外に、乳酸と共重合可能なコモノマーとしては、例えば3−ヒドロキシブチレート、カプロラクトン、グリコール酸などを共重合したものが例示される。
ポリ乳酸の重量平均分子量はフィルム成形能がある限り特に限定はされないが、MFR(ASTM D−1238による、荷重2160g、温度190℃)が、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜10g/10分のものが使用される。
これらのポリ乳酸の重合法としては、縮合重合、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮合重合ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
【0011】
発泡剤
本発明で用いられる発泡剤としては、発泡体を得るために使用できるものであれば、いずれでもよく、化学発泡剤、物理発泡剤などを用いることができる。
化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロジニトリル、アゾジカルボン酸バリウムなどのアゾ化合物、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジドなどのヒドラジド化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどのニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミドなどのヒドラゾ化合物、5−フェニルテトラゾール、5−アミノテトラゾール、アゾビステトラゾール系、ビステトラゾール系などのテトラゾール化合物、ヒドラゾジカルボン酸エステル、アゾジカルボン酸エステル、クエン酸エステルなどのエステル化合物、イソシアネート化合物、重炭酸ソーダ、炭酸ソーダなどを挙げることができ、容易に使用できるという点から、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロジニトリル、アゾジカルボン酸バリウムなどのアゾ化合物、5−フェニルテトラゾール、5−アミノテトラゾール、アゾビステトラゾール系、ビステトラゾール系などのテトラゾール化合物、イソシアネート化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロジニトリル、アゾジカルボン酸バリウムなどのアゾ化合物がより好ましく、アゾジカルボンアミドがさらに好ましい。
【0012】
物理発泡剤としては、エタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレン、石油エーテル、塩化メチル、モノクロルトリフルオロメタン、ジクロルジフルオロメタン、ジクロルテトラフルオロエタン、水、空気、炭酸ガス、窒素ガスなどを挙げることができる。特に炭酸ガスはポリ乳酸に溶解することが分かっており、発泡の安定性、空間径の微細化には好ましい。
上記発泡剤の添加量は、各発泡剤からの気体発生量及び発泡時の圧力により適宜決めることができる。発泡剤の添加方法はポリ乳酸などの生分解性ポリマーに配合し押出機に投入できるように高濃度でポリ乳酸などの生分解性ポリマーベースのマスターバッチとして用いるのが好ましい。
また、エタン、ブタン、ペンタン、エチレン、プロピレン、空気、炭酸ガス、窒素ガス等の常温で気体のものはコンプレッサーを用いて押出機にガス状で供給し、ヘキサン、石油エーテル、水等の常温で液状のものは液注ポンプで供給することも行われる。
発泡の挙動を安定させ、良好な発泡倍率、発泡体密度、気泡サイズを有する発泡体を得るために発泡助剤として、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸アルミニウムなどの脂肪族塩、パラフィン、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、カオリンなどを原料組成物に配合しても良い。またカルボキシル基反応性末端封鎖剤を配合してもよい。
【0013】
無機充填剤
本発明で用いられる無機充填剤には、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、パーライト、ハイドロタルサイト、炭酸マグネシウム、カオリン、マイカ、合成マイカ、酸化アルミニウム、ゼオライト、クレー、ガラスビーズなどが挙げられる。これらの中では、酸化チタンが特に好ましい。酸化チタンを用いると、得られるフィルムの白度が向上する。
また、これら無機充填剤と共に、蛍光増白材、有機滑剤などを併用してもよい。これら有機機滑剤として、例えば、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィンなどの脂肪族炭化水素系滑剤、ステアリン酸、ラウリル酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油などの脂肪酸系滑剤などが挙げられる。
【0014】
酸化チタン
