説明

画像処理装置、および方法

【課題】 撮像画像の消失線を検出し、消失線がモニタの中央となるように画像位置を補正すること。
【解決手段】 制御装置103は、カメラ101で撮像した自車両前方の画像の画像速度を算出し、算出した画像速度に基づいて、画像上に設定した各検出領域内における速度の分散値を算出する。算出した速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下となる1つの検出領域を抽出して、抽出した検出領域を消失線として検出する。そして、検出した消失線がモニタ104の垂直方向中央と一致するように画像の表示位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたカメラによって撮像された画像を処理する画像処理装置、よび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次のような位置検出装置が特許文献1によって知られている。この位置検出装置では、撮像された画面上で検出された対象物のフレーム間の縦方向の移動量を計測し、その移動量に基づいてピッチング角の変化量を算出する。そして、過去フレームにおけるピッチング変化量に、算出した現フレームのピッチング変化量を加算してピッチング補正量を算出し、画像をピッチングの影響をキャンセルするように補正する。
【0003】
【特許文献1】特開2001−84497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置においては、ピッチング補正量を、各フレームで演算したピッチング角の変化量を加算して算出するため、計測誤差が累積されてピッチング補正量がずれ、画像の補正の際にピッチングの影響を完全にはキャンセルできない可能性があるという問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、撮像手段で撮像した自車両前方の画像を画像処理して、各画素の画像の速度情報を算出し、算出した各画素の画像の速度情報に基づいて、画像上で水平方向に分割された複数の検出領域内における速度の分散値を算出し、算出した速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下となる1つの検出領域を消失線として検出し、検出した消失線の位置が表示手段の垂直方向中央と一致するように画像の表示位置を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、画像の検出領域内における速度の分散値を算出し、算出した速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下となる1つの検出領域を抽出して、抽出した検出領域を消失線として検出し、検出した消失線の位置が表示手段の垂直方向中央と一致するように画像の表示位置を補正するようにした。これによって、消失線上に存在する物体は、ピッチングが発生した場合でも画像上における速度の分散値の絶対値が相対的に小さくなることを考慮して精度高く消失線を検出することができる。また、この消失線の位置が表示手段の垂直方向中央と一致するように画像の表示位置を補正することによって、車両のピッチングに起因する画像の縦方向の位置変化を精度高く補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
―第1の実施の形態―
図1は、第1の実施の形態における画像処理装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。画像処理装置100は車両に搭載され、車両前方を撮像するカメラ101と、カメラ101で撮像した画像を格納する画像メモリ102と、後述する制御装置103と、カメラ101で撮像された自車両前方の画像を表示するためのモニタ104とを備えている。
【0008】
カメラ101は、例えばCCDやCMOSなどの撮像素子を有した高速カメラであり、自車両の走行中に極めて微小な一定時間Δt間隔、例えば2ms間隔(フレームレート=500fps(frame per second))で連続的に車両前方を撮像し、各フレームごとに画像メモリ102に出力する。なお、カメラ101は、図2に示すように車両の室内上部前方に設置され、その視軸向きZは車両前方正面方向に向き、撮像面の水平軸Xは地表面と平行となるように、また撮像面の垂直軸Yは地表面と垂直になるように設定されている。
【0009】
制御装置103は、後述するように、図3に示すカメラ101で撮像した撮像画像3aの速度情報(画像速度)を算出し、算出した画像速度に基づいて撮像画像内の水平方向に延在するカメラ101の設置高に相当する位置、すなわち消失線3bを検出する。そして、検出した消失線3bにおける画像速度に基づいて車両のピッチング角速度を算出する。
【0010】
