説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】入力画像のコントラストを色相毎に適切且つ高速に調整可能な画像処理装置及び画像処理方法を実現すること。
【解決手段】CPU21は、カメラ用I/F部26を介して入力された入力画像のコントラスト変換を行う際、先ず、当該変換を行う画像データの色相に対応する3次元ルックアップテーブル(3D−LUT)を3D−LUT群230の中から選択する。例えば、肌色系の色域の画像データをコントラスト変換する際は、肌色系の3D−LUTを選択する。そして、その選択した3D−LUTに基づいて、画像データの入力L*値を出力L*値に変換する。入力画像の色域の色相に応じて、3D−LUTを選択して、コントラスト変換を行った後、プリンタ用I/F部27を介してプリンタへ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力画像にコントラスト変換を行って出力する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ、画像読取装置等の画像入力装置から入力された画像データ(以下、「入力画像」という。)に各種画像処理を施してモニタやプリンタへ出力する画像処理装置が知られている。画像処理装置は、一般に、被写体の色や階調を正確・忠実に再現することを目標としているが、この場合、写真的には地味になったり、全体的に暗い印象を受けたりすることがある。
【0003】
このため、例えば、公的な目的に利用されることが多い証明写真は、スナップ写真等とは異なり、被写体との距離、配光、光量、照度等が予め適正に管理された条件のもとに、撮影条件を最適化したカメラによって撮影される。このように証明写真の撮影環境を安定的に管理することで、画像処理装置は、固定の色変換テーブルを用いて、被写体の色や階調を忠実に再現することができる。
【0004】
また、特許文献1の手法を用いて、カラー画像から所望の色領域を分離し、その分離した色領域毎に画像処理を施すことで、色や階調を正確・忠実に再現することもできる。
【特許文献1】特開平8−221567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにして、例えば、灰色を背景色として人物を撮影した画像に対して、背景色のグレーにムラや色付きがないように色変換処理を施したり、また、人物の肌色の色のりが良い色再現となるように色変換処理を施したりすることができる。
【0006】
しかし、例えば、証明写真中の肌色の明度を高めるようにコントラストの変換処理(以下、「コントラスト変換」という。)を行った場合に、背景色の灰色や被写体の洋服の原色にもその変換処理がかかってしまうといったように、コントラスト変換の対象とする色相の色域以外の色域にまで当該変換処理を施してしまい、その色域の色を変えてしまった。
【0007】
また、例えば、証明写真の顔画像の肌色や洋服の色が背景色の影響を受け、人間の視覚には肌色や洋服の色が暗く写ってしまうように、有彩色のコントラストが、隣接する無彩色の色域の影響を受けて低下してしまうことがあった。
【0008】
そこで、特許文献1の手法を用いて、入力画像を色相毎の色域に分離して、それぞれの色域にコントラスト変化を施す方策も考えられる。しかし、色相毎の色域に分離する処理は、大変複雑である。のため、入力画像中の色域の色相の数に比例して、その処理時間も膨大になってしまった。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、入力画像のコントラストを色相毎に適切且つ高速に調整可能な画像処理装置及び画像処理方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の画像処理装置は、
入力画像中の無彩色の色域に対してコントラスト変換を行う無彩色変換手段と、
前記入力画像中の有彩色の色域に対してコントラスト変換を行う有彩色変換手段と、
を備え、
前記無彩色変換手段のコントラスト変換の階調特性と、前記有彩色変換手段のコントラスト変換の階調特性とが異なることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記有彩色変換手段は、
前記有彩色の色相毎の色域それぞれに対してコントラスト変換を行う色相毎変換手段を有し、
前記色相毎変換手段の色相毎のコントラスト変換の階調特性が異なることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像処理装置であって、
