説明

産業用情報処理装置

【課題】本発明は、耐ノイズ性能をアップさせ、放射ノイズ試験の検証を容易とし、さらに省スペースを実現し、かつ、カスタム対応の拡張部分のみを早急に開発できる産業用情報処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】CPUを搭載した、装置の共通仕様により設計されたCPUベースボード21と、前記共通仕様から外れた客先の拡張仕様により設計されたカスタムボード22とを備え、CPUベースボード21とカスタムボード22とを平面的に隣接して配置し、これらボード21,22をコネクタ23により電気的に接続し、ボード21,22間のデータの送受信を、予め設定されたインターフェイス規格に基づいて行う構成とする。この構成によれば、CPUベースボード21を共通仕様で対応できることにより、客先毎にCPU周りの回路設計をしなくて済み、装置としての設計・検証の時間を大幅に短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、客先仕様による拡張機能を有する産業用情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の上記産業用情報処理装置(PC)は、CPUを搭載した主基板と、客先が必要としている機能を搭載しているI/F拡張基板を選択して組み合わせることで構築されている。このI/F拡張基板は、ISAバス、PCIバス、PCI EXPRESSを介して接続されることにより、I/F拡張基板を接続するためのバス拡張基板であるライザボード、バックプレーンボードを必要とし(例えば、特許文献1参照)、そうでない場合、CPUを搭載した主基板に直接I/F拡張基板を接続できるようなスペースを必要としている。
【0003】
また従来、CPU基板とI/F拡張基板を上下に配置し、コネクタで介して接続された産業用情報処理装置が知られている。またこのように基板を上下に重ねて産業用情報処理装置を小型化、薄型化、高密度実装化及び高速化する技術は、例えば、特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2004−327588号公報
【特許文献2】特開平08−23149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の産業用情報処理装置において、バス拡張基板であるライザボード、バックプレーンボードを使用する場合、スペースが大きくなるデメリットと、コストが高くなるデメリットがあった。このため、スペースを考慮した場合、必要としている機能を全て一枚の基板に搭載した基板を、カスタマイズする場合が最も効率がよいが、客先の要望を聞き、一枚の基板として設計する場合、客先毎に必要とする仕様が異なるために、設計、検証に手間がかかり、コスト面で多くの開発費を要するという問題があった。特に、CE試験とVCCI試験を満足しているかの検証、すなわち漏洩電波試験と伝導雑音試験を実施して規制値を満足しているかを試験し、満足していない場合に設計変更等のノイズ対策を実行し、規制値を満足させる検証には、時間とコストを要するという問題があった。さらに、一枚の基板として設計する場合、ボード本体(生ボード)の配線パターンの層の数は、CPU基板で必要な配線パターンの層の数により設計されるが、拡張機能を実現する回路で必要な配線パターンの層の数は、実際にCPU基板で必要な配線パターンの層の数だけ必要としない。しかし、拡張機能を実現する回路でもCPU基板で必要な配線パターンの層の数と同一とならざるを得ず、ボード自体のコストが高くなるという問題があった。
【0005】
また上下に基板を配置する構成では、CPU基板に拡張基板が対向するために、CPU基板から発生される漏洩電波(放射ノイズ)と誘導ノイズにより拡張基板が誤動作する可能性が大きく検証に時間がかかり、さらにこれら基板から発生する熱が互い影響しあい、また筐体内に収納されると発生した熱が筐体内の温度を上げて、基板の許容温度を超え、動作しなくなる恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、耐ノイズ性能をアップさせ、ノイズ試験の検証を容易とし、さらに省スペースを実現し、かつ、カスタム対応の拡張部分のみを早急に開発できる産業用情報処理装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、CPUを搭載した、装置の共通仕様により設計されたベースボードと、前記共通仕様から外れた客先の拡張仕様により設計されたカスタムボードとを備え、前記ベースボードとカスタムボードとを平面的に隣接して配置し、これらベースボードとカスタムボードを単数または複数のコネクタにより電気的に接続し、前記ベースボードとカスタムボードとの間のデータの送受信を、予め設定されたインターフェイス規格に基づいて行うことを特徴とするものである。
