画像処理装置及び画像表示装置
【課題】画像に階調補正処理を行う際に、階調補正処理を行う画像領域と階調範囲の指定を可能とし、階調補正処理を注目領域の内部と外部とで独立に行うことで、ユーザが注目したい細部情報を的確に強調する。
【解決手段】画像表示装置は、入力画像に対して注目領域を設定する注目領域取得部1,画像分割部2と、設定した注目領域の中心輝度値を決定する中心輝度値決定部3と、決定した中心輝度値に基づいて階調補正特性を決定する注目領域内階調補正特性決定部4と、決定した階調補正特性に基づいて注目領域内の階調補正を行う注目領域内階調補正計算部5と、画像分割部2で設定した注目領域外の画素について統計量を算出し、算出した統計量に基づいて階調補正特性を決定する注目領域外階調補正特性決定部6と、決定した階調補正特性に基づいて注目領域外の階調補正を行う注目領域外階調補正計算部7とを備える。
【解決手段】画像表示装置は、入力画像に対して注目領域を設定する注目領域取得部1,画像分割部2と、設定した注目領域の中心輝度値を決定する中心輝度値決定部3と、決定した中心輝度値に基づいて階調補正特性を決定する注目領域内階調補正特性決定部4と、決定した階調補正特性に基づいて注目領域内の階調補正を行う注目領域内階調補正計算部5と、画像分割部2で設定した注目領域外の画素について統計量を算出し、算出した統計量に基づいて階調補正特性を決定する注目領域外階調補正特性決定部6と、決定した階調補正特性に基づいて注目領域外の階調補正を行う注目領域外階調補正計算部7とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像表示装置に関し、より詳細には、入力画像信号に対して階調補正処理を行う機能を備えた画像処理装置及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の画像表示装置では、画質の向上を目的として、コントラスト強調などの階調補正処理が行われている。これらの処理の際には、画像信号の画素値を解析し、そのヒストグラムやその他の統計量などによって補正レベルを動的に変化させている。しかし、画像全体にわたってコントラスト感を向上させることは容易ではなく、特に、明暗が混在する画像に対しては、暗い領域や明るい領域において細部情報が消失しやすいという問題がある。
【0003】
上記の問題に対して、例えば、特許文献1には、画像内でユーザが注目する領域(以下、注目領域と呼ぶ)を定め、注目領域内のコントラストが良くなるように画像全体を調整するコントラスト調整装置が記載されている。
【0004】
図15は、従来のコントラスト調整装置の機能的構成の一例を示すブロック図で、図中、101は注目領域設定部、102は階調補正特性決定部、103は階調補正計算部を示す。注目領域設定部101は、入力画像の中央部の矩形領域を注目領域として設定する。階調補正係数決定部102は、入力画像の輝度値のヒストグラムを生成するが、単純な度数を用いるのではなく、注目領域外の画素には1より小さい係数をかけたものをヒストグラムの度数として加算する。このように作成された注目領域内の画素の寄与が大きいヒストグラムを用いて、階調補正の程度を制御する階調補正特性が算出される。階調補正計算部103は、入力画像に対して、作成した階調補正特性に基づきコントラスト強調を行う。
【0005】
図16は、図15に示した従来のコントラスト調整装置の階調補正特性の一例を示す。横軸は階調補正前の輝度値を示し、縦軸は階調補正後の輝度値を示す。なお、説明の便宜上、輝度値は正規化した値を示し、最小値を0%、最大値を100%とする。階調補正特性のグラフにおいて、傾きが1より大きい階調範囲内ではコントラストが強調され、傾きが1未満の階調範囲内では、コントラストが抑制される。この例では、横軸が77%以下では傾きが1.29の直線であり、この階調範囲内でのコントラストは強調される。横軸が77%以上では傾きが0の直線であり、この入力階調範囲内では、出力階調の変化が完全に抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−120030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図16の例から分かるように、コントラスト強調を行うと、コントラストが抑制される階調範囲が別に生じる。すなわち、傾きが1より大きい階調範囲を作ると、傾きが1未満になる階調範囲が別に生じる。このため、注目領域内に明暗が混在する画像に対して、図15に示した従来のコントラスト調整装置では、注目領域内にコントラストが抑制される階調範囲を含む場合がある。