前記有彩色変換手段は、
前記入力画像中の主要色相毎の色域に対してコントラスト変換を行う主要色相毎変換手段を有し、
前記主要色相毎変換手段の主要色相毎のコントラスト変換の階調特性が異なることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の画像処理装置であって、
前記有彩色変換手段は、
前記入力画像中の原色系の色相の色域に対してコントラスト変換を行う原色変換手段と、
前記入力画像中の肌色系の色相の色域に対してコントラスト変換を行う肌色変換手段と、
を有し、
前記原色変換手段及び前記肌色変換手段それぞれのコントラスト変換の階調特性が異なることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の画像処理装置であって、
前記入力画像中の、同一明度の無彩色及び有彩色の色域において、
前記無彩色変換手段の変換後の明度が、前記有彩色変換手段の変換後の明度よりも小さいことを特徴としている。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の画像処理装置であって、
前記入力画像中の、同一明度の無彩色及び肌色系の色域において、
前記無彩色変換手段による変換後の明度が、前記肌色変換手段の変換後の明度よりも小さいことを特徴としている。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の画像処理装置であって、
前記コントラスト変換は、当該変換の対象とする色域の色相に対応する色変換テーブルを用いて行うことを特徴としている。
【0017】
請求項8に記載の画像処理方法は、
入力画像中の無彩色の色域に対してコントラスト変換を行う無彩色変換ステップと、
前記入力画像中の有彩色の色域に対してコントラスト変換を行う有彩色変換ステップと、
を含み、
前記無彩色変換ステップにおけるコントラスト変換の階調特性と、前記有彩色変換ステップにおけるコントラスト変換の階調特性とが異なることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1及び8に記載の発明によれば、無彩色の色域に対するコントラスト変換の階調特性と、有彩色の色域に対するコントラスト変換の階調特性とが異なるため、無彩色及び有彩色それぞれの色域のコントラストを適切に調整することができる。このため、例えば、証明写真における無彩色の背景色に対して、人物の肌の色のコントラストを予め強調することができる。従って、背景色の影響によって当該肌の色が暗く人間の視覚に写ってしまうことを防止することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、有彩色の色相毎のコントラスト変換の階調特性が異なるため、有彩色の色相毎に適切なコントラストの調整が行える。このため、例えば、証明写真において、人物の肌の色の他、服の色等も個別にコントラストを調整することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、主要色相毎のコントラスト変換の階調特性が異なるため、主要色相毎に適切なコントラストの調整が可能となる。このため、例えば、CIEのL*a*b*表色系における、黄色系、赤系、緑系及び青系の色相毎にコントラストを調整することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、原色系の色域に対するコントラスト変換と、肌色系の色域に対するコントラスト変換とのそれぞれの階調特性が異なるため、原色系の色域と肌色系の色域それぞれのコントラストを適切に調整することができる。このため、例えば、証明写真において、服の色と人物の肌の色とのコントラストを適切に調整することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、同一明度の無彩色及び有彩色の入力画像のコントラスト変換後に、無彩色の色域の明度が、有彩色の色域の明度よりも小さくなる。従って、無彩色の色域に対して有彩色の色域のコントラストを強調することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、同一明度の無彩色及び肌色系の入力画像のコントラスト変換後に、無彩色の色域の明度が、肌色系の色域の明度よりも小さくなる。