説明

生物学的排水処理装置及び生物学的排水処理方法

【課題】油脂含有排水から分離した油脂を十分に分解することができる生物学的排水処理装置及び生物学的排水処理方法を提供する。
【解決手段】油脂濃縮分離装置1により、油脂含有排水を低濃度油脂排水と高濃度油脂排水とに分離し、低濃度油脂排水をメタン発酵装置2に導入し、微生物汚泥を用いてメタン発酵処理を行い、高濃度油脂排水を油脂分解装置3に導入し、攪拌装置11によって攪拌し、油脂状態取得手段10によって高濃度油脂排水中の油脂の状態を取得し、油脂の状態に応じ攪拌装置11の攪拌状態を変化させることで、油脂の塊の形成を抑制し、微生物汚泥を用いて高濃度油脂排水中の油脂を確実に分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂含有排水中の有機物を分解する生物学的排水処理装置及び生物学的排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排水中の有機物を分解する生物学的排水処理装置としては、排水のメタン発酵処理を行うものが知られている。このような生物学的排水処理装置では、排水の油脂濃度が高い場合にメタン発酵処理が阻害される場合があった。即ち、排水中の油脂濃度が高くなると、メタン菌が油脂と共に浮上し、メタン発酵処理槽外へ流出してしまう場合があった。また、メタン菌が油脂に覆われ、有機物を分解するメタン菌の能力が損なわれる場合があった。このような問題を解決する生物学的排水処理装置として、油脂含有排水を導入し、低濃度油脂排水及び高濃度油脂排水に分離する油脂濃縮分離装置と、分離された低濃度油脂排水を導入し、微生物汚泥を用いて低濃度油脂排水のメタン発酵処理を行うメタン発酵装置と、分離された高濃度油脂排水を導入し、微生物汚泥を用いて高濃度油脂排水中の油脂を分解する油脂分解装置と、油脂分解装置に導入された高濃度油脂排水を攪拌する攪拌装置とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−270862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置では、高濃度油脂排水中に油脂の塊が形成され、油脂分解装置内の微生物汚泥が油脂に作用し難くなり、油脂分解装置内の油脂が十分に分解されない場合があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、油脂含有排水から分離した油脂を十分に分解することができる生物学的排水処理装置及び生物学的排水処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による生物学的排水処理装置は、油脂含有排水中の有機物を分解する生物学的排水処理装置において、油脂含有排水を導入し、低濃度油脂排水と高濃度油脂排水とに分離する油脂濃縮分離装置と、低濃度油脂排水を導入し、微生物汚泥を用いて低濃度油脂排水のメタン発酵処理を行うメタン発酵装置と、高濃度油脂排水を導入し、微生物汚泥を用いて高濃度油脂排水中の油脂を分解する油脂分解装置と、を備え、油脂分解装置は、油脂分解装置に導入された高濃度油脂排水を攪拌する攪拌装置と、高濃度油脂排水中の油脂の状態を取得する油脂状態取得手段と、油脂状態取得手段によって取得された油脂の状態に応じ、攪拌装置の攪拌状態を変化させる制御装置と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明による生物学的排水処理方法は、油脂含有排水中の有機物を分解する生物学的排水処理方法において、油脂含有排水を油脂濃縮分離装置に導入し、低濃度油脂排水と高濃度油脂排水とに分離し、低濃度油脂排水をメタン発酵装置に導入し、微生物汚泥を用いて低濃度油脂排水のメタン発酵処理を行い、高濃度油脂排水を油脂分解装置に導入し、高濃度油脂排水と微生物汚泥とを攪拌装置により攪拌し、高濃度油脂排水中の油脂の状態を取得し、当該取得結果に応じて高濃度油脂排水の攪拌状態を変化させ、高濃度油脂排水中の油脂を分解することを特徴とする。
