説明

画像処理装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】難しい調整を行うことなく、1台のカメラや光源を用いて撮像された画像データから、その奥行き情報を取得して利用できる画像処理装置を提供する。
【解決手段】少なくとも可視光領域の波長成分を含む対象画像データに含まれる波長成分のうち、第1波長成分と、第1波長成分とは異なる第2波長成分の特徴量をそれぞれ算出し、算出された前記特徴量の差分を算出する差分算出部106と、差分の絶対値が大きいほど、強いぼかし加工を対象画像データに施す画像加工部108とを備える画像処理装置200。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の奥行き情報を取得して画像処理を行う画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラを用いた撮影画像の3次元情報(すなわち、撮影画像の奥行き情報)を取得する方法としては、複数のカメラを用いて異なる視点より撮影された画像を用いて3次元情報を取得するものが知られている。
【0003】
例えば2台のカメラを人間の目の視差に相当する視点の画像が得られるように横に並べ、この2台のカメラで同時に撮影した2枚の画像から3次元情報(奥行き情報)を取得する方法が知られている。
【0004】
また、被写体撮影用とは別に距離を計測するための可視光領域外の光を照射し、被写体からの反射光を可視光領域外の光と可視光領域の光とに分離し、可視光領域外の光の強度によって距離を取得するものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図12は、特許文献1に記載された3次元情報検出装置のブロック図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−45266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来から知られてきた2台のカメラを用いる方法では、装置が大型化するという課題があった。
【0008】
また、図12に示されるような3次元情報を取得する方法でも、照射可能な波長の種類が異なる複数の光源が必要であるため、装置が比較的大型になることに加え、その調整が難しいという課題を有していた。
【0009】
その結果、画像処理装置の消費電力も多くならざるを得なかった。
【0010】
本発明は、こうした従来の課題を解決するもので、難しい調整を行うことなく、1台のカメラや光源を用いて撮像された画像データから、その奥行き情報を取得して画像処理に利用できる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のある局面に係る画像処理装置は、少なくとも可視光領域の波長成分を含む対象画像データに対して、遠近感を強調する処理を施す画像処理装置であって、前記対象画像データは複数の領域を有しており、前記画像処理装置は、前記複数の領域に含まれる第1の領域に含まれる波長成分のうち、第1波長成分と、前記第1波長成分とは異なる第2波長成分の特徴量をそれぞれ算出し、算出された前記特徴量の差分を算出する差分算出部と、前記差分の絶対値が大きいほど、強いぼかし加工を前記第1の領域に施す画像加工部とを備える。
【0012】
この構成によると、1台のカメラや光源を用いて、異なる波長成分からなる複数の画像データを撮像し、これらの画像データから、差分算出部がその波長の差に起因して画像の奥行き情報に対応付けられる特徴量の差を算出することで、画像の奥行き情報を取得することができる。
【0013】
その結果、カメラや光源等、構成要素が従来と比較して少ないために、小型であり、電力消費量を抑え、操作が簡易な画像処理装置を実現することができる。
【0014】
具体的には、前記第1波長成分は、R(Red)、G(Green)、B(Blue)のうちのいずれかの可視光領域に対応する波長成分であり、前記第2波長成分は、紫外線領域に対応する波長成分としてもよい。
【0015】
より具体的には、前記特徴量は、前記第1波長成分及び前記第2波長成分の各々の画像の高周波数成分の量としてもよい。
【0016】
また、前記画像加工部は、前記対象画像データを離散コサイン変換することにより得られる変換係数を、前記差分の絶対値が大きいほど大きな量子化幅で量子化することにより、前記対象画像データにぼかし加工を施してもよい。
【0017】
なお、前記画像加工部は、前記対象画像データに対して、前記差分の絶対値が大きいほど、対象ブロック内の画素値の分散が大きくなるように作用する平滑化フィルタを施すことにより、前記対象画像データにぼかし加工を施してもよい。
【0018】
また、さらに、前記特徴量の差分に前記対象画像データが撮像された際の焦点距離に応じて定まる変換係数を乗ずることにより、前記特徴量の差分から対象画像の奥行き情報に対応する距離情報を算出する距離情報算出部を備えており、前記画像加工部は、前記距離情報で示される距離が長いほど、強いぼかし加工を前記対象画像データに施してもよい。
【0019】
また、さらに、前記対象画像データの色収差を補正する画像補正部と、前記補正後の対象画像データを記憶する画像データ記憶部とを備えており、前記差分算出部は、前記画像データ記憶部に記憶されている補正後の前記対象画像データを用いて、前記特徴量の差分を算出してもよい。
【0020】
また、さらに、前記第1波長成分のみを透過させるフィルタと、前記第2波長成分のみを透過させるフィルタとを備えた撮像部を有する取得部を備えており、前記取得部は、前記撮像部により撮像された前記対象画像データの前記第1波長成分及び前記第2波長成分を取得し、前記差分算出部は、前記取得部によって取得された前記第1波長成分及び前記第2波長成分の前記特徴量及びその差分を算出してもよい。
【0021】
本発明の他の局面に係る画像処理装置は、さらに、前記第1波長成分及び前記第2波長成分を含む画像データを前記対象画像データとして取得する画像入力部と、前記対象画像データから、前記第1波長成分及び前記第2波長成分をそれぞれ分離する分離部とを有する取得部を備えており、前記差分算出部は、前記分離部から取得した前記第1波長成分及び前記第2波長成分の前記特徴量及びその差分を算出する。
【0022】
この構成によれば、撮像装置から直接画像データを取得する場合以外にも、HDD(Hard Disk Drive)内の画像ファイル等、外部の画像データを取得し、奥行き情報を取得し、奥行き感を強調した画像を生成することができる。その結果、撮像部により撮像するタイミングに依存することなく、必要に応じて画像加工部で奥行き感のある画像を生成することが可能となる。また、撮像装置を省き、例えばPC(Personal Computer)上で動作するコンピュータソフトウェアとして画像処理装置を実装することにより、画像処理装置を小型化・省コスト化することが可能となる。さらに、差分算出部や距離情報算出部のように計算コストが高い処理の実行タイミングを、取得部のようにリアルタイム性が要求される処置とずらすことで、画像処理装置に要求される計算処理能力を抑えつつ、快適な操作を実現することができる。
【0023】
本発明の他の局面に係る画像処理装置は、さらに、符号化部を備えており、前記画像加工部は、前記対象画像データを離散コサイン変換した後に、前記差分の絶対値が大きいほど、大きな量子化幅を用いて前記離散コサイン変換で得られた変換係数を量子化し、前記符号化部は、前記量子化された変換係数を符号化する。