この場合、注目したい細部情報が消失してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、画像に階調補正処理を行う際に、階調補正処理を行う画像領域と階調範囲の指定を可能とし、階調補正処理を注目領域の内部と外部とで独立に行うことで、ユーザが注目したい細部情報を的確に強調する画像処理装置及び画像表示装置を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の技術手段は、入力画像に対して階調補正を行う画像処理装置であって、入力画像に対して注目領域を設定する注目領域設定部と、該設定した注目領域の中心画素値を取得する中心画素値取得部と、該取得した中心画素値に基づいて階調補正特性を決定する注目領域内階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記注目領域内の階調補正を行う注目領域内階調補正計算部と、前記注目領域設定部で設定した注目領域外の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量に基づいて階調補正特性を決定する注目領域外階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記注目領域外の階調補正を行う注目領域外階調補正計算部とを備えたことを特徴としたものである。
【0010】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記注目領域内階調補正特性決定部は、前記注目領域設定部で設定した注目領域内の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量と、前記中心画素値取得部により取得した中心画素値とに基づいて、階調補正特性を決定することを特徴としたものである。
【0011】
第3の技術手段は、第1の技術手段において、入力画像全体の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量に基づいて階調補正特性を決定する全体階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記入力画像全体の階調補正を行う全体階調補正計算部とを備え、前記中心画素値取得部は、前記全体階調補正計算部で階調補正された前記入力画像全体に対して、前記注目領域設定部で設定された注目領域の中心画素値を取得することを特徴としたものである。
【0012】
第4の技術手段は、第1の技術手段において、ユーザによる入力に基づいて、前記注目領域内の階調補正特性を調整するための修正係数を取得する修正係数取得部を備え、前記注目領域内階調補正特性決定部は、前記中心画素値取得部により取得した中心画素値と、前記修正係数取得部により取得した修正係数とに基づいて、階調補正特性を決定することを特徴としたものである。
【0013】
第5の技術手段は、第1〜第4のいずれか1の技術手段において、前記注目領域設定部は、ユーザの操作入力に従って、前記入力画像に対して前記注目領域を設定することを特徴としたものである。
【0014】
第6の技術手段は、第1〜第5のいずれか1の技術手段において、前記統計量は、輝度ヒストグラムであることを特徴としたものである。
【0015】
第7の技術手段は、第1〜第6のいずれか1の技術手段において、入力画像のフレーム間における動きベクトルに基づいて、前記注目領域設定部により設定された注目領域を追従する注目領域追従部を備え、前記注目領域内階調補正計算部は、前記注目領域追従部により追従される注目領域内に対して、前記注目領域内階調補正特性決定部で決定された階調補正特性に基づく階調補正を行い、前記注目領域外階調補正計算部は、前記注目領域追従部により追従される注目領域外に対して、前記注目領域外階調補正特性決定部で決定された階調補正特性に基づく階調補正を行うことを特徴としたものである。
【0016】
第8の技術手段は、第1〜第7のいずれか1の技術手段において、前記注目領域内階調補正特性決定部で決定される注目領域内階調補正特性は、コントラストが強調される入力輝度範囲と、コントラストが抑制される入力輝度範囲とを含み、前記中心画素値取得部で取得される中心画素値は、前記コントラストが強調される入力輝度範囲に含まれることを特徴としたものである。
【0017】
第9の技術手段は、第6〜第8のいずれか1の技術手段において、前記注目領域外階調補正特性決定部は、前記輝度ヒストグラムの度数を輝度値の高いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第1の注目領域外閾値を超えない最大の輝度値を白飽和値として決定し、また、前記輝度ヒストグラムの度数を輝度値の低いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第2の注目領域外閾値を超えない最小の輝度値を黒飽和値として決定し、前記階調補正特性は、入力輝度値が前記黒飽和値以上で前記白飽和値以下の範囲でコントラストを強調する特性とすることを特徴としたものである。
【0018】
