説明

画像処理装置及びプログラム

【課題】墨の増加量が二次有彩色の減少量と一致する場合の機器独立の色空間を示す色信号の色域と比べて、機器独立の色空間を示す色信号の低明度及び低彩度の色域を増加し、色の再現性を向上することができる画像処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置は、下方外郭部及び墨あり領域で、墨量(K)が増加するとRが減少する関数で且つKが最大値の半分以上である場合のKの減少量に対するRの増加量の割合が、Kが最大値の半分未満である場合のKの減少量に対するRの増加量の割合よりも小さく設定されている関数に従って、Rの値を算出する二次有彩色量算出部28と、入力した画像記録信号のKと、変換されたL*a*b*の値と、算出された二次有彩色の値を使って、入力した画像記録信号に対応する画像記録信号の値を算出する出力色算出部29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの出力装置により色の再現性は、出力装置が使用可能なインクの種類によって決まる。典型的には、3つの1次有彩色インク(例えば、シアン、マゼンタ、及びイエローのインク)を組みあわせることによって、入力された任意の色を用紙上に再現することができる。また、このような、各1次有彩色インクとは色相が異なる2次有彩色インクが用いられる場合もある。ここで、2次有彩色とは、2つの1次有彩色成分に分解できる色を意味する。
【0003】
1次有彩色インク及び2次有彩色インクとを利用できる場合に、再現色(用紙上に再現される色)の明度に相関のある明度パラメータに応じて2次有彩色インクの使用量を調整する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、再現色の明度が高くなるに従って、2次有彩色インクの使用量が減少する。
【0004】
また、1次有彩色インク及び2次有彩色インクとを利用できる場合に、再現色の明度に相関のある彩度パラメータに応じて2次有彩色インクの使用量を調整する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。この技術では、再現色の彩度が低くなるに従って、2次有彩色インクの使用量が減少する。
【0005】
また、RGBデータをCMYKRGBデータに色変換する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。この技術では、白W(R, G, B)=(255, 255, 255)からシアンC(R, G, B)=(0, 255, 255)の高明度域は、シアンCの記録剤のみを使用し、その使用量を変えて色再現する。次に、シアンC(R, G, B)=(0, 255, 255)からブラックK(R, G, B)=(0, 0, 0)の明度域は、まず、シアンCの隣接色であるブルーBおよびグリーンGの記録剤を加えて明度を低下させ、色再現する。そして、記録剤の総使用量が制限値に達すると、シアンCの記録剤の使用量を減じて、ブルーBおよびグリーンGの記録剤の使用量を増加する。さらに、グリーンGおよびブルーBの混色が再現可能な最高彩度に達すると、シアンCに代えて黒Kを加え、さらに明度を低下させて黒Kの近傍を色再現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−237617号公報
【0007】
【特許文献2】特開2004−262027号公報
【0008】
【特許文献3】特開2007−60151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、墨の増加量が二次有彩色の減少量と一致する場合の機器独立の色空間を示す色信号の色域と比べて、機器独立の色空間を示す色信号の低明度及び低彩度の色域を増加し、色の再現性を向上することができる画像処理装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1の画像処理装置は、入力機器に依存する色信号を墨、一次有彩色及び二次有彩色で再現される色信号に分解する画像処理装置であって、前記墨、前記一次有彩色及び前記二次有彩色を含む、出力機器に依存する色信号から機器独立の色空間を示す色信号の色域を算出する第1算出手段と、前記入力機器に依存する色信号から前記機器独立の色空間を示す色信号を再現する墨の値及び一次有彩色の値を算出する第2算出手段と、前記算出された墨の値及び前記算出された一次有彩色の値に基づいて、前記機器独立の色空間を示す色信号の色域を墨を含む第1領域と、墨を含まない第2領域とに分割する分割手段と、前記第1領域について、前記墨が増加すると前記二次有彩色が減少する関数で、且つ前記墨の値が前記墨の所定値以上である場合の前記墨の減少量に対する前記二次有彩色の増加量の割合が、前記墨の値が前記墨の所定値未満である場合の前記墨の減少量に対する前記二次有彩色の増加量の割合よりも小さく設定されている関数に従って、前記算出された墨の値に対応する二次有彩色の値を決定する決定手段と、前記算出された墨の値と、前記決定された二次有彩色の値と、前記機器独立の色空間を示す色信号の値とを用いて、前記入力機器に依存する色信号に対応する墨、一次有彩色及び二次有彩色の組み合わせを算出する第3算出手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2の画像処理装置は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記決定手段で使用される関数は、前記墨の値が前記墨の最大値の半分以上である場合に、前記墨の値の1減少に対して0より大きく前記墨量の減少量の絶対値未満の範囲で前記二次有彩色を増加し、前記墨の値が墨の最大値の半分未満である場合に、前記墨の値の減少量と比例して前記二次有彩色の値を増加することを特徴とする。
【0012】