酸化チタンは、その結晶形からアナタース型、ルチル型、ブルカイト型に分類されるが、いずれも使用することができその平均粒径は0.1〜1ミクロンメータ(μm)であることが好ましい。さらに好ましくは0.15〜0.5ミクロンメータ(μm)である。また、ポリ乳酸への分散性を工場させるために、表面をアルミナ、シリカ、酸化亜鉛等の酸化物で被覆したり、脂肪族ポリオール等で表面処理を施したものを用いることができる。市販品として、タイペーク〔石原産業(株)製、商品名〕、タイトン〔堺化学工業(株)製、商品名〕等が挙げられる。
ポリ乳酸などの生分解性ポリマーに予め酸化チタンを溶融混練する際の酸化チタンの量は3質量%以上、20質量%以下が好ましく、さらに好ましくは5質量%以上、15質量%以下である。酸化チタンの量は3質量%未満では得られる延伸フィルムの白色発色が不十分で隠蔽性に劣るおそれがあり、20質量%より大きいと延伸性及び延伸フィルム靭性を損なう虞がある。 また、酸化チタンの平均粒径は0.1ミクロンメータ(μm)以上、1ミクロンメータ(μm)以下が好ましい、さらに好ましくは0.15ミクロンメータ(μm)以上、0.5ミクロンメータ(μm)以下である。酸化チタンの平均粒径は0.1ミクロンメータ(μm)未満ではハンドリングしづらくなる傾向があり、混練時に不均一となる場合がある。1ミクロンメータ(μm)より大きいと得られる延伸フィルムの白色発色が不十分で隠蔽性が不十分となる傾向がある。
ポリ乳酸などの生分解性ポリマーと酸化チタン混練物は夫々上記範囲でヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合する方法、混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法等により得られるが、発泡剤と同じく高濃度でポリ乳酸ベースのマスターバッチとして用いても良い。
【0015】
シート
本発明に係るシートは、ポリ乳酸などの生分解性ポリマーと発泡剤からなる組成物を溶融混練しキャスト成形して得られるシートである。その空間率は2%以上、45%以下であることが好ましい。空間率が2%未満では得られる延伸フィルムの軽量化が不十分となるおそれがあり、空間率が45%より大きいと延伸フィルム内の空間率が大きくなり過ぎて延伸フィルムのフィルム物性が不十分となるおそれがある。
また発泡による空間径は0.01ミクロンメータ(μm)以上、5ミクロンメータ(μm)以下、特に1ミクロンメータ(μm)以下が好ましい。0.01ミクロンメータ(μm)未満では実質的に空間を形成せず、5ミクロンメータ(μm)より大きいとフィルムの外観を損ない、また空間と空間の距離が近いため延伸フィルムの強度が低下するおそれがある。
シートは、一般に厚さ15〜5000ミクロンメータ(μm)、好ましくは30〜1500ミクロンメータ(μm)であり、さらに厚みが150から1000ミクロンメータ(μm)が特に好ましい。15ミクロンメータ(μm)未満では延伸処理後のフィルムの厚みが10ミクロンメータ(μm)以下となりフィルム物性に劣るおそれがあり、また5000ミクロンメータ(μm)より厚くなると安定して延伸できないおそれがある。
シートは溶融したポリ乳酸などの生分解性ポリマーがダイスよりシート状で出たところで発泡しそのまま冷却ロールで冷却することで得られるが、延伸フィルムの表面性状から冷却ロールは鏡面仕上げのものが好ましい。また冷却ロールは30℃以下の温度であり、溶融シートを非晶状態のまま固化できることが、延伸フィルム外観を良くするためには好ましい。また静電ピンニング等の方法で溶融樹脂を冷却ロールに押し当てても良い。
本発明のシートをなす組成物には、予め組成物を製造する際に、または製膜時に直接押出し機に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0016】
延伸フィルム
本発明の延伸フィルムは、前記シートを少なくとも1軸方向に1.3〜5倍、好ましくは2.5〜3.5倍に延伸して得られる延伸フィルムであり、延伸により発泡の空間径が延伸方向に大きくなるので延伸フィルムの軽量化が進み、また隠蔽性が向上する、更に延伸により配向することでフィルムの靭性が得られる。
延伸倍率が1.3倍未満では発泡の空間径が大きくならないので軽量化の効果が十分でなく、一方延伸による配向も十分でないのでフィルムの靭性が得られないおそれがある。
本発明の延伸フィルムは、公知の延伸方法により延伸される。例えば、二軸延伸では、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などがある。
二軸延伸の条件は、ポリ乳酸の場合、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を60〜90℃、延伸倍率を2〜4倍の範囲、横延伸温度を60〜90℃、延伸倍率を2〜4倍の範囲にすればよい。また、同時二軸延伸法では、延伸温度を60〜90℃、延伸倍率を2〜4倍(面倍率で4〜16倍)の範囲にすればよい。
二軸延伸の後は二軸延伸フィルムの用途に応じて種々条件でヒートセット(熱処理)を行うことにより、得られる二軸延伸フィルムの熱収縮率を任意の範囲、例えば100℃、15分の条件下における縦方向の熱収縮率を0.5〜1.5%、横方向の熱収縮率を1.0〜2.0%の範囲にすることができる。
