説明

画像入力装置

【課題】 被検査体について装置を大型化することなく精度の良い欠陥検査を行うことができるようにする。
【解決手段】 撮像光学系により被検査体の二次元画像を取り込んで結像した被検査体像を装置筐体内に支持されている撮像素子5により電気信号に変換し、この電気信号から被検査体の画像データを得る画像入力装置であって、画像データから被検査体像に対する撮像素子5の回転ずれを検出する回転角検出手段と、回転角検出手段により検出された回転ずれに基づいて撮像素子5を光軸周りに回転させる回転手段11,12を備える構成とする。例えば、一実施の形態として、回転角検出手段により検出された回転ずれの情報を表示する表示部と、上記回転手段として、撮像素子5を回転可能に支持する回転部材11と、この回転部材11と一体に取り付けられ回転部材11を回転させる回転操作部12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイなどの検査対象基板を撮像して画像データを取得し、その画像データを欠陥検査等の画像処理に利用する画像入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ(撮像素子)により、被検査体投影像の二次元画像を電気信号に変換して画像データを得、この画像データを予め設定された欠陥のない画像と比較し、LCD(Liquid Crystal Display)パネル等の縦横配列の繰り返しパターンや縦横形状の欠陥などを検査する際に、より精度の高い検査を実施するための方法が提案されている。
【0003】
例えば、欠陥検査を行う場合、撮像素子とイメージサークルの回転方向の位置がずれていると精度の良い検査が行えないので、まず検査精度を上げるため回転補正をかける必要がある。この回転補正をかけるための回転補正機構として、例えば、光軸回りに回転可能な構成の撮像素子を備える顕微鏡用電子カメラが提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
図18は、従来の回転補正機構を備える検査装置の概略構成例(1)を示すものであり、側面から見た状態を表している。この図18に示す検査装置100は、外筐内の床面に水平に設置され被検査体110が載置される回転テーブル(一般にθテーブルとも呼ばれる。)102を有し、天井面にはその光軸が回転テーブル102の回転ステージと垂直となるように画像入力装置101が設置されている。画像入力装置101で撮像される画像と、画像入力装置101内のイメージセンサが正立するよう回転テーブル102を適宜回転させることで回転補正を行い、回転補正された被検査体110を撮像し精度の高い検査を行うことができる。
【0005】
さらに他の回転補正機構を備える検査装置の概略構成例(2)を図19に示す。図19に示す検査装置200は、回転テーブル202を天井面に固定し、その回転テーブル202上に画像入力装置201を載置して画像入力装置201を回転可能としたものである。この例においても図18の例と同様、画像入力装置201で撮像される画像と、画像入力装置201内のイメージセンサが正立するよう回転テーブル202を適宜回転させて回転補正を行い、被検査体210について精度の高い検査を行うことができる。
【0006】
図20は、一般的な回転テーブルの例を示すものである。図中、251は被検査体が載置されて回転する回転ステージである。また、252は回転ステージを回転させるための例えばステップ駆動方式等のモータである。
【0007】
また、被検査体についてより精度の高い検査を行うため、イメージセンサの画素数を超える大きな画像をそのイメージセンサにより撮像し、高精細かつ高画角の画像を得る種々の検査装置が提案されている。
【0008】
例として、CCD等のイメージセンサマスクを一つのウェハに張り合わせたものや、画像入力装置本体を機械的に移動させイメージセンサにより取り込んだ画像を合成するものがある。また、被検査体を機械的に移動させ分割撮影した後で合成する方法もあり、一般にこの方式が主流であるとされている。
【0009】
ここで、上述した画像入力装置本体を機械的に移動させる方式の検査装置の概略構成例(3)を、図21に示す。図21において、300は検査装置、301はCCD等のイメージセンサを搭載したカメラ、302はX,Y方向へ移動するXYアクチュエータ、303はZ方向へ移動するZステージ、304は操作員が入力操作を行うためのスイッチ等の入力操作手段を備えた操作箱、310はこの例では12個(3×4)の繰り返しパターンを持つ被検査体である。
【0010】
