画像処理装置、インクジェット記録装置および画像処理方法
【課題】インクジェット記録装置において、記録色とブロンズ色の違いに起因した画質低下を抑制する。
【解決手段】入力信号値に対応する色それぞれに対して色相差Δθs−dが最小となるような透明インクの使用量を設定する。色相差Δθs−dが最小となる透明インクの使用量は、入力信号値に対応する色対して使用される有色インクの使用量よって異なる。例えば、色Dで、色相差Δθs−dが最小となる透明インクの使用量は15%であるが、色Eでは25%、色Fでは20%と、色Dより多くの透明インクを必要とする。そこで、色相差θs−dが目標範囲内Δθs−d≦30となる最小の透明インク使用量を求め、その使用量とその使用量に対応するインク色データを出力値とする色変換テーブルを設定する。このような関係の色変換を行うことにより、ブロンズ色が記録色に近い色と認識され、その結果、好ましくないブロンズが低減されて画質の低下を抑制することができる。
【解決手段】入力信号値に対応する色それぞれに対して色相差Δθs−dが最小となるような透明インクの使用量を設定する。色相差Δθs−dが最小となる透明インクの使用量は、入力信号値に対応する色対して使用される有色インクの使用量よって異なる。例えば、色Dで、色相差Δθs−dが最小となる透明インクの使用量は15%であるが、色Eでは25%、色Fでは20%と、色Dより多くの透明インクを必要とする。そこで、色相差θs−dが目標範囲内Δθs−d≦30となる最小の透明インク使用量を求め、その使用量とその使用量に対応するインク色データを出力値とする色変換テーブルを設定する。このような関係の色変換を行うことにより、ブロンズ色が記録色に近い色と認識され、その結果、好ましくないブロンズが低減されて画質の低下を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、インクジェット記録装置および画像処理方法に関し、詳しくは、記録画像において観察されるブロンズ現象に起因した画質低下を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録において、光沢系の記録媒体に対し顔料インクを用いた場合に特に顕著となる現象として、記録物の表面に映りこんだ照明像に色が付く現象(以下、ブロンズ現象)がある。例えば、シアン顔料を用いた場合、照明像は赤色に着色し、見た目の画質を大きく損なう一因となる。このようなブロンズ現象を抑制するための方法として、顔料粒子が記録媒体表面に露出しないように、記録面に透明フィルムをラミネートする方法が知られている。しかし、ラミネート機構を持つことによる装置コストアップや、ラミネート作業に多くの時間がとられる等の問題が発生する。
【0003】
これに対し、特許文献1には、インクの使用比率を制御してブロンズ現象を抑制する技術が記載されている。入力画像の明度、使用インクの使用比率からブロンズ現象の発生の有無を判定し、判定結果に応じてインクの使用比率を変更することにより、ブロンズ現象を抑制する方法である。
【0004】
一般に、記録物を観察する時、観察者は、光源から記録物に照射された光の反射光を観察する。そして、その観察される色は観測角度によって異なる。図1は、記録物を異なる2つの角度から観察した場合の2種類の反射光の違いを説明するための図である。図1において、A方向で観察される反射光は、光源に対し正反射方向から観察した場合の正反射光であり、記録物に映り込んだ光源像が観察される。一方、B方向で観察される反射光は、記録物の内部を通過し反射した反射光、つまり拡散光であり、色材によって再現された色(以下、記録色)が観察される。
【0005】
このような2種類の観察のうち、A方向での観察では、光源の色と異なる色の光源が映り込んでいるように認識されることがありこれがブロンズ現象として知覚される。また、このように光源が映りこむ場合だけでなく、図1に示す2種類の反射光が同時に観察されて、例えば画像が本来の記録色と異なった色に見えることがあり、これもブロンズ現象として認識されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−138555公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、本来の記録色と、ブロンズ現象によって生じる色(以下、ブロンズ色)が異なると、そのブロンズ色は好ましくない色として知覚され、記録物の画質を低下させることになる。これに対し、特許文献1では、上述したようにインクの使用比率を変更することによってブロンズ現象を抑制するが、ブロンズ色の記録色との違いによる画質低下を十分に抑制することはできない。すなわち、ブロンズ色ないしその発色を抑制して目立たないものとしても、記録色との違いが大きい場合には、この違い自体が顕著に認識されて画質低下の要因となる。
【0008】
本発明は、この観点からなされたものであり、特に、記録色とブロンズ色の違いに起因した画質低下を抑制することが可能な画像処理装置、インクジェット記録装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明では、画像処理装置において、色信号を、記録に用いるインクの使用量に対応したインク色信号に変換する色変換手段であって、前記色信号に基づいて記録される画像の記録色と、前記記録色が正反射光を含む反射光によって観測されるブロンズ色と、の違いに応じて、前記ブロンズ色を変更するための処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換する色変換手段、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成によれば、記録色とブロンズ色の違いに起因した画質低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】記録物を異なる2つの角度から観察した場合の2種類の反射光の違いを説明するための図である。
【図2】ブロンズ現象を測定するための測定システムを模式的に示す図である。
【図3】記録画像を図2に示す測定システムによって測定して得られた正反射光が示す色の二例を、a*b*平面上にプロットして示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の主要部構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示す記録ヘッド1における8色のインクを吐出するノズル列(ノズル群)の配列を模式的に示す図である。
【図6】図4に示すインクジェット記録装置における制御構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る、インクジェット記録装置およびホスト装置の画像処理の構成を示すブロック図である。
【図8】N値データから2値データを得るためのドット配置パターンを示す図である。
【図9】本発明の実施形態で用いるマスクパターンの一例を示す図である。
【図10】図9に示したマスクパターンを用いたマルチパス記録動作を説明する図である。
【図11】(a)および(b)は、図2で説明した測定システムによって測定された記録物の記録色とブロンズ色との関係の一例を説明する図である。
【図12】透明インクの使用量に対するブロンズ色の変化を説明するための図である。
【図13】(a)〜(d)は、透明インクの使用量に応じてブロンズ色が変化する要因を用いて説明する図である。
【図14】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態および比較例における色変換テーブルの特徴を説明するため図である。
【図15】図14(b)に示すCL量一定型の色変換テーブルを用いて記録した場合の記録物のブロンズ色について説明する図である。
【図16】(a)および(b)は、有色インクの記録で使用するマスクパターン、および透明インクの記録で使用するマスクパターンの一例をそれぞれ示す図である。
【図17】(a)および(b)は、図16(a)および(b)に示したマスクを用いたマルチパス記録動作を説明する図である。
【図18】(a)および(b)は、本発明の第2の実施形態に係る、ブロンズ色の変動および透明インクによるブロンズ色の彩度低下を説明する図である。
【図19】第2実施形態の色変換テーブルを示す図である。
【図20】本発明の第3実施形態に係る、入力信号値および黒点のブロンズ色をa*b*面において示す図である。
【図21】第3実施形態に係る、記録物表面の有色インク層と透明インク層の様子を示す模式図である。
【図22】第4実施形態におけるブロンズ測定と記録色測定のシステムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
(ブロンズの評価方法)
ブロンズ現象は、例えば、村上色彩技術研究所の三次元変角分光測色システム(GCMS−4)を用いて測定することができる。図2は、この測定システムを模式的に示す図である。図2に示すように、記録画像に対してθ=45°の方向から光を照射し、逆方向のθ=45°の方向で正反射光を受光する。そして、この受光した正反射光の分光強度を測定し、測定された分光強度より正反射光の彩度を算出する。正反射光の色付きが少ないほど正反射光の彩度は小さくなる。
【0014】
図2において、B0001は照明の光源を示し、記録媒体B0003に記録された画像を照明する。B0002は光検出器を示し、記録媒体B0003上の画像からの反射光を検出する。光検出器B0002は、記録媒体B0003の法線方向に対して照明光源と反対側に同一角度θ傾いた方向、すなわち、正反射方向に沿って位置する。B0004は記録媒体B0003を固定する固定台を示す。B0005は光検出器B0002が測定する被測定部を示す。B0006は外部からの光を遮蔽するための遮光カバーを示す。
【0015】
観測した正反射光から、その色の特性を算出する方法は次のとおりである。光検出器B0002によって測定された、記録媒体B0003上の画像からの正反射光の分光強度は、
【0016】
【数1】
【0017】
で表され、これに基づいて正反射光の三刺激値XxYxZxを算出する。そして、この正反射光の三刺激値と、照明光源B0001からの光の三刺激値とから、JIS Z 8729に基づいて、上記正反射光のL*a*b*値、すなわち、上記正反射光が示す色を求める。
【0018】
図3は、ある記録画像を上述の測定方法によって測定して得られた正反射光が示す色の二例を、a*b*平面上にプロットして示す図である。図3において、色(1)は、ブロンズ現象が比較的目立つ色であり、色(2)は、ブロンズ現象が比較的目立たない色である。色(1)のC*(1)、色(2)のC*(2)は、それぞれの色のL*a*b*値から彩度C*=√(a*^2+b*^2)を計算した結果を示すものであり、この値が大きいほど、ブロンズ色の彩度が大きくブロンズ現象として目立ちやすいということを示している。また、図3において、θ1、θ2は、ブロンズ値のL*a*b*の値からθ=tan−1(a*/b*)として求められる色相である。
【0019】
このように、本実施形態は、正反射光について、a*b*平面状で、そのブロンズ色の色相や彩度を求めることにより、ブロンズ色の特定を行う。一方、画像の記録色は、拡散光を測定することにより、記録画像の本来の色である記録色を特定する。
【0020】
(装置構成)
図4は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の主要部構成を示す斜視図である。図4において、給紙トレイ12から記録媒体S2を記録部に給紙し、この記録媒体を矢印Bで示す方向に間欠的に搬送しながら記録媒体上に画像を記録し、記録が完了すると排紙トレイに排紙する。記録部において、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド1は、矢印A1、A2方向にガイドレール4に沿って往復移動しながら記録ヘッドのノズルからインクを吐出し、記録媒体S2上に画像を形成する。記録ヘッド1は、それぞれ異なった色のインクに対応した複数のノズル群を有している。記録ヘッド1は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、淡シアン(LC)、淡マゼンタ(LM)、ブラック(K)、グレー(Gy)の有色インクと、透明インク(CL;本明細書では処理インクとも言う)の計8色のインクを吐出するノズル群を備える。これら各色のインクは、対応するそれぞれのインクタンク(不図示)に貯留されており、吐出動作に伴って記録ヘッド1に供給される。
【0021】
図5は、記録ヘッド1における8色のインクを吐出するノズル列(ノズル群)の配列を模式的に示す図である。記録ヘッド1における各インクのノズルからの吐出量は、全て略同一の3plである。これら8色のインクのうち、透明インクCLは、後述されるように、主に、各色インクが着弾して形成する画像の本来の記録色とブロンズ色との違いを小さくするために用いられる。すなわち、この透明インクは、インクの被覆層を形成し、この被覆率や透明インク層の厚みを制御することによって、記録色とブロンズ色との違いを小さくする。
【0022】
再び図4を参照すると、インクタンクと記録ヘッド1とは一体に形成されてヘッドカートリッジ6を構成し、ヘッドカートリッジ6はキャリッジ5に着脱自在に搭載される。また、キャリッジモータ11の駆動力をタイミングベルト17によってキャリッジ5に伝達することにより、キャリッジ5を矢印A1、A2方向(主走査方向)にガイド軸3とガイドレール4に沿って往復移動させる。このキャリッジ移動の際に、キャリッジ位置はキャリッジ5に設けられたエンコーダセンサ21によりキャリッジの移動方向に沿って備えられたリニアスケール19を読み取ることにより検出される。そして、この往復移動の間に記録媒体上への記録が行われる。このとき、記録媒体S2は、搬送ローラ16とピンチローラ15とによって挟持されつつ、プラテン2上を搬送される。
【0023】
この記録動作において、キャリッジ5がA1方向に1走査分の記録を行うと、搬送モータ13によってリニアホイール20を介して搬送ローラ16が駆動される。そして、記録媒体S2が副走査方向である矢印B方向に所定量搬送される。その後、キャリッジ5がA2方向に走査しながら、記録媒体S2に記録が行なわれる。ホームポジションには図4に示されているように、ヘッドキャップ10と回復ユニット14が備えられ、必要に応じて間欠的に記録ヘッド1の回復処理を行う。
【0024】
上記説明した動作を繰り返すことにより、記録媒体の1枚分の記録が終了すると、記録媒体は排紙され、1枚分の記録が完了する。
【0025】
図6は、本実施形態のインクジェット記録装置における制御構成を示すブロック図である。コントローラ100は主制御部であり、例えばマイクロ・コンピュータ形態のASIC101、ROM103、RAM105を有する。ROM103は、ドット配置パターン、マスクパターン、その他の固定データを格納している。RAM105は、ホスト装置からの画像データを展開する領域や作業用の領域等を設けている。ASIC101がROM103からプログラムを読み出し、画像データに基づく記録媒体への記録動作を制御する。
【0026】
ホスト装置110は、画像データの供給源であり、記録に係る画像等のデータの作成、処理等を行うコンピュータとすることができる他、画像読み取り用のリーダ部等の形態とすることができる。このホスト装置110によって、図7にて後述される、本発明の一実施形態に係る色変換処理を含む画像処理が行われる。そして、この画像処理によって生成された画像データや、その他のコマンド、ステータス信号等は、インタフェース(I/F)112を介して、記録装置のコントローラ100と送受信される。
【0027】