【0017】
熱収縮フィルムを得るためにはヒートセットを行わないか、あるいは延伸温度近辺またはそれ以下の温度に置くことで、例えば100℃、15分の条件下における縦方向の熱収縮率を20〜70%、横方向の熱収縮率を20〜70%の範囲にすることができる。
さらに、延伸フィルムを得た後、熱処理を行わないか、あるいは熱処理の条件を種々選択することにより、熱収縮性を備えた延伸フィルムあるいは熱収縮性を抑えた延伸フィルムを得ることができる。
本発明で得られるポリ乳酸などの生分解性ポリマーからなる延伸フィルムは平均厚みが30〜2000ミクロンメータ(μm)であり、密度は一般に0.60〜1.00(g/cm)である。
【0018】
合成紙
本発明の延伸フィルムは、発泡による微細な空間がさらに延伸処理されたフィルムである。この延伸フィルムは、ペーパーライクな軽量性、空孔が存在することによる鉛筆筆記性、耐水性を有しており、合成紙に適している。
中でも、無機充填剤として酸化チタンを配合することにより、白色の発色性、隠蔽性に優れており合成紙に好適である。
これにより従来の紙に比べて耐水性、耐摩耗性はもちろん、ポリ乳酸などの生分解性ポリマーを原料とすることから、生分解性、植物由来性も有するインクジェットプリンター用紙、レーザープリンター用紙としても使用できる。
【0019】
溶断シール袋
本発明の延伸フィルムは溶断シール強度に優れているため、溶断シール袋として各種、主要な用途で用いることができきる。
特にその片面または両面に、発泡剤が含まれてなく、空間容積率が2%未満であることを特徴とする生分解性ポリマーからなる被覆層を積層した積層フィルムとして用いることで溶断シール強度の向上で溶断シール強度の向上が図れる。
【0020】
本発明の積層二軸延伸フィルムは溶断シール強度に優れているため、印刷後溶断シール袋として各種、主要な用途で用いることが出来る。また、軽量性、隠蔽性に優れることから冷凍食品及びチョコレート、ガム、キャンデー等の菓子類、化粧品等の嗜好品、カセットテープ、ビデオテープ、CD、CDR、DVD、ゲームソフト等の記録材料、およびそれらの集積包装材料等の、箱物包装の包装用フィルムとして好適に使用できる。
また、本発明の延伸フィルムは、前記用途に限らず、例えば、ラーメン、うどん、そば、焼きそば等の即席カップ麺食品、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の乳酸菌飲料のような飲料デザート類カップ食品の個別あるいは複数個等の包装用フィルムに限らず、エアゾール製品、インテリア製品、CD類、磁気テープ製品の一般シュリンク包装、缶・瓶詰飲料、調味料などの集積シュリンクパックや、プラスチック容器、ガラス瓶などの胴張りシュリンクラベル、ワイン、ウイスキー等の瓶のキャップシール等、種々の包装用フィルム等に用いることができる。
尚、発泡により空間を有するため通気性を有する野菜、果実包装に適している。
【0021】
(実施例)
次に実施例により本発明をさらに説明する。
実施例及び比較例等で使用した原料は次の通りである。
(1)ポリ乳酸(PLAC)
D−乳酸含有量:1.9質量%、MFR(温度190℃、荷重2160g):6.7g/10分、融点(Tm):168.0℃、Tg:59.8℃、密度:1.34g/cm
(2)発泡剤
日東化工株式会社製 ファインブローV−20N
アゾジカルボンアミド含有マスターバッチ、発泡剤濃度:20%
(3)酸化チタン
石原産業株式会社製 タイペークPF739
比表面積:10(m/g)、平均粒径:0.21(μm)、比重:4.2
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
【0022】
(1)光学特性
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)、平行光線透過率(PT:%)及びグロス(%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(2)表面粗さ(SRa)
株式会社小坂研究所製三次元表面粗さ測定器SE−30Kを用いてフィルム表面の中心表面粗さ(SRa)を求めた。
(3)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、降伏点及び破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
(4)空間率の計算
試験片の大きさと厚み、重量(g)を測定し、重量/体積(cm)から密度(g/cm)を算出した。
更に下記のような計算を行い、空間率を計算した。
空間率(%)=100×(1―測定した密度/ポリ乳酸の密度(1.34g/cm))
【0023】
[実施例1]
<延伸用シートの製造>
PLAC:発泡剤を99.0:1.0(質量%)で計量し、一軸押出機を用いて、T−ダイより200℃で押出した後に30℃のキャスティングロールで急冷し、厚さ429ミクロンメータ(μm)の延伸用シートを得た。
<延伸フィルムの製造>
このシートをパンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(東洋精機製作所、ヘビー型)を用いて80℃×30秒のホットエアーで予熱した後、5m/分の速度で縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、延伸後直ちに冷却し、厚さ53ミクロンメータ(μm)の二軸延伸フィルムを得た。
【0024】
[実施例2]
実施例1で用いた原料に代えてPLACと酸化チタンを予め一軸押出機を用いて200℃で混練したものと、発泡剤をPLAC:酸化チタン:発泡剤が89.0:10.0:1.0(質量%)となるように計量とした以外は実施例1と同様に行った。
[比較例1]
実施例1で用いた原料に代えてポリ乳酸100%をそのまま一軸押出機でT−ダイより押出した以外は実施例1と同様に行った。
[比較例2]
実施例1で用いた原料に代えてPLAC:発泡剤を99.5:0.5(質量%)を一軸押出機でT−ダイより押出した以外は実施例1と同様に行った。
[参考例1]
実施例1で得られたシートを延伸せずにそのまま評価した以外は実施例1と同様に行った。
以上のそれぞれの評価結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

表1から明らかなようにポリ乳酸99.0質量%に発泡剤1.0質量%を配合して空間率3.0%(密度1.30g/cm)のシートを用いた実施例1の延伸フィルムはポリ乳酸単体からなる比較例1、発泡剤の配合量が0.5質量%で空間率1.5%(密度1.32g/cm)のシートを用いた比較例2の延伸フィルムに比べて空間率32.1%(密度0.91g/cm)と大幅に軽量化が出来ており、かつ破断伸度はMD、TDともに80%以上と十分な靭性を有している。
また、実施例1の未延伸シートの物性を参考例1に示す。表面粗さが0.10ミクロンメータ(μm)であったものが、実施例1で0.04ミクロンメータ(μm)になっており、延伸により表面凹凸が改善していることが明らかである。
【0026】
また、参考例1では破断伸度がMD、TDともに3%と小さく、延伸なしでは靭性がないことが分かる。
さらに、実施例2では酸化チタンを10質量%配合しているが、その結果ヘイズは13%が99%以上となり、隠蔽性が大幅に向上し、合成紙としての特性に優れることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の延伸フィルムは、汎用のポリオレフィンフィルムレベルまで軽量化され、かつ実用的なフィルム物性を有しており、さらにポリ乳酸などの生分解性ポリマーからなるので、包装材などの種々の用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマーと発泡剤からなる組成物を発泡成形して得られるシートを、延伸して得られる空間率が20〜75%である延伸フィルム。
【請求項2】
生分解性ポリマーと発泡剤からなる組成物を発泡成形して得られる空間率が2〜45%、空間径が0.01〜5ミクロンメータ(μm)のシートを、延伸して得られる空間率が20〜75%であることを特徴とする延伸フィルム。
【請求項3】
生分解性ポリマーがポリ乳酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の延伸フィルム。
【請求項4】
組成物が、平均粒径が0.1から1ミクロンメータ(μm)の無機充填剤を3〜20質量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項5】
シートが、一軸方向に又は二軸方向に、それぞれ1.3〜5倍延伸処理されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項6】
平均厚みが0.03〜2mmである請求項1〜5のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項7】
密度が0.60〜1.00(g/cm)である請求項1〜6のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかのフィルムの片面または両面に発泡剤が含まれてなく、空間率が2%未満である生分解性ポリマーからなる被覆層が積層された積層フィルム。
【請求項9】
被覆層面の表面粗さ(SRa)0.0〜0.5ミクロンメータ(μm)であることを特徴とする請求項8記載の積層フィルム。
【請求項10】
発泡剤が炭酸ガス、水、窒素ガス等の物理発泡剤であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
発泡剤がアゾ化合物、ヒドラジド化合物等の化学発泡剤であることを特徴とする請求項1記載のフィルム。

【公開番号】特開2006−328225(P2006−328225A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153902(P2005−153902)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】