【0008】
上記構成によれば、次の作用が得られる。
1.ベースボードとカスタムボードとの間のデータの送受信は、予め設定されたインターフェイス規格に基づいて行われる。よって、ベースボートは、客先の拡張仕様によりカスタムボードの機能が変わっても、設定したインターフェイス規格により常にデータの送受信ができ、共通仕様で対応できる。
【0009】
2.設計段階で多くの検証の時間を要するCPUを搭載したベースボートを設計しないことにより、大幅に装置の設計時間の短縮が可能となる。また拡張仕様によるカスタムボードの設計だけであれば見積もりも容易となり、装置の営業の早急な見積もり回答が可能になり、客先の要望に迅速に対応できる。
【0010】
3.ベースボードとカスタムボードを平面的に配置することにより、ベースボードで発生する漏洩電波(放射ノイズ)と誘導ノイズがカスタムボードに影響する恐れが少なくなり、さらに互いの発熱が他方へ影響する恐れが少なくなり、さらに無駄なスペースが不要となり、装置を小さく薄くできる。
【0011】
4.客先の拡張仕様により設計されるカスタムボードは、設定したインターフェイス規格により常にデータの送受信をするという規制以外に規制はなく、今までのリソースの応用が可能となり、カスタムボードの回路設計は容易となる。
【0012】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記カスタムボードには、前記コネクタの近くに、前記インターフェイス規格に基づいてシリアル信号をパラレル信号に変換するブリッジICを配設したことを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、ベースボードとカスタムボードとの間の予め設定したインターフェイス規格のシリアル信号は、ブリッジICによりカスタムボードのパラレル信号に変換される。よって、ベースボートは、客先の拡張仕様によりカスタムボードの機能が変わっても、設定したインターフェイス規格のシリアル信号によりデータを送受信でき、共通仕様にできる。
【0014】
また請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明であって、前記インターフェイス規格として、PCI EXPRESS、LAN、SATAのうちの一つもしくは複数を選択することを特徴とするものである。
【0015】
上記構成によれば、一般的なインターフェイス規格が採用され、データの送受信が行われる。
また請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明であって、前記ベースボードを配置したエリアと前記カスタムボードを配置したエリアとの間に、前記ベースボードより発生する漏洩電波を遮蔽する遮蔽手段を配置したことを特徴とするものである。
【0016】
上記構成によれば、ベースボードを配置したエリアとカスタムボードを配置したエリアが、遮蔽手段により分離され、ベースボードより発生する漏洩電波がカスタムボードに影響を与えることが防止される。
【0017】
また請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明であって、前記CPUのクロック周波数等の伝導雑音が、前記ベースボードから前記コネクタを通って前記カスタムボードへ伝播することを防止するフェライトを、前記コネクタに取り付けたことを特徴とするものである。
【0018】
上記構成によれば、ベースボードより発生するCPUのクロック周波数等の伝導雑音が、コネクタを通ってカスタムボードへ伝播することがフェライトにより防止され、よって伝導雑音がカスタムボードに影響を与えることが防止される。
【0019】
また請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明であって、平面的に配置した前記ベースボードとカスタムボードを収納する、高さが低い薄型で箱状の装置本体を備え、前記装置本体の薄い側部に、外部機器と接続する外部コネクタを配置し、前記装置本体の略上面全体に、放熱用フィンを配設したことを特徴とするものである。
【0020】
上記構成によれば、ベースボードとカスタムボードを平面的に配置することにより、互いの発熱が他方へ影響する恐れが少なくなるとともに、外部コネクタが薄い側部に集中し、装置本体の略上面全体が放熱用フィンとして使用されることにより、放熱の効率が向上する。よって、強制冷却する必要がなくなり、ファンが不要となる。
【0021】
また請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明であって、前記放熱用フィンに、前記遮蔽手段を接触させたことを特徴とするものである。
上記構成によれば、ベースボードとカスタムボードで発生した熱が遮蔽手段を介して放熱用フィンに伝わって放熱される。
【0022】
