説明

画像処理装置、画像形成装置およびプログラム

【課題】画像データに対して幾何変換処理を行った場合に、画素値がほぼ一定な領域に発生するすじ状の濃度むらの発生を防ぐ。
【解決手段】サブピクセル座標値算出部34は、原画像に対して回転処理が指示された場合に、回転処理後の画像の各画素に対応するサブピクセルの原画像における座標値を算出する。判定部33は、サブピクセル座標値算出部34により座標値が算出されたサブピクセル(仮想画素)が含まれる4画素×4画素の判定領域内の16の画素の画素値のばらつき度合いを判定する。画素値決定部35は、判定部33により判定された判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いに基づいて、回転処理後の画像における各画素の画素値を、原画像の判定領域内の16の画素の画素値から算出するのか、その判定領域内の特定の1つの画素の画素値を選択するのかを切り替えて決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像形成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、補間特性の異なる複数の補間演算回路から出力された補間データを評価し、最も補間誤差が少ないと類推される補間演算回路を特定し、その補間演算回路の補間データを最終的な補間データとして出力するようにした画素補間方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−117291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、画像データに対して幾何変換処理を行った場合に、画素値がほぼ一定な領域に発生するすじ状の濃度むらの発生を防ぐことが可能な画像処理装置、画像形成装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[画像処理装置]
請求項1に係る本発明は、原画像に対して幾何変換処理が指示された場合に、幾何変換処理後の画像の各画素に対応する仮想画素の原画像における座標値を算出する算出手段と、
前記算出手段により座標値が算出された仮想画素が含まれる予め定められた範囲の判定領域内の原画像の複数の画素の画素値のばらつき度合いを判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いに基づいて、幾何変換処理後の画像における各画素の画素値を、原画像の判定領域内の複数の画素の画素値から算出するのか該判定領域内の特定の1つの画素の画素値を選択するのかを切り替えて決定する決定手段とを備えた画像処理装置である。
【0006】
請求項2に係る本発明は、前記判定手段が、前記判定領域内の複数の画素の画素値の最大値と最小値との差が予め設定されたしきい値以上であるか否かにより、当該判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いを判定する請求項1記載の画像処理装置である。
【0007】
請求項3に係る本発明は、原画像が自然画像であるのか文書画像であるのかを判定する画像判定手段と、
前記画像判定手段により原画像が自然画像であると判定された場合、前記しきい値を第1の値に設定し、文書画像であると判定された場合、前記しきい値を前記第1の値よりも大きな第2の値に設定する設定手段とをさらに備えた請求項2記載の画像処理装置である。
【0008】
請求項4に係る本発明は、前記判定手段が、前記判定領域内の全ての複数の画素の画素値が、予め設定されたしきい値以上であるか、または前記しきい値未満であるか否かにより当該判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いを判定する請求項1記載の画像処理装置である。
【0009】
請求項5に係る本発明は、前記判定手段が、前記判定領域内の全ての複数の画素の画素値が、前記しきい値を含む予め設定された範囲内にある場合に、当該判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いが小さいと判定する請求項4記載の画像処理装置である。
【0010】
請求項6に係る本発明は、前記決定手段が、前記判定手段により当該判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いが小さいと判定された場合、幾何変換処理後の画像における画素の画素値を、当該判定領域内の特定の1つの画素の画素値に基づいて決定し、前記判定手段により当該判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いが大きいと判定された場合、幾何変換処理後の画像における画素の画素値を、当該判定領域内の複数画素の画素値から算出することにより決定する請求項1から5のいずれか1項記載の画像処理装置である。
【0011】
請求項7に係る本発明は、幾何変換処理前の原画像における網点処理の内容を検出する検出手段をさらに備え、
前記決定手段は、判定領域内の複数の画素の画素値の状態が、前記検出手段により検出された網点処理の内容と一致した場合、幾何変換処理後の画像における画素の画素値を、当該判定領域内の特定の1つの画素の画素値に基づいて決定する1から6のいずれか1項記載の画像処理装置である。
【0012】
[画像形成装置]
請求項8に係る本発明は、原画像に対して幾何変換処理が指示された場合に、幾何変換処理後の画像の各画素に対応する仮想画素の原画像における座標値を算出する算出手段と、
