説明

画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム

【課題】入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することが可能な、画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】入力された入力色信号に基づいて色ベクトルを導出する色ベクトル導出部と、色ベクトル導出部が導出した色ベクトルを保持する色ベクトル保持部と、色ベクトル導出部が導出した現フレームに対応する第1色ベクトルと色ベクトル保持部に保持された前フレームに対応する第2色ベクトルとに基づいて色ベクトルの内積値を導出する内積導出部と、第1ベクトルと第2ベクトルと内積導出部が導出した内積値とに基づいてクロスカラー妨害の発生の度合いを導出するクロスカラー妨害判定部とを備える画像処理装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アナログテレビジョン方式のテレビジョン放送(以下、「アナログ放送」という。)に替わるテレビジョン放送として、デジタルテレビジョン方式のテレビジョン放送(以下、「デジタル放送」という。)が開始され、デジタル放送を受信可能な表示装置の普及が進んでいる。
【0003】
アナログ放送では、画像信号の伝送効率を高めるために輝度信号(Y)と色信号(C)とが合成されたいわゆるコンポジット信号(composite signal)が用いられる。そのため、アナログ放送では、表示装置などの受像機側において、受信した画像信号をY/C分離(Y/C separation)させることによって輝度信号(Y)と色信号(C)とに分離させ、受信した画像信号に応じた画像を表示画面に表示させている。ここで、上記受像機におけるY/C分離の性能が低い場合には、輝度信号(Y)に色信号(C)が混入することにより「ドット妨害」が発生したり、または、色信号(C)に輝度信号(Y)が混入することにより「クロスカラー妨害」が発生してしまう。ドット妨害やクロスカラー妨害は一種のノイズであるため、これらが発生した場合には画質を損ねてしまう。
【0004】
このような中、Y/C分離をより確実に行う技術が開発されている。1次元フィルタ、2次元フィルタ、および3次元フィルタを用いてY/C分離を行う技術としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特許第3240711号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンポジット信号が送信され受像機側においてY/C分離が行われるアナログ放送に対して、デジタル放送では、輝度信号(Y)および色信号(C)それぞれが、例えば放送局などから送信される。また、デジタル放送では、アナログ放送で用いられてきたSD(Standard Definition)解像度の画像信号ではなく、より高精細なHD(High Definition)解像度の画像信号が放送局などから送信される。ここで、デジタル放送において放送局などから送信される画像信号は、全てがHD解像度の画像信号ではなく、従来のアナログ放送で用いられてきたSD解像度の画像信号をHD解像度へとアップコンバートさせた擬似的なHD解像度の画像信号(スケーリングされた画像信号。以下、「擬似HD解像度の画像信号」とよぶ場合もある。)が含まれる場合がある。
【0007】
擬似HD解像度の画像信号が送信される場合には、放送局などの画像信号の供給元において、Y/C分離と、SD解像度の画像信号からHD解像度の画像信号へのアップコンバート、そして信号形式の変換が行われる。そして、輝度信号(Y)および色差信号(UV)それぞれが、例えば放送局などから送信される。ここで、放送局などの画像信号の供給元では、Y/C分離をより確実に行う従来の技術を用いてY/C分離が行われるとは限らない。そのため、例えばデジタル放送を受信する受像機では、クロスカラー妨害が既に発生しかつ当該発生したクロスカラー妨害が拡大によって悪化した(すなわち、より画質が低下した)画像信号が受信される可能性がある。ここで、クロスカラー妨害とは、色信号に輝度信号成分が混入することによって生じるノイズであり、例えば、虹模様のノイズ(色つきモアレ)として画像上に表れるものである。
【0008】
また、クロスカラー妨害が発生している擬似HD解像度の画像信号では、例えばアップコンバートに起因して、クロスカラー妨害の発生に係る画像信号の性質が、SD解像度の画像信号から変化する。上記クロスカラー妨害の発生に係る画像信号の性質の変化としては、例えば、「1ラインごとにクロスカラー妨害成分が反転する性質が失われること」や、「クロスカラー妨害成分が有する空間周波数が変化すること」が挙げられる。そのため、擬似HD解像度の画像信号に対しては、SD解像度の画像信号において有効なクロスカラー妨害の検出方法であった「1ラインごとにクロスカラー妨害成分が反転する性質を用いた検出方法(例えば、垂直方向にフィルタリングする方法)」を用いたとしても、“Y/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害”の発生を検出することができない。また、同様に、擬似HD解像度の画像信号に対しては、「所定の空間周波数成分に基づいてクロスカラー妨害を検出する検出方法(例えば、バンドパス・フィルタ(Band-Pass Filter)を用いる方法)」を用いたとしても、“Y/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害”の発生を検出することができない。
【0009】
ここで、“Y/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害”が検出できない場合には、例えば、当該クロスカラー妨害を低減することができず、画質の低下などが生じてしまう。したがって、“Y/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害”を検出する方法が希求されていた。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することが可能な、新規かつ改良された画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点によれば、入力された入力色信号に基づいて色ベクトルを導出する色ベクトル導出部と、上記色ベクトル導出部が導出した色ベクトルを保持する色ベクトル保持部と、上記色ベクトル導出部が導出した現フレームに対応する第1色ベクトルと、上記色ベクトル保持部に保持された前フレームに対応する第2色ベクトルとに基づいて、色ベクトルの内積値を導出する内積導出部と、上記第1ベクトルと、上記第2ベクトルと、上記内積導出部が導出した上記内積値とに基づいて、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出するクロスカラー妨害判定部とを備える画像処理装置が提供される。
【0012】
かかる構成により、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0013】
また、上記入力色信号を時間軸方向に平滑化するフィルタと、上記クロスカラー妨害判定部における判定結果に基づいて、上記入力色信号と上記フィルタにおいて平滑化された平滑化色信号とを混合する比率を規定するゲイン値を画素ごとに設定するゲイン設定部と、画素ごとに設定される上記ゲイン値に基づいて、上記入力色信号と上記平滑化色信号とを画素ごとに混合する混合部とを備えてもよい。
【0014】
かかる構成により、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出し、検出されたアップコンバートされたクロスカラー妨害を低減することによって、高画質化を図ることができる。
【0015】
また、入力された現フレームに対応する入力輝度信号と前フレームに対応する前フレーム入力輝度信号との間の相関基づいて、画素ごとに動き量を検出する動き検出部をさらに備え、上記ゲイン設定部は、さらに上記動き検出部が検出した上記動き量に基づいて上記ゲイン値を画素ごとに設定してもよい。
【0016】
かかる構成により、アップコンバートされたクロスカラー妨害の誤検出をより確実に防止することができる。
【0017】
また、上記入力輝度信号に基づいて、クロスカラー妨害が発生する条件を満たす画素を画素ごとに検出するクロスカラー妨害発生条件検出部をさらに備え、上記ゲイン設定部は、さらに上記クロスカラー妨害発生条件検出部の検出結果に基づいて上記ゲイン値を画素ごとに設定してもよい。
【0018】
かかる構成により、アップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとにより高い精度で低減することができる。
【0019】
また、上記平滑化色信号に対して、画素ごとに上記平滑化色信号の絶対値に応じたゲイン抑制値を乗算するゲイン抑制部をさらに備え、上記混合部は、上記入力色信号と、上記ゲイン抑制値が乗算された平滑化色信号とを画素ごとに混合してもよい。
【0020】
かかる構成により、アップコンバートされたクロスカラー妨害の影響を低減することができる。
【0021】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の観点によれば、入力された入力色信号に基づいて色ベクトルを導出するステップと、上記色ベクトルを導出するステップにおいて導出された色ベクトルを保持するステップと、上記色ベクトルを導出するステップにおいて導出された現フレームに対応する第1色ベクトルと、上記保持するステップにおいて保持された前フレームに対応する第2色ベクトルとに基づいて、色ベクトルの内積値を導出するステップと、上記第1ベクトルと、上記第2ベクトルと、上記内積値を導出するステップにおいて導出された上記内積値とに基づいて、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出するステップとを有する画像処理方法が提供される。
【0022】
かかる方法を用いることにより、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0023】
また、上記目的を達成するために、本発明の第3の観点によれば、入力された入力色信号に基づいて色ベクトルを導出するステップ、上記色ベクトルを導出するステップにおいて導出された色ベクトルを保持するステップ、上記色ベクトルを導出するステップにおいて導出された現フレームに対応する第1色ベクトルと、上記保持するステップにおいて保持された前フレームに対応する第2色ベクトルとに基づいて、色ベクトルの内積値を導出するステップ、上記第1ベクトルと、上記第2ベクトルと、上記内積値を導出するステップにおいて導出された上記内積値とに基づいて、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出するステップをコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【0024】
かかるプログラムにより、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
(本発明の実施形態に係る画像処理システムの構成例)
まず、本発明の実施形態に係る画像処理システムの構成の一例について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像処理システムの構成の一例を示す説明図である。
【0028】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る画像処理システムは、画像信号を送信する画像信号送信装置(図1の符号10、20、30、…)と、入力された(あるいは、受信した)画像信号に基づいて画像を表示する表示装置100とを有する。ここで、本発明の実施形態に係る画像信号送信装置と表示装置100とは、それぞれ無線/有線で接続される。
【0029】
本発明の実施形態に係る画像信号送信装置は、HD解像度の画像信号を送信する。このとき、本発明の実施形態に係る画像信号送信装置は、送信する画像信号に応じて、選択的にY/C分離とアップコンバートとを行う。より具体的には、本発明の実施形態に係る画像信号送信装置は、送信する画像信号がSD解像度の画像信号である場合にY/C分離とアップコンバートとを行うことによって、HD解像度の画像信号または擬似HD解像度の画像信号を送信する。
【0030】
