説明

生物系ポリシロキサン

本発明は、aモル%のジメチルシロキサン、−K−RIMで置換されたbモル%のシロキサン、−K−RIM−Zで置換されたcモル%のシロキサン及び−L−Zで置換されたdモル%のシロキサンを有するポリジメチルシロキサン主鎖を有するマクロモノマーに関し、そこでは、末端シロキサン基が、Rで3置換され、RIMは、屈折率調整基であり;Zはラジカル重合性基であり;Kはスペーサー基であり;Lは選択的であり、そしてスペーサー基であり;各Rは、RIM、低級アルキル基、水素又はZから独立して選択され;そしてaは0〜95モル%の範囲にある上記マクロモノマーのモル%であり;bは5〜99モル%の範囲にある上記マクロモノマーのモル%であり;cは0〜2モル%の範囲にある上記マクロモノマーのモル%であり;そしてdは0〜2モル%の範囲にある上記マクロモノマーのモル%であるが;ただし、c及びdは同時に0モル%ではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサンマクロモノマー、及び生体用デバイスとして用いるために好適な当該シロキサンマクロモノマーから形成されたポリマーに関する。特に、上記シロキサンマクロモノマーは、注入可能で、その場で硬化可能な、調節用眼内レンズ(accommodating intraocular Lenses)を形成するための好適な前駆体である。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂、ヒドロゲル又はポリシロキサン等から形成することができる非変形性で、折り曲げることができ(foldable)、伸張性を有するレンズを含む眼内レンズ(IOL,intraocular lense)が一般的に知られている。これらのIOLは、角膜を切開し、そして予備形成させたIOLを挿入することにより移植される。移植の際の外傷を最小にするために、折ることができ且つ伸張することができるIOLが開発されている。これらのレンズを、上記角膜内でなされるべきより小さな切開を可能とする小さなチューブにより包み、そして挿入することができる。例えば、小切開技法において、脱水化ヒドロゲルを用いることができる。挿入前にヒドロゲルレンズを脱水し、そして一度、嚢の袋状部分(capsular sac)内部で自然に再水和させる。IOLとして好適であるために、これらの変形可能なレンズは、適切な光学特性だけではなく、移植の際にそれらを変形させ、次いでin vivoでそれらの形状を回復する機械的性質、例えば、構造的完全性及び弾性が要求される。しかし、上記IOLは、それらの剛性のため、そして、老眼の補正のための最適の溶液ではないので、in vivoで調節することができない。
【0003】
IOLをさらに改良するため、そして外科的切開を1.5mm未満に減らすために、注入可能なIOLを利用する技法が示唆されている。注入可能なIOLを、レンズ充填又は再充填手順、例えば、Phaco−Ersatzにより移植する。上記手順では、cupsule−zonule−ciliaryボディフレームワークを保持しながら、水晶体の天然材料を摘出する。次いで、無傷の水晶体嚢が、空の嚢(capsular bag)に低粘度材料を注入することにより再充填される。次いで、上記材料を、その場で硬化させることができる。この方法では、上記レンズの形状を形成させるために、嚢を用いる。再充填材料の弾性が十分に低い場合には、天然水晶体を用いて行われるように、毛様筋及び小帯により上記レンズ形状を操作することができる。従って、上記注入可能なIOLを、in vivoで調節することができる。
【0004】
その場での硬化、例えば、架橋方法を制御すること、そして臨床の許容可能な条件を見出すことに関する課題と離れて、注入可能なIOLとして用いるためのポリオルガノシロキサン組成物を改良するための検討が行われている。注入可能なIOL材料は、注入のための好適な粘度、好適な屈折率、硬化後の好適な機械的特性、すなわち弾性率、良好な透明性を有すること、生体適合性を有すること(例えば、最小の抽出可能物)、そして滅菌性を有すること(sterilisable)の必要性がある。
【0005】
注入可能で、その場で硬化可能な、調節用眼内レンズのための特性、例えば、その場での硬化性、粘度、弾性率及び摘出物は、変形可能なIOLに関して要求されるものと異なる。従って、変形可能なIOLにおいて有用な材料は、注入可能なIOLとして用いるために決して好適であるとはいえない。
【0006】
例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が、折ることができるか又は変形可能なIOLの材料として用いられている。文脈を通して、注入可能なIOLでは、PDMSは、比較的低粘度を有するので、硬化前に注入部位(すなわち、嚢)から漏れる傾向があることが見出されている。この欠陥を取り扱うために、高粘度ポリシロキサンが、PDMS反応混合物に添加されている。しかし、高粘度シリコーンの欠点は、得られた生成物の光学的品質を損なう恐れのある気泡を取り込む可能性があることである。また、それらには、非常に繊細な環境で、強い力が要求されることが多く、外科医が物理的に注入することが難しい。さらに、高分画のジメチルシロキサンユニットを有するポリオルガノシロキサンは、注入されたレンズ材料が、上記嚢内に存在する任意の水性層上に浮かぶこととなる望ましくない結果を伴う、許容できない低比重を有するであろうことが見出されている。上記ケースでは、嚢状部分を完全に満たすことが難しく、そして充填及び硬化工程の際にレンズ形状を正確に補正するために、外科医が、嚢内の水を手で搾り出す必要がある。
【0007】
芳香族系シロキサンマクロモノマーの重合により生成させた、変形可能なIOLとして用いるための別のポリシロキサンが、国際公開第03/040154号パンフレットに開示されている。国際公開第03/040154号パンフレットには、当該明細書に記載されるポリシロキサンが、1.45以上の比較的高いRIを有し、そして生体適合性を有することが教示されている。しかし、上記ポリシロキサンは、注入可能で、その場で硬化可能な、調節用IOLに好適ではない。記載されるポリシロキサンは、高い弾性率を有し、毛様筋及び小帯が、これらの材料で満たされたレンズの形状を変化させることを阻止するであろう。
【0008】
米国特許第2005/0070626号明細書には、シリコーンポリマー及びシリカ強化材から構成される高いRIを有する変形可能なIOLが記載されている。上記シリコーンポリマーは、アリール基置換基を有するポリシロキサンである。しかし、この材料は、注入可能で、その場で硬化可能な、調節用IOLに好適ではないであろう。米国特許第2005/0070626号明細書に記載されるポリシロキサンを合成するための方法は、材料を100℃に加熱することを要求する。この処理は、上記材料を嚢に注入する前に、任意の重合性基を重合させ、そして硬化させる。さらに、教示される合成方法は、その場で硬化させるために好適であるべき十分に均一の材料を生成しないであろう。さらに、上記材料は、マクロモノマーを架橋させるためにヒドロシリル化反応を用いるように、その場で硬化させるためにさらに不適当である。ヒドロシリル化反応は、発熱反応であることが知られ、従って、その場で実施されると、周囲の生体組織にダメージを与える可能性がある。さらに、上記方法は、「オンデマンド硬化」法ではない;それは、2成分の混合を要求し、次いで、行われる反応を待つ。それ自体、外科医が、上記混合物を上記嚢に注入し、そして再充填された水準を正確に補正することを確保するための調整を行うタイムフレームが制限される。
【0009】
国際公開03/040154号パンフレット及び米国特許第2005/0070626号明細書における教示に関連する別の可能性のある欠点は、一部のシラン基が反応してSiOH基を形成することである。次いで、これらのSiOHが反応して、上記マクロモノマー間のさらなる架橋を形成する場合がある。このさらなる架橋は、上記マクロモノマーの粘度及び硬化したポリマーの弾性率が重要である用途に特に関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、天然水晶体の最適の代替品を構成するように、好適な屈折率、並びに所望の機械的及び光学品質を有する、ポリシロキサンに由来する、注入可能で、その場で硬化可能な、調節用レンズ形成材料を配合することが望ましい。屈折異常、例えば、近視又は遠視を補正するために、上記材料の屈折率を調整することができるか、又は整調できるように上記材料を配合することがさらに望ましい。
本明細書における任意の先行技術への参照は、この先行技術がオーストラリア又は任意の管轄における一般的な知識の一部を形成するか、あるいはこの先行技術が、当業者により関連性があるとして確かめられ、理解され、そしてみなされることを適度に期待するとの提案の形成又は知識としてみなされるものではなく、そしてそうすべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書において、用語「含む」及び当該用語の変形、例えば、「含んでいる」、「含む」、「含まれる」は、他の添加剤、成分、整数又はステップを除外することを目的としない。
【0012】
驚くべきことに、ソフトゲルで天然水晶体を置換する実験を実施したところ、霊長類(アカゲザル)において、置換物が、すべての動物の屈折異常(遠視)を誘発することが見出された。ex vivoの人間の眼を用いて実施された実験に関して、同様の結果が得られた。天然水晶体の内容物を、同一屈折率(RI)のポリマーで置換すると、屈折異常が誘発されないであろうことが期待された。一般的な光学モデルでは、天然の人間の水晶体の「書籍」の平均RI値は、1.40〜1.41であることが示唆されている。特に、1.407の屈折率値が用いられている。1.407のRIを有するポリジメチルシロキサンが生産されている。
【0013】
水晶体を、1.421〜1.446のRIを有する材料で再充填すると、レンズの元の光強度が維持されることが示されている。
一般的に、ポリシロキサンのRIは、当該ポリマー主鎖に沿った置換基を変化させることにより上下させることができる。
理論的には、以下により、シロキサンポリマーのRIを大きくすることができる;
・フェニル/芳香環含有率を高くすること;
・ハロゲン(Br、I、Cl)含有率を高くすること;
・硫黄含有率を高くすること;
・上記ポリマーのフッ素化含有率を下げること;
そして以下により、シロキサンポリマーのRIを小さくすることができる;
・上記ポリマーのフッ素化含有率を高くすること;
・フェニル/芳香環含有率を低くすること;
・ハロゲン(Br、I、Cl)含有率を低くすること;及び/又は
・硫黄含有率を低くすること。
【0014】
しかし、種々の置換基のモルパーセンテージを、当然のことながら、単に上げる又は下げることはできない。例えば、高RI材料を作り出すために要求されうる高モルパーセンテージのフェニル置換を含むシロキサンは、凝固する傾向を欠点として有する。上記ポリシロキサンの凝固する妥協特性により、それらは、注入可能で、その場で硬化可能な、調節用IOLとして用いるために不適当となる。従って、この傾向により、シロキサン上のフェニル置換可能性の程度、そして従って達成しうる得られるRIが制限される。
【0015】
従って、より高いRIを有する、注入可能で、その場で硬化可能な、調節用IOLにおいて用いるために好適なポリシロキサンに関する必要性がまた存在する。
【0016】
従って、第一の態様において、本発明は、次の式1のマクロモノマーを提供する;
【化1】