従って、無彩色の色域に対して肌色系の色域のコントラストを強調することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6の何れか一項に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、コントラスト変換の対象とする色域の色相に対応する色変換テーブルを用いて当該変換を行うため、色相毎に色域を分割してから、その分割した色域に対してコントラスト変換を行うといった複雑な処理を行う必要がない。従って、色相毎のコントラスト変換の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔実施形態〕
以下、本発明の画像処理装置を制御装置に適応し、当該制御装置を具備する照明写真ボックスの実施形態について図1〜図12を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、証明写真ボックス100の概観図の一例である。同図ように、証明写真ボックス100は、ボックス型に形成されており、その外壁には撮影された証明写真を取り出す取出口17aが設置されている。ボックス内部(以下、撮影室という)には、被写体M用の椅子Cが昇降可能に設置されており、また、被写体Mの正面に操作手順やその他撮影に関するガイド映像等を表示する表示装置15、操作指示を入力するための入力装置14、被写体Mが撮影室内に入室したことを検知するための検知センサ13、撮影料金を精算するためのキャッシャー23が設置されている。また、撮影室の内壁には、被写体Mの上方、正面、背面、下方にそれぞれ照明用のストロボ24a〜24fが設置されている。
【0027】
図2は、証明写真ボックス100の主要構成の概略を示すブロック図である。同図のように、証明写真ボックス100は、カメラ1と、制御装置2と、プリンタ3とを備えて構成されている。
【0028】
カメラ1は、制御装置2からの指示に基づき撮影を行い、その撮影した被写体Mの人物画像データ(R,G,Bデータであり、以下、単に画像データと称する)を制御装置へ出力する。制御装置2は、カメラ1の撮影を制御するとともに、カメラ1から入力された画像データ(入力画像)に各種画像処理を施してプリンタ3へ出力する。
【0029】
プリンタ3は、制御装置2の画像処理後の画像データに従った画像を記録媒体(例えば、記録紙やフィルム)上に画像形成する。プリンタ3のプリント方式としては、色材を昇華、転移させて画像を形成する昇華型転写方式が適用されていることとして説明するが、記録媒体と受像材料とを重ね合わせて熱を加えることによって記録媒体の記録層を受像材料の受像層に転移させて画像を形成する溶融転写記録方式を適用することとしてもよいし、電子写真方式、インクジェット方式やその他のプリント方式であってもよい。また、銀塩写真像を形成するものであってもよい。
【0030】
図3は、制御装置2の内部構成の一例を示すブロック図である。同図のように、制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)21、RAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23、入力部24、表示部25、カメラ用I/F部26及びプリンタ用I/F部27がバス28に接続されて構成されている。
【0031】
CPU21は、制御装置2の各機能部への指示やデータの入出力等を行う。具体的には、ROM23に記憶されているプログラムを読み出し、RAM22に展開することで、当該プログラムに従った処理を実行して、制御装置2の各機能部を制御する。
【0032】
RAM22は、CPU21によって実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に保持する記憶領域である。
【0033】
ROM23は、制御装置2の動作に係る各種機能を実現するためのデータやプログラム(例えば、図4のフローチャートの処理を実現するためのプログラム)を格納する。図3によれば、ROM23は、述する3次元ルックアップテーブル(3D−LUT)群230を記憶している。尚、この3D−LUT群230が、無彩色変換手段、有彩色変換手段、色相毎変換手段等を実現する。
【0034】
入力部24は、カーソルキー、テンキー及び各種ファンクションキー等を有するキーボードやマウス等のポインティングデバイスを備え、ユーザにより押下されたキーの押下信号や、マウスの位置信号等をCPU21に出力する。尚、入力部24は、図1の入力装置14に相当するものである。