検査装置300において、側面に設けられたスロットから被検査体310を挿入して所定位置に固定し、操作箱304の入力操作手段を操作してカメラ301をX,Y,Z方向に移動させ、カメラ301のイメージサークル内に一つのパターンが入るように位置合わせを行い撮像する。一つパターンを撮像したらカメラ301を移動させ次のパターン位置の映像を撮像し、この作業を全12パターン分撮像するまで繰り返す。そして、全12パターンの画像が撮像できたら、これらを合成することでイメージセンサの画素数以上の大きな画像を生成することができる。
【特許文献1】特開平11−295612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、被検査体が大型化、高精細化するにつれ、その全体像を撮像することが困難になり、回転補正機構は図18〜図20に示したような大規模かつ高価なものとなってくる。また回転補正機構が大規模化すると可動部が大きくなるために回転補正にかかる時間が長くなる。さらに、画像入力装置が高解像度であると、画像処理ソフトウェアを利用して回転補正をかけたときのデータ量が大量となるので、処理に時間がかかるという問題がある。
【0012】
また、イメージセンサマスクを一つのウェハに張り合わせる方式は、ウェハ上で張り合わせて配置した結果、イメージセンサの継ぎ目を撮像できず、ディスプレイに表示したときに黒線となってしまい、画像処理や欠陥検査等に不向きであるという問題がある。また、イメージセンサの画素数の4倍の画素が従来の高解像度画像の技術的な限界であった。
【0013】
また、図21の例の画像入力装置本体を機械的に移動させ取り込んだ画像を合成する方式は、画像入力装置300の移動機構自体が大きくなってしまうという問題がある。そのため、画像入力装置本体を高速及び高精度動作をさせるためには、さらに投資が必要になるとともに、重量による速度の限界がある。
【0014】
さらに、被検査体を機械的に移動させて分割撮影し画像を合成する方式は、上述同様、価格及び動作速度に問題があるとともに、被検査体が大型化すると装置自体も大型になり、新たにコスト及びスペースの問題が生じる。
【0015】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、被検査体について装置を大型化することなく精度の良い欠陥検査を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、撮像光学系により被検査体の二次元画像を取り込んで結像した被検査体像を装置筐体内に支持されている撮像素子により電気信号に変換し、この電気信号から被検査体の画像データを得る画像入力装置であって、画像データから被検査体像に対する撮像素子の回転ずれを検出する回転角検出手段と、回転角検出手段により検出された回転ずれに基づいて撮像素子を光軸周りに回転させる回転手段を備える構成とした。
【0017】
また、上述の発明において、上記回転角検出手段により検出された回転ずれの情報を表示する表示部と、上記回転手段として、上記撮像素子を回転可能に支持する回転部材と、この回転部材と一体に取り付けられ回転部材を回転させる回転操作部を備える構成とした。
【0018】
また、上述の発明において、回転角検出手段により検出された回転ずれの情報に基づき、上記回転手段に回転補正指令を出力する制御手段を有し、回転手段は、制御手段からの回転補正指令に基づき上記撮像素子を自動的に回転させる構成とした。
【0019】
斯かる本発明によると、装置筐体内に支持された撮像素子を回転させることによって、被検査体及び装置本体を回転させることなく、被検査体像に対する撮像素子の回転ずれを容易に補正することができる。
【0020】
また、上述の発明において、回転角検出手段により検出された回転ずれの情報を表示する表示部と、回転手段として撮像素子を回転可能に支持する回転部材と、この回転部材と一体に取り付けられ回転部材を回転させる回転操作部を設けた場合、表示部に表示された情報を確認して回転操作部を摘み簡単に撮像素子を回転させることができる。
【0021】
また、上述の発明において、回転角検出手段により検出された回転ずれの情報に基づき回転手段に回転補正指令を出力する制御手段を設け、回転手段が制御手段からの回転補正指令に基づき撮像素子を自動的に回転させるようにした場合、撮像素子の回転動作を自動的に行うことができ、手動よりもさらに正確に回転補正ができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、装置筐体内に支持された撮像素子を回転させることによって、被検査体及び装置本体を回転させることなく、被検査体像に対する撮像素子の回転ずれを容易に補正することができるため、その後の画像処理を精度よく行えるという効果がある。例えば、撮像した画像データを基に回転ずれを検出しているので、回転補正精度を、画像の1画素レベルまで向上させることができる。したがって、被検査体について回転補正された精度の高い画像を取得することができるので、この画像を利用して欠陥検査を行うことで精度よく欠陥検出処理が行えるという効果がある。