(式中、
RIMは、屈折率調整基であり;
Zは、ラジカル重合性基であり;
Kは、スペーサー基であり;
Lは、選択的であり、そしてスペーサー基であり;
各Rは、RIM、低級アルキル基、水素又はZから独立して選択され;
aは、0〜95モル%の範囲にある上記マクロモノマーのモル%であり;
bは、5〜99モル%の範囲にある上記マクロモノマーのモル%であり;
cは、0〜2モル%の範囲にある上記マクロモノマーのモル%であり;そして
dは、0〜2モル%の範囲にある上記マクロモノマーのモル%であるが;
ただし、c及びdは、同時に0モル%ではない)。
【0017】
異なる実施形態では、上記マクロモノマーは、1つ又は2つ以上の次の特徴を有する;
・20,000〜400,000の範囲、好ましくは40,000〜200,000の範囲、そしてさらに好ましくは50,000〜100,000の範囲における分子量;
・37℃において、1.33〜1.60の範囲、好ましくは1.41〜1.5の範囲、さらに好ましくは1.421〜1.444の範囲、そして最も好ましくは1.426〜1.440の範囲における屈折率;
・平均して、300以上のシロキサン繰返し単位当たり1つのZ基、そしてさらに好ましくは、550以上のシロキサン繰返し単位当たり1つのZ基、
・25℃において、150,000cSt未満、好ましくは80,000cSt未満、そしてさらに好ましくは1,000cSt〜60,000cStの範囲における粘度;そして
・IOLポリマーに硬化させた場合に、37℃において、50kPa未満、好ましくは10kPa未満、そしてさらに好ましくは5kPa未満の弾性率。
【0018】
各RIMは、上記マクロモノマーのRIを調整することができる任意の基である。例えば、調整は、同等のメチルシロキサンマクロモノマーのRIからの変化でありうる。RIMは、RIを大きくする又は小さくすることにより、上記マクロモノマーのRIを調整することができる。より高い電子密度を有する基は、上記マクロモノマーのRIを大きくする傾向を有し、一方で、より低い電子密度を有する基は、上記マクロモノマーのRIを小さくする傾向を有する。
【0019】
RIMは、置換された又は置換されていない芳香族基、フッ素化基、一又は複数の臭素、ヨウ素若しくは塩素原子を含む基、あるいは硫黄含有基であることができる。置換された又は置換されていない芳香族基、硫黄含有基、あるいは臭素、ヨウ素又は塩素含有基を使用することにより、高い屈折率を有するシロキサンポリマーを生ずるであろう。あるいは、フッ素化基を使用することにより、のシロキサンポリマーの屈折率がより小さくなるであろう。
【0020】
置換された又は置換されていない芳香族基は、フェニル環でありうる。さらに、フェニル環に対する類似の芳香族基、例えば、縮合された芳香族誘導体、例えば、ナフタレン、アントラセン、1H−フェナレン等、又は中心炭素又はケイ素原子に結合した芳香環のクラスターを用いることができる。上記芳香族基を、アルコール、塩素、臭素、ヨウ素、アミン、低級アルキル、低級アルケニル及び低級アルコキシを含む1又は2以上の置換基により置換することができる。好ましくは、上記置換された又は置換されていない芳香族基は、フェニル環である。好ましくは、上記置換されたフェニル基は、スチレンではない。
【0021】
好適なフッ素化基には、パーフルオロ化C1〜C12アルキルが含まれる。
例えば、部分的若しくは完全フッ素化C4〜C8シクロアルキル又は次の式の基:
−[(CH2a−(Y)z−(CHF)b−(CF2c]−R2
(式中、R2は水素又はフッ素であり、Yは−N(R3)SO2−、−OSO2−、−OC(O)−又は−N(R3)C(O)−の基であり、R3は水素又はC1〜C4アルキルであり、zは0又は1の整数であり、aは1〜15の整数であり、bは0〜6の整数であり、そしてcは1〜20の整数である)
を用いることができる。
【0022】
硫黄含有基には、チオエステル又はチオエーテル部分が含まれる。
例えば、次の式の基:
【化2】

