説明

画像処理装置、画像処理方法、画像読取装置、及び画像処理プログラム

【課題】画像データの地色を変換して見やすい画像データを作成することが可能となる画像処理装置、画像処理方法、画像読取装置、及び画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】地色の色データの画素を含む地色領域が、地色領域の画素の色データが変換されるように予め設定された色である初期変換予定色の色データの画素を含む地色領域の外側の地色外領域に隣接していない場合には、当該地色領域の画素の色データを初期変換予定色に変換する。一方、地色領域が、初期変換予定色の色データの画素を含む地色外領域に隣接している場合には、当該地色領域の画素の色データを初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データの地色を変換する画像処理装置、画像処理方法、画像読取装置及び画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像データの地色を変換する技術に関して種々提案されている。
例えば、下記特許文献1に記載される画像処理装置は、原稿の先端を検知した後に得られた画像信号に基づいて原稿の地色情報を検出し、検出した地色情報を低減することで地色変換を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−260530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載される構成の画像処理装置では、例えば、黒地に白文字の原稿が読み取られた場合に、黒地が地色として検出されて、地色情報が低減されてしまう。即ち、黒地は白に近い色に地色変換されるため、ユーザにとって視認しづらい画像データが作成されてしまう。この例のように、特許文献1に記載される構成の画像処理装置では、ユーザにとって視認しづらい画像データが作成されてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、画像データの地色を変換して見やすい画像データを作成することが可能となる画像処理装置、画像処理方法、画像読取装置、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため請求項1に係る画像処理装置は、画像データに含まれる各画素の色データに基づいて地色を取得する地色取得部と、前記画像データに基づいて前記地色の色データの画素を含む地色領域を取得する地色領域取得部と、前記地色領域取得部により取得される地色領域が、前記地色領域の画素の色データが変換されるように予め設定された色である初期変換予定色の色データの画素を含む前記地色領域の外側の地色外領域に接しているか否かを判定する隣接判定部と、前記隣接判定部により、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していないと判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色に変換し、前記隣接判定部により、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換する地色変換部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る画像処理装置は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記地色領域に含まれる画素のうち、前記初期変換予定色に近似する色データの画素に隣接する変換不適切画素を抽出してカウントするカウント部を備え、前記隣接判定部は、前記カウント部によりカウントされた前記変換不適切画素のカウント値が変更閾値以上の場合には、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定し、前記カウント部によりカウントされた前記変換不適切画素のカウント値が前記変更閾値未満の場合には、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していないと判定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る画像処理装置は、請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置において、前記地色領域に隣接する前記地色外領域に含まれる画素の色データと前記初期変換予定色との色差のうち、最小の色差を取得する最小色差取得部を備え、前記地色変換部は、前記隣接判定部により、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定され、且つ、前記最小の色差が色差閾値以下の場合には、前記地色領域の画素の色データを前記変更変換予定色に変換することを特徴とする。
【0009】
更に、請求項4に係る画像処理装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像処理装置において、前記地色変換部は、前記隣接判定部により、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色の補色である前記変更変換予定色に変換することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る画像読取装置は、シートの画像を読み取る画像読取部と、前記画像読取部により読み取られた画像に対して画像処理を行う前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像処理装置と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る画像処理方法は、画像データに含まれる各画素の色データに基づいて地色を取得する地色取得工程と、前記画像データに基づいて前記地色の色データの画素を含む地色領域を取得する地色領域取得工程と、前記地色領域取得工程で取得される地色領域が、前記地色領域の画素の色データが変換されるように予め設定された色である初期変換予定色の色データの画素を含む前記地色領域の外側の地色外領域に接しているか否かを判定する隣接判定工程と、前記隣接判定工程で、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していないと判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色に変換し、前記隣接判定工程で、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換する地色変換工程と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
更に、請求項7に係る画像処理プログラムは、コンピュータに、画像データに含まれる各画素の色データに基づいて地色を取得する地色取得工程と、前記画像データに基づいて前記地色の色データの画素を含む地色領域を取得する地色領域取得工程と、前記地色領域取得工程で取得される地色領域が、前記地色領域の画素の色データが変換されるように予め設定された色である初期変換予定色の色データの画素を含む前記地色領域の外側の地色外領域に接しているか否かを判定する隣接判定工程と、前記隣接判定工程で、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していないと判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色に変換し、前記隣接判定工程で、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換する地色変換工程と、を実行させるための画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る画像処理装置では、地色の色データの画素を含む地色領域が、地色領域の画素の色データが変換されるように予め設定された色である初期変換予定色の色データの画素を含む地色領域の外側の地色外領域に隣接していない場合には、当該地色領域の画素の色データを初期変換予定色に変換する。一方、地色領域が、初期変換予定色の色データの画素を含む地色外領域に隣接している場合には、当該地色領域の画素の色データを初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換する。
