説明

生物学的水処理のシミュレーション方法およびシミュレーション装置

【課題】活性汚泥中に含まれる各種微生物の細菌数の変動、該微生物による一連の分解能などの変動などを反映させ、水処理プロセスの挙動および処理水質をより高い精度でシミュレーションすることを課題とする
【解決手段】活性汚泥と被処理水とを含有した被処理水相を有する生物反応槽中で、該活性汚泥により該被処理水を処理する工程を含む生物学的水処理をシミュレーションするシミュレーション方法であり、該活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与する細菌の種類毎の細菌数を遺伝子解析法により決定し、該細菌の種類毎の細菌数から算出された細菌濃度、および該活性汚泥における処理対象物質の分解速度から求められた活性から算出された活性パラメータと、水処理プロセスの条件成分値と、対象となる生物反応槽の仕様と、生物反応槽の運転条件と、該細菌の種類毎の細菌数とに基づき、活性汚泥モデルにより、処理水質をシミュレーションすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的水処理のシミュレーション方法、およびシミュレーション装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、生物学的水処理に有用な、生物学的水処理のシミュレーション方法、およびシミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、水処理、例えば、下水処理、工場排水処理などにおいて、処理の効率化、処理能力の高度化、水処理に用いられるエネルギーの省エネルギー化、水処理のコストの低コスト化などが進められている。例えば、経験に基づき、種々の条件下でのプロセスの挙動を予測し、水処理施設の運転条件の設定を行なう手法は、種々の条件下でのプロセスの挙動を定量的に予測することが困難であるため、水処理が非効率的であり、エネルギーの浪費、コストの増加をもたらすという欠点がある。このため、経験に基づく種々の条件下でのプロセスの挙動の予測に代えて、細菌群の増殖や死滅などの反応を計算するシミュレーションが導入され、より定量的な予測を行なうことが試みられている(例えば、特許文献1〜4を参照のこと)。
【0003】
前記特許文献1には、循環式硝化脱窒法を用いた処理の反応プロセスに関与する物質の反応モデルマトリックスと、反応速度式、反応速度論定数および各係数値に基づいて処理状態を動力学モデルに基づいて計算し、その結果からプラントの運転を制御するための出力を得る循環式硝化脱窒法の水質シミュレーション装置とが開示されている。また、前記特許文献1に記載の発明では、動力学モデルの対象物質として、溶解性BOD、硝酸性窒素、アンモニア性窒素、BOD資化菌、硝化菌、溶存酸素およびアルカリ度が用いられている。しかしながら、引用文献1に記載の発明では、脱窒能を有する多種類の微生物をまとめて1種類の微生物(BOD資化菌)とし、かつ硝化能を有する微生物についても1種類の微生物(硝化菌)として扱われているため、細菌の種類、細菌数、細菌の分解能力(具体的には、酸化能力および還元能力)、分解過程(具体的には、硝化過程および脱窒過程)で発生する亜硝酸などは、シミュレーションに反映されないという欠点がある。
【0004】
また、前記特許文献2には、下水処理プロセスを構成する単位装置を部品としてモデル化するIAWQ(現「IWA」)活性汚泥モデルNo.2を有し、IAWQ(現「IWA」)活性汚泥モデルNo.2によりモデル成分入力値に基づいて各部品毎にモデル成分出力値を求めるシミュレータと、下水処理プロセスへ流入する流入水の水質をオンラインで計測する計測手段と、計測値とモデル成分入力値を含む相関式を用いた変換手段を有し、計測手段からの計測値を変換手段の相関式を用いてモデル成分入力値に変換する演算手段とを備えた下水処理プロセスシミュレータシステムが開示されている。しかしながら、前記特許文献2に記載の発明は、流入水の水質と処理水質に基づき、反応速度論定数をキャリブレーションするものであるが、同じ処理施設を対象とした場合でも、硝化・脱窒過程の再現性が得られない場合がある。
【0005】
さらに、前記特許文献3には、有機性廃水および活性汚泥の混合液を曝気槽内で曝気し、この曝気槽内の溶存酸素濃度を溶存酸素濃度制御要素の検出値および設定値の偏差に基づいて制御する水処理装置において、処理水質安定時の動力学的定数、炭素系および窒素系の各基質除去速度式、炭素系および窒素系の各菌体増殖速度式、溶存酸素濃度に関連する物質収支式およびプロセス内汚泥量の物質収支式を用いて数値計算によるシミュレーションを実施し、これにより定常状態のプロセス内硝化菌体量または硝化率の経時変化データを得、このデータのうち硝化菌体量または硝化率が安定した値を目標値として出力する第1のシミュレータ部と、前記動力学的定数を環境因子の関数で表して各時点の環境因子に応じた動力学的定数を用いると共に前記目標値を導入して上記の各式を用いて数値計算によるシミュレーションを実施し、これにより各時点の溶存酸素濃度制御要素の最適設定値を求める第2のシミュレータ部とを設けた水処理装置が開示されている。前記引用文献3に記載の発明では、シミュレーションにより、硝化菌体量または硝化率の経時変化データが求められ、該経時変化データのうち硝化菌体量または硝化率が安定した値が目標値として設定され、該目標値と動力学的定数の時系列データにより最適な溶存酸素設定値が得られ、該溶存酸素設定値と溶存酸素濃度実測値とに基づき、溶存酸素濃度が制御される。しかしながら、前記特許文献3に記載の発明では、処理水質を予測することができないという欠点がある。
【0006】
さらに、前記特許文献4には、硝化反応に関与する硝化菌の基質摂取挙動、増殖挙動、および死滅挙動を菌近傍の酸素と基質の存在状態との関係でルール化し、仮想的領域に硝化菌、基質、および酸素の存在状態を硝化菌濃度、酸素濃度および基質濃度に基づいて設定し、前記ルールに従って前記設定した各硝化菌の挙動を演算し、その演算結果から、一定時間後の硝化菌数、酸素の存在状態、基質の存在状態の内の少なくとも一つを求める硝化反応シミュレーション方法が開示されている。しかしながら、前記特許文献4に記載の発明では、硝化反応がシミュレーションされているに過ぎず、硝化菌数、酸素濃度および基質濃度が得られるが、処理水質は予測できないという欠点がある。また、前記特許文献4に記載の発明では、硝化菌数、酸素濃度および基質濃度以外の要因が処理に影響を及ぼす場合には、シミュレーションに十分に反映できないという欠点がある。
【特許文献1】特開平8−323393号公報
【特許文献2】特開2000−107796号公報
【特許文献3】特公平7−106357号公報
【特許文献4】特開平9−47785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、活性汚泥中に含まれる各種微生物の細菌数の変動、該微生物による一連の分解能などの変動などを反映させ、水処理プロセスの挙動および処理水質をより高い精度でシミュレーションすることができる、生物学的水処理のシミュレーション方法を提供することを1つの課題とする。また、本発明は、活性汚泥中に含まれる各種微生物の細菌数の変動、該微生物による一連の分解能などの変動などを反映させ、水処理プロセスの挙動および処理水質をより高い精度でシミュレーションすることができる、生物学的水処理のシミュレーション装置を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 活性汚泥と被処理水とを含有した被処理水相を有する生物反応槽中で、該活性汚泥により該被処理水を処理する工程を含む生物学的水処理をシミュレーションするシミュレーション方法であり、
(1)下記(1a)および(1b):
(1a) 該活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与する細菌の種類毎の細菌数を遺伝子解析法により決定し、該細菌の種類毎の細菌数から算出された細菌濃度、および
(1b) 該活性汚泥における処理対象物質の分解速度から求められた活性、
から算出された活性パラメータと、
(2)水処理プロセスの条件成分値と、
(3)対象となる生物反応槽の仕様と、
(4)生物反応槽の運転条件と、
(5)該細菌の種類毎の細菌数と、
に基づき、活性汚泥モデルにより、処理水質をシミュレーションすることを特徴とする、生物学的水処理のシミュレーション方法、
〔2〕(A)活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与する細菌の種類毎の細菌数を遺伝子解析法により決定する工程、
(B)前記工程(1)で決定された細菌の種類毎の細菌数から、遺伝子解析に基づく細菌濃度を算出する工程、
(C)前記活性汚泥における処理対象物質の分解速度から活性を測定する工程、
(D)前記工程(B)で算出された細菌濃度と、前記工程(C)で算出された活性とから活性パラメータを算出する工程、および
(E)前記工程(D)で算出された活性パラメータと、水処理プロセスの条件成分値と、対象となる生物反応槽の仕様と、生物反応槽の運転条件と、前記工程(A)で決定された細菌の種類毎の細菌数とに基づき、活性汚泥モデルにより、処理水質をシミュレーションする工程、
を含む、請求項1記載の生物学的水処理のシミュレーション方法。
〔3〕 該活性汚泥モデルが、IWA活性汚泥モデルNO.3(ASM3)に基づいて改良されたものである、前記〔1〕または〔2〕記載の生物学的水処理のシミュレーション方法、
