説明

産業車両用ドライブアクスルのマウント構造

【課題】整備作業性の向上に好適な産業車両用ドライブアクスルのマウント構造を提供する。
【解決手段】終減速装置4および差動装置5を内蔵するアクスルハウジング2と、湿式ブレーキ機構6および遊星ギヤ機構7の少なくとも一つを内蔵すると共に先端側外周に駆動車輪Wを支持するアクスルハブ24を回転自在に支持して備え、前記アクスルハウジング2の両端に夫々締結手段としての取付ボルト3Bを介して固定配置されるアクスルチューブ3と、から産業車両用ドライブアクスル1を構成し、前記アクスルハウジング2の両端部に第1の締結手段としての取付ボルト55により固定配置した若しくは前記アクスルハウジング2の両端部に一体形成した一対のブラケット50を、第2の締結手段としての取付ボルト56により車体フレーム12の前部に締結固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両用ドライブアクスルのマウント構造に関し、特に、ドライブアクスル内に分解整備を必要とする湿式ブレーキ等の機器を内蔵するに好適な産業車両用ドライブアクスルのマウント構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からドライブアクスル内に分解整備を必要とする湿式ブレーキ等を内蔵させた産業車両用ドライブアクスルが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、プロペラシャフトから入力される動力を減速するファイナルドライブと差動装置とを内蔵するアクスルハウジングと、アクスルハウジングの両端に結合して配置され、車体に支持されるアクスルチューブとを備える。左右のアクスルチューブの外端には、駆動車輪が結合されるアクスルハブを回転自在に支持して備える。そして、アクスルチューブとアクスルハウジングとの連結部分に収容空間を形成して、遊星ギヤ機構および湿式ブレーキ機構を内蔵するよう構成されている。
【特許文献1】特開2000-297830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では、ドライブアクスルの左右に配置されるアクスルチューブを車体へ固定する構造であるため、内蔵されている湿式ブレーキや遊星ギヤ機構を整備する必要がある場合には、アクスルドライブ装置の全体を車両から取外す必要があり、整備作業性が煩雑であるという不具合があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、整備作業性の向上に好適な産業車両用ドライブアクスルのマウント構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、終減速装置および差動装置を内蔵するアクスルハウジングと、湿式ブレーキ機構および遊星ギヤ機構の少なくとも一つを内蔵すると共に先端側外周に駆動車輪を支持するアクスルハブを回転自在に支持して備え、前記アクスルハウジングの両端に夫々締結手段を介して固定配置されるアクスルチューブと、から産業車両用ドライブアクスルを構成し、前記アクスルハウジングの両端部に第1の締結手段により固定配置した若しくは前記アクスルハウジングの両端部に一体形成した一対のブラケットを、第2の締結手段により車体フレームの前部に締結固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明では、アクスルハウジングの両端に夫々締結手段を介して固定配置されるアクスルチューブ内に湿式ブレーキ機構および遊星ギヤ機構の少なくとも一つを内蔵する産業車両用ドライブアクスルのアクスルハウジングの両端部に、第1の締結手段により固定配置した若しくは前記アクスルハウジングの両端部に一体形成した一対のブラケットを、車体フレームに締結することにより、アクスルハウジングとブラケットとを締結固定した。このため、ドライブアクスルをブラケットにより車体に取付けた状態において、ドライブアクスル全体を外すことなく、アクスルチューブをアクスルハウジングに対する締結手段を緩めることで、その内蔵物と共に単独で取外すことができ、アクスルチューブに内蔵されている湿式ブレーキ機構や遊星ギヤ機構等の整備性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の産業車両用ドライブアクスルのマウント構造の一実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。図1は産業車両用ドライブアクスルを搭載した産業車両における駆動機構の系統図、図2はマウント構造を含む産業車両用ドライブアクスルの断面図である。ここで、先ず、産業車両における駆動機構について説明する。
