説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】キーストーン補正部を備えた画像処理装置において、画像データ量を削減しつつも画質低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】入力された画像を投写表示するために画像データを処理する画像処理装置であって、キーストーン補正部がキーストーン補正を行う場合は、データ圧縮・復号部の少なくとも1つが、画像データに対し圧縮を行い、圧縮された画像データを対応するフレームメモリーに格納し、キーストーン補正部がキーストーン補正を行わない場合は、データ圧縮・復号部は、画像データに対し圧縮を行わずに、画像データを対応するフレームメモリーに格納する、画像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された画像データを投写表示するために処理する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターは、画像をスクリーン上に投写表示するために画像データに所定の処理を行う画像処理装置を備える。画像処理装置は、画像データの解像度を所望の解像度に変換する拡大/縮小回路(「解像度変換部」や「スケーラー」ともいう。)や、スクリーン上に投写された画像に台形歪みが生じる場合に、台形歪みを補正するために台形歪み補正(「キーストーン補正」ともいう。)を行う台形歪み補正回路(「キーストーン補正部」ともいう。)等を備える。また、処理対象の画像データを格納するための画像メモリー(「フレームメモリー」ともいう。)を備える(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−230991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解像度の変換やキーストーン補正等の各種処理は、フレームメモリーに格納された画像データを読み出して実行することが多い。しかしながら、画像データ量が多くなると、フレームメモリーへの書き込みや読み出しのアクセス頻度が多くなり、画像処理速度の低下を招くこととなる。よって、画像データ量を削減することが望まれていた。
【0005】
画像データ量を削減する方法としては、画像データを圧縮する方法が知られている。しかしながら、画像データを圧縮する場合、復号された画像にブロックノイズが発生する等の画質低下を招く恐れがある。この画質低下は、圧縮率が高くなる程顕著になる。
【0006】
上記に挙げた問題は、プロジェクターに用いる画像処理装置によって画像データに対し所定の処理を行う場合に限らず、コンピュータ等によって画像データに対し所定の処理を行う場合についても同様に発生する問題であった。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記した課題を踏まえ、キーストーン補正部を備えた画像処理装置において、画像データ量を削減しつつも画質低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1] 入力された画像を投写表示するために画像データを処理する画像処理装置であって、投写面上に表示される画像に歪みが発生する場合に、前記歪みを補正するように前記画像データに対しキーストーン補正を行うキーストーン補正部と、前記キーストーン補正部の前段又は後段に少なくとも1つ配置されたフレームメモリーと、前記フレームメモリーの少なくとも1つに対応して設けられた、前記画像データを前記フレームメモリーに格納する前に、前記画像データに対し圧縮を行うと共に、前記フレームメモリーから読み出された圧縮された画像データを復号する少なくとも1つのデータ圧縮・復号部と、を備え、前記キーストーン補正部がキーストーン補正を行う場合は、前記データ圧縮・復号部の少なくとも1つが、前記画像データに対し圧縮を行い、圧縮された画像データを対応する前記フレームメモリーに格納し、前記キーストーン補正部がキーストーン補正を行わない場合は、前記データ圧縮・復号部は、前記画像データに対し圧縮を行わずに、前記画像データを対応する前記フレームメモリーに格納する、画像処理装置。
適用例1の画像処理装置によれば、キーストーン補正を行う場合は、画像データに対し圧縮を行うため、画像データ量を削減することができる。さらに、画像データの圧縮及び復号による画質低下は、キーストーン補正により抑制することができる。この理由は、キーストーン補正は、画像データを平滑化する効果を有するので、画像データの圧縮及び復号による画質低下を抑制することができるからである。
【0010】