また請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の発明であって、前記放熱用フィンに、熱伝導シート、またはノイズ対策用シールド材、または電磁波吸収熱伝導シートを介して前記遮蔽手段を接触させたことを特徴とするものである。
【0023】
上記構成によれば、熱伝導シートにより、放熱用フィンと遮蔽手段との間の目に見えない凹凸や製造誤差が吸収されて放熱用フィンと遮蔽手段とが密着し、熱伝導性がよくなる。またノイズ対策用シールド材により放熱用フィンと遮蔽手段との間の目に見えない隙間が完全に塞がれて隙間からベースボードより発生する漏洩電波が漏れることが確実に遮断される。また電磁波吸収熱伝導シートにより、放熱用フィンと遮蔽手段との間の目に見えない凹凸や製造誤差が吸収されて放熱用フィンと遮蔽手段とが密着し、熱伝導性がよくなり、且つ漏洩電波が吸収される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の産業用情報処理装置は、次の優れた効果を有している。
1.ベースボードとカスタムボードとの間のデータの送受信は、予め設定されたインターフェイス規格に基づいて行われることにより、ベースボートは、客先の拡張仕様によりカスタムボードの機能が変わっても、設定したインターフェイス規格により常にデータの送受信でき、共通仕様で対応できる。
【0025】
2.設計段階で多くの検証の時間を要するCPU基板を搭載したベースボードを設計しないことにより、大幅に装置の設計時間を短縮でき、納期を短縮でき、また拡張機能によるカスタムボードの設計だけであれば見積もりも容易となり、営業の早急な装置の見積もり回答が可能になる。
【0026】
3.ベースボードとカスタムボードを平面上に配置することにより、ベースボードで発生する漏洩電波(放射ノイズ)と誘導ノイズがカスタムボードに影響する恐れを少なくでき、さらに互いの発熱が他方へ影響する恐れを少なくでき、さらに無駄なスペースが不要となり、小さく薄くできる。
【0027】
4.客先の拡張仕様による設計されるカスタムボードは、設定したインターフェイス規格により常にデータの送受信をするという規制以外に規制はなく、今までのリソースを応用でき、カスタムボードの回路設計を容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態における産業用情報処理装置の斜視図である。
図1において、11は産業用情報処理装置10の筐体(装置本体)であり、高さ(H)が低い、薄くてフラットな箱体形状、例えば、寸法を幅(W)256mm、奥行き(D)183mm、高さ(H)25mmとした薄型の箱の形状としている。この筐体11の高さ(H)と奥行き(D)で規定される正面11aには、後述するスイッチ、ランプ、ポート等を外方へ突出させるための孔が設けられ、筐体11の高さ(H)と幅(W)で規定される側面11bには、シリアルポート等を外部へ突出させるための孔が設けられ、さらに幅(W)と奥行き(D)で規定される広い上面11cには、全体に放熱用フィン12が配設されている。
【0029】
また筐体11の内部には、図2に示すように、奥行き(D)の寸法が同一の2枚のボード、すなわちCPU(チップ)20を搭載し一般のPCとして機能する、装置(産業用情報処理装置)の共通仕様により設計されたCPUベースボード(CPU基板)21と、前記共通仕様より外れた客先の拡張仕様により設計された拡張カスタムボード(拡張基板)22が、CPUベースボード21を正面11a側に置いて平面的に隣接して配置され、これらCPUベースボード21と拡張カスタムボード22の対向する側部に、互いに係合するオスとメスのコネクタ23が設けられ、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22はこれらコネクタ23により電気的に接続されている。
【0030】
また筐体11の内部には、CPUベースボード21を配置したエリアXと拡張カスタムボード22を配置したエリアYとの間に、CPUベースボード21より発生する漏洩電波(放射ノイズ)が空間を通って拡張カスタムボード22へ飛ぶことを遮蔽する板状の板金(遮蔽手段の一例)24が取り付け自在に配置されている。この板金24は、コネクタ23の箇所を除いて、筐体11の内部を空間的に前記各エリアX,Yに分離しており、筐体11内に、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22が実装された後に、取り付けられる。
【0031】
またコネクタ23には、コネクタ23を伝わってCPU20のクロック周波数等の伝導雑音(電磁波)が漏れることを防止するために、フラットなフェライト25が上下を挟むように取り付けられている。
[CPUベースボード21]
