画像処理装置及び画像処理方法
【課題】撮影者からの遠近に応じた立体的な絵画風画像を得ることを可能とする。
【解決手段】撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎に測定し(S102)、この撮影された画像に含まれている複数の被写体別の輪郭を抽出する(S105)。一方で、撮影された画像に含まれている複数の被写体を絵画風画像に絵画変換処理を行う(S107)。抽出された輪郭毎に、測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施し(S110)、この被印刷媒体上に施こされた立体層上に、絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施し(S111)、より一層、遠近感のある絵画風画像を得る。
【解決手段】撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎に測定し(S102)、この撮影された画像に含まれている複数の被写体別の輪郭を抽出する(S105)。一方で、撮影された画像に含まれている複数の被写体を絵画風画像に絵画変換処理を行う(S107)。抽出された輪郭毎に、測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施し(S110)、この被印刷媒体上に施こされた立体層上に、絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施し(S111)、より一層、遠近感のある絵画風画像を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影された画像を絵画風の画像に変換する画像処理装置及び画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタルカメラにあっては、複数の測距点の中から所望の測距点を選択することで目的の被写体に焦点を合わせることができ、よって、目的の被写体に焦点を合わせた画像を撮影することができる。
【0003】
一方、画家の描いた絵画に見られる特徴を擬似的に再現した絵画風画像を作成する変換技術が提案されるに至っている(例えば下記特許文献1参照)。したがって、前記デジタルカメラで撮影した画像を、前記変換技術を用いて絵画風画像に変換することも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−213598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記変換技術にあっては、画像全体に対して、特定の画家の描いた絵画に見られる特徴を擬似的に再現する。したがって、画像中に撮影者からの距離が異なる複数の被写体が存在する場合であっても、各被写体は同一の特徴で画像変換がなされてしまう。したがって、画像中に撮影距離の異なる複数の被写体が存在する場合、各被写体が撮影距離に応じた異なる態様で画像変換された画像を得ることはできない。また、立体感のある絵画風画像を得ることもできない。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、撮影者から見た立体感のある被写体と同様な立体感のある絵画風画像を迅速かつ容易に得ることが可能な画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1記載の発明に係る画像処理装置にあっては、
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、
この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎
に測定する測距手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理手段により変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出手段と、
この抽出手段により抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御手段と、
この第1の制御手段の制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理手段により絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明に係る画像処理装置にあっては、請求項1記載の画像処理装置において、
前記絵画変換処理手段は、前記輪郭抽出手段により抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明に係る画像処理装置にあっては、請求項2記載の画像処理装置において、
前記線図変換処理手段は、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い
線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換す
る線図別変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理手段により変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明に係る画像処理方法にあっては、
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎に測定する測距手段とを備えている画像処理装置に用いられる画像処理方法において、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理ステップと、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理ステップにより変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出ステップと、
この抽出ステップにより抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御ステップと、
この第1の制御ステップの制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理ステップにより絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御ステップと、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明に係る画像処理方法にあっては、請求項4記載の画像処理方法において、
前記絵画変換処理ステップは、前記輪郭抽出ステップにより抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御ステップを備えていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明に係る画像処理方法にあっては、請求項5記載の画像処理方法において、
前記線図変換処理ステップは、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換する線図別変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理ステップにより変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御ステップを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撮影者から見た立体感のある被写体と同様な立体感のある絵画風画像を迅速かつ容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係るデジタルカメラの外観を示す背面図である。
【図2】同デジタルカメラの電気的構成の概略を示すブロック構成図である。
【図3】RAMのメモリ構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態における処理手順を示すフローチャートである。
【図5】(A)は絵画風変換処理、(B)は立体印刷処理、(C)は絵画風画像の印刷処理の手順をそれぞれ示すフローチャートである。
【図6】撮影画像の全体の一例を示す図である。
【図7】撮影画像の輪郭線L及びこれに囲まれた部分を示す図である。
【図8】変換された絵画風画像の一例を示す図である。
【図9】(A)は立体印刷処理後の状態を示す平面図、(B)は図9(A)のIX−IXの断面図である。
【図10】(A)は絵画風画像の印刷処理後の状態を示す平面図、(B)は図10(A)のX―Xの断面図である。
【図11】(A)は変形例に係る絵画風画像の印刷後の状態を示す平面図、(B)は図11(A)のXI―XIの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るデジタルカメラ1の外観を示す背面図である。
【0016】
