説明

生産品質システム

【課題】生産装置の状態をリアルタイムに監視し異常を早期に発見することで、仕掛品の滞留時間の短縮を図ったり、製品のトレサビリティ情報として利用できるようにした生産品質システムを提供する。
【解決手段】製造指示システム11からの製造指示情報12に基づき、生産設備13での製品の生産時に測定される物理量を、前記生産設備の設備番号および生産日時とともに収集し、蓄積する測定情報収集手段15を有する。また、製品が正しく生産されたときの過去の蓄積された物理量から統計手法により求められる基準値及び上下限値よる管理限界が設定され、生産設備13からリアルタイムで測定される物理量が管理限界内に入っているか否かにより生産設備13の異常の有無を判定する機能を有する品質情報分析手段22を備えている。そして、生産設備13の異常の有無を含む前記品質情報分析手段22による分析結果を出力手段28に出力し、表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の製品や部品を生産する生産設備(機械加工設備等を含む)の状態から、その異常の有無を判断し、生産される製品の品質を管理する生産品質手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の製品や部品を生産する生産設備、すなわち、機械加工設備等を含む設備機器の運転状態などに関する情報は、大半が手作業による収集であり、統計分析もパソコンによるバッチ作業である。
【0003】
そこで、設備保全に着目し、診断対象設備の設置場所にかかわらず、測定装置で測定した各設備の計測データを設備保全管理システム内のデータベースに効率的に収集保存が可能で、初期導入費用の低コスト化、システムの維持管理費用の大幅な削減を図った設備保全管理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−162320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの設備により生産される製品・仕掛品と設備機器情報との時間的同期が取れていないため、設備異常の発見が遅れ、仕掛不良・製品不良を大量に製造する場合があり、大きな無駄が発生することがある。製造指示を設備機械に与えて所定の製品や部品を加工生産する場合でも、設備機械に対する製造オーダと設備機械情報は連携されておらず別管理となっている。
【0005】
すなわち、保全のみを対象としており、製造との関連付けおよびトレサビリティは考慮されていない。このため、製造現場で設備不良が発見されても、設備機械まで含めたトレサビリティの時間管理はなく、仕掛品、製品との関連付けはされていないため不良設備で製造された製品追跡が困難である。
【0006】
本発明の目的は、各種製品部品の生産装置(機械加工製造における加工設備機器を含む)の状態をリアルタイムに監視し異常を早期に発見することで、製造工程における仕掛品の滞留時間の短縮を図ったり、製品のトレサビリティ情報として利用できるようにした生産品質システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る生産品質システムは、製造指示システムからの製造指示情報に基づき所定の製品を生産する生産設備での、前記所定の製品の生産時に測定される物理量を、前記生産設備の設備番号および生産日時とともに収集し、蓄積する測定情報収集手段と、前記所定の製品が正しく生産されたときの過去の蓄積された物理量から統計手法により求められる基準値及び上下限値よる管理限界が設定され、前記生産設備からリアルタイムで測定される物理量が前記管理限界内に入っているか否かにより前記生産設備の異常の有無を判定する機能を有する品質情報分析手段と、前記生産設備の異常の有無を含む前記品質情報分析手段による分析結果を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る生産品質システムは、前記測定情報収集手段及び品質情報分析手段の他に、前記製造指示情報により前記生産設備により生産された製品に関する製造実績情報として、少なくとも製造オーダ番号、前記生産設備の設備番号、生産日時を収集し、前記製品と対応付けて蓄積する製造実績収集手段を設け、この製造実績収集手段により収集された製造実績情報と組み合わされた前記品質情報分析手段による分析結果を出力手段に出力するように構成してもよい。
【0009】
これらの発明では、前記品質情報分析手段は、前記所定の製品が正しく生産されたときの過去の蓄積された物理量の平均値とその標準偏差とに基づき基準値及び上下限値を定めて管理限界とした構成にするとよい。