【0024】
この構成によれば、量子化ブロックに含まれる特徴量ブロックごとの、距離情報算出部により算出された距離情報の割合から、量子化幅の大きさを決定することで、取得した奥行き情報を用いて、最終的な画像データに割り当てられる符号量を削減し、かつ、奥行き感を強調した画像データを得ることができる。その結果、対象画像データの保存や伝達コストを抑えるメリットが生じる。
【0025】
また、複数のカメラ(撮像装置)や距離を計測する専用の装置を付加することなく距離情報を取得するため、コスト増加を最小限に抑えながら奥行き感のある画像を生成することができる。また、画像処理装置の小型化・省エネ化も可能となる。
【発明の効果】
【0026】
難しい調整を行うことなく、1台のカメラや光源を用いて撮像された画像データから、その奥行き情報を取得して利用できる画像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1〜3にかかる画像処理装置を用いて対象画像データの遠近感を強調する処理のイメージ図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1における画像処理装置のブロック図である。
【図3】図3は、異なる波長の画像イメージを示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1における画像処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1の変形例における画像処理装置のブロック図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2における画像処理装置のブロック図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態3における画像処理装置のブロック図である。
【図8】図8は、本実施の形態において、距離の異なる特徴量ブロックを含む量子化ブロックの量子化幅を決定する処理を説明する図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態3の変形例における画像処理装置のブロック図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態1〜3における画像処理装置を実現するコンピュータシステムの一例を示す外観図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態1〜3における画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図12】図12は、従来技術による3次元情報検出装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明のある局面にかかる画像処理装置200を用いて対象画像データの遠近感を強調する処理のイメージ図である。
【0030】
図1(a)に示される対象画像データに対して、画像処理装置200による画像処理を施すと、図1(b)に示されるように遠近感がより強調された画像データが得られる。
【0031】
典型的には、画像処理装置200はデジタルカメラの内部に組み込まれたCPU(Central Processing Unit)で実行されるプログラムとして、又は、PC(Personal Computer)上の画像処理ソフトウェア等として実現される。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態1における画像処理装置200の構成を示すブロック図である。
【0033】
図2に示されるように、画像処理装置200は、取得部202と、画像補正部201と、差分算出部106と、距離情報算出部107と、画像加工部108と、出力部109と、フォーカス処理部110と、制御部111とを備える。
【0034】
取得部202は、遠近感を付与する対象画像データを取得する処理部である。
【0035】
より詳しくは、取得部202は、撮像部101と、可視画像処理部104と、紫外画像処理部102とを備える。
【0036】
撮像部101は可視光領域を含む複数の異なる波長の光を受光し、各波長の光による画像データを出力する。
【0037】
本実施の形態における撮像部101は、可視光領域に加え、可視光領域外(例えば、紫外線領域)の波長の光を受光し、これらの波長成分に対応する電気信号を出力する。
【0038】
より具体的には、撮像部101は、1画素に対応する撮像素子の受光部の前面に、(1)可視光領域の赤色光のみを透過させるフィルタと、(2)可視光領域の青色光のみを透過させるフィルタと、(3)可視光領域の緑色光のみを透過させるフィルタと、(4)紫外線領域の光のみを透過させるフィルタとを備えている。
【0039】
よって、撮像部101は、同一画素につき(1)〜(4)の4つの波長成分ごとの電気信号を出力することができる。
【0040】
撮像部101から出力される各波長成分に対応した電気信号の内、可視光領域に対応する電気信号は、可視画像処理部104によって1画素R(赤)、G(緑)、B(青)の3つの波長成分をそれぞれ含む画像データへ変換される。
【0041】
一方、紫外線領域に対応する電気信号は、紫外画像処理部102によって、同様に、紫外線領域の波長成分を含む画像データへ変換される。
【0042】
すなわち、取得部202は、同一の画素について、赤、青、緑、紫外の4つの波長成分の各々に属する光を受光して得られた画像データを出力する。
【0043】
画像補正部201は、取得部202から取得した画像データの色収差を補正する。
【0044】
より詳細には、画像補正部201は、可視画像補正部105と、紫外画像補正部103とを備える。
【0045】
可視画像補正部105は、可視画像の色収差を補正する。R、G、B各々の画像データは、波長が異なる光によって生成されたものであるから、色収差等による影響があり、色ずれや色にじみが発生する。よって、色収差等による影響が少なくなるようにR、G、B各々の画像データを補正する。
【0046】
紫外画像補正部103は、可視光領域外(紫外線領域)の波長を含む画像データの色収差を補正する。紫外画像補正部103は、可視画像補正部105で補正された可視光画像データを基準として紫外画像の色収差を補正する。
【0047】
可視光の領域内では、色収差は最小限になるように、撮像の段階においてもレンズで調整されているが、可視光の領域外については調整の対象外であることが多く、そのための補正を行うのが紫外画像補正部103である。
【0048】
具体的には、紫外画像は可視画像よりも大きくなる傾向がある(倍率色収差)ため、紫外画像の大きさが可視画像の対応する部分と一致するように、紫外画像の大きさを小さくする。
【0049】
差分算出部106は、可視画像補正部105から出力される画像データに含まれる赤色の波長成分の画像データと、紫外画像補正部103から出力される画像データとを比較し、波長の異なる画像データ間での特徴量の差分を抽出する。この差分は、対象画像データの奥行き情報の大きさに対応している。なお、特徴量の差分を抽出する方法については、後述する。
【0050】
距離情報算出部107は、差分算出部106の出力と、後述するフォーカス処理部110から取得した合焦情報(焦点距離)から、距離情報を算出する。その方法については、後述する。
【0051】