このデジタルカメラ1の背面には、メニューキー2、モードダイアル3、液晶モニタ4、カーソルキー5、SETキー6、印刷部7A等が設けられている。また、上面にはシャッターキー8、電源ボタン9が設けられている。なお、側部には図示されていないが、パーソナルコンピュータ(以下、パソコン)やモデム等の外部装置とUSBケーブルに接続する場合に用いるUSB端子接続部が設けられ、正面側に後述する撮像レンズ12が設けられている。
【0017】
図2は、デジタルカメラ1の電気的構成の概略を示すブロック構成図である。
デジタルカメラ1は、撮像手段であるCCD10を備えるとともに、CCD10により撮像した画像を圧縮・伸張し、所定フォーマット、例えば統一規格DCF(Design rule for Camera File system)やJPEG(Joint Photographic Expert Group)に合致するフォーマットの画像ファイルを生成・再生する画像処理機能を備えたCPU11を中心に構成されている。
デジタルカメラ1は、撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎に測定する測距手段(図示せず)を備えている。
【0018】
CCD10の受光面には、撮像レンズ12、フォーカスレンズ13、絞り14を通過して被写体の光学像が結像される。フォーカスレンズ13はAFモータ等からなる駆動機構15に保持されており、CPU11からの制御信号によりAFドライバー16が出力する駆動信号が駆動機構15に供給されることにより光軸上を前後に移動する合焦動作を行う。絞り14は、CPU11からの制御信号に基づき絞り駆動部17が発生する駆動信号により駆動しCCD10に入射する被写体像の光量を調整する。
また、CPU11には、タイミング信号を発生するTG(Timing Generator)18が接続されており、TG18が発生したタイミング信号に基づきVドライバー19(垂直方向ドライバー)がCCD10を駆動し、それに伴いCCD10により被写体像の輝度に応じたアナログの撮像信号が出力されユニット回路20へ送られる。
【0019】
ユニット回路20は、CCD10から出力された撮像信号を保持するCDSと、CDSから撮像信号を供給されるアナログアンプであるゲイン調整アンプ(AGC)と、ゲイン調整アンプで増幅され調整されたアナログの撮像信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(AD)とからなり、CCD10の出力信号は、ここで黒レベルを合わせてサンプリングされデジタル信号としてCPU11に送られる。ゲイン調整アンプ(AGC)は、後述するISO感度に応じた増幅率で、CDSから供給される撮像信号を増幅する。
【0020】
CPU11には、シャッターキー8を含む前記キー群をからなる操作キー部21、前記液晶モニタ4、RAM22、ROM23、フラッシュメモリ24が接続されている。
【0021】
RAM22は作業用のメモリであり、フラッシュメモリ24は画像記録用のメモリである。CCD10からCPU11に送られたデジタル信号(撮像信号)は、RAM22に一時保存されるとともに、CPU11によって各種の画像処理が施された後、最終的には圧縮された画像データとしてフラッシュメモリ24に記録される。なお、フラッシュメモリ24はカメラ本体に着脱自在なカード型のものであってもよい。
【0022】
フラッシュメモリ24に記録された画像データは、必要に応じてCPU11に読み出され、伸長処理、輝度信号及び色信号の付加等の処理を経てデジタルビデオ信号やアナログビデオ信号に変換され、液晶モニタ4によって表示される。また液晶モニタ4には、記録モードにおいて周期的に撮像された画像がスルー画像として表示される。
【0023】
ROM23は、CPU11における各部の制御及びデータ処理に必要な各種の動作プログラムが記録されたプログラムROMである。すなわち、ROM23には、前記プログラムとともに、撮影時の適正な露出値に対応するISO感度とシャッタースピードとの組み合わせを示すプログラム線図等の各種データが格納されている。
【0024】
CPU11は、前記プログラム線図に従い、シャッタースピードである前記CCD10の電荷蓄積時間や、前記絞り14の開放度、前記ユニット回路20のゲイン調整アンプ(AGC)のゲインの制御によるAE制御を行うとともに、所定のプログラムに従い前記フォーカスレンズ13を駆動するAF(オートフォーカス)制御、AWB(オートホワイトバランス)制御を行う。また、フラッシュメモリ24は、撮影された画像データ等が記録される。
【0025】
また、ROM23には、フォーカス設定テーブルが格納されている。測距手段を用いてデジタルカメラ1から被写体までの距離である被写体距離を取得するに際しては、周知のコントラストAF方式によりフォーカスレンズ13のフォーカス制御を行う。そして、そのときの撮像レンズ12のズーム比とフォーカスレンズ13の位置とから、ROM23に予め記憶してあるフォーカス設定テーブルを使用して被写体距離を取得する。
【0026】
RAM22内には、図3に示す絵画風変換データエリア221が設けられている。この絵画風変換データエリア221には、第1記憶部222、第2記憶部223、第3記憶部224、及び第4記憶部227が設けられている。第2記憶部223は、被写体画像記憶部225と座標記憶部226とに区分されている。
【0027】
第1記憶部222には、後述する絵画風画像変化モードで撮影された撮影画像が全体画像として記憶される。第2記憶部223の被写体画像記憶部225には、全体画像から抽出された被写体の画像である被写体画像が記憶され、座標記憶部226には、当該被写体画像の全体画像中における位置を示す位置座標が記憶される。また、第3記憶部224には、前記被写体画像のデジタルカメラ1からの距離がメートル単位[m]で記憶されるとともに、複数の被写体画像中で距離が近い(短い)順に(1番目)、(2番目)・・・のように、距離順位も記憶される。第4記憶部227は、最終的な絵画風画像を生成する際に使用される記憶領域である。
なお、座標記憶部226に被写体画像の全体画像中における位置を示す位置座標は、当該被写体画像の全域内の全てのドットの座標、輪郭のみの座標、その他複数点の座標等、当該被写体画像の全体画像中における位置を特定できる複数の座標であれば、どのような座標であってもよい。
【0028】
印刷部7Aは、測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施す立体印刷処理と、この立体印刷処理の後に、複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層上に、さらに、変換された絵画風画像を印刷する絵画風画像の印刷処理とを行う機能を有する。前者の立体印刷処理は、紫外線硬化材料を印刷し、紫外線硬化層を形成するための紫外線硬化層印刷部(図示せず)を備えており、後者の絵画風画像の印刷処理は、公知の画像を印刷するインクジェット、感熱記録等の印刷部(図示せず)を備えている。
紫外線照射部7Bは、印刷部7Aにより印刷された紫外線硬化層に対し紫外線を照射し、紫外線硬化層を硬化させる紫外線硬化機能を有する。
【0029】
以上の構成に係る本実施の形態において、デジタルカメラ1はCPU11がROM23に格納されているプログラムに従って処理を実行することにより、図4のフローチャートに示す立体絵画風画像処理を実行する。
【0030】
すなわち、ユーザーがこのデジタルカメラ1を携帯し、例えば図6に示す被写体「A山」、「B山」、「C山」が存在するシーンでシャッターキー8を押下すると、CPU11は撮影処理を開始する(ステップS101)。そして、これら被写体「A山」、「B山」、「C山」別の距離を測定して、RAM22の絵画風変換データエリア221における第3記憶部224に記憶する(ステップS102)。
【0031】
この被写体別の距離の測定に際しては、前述のように周知のコントラストAF方式によりフォーカスレンズ13のフォーカス制御を行い、順次「A山」、「B山」、「C山」を合焦させ、そのときの撮像レンズ12のズーム比とフォーカスレンズ13の位置とから、ROM23に予め記憶してあるフォーカス設定テーブルを使用して被写体距離を取得する。したがって、このステップS102での処理により、図3に示したように、「A山」の測定距離「a」、「B山」の測定距離「b」、「C山」の測定距離「c」がメートル単位[m]でRAM22の絵画風変換データエリア221における第3記憶部224に記憶される。
【0032】
このとき、この第3記憶部224への測定距離の記憶は、前述のように複数の被写体画像中で距離が近い(短い)順に(1番目)、(2番目)・・・のように、距離順位も記憶する。
【0033】
なお、本実施の形態においては、距離と距離順位との双方を記憶するようにしたが、距離のみ、あるいは距離順位のみであってもよい。距離順位のみを記憶するようにした場合には、被写体の相対的な距離関係が検出できればよいことから、精度よく被写体までの距離を検出する必要がなく、低い検出精度で処理を行うことができる。
【0034】
しかる後に、CPU11は、CCD10上に結像された被写体画像を取り込んで全体画像とし、RAM22の絵画風変換データエリア221における第1記憶部222に記憶する(ステップS103)。これにより、絵画風変換データエリア221の第1記憶部222は、図6に示した「A山」、「B山」、「C山」を有する画像が全体画像Zとして記憶される。