前記算出手段により座標値が算出された仮想画素が含まれる予め定められた範囲の判定領域内の原画像の複数の画素の画素値のばらつき度合いを判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いに基づいて、幾何変換処理後の画像における各画素の画素値を、原画像の判定領域内の複数の画素の画素値から算出するのか該判定領域内の特定の1つの画素の画素値を選択するのかを切り替えて決定する決定手段と、
前記決定手段により各画素の画素値が決定された幾何変換処理後の画像を出力する画像出力手段とを備えた画像形成装置である。
【0013】
[プログラム]
請求項9に係る本発明は、原画像に対して幾何変換処理が指示された場合に、幾何変換処理後の画像の各画素に対応する仮想画素の原画像における座標値を算出するステップと、
座標値が算出された仮想画素が含まれる予め定められた範囲の判定領域内の原画像の複数の画素の画素値のばらつき度合いを判定するステップと、
判定された判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いに基づいて、幾何変換処理後の画像における各画素の画素値を、原画像の判定領域内の複数の画素の画素値から算出するのか該判定領域内の特定の1つの画素の画素値を選択するのかを切り替えて決定するステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明によれば、画像データに対して幾何変換処理を行った場合に、画素値がほぼ一定な領域に発生するすじ状の濃度むらの発生を防ぐことが可能な画像処理装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る発明により得られる効果に加えて、最大値と最小値の差を算出するだけで複数の画素の画素値のばらつきを判定することができる画像処理装置を提供することができる。
【0016】
請求項3に係る本発明によれば、請求項2に係る発明により得られる効果に加えて、原画像が自然画像である場合には、幾何変換処理の際に画素補間が行われ難くすることが可能な画像処理装置を提供することができる。
【0017】
請求項4に係る本発明によれば、請求項1に係る発明により得られる効果に加えて、簡易な方法により複数の画素の画素値のばらつきを判定することができる画像処理装置を提供することができる。
【0018】
請求項5に係る本発明によれば、請求項4に係る発明により得られる効果に加えて、しきい値をまたいで変動するような画像領域が存在するような原画像に対しても、すじ状の濃度むらの発生を防ぐことが可能な画像処理装置を提供することができる。
【0019】
請求項6に係る本発明によれば、請求項1から5のいずれか1項に係る発明により得られる効果に加えて、複数の画素の画素値のばらつきが小さい場合には画素補間を行わずに判定領域内の特定の1つの画素の画素値により回転処理後の画像の画素の画素値を決定し、複数の画素の画素値のばらつきが大きい場合には判定領域内の複数の画素の画素値を用いた画素補間を行って回転処理後の画像の画素の画素値を決定することが可能な画像処理装置を提供することができる。
【0020】
請求項7に係る本発明によれば、請求項1から6のいずれか1項に係る発明により得られる効果に加えて、網点処理が行われている画像領域が存在するような原画像に対しても、すじ状の濃度むらの発生を防ぐことが可能な画像処理装置を提供することができる。
【0021】
請求項8に係る本発明によれば、画像データに対して幾何変換処理を行った場合に、画素値がほぼ一定な領域に発生するすじ状の濃度むらの発生を防ぐことが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0022】
請求項9に係る本発明によれば、画像データに対して幾何変換処理を行った場合に、画素値がほぼ一定な領域に発生するすじ状の濃度むらの発生を防ぐことが可能なプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】画像の回転処理の一例を説明するための図である。
【図2】画像の回転処理を行う場合に、回転後の画像の画素値を決定するための方法を説明するための図である。
【図3】画像の回転処理を行う場合に、サブピクセルと原画像の画素との関係を説明するための図である。
【図4】均一な濃度領域に発生するすじ状のむらの一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の画像形成システムの構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態における画像形成装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態における画像形成装置10の機能構成を示すブロック図である。
【図8】網点処理の網点周期(パターン)、網点濃度等の網点処理の内容の一例を示す図である。
【図9】図7に示した画素値決定部35の構成を示すブロック図である。
【図10】画素値のばらつき度合いの判定を行う判定領域の16の画素の画素値の一例を示す図である。
【図11】画素値のばらつき度合いの判定を行う判定領域の16の画素の画素値の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[背景]
まず、本発明の理解を助けるために、その背景及び概略を説明する。
【0025】