請求項3の画像処理装置は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記決定手段で決定される関数は、前記墨の最大値に墨色入力率を乗算する関数または前記二次色の最大値に二次有彩色入力率を乗算したものであり、前記二次有彩色入力率は、前記墨の値が前記墨の最大値の半分以上である場合は、前記墨の減少に応じて0より大きく前記墨量の減少量の絶対値未満の範囲で増加し、前記二次有彩色の増加量の割合が、前記墨の値が前記墨の最大値の半分未満である場合は、前記墨の減少量と比例して前記二次有彩色の値を増加することを特徴とする。
【0013】
請求項4の画像処理装置は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記第1領域は、前記墨を含み且つ前記色域の外郭である外郭部と、前記墨を含み且つ前記色域の内部の領域とを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項5の画像処理装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記二次有彩色は、前記出力機器に含まれる一次有彩色のトナー量のうち最も少ない色成分の補色の位置にある色であることを特徴とする。
【0015】
請求項6のプログラムは、入力機器に依存する色信号を墨、一次有彩色及び二次有彩色で再現される色信号に分解するコンピュータを、前記墨、前記一次有彩色及び前記二次有彩色を含む、出力機器に依存する色信号から機器独立の色空間を示す色信号の色域を算出する第1算出手段、前記入力機器に依存する色信号から前記機器独立の色空間を示す色信号を再現する墨の値及び一次有彩色の値を算出する第2算出手段、前記算出された墨の値及び前記算出された一次有彩色の値に基づいて、前記機器独立の色空間を示す色信号の色域を墨を含む第1領域と、墨を含まない第2領域とに分割する分割手段、前記第1領域について、前記墨が増加すると前記二次有彩色が減少する関数で、且つ前記墨の値が前記墨の所定値以上である場合の前記墨の減少量に対する前記二次有彩色の増加量の割合が、前記墨の値が前記墨の所定値未満である場合の前記墨の減少量に対する前記二次有彩色の増加量の割合よりも小さく設定されている関数に従って、前記算出された墨の値に対応する二次有彩色の値を決定する決定手段、及び前記算出された墨の値と、前記決定された二次有彩色の値と、前記機器独立の色空間を示す色信号の値とを用いて、前記入力機器に依存する色信号に対応する墨、一次有彩色及び二次有彩色の組み合わせを算出する第3算出手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、墨の増加量が二次有彩色の減少量と一致する場合の機器独立の色空間を示す色信号の色域と比べて、機器独立の色空間を示す色信号の低明度及び低彩度の色域を増加し、色の再現性を向上することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、墨の増加量が二次有彩色の減少量と一致する場合の機器独立の色空間を示す色信号の色域と比べて、機器独立の色空間を示す色信号の低明度及び低彩度の色域を増加することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、墨の増加量が二次有彩色の減少量と一致する場合の機器独立の色空間を示す色信号の色域と比べて、機器独立の色空間を示す色信号
の低明度及び低彩度の色域を増加することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、墨の増加量が二次有彩色の減少量と一致する場合の機器独立の色空間を示す色信号の色域と比べて、機器独立の色空間を示す色信号の低明度及び低彩度の色域を増加し、色の再現性を向上することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、出力機器に含まれる一次有彩色のトナーの残量が平均化されやすくなる。
【0021】
請求項6の発明によれば、墨の増加量が二次有彩色の減少量と一致する場合の機器独立の色空間を示す色信号の色域と比べて、機器独立の色空間を示す色信号の低明度及び低彩度の色域を増加し、色の再現性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態にかかる画像処理装置を用いたDTP(Desktop publishing)システムの一例を示すブロック図である。
【図2】画像処理装置3で実行される処理を示すフローチャートである。
【図3】色変換プロファイル作成部16の概略構成図である。
【図4】(A)は、3つの領域に分割されたL*a*b*色信号の色域の概念図である。(B)は、5つの領域に分割されたL*a*b*色信号の色域の概念図である。
【図5】ルックアップテーブル又はICCプロファイルを作成する処理を示すフローチャートである。
【図6】(A)は、Kの値とRの初期値との関係を示す図であり、(B)〜(D)は、Kの値とRの値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
以下の説明では、1次有彩色は、例えば、シアン、マゼンタ、及びイエロー(CMY)であり、2次有彩色は、2つの1次有彩色成分に分解できる色を意味し、例えば、赤、緑、及び青(RGB)である。
【0025】
図1は、本実施の形態にかかる画像処理装置を用いたDTP(Desktop publishing)システムの一例を示すブロック図である。
【0026】
図1のDTPシステム1は、原稿編集装置2、画像処理装置3、及び画像出力装置4を備えている。画像出力装置4は、例えば印刷機である。原稿編集装置2は、電子的な印刷原稿を作成する装置であり、ページ記述言語やラスターイメージデータの電子原稿データを画像処理装置3に出力する。具体的には、原稿編集装置は、DTPアプリケーションを搭載した汎用のコンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)又は原稿編集用のコンピュータである。
【0027】
原稿編集装置2として汎用のコンピュータが使用される場合は、ユーザは各種のDTPソフトウェアを用いて電子原稿を編集する。作成された電子原稿は、例えばPostScript(登録商標)プリンタドライバによりページ記述言語であるPostScript(登録商標)に変換され、画像処理装置3に出力される。ページ記述言語は、PostScript(登録商標)に限られるものではない。