【0035】
次に、CPU11は、撮影画像表示処理を実行して、液晶モニタ4に撮影した画像を表示させる(ステップS104)。これにより、液晶モニタ4には、図6に示した全体画像Zが表示される。
【0036】
引き続き、CPU11は、全体画像Zにおいて被写体別の輪郭を抽出する(ステップS105)。この被写体別の輪郭抽出に際しては、図7に示すように、全体画像Zの画像データの輝度信号及び色差信号から、近い輝度又は色差信号別に、同系色の色相別等に領域を分割し、さらに、領域の境界線となる輪郭線Lを抽出し、この輪郭線Lで囲まれた部分を一つの抽出領域として検出する。
【0037】
さらに、この抽出した被写体別の画像を被写体画像として、絵画風変換データエリア221における第2記憶部223の被写体画像記憶部225に記憶するとともに、各被写体画像の全体画像Z内における位置座標を第2記憶部223の座標記憶部226に記憶する(ステップS106)。これにより、図3に示すように、絵画風変換データエリア221における第2記憶部223の被写体画像記憶部225には、「A山」、「B山」、「C山」の被写体画像が記憶され、座標記憶部226には、「A山」の位置座標(x1,y1)・・・、「B山」の位置座標(x2,y2)・・・、「C山」の位置座標(x3,y3)・・・が記憶される。
【0038】
次に、CPU11は、絵画風変換処理を実行する(ステップS107)。
【0039】
図5(A)は、絵画風変換処理(ステップS107)の処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
まず、測定距離が1番目に短い被写体画像の輪郭を太い線図に変換し、かつ、この太い線図に変換した輪郭内の画像部分を消去する(ステップS201)。これにより、図8に示すように、輪郭のみが太い線31で描かれた「A山」の絵画風被写体画像32が生成される。
【0041】
次に、測定距離が2番目に短い被写体画像の輪郭を普通の太い線図(1番目よりは細いが3番目よりは太い線図)に変換し、かつ、この普通の太い線図に変換した輪郭内の画像部分を消去する(ステップS202)。これにより、図8に示すように、輪郭のみが普通の太い線33で描かれた「B山」の絵画風被写体画像34が生成される。
【0042】
さらに、測定距離が3番目に短い被写体画像の輪郭を細い線図(2番目よりは細いが4番目よりは太い線図)に変換し、かつ、この細い線図に変換した輪郭内の画像部分を消去する(ステップS203)。これにより、図8に示すように、輪郭のみが細い線35で描かれた「C山」の絵画風被写体画像36が生成される。
【0043】
以下同様にして、被写体画像の測定距離が大きくなるほど、輪郭を細い線図に変換し、かつ、変換した輪郭内の画像部分を消去する。
【0044】
そして、全ての被写体画像を輪郭のみの絵画風被写体画像に変換したならば、各絵画風被写体画像32、34、36・・・を合成する(ステップS204)。
【0045】
すなわち、図3に示すように、絵画風変換データエリア221における第2記憶部223の座標記憶部226には、「A山」の位置座標(x1,y1)・・・、「B山」の位置座標(x2,y2)・・・、「C山」の位置座標(x3,y3)・・・が記憶されている。したがって、CPU11は、第4記憶部227にて、「A山」の位置座標(x1,y1)・・・が示す位置に、「A山」の絵画風被写体画像32を配置する。また、「B山」の位置座標(x2,y2)・・・が示す位置に、「B山」の絵画風被写体画像34を配置し、「C山」の位置座標(x3,y3)・・・が示す位置に、「C山」の絵画風被写体画像36を配置して合成する。
【0046】
これにより、第4記憶部227には、図8に示すように、「A山」の絵画風被写体画像32と、「B山」の絵画風被写体画像34及び「C山」の絵画風被写体画像36を、図6に示す全体画像Zにおける「A山」、「B山」、「C山」に対応した位置に配置した絵画風画像P1が生成される。
【0047】
そして、図4のフローチャートにおいて、ステップS107に続くステップS108にて、絵画風画像の表示処理を実行し、生成した絵画風画像を液晶モニタ4に表示させる。これにより、液晶モニタ4には、図8に示した絵画風画像P1が表示されることとなる。
【0048】
この表示される絵画風画像P1にあっては、被写体までの距離に応じて、各被写体がそれぞれ異なる太さの線31、33、35のみで描かれた、水墨画的な画像である。したがって、本実施の形態によれば、撮影者からの遠近に応じて、異なる太さの線図変換処理、いわば墨絵的なアート変換処理を自動的にかつ容易に施した絵画風画像を生成して、液晶モニタ4に表示させてくれるので、遠近感がより強調された絵画風画像を迅速かつ容易に観賞することができる。
【0049】
しかる後に、この表示させた絵画風画像をフラッシュメモリ24に記憶する(ステップS109)。これにより、墨絵的なアート処理が施された絵画風画像を、後日、フラッシュメモリ24から読み出して、液晶モニタ4に表示させて観賞することもできる。
【0050】
次に、CPU11は、立体印刷処理を実行する(ステップS110)。
【0051】
図5(B)は、立体印刷処理(ステップS110)の処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
まず、測定距離が1番目に短い被写体画像の輪郭内は被印刷基板P上に厚く、光硬化層F1で印刷部7Aを用いて施す(ステップS301)。これにより、図9(A)及び図9(B)に示すように、輪郭のみが太い線31で描かれた「A山」の絵画風被写体画像32の全体が被印刷基板P上に厚く光硬化層F1で施される。被印刷基板Pは、絵画に用いられている市販のキャンバス、布地、普通紙、プラスチック板、金属板、木版などを用いる。
【0053】
次に、測定距離が2番目に短い被写体画像の輪郭内は被印刷基板P上にやや厚く(1番目よりは厚くないが3番目よりは厚く)、光硬化層F2で印刷部7Aを用いて施す(ステップS302)。これにより、図9(A)及び図9(B)に示すように、輪郭のみが普通の太い線33で描かれた「B山」の絵画風被写体画像34の全体が被印刷基板P上に厚く光硬化層F2で施される。
【0054】
さらに、測定距離が3番目に短い被写体画像の輪郭内は被印刷基板P上に薄く(2番目よりは厚くないが4番目よりは厚く)、光硬化層F3で印刷部7Aを用いて施す(ステップS303)。これにより、図9(A)及び図9(B)に示すように、輪郭のみが細い線35で描かれた「C山」の絵画風被写体画像36の全体が被印刷基板P上に厚く光硬化層F3で施される。
以下同様にして、被写体画像の測定距離が大きくなるほど、輪郭内の全域を薄くなるように、光硬化層Fnによる印刷処理を施す。
【0055】
次に、CPU11は、各光硬化層F1〜F3等の全体に対する紫外線照射処理を実行する(ステップS111)。この紫外線照射処理は、紫外線照射部7Bを駆動制御し、印刷部7Aにより印刷された紫外線硬化層の全面に対し紫外線を照射し、紫外線硬化層を硬化させる。
【0056】
次に、CPU11は、絵画風画像の印刷処理を実行する(ステップS112)。
【0057】
図5(C)は、絵画風画像の印刷処理(ステップS112)の処理手順を示すフローチャートである。
【0058】
まず、測定距離が1番目に短い被写体画像の輪郭内の全体に厚く施された立体層である光硬化層F1上に、絵画変換処理された絵画風被写体画像の部分を、印刷部7Aを用いて施す。すなわち、CPU11は、第4記憶部227にて、「A山」の位置座標(x1,y1)・・・が示す位置に、対応する「A山」の絵画風被写体画像32を、印刷部7Aを用いて施す(ステップS401)。これにより、図10(A)及び図10(B)に示すように、「A山」の絵画風被写体画像32の全体が、被印刷基板P上に厚く施されている光硬化層F1上にさらに印刷処理が施される。
【0059】
次に、測定距離が2番目に短い被写体画像の輪郭内の全体にやや厚く施された立体層である光硬化層F2上に、絵画変換処理された絵画風被写体画像の部分を、印刷部7Aを用いて施す。すなわち、CPU11は、「B山」の位置座標(x2,y2)・・・が示す位置に、対応する「B山」の絵画風被写体画像34を、印刷部7Aを用いて施す(ステップS402)。これにより、図10(A)及び図10(B)に示すように、「B山」の絵画風被写体画像34の全体が、被印刷基板P上に厚く施されている光硬化層F2上にさらに印刷処理が施される。
【0060】
さらに、測定距離が3番目に短い被写体画像の輪郭内の全体に薄く施された立体層である光硬化層F3上に、絵画変換処理された絵画風被写体画像の部分を、印刷部7Aを用いて施す。すなわち、CPU11は、「C山」の位置座標(x3,y3)・・・が示す位置に、対応する「C山」の絵画風被写体画像36を、印刷部7Aを用いて施す(ステップS403)。これにより、図10(A)及び図10(B)に示すように、「C山」の絵画風被写体画像36の全体が、被印刷基板P上に薄く施されている光硬化層F3上にさらに印刷処理が施される。
【0061】
以下同様にして、被写体画像の測定距離が大きくなるほど、輪郭内の全域を薄くなるように施された光硬化層F1〜Fn上に、対応する絵画風被写体画像部分が、印刷部7Aを用いて施される。
【0062】