記録装置において、ヘッドドライバ140は、記録データ等に基づいて記録ヘッド1を駆動するドライバである。モータドライバ150はキャリッジモータ11を駆動し、モータドライバ160は搬送モータ13を駆動する。
【0028】
(インク構成)
ここで、本実施形態のインクジェット記録装置で使用される、顔料インクを構成する各成分について説明する。
【0029】
水性媒体
本発明で使用するインクには、水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体を用いることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として3.0質量%以上50.0質量%以下とすることが好ましい。又、インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として50.0質量%以上95.0質量%以下とすることが好ましい。
【0030】
水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。メタノール、エタノール、プロパノール、プロパンジオール、ブタノール、ブタンジオール、ペンタノール、ペンタンジオール、ヘキサノール、ヘキサンジオール、等の炭素数1〜6のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類。アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の平均分子量200、300、400、600、及び1,000等のポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数2〜6のアルキレン基を持つアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等。又、水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。
【0031】
顔料
顔料は、カーボンブラックや有機顔料を用いることが好ましい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下とすることが好ましい。
【0032】
ブラックインクは、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックを顔料として用いることが好ましい。具体的には、例えば、以下の市販品等を用いることができる。レイヴァン:7000、5750、5250、5000ULTRA、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−II、1170、1255(以上、コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:330R、400R、660R、モウグルL、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、2000、ヴァルカンXC−72R(以上、キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上、デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)。又、本発明のために新たに調製したカーボンブラックを用いることもできる。勿論、本発明はこれらに限定されるものではなく、従来のカーボンブラックを何れも用いることができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を顔料として用いてもよい。
【0033】
有機顔料は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の水不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料。インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
又、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、例えば、以下のものを用いることができる。C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185等。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61、71等。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192等。同、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272等。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50等。C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64等。C.I.ピグメントグリーン:7、36等。C.I.ピグメントブラウン:23、25、26等。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
分散剤
上記したような顔料を水性媒体に分散するための分散剤は、水溶性を有する樹脂であれば何れのものも用いることができる。中でも特に、分散剤の重量平均分子量が1,000以上30,000以下、更には3,000以上15,000以下のものが好ましい。インク中の分散剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上5.0質量%以下とすることが好ましい。
【0036】
分散剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。スチレン、ビニルナフタレン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、又はこれらの誘導体等を単量体とするポリマー。尚、ポリマーを構成する単量体のうち1つ以上は親水性単量体であることが好ましく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等を用いても良い。又は、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂を用いることもできる。これらの樹脂は、塩基を溶解した水溶液に可溶である、即ち、アルカリ可溶型であることが好ましい。
【0037】
界面活性剤
インクセットを構成するインクの表面張力を調整するためには、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等の界面活性剤を用いることが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール類、アセチレングリコール化合物、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物等を用いることができる。
【0038】
その他の成分
インクセットを構成するインクは、前記した成分の他に、保湿性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタン等の保湿性固形分を含有してもよい。インク中の保湿性固形分の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上20.0質量%以下、更には3.0質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。又、インクセットを構成するインクは、前記した成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及び蒸発促進剤等の種々の添加剤を含有してもよい。
【0039】
次に、本実施形態で用いるインクをより具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、下記実施形態によって限定されるものではない。尚、文中「部」、及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0040】
樹脂水溶液Aの調製
酸価:288mgKOH/g、重量平均分子量10,000、モノマー組成 スチレン/n−ブチルアクリレート/アクリル酸=23/37/37のランダム共重合体を水酸化カリウムで1当量に中和した。その後、樹脂濃度が10.0%となるように水で調整して、樹脂水溶液Aを得た。
【0041】
樹脂水溶液Bの調製
樹脂水溶液Aで用いた、酸価200mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン/アクリル酸のランダム共重合体に替えて、酸価:288mgKOH/g、重量平均分子量10,000、モノマー組成 スチレン/n−ブチルアクリレート/アクリル酸=23/37/37のランダム共重合体を用いた以外は樹脂水溶液Aの調製同様にして樹脂水溶液Bを調製した。
【0042】
顔料分散液1〜4の調製
以下に示す手順により、顔料分散液1〜4を調製した。<C.I.ピグメントレッド122を含む顔料分散液1の調製>
顔料(C.I.ピグメントレッド122)10部、樹脂水溶液A20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散する。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が10質量%である顔料分散液1を得る。
【0043】
<C.I.ピグメントブルー15:3を含む顔料分散液2の調製>
顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)10部、樹脂水溶液A20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて5時間分散する。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が10質量%である顔料分散液2を得る。
【0044】
<C.I.ピグメントイエロー74を含む顔料分散液3の調製>
顔料(C.I.ピグメントイエロー74)10部、樹脂水溶液A20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて1時間分散する。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が10質量%である顔料分散液3を得る。
【0045】
<C.I.ピグメントブラック7を含む顔料分散液4の調製>
カーボンブラック顔料(C.I.ピグメントブラック7)10部、樹脂水溶液A20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散する。尚、分散する際の周速は、顔料分散液1を調製する際の2倍とした。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去する。更に、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が10質量%である顔料分散液4を得る。
【0046】
透明インクの調製
表1に示した各成分を混合し、十分攪拌した後、ポアサイズ0.8μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、有色インク1〜7と透明インクを調製する。
尚、透明インクCLの組成は上記に限らない。透明インクCLは紙面に残存する顔料色材を被覆しブロンズを抑制するためのインクであり、同様の効果が得られるならば、樹脂の種類や樹脂添加量が異なってもよい。
【0047】
【表1】
【0048】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態は、透明インクを用いることによって記録する画像の記録色とブロンズ色との色相角の違いを小さくし、ブロンズ色が本来の記録色と異なることによる記録画質の低下を抑制する技術に関する。具体的には、色変換に用いるテーブルの内容を、各色インクデータの値に対して、透明インクデータの値を上記色相角が最小になるように定めるものである。
【0049】
図7は、本発明の一実施形態に係る、インクジェット記録装置およびホスト装置の画像処理の構成を示すブロック図である。図7において、901はホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)上のアプリケーションを示す。アプリケーション901からRGB各8bit、計24btの画像データが色補正部902に入力する。色補正部902は、入力RGBデータを異なるR’G’B’データに変換するものであり、主に、アプリケーション901のRGBデータで再現できる色域を、記録装置で再現できる色域に変換する処理を行う。この変換処理は、一般には、3次元LUT(ルックアップテーブル)と補間演算を用いて行われる。LUTのテーブル内容は、色補正の種類によって複数種類用意されており、ユーザの選択およびアプリケーションの設定によって、適宜選択、設定される。例えば、写真画像を出力したい場合には写真調のLUTが用いられ、グラフィック画像を出力したい場合にはグラフィック調のLUTが選択される。
【0050】
色補正部902から出力されるR’G’B’の24bitデータは、色変換部903に入力し、R’G’B’データ(色信号)を、インクジェット記録装置で用いるインク色データ(インク色信号)に変換する。本実施形態では、このインク色データは、C、M、Y、LC、LM、K、Gy、CLの8色である。この色変換部からの出力信号は、各色8bit、すなわち8色計64bitの出力データとなる。本発明の一実施形態に係る、色変換部で用いる変換テーブルの内容については後述する。
【0051】
ハーフトーン処理部904は、入力した各色8bit=256値の多値信号に対して、誤差拡散等の擬似中間調処理(ハーフトーニング処理)を行い、256値よりも少ないN値のデータに変換する。このN値は、例えば、3〜16値程度の各色2〜4bitのN値に変換する。本実施形態では、N=5値に変換するが、これに限るものではなく、2値に変換しても良いことはもちろんである。
【0052】
以上の各処理部はホスト装置において構成され、以下に説明する各処理部は記録装置において構成される。すなわち、記録装置において、プリントバッファ905は、ホスト装置(PC)から転送されたハーフトーニング処理によるN値のインク色データを格納する。ドットパターン展開部906は、プリントバッファ905に格納されたN値データが示す値に対応したドット配置パターンを選択し、その選択した配置のドットデータ(2値データ)を得る。図8は、このドット配置パターンを示す図である。同図に示すように、入力される5値データが示す5つの値(レベル)0〜4に応じたドット配置パターンが定められている。具体的には、2×2画素に対して、ドット記録(“1”;黒で塗りつぶされた画素)とドット非記録(“0”;白の画素)が、上記5つのレベルごとに定められている。そして、例えば、N=3の場合は、レベル3の配置パターンが選択されて3つのドット記録と1つのドット非記録が2×2画素の記録データとして得られる。
【0053】