【0028】
原稿編集装置2として専用のコンピュータを使用する場合は、ユーザはColor Electric Prepress System(以下CEPSという)と呼ばれる専用のワークステーションとアプリケーションにより電子原稿を編集する。作成された電子原稿は、例えば、TIFF/ITフォーマットのラスター情報として、画像処理装置3に出力される。
【0029】
電子原稿の色は、CMYK色信号(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)を用いて、指定される。また、色再現性の拡大のためHiFiカラー印刷と呼ばれる5色以上のインクを用いた印刷技術が存在する。HiFiカラー印刷の場合、電子原稿は、CMYK色信号に、特色としてレッド、グリーンおよびブルーを1色ないし3色を加えた合計5色ないし7色の色信号を用いて、表される。また、近年色再現性の拡大により画質向上を狙ったHiFiカラー印刷と呼ばれる5色以上のインクを用いた印刷技術が存在するが、その場合は通常、特色としてレッド、グリーンおよびブルーを1色ないし3色加えた5色ないし7色の色信号を用いて電子原稿を表現する。特色については、DTPソフトウェア上に色見本ごとに測色値が定義されており、Pantone社などのメーカと色見本の番号を電子原稿上で指定することにより、L* a* b* 色信号などの測色値で色が指定される。
【0030】
画像処理装置3は、通信部11、フォーマット変換部12、ラスタライズ部13、色変換部14、通信部15、色変換プロファイル作成部16、及び色変換プロファイル記憶部17を備えている。画像処理装置3は、例えば、コンピュータであり、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、及びネットワークインターフェースなどを備えている。画像処理装置3は、原稿編集装置2から入力されたコード情報やラスター情報の電子原稿を、画像出力装置4で出力可能な形式に変換して画像出力装置4に出力する。
【0031】
原稿編集装置2から送信されるCMYK等の色信号で指定された電子原稿は、通信部11によってネットワークを通じて受信され、フォーマット変換部12及びラスタライズ部13に転送される。ページ記述言語は、ラスタライズ部13によって画像出力装置4で出力可能なラスター形式の画像データに変換されると同時に、色変換処理が行われ、機器独立の色空間であるL* a* b* 色信号に変換される。TIFF/ITのようなラスター形式の画像データはフォーマット変換部12によって解像度変換及びフォーマット変換の処理が実行され、画像出力装置4で出力可能なラスター形式の画像データに変換されると同時に、色変換処理が行われ、機器独立の色空間であるL* a* b* 色信号に変換される。
【0032】
色変換プロファイル作成部16は、機器に依存しないL* a* b* 色信号を画像出力装置4の色空間の画像記録信号(例えばCMYKR)に変換するためのルックアップテーブル(LUT)又はICC(International Color Consortium)プロファイルを作成する。色変換プロファイル作成部16の詳細な構成については、後述する。色変換プロファイル記憶部17は、色変換プロファイル作成部16で作成されたルックアップテーブル又はICCプロファイルを記憶する。尚、画像記録信号は色を有する色信号である。
【0033】
色変換部14は、色変換プロファイル記憶部17に記憶されたルックアップテーブル又はICCプロファイルに基づいて、ラスタライズ部13及びフォーマット変換部12から転送されるL* a* b* 色信号を画像出力装置4の画像記録信号に変換する。この画像記録信号はCMYK及びRGBの1つ以上の特色を含む5つ以上の色で構成されている。以下の説明では、特色の具体例として赤(R)を想定する。つまり、L* a* b* 色信号は、CMYK及びR(CMYKR)を用いた5色の画像記録信号に変換されるものとする。もちろん、使用する特色は赤(R)に限定されるものではなく、緑(G)や青(B)でもよい。
【0034】
色変換部14で色変換された画像記録信号は通信部15に転送される。通信部15は、画像記録信号を蓄積し、適宜画像出力装置4に転送する。つまり、通信部15は、画像処理装置3と画像出力装置4との処理速度の違いを吸収する。そして、画像出力装置4は、CMYKR5色のラスター形式の画像記録信号に従って、用紙上に画像を形成する。
【0035】
ここで、ラスタライズ部13及びフォーマット変換部12によるCMYK色信号からL* a* b* 色信号への色変換処理は、公知のICC(International Color Consortium)の仕様に基づくCMS(Color Management System)により実現することが可能である。さらに、色変換部14は、入力される色信号がL* a* b* 色信号に限定されるものではなく、XYZ等の表色系座標上の機器独立の色空間を示す色信号でもよい。
【0036】
また、画像出力装置4は、5色以上の色信号で画像を記録する装置であれば、印刷機に限定されない。例えば、画像出力装置4は、インクジェット方式又は電子写真方式のカラープリンタ、若しくは熱転写方式又は銀塩写真方式などのカラー画像出力装置でもよい。
【0037】
図2は、画像処理装置3で実行される処理を示すフローチャートである。
【0038】
まず、画像出力装置4が、出力機器に依存する画像記録信号(例えばCMYKRGB)を示すサンプルを印刷する(ステップS1)。次に、不図示の測色計が印刷したサンプルの色を測定する(ステップS2)。
【0039】
色変換プロファイル作成部16は、測定されたサンプルの色、即ち、画像出力装置4に依存する画像記録信号(例えばCMYKRGB)と機器独立の色空間を示す色信号(例えばL* a* b* 色信号)との対応関係を設定する(ステップS3)。
【0040】