画像加工部108は、可視画像補正部105から出力される画像データに対し、距離情報算出部107から取得した距離情報に基づいて、画像の遠近感を強調するように画像を加工し、奥行き感のある画像を生成する。なお、画像の加工方法については後述する。
【0052】
出力部109は、画像加工部108により加工された画像データを、出力する処理部である。例えば、RAM(Random Access Memory)上の出力用バッファへの書き込みや、HDD(Hard Disk Drive)上へのファイル書き出し等が考えられるが、これらに限られず、画像処理装置200の後段に加工画像を使用させるために必要な形式で出力を行う。
【0053】
フォーカス処理部110は、撮像部101による撮像時の合焦処理を行う。
【0054】
また、フォーカス処理部110は、距離情報算出部107へ撮像時の焦点距離を通知する。通知された焦点距離は、前述の通り、距離情報算出部107による距離情報の算出に用いられる。
【0055】
かかる構成によれば、複数のカメラ(撮像装置)や、撮像対象との距離を計測するための専用の装置を付加することなく、1台のカメラで取得した対象画像データから距離情報を取得できる。したがって、コストの増加を抑えながら奥行き感のある画像を生成することができる。また、装置の小型化も可能である。また、光学系の調整等、難しい操作を撮影者が行う必要もない。
【0056】
すなわち、本実施の形態にかかる画像処理装置200は、少なくとも可視光領域の波長成分を含む対象画像データに対して、遠近感を強調する処理を施す画像処理装置であって、対象画像データに含まれる波長成分のうち、第1波長成分と、第1波長成分とは異なる第2波長成分の特徴量をそれぞれ算出し、算出された特徴量の差分を算出する差分算出部106と、差分の絶対値が大きいほど、強いぼかし加工を対象画像データに施す画像加工部108とを備えている。
【0057】
ここで、第1波長成分とは、対象画像データに含まれる波長成分のうち、第2波長成分よりも波長が長い波長成分である。また、第2波長成分とは、対象画像データに含まれる波長成分のうち、第1波長成分よりも波長が短い波長成分である。
【0058】
より好ましくは、第1波長成分を、R(Red)、G(Green)、B(Blue)のうちのいずれかの可視光領域に対応する波長成分とし、第2波長成分を、紫外線領域に対応する波長成分とすることが考えられる。
【0059】
また、より具体的には、特徴量には、第1波長成分及び第2波長成分の各々の画像の高周波数成分の量を用いることが考えられる。
【0060】
また、画像処理装置200は、特徴量の差分に対象画像データが撮像された際の焦点距離に応じて定まる変換係数を乗ずることにより、特徴量の差分から対象画像の奥行き情報に対応する距離情報を算出する距離情報算出部を備えていてもよい。
【0061】
この場合、画像加工部108は、距離情報で示される距離が長いほど、強いぼかし加工を対象画像データに施すことになる。
【0062】
また、画像処理装置200は、第1波長成分のみを透過させるフィルタと、第2波長成分のみを透過させるフィルタとを備えた撮像部を有する取得部を備えていてもよい。
【0063】
取得部202は、撮像部101により撮像された対象画像データの第1波長成分及び第2波長成分を取得し、差分算出部106は、取得部202によって取得された第1波長成分及び第2波長成分の特徴量及びその差分を算出する。
【0064】
以下、本実施の形態に係る画像処理装置200について詳しく説明する。
【0065】
撮像部101は可視光領域を含む複数の異なる波長の光を受光し、各波長の光による画像データを出力するものである。本実施の形態では、可視光領域に加え、可視光領域外の波長の光として、紫外線(より具体的には、近紫外線)による画像データを出力する場合を例として説明する。
【0066】
撮像部101の出力の内、可視光領域のデータは可視画像処理部104によって1画素R(赤)、G(緑)、B(青)のデータとなり、可視画像補正部105で色収差等の影響が少なくなるように補正される。撮像部101の出力の内、可視光領域外の波長のデータとして近紫外線による画像データが紫外画像処理部102によって処理され、紫外画像補正部103では可視画像補正部105で補正された可視光画像データを基準にして補正される。
【0067】
すなわち、可視画像補正部105で実行される補正量と、近紫外線の波長とレンズの特性とから紫外画像補正部103での補正量を算出して補正を実行する。この補正により、差分算出部106において画素単位での比較が可能となる。
【0068】
差分算出部106では、紫外画像補正部103から出力される近紫外線領域の波長成分からなる画像データと、可視画像補正部105から出力される画像データの中で(波長の短い)近紫外線に対して最も波長の差が有るR(赤)領域の波長成分からなる画像データとを比較する。
【0069】
光には、波長が短くなると、大気中での散乱を受けやすく、遠景はかすむという特性がある。従って、近紫外線領域の波長成分からなる画像は可視光領域の波長成分からなる画像と比較し、より遠景が霞んだ(ボケた)画像となる。
【0070】
また、可視光領域内でも、波長の長いR(赤)領域の波長成分からなる画像データは、遠景まではっきりと写るが、波長の短いB(青)領域の波長成分からなる画像データでは遠景は霞んだ画像となる。
【0071】
図3は、各波長による画像のイメージを図示したものである。
【0072】
図3(a)は、可視光のR(赤)領域の波長成分からなる画像のイメージ図であり、遠景もくっきりした画像である。
【0073】
図3(b)は可視光のG(緑)領域の波長成分からなる画像のイメージ図であり、図3(c)は可視光のB(青)領域の波長成分からなる画像のイメージ図である。
【0074】
図3(c)に示されるように、可視光のB(青)領域の波長成分からなる画像では遠景がやや霞んだ状態になる。
【0075】
図3(d)は近紫外線領域の波長成分からなる画像のイメージ図である。
【0076】
図3(d)に示されるように、近紫外線領域の波長成分からなる画像では、遠景は霞み、全体的に輝度の小さな暗めの画像となる。
【0077】
図3に示されるように、最も画像の差があるのは波長が最も離れている図3(a)の可視光のR(赤)領域の波長成分からなる画像データと、図3(d)の近紫外線領域の波長成分からなる画像データである。
【0078】
すなわち、差分算出部106で比較する画像としては、紫外画像補正部103から出力される近紫外線領域の波長成分からなる画像データに対しては、可視画像補正部105から出力される可視光領域の画像データでR(赤)領域の波長成分からなる画像データが適している。
【0079】
差分算出部106では、近紫外線領域の波長成分からなる画像データと可視光領域のR(赤)領域の波長成分からなる画像データとを比較し、画像毎の霞み(ボケ)の相違の度合いを抽出する。
【0080】
ここで、霞み具合の相違を算出する方法として、例えば画像の高周波数成分を特徴量として、その差を算出することが考えられる。
【0081】
具体的には、例えば縦横が8画素のブロックを設定し、そのブロック単位で比較対象とする2つの画像に離散コサイン変換を施すことで、各画像に含まれる各空間周波数成分の量を算出する。
【0082】
一般に、高周波数成分がより少ない画像はより霞んだ(ボケた)画像となる。したがって、異なる波長成分からなる画像のブロック単位の比較による高周波成分の量の差は、画像の霞み具合の差に対応することとなる。
【0083】
また、差分算出部106が霞み具合の相違を算出する別な方法として、画素値の微分係数を特徴量として、その差を算出することが考えられる。