【0035】
表示部25は、CRT(Cathode-ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、CPU21から入力される表示データに基づいて各種画面を表示出力する。尚、表示部25は、図1の表示装置15に相当するものである。
【0036】
カメラ用I/F部26は、カメラ1とデータの入出力を行うためのインターフェースであり、プリンタ用I/F部27は、プリンタ3とデータの入出力を行うためのインターフェースである。カメラ用I/F部26及びプリンタ用I/F部27は、例えば、RS232C等のシリアルインターフェイスや、セントロニクスなどのパラレルインターフェイス、USB等により構成さる。
【0037】
図4は、制御装置2の具体的な動作の一例を表すフローチャートである。同図によれば、CPU21は、先ず、カメラ用I/F部を介してカメラ1から入力された入力画像にシャープネス調整、ノイズ除去等の画像処理を施す(ステップS1)。尚、このステップS1においては、グレーバランス調整処理、空間フィルタ処理、拡大/縮小処理等の各種画像処理を適宜行ってよい。
【0038】
次いで、ROM23に記憶されている3D−LUT群230を読み出し、当該3D−LUT群230を用いてコントラスト変換を行う(ステップS3)。CPU21は、コントラスト変換後の画像データに対して出力補正処理(例えば、ガンマ補正処理、画素数変更等)を施した後に(ステップS5)、プリンタ用I/F部27を介して画像処理後の画像データをプリンタ3へ出力する。
【0039】
次に、ステップS3における3D−LUT群230を用いたコントラスト変換について説明する。3D−LUTとは、入力画像の明度(入力明度)と、コントラスト変換(出力)後の画像データの明度(出力明度)とを対応付けて記憶する色変換テーブルである。ROM23は、CIE(国際照明委員会)で定められたL*a*b*表色系における色相毎に異なる階調特性を持つ3D−LUTを集合して3D−LUT群230として記憶している。
【0040】
CPU21は、3D−LUT群230の中から、入力画像中のコントラスト変換する画像領域の色相に対応する3D−LUTを選択し、その選択した3D−LUTを用いて、当該画像領域を変換することにより、カメラ1から入力された入力画像のコントラストを好ましいコントラストに変換する。
【0041】
図5に、CIEで定められたL*a*b*表色系を示す。同図において、L*は、明度を表しており、0〜100%の値で指定され、数値が大きいほど明るくなる。a*及びb*は、色度を表している。a*は、緑と赤の2色の混合比を表し、+の方向になるほど赤が強くなり、−の方向になるほど緑が強くなる。b*は、青と黄の2色の混合比を表し、+の方向になるほど黄が強くなり、−の方向になるほど青が強くなる。
【0042】
図6に、L*a*b*表色系における肌色系(赤黄色系)の色域を示す。肌色系の色域は、同図の5≦a*≦25、且つ5≦b*≦25の範囲Rを含む色域を、原点から略45°右上方向に延伸した楕円形ELの範囲で表される。
【0043】
この楕円形ELの色域の色は、例えば、同図の灰色系の色域GRや、青系の色域BLの色、特に明度の低い色や相反する色度の色と隣接する場合、一般に、人間の視覚には暗く写ってしまう。例えば、証明写真においては、背景色が灰色や青色であった場合、その背景色に囲まれた人間の顔や服の色は、当該背景色に影響されて(引っ張られて)暗くなってしまう。このように、カメラ1が撮影した画像データを、そのまま忠実に色再現して、プリンタ3で画像形成すると、隣接する色域の影響で有彩色の明度が低下してしまう。
【0044】
そこで、図4のステップS3における、3D−LUT群230を用いて入力画像を色相毎にコントラスト変換することで、肌色や服の色等のコントラストを強調する。
【0045】
図7は、肌色系の3D−LUT230aの階調特性L1の一例を表す図である。同図は、横軸に、肌色系色相の入力画像データの明度(入力L*値)、縦軸に変換(出力)後のデータの明度(出力L*値)をとっている。また、基準特性L0は、入力画像の明度を忠実に再現した場合の入力L*値と出力L*値の階調特性を表す。
【0046】