その後、色変換プロファイル作成部16は、入力機器(原稿編集装置2)に依存する画像記録信号(例えばCMYK)と、機器独立の色空間を示す色信号(例えばL* a* b* 色信号)との対応関係を調整し、入力機器に依存する画像記録信号(例えばCMYK)に対応する出力機器に依存する画像記録信号(例えばCMYKRGB)を規定するルックアップテーブル又はICCプロファイルを作成する(ステップS4)。
【0041】
色変換プロファイル作成部16は、作成したルックアップテーブルを色変換プロファイル記憶部17に保存する又は作成したICCプロファイルを不図示のプリントサーバに保存する(ステップS5)。尚、作成したICCプロファイルを不図示のプリントサーバに保存する場合には、画像処理装置3は色変換処理を実行する前に、ICCプロファイルを当該プリントサーバから読み出し、色変換プロファイル記憶部17に保存する。
【0042】
色変換部14は、ルックアップテーブル又はICCプロファイルを用いて、入力機器(原稿編集装置2)に依存する画像記録信号(例えばCMYK)を出力機器に依存する画像記録信号(例えばCMYKRGB)に色変換して、画像出力装置4に出力する(ステップS6)。
【0043】
図3は、色変換プロファイル作成部16の概略構成図である。色変換プロファイル作成部16は、例えば、制御プログラムを実行するCPUにより実現される。
【0044】
色変換プロファイル作成部16は、第1色変換条件作成部21(第1算出手段)、色域変換条件作成部22(第1算出手段)、及び第2色変換条件作成部23を備えている。色域変換条件作成部22は、色域外郭算出部24及び色域マッピング部25を備えている。第2色変換条件作成部23は、墨量算出部26(第2算出手段)、領域判定部27(分割手段)、二次有彩色量算出部28(決定手段)、及び出力色算出部29(第2算出手段及び第3算出手段)を備えている。
【0045】
第1色変換条件作成部21は、機器に依存する画像記録信号(例えばCMYK,CMYKRGB)を機器独立の色空間を示す色信号(例えばL* a* b* 色信号)に変換する処理を行う。
【0046】
色域外郭算出部24は、サンプルの印刷時に出力した画像記録信号(例えばCMYKRGB)と測色計で測定された値とに基づいて、L*a*b*色信号の色域の外郭を算出する。具体的には、色域外郭算出部24は、L*a*b*の色空間上で同一明度における最も高彩度の色データを順次つなぎ合わせることで色域の外郭を算出する。
【0047】
L*a*b*色信号の色域の外郭を算出する場合には、以下の方法を用いてもよい。例えば、第1色変換条件作成部21が、予めCMYKRのうちの特色Rと、特色Rの補色Cを抜いたMYKの3色との合計4色(MYKR)の組み合わせを、L*a*b*色信号に変換し、色域外郭算出部24が、L*a*b*色信号の色域の外郭を算出する。同様の方法で、色域外郭算出部24が、CYKGの組み合わせ及びCMKBの組み合わせに対するL*a*b*色信号の色域の外郭を算出する。そして、色域外郭算出部24が、算出された3つの色域の外郭が重ね合わさった部分を、最終的なL*a*b*色信号の色域の外郭と設定してもよい。
【0048】
色域マッピング部25は、出力機器で出力できないL*a*b*色信号の色域を出力機器で出力可能なL*a*b*色信号の色域へマッピングする。本発明に係る実施の形態の一例として、色域マッピング部25は、出力機器で出力できないL*a*b*色信号と出力機器で出力可能なL*a*b*色信号との色差が最小となるように、マッピングを行う。また、出力機器で出力できないL*a*b*色信号については、明度を維持するよう出力可能なL*a*b*色信号へとマッピングしてもよいし、彩度を維持するように出力可能なL*a*b*色信号へとマッピングしてもよい。
【0049】
墨量算出部26は、入力機器に依存する画像記録信号からL*a*b*色信号を再現する墨量(K)を算出する。具体的には、墨量算出部26は、下記の数式(1)〜(4)のいずれかによって墨量を算出する。
K = Min K + (Max K - Min K) * 墨入れ関数 (1)
K = Max K * 墨入れ関数 (2)
K = Max K (3)
K = Min K (4)
【0050】
ここで、墨量算出部26は、L*a*b*色信号を再現するCMYKのうち、最もKの少ないCMYKを探索することでMin Kを決定する。また、墨量算出部26は、L*a*b*色信号を再現するCMYKのうち、最もKの多いCMYKを探索することでMax Kを決定する。具体的には、墨量算出部26は、L*a*b*の値とKの値をニューラルネットワークの関数に代入してCMYを計算し、CMYの値が0〜100の範囲に収まる解の中で、Kの最大値(Max K)と最小値(Min K)を決定する。尚、ニューラルネットワークの関数を用いてCMYを計算する方法は、従来より知られている(例えば、特開2004−194042号公報参照)。また、回帰分析の関数を用いてL*a*b*の値からCMYを計算してもよい。回帰分析の関数を用いてCMYを計算する方法は、従来より知られている(例えば、特開2002−84434号公報参照)。また、墨入れ関数は0〜1の範囲で決定され、L*(明度)が大きくなるほど小さくなり、a*b*(彩度)が大きくなるほど小さくなるように決定される。
【0051】
本発明に係る実施の形態の一例として、領域判定部27は、色域外郭算出部24で算出されたL*a*b*色信号の色域を墨量算出部26で算出された墨量及び出力色算出部29で算出されたCMY値に基づいて3つの領域に分割する。L*a*b*色信号の色域は、墨量(K成分)の有無に基づいて、図4(A)に示ように墨無し領域34、及び墨あり領域35、下方外郭部31(図4(A)の一点鎖線)の領域に分割される。下方外郭部31は、L*a*b*色信号の色域の外郭のうち、K成分を含む外郭であり、及び墨あり領域35はK成分を含む領域である。墨無し領域34はK成分を含まない領域である。尚、図4(A)は、3つの領域に分割されたL*a*b*色信号の色域の概念図である。また、上記の分割方法とは異なる一例として、領域判定部27は、色域外郭算出部24で算出されたL*a*b*色信号の色域を墨量算出部26で算出された墨量及び出力色算出部29で算出されたCMY値に基づいて、図4(B)に示すように、K成分を含む下方外郭部31(図4(B)の一点鎖線)、K成分を含まない上方外郭部32(図4(B)の点線)、彩度が0である墨あり領域35に隣接する部分はK成分を含み、それ以外の部分はK成分を含まないグレイ軸33(図4(B)の太線)、K成分を含まない墨無し領域34、及びK成分を含む墨あり領域35の5つの領域に分割を行ってもよい。尚、図4(B)は、5つの領域に分割されたL*a*b*色信号の色域の概念図である。
