説明

画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび画像処理プログラムを記録した記録媒体

【課題】 人間の視覚特性において、粒状性などの違和感を与えることなく適切な階調再現処理を施すことが可能な画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび画像処理プログラムを記録した記録媒体を提供する。
【解決手段】 階調再現処理部16は、入力された画像データの画素値に応じて、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であるドットマトリクスパターンを作成するときに、パターンテーブルを用いる。作成されたドットマトリクスパターンを高速フーリエ変換し、規格化した1次元のCSF特性と、規格化された周波数ドメイン情報とを乗算することで評価パラメータを算出する。この評価パラメータを閾値処理することで妥当なドットマトリクスパターンが作成されているかどうかを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された画像データを所定の階調の画像データに変換して出力する階調再現処理部を備える画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび画像処理プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データの階調再現処理については、Floyd-Steinbergによる“An Adaptive
Algorithm for Spatial Grey Scale”,SID 75 Digest、およびRobert A. Ulichneyによる“Dithering with Blue Noise ”, Proceeding of the IEEE, vol. 76, No1. January
1988に代表される文献で種々多彩に述べられており、特に誤差拡散法、ディザ法、ブルーノイズマスク法などが現在使用されている。
【0003】
誤差拡散法は、複数の閾値を用いて注目画素の画素濃度を量子化し、量子化に伴って発生する量子化誤差を未量子化の周辺画素に拡散することで、マクロ的に階調の再現性を保ちつつビット数を削減した階調再現処理を行う方法である。
【0004】
ディザ法は、予め決められたマトリクスを用いて閾値処理あるいはテーブル変換処理を行うことで、マクロ的な階調再現処理をおこなうもので、原理上は見かけの解像度が犠牲になる方法である。
【0005】
ブルーノイズマスク法は、広義的にはディザ法の一種に含まれ、入力画像濃度と閾値とを比較することで擬似階調再現処理を行うものであって、閾値決定の際に低周波成分を持たず高周波成分のみで構成する(ブルーノイズ特性と呼ばれる)ようにする方法である。
【0006】
また、誤差拡散法は一般的に、各色毎に独立して処理を行うものであるが、記録色であるC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)(場合によりK(ブラック)が含まれることがある)を一括して出力値を決定できるようにベクトル的な演算処理を行う方法も提案されており、この方法は一般的にベクトル誤差拡散法と呼ばれる。
【0007】
特許文献1には、ベクトル誤差拡散法を用いたピクセルの色決定方法が開示されている。この方法では、まず入力データに基づいてピクセルのインク寄与を決定し、インク寄与とゆがめられた色空間、および拡散された色誤差に基づいてピクセルの色を決定している。
【0008】
これらの階調再現処理においては、画質および画像形成システムの構成に一長一短があり、各々のシステムに応じて階調再現処理方法を取捨選択し、最適と思われる方法が採用されている。
【0009】
たとえば、ディザ法には、解像度と階調性とのトレードオフ、モアレの発生などの問題点があり、誤差拡散法およびベクトル誤差拡散には、ワーム、テクスチャ、計算量増大などの問題点があり、ブルーノイズマスク法には、メモリ量増大、粒状性悪化などの問題点があり、当業者にとっては、これらの問題点は共通に認識されている。
【0010】
ブルーノイズマスク法は、その名から容易に推測できるようにドット配置をブルーノイズ特性とすることで、人間の視覚特性である「高周波成分は知覚し難い」という特徴を考慮してドット配置を最適化しようとするものである。
【0011】
実際、ドットを分散して配置可能な濃度領域に於いては、良好な特性を示すことが知られているが、中濃度付近からドットの重なりが生じ始めるため、全ての濃度範囲に渡ってブルーノイズ特性を維持することは不可能であり、粒状性を如何にして軽減させるかが課題となっている。
【0012】
ベクトル誤差拡散法は、記録色であるCMY(場合によりKが含まれることがある)が一括して出力データとして得られるため、単色で処理を行う誤差拡散法と比較し、最終的に記録される多色でのドットの配置を制御し易いという利点を有するが、これまでは、人間の視覚特性であるCSF(Contrast Sensitivity Function:コントラスト感度関数)を考慮したドット再現が行われていないため、粒状性の課題を解決するには至っていない。
【0013】