まず、撮像画像3a上に、消失線3bを検出するための検出領域を設定する。具体的には、図4に示すように撮像画像3aを垂直方向(縦方向)に所定画素分の高さ、例えば1画素分の高さを有し、水平方向に延在する複数の領域4aを検出領域4aとして設定する。すなわち、検出領域4aで撮像画像3aを水平方向に分割する。そして、撮像画像3aに対して、エッジ抽出処理を行い、公知の勾配法やブロックマッチング法を用いてオプティカルフローを算出して、撮像画像3aにおける画素ごとの画像速度を算出する。なお、エッジ抽出処理、およびオプティカルフロー算出処理については、公知の技術のため、説明を省略する。
【0011】
例えば、図5に示すように実空間上で消失線3bよりも上方に存在する物体5a、消失線3b上に存在する物体5b、および消失線3bよりも下方に存在する物体5cが存在する場合には、各物体から算出される画像速度は、図6に示すようになる。すなわち、消失線3bよりも上方に存在する物体5aは、時間の経過とともに自車両が接近して、自車両との距離が短くなるにつれて上向きの画像速度6aが増加していく。また、消失線3bよりも下方に存在する物体5cは、時間の経過とともに下向きの画像速度6cが増加していく。これに対して、消失線3b上に存在する物体5bから算出される画像速度6bは、ピッチングの影響によりカメラ101の視軸向きが変化することによって検出される画像速度を考慮しなければ、自車両との距離に関わらず、常に0となる。
【0012】
これにより、消失線3bよりも上方、または下方に位置する物体においては、実空間上でその存在する地面からの高さが同じであっても、自車両との距離が異なればそれぞれの物体から算出される画像速度も異なることになる。例えば、図7に示すように、物体7aが上述した物体5cよりも自車両から離れた位置に存在し、その地面からの高さが同じ場合には、画像速度は図8に示すようになる。すなわち、自車両から近い位置に存在する物体5cの画像速度8bの方が、自車両から遠い位置に存在する物体7aの画像速度8aよりも大きく(図8では負方向に大きく)算出される。
【0013】
このように、消失線3bよりも上方、または下方に位置する物体からは自車両と各物体までの距離に応じて異なる画像速度が算出されるのに対して、消失線3b上に存在する物体においては、自車両との距離に関わらず、画像速度が通常は0となることを加味して、撮像画像3a内における消失線3bを検出する。すなわち、各検出領域4aごとに、各検出領域4a内で算出された画像速度の分散値を算出する。上述したように、消失線3b上以外の位置に存在する物体は、自車両からの距離に応じて異なる画像速度を有することから、その分散値の絶対値は大きくなる。
【0014】
しかし、消失線3b上に存在する物体から算出される画像速度は通常は0となるため、ピッチングの影響によりカメラ101の視軸向きが変化することによって画像速度が検出されたとしても、消失線3b上以外の位置と比較すれば画像速度の分散値の絶対値は相対的に小さくなる。このことから、算出した画像速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下である検出領域4aを消失線候補領域として抽出する。そして、ここで抽出された消失線候補領域が1つであれば、この抽出した消失線候補領域内に消失線3bが存在すると判断して、消失線3bを検出する。すなわち、このときの消失線候補領域を消失線3bと判断し、撮像画像3a内において消失線3bが存在する位置を検出する。
【0015】
一方、抽出された消失線候補領域が2つ以上あれば、これを1つに絞り込むために、以下のように処理する。すなわち、カメラ101のフレームレートを所定の割合だけ低下させて画像を撮像し、この画像に基づいて上述した処理によって画像速度の分散値を算出する。上述したように、消失線4b位置近傍に存在する物体は、自車両との距離が変化しても画像速度の変化が小さいことから、カメラ101のフレームレートを低下させることによって、複数抽出された消失線候補領域間における画像速度の違いを明確にすることができる。
【0016】
このため、再度算出した画像速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下である検出領域4aを抽出すれば、フレームレートを低下させる前よりも抽出される消失線候補領域は少なくなる。したがって、このときに抽出された消失線候補領域が1つであれば、この抽出した消失線候補領域内に消失線3bが存在すると判断して、撮像画像3a内における消失線3bの位置を検出する。それでもなお抽出された消失線候補領域が2つ以上であれば、消失線候補領域が1つに限定されるまで所定の割合間隔でカメラ101のフレームレートを徐々に低下させていく。
【0017】