マスク処理部907は、記録ヘッドを同一記録領域に対して複数回走査してその記録領域の記録を完成する、マルチパス記録に用いる記録データを生成する。具体的には、間引きパターン(以下、マスクパターンという)を用いて、上記同一領域の記録データを複数回の走査それぞれのデータに分割する処理を行う。図9は、マスクパターンの一例を示す図である。図9に示す例のマスクパターンは、4回の走査で記録を完成させる、4パスのマルチパス記録用のマスクパターンを示している。このマスクパターンは、対応する画素の記録データをONとするマスク画素を黒ドットで、OFFとするマスク画素を白ドットで表している。縦横の画素サイズは768×768pixelで、縦方向は記録ヘッドのノズル列方向、横方向は記録ヘッドのスキャンする走査方向を表している。さらに縦方向の画素サイズ768は記録ヘッドのノズル数768ノズルと対応している。図の破線で示すように、縦方向768pixelを1/4の192pixelに分割した際に、それぞれ1〜4パスのマスクパターンとなり、かつこれら1〜4パスのマスクパターンはそれぞれ補間関係にある。本例では1〜4パスのマスクパターンは、記録をONとするマスク画素の割合であるデューティーがほぼ同じデューティー、すなわち約25%デューティーである。
【0054】
図10は、図9に示したマスクパターンを用いたマルチパス記録動作を説明する図である。図10において、1201〜1204は記録ヘッド(本図では簡単のため1色の記録ヘッドで説明)を示す。図10は、4パスのマルチパス記録を行う際に、走査ごとに記録用紙が記録ヘッドのノズル配列の1/4のノズルピッチ分順次搬送され、記録用紙の同一領域に対して記録ヘッドが相対的に位置がずれていく様子を示すものである。また、1205〜1209はマスクパターンを示し、記録ヘッドの上記相対移動に伴う記録ヘッドのノズル列に対応させて示すものである。記録を完成するある記録領域(図において斜線で示される領域)に着目すると、第1走査(1パス目;N+1パス)では、マスクパターンの1パス目用領域(図9参照)で間引かれた記録データに基づいて記録する。次の第2走査(2パス目;N+2パス)では、マスクパターンの2パス目用領域で間引かれた記録データに基づいて、1パス目とは1/4のノズルピッチ分ずれたノズルで記録する。以降同様に第3走査、第4走査を行い記録を完成する。
【0055】
次に、本発明の第1の実施形態に係る、記録色とブロンズ色の色相差に応じて透明インクを用いる色変換テーブルについて説明する。
【0056】
先ず、有色インクのみ、つまり処理インク以外のインクで記録した場合の記録物の記録色とブロンズ色の関係を説明する。図11(a)および(b)は、図2で説明した測定システムによって測定された記録物の記録色とブロンズ色との関係の一例を説明する図である。詳しくは、入力信号(R、G、B)が、A(0,64,64)、B(64,0,64)、C(64,64,0)である場合の、それぞれの色(a*,b*)、色相(θs,θd)、および色相差(θs−d)を示している。入力信号A〜Cについて主に使用される有色インクは、ブラック、グレーインクの他に、信号A(0,64,64)ではシアンインク、信号B(64,0,64)ではマゼンダインク、信号C(64,64,0)ではイエローインクである。
【0057】
図11(a)に示すように、信号C(64,64,0)の場合、記録色の色相はθd=88、ブロンズ色の色相はθs=80であり、どちらもイエロー色であり、その色相角の差(色相差)はΔθs−d=8である。一方、信号A(0,64,64)の場合、記録色の色相はθd=226のシアン色、ブロンズ色の色相はθs=17のマゼンダ色であり、色相角の差はΔθs−d=151である。このように、信号A(0,64,64)の場合、信号C(64,64,0)の場合の色相差比べて大きい。このような記録色とブロンズ色との色相差が大きく異なると、好ましくないブロンズ色として知覚される。特に、信号A(0,64,64)の場合は、ブロンズ色の彩度C*_sが、信号C(64,64,0)の場合に比べて大きく、好ましくないブロンズ色が顕著と言える。
【0058】
このように、ブロンズ色は、入力信号値に対応して使用される有色インクの種類や使用量によって決まり、ブロンズ色の色相θsや彩度C*_s、記録色との色相差Δθs−dによって見た目の画質が異なる傾向がある。
【0059】
次に、有色インクに加え、透明インクを用いて記録する場合の、記録物の記録色とブロンズ色の関係を説明する。
【0060】
図12は、透明インクの使用量に対するブロンズ色の変化を説明するための図である。図12に示すように、有色インクの上に記録する透明インクの使用量を増やしていくと、有色インクのみのブロンズ色(図12において黒丸印)から、時計回りの軌跡を描きながらブロンズ色が変化する。
【0061】
図13(a)〜(d)は、透明インクの使用量に応じてブロンズ色が変化する要因を用いて説明する図である。図13(a)は、有色インク層の表面で光が正反射する様子を示している。なお、説明を簡易にするために、有色インク層を透過し記録媒体表面で反射する光は省略する。これに対し、図13(b)は有色インク層の上に均一に透明インク層を記録した場合を示している。この場合、透明インク層1001の表面で反射する光1003と、透明インク層1001を透過後にシアン有色インク層1002の表面で反射し透明インク層1001から出射する光1004が存在する。光1004の光路長は、透明インク層1001を通過する分、光1003より長くなる。この光路長差に基づく光の位相のずれによって、特定の波長がその強度を強めあったり弱めあったりするいわゆる干渉が発生し、ブロンズ色が異なることになる。透明インクの使用量を変えると、透明インクによって被覆される有色インク層の被覆率や、透明インク層の厚みが変化する(図13(c)、(d)参照)。これによって干渉の状態が変化し、その結果、ブロンズ色が変化する。
【0062】
そこで、本発明の第1の実施形態は、上述した透明インクの使用量によってブロンズ色を制御することにより、入力信号値に対する記録色とブロンズ色との色相差を小さくし、ブロンズ現象による画質の低下を抑制する。
【0063】
図14(a)〜(c)は、本実施形態における色変換テーブルの特徴を説明するため図であり、入力信号値とインクの使用量との関係からなる色変換テーブルの内容を示している。図14(a)は、本実施形態の色変換テーブルと比較するための、透明インクは用いずに有色インクのみを使用する従来の色変換テーブルの一例を示す図である。図14(a)は、入力信号値R’G‘B’に対応した、シアン(0,255,255)、マゼンタ(255,0,255)、イエロー(255,255,0)のを通るライン上のそれぞれの色(横軸)に対する、インクの使用量を示すインク色データの出力値(縦軸)との関係を示している。なお、テーブルの実際の内容は、上記シアン(0,255,255)、マゼンタ(255,0,255)、イエロー(255,255,0)など、格子点に対してインク色データが対応付けられており、入力信号値が格子点間の色に対応する場合、それに対するインク色データの出力値は補間によって求める。
【0064】
図14(b)は、図14(a)に示す有色インクのみの色変換テーブルに対して、入力信号値に係らず透明インク使用量(CL量)をX(%)、すなわちX=一定とした場合の色変換テーブルの内容を示す図である。
【0065】
図15は、図14(b)に示すCL量一定型の色変換テーブルを用いて記録した場合の記録物のブロンズ色について説明する図である。すなわち、図15は、一定の透明インク使用量をX=0%、5%、10%、・・・、40%としたそれぞれの場合について、図14(b)に示す色変換テーブルを用いて、入力信号値D(0,255,255)、E(255,0,255)、F(255,255,0)に対応する、有色インクおよび透明インクの出力値に基づいて記録を行ったときの記録色ブロンズ色との色相差を示している。ここで、色相差Δθs−dの目標値をΔθs−d≦30の範囲とする。色相差Δθs−dの目標値は、ブロンズ色が異なることによる画質の低下を知覚されにくい値であって、所定値以下、具体的には、90度以下、特に、30〜40度以下が望ましい。なお、透明インクの使用量を最大40%としている理由は、有色インクに加えて透明インクを40%より多く記録すると、記録媒体が吸収しきれず、インクがあふれてしまうためである。有色インクの使用量を減らす方法もあるが、色再現性が悪くなるなどの弊害がある。
【0066】
図15に示すように、透明インクの使用量が0%の場合(図14(a)に示す有色インクのみの色変換テーブルの場合)、入力信号値に対応する色D、E、Fに対する色相差Δθs−dは目標範囲に収まっていない。しかし、透明インクが、色D(0,255,255)については、15%〜20%の範囲、色E(255,0,255)については15%〜35%の範囲、色F(255,255,0)については5%〜30%の範囲で記録することにより、各入力信号値に対応する色に対して、色相差Δθs−dを目標範囲内に収めることができる。
【0067】
本実施形態では、図15に示す関係において、入力信号値に対応する色それぞれに対して色相差Δθs−dが最小となるような透明インクの使用量を設定する。図15に示すように、色相差Δθs−dが最小となる透明インクの使用量は、入力信号値に対応する色対して使用される有色インクの使用量よって異なる。例えば、色D(0,255,255)で、色相差Δθs−dが最小となる透明インクの使用量は15%であるが、色E(255,0,255)では25%、色F(255,255,0)では20%と、色D(0,255,255)より多くの透明インクを必要とする。
【0068】
そこで、本実施形態では、図14(c)に示すように、入力信号値が示す色ごとに透明インクの使用量を異ならせた色変換テーブルを用いる。すなわち、色変換テーブルの各格子点が示す色に対して、色相差θs−dが目標範囲内Δθs−d≦30となる最小の透明インク使用量を求め、その使用量とその使用量に対応するインク色データを出力値とする色変換テーブルを設定する。このような関係の色変換を行うことにより、ブロンズ色が記録色に近い色と認識され、その結果、好ましくないブロンズが低減されて画質の低下を抑制することができる。
【0069】
なお、上記の例では、入力信号値が示す色それぞれに対して、色相差Δθs−dが最小となるような透明インクの使用量を設定したが、これに限らない。例えば、色相差Δθs−dが、図15にて説明した目標値の範囲内で、かつ透明インクの使用量X%が最も少なくなるような使用量とすることもできる。図15に示す例では、例えば、目標値の範囲がΔθs−d≦30の場合、入力信号値の色D(0,255,255)では15%、色E(255,0,255)では15%、色F(255,255,0)では5%となる。あるいは、透明インクの使用量をさらに少なくできる場合として、目標値の範囲Δθs−d≦40とする場合、色D(0,255,255)では15%、色E(255,0,255)では10%、色F(255,255,0)では5%となる。
【0070】
次に、以上説明した色変換テーブルを用いた、本実施形態における記録方法について説明する。図13(b)に示したような有色インクを透明インクで被覆する状態を実現するために、本実施形態では、有色インクの記録を完了した後に透明インクを用いた記録を行う。
【0071】
本実施形態では、図10で説明したように、同一画像領域の記録を複数回の走査で完成するマルチパス記録処理によって記録を行う。具体的には、記録データを上記複数回の走査に分割するためのマスクパターンについて、有色インクと透明インクとで、用いるマスクパターンを変更することにより、有色インクの記録を完了した後に透明インクを記録するようにする。
【0072】
図16(a)および(b)は、有色インクの記録で使用するマスクパターン、および透明インクの記録で使用するマスクパターンの一例をそれぞれ示す図である。それぞれのマスクパターンは4パスのマルチパス記録用のパターンである。図16(a)に示す有色インクのマスクパターンは、1パス目と2パス目で記録を完成するパターンとなっている。すなわち、記録データをONとするマスク画素の割合(デューティー)が、1パス目が50%、2パス目が50%、3パス目および4パス目が0%のマスクである。一方、図16(b)に示す透明インクのマスクパターンは、3パス目と4パス目で記録を完成するパターンとなっている。すなわち、記録データをONとするマスク画素の割合が、1パス目および2パス目が0%、3パス目が50%、4パス目が50%、のマスクである。
【0073】
図17(a)および(b)は、図16(a)および(b)に示したマスクを用いたマルチパス記録動作を説明する図である。詳しくは、これらの図は、記録用紙の同一領域に対して走査(パス)ごとに記録ヘッドが相対的に位置がずれていく様子を、記録ヘッドに対応付けられたマスクパターンとともに示している。
【0074】
図17(a)に示すように、1(N+1)パス目では、記録媒体上の所定の記録領域2109に対して、この領域の記録データをマスクパターン2105で間引いた記録データに基づいて、有色インクのノズル列からインクを吐出して記録する。この1パス分の走査が終了すると、記録媒体を、ノズル配列ピッチ×1/4(ノズル列のノズル数分)の量だけ搬送する。そして、2(N+2)パス目では、同じ所定記録領域2109に対して、この領域の記録データをマスクパターン2106で間引いた記録データに基づいて、有色インクのノズル列からインクを吐出して記録する。
【0075】
有色インクの記録が終了すると、同様に記録媒体を搬送した後、図17(b)に示すように、3(N+3)パス目では、記録媒体上の所定の記録領域2109に対して、この領域の記録データをマスクパターン2107で間引いた記録データに基づいて、透明インクのノズル列から透明インクを吐出して記録する。同様にして、4(N+4)パス目では、記録媒体上の所定の記録領域2109に対して、この領域の記録データをマスクパターン2108で間引いた記録データに基づいて、透明インクのノズル列から透明インクを吐出して記録する。
【0076】
このように、前半の2回のパスで有色インクの記録を行い、後半の2回のパスで透明インクの記録を行う。これにより、有色インクが記録媒体上に定着した後、その上から透明インクを記録することができ、図13(b)で示したような有色インク層を透明インク層で覆う、すなわち色材を樹脂が覆うような膜の形成が可能となる。
【0077】
以上のように、本実施形態によれば、入力信号値に対応して透明インクの使用量を設定した色変換テーブルを用いる。これにより、ブロンズ色と記録色とが大きく異なることで好ましくないと知覚されるブロンズを低減し、画質低下を抑制することができる。
【0078】
(第2実施形態)
上述した第1の実施形態では、記録物の記録色とブロンズ色の色相差θs−dを小さくするような色変換テーブルを設定することにより、好ましくないと知覚されるブロンズを低減するものである。しかし、入力信号値が示す色がグレーライン(軸)またはその近傍の低彩度領域の色である場合、記録色とブロンズ色の色相差よりも、ブロンズ色の彩度の方が画質の低下として知覚されやすい傾向にある。そこで、本発明の第2の実施形態は、入力信号値が示す色が低彩度領域(この場合、記録色も低彩度)の色については、記録色とブロンズ色の色相差Δθa−bではなく、ブロンズ色の彩度C*を小さくする色変換テーブルを用いる。一方、高彩度領域の色については、実施形態1に記載の特徴をもつ色変換テーブルである。具体的には、本実施形態では、上記低彩度領域としてグレーラインとして本実施形態の色変換テーブルについて説明する。なお、この所定の低彩度領域は、上記のとおりグレーラインおよびその近傍として規定することができるが、どの程度の近傍かは、例えば、実際の記録を行ってブロンズ色が好ましくないものとして知覚される範囲として規定することができる。
【0079】
図18(a)および(b)は、ブロンズ色の変動および透明インクによるブロンズ色の彩度低下を説明する図である。具体的には、入力信号値が示す色が白点W(255,255,255)から黒点K(0,0,0)に至るグレーライン上を変化するときのブロンズ色の変動を示している。
【0080】