CSFは、コントラスト感度関数と呼ばれ人間の視覚的認識での空間的な細かさと輝度の関係を示すもので、網膜から大脳に至る視覚系の特性を表している。実際、粒状性はドットの濃さに影響され、同じドット配置であってもドットが濃い場合は粒状性が高いと感じ、ドットが薄い場合は、それほど粒状性は高いと感じない。そのため、コントラスト感度関数であるCSFを用いることで粒状性を低減したドット配置を行うことが可能となる。
【0014】
特許文献2記載には、人の視覚系の輝度チャンネルにおける粒状性が低減された画像を印刷することができる印刷用原版を作製する方法が開示されている。
【0015】
【特許文献1】特開平7−193726号公報
【特許文献2】特開2004−262230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献2記載の方法では、制約相関法を様々なサブドット位相変調法と組み合わせて、最小限の粒状性および輝度変化を持つ最適ハーフトーン再生を得ることができる。さらに、粒状性を導くこと無く異なる印刷用原版の網点分布間の相関を制御することが可能であり、ヒトの視覚系の「コントラスト感度関数」によるデジタルハーフトーンのパワースペクトルをフィルタリングすることにより、可視粒状性の量に対する一つの基準が得られる。カラー印刷の場合は、1つの感度関数ではなく、ヒトの視覚系の3つのセンサそれぞれに対応する3つの感度関数を考慮しなければならないのでより複雑になる。
【0017】
しかしながら、特許文献2記載の方法で作製した印刷用原版を用いて印刷した画像が、CSF特性を考慮した画質再現性を満足するかどうかを評価する手段を有していないため、実際に粒状性が低減した画像が再現されているかどうかが検証されていないという問題がある。
【0018】
本発明の目的は、人間の視覚特性において、粒状性などの違和感を与えることなく適切な階調再現処理を施すことが可能な画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび画像処理プログラムを記録した記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、入力された画像データを所定の階調の画像データに変換して出力する階調再現処理部を備える画像処理装置において、
前記階調再現処理部は、入力された画像データの画素値に応じて、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であるドットマトリクスパターンを作成するときに、パターンテーブルを用いることを特徴とする画像処理装置である。
【0020】
また本発明は、前記パターンテーブルとしてルックアップテーブルを用いることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記階調再現処理は、ベクトル誤差拡散を用いて階調を変換することを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記階調再現処理部は、作成したドットマトリクスパターンを高速フーリエ変換し、規格化した1次元のコントラスト感度関数特性と、規格化された周波数ドメイン情報とを乗算することで評価パラメータを算出し、この評価パラメータが所定の範囲内にあれば、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であると判断することを特徴とする。
【0023】
また本発明は、画像データを、画像処理装置に入力する画像入力装置と、
上記の画像処理装置と、
前記画像処理装置によって画像処理された画像データに基づいて画像を形成する画像出力装置とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0024】
また本発明は、入力された画像データを所定の階調の画像データに変換して出力する階調再現処理工程を有する画像処理方法において、
前記階調再現処理工程では、入力された画像データの画素値に応じて、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であるドットマトリクスパターンを作成するときに、パターンテーブルを用いることを特徴とする画像処理方法である。
【0025】
また本発明は、コンピュータに上記の画像処理方法を実行させるための画像処理プログラムである。
【0026】
また本発明は、コンピュータに上記の画像処理方法を実行させるための画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、入力された画像データを所定の階調の画像データに変換して出力する階調再現処理部を備える画像処理装置であって、前記階調再現処理部は、入力された画像データの画素値に応じて、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であるドットマトリクスパターンを作成するときに、パターンテーブルを用いる。
【0028】
これにより、コントラストに対する人間の視覚特性に基づいたドット配置が可能となり、人間の目に違和感(アーチファクツとしての認識)のない階調再現処理を行うことができる。
【0029】
また本発明によれば、前記パターンテーブルとしてルックアップテーブルを用いるので、階調再現処理に必要な演算量を削減することができる。