【0008】
このような生物学的排水処理装置及び生物学的排水処理方法によれば、油脂含有排水は、油脂濃縮分離装置により、低濃度油脂排水と高濃度油脂排水とに分離され、この油脂濃縮分離装置で分離された低濃度油脂排水がメタン発酵装置によってメタン発酵されるため、メタン発酵処理が油脂に阻害されず、低濃度油脂排水中の有機物が確実に分解され且つ十分なメタンガスが回収される。一方、油脂濃縮分離装置で分離された高濃度油脂排水は、油脂分解装置に導入され、攪拌装置によって攪拌されるため、高濃度油脂排水中における油脂の塊の形成が抑制される。このとき、油脂状態取得手段によって取得された油脂の状態に応じ、攪拌装置の攪拌状態が変化させられるため、高濃度油脂排水中における油脂の塊の形成がより確実に抑制される。従って、油脂分解装置内の微生物汚泥が油脂に作用し易くなり、高濃度排水中の油脂が十分に分解される。このようにして、油脂分解装置の処理水の油脂濃度は十分に低くなるため、当該処理水をメタン発酵装置へ送り、油脂に阻害されることなくメタン発酵処理を行うことができる。また、油脂分解装置の処理水中に残っている有機物が少ない場合には、メタン発酵装置の処理水とともにメタン発酵装置の後段に送ることができる。
【0009】
ここで、油脂状態取得手段は、高濃度油脂排水中の油脂の状態として、高濃度油脂排水の油脂濃度を取得することが好ましい。この場合、測定の容易な油脂濃度に基づき、高濃度油脂排水中の油脂の状態が取得されるため、油脂状態取得手段の構成を簡易にすることができる。
【0010】
また、油脂状態取得手段は、高濃度油脂排水中の油脂の状態として、高濃度油脂排水中の油脂粒子の大きさを取得するようにしてもよい。この場合、油脂の塊の形成状態が直接的に測定され、その状態に応じて攪拌装置の攪拌状態が変えられるため、高濃度油脂排水中における塊の形成が一層確実に抑制される。
【0011】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成として、油脂状態取得手段は、油脂分解装置内の高濃度油脂排水の一部を採取するサンプリング部と、サンプリング部により採取された高濃度油脂排水の画像を撮影する撮像部と、撮像部によって撮影された画像に画像処理を施し油脂粒子の大きさを取得する画像処理部と、を有するものが挙げられる。
【0012】
また、油脂分解装置で用いられる微生物汚泥は、リパーゼを生成し且つ脂肪酸を分解する能力を有することが好ましい。この場合、高濃度油脂排水中の油脂が高効率且つ確実に分解される。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、油脂含有排水から分離した油脂を十分に分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生物学的排水処理方法を採用した生物学的排水処理装置の概略構成図である。
【図2】図1中の制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る生物学的排水処理方法を採用した生物学的排水処理装置の概略構成図である。
【図4】図3中の制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による生物学的排水処理方法を採用した生物学的排水処理装置の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
先ず、本発明による生物学的排水処理装置の第1実施形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る生物学的排水処理方法を採用した生物学的排水処理装置100の概略構成図である。
【0017】