ここで、本発明の実施形態に係る画像信号送信装置としては、例えば、デジタル放送に係る画像信号を送信する放送局10(あるいは、テレビ塔)や、Y/C分離機能およびアップコンバート機能を備え、画像データを再生して再生した画像を示す画像信号を出力する画像再生装置20、30、…などが挙げられる。画像再生装置20、30、…としては、例えば、PC(Personal Computer)などのコンピュータ、Blu−ray(登録商標)ディスク再生機(または、Blu−ray(登録商標)レコーダ)やDVDレコーダなどのディスク再生装置、プレイステーション(登録商標)シリーズなどのゲーム機などが挙げられるが、上記に限られない。
【0031】
表示装置100は、入力された画像信号に基づいて、Y/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに検出する。また、表示装置100は、例えば、クロスカラー妨害の検出結果に基づいて、入力された画像信号に対してY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害(ノイズ)を低減する画像処理を施す。そして、表示装置100は、例えば、アップコンバートされたクロスカラー妨害が低減された画像信号に応じた画像や、アップコンバートされたクロスカラー妨害の検出結果などを表示画面に表示する。つまり、表示装置100は、入力された画像信号を処理する画像処理装置としての役目も果たす。なお、表示装置100の構成例、および本発明の実施形態に係る画像処理(アップコンバートされたクロスカラー妨害の検出処理や、クロスカラー妨害の検出結果に基づいてアップコンバートされたクロスカラー妨害を低減するクロスカラー妨害低減処理など)については、後述する。
【0032】
本発明の実施形態に係る画像処理システムでは、画像信号送信装置がHD解像度の画像信号または擬似HD解像度の画像信号を送信する。そして、本発明の実施形態に係る画像処理システムでは、上記画像信号を受信した表示装置100が、入力された画像信号に基づいて、Y/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに検出する。
【0033】
上述したように、入力された画像信号が擬似HD解像度の画像信号である場合には、クロスカラー妨害の発生に係る画像信号の性質がSD解像度の画像信号から変化する。そのため、SD解像度の画像信号において有効であった従来のクロスカラー妨害の検出方法では、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができない。よって、表示装置100は、SD解像度の画像信号において有効であった従来のクロスカラー妨害の検出方法を用いずに、後述する本発明の実施形態に係るクロスカラー妨害検出方法を用いることによってアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出する。したがって、表示装置100は、従来のクロスカラー妨害の検出方法では検出することができないアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0034】
また、表示装置100は、本発明の実施形態に係るクロスカラー妨害検出方法を用いた検出結果に基づいて、例えば、アップコンバートされたクロスカラー妨害(ノイズ)の低減を図る。したがって、本発明の実施形態に係る画像処理システムでは、表示装置100の表示画面に表示される画像の高画質化を図ることができる。
【0035】
以下、本発明の実施形態に係る表示装置について説明する。なお、以下では、本発明の実施形態に係る表示装置が、入力された画像信号を画像処理し、画像処理後の画像信号に対応する画像を表示画面に表示するものとして説明するが、本発明の実施形態は、かかる構成に限られない。本発明の実施形態は、以下に示す本発明の実施形態に係る表示装置を、画像を表示する表示デバイスとは独立の画像処理装置(例えば、以下に示す画像処理部を独立の装置とする構成)とすることもできる。つまり、以下に示す本発明の実施形態に係る表示装置は、画像処理装置と置き換えることができる。以下では、説明の便宜上、本発明の実施形態に係る画像処理装置を表示装置に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0036】
また、本発明の実施形態に係る表示装置に入力される(あるいは、受信する)画像信号とは、画像信号送信装置から送信される輝度信号(以下、「入力輝度信号」という。)、および画像信号送信装置から送信される色信号(以下、「入力色信号」という。)を総称したものである。ここで、本発明の実施形態に係る画像信号は、静止画像を示すものであってもよいし、または、動画像(いわゆる映像)であってもよい。また、上述したように、入力輝度信号は、画像信号送信装置においてY/C分離された輝度信号(擬似HD解像度の輝度信号)である場合がある。同様に、入力色信号は、画像信号送信装置においてY/C分離された色信号(擬似HD解像度の色信号)である場合がある。
【0037】
(本発明の実施形態に係る表示装置)
図2は、本発明の実施形態に係る表示装置100の構成例を示すブロック図である。図2を参照すると、表示装置100は、信号入力部102と、画像処理部104と、表示部106とを備える。
【0038】
また、表示装置100は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)などで構成され表示装置100全体を制御することが可能な制御部(図示せず)や、制御部が使用するプログラムや演算パラメータなどの制御用データが記録されたROM(Read Only Memory;図示せず)、制御部により実行されるプログラムなどを一次記憶するRAM(Random Access Memory;図示せず)、映像ファイルや画像ファイル、アプリケーションなどを記憶可能な記憶部(図示せず)、ユーザが操作可能な操作部(図示せず)などを備えてもよい。表示装置100は、例えば、データの伝送路としてのバス(bus)により上記各構成要素間を接続する。また、上記制御部は、画像処理部104として機能することもできる。
【0039】
ここで、記憶部(図示せず)としては、例えば、ハードディスク(Hard Disk)などの磁気記録媒体や、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、PRAM(Phase change Random Access Memory)などの不揮発性メモリ(nonvolatile memory)が挙げられるが、上記に限られない。
【0040】
また、操作部(図示せず)としては、例えば、キーボードやマウスなどの操作入力デバイスや、ボタン、方向キー、ジョグダイヤルなどの回転型セレクター、あるいは、これらの組み合わせなどが挙げられるが、上記に限られない。また、表示部106としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイ(organic ElectroLuminescence display;または、OLEDディスプレイ(Organic Light Emitting Diode display)とも呼ばれる。)などが挙げられるが、上記に限られない。
【0041】
[表示装置100のハードウェア構成例]
図3は、本発明の実施形態に係る表示装置100のハードウェア構成の一例を示す説明図である。図3を参照すると、表示装置100は、例えば、MPU120と、ROM122と、RAM124と、記録媒体126と、入出力インタフェース128と、操作入力デバイス130と、表示デバイス132と、通信インタフェース134とを備える。また、表示装置100は、例えば、データの伝送路としてのバス136で各構成要素間を接続する。
【0042】
MPU120は、表示装置100全体を制御する制御部として機能する。また、MPU120は、表示装置100において、画像処理部104の役目を果たすこともできる。
【0043】
ROM122は、MPU120が使用するプログラムや演算パラメータなどの制御用データを記憶し、また、RAM124は、MPU120により実行されるプログラムなどを一次記憶する。
【0044】
記録媒体126は、表示装置100の記憶部として機能し、映像ファイルや画像ファイル、アプリケーションなどを記憶可能とする。ここで、記録媒体126としては、例えば、ハードディスクなどの磁気記録媒体や、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリが挙げられるが、上記に限られない。
【0045】
入出力インタフェース128は、例えば、操作入力デバイス130や、表示デバイス132を接続する。ここで、入出力インタフェース128としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子や、DVI(Digital Visual Interface)端子、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)端子などが挙げられるが、上記に限られない。また、操作入力デバイス130は、例えば、ボタン、方向キー、ジョグダイヤルなどの回転型セレクター、あるいは、これらの組み合わせなど、表示装置100上に備えられ、表示装置100の内部で入出力インタフェース128と接続される。また、表示デバイス132は、例えば、LCD、有機ELディスプレイなど、表示装置100上に備えられ、表示装置100の内部で入出力インタフェース128と接続される。なお、入出力インタフェース128は、表示装置100の外部装置としての操作入力デバイス(例えば、キーボードやマウスなど)や、表示デバイス(例えば、外部ディスプレイなど)と接続することもできることは、言うまでもない。
【0046】
通信インタフェース134は、外部装置と有線/無線通信を行うためのインタフェースであり、信号入力部102として機能する。ここで、通信インタフェース134としては、例えば、IEEE802.11ポート、RF(Radio Frequency)回路、HDMI端子などが挙げられるが、上記に限られない。
【0047】
表示装置100は、図3に示すようなハードウェア構成により、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出する。また、表示装置100は、図3に示すようなハードウェア構成によって、クロスカラー妨害の検出結果に基づいてアップコンバートされたクロスカラー妨害(ノイズ)を低減し、高画質化を図ることができる。なお、本発明の実施形態に係る表示装置のハードウェア構成は、図3に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る表示装置は、後述する画像処理部104の機能を実現する画像処理回路などをさらに備えることもできる。
【0048】
再度図2を参照して、表示装置100の各構成要素について説明する。信号入力部102は、放送局10や画像再生装置20、30、…などから有線/無線で送信される画像信号を受信し、受信した画像信号のデコードなどを行う役目を果たす。
【0049】
画像処理部104は、信号入力部102が受信した画像信号に対して、様々な画像処理を施す。画像処理部104が行う画像処理としては、例えば、インターレース信号をプログレッシブ信号に変換するIP(Interlace/Progressive)変換処理や、色空間の変更などの色に関する処理を行うクロマ処理、中間フレームを生成してフレームレートを高める中間フレーム生成処理、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出するクロスカラー妨害検出処理、アップコンバートされたクロスカラー妨害(ノイズ)を低減するクロスカラー妨害低減処理などが挙げられるが、上記に限られない。本発明の実施形態に係るクロスカラー妨害検出処理、クロスカラー妨害低減処理については、後述する。
【0050】
表示部106は、画像処理部104において処理された画像信号に基づいて、当該画像信号に応じた画像を表示する。また、表示部106は、画像処理部104におけるクロスカラー妨害の検出結果を表示することもできる。
【0051】
〔表示部106の構成例〕
表示部106は、パネル110と、行駆動部112と、列駆動部114と、電源供給部116と、表示制御部118とを備える。
【0052】