このうち、図18(a)は、透明インクを用いない場合の、グレーライン上のブロンズ色をa*b*面における位置(色)で示している。図18(a)に示すように、有色インクのみで記録した記録物のブロンズ色は、ほぼa*>0,b*>0の領域に位置する。これは、グレーラインで主に使用されるブラックインクやグレーインクが、記録物上でイエローからオレンジにかけた色相のブロンズ現象を発生させる特性があるためである。また、図18(b)は、グレーライン上のブロンズ色の彩度を示す図であり、透明インクの使用量を、0%、10%、20%、30%、40%としたときの、それぞれの彩度を示している。このうち、実線はグレーラインのブロンズ色の彩度C*_sについて、透明インクを用いない(0%)場合を示し、この場合は、ブロンズ色が好ましくないと知覚されない、彩度C*_sの目標値の範囲であるC*_s≦10を満たすことができない。
【0081】
これに対し、図18(b)の点線で示すように、透明インクを使用することによりブロンズの彩度が低下する。そして、透明インクの使用量を20%から40%とする場合は、目標値の範囲を満たすようブロンズの彩度を低減することができる。本実施形態では、目標範囲に収まる範囲内で、かつ、透明インクの使用量が少なくなるように、グレーラインにおける透明インクの使用量を決定し、色変換テーブルに反映する。ただし、白点Wについては、有色インクによるブロンズ現象が発生しないため、透明インク量を0とする。
【0082】
図19は、本実施形態の色変換テーブルを示す図であり、詳しくは、グレーライン上の色に対する有色インクと透明インクの使用量を示している。図19に示すように、本実施形態の色変換テーブルは、グレーライン上の色を再現するのに、基本的にブラックインク(K)およびグレーインク(Gy)を用いる。そして、図18(b)に関して説明したようにさらに透明インクを用いることにより、グレーライン上の色を記録する際のブロンズ色の彩度C*を小さくする。これにより、記録物のブロンズによる画質の低下を知覚され難くすることができる。なお、上記色変換テーブルで得た記録データに基づく記録動作は、第1実施形態について図17(a)および(b)で説明したもの同様である。
【0083】
なお、上記の例では、グレーラインの色の色変換テーブルについて、説明したがグレーラインとその近傍の所定の低彩度領域について、上記で説明した色変換テーブルとしても良く、これによって、ブロンズ色が良好に低減された記録物を得ることができる。
【0084】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下に述べる本発明の特徴以外の事項については、第1または第2の実施形態と同様である。本発明の第3の実施形態は、複数の入力信号値が示す色間のブロンズ色の色相(θ1s、θ2s)の関係を考慮し、互いのブロンズ色の色相差(Δθ1s−2s)を小さくするような色変換テーブルを設定する。
【0085】
最暗部周辺の低明度領域では、その領域における複数の記録色のブロンズ色が互いに異なると、好ましくないブロンズとして画質の低下を知覚される場合がある。
【0086】
そこで、本実施形態では、最暗部、すなわち入力信号値が黒点K(0,0,0)である、記録物のブロンズ色と、その周辺の色を示す入力信号値Iによる記録物のブロンズ色との色相の差(ΔθIs−Ks)を小さくする色変換テーブルを設定する。本実施形態では、先ず、低明度領域を、R’,G’,B’入力信号値が、R’≦64、またはG’≦64、またはB’≦64である領域とする。そして、この低明度領域を除く領域については、第1実施形態または第2実施形態で説明した内容の色変換テーブルとする。ただし、本実施形態で上記のように規定する低明度領域が、第2実施形態で説明した低彩度領域に該当する場合は、グレーライン(R‘G’B’入力信号値の値が等しいライン)を除く領域については、以下に説明する、本実施形態に係る内容の色変換テーブルとする。
【0087】
図20は、本実施形態に係る、入力信号値および黒点のブロンズ色をa*b*面において示す図である。具体的には、入力信号値が示す色B(64,0,0)、C(0,0,64)と、黒点K(0,0,0)それぞれのブロンズ色を示している。図20において、菱形印は、黒点K(0,0,0)に対して透明インクCLの使用量を20%としたときのブロンズ色を示す。一方、四角印は、色C(0,0,64)について、透明インクCLの使用量を、0%、20%としたときのそれぞれブロンズ色を示す。透明インクCLの使用量が0%と20%の場合とでブロンズ色の色相の変化は少ない。
【0088】
一方、図20に示す丸印は、入力信号値が示す色B(64,0,0)に対して透明インクCLの使用量を0%,15%,20%としたときのブロンズ色を示す。色Bの場合、この図からわかるように、透明インクの使用量によってブロンズ色の色相変化が大きくなる。本実施形態では、このような色に対して、黒点K(0,0,0)のブロンズ色の色相に近くするために、B(64,0,0)の透明インクCLの使用量を15%とした色変換テーブルとする。
【0089】
このように、黒点での記録物のブロンズ色に対する、その周辺の入力信号値が示す記録物の色のブロンズ色の色相の差が小さくなるように透明インクの使用量を定める。これにより、最暗部周辺においてもブロンズによる画質低下を抑制することが可能となる。
【0090】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態は、有色インクと透明インクの記録方法に関し、第1実施形態で説明した、有色インクと透明インクを異なるパスで記録するのではなく、同じパスで記録する方法に関するものである。この記録方法に係る特徴事項以外の事項については第1実施形態と同様である。第1の実施形態では、有色インクと透明インクの記録するパスを完全に分離するものとした。しかし、このパスを完全に分離する方法の場合、有色インクのパス数が減ることから、それだけマルチパスの効果、すなわち、搬送誤差や吐出不良によるムラやスジを低減する効果が削減される場合がある。そこで、本実施形態では、4パスで記録を完了する場合に、マスクパターンを、有色インクについて、1パス目が40%、2パス目が30%、3パス目が20%、4パス目が10%のデューティーとする。また、透明インクを、1パス目が10%、2パス目が20%、3パス目が30%、4パス目が40%のデューティーとする。
【0091】
図21は、記録物表面の有色インク層と透明インク層の様子を示す模式図である。図13(b)が第1実施形態に係る、有色インクと透明インクを記録するパスを分離した場合の記録状態を示すのに対して、図21は、本実施形態に係る、同じパスで有色インクと透明インクとを記録した場合の記録状態を示している。図13(b)に示す状態は、有色インク層と透明インク層が分離している、すなわち色材と樹脂が分離して層構造を形成している。これに対して、図21に示す層1005は、色材と樹脂が混在したものである。この図21に示す状態では樹脂が色材を被覆する被覆率が、図13(b)に示す場合に比べ下がるものの、部分的に被覆することから、透明インクの記録によってブロンズ色を変化させることが可能である。
【0092】
以上のように、同じパスで有色インクと透明インクとを重複して記録するマスクパターンを用いて記録する方法によれば、第1実施形態に比べて、透明インクの使用量に対するブロンズ色の変化は少なくなるものの、ブロンズ減少を制御し抑制することは可能である。
【0093】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態はブロンズ色の特定方法に関し、第1実施形態と異なり、光が複数の方向から記録物上に入射し反射した反射光について、正反射光を含む反射光と正反射光を含まない反射光を測定してブロンズ色と記録色を求めるものである。この評価方法以外の事項については第1の実施形態と同様である。
【0094】
第1の実施形態では、ブロンズ色の特定方法として、図1に示すような、光が単方向から記録物に入射し反射された反射光、いわゆる正反射光のみを測定する方法に関するものである。しかし、記録物の観察環境は、一般にオフィスなど、様々な方向から光が入射する環境が多い。そこで、本実施形態では、光が複数の方向から記録物上に入射し反射した反射光について、正反射光を含む反射光と正反射光B’を含まない反射光を測定する。そして、正反射光を含む反射光の測定結果に基づいてブロンズ色を特定し、正反射光を含まない反射光の測定結果に基づいて記録色を特定する。
【0095】
図22(a)および(b)は、本実施形態で用いる測定システムを説明する図であり、コニカミノルタ社製の分光測色計(積分球方式)を模式的に示すものである。図22(a)は、正反射光を含む反射光を検出する状態を示し、図22(b)は、光トラップを有し正反射光を除いた反射光を検出する状態を示している。この測定システムによる測定で得られた光の分光強度から、第1実施形態にて上述したブロンズ特性算出方法を用いて、正反射光を含む反射光の彩度C*_s’および色相θs’と、正反射光を含まない反射光の彩度C*_d´および色相θd´を、求める。
【0096】
この測定器を用いて得られる上記彩度および色相に基づいて、第1実施形態と同様に、入力信号値が示す色の記録色とブロンズ色との色相差’が小さくなるように透明インクの使用量を設定することにより、色変換テーブルを求めることができる。
【0097】
また、本実施形態の測定値を第2実施形態と同じ色変換テーブルに適用する場合、入力信号値が示す色について、本実施形態の測定結果として、記録色の彩度C*_d’とブロンズ色の彩度C*_s’を求める。そして、この求めた記録色の彩度C*_d’とこれに対するブロンズ色の彩度C*_s’の差が小さくなるように透明インクの使用量を設定する。
【0098】
なお、実際の記録物の観察では、正反射光を含む反射光と正反射光を含まない反射光とが混合した反射光を観察している。このため、記録物の見た目と合わせるために、正反射光を含む反射光の彩度の値C*_s’に重みをかける等してもよい。
【0099】
(その他の実施形態)
上述した第1〜4実施形態では、図7に示す画像処理のうちハーフトーン処理部904までをホスト装置において構成し、それ以降の処理部をインクジェット記録装置において構成するようにしている。しかし、本発明に係る色変換部903およびそれ以降の処理部をインクジェット記録装置において構成してもよい。あるいは、マスク処理部907までの画像処理の総ての処理部をホスト装置、または記録装置の一方のみにおいて構成するようにしてもよい。以上の形態のホスト装置またはインクジェット記録装置はいずれも画像処理装置を構成する。
【0100】
また、上述の第1〜4実施形態では、樹脂を含有し色材を含有しない透明インクを用いるものとしたが、必ずしも色材を含有しないインクに限定する必要はない。有色インクで通常用いられるシアン系やマゼンダ系、グレー系の濃淡インクシステムにおいて、淡インクに樹脂を添加することにより、この淡インクを透明インクの代わりに用いることもできる。本明細書では、これらのインクを、上記透明インクを含めて処理インクという。ただし、他の色相で本発明を実施する場合には、樹脂を多く含む淡インクの色材が、本来発色させるべき色の再現に影響しないように、淡インクの色材濃度を低くしたり、インク使用量を調整したりするなどの調整が必要となる。
【0101】
さらに、インクの色材としては、顔料に限らず染料を用いるようにしてもよい。
【0102】
さらに、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0103】
100 コントローラ
101 ASIC
103 ROM
104 RAM
110 ホスト装置
903 色変換部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、インクジェット記録装置および画像処理方法に関し、詳しくは、記録画像において観察されるブロンズ現象に起因した画質低下を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録において、光沢系の記録媒体に対し顔料インクを用いた場合に特に顕著となる現象として、記録物の表面に映りこんだ照明像に色が付く現象(以下、ブロンズ現象)がある。例えば、シアン顔料を用いた場合、照明像は赤色に着色し、見た目の画質を大きく損なう一因となる。このようなブロンズ現象を抑制するための方法として、顔料粒子が記録媒体表面に露出しないように、記録面に透明フィルムをラミネートする方法が知られている。しかし、ラミネート機構を持つことによる装置コストアップや、ラミネート作業に多くの時間がとられる等の問題が発生する。
【0003】
これに対し、特許文献1には、インクの使用比率を制御してブロンズ現象を抑制する技術が記載されている。入力画像の明度、使用インクの使用比率からブロンズ現象の発生の有無を判定し、判定結果に応じてインクの使用比率を変更することにより、ブロンズ現象を抑制する方法である。
【0004】
一般に、記録物を観察する時、観察者は、光源から記録物に照射された光の反射光を観察する。そして、その観察される色は観測角度によって異なる。図1は、記録物を異なる2つの角度から観察した場合の2種類の反射光の違いを説明するための図である。図1において、A方向で観察される反射光は、光源に対し正反射方向から観察した場合の正反射光であり、記録物に映り込んだ光源像が観察される。一方、B方向で観察される反射光は、記録物の内部を通過し反射した反射光、つまり拡散光であり、色材によって再現された色(以下、記録色)が観察される。
【0005】
このような2種類の観察のうち、A方向での観察では、光源の色と異なる色の光源が映り込んでいるように認識されることがありこれがブロンズ現象として知覚される。また、このように光源が映りこむ場合だけでなく、図1に示す2種類の反射光が同時に観察されて、例えば画像が本来の記録色と異なった色に見えることがあり、これもブロンズ現象として認識されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−138555公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、本来の記録色と、ブロンズ現象によって生じる色(以下、ブロンズ色)が異なると、そのブロンズ色は好ましくない色として知覚され、記録物の画質を低下させることになる。これに対し、特許文献1では、上述したようにインクの使用比率を変更することによってブロンズ現象を抑制するが、ブロンズ色の記録色との違いによる画質低下を十分に抑制することはできない。すなわち、ブロンズ色ないしその発色を抑制して目立たないものとしても、記録色との違いが大きい場合には、この違い自体が顕著に認識されて画質低下の要因となる。
【0008】
本発明は、この観点からなされたものであり、特に、記録色とブロンズ色の違いに起因した画質低下を抑制することが可能な画像処理装置、インクジェット記録装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明では、画像処理装置において、色信号を、記録に用いるインクの使用量に対応したインク色信号に変換する色変換手段であって、前記色信号に基づいて記録される画像の記録色と、前記記録色が正反射光を含む反射光によって観測されるブロンズ色と、の違いに応じて、前記ブロンズ色を変更するための処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換する色変換手段、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成によれば、記録色とブロンズ色の違いに起因した画質低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】記録物を異なる2つの角度から観察した場合の2種類の反射光の違いを説明するための図である。