ここでは、先ず一般的な画像の回転処理についての説明を行なう。
【0026】
画像読み取り装置において原稿が斜めに読み取られた場合、読み取られた画像には傾き(スキュー)が発生する場合がある。このような場合、図1に示すように、原稿の傾きを修正するために読み取られた画像に対して回転処理を行って、傾きの無い画像を得ることが行われる。
【0027】
そして、このような回転処理を行う場合、図2に示されるように、回転処理後の回転画像の各画素の画素値を、回転処理前の原画像の画素値に用いて決定するような処理が行われる。しかし、回転処理の角度が90度、180度、270度等特定の角度以外の場合には、回転画像の各画素に対応する原画像における画素の座標値は整数とはならずに小数等の実数の値となる。しかし、このような小数等で表された座標の画素は原画像上には存在しないため、その周囲の画素から画素値を決定する処理を行う必要がある。
【0028】
このような処理としては下記のような3つの方法が知られている。
(1)ニアレストネイバー(nearest neighbor)法
(2)バイリニア(bilinear)補間法(双一次補間法)
(3)バイキュービック(bicubic)補間法(双三次補間法)
【0029】
次に、この3つの画素値決定方法を図3を参照して説明する。この図3に示した例では、回転画像における画素に対応する原画像上の仮想画素(サブピクセル)を含む4×4画素のウィンドウが示されており、このウィンドウに含まれる16の画素をA11〜A44として表現する。
【0030】
この3つの画素値決定方法のうちのニアレストネイバー法では、サブピクセルの座標位置に最も近い画素A22の画素値を選択して回転処理後の画像の画素値とする。つまり、このニアレストネイバー法では、画素補間演算は行われず、単に画素値の選択のみが行われる。
【0031】
また、バイリニア補間法では、サブピクセルの座標位置の周囲の4つの画素A22、A23、A32、A33の画素値を用いた演算を行って回転処理後の画像の画素値を算出する画素補間演算が行われる。
【0032】
さらに、バイキュービック補間法では、サブピクセルを含む4×4画素のウィンドウの16の画素A11〜A44の画素値を用いた積和演算を行って回転処理後の画像の画素値を算出する画素補間演算が行われる。
【0033】
このような画素値の決定方法うち、ニアレストネイバー法が最も演算量が少なくてすむが回転処理後の画像にはジャギー等が発生する。そして、バイリニア補間法やバイキュービック補間法のように複数の画素の画素値を用いて画素補間演算を行う方法では、回転処理後の画像の各画素毎に演算処理が必要となるが、回転処理後の画像はニアレストネイバー法と比較して高品質が画像が得られる。特にバイキュービック補間法は、16の画素の画素値を用いた演算を行う必要があるが最も画像品質が高い画像が得られるという特徴を有している。
【0034】
ただし、バイキュービック補間法のように複数の画素の画素値に基づいて積和演算を行って回転処理後の画像の画素値を算出する場合、原画像に均一な濃度領域が存在すると、却って画像が劣化する場合がある。
【0035】
上記のバイキュービック補間法により画素補間を行う場合、回転角度に応じた固有の周期を持つ演算誤差が発生する。また、積和演算を行うための補間係数とサブピクセルの座標値との積和演算の際に発生する誤差が累積することにより、図4に示すような直線状の連続的な濃度むら、つまり、すじ状の濃度むらが発生する。
【0036】
このようなすじ状の濃度むらは、原画像が自然画像のような濃度値が分散している場合には問題とならならいが、濃度値が一定のようなべた領域の場合には、目だってしまい画像の劣化として捉えられてしまう。
【0037】
[実施形態]
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図5は本発明の一実施形態の画像形成システムの構成を示すブロック図である。
【0038】
本発明の一実施形態の画像形成システムは、図5に示されるように、ネットワーク30により相互に接続された画像形成装置10、および端末装置20により構成される。端末装置20は、印刷データを生成して、ネットワーク30経由にて生成した印刷データを画像形成装置10に対して送信する。画像形成装置10は、端末装置20から送信された印刷データを受け付けて、印刷データに応じた画像を用紙上に出力する。なお、画像形成装置10は、印刷(プリント)機能、スキャン機能、複写(コピー)機能、ファクシミリ機能等の複数の機能を有するいわゆる複合機と呼ばれる装置である。
【0039】
次に、本実施形態の画像形成システムにおける画像形成装置10のハードウェア構成を図6に示す。
【0040】
画像形成装置10は、図6に示されるように、CPU11、メモリ12、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置13、ネットワーク30を介して外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IF)14、タッチパネル又は液晶ディスプレイ並びにキーボードを含むユーザインタフェース(UI)装置15、スキャナ16、プリンタ17を有する。これらの構成要素は、制御バス18を介して互いに接続されている。
【0041】
CPU11は、メモリ12または記憶装置13に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、画像形成装置10の動作を制御する。なお、本実施形態では、CPU11は、メモリ12または記憶装置13内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、当該プログラムをCD−ROM等の記憶媒体に格納してCPU11に提供することも可能である。