【0014】
これにより、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色の色データの画素を含まない場合には、地色領域の画素の色データを初期変換予定色に変換するため、画像データの地色を初期変換予定色に自動的に変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。また、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色の色データの画素を含む場合には、地色領域の画素の色データを初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換するため、画像データの地色を変更変換予定色に変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。
【0015】
また、請求項2に係る画像処理装置では、地色領域に含まれる画素のうち、初期変換予定色に近似する色データの画素に隣接する変換不適切画素を抽出してカウントする。そして、この変換不適切画素のカウント値が変更閾値以上の場合には、地色領域が地色外領域に隣接していると判定し、変換不適切画素のカウント値が変更閾値未満の場合には、地色領域が地色外領域に隣接していないと判定する。これにより、変更閾値を適切に設定することによって、地色領域が地色外領域に隣接しているか否かを正確に判断することが可能となる。
【0016】
また、請求項3に係る画像処理装置では、地色領域に隣接する地色外領域に含まれる画素の色データと初期変換予定色との色差のうち、最小の色差が色差閾値以下の場合には、地色領域の画素の色データを変更変換予定色に変換して、更に見やすい画像データを作成することが可能となる。
【0017】
更に、請求項4に係る画像処理装置では、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色の色データの画素を含む場合には、画像データの地色を初期変換予定色の補色に変換して、コントラストの大きい、更に見やすい画像データを作成することが可能となる。
【0018】
また、請求項5に係る画像読取装置では、画像読取部により読み取られたシートの画像データに対して、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像処理装置によって、地色領域の画素の色データを初期変換予定色又は変更変換予定色に変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。
【0019】
また、請求項6に係る画像処理方法では、地色の色データの画素を含む地色領域が、地色領域の画素の色データが変換されるように予め設定された色である初期変換予定色の色データの画素を含む地色領域の外側の地色外領域に隣接していない場合には、当該地色領域の画素の色データを初期変換予定色に変換する。一方、地色領域が、初期変換予定色の色データの画素を含む地色外領域に隣接している場合には、当該地色領域の画素の色データを初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換する。
【0020】
これにより、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色の色データの画素を含まない場合には、地色領域の画素の色データを初期変換予定色に変換するため、画像データの地色を初期変換予定色に変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。また、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色の色データの画素を含む場合には、地色領域の画素の色データを初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換するため、画像データの地色を変更変換予定色に変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。
【0021】
また、請求項7に係る画像処理プログラムでは、コンピュータは当該プログラムを読み込むことによって、地色の色データの画素を含む地色領域が、地色領域の画素の色データが変換されるように予め設定された色である初期変換予定色の色データの画素を含む地色領域の外側の地色外領域に隣接していない場合には、当該地色領域の画素の色データを初期変換予定色に変換する。一方、コンピュータは、地色領域が、初期変換予定色の色データの画素を含む地色外領域に隣接している場合には、当該地色領域の画素の色データを初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換する。
【0022】
これにより、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色の色データの画素を含まない場合には、コンピュータは、地色領域の画素の色データを初期変換予定色に変換するため、画像データの地色を初期変換予定色に変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。また、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色の色データの画素を含む場合には、コンピュータは、地色領域の画素の色データを初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換するため、画像データの地色を変更変換予定色に変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る画像読取装置を示す斜視図である。
【図2】図1のX1−X1矢視全断面図である。
【図3】上側フレームが取り外された状態の斜視図である。
【図4】画像読取装置の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図5】画像データの地色を変換する地色変換処理を示すフローチャートである。
【図6】図5の「不適切画素カウント処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図7】図5の「最小色差取得処理」のサブ処理を示すサブフローチャートである。
【図8】不適切画素のカウントを説明する説明図である。
【図9】色差の算出を説明する説明図である。
【図10】地色変換色を地色に設定した一例を示す図である。
【図11】地色変換色を初期変換予定色の補色に設定した一例を示す図である。
【図12】他の第1実施形態に係る画像データの地色を変換する地色変換処理を示すフローチャートである。