【0009】
図1において、本実施形態の産業車両における駆動機構は、ファイナルドライブ装置(終減速装置)4およびデファレンシャル装置(差動装置)5を内蔵する車両中央側のアクスルハウジング2と、その両側に配置されて、湿式ブレーキ機構6および遊星ギヤ機構7を内蔵すると共にその両端に夫々の駆動車輪Wを回転可能に支持する左右のアクスルチューブ3と、からなるドライブアクスル1を備える。前記ドライブアクスル1のファイナルドライブ装置4には、トルクコンバータ8、前後進切換機能および減速機能を備える変速機9およびプロペラシャフト10を介してエンジン11よりの駆動力が入力されるよう構成されている。なお、フォークリフトに代表される産業車両においては、車両の前方側にドライブアクスル1および駆動車輪Wが配置され、車両の後方側に変速機9やエンジン10が配置されている。
【0010】
本実施形態の産業車両用ドライブアクスル1は、図2に示すように、ファイナルドライブ装置4およびデファレンシャル装置5を内蔵するアクスルハウジング2をブラケット50により車体フレーム12(一部分のみ図示)に固定し、アクスルハウジング2の両側に設けたフランジ2Aにフランジ3Aを介してアクスルチューブ3を結合する構造としている。
【0011】
前記アクスルチューブ3は、アクスルハウジング2にフランジ3Aを介して結合される側において、遊星ギヤ機構7と湿式ブレーキ機構6とを内蔵する収容空間を形成するよう拡径した収容部20を備える。また、この収容部20のアクスルハウジング2とは反対側に連ねて小径化し、内部にドライブシャフト22を内蔵すると共に外周部に一対のテーパローラ軸受けによりなるハブ軸受け23によりアクスルハブ24を回転自在に支持するチューブ部21とを備える。
【0012】
前記ドライブシャフト22とアクスルハブ24とはボルトにより連結されている。アクスルチューブ3とアクスルハブ24との間にはシール25を配置して、ハブ軸受け23およびアクスルチューブ3内は外部と遮断されている。前記アクスルハブ24には、図示しない車輪のホイールリムが固定される。アクスルチューブ3、ハブ軸受け23、アクスルハブ24とは、全浮動式のアクスル構造を構成し、ドライブシャフト22には、駆動車輪Wを駆動するためのねじりトルクのみが作用する。また、車両荷重及び積載荷重は車体からアクスルハウジング2、アクスルチューブ3、ハブ軸受け23、アクスルハブ24を介して駆動車輪Wに伝達されるため、ドライブシャフト22には、これらの荷重による曲げ荷重が作用しない構造となっている。
【0013】
前記ドライブシャフト22のアクスルチューブ3内の端部には、遊星ギヤ機構7のキャリア26がスプライン結合され、キャリア26には遊星ギヤ27を夫々回転自在に支持する複数のピン27Aが固定されている。前記複数の遊星ギヤ27の外周には、各遊星ギヤ27に外周から噛合うリングギヤ28が配置され、このリングギヤ28はアクスルチューブ3の収容部20の内周壁面にスプライン嵌合により固定されている。また、前記複数の遊星ギヤ27の内周には、各遊星ギヤ27に内周から噛合うサンギヤ29が配置され、このサンギヤ29はスプライン嵌合により入力シャフト30に一体化されている。前記入力シャフト30は、アクスルチューブ3の収容部20のアクスルハウジング2への取付フランジ3Aが位置する部分(開放端部)の内壁面に嵌合した隔壁31に、軸受け31Aを介して回転自在に支持される。この入力シャフト30の端部には、アクスルハウジング2に内蔵されたデファレンシャル装置5の出力軸32が、スプライン結合により連結されている。また、前記キャリア26は、軸受け33によりアクスルチューブ3のチューブ部21と収容部20との間の肩部に回転自在に支持されている。このような遊星ギヤ機構7としたため、入力シャフト30からサンギヤ29に入力されたトルクは、キャリア26からトルクアップされて、ドライブシャフト22に出力される。ドライブシャフト22は、フランジ結合されたアクスルハブ24にトルクを伝達する。
【0014】
