説明

画像処理方法及び装置

【課題】 モノクロ写真の分野で重視される色転びの低減を行い、高画質なモノクロ写真プリントが得られる画像処理方法および装置を提供する。
【解決手段】 複数の有彩色記録材と黒を含む1つ以上の無彩色記録材を具備し、少なくとも2段階以上の色分解処理工程を具備する画像形成装置における画像処理方法であって、前記色分解処理工程の第2段階以降で前記有彩色記録材の使用可能量を前記黒の記録材の使用可能量の半分以下に制限することを特徴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高画質なプリントを達成するための画像処理方法及び装置に関するものである。特に、モノクロ写真の分野は色調が重要視され、1枚の画像の中で色調のずれが生じないような精度の高いプリント技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー出力装置の一例としてカラーインクジェットプリンタの場合は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色、またはこれに黒(BK)を加えた4色で画像を表現することが多い。近年、更なる高画質化を目的として、設定しだいでは、モノクロ印刷が可能なシステムも提案されている。
【0003】
カラーインクジェットプリンタにおけるモノクロ印刷の技術が提案されている(特許文献1)。この技術を用いれば、BKの記録材を支配的に使い、調色成分として1、あるいは2色の記録材を使うことにより、カラー印刷と、モノクロ印刷を併用可能なシステムの為に、多色、多階調インクを具備した装置においても、色調を重要視されているモノクロ写真を印刷する場合においても高画質なプリントを得ることが出来る。
【特許文献1】特願2004−024841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記技術を図1に示すブロック図のフローのように、少なくとも2つ以上の段階(γ補正、後段処理)に分けられてC、M、Y、lc(淡C)、lm(淡M)、BKなどの記録材を操作する系で画像処理を行った場合、調色成分であるC、M、Yを操作する処理の精度が低かった。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、モノクロ写真の分野で重視される色転びの低減を行い、高画質なモノクロ写真プリントが得られる画像処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明では、複数の有彩色記録材と黒を含む1つ以上の無彩色記録材を具備し、少なくとも2段階以上の色分解処理工程を具備する画像形成装置における画像処理方法であって、前記色分解処理工程の第2段階以降で前記有彩色記録材の使用可能量を前記黒の記録材の使用可能量の半分以下に制限することを特徴する。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本発明によれば、調色成分の記録材の制御をより精密にすることが可能となり、色調を重要視されているモノクロ写真を印刷する場合において高画質なプリントが可能となる。
【0008】
尚、上記の実施例は本発明を説明するための例であり、本発明を制限するために記述されたものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面を参照して従来技術の例を説明する。
【0010】
図6は従来技術の例における印刷モード選択および印刷のフローを示す。まず、ステップ1でユーザーは印刷モードを選択する。本例では、「カラーモード」、「モノクロモード」の2種類がある。
【0011】
「カラーモード」は通常のカラー写真などを印刷するための印刷モードで、通常の濃、淡、黒等、6色の記録材から、最近では特色を入れた7色や8色を使い、印刷を行う。
【0012】
一方、「モノクロモード」モノクロ写真の印刷に適したモードで、少なくとも本例では、モノクロ写真印刷に最適化された色分解テーブルを選択するモードとなっている。
【0013】
ステップ1で選択された印刷モードは、ステップ2、3において、図1で示したフローで色処理および量子化がなされる。それぞれのモードについて、色変換処理パラメータはモード固有のものである。その後、ステップ4で印刷が行われる。
【0014】
図1は画像処理を説明するブロック図で、入力されるRGB各色8ビット(256階調)画像データをC、M、Y、lc、lm、BK 各色1ビット(ドットを打つか打たないか)データとして出力する処理フローである。
【0015】
システムの最初に画像を入力する(101)。ただし、モノクロモードの場合は公知の方法でR、G、Bの各色の輝度より係数を儲けて計算し、結果R = G = Bとなるような輝度情報を持ったデータへ変換される。
【0016】
前段色変換処理(102)は、sRGB規格の画像データR、G、Bによって再現される色域を、本プリントシステムのプリンタによって再現される色域内に写像する関係を内容とする3次元LUTを用い、これに公知の補間演算を併用して8ビットの画像データR、G、Bをプリンタの色域内のデータR'、G'、B'に変換するデータ変換を行う。
【0017】
後段色変換処理(103)は、上記色域のマッピングがなされたデータR'、G'、B'に基づき、このデータが表す色を再現するインクの組み合わせに対応した色分解データC、M、Y、K、lc、lmを求める処理を行う。この処理は前段色変換処理と同様3次元LUTに補間演算を併用して行う。以後、この3次元LUTを「後段テーブル」と呼ぶことにする。
【0018】