【0023】
また、回転角検出手段により検出された回転ずれの情報を表示する表示部と、回転手段として撮像素子を回転可能に支持する回転部材と、この回転部材と一体に取り付けられ回転部材を回転させる回転操作部を設けた場合、表示部に表示された情報を確認して回転操作部を摘み簡単に撮像素子を回転させることができ、回転補正後の精度の高い画像処理を実現できるという効果がある。
【0024】
また、回転角検出手段により検出された回転ずれの情報に基づき回転手段に回転補正指令を出力する制御手段を設け、回転手段が制御手段からの回転補正指令に基づき撮像素子を自動的に回転させるようにした場合、撮像素子の回転動作が自動的に行われるので、正確に回転補正を行うことができ、回転補正後の精度の高い画像処理を実現できるという効果がある。
【0025】
さらに、例えば従来の被検査体を回転させる回転テーブルが必要なくなり、小型化、コストダウンが図れるとともに、画像データ取得後にソフトウェアによる回転ずれを補正するための回転補正画像処理が必要なくなり、一般に言われるようなソフトウェア処理による解像度の劣化がないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1〜図8を参照して、本発明の一実施の形態の例について説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態の例による検査装置内に搭載された画像入力装置の概略構成例を示す図である。図1は、撮像光学系によりイメージセンサの撮像面より大きな面積の被検査体像を結像し、その結像面上のイメージサークル内で相対的にイメージセンサの撮像面を移動させるようにしたものである。
【0028】
図1において、2はイメージサークルを結像するレンズ(撮像光学系)、3はレンズマウント、5はCCDやCMOS等を使用したイメージセンサ、6はイメージセンサ5が配置されるとともにイメージセンサ周辺回路等を備えるセンサ基板、7はセンサ基板6を光軸に垂直な面内の水平方向(X方向)に移動させるX方向駆動用のモータ、8はセンサ基板6を光軸に垂直な面内の垂直方向(Y方向)に移動させるY方向駆動用のモータ、9はイメージセンサ6により撮像される撮像イメージ部分(以下、「イメージ領域」という。)、10は被検査体を示している。ここで、二次元画像の大きさは、イメージサークル>イメージ領域≧イメージサイズ(イメージセンサ一個の撮像領域)である。
【0029】
移動手段として機能するX方向及びY方向駆動用モータ7,8により、イメージセンサ6を焦点面上に平行な面内で移動させることで、イメージセンサ5のイメージサイズよりも大きな画像を取り込むことができる。図1では、Z方向すなわちピント調節のためイメージセンサ5を光軸と平行方向へ移動させるZ方向移動機構については記載を省略している。なお、レンズマウント3が可動することによりレンズ2がZ方向へ移動し画角調節可能な構成としてもよい。
【0030】
次に、画像入力装置に搭載され、回転方向への移動(回転角θ調節)を行い回転手段として機能するイメージセンサ回転補正機構について説明する。
【0031】
図2は、イメージセンサ手動回転補正機構の例を示す。この例では、手動回転補正機構を、イメージセンサ5及びセンサ基板6を載置・固定する回転部材11、回転部材11の周縁部に突設された回転操作部12より構成する。後述する回転角検出/補正部にて取り込んだ画像に対するイメージセンサ5の回転角(撮像面の回転ずれ量)を算出し、算出した回転角に応じて回転操作部12を摘み左右に回転させることで撮像面、すなわちイメージセンサ5が載置されたセンサ基板6を手動で回転させることができる。
【0032】
図3は、イメージセンサ自動回転補正機構の例を示す。この例では、モータ等の動力を使用して自動回転補正機構を構成する。図3において、13はイメージセンサ5及びセンサ基板6を載置・固定して左右に回転する歯車、14は例えばパルスモータのような移動ピッチが小さく位置決め精度の高いモータ15の回転軸が直結されている歯車であり、歯車13が歯車14と係合し回転する。回転角検出/補正部にて取り込んだ画像よりイメージセンサ5の回転角を算出し、算出された回転角に応じてなされる回転角検出/補正部からの指示によりモータ15を回転させ、歯車14から歯車13に動力を伝えて撮像面、すなわちイメージセンサ5が載置されたセンサ基板6を自動で左右に回転させることができる。
【0033】
これらの回転補正機構によると、被検査体10の二次元画像を取り込み、その二次元画像に対するイメージセンサ5の回転角を算出し、画像入力装置1内イメージセンサ部に設けられた手動制御又は自動制御の回転補正機構を使用してイメージセンサ5を回転させることで、被検査体10又は画像入力装置1本体を回転させることなく、被検査体10に対しての回転画像を容易に作成できる。また、負荷の重い画像処理ソフトウェアを用いずに、容易に回転補正された画像処理が行え、回転補正された精度の高い画像を創出することができる。