【0010】
また、これらの発明では、前記測定情報収集手段が収集し、蓄積する物理量は、前記生産設備に供給される電気量、前記生産設備に生じる振動、前記生産設備から生じる温度、前記生産に要する時間のいずれか又はこれらの組み合わせである。
【0011】
また、これらの発明では、前記品質情報分析手段は、前記生産設備に異常ありと判定した場合、測定情報収集手段及び製造実績収集手段により収集された情報を付き合わせることにより、生産設備番号から異常の生じた生産設備を特定し、製造オーダ及び生産日時から異常の生じた生産設備により生産された製品を特定できる。
【0012】
また、これらの発明では、前記生産設備により生産される製品が、他の最終製品を構成する部品である場合、前記製造実績収集手段が収集し、蓄積する製造実績情報として、前記最終製品の部品構成及び前記最終製品の製造工程の情報を含む。
【0013】
この場合、前記品質情報分析手段は、前記生産設備により生産される製品が、他の最終製品を構成する部品であり、この部品を生産する前記生産設備に異常ありと判定した場合、前記製造実績情報に含まれる前記最終製品の部品構成に関する情報から、異常と判定された前記生産設備により生産された部品が用いられる最終製品を特定したり、或いは、前記製造実績情報に含まれる前記最終製品の製造工程に関する情報から、異常と判定された前記生産設備により生産された部品が用いられる他の製造工程を特定するトレサビリティ機能を実行できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生産設備機械の事前保全が行え、これら設備機械の突然停止、チョコ停の予防保全が可能となる。また、トレサビリティが実現可能となる。すなわち、異常な設備で作られた製品特定が可能で、設備の面からのトレサビリティが可能となる。また、仕掛品の低減/滞留時間が低減される。すなわち、不良低減(不良による仕掛低減)による「手戻り」工数の削減が可能となる。また、仕掛品の滞留が削減し生産スループットが向上することから、仕掛滞留時間が減少することによるスループットの短縮が可能となる。さらに、滞留時間短縮、在庫低減によるコストが削減できるので生産コストの低減が可能となる。特に、全品検査が不要になるため検査工数の短縮となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による生産品質システムの一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1は、この実施の形態におけるシステム全体構成を示す概要図である。図1において、この生産品質システムは、製造指示システム11からの製造指示情報12に基づいて所定の製品又は部品を生産する生産設備(機械加工製造における加工設備機器を含む)13の状態を監視し、その異常の有無を検出する機能を有する。
【0017】
測定情報収集手段15は、所定の製品又は部品の生産時に生産設備13で測定される物理量を、生産設備13の設備番号および生産日時とともに収集し、蓄積する。ここでは、物理量として、生産設備13に設けられた電力測定装置16により測定された電圧・電流値を収集している。
【0018】
製造実績収集手段18は、前記製造指示情報12に基づいて前記生産設備13により生産された製品又は部品に関する製造実績情報を収集し、蓄積する。すなわち、生産設備13からは、製品又は部品の生産に伴い、前記製造指示情報12とほぼ同じ項目の情報が製造実績情報19として出力されるのでこれを収集し、蓄積する。この製造実績情報19としては、少なくとも製造オーダ番号、前記生産設備13の設備番号、生産日時を含んでおり、製品又は部品と対応付けて蓄積される。また、この製造実績情報19は製造実績収集手段18でデータ蓄積されると共に製造指示システム11に製造実績として通知される。
【0019】
なお、製造指示システム11からは、最終製品の部品構成やその製造工程に関するBOM情報20が、製造実績収集手段18に直接的に提供される。
【0020】
品質情報分析手段22は、生産設備13が正しく作動しているかどうか、その異常有無の判定機能を有する。すなわち、生産設備13により所定の製品又は部品が正しく生産されたときの過去の蓄積された物理量(この例では電気量、以下、電気量として説明する)に基づき、これらから統計手法により求められる基準値及び上下限値よる管理限界を設定している(詳細は図4により後述する)。そして、生産設備13からリアルタイムで測定される電気量が、設定された管理限界内に入っているか否かにより、生産設備13の異常の有無を判定する。