〔4〕 該遺伝子解析法が、リアルタイムPCRである、前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の生物学的水処理のシミュレーション方法、
〔5〕 該処理対象物質の分解に関与する細菌が、該処理対象物質の分解に関与して酸化能力を発揮する細菌および/または該処理対象物質の分解に関与して還元能力を発揮する細菌であり、該細菌に対応して、処理対象物質の分解に関与する活性が、該処理対象物質の分解に関与する酸化活性および/または該処理対象物質の分解に関与する還元活性である、前記〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の生物学的水処理のシミュレーション方法、〔6〕 該酸化活性として、アンモニア酸化活性と亜硝酸酸化活性とを含む硝化活性を測定し、かつ該還元活性として、硝酸還元活性と亜硝酸還元活性とを含む脱窒活性を測定する、前記〔5〕記載の生物学的水処理のシミュレーション方法、
〔7〕 被処理水が、窒素化合物を含有した排水である、前記〔1〕〜〔6〕いずれか1項に記載の生物学的水処理のシミュレーション方法、
〔8〕 活性汚泥と被処理水とを含有した被処理水相を有する生物反応槽中で、該活性汚泥により該被処理水を処理する工程を含む生物学的水処理をシミュレーションするシミュレーション装置であって、
活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与する細菌の種類毎の細菌数を遺伝子解析法により決定する遺伝子解析手段と、
該遺伝子解析手段により決定された細菌の種類毎の細菌数から、遺伝子解析に基づく細菌濃度を算出する遺伝子解析ベース細菌濃度算出手段と、
該活性汚泥における処理対象物質の分解速度から活性を測定する活性測定手段と、
該細菌濃度と細菌の活性とから活性パラメータを算出する活性パラメータ算出手段と、
活性パラメータのデータが格納された活性パラメータデータベースと、
活性汚泥モデルを有し、活性パラメータデータベースに格納された活性パラメータのデータを参照し、入力された水処理プロセスの条件成分値と、生物反応槽の仕様と、生物反応槽の運転条件と、活性パラメータ算出手段により得られた活性パラメータと、該遺伝子解析手段により決定された細菌の種類毎の細菌数とに基づき、該活性汚泥モデルにより、処理水質を求める処理水質演算手段と
を備えたことを特徴とする、生物学的水処理のシミュレーション装置、
〔9〕 該活性汚泥モデルが、ASM3に基づいて改良されたものである、前記〔8〕記載の生物学的水処理のシミュレーション装置、
〔10〕 該遺伝子解析手段が、リアルタイムPCRにより、該細菌の種類毎の細菌数を決定する手段である、前記〔8〕または〔9〕記載の生物学的水処理のシミュレーション装置、
〔11〕 該活性測定手段が、該処理対象物質の分解に関与する活性として、該処理対象物質の分解に関与する酸化活性および/または該処理対象物質の分解に関与する還元活性を測定する手段である、前記〔8〕〜〔10〕いずれか1項に記載の生物学的水処理のシミュレーション装置、
〔12〕 該処理対象物質の分解に関与する酸化活性が、アンモニア酸化活性と亜硝酸酸化活性とを含む硝化活性であり、該処理対象物質の分解に関与する還元活性が、硝酸還元活性と亜硝酸還元活性とを含む脱窒活性である、前記〔11〕記載の生物学的水処理のシミュレーション装置、ならびに
〔13〕 被処理水として、窒素化合物を含有した排水を処理する生物学的水処理をシミュレーションするためのものである、前記〔8〕〜〔12〕いずれか1項に記載の生物学的水処理のシミュレーション装置、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生物学的水処理のシミュレーション方法は、活性汚泥中に含まれる各種微生物の細菌数の変動、該微生物による一連の分解能などの変動などを反映させ、水処理プロセスの挙動および処理水質をより高い精度でシミュレーションすることができるという優れた効果を奏する。また、本発明の生物学的水処理のシミュレーション装置は、活性汚泥中に含まれる各種微生物の細菌数の変動、該微生物による一連の分解能などの変動などを反映させ、水処理プロセスの挙動および処理水質をより高い精度でシミュレーションすることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の生物学的水処理のシミュレーション方法は、活性汚泥と被処理水とを含有した被処理水相を有する生物反応槽中で、該活性汚泥により該被処理水を処理する工程を含む生物学的水処理をシミュレーションするシミュレーション方法であり、
(1)下記(1a)および(1b):
(1a) 該活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与する細菌の種類毎の細菌数を遺伝子解析法により決定し、該細菌の種類毎の細菌数から算出された細菌濃度、および
(1b) 該活性汚泥における処理対象物質の分解速度から求められる活性、
から算出された活性パラメータと、
(2)水処理プロセスの条件成分値と、
(3)対象となる生物反応槽の仕様と、
(4)生物反応槽の運転条件と、
(5)該細菌の種類毎の細菌数と、
に基づき、活性汚泥モデルにより、処理水質をシミュレーションすることを特徴とする。
【0011】
本明細書において、前記「処理対象物質の分解速度から求められる活性」は、処理対象物質の分解に関与する活性と同義である。
【0012】
本発明のシミュレーション方法では、細菌の一連の分解能を表すパラメータと、遺伝子解析法により決定された細菌の種類毎の細菌数とによって、活性汚泥の状態が表わされ、前記活性汚泥の状態が、活性汚泥モデルに組み込まれ、モデル式に従って処理水質が予測される。そのため、本発明のシミュレーション方法によれば、より正確に水処理プロセスをシミュレーションし、より高い精度で処理水質を予測することが可能になる。
【0013】
本発明のシミュレーション方法は、排水に含まれる塩類や金属、水温、活性汚泥の引抜き、添加される薬剤などの要因によって変化しうる細菌の一連の分解能をシミュレーションに良好に反映できる。そのため、本発明のシミュレーション方法によれば、より正確に水処理プロセスをシミュレーションし、より高い精度で処理水質を予測することが可能になる。
【0014】
また、本発明のシミュレーション方法によれば、活性汚泥について、細菌数と、細菌の一連の分解能力とにより表わしているため、処理水質の変動の原因が細菌数と、細菌の分解能力とのどちらにあるかなどの予測が容易になり、水質向上対策に有効である。
【0015】
また、本発明のシミュレーション方法によれば、細菌の一連の分解能を表すパラメータと、遺伝子解析法により決定された細菌の種類毎の細菌数とによって、活性汚泥の状態が表わされるため、細菌の一連の分解能と細菌の種類毎の細菌数の時間変動履歴から処理水質の悪化をもたらす因子の検証を行なうことが可能になる。例えば、細菌数が少ないにもかかわらず、細菌の活性が高くて基準を達成する処理水質が得られた場合、従来の方法では、水処理後の結果である処理水質しか見ることができないので、処理が順調に進んでいると判断される。しかしながら、本発明のシミュレーション方法では、細菌数が減っている状況を把握できるので、活性が低下した場合に備えて、細菌数を増加させるような運転方法を選択することができる。また、リアルタイムの水質予測が出来るようシミュレータを拡張した場合、従来の方法では、水処理後の結果である処理水質しか見ることができないので、処理水質が悪化した際に対処しようとしても、水はすでに放流された後となり、十分な対応が困難であり、処理水質の悪化が一時的なものか、継続的なものか判断できないという欠点がある。しかしながら、本発明のシミュレーション方法によると、細菌群の状態が把握できているため、細菌群の状態の時間変動履歴から、水質悪化の対処を正確かつ迅速に行なうことができる。
【0016】
さらに、本発明のシミュレーション方法では、遺伝子解析法により、活性汚泥中における細菌の種類毎の細菌数が決定されるため、例えば、従来のように、CODに基づき決定されたものに比べ、活性汚泥中における細菌数が、より定量的に表される。そのため、本発明のシミュレーション方法によれば、高い精度で生物学的水処理のシミュレーションを行なうことができる。また、本発明のシミュレーション方法によれば、遺伝子解析法が用いられているため、例えば、従来のように、CODに基づき決定されたものに比べ、細菌の種類に基づく、活性汚泥の状態をより反映させることができる。
【0017】
前記被処理水としては、生物学的水処理により処理されうる排水であればよく、特に限定されないが、例えば生活排水、流域終末下水、都市下水、火力発電所排水、工場排水などが挙げられる。
【0018】
前記水処理プロセスの条件成分値としては、特に限定されないが、例えば、被処理水の溶存酸素[mg−O2/l]、溶解性不活性有機物質[mg−COD/l]、易分解性有機物質[mg−COD/l]、アンモニア性窒素[mg−N/l]、窒素ガス[mg−N/l]、硝酸性窒素[mg−N/l]、亜硝酸性窒素[mg−N/l]、アルカリ度[moleHCO3-/l]、浮遊不活性有機物質[mg−COD/l]、遅分解性有機物質[mg−COD/l]、従属栄養細菌[mg−COD/l]、従属栄養細菌の細胞内貯蔵有機物質[mg−COD/l]、硝化細菌[mg−COD/l]、浮遊物質[mg−SS/l]などが挙げられる。
【0019】
前記対象となる生物反応槽の仕様としては、特に限定されないが、例えば、反応槽容量、反応槽分画比などが挙げられる。