生物学的排水処理装置100は、油脂含有排水を導入し、低濃度油脂排水と高濃度油脂排水とに分離する油脂濃縮分離装置1と、低濃度油脂排水のメタン発酵処理を行うメタン発酵装置2と、高濃度油脂排水中の油脂を分解する油脂分解装置3とを備えている。
【0018】
油脂濃縮分離装置1としては、例えば、加圧浮上濃縮装置、常圧浮上濃縮装置、APIオイルトラップ等を用いることができる。
【0019】
メタン発酵装置2は、メタン発酵槽4を有し、油脂濃縮分離装置1で分離された低濃度油脂排水を、ラインL1を介してメタン発酵槽4内に導入する。メタン発酵槽4は、粒状に凝集された微生物(ここではメタン菌)を含む微生物汚泥床5を収容しており、メタン菌は、嫌気的条件下において、被処理水中の有機物を分解してメタンガスを生成する。
【0020】
メタン発酵装置2は、EGSB(Expanded Granular Sludge Bed)反応槽を構成し、メタン発酵槽4内に導入した低濃度油脂排水を高速に上昇させることで、メタン発酵槽4内に高速の上向流を形成する。微生物汚泥床5は、メタン発酵槽4内の上向流により流動して膨張し、低濃度油脂排水に対し高負荷状態を構成する。
【0021】
メタン発酵槽4内の上部には、微生物等の固形物と、メタン発酵槽4内で発生したメタンガス等のガスと、メタン発酵処理された処理水とを分離する気固液分離部6が設けられている。メタン発酵装置2は、気固液分離部6によって分離された処理水をラインL2へ排出し、ガスをラインL3へ排出する。
【0022】
油脂分解装置3は、油脂分解槽7と、撹拌装置11と、ガス供給源B1と、油脂状態取得手段10と、制御装置9とを有し、油脂濃縮分離装置1で分離された高濃度油脂排水を、ラインL5を介して油脂分解槽7内に導入すると共に、ラインL6を介し、ガス供給源B1から油脂分解槽7内に酸素含有ガスを供給する。なお、油脂分解装置3は、油脂分解槽7内に酸素含有ガスを供給せず、嫌気的条件下で油脂を分解するものであってもよい。
【0023】
油脂分解槽7は、リパーゼ生産菌(例えば、アシネトバクター属)及び脂肪酸分解菌(例えば、シュードモナス属、バチルス属)を含む微生物汚泥を収容している。リパーゼ生産菌は、好気的条件下においてリパーゼを生成する。リパーゼは、油脂のエステル結合を分解し、脂肪酸を生成する。脂肪酸分解菌は、好気的条件下において脂肪酸を分解する。なお、油脂分解槽7に収容された微生物汚泥は、リパーゼを生成し、かつ脂肪酸を分解する性質を併せ持つ菌(例えば、バチルス属)を含むものであってもよい。
【0024】
油脂分解槽7内には、複数の多孔板8が高さ方向に並設されており、各多孔板8は、シャフト27を介して駆動装置26に接続され、駆動装置26を作動させることによって上下に往復運動するようになっている。上下に往復運動する各多孔板8は、油脂分解槽7内に導入された高濃度油脂排水と衝突し、油脂分解槽7内の略全域に乱流を形成する。この乱流により、高濃度油脂排水、上記微生物汚泥及び酸素含有ガスが撹拌される。このように、多孔板8、駆動装置26及びシャフト27は、油脂分解装置3に導入された高濃度油脂排水を攪拌する攪拌装置11を構成している。
【0025】
油脂状態取得手段10は、高濃度油脂排水中の油脂の状態として、ラインL5を流れ油脂分解槽7に導入される高濃度油脂排水の油脂濃度及び流入水量を取得する。油脂濃度の取得には、例えば、赤外線センサーや臭気センサー等を用いることができる。
【0026】
制御装置9は、油脂状態取得手段10からの情報に基づいて、撹拌装置11の撹拌状態及びガス供給源B1のガス供給を制御する。すなわち、制御装置9は、油脂状態取得手段10によって取得された油脂の状態に応じ、駆動装置26を制御して多孔板8の往復運動の周期を変化させ、攪拌装置11の攪拌状態を変化させる。また、制御装置9は、油脂状態取得手段10によって取得された油脂の状態に応じ、ガス供給源B1のガス供給量を制御し、油脂分解槽7へのガス供給量を変化させる。
【0027】