前記CPUベースボード21上には、CPU(チップ)20の他に、I/Oコントローラハブ、クロック、半導体メモリ等が搭載され、さらにCPUベースボード21上には正面11a側に、正面左側から順に、DC電源入力コネクタ26、電源パワースイッチ27、ハードウェアリセットスイッチ28、3個のLEDランプ(電源、ステータス、アクセス表示用)29、ライン出力用コネクタ(L-out)30、FDドライブ、プリンタ、CD−ROMドライブ等が接続される4個のUSBポート31、液晶ディスプレイが接続されるディスプレイ用コネクタ32、2個のLANコネクタ33、データ送信用(または受信用)第1シリアルポート34が設けられ、USBポート31の下方とLANコネクタ33の下方にそれぞれ、CFカードスロット35が設けられている。またCPUベースボード21上には、側面11b側に、データ受信用(または送信用)第2シリアルポート36が設けられている。
【0032】
筐体11にこのCPUベースボード21を取り付けたときに、前記正面11a側に設けたDC電源入力コネクタ26、電源パワースイッチ27、ハードウェアリセットスイッチ28、3個のLEDランプ29、ライン出力用コネクタ30、4個のUSBポートコネクタ31、ディスプレイ用コネクタ32、2個のLANコネクタ33、第1シリアルポート34、およびCFカードスロット35の先端部は、図1に示すように、筐体11の正面11aから突出し、また第2シリアルポート36の先端は、図1に示すように、筐体11の側面11bから突出する。
【0033】
上記CPUベースボード21のハードウェアは、装置の共通仕様により設計されており、予めOSが書き込まれ上記CFカードスロット35に接続されるCFカード38により起動され、さらに拡張カスタムボード22に搭載される拡張機能に応じて、さらに拡張カスタムボード22に搭載される拡張機能やドライブ等に応じてアプリケーションプログラムが書き込まれ、CPU20はこのアプリケーションプログラムに応じて、USBポート31を介してFDドライブやプリンタの駆動を行い、LANコネクタ33またはシリアルポート34,36を介して外部機器とのデータ通信を行うとともに、前記拡張機能に対応して動作するよう構成され、さらにCPUベースボード21と拡張カスタムボード22との間の予め設定したインターフェイス規格(例えば、PCI EXPRESS)に基づいて拡張カスタムボード22との間で、データ通信を行うように構成されている。また単体で動作することができる。
【0034】
このCPUベースボード21は、設計段階で多くの時間とコストを要する、CE試験とVCCI試験を満足するかどうかの検証が実施され、すなわち試験結果に基づいて、規制値を満足するまでノイズ対策(基板の配線パターンの変更、部品の位置の変更等)が実施され、検証が終了すると、量産されてノイズ試験の検証済みボードとしてストックされる。さらに上記板金24とフェライト25を組み合わせることで、CPUベースボード21で発生する漏洩電波(放射ノイズ)と伝導雑音の拡張カスタムボード22への影響を検証でき、検証済みのCPUベースボード21を使用することにより、装置としてのノイズ試験の検証を容易にすることができる。
[拡張カスタムボード22]
前記拡張カスタムボード22上には、客先の拡張仕様により設計され、拡張機能を実現する機器・部品とポートが配置され、前記拡張仕様を、基板1枚で実現している。
【0035】
さらに拡張カスタムボード22上には、コネクタ23の近くに、拡張カスタムボード22のパラレル信号を、前記インターフェイス規格に基づいてシリアル信号に変換してCPUベースボード21へ送信し、CPUベースボード21から受信したシリアル信号をパラレル信号に変換するブリッジIC41が配設されている。
【0036】
客先の拡張仕様による拡張機能には、客先の数だけバリエーションがある。このような拡張機能には、例えば次のものがある。
1.図2に一例として示すように、CPUベースボード21の2ch(チャンネル)のシリアルポート34,36以外のシリアルポート42の増設。
2.HDDの内蔵(RAID)。
3.USBからの変換なしで、且つD−Subコネクタケーブルを直接接続するための、D−Subコネクタの増設。
4.多chの画像出力を可能とするグラフィックコントローラの増設(VGA)。
5.アナログ入出力点、ディジタル入出力点の増設。
【0037】
拡張カスタムボード22は、客先の拡張仕様に応じてその都度、CPUベースボード21の配線パターンの層の数に規制されずに、ボード本体(基板)の配線パターンが設計され基板の配線パターンの層が決定され、基板が製作されて機器・部品が実装され、拡張カスタムボード22単体で、動作が検査される。
【0038】
その後、筐体11に実装され、コネクタ23により共通仕様のCPUベースボード21と接続される。
また上述したように、拡張機能の内容により、CFカード38のアプリケーションプログラムが変更される。
【0039】