【0020】
前記生物反応槽の運転条件としては、特に限定されないが、例えば、送風量、流入水量、返送汚泥量などが挙げられる。
【0021】
本発明のシミュレーション方法は、具体的には、図1のフローチャートにも例示されるように、(A)活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与する細菌の種類毎の細菌数を遺伝子解析法により決定する工程〔遺伝子解析工程S1〕、
(B)前記工程(1)で決定された細菌の種類毎の細菌数から、遺伝子解析に基づく細菌濃度を算出する工程〔遺伝子解析ベース細菌濃度算出工程S2〕、
(C)前記活性汚泥における処理対象物質の分解に関与する活性を測定する工程〔活性測定工程S3〕、
(D)前記工程(B)で算出された細菌濃度と、前記工程(C)で算出された細菌の活性とから活性パラメータを算出する工程〔活性パラメータ算出工程S4〕、および
(E)前記工程(D)で算出された活性パラメータと、水処理プロセスの条件成分値と、対象となる生物反応槽の仕様と、生物反応槽の運転条件と、前記工程(A)で決定された細菌の種類毎の細菌数とに基づき、活性汚泥モデルにより、処理水質をシミュレーションする工程〔処理水質演算工程S5〕、
を含む方法である。
【0022】
前記処理対象物質の分解に関与する細菌としては、該処理対象物質の分解に関与して酸化能力を発揮する細菌、該処理対象物質の分解に関与して還元能力を発揮する細菌などが挙げられる。かかる細菌は、単独であっても、組み合わせであってもよい。
【0023】
前記処理対象物質の分解に関与して酸化能力を発揮する細菌としては、特に限定されないが、例えば、硝化活性に関与する細菌であるアンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌等が挙げられ、アンモニア酸化細菌としては、具体的には、ニトロソモナス(Nitrosomonas)、ニトロソコッカス(Nitrosococcus)などが挙げられ、亜硝酸酸化細菌としては、具体的には、ニトロバクター(Nitrobacter)、ニトロスピラ(Nitrospira)などの亜硝酸酸化細菌などが挙げられる。
【0024】
また、本発明においては、前記処理対象物質の分解に関与して酸化能力を発揮する細菌として、活性汚泥に含まれ、被処理水中の処理対象物質である有機物質の分解に関与して酸化能力を発揮する細菌をさらに用いてもよい。前記活性汚泥に含まれ、被処理水中の処理対象物質である有機物質の分解に関与して酸化能力を発揮する細菌としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、バチルス(Bacillus)属細菌、ズーグレア(Zoogloea)属細菌、マイクロコッカス(Micrococcus)属細菌などが挙げられる。
【0025】
前記処理対象物質の分解に関与して還元能力を発揮する細菌としては、特に限定されないが、例えば、脱窒活性に関与する細菌、例えば、アルカリジェネス(Alcaligenes)属細菌、アゾアルカス(Azoarcus)属細菌、パラッコッカス(Paracoccus)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌などが挙げられる。
【0026】
また、本発明においては、前記処理対象物質の分解に関与して還元能力を発揮する細菌として、活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与して還元能力を発揮する細菌をさらに用いてもよい。前記活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与して還元能力を発揮する細菌としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、処理対象物質が有機ハロゲン化合物であれば、デハロコッコイデス(Dehalococcoides)属細菌などの脱ハロゲン能を持つ細菌、処理対象物質が硫酸などの硫黄化合物であれば、硫酸還元菌、例えば、デスルフォトマキュラム(Desulfotomaculum)属細菌、デスルフォバクター(Desulfobacter)属細菌、デスルフォバクテリウム(Desulfobacterium)属細菌、デスルフォヴィクリオ(Desulfovicrio)属細菌などが挙げられる。
【0027】
前記遺伝子解析法としては、特に限定されないが、例えば、リアルタイムPCR、競合PCR、MPN−PCRなどが挙げられる。なかでも、迅速性などの観点から、リアルタイムPCRが好ましい。前記遺伝子解析法として、リアルタイムPCRを行なう場合、プライマー対としては、アンモニア酸化細菌数定量用として、CTO 189fA/B〔GGAGRAAAGCAGGGGATCG(配列番号:1)〕およびCTO 189fC〔GGAGGAAAGTAGGGGATCG(配列番号:2)〕をフォワードプライマー〔例えば、CTO 189fA/B:CTO 189fC=2:1の混合物〕とし、RT1r〔CGTCCTCTCAGACCARCTACTG(配列番号:3)〕をリバースプライマーとするプライマー対などが挙げられ、亜硝酸酸化細菌の一種であるニトロスピラ数定量用として、NSR1113f〔CCTGCTTTCAGTTGCTACCG(配列番号:5)〕とNSR1264r〔GTTTGCAGCGCTTTGTACCG(配列番号:6)〕とのプライマー対などが挙げられ、硝酸還元細菌定量用として、narG1960f〔TAYGTSGGSCARGARAA(配列番号:8)〕とnarG2650r〔TTYTCRTACCABGTBGC(配列番号:9)〕とのプライマー対などが挙げられ、亜硝酸還元細菌定量用として、nirK876 〔ATYGGCGGVAYGGCGA(配列番号:10)〕とnirK1040 〔GCCTCGATCAGRTTRTGGTT(配列番号:11)〕とのプライマー対、cd3aF 〔GTSAACGTSAAGGARACSGG(配列番号:12)〕とR3cd〔GASTTCGGRTGSGTCTTGA(配列番号:13)〕とのプライマー対などが挙げられる。また、プローブとしては、アンモニア酸化細菌定量用として、TMP1〔CAACTAGCTAATCAGRCATCRGCCGCTC(配列番号:4)〕などが挙げられ、亜硝酸酸化細菌の一種であるニトロスピラ数定量用として、NSR1143Taq〔AGCACTCTGAAAGGACTGCCCAGG(配列番号:7)〕などが挙げられる。
【0028】
前記細菌の数は、例えば、遺伝子解析法が、リアルタイムPCRである場合、プライマー対に基づき増幅された核酸の量に比例して増える蛍光シグナル強度を指標として、決定される。
また、前記細菌の種類毎の細菌数は、式(1):
【0029】
【数1】

【0030】
から導かれる。
【0031】
細菌数からの遺伝子解析に基づく細菌濃度の算出は、特に限定されないが、例えば、式(2):
【0032】
【数2】

【0033】
により行なわれうる。前記換算係数は、細菌が酸化分解する際に消費する酸素量から算出されうる。
【0034】
前記処理対象物質の分解に関与する活性としては、該処理対象物質の分解に関与する酸化活性、該処理対象物質の分解に関与する還元活性などが挙げられる。かかる活性は、単独であっても、組み合わせであってもよい。
【0035】
前記処理対象物質の分解に関与する酸化活性としては、前記細菌により発揮される酸化能力に基づくものであればよく、特に限定されないが、例えば、アンモニア酸化活性と亜硝酸酸化活性とを含む硝化活性などが挙げられる。
【0036】
前記処理対象物質の分解に関与する還元活性としては、前記細菌により発揮される還元能力に基づくものであればよく、特に限定されないが、例えば、硝酸還元活性と亜硝酸還元活性とを含む脱窒活性などが挙げられる。
【0037】
本発明のシミュレーション方法において、前記処理対象物質の分解に関与する活性として、酸化活性であるアンモニア酸化活性と亜硝酸酸化活性とを含む硝化活性を測定し、かつ還元活性である硝酸還元活性と亜硝酸還元活性とを含む脱窒活性を測定する場合、硝化工程と脱窒工程とを含む生物学的水処理において、硝化工程がアンモニア酸化工程と亜硝酸酸化工程との2段階で評価され、脱窒工程が硝酸還元工程と亜硝酸還元工程との2段階で評価される。そのため、かかるシミュレーション方法では、より正確に水処理プロセスをシミュレーションし、より高い精度で処理水質を予測することが可能になる。
【0038】
本発明のシミュレーション方法において、前記処理対象物質の分解に関与する活性として、酸化活性であるアンモニア酸化活性と亜硝酸酸化活性とを含む硝化活性を測定し、かつ還元活性である硝酸還元活性と亜硝酸還元活性とを含む脱窒活性を測定する場合、窒素化合物(例えば、アンモニア、有機窒素化合物、NOx化合物など)を含有した排水の生物学的水処理のシミュレーションをより高い精度で行なうことができる。
【0039】
本発明のシミュレーション方法に用いられる活性汚泥モデルとしては、IWAの活性モデルであるASM1、ASM2、ASM2d、ASM3などを改良したものが挙げられる。なかでも、モデルの拡張が容易であるという観点から、ASM3に基づいて改良することが好ましい。
【0040】
本発明のシミュレーション装置は、具体的には、図2に概略的に例示されるように、活性汚泥と被処理水とを含有した被処理水相を有する生物反応槽中で、該活性汚泥により該被処理水を処理する工程を含む生物学的水処理をシミュレーションするシミュレーション装置であって、