【0052】
図3に戻り、二次有彩色量算出部28は、各領域に応じて、使用する二次有彩色(RGB)の量を算出する、即ち、使用する二次有彩色の初期値と使用する二次有彩色の増加又は減少の探索方向を決定する。二次有彩色量算出部28は、出力機器に含まれるC成分、M成分及びY成分のトナー量に基づいて二次有彩色RGBのうちの追加する色を決定する。例えば、二次有彩色量算出部28は、出力機器に含まれるC成分、M成分及びY成分のトナーのうち最も少ない色成分の補色の位置にある二次有彩色を追加する。これにより、出力機器に含まれるC成分、M成分及びY成分のトナーの残量が平均化されやすくなる。C成分が最も少ない場合には、二次有彩色量算出部28は、R成分を追加する。
【0053】
以下、R成分を追加する場合について説明する。
【0054】
例えば、二次有彩色量算出部28は、下方外郭部31では、Kの増加量がRの減少量と一致する関数、即ち、R=100−K(100は、K濃度の最大値)で算出される値をR成分の初期値として決定し、R成分の探索方向を決定する。
【0055】
R成分の探索方向は、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)と予めきめられた基準墨量(Ka)で決定される。例えば、K>Kaの場合、二次有彩色量算出部28は、Rが一様に増加する方向で、Rの最適量を探索する。K<=Kaの場合、二次有彩色量算出部28は、Rが一様に減少する方向で、Rの最適量を探索する。尚、Rの最適量は、Y成分やM成分の使用量が最大値のときのRの値又はY成分やM成分の使用量が最小値のときのRの値のいずれかである。
【0056】
二次有彩色量算出部28は、上方外郭部32及び墨無し領域34では、入力した画像記録信号(CMYK)のY成分の値とM成分の値とを比較し、小さい成分の値をR成分の初期値として決定し、R成分の探索方向を決定する。
【0057】
二次有彩色量算出部28は、グレイ軸33では、入力した画像記録信号(CMYK)の最大のC成分と最小のC成分との差分をR成分の初期値として決定し、R成分の探索方向を決定する。
【0058】
二次有彩色量算出部28は、墨あり領域35では、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)とY成分の値及びM成分の値とを比較し、K>Y且つMならば、R=100−Kで算出される値をR成分の初期値として決定し、R成分の探索の方向を決定する。一方、K≦Y且つMならば、Y成分の値とM成分の値のうち小さい成分の値をR成分の初期値として決定し、R成分の探索方向を決定する。
【0059】
以下、G成分を追加する場合について説明する。
【0060】
例えば、二次有彩色量算出部28は、下方外郭部31では、G=100−K(100は、K濃度の最大値)で算出される値をG成分の初期値として決定し、G成分の探索方向を決定する。
【0061】
G成分の探索方向は、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)と予めきめられた基準墨量(Ka)で決定される。例えば、K>Kaの場合、二次有彩色量算出部28は、Gが一様に増加する方向で、Gの最適量を探索する。K<=Kaの場合、二次有彩色量算出部28は、Gが一様に減少する方向で、Gの最適量を探索する。尚、Gの最適量は、C成分やY成分の使用量が最大値のときのGの値又はC成分やY成分の使用量が最小値のときのGの値のいずれかである。
【0062】
二次有彩色量算出部28は、上方外郭部32及び墨無し領域34では、入力した画像記録信号(CMYK)のC成分の値とY成分の値とを比較し、小さい成分の値をG成分の初期値として決定し、G成分の探索方向を決定する。
【0063】
二次有彩色量算出部28は、グレイ軸33では、入力した画像記録信号(CMYK)の最大のM成分と最小のM成分との差分をG成分の初期値として決定し、G成分の探索方向を決定する。
【0064】
二次有彩色量算出部28は、墨あり領域35では、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)とC成分の値及びY成分の値とを比較し、K>C且つYならば、G=100−Kで算出される値をG成分の初期値として決定し、G成分の探索方向を決定する。一方、K≦C且つYならば、C成分の値とY成分の値のうち小さい成分の値をG成分の初期値として決定し、G成分の探索方向を決定する。
【0065】
以下、B成分を追加する場合について説明する。
【0066】
例えば、二次有彩色量算出部28は、下方外郭部31では、B=100−K(100は、K濃度の最大値)で算出される値をB成分の初期値として決定し、B成分の探索方向を決定する。
【0067】
B成分の探索方向は、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)と予めきめられた基準墨量(Ka)で決定される。例えば、K>Kaの場合、二次有彩色量算出部28は、Bが一様に増加する方向で、Bの最適量を探索する。K<=Kaの場合、二次有彩色量算出部28は、Bが一様に減少する方向で、Bの最適量を探索する。尚、Bの最適量は、C成分やM成分の使用量が最大値のときのBの値又はC成分やM成分の使用量が最小値のときのBの値のいずれかである。
【0068】
二次有彩色量算出部28は、上方外郭部32及び墨無し領域34では、入力した画像記録信号(CMYK)のC成分の値とM成分の値とを比較し、小さい成分の値をB成分の初期値として決定し、B成分の探索方向を決定する。
【0069】
二次有彩色量算出部28は、グレイ軸33では、入力した画像記録信号(CMYK)の最大のY成分と最小のY成分との差分をB成分の初期値として決定し、B成分の探索方向を決定する。
【0070】