また拡張カスタムボード22に配置される上記シリアルポート42やD−Subコネクタの先端は、両側面11b、または正面11aとは反対側の背面11dから突出され、筐体11の薄い側部(正面11a、両側面11b、背面11d)に、外部機器と接続する外部コネクタが配置されている。外部コネクタは、上記ライン出力用コネクタ30、USBポートコネクタ31、ディスプレイ用コネクタ32、LANコネクタ33、第1シリアルポート34、第2シリアルポート36、シリアルポート42、D−Subコネクタ等である。
【0040】
上記構成により、産業用情報処理装置10は次の手順で製作される。
まず客先から客先の拡張仕様が送られてくると、上述したように拡張カスタムボード22が設計・製作され、この拡張カスタムボード22の設計・製作に平行して、拡張機能、接続するドライブに応じて、CPU20のプログラムが製作され、CFカード38に書き込まれる。
【0041】
拡張カスタムボード22が製作されると検査が実行され、終了すると、ストックされていた筐体11に、まずストックされていたCPUベースボード21が実装され、続いてコネクタ23の上下を挟むようにフェライト25が取り付けられ、拡張カスタムボード22が実装され、コネクタ23により共通仕様のCPUベースボード21と接続される。
【0042】
続いて、板金24が、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22を分離するように取り付けられる。
続いて、通電されて、プログラムが書き込まれたCFカード38が、CPUベースボード21のCFカードスロット35に取り付けられ、OS,アプリケーションプログラムが実行される。
【0043】
そして、動作検査の後、客先へ出荷される。
以上のように本実施の形態によれば、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22との間のデータの送受信は、予め設定したインターフェイス規格に基づいて実行されることにより、CPUベースボード21は、客先の拡張仕様により拡張カスタムボード22の拡張機能が変わっても、データを送受信でき、CPUベースボード21を共通仕様で対応できる。よって、客先毎にCPU周りの回路設計をしなくて済み、量産しノイズ試験の検証済みボードとして予めストックしておくことができ、装置としての設計・検証の時間を大幅に短縮できる。またこのように、CPU周りの回路を設計せずに、CPUベースボード21を使用することにより、客先の拡張仕様に基づく拡張カスタムボード22の設計だけで済み、よって装置の見積もりも容易となり、営業の早急な見積もり回答が可能になる。また拡張カスタムボード22は、CPUベースボード21とは別基板となることにより、今までのリソースを活用でき、配線パターンの設計を容易にでき、設計時間を短縮することができる(なお、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22を同一基板とすると、拡張部の基板の配線パターンの層の数をCPU部と同じにしなくてはならず、今までのリソースを活用することが困難となる)。
【0044】
また本実施の形態によれば、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22を平面的に隣接して配置することにより、CPUベースボード21で発生する漏洩電波(放射ノイズ)と誘導ノイズが拡張カスタムボード22に影響する恐れを少なくできる。図3に示すように、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22を上下に対向させてきた場合と比較して、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22を平面的に隣接して配置したときの相互インダクタンスを少なくすることができ、電磁誘導ノイズの影響を少なくすることができる。図3では、CPUベースボード21の配線パターンをボード外周のコイル1で代表し、拡張カスタムボード22の配線パターンをボード外周のコイル2で代表して、モデル1ではコイル1とコイル2を距離d(mm)で上下で対向させ、モデル2では、コイル1とコイル2を平面的に距離d(mm)を離して配置している。そして、コイル1に一定電流を流し、距離d(mm)を変化させてコイル2の起電力eを測定することにより、距離d(mm)を変化に伴う相互インダクタンスMを測定している。コイル1とコイル2の長さはボード21,22の外周寸法(横幅a=125mm,縦幅b=180mm)に合わせている。図3(b)の基板間距離dと相互インダクタンスMの特性図から判るように、コイル1とコイル2を平面的に配置したモデル2は、コイル1とコイル2を上下対向したモデル1と比較して相互インダクタンスMが小さく、CPUベースボード21が動作しているときに拡張カスタムボード22は、相互インダクタンスMによる影響を受けにくく、よって電磁誘導ノイズの影響を受けにくいことが判る。同様に、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22との間を距離を大きくできることにより、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22間の静電容量も小さくなり、静電誘導ノイズも低減できる。また漏洩電波(放射ノイズ)も低減できる。