が含まれる。
【0023】
RIMは、上述のように置換されたか又は置換されていなくともよいフェニル基であることが好ましい。
各Zは、独立して、in vivoでポリマーを形成するために、上記マクロモノマーを架橋することができる任意のラジカル重合性基であることができる。好ましくは、Zは、エチレン系不飽和基である。好適な基には、アクリレート、メタクリレート、アルキルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニル、スチレン、アクリルアミドアルキル、メタクリルアミドアルキル、アクリルオキシアルキル及びメタクリルオキシアルキルが含まれる。さらに、特に上記シロキサンマクロモノマー又はシロキサン試薬が、ペンダントアルコール、チオール又はアミノ基である場合に、ラジカル重合性基に関する好適な前駆体は、アズラクトン、イソシアナトエチルメタクリレート(IEM)、アクリロイルクロリド、メタクリル酸無水物(methacrylic anhydride)又はメタクリロイルクロリドでありうる。
【0024】
各Kは、独立して、上記屈折率調整基を上記シロキサン主鎖に連結することができる、任意の生物学的許容基であることができる。Kは、所望により1又は2以上のヘテロ原子、例えば、O、N又はS、あるいは官能基、例えば、エステル、アミド、ウレタン、カーボネート、チオエステル又は−C(S)−NH−(それらに限定されるものではない)により分断された、直鎖、分岐鎖、又は環式の低級アルキルでありうる。さらに、上記低級アルキルは、官能基、例えば、エステル、アミド、ウレタン、カーボネート、チオエステル、チオール、アルコール又はアミン(それらに限定されるものではない)により置換されていてもよい。
【0025】
Kが直鎖、分岐鎖、又は環式の低級アルキルである場合には、Kは、炭素原子を経由してシロキサン基のケイ素原子に結合することが好ましい。
好ましくは、Kは、次の式:
−(CH2n
(式中、nは、整数1、2、3、4又は5である)
の低級アルキルである。
さらに好ましくは、nは、整数2又は3である。
【0026】
存在する場合には、各Lは、独立して、上記ラジカル重合性基を、上記シロキサン主鎖に連結することができる任意の生物学的許容基でありうる。Lは、所望により少なくとも1のヘテロ原子、例えば、O、N又はS、あるいは官能基、例えば、エステル、アミド、ウレタン、カーボネート、チオエステル又は−C(S)−NH−(それらに限定されるものではない)により分断された、直鎖、分岐鎖、又は環式の低級アルキルでありうる。さらに、上記低級アルキルは、官能基、例えば、エステル、アミド、ウレタン、カーボネート、チオエステル、チオール、アルコール又はアミン(それらに限定されるものではない)で置換されていてもよい。
【0027】
好ましくは、Lは、次の式:
−(CH2n
(式中、nは、整数1、2、3、4又は5である)
の低級アルキルである。
さらに好ましくは、nは、整数2又は3である。
Lに関する好適な前駆体には、アリルアルコール、アリルアミン、プロピレンアルコール及びアリルシクロヘキサノールが含まれる。
【0028】
低級アルキルは、直鎖又は分岐鎖でありうる、特に、最大10個の炭素原子、好ましくは最大4個の炭素原子を有する。上記基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチル基が含まれる。
【0029】
低級アルケニルは、直鎖又は分岐鎖でありうる、特に、最大10個の炭素原子、好ましくは最大4個の炭素原子を有する。上記基には、例えば、ビニル、アリル及びプロペニル基が含まれる。
aは、好ましくは10〜88モル%の範囲、そしてさらに好ましくは50〜85モル%の範囲である。
bは、好ましくは5〜70モル%の範囲、さらに好ましくは7〜50モル%の範囲、そして最も好ましくは10〜30モル%の範囲である。
cは、好ましくは0〜1.5モル%の範囲、そしてさらに好ましくは0〜1モル%の範囲である。
dは、好ましくは0〜1.5モル%の範囲、そしてさらに好ましくは0〜1モル%の範囲である。
【0030】
本発明の一形態では、Rは、独立して、RIM及び低級アルキルから選択される。
上記マクロモノマーの端部の形態では、末端基を形成することができる任意の試薬を用いることができる。上記末端基には、硬化した場合に、上記マクロモノマーの架橋の可能性のある度合いを増すためのラジカル重合性基が含まれうる。末端基を導入するために好適な試薬には、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−メタクリルオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−クロロプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン及びジビニルテトラメチルジシロキサンが含まれる。
【0031】
正しく評価されるように、式1において、RIM、Z、K、L及びR基は、上記明細書に与えられる代案によって変わりうる。例えば、当業者が正しく評価するように、上記マクロモノマーは、上記シロキサン主鎖上に、2種又は3種以上の異なる−K−RIM、−K−RIM−Z又は−L−Z基を置換することにより合成されうる。従って、本発明は、全てのRIM、Z、K、L及びR基が、所与のマクロモノマー内で同一であることを要求しない。
【0032】
上記マクロモノマーは、医薬活性を有する基、あるいはUV又はブルーライトフィルター、重合開始剤、例えば、光開始剤、熱開始剤若しくはレドックス開始剤、又は生物学的に不活性なキャップ基として作用することができる基で、所望によりさらに置換されうる。上記基を用いた置換、又は他の好適な基により、得られたポリマーにこれらの活性が与えられるであろう。上記基は、ケイ素原子への直接結合により、又は−L−Z、−K−RIM−Z又は−K−RIM基による連結により、あるいは他の好適な方法を経由して、上記マクロモノマーに導入されうる。
【0033】
別の態様では、本発明は、上述のようにマクロモノマーを含む生体用デバイス内に硬化性を有する組成物を提供する。上記生体用デバイスは、眼病用デバイスであることが好ましい。上記眼病用デバイスは、IOL、角膜インレー、角膜アンレー、コンタクトレンズ、又は人工角膜であることができる。好ましくは、上記デバイスはIOLである。さらに好ましくは、上記デバイスは、注入可能で、その場で硬化可能な、調節用IOLである。従って、本発明の好ましい実施形態は、上述のように、マクロモノマーを含む調節用IOLを形成するための、その場で硬化可能な組成物である。さらに好ましい実施形態は、上述のマクロモノマーを含む、注入可能で、その場で硬化可能なIOL組成物である。
【0034】
上記組成物を、水晶体嚢内に注入し、次いでその場で、可視光線又は紫外線により硬化させることができる。一度形成したレンズは、小帯を制御する毛様筋が、通常の手段においてレンズ形状を調整することができる十分に小さい弾性率を有し、そのようにして、上記レンズを調節することができる。
【0035】
本発明はまた、上記組成物を生体用デバイス、好ましくは、注入可能で、その場で硬化可能な、調節用IOLとして用いることを包含する。
さらなる態様では、本発明は、上記組成物から形成された生体用デバイス、好ましくは調節用IOLを提供する。
【0036】
有利には、本発明のマクロモノマーは、上記材料のRIを、要求される特定の用途に調整することができる。典型的には、上記RIは、上記IOLが置換する天然水晶体に関して通常評価されるものよりも高いであろう。上記IOLは、天然水晶体を置換するか、又は眼の中にあらかじめ移植されたIOLであることができる。上記IOLのRIは、上記マクロモノマー内のRIM基のモル%を変えることにより、眼を治療するために要求されるものに調整又はチューンされる。望ましくは、上記組成物から形成されたIOLは、健康な天然水晶体と同様の物理的特性、特に弾性を有する。上記マクロモノマーはまた、上記マクロモノマーを嚢内に注入することができる、硬化前粘度を有することが好ましい。上記粘度は、好ましくは150,000cSt未満、さらに好ましくは80,000cSt未満である。
【0037】
別の態様では、本発明は、上述のように、組成物を水晶体嚢内に導入し、次いで上記組成物を硬化させることを含む、IOLを移植する方法を提供する。本発明はまた、上述のように、IOLを移植することを含む、屈折異常を治療する方法を含む。
態様の一つでは、本発明は、眼の中の屈折異常を補正するか、又は眼の屈折力を維持するための調節用IOLの製造において上記組成物を用いることを含む。本発明は、上述のように、組成物から形成したIOLを有する眼にさらに広がる。
【0038】
本発明はまた、上述のように、マクロモノマーを重合することにより、1.33を超える屈折率を有する、IOLを含む医療装置又は人工器官を形成する方法に広がる。好ましくは、重合は、その場で実施される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、反応原材料中のテトラメチルテトラプロピルベンゼンシクロテトラシロキサンのモル%濃度に対する37℃における屈折率のプロットである。
【図2】図2は、図1よりも高濃度に関する、反応原材料中のテトラメチルテトラプロピルベンゼンシクロテトラシロキサンのモル%濃度に対する37℃における屈折率のプロットである。
【0040】
【図3】図3は、合成パラメータを決定するための較正曲線を提供する、得られたマクロモノマー中のメチルプロピルベンゼンシロキサンユニットのモル比(NMR分析により測定されるような)に対する、原材料中のテトラメチルテトラプロピルベンゼンシクロテトラシロキサンのモル比のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明のマクロモノマーは、それらが高屈折率ポリマーを形成するだけではなく、特に、調節用IOLのための注入可能な前駆体として用いられた場合に所望の機械的及び化学的特徴を示す優位性を提示する。さらに、上記マクロモノマーの屈折率は、合成の際に、種々の屈折率を有するポリマーの範囲を調製することができるように制御されうる。
【0042】
本発明のマクロモノマーは、ランダム又はブロック型のマクロモノマーであることができる。典型的には、上記マクロモノマーは、ランダムマクロモノマーである。
本発明のマクロモノマーは、20,000〜400,000の範囲、好ましくは40,000〜200,000の範囲、そしてさらに好ましくは50,000〜100,000の範囲の分子量を有することができる。
本発明のマクロモノマーは、当業界に公知の好適な方法により合成されうる。
【0043】
屈折率調整基及び/又は重合性基をシロキサンマクロモノマーに結合させる有利な方法は、ヒドロシリル化反応を用いることである。例えば、ヒドロシリル化を用いると、ラジカル重合性基及び屈折率調整基が、当業者に公知の方法において、アリル−前駆体を用いて上記シロキサン主鎖に結合する。例えば、フェニル官能化アリル−前駆体等には、アリルベンゼン、スチレン、アリルフェノール、アリルフェノキシが含まれ、そしてオイゲノール及びラジカル重合性官能化アリル−前駆体等には、アリル(メタ)アクリレート及びアリルイソシアネートが含まれる。スキーム1は、ヒドロシリル化反応及びフェニル基含有の好適な試薬を具体的に説明する。
【0044】
【化3】