パネル110は、マトリクス状(行列状)に配置された複数の画素を備え、画像が表示される表示画面としての役目を果たす。例えば、SD解像度の画像を表示するパネルは、少なくとも640×480=307200(データ線×走査線)の画素を有し、カラー表示のために当該画素がR、G、Bのサブピクセル(sub pixel)からなる場合には、640×480×3=921600(データ線×走査線×サブピクセルの数)のサブピクセルを有する。同様に、例えば、HD解像度の映像を表示するパネルは、1920×1080の画素を有し、カラー表示の場合には、1920×1080×3のサブピクセルを有する。
【0053】
また、パネル110は、例えば、画素ごとに印加する電圧量/電流量を制御するための画素回路(図示せず)を備えていてもよい。画素回路は、例えば、印加される走査信号および電圧信号により電流量を制御するためのスイッチ素子およびドライブ素子と、電圧信号を保持するためのキャパシタで構成される。上記スイッチ素子および上記ドライブ素子は、例えば、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)で構成される。
【0054】
行駆動部112、および列駆動部114は、例えば、パネル110が有する複数の画素に電圧信号を印加して各画素を発光させる。ここで、行駆動部112、および列駆動部114は、一方が画素のON/OFFを決定する電圧信号(走査信号)を印加し、他方が表示させる画像に応じた電圧信号(画像信号)を印加する役目を果たすことができる。
【0055】
また、行駆動部112、および列駆動部114の駆動方式としては、例えば、上記行列状に配置された画素ごとに発光させる点順次駆動走査方式、上記行列状に配置された画素を一列ごとに発光させる線順次駆動走査方式、そして、上記行列状に配置された全ての画素を発光させる面順次駆動走査方式などが挙げられる。なお、図2に示す表示装置100の表示部106は、行駆動部112と列駆動部114との2つの駆動部を備えているが、本発明の実施形態に係る表示装置が、表示部を1つの駆動部で構成できることは、言うまでもない。
【0056】
電源供給部116は、行駆動部112および列駆動部114に電源を供給し、行駆動部112および列駆動部114には電圧が印加される。また、電源供給部116が、行駆動部112および列駆動部114に印加する電圧の大きさは、画像処理部104が処理した画像信号に応じて可変する。
【0057】
表示制御部118は、例えば、MPUなどで構成され、画像処理部104が処理した画像信号に応じて、行駆動部112および列駆動部114の一方に画素のON/OFFを決定する電圧を画素に印加するための制御信号を入力し、また、他方に画像信号を入力する。また、表示制御部118は、画像処理部104が処理した画像信号に応じて、電源供給部116による行駆動部112および列駆動部114への電源の供給を制御することもできる。
【0058】
表示装置100は、図2に示すような構成を有することにより、入力された画像信号に基づいてアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。また、表示装置100は、クロスカラー妨害の検出結果に基づいて、Y/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害(ノイズ)を低減し、当該クロスカラー妨害が低減された画像を表示画面に表示することができる。
【0059】
[本発明の実施形態に係る画像処理部104における画像処理]
次に、表示装置100の画像処理部104における画像処理について、より具体的に説明する。以下では、本発明の実施形態に係る画像処理として、[1]クロスカラー妨害検出処理と、当該クロスカラー妨害検出処理を用いた、[2]クロスカラー妨害低減処理とについて説明する。
【0060】
ここで、画像処理部104が検出の対象とするクロスカラー妨害とは、例えば、放送局10や画像再生装置20、30、…などの画像信号の供給元から送信される擬似HD解像度の画像信号に含まれる“アップコンバートされたクロスカラー妨害”をいう。また、“アップコンバートされたクロスカラー妨害”とは、入力色信号に輝度信号成分が混入することによって生じるノイズであり、例えば、虹模様のノイズ(色つきモアレ)として画像上に表れる。
【0061】
[1]画像処理部104におけるクロスカラー妨害検出処理
まず、表示装置100の画像処理部104におけるクロスカラー妨害検出処理について、より具体的に説明する。
【0062】
(1−1)アップコンバートされたクロスカラー妨害の検出アプローチ
まず、本発明の実施形態に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出アプローチについて説明する。
【0063】
(1−1−A)検出アプローチの概要
上述したように、画像処理部104が処理する画像信号が擬似HD解像度の画像信号である場合には、1ラインごとにクロスカラー妨害成分が反転する性質が失われたり、クロスカラー妨害成分の空間周波数が変化したりするなど、クロスカラー妨害の発生に係る画像信号の性質がSD解像度の画像信号から変化する。したがって、擬似HD解像度の画像信号を処理する場合には、例えばアナログ放送の画像信号に対して有効であった「1ラインごとにクロスカラー妨害成分が反転する性質を利用したクロスカラー妨害成分の検出方法(例えば、垂直方向にフィルタリングする方法)」を用いたとしても、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができない。また、同様に、擬似HD解像度の画像信号を処理する場合には、「所定の空間周波数成分に基づいてクロスカラー妨害を検出する検出方法(例えば、バンドパス・フィルタを用いる方法)」などを用いたとしても、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができない。
【0064】
また、画像処理部104が処理する画像信号が擬似HD解像度の画像信号である場合には、アップコンバートされたクロスカラー妨害成分は、空間・時間軸座標に応じて、様々な色相をとる性質を有する。したがって、例えば、ある画素に注目したとき(以下、注目する画素を「注目画素」とよぶ。)、注目画素における現在のフレーム(以下、「現フレーム」という。)と、現フレームから一つ前のフレーム(以下、「前フレーム」という。)との間の差分値は、大きく変動する可能性がある。そのため、各画素に対して、例えば、現フレームと前フレームとの間の差分値を導出したとしても、当該差分値に基づいてアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出できるとは限らない。
【0065】
そこで、画像処理部104は、入力色信号を色ベクトルとして捉え、フレーム間における色ベクトルの偏角の差分(以下、「偏角差分」という。)を用いてアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出を図る。ここで、擬似HD解像度の画像信号においてアップコンバートされたクロスカラー妨害が発生している場合には、色ベクトルの偏角差分は、空間・時間軸座標よらずにある程度の大きさの値をとり続ける性質をもつ。例えば、入力画像信号が静止画像を示している場合には、現フレームと前フレームとの偏角差分は180°に近い値をとる。また、入力画像信号が動画像を表している場合においても、偏角差分は、ある程度以上の大きさの値をとる。上記の性質は、SD解像度の画像信号においてクロスカラー妨害が発生している場合と同様であり、アップコンバートの前後で変化しない。
【0066】
したがって、画像処理部104は、上記のようなフレーム間における色ベクトルの偏角差分に基づいて検出処理を行うことによって、従来の検出方法では検出できないアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0067】
以下、本発明の実施形態に係る色ベクトルの偏角差分に基づくアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出方法について、より具体的に説明する。また、以下では、画像処理部104に入力される入力色信号として、色ベクトルを2次元ベクトルで表すことが可能な、青の色差信号(以下、「U信号」とよぶ場合がある。)および赤の色差信号(以下、「V信号」とよぶ場合がある。)が入力される場合を例に挙げて説明する。なお、本発明の実施形態に係る入力色信号は、色空間がYUVで表される色差信号に限られず、例えば、YPbPrや、Lなど様々な色空間の信号とすることができる。
【0068】
(1−1−B)色ベクトルの偏角差分に基づくクロスカラー妨害の検出方法
図4は、本発明の実施形態に係る色ベクトルの偏角差分に基づくアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出方法を説明するための説明図である。ここで、図4は、入力色信号を、U信号に対応するu軸とV信号に対応するv軸とで表した図である。以下、図4を参照して、本発明の実施形態に係る色ベクトルの偏角差分に基づくアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出方法について説明する。
【0069】
〔第1の検出方法〕
注目画素における現フレームの入力色信号の値をU信号=u1、V信号=v1とすると、現フレームにおける色ベクトル(以下、「第1色ベクトル」という。)C1は、「C1=(u1,v1)」と表される。また、注目画素における前フレームの入力色信号の値をU信号=u0、V信号=v0とすると、前フレームにおける色ベクトル(以下、「第2色ベクトル」という。)C0は、「C0=(u0,v0)」と表される。
【0070】
ここで、第1色ベクトルC1と第2色ベクトルC0とがなす角を「θ」とすると、当該θが偏角差分に相当する。つまり、第1色ベクトルC1と第2色ベクトルC0とからθを導出すれば、画像処理部104は、導出したθをクロスカラー妨害発生の度合いを規定する評価値とすることによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0071】
〔第2の検出方法〕
第1の検出方法に示したように、図4に示すθを導出することによって、画像処理部104は導出したθに基づいてアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。しかしながら、第1色ベクトルC1と第2色ベクトルC0とからθを直接導出するためには複雑な算術演算が必要となる。そのため、第1色ベクトルC1と第2色ベクトルC0とからθを直接導出するためには、画像処理部104は、例えば、大規模な演算処理回路を備えなければならない場合がある。
【0072】
そこで、画像処理部104は、第2の検出方法として、第1色ベクトルC1と第2色ベクトルC0とからθを導出するのではなく、第1色ベクトルC1と第2色ベクトルC0とから「cosθ」を導出する。第2の検出方法において導出されるcosθは、色ベクトルの偏角差分を示すθを含むことからも明らかなように、色ベクトルの偏角差分の情報である。画像処理部104は、導出したcosθをクロスカラー妨害発生の度合いを規定する評価値とすることによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害の検出を図る。
【0073】
ここで、第2の検出方法において導出されるcosθは、cosθの値が“1.0”に近ければ近いほどクロスカラー妨害が発生している可能性が低く、また、逆にcosθの値が“−1.0”に近ければ近いほどクロスカラー妨害が発生している可能性が高いといえる。したがって、画像処理部104は、cosθを導出することによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0074】
以下、第2の検出方法に係るcosθの導出方法について説明する。画像処理部104は、第1色ベクトルC1の絶対値と、第2色ベクトルC0の絶対値と、第1色ベクトルC1と第2色ベクトルC0との内積(内積値)とを用いることによって、cosθを導出する。ここで、第1色ベクトルC1の絶対値は以下の数式1で導出され、第2色ベクトルC0の絶対値は以下の数式2で導出される。また、第1色ベクトルC1と第2色ベクトルC0との内積は、以下の数式3で導出される。したがって、数式1〜数式3より、cosθは以下の数式4によって導出される。
【0075】