【0021】
また、品質情報分析手段22は、生産設備13の異常発生を検出した場合、測定情報収集手段15及び製造実績収集手段18により収集された情報を付き合わせることにより、生産設備番号から異常の生じた生産設備13を特定し、製造オーダ及び生産日時から異常の生じた生産設備により生産された製品を特定するトレース機能を有する。このトレース機能により得られる情報はトレース情報23として製造指示システム11に提供される。
【0022】
また、品質情報分析手段22が生産設備13の異常を検出して、異常検出出力24を生じると、該当する生産設備に対する設備保全手配25が行われる。この設備保全手配25による保全結果は、生産設備13から保全結果情報26として出力され、品質情報分析手段22に提供される。なお、品質情報分析手段22の、上記以外の機能については後述する。
【0023】
出力手段28は、製造実績収集手段18により収集された製造実績情報19や生産設備13の異常検出情報、更には前記トレース情報23等を含む品質情報分析手段22による分析結果を表示出力する。
【0024】
次に、上記各部の機能について個別に説明する。
【0025】
先ず、図2により生産設備13と測定情報収集手段15との関係を説明する。生産設備(ここでは部品加工を行う機械設備として説明する)13は、複数台が並設されており、それぞれ電力測定装置16を有する。この電力測定装置16は、部品加工時(生産時)に機械設備13に流れる負荷電流値を計測し、ディジタル情報に変換する。また、この電力測定装置16は、機械設備13を識別するための機械設備ID番号を設定できる機能を有する。なお、ID番号を設定する機能がない場合は、後述する接続ポートのポート番号で代用してもよい。さらに、この電力測定装置16は、計測された負荷電流値(ディジタル値)を定期間隔で送信する機能を有する。なお、送信間隔は任意に設定可能である。
【0026】
測定情報収集手段15は、接続ポート15aにより、通信線を介して各機械設備13の電力測定装置16とそれぞれ接続しており、受信機能部15bにより、各機械設備13からの計測情報を受信する。この受信され、蓄積される計測情報の主たるものは、機械設備13のID番号(又はポート番号)、測定された負荷電流値、測定日時(日付/時刻)等である。これらの計測情報は、蓄積機能部15cにより、記憶部15dに記憶される。蓄積機能部15cは、受信した計測情報を蓄積、編集、削除する機能を有する。また、計測情報は、計測データ送信機能部15eにより、図1で示した品質情報分析手段22にリアルタイムで送信される。
【0027】
次に、図1で示した製造実績収集手段18による収集機能を、図3により表形式で説明する。収集する主なデータは、前述のように、少なくとも製造オーダ番号、前記生産設備の設備番号、生産日時であり、これらを生産された製品又は部品と対応付けて蓄積するが、実際には、図示のような項目について収集する。これらの項目は製造指示書の項目とほぼ同じ内容である。
【0028】
製造実績収集手段18によるデータ収集方法については各種のものが考えられるが、例えば、生産された製品又は部品につけられたバーコード、無線タグ、ICカード等を読み取ることで上記情報を入力したり、或いは、生産された製品又は部品に対応させて、製造実績収集手段18を構成するコンピュータに上記情報を手入力したり、製品又は部品を生産する機械設備13から上記情報を自動入力するなどの方法をとればよい。このデータ収集方法は、リアルタイムで収集できることが望ましいが、手入力であっても差し支えない。
【0029】
このようにして収集された製造実績情報は、前述のように、図1で示した品質情報分析手段22へ送信される。
【0030】
次に、図4により、品質情報分析手段22において、統計手法により、機械設備(生産設備)13の異常の有無を判定する機能を説明する。この異常判定には図4で示す品質管理図を用いる。この図では、所定の製品又は部品が正しく生産されたときの過去の蓄積された物理量から統計手法により求められる基準値CL及び上限値UCL、下限値LCLによる管理限界が設定され、機械設備13からリアルタイムで測定される物理量が前記管理限界内に入っているか否かにより異常の有無を判定する。この実施形態では、所定の製品又は部品が正しく生産されたときの過去の蓄積された電流値の平均値を求めてこれを基準値CLとする。また、その標準偏差σに基づき、その±3σを上限値UCL、下限値LCLと定めて管理限界とした。
【0031】