【0042】
図7は、上記の制御プログラムが実行されることにより実現される画像形成装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0043】
本実施形態の画像形成装置10は、図7に示されるように、画像処理装置40と、画像出力部50とを備えている。なお、本実施形態では、説明を簡単にするために、印刷処理の制御に関する構成についての説明については省略する。
【0044】
また、画像処理装置40は、図7に示されるように、画像判定部31と、しきい値設定部32と、判定部33と、サブピクセル座標値算出部34と、画素値決定部35と、網点処理検出部36とを備えている。
【0045】
サブピクセル座標値算出部34は、原画像に対して回転処理が指示された場合に、回転処理後の画像の各画素に対応するサブピクセル(仮想画素)の原画像における座標値を算出する。
【0046】
判定部33は、サブピクセル座標値算出部34により座標値が算出されたサブピクセル(仮想画素)が含まれる4画素×4画素の判定領域(ウィンドウ)内の16の画素の画素値のばらつき度合いを判定する。具体的には、判定部33は、4×4画素の判定領域内の16の画素の画素値の最大値と最小値との差が予め設定されたしきい値以上であるか否かにより、その判定領域内の16の画素の画素値のばらつき度合いを判定する。
【0047】
例えば、各画素の画素値が0〜256の範囲をとる場合、判定部33は、画素値の最大値と最小値との差が10以上の場合には、ばらつき度合いが大きいと判定し、画素値の最大値と最小値との差が10未満の場合には、ばらつき度合いが小さいと判定する。
【0048】
画素値決定部35は、判定部33により判定された判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いに基づいて、回転処理後の画像における各画素の画素値を、原画像の判定領域内の16の画素の画素値から算出するのか、その判定領域内の特定の1つの画素の画素値を選択するのかを切り替えて決定する。
【0049】
例えば、画素値決定部35は、判定部33によりある判定領域内の16の画素の画素値のばらつき度合いが小さいと判定された場合、回転処理後の画像における画素の画素値を、その判定領域内における複数の画素のうちサブピクセルに最も近い1つの画素の画素値として決定する。そして、画素値決定部35は、判定部33によりある判定領域内の16の画素の画素値のばらつき度合いが大きいと判定された場合、回転処理後の画像における画素の画素値を、その判定領域内の16の画素の画素値を用いた積和演算により算出する。この場合には、画素値決定部35は、上述したようなニアレストネイバー法による画素値の決定方法とバイキュービック補間法による画素値の決定方法とを、判定部33における判定結果に基づいて切り替えて、回転画像における各画素の画素値を決定する。
【0050】
また、画像判定部31は、原画像が自然画像であるのか文書画像であるのかを判定する。具体的には、画像判定部31は、原画像の画像データのヒストグラム(濃度分布)を取得し、取得したヒストグラムから得られる複数のピーク濃度値と、その複数のピーク周辺の濃度値とを評価し、各ピーク濃度値付近の分布が広い(分散している)場合には、原画像が写真等の自然画像であると判定し、そうでない場合には文字や線画等の文書画像であると判定する。
【0051】
そして、しきい値設定部32は、画像判定部31による判定結果に基づいて、判定部33において画素値のばらつき度合いを判定するためのしきい値を設定する。例えば、しきい値設定部32は、画像判定部31により原画像が自然画像であると判定された場合、しきい値を10に設定し、原画像が文書画像であると判定された場合、しきい値を15に設定する。
【0052】
網点処理検出部36は、回転処理前の原画像における網点処理の内容を検出する。具体的には、網点処理検出部36は、図8(A)、図8(B)に示すような、原画像における網点処理の網点周期(パターン)、網点濃度等の網点処理の内容を検出する。
【0053】
そして、画素値決定部35は、判定領域内の16の画素の画素値の状態が、網点処理検出部36により検出された網点処理の内容と一致した場合、判定部33における判定結果に関わらず、回転処理後の画像における画素の画素値を、その判定領域(4×4ウィンドウ)内の特定の画素の画素値とする。例えば、図3に示すような4×4ウィンドウ内の左上の画素A11の画素値を、回転処理後の画像における画素の画素値とする。
【0054】
画像出力部50は、画素値決定部35により各画素の画素値が決定された回転処理後の画像を所定の用紙上に出力する。
【0055】
次に、図7に示した画素値決定部35の構成を図9を参照して説明する。
画素値決定部35は、図9に示されるように、ラインバッファ41と、積和演算器42と、切替器43と、画像データメモリ44とを備えている。
【0056】
ラインバッファ41は、入力された原画像のうちの例えば6ライン分の画像データを格納するためのバッファメモリである。
【0057】
積和演算器42は、4×4画素の16画素毎に分割されたウィンドウ(判定領域)のうち、サブピクセル座標値算出部34により算出されたサブピクセルが含まれるウィンドウを特定し、そのウィンドウに含まれる16画素を用いた積和演算を行って画素補間を行うことにより、回転処理後の画素の画素値を算出する。この積和演算の具体的な内容については一般的な方法を用いることが可能であるため、ここではその説明は省略する。