この印刷された絵画風画像P1にあっては、被写体までの距離に応じて、各被写体がそれぞれ厚さの異なる立体層である光硬化層F1〜Fn上に描かれた水墨画的な画像を得ることができる。したがって、本実施の形態によれば、撮影者からの遠近に応じて、遠近感がより強調された絵画風画像を迅速かつ容易に観賞することができる。
【0063】
図11は、変形例を示す。
この変形例は、図9のステップS301〜S303において、図11(A)及び図11(B)に示すように、各輪郭内のうち、上部は厚く、下部に向かうに従って薄くなるように光硬化層F1〜F3を印刷している。このように印刷された光硬化層F1〜F3の上面に、対応する絵画風被写体画像部分32、34、36が、印刷部7Aを用いて施される。これにより、輪郭がより強調された立体絵画風画像を得ることができる。
【0064】
なお、本実施の形態においては、撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像それぞれの輪郭を抽出し、この抽出された輪郭毎に、測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施し、その後、この被印刷媒体上に施こされた立体層上に、絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御しているが、撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行い、この変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出し、この抽出された輪郭毎に、測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施し、この被印刷媒体上に施こされた立体層上に、絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御してもよい。
また、本発明をデジタルカメラに適用した場合を示したが、デジタルカメラに限らず、撮影手段を備えるものであれば携帯電話等の他の機器に適用するようにしてもよい。
【0065】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、
この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎
に測定する測距手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理手段により変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出手段と、
この抽出手段により抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御手段と、
この第1の制御手段の制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理手段により絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
<請求項2>
前記絵画変換処理手段は、前記輪郭抽出手段により抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
<請求項3>
前記線図変換処理手段は、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換する線図別変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理手段により変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
<請求項4>
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎に測定する測距手段とを備えている画像処理装置に用いられる画像処理方法において、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理ステップと、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理ステップにより変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出ステップと、
この抽出ステップにより抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御ステップと、
この第1の制御ステップの制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理ステップにより絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御ステップと、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
<請求項5>
前記絵画変換処理ステップは、前記輪郭抽出ステップにより抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御ステップを備えていることを特徴とする請求項4記載の画像処理方法。
<請求項6>
前記線図変換処理ステップは、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換する線図別変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理ステップにより変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御ステップを備えていることを特徴とする請求項5記載の画像処理方法。
【符号の説明】
【0066】
1 デジタルカメラ
4 液晶モニタ
7A 印刷部
7B 紫外線照射部
10 CCD
11 CPU
21 操作キー部
22 RAM
23 ROM
24 フラッシュメモリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影された画像を絵画風の画像に変換する画像処理装置及び画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタルカメラにあっては、複数の測距点の中から所望の測距点を選択することで目的の被写体に焦点を合わせることができ、よって、目的の被写体に焦点を合わせた画像を撮影することができる。
【0003】
一方、画家の描いた絵画に見られる特徴を擬似的に再現した絵画風画像を作成する変換技術が提案されるに至っている(例えば下記特許文献1参照)。したがって、前記デジタルカメラで撮影した画像を、前記変換技術を用いて絵画風画像に変換することも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−213598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記変換技術にあっては、画像全体に対して、特定の画家の描いた絵画に見られる特徴を擬似的に再現する。したがって、画像中に撮影者からの距離が異なる複数の被写体が存在する場合であっても、各被写体は同一の特徴で画像変換がなされてしまう。したがって、画像中に撮影距離の異なる複数の被写体が存在する場合、各被写体が撮影距離に応じた異なる態様で画像変換された画像を得ることはできない。また、立体感のある絵画風画像を得ることもできない。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、撮影者から見た立体感のある被写体と同様な立体感のある絵画風画像を迅速かつ容易に得ることが可能な画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1記載の発明に係る画像処理装置にあっては、
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、
この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎
に測定する測距手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理手段により変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出手段と、
この抽出手段により抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御手段と、
この第1の制御手段の制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理手段により絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明に係る画像処理装置にあっては、請求項1記載の画像処理装置において、
前記絵画変換処理手段は、前記輪郭抽出手段により抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明に係る画像処理装置にあっては、請求項2記載の画像処理装置において、
前記線図変換処理手段は、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い