すなわち、蓄積された計測データの電流値を、同一設備毎、生産製品又は部品毎に分類し、平均値・分散値を算出し、分析機能として設定したσ値に基づき管理限界UCL/LCLとして区間推定を行うことで機械設備13の異常検知を行うものである。つまり、機械設備13の固有の電流変動に基づいて定めた管理限界と、機械設備13の現在の状態を表す計測電流とを対比し、機械設備13が統計的管理状態にあるか否かを評価する。管理限界UCL/LCLは通常「平均値±3σ」とするが予め設定可能とする。
【0032】
図4の例では、機械設備Aに対する管理限界UCL/LCLと、この機械設備Aにおける製品加工時に計測された負荷電流値との関係を示している。また、図4の下部には、設備機械Aによる製造実績が時刻と対応させて示されている。すなわち、8:00から9:00までは製造オーダaによる加工が実施され、9:30から10:30までは製造オーダbによる加工が、10:30から11:30までは製造オーダcによる加工が実施されたことを示している。
【0033】
図4において、負荷電流値が管理限界UCL/LCL内に入っていれば、機械設備Aは正常に作動しているものと判断される。これに対し負荷電流値が管理限界UCL/LCLを超えると機械,設備Aに異常が生じているものと判断する。ただし、機械設備Aに対する電源投入などにより、一時的に電流値が管理限界UCL/LCLを超えた場合は異常発生とは判断しない。例えば、図4において、機械設備Aがボール盤であり、製造オーダa終了後にドリル交換のため一旦停止させ、製造オーダbを実施するために電源を投入すると、その電流値は一時的に上昇し、事象Xで示すように管理限界の上限値UCLを超える場合がある。このような場合は設備機械Aの異常発生とは判断しない。
【0034】
これに対し、図4において製造オーダcでの加工中に異常状態、例えば、ドリルの刃に欠損などが生じると、電流値は事象Yで示すように急激に増大し、管理限界の上限値UCLを超えた状態で継続する。この状態は、加工が終了するまで継続するので、事象Xで説明した電源投入時のような一時的なものではなく、明らかに異常発生と判別することができる。
【0035】
このように、品質情報分析手段22には、所定の製品又は部品が正しく生産されたときの過去の蓄積された電流値(物理量)から統計手法により求められる基準値CL及び上下限値よる管理限界UCL/LCLが設定され、機械設備13からリアルタイムで測定される電流値が、この管理限界UCL/LCL内に入っているか否かにより機械設備13の異常の有無を判定する。一方、製造実績収集手段18は、製造指示情報12に基づいて機械設備13により生産された製品又は部品に関する製造実績情報19を入手している。この製造実績情報19としては、少なくとも製造オーダ番号、機械設備13の設備番号、生産日時が収集し、前記製品又は部品と対応付けて蓄積されており、その情報は品質情報分析手段22に入力されている。
【0036】
品質情報分析手段22は、図4で示した管理図に基いて機械設備13の異常を検出した場合、測定情報収集手段15で収集したそのときの機械設備番号及び製造時刻などの情報と、製造実績収集手段18により収集された製造日時や製造オーダ番号機械設備番号などの情報とを付き合わせることにより、異常の生じた機械設備13を特定する。また、製造オーダ及び生産日時から異常が生じた機械設備13により生産された製品又は部品を特定することができる。
【0037】
次に、図5によりトレサビリティについて説明する。前記機械設備13で作られた製品が、ある最終製品を構成する部品である場合、その部品を作る機械設備13に異常が発生していると、この機械設備13で作られた部品が異常である場合が考えられ、その部品で構成された最終製品にも不具合が発生する可能性がある。そこで、機械設備13の異常が検出された場合、その機械設備13で作られた部品で構成され、部品の不具合が影響を与える最終製品を特定する必要がある。或いはこの不具合のある部品を使用して製造を行う他の製造工程を特定し、不具合部品を使用した製造を中止するなどの対応が必要となる。
【0038】
このシステムでは、製造実績収集手段18により、製造指示システム11から最終製品に関するBOM情報20が収集されており、品質情報分析手段22は、このBOM情報20を用いて図5の手法によりトレサビリティを行う。ここで、BOM情報20は、図5で示すように、最終製品(図5の例では製品A又は製品B)の部品構成情報(構成BOM)及び製造工程情報(工程BOM)からなる。すなわち、BOM情報20は、どのような部品(部品A〜部品Z、部品−1〜部品−n)を、どのように組み合わせる(どのような製造工程)ことにより最終製品(製品A又は製品B)が造られるかが予め設定されている情報である。したがって、この情報に異常が発生した機械設備13により生産された不具合部品を当てはめると(図5中の当該部品)、その不具合部品を使用する製造工程、及びその服外部品により構成される最終製品をそれぞれ特定するトレサビリティが可能となる。