そして、油脂分解装置3は、油脂分解槽7内における油脂分解で油脂濃度が低くなった処理水を、ラインL7を介してメタン発酵槽4へ送る。
【0028】
続いて、このように構成された生物学的排水処理装置100の作用について説明する。油脂含有排水は、油脂濃縮分離装置1内に導入され、低濃度油脂排水と高濃度油脂排水とに分離され、油脂濃縮分離装置1で分離された低濃度油脂排水は、メタン発酵装置2のメタン発酵槽4内に導入され、微生物汚泥床5と高効率に向流接触し、高効率にメタン発酵処理される。メタン発酵槽4内を上昇してメタン発酵処理された処理水は、気固液分離部6によってメタンガスや微生物等から分離され、メタン発酵槽4から排出され、気固液分離部6によって分離されたメタンガス等のガスは、メタン発酵槽4外へ排出され、エネルギー資源として回収される。
【0029】
一方、油脂濃縮分離装置1で分離された高濃度油脂排水は、油脂分解装置3の油脂分解槽7内に導入され、油脂分解槽7内の微生物汚泥、及びガス供給源B1から供給された酸素含有ガスと混合される。高濃度油脂排水、微生物汚泥及び酸素含有ガスは、油脂分解槽7内を上下に往復運動する多孔板8との衝突で形成された乱流により、十分に攪拌される。この攪拌により、油脂分解槽7においては、高濃度油脂排水中における油脂の塊の形成が抑制される。
【0030】
ここで、特に本実施形態の特徴をなす制御装置9による撹拌装置11の撹拌状態及びガス供給源B1のガス供給量の制御手順を説明する。図2は、図1中の制御装置9の制御手順を示すフローチャートである。まず、油脂状態取得手段10により、油脂分解槽7に流入する高濃度油脂排水の油脂濃度及び流入水量を取得する(ステップS1,S2)。次に、取得した高濃度油脂排水の油脂濃度及び流入水量に基づき、油脂分解槽7への油脂流入量を演算し(ステップS3)、油脂流入量に変化がないか(実際には、所定値以上の変化がないか)を判定する(ステップS4)。油脂流入量に変化がなければ、多孔板8の往復周期及びガス供給源B1のガス供給量を維持する(ステップS5)。一方、油脂流入量に変化があれば、油脂流入量が減っているかを判定する(ステップS6)。油脂流入量が減っていれば、多孔板8の往復周期及びガス供給源B1のガス供給量を下げ、駆動装置26及びガス供給源B1の消費エネルギーを節約する(ステップS7)。一方、油脂流入量が増えていれば、多孔板8の往復周期を上げ、油脂流入量の増加に伴う油脂の塊の増加を抑制すると共に、ガス供給源B1のガス供給量を上げ、リパーゼ生産菌及び脂肪酸分解菌の好気性反応を加速し、油脂の分解速度を上げる(ステップS8)。制御装置9は、以上の処理を所定の周期で繰り返し行う。
【0031】
このように、攪拌装置11の攪拌状態は、制御装置9により、油脂状態取得手段10によって取得された油脂の状態に応じ変化させられるため、高濃度油脂排水中における油脂の塊の形成がより確実に抑制される。従って、油脂分解装置3内の微生物汚泥が油脂に作用し易くなり、高濃度排水中の油脂が十分に分解される。
【0032】
油脂分解槽7において油脂が分解された処理水は、メタン発酵槽4へ送られる。当該処理水は、油脂の分解によって十分に油脂濃度が低いものになっているため、油脂に阻害されることなくメタン発酵槽4内でメタン発酵処理される。これにより、油脂濃縮分離装置1において分離された低濃度油脂排水のメタン発酵処理で回収されるメタンガスに加え、さらに多くのメタンガスが回収される。
【0033】
このように、本実施形態においては、油脂含有排水から分離した油脂を十分に分解することができる。
【0034】