二次有彩色量算出部28は、墨あり領域35では、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)とC成分の値及びM成分の値とを比較し、K>C且つMならば、B=100−Kで算出される値をB成分の初期値として決定し、B成分の探索方向を決定する。一方、K≦C且つMならば、C成分の値とM成分の値のうち小さい成分の値をB成分の初期値として決定し、B成分の探索方向を決定する。
【0071】
ここでは、二次有彩色量算出部28は、C成分、M成分及びY成分のうち最も少ない色成分の補色の位置にある二次有彩色を追加する例を説明したが、二次有彩色量算出部28は、二次有彩色RGBの全てを追加してもよい。例えば、追加すべき二次有彩色の初期値は、適宜ユーザが決めればよい。追加すべき二次有彩色の初期値をR>G>Bの関係を維持するように決定してもよい。
【0072】
出力色算出部29は、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)と、第1色変換条件作成部21で変換されたL*a*b*の値と、二次有彩色量算出部28で算出された二次有彩色の初期値(RGB)を使って、入力した画像記録信号(CMYK)を再現可能な画像記録信号(CMYKRGB)の値を探索する。出力色算出部29によって探索された値(CMY)が出力機器(画像出力装置4)で出力できない値である場合には、二次有彩色量算出部28が、決定された探索方向に従って、二次有彩色の値を増減し、再度、出力色算出部29が、墨量の値(K)とL*a*b*の値と増減された二次有彩色の値(RGB)を使って、入力した画像記録信号(CMYK)を再現可能な画像記録信号(CMYKRGB)の値を探索する。この処理は繰り返し実行される。出力色算出部29によって探索された値(CMY)が出力機器で出力できる値である場合には、出力色算出部29は、入力した画像記録信号(CMYK)に対応する出力すべき画像記録信号(CMYKRGB)を規定するルックアップテーブル又はICCプロファイルを作成する。
【0073】
具体的には、出力色算出部29は、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)と、第1色変換条件作成部21で変換されたL*a*b*の値と、二次有彩色量算出部28で算出された二次有彩色の初期値(RGB)をニューラルネットワークの関数に代入して、出力すべき画像記録信号のCMYの値を算出する。
【0074】
例えば、ニューラルネットワークの関数は、下記(5)式で表される。
(L*,a*,b*)=F(C,M,Y,K,R,G,B) (5)
(5)式をCMYの値を求める式に書き直すと、下記(6)式で表される。
(C,M,Y)=F∧-1(L*,a*,b*,K,R,G,B) (6)
(6)式によって、出力色算出部29は、出力すべき画像記録信号のCMYの値を算出する。尚、出力色算出部29は、回帰分析の関数を用いて出力すべき画像記録信号のCMYの値を算出してもよい。
【0075】
図5は、ルックアップテーブル又はICCプロファイルを作成する処理を示すフローチャートである。前提として、色域外郭算出部24が、予め、機器独立の色空間を示す色信号(例えばL* a* b* 色信号)の外郭を算出しているものとする。
【0076】
まず、墨量算出部26が、例えば上記(1)式〜(4)式のいずれかを用いて入力機器に依存する画像記録信号から出力可能なL*a*b*色信号を再現する墨量(K)を算出する。そして、出力色算出部29が、算出された墨量(K)と出力可能なL*a*b*の値を上記式(6)に代入し、仮のCMY値を算出する(ステップS11)。
【0077】
次に、領域判定部27は、色域外郭算出部24で算出されたL*a*b*色信号の色域を墨量算出部26で算出された墨量と仮のCMY値に基づいて5つの領域に分割する(ステップS12)。上述したように、L*a*b*色信号の色域は、墨量及び仮のCMY値の有無に基づいて、図4に示すように、下方外郭部31(図4の一点鎖線)、上方外郭部32(図4の点線)、グレイ軸33(図4の太線)、墨無し領域34、及び墨あり領域35の5つの領域に分割される。
【0078】
次に、二次有彩色量算出部28が、各領域に応じて、二次有彩色の初期値と二次有彩色の増加又は減少の探索方向を決定する(ステップS13)。二次有彩色量算出部28は、C成分、M成分及びY成分の量に基づいて二次有彩色RGBのうちの追加する色を決定する。例えば、二次有彩色量算出部28は、C成分、M成分及びY成分のうち最も少ない色成分の補色の位置にある二次有彩色を追加する。探索方向は、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)と予めきめられた基準墨量(Ka)で決定される。例えば、K>Kaの場合、二次有彩色量算出部28は、二次有彩色が一様に増加する方向で、二次有彩色の最適量を探索する。K<=Kaの場合、二次有彩色量算出部28は、二次有彩色が一様に減少する方向で、二次有彩色の最適量を探索する。例えば、二次有彩色Rの最適量は、Y成分やM成分の使用量が最大値のときのRの値又はY成分やM成分の使用量が最小値のときのRの値のいずれかである。
【0079】
ところで、上述したように、二次有彩色量算出部28は、下方外郭部31及び墨あり領域35では、R=100−K(100は、K濃度の最大値)で算出される値をR成分の初期値として決定している。この場合、図6(A)に示すように、Kが100付近の値をとる場合、2次有彩色Rが極端に減少するので、L*a*b*色信号の低明度及び低彩度の色域が減少して、色の再現性が悪化する。尚、図6(A)は、Kの値とRの初期値との関係を示す図であり、図6(B)、図6(C)及び図6(D)は、Kの値とRの値との関係を示す図である。
【0080】
本実施の形態では、図6(B)に示すように、二次有彩色量算出部28は、下方外郭部31及び墨あり領域35では、Rmax*二次有彩色入力率でRの最適量を算出する。二次有彩色入力率は、墨量(K)が最大値(K max)の半分以上である場合に、墨量(K)の減少に応じて0より大きく0.5以下の範囲で一定に増加する値であり、墨量(K)が最大値(K max)の半分未満である場合に、墨量(K)の減少に応じて0.5より大きく1以下の範囲で一定に増加する値である。このように、二次有彩色量算出部28は、下方外郭部31及び墨あり領域35では、墨量(K)が増加するとRが減少する関数で、且つ墨量(K)が最大値(K max)の半分以上である場合のKの減少量に対するRの増加量の割合が、墨量(K)が最大値(K max)の半分未満である場合のKの減少量に対するRの増加量の割合よりも小さく設定されている関数に従って、Rの最適量を算出する。