【0045】
ヒドロシリル化反応を用いた屈折率調整基及びラジカル重合性基は、シラン官能性であるマクロモノマー、又はそれらが開環重合を受け上記マクロモノマーを形成する前のシラン官能化環式シロキサン中間体のいずれに付加する。このアプローチを用いた官能化に関する好適な環式シロキサン中間体には、テトラメチルシクロテトラシロキサン(D4H)、トリメチルシクロトリシロキサン(D3H)、ペンタメチルシクロペンタシロキサン(D5H)又はヘキサメチル−シクロヘキサシロキサン(D6H)が含まれる。
【0046】
次の明細書及びスキームは、ラジカル重合性基及び屈折率調整基を置換するための種々のアプローチを記載するが、当該例は、ヒドロシリル化反応を介した、屈折率調整基を含むフェニルに特に関連する。
【0047】
図、例えば、「a=80、b=20」が提供されるスキームでは、これらは、示される種々の置換基に関するモル%値である。上記スキームでは、a、b、c及びd等は、式1に関して規定されるような整数a、b、c及びdに直接対応するものでは必ずしもない。さらに、a、b、c等の割合のマクロモノマーが反応するスキームでは、上記反応生成物マクロモノマー内の同一文字の使用は、必ずしも、反応が100%の完了に進むことを暗示するものではない。従って、具体的に説明された反応により、置換されたシロキサン主鎖成分の相対的な割合に多少の変化が必ず生ずるであろう。
【0048】
アプローチの一つは、上記フェニル基及び重合性基の両方の導入を可能とする十分なシラン官能基を有するシラン官能化マクロモノマーを調製することである。
例えば、上記シラン官能化マクロモノマーを、スキーム2に描写されるように、連続的に官能化する。例えば、上記シランマクロモノマーを、第1のアリルベンゼンで変性し、単離し、次いで第2のアリル誘導体、例えば、アリルアルコールで官能化する。導入されたアルコール性基をさらに用いて、重合性基、例えば、アズラクトン、イソシアナトエチルメタクリレート(IEM)、アクリロイルクロリド又はメタクリロイル無水物を含む好適な物質と反応させて重合性基を結合させる。
【0049】
【化4】

【0050】
あるいは、上記シラン官能化マクロモノマーは、スキーム3に描写されるように、平行官能化を受ける。アリル誘導体の混合物を、1ステップで、上記シランマクロモノマー上にヒドロシリル化することができる。例えば、オイゲノール(11)及びアリルベンゼン(4)の混合物、又はオイゲノール(11)単体を、シランマクロモノマー(5)上にヒドロシリル化する。上記オイゲノールのアルコール性基が、重合性基、例えば、アズラクトン、IEM、アクリロイルクロリド又はメタクリロイル無水物を含む好適な物質と反応させることにより、重合性基を導入するためにさらに用いられる。Zの2つの例が、Z1及びZ2として与えられる。
【0051】
【化5】

【0052】
ヒドロシリル化された基の相対的な比は、当初成分の原材料比を制御することにより、生成物中で制御される。例えば、スキーム4に示すように、アリルベンゼンのオイゲノールに対する原材料比を制御することにより、予測可能で且つ制御可能なモル%比を有するマクロモノマーが与えられる。
【0053】
【化6】

【0054】
類似のフェニル官能化アリル誘導体の混合物を用いた平行官能化の代わりに、スキーム5に示されるように、異なる複数のアリル誘導体、例えば、アリルアルコール及びアリルベンゼンの間で平行官能化をまた行うことができる。次いで、上記アルコール性基を変性して、重合性基を導入する(例えば、アズラクトン、IEM、アクリロイルクロリド又はメタクリロイル無水物との反応により)。
【0055】
【化7】

【0056】
ペンダントアルコール官能基を、上述のように、重合性基含有物質と反応させることができる。あるいは、それらを、スキーム6に描写するように、不活性基でキャップすることができる。ペンダントアルコール性基の一部を不活性基でキャップして、導入されるラジカル重合性基の数を減らすと、最終の硬化したポリマーの架橋密度がさらに抑制される手助けとなる。
【0057】
さらに、いくつかの生物系用途では、in vivoで、任意の潜在的に不利な相互作用を最小化するように、任意の残った遊離のヒドロキシル基を、不活性基でキャップすることが有利である。あるいは、上記ヒドロキシル基は、上述のように、他の生物学的活性成分、例えば、ドラッグ、UVフィルター及び他の適切な分子を結合するために有用な位置にある。
【0058】
【化8】

【0059】
フェニル基及び重合性基をシラン官能化マクロモノマーに導入するさらに別の方法では、当該重合性基の導入を、当該フェニル基の導入に加えて、1ステップで実施する。上記方法は、スキーム7に描写され、そこでは、オイゲノール−IEMアダクトをヒドロシリル化混合物に付加させ、重合性基を導入する。
【0060】
【化9】

【0061】
上述のシラン官能化マクロモノマーを官能化する代替案では、環式中間体モノマーを、最初にフェニル基又は重合性基で官能化し、次いで、開環重合にさらす。好ましい方法では、トリメチルシクロトリシロキサン又はテトラメチルシクロテトラシロキサン(D3H又はD4Hと称されることも多い)又は同様のシラン官能化シクロシロキサン(例えば、D5H及びD6H)を、フェニル環及び/又は重合性基で最初に官能化する。次いで、上記官能化シクロシロキサンを開環し、RIの調整及び重合性基の両方を含む所望のマクロモノマーを得る。
【0062】
この例は、スキーム8であり、そこでは、オイゲノール官能化D4(D4E)の合成が示されている。次いで、D4Eを、プレマクロモノマー(20)を与えるために、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、アリルベンゼン官能化テトラメチルシクロテトラシロキサン(D4AB)、及び末端基ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)の存在下で開環する。重合性基は、好適な重合性分子(例えば、アズラクトン、IEM、アクリロイルクロリド又はメタクリロイル無水物)と反応させることにより、上記オイゲノールのアルコール性基に結合される。Zの2つの例が、Z1及びZ2として与えられる。
【0063】
【化10】

【0064】
種々のフェニル官能化環式シロキサンをまた、調製することができる。
【0065】
スキーム9は、アリルベンゼン及びアリルメチルアクリレート官能化シクロシロキサン(D4AB及びD4AM、それぞれ)の合成を示す。
【0066】
【化11】

【0067】
所望のシロキサンポリマーを調製するために、併用アプローチをまた用いることができる。スキーム10に示すように、開環重合によりフェニル基が上記マクロモノマーに導入され、そして重合性基が上記マクロモノマー内のシラン基の官能化により導入されるように、官能化シクロシロキサンに加えて、D4Hを上記開環混合物に添加する。さらに、上記経路と同様に、上記重合性基を、1又は複数のステップで導入する。Zの2つの例が、Z1及びZ2として与えられる。
【0068】
【化12】

【0069】
あるいは、フェニル基及び重合性基の上記マクロモノマーへの導入は、スキーム11に示されるように、末端基ブロッカー、例えば、ジビニルテトラメチルジシロキサン(DVTMDS)との混合物中で、フェニル官能化シクロシロキサン及び重合性基官能化シクロシロキサンを開環させることによる1ステップにおいて実施する。有利には、最終生成物中の成分の比は、開環重合ステップにおける成分の原材料比を制御することにより制御することができる。
【0070】
【化13】

【0071】
スキーム12は、「1ステップ合成」の別の例を具体的に説明する。IEM−オイゲノールアダクト(26)を最初に調製し、次いで、D4Hと反応させる。次いで、IEM−オイゲノールD4H誘導体を、D4AB、D4及び末端基ブロッカーDVTMDSを用いて開環し、高屈折率の重合性シロキサンマクロモノマーを生成する。
【0072】
【化14】