【図13】他の第2実施形態に係る画像データの地色を変換する地色変換処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る画像処理装置、画像処理方法、画像読取装置及び画像処理プログラムを具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る画像読取装置1の概略構成について図1乃至図3に基づいて説明する。
【0025】
図1及び図2に示すように、画像読取装置1は、装置本体2と、装置本体2の上部に設けられた給紙口3と、給紙口3の上方に垂直に近い角度で傾斜して配置された給紙トレイ4と、装置本体2の前面側下端部に設けられた排出口5と、排出口5から排出された原稿であるシートPが積載される略水平に配置された排出トレイ6とを有している。
【0026】
給紙トレイ4には、セットされたシートPの幅方向の位置を規制する一対のシートガイド7が設けられている。各シートガイド7は、給紙トレイ4の幅方向に延びる一対のガイド溝8に支持されてスライド可能なプレート7Aと、プレート7Aの側縁部に立設された側壁7Bとから構成され、横断面略L字形に形成されている。また、各シートガイド7は、不図示の連動機構によって、いずれか一方のシートガイド7がスライドされると、他方のシートガイド7が連動して相反する方向へスライドするように構成されている。
【0027】
また、給紙トレイ4の上端部には、上下方向に引き出し・収納可能に構成された各補助トレイ4A、4Bが設けられている。また、排出トレイ6は、装置本体2側の基端部を中心に該装置本体2側へ回動して、装置本体2の上面に密着可能に設けられている。また、排出トレイ6は、装置本体2に対して反対側の側縁部に各補助トレイ6A、6Bが設けられている。各補助トレイ6A、6Bは、内側方向へ回動させて排出トレイ6に重ねて収納できるように構成されている(図3参照)。
【0028】
また、装置本体2は、シートPの給紙口3から排出口5までの搬送路11を構成する下側フレーム12と、下側フレーム12の上側を開閉可能に覆う上側フレーム13とから構成されている。また、下側フレーム12の正面視左側縁部には、不図示のギヤ列が収納されたギヤ収納部14が設けられている。また、スタートスイッチ15A、エラーランプ15B等がこのギヤ収納部14の上面部に配置されている。
【0029】
図2及び図3に示すように、下側フレーム12には、給紙口3の近傍に配置されて、給紙トレイ4にセットされたシートPを搬送路11に沿って内部へ分離して引き込む第1搬送ローラ17が設けられている。また、この第1搬送ローラ17の搬送方向下流側に近接して配置されて、シートPを搬送路11に沿って内部へ分離して搬送する第2搬送ローラ18とが設けられている。また、第2搬送ローラ18の搬送方向下流側には、同一軸上に取り付けられて、シートPを搬送路11に沿って搬送する一対の第3搬送ローラ19が設けられている。
【0030】
一方、上側フレーム13の第1搬送ローラ17に対向する位置には、ゴム等の高摩擦弾性部材で形成されて、閉じた際に、第1搬送ローラ17の外周面に当接する第1分離部材21が設けられている。この第1分離部材21は、上側フレーム13を閉じた際に、背面部に配置された押圧部材22と圧縮バネ23とによって弾性付勢されて、第1搬送ローラ17の外周面に所定荷重で押圧される。
【0031】
また、上側フレーム13の第2搬送ローラ18に対向する位置には、ゴム等の高摩擦弾性部材で形成されて、閉じた際に、第2搬送ローラ18の外周面に当接する第2分離部材25が設けられている。
【0032】
そして、第2分離部材25は、上側フレーム13を閉じた際に、背面部に配置されて先端部が断面矩形状に形成された押圧部材26と圧縮バネ27とによって弾性付勢されて、第2分離部材25が第2搬送ローラ18の軸方向両端縁部の外周面に所定荷重で押圧される。
【0033】
また、上側フレーム13の一対の第3搬送ローラ19に対向する位置には、一対のピンチローラ31が回転自在に設けられている。この一対のピンチローラ31は、それぞれの軸が圧縮バネ32によって対向する第3搬送ローラ19に向けて弾性付勢されている。このため、各ピンチローラ31は各第3搬送ローラ19の外周面に圧接され、各第3搬送ローラ19が回転駆動されると、各ピンチローラ31が従動回転する。
【0034】
また、給紙トレイ4に供給されて第1搬送ローラ17と第1分離部材21とのニップ部に案内されたシートPは、第1搬送ローラ17の軸17Aの回転駆動によって、第1分離部材21との摩擦により最も下側のシートP、つまり、第1搬送ローラ17の外周面に当接するシートPが分離され、第2搬送ローラ18へ搬送される。
【0035】
そして、第2搬送ローラ18と第2分離部材25の各当接部25Aとのニップ部に搬送されたシートPは、各当接部25Aとの摩擦により第2搬送ローラ18の外周面に当接するシートPが分離され、搬送方向下流側に配置された一対の第3搬送ローラ19へ搬送される。
【0036】
また、図3に示すように、第1搬送ローラ17の正面視左側近傍位置には、シートPの有無を検出する第1シートセンサ34が設けられている。また、第2搬送ローラ18の正面視左側近傍位置には、シートPの有無を検出する第2シートセンサ35が設けられている。第1シートセンサ34は、第1搬送ローラ17と第1分離部材21とのニップ部へ搬送されたシートPを検出した場合には、ON信号を出力し、シートPを検出していない場合には、OFF信号を出力するように構成されている。同様に、第2シートセンサ35は、第2搬送ローラ18と第2分離部材25の各当接部25とのニップ部へ搬送されたシートPを検出した場合には、ON信号を出力し、シートPを検出していない場合には、OFF信号を出力するように構成されている。
【0037】
また、図3に示すように、一対の第3搬送ローラ19間のほぼ中央位置には、各第3搬送ローラ19と各ピンチローラ31とのニップ部を通過したシートPの先端部を検出する第3シートセンサ37が設けられている。図2に示すように、第3シートセンサ37は、一対の第3搬送ローラ19と一対のピンチローラ31とのニップ部を通過したシートPによって当接部材38が搬送方向下流側へ回動されて、ON信号を出力し、当接部材38がシートPによって回動されていない場合には、OFF信号を出力する。
【0038】
また、図2及び図3に示すように、下側フレーム12には、一対の第3搬送ローラ19及び第3シートセンサ37の搬送方向下流側に、いわゆる密着型のイメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)により構成された下側ラインセンサ41が配置され、搬送路11に沿って搬送されるシートPの表面の画像が読み取られる。
【0039】
また、上側フレーム13には、一対のピンチローラ31の搬送方向下流側に、密着型のイメージセンサにより構成された上側ラインセンサ42が、下側ラインセンサ41に対向するように配置され、搬送路11に沿って搬送されるシートPの裏面の画像が読み取られる。
【0040】
この下側ラインセンサ41及び上側ラインセンサ42は、ほぼ同じ構成であって、それぞれ、光源、レンズ及び受光素子を備え、シートPに対向するようにコンタクトガラス43が設けられている。そして、シートPは、下側ラインセンサ41及び上側ラインセンサ42のコンタクトガラス43に密着しつつ、各コンタクトガラス43間を通過する。
【0041】
そして、各ラインセンサ41、42は、光源からコンタクトガラス43を通じてシートPに光を照射して、シートPからの反射光をレンズにより受光素子に集光してRGB信号(画像の色データ)に変換し出力する。このRGB信号の画像処理を行うことによって、シートPの両面について、各画素のRGB値等で構成された画像データをページ単位で得ることができる。
【0042】
