説明

画像処理システム,データ記憶制御装置,データ出力制御装置,データ記憶制御プログラム,データ出力制御プログラム

【課題】二つの情報記憶媒体を用いて画像データの記憶・出力を並行して実行する場合における処理効率を更に向上させることのできる画像処理システムを提供すること。
【解決手段】ハードディスクA1が選択されて画像データD1が記憶されると(時点t1),ハードディスクA2への画像データD2の記憶が開始されると共に,ハードディスクA1からの画像データD1の表示出力が開始される。その後,画像データD1の表示出力が終了すると(時点t2),ハードディスクA2への画像データD2の記憶が中止されてハードディスクA1への画像データD3の記憶が開始されると共に,ハードディスクA2からの画像データD2の表示出力が開始される。即ち,ハードディスクA2への画像データD2の記憶処理は,画像データD1の表示出力が終了するまでの間継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,一又は複数の原稿に対応する画像データを二つの情報記憶媒体の一方に交互にアクセスして分散記憶させつつ,他方の情報記憶媒体に交互にアクセスして画像データを出力する画像処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に,原稿から読み取った画像データを一つのメモリに記憶する構成が知られているが,この構成では,メモリへの画像データの記憶が終了した後でなければ,メモリから画像データを出力することができない。そのため,画像データの読み取り直後にその画像データを出力したい場合に,その出力までに待ち時間が生じることが問題であった。もちろん,一つのメモリに対して記憶と出力とを並行して行うことも考えられるが,この場合には,メモリへのアクセスが競合するため,効率的な動作ができず処理時間を短縮することはできない。
これに対し,例えば特許文献1では,原稿(フィルム)から読み取った画像データを1コマごとに二つのメモリに交互に記憶すると共に,その一方のメモリに画像データが記憶が行われている間に他方のメモリから画像データを読み出すことにより,画像データの記憶・出力を効率的に行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−73288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記特許文献1に係る技術では,画像データを必ず1コマ毎に交互に記憶させているため,一方のメモリから画像データを出力する速度が,他方のメモリに画像データを記憶する速度よりも遅い場合には,その画像データの記憶処理が一時的に待機状態となり,処理が十分に効率的に行われているとは言えない。ここに,図4はこのような場合の問題点を説明するための図であって(a)は画像データの記憶先,(b)は画像データ出力の出力元を示すものである。ここでは,画像データD11,D12,…は,1コマ毎の画像データであるとする。
図4(a)に示すように,まずメモリA11に画像データD11が記憶され,続いて時点t11でメモリA12に切り換えられて画像データD12が記憶される。このとき,図4(b)に示すように,時点t11でメモリA11からの画像データD11の出力が開始される。
その後,画像データD11の出力処理と画像データD12の記憶処理とが並行して行われるが,時点t12においてメモリA12の画像データD12の記憶が終了しても,その記憶速度よりも遅い画像データD11の出力は終了していない。そのため,画像データの記憶処理が中断し,メモリA12が待機状態となる(時点t12〜t13)。
そして,時点t13において,メモリA11からの画像データD11の出力が終わると,次は,メモリA12からの画像データD12の出力が開始され,メモリA11への画像データD13の記憶が開始される。その後も同様に処理が進行することにより,画像データD11,D12,…が順次記憶・出力されることとなる。