前記湿式ブレーキ機構6は、入力シャフト30に設けたスプラインに内周部がスプライン嵌合する複数枚のブレーキディスク34を備える。また、アクスルチューブ3における収容部20の内周壁に外周部がスプライン嵌合して、2枚の厚肉エンドプレート35(一方がアクスルチューブ3における収容部20空間の内壁面に固定された固定エンドプレート35Aと、他方が固定エンドプレート35Aに対して接近離反方向に移動可能であり且つ回転不能に配置された可動エンドプレート35B)を備える。また、2枚のエンドプレート35A,35B間には、複数枚のフリクションディスク36が軸方向移動可能であるが回転不能に配置される。前記エンドプレート35A,35B間の複数枚のフリクションディスク36は複数枚のブレーキディスク34と、軸方向に交互に積層配置される。アクスルチューブ3には、軸37を貫通させて回転可能に備え、アクスルチューブ3内に位置する軸37部分には入力シャフト30を跨いで二股状となったレリーズレバー38が一体に固定されている。前記レリーズレバー38の二股状の先端の移動軌跡上には、前記可動のエンドプレート35Bが存在するよう配列されている。また、アクスルチューブ3の外側に位置する軸37部分にもレバー39が一体に固定され、レバー39の先端には、アクスルチューブ3の外周に固定されたオペレーティングシリンダ40のピストンロッドが連結されている。前記オペレーティングシリンダ40には、運転席のブレーキペダル41の踏込みにより液圧を発生する(サービスブレーキ用の)マスタシリンダ42よりの液圧が供給されるよう構成している。
【0015】
従って、ブレーキペダル41が踏込まれると、マスタシリンダ42により発生してブレーキ液圧がオペレーティングシリンダ40に供給されてそのピストンロッドを伸長させてレバー39、軸37及びレリーズレバー38を回動させ、レリーズレバー38の二股状の先端によりエンドプレート35Bを押圧して、エンドプレート35A,35B間のフリクションプレート36により入力シャフト30に固定のブレーキディスク34を挟圧して湿式ブレーキ機構6がブレーキ作動し、入力シャフト30を制動する。また、前記アクスルチューブ3を貫通する軸37の前記レバー39の端部に、運転席のパーキングブレーキレバー43の操作によりプル作動するパーキングブレーキケーブル44を接続して、パーキングブレーキレバー43の操作により、前記湿式ブレーキ機構6を作動させるようにすることができる。このようにすると、共通の湿式ブレーキ機構6をサービス・パーキングブレーキにより作動させることができ、構造を簡素化できる。
【0016】
以上に説明した産業車両用ドライブアクスル1は、図3〜図7に示す第1実施例のマウント構造により車体フレーム12に固定される。即ち、第1実施例においては、車両中央側に配置されているアクスルハウジング2の両端に夫々ブラケット50を取付け、各ブラケット50を車体フレーム12(両側面から前方に延した一対のサイドメンバ)の前端に取付けることで、車体フレーム12(サイドメンバ)に固定される。図3は産業車両用ドライブアクスル1のマウント構造を含む平面図、図4はマウント構造を含む正面図、図5はマウント構造を含む側面図、図6はマウント構造を含む斜視図、図7はマウント構造を含む車両後方よりの斜視図である。
【0017】
前記ブラケット50は、前記アクスルハウジング2の端部を取囲むリング体51と、前記リング体51に一体に設けられたマスト支持部52と、前記リング体51に連なりアクスルハウジング2の上面に沿うプレート体53と、前記リング体51のマスト支持部52の位置とは対向する部位に連なるフランジ体54と、から構成されている。
【0018】
前記ブラケット50のプレート体53は、図4に示すように、アクスルハウジング2の上面に沿う平面状に形成され、アクスルハウジング2の上面から突出させたボス2Bの端面が、その下面に下方から接触され、プレート体53に設けた取付穴を貫通させて複数の取付ボルト55をアクスルハウジング2のボス2Bにねじ込むことにより、アクスルハウジング2に固定される。アクスルハウジング2に固定されたブラケット50は、図5〜図7に示すように、リング体51がアクスルハウジング2の端部領域を取囲んで配置され、リング体51から車両後方に延ばしてフランジ体54を備えると共に、車両前方下部にマスト支持部52を備える構成となる。
【0019】
前記アクスルハウジング2に固定されたブラケット50は、図3,5,7に示すように、フランジ体54の車両左右方向外側に取付面を備えると共に、リング体51に沿って配列された複数の取付穴を備える。そして、その取付面を、前記車体フレーム(サイドメンバ)12の前端の車両内側面に接触させ、車体フレーム(サイドメンバ)12の取付穴とフランジ体54の取付穴とを貫通させて複数のボルトナット56を締結することにより、車体フレーム12にブラケット50を介してアクスルハウジング2を固定する。
【0020】