【0084】
具体的には、差分算出部106は、例えば、比較対象とする2つの画像データ各々に共通のある画素の画素値と、その画素の前後左右に隣接する4画素の画素値との、微分係数をそれぞれ算出する。さらに、画像データごとに、それぞれ4つの微分係数の平均値を差分算出部106は算出する。
【0085】
一般に、画素値の微分係数が小さい画像はより霞んだ画像となる。したがって、異なる波長成分からなる画像における画素値の微分係数(の平均値)の差は、画像の霞み具合の差に対応することとなる。
【0086】
距離情報算出部107は、差分算出部106で抽出された画素毎の相違を、フォーカス処理部110からの合焦情報を加味しながら距離情報に置き換え、特徴量の算出に用いたブロックごと又は画素毎の距離情報として取得する。
【0087】
すなわち、撮像部から得られる画像データは、その焦点距離によって、ボケ具合が異なる。例えば、焦点距離が近い場合、撮像部からの距離に応じて遠いほど、ボケが強くなるが、焦点距離が遠い場合、合焦地点以外が、ボケる傾向にある。
【0088】
よって、画像加工部108は、差分算出部106が算出した特徴量の差分に、焦点距離ごとに別途定められる定数を乗ずることで、距離情報を算出する。
【0089】
次に、画像加工部108では、可視画像補正部105から出力される可視光領域の画像データに対し、距離情報算出部107で算出した距離情報に基づいて、遠距離になる程、霞み(ボケ)の度合いを強調するように画像を加工することで、奥行き感のある画像を生成することが可能となる。
【0090】
具体的には、例えば平滑化フィルタを対象画像のブロック又は画素に対して適用することが考えられる。
【0091】
より具体的には、差分算出部106で算出される特徴量としてブロック単位での高周波成分の量を使用した場合、特徴量の算出に用いたブロックと同じ大きさのブロックについて、画像加工部108がガウシアンフィルタを適用することが考えられる。
【0092】
この場合、ガウシアンフィルタに用いるガウス分布の分散が大きいほど、平滑化の効果が強まる(すなわち、ボケた画像となる)。よって、高周波成分の量の差の絶対値が大きいほど、画像加工部108は、分散を大きくしたガウシアンフィルタを適用することになる。
【0093】
他の例として、差分算出部106で算出される特徴量として画素単位での画素値の微分係数を使用した場合、画像加工部108は、特徴量の算出に用いた画素及びその画素の周囲数画素(例えば1画素や2画素)からなるブロックを設定し、そのブロックについて、前述のようにガウシアンフィルタを適用することが考えられる。
【0094】
さらに他の例として、次のように、離散フーリエ変換及び逆変換を用いることも考えられる。
【0095】
画像加工部108は、まず、差分算出部106で算出される特徴量の算出に用いたブロックと同じ大きさのブロック単位で、対象画像データに離散コサイン変換を施す。
【0096】
次に、差分算出部106で得られた特徴量の差の絶対値又は、距離情報算出部107で得られた距離情報が大きいほど、大きな量子化幅を用いて、離散コサイン変換で得られた変換係数を量子化する。
【0097】
次に量子化後の対象画像データに対し、逆離散コサイン変換を施すことで、距離情報に対応して、ぼかしを強調した画像を生成することができる。
【0098】
なお、上記の各ぼかし処理を適用する際には、可視光領域に含まれるR、G、Bの波長成分ごとに、及び、各ブロック又は画素ごとに、処理を適用する。
【0099】
図4は、本実施の形態における画像処理装置200の処理の流れを示すフローチャートである。
【0100】
まず、取得部202は、可視光領域及び可視外(近赤外、近紫外等)領域の波長成分からなる画像データを取得する(S210)。
【0101】
次に、画像補正部201は、前述のように2つの波長領域ごとに画像データの色収差を補正し画像のサイズを一致させることで、異なる波長領域間で同一の空間位置(座標位置)の画素あるいはブロックごとに特徴量を比較できるように処理する(S212)。
【0102】
次に、差分算出部106は、2つの波長領域の画像データに含まれる画素又はブロックごとに、前述のような特徴量を算出する。さらに、特徴量の波長領域間での差分を算出する(S214)。
【0103】
次に、距離情報算出部107は、フォーカス処理部110から対象画像の撮像時の焦点距離を取得し、その距離に応じた定数を乗じることで、対象画像の奥行き情報に対応する距離情報を算出する(S216)。
【0104】
次に、画像加工部108は、差分算出部106から得られた特徴量の差の絶対値の大きさ、又は、画像加工部108の距離が大きいブロック又は画素ほど、より強く、ボケるように前述の画像処理を施すことにより、対象画像の遠近感を強調する(S218)。
【0105】
最後に、出力部109が、加工後の対象画像データを出力する。
【0106】
以上述べた本実施の形態にかかる画像処理装置200によると、光学系等の特殊な調整を行うことなく、1台のカメラを用いた撮像により、異なる波長成分からなる2以上の画像データを取得し、その画像データ間のボケ具合の差から対象画像の奥行き情報に対応する情報を算出することができる。
【0107】
その結果、奥行き情報に対応して立体感を強調する画像処理を対象画像データに施すことができる。
【0108】
(変形例)
次に、実施の形態1に画像データ記憶部312を追加した変形例について説明する。
【0109】
図5は、画像データと距離情報を画像データ記憶部312に格納できるようにした本変形例における画像処理装置200の構成を示すブロック図である。
【0110】
図5に示されるように、本変形例に係る画像処理装置200では、実施の形態1で示した画像処理装置200の構成に、さらに、画像データ記憶部312を設けている。
【0111】
画像処理装置200は、取得部202で取得した画像データを、画像補正部201で補正後、出力部109から出力する前に、画像データ記憶部312に格納する。その後、例えばユーザからの要求により出力部109から遠近感を強調した画像を出力する必要が生じた際には、画像データを画像データ記憶部312から読み出し、以後、前述と同様に、差分算出部106、距離情報算出部107及び画像加工部108で処理を行う。
【0112】
なお、画像データ記憶部312は、取得部202から取得した補正前の画像データを記憶してもよい。その場合、画像処理装置200は、画像データ記憶部312から画像データを読み出した後、まず、画像補正部201で色収差等の補正をした後、前述の処理を行う。
【0113】
すなわち、本実施の形態に係る画像処理装置200は、実施の形態1で述べた画像処理装置200の構成に加え、さらに、色収差等の補正後の対象画像データを記憶する画像データ記憶部312を備えている。
【0114】
差分算出部106は、画像データ記憶部312に記憶されている補正後の対象画像データを用いて、特徴量の差分を算出する。
【0115】
この構成により、撮像部101により撮像するタイミングに依存することなく、必要に応じて画像加工部108で奥行き感のある画像を生成することが可能となる。
【0116】
また、差分算出部106や距離情報算出部107のように計算コストが高い処理の実行タイミングを、取得部202のようにリアルタイム性が要求される処置とずらすことで、画像処理装置200に要求される計算処理能力を抑えつつ、快適な操作を実現することができる。
【0117】