[適用例2] 適用例1に記載の画像処理装置であって、前記キーストーン補正部が行うキーストーン補正の補正量が大きくなる程、前記データ圧縮・復号部での圧縮率を高くする、画像処理装置。
補正量の大きいキーストーン補正は、入力された画像の高周波成分をより一層低減させることができる。よって、適用例2の画像処理装置によれば、画像データの圧縮率を高くしてもキーストーン補正を行うことで画質の劣化を抑制することができる。このことから、画像データ量をより一層削減しつつも、画質の劣化を抑制することができる。
【0011】
[適用例3] 適用例1又は適用例2に記載の画像処理装置であって、前記フレームメモリーの内の1つが、前記キーストーン補正の実行前の画像データを格納するキーストーン用フレームメモリーとして使用され、前記キーストーン補正部がキーストーン補正を行う場合は、前記キーストーン用フレームメモリーに対応するデータ圧縮・復号部(以下、「キーストーン用データ圧縮・復号部」という。)が、前記画像データに対し圧縮を行い、圧縮された画像データを前記キーストーン用フレームメモリーに格納する場合において、前記キーストーン補正が縦方向のキーストーン補正のみの場合は、前記キーストーン用データ圧縮・復号部は、前記画像データに対し水平方向の1ラインを構成する画素からなるラインデータを単位として圧縮を行い、前記キーストーン補正が横方向のキーストーン補正を含む場合は、前記キーストーン用データ圧縮・復号部は、前記画像データに対しブロック状の画素からなるブロックデータを単位として圧縮を行う、画像処理装置。
適用例3の画像処理装置によれば、画像データの圧縮方法を変えることで、前記キーストーン補正部が、キーストーン補正後の各画素に対応するキーストーン補正前の画素の画素データを効率良くキーストーン用フレームメモリーから読み出すことができる。このため、キーストーン補正を高速に行うことができる。なお、縦方向のキーストーン補正(以下、「縦キーストーン補正」という。)とは、スクリーン上に投写された垂直方向に生じた台形歪みを補正するためのキーストーン補正をいう。さらに、横方向のキーストーン補正(以下、「横キーストーン補正」という。)とは、スクリーン上に投写された水平方向に生じた台形歪みを補正するためのキーストーン補正をいう。
【0012】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、上述した画像処理装置としての構成のほか、上述したいずれかの構成の画像処理装置を備えたプロジェクターや、画像処理方法、それらの装置又は方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記憶媒体等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像処理装置の第1実施例としてのプロジェクター10の構成を示す図である。
【図2】第1実施例のビデオプロセッサー31の内部構成を示すブロック図である。
【図3】プロジェクター10の設定動作を示す説明図である。
【図4】ステップS30で行われる設定動作を示す図である。
【図5】第1データ圧縮・復号部302の内部構成を示すブロック図である。
【図6】縦キーストーン補正の概念を説明するための図である。
【図7】第2実施例のビデオプロセッサー31aの内部の構成を示すブロック図である。
【図8】横キーストーン補正の概念を説明するための図である。
【図9】第2実施例におけるプロジェクターの設定動作の内、ステップS30で行われる設定動作を示す図である。
【図10】第3実施例のビデオプロセッサー31bの内部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.変形例:
【0015】
A.第1実施例:
図1は、本発明の画像処理装置の第1実施例としてのプロジェクター10の構成を示す図である。プロジェクター10は、画像入力インターフェース(I/F)部20と、画像処理部30と、液晶パネル駆動部40と、液晶パネル50と、照明光学系60と、投写光学系70と、制御部80とを備えている。なお、画像処理部30と制御部80とが、本発明の画像処理装置に相当する。
【0016】
画像入力I/F部20は、入力された画像データVInをデジタル信号に変換し、画像処理部30にデジタル化された画像データDInを出力する。
【0017】
画像処理部30は、ビデオプロセッサー31と2つのフレームメモリー32,34を備える。ビデオプロセッサー31は、入力された画像データDInに対し画像処理を行い画像処理後の画像データDOutを出力する。また、フレームメモリー32は画像データDInを格納し、フレームメモリー34は後述する画像処理後の画像データを格納する。なお、ビデオプロセッサー31の内部の構成及び動作については後述する。
【0018】