前記ブラケット50におけるリング体51のマスト支持部52には、図3〜図5に示すように、フォークリフトとしての作業機である、昇降動作させるリフトシリンダ57Aを含むマスト57の下部フレーム57Bが支持ピン57Cにより、前後方向に揺動可能に取付けられている。なお、図示しないが、リフトシリンダ57Aを含むマスト57は、車体とマスト57との間に介装されたティルトシリンダの動作に基づき、所定の角度範囲に亘ってティルト(前傾/後傾)自在に構成されている。
【0021】
車体フレームへの取付状態のドライブアクスル1およびブラケット50は、図5に示すように、リング体51の内周が、アクスルチューブ3の取付フランジ3Aの外周に対して、環状の隙間をもって対面している。なお、図中のアクスルチューブ3の取付フランジ3Aの上部および下部に円弧状に配列されているボルトは、アクスルチューブ3をアクスルハウジング2に固定するための取付ボルト3Bである。このため、ドライブアクスル1をブラケット50により車体に取付けた状態において、ドライブアクスル1全体を外すことなく、前記取付ボルト3Bを緩めることで、アクスルチューブ3をその内蔵物と共に単独で取外すことができる。この取外しにあたって、ブラケット50のリング体51は、アクスルチューブ3の取付フランジ3Aに対して環状隙間を持って外周に存在するため、工具と干渉することがなく、取外し作業の障害とならない。このため、アクスルチューブ3に内蔵されている湿式ブレーキ機構6や遊星ギヤ機構7等の整備性がよい。
【0022】
また、車両の走行駆動時にドライブアクスル1に発生するトルク反力は、ドライブアクスル1をその軸心回りに回転させるよう作用するが、アクスルハウジング2とブラケット50のプレート体53との固定部分は、ドライブアクスル1の軸心からの距離を大きく取れるので、両者を固定している取付ボルト55の緩みに対する安全率を高めることができる。また、アクスルハウジング2とブラケット50のプレート体53との固定部分は、ドライブアクスル1に加わる車両重量成分が、両者を互いに接触させる方向に作用するため、トルク反力を保持するのに有効に作用することになり、この点でも、前記取付ボルト55の緩み安全率を高めることができる。
【0023】
しかも、荷役用のマスト57は、マスト支持部52によりブラケット50を介して、直接車体フレーム12に支持される構造となっている。マスト57には、上下方向の積載荷重に加え、荷物をマスト57や図示しないフォークにより押したりもするので、前後方向の荷重も作用する。そのため、例えば、マスト57をドライブアクスル1のアクスルチューブ3で支持する一般に使用されている態様では、その前後方向の荷重(衝突も加味)に耐えるような強度に設計をする必要があった。
【0024】
しかしながら、本実施例の構造にあっては、ブラケット50を介して車体フレーム12にマスト57を結合するため、前記した前後方向荷重は、アクスルチューブ3やアクスルハウジング2には作用せず、これらは車体フレーム12で受け止められる。このため、アクスルチューブ3およびアクスルハウジング2を、前記した衝突負荷までを加味した強度に設計する必要がなくなり、合理的な強度で設計することができる。
【0025】
また。マスト支持部52はブラケット50のリング体51で、上方と後方との両方から支持されているため、前記した上下方向荷重や前後方向荷重が作用しても、リング体51が変形することがなく、マスト57を確実に保持することができる。
【0026】
図8は本実施形態の第2実施例における産業車両用ドライブアクスルのマウント構造である。第2実施例のマウント構造は、第1実施例に対してブラケット50の構成を変更している。即ち、ブラケット50は、アクスルハウジング2に対して上方から跨る形状に形成されている。そして、アクスルハウジング2の前後方向に設けた一対の突起60と、上方に突出させたボス61に対して、夫々の取付穴を貫通させて、アクスルハウジング2の一対の突起60とボス61に対して取付ボルト62をねじ込むことにより、アクスルハウジング2とブラケット50とが一体化されている。ブラケット50の後方には、第1実施例と同様にフランジ体54を一体に備えると共に、ブラケット50の前方にはマスト支持部52を一体に備える構造となっている。アクスルチューブ3のアクスルハウジング2に対する取付フランジ3Aは、放射状に取付穴を配置した構成としている。その他の構成は、第1実施例と同様に構成されている。
【0027】