【0039】
すなわち、機械設備13により生産される製品が、ある最終製品を構成する部品である場合、製造実績収集手段18が収集する製造実績情報のひとつとして、最終製品の部品構成及び最終製品の製造工程に関する情報(BOM情報)20が収集される。品質情報分析手段22は、最終製品を構成する部品を生産する機械設備13の異常を検出した場合、製造実績収集手段18が収集したBOM情報を用いて、異常と判定された機械設備13により生産された部品が用いられる最終製品を特定すると共に、同部品が用いられる他の製造工程を特定するトレサビリティ機能を有する。
【0040】
上記構成において、ある目的とする製品又は部品を製造する場合、製造指示システム11は、製造オーダ番号やロット番号、機械装置番号、着手日時及び完成日時、さらには投入数や完成数等に関する製造指示情報12を、対応する生産設備(機械設備として話を進める)13に出力する。機械設備13は、この製造指示情報にしたがって所定の製品又は部品を製造する。
【0041】
この製品又は部品の製造に伴い、製造された製品または部品に対応してその製造実績情報19が出力される。この製造実績情報19は、前述した製造指示情報12とほぼ同じ項目を有する。この製造実績情報19は製造実績収集手段18により収集され、製造された製品又は部品に対応して蓄積される。また、この製造実績情報19は製造指示システム11に提供されると共に、品質情報解析手段22にも提供され、後述する品質情報解析に用いられる。
【0042】
すなわち、製造実績収集手段18は、製造指図システム11から製造指示される製造オーダの情報と製造実績情報19をリアルタイムに取込む。また、製造指示システム11からBOM情報をも取込んでいる。
【0043】
一方、上記製品又は部品の製造のために機械設備13には動力源となる電力が供給され、その値(負荷電流値)は電力測定装置16により測定され測定情報収集手段15により収集され蓄積される。すなわち、測定情報収集手段15は、機械設備13に内蔵しくは接続された電力測定装置16で計測された電圧、電流などを機械設備番号等と共に計測情報としてリアルタイムに取込む。
【0044】
品質情報分析手段22は、測定情報収集手段15によって収集された計測情報を時系列に統計分析し、図4で示した限界値(シグマ値)UCL/LCLとして蓄積を行う。そして、リアルタイムに計測される計測情報を限界値UCL/LCLと比較し、機械設備13の状態判定を行う。
【0045】
また、品質情報分析手段22は、製造実績収集手段18によって収集された製造実績データを機械設備、製造オーダ、に分類し、作業着手・終了の時系列にデータを蓄積・検索できるようにする。
【0046】
さらに、品質情報分析手段22は、上述のようにして得られたデータを、製造オーダ(工程)毎に時系列的に画面表示するように出力手段28に出力する。
【0047】
ここで、リアルタイムで入力される機械設備13の負荷電流値が、図4で示した管理限界UCL/LCLの外であった場合(図4の事象Y)は、機械設備13の異常と判定し、異常検出情報24を出力して、異常検出を出力手段28に画面表示させると共に、設備保全手配25を行う。この場合、蓄積された過去の保全情報の検索を行い、保全手段の参考情報とする。また、保全手配の結果26を、機械設備異常の判定結果に対して入力を行い、データベース化して蓄積することで、以後の分析パラメータとして利用する。
【0048】
上述のように機械設備13の異常と判定した場合、製造情報(BOM、製造オーダ等)から製造される製品又は部品を特定し、関連する工程、製品への対策を行う。この場合、製造情報と設備情報との関連付けは次のようにして行う。図4で示すとおり、電力計測(図4の上部)値と製造実績情報(図4の下部)とは製造オーダによる機械設備番号で関係付けすることが可能である。また時系列に表現することで時間的な関係付けすることが可能である。
【0049】
なお、機械設備13に対する異常判定の閾値(限界値UCL/LCL)については、統計分析によるシグマ(σ)値として算出することで求めることができる。また、閾値については蓄積されたデータを基に基準値として設定することも可能である。
【0050】
このような分析情報の出力手段(表示端末)への表示は次のようにして行う。表示情報は、製造部門と保全部門では、必要な情報が製造情報が主体なのか、保全情報が主体なのか、など異なるため、必要な情報を分類しリアルタイムに表示する。異常を検知した場合は、一見して判別できるよう全画面を反転点滅させるようにするとよい。また、音による警告により異常を検知したことを通知してもよい。