同図に示すように、3D−LUT230aは、全体に入力L*値<出力L*値となるように階調特性L1が設定されている。より具体的には、中高明度領域(60≦入力L*値≦80)のコントラストを最も大きくする(立てる)ように階調特性L1を設定する。この3D−LUT230aを用いてコントラスト変換をすることにより、入力画像を忠実に再現した場合に比べ、肌色系色相の色域の明度を高くして出力することができ、これにより、有彩色変換手段及び肌色変換手段が実現される。このため、例えば、グレーやブルーの背景色で撮影する証明写真においては、人物の顔画像が当該背景色に影響されて肉眼に暗く写ってしまうことを防止できる。
【0047】
図8は、灰色系の3D−LUT230bの階調特性L2の一例を表す図である。同図によれば、階調特性L2は、基準特性L0と略同一である。即ち、3D−LUT230bを用いてコントラスト変換を行うことにより、灰色系の無彩色の入力画像は、オリジナルの明度で色再現され、これにより、無彩色変換手段が実現される。
【0048】
尚、肌色系色相の3D−LUT230aの階調特性L1と、灰色系色相の3D−LUT230bの階調特性L2との設定方法は、次のようにすることで、肌色系の色域と、灰色系の色域のコントラストを適度に強調することができる。即ち、入力L*値が60〜80の範囲において、灰色系の出力L*値を肌色系の出力L*値よりも小さくし、且つ、肌色系の出力L*値と、灰色系の出力L*値との差ΔL*(出力L*値差)を、5〜10程度の値に設定する。
【0049】
図9は、青系の3D−LUT230cの階調特性L3の一例を表す図である。同図によれば、3D−LUT230cは、入力L*値全体に対して出力L*値が低くなるよう、即ち、オリジナルの入力画像に対して明度を下げて出力するように設定されている。
【0050】
図10は、緑系の3D−LUT230dの階調特性L4の一例を示す図である。同図によれば、3D−LUT230dは、入力L*値が0〜80において、入力L*値<出力L*値となるように階調特性L4が設定され、特に、40〜60の入力L*値の範囲において、入力L*値に対する出力L*値のコントラスト比が高くなるように設定されている。この3D−LUT230c及び230dと、CPU21の協働によって、主要色相毎変換手段や原色変換手段が実現される。尚、主要色相毎変換手段や原色変換手段が、コントラスト変換の対象とする色相は、青系や緑系に限らず、例えば、黄系や赤紫系等適宜適用可能である。
【0051】
このように、色相毎に異なる階調特性を持つ3D−LUTを用いてコントラスト変換を行うことにより、色相毎にコントラストを高めたり、低めたりすることができる。
【0052】
図11は、3D−LUT群230を用いてコントラスト変換した際の、同一L*値の各色相の入力L*値と、当該入力L*値に対する出力L*値との関係を表す図である。同図は、原点からの長さで出力L*値を表し、原点から放射状に向かう方向で色相を表している。
【0053】
同図において、入力画像中の同一明度として、色域毎の入力L*値が“20”である場合の出力L*値を等高線CT20によって表し、同様に入力L*値が“40”、“60”及び“80”に対する出力L*値を、等高線CT40、CT60及びCT80それぞれによって表している。
【0054】
例えば、等高線CT20は、入力L*値が“20”であるのに対して、肌色系及び緑系の色域のコントラストを高め、赤青系の色域のコントラストを低めていることを表している。また、肌色系の色域は、入力L*値が上がるにつれて、出力L*値も高くなっているため、肌色系の色域の明度が強調される。これに対して、青色系の色相は、“20〜80”の全域の入力L*値に対して出力L*値が低い。
【0055】
従って、各色相の色域が同一の明度を持つ画像データが入力された場合に、青色系の色域を暗めに、肌色系及び緑系の色域を明るめにコントラストを調整することができる。このため、例えば、背景色を灰色や青色にした証明写真において、顔の肌色や服の緑色の明度を予め高めておくことで、その背景色よるコントラストの影響を抑えることができる。
【0056】
図12は、画像処理開発に従事する研究員5名(評価者A〜E)の証明写真の実写画像の目視評価結果を示すものである。当該評価は、「○」を「きわめて良い」、「△」を「普通、まあまあ」、「×」を「悪い」とした3段階評価によって行うこととした。
【0057】
また、評価対象の証明写真は、証明写真ボックスにおいて、人物の顔画像の撮影を行い、得られた画像データにコントラスト変換を行った後、色材を昇華、転移させて画像を形成する昇華型転写方式のプリンタで出力した。
【0058】