そのため,メモリA11,A12を切り換える度に時点t12〜t13の間と同様の時間差が生じることとなり,画像データの記憶処理及び出力処理を十分効率的に行うことができない。しかも,一方のメモリが,画像データの記憶と画像データの出力とのいずれにも用いられていない空き状態となると,そのメモリがその画像データの記憶・出力以外の処理で用いられることにより,該画像データの記憶・出力が遅れるおそれもある。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,二つの情報記憶媒体を用いて画像データの記憶・出力を並行して実行する場合における処理効率を更に向上させることのできる画像処理システム,及びこれに用いられるデータ記憶制御装置,データ出力制御装置,データ記憶制御プログラム,データ出力制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は,所定の画像読取手段による一連の画像読取処理によって読み取られる一又は複数の原稿に対応する画像データを,二つの情報記憶媒体に交互にアクセスして分散記憶させるデータ記憶制御手段と,前記分散記憶と並行して前記情報記憶媒体各々に交互にアクセスして該情報記憶媒体に分散記憶された前記画像データを出力するデータ出力制御手段とを備えてなる画像処理システムに適用されるものであって,前記データ記憶制御手段が,前記データ出力制御手段によるアクセス先の前記情報記憶媒体の切換タイミングを取得する切換タイミング取得手段を備えてなり,前記切換タイミング取得手段により取得される前記切換タイミングに達するまでの間,現在アクセス中の前記情報記憶媒体への画像データの記憶を継続してなることを特徴とする画像処理システムとして構成される。
本発明によれば,前記情報記憶媒体からの画像データの出力速度が,前記情報記憶媒体への画像データの記憶速度よりも遅い場合でも,一方の前記情報記憶媒体からの前記画像データの出力が終了するまでの間は,他方の前記情報記憶媒体に対する前記画像データの記憶が継続し,該他方の前記情報記憶媒体が空き状態になることがないため,処理を効率的に実行させることができ,他の処理などによって前記情報記憶媒体メモリに割り込みが入ることを防止することもできる。
【0006】
ところで,本発明は,前記データ出力制御手段を有するデータ出力制御装置,或いは前記データ記憶制御手段を有するデータ記憶制御装置の発明として捉えることも可能である。
また,本発明は,前記データ出力制御手段と同様の処理をコンピュータに実行させるためのデータ出力制御プログラムとして捉えてもよい。
さらに,本発明を,前記データ記憶制御手段と同様の処理をコンピュータに実行させるためのデータ記憶制御プログラムとして捉えてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,前記情報記憶媒体からの画像データの出力速度が,前記情報記憶媒体への画像データの記憶速度よりも遅い場合でも,一方の前記情報記憶媒体からの前記画像データの出力が終了するまでの間は,他方の前記情報記憶媒体に対する前記画像データの記憶が継続し,該他方の前記情報記憶媒体が空き状態になることがないため,処理を効率的に実行させることができ,他の処理などによって前記情報記憶媒体メモリに割り込みが入ることを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理システムXの概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像処理システムXで実行されるデータ記憶制御処理及びデータ出力制御処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像処理システムXで実行されるデータ記憶制御処理及びデータ出力制御処理の実行結果の一例を説明するための図。
【図4】従来の画像処理システムで実行されるデータ記憶制御処理及びデータ出力制御処理の実行結果の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
まず,図1を用いて,本発明の実施の形態に係る画像処理システムXの概略構成について説明する。
図1に示すように,前記画像処理システムXは,LAN等のネットワークNを介して通信可能に接続された複合機Y(データ記憶制御装置の一例),パソコンZ(データ出力制御装置の一例),及びハードディスクA1,A2(情報記憶媒体の一例)を備えている。なお,当該画像処理システムXにおける通信時,前記複合機Y,前記パソコンZ,前記ハードディスクA1,A2の各々は,個別に与えられたIPアドレスやMACアドレスなどの識別情報によって識別される。
【0010】