なお、図4に示すように、第1色ベクトルC1と第2色ベクトルC0とがUV平面上に表される場合には、u0、u1、v0、v1の値は、それぞれ正負の値を有する。例えば、入力色信号が8ビットで表される場合には、U信号、V信号は、それぞれ“−128〜127”の値を有する。ここで、入力色信号が、例えばオフセットバイナリなどのように正の値しかもたない場合には、画像処理部104は、以下の数式1〜数式4に示す演算処理を行う前に、例えば、色空間の変換などによって第1色ベクトルC1、第2色ベクトルC0それぞれの値を変換してもよい。
【0076】
【数1】

・・・(数式1)
【0077】
【数2】

・・・(数式2)
【0078】
【数3】

・・・(数式3)
【0079】
【数4】

・・・(数式4)
【0080】
第2の検出方法を用いる画像処理部104は、上記数式1〜数式4よりcosθを導出する。ここで、導出されたcosθは、色ベクトルの偏角差分を示すθを含むことからも明らかなように、色ベクトルの偏角差分の情報である。したがって、画像処理部104は、導出したcosθをクロスカラー妨害発生の度合いを規定する評価値とすることによって、θを評価値とする場合と同様に、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0081】
〔第2の検出方法の変形例1〕
第2の検出方法に示したように、cosθを導出することによって、例えばクロスカラー妨害の検出に係る回路規模を小さくしつつ、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。しかしながら、数式4は平方根を含むため、第2の検出方法を用いる画像処理部104は、cosθを導出するために、自然数を処理する演算回路よりも大きな規模の演算処理回路を備えなければならない場合がある。
【0082】
そこで、画像処理部104は、例えば、平方根と離散的な値とが対応付けられたルックアップテーブル(Look Up Table)を用いることによって、平方根の演算を簡略化して回路規模をより小さくする。上記のようなルックアップテーブルを用いることによって、数式4に示す平方根の演算が必要なくなるので、画像処理部104は、より簡易な構成で実現されることとなる。
【0083】
〔第2の検出方法の変形例2〕
また、画像処理部104は、より簡易な構成で実現する方法は、ルックアップテーブルを用いる方法に限られない。例えば、画像処理部104は、以下の数式5に示すようにcosθではなく「cosθ」を導出し、cosθをクロスカラー妨害発生の度合いを規定する評価値とすることもできる。ここで、導出されたcosθは、色ベクトルの偏角差分を示すθを含むことからも明らかなように、色ベクトルの偏角差分の情報である。したがって、画像処理部104は、導出したcosθをクロスカラー妨害発生の度合いを規定する評価値とすることによって、θを評価値とする場合と同様に、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。なお、数式5に示す“sgn(C0・C1)”は、第1色ベクトルC1と第2色ベクトルC0との内積の符号部分を示す。
【0084】
【数5】

・・・(数式5)
【0085】
〔第2の検出方法の変形例3〕
上記では、第2の検出方法に係るクロスカラー妨害発生の度合いを規定する評価値として「cosθ」や「cosθ」を挙げたが、当該評価値は上記に限られない。例えば、「cosθ」や「cosθ」の値と、「θ」の値とが対応付けられたルックアップテーブルを用いることによって、第2の検出方法を用いる画像処理部104が、「θ」をクロスカラー妨害発生の度合いを規定する評価値とすることもできる。
【0086】
画像処理部104は、上述した第1の検出方法や第2の検出方法(または第2の検出方法に係る変形例)を用いることによって、クロスカラー妨害発生の度合いを規定する評価値を導出することができる。
【0087】
ここで、画像処理部104がクロスカラー妨害の発生の度合いとして導出する「cosθ」や「cosθ」などの評価値は、色ベクトルの偏角差分の情報である。上述したように、色ベクトルの偏角差分は、SD解像度の画像信号からアップコンバートされた擬似HD解像度の画像信号においても、アップコンバートされたクロスカラー妨害が発生している場合には空間・時間軸座標よらずにある程度の大きさの値をとり続ける性質をもつ。したがって、表示装置100は、画像処理部104が導出したクロスカラー妨害の発生の度合いによって、例えば、アップコンバートされたクロスカラー妨害が発生しているか否かや、アップコンバートされたクロスカラー妨害がどの程度発生しているのかを画素ごとに認識することができる。つまり、画像処理部104がクロスカラー妨害の発生の度合いを導出することは、アップコンバートされたクロスカラー妨害の発生を画素ごとに判定する(または検出する)ことに相当する。
【0088】
したがって、画像処理部104は、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出することによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0089】
なお、上記では、第1色ベクトルC1および第2色ベクトルC0が2次元ベクトルで表される場合を例に挙げて説明したが、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る画像処理部は、3次元ベクトルとしての色ベクトルに基づいて、色ベクトルの偏角差分の情報を導出することもできる。
【0090】
(1−2)アップコンバートされたクロスカラー妨害の検出処理の流れ
次に、上述した検出アプローチを利用した、本発明の実施形態に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出処理の流れについて説明する。以下では、上述した第2の検出方法(または、第2の検出方法の変形例)を用いる場合におけるアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出処理について説明する。
【0091】
画像処理部104は、例えば、以下の〔1−2−A〕〜〔1−2−D〕の処理によって、アップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに検出する。
【0092】
〔1−2−A〕色ベクトルの導出
画像処理部104は、入力色信号に基づいて第1色ベクトルC1を画素ごとに導出する。ここで、画像処理部104は、例えば、入力色信号の色空間が、色成分が3つ(あるいは3つ以上)で表される色空間である場合には、当該色空間を色成分が2つで表される色空間に変換した後に、第1色ベクトルC1を画素ごとに導出する。上記のように、入力色信号の色空間に応じて、色空間の変換を選択的に行うことによって、画像処理部104は、図4に示すように、色ベクトルを2次元ベクトルとして扱うことができる。したがって、画像処理部104は、入力色信号が、色成分が3つ(あるいは3つ以上)で表される色空間である場合においても、上述した第2の検出方法などを用いて、クロスカラー妨害発生の度合いを規定する評価値を導出することができる。なお、本発明の実施形態に係る画像処理部が、例えば、3次元ベクトルとしての色ベクトルに基づいて、色ベクトルの偏角差分の情報に基づくクロスカラー妨害発生の度合いを導出できることは、言うまでもない。
【0093】
〔1−2−B〕色ベクトルの保持
画像処理部104は、導出した第1色ベクトルC1を画素ごとに保持する。第1色ベクトルC1を画素ごとに保持することによって、画像処理部104は、保持された色ベクトルを第2色ベクトル(前フレームに対応する色ベクトル)として用いることができる。
【0094】
〔1−2−C〕色ベクトルの内積の導出
画像処理部104は、上記〔1−2−A〕で導出した第1色ベクトルC1と、上記〔1−2−B〕で保持されている第2色ベクトルC0とに基づいて、色ベクトルの内積を導出する。
【0095】
〔1−2−D〕クロスカラー妨害の発生の度合いの導出
画像処理部104は、上記〔1−2−A〕で導出した第1色ベクトルC1、上記〔1−2−B〕で保持されている第2色ベクトルC0、および上記〔1−2−C〕で導出した色ベクトルの内積に基づいて、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出する。ここで、画像処理部104は、上記数式4の演算を行うことによってクロスカラー妨害の発生の度合いを導出することができるが、上記に限られない。例えば、画像処理部104は、ルックアップテーブルなどを併用して演算を簡略化したり、上記数式5の演算を行うことによってクロスカラー妨害の発生の度合いを導出することもできる。
【0096】
画像処理部104がクロスカラー妨害の発生の度合いとして導出する「cosθ」や「cosθ」などは、色ベクトルの偏角差分の情報である。上述したように、色ベクトルの偏角差分は、SD解像度の画像信号からアップコンバートされた擬似HD解像度の画像信号においても、アップコンバートされたクロスカラー妨害が発生している場合には空間・時間軸座標よらずにある程度の大きさの値をとり続ける性質をもつ。したがって、画像処理部104は、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出することによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。以下、画像処理部104におけるアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出処理に係る構成について説明する。
【0097】
(1−3)画像処理部104におけるクロスカラー妨害の検出処理に係る構成
図5は、本発明の実施形態に係る画像処理部104におけるアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出処理に係る構成例を示すブロック図である。ここで、画像処理部104は、ハードウェア(例えば、画像処理回路)および/またはソフトウェア(画像処理ソフトウェア)で画像処理を行うことができる。
【0098】
以下では、画像処理部104に入力される入力色信号として、U信号およびV信号が入力される場合を例に挙げて説明する。なお、本発明の実施形態に係る入力色信号は、色空間がYUVで表される色差信号に限られず、例えば、YIQ、Lなど色成分が2つで表される色空間の信号や、RGB、CMYなど色成分が3つで表される色空間の信号など、様々な色空間を用いることができる。
【0099】
ここで、入力色信号が色成分が3つで表される色空間の信号である場合には、本発明の実施形態に係る画像処理部は、例えば、図5に示す色ベクトル導出部150の前段に色空間変換部(図示せず)をさらに備えることができる。色空間変換部(図示せず)は、入力される色信号に応じて色成分が2つで表される色空間へと選択的に変換する役目を果たす。なお、本発明の実施形態に係る画像処理部が、色成分が3つで表される色空間の信号をそのまま用いることによって(すなわち3次元の色ベクトルによって)、色ベクトルの偏角差分に係るクロスカラー妨害の発生の度合いを導出できることは、言うまでもない。
【0100】
図5を参照すると、画像処理部104は、色ベクトル導出部150と、色ベクトル保持部152と、内積導出部154と、クロスカラー妨害判定部156とを備える。
【0101】
色ベクトル導出部150は、上記〔1−2−A〕の処理を行う役目を果たし、入力色信号(U信号、V信号)に基づいて第1色ベクトルC1を画素ごとに導出する。また、色ベクトル導出部150は、導出した第1色ベクトルC1を色ベクトル保持部152、内積導出部154、およびクロスカラー妨害判定部156に伝達する。
【0102】
色ベクトル保持部152は、上記〔1−2−B〕の処理を行う役目を果たし、色ベクトル導出部150から伝達される第1色ベクトルC1を画素ごとに保持する。ここで、色ベクトル保持部152は、例えば、現フレームの色ベクトル(第1色ベクトルC1)と、前フレームの色ベクトル(第2色ベクトルC0)とを保持する構成とすることができるが、上記に限られない。例えば、色ベクトル保持部152は、任意の数のフレームに対応する色ベクトルを画素ごとに保持することもできる。また、色ベクトル保持部152は、例えば、フレーム・メモリ(frame memory)で構成することができるが、上記に限られない。
【0103】
また、色ベクトル保持部152は、例えば、MPUなどからの読み出し命令、あるいは、オシレータ(図示せず)などから伝達される基準クロック信号などに応じて、保持された第2色ベクトルC0を内積導出部154、およびクロスカラー妨害判定部156に伝達する。
【0104】