活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質を分解する細菌の種類毎の細菌数を遺伝子解析法により決定する遺伝子解析手段11と、
該遺伝子解析手段により決定された細菌の種類毎の細菌数から、遺伝子解析に基づく細菌濃度を算出する遺伝子解析ベース細菌濃度算出手段12と、
該活性汚泥における処理対象物質の分解に関与する活性を測定する活性測定手段13と、該細菌濃度と細菌の活性とから活性パラメータを算出する活性パラメータ算出手段14と、
活性パラメータのデータが格納された活性パラメータデータベース15と、
活性汚泥モデルを有し、活性パラメータデータベース15に格納された活性パラメータのデータを参照し、入力された水処理プロセスの条件成分値と、対象となる処理施設の仕様と、施設の運転条件と、活性パラメータ算出手段14により得られた活性パラメータと、該遺伝子解析手段11により決定された細菌の種類毎の細菌数とに基づき、該活性汚泥モデルにより、処理水質を求める処理水質演算手段16と
を備えたことを特徴とするシミュレーション装置10である。
【0041】
前記遺伝子解析手段11としては、特に限定されないが、例えば、リアルタイムPCRにより、細菌の種類毎の細菌数とを決定する手段、リアルタイムPCR装置としては、例えば、アプライドバイオシステムズ社の7300などが挙げられる。前記遺伝子解析手段11では、リアルタイムPCRにより、活性汚泥中における細菌の種類毎の細菌数とが決定され、その情報が前記遺伝子解析ベース細菌濃度算出手段12などに出力される。
【0042】
前記遺伝子解析ベース細菌濃度算出手段12では、前記遺伝子解析手段11により決定された細菌の種類毎の細菌数の情報が入力され、入力された情報に基づき、遺伝子解析に基づく細菌濃度が算出され、その情報が前記活性パラメータ算出手段14などに出力される。
【0043】
前記活性測定手段13としては、活性汚泥における処理対象物質の分解に関与する活性を測定し、その結果を出力する手段などが挙げられる。前記活性測定手段では、測定対象となる分解活性の種類に応じた活性測定法により、活性が測定され出力される。前記活性測定手段13としては、特に限定されないが、例えば、処理対象物質の分解に関与する活性として、該処理対象物質の分解に関与する酸化活性および/または該処理対象物質の分解に関与する還元活性を測定する手段などが挙げられる。
【0044】
前記活性測定手段13は、生物学的水処理として、例えば、硝化工程と脱窒工程とを含む生物学的水処理をシミュレーションする場合、より良好にシミュレーションする観点から、アンモニア酸化活性と亜硝酸酸化活性とを含む硝化活性、および硝酸還元活性と亜硝酸還元活性とを含む脱窒活性を測定する手段が好ましい。かかる態様の活性測定手段によれば、被処理水として、窒素化合物(例えば、アンモニア、有機窒素化合物、NOx化合物など)を含有した排水を処理する生物学的水処理を良好にシミュレーションすることができる。
【0045】
前記活性パラメータ算出手段14では、前記遺伝子解析ベース細菌濃度算出手段12で算出された細菌濃度の情報と、前記活性測定手段13で算出された細菌の活性の情報とが入力され、該細菌濃度と細菌の活性とから活性パラメータが算出され、その情報が前記活性パラメータデータベース15、処理水質演算手段16などに出力される。
【0046】
前記活性パラメータデータベース15では、前記活性パラメータ算出手段14により、算出された活性パラメータのデータが、蓄積され、該活性パラメータデータベース15に格納されたデータは、適宜、前記処理水質演算手段16により参照される。
【0047】
前記処理水質演算手段16では、被処理水に含まれる塩類や金属、生物処理槽の水温、活性汚泥の引き抜き、添加される薬剤などのパラメータに基づいて、活性パラメータデータベース15に格納された活性パラメータのデータが参照され、入力された水処理プロセスの条件成分値と、活性パラメータ算出手段14により得られた活性パラメータと、該遺伝子解析法により決定された細菌の種類毎の細菌数とに基づき、活性汚泥モデルにより、処理水質を求められる。
【0048】
前記活性汚泥モデルは、前記したとおりでありモデルの拡張が容易であるという観点から、ASM3が好ましい。
【0049】
以下、本発明を、図を参照して詳細に説明するが、本発明は、かかる図などにより何ら限定されるものではない。
【0050】
図3は、一例として、アンモニア含有排水処理プロセスである火力発電所の排水処理プロセスについて、本発明の生物学的水処理のシミュレーション方法を適用した場合の実施態様を示す。
【0051】
図3に示される火力発電所の排水処理プロセスは、硝化槽1、脱窒槽2、酸化槽3及び固液分離槽4とから構成されており、前記排水処理プロセスにおける硝化槽1の活性汚泥(硝化汚泥)と脱窒槽2の活性汚泥(脱窒汚泥)とを、採取し、硝化活性試験(アンモニア酸化速度試験および亜硝酸酸化速度試験)により、硝化槽1内におけるアンモニア酸化速度と亜硝酸酸化速度とを測定し、脱窒活性試験(硝酸還元速度試験および亜硝酸還元速度試験)により、脱窒槽2内における硝酸還元速度と亜硝酸還元速度とを測定する。
【0052】
硝化汚泥中に含まれる細菌によるアンモニア酸化速度の測定(アンモニア酸化速度試験)は、以下のように行なう。
【0053】
500ml容三角フラスコに、希釈水[1lあたりの組成:炭酸水素ナトリウム 240mg、BOD−A液〔JIS K 0102の21の項に従う、緩衝液(pH7.2)〕1ml、BOD−B液(JIS K 0102の21の項に従う、硫酸マグネシウム溶液) 1ml、BOD−C液(JIS K 0102の21の項に従う、塩化カルシウム溶液) 1ml、BOD−D液〔JIS K 0102の21の項に従う、塩化鉄(III)溶液〕1ml、残部 水] 390mlを入れ、1000mg−N/lの塩化アンモニウム水溶液 10mlを添加して、混合物Aを調製する。ついで、500ml容三角フラスコ内の混合物Aを、恒温槽中、30℃に維持し、撹拌しながら、10分間以上曝気し、溶液Aを得る。ここで、溶液AのpHを測定する。
【0054】
硝化汚泥を500ml採取し、遠心分離器によって固液分離する。得られた産物から、上澄み液を除去し、前記希釈水 50mlに撹拌し、分散させる。得られた産物の全容量を、前記希釈水を用いて、100mlとなるように調整し、硝化汚泥試料を得る。
【0055】
その後、得られた硝化汚泥試料 100mlを、前記500ml容フラスコに入れ、前記溶液Aと混合する。混合と同時に、5ml容シリンジで、前記混合により得られた試料 5mlをサンプリングし、フィルター(アドヴァンテック社製、商品名:ガラス繊維ろ紙GF−75、孔径:0.3μm)で濾過する。なお、塩化アンモニウムに由来するアンモニア性窒素が消費されるまで(約2時間)、一定時間毎に、サンプリングを行なう。
【0056】
また、前記硝化汚泥試料と前記溶液Aとの混合直後に、前記サンプリングとは別に、30mlの試料を採取し、JIS K 0102の14の項に従い、汚泥濃度を測定する。
【0057】
塩化アンモニウムに由来するアンモニア性窒素が消費された後、残りの混合物のpHを測定すると共に、汚泥濃度を測定する。
【0058】
各サンプリング時点での試料を、イオンクロマトグラフ分析法(JIS K 0102の42.5の項に従う)を行なうことにより、アンモニア性窒素の量を測定する。分析結果より単位時間あたりのアンモニア性窒素の量の変化を算出し、これを分解速度として、アンモニア酸化速度を求める。
【0059】
一方、硝化汚泥中に含まれる細菌による亜硝酸酸化速度の測定(亜硝酸酸化速度試験)は、以下のように行なう。
【0060】
500ml容三角フラスコに、前記希釈水 390mlを入れ、1000mg−N/lの亜硝酸ナトリウム水溶液 10mlを添加して、混合物Bを調製する。ついで、500ml容三角フラスコ内の混合物Bを、恒温槽中、30℃に維持し、撹拌しながら、10分間以上曝気し、溶液Bを得る。ここで、溶液BのpHを測定する。
【0061】
硝化汚泥を500ml採取し、遠心分離器によって固液分離する。得られた産物から、上澄み液を除去し、前記希釈水 50mlに撹拌し、分散させる。得られた産物の全容量を、前記希釈水を用いて、100mlとなるように調整し、硝化汚泥試料を得る。
【0062】
その後、得られた硝化汚泥試料 100mlを、前記500ml容フラスコに入れ、前記溶液Bと混合する。混合と同時に、5ml容シリンジで、前記混合により得られた試料 5mlをサンプリングし、フィルター(アドヴァンテック社製、商品名:ガラス繊維ろ紙GF−75、孔径:0.3μm)で濾過する。なお、亜硝酸ナトリウムに由来する亜硝酸性窒素が消費されるまで(約2時間)、一定時間毎に、サンプリングを行なう。
【0063】
また、前記硝化汚泥試料と前記溶液Bとの混合直後に、前記サンプリングとは別に、30mlの試料を採取し、汚泥濃度を測定する。
【0064】
亜硝酸ナトリウムに由来する亜硝酸性窒素が消費された後、残りの混合物のpHを測定すると共に、汚泥濃度を測定する。
【0065】
各サンプリング時点での試料を、イオンクロマトグラフ分析法(JIS K 0102の43.1.2の項に従う)を行なうことにより、亜硝酸性窒素の量を測定する。分析結果より単位時間あたりの亜硝酸性窒素の量の変化を算出し、これを分解速度として、亜硝酸酸化速度を求める。
【0066】
また、脱窒汚泥中に含まれる細菌による硝酸還元速度の測定(硝酸還元速度試験)は、以下のように行なう。
【0067】