また、受光素子は、例えばチップ単位でシートPの主走査方向(搬送路11に対して直交する方向である。)に並べられている。また、光源及びレンズは、この受光素子と同方向に配列されている。また、各コンタクトガラス43は、下側ラインセンサ41及び上側ラインセンサ42の主走査方向の長さに対応して該主走査方向に延設されている。
【0043】
また、図2及び図3に示すように、下側フレーム12には、下側ラインセンサ41の搬送方向下流側の近傍位置に、同一軸上に取り付けられて、シートPを搬送路11に沿って排出口5から排出する一対の排出ローラ45が設けられている。また、上側フレーム13の一対の排出ローラ45に対向する位置には、一対のピンチローラ46が回転自在に設けられている。
【0044】
この一対のピンチローラ46は、軸が圧縮バネ47によって対向する排出ローラ45に向けて弾性付勢されている。このため、各ピンチローラ46は各排出ローラ45の外周面に圧接され、各排出ローラ45が回転駆動されると、各ピンチローラ46が従動回転する。
【0045】
ここで、図1乃至図3に示すように、上側フレーム13は、各ピンチローラ46側の側縁部の左右方向両端部から突出する一対の軸49によって、排出口5の左右両端部において、開閉可能に軸支されている。そして、この上側フレーム13を下側フレーム12側へ回動して当接させることによって、上側フレーム13の給紙口3側の側縁部の左右方向両端部に設けられた不図示の各弾性係止片が、下側フレーム12の給紙口3側の左右両側縁部に設けられた各係合孔51に係止される。
【0046】
また、上側フレーム13を下側フレーム12に係止した場合には、上側フレーム13の給紙口3側の正面視右側縁部から突出する薄板状の突出片52が、下側フレーム12の正面視右側縁部に配置された溝形フォトマイクロセンサにより構成されるカバースイッチ53の溝内に入るように構成されている。これにより、カバースイッチ53は、上側フレーム13を下側フレーム12に係止して、突出片52が溝内に入った場合にON信号を出力し、上側フレーム13が開放された場合には、OFF信号を出力する。
【0047】
また、上側フレーム13の給紙口3側の内側面に配置された開放ボタン55を手前に引くことによって、不図示の各弾性係止片が上方に回動されて、各係合孔51との係合が解除されるように構成されている。従って、シートPが搬送路11上でジャムした場合、或いは各コンタクトガラス43が汚れた場合には、開放ボタン55を手前に引いて上側フレーム13を手前に開くことによって、ジャム処理或いは各コンタクトガラス43の清掃を容易に行うことができる。
【0048】
また、図2に示すように、ギヤ収納部14の側壁14Aに取り付けられた用紙送りモータ56のモータ軸にはモータギヤが取り付けられ、ギヤ収納部14内に収納される不図示のギヤ列を介して第1搬送ローラ17、第2搬送ローラ18、各第3搬送ローラ19、各排出ローラ45に回転駆動を伝達するように構成されている。
【0049】
そして、ギヤ収納部14A内に収納された第1キープソレノイド58(図4参照)のプランジャを突出する位置に駆動することによって、第1搬送ローラ17の軸17Aが回転駆動され、第1キープソレノイド58(図4参照)のプランジャを引き込んだ位置に駆動することによって第1搬送ローラ17の軸17Aの回転駆動が停止されるように構成されている。
【0050】
また、ギヤ収納部14A内に収納された第2キープソレノイド59(図4参照)のプランジャを突出する位置に駆動することによって、第2搬送ローラ18の軸18Aが回転駆動され、第2キープソレノイド59(図4参照)のプランジャを引き込んだ位置に駆動することによって第2搬送ローラ18の軸18Aの回転駆動が停止されるように構成されている。
【0051】
次に、画像読取装置1の回路構成について図4に基づいて説明する。
図4に示すように、画像読取装置1は、画像読取装置1の全体の制御を行う制御回路部61と、制御回路部61に接続される入出力インターフェース62と、入出力インターフェース62に接続されるモータ駆動回路63、ラインセンサ駆動回路65、ソレノイド駆動回路66等とから構成されている。また、入出力インターフェース62には、スタートスイッチ15A、エラーランプ15B、第1シートセンサ34、第2シートセンサ35、第3シートセンサ37、カバースイッチ53等が接続されている。
【0052】
制御回路部61は、画像読取装置1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU71や、ROM72、FLASH・ROM73、RAM74、通信I/F75等を備えている。また、CPU71、ROM72、FLASH・ROM73、RAM74、通信I/F75は、バス線76により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0053】
また、ROM72は、画像読取装置1の制御上必要な各種パラメータや各種のプログラムを記憶させておくものであり、シートPを搬送する搬送制御処理等の各種プログラムが記憶されている。また、FLASH・ROM73は、下側ラインセンサ41と上側ラインセンサ42によって読み取ったシートP上の画像の画像データを作成して出力するように制御する制御プログラムや各種パラメータを記憶させておくものである。
【0054】
また、FLASH・ROM73には、後述のページ単位で取得した画像データの地色を変換する地色変換処理(図5等参照)等の各種プログラム、及び、初期変換予定色のRGB値、初期変換予定色の補色のRGB値、閾値割合や色差閾値等の各種パラメータが記憶されている。
【0055】
そして、CPU71は、かかるROM72とFLASH・ROM73に記憶されている各種パラメータや各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。また、RAM74は、CPU71により演算された各種の演算結果や、下側ラインセンサ41と上側ラインセンサ42によって読み取ったシートP上の画像データ等を、一時的に記憶させておくためのものである。
【0056】
また、モータ駆動回路63には、用紙送りモータ56が接続されている。そして、モータ駆動回路63は、制御回路部61のCPU71からの指示に従って、用紙送りモータ56を駆動制御する。また、ラインセンサ駆動回路65には、上側ラインセンサ42と下側ラインセンサ41が接続されている。
【0057】
そして、ラインセンサ駆動回路65は、制御回路部61のCPU71からの指示に従って、上側ラインセンサ42と下側ラインセンサ41の光源を点灯させるための動作電流の調整等の駆動制御を行うと共に、受光素子の電気信号をRGB信号等に変換して出力する。また、CPU71は、ラインセンサ駆動回路65から受信したRGB信号等に基づいて作成した画像データをRAM74に一時記憶し、通信I/F75を介して外部のPC81へ出力する。尚、本実施形態においては、RGB信号は8ビットの2進数で表される「0」〜「255」のデジタル信号に変換される。また、白が「255」で、黒が「0」で表される。
【0058】
また、ソレノイド駆動回路66には、第1キープソレノイド58と第2キープソレノイド59が接続されている。そして、ソレノイド駆動回路66は、制御回路部61のCPU71からの指示に従って、第1キープソレノイド58と第2キープソレノイド59のそれぞれのプランジャを突出した位置又は引き込んだ位置に駆動制御する。また、制御回路部61のCPU71は、第1シートセンサ34、第2シートセンサ35及び第3シートセンサ37からの検出信号に基づいて、ソレノイド駆動回路66を介して各キープソレノイド58、59の駆動制御を行う。
【0059】
[地色変換処理]