前記複合機Yは,不図示の原稿台やADF(自動搬送装置)にセットされた一枚又は複数の原稿から画像データを読み取るCCD等を有する画像読取部11(所定の画像読取手段)と,当該複合機Yを統括的に制御する制御部12と,前記ネットワークNを通じて前記パソコンZや前記ハードディスクA1,A2にアクセスするデータ伝送部13とを備えている。なお,前記複合機Yに代えて,前記画像読取部11を有するスキャナ装置,複写機,ファクシミリ装置などの各種の画像読取装置や画像形成装置を用いてもよい。
もちろん,前記複合機Yは,一般的な複写機が有する各種の構成要素(感光体ドラムや現像装置,転写装置,操作表示部,給紙カセットなど)も有しているが,ここでは説明を省略する。
【0011】
前記ハードディスクA1,A2各々は,入力される画像データなどの各種の情報を記憶するものであって,ハードディスクに限らず,読み書きが可能な不揮発性の半導体メモリ(EPROM)やフラッシュメモリなどであってもよい。また,前記ハードディスクA1,A2は,前記複合機Y及び前記パソコンZの両者からアクセス可能な前記ネットワークN上にあればよく,例えば,前記複合機Y内又は前記パソコンZ内に設けられたものであってもよい。
【0012】
一方,前記パソコンZは,該パソコンZを統括的に制御する制御部21と,前記ハードディスクA1,A2各々に記憶された画像データを表示出力する液晶ディスプレイなどの表示部22と,前記ネットワークNを通じて前記複合機Yや前記ハードディスクA1,A2にアクセスするデータ伝送部23とを備えてなるパーソナルコンピュータ(又は情報処理装置)である。なお,前記パソコンZに代えて,前記表示部22を有するスキャナ装置,複写機,ファクシミリ装置などの各種の画像読取装置や画像形成装置を用いてもよい。
【0013】
前記複合機Yの制御部12及び前記パソコンの制御部21各々は,例えばCPU,RAM,ROMなどを備えてなり,該CPUによって所定の制御プログラムを実行することにより各種の処理機能を具現するものである。
具体的に,前記画像処理システムXでは,前記制御部12,21によって後述のデータ記憶制御処理,データ出力制御処理(図2のフローチャート参照)が実行される。
これにより,前記複合機Yの制御部12が,前記画像読取部11で読み取られる一又は複数の原稿に対応する画像データを前記ハードディスクA1,A2の一方に交互にアクセスして分散記憶させ,前記パソコンZの制御部21が,前記分散記憶に並行して他方に交互にアクセスして該ハードディスクに分散記憶された画像データを前記表示部22に表示出力させる。ここに,係る処理を実行するときの前記制御部12がデータ記憶制御手段,前記制御部21がデータ出力制御手段に相当する。
なお,前記複合機Y又は前記パソコンZのアクセス先を前記ハードディスクA1,A2の間で切り換えるための手法としては,前記複合機Y又は前記パソコンZと前記ハードディスクA1,A2との間の前記画像データの通信経路を機械的に切り換えることや,前記複合機Y又は前記パソコンZがアクセス先のIPアドレス等を変更することが考えられる。また,前記制御部12が,一つの原稿についての画像データを分割して複数のハードディスクA1,A2に分散記憶する処理や,前記制御部21が,そのハードディスクA1,A2に分散記憶された複数の画像データを復元して表示出力させる処理については従来周知の分割・復元技術を用いればよい。
【0014】
続いて,図2のフローチャートに従って,前記画像処理システムXで前記制御部12及び前記制御部21が所定の制御プログラムに従って実行するデータ記憶制御処理及びデータ出力制御処理の手順の一例について説明する。なお,図2(a)のS11,S12,…は前記複合機Y側の制御部12の処理手順(ステップ)の番号を表し,図2(b)のS21,S22,…は前記パソコンZ側の制御部21の処理手順(ステップ)の番号を表している。
ここに,前記制御部12がデータ記憶制御処理(図2(a))を実行するために前記複合機Yに予めインストールされる制御プログラム(所謂スキャナドライバ等)が本発明に係るデータ記憶制御プログラムであり,前記制御部21がデータ出力制御処理(図2(b))を実行するために前記パソコンZに予めインストールされるスキャナドライバ等の制御プログラム(所謂スキャナドライバ等)が本発明に係るデータ出力制御プログラムである。
【0015】
(パソコンZ側,ステップS21)
まず,図2(b)に示すように,前記パソコンZ側では,前記制御部21によって,画像読取処理の開始要求の有無が判断される。具体的に,前記制御部21は,前記パソコンZに設けられた不図示のマウスやキーボードなどの操作表示部に対するユーザ操作により,前記データ出力制御プログラムが立ち上げられ,前記複合機Yによる画像読取処理の開始要求操作が行われたか否かにより判断を行う。