【0030】
また本発明によれば、前記階調再現処理は、ベクトル誤差拡散を用いて階調を変換するので、階調再現処理に加えて色補正処理および黒生成下色除去処理も一括して行うことができる。
【0031】
また本発明によれば、前記階調再現処理部は、まず、作成したドットマトリクスパターンを高速フーリエ変換し、規格化した1次元のコントラスト感度関数特性と、規格化された周波数ドメイン情報とを乗算することで評価パラメータを算出する。算出した評価パラメータが所定の範囲内にあれば、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であると判断する。
【0032】
算出した評価パラメータが所定の範囲外であればドットの配置を変更することができるので、より確実に人間の目に違和感のない階調再現処理を行うことができる。
【0033】
また本発明によれば、画像入力装置から入力された画像データを、上記の画像処理装置により画像処理を行い、画像出力装置で画像形成を行う。
【0034】
これにより、人間の目に違和感のない、品質の良い画像形成を行うことができる。
本発明によれば、入力された画像データを所定の階調の画像データに変換して出力する階調再現処理工程を有する画像処理方法であって、前記階調再現処理方法では、入力された画像データの画素値に応じて、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であるドットマトリクスパターンを作成するときに、パターンテーブルを用いる。
【0035】
これにより、コントラストに対する人間の視覚特性に基づいたドット配置が可能となり、人間の目に違和感のない階調再現処理を行うことができる。
【0036】
また本発明によれば、上記の画像処理方法をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムおよびこの画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施形態について図1〜図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図1は、本発明の実施の一形態であるカラー画像形成装置100の概略の構成を示すブロック図である。カラー画像形成装置100は、カラー画像処理装置10、カラー画像入力装置20、カラー画像出力装置30および操作パネル40を備え、たとえばデジタルカラー複写機として実現される。
【0038】
図1に示すように、カラー画像処理装置10は、A/D(アナログ/デジタル)変換部11、シェーディング補正部12、入力階調補正部13、領域分離処理部14、空間フィルタ処理部15、および階調再現処理部16を備えている。
【0039】
カラー画像入力装置20は、たとえば、電荷結合素子(Charge Coupled Device;以下、CCDと称する)を備えたスキャナ部より構成され、原稿画像が記録された紙からの反射光像を、CCDにて画像データであるRGB(R:レッド、G:グリーン、B:ブルー)のアナログカラー信号として読み取って、カラー画像処理装置10に入力するものである。
【0040】
カラー画像入力装置20にて読み取られたアナログカラー信号は、カラー画像処理装置10内を、A/D変換部11、シェーディング補正部12、入力階調補正部13、領域分離処理部14、空間フィルタ処理部15、および階調再現処理部16の順で送られ、CMYK(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロ、K:ブラック)のデジタルカラー信号として、カラー画像出力装置30へ出力される。
【0041】
A/D変換部11は、入力されてきたRGBのアナログカラー信号を画像データであるデジタルカラー信号に変換する。シェーディング補正部12は、A/D変換部11より送られてきたRGBのデジタルカラー信号に対して、カラー画像入力装置20の照明系、結像系、撮像系で生じる各種の歪みを取り除く処理を施す。
【0042】
入力階調補正部13では、シェーディング補正部12にて各種の歪みが取り除かれたRGB信号(RGBの反射率信号)を、カラーバランスを整えると同時に、濃度信号などカラー画像処理装置10が扱い易い信号に変換する。
【0043】
さらに、入力階調補正部13では、RGBデータからCIE1976L(CIE:Commission Internationale de l'Eclairage:国際照明委員会。L:明度、a・b:色度)色空間のデータに変換され、変換後のLデータが後段の領域分離処理部14に入力される。
【0044】
領域分離処理部14は、RGB信号に基づいて、入力画像データの各画素を例えば、文字領域、網点領域、写真領域などの複数の領域に属する画素として分離する。
【0045】
そして、領域分離処理部14は、上記分離結果に基づき、画素がどの領域に属しているかを示す領域識別信号を、空間フィルタ処理部15、および階調再現処理部16へと出力するとともに、入力信号をそのまま後段の空間フィルタ処理部15に出力する。
【0046】
空間フィルタ処理部15は、領域分離処理部14から入力されるLデータに対して、領域識別信号に基づいてデジタルフィルタによる空間フィルタ処理を行う。空間周波数特性を補正することによって出力画像のぼやけや粒状性劣化を防ぐことができる。