次に、このように構成された画像読取装置1によるページ単位で取得した画像データの地色を変換する地色変換処理について図5乃至図11に基づいて説明する。尚、図5乃至図7にフローチャートで示されるプログラムは、FLASH・ROM73に記憶されており、CPU71により実行される。また、下側ラインセンサ41及び上側ラインセンサ42を介して取得したシートPの画像データは、ページ単位でRAM74に記憶され、CPU71は、各ページ単位の画像データについて地色変換処理を実行する。
【0060】
図5に示すように、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)11において、CPU71は、RAM74に記憶されている1ページ分の画像データをRAM74のワーキングエリアに展開する。そして、CPU71は、ワーキングエリアに展開した画像データの1ライン目の先頭画素から2ライン目又は3ライン目の最終画素までの各画素のRGB値を読み出し、これらの画素のRGB値の平均値を算出し、画像データの「地色のRGB値」としてRAM74に記憶する。
【0061】
そして、S12において、CPU71は、地色のRGB値をRAM74から読み出し、画像データの各画素のうち、地色のRGB値の画素が存在する地色領域を取得する。具体的には、CPU71は、画像データの1ライン目の先頭画素からの最終ラインの最終画素まで順番に番号N(N=1、2、3・・・)を付して、「地色のRGB値」の画素に付された番号Nを「地色領域内の画素の番号」としてRAM74に順番に記憶する。尚、CPU71は、画素のR、G、Bの各値と上記S11で算出した地色のR、G、Bの各値との差が、いずれも−3〜+3の範囲内であれば、当該画素のRGB値は、「地色のRGB値」であると判定する。
【0062】
続いて、S13において、CPU71は、地色領域の画素のうち、地色を変換するように予め設定された初期変換予定色に近似するRGB値の地色領域外の画素に隣接している不適切画素をカウントする「不適切画素カウント処理」のサブ処理(図6参照)を実行する。
【0063】
ここで、「不適切画素カウント処理」のサブ処理について図6及び図8に基づいて説明する。尚、図8において、各番号N1、N2、・・・・N8、N10、N14、N15、N17、N21、N22、N24、N28、・・・N35が付された画素は、地色領域の地色(例えば、青色である。)の画素である。また、各番号N9、N16、N19、N23が付された画素は、地色外領域の白色の画素である。また、各番号N11、N12、N13、N18、N20、N25、N26、N27が付された画素は、地色外領域の黄緑色の画素である。
【0064】
図6に示すように、S111において、CPU71は、1ライン目の先頭画素を、地色を初期変換予定色に変換することが不適切な不適切画素か否かを判定する対象画素に設定する。つまり、番号Nを「1」に設定して先頭画素を対象画素とする。また、CPU71は、不適切画素をカウントする不適切画素カウンタを初期化する。
【0065】
続いて、S112において、CPU71は、対象画素の番号NをRAM74から読み出し、RAM74に記憶する「地色領域内の画素の番号」にあるか否か、つまり、対象画素は地色領域の画素か否かを判定する判定処理を実行する。そして、対象画素の番号Nが「地色領域内の画素の番号」に無いと判定した場合、つまり、対象画素は、地色領域の外側の地色外領域の画素であると判定した場合には(S112:NO)、CPU71は、後述のS116の処理に移行する。
【0066】
一方、対象画素の番号Nが「地色領域内の画素の番号」にあると判定した場合、つまり、対象画素は地色領域の画素であると判定した場合には(S112:YES)、CPU71は、S113の処理に移行する。S113において、CPU71は、対象画素が地色領域の外側の地色外領域の画素に隣接しているか否かを判定する判定処理を実行する。そして、対象画素が地色外領域の画素に隣接していないと判定した場合には(S113:NO)、CPU71は、後述のS116の処理に移行する。
【0067】
例えば、図8に示すよう、対象画素として番号N1の地色の画素が設定された場合には、当該番号N1に隣接する画素は、番号N2と番号N8の地色の画素、つまり、地色領域の画素だけであるため、CPU71は、対象画素が地色外領域の画素に隣接していないと判定し、S116の処理に移行する。
【0068】
一方、対象画素が地色外領域の画素に隣接していると判定した場合には(S113:YES)、CPU71は、S114の処理に移行する。例えば、図8に示すよう、対象画素として番号N2の地色の画素が設定された場合には、当該番号N2に隣接する画素は、各番号N1、N3の地色の画素と、番号N9の地色外領域の画素に隣接しているため、CPU71は、対象画素が地色外領域の画素に隣接していると判定し、S114の処理に移行する。
【0069】
S114において、CPU71は、対象画素に隣接する地色外領域の画素のRGB値が、初期変換予定色に近似するRGB値か否か、つまり、対象画素が隣接する地色外領域は初期変換予定色に近似しているか否かを判定する判定処理を実行する。尚、CPU71は、地色外領域の画素のR、G、Bの各値と初期変換予定色のR、G、Bの各値(例えば、各値が0〜255の8ビットで表され、初期変換予定色が白色の場合には、R=255、G=255、B=255である。)との差が、いずれも−5〜+5の範囲内であれば、対象画素が隣接する地色外領域は初期変換予定色に近似していると判定する。
【0070】
そして、CPU71は、対象画素が隣接する地色外領域は初期変換予定色に近似していないと判定した場合には(S114:NO)、CPU71は、後述のS116の処理に移行する。例えば、図8に示すよう、対象画素として番号N4の地色の画素が設定された場合には、当該番号N4に隣接する画素は、各番号N3、N5の地色の画素と、番号N11の地色外領域の画素に隣接している。
【0071】
そして、番号N11の地色外領域の画素のR、G、Bの各値と初期変換予定色のR、G、Bの各値との差のうち、少なくとも1個の差が、−6以下、又は、6以上の場合には、CPU71は、対象画素N4が隣接する地色外領域は、初期変換予定色に近似していないと判定し、S116の処理に移行する。
【0072】
一方、対象画素が隣接する地色外領域は初期変換予定色に近似していると判定した場合には(S114:YES)、CPU71は、S115の処理に移行する。例えば、図8に示すように、対象画素として番号N2の地色の画素が設定された場合には、当該番号N2に隣接する画素は、各番号N1、N3の地色の画素と、番号N9の地色外領域の画素に隣接している。そして、番号N9の地色外領域の画素のR、G、Bの各値と初期変換予定色のR、G、Bの各値との差が、いずれも−5〜+5の範囲内であれば、CPU71は、対象画素N2が隣接する地色外領域は初期変換予定色に近似していると判定し、S115の処理に移行する。
【0073】
S115において、CPU71は、対象画素は地色を初期変換予定色に変換することが不適切な不適切画素であるとしてカウントし、つまり、不適切画素カウンタに「1」加算後、S116の処理に移行する。S116において、CPU71は、対象画素の番号Nが最終ラインの最終画素に付された番号であるか否か、つまり、当該画像データの全画素を対象画素に設定したか否かを判定する判定処理を実行する。
【0074】
そして、対象画素の番号Nが最終ラインの最終画素に付された番号でないと判定した場合、つまり、当該画像データの全画素を対象画素に設定していないと判定した場合には(S116:NO)、CPU71は、S117の処理に移行する。S117において、CPU71は、次の画素に付された番号Nを対象画素の番号NとしてRAM74に記憶する、つまり、次の画素を、地色を初期変換予定色に変換することが不適切な不適切画素か否かを判定する対象画素に設定後、再度S112以降の処理を実行する。
【0075】