【0045】
またCPUベースボード21を配置したエリアXと拡張カスタムボード22を配置したエリアYが、板金24により空間的に分離されることにより、CPUベースボード21より発生する漏洩電波(放射ノイズ)が、筐体11内の空間を通って拡張カスタムボード22に飛ぶことを防止でき、漏洩電波が拡張カスタムボード22に影響を与えることを防止できる。さらにCPUベースボード21より発生するCPU20のクロック周波数等の伝導雑音が、コネクタ23を通って拡張カスタムボード22へ伝播することをフェライト25により防止でき、前記伝導雑音が拡張カスタムボード22に影響を与えることを防止できる。
【0046】
このように、CPUベースボード21にて発生する漏洩電波と伝導雑音の拡張カスタムボード22への影響を防止することができることにより、客先の拡張仕様に応じて、その都度、設計される拡張カスタムボード22のノイズに対する検証が容易となり、拡張カスタムボード22の設計・検証時間とコストを削減することができる。
【0047】
また本実施の形態によれば、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22を平面的に隣接して配置することにより、互いの発熱が他方へ影響する恐れを少なくでき、また筐体11の略上面11c全体が放熱用フィン12として使用されることにより、放熱の効率を向上でき、よって、強制冷却する必要がなくなり、冷却ファンを不要にでき、装置の信頼性を向上させることができる。またCPUベースボード21と拡張カスタムボード22を平面的に隣接して配置することにより、筐体11内の発熱量の見積もりが容易となり、よって筐体11(放熱用フィン12を含む)の設計が容易となり、また逆に標準の筐体11の形状が決定されると、客先毎に設計される拡張カスタムボード22からの可能な発熱量が決まり、拡張カスタムボード22の発熱に対する回路設計が容易となる。
【0048】
また本実施の形態によれば、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22を平面的に隣接して配置することにより、筐体11の設計が容易となるとともに、無駄なスペースが不要となり、装置を薄く小さくすることができ、よって装置を小さなスペースに配置・取り付けることができる。
【0049】
なお、本実施の形態によれば、インターフェイス規格として、PCI EXPRESSを使用しているが、一般的なインターフェイス規格、例えばLAN、SATAのうちの一つもしくは複数を選択して使用することもできる。例えば、拡張カスタムボード22に、ハードディスクとアナログI/Oを搭載するときは、PCI EXPRESSとSATAを使用する。
【0050】
また本実施の形態によれば、遮蔽手段として、CPUベースボード21を配置したエリアXと拡張カスタムボード22を配置したエリアYとの間に、板状の板金24を配置しているが、この板金24は、板状に限ることはなく、網板状としてもよい。このとき、エリアXが密閉状態でなくなり、発生した熱がエリアYに移動できるために、筐体11の熱対策を容易にすることができる。
【0051】
また本実施の形態によれば、板状もしくは網板状の板金24は、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22が実装された後に筐体11内に取り付けられるようにしているが、板金24を良熱伝導体から構成し、予め、筐体11の上面11cの裏側に各エリアX,Yを分離するように固定しておくこともできる。このとき、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22が実装された後に、筐体11の上面11cを被せると(取り付けると)、各エリアX,Yは板金24により分離され、よって漏洩電波がCPUベースボード21より空間を通って拡張カスタムボード22へ飛ぶことを遮蔽でき、さらに上面11Cの放熱用フィン12に板金24が接触し、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22で発生した熱が板金24を介して放熱用フィン12に伝わって放熱され、よって放熱の効率を向上できる。
【0052】