【0034】
したがって、被検査体10の二次元画像と、イメージセンサ5の撮像面とが正立した位置でない場合に、手動又は自動で回転補正を行い、後述する広域高解像の画像処理や欠陥検出処理等における精度を向上させることができる。
【0035】
図4は、本発明の一実施の形態による画像入力装置を用いた検査装置のシステムブロックを示す。図4において、4は一般にレンズマウント3に取り付けられたレンズ2とイメージセンサ5との間に設けられるカラーフィルターや補色フィルタ等のフィルタを表す。イメージセンサ5及びセンサ基板6は、移動手段として機能するXYθテーブル23上に設置されており、XYθテーブル制御部22により制御されXYθ方向へ移動することができる。XYθテーブル23のθ方向への移動は、上述した回転部材11(図2参照)及び歯車13(図3参照)の回転動作により行われる。また、図1と同様に、Z方向の移動機構の記載は省略している。
【0036】
図4において、レンズ2を光軸方向に移動させて画像入力装置内に取り込む二次元画像の画角を調節した後、イメージセンサ5でその二次元画像の全部又は一部を電気信号に変換する。二次元画像を電気信号に変換した画像データは、例えば信号処理部17,欠陥/シェーディング補正部18,回転角検出/補正部19,電源部20等から構成される電気ブロック16に入力される。
【0037】
信号処理部17は、アナログ/デジタル変換回路、CDS(Correlated double sampling;相関二重サンプリング回路)、DSP(Digital Signal Processor)等を使った信号処理回路などから構成されており、イメージセンサ5で取り込まれた被検査体像を電気信号に変換し画像データとして出力する処理を行う画像信号処理手段として機能する。
【0038】
欠陥/シェーディング補正部18では、上記CDSのサンプリングを利用して画素の中で欠陥のある画素信号、及び画像データの濃度ムラの補正処理を行う。
【0039】
回転角検出/補正部19は、取り込んだ画像データとイメージセンサ撮像面との回転角を検出し、検出した回転角から補正すべき回転方向及び回転角を算出する。
【0040】
電源部20は、バッテリ(図示略)から画像入力装置に供給される電源電圧等を監視する。
【0041】
電気ブロック16の上記各部で行われた演算結果は、主制御部21、あるいは欠陥画像処理部24及び画像合成/圧縮部25に出力される。
【0042】
主制御部21は、この画像入力装置全体の演算・制御を司る制御手段として機能し、回転角検出/補正部19における回転角検出結果に基づいてXYθテーブル制御部22に対し自動的に回転補正等の位置補正指令、あるいはXYθテーブルがX,Y方向へ所定ピッチで移動するための制御信号を出力する等の制御を行う。また、後に詳述する画像比較処理、欠陥検出処理を行う。
【0043】
XYθテーブル制御部22は、センサ基板6を載置し移動手段として機能するXYθテーブル23の移動方向及び移動量を制御するための電圧信号等を出力し、レンズ2を通して取り込まれる被検査体の二次元画像とイメージセンサ5の位置関係を調整する。
【0044】
欠陥画像処理部24は、欠陥のある画像の欠陥補正処理を行い、処理後の画像データをメモリ26に記録する。
【0045】
画像合成/圧縮部25は、1個又は後述する複数のイメージセンサの各位置で撮像された画像データを合成して単体イメージセンサの画素数以上の大きな画像データを生成するとともに、合成前又は合成後の画像データを圧縮してメモリ26に記録する画像データの合成及び圧縮手段として機能する。
【0046】
メモリ26に記録された各画像データは、主制御部21の制御に基づいて、外部インターフェイス27を通じてPC(パーソナルコンピュータ)28に接続されたディスプレイ29(表示部)に出力される。もしくは、外部インターフェイスとディスプレイを接続して直接ディスプレイに出力できるようにしてもよい。
【0047】
例えば、操作員はディスプレイ29に映し出された映像からイメージセンサ5の位置補正が必要であることを認識し、PC28から主制御部21を通じてXYθテーブル23の移動方向及び移動量を調節する。特に、回転補正が必要な場合は手動回転補正機構(図2参照)を利用して、あるいは自動回転補正機構(図3参照)により回転補正を行う。さらに、図21に示されるような検査装置に設けられた操作箱からXYθテーブル23を操作するようにしてもよい。
【0048】