本実施例においては、第1実施例と同様な効果を備えると共に、アクスルハウジング2の前後位置と上方位置において、上下方向での締結になっているので、車両重量がブラケット50とアクスルハウジング2とを互いに接触させる方向に作用するため、ドライブアクスル1に作用するトルク反力をブラケット50に有効に伝達して車体フレーム12に受持たせるのに有効な形状となっている。また、ブラケット50とアクスルハウジング2と固定部分がドライブアクスル1の中心軸に対して遠く離れる構成とでき、ドライブアクスル1に作用するトルク反力を保持するにあたり、取付ボルト62の緩みに対する安全率を向上させることができる。
【0028】
図9は本実施形態の第3実施例における産業車両用ドライブアクスルのマウント構造である。第3実施例のマウント構造においては、アクスルハウジング2の両端部にブラケット50を一体化させて形成している。即ち、アクスルハウジング2を鋳造により形成する場合において、鋳型にブラケット50のためのキャビテイも同時に形成することで、両者を一体化可能である。また、アクスルハウジング2とブラケット50とを夫々別体で形成する場合において、両者を溶接等により一体化するものであってもよい。前記溶接等により一体化させる場合において、ブラケット50のアクスルハウジング2の両端部への結合部分をリング体に形成することにより、全周溶接可能となり、より一層結合強度を高めることができる。なお、図示したブラケット50はアクスルハウジング2の軸方向寸法と車体フレーム12の取付幅寸法との差異に応じて車両幅方向に湾曲させて形成されている。また、マスト支持部が形成されていないブラケット50が図示されているが、第1,2実施例と同様に、マスト支持部を形成するものであってもよい。
【0029】
この実施例のマウント構造においては、アクスルハウジング2とブラケット50とが一体化されているため、第1実施例や第2実施例のように両者が取付ボルト等の締結手段により固定するものに比較して、アクスルハウジング2の取付強度および取付精度をより一層高めることができる。
【0030】
なお、上記実施形態において、ドライブアクスル1のアクスルチューブ3内に内蔵するものとして、湿式ブレーキ機構6と遊星ギヤ機構7とを内蔵するものについて説明したが、図示はしないが、湿式ブレーキ機構6、若しくは、遊星ギヤ機構7を単独に内蔵するものであってもよく、また、その他の分解整備を必要とする機器を内蔵するものであってもよい。
【0031】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0032】
(ア)終減速装置4および差動装置5を内蔵するアクスルハウジング2と、湿式ブレーキ機構6および遊星ギヤ機構7の少なくとも一つを内蔵すると共に先端側外周に駆動車輪Wを支持するアクスルハブ24を回転自在に支持して備え、前記アクスルハウジング2の両端に夫々締結手段としての取付ボルト3Bを介して固定配置されるアクスルチューブ3と、から産業車両用ドライブアクスル1を構成し、前記アクスルハウジング2の両端部に第1の締結手段としての取付ボルト55により固定配置した若しくは前記アクスルハウジング2の両端部に一体形成した一対のブラケット50を、第2の締結手段としての取付ボルト56により車体フレーム12の前部に締結固定したことを特徴とする。このため、ドライブアクスル1をブラケット50により車体に取付けた状態において、ドライブアクスル1全体を外すことなく、アクスルチューブ3をアクスルハウジング2に対する締結手段を緩めることで、その内蔵物と共に単独で取外すことができ、アクスルチューブ3に内蔵されている湿式ブレーキ機構6や遊星ギヤ機構7等の整備性がよい。
【0033】
(イ)また、第1の締結手段として、前記一対のブラケット50を前記アクスルハウジング2の両端部に上面から夫々当接させ、前記当接部を上下方向に貫通する締結要素としての取付ボルト55によりアクスルハウジング2とブラケット50とを締結固定したため、アクスルハウジング2とブラケット50との固定部分は、ドライブアクスル1の軸心からの距離を大きく取れ、両者を固定している締結手段の緩みに対する安全率を高めることができる。しかも、アクスルハウジング2とブラケット50との固定部分は、ドライブアクスル1に加わる車両重量成分が、両者を互いに接触させる方向に作用するため、トルク反力を保持するのに有効に作用することになり、この点でも、前記取付ボルトの緩み安全率を高めることができる。
【0034】