以上の処理によって、消失線候補領域が1つだけ抽出されたときに、その消失線候補領域内に撮像画像3aにおける消失線3bが存在すると判断して、撮像画像3a内における消失線3bの位置を検出する。なお、検出領域4aは、撮像画像3a上に縦方向に所定画素の幅を有するように設定されているため、消失線3bが存在する範囲に幅が生じてしまうが、上述したように、検出領域4aを縦方向に微小な高さ、例えば1画素分の高さを有するように設定することによって、消失線3b位置の範囲を限定して、検出領域4aをそのまま消失線3bとして検出しても、精度高く消失線を検出することができる。
【0018】
そして、検出した消失線3bが常にモニタ104の垂直方向の中央になるように、撮像画像3aを補正してモニタ104に表示することで、ピッチングの影響によりカメラ101の視軸向きが変化して上下にずれた状態で撮像された撮像画像3aを補正して、使用者に提示することが可能となる。
【0019】
次に、検出した消失線3b上に存在する各画素の画像速度に基づいて、車両に発生しているピッチングの角速度を算出する。まず、消失線3b上に存在する各画素の画像速度の平均値(平均画像速度)を算出する。上述したように消失線3b上に存在する物体から算出される画像速度は通常は0となるため、消失線3b上に存在する各画素で算出された画像速度は、ピッチングの影響によりカメラ101の視軸向きが変化することによって検出されたものと判断できる。すなわち、上述した平均画像速度を算出することによって、ピッチングに起因する画像速度を算出することができる。
【0020】
そして、算出した平均画像速度に基づいて、撮像画像3a上における単位時間当たりの消失線3bの移動量を算出し、当該移動量とカメラ101のパラメータとを用いて実空間上のカメラ101の視軸向き変位量を算出することにより、単位時間当たりのカメラ視軸角度の変化量、すなわちピッチング角速度を算出する。これによって、車両に発生しているピッチングの状況を特別な計測機器を使用せずに検出することができる。
【0021】
上述した処理をカメラ101で連続して撮像される各フレームに対して実行することによって、撮像画像3aを常にピッチングの影響を排除してモニタ104に表示することができ、さらにピッチング角速度を計測することで、路面の状況に応じて逐次変化するピッチングの状況を検出することが可能となる。
【0022】
なお、第1の実施の形態では、各フレームで上述した消失線3bの検出を行うが、極めて微小な時間間隔Δtごとに撮像される連続したフレーム間では、消失線3bの位置は大きく変化しないことを考慮して、算出した平均画像速度に基づいて、次フレームの消失線3bの存在範囲を予測し、予測した存在範囲内に存在する検出領域4aのみを消失線候補領域として画像速度の分散値を算出する。これによって、消失線3bを検出するための範囲を限定することができ、処理速度を向上することができる。
【0023】
図9は、第1の実施の形態における画像処理装置100の処理を示すフローチャートである。図9に示す処理は画像処理装置100を搭載した車両のイグニションスイッチがオンされることによって画像処理装置100の電源がオンされると、制御装置103によって実行される。ステップS10において、画像メモリ102からの撮像画像3aを取り込んでステップS20へ進む。ステップS20では、撮像画像3a上に消失線検出用の検出領域4aを設定してステップS30へ進む。
【0024】
ステップS30では、撮像画像3aに対して、エッジ抽出処理を行い、公知の勾配法やブロックマッチング法を用いてオプティカルフローを算出して、撮像画像3aにおける画素ごとの画像速度を算出する。その後、ステップS40へ進み、前フレームに対する処理で消失線3bの存在範囲が予測済みであるか否かを判断する。消失線存在範囲が予測済みであると判断した場合には、ステップS50へ進む。ステップS50では、予測済みの範囲内に存在する検出領域4aで画像速度の分散値を算出し、ステップS70へ進む。一方、
消失線存在範囲が予測済みでないと判断した場合には、ステップS60へ進む。ステップS60では、設定した全検出領域4aで画像速度の分散値を算出し、ステップS70へ進む。
【0025】
ステップS70では、算出した分散値の絶対値が所定の閾値未満の検出領域4aを消失線候補領域として抽出する。その後、ステップS80へ進み、抽出した消失線候補領域が1つであるか否かを判断する。抽出した消失線候補領域が1つでないと判断した場合には、ステップS90へ進む。ステップS90では、カメラ101のフレームレートを所定の割合だけ低下させて、ステップS10へ戻り、消失線候補領域が1つに限定されるまで処理を繰り返す。これに対して、抽出した消失線候補領域が1つであると判断した場合には、ステップS100へ進む。
【0026】
ステップS100では、抽出した1つの消失線候補領域を消失線3bとして検出し、ステップS110へ進む。ステップS110では、検出した消失線3bの位置がモニタ104の中心となるように撮像画像3aを補正し、ピッチングの影響を排除した撮像画像3aをモニタ104に表示する。その後、ステップS120へ進み、上述したように消失線3b上における平均画像速度を算出し、算出した平均画像速度に基づいて、カメラ101のパラメータを考慮してピッチング角速度を算出する。その後、ステップS130へ進む。