液晶パネル駆動部40は、画像データDOutの画素値(RGB諧調値)に応じて液晶パネル50を駆動させる。液晶パネル50は、照明光学系60から射出された照明光を、画素値に応じて変調させる。投写光学系70は、液晶パネル50を透過した光を投写スクリーンSC上に拡大投写する。
【0019】
制御部80は、図示しないCPUやメモリーを含み、メモリーに記憶されている制御プログラムを読み込んで実行し、画像入力I/F部20、ビデオプロセッサー31、液晶パネル駆動部40の動作を制御する。
【0020】
図2は、第1実施例のビデオプロセッサー31の内部構成を示すブロック図である。ビデオプロセッサー31は、2つのフレームメモリー制御部306,316と、2つのフレームメモリー32,34に対応して設けられた2つのデータ圧縮・復号部302,312と、解像度変換部308と、キーストーン補正部310とを備えている。なお、第1実施例のビデオプロセッサー31は、縦キーストーン補正のみを行う機能を備えている。
【0021】
第1フレームメモリー制御部306は、画像データDIn,Denを第1フレームメモリー32に書き込むと共に、書き込んだ画像データDIn,Denを読み出して解像度変換部308に出力する。
【0022】
第1データ圧縮・復号部302は、キーストーン補正部310により縦キーストーン補正が行われる場合に、画像データDInに対し圧縮を行い、圧縮後の画像データDenを第1フレームメモリー32に出力すると共に、第1フレームメモリー32から読み出された画像データDenを復号し、復号後の画像データDdeを解像度変換部308に出力する。一方、縦キーストーン補正が行われない場合は、画像データDInは圧縮されずに第1フレームメモリー32に書き込まれる。
【0023】
解像度変換部308は、画像データDInの解像度を予め設定された液晶パネル50の解像度に等しい解像度に変換し、変換後の画像データDpを、キーストーン補正部310へ出力する。また、解像度変換部308に予め設定されるパネル解像度に変換するためのデータは、後述する動作設定時に制御部80(図1参照)から供給される。
【0024】
キーストーン補正部310は、解像度変換部308から入力される画像データDpに対して縦キーストーン補正を行い、縦キーストーン補正後の画像データDkを第2フレームメモリー34へ出力する。縦キーストーン補正を行わない場合は、キーストーン補正部310は、画像データDpを第2フレームメモリー34へ出力する。また、キーストーン補正部310に予め設定される縦キーストーン補正のためのデータ(以下、「縦キーストーン補正データ」という。)は、後述する動作設定時に制御部80(図1参照)から供給される。
【0025】
第2フレームメモリー制御部316は、キーストーン補正部310で縦キーストーン補正が行われた画像データDk又は縦キーストーン補正が行われなかった画像データDp(すなわち、解像度変換のみを行った画像データDp)を第2フレームメモリー34に書き込むと共に、書き込んだ画像データDen,Dpを読み出して画像データDOutとして液晶パネル駆動部40(図1参照)へ出力する。
【0026】
第2データ圧縮・復号部312は、キーストーン補正部310により縦キーストーン補正が行われる場合は、画像データDkに対し圧縮を行い、圧縮後の画像データDenを第2フレームメモリー34に出力すると共に、読み出された画像データDenを復号し、復号後の画像データDdeを液晶パネル駆動部40へ出力する。また、縦キーストーン補正が行われない場合は、画像データDpは圧縮されずに第2フレームメモリー34に書き込まれ、書き込まれた画像データDpが読み出され液晶パネル駆動部40へ出力される。
【0027】
ここで、第1実施例のプロジェクター10は、第1フレームメモリー32及び第2フレームメモリー34を備えている。これにより、2つのフレームメモリー32,34の間で行われる解像度の変換や縦キーストーン補正は、液晶パネル駆動部40の水平同期信号に同期させる必要がない。よって、解像度の変換や縦キーストーン補正は、液晶パネル駆動部40の垂直同期信号のみに同期させて画像処理を行うことができるので、処理性能を向上させることができる。なお、フレームメモリーのメモリー容量を低減させる点から言えば、第2フレームメモリー34、第2フレームメモリー制御部316、第2データ圧縮・復号部312は設けなくても良い。
【0028】
図3はプロジェクター10の設定動作を示す説明図である。このプロジェクター10の設定動作は、プロジェクターの電源投入により開始される初期設定時の所定のタイミングで、制御部80によって開始される。
【0029】