線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換す
る線図別変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理手段により変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明に係る画像処理方法にあっては、
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎に測定する測距手段とを備えている画像処理装置に用いられる画像処理方法において、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理ステップと、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理ステップにより変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出ステップと、
この抽出ステップにより抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御ステップと、
この第1の制御ステップの制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理ステップにより絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御ステップと、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明に係る画像処理方法にあっては、請求項4記載の画像処理方法において、
前記絵画変換処理ステップは、前記輪郭抽出ステップにより抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御ステップを備えていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明に係る画像処理方法にあっては、請求項5記載の画像処理方法において、
前記線図変換処理ステップは、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換する線図別変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理ステップにより変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御ステップを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撮影者から見た立体感のある被写体と同様な立体感のある絵画風画像を迅速かつ容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係るデジタルカメラの外観を示す背面図である。
【図2】同デジタルカメラの電気的構成の概略を示すブロック構成図である。
【図3】RAMのメモリ構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態における処理手順を示すフローチャートである。
【図5】(A)は絵画風変換処理、(B)は立体印刷処理、(C)は絵画風画像の印刷処理の手順をそれぞれ示すフローチャートである。
【図6】撮影画像の全体の一例を示す図である。
【図7】撮影画像の輪郭線L及びこれに囲まれた部分を示す図である。
【図8】変換された絵画風画像の一例を示す図である。
【図9】(A)は立体印刷処理後の状態を示す平面図、(B)は図9(A)のIX−IXの断面図である。
【図10】(A)は絵画風画像の印刷処理後の状態を示す平面図、(B)は図10(A)のX―Xの断面図である。
【図11】(A)は変形例に係る絵画風画像の印刷後の状態を示す平面図、(B)は図11(A)のXI―XIの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るデジタルカメラ1の外観を示す背面図である。
【0016】
このデジタルカメラ1の背面には、メニューキー2、モードダイアル3、液晶モニタ4、カーソルキー5、SETキー6、印刷部7A等が設けられている。また、上面にはシャッターキー8、電源ボタン9が設けられている。なお、側部には図示されていないが、パーソナルコンピュータ(以下、パソコン)やモデム等の外部装置とUSBケーブルに接続する場合に用いるUSB端子接続部が設けられ、正面側に後述する撮像レンズ12が設けられている。
【0017】
図2は、デジタルカメラ1の電気的構成の概略を示すブロック構成図である。
デジタルカメラ1は、撮像手段であるCCD10を備えるとともに、CCD10により撮像した画像を圧縮・伸張し、所定フォーマット、例えば統一規格DCF(Design rule for Camera File system)やJPEG(Joint Photographic Expert Group)に合致するフォーマットの画像ファイルを生成・再生する画像処理機能を備えたCPU11を中心に構成されている。
デジタルカメラ1は、撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎に測定する測距手段(図示せず)を備えている。
【0018】
CCD10の受光面には、撮像レンズ12、フォーカスレンズ13、絞り14を通過して被写体の光学像が結像される。フォーカスレンズ13はAFモータ等からなる駆動機構15に保持されており、CPU11からの制御信号によりAFドライバー16が出力する駆動信号が駆動機構15に供給されることにより光軸上を前後に移動する合焦動作を行う。絞り14は、CPU11からの制御信号に基づき絞り駆動部17が発生する駆動信号により駆動しCCD10に入射する被写体像の光量を調整する。
また、CPU11には、タイミング信号を発生するTG(Timing Generator)18が接続されており、TG18が発生したタイミング信号に基づきVドライバー19(垂直方向ドライバー)がCCD10を駆動し、それに伴いCCD10により被写体像の輝度に応じたアナログの撮像信号が出力されユニット回路20へ送られる。
【0019】
ユニット回路20は、CCD10から出力された撮像信号を保持するCDSと、CDSから撮像信号を供給されるアナログアンプであるゲイン調整アンプ(AGC)と、ゲイン調整アンプで増幅され調整されたアナログの撮像信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(AD)とからなり、CCD10の出力信号は、ここで黒レベルを合わせてサンプリングされデジタル信号としてCPU11に送られる。ゲイン調整アンプ(AGC)は、後述するISO感度に応じた増幅率で、CDSから供給される撮像信号を増幅する。
【0020】
CPU11には、シャッターキー8を含む前記キー群をからなる操作キー部21、前記液晶モニタ4、RAM22、ROM23、フラッシュメモリ24が接続されている。
【0021】
RAM22は作業用のメモリであり、フラッシュメモリ24は画像記録用のメモリである。CCD10からCPU11に送られたデジタル信号(撮像信号)は、RAM22に一時保存されるとともに、CPU11によって各種の画像処理が施された後、最終的には圧縮された画像データとしてフラッシュメモリ24に記録される。なお、フラッシュメモリ24はカメラ本体に着脱自在なカード型のものであってもよい。
【0022】
フラッシュメモリ24に記録された画像データは、必要に応じてCPU11に読み出され、伸長処理、輝度信号及び色信号の付加等の処理を経てデジタルビデオ信号やアナログビデオ信号に変換され、液晶モニタ4によって表示される。また液晶モニタ4には、記録モードにおいて周期的に撮像された画像がスルー画像として表示される。
【0023】
ROM23は、CPU11における各部の制御及びデータ処理に必要な各種の動作プログラムが記録されたプログラムROMである。すなわち、ROM23には、前記プログラムとともに、撮影時の適正な露出値に対応するISO感度とシャッタースピードとの組み合わせを示すプログラム線図等の各種データが格納されている。
【0024】
CPU11は、前記プログラム線図に従い、シャッタースピードである前記CCD10の電荷蓄積時間や、前記絞り14の開放度、前記ユニット回路20のゲイン調整アンプ(AGC)のゲインの制御によるAE制御を行うとともに、所定のプログラムに従い前記フォーカスレンズ13を駆動するAF(オートフォーカス)制御、AWB(オートホワイトバランス)制御を行う。また、フラッシュメモリ24は、撮影された画像データ等が記録される。
【0025】
また、ROM23には、フォーカス設定テーブルが格納されている。測距手段を用いてデジタルカメラ1から被写体までの距離である被写体距離を取得するに際しては、周知のコントラストAF方式によりフォーカスレンズ13のフォーカス制御を行う。そして、そのときの撮像レンズ12のズーム比とフォーカスレンズ13の位置とから、ROM23に予め記憶してあるフォーカス設定テーブルを使用して被写体距離を取得する。
【0026】