【0051】
ここで、機械設備13の異常を検知した場合は、製造工程へ異常通知し、図5で説明した構成BOM、工程BOMおよび製造指図情報に基づくトレース情報をもとに、当該設備で製造された製品・仕掛品の確認を行い製造停止や出荷取りやめなどの適切な対処を行う。
【0052】
このように、この実施の形態による生産品質システムでは、生産設備13の情報収集を行っている。すなわち、生産設備13の電力情報について電力計測装置16を用いてリアルタイムに測定し、ディジタル数値化された電圧、電流、時刻などを生産設備13ごとに分析サーバに収集・蓄積し統計分析を行っている。そして、分析結果も設備機器ごとに蓄積収集を行っており、その情報は出力手段18によりリアルタイムに画面表示される。
【0053】
また、製造情報の収集も行っており、製造指示された製造オーダ情報の製造着手、製造完了、使用設備機器番号等を工程管理サーバへ収集し、工程検査情報・完成品質検査情報もサーバへ収集し蓄積を行う。この情報は、やはりリアルタイムに進度情報として画面表示される。
【0054】
さらに、蓄積された生産設備13に関する統計的分析結果と、製品の品質検査結果を製造オーダで関連付けし、正製品の品質基準値に対する正常値と異常値の集団に分類し、基準値との公差として製品オーダごとに蓄積・検索し、リアルタイムに画面表示することもできる。
【0055】
また、リアルタイムに収集される生産設備13の情報を、蓄積された設備機器の統計分析の正常値集団・異常値集団と比較し、結果をリアルタイムに画面に表示することで、生産設備13の正常・異常をリアルタイムに把握することができる。そして、リアルタイムに収集される生産設備13の情報に異常値が発見された場合に、製造情報として収集された情報に基づき、不良となる可能性の高い加工品・製品を即座に特定し画面に表示することができる。
【0056】
さらに、トレサビリティ機能を実行できる。すなわち、製品に不良が発見された場合、生産設備13による加工不良が想定される場合は、製品の製造オーダ番号および設備機器番号により、収集された製造情報を用いて「工程」、「設備機器」、「製造オーダ」、「ロット番号」、「工程担当者」、「加工時間」を検索して画面表示を行い、設備機器の稼働情報を同時に画面表示することもできる。
【0057】
これらの結果、現場情報がリアルタイムに把握できるため、問題に対して時点情報によるリアルタイム指示を行い、即座に対応が可能となるので問題解決が短縮できる。また、生産設備機械の予防保全が可能なため、設備機械の「可動率」が向上する。また、スループットの短縮の効果として生産効率が改善され、工場生産能力が向上し、生産余力が向上する。さらに、不良が低減するため破棄される不良品が減り作業廃棄物も低減する。また、設備機械の可動率が向上するため、使用するエネルギーも低減し、環境への改善にも寄与する。
【0058】
なお、測定情報収集手段15が収集し、蓄積する物理量は、生産設備13に供給される電気量に限らず、生産設備13に生じる振動、生産設備13から生じる温度、生産に要する時間のいずれか又はこれらの組み合わせであってもよい。例えば、化学・食品製造、鍍金工程における製造過程における設備機器の「温度、時間」を同様の方法により計測することで製造品質の改善、トレサビリティに利用が可能である。その他、製造機械設備に対して同様の方法で、設備異常を検知し事前保全を行うことで製品品質の改善と、製造スループットの向上を図ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る生産品質システムの一実施の形態における全体システムを概略示す機能ブロック図である。
【図2】前記本発明の一実施の形態における生産設備と測定情報収集手段との関係を示す機構ブロック図である
【図3】前記本発明の一実施の形態における製造実績情報収集手段の収集データ及び収集方法を示す図表である。
【図4】前記本発明の一実施の形態における製品情報分析手段の異常判定機能を説明する管理図である。
【図5】前記本発明の一実施の形態におけるトレサビリティの一例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0060】
11 製造指示システム
12 製造指示情報
13 生産設備(機械設備)
15 測定情報収集手段
16 電力測定装置
18 製造実績収集手段
19 製造実績情報
20 BOM情報