【図2】ブロンズ現象を測定するための測定システムを模式的に示す図である。
【図3】記録画像を図2に示す測定システムによって測定して得られた正反射光が示す色の二例を、a*b*平面上にプロットして示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の主要部構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示す記録ヘッド1における8色のインクを吐出するノズル列(ノズル群)の配列を模式的に示す図である。
【図6】図4に示すインクジェット記録装置における制御構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る、インクジェット記録装置およびホスト装置の画像処理の構成を示すブロック図である。
【図8】N値データから2値データを得るためのドット配置パターンを示す図である。
【図9】本発明の実施形態で用いるマスクパターンの一例を示す図である。
【図10】図9に示したマスクパターンを用いたマルチパス記録動作を説明する図である。
【図11】(a)および(b)は、図2で説明した測定システムによって測定された記録物の記録色とブロンズ色との関係の一例を説明する図である。
【図12】透明インクの使用量に対するブロンズ色の変化を説明するための図である。
【図13】(a)〜(d)は、透明インクの使用量に応じてブロンズ色が変化する要因を用いて説明する図である。
【図14】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態および比較例における色変換テーブルの特徴を説明するため図である。
【図15】図14(b)に示すCL量一定型の色変換テーブルを用いて記録した場合の記録物のブロンズ色について説明する図である。
【図16】(a)および(b)は、有色インクの記録で使用するマスクパターン、および透明インクの記録で使用するマスクパターンの一例をそれぞれ示す図である。
【図17】(a)および(b)は、図16(a)および(b)に示したマスクを用いたマルチパス記録動作を説明する図である。
【図18】(a)および(b)は、本発明の第2の実施形態に係る、ブロンズ色の変動および透明インクによるブロンズ色の彩度低下を説明する図である。
【図19】第2実施形態の色変換テーブルを示す図である。
【図20】本発明の第3実施形態に係る、入力信号値および黒点のブロンズ色をa*b*面において示す図である。
【図21】第3実施形態に係る、記録物表面の有色インク層と透明インク層の様子を示す模式図である。
【図22】第4実施形態におけるブロンズ測定と記録色測定のシステムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
(ブロンズの評価方法)
ブロンズ現象は、例えば、村上色彩技術研究所の三次元変角分光測色システム(GCMS−4)を用いて測定することができる。図2は、この測定システムを模式的に示す図である。図2に示すように、記録画像に対してθ=45°の方向から光を照射し、逆方向のθ=45°の方向で正反射光を受光する。そして、この受光した正反射光の分光強度を測定し、測定された分光強度より正反射光の彩度を算出する。正反射光の色付きが少ないほど正反射光の彩度は小さくなる。
【0014】
図2において、B0001は照明の光源を示し、記録媒体B0003に記録された画像を照明する。B0002は光検出器を示し、記録媒体B0003上の画像からの反射光を検出する。光検出器B0002は、記録媒体B0003の法線方向に対して照明光源と反対側に同一角度θ傾いた方向、すなわち、正反射方向に沿って位置する。B0004は記録媒体B0003を固定する固定台を示す。B0005は光検出器B0002が測定する被測定部を示す。B0006は外部からの光を遮蔽するための遮光カバーを示す。
【0015】
観測した正反射光から、その色の特性を算出する方法は次のとおりである。光検出器B0002によって測定された、記録媒体B0003上の画像からの正反射光の分光強度は、
【0016】
【数1】
【0017】
で表され、これに基づいて正反射光の三刺激値XxYxZxを算出する。そして、この正反射光の三刺激値と、照明光源B0001からの光の三刺激値とから、JIS Z 8729に基づいて、上記正反射光のL*a*b*値、すなわち、上記正反射光が示す色を求める。
【0018】
図3は、ある記録画像を上述の測定方法によって測定して得られた正反射光が示す色の二例を、a*b*平面上にプロットして示す図である。図3において、色(1)は、ブロンズ現象が比較的目立つ色であり、色(2)は、ブロンズ現象が比較的目立たない色である。色(1)のC*(1)、色(2)のC*(2)は、それぞれの色のL*a*b*値から彩度C*=√(a*^2+b*^2)を計算した結果を示すものであり、この値が大きいほど、ブロンズ色の彩度が大きくブロンズ現象として目立ちやすいということを示している。また、図3において、θ1、θ2は、ブロンズ値のL*a*b*の値からθ=tan−1(a*/b*)として求められる色相である。
【0019】
このように、本実施形態は、正反射光について、a*b*平面状で、そのブロンズ色の色相や彩度を求めることにより、ブロンズ色の特定を行う。一方、画像の記録色は、拡散光を測定することにより、記録画像の本来の色である記録色を特定する。
【0020】
(装置構成)
図4は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の主要部構成を示す斜視図である。図4において、給紙トレイ12から記録媒体S2を記録部に給紙し、この記録媒体を矢印Bで示す方向に間欠的に搬送しながら記録媒体上に画像を記録し、記録が完了すると排紙トレイに排紙する。記録部において、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド1は、矢印A1、A2方向にガイドレール4に沿って往復移動しながら記録ヘッドのノズルからインクを吐出し、記録媒体S2上に画像を形成する。記録ヘッド1は、それぞれ異なった色のインクに対応した複数のノズル群を有している。記録ヘッド1は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、淡シアン(LC)、淡マゼンタ(LM)、ブラック(K)、グレー(Gy)の有色インクと、透明インク(CL;本明細書では処理インクとも言う)の計8色のインクを吐出するノズル群を備える。これら各色のインクは、対応するそれぞれのインクタンク(不図示)に貯留されており、吐出動作に伴って記録ヘッド1に供給される。
【0021】
図5は、記録ヘッド1における8色のインクを吐出するノズル列(ノズル群)の配列を模式的に示す図である。記録ヘッド1における各インクのノズルからの吐出量は、全て略同一の3plである。これら8色のインクのうち、透明インクCLは、後述されるように、主に、各色インクが着弾して形成する画像の本来の記録色とブロンズ色との違いを小さくするために用いられる。すなわち、この透明インクは、インクの被覆層を形成し、この被覆率や透明インク層の厚みを制御することによって、記録色とブロンズ色との違いを小さくする。
【0022】
再び図4を参照すると、インクタンクと記録ヘッド1とは一体に形成されてヘッドカートリッジ6を構成し、ヘッドカートリッジ6はキャリッジ5に着脱自在に搭載される。また、キャリッジモータ11の駆動力をタイミングベルト17によってキャリッジ5に伝達することにより、キャリッジ5を矢印A1、A2方向(主走査方向)にガイド軸3とガイドレール4に沿って往復移動させる。このキャリッジ移動の際に、キャリッジ位置はキャリッジ5に設けられたエンコーダセンサ21によりキャリッジの移動方向に沿って備えられたリニアスケール19を読み取ることにより検出される。そして、この往復移動の間に記録媒体上への記録が行われる。このとき、記録媒体S2は、搬送ローラ16とピンチローラ15とによって挟持されつつ、プラテン2上を搬送される。
【0023】
この記録動作において、キャリッジ5がA1方向に1走査分の記録を行うと、搬送モータ13によってリニアホイール20を介して搬送ローラ16が駆動される。そして、記録媒体S2が副走査方向である矢印B方向に所定量搬送される。その後、キャリッジ5がA2方向に走査しながら、記録媒体S2に記録が行なわれる。ホームポジションには図4に示されているように、ヘッドキャップ10と回復ユニット14が備えられ、必要に応じて間欠的に記録ヘッド1の回復処理を行う。
【0024】
上記説明した動作を繰り返すことにより、記録媒体の1枚分の記録が終了すると、記録媒体は排紙され、1枚分の記録が完了する。
【0025】
図6は、本実施形態のインクジェット記録装置における制御構成を示すブロック図である。コントローラ100は主制御部であり、例えばマイクロ・コンピュータ形態のASIC101、ROM103、RAM105を有する。ROM103は、ドット配置パターン、マスクパターン、その他の固定データを格納している。RAM105は、ホスト装置からの画像データを展開する領域や作業用の領域等を設けている。ASIC101がROM103からプログラムを読み出し、画像データに基づく記録媒体への記録動作を制御する。
【0026】
ホスト装置110は、画像データの供給源であり、記録に係る画像等のデータの作成、処理等を行うコンピュータとすることができる他、画像読み取り用のリーダ部等の形態とすることができる。このホスト装置110によって、図7にて後述される、本発明の一実施形態に係る色変換処理を含む画像処理が行われる。そして、この画像処理によって生成された画像データや、その他のコマンド、ステータス信号等は、インタフェース(I/F)112を介して、記録装置のコントローラ100と送受信される。
【0027】
記録装置において、ヘッドドライバ140は、記録データ等に基づいて記録ヘッド1を駆動するドライバである。モータドライバ150はキャリッジモータ11を駆動し、モータドライバ160は搬送モータ13を駆動する。
【0028】
(インク構成)
ここで、本実施形態のインクジェット記録装置で使用される、顔料インクを構成する各成分について説明する。
【0029】
水性媒体
本発明で使用するインクには、水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体を用いることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として3.0質量%以上50.0質量%以下とすることが好ましい。又、インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として50.0質量%以上95.0質量%以下とすることが好ましい。
【0030】
水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。メタノール、エタノール、プロパノール、プロパンジオール、ブタノール、ブタンジオール、ペンタノール、ペンタンジオール、ヘキサノール、ヘキサンジオール、等の炭素数1〜6のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類。アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の平均分子量200、300、400、600、及び1,000等のポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数2〜6のアルキレン基を持つアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等。又、水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。
【0031】
顔料
顔料は、カーボンブラックや有機顔料を用いることが好ましい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下とすることが好ましい。
【0032】
ブラックインクは、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックを顔料として用いることが好ましい。具体的には、例えば、以下の市販品等を用いることができる。レイヴァン:7000、5750、5250、5000ULTRA、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−II、1170、1255(以上、コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:330R、400R、660R、モウグルL、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、2000、ヴァルカンXC−72R(以上、キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上、デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)。又、本発明のために新たに調製したカーボンブラックを用いることもできる。勿論、本発明はこれらに限定されるものではなく、従来のカーボンブラックを何れも用いることができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を顔料として用いてもよい。
【0033】
有機顔料は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の水不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料。インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
又、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、例えば、以下のものを用いることができる。C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185等。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61、71等。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192等。同、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272等。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50等。C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64等。C.I.ピグメントグリーン:7、36等。C.I.ピグメントブラウン:23、25、26等。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
分散剤
上記したような顔料を水性媒体に分散するための分散剤は、水溶性を有する樹脂であれば何れのものも用いることができる。中でも特に、分散剤の重量平均分子量が1,000以上30,000以下、更には3,000以上15,000以下のものが好ましい。インク中の分散剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上5.0質量%以下とすることが好ましい。
【0036】