【0073】
スキーム13は、「2ステップ」合成を示す。別のD4Hフェニル誘導体は、アリルフェノールを有するD4Hと、アリルフェノールをヒドロシリル化することにより最初に調製される。次いで、官能化シクロシロキサン(31)を、D4AB、D4及び末端基を用いて開環させる。フェノール系ヒドロキシルを、IEMを用いてキャップし、高屈折率の重合性シロキサンを提供する。
【0074】
【化15】

【0075】
別の方法では、屈折率調整基(RIM)又は重合性基(Z)(単官能化シクロシロキサン)の1つのみで官能化された環式中間体モノマーを形成し、次いで開環重合にさらすことができる。好ましい方法では、ジクロロメチルシランを、屈折率調整基(例えば、フェニル又はフルオロアルキル基)又は重合性基を用いて官能化する。次いで、得られた化合物を、1,3−ジヒドロキシテトラメチル−ジシロキサンと反応させ、単官能化ペンタメチルシクロトリシロキサンを形成させる。あるいは、1,3−ジヒドロキシテトラメチルジシロキサンを、ジクロロメチルシランと反応させ、ペンタメチルシクロトリシロキサンを形成させる(続いて、フェニル基又は重合性基と官能化させる)。あるいは、単官能化シクロテトラシロキサンが、上記反応スキームにおいて、1,3−ジヒドロキシテトラメチルジシロキサンの代わりに、1,3−ジヒドロキシヘキサメチルトリシロキサンを用いることにより調製されうる。さらに、2官能化誘導体を、ジクロロメチルシランの代わりにジクロロシランを用いて調製することができる。次いで、上記フェニル及び重合性官能化シクロシロキサンを、D4の存在下で開環し、RIの調整及び重合性基の両方を含む所望のマクロモノマーを得る。この例は、スキーム14である。
【0076】
【化16】

【0077】
上記マクロモノマーの屈折率は、上記マクロモノマー内の屈折率調整基置換基のモル比を調整することにより所望の水準にチューンされうる。
【0078】
シラン基を有するマクロモノマーを官能化する場合には、上記マクロモノマー内の屈折率調整基置換基の予測可能な水準を提供するように、上記屈折率調整基試薬及び上記ラジカル重合性基試薬の相対的な比を制御することができる。
【0079】
あるいは、あらかじめ官能化されたシクロシロキサンが開環重合に用いられる場合には、上記マクロモノマーの屈折率が、開環反応混合物内の屈折率調整基置換基の濃度を調整することによりチューンされうる。図1及び図2は、反応原材料中のD4ABモル比と、37℃における得られたマクロモノマーの屈折率との間の関係を示す。この関係の存在により、特定の所望の屈折率を有するポリマーを確実に製造するために、生体用デバイス、例えば、IOLを製造することが可能となる。これは、光学用途に特に有利である。
【0080】
さらに、上記屈折率調整基のモル比、ひいては上記マクロモノマーの屈折率を微細に制御するために、開環重合の効率を説明することができる。図3は、原材料における上記屈折率調整基のモル比(D4ABのケース)(水平軸)と、上記マクロモノマー内の上記屈折率調整基のモル比(D4AB)(垂直軸)との間の較正曲線を示す。上記マクロモノマー内に導入された屈折率調整基のモル比を、NMR分析により測定することができる。
【0081】
本発明のマクロモノマーを、ラジカル重合により硬化させ、架橋ポリマーを形成させることができる。公知の硬化法を用いて、架橋ポリマーを形成することができる。
【0082】
架橋工程は、得られた網目ポリマーが、望ましくない成分を含まない又は本質的に含まない方式で実施されることが好ましい。特定の望ましくない成分は、網目に導入されたそれらの重合性基を有しない当初マクロモノマーであり、そしてそれ自体は、硬化後、得られた網目ポリマーから潜在的に抽出されうる。
【0083】
光架橋の場合には、ラジカル架橋を開始することができる開始剤を添加することが好都合である。上記開始剤は、UV範囲よりは可視スペクトルにおける光により活性化されることが好ましい。というのは、これにより、眼又は網膜に有害ではない、上記ポリマーを硬化させる振動数を用いることを可能となるからである。
【0084】
それらの例は、当業者に公知である;特に言及することができる好適な光開始剤は、ベンゾイン類、例えば、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインフェニルエーテル、及びベンゾインアセテート;アセトフェノン類、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン及び1,1−ジクロロアセトフェノン;ベンジル、ベンジルケタール類、例えば、ベンジルジメチルケタール及びベンジルジエチルケタール、カンファーキノン、アントラキノン類、例えば、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン;さらにトリフェニルホスフィン、ベンゾイルホスフィンオキシド類、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド;エオシン同族体、例えば、エオシンY、フロキシン、ローズベンガル及びエリトロシン;ベンゾフェノン類、例えば、ベンゾフェノン及び4,4’−ビス(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;チオキサントン及びキサンテン;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;キノキサリン誘導体及び1−フェニル−1,2−プロパンジオン 2−O−ベンゾイルオキシム;1−アミノフェニルケトン及び1−ヒドロキシフェニルケトン類、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル 1−ヒドロキシイソプロピルケトン、4−イソプロピルフェニル 1−ヒドロキシイソプロピル 1−ヒドロキシイソプロピルケトン、2−ヒドロキシ−l−[4−2(−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタンオンである(それらの全ては、公知の化合物である)。
【0085】
可視光源と共に通常用いられる特に好適な光開始剤は、IRGACURE(商標)819、エオシン同族体、例えば、ローズベンガル、エオシンB、及びフルオロン(Fluorone)、例えば、H−Nu470、H−Nu635及び誘導体である。
【0086】
光源としてUVランプと共に通常用いられる特に好適な光開始剤は、アセトフェノン、例えば、2,2−ジアルコキシベンゾフェノン及びヒドロキシフェニルケトン、特に商標名、IRGACURE(商標)651及びIRGACURE(商標)184の下で公知の開始剤である。特に好ましい光開始剤は、IRGACURE(商標)819である。上記光開始剤を、架橋性マクロモノマーの総量に基づいて、有効量、好都合には約0.05〜約2.0重量%の量、特に0.1〜0.5重量%の量で添加する。さらに上記光開始剤を、上記ポリマー主鎖に導入/グラフトすることができる。上記ポリマーの上記固定化は、硬化後、抽出物から光開始剤残差を入手する可能性を減らす優位性を有する。
【0087】
得られた架橋性マクロモノマーを、それ自体公知の方法、例えば、特に、一般的な計量器、例えば、液滴を用いてモールド内に導入することができる。あるいは、上記マクロモノマーを、例えば、注入可能なIOLの場合におけるように、その場で硬化させることができる。この場合には、上記マクロモノマーを、注入後に、水晶体嚢内で硬化又は架橋させる。
【0088】
本発明により好適な架橋性マクロモノマーを、電離(ionising)又は化学線、例えば、電子線、X線、UV又はVIS光、すなわち、約280〜750nmの範囲の波長を有する粒子放射線又は電磁線を伴う照射により架橋させることができる。また、好適なのは、UVランプ、He/Dc、アルゴンイオン又は窒素若しくは金属蒸気あるいは倍周器(multiplied frequency)を備えるNdYAGレーザービームである。各選択された光源は、好適な光開始剤の選択、そして必要であれば、好適な光開始剤の増感が要求されることが、当業者に公知である。ほとんどの場合、上記放射線の上記架橋性マクロモノマー内への浸透の深さと、硬化の速度とは、上記光開始剤の吸収係数及び濃度に直接相関することが認められている。硬化はまた、1種又は2種以上のこれらの方法、例えば、熱及び光を用いることにより達成することができる。
【0089】
必要に応じて、上記架橋を、熱的に開始することができる。上記架橋が、本発明に従って非常に短い時間、例えば、12時間未満、好ましくは1時間未満、さらに好ましくは30分未満で行われうることが重要であろう。
【0090】
上記ポリマーの形成において、上記マクロモノマーは、コモノマーを添加することなく用いられることが好ましいが、コモノマーを含めることができる。一般的に、本発明のポリマーは、他のマクロモノマーの使用を通常は含まないが、当該他のマクロモノマーを、所望により含めることができる。上記ポリマーは、本発明のマクロモノマーの好ましくは少なくとも50重量%、さらに好ましくは少なくとも重量80%を構成する。
本発明のマクロモノマーを用いて、生体用デバイス、好ましくは眼病用デバイスを形成することができる。上記デバイスには、IOL、角膜インレー、角膜アンレー、コンタクトレンズ、及び人工角膜が含まれる。
【0091】
好ましい用途では、本発明のマクロモノマーを用いて、注入可能で、その場で硬化可能な、調節用IOLを形成する。この用途では、上記マクロモノマーの硬化されたポリマーの機械的及び光学特定は、天然水晶体の生体物質の特性に適合するか、又はそれらを回復するように選択されることが好ましい。
【0092】
IOLに関する関連性のある機械的性質の一つは、上記ポリマーの可とう性である。好適な可とう性により、眼の遠近調節器官の小帯及び毛様筋/毛様体が、上記材料で満たされたレンズの形状を調整することができる。可とう性は、その弾性率(E弾性率)により評価される。上記ポリマーのせん断弾性率は、評価されうる関連特性である。両方が、ひずみに対する応力を測定することにより上記ポリマーから形成された製品(例えば、レンズ)を変形するために要求される力として測定されうる。本発明のポリマーのE弾性率を、マイクロフーリエレオメータにより測定することができる。Bohlin制御型応力レオメータをまた用いることができる。
【0093】
本発明の注入可能で、その場で硬化可能な、調節用レンズにおいて、マイクロフーリエレオメータにより測定されるE弾性率は、好ましくは10kPa未満、そしてさらに好ましくは5kPa未満である。E弾性率は、1つのマクロモノマー鎖当たりの重合性基の数、すなわち、架橋密度及び重合性基の平均間隔(すなわち、重合性基ユニットの相対的な割合)により影響を受ける。一般的に、1つのマクロモノマー鎖当たりの重合性基の数が増えると、又は各重合性基の間の平均間隔が大きくなる(モノマーの比率の関数として)と、硬化したポリマーの弾性が高くなる。
【0094】
IOLに関する関連性のある光学特性は、上記ポリマーのRIである。37℃における上記RIは、1.33超〜1.60の範囲、好ましくは1.41〜1.5の範囲、さらに好ましくは1.421〜1.444の範囲、そして最も好ましくは1.426〜1.440の範囲であることができる。上記RIは、上記IOLにより治療すべき屈折異常によって選択されうる。
【0095】
注入可能な材料として用いられる場合、上記マクロモノマーは、150,000cSt未満、そしてさらに好ましくは80,000cSt未満の粘度(25℃)を有するべきである。ブルックフィールドレオメータ又はBohlin制御型応力レオメータ等の機器を、粘度測定に用いるのが好都合である。
【0096】
本発明のマクロモノマーは、上記レンズ及び他の生体適合性材料を形成するために単体で用いることができるが、他の材料もまた、上記生体用デバイスを形成するために用いられる組成物中に存在することができることが正しく評価されるであろう。例えば、上述のように、希釈剤、並びに他のマクロモノマーを含む他のモノマーが存在することができる。遊離又は上記ポリマー主鎖にグラフトされうる上記マクロモノマー前駆体への他の添加剤は、紫外線吸収剤及び医薬活性化合物、例えば、PCO(Posterior Capsule Opacification)に関連して細胞を抑制又は殺傷するものを含むことができる。
【0097】
注入可能で、その場で硬化可能な、調節用IOLとして用いられる場合、本発明のマクロモノマーを含む組成物は、いくつかの多少の相違点はあるものの、現在の白内障摘出及びIOL移植(例えば、嚢外摘出処置)と多くの点で同一である操作を用いて、水晶体内に導入することができる。一般的に、前区への進入路を供給するために、パラ−リンバル(para−limbal)領域のところで、小さな角膜の切開がなされる。薬剤、例えば、アトロピン又はシクロペントレートを用いた散瞳に続いて、小さな嚢切開(capsulorhexis)(直径約1mm以下)が、前嚢(anterior capsule)の周縁部のところに、手によりなされる。小さな角膜切開及び周縁の最小の嚢切開により、上記水晶体の核(皮質及び核を含む)が摘出される。本発明のマクロモノマーを含む組成物が、上記水晶体を再形成するために細いゲージ(例えば、29−G以下)カニューレ及び視臨時を用いて無傷の水晶体嚢に注入される。次いで、上記組成物が、眼を可視光又は紫外光に暴露することにより硬化される。
【0098】
上記技法、及び適切な特性、例えば、RI及び弾性率を選択することに続き、本発明のマクロモノマーから形成されたIOLを、老眼、近視又は遠視を治療するために用いることができる。
【実施例】
【0099】
例1−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(D4H)のヒドロシリル化による官能性環式シロキサンの調製
ヒドロシリル化反応により得られた生成物は、次のスキームによって表されるシロキサン化合物である。
【化17】