なお、実施の形態1に係る画像処理装置200は、必ずしも図2に記載した全ての構成要素を備える必要はなく、差分算出部106と画像加工部108のみを備えることで、画像処理装置200を実施することが可能である。
【0118】
すなわち、後述する実施の形態2のように、既に撮像された外部の画像データを例えば画像ファイルとして読み込むことで、撮像部101、可視画像処理部104、紫外画像処理部102及びフォーカス処理部110を備えずとも同様の効果が得られる。
【0119】
また、可視画像補正部105及び紫外画像補正部103を備えずとも、一般に同一画像データの近接する画素値は値が近いため、色収差により多少の画像サイズの違いがある2つの画像の特徴量を比較することで、適切な奥行き情報を取得できる。その結果、可視画像補正部105及び紫外画像補正部103を備える場合と同様の効果が得られる。
【0120】
また、距離情報算出部107を備えずとも、前述のように、差分算出部106から得られる特徴量の差の絶対値を用いて、対象画像の奥行き情報に対応する情報を得ることができる。その結果、距離情報算出部107を備える場合と同様の効果が得られる。
【0121】
また、出力部109を備えずとも、例えば加工済みの画像データを使用する後段の処理部が、画像加工部108が使用するRAM(Random Access Memory)領域から遠近感を付与した後の画像データを直接読み出すことにより、出力部109を備える場合と同様の効果が得られる。
【0122】
(実施の形態2)
次に、撮像部を備えない画像処理装置200の実施の形態を実施の形態2として説明する。
【0123】
図6は、本発明の実施の形態2における画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0124】
なお、図6において、図2と同様の機能を果たす構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0125】
図6に示されるように、本実施の形態における取得部203は、画像入力部413及び分離部414を備える。
【0126】
画像入力部413は、可視光領域を含む複数の波長の異なる光を撮像素子が受光することで生成された画像データを画像処理装置200の外部から取得する入力インタフェースである。
【0127】
本実施の形態では、実施の形態1と同様に、可視領域及び可視領域外(近紫外線領域)の波長成分を含む画像データを取得する場合を例として説明する。
【0128】
画像入力部413から取得された対象画像データは、分離部414によって波長毎の画像データに分離される。
【0129】
本実施の形態では、分離部414において、R(赤)、G(緑)、B(青)の各可視光領域の波長成分からなる3つの画像データと、近紫外線領域の波長成分からなる画像データに分離される。
【0130】
画像補正部201は、色収差等による影響が少なくなるようにR、G、B各々の波長成分からなる画像データを補正する。
【0131】
差分算出部106は、可視画像補正部105から出力される画像データの中で、一つの波長成分からなる画像データと紫外画像補正部103から出力される画像データを比較し、波長成分の異なる画像データ間での特徴量の差分を算出する。
【0132】
距離情報算出部107は、差分算出部106の出力と合焦情報(焦点距離)とから、対象画像の奥行き情報に対応する距離情報を取得する。
【0133】
ここで、本実施の形態においては、画像入力部413から取得した画像データに含まれるメタデータから焦点距離を取得することが考えられる。
【0134】
より具体的には、デジタルカメラ等で撮像された画像データに付加されるExif(Exchangeable Image File Format)形式のメタデータから、焦点距離を取得することが考えられる。
【0135】
画像加工部108は、可視画像補正部105から出力される画像データに対し、距離情報算出部107により算出された距離情報が大きいほど、より遠近感を強調するより強いボケ加工を対象画像に施すことで、奥行き感を強調した画像を生成する。
【0136】
出力部109は、画像加工部108により生成された画像を出力する。
【0137】
すなわち、本実施の形態における画像処理装置200が備える取得部203は、第1波長成分及び第2波長成分を含む画像データを対象画像データとして取得する画像入力部413と、対象画像データから、第1波長成分及び第2波長成分をそれぞれ分離する分離部414とを有する。
【0138】
このとき、差分算出部106は、分離部414から取得した第1波長成分及び第2波長成分の特徴量及びその差分を算出することとなる。
【0139】
以下、本形態の画像処理装置の処理の流れについて詳しく説明する。
【0140】
まず、画像入力部413は、可視領域を含む複数の波長成分からなる対象画像データを取得する。
【0141】
次に、分離部414は、取得された対象画像データを、可視領域のR(赤)、G(緑)、B(青)の各々の波長成分からなる3つの画像データと、可視領域外の近紫外線による画像データに分離する。
【0142】
次に、可視画像補正部105は、可視領域の波長成分からなる3つの画像データに含まれる色収差を補正する。また、紫外画像補正部103は、近紫外線領域の波長成分からなる画像データに含まれる色収差を補正する。
【0143】
その際、紫外画像補正部103は、可視画像補正部105で補正された可視光領域の波長成分からなる画像データの大きさを基準にして、それに大きさが一致するように補正される。
【0144】
次に、差分算出部106は、紫外画像補正部103から出力される近紫外線領域の波長成分からなる画像データと、可視画像補正部105から出力される可視領域の波長成分からな画像データの中で、最も波長の短い近紫外線と、最も波長の差があるR(赤)領域の波長成分からなる画像データとを比較する。
【0145】
具体的には、差分算出部106は、近紫外線領域の波長成分からなる画像データの特徴量と可視光領域のR(赤)領域の波長成分からなる画像データの特徴量とを比較し、特徴量の算出に用いたブロック又は画素毎の霞み(ボケ)の相違の度合い(差分)を算出する。
【0146】
次に、距離情報算出部107は、差分算出部106で抽出された特徴量の差分から距離情報を算出し、ブロック又は画素ごとの距離情報として取得する。
【0147】
画像加工部108では、可視画像補正部105から出力される可視領域の画像データに対し、距離情報算出部107で取得した距離情報に基づいて、遠距離になる程、霞み(ボケ)の度合いを強調するように画像を加工することで、奥行き感の強調された画像を生成する。
【0148】
なお、差分算出部106が算出する特徴量は、実施の形態1で説明したものと同様のものを使用する。
【0149】
また、本実施の形態において、可視領域外として近紫外線領域、可視領域内としてR(赤)領域の波長成分からなる画像データを選択し、特徴量の値を比較することで対象画像の奥行き情報(又は距離情報)を取得する例を説明した。しかし、可視領域外として近赤外線領域、可視領域内としてB(青)領域の波長成分からなる画像データを選択し、特徴量の値を比較することで対象画像の奥行き情報(又は距離情報)を取得しても良い。
【0150】
さらにまた、可視領域内のR(赤)領域による画像データと、B(青)領域による画像データとを比較して対象画像の奥行き情報(又は距離情報)を取得することにより、紫外画像補正部103を省略してもよいのは、実施の形態1と同様である。
【0151】