次に、上述のようなシステム構成による信号処理例を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。まず、被検査体の二次元画像を画像入力装置1のイメージセンサ5に取り込み、イメージセンサからの出力信号を信号処理部17でアナログ/デジタル変換して画像データ(以下、「生画像データ」という。)を取得し(ステップS1)、その生画像データはメモリ26に保存される(ステップS2)。本例では、この生画像データをメモリ26に格納した状態のデータファイルを「生データ」という。
【0049】
次に、回転角検出/補正部19にて、生画像データとイメージセンサ撮像面との回転角の検出及び補正を行う(ステップS4)。その回転補正後の画像データはメモリ26に保存される(ステップS4)。本例では、上記生画像データに回転補正を加えた画像処理用のデータファイルを「生画像」という。
【0050】
そして、イメージセンサ5により各位置で撮像された画像データを抽出しディスプレイ9に表示する、あるいは各位置での画像データを合成したイメージ領域9(図1参照)の全体画像を表示する(ステップS5)。後述するイメージセンサが複数個存在する場合では、イメージセンサ毎の各画像を抽出する。
【0051】
抽出された生画像に対し、2値化処理等のプリ画像処理を行う(ステップS6)。そして、それらの画像比較を行う(ステップS7)。ここでの画像比較は、イメージセンサ5で撮像された画像データとメモリ26に予め記録しておいた欠陥のない基準画像データとを比較する場合と、イメージセンサ5を移動させ各位置で撮像した画像データ同士を比較する場合の2つがある。
【0052】
そして、画像比較結果に基づき、後に詳述する重ね画像位置補正処理(図7,図8参照)(ステップS8)を行う。また欠陥検出処理(ステップS9)及び検出された欠陥位置の表示(図15〜図17参照)(ステップS10)を行う。ここでの欠陥検出処理は、上記基準画像データとの比較において予め設定された欠陥条件(パターン大きさ、形状等)に従い欠陥を判定する方式と、イメージセンサ5で撮像された各位置における画像データ間の相違点から欠陥検出を行う方式がある。このとき、これらの各処理に応じた画像を随時ディスプレイ29に表示する(ステップS11)。
【0053】
ここで、ステップS8の隣接画像の重ね合わせ処理について、図6〜図8を参照して説明する。図6は、図1の画像入力装置1にて撮像される画像データのイメージを示す図である。この例では、イメージセンサ5をイメージサークル内でX方向及びY方向に移動させて、縦13フレーム、横10フレーム分のイメージ領域を撮像し出力する。このように撮像されるイメージ領域9の画素数は、X方向駆動用モータ7及びY方向駆動用モータ8により動かした回数倍の画素数に増やすことができ、各回に取り込んだ画像を随時画像処理することにより、高速に高画素画像を画像処理することができる。この例では、イメージセンサ5が1回で撮像する単位画像の画素数が、例えば縦1,266画素、横949画素であるとすると、この全体画像(撮像イメージ)は縦12,337画素、横12,660画素の高解像度の画像とすることができる。
【0054】
このように、画像入力装置1内のイメージサークルを大きく形成し、そのイメージサークルで形成された結像面内でイメージセンサ5をX方向及びY方向に移動させ二次元画像を取り込むことにより、イメージセンサ5の画素数以上の高画素の画像を取り込むことができる。したがって、安価で数億個画素クラスのイメージセンサを間単に製作することができる。
【0055】
図7は、隣接画像の重ね合わせイメージを示す図である。この例では、図6で示される全体画像に対して、例えば、左下の撮像位置での単位画像31とその右隣の撮像位置での単位画像33の重ね合わせ例としている。図の斜線部は、それぞれ単位画像31の重ね合わせが行われる画素列32、単位画像33の重ね合わせが行われる画素列34を示す。
【0056】
イメージセンサ5のX方向移動手段であるX方向駆動用モータ7の送りピッチを、ある位置で撮像した単位画像とその隣の単位画像の画素が一部重なるように調整して撮像する。そして、最小単位すなわち画素列単位の画像を比較し、同じ画像を示す画素列であれば、それらの画素列が重なるように画像処理を行い合成する。例えば、繰り返しパターンを有する二次元画像を取り込む場合、X方向及びY方向駆動用モータ7,8により、特徴的な1パターンが重なるようにイメージセンサ5を移動させ、さらに主制御部21がそのパターン上の特徴的な最小単位の画像を比較して、例えば上記画素列32,34のように同じ画像部分を重ねるようにして画像処理を行う。
【0057】
上記単位画像31の画素列32と単位画像33の画素列34を重ね合わせた画像イメージを、図8に示す。図8において、斜線部は上記単位画像31の画素列32と単位画像33の画素列34が重なった部分の画素列35を表す。なお、この例では、重ねる画素列を一例としたがこの例に限られるものではなく、2列以上の画素列を重ねてもよい。
【0058】