【0100】
例1A−アリルメタクリレート(D4AM)により官能化されたシクロテトラシロキサンモノマーの調製
2gのテトラメチルシクロテトラシロキサン(D4H)を、還流冷却器を備えている丸底フラスコ内で、40mLの脱水トルエン内に溶解させた。この溶液に、10滴(0.180g)のカールシュテット触媒([Pt]=3.4×10-5モル/mL)を添加した。上記フラスコを、アルミニウム箔で包み、遮光した。4.62gの蒸留されたアリルメタクリレートを、冷却器の頂部から液滴で添加した。次いで、上記溶液を18時間、最大60℃で加熱した。NMRによる分析は、当該反応が完了したことを示した。溶媒及び残余のアリルメタクリレートを、室温で、減圧下で取り除いた。生成物を、50mLの脱水トルエン内に収集し、そして−15℃で保管した。D4AMに関する1H NMRスペクトルデータを、表1に示す。
【0101】
例1B−アリルベンゼン(D4AB)により官能化されたシクロテトラシロキサンモノマーの調製
9.746gのD4Hを、空気冷却器及び乾燥チューブを備えている丸底フラスコ内で、10mLの脱水トルエンに溶解させた。この溶液に、0.202gのカールシュテット触媒([Pt]=3.4×10-5モル/mL)を添加した。上記溶液を、攪拌しながら50℃まで加熱した。45mLの脱水トルエン内の24.64gのアリルベンゼンの溶液を、58〜60℃の内部温度を維持するような速度で添加した。添加の後、上記反応をさらに1時間攪拌し、次いで、室温まで冷却させた。2.0gの活性炭を添加し、そして当該混合物を45分間攪拌した。懸濁液をセライトによりろ過し、そして溶媒を減圧下で取り除き、未精製の生成物を得て、次いで10mLの脱水トルエン内に再溶解させ、そして攪拌しながら250mLのメタノールに注ぎ、析出させた。次いで、析出物を沈降させ、そして浮遊物を静かに移した。上記析出物を、一定の質量まで乾燥させ、そして無色のオイルとして生成物を得た(15.911g)。D4ABに関する1H NMRスペクトルデータを、表1に示す。
【0102】
例1C〜1J
追加の官能化環式モノマーを、表1に示す。当業者は、種々の触媒及び種々の温度範囲を用いて、これらの生成物を調製できることを理解するであろう。概して、上記官能化環式モノマーは、好適な触媒(通常、Pt触媒、例えば、PtCl6.H2O又はカールシュテット触媒)を用いて、室温〜70℃において、少々過剰のアリル誘導体(通常、1モルのD4Hに対して4.5モル当量)を用いて、トルエン内で調製される。
試薬、例えば、1H及び1Jを、次のように調製した。
【0103】
合成例1Hにおいて用いるためのアリルフェノールの合成
ジクロロメタン(40mL)内の三臭化ホウ素(3.3mL、0.035モル)の溶液を、アセトン/ドライ氷浴内で−76℃に冷却されているジクロロメタン(40mL)内の4−アリルアニソール(4.00g、0.0269モル)の溶液に、液滴として添加した。反応混合物を室温まで温め、そして24時間攪拌した。上記混合物をジクロロメタン(20mL)で希釈し、次いで、飽和炭酸ナトリウム溶液を添加する前に−76℃に冷却し、そしてpHを7〜8に調整し、混合を補助するために水(30mL)を添加した。
【0104】
上記混合物をジクロロメタンで抽出し、そして固体をろ過により取り除いた。有機分画を、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、そして溶媒を除去して、ダークブラウンのオイル(3.09g、83%)を得た。未精製混合物は、2種の生成物を含み、そして精製を行わなかった。
【0105】
例1Jの合成において用いるためのオイゲノールのイソシアナトエチルメタクリレート誘導体の合成
ジブチル錫ジラウレート(dibutyl tindilurate)(100μL、23mg/mL、トルエン中)を、トルエン(50mL、CaH2上で脱水)内のオイゲノール(5.00g、0.0305モル)及びイソシアナトエチルメタクリレート(4.74g、0.0305モル)の溶液に添加した。反応混合物を、室温で9日間攪拌し、その後、当該反応混合物を600mLのn−ペンタンに液滴として添加し、そして析出物を減圧ろ過の下で収集し、白色粉末8.65g(89%)を得た。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
例2−官能性環式シロキサンの開環重合(ROP)
官能性環式シロキサンが、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)の存在下で、開環重合を受け、所望の重合性及び屈折率調整基を有するポリシロキサンを得た。種々の末端基ブロッカーを用いて、種々の末端基を導入した。
【0109】
上記ROPは、塩基、酸、ルイス酸、及び交換樹脂の種類が含まれる(これらに限定されるものではない)触媒の範囲を用いることにより、種々の条件下で生じた。
【0110】
手順を、次のスキームで具体的に説明する(Rは、Z又はRIMである)。
【化18】