また板金24を、筐体11の上面11cの裏側に固定するとき、放熱のための熱伝導シート、またはノイズ対策用シールド材(ガスケット)、または電磁波吸収能力のある(電磁波吸収性の優れた)電磁波吸収熱伝導シート{例えば、株式会社ジェルラック製のλGEL(商標)}を介して(挟んで)固定するようにすることもできる。前記熱伝導シートを、筐体11の上面11cの裏側と板金24間に挟むことにより、目に見えない凹凸、製造誤差を吸収して上面11cの裏側と板金24を密着することができ、よって熱伝導を良くすることができる。またノイズ対策用シールド材を、筐体11の上面11cの裏側と板金24間に挟むことにより、目に見えない凹凸、製造誤差を吸収して上面11cの裏側と板金24を密着することができ、よって金属間の目に見えない隙間を介して漏洩電波(放射ノイズ)が飛ぶことを抑えることができる。また電磁波吸収熱伝導シートを、筐体11の上面11cの裏側と板金24間に挟むことにより、目に見えない凹凸、製造誤差を吸収して上面11cの裏側と板金24を密着することができ、よって熱伝導を良くすることができ、且つ漏洩電波(放射ノイズ)を吸収することできる。
【0053】
また板金24に、CPUベースボード21と拡張カスタムボード22の発熱部(ICチップ等)に直に接触する良熱伝導体からなる接触子を接続し(固定し)、これら接触子および板金24を介して放熱用フィン12から放熱するようにすることもできる。なお、これら接触子は、筐体11の上面11Cの裏側に直接固定するようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態における産業用情報処理装置の斜視図である。
【図2】同産業用情報処理装置の内部構成図である。
【図3】同産業用情報処理装置の基板の配置による、基板間距離と相互インダクタンスの特性図である。
【符号の説明】
【0055】
10 産業用情報処理装置
11 筐体(装置本体)
12 放熱用フィン
20 CPU(チップ)
21 CPUベースボード
22 拡張カスタムボード
23 コネクタ
24 板金
25 フェライト
38 CFカード
41 ブリッジIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUを搭載した、装置の共通仕様により設計されたベースボードと、
前記共通仕様から外れた客先の拡張仕様により設計されたカスタムボードと
を備え、
前記ベースボードとカスタムボードとを平面的に隣接して配置し、
これらベースボードとカスタムボードを単数または複数のコネクタにより電気的に接続し、
前記ベースボードとカスタムボードとの間のデータの送受信を、予め設定されたインターフェイス規格に基づいて行うこと
を特徴とする産業用情報処理装置。
【請求項2】
前記カスタムボードには、前記コネクタの近くに、前記インターフェイス規格に基づいてシリアル信号をパラレル信号に変換するブリッジICを配設したこと
を特徴とする請求項1に記載の産業用情報処理装置。
【請求項3】
前記インターフェイス規格として、PCI EXPRESS、LAN、SATAのうちの一つもしくは複数を選択すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の産業用情報処理装置。
【請求項4】
前記ベースボードを配置したエリアと前記カスタムボードを配置したエリアとの間に、前記ベースボードより発生する漏洩電波を遮蔽する遮蔽手段を配置したこと
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の産業用情報処理装置。
【請求項5】
前記CPUのクロック周波数等の伝導雑音が、前記ベースボードから前記コネクタを通って前記カスタムボードへ伝播することを防止するフェライトを、前記コネクタに取り付けたこと
を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の産業用情報処理装置。
【請求項6】
平面的に配置した前記ベースボードとカスタムボードを収納する、高さが低い薄型で箱状の装置本体を備え、
前記装置本体の薄い側部に、外部機器と接続する外部コネクタを配置し、
前記装置本体の略上面全体に、放熱用フィンを配設したこと
を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の産業用情報処理装置。
【請求項7】
前記放熱用フィンに、前記遮蔽手段を接触させたこと
を特徴とする請求項6に記載の産業用情報処理装置。
【請求項8】
前記放熱用フィンに、熱伝導シート、またはノイズ対策用シールド材、または電磁波吸収熱伝導シートを介して前記遮蔽手段を接触させたこと
を特徴とする請求項6に記載の産業用情報処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−153669(P2010−153669A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331658(P2008−331658)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(592007601)株式会社コンテック (19)
【Fターム(参考)】