設定動作が開始されると、まず入力画像の解像度を検出する(ステップS10)。次に、液晶パネル50の解像度に変換するための解像度変換用データを求めて解像度変換部308に設定する(ステップ20)。次に、縦キーストーン補正及びデータ圧縮・復号の設定をする(ステップ30)。なお、ステップS30の詳細は後述する。そして、ステップS20,S30において設定された動作条件に基づいて、各ブロックを動作させ、投写動作を実行する(ステップS40)。
【0030】
次に、入力・設定の変更の判断(ステップS50)、及び、動作停止の判断(ステップS60)を行う。ユーザーによる外部からの入力や、この入力による設定の変更又は制御部80が自動的に実行する設定の変更もなく、動作停止でもない場合には、既にステップS20,S30で設定されている動作条件で投写動作を実行し続ける。入力あるいは設定の変更があった場合には、ステップS10に戻って、種々の設定動作を再度実行後、設定し直した動作条件で投写動作を実行する。そして、動作停止の場合には、この設定動作を終了する。
【0031】
図4は、ステップS30で行われる設定動作を示す図である。ステップS20の設定が行われると、次にキーストーン補正のための投写スクリーンSCの位置を検出し(ステップS302)、検出した結果を元に、縦キーストーン補正を行うかどうかの判断を行う(ステップS304)。
【0032】
縦キーストーン補正を行う場合には、以下の設定動作を続けて行う。まず、第1及び第2データ圧縮・復号部302,312を使用する設定をする(ステップS306)。次に、縦キーストーン補正のための縦キーストーン補正データをキーストーン補正部310に設定し(ステップS308)、ステップS40において投写動作が実行される。つまり、縦キーストーン補正を行う場合は、フレームメモリー32,34には、第1及び第2データ圧縮・復号部302,312で圧縮が行われた画像データDenが格納されることになる。
【0033】
一方、縦キーストーン補正を行わない場合には、第1及び第2データ圧縮・復号部302,312を使用しない設定をし(ステップS312)、ステップS40において投写動作が実行される。つまり、縦キーストーン補正を行わない場合は、フレームメモリー32,34には圧縮が行われていない画像データDIn,Dpが格納されることになる。
【0034】
図5は、第1データ圧縮・復号部302の内部構成を示すブロック図である。ここでは、第1データ圧縮・復号部302の内部構成ついて説明を行うが、第2データ圧縮・復号部312についても同様の内部構成である。第1データ圧縮・復号部302は、ラインデータを単位として画像データの圧縮・復号を行うライン単位圧縮・復号部302aと、ブロックデータを単位として画像データの圧縮・復号を行うブロック単位圧縮・復号部302bと、切換部302c,dとを有している。切換部302c,dでライン単位圧縮・復号部302aとブロック単位圧縮・復号部302bの使用を切換えることができる。第1実施例では、ライン単位圧縮・復号部302aのみを利用して画像データの圧縮・復号を行うことが好ましい。理由は後述する。なお、第1実施例では、ブロック単位圧縮・復号部302bを設けなくても良い。
【0035】
ラインデータを単位とした画像データの圧縮・復号は、例えば予測差分符号化を利用することができる。また、ブロックデータを単位とした画像データの圧縮・復号は、例えばJPEG(Joint Photographic Coding Experts Group)を利用することができる。また、ライン単位圧縮・復号部画像302a及びブロック単位圧縮・復号部302bでの圧縮率は可変であり、キーストーン補正の補正量が大きくなる程、画像データの圧縮率を高くすることが好ましい。
【0036】
図6は、縦キーストーン補正の概念を説明するための図である。ラインデータを単位とした画像データの縦キーストーン補正は、あおり投写によって生じた台径歪みを補正するために行う処理であり、補正後の画像(縦キーストーン補正後画像)を液晶パネル50に表示させることで台形歪みを補正する。縦キーストーン補正では、通常は、垂直補間(ライン間補間)と水平補間が行われるため、これらの補間により、画像が平滑化される。また、縦キーストーン補正では、元画像の1ライン分〜数ライン分の画像データを読み出して処理を行えば良いため、画像データに対しラインデータを単位として圧縮を行い、圧縮後の画像データをフレームメモリーに格納しておけば、処理に必要なラインデータのみを容易に読み出すことができる。なお、図6では、一例として、縦キーストーン補正後画像の1ライン分の画像データを処理するために、元画像2ライン分の画像データを読み出す態様を示している。
【0037】