分散剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。スチレン、ビニルナフタレン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、又はこれらの誘導体等を単量体とするポリマー。尚、ポリマーを構成する単量体のうち1つ以上は親水性単量体であることが好ましく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等を用いても良い。又は、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂を用いることもできる。これらの樹脂は、塩基を溶解した水溶液に可溶である、即ち、アルカリ可溶型であることが好ましい。
【0037】
界面活性剤
インクセットを構成するインクの表面張力を調整するためには、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等の界面活性剤を用いることが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール類、アセチレングリコール化合物、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物等を用いることができる。
【0038】
その他の成分
インクセットを構成するインクは、前記した成分の他に、保湿性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタン等の保湿性固形分を含有してもよい。インク中の保湿性固形分の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上20.0質量%以下、更には3.0質量%以上10.0質量%以下とすることが好ましい。又、インクセットを構成するインクは、前記した成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及び蒸発促進剤等の種々の添加剤を含有してもよい。
【0039】
次に、本実施形態で用いるインクをより具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、下記実施形態によって限定されるものではない。尚、文中「部」、及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0040】
樹脂水溶液Aの調製
酸価:288mgKOH/g、重量平均分子量10,000、モノマー組成 スチレン/n−ブチルアクリレート/アクリル酸=23/37/37のランダム共重合体を水酸化カリウムで1当量に中和した。その後、樹脂濃度が10.0%となるように水で調整して、樹脂水溶液Aを得た。
【0041】
樹脂水溶液Bの調製
樹脂水溶液Aで用いた、酸価200mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン/アクリル酸のランダム共重合体に替えて、酸価:288mgKOH/g、重量平均分子量10,000、モノマー組成 スチレン/n−ブチルアクリレート/アクリル酸=23/37/37のランダム共重合体を用いた以外は樹脂水溶液Aの調製同様にして樹脂水溶液Bを調製した。
【0042】
顔料分散液1〜4の調製
以下に示す手順により、顔料分散液1〜4を調製した。<C.I.ピグメントレッド122を含む顔料分散液1の調製>
顔料(C.I.ピグメントレッド122)10部、樹脂水溶液A20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散する。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が10質量%である顔料分散液1を得る。
【0043】
<C.I.ピグメントブルー15:3を含む顔料分散液2の調製>
顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)10部、樹脂水溶液A20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて5時間分散する。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が10質量%である顔料分散液2を得る。
【0044】
<C.I.ピグメントイエロー74を含む顔料分散液3の調製>
顔料(C.I.ピグメントイエロー74)10部、樹脂水溶液A20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて1時間分散する。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去した。更に、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が10質量%である顔料分散液3を得る。
【0045】
<C.I.ピグメントブラック7を含む顔料分散液4の調製>
カーボンブラック顔料(C.I.ピグメントブラック7)10部、樹脂水溶液A20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散する。尚、分散する際の周速は、顔料分散液1を調製する際の2倍とした。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去する。更に、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、顔料濃度が10質量%である顔料分散液4を得る。
【0046】
透明インクの調製
表1に示した各成分を混合し、十分攪拌した後、ポアサイズ0.8μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、有色インク1〜7と透明インクを調製する。
尚、透明インクCLの組成は上記に限らない。透明インクCLは紙面に残存する顔料色材を被覆しブロンズを抑制するためのインクであり、同様の効果が得られるならば、樹脂の種類や樹脂添加量が異なってもよい。
【0047】
【表1】
【0048】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態は、透明インクを用いることによって記録する画像の記録色とブロンズ色との色相角の違いを小さくし、ブロンズ色が本来の記録色と異なることによる記録画質の低下を抑制する技術に関する。具体的には、色変換に用いるテーブルの内容を、各色インクデータの値に対して、透明インクデータの値を上記色相角が最小になるように定めるものである。
【0049】
図7は、本発明の一実施形態に係る、インクジェット記録装置およびホスト装置の画像処理の構成を示すブロック図である。図7において、901はホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)上のアプリケーションを示す。アプリケーション901からRGB各8bit、計24btの画像データが色補正部902に入力する。色補正部902は、入力RGBデータを異なるR’G’B’データに変換するものであり、主に、アプリケーション901のRGBデータで再現できる色域を、記録装置で再現できる色域に変換する処理を行う。この変換処理は、一般には、3次元LUT(ルックアップテーブル)と補間演算を用いて行われる。LUTのテーブル内容は、色補正の種類によって複数種類用意されており、ユーザの選択およびアプリケーションの設定によって、適宜選択、設定される。例えば、写真画像を出力したい場合には写真調のLUTが用いられ、グラフィック画像を出力したい場合にはグラフィック調のLUTが選択される。
【0050】
色補正部902から出力されるR’G’B’の24bitデータは、色変換部903に入力し、R’G’B’データ(色信号)を、インクジェット記録装置で用いるインク色データ(インク色信号)に変換する。本実施形態では、このインク色データは、C、M、Y、LC、LM、K、Gy、CLの8色である。この色変換部からの出力信号は、各色8bit、すなわち8色計64bitの出力データとなる。本発明の一実施形態に係る、色変換部で用いる変換テーブルの内容については後述する。
【0051】
ハーフトーン処理部904は、入力した各色8bit=256値の多値信号に対して、誤差拡散等の擬似中間調処理(ハーフトーニング処理)を行い、256値よりも少ないN値のデータに変換する。このN値は、例えば、3〜16値程度の各色2〜4bitのN値に変換する。本実施形態では、N=5値に変換するが、これに限るものではなく、2値に変換しても良いことはもちろんである。
【0052】
以上の各処理部はホスト装置において構成され、以下に説明する各処理部は記録装置において構成される。すなわち、記録装置において、プリントバッファ905は、ホスト装置(PC)から転送されたハーフトーニング処理によるN値のインク色データを格納する。ドットパターン展開部906は、プリントバッファ905に格納されたN値データが示す値に対応したドット配置パターンを選択し、その選択した配置のドットデータ(2値データ)を得る。図8は、このドット配置パターンを示す図である。同図に示すように、入力される5値データが示す5つの値(レベル)0〜4に応じたドット配置パターンが定められている。具体的には、2×2画素に対して、ドット記録(“1”;黒で塗りつぶされた画素)とドット非記録(“0”;白の画素)が、上記5つのレベルごとに定められている。そして、例えば、N=3の場合は、レベル3の配置パターンが選択されて3つのドット記録と1つのドット非記録が2×2画素の記録データとして得られる。
【0053】
マスク処理部907は、記録ヘッドを同一記録領域に対して複数回走査してその記録領域の記録を完成する、マルチパス記録に用いる記録データを生成する。具体的には、間引きパターン(以下、マスクパターンという)を用いて、上記同一領域の記録データを複数回の走査それぞれのデータに分割する処理を行う。図9は、マスクパターンの一例を示す図である。図9に示す例のマスクパターンは、4回の走査で記録を完成させる、4パスのマルチパス記録用のマスクパターンを示している。このマスクパターンは、対応する画素の記録データをONとするマスク画素を黒ドットで、OFFとするマスク画素を白ドットで表している。縦横の画素サイズは768×768pixelで、縦方向は記録ヘッドのノズル列方向、横方向は記録ヘッドのスキャンする走査方向を表している。さらに縦方向の画素サイズ768は記録ヘッドのノズル数768ノズルと対応している。図の破線で示すように、縦方向768pixelを1/4の192pixelに分割した際に、それぞれ1〜4パスのマスクパターンとなり、かつこれら1〜4パスのマスクパターンはそれぞれ補間関係にある。本例では1〜4パスのマスクパターンは、記録をONとするマスク画素の割合であるデューティーがほぼ同じデューティー、すなわち約25%デューティーである。
【0054】
図10は、図9に示したマスクパターンを用いたマルチパス記録動作を説明する図である。図10において、1201〜1204は記録ヘッド(本図では簡単のため1色の記録ヘッドで説明)を示す。図10は、4パスのマルチパス記録を行う際に、走査ごとに記録用紙が記録ヘッドのノズル配列の1/4のノズルピッチ分順次搬送され、記録用紙の同一領域に対して記録ヘッドが相対的に位置がずれていく様子を示すものである。また、1205〜1209はマスクパターンを示し、記録ヘッドの上記相対移動に伴う記録ヘッドのノズル列に対応させて示すものである。記録を完成するある記録領域(図において斜線で示される領域)に着目すると、第1走査(1パス目;N+1パス)では、マスクパターンの1パス目用領域(図9参照)で間引かれた記録データに基づいて記録する。次の第2走査(2パス目;N+2パス)では、マスクパターンの2パス目用領域で間引かれた記録データに基づいて、1パス目とは1/4のノズルピッチ分ずれたノズルで記録する。以降同様に第3走査、第4走査を行い記録を完成する。
【0055】
次に、本発明の第1の実施形態に係る、記録色とブロンズ色の色相差に応じて透明インクを用いる色変換テーブルについて説明する。
【0056】
先ず、有色インクのみ、つまり処理インク以外のインクで記録した場合の記録物の記録色とブロンズ色の関係を説明する。図11(a)および(b)は、図2で説明した測定システムによって測定された記録物の記録色とブロンズ色との関係の一例を説明する図である。詳しくは、入力信号(R、G、B)が、A(0,64,64)、B(64,0,64)、C(64,64,0)である場合の、それぞれの色(a*,b*)、色相(θs,θd)、および色相差(θs−d)を示している。入力信号A〜Cについて主に使用される有色インクは、ブラック、グレーインクの他に、信号A(0,64,64)ではシアンインク、信号B(64,0,64)ではマゼンダインク、信号C(64,64,0)ではイエローインクである。
【0057】
図11(a)に示すように、信号C(64,64,0)の場合、記録色の色相はθd=88、ブロンズ色の色相はθs=80であり、どちらもイエロー色であり、その色相角の差(色相差)はΔθs−d=8である。一方、信号A(0,64,64)の場合、記録色の色相はθd=226のシアン色、ブロンズ色の色相はθs=17のマゼンダ色であり、色相角の差はΔθs−d=151である。このように、信号A(0,64,64)の場合、信号C(64,64,0)の場合の色相差比べて大きい。このような記録色とブロンズ色との色相差が大きく異なると、好ましくないブロンズ色として知覚される。特に、信号A(0,64,64)の場合は、ブロンズ色の彩度C*_sが、信号C(64,64,0)の場合に比べて大きく、好ましくないブロンズ色が顕著と言える。
【0058】
このように、ブロンズ色は、入力信号値に対応して使用される有色インクの種類や使用量によって決まり、ブロンズ色の色相θsや彩度C*_s、記録色との色相差Δθs−dによって見た目の画質が異なる傾向がある。
【0059】
次に、有色インクに加え、透明インクを用いて記録する場合の、記録物の記録色とブロンズ色の関係を説明する。
【0060】
図12は、透明インクの使用量に対するブロンズ色の変化を説明するための図である。図12に示すように、有色インクの上に記録する透明インクの使用量を増やしていくと、有色インクのみのブロンズ色(図12において黒丸印)から、時計回りの軌跡を描きながらブロンズ色が変化する。
【0061】
図13(a)〜(d)は、透明インクの使用量に応じてブロンズ色が変化する要因を用いて説明する図である。図13(a)は、有色インク層の表面で光が正反射する様子を示している。なお、説明を簡易にするために、有色インク層を透過し記録媒体表面で反射する光は省略する。これに対し、図13(b)は有色インク層の上に均一に透明インク層を記録した場合を示している。この場合、透明インク層1001の表面で反射する光1003と、透明インク層1001を透過後にシアン有色インク層1002の表面で反射し透明インク層1001から出射する光1004が存在する。光1004の光路長は、透明インク層1001を通過する分、光1003より長くなる。この光路長差に基づく光の位相のずれによって、特定の波長がその強度を強めあったり弱めあったりするいわゆる干渉が発生し、ブロンズ色が異なることになる。透明インクの使用量を変えると、透明インクによって被覆される有色インク層の被覆率や、透明インク層の厚みが変化する(図13(c)、(d)参照)。これによって干渉の状態が変化し、その結果、ブロンズ色が変化する。
【0062】
そこで、本発明の第1の実施形態は、上述した透明インクの使用量によってブロンズ色を制御することにより、入力信号値に対する記録色とブロンズ色との色相差を小さくし、ブロンズ現象による画質の低下を抑制する。
【0063】