また、本実施形態においては、油脂状態取得手段10により、高濃度油脂排水中の油脂の状態として、油脂分解槽7に導入される高濃度油脂排水の油脂濃度及び流入水量が取得されており、油脂濃度及び流入水量を既存のセンサ類で容易に測定できるため、油脂状態取得手段10の構成を簡易にすることができる。また、油脂分解槽7に導入される高濃度油脂排水は、油脂分解槽7内の微生物汚泥が混合されていないために油脂濃度を測定し易く、油脂状態取得手段10の構成をより簡易にすることができる。なお、高濃度油脂排水に油脂分解槽7内の微生物汚泥が混合されていても油脂濃度の測定に支障がない場合には、油脂状態取得手段10は、油脂分解槽7内の油脂濃度を取得するものであってもよい。この場合には、油脂分解槽7内の油脂濃度を直接的に取得できるため、油脂分解槽7内への流入水量の変動を考慮せず、油脂濃度のみに基づいて攪拌装置11の攪拌状態を変化させてもよい。
【0035】
また、油脂分解装置3で用いられる微生物汚泥は、リパーゼを生成し且つ脂肪酸を分解する能力を有するため、高濃度油脂排水中の油脂が高効率且つ確実に分解される。
【0036】
また、メタン発酵装置2は、EGSB反応槽を構成しているため、メタン発酵処理を高負荷とすることができ、メタン発酵処理を高効率とすることができる。
【0037】
図3は、本発明の第2実施形態に係る生物学的排水処理方法を採用した生物学的排水処理装置200の概略構成図である。
【0038】
第2実施形態の生物学的排水処理装置200が第1実施形態の生物学的排水処理装置100と違う点は、高濃度油脂排水の油脂濃度及び流入水量を取得する油脂状態取得手段10を、高濃度油脂排水中の油脂粒子の大きさを取得する油脂状態取得手段24に代えた点である。これに伴い制御装置9も制御装置25に代えている。
【0039】
この油脂状態取得手段24は、油脂分解槽7内の高濃度油脂排水の一部を採取するサンプリング部21と、採取された高濃度油脂排水の拡大画像を撮影する撮像部22と、撮影された拡大画像に画像処理を施し油脂粒子の大きさを取得する画像処理部23と、を有する。
【0040】
制御装置25は、油脂状態取得手段24で取得された油脂粒子の大きさに応じ、攪拌装置11の攪拌状態及びガス供給源B1のガス供給量を変化させる。図4は、図3中の制御装置25の制御手順を示すフローチャートである。まず、油脂状態取得手段24により、油脂分解槽7内に導入された高濃度油脂排水中の油脂粒子の大きさを取得する。すなわち、サンプリング部21により、油脂分解槽7内の高濃度油脂排水の一部を採取し(ステップS21)、撮像部22により、採取された高濃度油脂排水の拡大画像を撮影し(ステップS22)、画像処理部23により、撮影された拡大画像に画像処理を施し油脂粒子の大きさを取得する(ステップS23)。次に、油脂粒子の大きさが所定の大きさ(ここでは100μm)以下であるかを判定する(ステップS24)。油脂粒子の大きさが100μm以下であれば、多孔板8の往復周期及びガス供給源B1のガス供給量を所定値よりも小さく設定し、駆動装置26及びガス供給源B1の消費エネルギーを節約する(ステップS25)。一方、粒子の大きさが100μmよりも大きければ、多孔板8の往復周期を所定値よりも大きく設定し、油脂の塊の増加を抑制すると共に、ガス供給源B1のガス供給量を所定値よりも大きく設定し、油脂の分解速度を上げる(ステップS26)。制御装置25は、以上の処理を所定の周期で繰り返し行う。
【0041】
このように、本実施形態においては、油脂状態取得手段24により、高濃度油脂排水中の油脂の状態として、高濃度油脂排水中の油脂粒子の大きさが取得されており、油脂の塊の形成状態が直接的に取得されている。そして、攪拌装置11の攪拌状態は、直接的に取得された油脂の塊の形成状態に応じて変化させられるため、高濃度油脂排水中における塊の形成が一層確実に抑制される。
【0042】
また、油脂分解装置3は、処理水をメタン発酵槽4へ送っているが、処理水の有機物濃度が極めて低い場合には、メタン発酵装置2の処理水と共にメタン発酵装置2の後段へ送るようにしても良い。
【0043】