【0047】
階調再現処理部16は、空間フィルタ処理部15と同様に、Lデータに対して、領域識別信号に基づいて所定の処理を施すものであり、ベクトル誤差拡散を用いて色補正処理および黒生成下色除去処理も一括して行う。
【0048】
領域分離処理部14にて文字領域として分離された領域は、特に黒文字または色文字の再現性を高めるために、空間フィルタ処理における鮮鋭強調処理で高周波成分を強調する。同時に、階調再現処理部16においては、高周波成分の再現に適した高解像度のスクリーンでの二値化または多値化処理が選択される。
【0049】
また、領域分離処理部14にて網点領域として分離された領域に関しては、空間フィルタ処理部15において、入力網点成分を除去するためのローパス・フィルタ処理が施され、階調再現処理部16で階調性を重視したスクリーンで二値化または多値化処理される。領域分離処理部14にて写真領域として分離された領域に関しては、階調再現処理部16で階調再現性を重視したスクリーンでの二値化または多値化処理が行われる。
【0050】
操作パネル40は、たとえば、液晶ディスプレイなどの表示部と設定ボタンなどの操作部とが一体化されたタッチパネル等により構成され、ユーザによって操作パネルより入力された情報に基づいてカラー画像処理装置10、カラー画像入力装置20、カラー画像出力装置30の動作が制御される。
【0051】
カラー画像処理装置10によって各処理が施された画像データは、一旦記憶部(図示せず)に記憶され、所定のタイミングで読み出されてカラー画像出力装置30に入力される。このカラー画像出力装置30は、画像データを記録媒体上に出力(たとえば紙などに印刷)するもので、例えば、電子写真方式やインクジェット方式を用いた装置を挙げることができるが特に限定されるものではない。なお、以上の処理は不図示のCPU(Central
Processing Unit)により制御される。
【0052】
以下では、階調再現処理部16で用いられるパターンテーブルの作成方法について説明する。
【0053】
図2は、パターンテーブルの作成処理を示すフローチャートである。
本実施形態では、一例として128×128のマトリクスサイズのパターンを用いて説明するが、画像形成装置に応じて、マトリクスサイズを大きくしたり、小さくしたりすることは可能である。
【0054】
まず、ステップS1で、画素値である入力濃度値を0に設定し、パターンテーブルのマトリクスサイズを画像形成装置に応じて最適サイズに設定する。
【0055】
次に、ステップS2で入力濃度値をプラス1し、ステップS3で入力濃度値とパターンテーブルのマトリクスサイズとに応じて、オンにする必要なドット数を計算する。必要なドット数は、入力濃度値0の場合をドット数0個とし、入力濃度値255の場合を128×128=16384個のドットを用いることとし、この間を均等割して、入力濃度値と必要なドット数との関係を求めることができる。なお、ドットゲインの影響を考慮してドット数の増減を調整することも可能である。
【0056】
本実施形態では、2値の例を示すが、多値の場合にも容易に拡張可能であることは自明である。入力濃度値に対応したパターンテーブルを作成するために、入力濃度値を閾値TH1およびTH2と比較する。ここで、TH1はドット総数の25%〜50%程度までの値を設定するが、一般的な2値処理の場合、ドット配置が45度の角度であってもドットが隣接するとドットゲインの影響でドットが繋がることを考慮して、ドット総数の25%の値である4096を設定する。また、本実施形態では、TH2は、ドット総数の35%の値である5735を設定する。
【0057】
図3は、ドットが隣接しないように配置した10×10のマトリクスサイズのパターン1の一例を示す図である。オンドット2の周辺8ドットが全てオフドット3で囲まれており、たて、よこ、斜めのいずれにもオンドット2が隣接しないように配置されている。
【0058】
ステップS4では、入力濃度値と閾値TH1とを比較し、入力濃度値が閾値TH1以下であれば、ステップS6に進み、入力濃度値が閾値TH1より大きければ、ステップS5に進む。
【0059】
ステップS5では、入力濃度値と閾値TH2とを比較し、入力濃度値が閾値TH2以下であれば、ステップS8に進み、入力濃度値が閾値TH2より大きければ、ステップS10に進む。
【0060】
ステップS6では、ドットを均等に配置することが可能であるので、オンドット間の距離が略均等になるように配置する。
【0061】
ステップS7では、必要なドット数から均等に配置可能な最大のドット数を減算し、その余りの数分だけ2ドットクラスタを用いる。図4は、2ドットクラスタを配置した10×10のマトリクスサイズのパターン1の一例を示す図である。2ドットクラスタ4は、角度が45度のクラスタ4aまたは135度のクラスタ4bになり、略均等な間隔になるように配置した後、残りのドットをドット間の距離が略均等になるように乱数を用いて配置する。
【0062】
ステップS8では、2ドットクラスタを配置するだけでは、全てのドットを均等配置することが出来ないので、上述の要領でクラスタドットの数を増やし、3ドットクラスタ、4ドットクラスタと順次纏めて配置するドット数を計算する。これらのドットクラスタを45度または、135度の角度成分に近くなる配置を優先し、0度または90度の角度に近いドットクラスタも乱数を用いて配置する。