RAM22内には、図3に示す絵画風変換データエリア221が設けられている。この絵画風変換データエリア221には、第1記憶部222、第2記憶部223、第3記憶部224、及び第4記憶部227が設けられている。第2記憶部223は、被写体画像記憶部225と座標記憶部226とに区分されている。
【0027】
第1記憶部222には、後述する絵画風画像変化モードで撮影された撮影画像が全体画像として記憶される。第2記憶部223の被写体画像記憶部225には、全体画像から抽出された被写体の画像である被写体画像が記憶され、座標記憶部226には、当該被写体画像の全体画像中における位置を示す位置座標が記憶される。また、第3記憶部224には、前記被写体画像のデジタルカメラ1からの距離がメートル単位[m]で記憶されるとともに、複数の被写体画像中で距離が近い(短い)順に(1番目)、(2番目)・・・のように、距離順位も記憶される。第4記憶部227は、最終的な絵画風画像を生成する際に使用される記憶領域である。
なお、座標記憶部226に被写体画像の全体画像中における位置を示す位置座標は、当該被写体画像の全域内の全てのドットの座標、輪郭のみの座標、その他複数点の座標等、当該被写体画像の全体画像中における位置を特定できる複数の座標であれば、どのような座標であってもよい。
【0028】
印刷部7Aは、測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施す立体印刷処理と、この立体印刷処理の後に、複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層上に、さらに、変換された絵画風画像を印刷する絵画風画像の印刷処理とを行う機能を有する。前者の立体印刷処理は、紫外線硬化材料を印刷し、紫外線硬化層を形成するための紫外線硬化層印刷部(図示せず)を備えており、後者の絵画風画像の印刷処理は、公知の画像を印刷するインクジェット、感熱記録等の印刷部(図示せず)を備えている。
紫外線照射部7Bは、印刷部7Aにより印刷された紫外線硬化層に対し紫外線を照射し、紫外線硬化層を硬化させる紫外線硬化機能を有する。
【0029】
以上の構成に係る本実施の形態において、デジタルカメラ1はCPU11がROM23に格納されているプログラムに従って処理を実行することにより、図4のフローチャートに示す立体絵画風画像処理を実行する。
【0030】
すなわち、ユーザーがこのデジタルカメラ1を携帯し、例えば図6に示す被写体「A山」、「B山」、「C山」が存在するシーンでシャッターキー8を押下すると、CPU11は撮影処理を開始する(ステップS101)。そして、これら被写体「A山」、「B山」、「C山」別の距離を測定して、RAM22の絵画風変換データエリア221における第3記憶部224に記憶する(ステップS102)。
【0031】
この被写体別の距離の測定に際しては、前述のように周知のコントラストAF方式によりフォーカスレンズ13のフォーカス制御を行い、順次「A山」、「B山」、「C山」を合焦させ、そのときの撮像レンズ12のズーム比とフォーカスレンズ13の位置とから、ROM23に予め記憶してあるフォーカス設定テーブルを使用して被写体距離を取得する。したがって、このステップS102での処理により、図3に示したように、「A山」の測定距離「a」、「B山」の測定距離「b」、「C山」の測定距離「c」がメートル単位[m]でRAM22の絵画風変換データエリア221における第3記憶部224に記憶される。
【0032】
このとき、この第3記憶部224への測定距離の記憶は、前述のように複数の被写体画像中で距離が近い(短い)順に(1番目)、(2番目)・・・のように、距離順位も記憶する。
【0033】
なお、本実施の形態においては、距離と距離順位との双方を記憶するようにしたが、距離のみ、あるいは距離順位のみであってもよい。距離順位のみを記憶するようにした場合には、被写体の相対的な距離関係が検出できればよいことから、精度よく被写体までの距離を検出する必要がなく、低い検出精度で処理を行うことができる。
【0034】
しかる後に、CPU11は、CCD10上に結像された被写体画像を取り込んで全体画像とし、RAM22の絵画風変換データエリア221における第1記憶部222に記憶する(ステップS103)。これにより、絵画風変換データエリア221の第1記憶部222は、図6に示した「A山」、「B山」、「C山」を有する画像が全体画像Zとして記憶される。
【0035】
次に、CPU11は、撮影画像表示処理を実行して、液晶モニタ4に撮影した画像を表示させる(ステップS104)。これにより、液晶モニタ4には、図6に示した全体画像Zが表示される。
【0036】
引き続き、CPU11は、全体画像Zにおいて被写体別の輪郭を抽出する(ステップS105)。この被写体別の輪郭抽出に際しては、図7に示すように、全体画像Zの画像データの輝度信号及び色差信号から、近い輝度又は色差信号別に、同系色の色相別等に領域を分割し、さらに、領域の境界線となる輪郭線Lを抽出し、この輪郭線Lで囲まれた部分を一つの抽出領域として検出する。
【0037】
さらに、この抽出した被写体別の画像を被写体画像として、絵画風変換データエリア221における第2記憶部223の被写体画像記憶部225に記憶するとともに、各被写体画像の全体画像Z内における位置座標を第2記憶部223の座標記憶部226に記憶する(ステップS106)。これにより、図3に示すように、絵画風変換データエリア221における第2記憶部223の被写体画像記憶部225には、「A山」、「B山」、「C山」の被写体画像が記憶され、座標記憶部226には、「A山」の位置座標(x1,y1)・・・、「B山」の位置座標(x2,y2)・・・、「C山」の位置座標(x3,y3)・・・が記憶される。
【0038】
次に、CPU11は、絵画風変換処理を実行する(ステップS107)。
【0039】
図5(A)は、絵画風変換処理(ステップS107)の処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
まず、測定距離が1番目に短い被写体画像の輪郭を太い線図に変換し、かつ、この太い線図に変換した輪郭内の画像部分を消去する(ステップS201)。これにより、図8に示すように、輪郭のみが太い線31で描かれた「A山」の絵画風被写体画像32が生成される。
【0041】
次に、測定距離が2番目に短い被写体画像の輪郭を普通の太い線図(1番目よりは細いが3番目よりは太い線図)に変換し、かつ、この普通の太い線図に変換した輪郭内の画像部分を消去する(ステップS202)。これにより、図8に示すように、輪郭のみが普通の太い線33で描かれた「B山」の絵画風被写体画像34が生成される。
【0042】
さらに、測定距離が3番目に短い被写体画像の輪郭を細い線図(2番目よりは細いが4番目よりは太い線図)に変換し、かつ、この細い線図に変換した輪郭内の画像部分を消去する(ステップS203)。これにより、図8に示すように、輪郭のみが細い線35で描かれた「C山」の絵画風被写体画像36が生成される。
【0043】
以下同様にして、被写体画像の測定距離が大きくなるほど、輪郭を細い線図に変換し、かつ、変換した輪郭内の画像部分を消去する。
【0044】
そして、全ての被写体画像を輪郭のみの絵画風被写体画像に変換したならば、各絵画風被写体画像32、34、36・・・を合成する(ステップS204)。
【0045】
すなわち、図3に示すように、絵画風変換データエリア221における第2記憶部223の座標記憶部226には、「A山」の位置座標(x1,y1)・・・、「B山」の位置座標(x2,y2)・・・、「C山」の位置座標(x3,y3)・・・が記憶されている。したがって、CPU11は、第4記憶部227にて、「A山」の位置座標(x1,y1)・・・が示す位置に、「A山」の絵画風被写体画像32を配置する。また、「B山」の位置座標(x2,y2)・・・が示す位置に、「B山」の絵画風被写体画像34を配置し、「C山」の位置座標(x3,y3)・・・が示す位置に、「C山」の絵画風被写体画像36を配置して合成する。
【0046】
これにより、第4記憶部227には、図8に示すように、「A山」の絵画風被写体画像32と、「B山」の絵画風被写体画像34及び「C山」の絵画風被写体画像36を、図6に示す全体画像Zにおける「A山」、「B山」、「C山」に対応した位置に配置した絵画風画像P1が生成される。
【0047】
そして、図4のフローチャートにおいて、ステップS107に続くステップS108にて、絵画風画像の表示処理を実行し、生成した絵画風画像を液晶モニタ4に表示させる。これにより、液晶モニタ4には、図8に示した絵画風画像P1が表示されることとなる。
【0048】
この表示される絵画風画像P1にあっては、被写体までの距離に応じて、各被写体がそれぞれ異なる太さの線31、33、35のみで描かれた、水墨画的な画像である。したがって、本実施の形態によれば、撮影者からの遠近に応じて、異なる太さの線図変換処理、いわば墨絵的なアート変換処理を自動的にかつ容易に施した絵画風画像を生成して、液晶モニタ4に表示させてくれるので、遠近感がより強調された絵画風画像を迅速かつ容易に観賞することができる。
【0049】
しかる後に、この表示させた絵画風画像をフラッシュメモリ24に記憶する(ステップS109)。これにより、墨絵的なアート処理が施された絵画風画像を、後日、フラッシュメモリ24から読み出して、液晶モニタ4に表示させて観賞することもできる。
【0050】