一方、対象画素の番号Nが最終ラインの最終画素に付された番号であると判定した場合、つまり、当該画像データの全画素を対象画素に設定したと判定した場合には(S116:YES)、CPU71は、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、S14の処理に移行する。
【0076】
図5に示すように、S14において、CPU71は、FLASH・ROM73から閾値割合(例えば、閾値割合=3%である。)を読み出し、当該画像データの総画素数に閾値割合を掛け算した値を、「変更閾値」である不適切画素数閾値としてRAM74に記憶する。続いて、CPU71は、RAM74に記憶する不適切画素カウンタのカウント値が不適切画素数閾値以上か否かを判定する判定処理を実行する。
【0077】
尚、「変更閾値」である不適切画素数閾値をシートPの用紙サイズ(A3、A4、A5等である。)毎に、予めFLASH・ROM73に記憶するようにしてもよい。そして、S14において、CPU71は、シートPの用紙サイズに対応する不適切画素数閾値をFLASH・ROM73から読み出すようにしてもよい。
【0078】
そして、不適切画素カウンタのカウント値が不適切画素数閾値未満の場合には(S14:NO)、CPU71は、S15の処理に移行する。S15において、CPU71は、FLASH・ROM73から初期変換予定色のRGB値(例えば、初期変換予定色が白色の場合には、R=255、G=255、B=255である。)を読み出し、地色を変換する地色変換色としてRAM74に記憶後、つまり、地色変換色を初期変換予定色のRGB値に設定後、後述のS21の処理に移行する。
【0079】
一方、不適切画素カウンタのカウント値が不適切画素数閾値以上の場合には(S14:YES)、CPU71は、S16の処理に移行する。例えば、図8に示すように、各番号N9、N16、N23の地色外領域の画素のR、G、Bの各値と初期変換予定色のR、G、Bの各値との差が、いずれも−5〜+5の範囲内であれば(例えば、初期変換予定色が白色の場合には、R、G、Bの各値の差は、いずれも「0」となる。)、CPU71は、地色領域の各画素N2、N8、N10、N15、N17、N22、N24、N30の8個の画素を不適切画素としてカウントし、不適切画素カウンタのカウント値は「8」となる。
【0080】
また、CPU71は、FLASH・ROM73から閾値割合として「10%」読み出した場合には、当該画像データの総画素数「35個」の10%の「3.5」を不適切画素数閾値とする。そして、CPU71は、不適切画素カウンタのカウント値は「8」は、不適切画素数閾値の「3.5」以上であるため、S16の処理に移行する。
【0081】
S16において、CPU71は、地色を初期変換予定色に変換することが不適切な不適切画素に隣接する地色外領域の画素のRGB値と初期変換予定色のRGB値との色差のうち最小の色差を取得する「最小色差取得処理」のサブ処理(図7参照)を実行する。ここで、「色差」とは、対象画素のR、G、Bの各値と初期変換予定色のR、G、Bの各値のそれぞれの差の合計値である。
【0082】
ここで、「最小色差取得処理」のサブ処理について図7及び図9に基づいて説明する。尚、図9において、各番号M1、M2、・・・M8、M10、M12、M13、・・・M18、M22、・・・、M25、M29、・・・M32が付された画素は、地色領域の地色(例えば、青色である。)の画素である。また、番号M9が付された画素は、地色外領域の薄水色(R=204、G=204、B=255)の画素である。
【0083】
また、番号M11が付された画素は、地色外領域の赤色(R=0、G=0、B=255)の画素である。また、各番号M19、M20、M21、M26、M28、M33、M34、M35が付された画素は、地色外領域の黒色(R=0、G=0、B=0)の画素である。また、番号M27が付された画素は、地色外領域の薄緑色(R=204、G=255、B=255)の画素である。
【0084】
図7に示すように、S211において、CPU71は、1ライン目の先頭画素を、地色を変換するように予め設定された初期変換予定色との色差を算出する対象画素に設定する。つまり、番号Nを「1」に設定して先頭画素を対象画素とする。また、CPU71は、RAM74から「最小色差」を読み出し、「最小色差」に「765」を代入して再度、RAM74に記憶する。尚、この「765」は、黒色(R=0、G=0、B=0)と白色(R=255、G=255、B=255)との最大色差の値を表し、R、G、Bの各値のそれぞれの差「255」の合計値である。
【0085】
続いて、S212において、上記S112の処理を実行し、対象画素は地色領域の画素か否かを判定する判定処理を実行する。そして、対象画素は、地色領域の外側の地色外領域の画素であると判定した場合には(S212:NO)、CPU71は、後述のS217の処理に移行する。
【0086】
一方、対象画素は地色領域の画素であると判定した場合には(S212:YES)、CPU71は、S213の処理に移行する。S213において、CPU71は、上記S113の処理を実行し、対象画素が地色領域の外側の地色外領域の画素に隣接しているか否かを判定する判定処理を実行する。そして、対象画素が地色外領域の画素に隣接していないと判定した場合には(S213:NO)、CPU71は、後述のS217の処理に移行する。
【0087】
一方、対象画素が地色外領域の画素に隣接していると判定した場合には(S213:YES)、CPU71は、S214の処理に移行する。S214において、CPU71は、対象画素が隣接している地色外領域の画素のRGB値をRAM74に記憶する。また、CPU71は、対象画素が隣接している地色外領域の画素のR、G、Bの各値と初期変換予定色のR、G、Bの各値との差を合計して色差を算出する。
【0088】
例えば、図9に示すように、対象画素として番号M2の地色の画素が設定された場合には、当該番号M2に隣接する画素は、各番号M1、M3の地色の画素と、番号M9の地色外領域の画素に隣接している。そして、番号M9の地色外領域の画素のRGB値が、R=204、G=204、B=255で、初期変換予定色のRGB値が、R=255、G=255、B=255の場合には、色差は51+51=102となる。
【0089】
また、対象画素として番号M4の地色の画素が設定された場合には、当該番号M4に隣接する画素は、各番号M3、M5の地色の画素と、番号M11の地色外領域の画素に隣接している。そして、番号M11の地色外領域の画素のRGB値が、R=0、G=0、B=255で、初期変換予定色のRGB値が、R=255、G=255、B=255の場合には、色差は255+255=510となる。
【0090】
続いて、S215において、CPU71は、RAM74から「最小色差」を読み出し、上記S214で算出した色差の値が「最小色差」よりも小さいか否かを判定する判定処理を実行する。そして、上記S214で算出した色差の値が「最小色差」以上であると判定した場合には(S215:NO)、CPU71は、後述のS217の処理に移行する。
【0091】
一方、上記S214で算出した色差の値が「最小色差」よりも小さいと判定した場合には(S215:YES)、CPU71は、S216の処理に移行する。S216において、CPU71は、上記S214で算出した色差の値を「最小色差」に代入して、再度RAM74に記憶後、S217の処理に移行する。S217において、CPU71は、対象画素の番号Nが最終ラインの最終画素に付された番号であるか否か、つまり、当該画像データの全画素を対象画素に設定したか否かを判定する判定処理を実行する。
【0092】