【0027】
ステップS130では、算出した平均画像速度に基づいて、次フレームの消失線3bの存在範囲を予測し、ステップS140へ進む。ステップS140では、画像処理装置100を搭載した車両のイグニションスイッチがオフされたか否かを判断する。イグニションスイッチがオフされないと判断した場合にはステップS10へ戻り、次フレームの撮像画像3aに対して上述した処理を実行する。一方、イグニションスイッチがオフされたと判断した場合には、処理を終了する。
【0028】
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)撮像画像3a上に設定した各検出領域4bにおいて画像速度の分散値を算出し、画像速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下である検出領域4aを消失線候補領域として抽出し、消失線候補領域が1つであるときに、その消失線候補領域を消失線4bの存在位置であると検出するようにした。これによって、消失線3b上に存在する物体から算出される画像速度は通常は0となることを考慮し、さらにピッチングの影響によりカメラ101の視軸向きが変化することによって画像速度が検出されたとしても、消失線3b上以外の位置と比較すれば画像速度の分散値の絶対値は相対的に小さくなることも考慮して、精度高く消失線4bを検出することができる。
【0029】
(2)抽出された消失線候補領域が2つ以上あるときは、消失線候補領域が1つに限定されるまで所定の割合間隔でカメラ101のフレームレートを徐々に低下させるようにした。これによって、消失線4b位置近傍に存在する物体は、自車両との距離が変化しても画像速度の変化が小さいことを考慮して、カメラ101のフレームレートを低下させることで複数抽出された消失線候補領域間における画像速度の違いを明確にし、消失線候補領域を絞り込むことができる。
【0030】
(3)検出した消失線3bの位置が常にモニタ104の垂直方向の中央になるように、撮像画像3aを補正してモニタ104に表示するようにした。これによって、ピッチングの影響によりカメラ101の視軸向きが変化して上下にずれた状態で撮像された撮像画像を補正して、使用者に提示することが可能となる。
【0031】
(4)算出した平均画像速度に基づいて、次フレームの消失線3bの存在範囲を予測し、予測した存在範囲内に存在する検出領域4aのみを消失線候補領域として画像速度の分散値を算出するようにした。これによって、極めて微小な時間間隔Δtごとに撮像される連続したフレーム間では、消失線3bの位置は大きく変化しないことを考慮して、消失線3bを検出するための範囲を限定することができ、処理速度を向上することができる。
【0032】
(5)算出した平均画像速度に基づいて、撮像画像3a上における単位時間当たりの消失線3bの移動量を算出し、当該移動量とカメラ101のパラメータとを用いて実空間上のカメラ101の視軸向き変位量を算出することにより、ピッチング角速度を算出するようにした。これによって、特別な計測機器を使用せずにピッチング角速度を検出することができる。
【0033】
―第2の実施の形態―
第2の実施の形態では、第1の実施の形態で上述したようにフレームレートが早い状態で撮像された撮像画像よりも遅い状態で撮像された撮像画像からの方が、消失線候補領域を限定して絞り込めることを考慮して、消失線を検出する。なお、図1〜図8の各図については、第1の実施の形態と同様のため、説明を省略する。
【0034】
制御装置103は、撮像画像3a上に検出領域4bを設定した後、カメラ101のフレームレートが早い状態、例えばフレームレート=500fpsの状態で消失線候補領域を抽出し、消失線4bの位置をある程度の範囲に絞りこんでおく。その後、所定の割合、例えば10%フレームレートを低下させて、あらかじめ絞り込んだ範囲内で消失線候補領域を抽出して範囲をさらに絞り込む。これを繰り返していき、フレームレートがあらかじめ設定した閾値まで低下したときに抽出されている消失線候補領域を消失線4bとして検出する。なお、ここでの閾値には、消失線候補領域を1つに絞り込むために十分なフレームレートを設定するものとし、フレームレートをあらかじめ設定した閾値まで低下させたときは、必ず消失線候補領域が1つに絞り込めているものとする。
【0035】
このように、最初は早いフレームレートでおおよその範囲で消失線候補領域を絞り込んで抽出しておき、その後、フレームレートを遅くしてしながら、徐々に消失線候補領域を絞り込んでいくことによって、精度高く消失線4bを検出することが可能となる。
【0036】