【0063】
図5は、3ドット以上のクラスタを配置した10×10のマトリクスサイズのパターン1の一例を示す図である。図では、135度の3ドットクラスタ5、45度の4ドットクラスタ6、0度と90度を用いた3ドットクラスタ7を含んでいる。
【0064】
ステップS9では、ドットの配置情報をFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)などを用い周波数ドメイン情報に変換する。
【0065】
ステップS10では、周波数ドメイン上でのドット配置のCSF評価を行う。図6は、ドット配置のCSF評価例を説明するための図である。作成されたドットマトリクスパターンを高速フーリエ変換し、規格化した1次元のCSF特性と、規格化された周波数ドメイン情報とを乗算することで評価パラメータを算出する。この評価パラメータを閾値処理し、閾値よりも各周波数成分が全て閾値以下であれば、作成されたドットマトリクスパターンが、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であり、妥当なドットマトリクスパターンが作成されたと判断し、ステップS14に進む。閾値より大きい周波数成分があれば、ステップS3に戻る。
【0066】
ステップS11では、入力濃度値が255であるかどうかを判断し、255であれば処理を終了し、255でなければステップS2に戻る。
【0067】
図7は、パターンテーブルの変更例を示す概略図である。図7(a)は、低濃度の場合を示し、図7(b)は、中濃度の場合を示し、図7(a)は、高濃度の場合を示している。
【0068】
評価パラメータの各周波数成分について閾値処理を行い、図7(c)のように閾値よりも大きい成分がある場合は、図2のフローチャートに従ってドットの再配置を行い、以下同様の手順を繰り返すことで、0から255までの濃度範囲でパターンテーブルデータを決定する。各周波数成分について閾値処理を行う際、閾値よりも大きい周波数成分は、その周波数ドメイン情報がCSF特性よりも大きいことを意味する、即ち人間の視覚特性として目に付き易く、粒状性が高いと感じ易いことを意味する。
【0069】
このようにしてパターンテーブルを作成することで、入力濃度値に応じてCSF特性を考慮したドット配置を持つパターンテーブルを作成することが可能となる。
【0070】
次に、このパターンテーブルを用いたベクトル誤差拡散処理について説明する。
本発明においては、図1に示すように、空間フィルタ処理部15からの出力信号が階調再現処理部16に入力され、その出力信号がカラー画像出力装置30に出力される。
【0071】
図8は、階調再現処理部16の構成を示すブロック図である。階調再現処理部16は、パターンテーブル処理部50、色空間変換テーブル処理部51、データ変換テーブル処理部52、誤差量算出部53、拡散マトリクス格納部54、誤差メモリ55および加算器56を備える。
【0072】
パターンテーブル処理部50は、出力機器の出力ドットパターンを決定するためのもので、上記のようにパターンテーブルを作成し、入力されるLデータの明度L(入力濃度値)に応じたドットパターンを生成することで、CSFを考慮したドットパターンの生成が可能となる。
【0073】
色空間変換テーブル処理部51は、パターンテーブルを用いて変換されたL’およびaを入力データとして用い、カラー画像出力装置30に適応したデータであるCMY(K)データに変換する。このとき、CMY(K)データは、カラー画像出力装置30の階調表現能力に応じた多値データとして出力される。
【0074】
データ変換テーブル処理部52は、テーブルデータを用いて色空間変換テーブル処理部51で生成されたCMY(K)データを記録媒体上に記録した時のL’’a’’b’’データに変換する。テーブルデータの生成は、実際にCMY(K)データを記録媒体上に記録し、測色器で測定するなどの方法を用いて容易に生成することが可能である。
【0075】
誤差量算出部53は、データ変換テーブル処理部52で変換されたL’’a’’b’’データと、色空間変換テーブル処理部51に入力されるL’データとを比較し、その差を求めることで誤差量を算出する。さらに、図9に示すような誤差拡散用マトリクス60を用いて、量子化が未だ行われていない周辺4画素に、算出された注目画素の誤差量を拡散するための演算をおこなう。算出された誤差量は誤差メモリ55に蓄えられ、入力されるLデータの補正を行うために加算器56で加算される。
【0076】
上記では、入力されるLデータとデータ変換テーブル処理部52で変換されたL’’a’’b’’データとの差分を誤差として、誤差拡散処理を用いる方法について説明したが、画像形成装置が再現できる階調数が多い場合においては、誤差拡散処理を削除することも可能である。
【0077】
パターンテーブルに基づいて出力される値は、画像形成装置が再現可能な階調数に基づいて作成されており、また、色空間変換テーブルは、入力されるLデータに最も近いCMY(K)の組み合わせが出力値として選択されるように設定されているため、色空間変換テーブル処理部51に入力されるL’値と、出力されるCMYの組み合わせに基づくL’’値とは、多値化数が多いほど近い値となる。言い換えると画像形成装置で再現できる階調数が多くなるほど、L’値とL’’値との差が小さくなることは自明である。したがって、画像形成装置で再現可能な階調数が多い場合、たとえば16階調以上の場合は、誤差拡散処理を行う誤差量算出部53、拡散マトリクス格納部54、誤差メモリ55および加算器56を省くことも可能である。