【0058】
切替器43は、判定部33による判定結果に基づいて、積和演算器42からの画素補間された画素値またはサブピクセルに最も近い画素(最近傍画素)の画素値のいずれかを選択する。なお、切替器43は、網点処理検出部36により検出された網点処理の内容と4×4画素のウインドウの画素配列とが一致した場合には、判定部33からの判定結果に関係なく、4×4画素のウインドウ内の特定の画素の画素値を選択して出力する。
【0059】
画像データメモリ44は、切替器43により選択された画素値を順次格納するためのメモリである。この画像データメモリ44に格納された画像データは、回転処理後の回転画像として画像出力部50に出力される。
【0060】
次に、本実施形態の画像処理装置40における動作を図面を参照して詳細に説明する。
【0061】
例えば、判定部33により画素値のばらつき度合いの判定を行う判定領域の16の画素の画素値が図10、図11に示すような値であるとする。
【0062】
図10に示すような場合、判定領域内の画素値の最大値は202であり、最小値は199である。そのため、最大値と最小値の差は、3であり、ばらつき度合いの判定のしきい値10よりも小さい。そのため、判定部33は、図10に示すような16画素の画素値のばらつき度合いは小さいと判定する。
【0063】
この図10に示すような場合、画素値決定部35は、16画素のうちサブピクセルに最も近い1つの画素の画素値、例えば201を回転処理後の画像における画素値として決定する。
【0064】
また、図11に示すような場合、判定領域内の画素値の最大値は202であり、最小値は20である。そのため、最大値と最小値の差は、182であり、ばらつき度合いの判定のしきい値10よりも大きい。そのため、判定部33は、図11に示すような16画素の画素値のばらつき度合いは大きいと判定する。
【0065】
この図11に示すような場合、画素値決定部35は、16画素の画素値を用いた積和演算を行って画素補間処理を行うことにより回転処理後の画像における画素値を算出する。
【0066】
[変形例]
なお、上記実施形態では、判定部33は、判定領域内の16画素の画素値の最大値と最小値との差に基づいて、画素値のばらつき度合いを判定していたが、画素値のばらつき度合いの判定方法はこのような方法に限定されない。例えば、判定部33は、4×4画素のウィンドウを判定領域とし、この判定領域内の16画素の画素値の全てが、予め設定されたしきい値以上であるか、またはしきい値未満であるか否かによりこの判定領域内の16の画素の画素値のばらつき度合いを判定するようにしてもよい。
【0067】
例えば、判定部33は、判定領域内の16の画素の画素値が全て128以上であるか、または全て128未満である場合に、画素値のばらつき度合いが小さいと判定するようにしてもよい。
【0068】
そして、このような判定方法を用いる場合には、判定部33は、さらに判定領域内の16の全ての画素の画素値が、128を含む予め設定された範囲内にある場合に、この判定領域内の16の画素の画素値のばらつき度合いが小さいと判定するようにしてもよい。具体的には、判定部33は、16の画素値を2進数で表現した場合の上位3ビットが全て“100”であるか、または上位3ビットが全て“011”である場合にも画素値のばらつきが小さいものと判定するようにしてもよい。
【0069】
ここで、上位3ビットが“100”であるとは、画素値が128(10000000)〜159(10011111)の範囲にあることを意味し、上位3ビットが“011”であるとは、画素値が96(01100000)〜127(01111111)の範囲にあることを意味する。つまり、画素値の上位3ビットが全て“100”であるか、または上位3ビットが全て“011”であるとは、画素値が96〜159の範囲にあることを意味する。
【0070】
また、上記実施形態では、画素値決定部35は、上述したようなニアレストネイバー法による画素値の決定方法とバイキュービック補間法による画素値の決定方法とを、判定部33における判定結果に基づいて切り替えるものとして説明した。しかし、画素値決定部35を、上述したようなニアレストネイバー法による画素値の決定方法とバイリニア補間法による画素値の決定方法とを、判定部33における判定結果に基づいて切り替えるようにすることも可能である。
【0071】
さらに、上記実施形態では、入力された原画像に対して回転処理を行う場合を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像の拡大/縮小処理や、変形処理等の他の幾何変換(アフィン変換)処理を行う場合でも同様に本発明を適用することができるものである。
【符号の説明】
【0072】
10 画像形成装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 通信インタフェース(IF)
15 ユーザインタフェース(UI)装置
16 スキャナ
17 プリンタ
18 制御バス
20 端末装置
30 ネットワーク
31 画像判定部
32 しきい値設定部
33 判定部
34 サブピクセル座標値算出部
35 画素値決定部
36 網点処理検出部
40 画像処理装置
41 ラインバッファ
42 積和演算器
43 切替器
44 画像データメモリ