上述したように、各モータの送り精度が粗くても画像処理によって位置補正を精度よく簡単に行うことができる構成としたので、従来のイメージセンサマスクを張り合わせた継ぎ目に生じる黒線の問題を解決し、精度の高い高解像画像を取り込むことができる。
【0059】
また、従来のように画像入力装置本体を動かす必要がないので、安価で小型の検査装置を簡単に構築することができる。
【0060】
また、従来のように被検査体を動かすことなく、広視野高解像画像を取り込むことができる。
【0061】
また、容易に広視野高精細イメージセンサを実現し、検査用、監視用として、異常検出等のアプリケーションを高速に実現することができる。
【0062】
なお、上述した図7及び図8では、左右方向に隣り合う画素について重ねあわせを行う例を示したが、勿論、左右方向と同時に上下方向に隣り合う画素についても重ね合わせを行うことができる。
【0063】
次に、本発明の他の実施の形態の例について、図9〜図17を参照して説明する。
【0064】
図9は、本発明の他の実施の形態の例による検査装置内の画像入力装置の概略構成例を示す図である。この図9に示す画像入力装置50と図1の画像入力装置1との構造的な違いは、複数個のイメージセンサをセンサ基板上に所定間隔で配置している点である。複数個のイメージセンサをイメージサークル内において同時に移動させることにより、それぞれのイメージセンサによりイメージサークル9を分割し、分割したイメージ領域の映像を同時に取り込むようにしている。この例では、レンズ2が結像するイメージサークル内でセンサ基板60を動かすと、4個のイメージセンサ61,62,63,64によってイメージ領域9を4分割した分割イメージ領域9a,9b,9c,9dを同時に撮像する。
【0065】
図10は、画像入力装置50による4分割撮像イメージを示す図であり、全体画像として縦12フレーム、横12フレームの画像を撮像する例としている。本例は、イメージ領域9を4分割し、それぞれ縦6フレーム及び横6フレームの分割イメージ領域9a〜9dを形成する。
【0066】
例えば、各イメージセンサ61〜64の配置が、各分割イメージ領域9a〜9dの左上コーナー部(斜線部)となるように、各イメージセンサ61〜64の間隔を設けてセンサ基板60上に設置する。そして、図10に示す斜線部を初期撮像位置として、センサ基板60をX,Y方向に移動させ各位置で撮像すると、広い撮像イメージ領域9をイメージセンサ1個で撮像した場合の数倍の速さで取り込むことができ、各イメージセンサの解像度以上の高解像度画像データを高速で取得することが実現可能となる。本例では、4個のイメージセンサ61〜64により撮像領域を4分割し、イメージセンサ61〜64を順次X,Y方向に移動させ、36箇所の撮像位置で撮影することによって、縦12フレーム、横12フレーム分の合計1億73000万画素の画像を4倍速で取り込むことを可能とする。すなわち、N個のイメージセンサを配置した場合、被検査体像をN分割でき、その結果N倍での高速画像取り込みが可能となる。
【0067】
図11は、イメージセンサ4個の場合のイメージセンサ部構成例を示す図である。センサ基板60上に4個のイメージセンサ61,62,63,64を所定間隔に配置し、各イメージセンサにカバー65,66,67,68を設けている。これらイメージセンサの配置は、図10に示す縦12フレーム、横12フレームの撮像イメージの場合、イメージセンサの一画素当たりの寸法4.56μmとすると、横方向ピッチは4.65(μm)×1266(画素)×6(フレーム)=35.3mm、また縦方向ピッチは4.65(μm)×949(画素)×6(フレーム)=26.5mmとなる。
【0068】
図12は、図11に示したイメージセンサ部の要部(破線丸部)の拡大図であり、Aは上面図、Bは側面図を表す。図に示されるように、センサ基板60上のイメージセンサ62の周辺部に保護用のカバー66を設けるとともに、イメージセンサ62の周囲、カバー66との間にイメージセンサ62の位置を決める位置決め板69を設ける。そして、図12Bに示すように、カバー66及び位置決め板69に覆われるようにしてイメージセンサ周辺回路基板70を設けている。このような構成とすることにより、イメージセンサ周辺回路基板70を埃や傷から保護することができる。
【0069】
上述したイメージセンサの個数は、勿論、4個に限らず他の個数でもよい。変形例として、例えばイメージセンサ9個の場合のイメージセンサ部構成例を、図13に示す。この図13においては、左右方向及び上下方向のイメージセンサ間のピッチを図11に示す4個の場合と同様の、横ピッチ35.3mm、縦ピッチ26.5としている。
【0070】
図14は、図13に示される構成のイメージセンサ部による撮像イメージを表すものである。イメージセンサ9個の構成とした場合、例えば各イメージセンサの初期位置を各分割イメージ領域の左上コーナー部(斜線部)とし、そこからX,Y方向に移動させて各位置にて撮像し、同じ撮影時間で縦18フレーム(17,082画素)、横18フレーム(22,788画素)の大きさのイメージ領域を撮像できる。