以上述べたように、解像度変換部308及びキーストーン補正部310で画像処理を行うに際し、画像処理に必要となる画像データを、圧縮した画像データ単位で読み出し、処理後の画像データを圧縮して第2フレームメモリー34に書き込むため、画像データ量が多い場合であっても読み出しや書き込みの画像データ量を削減することができる。よって、第1及び第2フレームメモリー32,34への書き込みや読み出しのアクセス頻度を減らし、画像処理速度の低下を防止することができる。また、画像データの圧縮及び復号により画質の低下を招く恐れがあるが、縦キーストーン補正により画像データDkが平滑化されることで、入力された画像の高周波成分が低減しているため、画質の低下を抑制することができる。
【0038】
B.第2実施例:
図7は、第2実施例のビデオプロセッサー31aの内部の構成を示すブロック図である。第1実施例との違いは、第2実施例のビデオプロセッサー31aは、縦キーストーン補正及び横キーストーン補正の双方を行う機能を備えている点である。このため、第1実施例との構成上の違いは、解像度変換部308とキーストーン補正部310との間に、第3フレームメモリー36、第3フレームメモリー制御部376、第3データ圧縮・復号部372を新たに設けた点である。なお、第1フレームメモリー制御部306等の構成については、第1実施例と同様の構成であるため、同様の構成については、同一符号で示すと共に説明を省略する。さらに、ビデオプロセッサー以外のプロジェクターの構成(液晶パネル駆動部40等)は第1実施例と同様の構成である。
【0039】
ここで、図7を用いて第2実施例を説明する前に、第3フレームメモリー36を設ける理由を、図8を用いて説明する。図8は、横キーストーン補正の概念を説明するための図である。横キーストーン補正は、図8(B)に示した横キーストーン補正後の画像を生成するために、補正後の画像の水平方向のラインに対応する画像データを、元画像の画像データから斜め方向に画像データを読み出す必要がある。例えば、図8(B)の矢印で示した水平方向1ラインの画像を生成するために、図8(A)の画像データを矢印で示したように斜め方向に読み出す必要がある。これに対して、解像度変換部308は、第1フレームメモリー32に格納された画像データを順次走査により読み出して解像度の変換を行う。よって、画像データの読み出し方向が、解像度変換部308とキーストーン補正部310とで異なるため、キーストーン補正部310が画像データを斜め方向に読み出すための画像データを格納する第3フレームメモリー36を設けている。
【0040】
第2実施例の第3フレームメモリー制御部376は、横キーストーン補正を含むキーストーン補正が行われる場合は、解像度変換部308から出力された画像データDpを第3フレームメモリー36に書き込むと共に、書き込んだ画像データDenを読み出してキーストーン補正部310に出力する。なお、横キーストーン補正を含むキーストーン補正が行われない場合(つまり、縦キーストーン補正のみの場合又はいずれのキーストーン補正も行われない場合)は、解像度変換部308から出力された画像データDpは、第3フレームメモリー36に書き込まれることなく、キーストーン補正部310へ直接出力される。
【0041】
横キーストーン補正を含むキーストーン補正を行う場合は、第3データ圧縮・復号部372で行う画像データDpの圧縮は、M×N個(ブロック状)の画素からなるブロックデータを単位とすることが好ましい。このように圧縮すれば、横キーストーン補正を行う際に、斜め方向への画素データの読み出しを、ブロック単位で行うことができ、横キーストーン補正を含むキーストーン補正を高速に行うことができるからである。この場合において、第1及び第2データ圧縮・復号部302,312で行う画像データの圧縮は、M×N個の画素からなるブロック単位で行っても良いし、第1実施例と同様にライン単位で行っても良い。また、縦キーストーン補正のみをキーストーン補正部310で行う場合は、第1実施例と同様に、第1データ圧縮・復号部302で行う画像データDInの圧縮は、水平方向の1ラインを構成する画素からなるラインデータを単位とすることが好ましい。なお、横キーストーン補正を含むキーストーン補正を行う場合における第3フレームメモリー36及び第3データ圧縮・復号部372、縦キーストーン補正のみを行う場合における第1フレームメモリー32及び第1データ圧縮・復号部302がそれぞれ本発明のキーストーン用フレームメモリー及びキーストーン用データ圧縮・復号部に相当する。
【0042】
図9は、第2実施例におけるプロジェクターの設定動作の内、ステップS30で行われる設定動作を示す図である。第1実施例との違いは、ステップS324〜ステップS334が新たに追加された点である。また、その他のプロジェクターの設定動作(ステップS10等、図3参照)は、第1実施例と同様であるため説明を省略する。なお、ステップS30の内、ステップS302〜ステップS312は、第1実施例と同様であることから、ここでは、ステップS324〜ステップS334の動作設定についてのみ説明を行う。