50 画像出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像に対して幾何変換処理が指示された場合に、幾何変換処理後の画像の各画素に対応する仮想画素の原画像における座標値を算出する算出手段と、
前記算出手段により座標値が算出された仮想画素が含まれる予め定められた範囲の判定領域内の原画像の複数の画素の画素値のばらつき度合いを判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いに基づいて、幾何変換処理後の画像における各画素の画素値を、原画像の判定領域内の複数の画素の画素値から算出するのか該判定領域内の特定の1つの画素の画素値を選択するのかを切り替えて決定する決定手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記判定領域内の複数の画素の画素値の最大値と最小値との差が予め設定されたしきい値以上であるか否かにより、当該判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いを判定する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
原画像が自然画像であるのか文書画像であるのかを判定する画像判定手段と、
前記画像判定手段により原画像が自然画像であると判定された場合、前記しきい値を第1の値に設定し、文書画像であると判定された場合、前記しきい値を前記第1の値よりも大きな第2の値に設定する設定手段と、
をさらに備えた請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記判定領域内の全ての複数の画素の画素値が、予め設定されたしきい値以上であるか、または前記しきい値未満であるか否かにより当該判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いを判定する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記判定領域内の全ての複数の画素の画素値が、前記しきい値を含む予め設定された範囲内にある場合に、当該判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いが小さいと判定する請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記判定手段により当該判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いが小さいと判定された場合、幾何変換処理後の画像における画素の画素値を、当該判定領域内の特定の1つの画素の画素値に基づいて決定し、前記判定手段により当該判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いが大きいと判定された場合、幾何変換処理後の画像における画素の画素値を、当該判定領域内の複数画素の画素値から算出することにより決定する請求項1から5のいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項7】
幾何変換処理前の原画像における網点処理の内容を検出する検出手段をさらに備え、
前記決定手段は、判定領域内の複数の画素の画素値の状態が、前記検出手段により検出された網点処理の内容と一致した場合、幾何変換処理後の画像における画素の画素値を、当該判定領域内の特定の1つの画素の画素値に基づいて決定する1から6のいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項8】
原画像に対して幾何変換処理が指示された場合に、幾何変換処理後の画像の各画素に対応する仮想画素の原画像における座標値を算出する算出手段と、
前記算出手段により座標値が算出された仮想画素が含まれる予め定められた範囲の判定領域内の原画像の複数の画素の画素値のばらつき度合いを判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いに基づいて、幾何変換処理後の画像における各画素の画素値を、原画像の判定領域内の複数の画素の画素値から算出するのか該判定領域内の特定の1つの画素の画素値を選択するのかを切り替えて決定する決定手段と、
前記決定手段により各画素の画素値が決定された幾何変換処理後の画像を出力する画像出力手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項9】
原画像に対して幾何変換処理が指示された場合に、幾何変換処理後の画像の各画素に対応する仮想画素の原画像における座標値を算出するステップと、
座標値が算出された仮想画素が含まれる予め定められた範囲の判定領域内の原画像の複数の画素の画素値のばらつき度合いを判定するステップと、
判定された判定領域内の複数の画素の画素値のばらつき度合いに基づいて、幾何変換処理後の画像における各画素の画素値を、原画像の判定領域内の複数の画素の画素値から算出するのか該判定領域内の特定の1つの画素の画素値を選択するのかを切り替えて決定するステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−205129(P2012−205129A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68579(P2011−68579)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】