【0071】
なお、図10に示す縦横12フレームのイメージ領域を9分割する場合は、各イメージセンサ間のピッチは、横方向23.5mm、縦方向17.7mmとなる。この場合、合計1億73000万画素の画像を9倍速で取り込むことができる。
【0072】
次に、上述の複数のイメージセンサを、被検査体の繰り返しパターンの不良解析に用いる例について説明する。
【0073】
図15は、複数個のイメージセンサからの出力を処理する分割処理例を示すものである。4個のそれぞれのイメージセンサ61〜64に対し信号処理回路75〜78を設け、各イメージセンサの画像データ出力(1)〜(4)を並列に得るようにしている。これら信号処理回路75〜78は各イメージセンサから出力される信号を処理する画像信号処理手段として機能するものであり、少なくとも信号処理部17に相当する機能を持つ。このように、複数のイメージセンサからの出力も並列信号処理及び並列転送することにより信号処理速度の高速化が図られる。
【0074】
図16は、複数個のイメージセンサから出力された画像データを利用して行う高速欠陥検出処理例を示すものである。図15の例の並列転送を有効に利用し、複数の撮像イメージの画像を比較する画像比較回路79を設け、その比較結果を欠陥検出結果としてディスプレイ29(図4参照)に出力する。画像比較回路79で行われる画像比較処理は主制御部21によるソフトウェアを利用した処理としてもよい。
【0075】
図17は、欠陥検出結果として出力される欠陥検出画像の例を示すものである。図17において、画像Aブロック81、画像Bブロック82、画像Cブロック83、画像Dブロック84は、それぞれイメージセンサ61,62,63,64で取り込まれた各分割イメージ領域9a,9b,9c,9dの画像を表している。
【0076】
特に、繰り返しパターンを検査する場合、各イメージセンサから出力される画像データは同じであるはずなので、画像Aブロック81、画像Bブロック82、画像Cブロック83、画像Dブロック84それぞれの画像データを画像比較して欠陥検出画像85を出力することにより、容易に欠陥部86の検出が可能である。したがって、本例の複数個のイメージセンサ構成により高速に不良位置を特定することができる。なお、このときに欠陥検出画像とともに、例えばどの画像ブロックに欠陥があるのか、またその画像ブロック内における欠陥部の位置を文字列で表示すると、より素早く欠陥部の位置を認識するための助けとなる。
【0077】
なお、上記画像比較回路79において画像比較を行う場合、単位画像ブロックを合成した分割イメージ領域全体の画像単位で比較してもよいし、各撮像位置で得られる単位画像ブロック毎に随時比較するようにしてもよい。
【0078】
上述した本例の構成によれば、例えば液晶ディスプレイパネルなどの高精細フラットパネルの細かい画素レベルまで撮像して、高域高精細画像を高速に取り込むことのできる画像入力装置を小型で安価に実現できる。
【0079】
特に、大量の高画素データの繰り返しパターン検査を高速に実現するシステムに適用した場合に有効である。
【0080】
さらに、複数個のイメージセンサを用いた画像入力装置を監視モニタに適用した場合、広域にわたり細かい異常等の情報を、各イメージセンサから個々に並列に高速検出することができる。
【0081】
なお、本発明は上述した実施の形態を適宜組み合わせた構成とすることもできる。例えば、本発明の実施の形態として、イメージセンサに回転補正機構を設け、被検査体像と撮像面との回転角に応じて手動もしくは自動で回転補正を行うようにしたもの(図2他参照)、また、被検査体像の結像面のイメージサークルより小さい撮像面を持つイメージセンサをこの結像面上で移動させるようにし、さらには隣り合う単位画像の一部を重ね合わせ、広視野高精細画像を実現したもの(図1,7他参照)、また、等間隔に配置された複数個のイメージセンサにより、広視野高精細画像を高速に取り込むことができ、さらには各イメージセンサで取り込んだ画像を比較して欠陥検出を行うもの(図9,10,17他参照)があるが、これらの実施形態の幾つか又は全部を組み合わせた構成としてもよく、本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を取り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施の形態による検査装置内の画像入力装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるイメージセンサ手動回転補正機構を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるイメージセンサ自動回転補正機構を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるシステムブロック構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態による信号処理の例を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態による撮像イメージを示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態による隣接画像の重ね合わせイメージを示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態による重ね合わせ後の画像イメージを示す図である。
【図9】本発明の他の実施の形態による検査装置内の画像入力装置の概略構成を示す図である。
【図10】本発明の他の実施の形態による4分割撮像イメージを示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態によるイメージセンサ部の構成(イメージセンサ4個)を示す図である。
【図12】本発明の他の実施の形態のイメージセンサ部の要部拡大図である。
【図13】本発明の他の実施の形態によるイメージセンサ部構成の変形例(イメージセンサ9個)を示す図である。
【図14】本発明の他の実施の形態の変形例である9分割撮像イメージを示す図である。
【図15】本発明の他の実施の形態による分割処理の説明に供する図である。
【図16】本発明の他の実施の形態による高速欠陥検出処理の説明に供する図である。
【図17】本発明の他の実施の形態による欠陥検出画像の例を示す図である。
【図18】従来の検査装置の構成例(1)を示す図である。
【図19】従来の検査装置の構成例(2)を示す図である。
【図20】一般的な回転テーブルの例を示す図である。
【図21】従来の検査装置の構成例(3)を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1…画像入力装置、2…レンズ、3…レンズマウント、4…フィルタ、5…イメージセンサ、6…センサ基板、7…X方向駆動用モータ、8…Y方向駆動用モータ、9…イメージ領域、9a,9b,9c,9d…分割イメージ領域、10…被検査体、11…回転部材、12…回転操作部、13,14…歯車、15…モータ、23…XYθテーブル、22…XYθテーブル制御部、21…主制御部、16…電気ブロック、17…信号処理部、18…欠陥/シェーディング補正部、19…回転角検出/補正部、20…電源部、24…欠陥画像処理部、25…画像合成/圧縮部、26…メモリ、27…外部インターフェイス、28…PC、29…ディスプレイ、31,33…単位画像、32,34,35…画素列、50…画像入力装置、60…センサ基板、61,62,63,64…イメージセンサ、71,72,73,74…単位画像、65,66,67,68…カバー、69…位置決め板、70…イメージセンサ周辺回路基板、75,76,77,78…信号処理回路、79…画像比較回路、81,82,83,84…画像ブロック、85…欠陥検出画像、86…欠陥部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系により被検査体の二次元画像を取り込んで結像した被検査体像を装置筐体内に支持されている撮像素子により電気信号に変換し、前記電気信号から被検査体の画像データを得る画像入力装置であって、
前記画像データから前記被検査体像に対する前記撮像素子の回転ずれを検出する回転角検出手段と、
前記回転角検出手段により検出された回転ずれに基づいて前記撮像素子を光軸周りに回転させる回転手段
を備えることを特徴とする画像入力装置。
【請求項2】
前記回転角検出手段により検出された回転ずれの情報を表示する表示部と、
前記回転手段として、前記撮像素子を回転可能に支持する回転部材と、前記回転部材と一体に取り付けられ前記回転部材を回転させる回転操作部
を備えることを特徴とする請求項1記載の画像入力装置。
【請求項3】
前記回転角検出手段により検出された回転ずれの情報に基づき、前記回転手段に回転補正指令を出力する制御手段を有し、
前記回転手段は、前記制御手段からの回転補正指令に基づき前記撮像素子を自動的に回転させる
ことを特徴とする請求項1記載の画像入力装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−30084(P2006−30084A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212040(P2004−212040)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】