次に、CPU11は、立体印刷処理を実行する(ステップS110)。
【0051】
図5(B)は、立体印刷処理(ステップS110)の処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
まず、測定距離が1番目に短い被写体画像の輪郭内は被印刷基板P上に厚く、光硬化層F1で印刷部7Aを用いて施す(ステップS301)。これにより、図9(A)及び図9(B)に示すように、輪郭のみが太い線31で描かれた「A山」の絵画風被写体画像32の全体が被印刷基板P上に厚く光硬化層F1で施される。被印刷基板Pは、絵画に用いられている市販のキャンバス、布地、普通紙、プラスチック板、金属板、木版などを用いる。
【0053】
次に、測定距離が2番目に短い被写体画像の輪郭内は被印刷基板P上にやや厚く(1番目よりは厚くないが3番目よりは厚く)、光硬化層F2で印刷部7Aを用いて施す(ステップS302)。これにより、図9(A)及び図9(B)に示すように、輪郭のみが普通の太い線33で描かれた「B山」の絵画風被写体画像34の全体が被印刷基板P上に厚く光硬化層F2で施される。
【0054】
さらに、測定距離が3番目に短い被写体画像の輪郭内は被印刷基板P上に薄く(2番目よりは厚くないが4番目よりは厚く)、光硬化層F3で印刷部7Aを用いて施す(ステップS303)。これにより、図9(A)及び図9(B)に示すように、輪郭のみが細い線35で描かれた「C山」の絵画風被写体画像36の全体が被印刷基板P上に厚く光硬化層F3で施される。
以下同様にして、被写体画像の測定距離が大きくなるほど、輪郭内の全域を薄くなるように、光硬化層Fnによる印刷処理を施す。
【0055】
次に、CPU11は、各光硬化層F1〜F3等の全体に対する紫外線照射処理を実行する(ステップS111)。この紫外線照射処理は、紫外線照射部7Bを駆動制御し、印刷部7Aにより印刷された紫外線硬化層の全面に対し紫外線を照射し、紫外線硬化層を硬化させる。
【0056】
次に、CPU11は、絵画風画像の印刷処理を実行する(ステップS112)。
【0057】
図5(C)は、絵画風画像の印刷処理(ステップS112)の処理手順を示すフローチャートである。
【0058】
まず、測定距離が1番目に短い被写体画像の輪郭内の全体に厚く施された立体層である光硬化層F1上に、絵画変換処理された絵画風被写体画像の部分を、印刷部7Aを用いて施す。すなわち、CPU11は、第4記憶部227にて、「A山」の位置座標(x1,y1)・・・が示す位置に、対応する「A山」の絵画風被写体画像32を、印刷部7Aを用いて施す(ステップS401)。これにより、図10(A)及び図10(B)に示すように、「A山」の絵画風被写体画像32の全体が、被印刷基板P上に厚く施されている光硬化層F1上にさらに印刷処理が施される。
【0059】
次に、測定距離が2番目に短い被写体画像の輪郭内の全体にやや厚く施された立体層である光硬化層F2上に、絵画変換処理された絵画風被写体画像の部分を、印刷部7Aを用いて施す。すなわち、CPU11は、「B山」の位置座標(x2,y2)・・・が示す位置に、対応する「B山」の絵画風被写体画像34を、印刷部7Aを用いて施す(ステップS402)。これにより、図10(A)及び図10(B)に示すように、「B山」の絵画風被写体画像34の全体が、被印刷基板P上に厚く施されている光硬化層F2上にさらに印刷処理が施される。
【0060】
さらに、測定距離が3番目に短い被写体画像の輪郭内の全体に薄く施された立体層である光硬化層F3上に、絵画変換処理された絵画風被写体画像の部分を、印刷部7Aを用いて施す。すなわち、CPU11は、「C山」の位置座標(x3,y3)・・・が示す位置に、対応する「C山」の絵画風被写体画像36を、印刷部7Aを用いて施す(ステップS403)。これにより、図10(A)及び図10(B)に示すように、「C山」の絵画風被写体画像36の全体が、被印刷基板P上に薄く施されている光硬化層F3上にさらに印刷処理が施される。
【0061】
以下同様にして、被写体画像の測定距離が大きくなるほど、輪郭内の全域を薄くなるように施された光硬化層F1〜Fn上に、対応する絵画風被写体画像部分が、印刷部7Aを用いて施される。
【0062】
この印刷された絵画風画像P1にあっては、被写体までの距離に応じて、各被写体がそれぞれ厚さの異なる立体層である光硬化層F1〜Fn上に描かれた水墨画的な画像を得ることができる。したがって、本実施の形態によれば、撮影者からの遠近に応じて、遠近感がより強調された絵画風画像を迅速かつ容易に観賞することができる。
【0063】
図11は、変形例を示す。
この変形例は、図9のステップS301〜S303において、図11(A)及び図11(B)に示すように、各輪郭内のうち、上部は厚く、下部に向かうに従って薄くなるように光硬化層F1〜F3を印刷している。このように印刷された光硬化層F1〜F3の上面に、対応する絵画風被写体画像部分32、34、36が、印刷部7Aを用いて施される。これにより、輪郭がより強調された立体絵画風画像を得ることができる。
【0064】
なお、本実施の形態においては、撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像それぞれの輪郭を抽出し、この抽出された輪郭毎に、測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施し、その後、この被印刷媒体上に施こされた立体層上に、絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御しているが、撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行い、この変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出し、この抽出された輪郭毎に、測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施し、この被印刷媒体上に施こされた立体層上に、絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御してもよい。
また、本発明をデジタルカメラに適用した場合を示したが、デジタルカメラに限らず、撮影手段を備えるものであれば携帯電話等の他の機器に適用するようにしてもよい。
【0065】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、
この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎
に測定する測距手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理手段により変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出手段と、
この抽出手段により抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御手段と、
この第1の制御手段の制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理手段により絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
<請求項2>
前記絵画変換処理手段は、前記輪郭抽出手段により抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
<請求項3>
前記線図変換処理手段は、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換する線図別変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理手段により変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
<請求項4>
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎に測定する測距手段とを備えている画像処理装置に用いられる画像処理方法において、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理ステップと、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理ステップにより変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出ステップと、
この抽出ステップにより抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御ステップと、
この第1の制御ステップの制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理ステップにより絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御ステップと、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
<請求項5>