ここで,前記画像読取処理の開始要求操作がなされたと判断すると(S21のYes側),処理はステップS22に移行し,前記制御部21は,前記複合機Yに対して画像読取処理の開始要求信号を送信する。一方,前記画像読取処理の開始要求操作がなされるまでの間は(S21のNo側),処理は後述のステップS23に移行する。
【0016】
(複合機Y側,ステップS11〜S12)
一方,図2(a)に示すように,前記複合機Y側では,前記制御部12によって,画像読取処理の開始要求の有無が判断される(S11)。具体的に,前記制御部12は,前記パソコンZから画像読取処理の開始要求信号を受信した場合(所謂プル型),或いは前記複合機Yに設けられた不図示の操作表示部に対するユーザ操作が行われた場合に(所謂プッシュ型),前記画像読取処理の開始要求があったものと判断する。。
ここで,前記画像読取処理の開始要求がなされたと判断すると(S11のYes側),処理はステップS12に移行し,前記画像読取処理の開始要求がなされなければ,処理は前記ステップS11で待機することとなる。
ステップS12では,前記制御部12によって前記画像読取部11が制御され,該画像読取部11による原稿からの画像データの読み取りが開始される。
そして,前記制御部12は,以下のステップS13〜S18により,前記画像読取部11で読み取られる画像データを,バンド(例えば128ライン)単位で前記ハードディスクA1,A2に順次転送させて記憶させる。
【0017】
(複合機Y側,ステップS13〜S16)
より具体的に,前記制御部12は,まず前記ハードディスクA1,A2のいずれか一方を選択して画像データの記憶を開始する(S13)。なお,このとき選択されるハードディスクは,前記ハードディスクA1,A2のいずれか一方に予め定めたものであってもよいが,その都度,稼働率の低いものを選ぶことや直前の同処理で使用したものと逆のものを選ぶことなど,各種の選択方法が考えられる。
その後,ステップS14において,例えば数バンド程度など,予め設定された所定量の画像データの記憶が終了したと判断するまでは(S14のNo側),該選択されたハードディスクへの記憶が継続される。
他方,予め設定された所定量の画像データの記憶が終了したと判断すると(S14のYes側),処理はステップS15に移行する。
ステップS15では,前記制御部12は,前記ハードディスクA1,A2のうち前記ステップS13で選択されたものと逆のハードディスクを選択して画像データの記憶を開始する。このとき,前記制御部12は,前記ステップS13で選択されていたハードディスクへのアクセスを終了して該ハードディスクを解放する。これにより,そのハードディスクに対して他の装置からのアクセスが可能となる。
そして,ステップS16では,前記制御部12は,前記パソコンZに対して,前記ステップS15で解放したハードディスクに記憶された画像データの出力を開始させるための出力開始要求信号を送信する。
【0018】
(パソコンZ側,ステップS23〜S25)
前記パソコンZでは,ステップS23において,前記制御部21が,前記複合機Yからの出力開始要求信号の受信を待ち受けており(S23のNo側),出力開始要求信号の受信がなされたと判断すると(S23のYes側),処理はステップS24に移行する。なお,前記出力開始要求信号には,前記ハードディスクA1,A2のいずれから画像データを出力するかなど,前記制御部21が前記画像データを読み取るために必要な各種の情報が含まれる。
ステップS24では,前記制御部21が,前記ハードディスクA1,A2のうち前記複合機Yの制御部12が現在アクセスしていないハードディスク,即ち前記ステップS13において前記画像データが記憶されていたものを選択し,該ハードディスクから前記画像データを読み出して前記表示部22に表示出力するための処理を実行する。前記画像データは,例えば前記パソコンZ内部に設けられた前記制御部21の内部メモリやハードディスクなどに記憶される。
その後,前記制御部21は,ステップS25において,前記ステップS24で現在アクセスしているハードディスクに記憶された画像データの出力が終了したと判断すると(S25のYes側),処理をステップS26に移行させ,終了するまでの間は(S25のNo側),処理をステップS28に移行させる。
【0019】
(パソコンZ側,ステップS26〜S28)