500ml容三角フラスコに、前記希釈水380mlを入れ、恒温槽中、30℃に維持し、撹拌しながら、1000mg−N/lの硝酸ナトリウム水溶液 10mlを添加し、ついで、メタノール水溶液〔5000mgメタノール/l〕 10mlを添加して、混合物Cを調製する。その後、前記混合物Cに、散気球により窒素ガスを吹き込み、10分間脱気する。ここで、前記混合物CのpHを測定する。前記500ml容三角フラスコに、シリコン栓をし、撹拌しながら窒素ガスを吹き込み、該500ml容三角フラスコ内の気相中の空気を除く。その後、1l容テドラーバックに窒素ガスを吹き込み、前記500ml容三角フラスコのシリコン栓に設置する。
【0068】
脱窒汚泥を500ml採取し、遠心分離器によって固液分離する。得られた産物から、上澄み液を除去し、前記希釈水 50mlに撹拌し、分散させる。得られた産物の全容量を、前記希釈水を用いて、100mlとなるように調整し、脱窒汚泥試料を得る。
【0069】
その後、得られた脱窒汚泥試料 100mlを、前記500ml容フラスコに入れ、前記混合物Cと混合する。混合と同時に、5ml容シリンジで、前記混合により得られた試料 5mlをサンプリングし、フィルター(アドヴァンテック社製、商品名:ガラス繊維ろ紙GF−75、孔径:0.3μm)で濾過する。なお、硝酸ナトリウムに由来する硝酸性窒素が消費されるまで(約2時間)、一定時間毎に、サンプリングを行なう。
【0070】
また、前記脱窒汚泥試料と前記混合物Cとの混合直後に、前記サンプリングとは別に、30mlの試料を採取し、汚泥濃度を測定する。
【0071】
硝酸ナトリウムに由来する硝酸性窒素が消費された後、残りの混合物のpHを測定すると共に、汚泥濃度を測定する。
【0072】
各サンプリング時点での試料を、イオンクロマトグラフ分析法(JIS K 0102の43.2.5の項に従う)を行なうことにより、硝酸性窒素の量を測定する。分析結果より単位時間あたりの硝酸性窒素の量の変化を算出し、これを分解速度として、硝酸還元速度を求める。
【0073】
一方、脱窒汚泥中に含まれる細菌による亜硝酸還元速度の測定(亜硝酸還元速度試験)は、以下のように測定する。
【0074】
500ml容三角フラスコに、前記希釈水380mlを入れ、恒温槽中、30℃に維持し、撹拌しながら、1000mg−N/lの亜硝酸ナトリウム水溶液 10mlを添加し、ついで、メタノール水溶液〔5000mgメタノール/l〕 10mlを添加して、混合物Dを調製する。その後、前記混合物Dに、散気球により窒素ガスを吹き込み、10分間脱気する。ここで、前記混合物DのpHを測定する。前記500ml容三角フラスコに、シリコン栓をし、撹拌しながら窒素ガスを吹き込み、該500ml容三角フラスコ内の気相中の空気を除く。その後、1l容テドラーバックに窒素ガスを吹き込み、前記500ml容三角フラスコのシリコン栓に設置する。
【0075】
脱窒汚泥を500ml採取し、遠心分離器によって固液分離する。得られた産物から、上澄み液を除去し、前記希釈水 50mlに撹拌し、分散させる。得られた産物の全容量を、前記希釈水を用いて、100mlとなるように調整し、脱窒汚泥試料を得る。
【0076】
その後、得られた脱窒汚泥試料 100mlを、前記500ml容フラスコに入れ、前記混合物Dと混合する。混合と同時に、5ml容シリンジで、前記混合により得られた試料 5mlをサンプリングし、フィルター(アドヴァンテック社製、商品名:ガラス繊維ろ紙GF−75、孔径:0.3μm)で濾過する。なお、亜硝酸ナトリウムに由来する亜硝酸性窒素が消費されるまで(約2時間)、一定時間毎に、サンプリングを行なう。
【0077】
また、前記脱窒汚泥試料と前記混合物Dとの混合直後に、前記サンプリングとは別に、30mlの試料を採取し、汚泥濃度を測定する。
【0078】
亜硝酸ナトリウムに由来する亜硝酸性窒素が消費された後、残りの混合物のpHを測定すると共に、活性汚泥濃度を測定する。
【0079】
各サンプリング時点での試料を、イオンクロマトグラフ分析法(JIS K 0102の43.1.2の項に従う)を行なうことにより、亜硝酸性窒素の量を測定する。分析結果より単位時間あたりの亜硝酸性窒素の量の変化を算出し、これを分解速度として、亜硝酸還元速度を求める。
【0080】
また、リアルタイムPCR法により、硝化槽内のアンモニア酸化細菌の細菌数と亜硝酸酸化細菌の細菌数とを測定し、脱窒槽内の硝酸還元細菌の細菌数と亜硝酸還元細菌の細菌数とを測定する。
【0081】
活性汚泥(硝化汚泥または脱窒汚泥)に含まれる細菌に由来するDNAの抽出は、土壌からのDNAの抽出に用いられる手法、例えば、活性汚泥中の細菌を物理的手段(ビーズなど)により破砕し、DNAを抽出することなどにより行なわれうる。DNAの単離には、特に限定されないが、例えば、商品名:FastDNA SPIN Kit for Soil〔キュービオジェン(Qbiogene)社製〕、商品名:ISOIL for Beads Beating(株式会社ニッポンジーン製)などが用いられうる。具体的には、例えば、商品名:ISOIL for Beads Beating(株式会社ニッポンジーン製)を用いた場合、以下のように活性汚泥からDNAを単離することができる。
【0082】
各反応槽から活性汚泥(硝化汚泥または脱窒汚泥)を採取し、2ml容のマイクロ遠心チューブに入れる。また、活性汚泥の固形物濃度(MLSS濃度)が、1500〜2000mg/lである場合、2mlの活性汚泥、2000〜3000mg/lである場合、1.5mlの活性汚泥、3000〜5000mg/lである場合、1mlの活性汚泥、5000〜7000mg/lである場合、0.7mlの活性汚泥、7000〜10000mg/lである場合、0.5mlの活性汚泥を採取する。その後、前記マイクロ遠心チューブに入れた活性汚泥を、20630×g(1500rpm)、2分間、4℃の遠心分離および20630×g(15000rpm)、30秒間、4℃の遠心分離に供する。ついで、得られた活性汚泥を、予め65℃に加温した450μlのLysis Solution BB〔商品名:ISOIL for Beads Beating(株式会社ニッポンジーン製)に添付〕に懸濁させる。その後、得られた懸濁物を、Beads Tube〔商品名:ISOIL for Beads Beating(株式会社ニッポンジーン製)に添付〕に移す。また、元のチューブを、予め65℃に加温した450μlのLysis Solution BBで洗浄し、洗浄後に得られた懸濁物を前記Beads Tubeに移す。前記Beads Tube中の懸濁物に、50μlのLysis Solution 20S〔商品名:ISOIL for Beads Beating(株式会社ニッポンジーン製)に添付〕を添加し、混和させる。その後、得られた混合物を、65℃で15分間維持し、ついで、ビーズ式破砕機〔商品名:Beads Beater(株式会社ニッポンジーン製)〕に供して、3000rpmで、90秒間、Beads Beatingを行なう。その後、得られた産物を、65℃で40分間、穏やかに混合しながら維持し、ついで、12000×g、1分間、20℃で遠心分離し、上清 約660μlを2mlのチューブに回収する。前記上清に、440μlのPurification Solution〔商品名:ISOIL for Beads Beating(株式会社ニッポンジーン製)に添付〕を添加し、混和させる。その後、600μlのクロロホルムを添加し、穏やかに撹拌し、ついで、12000×g、15分間、20℃の遠心分離にて、水層900μlを2mlチューブに回収する。得られた産物に、等量(900μl)のPrecipitation Solution〔商品名:ISOIL for Beads Beating(株式会社ニッポンジーン製)に添付〕を添加し、混合する。得られた産物を遠心分離し、得られた沈殿物を、Wash Solutionで洗浄する。その後、得られた沈殿物に1mlの70容量% エタノールと2μlの商品名:Ethachinmate(株式会社ニッポンジーン製)とを添加して、エタノール沈殿を行ない、DNAの沈殿物を得る。得られたDNAの沈殿物に、200μlのTE緩衝液(組成:10mM Tris−HCl(pH8.0)、0.1mM EDTA)を添加し、該DNAを溶解させ、PCR用DNA試料を得る。かかるDNA試料については、定量する。
【0083】
活性汚泥(硝化汚泥または脱窒汚泥)中に含まれる各種細菌の細菌数は、例えば、リアルタイムPCRに代表される各種の核酸検出方法により定量されうる。前記リアルタイムPCRにより、活性汚泥中に含まれる各種細菌の細菌数を定量する場合、活性汚泥から抽出した核酸試料と、活性汚泥中に含まれる細菌に適したプライマー対およびプローブとを用いて、定量対象となる細菌の核酸の増幅に適したPCR条件(温度、時間、サイクル)で反応を行なうことにより、活性汚泥中に含まれる各種細菌および細菌数が定量される。前記プライマー対としては、例えば、アンモニア酸化細菌数定量用として、CTO 189fA/B、CTO 189fC、RT1rなど、亜硝酸還元細菌の一種であるNitrospira数定量用として、NSR1113f、NSR1264rなどが挙げられる。また、前記プローブとしては、アンモニア酸化細菌定量用として、TMP1、亜硝酸酸化細菌の一種であるNitrospira数定量用として、NSR1143Taqなどが挙げられる。具体的には、例えば、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌および真正細菌それぞれの細菌数は、アンモニア酸化細菌について、CTO 189fA/B〔GGAGRAAAGCAGGGGATCG (配列番号:1)〕およびCTO 189fC〔GGAGGAAAGTAGGGGATCG(配列番号:2)〕をフォワードプライマー〔例えば、CTO 189fA/B:CTO 189fC=2:1の混合物〕とし、RT1r〔CGTCCTCTCAGACCARCTACTG(配列番号:3)〕をリバースプライマーとするプライマー対と、TMP1〔CAACTAGCTAATCAGRCATCRGCCGCTC(配列番号:4)〕プローブとを有するプライマー/プローブセット;亜硝酸酸化細菌について、NSR1113f〔CCTGCTTTCAGTTGCTACCG(配列番号:5)〕とNSR1264r〔GTTTGCAGCGCTTTGTACCG(配列番号:6)〕とのプライマー対と、NSR1143Taq〔AGCACTCTGAAAGGACTGCCCAGG(配列番号:7)〕のプローブとを有するプライマー/プローブセットを用いたTaqMan法により定量化されうる。なお、それぞれのプローブとしては、5’末端をFAM(6−carboxyfluorescein)、3’末端をTAMRA(6−carboxytetramethylrhodamine)で標識したものが挙げられる。