内積導出部154は、上記〔1−2−C〕の処理を行う役目を果たし、色ベクトル導出部150から伝達される第1色ベクトルC1と、色ベクトル保持部152から伝達される第2色ベクトルC0とに基づいて、色ベクトルの内積を導出する。そして、内積導出部154は、導出した色ベクトルの内積をクロスカラー妨害判定部156に伝達する。
【0105】
クロスカラー妨害判定部156は、上記〔1−2−D〕の処理を行う役目を果たす。クロスカラー妨害判定部156は、色ベクトル導出部150から伝達される第1色ベクトルC1、色ベクトル保持部152から伝達される第2色ベクトルC0、および内積導出部154から伝達される色ベクトルの内積に基づいて、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出する。そして、クロスカラー妨害判定部156は、導出したクロスカラー妨害の発生の度合いを出力する。ここで、表示装置100は、クロスカラー妨害判定部156が出力したクロスカラー妨害の発生の度合いを用いて、例えば後述するクロスカラー低減処理などを行うが、上記に限られない。
【0106】
画像処理部104は、例えば、図5に示す構成によって、入力色信号に基づいて、「cosθ」や「cosθ」などの色ベクトルの偏角差分に係るクロスカラー妨害の発生の度合いを導出することができる。上述したように、色ベクトルの偏角差分は、SD解像度の画像信号からアップコンバートされた擬似HD解像度の画像信号においても、アップコンバートされたクロスカラー妨害が発生している場合には空間・時間軸座標よらずにある程度の大きさの値をとり続ける性質をもつ。したがって、画像処理部104は、入力された画像信号に基づいて色ベクトルの偏角差分に係るクロスカラー妨害の発生の度合いを導出することによって、Y/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0107】
(1−4)本発明の実施形態に係る第1の画像処理方法(アップコンバートされたクロスカラー妨害の検出方法)
次に、本発明の実施形態に係る第1の画像処理方法について説明する。図6は、本発明の実施形態に係る第1の画像処理方法の一例を示す流れ図であり、アップコンバートされたクロスカラー妨害の検出方法の一例を示している。なお、以下では、第1の画像処理方法を表示装置100が行うものとして説明するが、上述したように本発明の実施形態に係る画像処理装置が行うこともできる。
【0108】
表示装置100は、入力色信号(例えば、U信号、V信号)に基づいて、現フレームに対応する第1色ベクトルを画素ごとに導出する(S100)。そして、表示装置100は、ステップS100において導出された第1色ベクトルを保持する(S102)。ここで、ステップS102において保持された第1色ベクトルは、次フレームの入力色信号が入力された場合(現フレームが遷移した場合)には、前フレームに対応する第2色ベクトルとなる。
【0109】
表示装置100は、ステップS100において導出された第1色ベクトルと、ステップS102において保持されている第2色ベクトルとに基づいて、色ベクトルの内積を画素ごとに導出する(S104)。
【0110】
表示装置100は、ステップS100において導出された第1色ベクトル、ステップS102において保持されている第2色ベクトル、およびステップS104において導出された色ベクトルの内積に基づいて、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出する(S106;アップコンバートされたクロスカラー妨害の検出)。
【0111】
図6に示す第1の画像処理方法を用いることによって、表示装置100は、上述した〔1−2−A〕〜〔1−2−D〕の処理を行うことができる。したがって、図6に示す第1の画像処理方法を用いる表示装置100は、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0112】
[2]画像処理部104におけるクロスカラー妨害低減処理
画像処理部104が、上述した[1]の処理(クロスカラー妨害検出処理)を行うことによって、表示装置100は、Y/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。そこで、次に、本発明の実施形態に係る画像処理として、クロスカラー妨害検出処理を用いたクロスカラー妨害低減処理について説明する。
【0113】
(2−1)アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減アプローチ
まず、本発明の実施形態に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害の低減アプローチについて説明する。
【0114】
画像処理部104が処理する画像信号が擬似HD解像度の画像信号である場合には、上述したように、1ラインごとにクロスカラー妨害成分が反転する性質が失われたり、クロスカラー妨害成分の空間周波数が変化したりするなど、クロスカラー妨害の発生に係る画像信号の性質がSD解像度の画像信号から変化する。したがって、擬似HD解像度の画像信号を処理する場合には、例えばアナログ放送の画像信号に対して有効であった、「1ラインごとにクロスカラー妨害成分が反転する性質を利用したクロスカラー妨害成分の低減方法(例えば、垂直方向にフィルタリングする方法)」や「所定の空間周波数成分に基づいてクロスカラー妨害を検出して低減する低減方法(例えば、バンドパス・フィルタを用いる方法)」などを用いたとしても、クロスカラー妨害を低減することはできない。
【0115】
そこで、画像処理部104では、1ラインごとにクロスカラー妨害成分が反転する性質ではなく、クロスカラー妨害成分が1フレームおきに反転する性質に着目する。ここで、クロスカラー妨害成分が1フレームおきに反転する性質は、SD解像度の画像信号がアップコンバートされた擬似HD解像度の画像信号においても失われない。したがって、クロスカラー妨害成分が1フレームおきに反転する性質を利用すれば、クロスカラー妨害成分を効果的に低減することができる。
【0116】
しかしながら、画像処理部104が、例えば、クロスカラー妨害が発生していない画素に対してまでクロスカラー妨害の低減処理を行った場合には、当該クロスカラー妨害の低減処理に起因して、画像がぼやけるなどの副作用が発生する恐れがある。そのため、画像処理部104は、上述した[1]の処理(クロスカラー妨害検出処理)などを用いてアップコンバートされたクロスカラー妨害が発生している画素を検出し、検出結果に基づいて選択的にクロスカラー妨害の低減処理を行う。したがって、画像処理部104は、アップコンバートされたクロスカラー妨害が発生している画素に対してのみクロスカラー妨害の低減処理を行うことができるので、画像がぼやけるなどの副作用を防止しながらクロスカラー妨害成分を効果的に低減することができる。
【0117】
以下、画像処理部104におけるアップコンバートされたクロスカラー妨害の低減アプローチについて、具体的に説明する。画像処理部104は、上記クロスカラー妨害成分が1フレームおきに反転する性質を利用し、例えば、以下の〔2−1−A〕〜〔2−1−E〕の処理によって、アップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに低減する。以下では、画像処理部104に入力される入力色信号として、U信号およびV信号が入力される場合を例に挙げて説明する。なお、本発明の実施形態に係る入力色信号が、色空間がYUVで表される色差信号に限られないことは、言うまでもない。
【0118】
〔2−1−A〕入力色信号に対する時間軸方向の平滑化
画像処理部104は、例えば、時間軸方向の平滑化フィルタを用いることにより、U信号およびV信号(入力色信号)に対して画素ごとに時間軸方向の平滑化を行う。
【0119】
ここで、時間軸方向の平滑化フィルタとしては、例えば、2タップのローパス・フィルタ(Low-Pass Filter;すなわち、前フレームとの平均値を導出する構成)が挙げられるが上記に限られない。例えば、時間軸方向の平滑化フィルタは、2タップのローパス・フィルタに限られず、タップ数を任意に設定することができる。また、時間軸方向の平滑化フィルタは、ローパス・フィルタに限られず、例えば、移動平均フィルタや加重平均フィルタなど、様々なフィルタを用いることができる。さらに、時間軸方向の平滑化フィルタは、上記のようなFIR(Finite Impulse Response Filter)フィルタ(非巡回型のフィルタ)に限られず、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタ(巡回型のフィルタ)を用いてもよい。IIRフィルタを用いることによって、1画面分に相当するフレームメモリを用いてタップ数の長いフィルタを実現することができる。
【0120】
また、上記平滑化フィルタのフィルタ係数は、例えば、画像信号が示す画像が静止画像を示すときの奇数番目の係数の和と、偶数番目の係数の和とが等しくなるように設定することができる。上記のように設定することによって、画像処理部104は、理論上、平滑化によってクロスカラー妨害成分を0(ゼロ)とすることができる。
【0121】
上記のような平滑化フィルタを用いることによって、画像処理部104は、画素ごとに時間軸方向の平滑化が行われた入力色信号(以下、「平滑化色信号」とよぶ場合がある。)を得ることができる。
【0122】
〔2−1−B〕平滑化色信号のゲインの抑制
入力された画像信号がアップコンバートされたクロスカラー妨害を含んでいる場合には、U信号およびV信号が異常に大きな値を持つことが多い。また、上記の特徴が、アップコンバートされたクロスカラー妨害を含んだ画像信号に対応する画像が表示画面に表示されたときにクロスカラー妨害が目立つ要因の一つとなっている。そこで、画像処理部104は、平滑化色信号に対して、画素ごとに1.0以下のゲイン(ゲイン抑制値。以下、「抑制ゲイン」とよぶ場合がある。)を乗算することによって、平滑化色信号のゲインを抑制する。平滑化色信号のゲインを抑制ことによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害の影響を低減することができる。
【0123】
図7は、本発明の実施形態に係る平滑化色信号のゲインの抑制の一例を説明する説明図である。ここで、図7は、x軸にU信号およびV信号(U,V入力)、y軸に平滑化色信号(U,V出力)をとった例を示している。
【0124】
<2−1−B−1>U信号およびV信号が閾値thより小さい場合(図7の区間p)
U信号およびV信号が閾値th2より小さい場合には、画像処理部104は、平滑化色信号のゲインの抑制を行わない。すなわち、図7に示すように、区間pでは、「y=x」の関係が成立する。
【0125】
ここで、閾値thの値が小さければ小さい程、平滑化色信号のゲインの抑制処理は働き易く、逆に閾値thの値が大きければ大きい程、平滑化色信号のゲインの抑制処理は働き難い。つまり、平滑化色信号のゲインの抑制処理のために閾値thが設定されることによって、画像処理部104は、平滑化色信号のゲインの抑制処理の働き易さを調整することができる。また、閾値thの値は、例えば、ユーザが操作部(図示せず)を操作することによって、調整することができるが、上記に限られない。
【0126】
<2−1−B−2>U信号およびV信号が閾値th以上である場合(図7の区間q)
U信号およびV信号が閾値th以上である場合には、画像処理部104は、例えば、以下の数式6、数式7により、平滑化色信号のゲインの抑制を行う。ここで、数式6は抑制ゲインを示している。つまり、数式6、数式7を用いることによって、画像処理部104は、U信号およびV信号の値が大きければ大きい程、平滑化色信号のゲインを抑制することができる。
【0127】
G=1.0+(g0−1.0)×(X/L)
・・・(数式6)
【0128】
Y=G×X
・・・(数式7)
【0129】
なお、上記では、画像処理部104が数式6、数式7を用いて平滑化色信号のゲインをそれぞれ抑制する例を示したが、上記に限られない。例えば、画像処理部104は、U信号、V信号それぞれに対して、予め設定された抑制ゲインを乗算することによって、平滑化色信号のゲインを抑制することもできる。
【0130】
また、上記では、画像処理部104が、U信号、V信号に対して、独立にゲインの抑制を行う例を示したが、上記に限られない。ここで、U信号、V信号に対して独立にゲインの抑制を行った場合には、色相が変化してしまう可能性がある。そのため、画像処理部104は、例えば、ゲイン抑制に起因した色相の変化が発生しないように、U信号およびV信号に対してゲインを抑制することもできる。
【0131】