ステップS26では,前記制御部21は,画像データの出力元としてアクセスするハードディスクを他方のハードディスクに切り換える旨の出力切換通知を前記複合機Yに送信する。これにより,前記複合機Y側の制御部21では,前記パソコンZ側の制御部12による現在のアクセス状況を特定することが可能となる。なお,前記出力切換通知には,例えば前記制御部21が現在アクセス中のハードディスクや,次にアクセスするハードディスクについての情報が含まれる。
そして,ステップS27では,前記制御部21が,現在アクセス中のハードディスクから逆のハードディスクにアクセス先を切り換えて画像データの出力処理を開始する。
その後,ステップS28では,前記画像読取処理における全ての原稿についての画像データの表示出力が終了したか否かが判断され,終了した場合には(S28のYes側),当該一連のデータ出力制御処理が終了し,処理は前記ステップS21に戻されるが,終了していなければ(S28のNo側),処理は前記ステップ25に戻される。
このように,前記パソコンZ側では,前記制御部21によって,前記データ出力制御処理が実行されることにより,前記複合機Yによって画像データが分散記憶される前記ハードディスクA1,A2に交互にアクセスすることにより,該画像データが前記表示部22に順次表示出力されることとなる。
【0020】
(複合機Y側,ステップS17)
他方,前記制御部12は,ステップS17において,前記パソコンZ側の制御部21から出力切換通知を受信したか否かを判断している。ここで,前記出力切換通知を受信すると(S17のYes側),前記パソコンZ側の制御部21によるアクセス先の前記ハードディスクA1,A2の切換タイミングが到来したものとして,処理はステップS18に移行する。他方,前記出力切換通知を受信するまでの間は(S17のNo側),前記パソコンZ側の制御部21によるアクセス先の前記ハードディスクA1,A2の切換タイミングが到来していないものとして,処理はステップS19に移行する。このように,前記制御部21から前記出力切換通知を受信したことを条件に前記切換タイミングに達したことを判断するときの前記制御部12が切換タイミング取得手段に相当する。なお,前記制御部12が前記切換タイミングを判断するための手法はこれに限らず,例えば前記制御部12が前記パソコンZ側に問い合わせることや前記ハードディスクA1,A2の状態を監視することなどによって取得してもよい。また,前記制御部21からの前記出力切換通知が,所定時間経過後にアクセス先の切り換えを行う旨の情報が含まれている場合には,その出力切換通知を受信してから前記所定時間経過後に前記切換タイミングに達したと判断することも他の実施例として考えられる。
【0021】
(複合機Y側,ステップS18〜S19)
そして,ステップS18では,前記制御部12は,前記画像読取部11で読み取られる画像データの記憶先を,前記ハードディスクA1と前記ハードディスクA2との間で切り換える。例えば,現在前記ハードディスクA1にアクセスして画像データを記憶している場合には,他方の前記ハードディスクA2にアクセスして画像データの記憶を開始させる。これにより,前記制御部12は,前記パソコンZの出力元となっているハードディスクと逆のハードディスクにアクセスして画像データを記憶させることとなる。即ち,前記複合機Yによる前記ハードディスクA2への画像データの記憶処理は,前記パソコンZによる該ハードディスクA2からの画像データの表示出力が終了するまでの間継続する。
このように,前記画像処理システムXにおいて,前記制御部12による画像データの記憶処理と前記制御部21による画像データの表示出力処理とは並行して実行されるが,前記制御部12及び前記制御部21による前記ハードディスクA1,A2へのアクセスは競合しないよう制御される。
その後,ステップS19では,前記制御部12によって,前記画像読取処理における全ての原稿についての画像データの記憶処理が終了したか否かが判断され,終了した場合には(S19のYes側),当該一連のデータ記憶制御処理が終了し,処理は前記ステップS11に戻されるが,終了していなければ(S19のNo側),処理は前記ステップ17に戻される。なお,当該一連のデータ記憶制御処理が終了する時点(S19のYes側)で最後にアクセスしていたハードディスクは解放される。
【0022】