(ウ)一般に荷役用のマスト57は、マスト支持部52によりブラケット50を介して、直接車体フレーム12に支持される構造となっている。マスト57には、上下方向の積載荷重に加え、荷物をマスト57やフォークにより押したりもするので、前後方向の荷重も作用する。そのため、例えば、マスト57をドライブアクスル1のアクスルチューブ3で支持する一般に使用されている態様では、その前後方向の荷重(衝突も加味)に耐えるような強度に設計をする必要があった。しかしながら、アクスルハウジング2と別体もしくは一体で形成された一対のブラケット50は、車両前方に配置される荷役装置のマスト57を支持するマスト支持部52を一体に備えるため、前記した前後方向荷重は、アクスルチューブ3やアクスルハウジング2には作用せず、これらは車体フレーム12で受け止められる。このため、アクスルチューブ3およびアクスルハウジング2を、前記した衝突負荷までを加味した強度に設計する必要がなくなり、合理的な強度で設計することができる。
【0035】
(エ)アクスルハウジング2と別体もしくは一体で形成された一対のブラケット50は、前記ドライブアクスル1のアクスルハウジング2の端部を取囲んで環状となったリング体51を備え、前記リング体51の車両前方側にマスト支持部52を一体に備えるため、マスト支持部52はブラケット50のリング体51で、上方と後方との両方から支持されているため、前記した上下方向荷重や前後方向荷重が作用しても、リング体51が変形することがなく、マスト57を確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態を示す産業車両用ドライブアクスルを搭載した産業車両における駆動機構の系統図。
【図2】マウント構造を含む産業車両用ドライブアクスルの断面図。
【図3】産業車両用ドライブアクスルのマウント構造を含む平面図。
【図4】マウント構造を含む正面図。
【図5】マウント構造を含む側面図。
【図6】マウント構造を含む斜視図。
【図7】マウント構造を含む車両後方よりの斜視図。
【図8】第2実施例における産業車両用ドライブアクスルのマウント構造の側面図。
【図9】第3実施例における産業車両用ドライブアクスルのマウント構造の斜視図。
【符号の説明】
【0037】
1 ドライブアクスル
2 アクスルハウジング
3 アクスルチューブ
4 終減速機としてのファイナルドライブ装置
5 差動装置としてのデファレンシャル装置
6 湿式ブレーキ機構、湿式ブレーキ
7 遊星ギヤ機構
8 トルクコンバータ
9 変速機
10 プロペラシャフト
11 エンジン
12 車体フレーム
20 収容部
21 チューブ部
50 ブラケット
51 リング体
52 マスト支持部
53 プレート体
54 フランジ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
終減速装置および差動装置を内蔵するアクスルハウジングと、湿式ブレーキ機構および遊星ギヤ機構の少なくとも一つを内蔵すると共に先端側外周に駆動車輪を支持するアクスルハブを回転自在に支持して備え、前記アクスルハウジングの両端に夫々締結手段を介して固定配置されるアクスルチューブと、から産業車両用ドライブアクスルを構成し、
前記アクスルハウジングの両端部に第1の締結手段により固定配置した若しくは前記アクスルハウジングの両端部に一体形成した一対のブラケットを、第2の締結手段により車体フレームの前部に締結固定したことを特徴とする産業車両用ドライブアクスルのマウント構造。
【請求項2】
前記第1の締結手段は、前記一対のブラケットを前記アクスルハウジングの両端部に上面から夫々当接させ、前記当接部を上下方向に貫通する締結要素によりアクスルハウジングとブラケットとを締結固定したことを特徴とする請求項1に記載の産業車両用ドライブアクスルのマウント構造。
【請求項3】
前記アクスルハウジングと別体もしくは一体で形成された一対のブラケットは、車両前方に配置される荷役装置のマストを支持するマスト支持部を一体に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の産業車両用ドライブアクスルのマウント構造。
【請求項4】
前記アクスルハウジングと別体もしくは一体で形成された一対のブラケットは、前記ドライブアクスルのアクスルハウジングの端部を取囲んで環状となったリング体を備え、前記リング体の車両前方側にマスト支持部を一体に備えることを特徴とする請求項3に記載の産業車両用ドライブアクスルのマウント構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−220690(P2009−220690A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66534(P2008−66534)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】