γ補正(104)は、後段色変換処理(103)によって求められた色分解データの各色のデータ毎にその階調値変換を行う。具体的には、本システムで用いるプリンタの各色インクの階調特性に応じた1次元LUTを用いることにより、上記色分解データがプリンタの階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。この1次元LUTを以後「γ補正テーブル」と呼ぶ。
【0019】
このカラー記録装置は2値記録装置とし、上記γ補正より求められたデータは次の量子化処理部(105)で各色2値データに量子化処理される。量子化方法は従来公知の誤差拡散法やディザ法が用いられる。
【0020】
こうして求められたデータを用い、印刷部(106)で印刷を行う。また、これら処理フローを特開平11-339032のようなbit拡張技術を用いればより階調性に優れた印刷を行うことが可能である。
【0021】
以下ではモノクロモードで印刷することを想定している。図4は後段処理のテーブルである。本来、後段処理テーブルは3次元であるが、ここではモノクロモードを想定した例を示すため、R=G=B となるような1次元の図を示す。前記した特願2004-024841 の技術ではモノクロ写真においてBKの記録材を支配的に使用し、調色成分としてC、M、Y の記録材の1つもしくは2つを用いることによって高画質なプリントを達成している。よってC、M、Y の記録材の使用量は黒記録材に比べて極端に少ない。本例ではBKを支配的に使用し、調色成分としてYを使用する。
【0022】
図2はγ補正(104)の1次元テーブルの内容をグラフとして表したものである。1次元テーブルの作成方法は、特公平8−2659号公報や特開2004-104436公報などに詳しく記載されているため、その詳細は省略する。
【0023】
図2のグラフの横軸は、後段色変換処理(103)から出力されてγ補正へ入力された色分解データであり、ここでは0〜255の256階調を表現可能なデータとする。
【0024】
グラフの縦軸はγ補正(104)の出力であり、量子化処理(105)へ渡すデータである。ここで出力は0〜4080までの4081階調の表現が可能であるものとする。
【0025】
ところで、図1の画像処理フローのそれぞれが持っている量子化テーブル、γ補正テーブル、後段テーブル、前段テーブルなどの設計は通常、処理フローと逆方向に作成される。つまり、量子化テーブルが最初に設計され、完成すると次はγ補正テーブルを設計し、次に後段テーブル、前段テーブルの順に設計される。これは後のフローのテーブルで決定された事項は前のフローでは絶対に覆すことが出来ないためである。例えばγ補正の信号値は0〜4080であり、量子化処理へ最大で4080まで渡すことができるが、仮にγ補正テーブルで最大値を3968と設定した場合は後段色変換処理でどれだけ頑張っても量子化処理へは最大値を渡すことが出来ないのである。
【0026】
図4は後段処理テーブルを表したものであり、本例ではBKのみで印字すると目標としていたグレーの色味よりも青味なのでYを調色成分として使用した。BKが支配的に使用され、Yは単なる調色成分であるため、Yは後段処理の信号値で最大70までしか使用されなかった。
【0027】
図2はγ補正テーブルを表したものである。ここで図4の後段処理フローを通ってきた信号値は図2の横軸に対応する。後段信号値のYは最大で70までしか使用されないため、γ補正のYの出力は最大で810となる。このとき、後段処理では0〜255の256階調があるのにも関わらず、0〜70の71階調しか使用することが出来ない。
【0028】
以下に図面を参照して本発明における実施例を説明する。
【実施例1】
【0029】
本実施例は、上記の従来技術例のシステム上で量子化テーブル、γ補正テーブル、後段テーブルの設計を行った後に行われる。よって、本実施例では上記の従来技術例と同じく、図6に示すような印刷モード選択および印刷のフローと図1に示すような画像処理フローを具備し、モノクロモードでの出力を行う。各処理部の説明は従来技術例と同じであるため省略する。また、本実施例でもBKを支配的に使用し、調色成分としてYを用いる。
【0030】
図2は上記従来技術例のγ補正テーブルを表すものであり、図4はその後段テーブルを表すものである。ここで、この図2のγ補正テーブルと図4の後段テーブルの組み合わせを「従来のテーブル組み合わせ」と呼ぶことにし、本実施例ではすでにこれらのテーブルを従来技術および公知の方法で設計してあることを想定している。
【0031】
この「従来のテーブル組み合わせ」では、Yの後段信号値は最大で70までしか使用されないため、Yのγ補正の出力は最大で810となる。このとき、後段処理では0〜255の256階調があるのにも関わらず、0〜70の71階調しか使用することが出来ない。そこで新たに(図2では4080である)γ補正テーブルのYの最大値を810になるように、γ補正テーブルを作成する。γ補正テーブルの作成方法は前途したように特公平8−2659号公報や特開2004-104436公報などに詳しく記載されているためその詳細は省略する。すると図3のようなγ補正テーブルが完成する。これに従い後段テーブルも変更する。具体的には「従来のテーブル組み合わせ」で、後段色変換処理への入力(図4の横軸)とγ補正の出力(図2の縦軸)の関係が崩れないように、図3のγ補正テーブルに合わせた後段テーブルを作成する。完成した後段テーブルは図5のようになる。ここで、図3と図5のテーブルの組み合わせを「本技術のテーブル組み合わせ」と呼ぶことにする。
【0032】