【0081】
または、図6(C)に示すように、二次有彩色量算出部28は、下方外郭部31及び墨あり領域35では、墨量(K)が最大値(K max)の半分以上である場合に、Kの1減少に対して0より大きく1未満でRを増加する関数F1でRの最適量を算出し、墨量(K)が最大値(K max)の半分未満である場合に、Kの1減少に対して1だけRを増加する関数F2でRの最適量を算出してもよい。図6(C)では、Kの1減少に対して0より大きく1未満でRを増加する関数F1は、例えば、Kの1減少に対してRを0.5増加させる関数であり、Rの最適量の初期値は、Rの最大値に0.25を乗算した値である。このように、二次有彩色量算出部28は、下方外郭部31及び墨あり領域35では、墨量(K)が増加するとRが減少する関数で、且つ墨量(K)が最大値(K max)の半分以上である場合のKの減少量に対するRの増加量の割合が、墨量(K)が最大値(K max)の半分未満である場合のKの減少量に対するRの増加量の割合よりも小さく設定されている関数に従って、Rの最適量を算出する。
また、上記関数では、墨量(K)が最大値(K max)の半分以上である場合に、、Rは0以上墨量の減少量以下で増加させてもよく、墨量(K)が最大値(K max)の半分未満である場合に、Kの減少量に比例してRの値を増加させてもよい。
【0082】
図6(B)又は図6(C)では、Kが100付近の値をとる場合、2次有彩色Rが極端に減少しないので、図6(A)に示すKの増加量がRの減少量と一致する場合のL*a*b*色信号の色域と比べて、L*a*b*色信号の低明度及び低彩度の色域が増加して、色の再現性が向上する。
【0083】
なお、上記した2次有彩色の求め方とは異なる例として、図6(D)に示すように、二次有彩色の最適量を算出するための関数(例えば、図6(D)の関数F1)が、非線形の関数である場合は、二次有彩色量算出部28は、墨量が関数F1及びF2の交点の値以上である場合の墨の減少量に対する二次有彩色の増加量の割合が、墨量が関数F1及びF2の交点の値未満である場合の墨の減少量に対する二次有彩色の増加量の割合よりも小さく設定されている関数に従って、前記算出された墨の値に対応する二次有彩色の値を決定してもよい。
【0084】
また、二次有彩色の値を求める他の例として、予め墨量算出部26がKの値を仮計算し、出力色算出部29がCMYの値を仮計算し、二次有彩色量算出部28がRの値を仮計算する。その後、二次有彩色量算出部28は、二次有彩色を決定するときに、トナーの総量制限値から仮計算されたCMY+Kの値を引いた値を所定値とし、墨量が所定値以上である場合の墨の減少量に対する二次有彩色の増加量の割合が、墨量が所定値未満である場合の墨の減少量に対する二次有彩色の増加量の割合よりも小さく設定されている関数に従って、二次有彩色の値を決定してもよい。
【0085】
図5に戻り、出力色算出部29は、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)と、第1色変換条件作成部21で変換されたL*a*b*の値と、二次有彩色量算出部28で算出された二次有彩色の値(RGB)を使って、入力した画像記録信号(CMYK)を再現可能な画像記録信号(CMYKRGB)の値を探索する(ステップS14)。
【0086】
出力色算出部29は、探索された値(CMY)が出力機器(画像出力装置4)で出力できる値であるか否かを判別する(ステップS15)。
【0087】
出力色算出部29によって探索された値(CMY)が出力機器(画像出力装置4)で出力できない値である場合には(ステップS15でNO)、二次有彩色量算出部28が、決定された探索方向に従って、二次有彩色の値を増減する(ステップS16)。このとき、下方外郭部31及び墨あり領域35では、二次有彩色の値を決定するために、例えば、上述した図6(B)又は図6(C)のRとKの関数が使用される。そして、ステップS14に戻り、再度、出力色算出部29が、墨量の値(K)とL*a*b*の値と増減された二次有彩色の値(RGB)を使って、入力した画像記録信号(CMYK)を再現可能な画像記録信号(CMYKRGB)の値を探索する。この処理は繰り返し実行される。
【0088】
出力色算出部29によって探索された値(CMY)が出力機器で出力できる値である場合には(ステップS15でYES)、出力色算出部29は、入力した画像記録信号(CMYK)に対応する出力すべき画像記録信号(CMYKRGB)を規定するルックアップテーブル又はICCプロファイルを作成する(ステップS17)。
【0089】
出力色算出部29は作成したルックアップテーブルを色変換プロファイル記憶部17に保存する又は作成したICCプロファイルを不図示のプリントサーバに保存する(ステップS18)。尚、作成したICCプロファイルを不図示のプリントサーバに保存する場合には、画像処理装置3は色変換処理を実行する前に、ICCプロファイルを当該プリントサーバから読み出し、色変換プロファイル記憶部17に保存する。
【0090】
以上説明したように、本実施の形態によれば、二次有彩色量算出部28は、下方外郭部31及び墨あり領域35では、墨量(K)が増加するとRが減少する関数で、且つ墨量(K)が最大値(K max)の半分以上である場合のKの減少量に対するRの増加量の割合が、墨量(K)が最大値(K max)の半分未満である場合のKの減少量に対するRの増加量の割合よりも小さく設定されている関数に従って、Rの最適量を算出する。そして、出力色算出部29は、入力した画像記録信号(CMYK)の墨量の値(K)と、第1色変換条件作成部21で変換されたL*a*b*の値と、二次有彩色量算出部28で算出された二次有彩色の値(RGB)を使って、入力した画像記録信号(CMYK)に対応する画像記録信号(CMYKRGB)の値を算出する。従って、Kの増加量がRの減少量と一致する場合のL*a*b*色信号の色域と比べて、L*a*b*色信号の低明度及び低彩度の色域を増加し、色の再現性が向上する。