より具体的に説明すると、画像処理部104は、例えば、まず、画素ごとにU信号の絶対値とV信号の絶対値とを比較する。次に、画像処理部104は、上記比較結果に基づいて、画素ごとに絶対値の大きさが大きい値と、数式6とを用いて抑制ゲインを導出する。そして、画像処理部104は、導出された抑制ゲインをU信号およびV信号にそれぞれ乗算する。つまり、U信号およびV信号それぞれには、同一の値を有する抑制ゲインが乗算されることとなる。上記のような手順でゲイン抑制を行うことによって、画像処理部104は、色相の変化を防止しつつ、U信号およびV信号に対してゲインを抑制することができる。
【0132】
なお、上記では、U信号およびV信号の最大値を用いて色相の変化を防止する例を示したが、本発明の実施形態に係る色相の変化を防止する方法は、上記に限られない。例えば、画像処理部104は、U信号およびV信号の加算値や、UVベクトルの大きさなど他の値を用いて抑制ゲインを導出することによって、ゲイン抑制を行うこともできる。
【0133】
また、上記では、画像処理部104が、YUV空間において色相の変化を防止する例を示したが、本発明の実施形態に係る色相の変化を防止する方法は、上記に限られない。例えば、画像処理部104は、HSV空間などの他の色空間に入力色信号を変換し、変換後の色空間において上述したような色相の変化を防止する処理を行うこともできる。
【0134】
〔2−1−C〕クロスカラー妨害が発生している画素の検出
上記〔2−1−A〕では、平滑化色信号を得ることを示したが、時間軸方向の平滑化は、入力色信号をある意味劣化させる処理である。そのため、画像処理部104から出力されるノイズ低減後の入力色信号が、クロスカラー妨害が発生していない画素に対してまで平滑化された信号となった場合には、画像がぼやけるなどの副作用が発生する可能性がある。そこで、画像処理部104は、上記副作用を防止するために、入力された画像信号(入力輝度信号/入力色信号)に基づいてクロスカラー妨害が発生している画素を検出する。
【0135】
ここで、画像処理部104は、例えば、以下の〔I〕に示す処理、または、以下の〔I〕〜〔III〕を組み合わせた処理によって、クロスカラー妨害が発生している画素を検出する。
【0136】
〔I〕U信号、V信号に基づくクロスカラー妨害が発生している画素の検出
画像処理部104は、U信号、V信号(入力色信号)に基づいてクロスカラー妨害が発生している画素を検出する。ここで、画像処理部104は、上述した[1]の処理(クロスカラー妨害検出処理)を行うことによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに検出することができる。
【0137】
〔II〕動きの検出
上記〔I〕では、上述した[1]の処理(クロスカラー妨害検出処理)を行うことによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害が発生している画素を検出することを示した。つまり、画像処理部104は、色ベクトルの偏角差分の情報に基づいてクロスカラー妨害発生の度合いを導出することによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害が発生している画素を検出する。ここで、色ベクトルの偏角差分は、上述したように、入力された画像信号がアップコンバートされたクロスカラー妨害を含みかつ動画像を表している場合においても、空間・時間軸座標よらずにある程度以上の大きさの値をとる。したがって、画像処理部104は、入力された画像信号が動画像を表している場合であっても、アップコンバートされたクロスカラー妨害が発生している画素を検出することができる。
【0138】
しかしながら、上述した[1]の処理(クロスカラー妨害検出処理)では、入力された画像信号が動画像であるか否かを判別した上で、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出している訳ではない。そのため、入力された画像信号が動画像を表している場合において、画像処理部104がクロスカラー妨害が発生している画素を誤検出(未検出や過検出)してしまう可能性がある。ここで、仮に誤検出が生じた場合には、例えば、クロスカラー妨害を効果的に低減することができない、または、動いている部分がぼけてしまうなどといった望ましくない結果が生じる恐れがある。そこで、画像処理部104は、例えば現フレームと前フレームとの間の相関に基づいて動き(動き量)を検出し、上記〔I〕の処理の結果と、動きの検出処理の結果とを組み合わせる。これによって、画像処理部104は、クロスカラー妨害が発生している画素の誤検出をより確実に防止することができる。
【0139】
ここで、動きを検出する方法としては、例えば、入力輝度信号(以下、「Y信号」とよぶ場合もある。)に基づいて、画素ごとに現フレームと前フレームとの差分を導出する方法が挙げられる。例えば、画像処理部104は、注目画素を含む所定の領域に属する画素(例えば、注目画素の周辺の画素)のY信号の値に基づいて、画素ごとに現フレームと前フレームとの差分値を導出する。そして、画像処理部104は、例えば、導出された差分値の絶対値の合計値に基づいて、動きの度合いを判別する。ここで、画像処理部104は、例えば、上記合計値と動きの度合いを示す値とが対応付けられたルックアップテーブルを用いることによって、動きの度合いを一意に判別することができるが、上記に限られない。
【0140】
また、画像処理部104における動きを検出する方法は、上記に限られない。例えば、画像処理部104は、動きベクトルを導出し、当該動きベクトルの絶対値を動き量とすることによって動きを検出することもできる。ここで、動きベクトルの導出方法としては、例えば、テンプレートのマッチングを用いる方法が挙げられるが、上記に限られない。なお、例えば、IP変換処理や中間フレーム生成処理など画像処理部104の他の処理、または表示装置100の他の構成要素が行う他の処理において、動きベクトルが導出されている場合には、画像処理部104は、当該動きベクトルを流用することもできる。上記の場合には、より効率的かつ高精度に動きを検出することができる。
【0141】
〔III〕クロスカラー妨害発生条件を満たす画素の検出
上記〔I〕では、クロスカラー妨害成分が1フレームおきに反転する性質を用い、U信号およびV信号に基づいてクロスカラー妨害が発生している画素を検出することを示した。ここで、クロスカラー妨害が発生している場合には、U信号およびV信号に限られず、Y信号(入力輝度信号)においても信号の周波数に特徴が生じている場合がある。そこで、画像処理部104は、上記〔I〕の処理の結果と、Y信号に基づくクロスカラー妨害発生の条件を満たす画素(クロスカラー妨害発生の可能性が高い画素)の検出結果とを組み合わせることによって、クロスカラー妨害が発生している画素の検出精度をより高める。なお、さらに上記〔II〕の処理の結果を組み合わせることによって、画像処理部104が、クロスカラー妨害が発生している画素の検出精度をより高めながらクロスカラー妨害が発生している画素の誤検出をより確実に防止することができることは、言うまでもない。
【0142】
ここで、クロスカラー妨害領域発生の条件を満たす画素を検出する方法としては、例えば、Y信号の高域成分の度合いに基づく方法が挙げられる。クロスカラー妨害が発生している場合、Y信号の斜め方向に高域成分が含まれている可能性が高い。そこで、画像処理部104は、例えば、ハイパス・フィルタ(High-Pass Filter)やバンドパス・フィルタを用いることによって、Y信号から高域成分(検出値)を得る。そして、画像処理部104は、フィルタリングにより検出された検出値に基づいて、クロスカラー妨害領域発生の条件を満たす度合いを画素ごとに導出する。ここで、クロスカラー妨害領域発生の条件を満たす度合いは、例えば、斜め方向に連続する検出値の数と、クロスカラー妨害領域発生の条件を満たす度合いとが対応付けられたルックアップテーブルを用いて導出することができるが、上記に限られない。
【0143】
画像処理部104は、例えば、上記〔I〕に示す処理、または、上記〔I〕〜〔III〕を組み合わせた処理によって、クロスカラー妨害が発生している画素を検出することができる。
【0144】
〔2−1−D〕ゲイン値の設定
画像処理部104は、上記〔2−1−C〕における検出結果に基づいて、入力色信号と平滑化色信号とを混合する比率を規定するゲイン値を画素ごとに設定する。ここで、ゲイン値は、例えば、平滑化色信号を入力色信号に混合する比率を表す値とすることができるが、上記に限られず、入力色信号を平滑化色信号に混合する比率を表す値としてもよい。
【0145】
図8は、本発明の実施形態に係るゲイン値の設定方法の一例を説明するための説明図である。ここで、図8は、ゲイン値を平滑化色信号を入力色信号に混合する比率を表す値とした場合の一例を示している。また、図8は、クロスカラー妨害の発生の度合いが「cosθ」で表される場合を示している。以下、図8を適宜参照しつつ、ゲイン値の設定方法について説明する。
【0146】
<2−1−D−1>上記〔I〕の処理における検出結果を用いる場合
上記〔I〕の処理における検出結果を用いる場合(すなわち、1つの検出結果を用いる場合)には、画像処理部104は、例えば、以下の数式8によって、ゲイン値を導出する。
【0147】
G1=(th2−cosθ)×a (0.0≦G≦1.0)
・・・(数式8)
【0148】
数式8に示す「G1」はゲイン値を示しており、「cosθ」はクロスカラー妨害の発生の度合いなどの〔i〕の処理における検出結果の一例を示している。また、数式8に示す「th2」は、図8に示すように、ゲイン値を0(ゼロ)から変化させ始める閾値を示している。ここで、閾値th2の値が小さければ小さい程、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減処理は働き難く、逆に閾値th2の値が大きければ大きい程、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減処理は働き易い。つまり、ゲイン値の設定のために閾値th2が設定されることによって、画像処理部104は、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減処理の働き易さを調整することができる。また、閾値thの値は、例えば、ユーザが操作部(図示せず)を操作することによって、調整することができるが、上記に限られない。
【0149】
また、数式8に示す「a」は、図8に示すように、ゲイン値の変化の傾きを表している。ここで、傾きaの値が小さければ小さい程、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減処理の効果は、〔I〕の処理における検出結果の変化に対して緩やかとなり、逆に傾きaの値が大きければ大きい程、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減処理の効果は〔I〕の処理における検出結果の変化に対して急激なものとなる。つまり、ゲイン値の設定のために傾きaが設定されることによって、画像処理部104は、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減処理の働き方を調整することができる。また、傾きaの値は、例えば、ユーザが操作部(図示せず)を操作することによって、調整することができるが、上記に限られない。
【0150】
なお、図8では、ゲイン値が1次直線で表現される例を示したが、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係るゲイン値は、「cosθ」(クロスカラー妨害の発生の度合いの一例)が“−1.0”に近ければ近いほど大きく、また、“1.0”に近ければ近いほど小さくなるような条件を満たせば、2次曲線などを用いて任意に設定されてもよい。
【0151】
<2−1−D−2>上記〔I〕〜〔III〕の処理における検出結果を組み合わせて用いる場合
上記〔I〕〜〔III〕の処理における検出結果を組み合わせて用いる場合(すなわち、2つ以上の検出結果を用いる場合)には、画像処理部104は、例えば、以下の数式9および数式10によって、ゲイン値を導出する。ここで、数式9は、上記〔I〕〜〔III〕の処理における検出結果を組み合わせて用いる場合を示している。
【0152】
gN=(a0×g0)+(a1×g1)+(a2×g2)
・・・(数式9)
G2=(gN−th3)×a (0.0≦G≦1.0)
・・・(数式10)
【0153】