【0084】
前記リアルタイムPCRには、濃度が107、106、105、104、103、または102コピー/5μl/1反応であるサンプルを用いて作成された検量線が用いられる。具体的には、前記検量線は、リアルタイムPCRの対象となる遺伝子に対応する核酸をPCRにより増幅し、その後、プラスミドベクターにクローニングした組み換えプラスミドを用いて作成されたものである。例えば、亜硝酸酸化細菌の場合、NSR1113fとNSR1264rとのプライマー対を用いて、亜硝酸酸化細菌に特異的な16S rRNA遺伝子を増幅させ、得られた産物をプラスミドベクターにクローニングして得られた組み換えプラスミドを検量線作成用のスタンダードとして用いた。前記リアルタイムPCRは、濃度(遺伝子数)が既知のスタンダードサンプルと、試料から精製したDNA(1ng、若しくは、10ng)を鋳型として用いて行なわれる。通常、前記リアルタイムPCRは、16S rRNA遺伝子や水質の浄化に係わる酵素をコードする遺伝子、例えば、アンモニア酸化細菌の16S rRNA遺伝子〔Appl.Environ.Microbiol.、2001年発行、第67巻、第972頁〜第976頁〕、亜硝酸酸化細菌の一種であるニトロスピラの16S rRNA遺伝子〔Environ.Sci.Technol.、2003年発行、第37巻、第343頁〜第351頁〕、硝酸還元細菌のnarG(硝酸還元酵素)遺伝子〔Appl.Environ.Microbiol.、2002年発行、第68巻、第6121頁〜第6128頁〕、亜硝酸還元細菌のnirS(シトクロムcd1タイプの亜硝酸還元酵素)遺伝子〔FEMS Microbiology Ecology 2004年発行、第49巻、第401頁〜第417頁〕、nirK(銅含有タイプの亜硝酸還元酵素)遺伝子〔J.Microbiol.Methods.、2004年発行、第59巻、第327頁〜第335頁〕などをターゲットとして行なわれる。
【0085】
スタンダードサンプルそれぞれの濃度のCt値(閾値とPCRの増幅曲線が交わる点)を算出し、Ct値と濃度との関係から検量線を作成する。一方、試料DNAについてもCt値を求め、スタンダードサンプルから作成した検量線に当てはめることにより、リアルタイムPCRに使用した試料DNA 1ng若しくは、10ngあたりの前記遺伝子のコピー数を求める。最終的に、例えば、活性汚泥1mlあたりの細菌数は、下記式(1):
【0086】
【数3】

【0087】
から導かれる。
【0088】
なお、リアルタイムPCRのターゲットとする遺伝子は、細菌の種類により1個の細菌細胞に存在する数が異なるので、上記式(1)から求めた細菌数を遺伝子数で割ることにより、正確な細菌数を算出することができる。
【0089】
リアルタイムPCR法により得られた細菌数から、式(2):
【0090】
【数4】

【0091】
に基づき、細菌(アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、硝酸還元細菌または亜硝酸還元細菌)の濃度[mg−COD/l]を求める。なお、前記1細菌あたりの乾燥重量には、測定値あるいは文献値〔文献値の例:0.28pg/細胞、Appl.Environ.Microbiol(2002),68,245−253)などの値が用いられる。また、前記換算係数は、式(3):
【0092】
【数5】

【0093】
から、細菌の酸素消費量(5×32)を分子量(113)で割ることにより計算できる。この場合、前記の換算係数は、1.416である。
【0094】
その後、アンモニア酸化、亜硝酸酸化、硝酸還元および亜硝酸還元のそれぞれに対応して、活性パラメータηを、式(4):
【0095】
【数6】

【0096】
で求める。アンモニア酸化、亜硝酸酸化、硝酸還元および亜硝酸還元のそれぞれに対応して、一定期間を通じて評価した活性パラメータηを蓄積し、データベースを構築する。
【0097】
活性汚泥モデルに、活性パラメータηと、前記遺伝子解析法により得られた細菌数とを導入する。具体的には、例えば、硝化細菌の増殖(硝化)と従属栄養細菌(脱窒菌)の増殖(脱窒)の反応速度式に、活性パラメータと遺伝子解析によって得られた細菌数とを導入する。なお、活性汚泥モデルにおける硝化または脱窒の反応速度ρは、式(5):
【0098】
【数7】

【0099】
(式中、ηは活性パラメータ、μmaxは最大比増殖速度[hr-1]であり、Cは基質濃度、Kは飽和定数であり、nは反応に関与する基質の数であり、X(Cell)は細菌数から求められた細菌の濃度[mg−COD/l]を示す。)により求められる。ここで、前記飽和定数Kは、各基質に対して与えられるものであり、各基質と同じ単位を持つ。前記最大比増殖速度[hr-1]μmaxとして、実験値、文献値、理論値が用いられる。
【0100】
また、活性汚泥中または排水中に反応阻害物質がある場合は、脱窒の反応速度ρ’は、
式(6):
【0101】
【数8】

【0102】
(式中、ηは活性パラメータ、μmaxは最大比増殖速度[hr-1]であり、Cは基質濃度であり、Kは飽和定数であり、nは反応に関与する基質の数であり、X(Cell)は細菌数から求められた細菌の濃度[mg−COD/l]であり、Pは反応阻害物質の濃度であり、mは、反応阻害物質の数を示す。)
により求められる。
【0103】
前記反応阻害物質としては、特に限定されないが、例えば、塩素などが挙げられる。
【0104】
次に、反応槽条件(容量、反応槽温度)と運転条件(送風量、返送活性汚泥量および活性汚泥引抜き量)とを、水質演算装置入力部に入力する。
【0105】
ついで、流入量と流入水質とを、水質演算装置入力部に入力する。前記流入水質は、溶存酸素[mg−O2/l]、溶解性不活性有機物質[mg−COD/l]、易分解性有機物質[mg−COD/l]、アンモニア性窒素[mg−N/l]、窒素ガス[mg−N/l]、硝酸性窒素[mg−N/l]、亜硝酸性窒素[mg−N/l]、アルカリ度[moleHCO3-/l]、浮遊不活性有機物質[mg−COD/l]、遅分解性有機物質[mg−COD/l]、従属栄養細菌[mg−COD/l]、従属栄養細菌の細胞内貯蔵有機物質[mg−COD/l]、硝化細菌[mg−COD/l]、浮遊物質[mg−SS/l]である。
【0106】
その後、炭種を、水質演算装置入力部に入力する。反応阻害物質の種類および濃度は、前記炭種に依存するため、前記炭種の入力により、活性パラメータを、より正確に反映させることができる点で有利である。
【0107】
リアルタイムPCR法によって得られた細菌数から細菌重量を算出し、反応槽の活性汚泥の初期値とする。
【0108】
前記炭種などの運転条件などから、活性パラメータηのデータベースを参照して活性パラメータを決定し、ASM3またはASM3に基づいて変形した活性汚泥モデルの硝化・脱窒に関与するプロセスの反応速度式に、式(6)を組み込んだ活性汚泥モデルを用いた演算装置により、シミュレーションを行なって活性汚泥中の細菌数と処理水質とを求める。
【0109】
図4は、一例として、下水処理場の水処理プロセスについて、本発明の生物学的水処理のシミュレーション方法を適用した場合の実施態様を示す。
【0110】
図4に示す下水処理場の水処理プロセス(標準活性汚泥法を採用した反応槽5a、5b、5c、5d、5e及び固液分離槽6)における反応槽5eの活性汚泥を採取し、前記と同様に、硝化活性試験(アンモニア酸化速度試験および亜硝酸酸化速度試験)により、アンモニア酸化速度と亜硝酸酸化速度とを測定し、脱窒活性試験(硝酸還元速度試験および亜硝酸還元速度試験)により、硝酸還元速度と亜硝酸還元速度とを測定する。また、前記と同様に、遺伝子解析法として、リアルタイムPCR法により、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、硝酸還元細菌、亜硝酸還元細菌それぞれの細菌数を測定する。
【0111】
前記と同様に、式(6)に基づき、活性パラメータηを求める。また、一定期間を通じて評価した活性パラメータηを蓄積し、データベースを構築する。
【0112】
また、前記と同様に、活性汚泥モデルに活性パラメータηと前記遺伝子解析法により得られた細菌数とを導入する。
【0113】
また、前記と同様に、反応槽条件、運転条件、流入量、流入水水質、反応槽活性汚泥などの初期値を、水質演算装置入力部に入力する。ついで、運転条件などから、活性パラメータηのデータベースを参照して、活性パラメータを決定し、ASM3またはASM3に基づいて変形した活性汚泥モデルの硝化・脱窒に関与するプロセスの反応速度式に、式(6)を組み込んだ活性汚泥モデルを用いた演算装置により、シミュレーションを行なって、活性汚泥中の細菌数と処理水質とを求める。