【0091】
画像処理装置3の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムが記録されている記録媒体を、画像処理装置3に供給し、画像処理装置3のCPUが記憶媒体に格納されたプログラムを読み出し実行することによっても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、CD−ROM、DVD、又はSDカードなどがある。また、画像処理装置3のCPUが、画像処理装置1の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムを実行することによっても、上記第1及び第2の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0092】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
3 画像処理装置
16 色変換プロファイル作成部
21 第1色変換条件作成部
22 色域変換条件作成部
23 第2色変換条件作成部
24 色域外郭算出部
25 色域マッピング部
26 墨量算出部
27 領域判定部
28 二次有彩色量算出部
29 出力色算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力機器に依存する色信号を墨、一次有彩色及び二次有彩色で再現される色信号に分解する画像処理装置であって、
前記墨、前記一次有彩色及び前記二次有彩色を含む、出力機器に依存する色信号から機器独立の色空間を示す色信号の色域を算出する第1算出手段と、
前記入力機器に依存する色信号から前記機器独立の色空間を示す色信号を再現する墨の値及び一次有彩色の値を算出する第2算出手段と、
前記算出された墨の値及び前記算出された一次有彩色の値に基づいて、前記機器独立の色空間を示す色信号の色域を墨を含む第1領域と、墨を含まない第2領域とに分割する分割手段と、
前記第1領域について、前記墨が増加すると前記二次有彩色が減少する関数で、且つ前記墨の値が前記墨の所定値以上である場合の前記墨の減少量に対する前記二次有彩色の増加量の割合が、前記墨の値が前記墨の所定値未満である場合の前記墨の減少量に対する前記二次有彩色の増加量の割合よりも小さく設定されている関数に従って、前記算出された墨の値に対応する二次有彩色の値を決定する決定手段と、
前記算出された墨の値と、前記決定された二次有彩色の値と、前記機器独立の色空間を示す色信号の値とを用いて、前記入力機器に依存する色信号に対応する墨、一次有彩色及び二次有彩色の組み合わせを算出する第3算出手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記決定手段で使用される関数は、前記墨の値が前記墨の最大値の半分以上である場合に、前記墨の値の1減少に対して0より大きく前記墨量の減少量の絶対値未満の範囲で前記二次有彩色を増加し、前記墨の値が墨の最大値の半分未満である場合に、前記墨の値の減少量と比例して前記二次有彩色の値を増加することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記決定手段で決定される関数は、前記墨の最大値に墨色入力率を乗算する関数または前記二次色の最大値に二次有彩色入力率を乗算したものであり、前記二次有彩色入力率は、前記墨の値が前記墨の最大値の半分以上である場合は、前記墨の減少に応じて0より大きく前記墨量の減少量の絶対値未満の範囲で増加し、前記二次有彩色の増加量の割合が、前記墨の値が前記墨の最大値の半分未満である場合は、前記墨の減少量と比例して前記二次有彩色の値を増加することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1領域は、前記墨を含み且つ前記色域の外郭である外郭部と、前記墨を含み且つ前記色域の内部の領域とを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記二次有彩色は、前記出力機器に含まれる一次有彩色のトナー量のうち最も少ない色成分の補色の位置にある色であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
入力機器に依存する色信号を墨、一次有彩色及び二次有彩色で再現される色信号に分解するコンピュータを、
前記墨、前記一次有彩色及び前記二次有彩色を含む、出力機器に依存する色信号から機器独立の色空間を示す色信号の色域を算出する第1算出手段、
前記入力機器に依存する色信号から前記機器独立の色空間を示す色信号を再現する墨の値及び一次有彩色の値を算出する第2算出手段、
前記算出された墨の値及び前記算出された一次有彩色の値に基づいて、前記機器独立の色空間を示す色信号の色域を墨を含む第1領域と、墨を含まない第2領域とに分割する分割手段、
前記第1領域について、前記墨が増加すると前記二次有彩色が減少する関数で、且つ前記墨の値が前記墨の所定値以上である場合の前記墨の減少量に対する前記二次有彩色の増加量の割合が、前記墨の値が前記墨の所定値未満である場合の前記墨の減少量に対する前記二次有彩色の増加量の割合よりも小さく設定されている関数に従って、前記算出された墨の値に対応する二次有彩色の値を決定する決定手段、及び
前記算出された墨の値と、前記決定された二次有彩色の値と、前記機器独立の色空間を示す色信号の値とを用いて、前記入力機器に依存する色信号に対応する墨、一次有彩色及び二次有彩色の組み合わせを算出する第3算出手段
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66019(P2013−66019A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202961(P2011−202961)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】