【0111】
例2T−トリメチルシリル末端基を有する、ジメチルシロキサン、メチルフェニルプロピルシロキサン、及びメチルプロピルメタクリレートシロキサンのコポリマーのROPによる調製
270.34gのD4内の8.00gのヘキサメチルジシロキサンの原液を製造した。1.78gの2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラ(プロピル−3−フェニル)シクロテトラシロキサン、39.8mgの2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラ(プロピル−3−メタクリレート)シクロテトラシロキサン、2.69gのD4、及び0.079gの上記ヘキサメチルジシロキサン原液を、アルゴン雰囲気の下、25mLの丸底フラスコ内で1.56gの脱水トルエンと混合した。攪拌しながら、50μLのトリフルオロ−メタンスルホン酸を直ちに添加し、そして上記フラスコを早急にアルミニウム箔で覆って遮光した。
【0112】
反応混合物を5日間攪拌した。次いで、上記混合物を5mLのトルエンで希釈し、そして250mgの炭酸ナトリウムで中和し、その後固体をろ過し、そして溶媒を除去した。未精製の混合物を、5mLのトルエンに再溶解させ、そして攪拌しながら40mLのエタノールに液滴として添加することにより精製した。析出物を一晩沈降させ、そして浮遊物を静かに移した。減圧下で全ての溶媒を除去し、澄んだ、そして粘稠なオイルを得た。それは、14550cStの粘度、Mn52100、Mw89034を有することが見出された。上記ポリマーは、1H NMRにより測定されるように、80.86モル%のジメチルシロキサン、18.81モル%のメチルフェニルプロピルシロキサン、及び0.33モル%のメチルプロピルメタクリレートシロキサンを含んでいた。
【0113】
例2Y−D4、D4AB及びD4Eu-IEMのROPによる調製
270.34gのD4内の9.18gの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの原液を製造した。例1Jの0.369gのD4Eu-IEM、例1Bの3.615gのD4AB、及び0.35gの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン原液を、N2雰囲気の下、25mLの丸底フラスコ内で共に混合した。攪拌しながら、200μLのトリフルオロメタンスルホン酸を直ちに添加し、そして上記フラスコを早急にアルミニウム箔で覆って遮光した。反応混合物を、1.5時間の間、70℃まで加熱し、次いで、さらに16時間、室温で攪拌した。
【0114】
上記混合物を、5mLの脱水トルエンで希釈し、300mgのNa2CO3を添加し、3時間攪拌し、ろ過し、そして濃縮した。残差を、3mLのトルエンに再溶解させ、そしてメタノール(50mL)中で析出させた。生成物を一晩沈降させ、浮遊物を静かに移し、そして溶媒を除去して、澄んだ、そして粘稠なオイル、1.23gを得た。コポリマーの組成は次の通りであった:ジメチルシロキサン77.80モル%、メチルフェニルプロピルシロキサン21.45モル%及びメチルオイゲノール−IEMシロキサン0.75モル%(Mw38517、Mn20225及び屈折率1.4553)。
【0115】
例2AA−D4、D4H、及びD4ABのROPによるシロキサンコポリマーの調製
270.34gのD4内の9.18gの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの原液を調製した。92.47gのD4内の7.24gのD4Hの別の原液を調製した。1.00gの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン原液、0.30gのD4H原液及び例1Bの1.74gのD4ABを、10mLの無水トルエン内で混合した。14.7μLのトリフルオロメタンスルホン酸を添加し、そして混合物を、3日間、室温で攪拌した。次いで、2.0gの無水Na2CO3を添加し、室温で16時間攪拌した。混合物を、ガラスろ過器上のガラス紙によりろ過した。生成物を、強攪拌しながら40mLのエタノール中に当該生成物を注ぐことにより析出させた。上記生成物を沈降させ、そして浮遊物を静かに移した。残余の溶媒を減圧下で取り除き、澄んだ、そして無色のオイル(5.36g)として生成物を得た。
【0116】
この生成物は、本発明のマクロモノマーを形成するための重合性基を有する試薬と、さらにヒドロシリル化反応させるために好適な中間体である。
【0117】
例2A〜2AD
複数のマクロモノマーが、例1J〜1Mにおいて調製された1種又は2種以上の官能化環式モノマーを開環させることにより簡潔に調製された。当業者は、種々の触媒及び種々の温度範囲を用いて、これらの生成物を調製できることを理解するであろう。典型的には、開環重合は、室温〜110℃において、トルエン中又はニート混合物中で、酸性条件(例えば、無水酢酸中のH2SO4、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)下で実施される。典型的には、トリフルオロメタンスルホン酸が、60〜200μL/3.5gD4の範囲内で用いられる。
【0118】
種々の例の出発原料及び得られたの詳細を、表2及び表3のそれぞれに示す。
主鎖に沿って重合性基を含まないマクロモノマーを具体的に説明する例2A〜2Jは、高屈折率を有するポリマーが、この方法論により調製されうることを具体的に説明する。主鎖に沿って構造的に重合性基を有する類似のポリマーが、例2K〜2Yにおけるように、重合に好適な環式モノマー(例えば、D4AM)を付加することにより調製されうる。
【0119】
例2Z〜2ADは、本発明のマクロモノマーを形成するために、例えば、上記スキーム8及び10に記載されるような、重合性基を有する試薬とさらに反応させるために好適な中間体マクロモノマーを具体的に説明する。
【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【0124】
【表7】

【0125】
【表8】

【0126】
例3−シラン官能化プレポリマーの合成
例3A〜3Dでは、次のスキームに示されるように、D4Hを用いたD4の開環重合によりシラン官能化プレポリマーを調製した。主鎖に沿ったシラン官能基の比を制御し、後のステップにおいて重合性基及び屈折率調整基を用いた調整が提供された。種々の末端基ブロッカーを用いて、種々の末端基を導入した。上記ROPは、酸、ルイス酸、及び交換樹脂の種類が含まれる(これらに限定されるものではない)触媒の範囲を用いることにより、種々の条件下で生じた。
【0127】
【化19】

【0128】
例3B−20〜30モル%シラン官能基を含むシロキサンコポリマーの調製
1.003gのHMDS、44.205gのD4H及び129.03gのD4を、200mLのトルエンに溶解させた。260μLのトリフルオロメタンスルホン酸を添加した。溶液を7日間室温で攪拌した。25.0gの無水炭酸ナトリウムを添加し、そして混合物を3時間室温で攪拌した。次いで、上記混合物を、ガラスろ過器上のガラス紙によりろ過した。ろ過物を、400mLのエタノールに液滴で添加した。浮遊物を静かに移し、そして減圧下で残差を蒸発させ、澄んだ無色のオイル(104.108g)を得た。
【0129】
【表9】