【実施例1】
【0114】
流量:7500m3/日、全5槽の反応槽の有効容量:2800m3、その分画比(容量比)=1:1:1:1:0.7である下水処理施設を対象とした。標準活性汚泥法を採用しており、第1槽(反応槽5a)のエアレーション(曝気)は停止しており、第2槽から第5槽(反応槽5b、5c、5d、5e)はエアレーションされている。前記下水処理施設は、図4に概略的に示される施設である。前記下水処理施設の最初沈殿池越流水(流入水)と固液分離槽越流水(処理水)とを、それぞれ1時間コンポジットで採水し、流入水と処理水の水質を分析した。結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
また、第5槽(反応槽5e)の活性汚泥(硝化汚泥)を、2週間に1回採取した。
【0117】
採取した活性汚泥(硝化汚泥)のアンモニア酸化速度と亜硝酸酸化速度とを、以下のように、下水道試験法の活性速度試験方法に従って行なった。
【0118】
500ml容三角フラスコに、希釈水[1lあたりの組成:炭酸水素ナトリウム 240mg、BOD−A液〔JIS K 0102の21の項に従う、緩衝液(pH 7.2)〕1ml、BOD−B液(JIS K 0102の21の項に従う、硫酸マグネシウム溶液)1ml、BOD−C液(JIS K 0102の21の項に従う、塩化カルシウム溶液)1ml、BOD−D液(JIS K 0102の21の項に従う、塩化鉄(III)溶液)1ml、残部 水] 390mlを入れ、1000mg−N/lの塩化アンモニウム水溶液 10mlを添加して、混合物Aを調製した。ついで、500ml容三角フラスコ内の混合物Aを、恒温槽中、20℃に維持し、撹拌しながら、10分間以上曝気し、溶液Aを得た。ここで、溶液AのpHを測定した。
【0119】
硝化汚泥を500ml採取し、遠心分離器によって硝化汚泥の固液分離を行った。得られた産物から、上澄み液を除去し、前記希釈水 50mlに撹拌し、分散させた。得られた産物の全容量を、前記希釈水を用いて、100mlとなるように調整し、硝化汚泥試料を得た。得られた硝化汚泥試料 100mlを、前記500ml容フラスコに入れ、前記溶液Aと混合した。混合と同時に、5ml容シリンジで、前記混合により得られた試料 5mlをサンプリングし、フィルター(アドヴァンテック社製、商品名:ガラス繊維ろ紙GF−75、孔径:0.3μm)で濾過した。なお、塩化アンモニウムに由来するアンモニア性窒素が消費されるまで(約2時間)、一定時間毎に、サンプリングを行なった。
【0120】
また、前記硝化汚泥試料と前記溶液Aとの混合直後に、前記サンプリングとは別に、30mlの試料を採取し、JIS K 0102の14の項に従い、汚泥濃度を測定した。
【0121】
塩化アンモニウムに由来するアンモニア性窒素が消費された後、残りの混合物のpHを測定すると共に、汚泥濃度を測定した。
【0122】
各サンプリング時点での試料を、イオンクロマトグラフ分析法(JIS K 0102の42.5の項に従う)を行なうことにより、アンモニア性窒素の量を測定する。分析結果より単位時間あたりのアンモニア性窒素の量の変化を算出し、これを分解速度として、アンモニア酸化速度を求めた。
【0123】
一方、500ml容三角フラスコに、前記希釈水390mlを入れ、1000mg−N/lの亜硝酸ナトリウム水溶液 10mlを添加して、混合物Bを調製した。ついで、500ml容三角フラスコ内の混合物Bを、恒温槽中、30℃に維持し、撹拌しながら、10分間以上曝気し、溶液Bを得た。ここで、溶液BのpHを測定した。
【0124】
硝化汚泥を500ml採取し、遠心分離器によって硝化汚泥の固液分離を行った。得られた産物から、上澄み液を除去し、前記希釈水 50mlに撹拌し、分散させた。得られた産物の全容量を、前記希釈水を用いて、100mlとなるように調整し、硝化汚泥試料を得た。
【0125】
その後、得られた硝化汚泥試料 100mlを、前記500ml容フラスコに入れ、前記溶液Bと混合した。混合と同時に、5ml容シリンジで、前記混合により得られた試料 5mlをサンプリングし、フィルター(アドヴァンテック社製、商品名:ガラス繊維ろ紙GF−75、孔径:0.3μm)で濾過した。なお、亜硝酸ナトリウムに由来する亜硝酸性窒素が消費されるまで(約2時間)、一定時間毎に、サンプリングを行なった。
【0126】
また、前記硝化汚泥試料と前記溶液Bとの混合直後に、前記サンプリングとは別に、30mlの試料を採取し、汚泥濃度を測定した。
【0127】
亜硝酸ナトリウムに由来する亜硝酸性窒素が消費された後、残りの混合物のpHを測定すると共に、汚泥濃度を測定した。
【0128】
各サンプリング時点での試料を、イオンクロマトグラフ分析法(JIS K 0102の43.1.2の項に従う)を行なうことにより、亜硝酸性窒素の量を測定した。分析結果より単位時間あたりのアンモニア性窒素の量の変化を算出し、これを分解速度として、亜硝酸酸化速度を求めた。
【0129】
また、活性汚泥中に含まれる細菌について、以下のように、リアルタイムPCRで解析を行なった。全DNAの精製は、商品名:ISOIL for Beads Beating(株式会社ニッポンジーン製)を用いて行なった。リアルタイムPCR法によりアンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌それぞれの菌数解析を行なった。アンモニア酸化細菌数の定量は、CTO 189fA/BとCTO 189fCとRT1rとTMP1からなるプライマー/プローブセットを用いたTaqMan法により行なった。亜硝酸酸化細菌数の定量は、NSR1113fとNSR1264rとNSR1143Taqとからなるプライマー/プローブセットを用いたTaqMan法により行なった。
【0130】
図5に下水処理場の水処理プロセスにおける、各測定日におけるアンモニア酸化速度と亜硝酸酸化速度を示す。図中、丸印は、アンモニア酸化速度、三角印は、亜硝酸酸化速度を示す。また、図6に下水処理場の水処理プロセスにおける硝化に関与する細菌数(遺伝子解析法に基づく)および活性汚泥濃度を示す。図中、丸印は、アンモニア酸化細菌、三角印は、亜硝酸酸化細菌、四角印は活性汚泥濃度である。図7にアンモニア酸化細菌の濃度、図8に亜硝酸酸化細菌の濃度を示す.図中、丸印は、活性試験に基づく細菌濃度(mg−COD/l)、四角印は、遺伝子解析法に基づく細菌濃度(mg−COD/l)を示す。なお、文献〔フルマイ(H.Furumai)ら、Indian J.Eng.Materials Sci.、第5巻、第173頁〜第181頁(1998)〕に基づき、アンモニア酸化に関する最大比増殖速度/増殖収率は、0.067[mg−N/mg−COD/hr]、亜硝酸酸化に関する最大比増殖速度/増殖収率は0.29[mg−N/mg−COD/hr]とした。
【0131】
図5より、アンモニア酸化速度の最大値と最小値の差は2.1mg−N/l/hr、亜硝酸酸化速度では1.6mg−N/l/hrであり、測定日によりばらつきが見られる。
一方、細菌数を見ると、アンモニア酸化細菌は108オーダーで推移している。また、亜硝酸酸化細菌は107オーダー後半から108オーダーで推移している。以上から、各測定日において、それぞれの速度と細菌数は必ずしも対応していなかった。すなわち、最大の酸化速度は細菌数だけに依存しないことが分かった。さらに、図6に示されるように、活性汚泥濃度の変化と細菌数の変化とは対応していないため、活性汚泥濃度が細菌数を反映していないことがわかる。
【0132】
また、図7および図8に示されるように、活性試験に基づく細菌濃度(mg−COD/l)の大小と、遺伝子解析法に基づく細菌濃度(mg−COD/l)とが対応していないことが分かる。
【0133】
さらに、アンモニア酸化および亜硝酸酸化のそれぞれに対応して、活性パラメータηを、式(4):
【0134】
【数9】

【0135】
で求めた。その結果を図9に示す。
【0136】
その結果、図9に示されるように、活性パラメータは、活性の変化および細菌数の変化を反映することがわかる。
【0137】
(試験例1)
活性パラメータの効果のみを確認するため、亜硝酸プロセスを追加せず、脱窒プロセスについては、従来の活性汚泥モデルの式(具体的には、活性パラメータを導入しない式)を使用し、硝化プロセスにのみ活性パラメータを導入して計算を行なった。対象は下水処理場であり、ベースとなる活性汚泥モデルとしてASM3を用い、反応速度論定数にはASM3の水温20℃における推奨値を使用した。
【0138】
対象とした下水処理場は、実施例1に記載と同じく、流入水量7500m3/日、全5槽の反応槽の有効容量は、2800m3であり、その分画比は、1:1:1:1:0.7であった。前記下水処理場では、標準活性汚泥法が採用されているが、第1槽(図4の反応槽5a)のエアレーションを停止させた。返送汚泥引抜き量を3500m3/日、余剰汚泥引抜き量は120m3/日として計算した。MLSSは、約1500mg/lであり、溶存酸素量は約1.0mg/lであった。
【0139】
硝化プロセスは、亜硝酸酸化プロセスに律速されるとして、実施例1の5月11日(第1日)の実験で得られた亜硝酸酸化速度2.6mg−N/l/hrと、亜硝酸酸化細菌数2.6×1010細胞/lと、最大比増殖速度0.042hr-1と、増殖収率0.24mg−COD/mg−Nを用いて、活性パラメータηを、式(7):