【0078】
本発明の他の実施形態として、上記の画像処理方法をプリンタドライバとして実現するようにしてもよい。図10は、コンピュータ200に備えられるプリンタドライバ201の構成を示すブロック図である。コンピュ−タ200は、プリンタなどの画像出力装置300と接続し、画像データを出力するために、プリンタドライバ201、通信ポートドライバ202および通信ポート203を備えている。プリンタドライバ201は、階調再現処理部211およびプリンタ言語翻訳部212を含んで構成される。また、通信ポート203は、RS232C規格および各種LAN(Local Area Network)規格に準じたインターフェイスであり、通信ポートドライバ202によって通信ポート203に適した画像データが出力される。
【0079】
コンピュータ200において各種のアプリケーションプログラムを実行することにより生成された画像データは、プリンタドライバ201の階調再現処理部211に送られ、前述のカラー画像処理装置10に備えられた階調再現処理部16と同様の階調再現処理が施される。階調再現処理部211において処理がなされた画像データは、プリンタ言語翻訳部212に送られ、接続される画像出力装置300に応じたプリンタ言語に変換される。プリンタ言語翻訳部212から出力された画像データは、通信ポートドライバ202および通信ポート203を介して、インクジェット型の画像出力装置300に出力される。画像出力装置300では、入力された画像データを紙などの記録媒体に印刷して出力する。画像出力装置300は、印刷機能の他に複写機能およびファクシミリ通信機能を有するデジタル複合機であってもよい。
【0080】
また、上記のようなプリンタドライバ201をコンピュータ200側ではなく画像出力装置300に備えるようにし、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどで撮像された画像データを、メモリカードを介してまたはUSB(Universal Serial Bus)などのケーブルを介して入力し、プリンタドライバ201で上記と同様の処理を行うようにしても良い。
【0081】
さらに、本発明の他の実施形態として、上記の画像処理方法をコンピュータに実行させるための画像処理プログラムおよびこの画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することも可能である。
【0082】
なお、記録媒体としては、マイクロプロセッサで処理が行われるためのメモリ、たとえばROM(Read Only Memory)そのものが記録媒体であってもよいし、また、コンピュータの外部記憶装置としてプログラム読み取り装置が設けられ、そこに挿入することで読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【0083】
いずれの場合においても、記録されている画像処理プログラムは、マイクロプロセッサが記録媒体にアクセスすることで実行されてもよいし、マイクロプロセッサが記録媒体から画像処理プログラムを読み出し、読み出された画像処理プログラムをプログラム記憶エリアにダウンロードして、実行してもよい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め所定の記憶装置に格納されているものとする。CPUなどのマイクロプロセッサは、インストールされた画像処理用プログラムに従って所定の画像処理を行うようにコンピュータの各部を統括的に制御する。
【0084】
また、プログラム読み取り装置で読み取り可能な記録媒体としては、磁気テープ、カセットテープなどのテープ系、フレキシブルディスク、ハードディスクなどの磁気ディスクまたはCD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)/MO(Magneto Optical disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc)などの光ディスクのディスク系、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリを含めた固定的にプログラムを記録する媒体であってもよい。
【0085】
また、コンピュータを、インターネットを含む通信ネットワークに接続可能な構成とし、通信ネットワークから画像処理プログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する媒体であってもよい。なお、このように通信ネットワークから画像処理プログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用プログラムは予めコンピュータに格納しておくか、他の記録媒体からインストールされるものであってもよい。
【0086】