22 品質情報分析手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造指示システムからの製造指示情報に基づき所定の製品を生産する生産設備での、前記所定の製品の生産時に測定される物理量を、前記生産設備の設備番号および生産日時とともに収集し、蓄積する測定情報収集手段と、
前記所定の製品が正しく生産されたときの過去の蓄積された物理量から統計手法により求められる基準値及び上下限値よる管理限界が設定され、前記生産設備からリアルタイムで測定される物理量が前記管理限界内に入っているか否かにより前記生産設備の異常の有無を判定する機能を有する品質情報分析手段と、
前記生産設備の異常の有無を含む前記品質情報分析手段による分析結果を出力する出力手段と
を備えたことを特徴とする生産品質システム。
【請求項2】
製造指示システムからの製造指示情報に基づき所定の製品を生産する生産設備での、前記所定の製品の生産時に測定される物理量を、前記生産設備の設備番号および生産日時とともに収集し、蓄積する測定情報収集手段と、
前記所定の製品が正しく生産されたときの過去の蓄積された物理量から統計手法により求められる基準値及び上下限値よる管理限界が設定され、前記生産設備からリアルタイムで測定される物理量が前記管理限界内に入っているか否かにより前記生産設備の異常の有無を判定する機能を有する品質情報分析手段と、
前記製造指示情報により前記生産設備により生産された製品に関する製造実績情報として、少なくとも製造オーダ番号、前記生産設備の設備番号、生産日時を収集し、前記製品と対応付けて蓄積する製造実績収集手段と、
この製造実績収集手段により収集された製造実績情報と組み合わされた前記品質情報分析手段による分析結果を出力する出力手段と
を備えたことを特徴とする生産品質システム。
【請求項3】
前記品質情報分析手段は、前記所定の製品が正しく生産されたときの過去の蓄積された物理量の平均値とその標準偏差とに基づき基準値及び上下限値を定めて管理限界としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生産品質システム。
【請求項4】
前記測定情報収集手段が収集し、蓄積する物理量は、前記生産設備に供給される電気量、前記生産設備に生じる振動、前記生産設備から生じる温度、前記生産に要する時間のいずれか又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の生産品質システム。
【請求項5】
前記品質情報分析手段は、前記生産設備に異常ありと判定した場合、測定情報収集手段及び製造実績収集手段により収集された情報を付き合わせることにより、生産設備番号から異常の生じた生産設備を特定し、製造オーダ及び生産日時から異常の生じた生産設備により生産された製品を特定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の生産品質システム。
【請求項6】
前記生産設備により生産される製品が、他の最終製品を構成する部品である場合、前記製造実績収集手段が収集し、蓄積する製造実績情報として、前記最終製品の部品構成及び前記最終製品の製造工程の情報を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の生産品質システム。
【請求項7】
前記品質情報分析手段は、前記生産設備により生産される製品が、他の最終製品を構成する部品であり、この部品を生産する前記生産設備に異常ありと判定した場合、前記製造実績情報に含まれる前記最終製品の部品構成に関する情報から、異常と判定された前記生産設備により生産された部品が用いられる最終製品を特定するトレサビリティ機能を有することを特徴とする請求項6に記載の生産品質システム。
【請求項8】
前記品質情報分析手段は、前記生産設備により生産される製品が、他の最終製品を構成する部品であり、この部品を生産する前記生産設備に異常ありと判定した場合、前記製造実績情報に含まれる前記最終製品の製造工程に関する情報から、異常と判定された前記生産設備により生産された部品が用いられる他の製造工程を特定するトレサビリティ機能を有することを特徴とする請求項6に記載の生産品質システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−80649(P2009−80649A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249496(P2007−249496)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】