図10は、第2の実施の形態における画像処理装置100の処理を示すフローチャートである。図10に示す処理は画像処理装置100を搭載した車両のイグニションスイッチがオンされることによって画像処理装置100の電源がオンされると、制御装置103によって実行される。なお、第1の実施の形態における図9と共通する処理については同じステップ番号を付与し、相違点を中心に説明する。
【0037】
ステップS41において、消失線候補領域が抽出済みであるか否かを判断する。消失線候補領域が抽出済みであると判断した場合には、ステップS51へ進む。ステップS51では、抽出済みの消失線候補領域で画像速度の分散値を算出し、ステップS70へ進む。一方、消失線候補領域が抽出済みでないと判断した場合には、ステップS60へ進んで、撮像画像3a上に設定した全ての検出領域4aで画像速度の分散値を算出する。
【0038】
また、ステップS81では、カメラ101のフレームレートが所定の閾値まで低下したか否かを判断する。カメラ101のフレームレートが所定の閾値まで低下していないと判断した場合には、ステップS90へ進み、所定の割合でフレームレートを低下させる。一方、カメラ101のフレームレートが所定の閾値まで低下したと判断した場合には、ステップS100へ進み、抽出した消失線候補領域を消失線3bとして検出する。
【0039】
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態における効果に加えて、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)カメラ101のフレームレートを所定の割合で低下させていき、消失線候補領域の範囲を絞り込んでいく。そして、フレームレートがあらかじめ設定した閾値まで低下したときに抽出されている消失線候補領域を消失線4bとして検出するようにした。これによって、最初におおよその範囲で消失線候補領域を絞り込んで抽出しておき、その後、徐々に消失線候補領域を絞り込んでいくことができるため、精度高く消失線4bを検出することが可能となる。
(2)フレームレートがあらかじめ設定した閾値まで低下したときに抽出されている消失線候補領域を消失線4bとして検出するにあたって、この閾値に消失線候補領域を1つに絞り込むために十分なフレームレートを設定するようにした。これによって、フレームレートをあらかじめ設定した閾値まで低下させたときは、必ず消失線候補領域を1つに絞り込むことができる。
【0040】
―変形例―
なお、上述した画像処理装置100は以下のように変形することもできる。
(1)上述した第1、および第2の実施の形態では、本発明による画像処理装置100を車両に搭載する例について説明したが、これに限定されず、その他の移動体に搭載してもよい。
【0041】
(2)上述した第1、および第2の実施の形態では、撮像画像に対して、エッジ抽出処理を行い、公知の勾配法やブロックマッチング法を用いてオプティカルフローを算出して、撮像画像における画素ごとの画像速度を算出する例について説明した。しかしこれに限定されず、その他の方法によってオプティカルフローを算出し、撮像画像における画素ごとの画像速度を算出してもよい。
【0042】
(3)上述した第1、および第2の実施の形態では、消失線候補領域を1つに絞り込むため所定の割合でカメラ101のフレームレートを低下させる例について説明した。しかしこれに限定されず、自車両の車速をする車速センサを搭載し、車速センサで検出した車速に応じてフレームレートを変更するようにしてもよい。例えば、自車両が加速するに従ってフレームレートを早め、自車両が減速するに従ってフレームレートを遅くする。これによって、さらに精度高く消失線4bを検出することが可能になる。
【0043】
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。
【0044】
特許請求の範囲の構成要素と実施の形態との対応関係について説明する。カメラ101は撮像手段に、モニタ104は表示手段に相当する。制御装置103は速度情報算出手段、分散値算出手段、消失線検出手段、表示位置補正手段、ピッチング角速度算出手段、予測手段、およびフレームレート変化手段に相当する。なお、この対応は一例であり、実施の形態の構成によって対応関係は異なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】画像処理装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図2】カメラ101の車両への設置例を示す図である。
【図3】カメラ101で撮像した画像の具体例を示す図である。
【図4】撮像画像に検出領域4aを設定した場合の具体例を示す図である。
【図5】消失線と物体との位置関係を示す第1の図である。
【図6】消失線と物体との位置関係に応じて変化する画像速度の具体例を示す図である。
【図7】消失線と物体との位置関係を示す第2の図である。