【0043】
縦キーストーン補正の有無の判断及び縦キーストーン補正の動作設定が行われると(ステップS302〜ステップS312)、次にステップS302で検出した結果を元に、横キーストーン補正を行うかどうかの判断を行う(ステップ324)。横キーストーン補正を行う場合には、まず、第3データ圧縮・復号部372を使用する設定をする(ステップS326)。次に、横キーストーン補正のための横キーストーン補正データをキーストーン補正部310に設定をし(ステップS328)、ステップS40において投写動作が実行される。
【0044】
一方、横キーストーン補正を行わない場合には、第3データ圧縮・復号部372及び第3フレームメモリー36を使用しない設定をし(ステップ332及びステップ334)、ステップS40において投写動作が実行される。
【0045】
以上述べたように、第2実施例は、画像データを圧縮することで、画像データ量を削減することができ、画像処理速度の低下を防止することができる。さらに、キーストーン補正を行うことで画質低下についても抑制することができる。
【0046】
C.第3実施例:
図10は、第3実施例のビデオプロセッサー31bの内部の構成を示すブロック図である。第1実施例との構成上の違いは、第1フレームメモリー32b、第1フレームメモリー制御部306b、第1データ圧縮・復号部302bの前段に、解像度変換部308bを配置した点である。第3実施例のビデオプロセッサー31bは、第2実施例同様、縦キーストーン補正及び横キーストーン補正の双方を行う機能を備えている。また、解像度変換部308bは解像度変換に必要な数ライン分の画像データを格納するラインバッファ(図示せず)を備えている。なお、第2フレームメモリー制御部316等の構成については、第1実施例と同様の構成であるため、同様の構成については、同一符号で示すと共に説明を省略する。さらに、ビデオプロセッサー以外のプロジェクターの構成(液晶パネル駆動部40等)は上記実施例と同様の構成である。
【0047】
第1フレームメモリー制御部306bは、キーストーン補正が行われる場合は、解像度変換部308bから出力された画像データDpを第1フレームメモリー32bに書き込むと共に、書き込んだ画像データDenを読み出してキーストーン補正部310に出力する。一方、キーストーン補正が行われない場合は、解像度変換部308bから出力された画像データDpは、第1フレームメモリー32bに書き込まれることなく、キーストーン補正部310へ直接出力される。
【0048】
第1データ圧縮・復号部302bは、キーストーン補正部310が縦キーストーン補正のみを行う場合は、ライン単位で圧縮を行い、横キーストーン補正を含むキーストーン補正を行う場合は、M×N個(ブロック状)の画素からなるブロック単位で圧縮を行うことが好ましい。なお、第2データ圧縮・復号部312で行う圧縮は、第1データ圧縮・復号部302bで行う圧縮方式に対応させる必要はなく任意の圧縮方式を採用することができる。ここで、第1フレームメモリー32b及び第1データ圧縮・復号部302bが本発明のキーストーン用フレームメモリー及びキーストーン用データ圧縮・復号部に相当する。
【0049】
D.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0050】
D−1.第1変形例:
上記実施例では、キーストーン補正を行う場合は、全てのデータ圧縮・復号部302,302b,312,372が画像データの圧縮を行うように動作を設定したが、複数あるデータ圧縮・復号部のうち、いずれか一つのデータ圧縮・復号部のみが画像データを圧縮するように設定しても良い。いずれか一つのデータ圧縮・復号部のみが画像データを圧縮する場合であっても、画像データを圧縮しない場合に比べ、画像データ量を削減することができるからである。また、データ圧縮及び復号による画質低下はキーストーン補正により抑制することができるからである。
【0051】
D−2.第2変形例:
上記実施例では、それぞれのフレームメモリーに対応してデータ圧縮・復号部を設けたが、これに代えて、少なくとも1つのフレームメモリーに対応してデータ圧縮・復号部を設けても良い。少なくとも1つのデータ圧縮・復号部で画像データを圧縮すれば、画像データを圧縮しない場合に比べ、画像データ量を削減することができるからである。また、データ圧縮及び復号による画質低下はキーストーン補正により抑制することができるからである。
【0052】
D−3.第3変形例:
上記実施例では、キーストーン補正を行う場合は、キーストーン補正前の画像データに圧縮及び復号を行ったが、これに代えて、キーストーン補正前の画像データに対しては圧縮及び復号を行なわず、キーストーン補正後の画像データDkに対してのみ圧縮及び復号を行っても良い。キーストーン補正により予め平滑化された画像データDkに対し圧縮及び復号を行うことで、データ圧縮及び復号による画質の低下を抑制することができるからである。