以上、本実施の形態で述べた構成によれば、撮像装置から直接画像データを取得する場合以外にも、HDD(Hard Disk Drive)内の画像ファイル等、外部の画像データを取得し、奥行き情報を取得し、奥行き感を強調した画像を生成することができる。
【0152】
また、撮像装置を省き、例えばPC(Personal Computer)上で動作するコンピュータソフトウェアとして画像処理装置200を実装することにより、画像処理装置200を小型化・省コスト化することが可能となる。
【0153】
(実施の形態3)
次に、実施の形態1で説明した画像処理装置200に、さらに、符号化部516を備えた実施の形態3に係る画像処理装置200について説明する。
【0154】
図7は、本発明の実施の形態3における画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0155】
なお、図7において、図2と同様の機能を果たす構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。また、本実施の形態では、実施の形態1と同様に、可視光領域に加え、可視光領域外(近紫外線領域)の波長成分からなる画像データを出力する場合を例として説明する。
【0156】
実施の形態3が実施の形態1と異なる点は、さらに、画像データ変換部515及び符号化部516を備えている点である。
【0157】
画像データ変換部515は、可視画像補正部105から出力される画像データに対し、必要に応じて画像データの変換を行う。例としては、RGBデータからYUVデータへの変換が考えられる。これにより、画像データのデータサイズを小さくすることができる。
【0158】
画像加工部108及び符号化部516は、距離情報算出部107で取得された距離情報に基づいて符号化する際の符号量割り当て制御を行う。
【0159】
以下、本実施の形態に係る画像処理装置200において、画像加工部108及び符号化部516が行う処理について詳しく説明する。
【0160】
まず、画像加工部108は、前述の通り、画像データ変換部515から取得した対象画像データに対してブロック(量子化ブロック)単位で離散コサイン変換を施す。
【0161】
ここで、量子化ブロックは、差分算出部106が特徴量を算出する際に使用したブロック又は画素(以後、特徴量ブロックという)のうち、隣接する1以上のものをまとめて生成することが考えられる。すなわち、1つの量子化ブロックには、距離情報算出部107によって距離が異なると判断される複数の特徴量ブロックが含まれてもよい。
【0162】
次に、画像加工部108は、得られた変換係数を、対象の量子化ブロックの距離が遠いほど、大きな量子化幅を用いて量子化する。
【0163】
実施の形態1における画像加工部108と異なる点は、画像加工部108は量子化後のデータに対して逆変換を施さず、符号化部516へ出力することである。
【0164】
次に、符号化部516は、量子化された対象画像データを符号化する。
【0165】
具体的には、ハフマン符号等を用いたエントロピー符号化等、符号量(対象画像データのデータサイズ)を削減できる符号化手法を用いることが好ましい。
【0166】
最後に、出力部109は、符号化部516により符号化された対象画像データを出力する。
【0167】
すなわち、本実施の形態における画像処理装置200は、さらに、符号化部を備えており、画像加工部108は、対象画像データを離散コサイン変換する。
【0168】
また、画像加工部108は、差分算出部106で算出された特徴量の差分の絶対値が大きいほど、大きな量子化幅を用いて離散コサイン変換で得られた変換係数を量子化する。
【0169】
また、符号化部516は、量子化された変換係数を符号化する。
【0170】
以下詳細に説明する。
【0171】
図8は、本実施の形態において、距離の異なる特徴量ブロックを含む量子化ブロックの量子化幅を決定する処理を説明する図である。
【0172】
図8(a)に示されている画像は、取得部202によって取得された対象画像である。
【0173】
先に述べたように、符号化部516は対象画像を所定の量子化ブロック単位で符号化する。
【0174】
図8(b)〜図8(d)は、対象画像データから量子化ブロックを抜き出したものである。各量子化ブロックは、それぞれ複数の特徴量ブロックを含む。
【0175】
図8(b)〜図8(d)は、また、特徴量ブロックごとに、距離情報算出部107から取得した距離情報の区分(近距離、中距離、遠距離)を示す。
【0176】
図8(b)に示されるブロックは、遠距離領域のみを含むブロックであるため、符号化時の符号量割り当てを少なく(例えば、画像加工部108における量子化時の量子化幅を32に)する。
【0177】
図8(c)に示されるブロックは、遠距離及び中距離領域を含むブロックであるため、図8(b)に示されるブロックよりも符号量割り当てを多く(例えば、画像加工部108による量子化幅を、図8(b)に示されるブロックの3倍に設定)する。
【0178】
図8(d)に示されるブロックは、近距離及び中距離領域を含むブロックであるため、図8(c)に示されるブロックよりも符号量割り当てを多く(例えば、画像加工部108による量子化幅を、16に)する。
【0179】
以上述べたように、本実施の形態に係る画像処理装置200によると、量子化ブロックに含まれる特徴量ブロックごとの、距離情報算出部107により算出された距離情報の割合から、量子化幅の大きさを決定することで、最終的な画像データに割り当てられる符号量を削減しながら奥行き感を強調した画像データを得ることができる。その結果、対象画像データの保存や伝達コストを抑えるメリットが生じる。
【0180】
また、複数のカメラ(撮像装置)や距離を計測する専用の装置を付加することなく距離情報を取得するため、コスト増加を最小限に抑えながら奥行き感のある画像を生成することができる。また、装置の小型化も可能である。
【0181】
(変形例)
次に、図9を用いて実施の形態3の変形例について説明する。
【0182】
図9に示される本変形例に係る画像処理装置200は、図7に示される画像処理装置200と異なり、取得部203が撮像部101を備えずに、画像入力部413によって画像処理装置200の外部から画像データを取得する。
【0183】
なお、取得部203が備える画像入力部413及び分離部414は、実施の形態2と同様の機能を有するため、説明を省略する。
【0184】
以上述べた変形例によると、撮像装置から直接画像データを取得する場合以外にも、HDD(Hard Disk Drive)内の画像ファイル等、外部の画像データを取得し、奥行き感を強調した画像データを符号化することができる。
【0185】
また、撮像装置を省き、例えばPC(Personal Computer)上で動作するコンピュータソフトウェアとして画像処理装置200を実装することにより、画像処理装置200を小型化・省コスト化することが可能となる。
【0186】
なお、実施の形態1〜3及びその変形例において、可視光領域外として近紫外線領域の波長成分からなる画像データを使用し、可視光領域内としてR(赤)領域の波長成分からなる画像データを使用する例を説明したが、可視光領域外の波長成分として近赤外線を、可視光領域内の波長成分としてB(青)領域の波長成分を、それぞれ使用し、各波長成分からなる画像データを比較して距離情報を取得しても良い。また、可視光領域内のR(赤)波長成分からなる画像データと、B(青)波長成分からなる画像データとを比較して距離情報を取得するようにし、紫外画像処理部102と、紫外画像補正部103を省略しても良い。
【0187】