以下,図3を参照しつつ,前記画像処理システムXにおいて前記複合機Y及び前記パソコンZで前記データ記憶制御処理及び前記データ出力制御処理が実行された結果の一例について説明する。なお,図3(a)はデータ記憶制御処理の記憶先,図3(b)はデータ出力制御処理の出力元を示すものである。ここで,図3に示す画像データD1,D2,…は,例えば,一枚の原稿に対応する画像データの一又は複数のバンドに対応する画像データであって,そのデータ量は,前記複合機Yによる前記ハードディスクA1,A2への画像データの記憶速度と前記パソコンZによる前記ハードディスクA1,A2からの画像データの表示出力速度との差に応じて変化する。
ここでは,説明の便宜上,前記複合機Yによる前記ハードディスクA1,A2への画像データの記憶速度が,前記パソコンZによる前記ハードディスクA1,A2からの画像データの表示出力速度の約1.5倍であるものとする。また,図3(a)に示すように,前記複合機Yで画像データの読み取りが開始されるとき,まず前記ハードディスクA1が選択されるものとする。
【0023】
図3(a)に示すように,まずは前記ハードディスクA1が選択されて,前記複合機Yから前記ハードディスクA1に所定量の画像データD1が記憶される(図2のS13)。そして,時点t1で前記所定量の画像データD1の記憶が終了すると(図2のS14Yes側),次に前記複合機Yは,前記ハードディスクA1を解放して前記ハードディスクA2にアクセスし,続きの画像データD2の記憶を開始する(図2のS15)。
このとき,図3(b)に示すように,前記時点t1で前記ハードディスクA1が解放されると(図2のS23Yes側),前記パソコンZは,該ハードディスクA1にアクセスして画像データD1の表示出力を開始する(図2のS24)。
図3の時点t2において前記パソコンZによる画像データD1の表示出力が終了すると(図2のS25Yes側),該パソコンZから前記複合機Yに対して,前記ハードディスクA1から前記ハードディスクA2に切り換える旨の出力切換通知が送信される(図2のS26)。
これにより,前記複合機Yでは,前記出力切換通知の受信に応じて,前記制御部12によって,前記ハードディスクA2への画像データD2の記憶が中止され,前記ハードディスクA1に対して,次の画像データD3の記憶が開始される(図2のS18)。即ち,前記複合機Yによる前記ハードディスクA2への画像データD2の記憶処理は,前記パソコンZによる画像データD1の表示出力が終了するまでの間継続することとなる。そのため,前記画像データD2のデータ量は,前記画像データ量D1よりも多くなる。
一方,前記パソコンZでは,前記制御部21が前記ハードディスクA2にアクセスし,次の画像データD2の表示出力を開始する(図2のS27)。そして,その後も同様に処理が進行することにより,前記複合機Y及び前記パソコンZによって交互に前記ハードディスクA1,A2へのアクセスが行われ,画像データD1,D2,…の記憶及び出力が並行して実行されることになる。
このように,前記画像処理システムXでは,前記ハードディスクA1,A2のいずれも空き状態になることがなく,画像データの記憶処理又は画像データの表示出力処理において用いられることとなる。
【0024】
以上説明したように,前記画像処理システムXでは,前記パソコンZによる画像データの表示出力処理に要する時間が,前記複合機Yによる画像データの記憶処理に要する時間よりも長い場合であっても,その時間差の間も前記複合機Yによる画像データの記憶が継続して行われることとなるため,予め設定された所定量(例えば1コマ)ずつ交互に記憶させる場合に比べて,前記ハードディスクA1,A2を効率的に利用して迅速に処理を行うことができる。
しかも,前記画像処理システムXにおける画像読取処理が開始されると,その後は,前記ハードディスクA1,A2が前記複合機Y及び前記パソコンZによって常にアクセスされた状態(占有状態)となるため,前記ハードディスクA1,A2が一時的に空き状態になることがなく,他の装置によって割り込まれて前記ハードディスクA1,A2が利用されることを防止することができ,該画像読取処理の遅延が防止される。
【符号の説明】
【0025】
11…画像読取部(画像読取手段の一例)
12…制御部
13…データ伝送部
21…制御部
22…表示部
23…データ伝送部
A1,A2…ハードディスク(情報記憶媒体の一例)
N…ネットワーク
X…画像処理システム
Y…複合機
Z…パソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画像読取手段による一連の画像読取処理によって読み取られる一又は複数の原稿に対応する画像データを,二つの情報記憶媒体に交互にアクセスして分散記憶させるデータ記憶制御手段と,前記分散記憶と並行して前記情報記憶媒体各々に交互にアクセスして該情報記憶媒体に分散記憶された前記画像データを出力するデータ出力制御手段とを備えてなる画像処理システムであって,