そして、対象画素の番号Nが最終ラインの最終画素に付された番号でないと判定した場合、つまり、当該画像データの全画素を対象画素に設定していないと判定した場合には(S217:NO)、CPU71は、S218の処理に移行する。S218において、CPU71は、次の画素に付された番号Nを対象画素の番号NとしてRAM74に記憶する、つまり、次の画素を、地色を変換するように予め設定された初期変換予定色との色差を算出する対象画素に設定後、再度S212以降の処理を実行する。
【0093】
一方、対象画素の番号Nが最終ラインの最終画素に付された番号であると判定した場合、つまり、当該画像データの全画素を対象画素に設定したと判定した場合には(S217:YES)、CPU71は、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、S17の処理に移行する。
【0094】
図5に示すように、S17において、CPU71は、FLASH・ROM73から色差閾値(例えば、色差閾値=50である。)を読み出し、RAM74に記憶する「最小色差」が色差閾値以下か否かを判定する判定処理を実行する。そして、RAM74に記憶する「最小色差」が色差閾値より大きいと判定した場合には(S17:NO)、CPU71は、S18の処理に移行する。S18において、CPU71は、RAM74から上記S11で取得した地色のRGB値を読み出し、地色を変換する地色変換色としてRAM74に記憶後、つまり、地色変換色をシートPの地色のRGB値(変更変換予定色)に設定後、即ち、地色をそのまま残すように設定後、後述のS21の処理に移行する。
【0095】
例えば、図10に示すように、初期変換予定色が「白色」(例えば、R=255、G=255、B=255である。)で、シートP1の地色が「青色」で、文字「ABCDEFG」が「薄い水色」、つまり、R=204、G=204、B=255の時には、色差=51+51=102となる。そして、色差閾値が「50」のときには、最小色差=102は、色差閾値より大きいため、地色変換色を「白色」に変換することなく、地色変換色をシートP1の地色のRGB値、つまり、「青色」のRGB値に設定後、S21の処理に移行する。
【0096】
一方、RAM74に記憶する「最小色差」が色差閾値以下であると判定した場合には(S17:YES)、CPU71は、S19の処理に移行する。S19において、CPU71は、FLASH・ROM73から初期変換予定色の補色のRGB値を読み出し、上記S214でRAM74に記憶した対象画素が隣接している地色外領域の画素のRGB値の中に、初期変換予定色の補色のRGB値があるか否かを判定する判定処理を実行する。
【0097】
そして、上記S214でRAM74に記憶した対象画素が隣接している地色外領域の画素のRGB値の中に、初期変換予定色の補色のRGB値があると判定した場合には(S19:YES)、CPU71は、上記S18の処理に移行する。
【0098】
他方、上記S214でRAM74に記憶した対象画素が隣接している地色外領域の画素のRGB値の中に、初期変換予定色の補色のRGB値が無いと判定した場合には(S19:NO)、CPU71は、S20の処理に移行する。S20において、CPU71は、FLASH・ROM73から初期変換予定色の補色のRGB値を読み出し、地色を変換する地色変換色としてRAM74に記憶後、つまり、地色変換色を初期変換予定色の補色のRGB値(変更変換予定色)に設定後、後述のS21の処理に移行する。
【0099】
例えば、図11に示すように、初期変換予定色が「白色」(例えば、R=255、G=255、B=255である。)で、シートP2の地色が「薄い黄色」で、文字「ABCDEFG」が「薄い水色」の場合には、CPU71は、地色変換色を「白色」の補色である「黒色」のRGB値(例えば、R=0、G=0、B=0である。)に設定後、S21の処理に移行する。
【0100】
そして、S21において、CPU71は、RAM74から地色変換色のRGB値を読み出し、画像データの地色領域の全画素のRGB値を当該地色変換色のRGB値に変換する。その後、CPU71は、次のページの画像データがある場合には、再度S11以降の処理を実行し、一方、次のページの画像データが無い場合には、当該処理を終了する。
【0101】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る画像読取装置1では、CPU71は、地色領域の画素のうち、地色を初期変換予定色に変換することが不適切な不適切画素をカウントし、不適切画素のカウント値が不適切画素数閾値より少ない場合には、地色を初期変換予定色のRGB値に変換する。これにより、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色に近似しない場合には、CPU71は、画像データの地色を初期変換予定色に変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。
【0102】
また、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色に近似する場合には、これら不適切画素に隣接する地色外領域の各画素のRGB値と初期変換予定色のRGB値との色差を算出して、最小色差を取得する。そして、最小色差が色差閾値より大きい場合には、CPU71は、画像データの地色をそのまま残すように変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。
【0103】
また、最小色差が色差閾値以下の場合でも、地色領域に隣接する地色外領域の画素の中に、初期変換予定色の補色のRGB値の画素があるときには、CPU71は、画像データの地色をそのまま残すように変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。更に、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色に近似すると共に、最小色差が色差閾値以下の場合に、当該地色領域に隣接する地色外領域の画素の中に、初期変換予定色の補色のRGB値の画素が無いときには、CPU71は、画像データの地色を初期変換予定色の補色に変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。
【0104】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【0105】
(A)例えば、図12に示すように、上記S16乃至S20の処理に替えて、S311の処理を実行するようにしてもよい。つまり、不適切画素カウンタのカウント値が不適切画素数閾値以上の場合には(S14:YES)、CPU71は、S311の処理に移行する。S311において、CPU71は、RAM74から上記S11で取得した地色のRGB値を読み出し、地色を変換する地色変換色としてRAM74に記憶後、つまり、地色変換色をシートPの地色のRGB値に設定後、即ち、地色をそのまま残すように設定後、後述のS21の処理に移行するようにしてもよい。
【0106】
これにより、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色に近似する場合には、CPU71は、画像データの地色をそのまま残すように変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。
【0107】
(B)また例えば、図13に示すように、上記S16乃至S20の処理に替えて、S411の処理を実行するようにしてもよい。つまり、不適切画素カウンタのカウント値が不適切画素数閾値以上の場合には(S14:YES)、CPU71は、S411の処理に移行する。S411において、CPU71は、FLASH・ROM73から初期変換予定色の補色のRGB値を読み出し、地色を変換する地色変換色としてRAM74に記憶後、つまり、地色変換色を初期変換予定色の補色のRGB値に設定後、後述のS21の処理に移行するようにしてもよい。