また、攪拌装置11は、多孔板8、駆動装置26及びシャフト27によって構成されているが、油脂分解槽7に設置された撹拌翼(例えば、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、アンカー翼)及びその動力源によって構成されていてもよい。この場合、多孔板8の往復周期を上げるのに代えて撹拌翼の回転速度を上げ、多孔板8の往復周期を下げるのに代えて撹拌翼の回転速度を下げるのが好ましい。
【0044】
また、メタン発酵槽4は、EGSB反応槽を構成しているが、嫌気性反応によって有機物を分解してメタンガスを発生する反応槽を構成していればよく、例えば、UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)反応槽を構成していてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…油脂濃縮分離装置、2…メタン発酵装置、3…油脂分解装置、9…制御装置、10…油脂状態取得手段、11…攪拌装置、100…生物学的排水処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂含有排水中の有機物を分解する生物学的排水処理装置において、
前記油脂含有排水を導入し、低濃度油脂排水と高濃度油脂排水とに分離する油脂濃縮分離装置と、
前記低濃度油脂排水を導入し、微生物汚泥を用いて前記低濃度油脂排水のメタン発酵処理を行うメタン発酵装置と、
前記高濃度油脂排水を導入し、微生物汚泥を用いて前記高濃度油脂排水中の油脂を分解する油脂分解装置と、を備え、
前記油脂分解装置は、前記油脂分解装置に導入された前記高濃度油脂排水を攪拌する攪拌装置と、前記高濃度油脂排水中の前記油脂の状態を取得する油脂状態取得手段と、前記油脂状態取得手段によって取得された前記油脂の状態に応じ、前記攪拌装置の攪拌状態を変化させる制御装置と、を有することを特徴とする生物学的排水処理装置。
【請求項2】
前記油脂状態取得手段は、前記高濃度油脂排水中の前記油脂の状態として、前記高濃度油脂排水の油脂濃度を取得することを特徴とする請求項1記載の生物学的排水処理装置。
【請求項3】
前記油脂状態取得手段は、前記高濃度油脂排水中の前記油脂の状態として、前記高濃度油脂排水中の油脂粒子の大きさを取得することを特徴とする請求項1記載の生物学的排水処理装置。
【請求項4】
前記油脂状態取得手段は、前記油脂分解装置内の前記高濃度油脂排水の一部を採取するサンプリング部と、前記サンプリング部により採取された前記高濃度油脂排水の画像を撮影する撮像部と、前記撮像部によって撮影された前記画像に画像処理を施し前記油脂粒子の大きさを取得する画像処理部と、を有することを特徴とする請求項3記載の生物学的排水処理装置。
【請求項5】
前記油脂分解装置で用いられる前記微生物汚泥は、リパーゼを生成し且つ脂肪酸を分解する能力を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の生物学的排水処理装置。
【請求項6】
油脂含有排水中の有機物を分解する生物学的排水処理方法において、
前記油脂含有排水を油脂濃縮分離装置に導入し、低濃度油脂排水と高濃度油脂排水とに分離し、
前記低濃度油脂排水をメタン発酵装置に導入し、微生物汚泥を用いて前記低濃度油脂排水のメタン発酵処理を行い、
前記高濃度油脂排水を油脂分解装置に導入し、前記高濃度油脂排水と微生物汚泥とを攪拌装置により攪拌し、前記高濃度油脂排水中の前記油脂の状態を取得し、当該取得結果に応じて前記高濃度油脂排水の攪拌状態を変化させ、前記高濃度油脂排水中の油脂を分解することを特徴とする生物学的排水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−81382(P2012−81382A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227519(P2010−227519)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】