図14(a)〜(c)は、本実施形態における色変換テーブルの特徴を説明するため図であり、入力信号値とインクの使用量との関係からなる色変換テーブルの内容を示している。図14(a)は、本実施形態の色変換テーブルと比較するための、透明インクは用いずに有色インクのみを使用する従来の色変換テーブルの一例を示す図である。図14(a)は、入力信号値R’G‘B’に対応した、シアン(0,255,255)、マゼンタ(255,0,255)、イエロー(255,255,0)のを通るライン上のそれぞれの色(横軸)に対する、インクの使用量を示すインク色データの出力値(縦軸)との関係を示している。なお、テーブルの実際の内容は、上記シアン(0,255,255)、マゼンタ(255,0,255)、イエロー(255,255,0)など、格子点に対してインク色データが対応付けられており、入力信号値が格子点間の色に対応する場合、それに対するインク色データの出力値は補間によって求める。
【0064】
図14(b)は、図14(a)に示す有色インクのみの色変換テーブルに対して、入力信号値に係らず透明インク使用量(CL量)をX(%)、すなわちX=一定とした場合の色変換テーブルの内容を示す図である。
【0065】
図15は、図14(b)に示すCL量一定型の色変換テーブルを用いて記録した場合の記録物のブロンズ色について説明する図である。すなわち、図15は、一定の透明インク使用量をX=0%、5%、10%、・・・、40%としたそれぞれの場合について、図14(b)に示す色変換テーブルを用いて、入力信号値D(0,255,255)、E(255,0,255)、F(255,255,0)に対応する、有色インクおよび透明インクの出力値に基づいて記録を行ったときの記録色ブロンズ色との色相差を示している。ここで、色相差Δθs−dの目標値をΔθs−d≦30の範囲とする。色相差Δθs−dの目標値は、ブロンズ色が異なることによる画質の低下を知覚されにくい値であって、所定値以下、具体的には、90度以下、特に、30〜40度以下が望ましい。なお、透明インクの使用量を最大40%としている理由は、有色インクに加えて透明インクを40%より多く記録すると、記録媒体が吸収しきれず、インクがあふれてしまうためである。有色インクの使用量を減らす方法もあるが、色再現性が悪くなるなどの弊害がある。
【0066】
図15に示すように、透明インクの使用量が0%の場合(図14(a)に示す有色インクのみの色変換テーブルの場合)、入力信号値に対応する色D、E、Fに対する色相差Δθs−dは目標範囲に収まっていない。しかし、透明インクが、色D(0,255,255)については、15%〜20%の範囲、色E(255,0,255)については15%〜35%の範囲、色F(255,255,0)については5%〜30%の範囲で記録することにより、各入力信号値に対応する色に対して、色相差Δθs−dを目標範囲内に収めることができる。
【0067】
本実施形態では、図15に示す関係において、入力信号値に対応する色それぞれに対して色相差Δθs−dが最小となるような透明インクの使用量を設定する。図15に示すように、色相差Δθs−dが最小となる透明インクの使用量は、入力信号値に対応する色対して使用される有色インクの使用量よって異なる。例えば、色D(0,255,255)で、色相差Δθs−dが最小となる透明インクの使用量は15%であるが、色E(255,0,255)では25%、色F(255,255,0)では20%と、色D(0,255,255)より多くの透明インクを必要とする。
【0068】
そこで、本実施形態では、図14(c)に示すように、入力信号値が示す色ごとに透明インクの使用量を異ならせた色変換テーブルを用いる。すなわち、色変換テーブルの各格子点が示す色に対して、色相差θs−dが目標範囲内Δθs−d≦30となる最小の透明インク使用量を求め、その使用量とその使用量に対応するインク色データを出力値とする色変換テーブルを設定する。このような関係の色変換を行うことにより、ブロンズ色が記録色に近い色と認識され、その結果、好ましくないブロンズが低減されて画質の低下を抑制することができる。
【0069】
なお、上記の例では、入力信号値が示す色それぞれに対して、色相差Δθs−dが最小となるような透明インクの使用量を設定したが、これに限らない。例えば、色相差Δθs−dが、図15にて説明した目標値の範囲内で、かつ透明インクの使用量X%が最も少なくなるような使用量とすることもできる。図15に示す例では、例えば、目標値の範囲がΔθs−d≦30の場合、入力信号値の色D(0,255,255)では15%、色E(255,0,255)では15%、色F(255,255,0)では5%となる。あるいは、透明インクの使用量をさらに少なくできる場合として、目標値の範囲Δθs−d≦40とする場合、色D(0,255,255)では15%、色E(255,0,255)では10%、色F(255,255,0)では5%となる。
【0070】
次に、以上説明した色変換テーブルを用いた、本実施形態における記録方法について説明する。図13(b)に示したような有色インクを透明インクで被覆する状態を実現するために、本実施形態では、有色インクの記録を完了した後に透明インクを用いた記録を行う。
【0071】
本実施形態では、図10で説明したように、同一画像領域の記録を複数回の走査で完成するマルチパス記録処理によって記録を行う。具体的には、記録データを上記複数回の走査に分割するためのマスクパターンについて、有色インクと透明インクとで、用いるマスクパターンを変更することにより、有色インクの記録を完了した後に透明インクを記録するようにする。
【0072】
図16(a)および(b)は、有色インクの記録で使用するマスクパターン、および透明インクの記録で使用するマスクパターンの一例をそれぞれ示す図である。それぞれのマスクパターンは4パスのマルチパス記録用のパターンである。図16(a)に示す有色インクのマスクパターンは、1パス目と2パス目で記録を完成するパターンとなっている。すなわち、記録データをONとするマスク画素の割合(デューティー)が、1パス目が50%、2パス目が50%、3パス目および4パス目が0%のマスクである。一方、図16(b)に示す透明インクのマスクパターンは、3パス目と4パス目で記録を完成するパターンとなっている。すなわち、記録データをONとするマスク画素の割合が、1パス目および2パス目が0%、3パス目が50%、4パス目が50%、のマスクである。
【0073】
図17(a)および(b)は、図16(a)および(b)に示したマスクを用いたマルチパス記録動作を説明する図である。詳しくは、これらの図は、記録用紙の同一領域に対して走査(パス)ごとに記録ヘッドが相対的に位置がずれていく様子を、記録ヘッドに対応付けられたマスクパターンとともに示している。
【0074】
図17(a)に示すように、1(N+1)パス目では、記録媒体上の所定の記録領域2109に対して、この領域の記録データをマスクパターン2105で間引いた記録データに基づいて、有色インクのノズル列からインクを吐出して記録する。この1パス分の走査が終了すると、記録媒体を、ノズル配列ピッチ×1/4(ノズル列のノズル数分)の量だけ搬送する。そして、2(N+2)パス目では、同じ所定記録領域2109に対して、この領域の記録データをマスクパターン2106で間引いた記録データに基づいて、有色インクのノズル列からインクを吐出して記録する。
【0075】
有色インクの記録が終了すると、同様に記録媒体を搬送した後、図17(b)に示すように、3(N+3)パス目では、記録媒体上の所定の記録領域2109に対して、この領域の記録データをマスクパターン2107で間引いた記録データに基づいて、透明インクのノズル列から透明インクを吐出して記録する。同様にして、4(N+4)パス目では、記録媒体上の所定の記録領域2109に対して、この領域の記録データをマスクパターン2108で間引いた記録データに基づいて、透明インクのノズル列から透明インクを吐出して記録する。
【0076】
このように、前半の2回のパスで有色インクの記録を行い、後半の2回のパスで透明インクの記録を行う。これにより、有色インクが記録媒体上に定着した後、その上から透明インクを記録することができ、図13(b)で示したような有色インク層を透明インク層で覆う、すなわち色材を樹脂が覆うような膜の形成が可能となる。
【0077】
以上のように、本実施形態によれば、入力信号値に対応して透明インクの使用量を設定した色変換テーブルを用いる。これにより、ブロンズ色と記録色とが大きく異なることで好ましくないと知覚されるブロンズを低減し、画質低下を抑制することができる。
【0078】
(第2実施形態)
上述した第1の実施形態では、記録物の記録色とブロンズ色の色相差θs−dを小さくするような色変換テーブルを設定することにより、好ましくないと知覚されるブロンズを低減するものである。しかし、入力信号値が示す色がグレーライン(軸)またはその近傍の低彩度領域の色である場合、記録色とブロンズ色の色相差よりも、ブロンズ色の彩度の方が画質の低下として知覚されやすい傾向にある。そこで、本発明の第2の実施形態は、入力信号値が示す色が低彩度領域(この場合、記録色も低彩度)の色については、記録色とブロンズ色の色相差Δθa−bではなく、ブロンズ色の彩度C*を小さくする色変換テーブルを用いる。一方、高彩度領域の色については、実施形態1に記載の特徴をもつ色変換テーブルである。具体的には、本実施形態では、上記低彩度領域としてグレーラインとして本実施形態の色変換テーブルについて説明する。なお、この所定の低彩度領域は、上記のとおりグレーラインおよびその近傍として規定することができるが、どの程度の近傍かは、例えば、実際の記録を行ってブロンズ色が好ましくないものとして知覚される範囲として規定することができる。
【0079】
図18(a)および(b)は、ブロンズ色の変動および透明インクによるブロンズ色の彩度低下を説明する図である。具体的には、入力信号値が示す色が白点W(255,255,255)から黒点K(0,0,0)に至るグレーライン上を変化するときのブロンズ色の変動を示している。
【0080】
このうち、図18(a)は、透明インクを用いない場合の、グレーライン上のブロンズ色をa*b*面における位置(色)で示している。図18(a)に示すように、有色インクのみで記録した記録物のブロンズ色は、ほぼa*>0,b*>0の領域に位置する。これは、グレーラインで主に使用されるブラックインクやグレーインクが、記録物上でイエローからオレンジにかけた色相のブロンズ現象を発生させる特性があるためである。また、図18(b)は、グレーライン上のブロンズ色の彩度を示す図であり、透明インクの使用量を、0%、10%、20%、30%、40%としたときの、それぞれの彩度を示している。このうち、実線はグレーラインのブロンズ色の彩度C*_sについて、透明インクを用いない(0%)場合を示し、この場合は、ブロンズ色が好ましくないと知覚されない、彩度C*_sの目標値の範囲であるC*_s≦10を満たすことができない。
【0081】
これに対し、図18(b)の点線で示すように、透明インクを使用することによりブロンズの彩度が低下する。そして、透明インクの使用量を20%から40%とする場合は、目標値の範囲を満たすようブロンズの彩度を低減することができる。本実施形態では、目標範囲に収まる範囲内で、かつ、透明インクの使用量が少なくなるように、グレーラインにおける透明インクの使用量を決定し、色変換テーブルに反映する。ただし、白点Wについては、有色インクによるブロンズ現象が発生しないため、透明インク量を0とする。
【0082】
図19は、本実施形態の色変換テーブルを示す図であり、詳しくは、グレーライン上の色に対する有色インクと透明インクの使用量を示している。図19に示すように、本実施形態の色変換テーブルは、グレーライン上の色を再現するのに、基本的にブラックインク(K)およびグレーインク(Gy)を用いる。そして、図18(b)に関して説明したようにさらに透明インクを用いることにより、グレーライン上の色を記録する際のブロンズ色の彩度C*を小さくする。これにより、記録物のブロンズによる画質の低下を知覚され難くすることができる。なお、上記色変換テーブルで得た記録データに基づく記録動作は、第1実施形態について図17(a)および(b)で説明したもの同様である。
【0083】
なお、上記の例では、グレーラインの色の色変換テーブルについて、説明したがグレーラインとその近傍の所定の低彩度領域について、上記で説明した色変換テーブルとしても良く、これによって、ブロンズ色が良好に低減された記録物を得ることができる。
【0084】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下に述べる本発明の特徴以外の事項については、第1または第2の実施形態と同様である。本発明の第3の実施形態は、複数の入力信号値が示す色間のブロンズ色の色相(θ1s、θ2s)の関係を考慮し、互いのブロンズ色の色相差(Δθ1s−2s)を小さくするような色変換テーブルを設定する。
【0085】
最暗部周辺の低明度領域では、その領域における複数の記録色のブロンズ色が互いに異なると、好ましくないブロンズとして画質の低下を知覚される場合がある。
【0086】
そこで、本実施形態では、最暗部、すなわち入力信号値が黒点K(0,0,0)である、記録物のブロンズ色と、その周辺の色を示す入力信号値Iによる記録物のブロンズ色との色相の差(ΔθIs−Ks)を小さくする色変換テーブルを設定する。本実施形態では、先ず、低明度領域を、R’,G’,B’入力信号値が、R’≦64、またはG’≦64、またはB’≦64である領域とする。そして、この低明度領域を除く領域については、第1実施形態または第2実施形態で説明した内容の色変換テーブルとする。ただし、本実施形態で上記のように規定する低明度領域が、第2実施形態で説明した低彩度領域に該当する場合は、グレーライン(R‘G’B’入力信号値の値が等しいライン)を除く領域については、以下に説明する、本実施形態に係る内容の色変換テーブルとする。
【0087】
図20は、本実施形態に係る、入力信号値および黒点のブロンズ色をa*b*面において示す図である。具体的には、入力信号値が示す色B(64,0,0)、C(0,0,64)と、黒点K(0,0,0)それぞれのブロンズ色を示している。図20において、菱形印は、黒点K(0,0,0)に対して透明インクCLの使用量を20%としたときのブロンズ色を示す。一方、四角印は、色C(0,0,64)について、透明インクCLの使用量を、0%、20%としたときのそれぞれブロンズ色を示す。透明インクCLの使用量が0%と20%の場合とでブロンズ色の色相の変化は少ない。
【0088】
一方、図20に示す丸印は、入力信号値が示す色B(64,0,0)に対して透明インクCLの使用量を0%,15%,20%としたときのブロンズ色を示す。色Bの場合、この図からわかるように、透明インクの使用量によってブロンズ色の色相変化が大きくなる。本実施形態では、このような色に対して、黒点K(0,0,0)のブロンズ色の色相に近くするために、B(64,0,0)の透明インクCLの使用量を15%とした色変換テーブルとする。
【0089】
このように、黒点での記録物のブロンズ色に対する、その周辺の入力信号値が示す記録物の色のブロンズ色の色相の差が小さくなるように透明インクの使用量を定める。これにより、最暗部周辺においてもブロンズによる画質低下を抑制することが可能となる。
【0090】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態は、有色インクと透明インクの記録方法に関し、第1実施形態で説明した、有色インクと透明インクを異なるパスで記録するのではなく、同じパスで記録する方法に関するものである。この記録方法に係る特徴事項以外の事項については第1実施形態と同様である。第1の実施形態では、有色インクと透明インクの記録するパスを完全に分離するものとした。しかし、このパスを完全に分離する方法の場合、有色インクのパス数が減ることから、それだけマルチパスの効果、すなわち、搬送誤差や吐出不良によるムラやスジを低減する効果が削減される場合がある。そこで、本実施形態では、4パスで記録を完了する場合に、マスクパターンを、有色インクについて、1パス目が40%、2パス目が30%、3パス目が20%、4パス目が10%のデューティーとする。また、透明インクを、1パス目が10%、2パス目が20%、3パス目が30%、4パス目が40%のデューティーとする。