【0108】
これにより、地色領域に隣接する地色外領域の画素が、予め設定された初期変換予定色に近似する場合には、、CPU71は、画像データの地色を初期変換予定色の補色に変換して見やすい画像データを作成することが可能となる。
【0109】
(C)例えば、上記S11〜S21の処理をCPU71が、FLASH・ROM73に記憶されたプログラムに従って実行したが、CPU71は、ラインセンサ駆動回路65から入力されたページ単位の各画素のRGB値等で構成された画像データを通信I/F75を介して、PC81や、更に不図示のネットワークを介して接続されるサーバー(不図示)に出力するようにしてもよい。そして、PC81や不図示のサーバーにおいて、上記S11〜S21の処理を実行するようにしてもよい。
【0110】
(D)また例えば、図5乃至図7にフローチャートで示されるプログラム、及び、初期変換予定色のRGB値、初期変換予定色の補色のRGB値、閾値割合や色差閾値等の各種パラメータをフラッシュメモリを搭載した携帯型記憶媒体(例えば、SDメモリカード等である。)やCD−ROM、DVD−ROM等の記憶媒体に記憶するようにしてもよい。そして、CPU71は、不図示のデータリード部を介して、携帯型記憶媒体やCD−ROM、DVD−ROM等の記憶媒体に記憶された当該プログラム等を読み出して、FLASH・ROM73に記憶するように構成してもよい。
【0111】
(E)また例えば、上記実施例はRBG表色系で行った例を示したが、これに限らず他の表色形を用いてもよい。例えば、CMY表色系やXYZ表色系を用いて同様の処理を行っても、RGB表色系で行った処理と同じように、見やすい画像データを得ることができる。
【符号の説明】
【0112】
1 画像読取装置
41 下側ラインセンサ
42 上側ラインセンサ
65 ラインセンサ駆動回路
71 CPU
72 ROM
73 FLASH・ROM
74 RAM
75 通信I/F
P、P1、P2 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに含まれる各画素の色データに基づいて地色を取得する地色取得部と、
前記画像データに基づいて前記地色の色データの画素を含む地色領域を取得する地色領域取得部と、
前記地色領域取得部により取得される地色領域が、前記地色領域の画素の色データが変換されるように予め設定された色である初期変換予定色の色データの画素を含む前記地色領域の外側の地色外領域に隣接しているか否かを判定する隣接判定部と、
前記隣接判定部により、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していないと判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色に変換し、前記隣接判定部により、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換する地色変換部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記地色領域に含まれる画素のうち、前記初期変換予定色に近似する色データの画素に隣接する変換不適切画素を抽出してカウントするカウント部を備え、
前記隣接判定部は、前記カウント部によりカウントされた前記変換不適切画素のカウント値が変更閾値以上の場合には、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定し、前記カウント部によりカウントされた前記変換不適切画素のカウント値が前記変更閾値未満の場合には、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していないと判定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記地色領域に隣接する前記地色外領域に含まれる画素の色データと前記初期変換予定色との色差のうち、最小の色差を取得する最小色差取得部を備え、
前記地色変換部は、前記隣接判定部により、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定され、且つ、前記最小の色差が色差閾値以下の場合には、前記地色領域の画素の色データを前記変更変換予定色に変換することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記地色変換部は、前記隣接判定部により、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色の補色である前記変更変換予定色に変換することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
シートの画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部により読み取られた画像に対して画像処理を行う前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像処理装置と、
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
画像データに含まれる各画素の色データに基づいて地色を取得する地色取得工程と、
前記画像データに基づいて前記地色の色データの画素を含む地色領域を取得する地色領域取得工程と、
前記地色領域取得工程で取得される地色領域が、前記地色領域の画素の色データが変換されるように予め設定された色である初期変換予定色の色データの画素を含む前記地色領域の外側の地色外領域に接しているか否かを判定する隣接判定工程と、
前記隣接判定工程で、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していないと判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色に変換し、前記隣接判定工程で、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換する地色変換工程と、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
画像データに含まれる各画素の色データに基づいて地色を取得する地色取得工程と、
前記画像データに基づいて前記地色の色データの画素を含む地色領域を取得する地色領域取得工程と、
前記地色領域取得工程で取得される地色領域が、前記地色領域の画素の色データが変換されるように予め設定された色である初期変換予定色の色データの画素を含む前記地色領域の外側の地色外領域に接しているか否かを判定する隣接判定工程と、
前記隣接判定工程で、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していないと判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色に変換し、前記隣接判定工程で、前記地色領域が前記地色外領域に隣接していると判定された場合には、前記地色領域の画素の色データを前記初期変換予定色と異なる変更変換予定色に変換する地色変換工程と、
を実行させるための画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−80184(P2012−80184A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221073(P2010−221073)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】