前記データ記憶制御手段が,前記データ出力制御手段によるアクセス先の前記情報記憶媒体の切換タイミングを取得する切換タイミング取得手段を備えてなり,前記切換タイミング取得手段により取得される前記切換タイミングに達するまでの間,現在アクセス中の前記情報記憶媒体への画像データの記憶を継続してなることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
所定の画像読取手段による一連の画像読取処理によって読み取られる一又は複数の原稿に対応する画像データを,二つの情報記憶媒体に交互にアクセスして分散記憶させるデータ記憶制御手段を備えてなるデータ記憶制御装置であって,
前記データ記憶制御手段が,前記分散記憶と並行して前記情報記憶媒体各々に交互にアクセスして該情報記憶媒体に分散記憶された前記画像データを出力するデータ出力制御手段によるアクセス先の前記情報記憶媒体の切換タイミングを取得する切換タイミング取得手段を備えてなり,前記切換タイミング取得手段により取得される前記切換タイミングに達するまでの間,現在アクセス中の前記情報記憶媒体への画像データの記憶を継続してなることを特徴とするデータ記憶制御装置。
【請求項3】
前記データ記憶制御手段が,前記データ出力制御手段によるアクセス先の前記情報記憶媒体が切り換えられるときに前記データ出力制御手段から送信される切換通知を受信したことを条件に前記切換タイミングに達したことを判断するものである請求項2に記載のデータ記憶制御装置。
【請求項4】
二つの情報記憶媒体に交互にアクセスして該情報記憶媒体に分散記憶された前記画像データを出力するデータ出力制御手段を備えてなるデータ出力制御装置であって,
前記データ出力制御手段による画像データの出力と並行して,所定の画像読取手段による一連の画像読取処理によって読み取られる一又は複数の原稿に対応する画像データを前記情報記憶媒体に交互にアクセスして分散記憶させるデータ記憶制御手段に対し,前記データ出力制御手段によるアクセス先の前記情報記憶媒体の切換タイミングを通知する切換通知手段を備えてなることを特徴とするデータ出力制御装置。
【請求項5】
前記データ出力制御手段が,前記情報記憶媒体に記憶された画像データに基づいて画像を所定の表示手段に表示出力するものである請求項4に記載のデータ出力制御装置。
【請求項6】
所定の画像読取手段による一連の画像読取処理によって読み取られる一又は複数の原稿に対応する画像データを,二つの情報記憶媒体に交互にアクセスして分散記憶させるデータ記憶制御工程をコンピュータに実行させるためのデータ記憶制御プログラムであって,
前記データ記憶制御工程が,前記分散記憶と並行して前記情報記憶媒体各々に交互にアクセスして該情報記憶媒体に分散記憶された前記画像データを出力するデータ出力制御手段によるアクセス先の前記情報記憶媒体の切換タイミングを取得する切換タイミング取得工程を備えてなり,前記切換タイミング取得工程により取得される前記切換タイミングに達するまでの間,現在アクセス中の前記情報記憶媒体への画像データの記憶を継続してなることを特徴とするデータ記憶制御プログラム。
【請求項7】
二つの情報記憶媒体に交互にアクセスして該情報記憶媒体に分散記憶された前記画像データを出力するデータ出力制御工程をコンピュータに実行させるためのデータ出力制御プログラムであって,
前記データ出力制御手段による画像データの出力と並行して,所定の画像読取手段による一連の画像読取処理によって読み取られる一又は複数の原稿に対応する画像データを二つの情報記憶媒体に交互にアクセスして分散記憶させるデータ記憶制御手段に対し,前記データ出力制御工程によるアクセス先の前記情報記憶媒体の切換タイミングを通知する切換通知工程をコンピュータに実行させることを特徴とするデータ出力制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−176647(P2011−176647A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39474(P2010−39474)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】