尚、コントラスト変換時は、入力L*値を“60”とした同一明度の肌色系と灰色系との出力L*値の差ΔL*と、入力L*値を“80”とした同一明度の肌色系と灰色系との出力L*値の差ΔL*とのそれぞれを、図11の第1〜第5パターンのような組み合わせで設定した。また、評価者5人のうち、「×」と評価した者がいない場合に、人物の肌色と、灰色の背景とのコントラストがはっきりした好ましい結果が得られたとして判定する。
【0059】
同図に示すように、第1パターンにおいて、入力L*値=60におけるΔL*を“10.5”、入力L*値=80におけるΔL*を“11.7”に設定した場合、即ち、コントラスト変換後の灰色系の明度が、肌色系の明度よりも低い場合、評価者3人が「○」、2人が「△」と評価しており、好ましい照明写真が得られることが検証できた。
【0060】
また、第2パターンにおいて、入力L*値=60におけるΔL*を“5.3”、入力L*値=80におけるΔL*を“7.2”に設定した場合、評価者2人が「○」、3人が「△」と評価しており、好ましい照明写真が得られることが検証できた。
【0061】
また、第3パターンにおいて、入力L*値=60におけるΔL*を“0.8”、入力L*値=80におけるΔL*を“−1.1”に設定した場合、即ち、コントラスト変換後の灰色系の明度が、肌色系の明度と略一致する場合、評価者1人が「○」、2人が「△」、2人が「×」と評価しており、あまり好ましくない証明写真が得られた。
【0062】
また、第4パターンにおいて、入力L*値=60におけるΔL*を“−3.2”、入力L*値=80におけるΔL*を“−2.9”に設定した場合、即ち、コントラスト変換後の灰色系の明度が、肌色系の明度よりも高い場合、評価者2人が「△」、3人が「×」と評価しており、目の錯覚によって人物の肌色が背景の灰色の影響で暗く肉眼に映り、好ましくない照明写真が得られた。また、第5パターンにおいては、評価者全員が「×」と評価しており、好ましくない証明写真であった。
【0063】
このように、同一の入力L*値の入力画像に対して、ΔL*を5〜10に設定することで、人間の視覚にとって適度なコントラストを持つ証明写真を得ることができた。
【0064】
尚、コントラスト変換後の灰色系の明度を、肌色系の明度よりも小さくするだけでなく、例えば、当該灰色系の明度を、赤系や青系、黄色系等の他の有彩色のコントラスト変換後の明度よりも小さくすることで、同様の効果が得られるのは無論である。
【0065】
以上、本実施形態によれば、入力画像のコントラスト変換を行う際、色相毎に階調特性の異なる3D−LUTのうちの、当該変換を行う画像データの色域の色相に対応する3D−LUTを選択して、その選択した3D−LUTを用いてコントラスト変換を行う。これにより、入力画像中の色域のコントラストを色相毎に個別に調整することができる。また、コントラスト変換を行う色域の色相に対応する3D−LUTを用いて、コントラスト変換を行えばよく、画像データ中の色域を抽出・分離する必要がない。従って、色相毎のコントラスト変換を高速に処理することができる。
【0066】
尚、本実施形態において、画像処理装置を証明写真ボックス100の制御装置2に適用することとしたが、デジタルカメラやスキャナ等の画像読取装置に適用してもよい。例えば、デジタルカメラに適用した際は、上述したように人物の顔や服装の色のコントラストを高めるようにコントラスト変換してもよいし、空の青色に対する山の緑色や、草原の緑色に対する花の色、夜空に対する月及び星の色のコントラストを高めるように、隣接する色域の色相によってコントラストの変換対象を適宜変更可能にしてもよい。
【0067】
また、色相毎のコントラスト変換の階調特性は、図7〜10のような階調特性に限られず適宜変更可能である。即ち、入力画像が風景画像である場合は、肌色系のコントラストを低めるように図7の3D−LUT230aの階調特性を設定してもよいし、また、海や空といった青を基調とした入力画像であった場合は、青系のコントラストを高めるように図9の3D−LUT230cの階調特性を設定してもよい。
【0068】
また、本発明の画像処理装置を制御装置2に適用することとしたが、例えば、カメラ1の制御部に適用することとしてもよい。制御装置2に入力される画像データは、デジタルデータあり、当該データは離散的数値であるため、アナログデータをデジタルデータにA/D変換する際に、情報の一部が欠落したり、当該情報の正確さが失われてしまう。そこで、カメラ1が撮影した画像データをA/D変換する前段で、そのアナログデータの画像データに対して本実施形態と同様のコントラスト変換を行うことで、コントラストの調整精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態における照明写真ボックスの概観図の一例。