【0140】
【数10】

【0141】
で算出した。
【0142】
流入水質は、溶存酸素0mg−O2/l、溶解性不活性有機物質15mg−COD/l、易分解性有機物質30mg−COD/l、アンモニア性窒素8.3mg−N/l、窒素ガス0mg−N/l、硝酸性窒素0mg−N/l、アルカリ度30moleHCO3-/l、浮遊不活性有機物質12mg−COD/l、遅分解性有機物質50mg−COD/l、従属栄養細菌15mg−COD/l、従属栄養細菌の細胞内貯蔵有機物質0mg−COD/l、硝化細菌0mg−COD/l、浮遊物質100mg−SS/lとした。活性パラメータを導入した場合の結果(実施例2)、ASM3の推奨値を使用した場合の結果(比較例1)、および測定結果(5月平均)(参照例1)それぞれを表2に示す。
【0143】
【表2】

【0144】
その結果、表2に示されるように、比較例1(ASM3の推奨値を使用)の場合、測定結果と比較してNH4−Nが低いため、硝化反応が進みすぎている結果が得られた。このように、従来であれば、測定結果(参照例1)に合致するように、トライアンドエラーで最大比増殖速度などの反応速度論定数を調整するが、実施例2のように、前記活性パラメータを導入した場合、少ない試行回数で予測精度を向上させることができる。さらに、少ない試行回数で反応速度論定数を決定できるため、作業効率が高くなる効果がある。また、従来であれば、反応速度論定数を調整するキャリブレーションにも経験が必要であったが、遺伝子解析を用いることで、経験が少ない技術者であっても、高精度なシミュレーションを行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明により、より効率的で、低コストでの生物学的水処理の実施が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、本発明の生物学的水処理のシミュレーション方法の一態様を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の生物学的水処理のシミュレーション装置の一態様を示すフローチャートである。
【図3】図3は、火力発電所の排水処理のプロセスの概略図である。
【図4】図4は、下水処理場の水処理のプロセスの概略図である。
【図5】図5は、下水処理場の水処理のプロセスにおける、各測定日における硝化速度を示す図である。図中、丸印は、アンモニア酸化速度、三角印は、亜硝酸酸化速度を示す。
【図6】図6は、下水処理場の水処理のプロセスにおける、各測定日における硝化に関与する細菌数を示す図である。図中、丸印は、アンモニア酸化細菌、三角印は、亜硝酸酸化細菌、四角印は、活性汚泥濃度を示す。
【図7】図7は、各測定日におけるアンモニア酸化細菌濃度を示す図である。図中、丸印は、活性試験に基づく細菌濃度(mg−COD/l)、四角印は、遺伝子解析法に基づく細菌濃度(mg−COD/l)を示す。
【図8】図8は、各測定日における亜硝酸酸化細菌濃度硝化速度を示す図である。図中、丸印は、活性試験に基づく細菌濃度(mg−COD/l)、四角印は、遺伝子解析法に基づく細菌濃度(mg−COD/l)を示す。
【図9】図9は、各測定日における活性パラメータを示す図である。図中、丸印は、アンモニア酸化活性、四角印は、亜硝酸酸化活性を示す。
【符号の説明】
【0147】
1 硝化槽
2 脱窒槽
3 酸化槽
4、6 固液分離槽
5 反応槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥と被処理水とを含有した被処理水相を有する生物反応槽中で、該活性汚泥により該被処理水を処理する工程を含む生物学的水処理をシミュレーションするシミュレーション方法であり、
(1)下記(1a)および(1b):
(1a) 該活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与する細菌の種類毎の細菌数を遺伝子解析法により決定し、該細菌の種類毎の細菌数から算出された細菌濃度、および
(1b) 該活性汚泥における処理対象物質の分解速度から求められた活性、
から算出された活性パラメータと、
(2)水処理プロセスの条件成分値と、
(3)対象となる生物反応槽の仕様と、
(4)生物反応槽の運転条件と、
(5)該細菌の種類毎の細菌数と、
に基づき、活性汚泥モデルにより、処理水質をシミュレーションすることを特徴とする、
生物学的水処理のシミュレーション方法。
【請求項2】
(A)活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与する細菌の種類毎の細菌数を遺伝子解析法により決定する工程、
(B)前記工程(1)で決定された細菌の種類毎の細菌数から、遺伝子解析に基づく細菌濃度を算出する工程、
(C)前記活性汚泥における処理対象物質の分解速度から活性を測定する工程、
(D)前記工程(B)で算出された細菌濃度と、前記工程(C)で算出された活性とから活性パラメータを算出する工程、および
(E)前記工程(D)で算出された活性パラメータと、水処理プロセスの条件成分値と、対象となる生物反応槽の仕様と、生物反応槽の運転条件と、前記工程(A)で決定された細菌の種類毎の細菌数とに基づき、活性汚泥モデルにより、処理水質をシミュレーションする工程、
を含む、請求項1記載の生物学的水処理のシミュレーション方法。
【請求項3】
該活性汚泥モデルが、IWA活性汚泥モデルNO.3(ASM3)に基づいて改良されたものである、請求項1または2記載の生物学的水処理のシミュレーション方法。
【請求項4】
該遺伝子解析法が、リアルタイムPCRである、請求項1〜3いずれか1項に記載の生物学的水処理のシミュレーション方法。
【請求項5】
該処理対象物質の分解に関与する細菌が、該処理対象物質の分解に関与して酸化能力を発揮する細菌および/または該処理対象物質の分解に関与して還元能力を発揮する細菌であり、該細菌に対応して、処理対象物質の分解に関与する活性が、該処理対象物質の分解に関与する酸化活性および/または該処理対象物質の分解に関与する還元活性である、請求項1〜4いずれか1項に記載の生物学的水処理のシミュレーション方法。
【請求項6】
該酸化活性として、アンモニア酸化活性と亜硝酸酸化活性とを含む硝化活性を測定し、かつ該還元活性として、硝酸還元活性と亜硝酸還元活性とを含む脱窒活性を測定する、請求項5記載の生物学的水処理のシミュレーション方法。
【請求項7】
被処理水が、窒素化合物を含有した排水である、請求項1〜6いずれか1項に記載の生物学的水処理のシミュレーション方法。
【請求項8】
活性汚泥と被処理水とを含有した被処理水相を有する生物反応槽中で、該活性汚泥により該被処理水を処理する工程を含む生物学的水処理をシミュレーションするシミュレーション装置であって、
活性汚泥に含まれ、かつ該被処理水中の処理対象物質の分解に関与する細菌の種類毎の細菌数を遺伝子解析法により決定する遺伝子解析手段と、
該遺伝子解析手段により決定された細菌の種類毎の細菌数から、遺伝子解析に基づく細菌濃度を算出する遺伝子解析ベース細菌濃度算出手段と、
該活性汚泥における処理対象物質の分解速度から活性を測定する活性測定手段と、
該細菌濃度と細菌の活性とから活性パラメータを算出する活性パラメータ算出手段と、
活性パラメータのデータが格納された活性パラメータデータベースと、
活性汚泥モデルを有し、活性パラメータデータベースに格納された活性パラメータのデータを参照し、入力された水処理プロセスの条件成分値と、生物反応槽の仕様と、生物反応槽の運転条件と、活性パラメータ算出手段により得られた活性パラメータと、該遺伝子解析手段により決定された細菌の種類毎の細菌数とに基づき、該活性汚泥モデルにより、処理水質を求める処理水質演算手段と
を備えたことを特徴とする、生物学的水処理のシミュレーション装置。
【請求項9】
該活性汚泥モデルが、ASM3に基づいて改良されたものである、請求項8記載の生物学的水処理のシミュレーション装置。
【請求項10】
該遺伝子解析手段が、リアルタイムPCRにより、該細菌の種類毎の細菌数を決定する手段である、請求項8または9記載の生物学的水処理のシミュレーション装置。
【請求項11】
該活性測定手段が、該処理対象物質の分解に関与する活性として、該処理対象物質の分解に関与する酸化活性および/または該処理対象物質の分解に関与する還元活性を測定する手段である、請求項8〜10いずれか1項に記載の生物学的水処理のシミュレーション装置。
【請求項12】
該処理対象物質の分解に関与する酸化活性が、アンモニア酸化活性と亜硝酸酸化活性とを含む硝化活性であり、該処理対象物質の分解に関与する還元活性が、硝酸還元活性と亜硝酸還元活性とを含む脱窒活性である、請求項11記載の生物学的水処理のシミュレーション装置。
【請求項13】
被処理水として、窒素化合物を含有した排水を処理する生物学的水処理をシミュレーションするためのものである、請求項8〜12いずれか1項に記載の生物学的水処理のシミュレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−142704(P2008−142704A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294618(P2007−294618)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人科学技術振興機構革新技術開発研究事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】