【図8】自車両との距離に応じて変化する画像速度の具体例を示す図である。
【図9】第1の実施の形態における画像処理装置100の処理を示すフローチャート図である。
【図10】第2の実施の形態における画像処理装置100の処理を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0046】
100 画像処理装置
101 カメラ
102 画像メモリ
103 制御装置
104 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される画像処理装置であって、
自車両前方の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した画像を画像処理して、各画素の画像の速度情報を算出する速度情報算出手段と、
前記速度情報算出手段で算出した各画素の画像の速度情報に基づいて、画像上で水平方向に分割された複数の検出領域内における速度の分散値を算出する分散値算出手段と、
前記分散値算出手段で算出した速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下となる1つの前記検出領域を消失線として検出する消失線検出手段と、
前記消失線検出手段で検出した消失線の位置が表示手段の垂直方向中央と一致するように画像の表示位置を補正する表示位置補正手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記消失線検出手段で検出した画像上の消失線上に存在する各画素の画像の速度情報に基づいて、車両のピッチング角速度を算出するピッチング角速度算出手段をさらに備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
前記消失線検出手段で検出した画像上の消失線上に存在する各画素の画像の速度情報に基づいて、次フレームで消失線が存在する範囲を予測する予測手段をさらに備え、
次フレームの画像に対しては、
前記分散値算出手は、前記予測手段で予測した範囲の検出領域内における速度の分散値を算出し、
前記消失線検出手段は、前記予測手段で予測した範囲の検出領域内から前記消失線を検出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記撮像手段のフレームレートを変化させるフレームレート変化手段をさらに備え、
前記消失線検出手段は、前記フレームレート変化手段を制御して、前記撮像手段のフレームレートを変化させながら前記消失線を検出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置において、
前記消失線検出手段は、前記分散値算出手段によって算出された前記速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下となる検出領域が複数抽出される場合には、前記フレームレート変化手段を制御して前記撮像手段のフレームレートを低下させて、前記速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下となる検出領域を1つに限定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の画像処理装置において、
前記消失線検出手段は、前記フレームレート変化手段を制御して前記撮像手段のフレームレートを徐々に低下させながら、前記分散値算出手段によって算出された前記速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下となる検出領域を1つに絞り込んでいくことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記フレームレート変化手段は、自車両の車速に応じて前記撮像手段のフレームレートを変化させることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
撮像手段で撮像した自車両前方の画像を画像処理して、各画素の画像の速度情報を算出し、
算出した各画素の画像の速度情報に基づいて、画像上で水平方向に分割された複数の検出領域内における速度の分散値を算出し、
算出した速度の分散値の絶対値が所定の閾値以下となる1つの前記検出領域を消失線として検出し、
検出した消失線の位置が表示手段の垂直方向中央と一致するように画像の表示位置を補正することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−174377(P2006−174377A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367926(P2004−367926)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】