【符号の説明】
【0053】
10…プロジェクター
20…画像入力I/F部
30,30a,30b…画像処理部
31,31a,31b…ビデオプロセッサー
32…第1フレームメモリー
32b…第1フレームメモリー
34…第2フレームメモリー
36…第3フレームメモリー
40…液晶パネル駆動部
50…液晶パネル
60…照明光学系
70…投写光学系
80…制御部
302…第1データ圧縮・復号部
302a…ライン単位圧縮・復号部
302b…ブロック単位圧縮・復号部
302c,d…切換部
306,306b…第1フレームメモリー制御部
308,308b…解像度変換部
310…キーストーン補正部
312…第2データ圧縮・復号部
316…第2フレームメモリー制御部
372…第3データ圧縮・復号部
376…第3フレームメモリー制御部
SC…投写スクリーン
VIn…入力された画像データ
DIn…デジタル化された画像データ
DOut…画像処理後の画像データ
Dk…キーストーン補正後の画像データ
Dp…解像度変換後の画像データ
Den…圧縮された画像データ
Dde…復号された画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像を投写表示するために画像データを処理する画像処理装置であって、
投写面上に表示される画像に歪みが発生する場合に、前記歪みを補正するように前記画像データに対しキーストーン補正を行うキーストーン補正部と、
前記キーストーン補正部の前段又は後段に少なくとも1つ配置されたフレームメモリーと、
前記フレームメモリーの少なくとも1つに対応して設けられた、前記画像データを前記フレームメモリーに格納する前に、前記画像データに対し圧縮を行うと共に、前記フレームメモリーから読み出された圧縮された画像データを復号する少なくとも1つのデータ圧縮・復号部と、を備え、
前記キーストーン補正部がキーストーン補正を行う場合は、前記データ圧縮・復号部の少なくとも1つが、前記画像データに対し圧縮を行い、圧縮された画像データを対応する前記フレームメモリーに格納し、
前記キーストーン補正部がキーストーン補正を行わない場合は、前記データ圧縮・復号部は、前記画像データに対し圧縮を行わずに、前記画像データを対応する前記フレームメモリーに格納する、
画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記キーストーン補正部が行うキーストーン補正の補正量が大きくなる程、前記データ圧縮・復号部での圧縮率を高くする、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記フレームメモリーの内の1つが、前記キーストーン補正の実行前の画像データを格納するキーストーン用フレームメモリーとして使用され、
前記キーストーン補正部がキーストーン補正を行う場合は、前記キーストーン用フレームメモリーに対応して設けられたデータ圧縮・復号部(以下、「キーストーン用データ圧縮・復号部」という。)が、前記画像データに対し圧縮を行い、圧縮された画像データを前記キーストーン用フレームメモリーに格納する場合において、
前記キーストーン補正が縦方向のキーストーン補正のみの場合は、前記キーストーン用データ圧縮・復号部は、前記画像データに対し水平方向の1ラインを構成する画素からなるラインデータを単位として圧縮を行い、
前記キーストーン補正が横方向のキーストーン補正を含む場合は、前記キーストーン用データ圧縮・復号部は、前記画像データに対しブロック状の画素からなるブロックデータを単位として圧縮を行う、
画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像処理装置を備えたプロジェクター。
【請求項5】
入力された画像を投写表示するために画像データを処理する画像処理方法であって、
投写面上に表示される画像の歪みを補正するように前記画像データに対しキーストーン補正を行う場合は、前記画像データに対し圧縮を行い、圧縮された画像データをフレームメモリーに格納し、
前記キーストーン補正を行わない場合は、前記画像データに対し圧縮を行わずに前記画像データを前記フレームメモリーに格納する、
画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−183328(P2010−183328A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24636(P2009−24636)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】