【0091】
図21は、記録物表面の有色インク層と透明インク層の様子を示す模式図である。図13(b)が第1実施形態に係る、有色インクと透明インクを記録するパスを分離した場合の記録状態を示すのに対して、図21は、本実施形態に係る、同じパスで有色インクと透明インクとを記録した場合の記録状態を示している。図13(b)に示す状態は、有色インク層と透明インク層が分離している、すなわち色材と樹脂が分離して層構造を形成している。これに対して、図21に示す層1005は、色材と樹脂が混在したものである。この図21に示す状態では樹脂が色材を被覆する被覆率が、図13(b)に示す場合に比べ下がるものの、部分的に被覆することから、透明インクの記録によってブロンズ色を変化させることが可能である。
【0092】
以上のように、同じパスで有色インクと透明インクとを重複して記録するマスクパターンを用いて記録する方法によれば、第1実施形態に比べて、透明インクの使用量に対するブロンズ色の変化は少なくなるものの、ブロンズ減少を制御し抑制することは可能である。
【0093】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態はブロンズ色の特定方法に関し、第1実施形態と異なり、光が複数の方向から記録物上に入射し反射した反射光について、正反射光を含む反射光と正反射光を含まない反射光を測定してブロンズ色と記録色を求めるものである。この評価方法以外の事項については第1の実施形態と同様である。
【0094】
第1の実施形態では、ブロンズ色の特定方法として、図1に示すような、光が単方向から記録物に入射し反射された反射光、いわゆる正反射光のみを測定する方法に関するものである。しかし、記録物の観察環境は、一般にオフィスなど、様々な方向から光が入射する環境が多い。そこで、本実施形態では、光が複数の方向から記録物上に入射し反射した反射光について、正反射光を含む反射光と正反射光B’を含まない反射光を測定する。そして、正反射光を含む反射光の測定結果に基づいてブロンズ色を特定し、正反射光を含まない反射光の測定結果に基づいて記録色を特定する。
【0095】
図22(a)および(b)は、本実施形態で用いる測定システムを説明する図であり、コニカミノルタ社製の分光測色計(積分球方式)を模式的に示すものである。図22(a)は、正反射光を含む反射光を検出する状態を示し、図22(b)は、光トラップを有し正反射光を除いた反射光を検出する状態を示している。この測定システムによる測定で得られた光の分光強度から、第1実施形態にて上述したブロンズ特性算出方法を用いて、正反射光を含む反射光の彩度C*_s’および色相θs’と、正反射光を含まない反射光の彩度C*_d´および色相θd´を、求める。
【0096】
この測定器を用いて得られる上記彩度および色相に基づいて、第1実施形態と同様に、入力信号値が示す色の記録色とブロンズ色との色相差’が小さくなるように透明インクの使用量を設定することにより、色変換テーブルを求めることができる。
【0097】
また、本実施形態の測定値を第2実施形態と同じ色変換テーブルに適用する場合、入力信号値が示す色について、本実施形態の測定結果として、記録色の彩度C*_d’とブロンズ色の彩度C*_s’を求める。そして、この求めた記録色の彩度C*_d’とこれに対するブロンズ色の彩度C*_s’の差が小さくなるように透明インクの使用量を設定する。
【0098】
なお、実際の記録物の観察では、正反射光を含む反射光と正反射光を含まない反射光とが混合した反射光を観察している。このため、記録物の見た目と合わせるために、正反射光を含む反射光の彩度の値C*_s’に重みをかける等してもよい。
【0099】
(その他の実施形態)
上述した第1〜4実施形態では、図7に示す画像処理のうちハーフトーン処理部904までをホスト装置において構成し、それ以降の処理部をインクジェット記録装置において構成するようにしている。しかし、本発明に係る色変換部903およびそれ以降の処理部をインクジェット記録装置において構成してもよい。あるいは、マスク処理部907までの画像処理の総ての処理部をホスト装置、または記録装置の一方のみにおいて構成するようにしてもよい。以上の形態のホスト装置またはインクジェット記録装置はいずれも画像処理装置を構成する。
【0100】
また、上述の第1〜4実施形態では、樹脂を含有し色材を含有しない透明インクを用いるものとしたが、必ずしも色材を含有しないインクに限定する必要はない。有色インクで通常用いられるシアン系やマゼンダ系、グレー系の濃淡インクシステムにおいて、淡インクに樹脂を添加することにより、この淡インクを透明インクの代わりに用いることもできる。本明細書では、これらのインクを、上記透明インクを含めて処理インクという。ただし、他の色相で本発明を実施する場合には、樹脂を多く含む淡インクの色材が、本来発色させるべき色の再現に影響しないように、淡インクの色材濃度を低くしたり、インク使用量を調整したりするなどの調整が必要となる。
【0101】
さらに、インクの色材としては、顔料に限らず染料を用いるようにしてもよい。
【0102】
さらに、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0103】
100 コントローラ
101 ASIC
103 ROM
104 RAM
110 ホスト装置
903 色変換部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置において、
色信号を、記録に用いるインクの使用量に対応したインク色信号に変換する色変換手段であって、前記色信号に基づいて記録される画像の記録色と、前記記録色が正反射光を含む反射光によって観測されるブロンズ色と、の違いに応じて、前記ブロンズ色を変更するための処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換する色変換手段、
を具えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記関係は、前記記録色の色相と前記ブロンズ色の色相との色相差に応じて前記処理インクの使用量が定められた関係であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記記録は、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体上の同一領域に複数回の走査を行って当該同一領域の記録を完成するものであり、
前記インク色信号に基づいて記録媒体にインクを記録するための記録データを生成する生成手段、をさらに具え、
前記生成手段は、前記処理インク以外のインクよりも前記処理インクの方が後の走査で記録される割合が高くなるように記録データを生成することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記関係は、前記色相差が、前記処理インクを使用しない場合のブロンズ色と記録色との色相差よりも小さい所定値以下の値となるように、前記処理インクが0より大きい使用量を定めた関係であることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記所定値は、シアンインクのみを使用する領域において、90度であることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記所定値は、シアンインクのみを使用する領域において、40度であることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記色変換手段は、前記色信号が示す色が所定の低彩度領域の色である場合は、前記ブロンズ色の彩度が、前記処理インクを使用しない場合のブロンズ色の彩度より小さい所定値以下となるように処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記色変換手段は、前記色信号が示す色が所定の低明度領域の色である場合は、当該低明度領域における2つの色信号に基づく2つのブロンズ色の色相差が所定値以下となるように処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記処理インクは透明インクであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体上の同一領域に複数回の走査を行って当該同一領域の記録を完成するインクジェット記録装置であって、
色信号を、記録に用いるインクの使用量に対応したインク色信号に変換する色変換手段であって、前記色信号に基づいて記録される画像の記録色と、前記記録色が正反射光を含む反射光によって観測されるブロンズ色と、の違いに応じて、前記ブロンズ色を変更するための処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換する色変換手段と、
前記インク色信号に基づいて記録媒体にインクを記録するための記録データを生成する生成手段と、を具え、
前記生成手段は、前記処理インク以外のインクよりも前記処理インクの方が後の走査で記録される割合が高くなるように記録データを生成することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
画像処理方法において、
色信号を、記録に用いるインクの使用量に対応したインク色信号に変換する色変換工程であって、前記色信号に基づいて記録される画像の記録色と、前記記録色が正反射光を含む反射光によって観測されるブロンズ色と、の違いに応じて、前記ブロンズ色を変更するための処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換する色変換工程、
を有したことを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
コンピュータに読み取られることにより、当該コンピュータを請求項1ないし9のいずれかに記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
画像処理装置において、
色信号を、記録に用いるインクの使用量に対応したインク色信号に変換する色変換手段であって、前記色信号に基づいて記録される画像の記録色と、前記記録色が正反射光を含む反射光によって観測されるブロンズ色と、の違いに応じて、前記ブロンズ色を変更するための処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換する色変換手段、
を具えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記関係は、前記記録色の色相と前記ブロンズ色の色相との色相差に応じて前記処理インクの使用量が定められた関係であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記記録は、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体上の同一領域に複数回の走査を行って当該同一領域の記録を完成するものであり、
前記インク色信号に基づいて記録媒体にインクを記録するための記録データを生成する生成手段、をさらに具え、
前記生成手段は、前記処理インク以外のインクよりも前記処理インクの方が後の走査で記録される割合が高くなるように記録データを生成することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記関係は、前記色相差が、前記処理インクを使用しない場合のブロンズ色と記録色との色相差よりも小さい所定値以下の値となるように、前記処理インクが0より大きい使用量を定めた関係であることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記所定値は、シアンインクのみを使用する領域において、90度であることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記所定値は、シアンインクのみを使用する領域において、40度であることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記色変換手段は、前記色信号が示す色が所定の低彩度領域の色である場合は、前記ブロンズ色の彩度が、前記処理インクを使用しない場合のブロンズ色の彩度より小さい所定値以下となるように処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記色変換手段は、前記色信号が示す色が所定の低明度領域の色である場合は、当該低明度領域における2つの色信号に基づく2つのブロンズ色の色相差が所定値以下となるように処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記処理インクは透明インクであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体上の同一領域に複数回の走査を行って当該同一領域の記録を完成するインクジェット記録装置であって、
色信号を、記録に用いるインクの使用量に対応したインク色信号に変換する色変換手段であって、前記色信号に基づいて記録される画像の記録色と、前記記録色が正反射光を含む反射光によって観測されるブロンズ色と、の違いに応じて、前記ブロンズ色を変更するための処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換する色変換手段と、
前記インク色信号に基づいて記録媒体にインクを記録するための記録データを生成する生成手段と、を具え、
前記生成手段は、前記処理インク以外のインクよりも前記処理インクの方が後の走査で記録される割合が高くなるように記録データを生成することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
画像処理方法において、
色信号を、記録に用いるインクの使用量に対応したインク色信号に変換する色変換工程であって、前記色信号に基づいて記録される画像の記録色と、前記記録色が正反射光を含む反射光によって観測されるブロンズ色と、の違いに応じて、前記ブロンズ色を変更するための処理インクの使用量が定められた関係に従って、色信号を前記処理インクのインク色信号を含むインク色信号に変換する色変換工程、
を有したことを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
コンピュータに読み取られることにより、当該コンピュータを請求項1ないし9のいずれかに記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図9】
【図10】
【図13】
【図16】
【図17】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図9】
【図10】
【図13】
【図16】
【図17】
【図21】
【公開番号】特開2013−75363(P2013−75363A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214848(P2011−214848)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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