前記絵画変換処理ステップは、前記輪郭抽出ステップにより抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御ステップを備えていることを特徴とする請求項4記載の画像処理方法。
<請求項6>
前記線図変換処理ステップは、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換する線図別変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理ステップにより変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御ステップを備えていることを特徴とする請求項5記載の画像処理方法。
【符号の説明】
【0066】
1 デジタルカメラ
4 液晶モニタ
7A 印刷部
7B 紫外線照射部
10 CCD
11 CPU
21 操作キー部
22 RAM
23 ROM
24 フラッシュメモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、
この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎
に測定する測距手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理手段により変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出手段と、
この抽出手段により抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御手段と、
この第1の制御手段の制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理手段により絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記絵画変換処理手段は、前記輪郭抽出手段により抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記線図変換処理手段は、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換する線図別変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理手段により変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎に測定する測距手段とを備えている画像処理装置に用いられる画像処理方法において、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理ステップと、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理ステップにより変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出ステップと、
この抽出ステップにより抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御ステップと、
この第1の制御ステップの制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理ステップにより絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御ステップと、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
前記絵画変換処理ステップは、前記輪郭抽出ステップにより抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御ステップを備えていることを特徴とする請求項4記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記線図変換処理ステップは、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換する線図別変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理ステップにより変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御ステップを備えていることを特徴とする請求項5記載の画像処理方法。
【請求項1】
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、
この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎
に測定する測距手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理手段と、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理手段により変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出手段と、
この抽出手段により抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御手段と、
この第1の制御手段の制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理手段により絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記絵画変換処理手段は、前記輪郭抽出手段により抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記線図変換処理手段は、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換する線図別変換処理手段を備え、
前記第1の制御手段は、前記線図変換処理手段により変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理手段により変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
複数の被写体を含む画像を撮影する撮影手段と、この撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体までの距離を被写体毎に測定する測距手段とを備えている画像処理装置に用いられる画像処理方法において、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像を絵画風画像に絵画変換処理を行う絵画変換処理ステップと、
前記撮影手段により撮影された画像に含まれている複数の被写体画像または前記絵画変換処理ステップにより変換された複数の絵画風画像それぞれの輪郭を抽出する抽出ステップと、
この抽出ステップにより抽出された輪郭毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する第1の制御ステップと、
この第1の制御ステップの制御により被印刷媒体上に施こされた立体層上に、前記絵画変換処理ステップにより絵画変換処理された複数の絵画風被写体画像を施すように制御する第2の制御ステップと、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
前記絵画変換処理ステップは、前記輪郭抽出ステップにより抽出された複数の被写体画像の輪郭を異なる形態の線図に変換する線図変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された異なる形態の線図毎に、前記測距手段により測定された複数の被写体毎の距離に対応する厚さの立体層を被印刷媒体上に施すように制御する線図別制御ステップを備えていることを特徴とする請求項4記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記線図変換処理ステップは、前記被写体の距離が遠いほど、前記被写体画像の輪郭を細い線図に変換し、前記被写体の距離が近いほど、前記被写体画像の輪郭を太い線図に変換する線図別変換処理ステップを備え、
前記第1の制御ステップは、前記線図変換処理ステップにより変換された細い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの厚い立体層を施すように制御し、前記線図変換処理ステップにより変換された太い線図に対応する前記被印刷媒体上には、厚さの薄い立体層を施すように制御する立体層別制御ステップを備えていることを特徴とする請求項5記載の画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−26705(P2013−26705A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157597(P2011−157597)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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