数式9に示す「a0」は〔I〕の処理における検出結果に対する重み付け係数である。「g0」は〔I〕の処理における検出結果に基づく値を示しており、例えば、上記数式8の「G1」が対応する。また、数式9に示す「a1」は〔II〕の処理における検出結果に対する重み付け係数、「g1」は〔II〕の処理における検出結果、「a2」は〔III〕の処理における検出結果に対する重み付け係数、そして「g2」は〔III〕の処理における検出結果をそれぞれ示している。数式9に示すように、上記〔I〕〜〔III〕の処理における検出結果それぞれに重み付けがなされることによって、画像処理部104は、重み付けされた検出結果「gN」を導出することができる。また、画像処理部104は、上記〔I〕〜〔III〕の処理における検出結果それぞれの重み付け係数を設定することによって、どの検出結果を重視してゲイン値の設定するかを調整することができる。なお、上記〔I〕〜〔III〕の処理における検出結果それぞれの重み付け係数の値は、例えば、ユーザが操作部(図示せず)を操作することによって、調整することができるが、上記に限られない。
【0154】
また、画像処理部104は、数式9において導出した「gN」と数式10とを用いることによって、ゲイン値を導出する。
【0155】
ここで、数式10に示す「th3」は、図8の「th2」と同様に、ゲイン値を0(ゼロ)から変化させ始める閾値を示している。ここで、閾値th3の値が小さければ小さい程、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減処理は働き易く、逆に閾値th3の値が大きければ大きい程、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減処理は働き難い。つまり、ゲイン値の設定のために閾値th3が設定されることによって、画像処理部104は、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減処理の働き易さを調整することができる。また、閾値th3の値は、例えば、ユーザが操作部(図示せず)を操作することによって、調整することができるが、上記に限られない。
【0156】
画像処理部104は、上記<2−1−D−1>や<2−1−D−2>に示した方法を用いることによって、上記〔I〕に示す処理における検出結果、または、上記〔I〕〜〔III〕に示す処理における検出結果の組み合わせに基づいて、画素ごとにゲイン値を設定することができる。
【0157】
なお、上記数式9では、上記〔I〕〜〔III〕それぞれの処理における検出結果、すなわち、3つの検出結果を用いて重み付けされた検出結果「gN」を導出する例を示しているが、上記に限られない。例えば、画像処理部104は、上記〔I〕に示す処理における検出結果および上記〔II〕に示す処理における検出結果、または、上記〔I〕に示す処理における検出結果および上記〔III〕に示す処理における検出結果、という2つの検出結果を用いて重み付けされた検出結果「gN」を導出することもできる。
【0158】
〔2−1−E〕ゲイン値に基づく入力色信号と平滑化色信号との混合
画像処理部104は、上記〔2−1−D〕において画素ごとに設定したゲイン値に応じて、画素ごとに入力色信号と平滑化色信号とを混合する。具体的には、画像処理部104は、画素ごとのゲイン値「G」(例えば上記G1または上記G2)に基づいて、例えば、「入力色信号:平滑化色信号=(1−G):G」となるように入力色信号と平滑化色信号とを混合する。上記〔2−1−C〕〜〔2−1−E〕の処理によって、画像処理部104は、画像がぼやけるなどの副作用の発生をより確実に防止しながら、アップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに高い精度で低減することができる。
【0159】
画像処理部104は、入力された画像信号に基づいて、上記〔2−1−A〕〜〔2−1−E〕の処理を行うことによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに低減する。したがって、表示装置100は、アップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに低減された画像を表示画面に表示することができるので、高画質化を図ることができる。以下、画像処理部104におけるクロスカラー妨害低減処理に係る構成について説明する。
【0160】
(2−2)画像処理部104におけるクロスカラー低減処理に係る構成
図9は、本発明の実施形態に係る画像処理部104におけるクロスカラー妨害低減処理に係る構成の一例を示すブロック図である。ここで、画像処理部104は、ハードウェア(例えば、画像処理回路)および/またはソフトウェア(画像処理ソフトウェア)で画像処理を行うことができる。
【0161】
以下では、画像処理部104にY信号と、U信号およびV信号とが入力される場合を例に挙げて説明する。また、以下では、ノイズ低減後の入力色信号を「U’信号」、「V’信号」とよぶ場合がある。なお、本発明の実施形態に係る入力色信号が、色空間がYUVで表される色差信号に限られないことは、言うまでもない。
【0162】
図9を参照すると、画像処理部104は、3次元フィルタ200(フィルタ)と、ゲイン抑制部202と、クロスカラー妨害検出部204と、動き検出部206と、クロスカラー妨害発生条件検出部208と、ゲイン設定部210と、混合部212とを備える。ここで、3次元フィルタ200は、上記〔2−1−A〕の処理を行う役目を果たし、ゲイン抑制部202は、上記〔2−1−B〕の処理を行う役目を果たす。また、クロスカラー妨害検出部204、動き検出部206、およびクロスカラー妨害発生条件検出部208は、上記〔2−1−C〕の処理を行う役目を果たす。そして、ゲイン設定部210は、上記〔2−1−D〕の処理を行う役目を果たし、混合部212は、上記〔2−1−E〕の処理を行う役目を果たす。
【0163】
3次元フィルタ200は、上記〔2−1−A〕の処理を行う役目を果たし、U信号、V信号に対して画素ごとに時間軸方向の平滑化を行う。ここで、3次元フィルタ200は、時間軸方向および面方向に平滑化を行う2タップのローパス・フィルタで構成することができるが、上記に限られない。
【0164】
ゲイン抑制部202は、上記〔2−1−B〕の処理を行う役目を果たし、3次元フィルタ200から出力される平滑化色信号に基づいて画素ごとにゲインを抑制する。
【0165】
クロスカラー妨害検出部204は、上記〔2−1−C〕の処理のうちの上記〔I〕の処理を行う役目を果たし、U信号およびV信号に基づいてクロスカラー妨害が発生している画素を検出する。そして、クロスカラー妨害検出部204は、クロスカラー妨害の発生の度合い(検出結果)を、画素ごとにゲイン設定部210に伝達する。ここで、クロスカラー妨害検出部204は、例えば、図5に示すような構成によって、色ベクトルの偏角差分の情報に基づくクロスカラー妨害発生の度合いを導出することができる。
【0166】
動き検出部206は、上記〔2−1−C〕の処理のうちの上記〔II〕の処理を行う役目を果たし、Y信号に基づいて画素ごとに動きを検出する。そして、動き検出部206は、例えば動きの度合いなどの検出結果を、画素ごとにゲイン設定部210に伝達する。
【0167】
クロスカラー妨害発生条件検出部208は、上記〔2−1−C〕の処理のうちの上記〔III〕の処理を行う役目を果たし、Y信号に基づいてクロスカラー妨害領域発生の条件を満たす画素を検出する。そして、クロスカラー妨害発生条件検出部208は、例えばクロスカラー妨害領域発生の条件を満たす度合いなどの検出結果を、画素ごとにゲイン設定部210に伝達する。
【0168】
ゲイン設定部210は、上記〔2−1−D〕の処理を行う役目を果たし、クロスカラー妨害検出部204、動き検出部206、およびクロスカラー妨害発生条件検出部208からそれぞれ伝達される検出結果に基づいて、画素ごとにゲイン値を導出する。そして、ゲイン設定部210は、画素ごとに導出したゲイン値を混合部212へ伝達する。
【0169】
混合部212は、上記〔2−1−E〕の処理を行う役目を果たし、ゲイン設定部210から伝達される画素ごとのゲイン値に基づいて、画素ごとに、入力色信号と、ゲイン抑制部202から出力されるゲインが抑制された平滑化色信号とを混合する。そして、混合部212は、上記混合された色信号をU’信号およびV’信号として出力する。
【0170】
画像処理部104は、例えば、図9に示す構成によって、画像がぼやけるなどの副作用の発生をより確実に防止しながら、アップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに低減することができる。
【0171】
なお、上記では、画像処理部104が、クロスカラー妨害検出部204、動き検出部206、およびクロスカラー妨害発生条件検出部208を備える構成について説明したが、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る画像処理部は、クロスカラー妨害検出部204のみを備える構成や、クロスカラー妨害検出部204および動き検出部206を備える構成、または、クロスカラー妨害検出部204およびクロスカラー妨害発生条件検出部208を備える構成とすることもできる。上記の構成であっても、本発明の実施形態に係る画像処理部は、アップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに低減することができる。
【0172】
(2−3)本発明の実施形態に係る第2の画像処理方法(アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減方法)
次に、本発明の実施形態に係る第2の画像処理方法について説明する。図10は、本発明の実施形態に係る第2の画像処理方法の一例を示す流れ図であり、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減方法の一例を示している。なお、以下では、第2の画像処理方法を表示装置100が行うものとして説明するが、上述したように本発明の実施形態に係る画像処理装置が行うこともできる。
【0173】
表示装置100は、U信号、V信号(入力色信号)に対して、画素ごとに時間軸方向の平滑化を行う(S200)。ここで、表示装置100は、例えば、2タップのローパス・フィルタなどで構成され時間軸方向および面方向に平滑化を行う3次元フィルタによって、ステップS100の処理を行うことができるが、上記に限られない。
【0174】
表示装置100は、ステップS200において平滑化されたU信号、V信号(平滑化色信号)のゲインを、選択的に抑制する(S202)。ここで、表示装置100は、例えば、上記数式6、数式7を用いることによって、平滑化されたU信号、V信号のゲインそれぞれを、画素ごとにかつ選択的に抑制することができるが、上記に限られない。
【0175】
表示装置100は、U信号、V信号に基づいて画素ごとにアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出する(S204)。ここで、表示装置100は、例えば、色ベクトルの偏角差分に係るクロスカラー妨害の発生の度合いを導出することによって、ステップS204の処理を行うことができる。
【0176】
表示装置100は、Y信号に基づいて画素ごとに動きを検出する(S206)。ここで、表示装置100は、例えば、Y信号に基づいて画素ごとに現フレームと前フレームとの差分を導出することによって、ステップS206の処理を行うことができるが、上記に限られない。
【0177】
表示装置100は、Y信号に基づいて、クロスカラー妨害発生条件を満たす画素を検出する(S208)。ここで、表示装置100は、例えば、Y信号における斜め方向の高域成分に基づいてY信号の高域成分の度合いを導出することによって、ステップS208の処理を行うことができるが、上記に限られない。
【0178】
なお、図10では、ステップS200およびステップS202の処理の後にステップS204、ステップS206、ステップS208の処理が順番に行われる例を示しているが、表示装置100は、ステップS200およびステップS202と、ステップS204〜S208の各処理とを、それぞれ独立に行うことができる。したがって、表示装置100は、例えば、ステップS200およびステップS202と、ステップS204〜S208の各処理との順序を入れ換えて行うことができ、また、ステップS200およびステップS202と、ステップS204〜S208の各処理とをそれぞれ同期して行うこともできる。
【0179】