記録媒体から読み取った画像処理プログラムを実行するコンピュータシステムの一例は、フラットベッドスキャナ、フィルムスキャナ、デジタルカメラなどの画像読取装置と、各種プログラムを実行することにより上記の画像処理方法を含めた様々な処理を行うコンピュータと、このコンピュータの処理結果などを表示するCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイなどの画像表示装置と、コンピュータの処理結果を紙などに出力するプリンタなどの画像出力装置とが互いに接続されて構成されるシステムである。さらに、このコンピュータシステムには、通信ネットワークを介してサーバーなどに接続し、画像処理プログラムを含む各種プログラムや画像データなどの各種データを送受信するためのモデムなどが備えられる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の一形態であるカラー画像形成装置100の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】パターンテーブルの作成処理を示すフローチャートである。
【図3】ドットが隣接しないように配置した10×10のマトリクスサイズのパターン1の一例を示す図である。
【図4】2ドットクラスタを配置した10×10のマトリクスサイズのパターン1の一例を示す図である。
【図5】3ドット以上のクラスタを配置した10×10のマトリクスサイズのパターン1の一例を示す図である。
【図6】ドット配置のCSF評価例を説明するための図である。
【図7】パターンテーブルの変更例を示す概略図である。
【図8】階調再現処理部16の構成を示すブロック図である。
【図9】誤差拡散用マトリクスの一例を示す図である。
【図10】コンピュータ200に備えられるプリンタドライバ201の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0088】
1 マトリクスサイズのパターン
2 オンドット
3 オフドット
10 カラー画像処理装置
11 A/D(アナログ/デジタル)変換部
12 シェーディング補正部
13 入力階調補正部
14 領域分離処理部
15 空間フィルタ処理部
16 階調再現処理部
20 カラー画像入力装置
30 カラー画像出力装置
40 操作パネル
100 カラー画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像データを所定の階調の画像データに変換して出力する階調再現処理部を備える画像処理装置において、
前記階調再現処理部は、入力された画像データの画素値に応じて、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であるドットマトリクスパターンを作成するときに、パターンテーブルを用いることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記パターンテーブルとしてルックアップテーブルを用いることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記階調再現処理は、ベクトル誤差拡散を用いて階調を変換することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記階調再現処理部は、作成したドットマトリクスパターンを高速フーリエ変換し、規格化した1次元のコントラスト感度関数特性と、規格化された周波数ドメイン情報とを乗算することで評価パラメータを算出し、この評価パラメータが所定の範囲内にあれば、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であると判断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
画像データを、画像処理装置に入力する画像入力装置と、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置によって画像処理された画像データに基づいて画像を形成する画像出力装置とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
入力された画像データを所定の階調の画像データに変換して出力する階調再現処理工程を有する画像処理方法において、
前記階調再現処理工程では、入力された画像データの画素値に応じて、人間の視覚特性に基づいたドットの配置であるドットマトリクスパターンを作成するときに、パターンテーブルを用いることを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
コンピュータに請求項6記載の画像処理方法を実行させるための画像処理プログラム。
【請求項8】
コンピュータに請求項6記載の画像処理方法を実行させるための画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−334520(P2007−334520A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164048(P2006−164048)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】