【図2】証明写真ボックスの主要構成の概略の一例を示すブロック図。
【図3】本発明を適用した制御装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【図4】制御装置の基本動作を説明するためのフローチャート。
【図5】CIEのL*a*b*表色系を表す図。
【図6】L*a*b*表色系における肌色系、灰色系及び青色系の色域を示す図。
【図7】肌色系の3次元ルックアップテーブルの階調特性の一例を示す図。
【図8】灰色系の3次元ルックアップテーブルの階調特性の一例を示す図。
【図9】青系の3次元ルックアップテーブルの階調特性の一例を示す図。
【図10】緑系の3次元ルックアップテーブルの階調特性の一例を示す図。
【図11】色相毎の入力L*値と出力L*値の関係の一例を表す図。
【図12】証明写真の実写画像の目視評価結果を示す図。
【符号の説明】
【0070】
100 証明写真ボックス
1 カメラ
2 制御装置
21 CPU
22 RAM
23 ROM
230 3次元ルックアップテーブル群
24 入力部
25 表示部
26 カメラ用I/F部
27 プリンタ用I/F部
28 バス
3 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像中の無彩色の色域に対してコントラスト変換を行う無彩色変換手段と、
前記入力画像中の有彩色の色域に対してコントラスト変換を行う有彩色変換手段と、
を備え、
前記無彩色変換手段のコントラスト変換の階調特性と、前記有彩色変換手段のコントラスト変換の階調特性とが異なることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記有彩色変換手段は、
前記有彩色の色相毎の色域それぞれに対してコントラスト変換を行う色相毎変換手段を有し、
前記色相毎変換手段の色相毎のコントラスト変換の階調特性が異なることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記有彩色変換手段は、
前記入力画像中の主要色相毎の色域に対してコントラスト変換を行う主要色相毎変換手段を有し、
前記主要色相毎変換手段の主要色相毎のコントラスト変換の階調特性が異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記有彩色変換手段は、
前記入力画像中の原色系の色相の色域に対してコントラスト変換を行う原色変換手段と、
前記入力画像中の肌色系の色相の色域に対してコントラスト変換を行う肌色変換手段と、
を有し、
前記原色変換手段及び前記肌色変換手段それぞれのコントラスト変換の階調特性が異なることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記入力画像中の、同一明度の無彩色及び有彩色の色域において、
前記無彩色変換手段の変換後の明度が、前記有彩色変換手段の変換後の明度よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記入力画像中の、同一明度の無彩色及び肌色系の色域において、
前記無彩色変換手段による変換後の明度が、前記肌色変換手段の変換後の明度よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載に画像処理装置。
【請求項7】
前記コントラスト変換は、当該変換の対象とする色域の色相に対応する色変換テーブルを用いて行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
入力画像中の無彩色の色域に対してコントラスト変換を行う無彩色変換ステップと、
前記入力画像中の有彩色の色域に対してコントラスト変換を行う有彩色変換ステップと、
を含み、
前記無彩色変換ステップにおけるコントラスト変換の階調特性と、前記有彩色変換ステップにおけるコントラスト変換の階調特性とが異なることを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−186898(P2006−186898A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380836(P2004−380836)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】