表示装置100は、ステップS204〜S208の各処理の検出結果に基づいて、ゲイン値を画素ごとに設定する(S210)。ここで、表示装置100は、例えば、上記数式8、または、上記数式9および数式10を用いてゲイン値を画素ごとに導出することができる。
【0180】
表示装置100は、ステップS210において画素ごとに設定されたゲイン値に基づいて、U信号、V信号(入力色信号)と、平滑化されたU信号、V信号(平滑化色信号)とを画素ごとに混合する(S212)。
【0181】
図10に示す画像処理方法を用いることによって、表示装置100は、上述した〔2−1−A〕〜〔2−1−E〕の処理を行うことができる。したがって、図10に示す画像処理方法を用いる表示装置100は、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害(ノイズ)を画素ごとに低減し、高画質化を図ることができる。
【0182】
以上のように、本発明の実施形態に係る表示装置100は、色ベクトルの偏角差分に基づいてアップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに検出する。より具体的には、表示装置100は、例えば、上述した〔1−2−A〕(色ベクトルの導出)、〔1−2−B〕(色ベクトルの保持)、〔1−2−C〕(色ベクトルの内積の導出)、〔1−2−D〕(クロスカラー妨害の発生の度合いの導出)によって、色ベクトルの偏角差分に係るクロスカラー妨害の発生の度合いを導出する。上述したように、色ベクトルの偏角差分は、SD解像度の画像信号からアップコンバートされた擬似HD解像度の画像信号においても、アップコンバートされたクロスカラー妨害が発生している場合には空間・時間軸座標よらずにある程度の大きさの値をとり続ける性質をもつ。したがって、表示装置100は、入力された画像信号に基づいて色ベクトルの偏角差分に係るクロスカラー妨害の発生の度合いを導出することによって、Y/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。
【0183】
また、表示装置100は、導出された色ベクトルの偏角差分に係るクロスカラー妨害の発生の度合い(アップコンバートされたクロスカラー妨害の検出結果)と、クロスカラー妨害成分が1フレームおきに反転する性質とを利用することによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害(ノイズ)の低減を画素ごと図る。より具体的には、表示装置100は、例えば、上述した〔2−1−A〕(入力色信号に対する時間軸方向の平滑化)、〔2−1−B〕(平滑化色信号のゲインの抑制)、〔2−1−C〕(クロスカラー妨害が発生している画素の検出)、〔2−1−D〕(ゲイン値の設定)、および〔2−1−E〕(ゲイン値に基づく入力色信号と平滑化色信号との混合)の処理によって、アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減を図る。ここで、表示装置100は、上述したように、色ベクトルの偏角差分に係るクロスカラー妨害の発生の度合いによって、アップコンバートされたクロスカラー妨害を検出することができる。また、クロスカラー妨害成分が1フレームおきに反転する性質は、アップコンバートされた擬似HD解像度の画像信号においても失われない。したがって、表示装置100は、上述した〔2−1−A〕〜〔2−1−E〕の処理によって、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害(ノイズ)を画素ごとに低減し、高画質化を図ることができる。
【0184】
また、表示装置100は、入力色信号と平滑化色信号とを混合する比率を規定するゲイン値を、上記〔I〕〜〔III〕に示す処理における検出結果の組み合わせに基づいて設定することができる。したがって、表示装置100は、画像がぼやけるなどの副作用の発生をより確実に防止しながら、アップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに高い精度で低減することができる。
【0185】
(本発明の実施形態に係るプログラム)
[アップコンバートされたクロスカラー妨害の検出に係るプログラム]
コンピュータを、本発明の実施形態に係る表示装置100(画像処理装置)として機能させるためのプログラムによって、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を画素ごとに検出することができる。
【0186】
[アップコンバートされたクロスカラー妨害の低減に係るプログラム]
コンピュータを、本発明の実施形態に係る表示装置100(画像処理装置)として機能させるためのプログラムによって、入力された画像信号に基づいてY/C分離に係るアップコンバートされたクロスカラー妨害を低減し、高画質化を図ることができる。
【0187】
以上、本発明の実施形態に係る画像処理システムを構成する構成要素として表示装置100(画像処理装置)を挙げて説明したが、本発明の実施形態は、かかる形態に限られない。本発明の実施形態は、例えば、PCやサーバ(Server)などのコンピュータ、携帯電話やPHS(Personal Handyphone System)などの携帯型通信装置、プレイステーション(登録商標)シリーズやPlayStation Portable(登録商標)などのゲーム機、テレビジョン放送を受信し映像を表示するテレビ受像機、有機ELディスプレイ、FED(Field Emission Display)、LCDなどの表示装置など、様々な機器に適用することができる。
【0188】
また、上記では、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0189】
例えば、上記では、コンピュータを本発明の実施形態に係る表示装置(画像処理装置)として機能させるためのプログラム(コンピュータプログラム)が提供されることを示したが、本発明の実施形態は、さらに、上記プログラムを記憶させた記憶媒体も併せて提供することができる。
【0190】
上述した構成は、本発明の実施形態の一例を示すものであり、当然に、本発明の技術的範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理システムの構成の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る表示装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る表示装置のハードウェア構成の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る色ベクトルの偏角差分に基づくアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出方法を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像処理部におけるアップコンバートされたクロスカラー妨害の検出処理に係る構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態に係る第1の画像処理方法の一例を示す流れ図である。
【図7】本発明の実施形態に係る平滑化色信号のゲインの抑制の一例を説明する説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係るゲイン値の設定方法の一例を説明するための説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る画像処理部におけるクロスカラー妨害低減処理に係る構成の一例を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施形態に係る第2の画像処理方法の一例を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0192】
104 画像処理部
150 色ベクトル導出部
152 色ベクトル保持部
154 内積導出部
156 クロスカラー妨害判定部
200 3次元フィルタ
202 ゲイン抑制部
204 クロスカラー妨害検出部
206 動き検出部
208 クロスカラー妨害発生条件検出部
210 ゲイン設定部
212 混合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された入力色信号に基づいて色ベクトルを導出する色ベクトル導出部と;
前記色ベクトル導出部が導出した色ベクトルを保持する色ベクトル保持部と;
前記色ベクトル導出部が導出した現フレームに対応する第1色ベクトルと、前記色ベクトル保持部に保持された前フレームに対応する第2色ベクトルとに基づいて、色ベクトルの内積値を導出する内積導出部と;
前記第1ベクトルと、前記第2ベクトルと、前記内積導出部が導出した前記内積値とに基づいて、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出するクロスカラー妨害判定部と;
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記入力色信号を時間軸方向に平滑化するフィルタと;
前記クロスカラー妨害判定部における判定結果に基づいて、前記入力色信号と前記フィルタにおいて平滑化された平滑化色信号とを混合する比率を規定するゲイン値を画素ごとに設定するゲイン設定部と;
画素ごとに設定される前記ゲイン値に基づいて、前記入力色信号と前記平滑化色信号とを画素ごとに混合する混合部と;
を備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
入力された現フレームに対応する入力輝度信号と前フレームに対応する前フレーム入力輝度信号との間の相関基づいて、画素ごとに動き量を検出する動き検出部をさらに備え、
前記ゲイン設定部は、さらに前記動き検出部が検出した前記動き量に基づいて前記ゲイン値を画素ごとに設定する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記入力輝度信号に基づいて、クロスカラー妨害が発生する条件を満たす画素を画素ごとに検出するクロスカラー妨害発生条件検出部をさらに備え、
前記ゲイン設定部は、さらに前記クロスカラー妨害発生条件検出部の検出結果に基づいて前記ゲイン値を画素ごとに設定する、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記平滑化色信号に対して、画素ごとに前記平滑化色信号の絶対値に応じたゲイン抑制値を乗算するゲイン抑制部をさらに備え、
前記混合部は、前記入力色信号と、前記ゲイン抑制値が乗算された平滑化色信号とを画素ごとに混合する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
入力された入力色信号に基づいて色ベクトルを導出するステップと;
前記色ベクトルを導出するステップにおいて導出された色ベクトルを保持するステップと;
前記色ベクトルを導出するステップにおいて導出された現フレームに対応する第1色ベクトルと、前記保持するステップにおいて保持された前フレームに対応する第2色ベクトルとに基づいて、色ベクトルの内積値を導出するステップと;
前記第1ベクトルと、前記第2ベクトルと、前記内積値を導出するステップにおいて導出された前記内積値とに基づいて、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出するステップと;
を有する、画像処理方法。
【請求項7】
入力された入力色信号に基づいて色ベクトルを導出するステップ;
前記色ベクトルを導出するステップにおいて導出された色ベクトルを保持するステップ;
前記色ベクトルを導出するステップにおいて導出された現フレームに対応する第1色ベクトルと、前記保持するステップにおいて保持された前フレームに対応する第2色ベクトルとに基づいて、色ベクトルの内積値を導出するステップ;
前記第1ベクトルと、前記第2ベクトルと、前記内積値を導出するステップにおいて導出された前記内積値とに基づいて、クロスカラー妨害の発生の度合いを導出するステップ;
をコンピュータに実行させるためのプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−253632(P2009−253632A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98614(P2008−98614)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】