例えば、実施の形態1及び3の撮像部101において、青色光のみを透過させるフィルタに代わり、青色光に加えて紫外線領域の光まで透過させるものを使用することで、赤、青、緑の3色のフィルタを受光部の前面に備えた撮像素子を用いることもできる。
【0188】
また、撮像部101において、可視光領域に含まれる赤、青、緑の3色のフィルタのみを備えた撮像素子を用いることもできる。ただし、紫外線領域を用いる場合と比較し、取得できる奥行き情報の精度が落ちるため、上述のように紫外線領域に含まれる光の透過フィルタを備えることが望ましい。
【0189】
また、実施の形態1〜3及びその変形例において、画像処理装置200が可視光領域外の波長成分として紫外線領域以外(例えば、赤外領域)に含まれる波長成分を使用する場合には、紫外画像処理部102は、使用する波長領域に応じて、可視画像と同じ大きさの画像となるように補正を行うこととなる。
【0190】
また、実施の形態1〜3及びその変形例において、差分算出部106は、可視画像補正部105から出力される他の色(緑色又は青色)の波長成分の画像データと、紫外画像補正部103から出力される画像データとを比較してもよい。または、差分算出部106は、可視画像補正部105から出力されるある1色の波長成分の画像データと、可視画像補正部105から出力される別の1色の波長成分の画像データとを比較してもよい。
【0191】
なお、実施の形態1〜3及びその変形例において、差分算出部106が対象画像データに離散コサイン変換を施す単位は、縦横が8画素のブロックに限定されず、16画素や64画素等の正方形のブロックや、長方形その他の形状のブロックであってもよい。
【0192】
なお、実施の形態1〜3及びその変形例において、画像加工部108が用いる平滑化フィルタは、ガウシアンフィルタに限られず、移動平均を用いたもの等であってもよい。また、画像加工部108は、視覚的に画像をぼかす、その他の任意の画像処理を施してもよい。
【0193】
なお、実施の形態1〜3及びその変形例において、画像加工部108は、距離情報算出部107による距離情報に代わり、差分算出部106による特徴量の差分の絶対値を距離情報に対応する情報として使用してもよい。すなわち、特徴量の差の絶対値が大きいほど、遠方にあるとして、画像加工部108がボケ度合いを強調することで、遠近感を強調した画像を生成することが可能である。
【0194】
なお、実施の形態1及び3では、撮像部101は1つであるが、複数の撮像部を設け、異なる視点からの画像を用いて取得した3次元情報もしくは距離情報を併用しても良い。
【0195】
なお、実施の形態3及び変形例において、実施の形態1の変形例で示したような画像データ記憶部312をさらに設けてもよい。画像データ記憶部312に記憶されているデータに対して、画像データ変換部515、符号化部516及び画像加工部108が処理を行うことで、画像処理装置200が行う計算処理の負荷を異なる時間に分散させることができる。
【0196】
なお、実施の形態1〜3において、画像加工部108は離散コサイン変換に代わり、離散フーリエ変換、離散サイン変換、カルーネン・レーブ変換、ウェーブレット変換、ウォルシュ・アダマール変換等、一般にデータ圧縮において使用される任意のデータ変換処理を使用してもよい。
【0197】
なお、実施の形態1〜3で説明した画像処理装置は、コンピュータにより実現することが可能である。図10を参照して、画像処理装置は、コンピュータ34と、コンピュータ34に指示を与えるためのキーボード36及びマウス38と、コンピュータ34の演算結果等の情報を提示するためのディスプレイ32と、コンピュータ34で実行されるプログラムを読み取るためのCD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)装置40及び通信モデム(図示せず)とを含む。
【0198】
画像処理装置が行う処理であるプログラムは、コンピュータで読取可能な媒体であるCD−ROM42に記憶され、CD−ROM装置40で読み取られる。又は、コンピュータネットワークを通じて通信モデムで読み取られる。
【0199】
図11は、画像処理装置を実現するコンピュータシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。コンピュータ34は、CPU(Central Processing Unit)44と、ROM(Read Only Memory)46と、RAM(Random Access Memory)48と、ハードディスク50と、通信モデム52と、バス54とを含む。
【0200】
CPU44は、CD−ROM装置40又は通信モデム52を介して読み取られたプログラムを実行する。ROM46は、コンピュータ34の動作に必要なプログラムやデータを記憶する。RAM48は、プログラム実行時のパラメタなどのデータを記憶する。ハードディスク50は、プログラムやデータなどを記憶する。通信モデム52は、コンピュータネットワークを介して他のコンピュータとの通信を行う。バス54は、CPU44、ROM46、RAM48、ハードディスク50、通信モデム52、ディスプレイ32、キーボード36、マウス38及びCD−ROM装置40を相互に接続する。
【0201】
さらに、上記の各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0202】
さらにまた、上記の各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、各装置に脱着可能なICカード又は単体のモジュールから構成されているとしてもよい。ICカード又はモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカード又はモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、ICカード又はモジュールは、その機能を達成する。このICカード又はこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0203】
また、本発明は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
【0204】
さらに、本発明は、上記コンピュータプログラム又は上記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu-ray Disc(登録商標))、USBメモリ、SDカードなどのメモリカード、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されている上記デジタル信号であるとしてもよい。
【0205】
また、本発明は、上記コンピュータプログラム又は上記デジタル信号を、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0206】
また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、上記マイクロプロセッサは、上記コンピュータプログラムに従って動作するとしてもよい。
【0207】
また、上記プログラム又は上記デジタル信号を上記記録媒体に記録して移送することにより、又は上記プログラム又は上記デジタル信号を上記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【0208】