【0130】
例3A〜3Dにおいて調製されたプレポリマーを、ヒドロシリル化を経由してアリル化合物により官能化し、1ステップ又は2ステップにおいて重合性基及び屈折率調整基を導入した。ヒドロシリル化を次のスキームにおいて具体的に説明する。
【0131】
【化20】

【0132】
例4E−アリルベンゼンを用いたシランプレポリマーの官能化
3.007gの28モル%シランコポリマー(例3B)を、冷却器を備えている50mLの丸底フラスコ内で、20mLのトルエンに溶解させた。1.034gのアリルベンゼン(AB)を添加し、トルエン中の100μLのカールシュテット触媒溶液([Pt]=3.4×10-5M)が続いた。溶液を、18時間、N2の下、40℃で攪拌した。アリコートを取り出し、そして乾燥させ、澄んだ、そして粘稠なオイルを得た。1H NMR分析により、得られたポリマーが、11.38モル%のSi−H;17.32モル%のアリルベンゼン及び71.30モル%のジメチル基を含むことが示された。このアリルベンゼン官能化コポリマーは単離されず、代わりに、当該コポリマーは、例4Jの調製のための中間体として用いた。
追加のアリルベンゼン官能化シランプレポリマーを、例4A〜4Hにおいて調製し、その結果を表5に示す。
【0133】
例4J−アリルアルコールを用いたシランプレポリマーの官能化
4.041gのシランプレポリマー(例4E)を、20mLのトルエンに溶解させた。2.241gのアリルアルコール(AA)を添加し、トルエン中の100μLのカールシュテット触媒溶液([Pt]=3.4×10-5M)が続いた。溶液を、19時間、40℃で加熱した。上記溶液を室温まで冷却し、そして1.50gの活性炭を添加した。混合物を3時間攪拌し、次いで、ガラス焼結フィルター上のガラスフィルターによりろ過し、0.22μm疎水性PVFフィルターによるろ過が続いた。生成物は、0.55モル%のSi−H;10.72モル%のアリルアルコール;17.01モル%のアリルベンゼン及び72.65モル%のジメチルを含むことが見出された。
【0134】
アリルアルコール官能化シランプレポリマーは、重合性基を含む試薬と反応して、本発明のマクロモノマーを形成することができる。
追加の官能化シランプレポリマーを、例4I及び4Kにおいて調製し、その結果を表5に示す。
【0135】
【表10】

【0136】
【表11】

【0137】
例5−シロキサンオイゲノール誘導体及びIEMからのシロキサンメタクリレートの調製
【化21】

【0138】
イソシアナトエチルメタクリレート(21.69gのトルエン中の0.230gのIEMの4.66g)、アリルベンゼン及びオイゲノール官能化ポリマー(0.880g;a=77.8%、b=18.7%、c=3.5%;21℃におけるRI=1.4578)、及びジブチルチンジラウレート(25μL)を混合し、そして室温で17時間攪拌した。反応混合物をメタノール中で析出させた。析出させたポリマーを収集し、そしてオイル(0.883g)を提供するような乾燥状態まで蒸発させた。1H NMR分析により、次のモル%比:a=79.3、b=17.0、d=1.0、e=2.7を有する所望のIEM官能化マクロモノマーを得た。上記ポリマーの屈折率は、21℃で1.458であった。
【0139】
例6−混合されたヒドロシリル化を経由した、重合性及び屈折率調整基によるシランプレポリマーの官能化
1ポット合成における混合されたヒドロシリル化を、次のスキームに示す。
【化22】

【0140】
例6C−アリルベンゼン及びオイゲノール(13:1)を用いたシランプレポリマーの官能化
3.01gのシランプレポリマー(28モル%のシラン基を含む、例3B)、5.69gのアリルベンゼン及び0.637gのオイゲノールを、冷却器及び気体インレットを備えている50mLの丸底フラスコ内で、N2の下、25mLのトルエンに溶解させた。トルエン内の100μLのカールシュテット触媒溶液([Pt]=3.4×10-5M)を、溶液に添加し、そして混合物をN2下で、40℃で攪拌し、そして全てのSi−H基が消費されるまで1H NMRによりモニターした。次いで、混合物を室温まで冷却し、0.300gの活性炭の添加が続き、そして3時間攪拌し、その後炭素をろ過した。ろ過物から溶媒を除去し、そして生成物を10mLのn−ペンタン中に取り、そして飽和のNaHCO3(2×30mL);水(30mL)次いで飽和のNaCl(30mL)を用いて洗浄し、そしてMgSO4上で乾燥させた。上記生成物を、減圧下で乾燥させ、澄んだ、若干黄色でそして粘稠なオイル、3.492gを得た。上記ポリマーは、1H NMRにより測定されるように、26.05モル%のアリルベンゼン;2.0モル%のオイゲノール及び71.95モル%のジメチルシロキサン基を含み、そして屈折率が1.47272(23.4℃)であることが見出された。
【0141】
上記シランプレポリマーは、重合性基を含む試薬と反応し、本発明のマクロモノマーを形成することができる。さらなる例6A〜6Fを、表6に示す。さらに、例6A、6B、6C、6E及び6Fにおけるプレポリマーを、重合性基を含む試薬と反応させ、本発明のマクロモノマーを形成させることができる。
【0142】
【表12】

【0143】
【表13】

【0144】
本明細書に開示され、そして規定される本発明は、文章又は図面から明確な又は言及される個々の特徴の2つ又は3つ以上の別の組み合わせの全てに拡張されることが理解される。これらの種々の組み合わせの全ては、本発明の別の態様を構成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式1のマクロモノマー:
【化1】

(式中、
RIMは、屈折率調整基であり;
Zは、ラジカル重合性基であり;
Kは、スペーサー基であり;
Lは、選択的であり、そしてスペーサー基であり;
各Rは、RIM、低級アルキル基、水素又はZから独立して選択され;
aは、0〜95モル%の範囲にある前記マクロモノマーのモル%であり;
bは、5〜99モル%の範囲にある前記マクロモノマーのモル%であり;
cは、0〜2モル%の範囲にある前記マクロモノマーのモル%であり;そして
dは、0〜2モル%の範囲にある前記マクロモノマーのモル%であるが;
ただし、c及びdは、同時に0モル%ではない)。
【請求項2】
各RIMが、置換された又は置換されていない芳香族基、フッ素化基、一又は複数の臭素、ヨウ素又は塩素原子を含む基、及び硫黄含有基から成る群から独立して選択される、請求項1に記載のマクロモノマー。
【請求項3】
各RIMが、置換された又は置換されていないフェニル環である、請求項2に記載のマクロモノマー。
【請求項4】
各Zが、エチレン系不飽和基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマクロモノマー。
【請求項5】
各Kが、所望により、1又は2以上のヘテロ原子により分断された、又は1種又は2種以上のエステル、アミド、ウレタン、カーボネート、チオエステル又は−C(S)−NH−により置換されている、直鎖、分岐鎖又は環式の低級アルキルから成る群から独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマクロモノマー。
【請求項6】
各Kが、次の式:
−(CH2n
(式中、nは、整数1、2、3、4又は5である)
の低級アルキルである、請求項5に記載のマクロモノマー。
【請求項7】
各Lが、次の式:
−(CH2n
(式中、nは、整数1、2、3、4又は5である)
の低級アルキルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のマクロモノマー。
【請求項8】
37℃において、1.33超から1.60の範囲における屈折率を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のマクロモノマー。
【請求項9】
25℃において、150,000cSt未満の粘度を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のマクロモノマー。
【請求項10】
ポリマーに硬化させると、37℃で50kPa未満の弾性率を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のマクロモノマー。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のマクロモノマーを含む、生体用デバイスに硬化することができる組成物。
【請求項12】
その場で硬化可能な、調節用眼内レンズとしての、請求項11に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項11に記載の組成物から形成された、その場で硬化可能な、調節用眼内レンズ。
【請求項14】
請求項11に記載の組成物を、水晶体嚢に導入するステップ;そして
前記組成物を硬化させるステップ:
を含む、その場での眼内レンズの形成方法。
【請求項15】
眼の屈折異常を補正するため、又は眼の屈折力を維持するための調節用眼内レンズの製造における、請求項11に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−535464(P2009−535464A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508047(P2009−508047)
【出願日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000582
【国際公開番号】WO2007/128051
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508326736)ビジョン シーアールシー リミティド (2)
【Fターム(参考)】