例えば、「従来のテーブル組み合わせ」で前段色変換処理から入力される信号値(図4の横軸)が150だった場合、後段色変換処理の出力(図4の縦軸、同時に図2の横軸)は32であり、γ補正の出力(図2の縦軸)は380である。
【0033】
同様に、「本技術のテーブル組み合わせ」で、前段色変換処理から入力される信号値(図5の横軸)が150だった場合、後段色変換処理の出力(図5の縦軸、同時に図3の横軸)は128であり、γ補正の出力(図3の縦軸)は380であり、後段色変換処理の入力が150、γ補正の出力が320という関係は崩れていない。もしもγ補正テーブルを作り直す際、都合良く380という数値がなければその近似値となるような後段テーブルにすればよい。ここで、本発明のポイントは、作り直すのはBK以外の記録材(本実施例ではY)についてであり、BKについてはγ補正テーブル、後段テーブル共に変更しないところにある。
【0034】
以上のような後段テーブルの作り方の例を説明すると、まず「従来のテーブル組み合わせ」の前段色変換処理から入力される信号値(図4の横軸)とγ補正の出力(図2の縦軸)の相関を2次元のマトリックスとして書き出す。次に、最大値を変更して新たに作成されたγ補正テーブル(図3)の出力(図3の縦軸)が「従来のテーブル組み合わせ」のγ補正の出力(図2の縦軸)と一致(もしくは近似)するような後段色変換処理信号値を前記マトリックスより検索する。こうして、図5のような後段テーブルが完成する。
【0035】
こうして出来上がった図5に記載の後段テーブルを元に更に後段テーブルを設計し直す。「従来のテーブル組み合わせ」では後段信号値を0〜70の71階調しか使用できなかったが、新たに作成したγ補正テーブル(図3)を用いると、後段信号を0〜255までの256階調使用できる。つまり、後段テーブルの信号値を1動かしたときのY記録材の使用量の変化が少なくなる。つまり、後段色変換処理部にて従来よりも細かいY記録材の制御が可能となり、より精密なモノクロの色調設計と色再現ができるようになる。更に、すでに従来の技術の後段テーブルで設計されていた色味も、後段色変換処理への入力とγ補正の出力の関係が崩れないようにしているため、ずれはほとんどない。後段テーブル設計時の制御をより精密にすることを可能とした。
【0036】
本実施例ではBK記録材を支配的に使用し、Y記録剤のみで調色したが複数の調色成分(例えばC、Mなど)を用いても、色毎にγ補正テーブル、後段テーブルを上記の手法により設定すれば、同様に対応することが可能である。
【実施例2】
【0037】
実施例1では、γ補正テーブルのYの最大値を810になるようにγ補正テーブルを作成した。本実施例ではこれを810とせず、2割程度余裕を持たして972とする。こうして余裕を持って作成することによって、後段テーブルを再度設計する際、Y記録材の使用量を増やさなくてはならない場合にも対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】画像処理フローを示す図である。
【図2】従来技術のγテーブルを示す図である。
【図3】第1実施形態で用いるγテーブルを示す図である。
【図4】従来技術の後段テーブルを示す図である。
【図5】第1実施形態で用いる後段テーブルを示す図である。
【図6】印刷モード選択および印刷のフローを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の有彩色記録材と黒を含む1つ以上の無彩色記録材を具備し、少なくとも2段階以上の色分解処理工程を具備する画像形成装置における画像処理方法であって、
前記色分解処理工程の第2段階以降で前記有彩色記録材の使用可能量を前記黒の記録材の使用可能量の半分以下に制限することを特徴とした画像処理方法。
【請求項2】
複数の有彩色記録材と黒を含む1つ以上の無彩色記録材を具備し、少なくとも2段階以上の色分解処理工程を具備する画像形成装置における画像処理方法であって、
前記色分解処理工程の第2段階以降で前記有彩色記録材の使用可能量を前記黒の記録材の使用可能量の半分以下に制限し、かつ、前記有彩色記録材の使用可能量を色分解処理工程の第1番目で使用する最大量の2割以内に制限することを特徴とする請求項1記載の画像処理方法。
【請求項3】
複数の有彩色記録材と黒を含む1つ以上の無彩色記録材を具備し、少なくとも2段階以上の色分解処理工程を具備する画像形成装置における画像処理方法であって、
前記色分解処理工程の第2番目以降で前記有彩色記録材の使用可能量を前記黒の記録材の使用可能量の半分以下に制限し、かつ、前記有彩色記録材の使用可能量を色分解処理工程の第1番目で使用する最大量に制限することを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
さらに、出力画像をカラーにするか、モノクロにするかのモード選択をするモード選択手段を具備し、モノクロモードが選択された場合にのみ前記制限を有効とすることを特徴とした請求項1記載の画像処理方法。
【請求項5】
複数の有彩色記録材と黒を含む1つ以上の無彩色記録材を具備し、少なくとも2段階以上の色分解処理工程を具備する画像形成装置であって、
前記色分解処理工程の第2段階以降で前記有彩色記録材の使用可能量を前記黒の記録材の使用可能量の半分以下に制限することを特徴とした画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−86708(P2006−86708A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268311(P2004−268311)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】