さらに、上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【0209】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明にかかる画像処理装置は、波長の異なる光による画像から距離情報を取得する機能を有し、距離情報に基づく奥行き感のある画像生成することができるビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等として有用である。また、転送レートの低いネットワークにおいても画像の送信が必要となる監視カメラ、ネットワークカメラの符号量を削減する等の用途にも応用できる。
【符号の説明】
【0211】
32 ディスプレイ
34 コンピュータ
36 キーボード
38 マウス
40 CD−ROM装置
42 CD−ROM
44 CPU
46 ROM
48 RAM
50 ハードディスク
52 通信モデム
54 バス
101 撮像部
102 紫外画像処理部
103 紫外画像補正部
104 可視画像処理部
105 可視画像補正部
106 差分算出部
107 距離情報算出部
108 画像加工部
109 出力部
110 フォーカス処理部
200 画像処理装置
201 画像補正部
202、203 取得部
312 画像データ記憶部
413 画像入力部
414 分離部
515 画像データ変換部
516 符号化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも可視光領域の波長成分を含む対象画像データに対して、遠近感を強調する処理を施す画像処理装置であって、
前記対象画像データは複数の領域を有しており、
前記画像処理装置は、前記複数の領域に含まれる第1の領域に含まれる波長成分のうち、第1波長成分と、前記第1波長成分とは異なる第2波長成分の特徴量をそれぞれ算出し、算出された前記特徴量の差分を算出する差分算出部と、
前記差分の絶対値が大きいほど、強いぼかし加工を前記第1の領域に施す画像加工部とを備える
画像処理装置。
【請求項2】
前記第1波長成分は、R(Red)、G(Green)、B(Blue)のうちのいずれかの可視光領域に対応する波長成分であり、
前記第2波長成分は、紫外線領域に対応する波長成分である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記特徴量は、前記第1波長成分及び前記第2波長成分の各々の画像の高周波数成分の量である
請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像加工部は、前記対象画像データを離散コサイン変換することにより得られる変換係数を、前記差分の絶対値が大きいほど大きな量子化幅で量子化することにより、前記対象画像データにぼかし加工を施す
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像加工部は、前記対象画像データに対して、前記差分の絶対値が大きいほど、対象ブロック内の画素値の分散が大きくなるように作用する平滑化フィルタを施すことにより、前記対象画像データにぼかし加工を施す
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
さらに、前記特徴量の差分に前記対象画像データが撮像された際の焦点距離に応じて定まる変換係数を乗ずることにより、前記特徴量の差分から対象画像の奥行き情報に対応する距離情報を算出する距離情報算出部を備えており、
前記画像加工部は、前記距離情報で示される距離が長いほど、強いぼかし加工を前記対象画像データに施す
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
さらに、前記対象画像データの色収差を補正する画像補正部と、
前記補正後の対象画像データを記憶する画像データ記憶部とを備えており、
前記差分算出部は、前記画像データ記憶部に記憶されている補正後の前記対象画像データを用いて、前記特徴量の差分を算出する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
さらに、前記第1波長成分のみを透過させるフィルタと、前記第2波長成分のみを透過させるフィルタとを備えた撮像部を有する取得部を備えており、
前記取得部は、前記撮像部により撮像された前記対象画像データの前記第1波長成分及び前記第2波長成分を取得し、
前記差分算出部は、前記取得部によって取得された前記第1波長成分及び前記第2波長成分の前記特徴量及びその差分を算出する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
さらに、前記第1波長成分及び前記第2波長成分を含む画像データを前記対象画像データとして取得する画像入力部と、前記対象画像データから、前記第1波長成分及び前記第2波長成分をそれぞれ分離する分離部とを有する取得部を備えており、
前記差分算出部は、前記分離部から取得した前記第1波長成分及び前記第2波長成分の前記特徴量及びその差分を算出する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
さらに、符号化部を備えており、
前記画像加工部は、前記対象画像データを離散コサイン変換した後に、前記差分の絶対値が大きいほど、大きな量子化幅を用いて前記離散コサイン変換で得られた変換係数を量子化し、
前記符号化部は、前記量子化された変換係数を符号化する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
少なくとも可視光領域の波長成分を含む対象画像データに対して、遠近感を強調する処理を施す画像処理方法であって、
前記対象画像データは複数の領域を有しており、
前記画像処理方法は、前記複数の領域に含まれる第1の領域に含まれる波長成分のうち、第1波長成分と、前記第1波長成分とは異なる第2波長成分の特徴量をそれぞれ算出し、算出された前記特徴量の差分を算出する差分算出ステップと、
前記差分の絶対値が大きいほど、強いぼかし加工を前記第1の領域に施す画像加工ステップとを含む
画像処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の画像処理方法をコンピュータに実行させる
プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムを記録した
コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項14】
少なくとも可視光領域の波長成分を含む対象画像データに対して、遠近感を強調する処理を施す集積回路であって、
前記対象画像データは複数の領域を有しており、
前記集積回路は、前記複数の領域に含まれる第1の領域に含まれる波長成分のうち、第1波長成分と、前記第1波長成分とは異なる第2波長成分の特徴量をそれぞれ算出し、算出された前記特徴量の差分を算出する差分算出部と、
前記差分の絶対値が大きいほど、強いぼかし加工を前記第1の領域に施す画像加工部とを備える
集積回路。

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−18621(P2012−18621A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156944(P2010−156944)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】