第10の技術手段は、第1〜第9のいずれか1の技術手段における画像処理装置と、入力画像を表示する表示部とを備えたことを特徴とする画像表示装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像に階調補正処理を行う際に、階調補正処理を行う画像領域と階調範囲の指定を可能とし、階調補正処理を注目領域の内部と外部とで独立に行うことで、ユーザが注目したい細部情報を的確に強調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図2】注目領域内階調補正特性決定部で作成される階調補正特性の一例を示す図である。
【図3】図1に示す注目領域内階調補正特性決定部の処理の流れの一例を説明するためのフロー図である。
【図4】注目領域内階調補正特性決定部で作成される階調補正特性の他の例を示す図である。
【図5】注目領域外階調補正特性決定部で作成される階調補正特性の一例を示す図である。
【図6】図1に示す注目領域外階調補正特性決定部の処理の流れの一例を説明するためのフロー図である。
【図7】注目領域外階調補正特性決定部で算出される注目領域外の輝度ヒストグラムの一例を示す図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図9】注目領域内階調補正特性決定部で作成される階調補正特性の他の例を示す図である。
【図10】図8に示す注目領域内階調補正特性決定部の処理の流れの一例を説明するためのフロー図である。
【図11】本発明の第三の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図12】本発明の第四の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図13】注目領域内階調補正特性決定部で作成される階調補正特性の一例を示す図である。
【図14】本発明の第五の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図15】従来のコントラスト調整装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【図16】従来のコントラスト調整装置で作成される階調補正特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の画像処理装置及び画像表示装置に係る好適な実施の形態について、画像処理装置と表示部とを備えた画像表示装置を例示して説明する。なお、各実施形態の各図面において同じ機能を有する部分については同じ符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0022】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図で、図中、1は注目領域位置取得部、2は画像分割部、3は中心輝度値決定部、4は注目領域内階調補正特性決定部、5は注目領域内階調補正計算部、6は注目領域外階調補正特性決定部、7は注目領域外階調補正計算部、8は表示部を示す。
【0023】
注目領域位置取得部1は、ユーザからの入力により、注目領域位置を取得し、これを画像分割部2と中心輝度値決定部3に出力する。以下、注目領域の形状は円形を例示して説明する。円は、中心と半径によって指定することができるが、中心位置は、例えば、表示部8がタッチパネル機能を備えている場合は、画面上の表示画像においてユーザが注目したい領域の中心を、ユーザがタッチパネルを用いて指示することで取得される。また、例えば、リモートコントローラを用いてユーザが指示してもよい。または、図示しない視線検出装置によって検知したユーザの視線方向から算出した画像位置を用いてもよい。半径は、タッチパネルやリモートコントローラ、その他の図示しない入力装置によってユーザが指示してもよいし、予め設定した固定値としてもよい。なお、注目領域の形状は円形に限定するものではなく、楕円や四角形などの他の形状であってもよい。
【0024】
画像分割部2は、注目領域位置取得部1で取得された注目領域位置に基づいて、入力画像の全画素を、注目領域内と注目領域外の2つに分割する。円の中心と半径が入力された場合は、円周とその内部に含まれる画素を注目領域内とし、それ以外の画素を注目領域外とする。分割した結果は、例えば、注目領域内を“1”、注目領域外を“0”とする二値のマスク画像にして出力する。上記の注目領域位置取得部1及び画像分割部2は、注目領域設定部に相当する。
【0025】
中心輝度値決定部3は、中心画素値取得部に相当し、注目領域位置取得部1で取得された注目領域位置に基づき、入力画像の対応する画素値を取得し、中心輝度値を決定する。例えば、円の中心座標を中心とした縦横5画素(合計25画素)に対して、輝度値のメディアンを算出し、これを中心輝度値とする。メディアンの代わりに平均値や加重平均値などその他の統計量を用いてもよい。また、縦横5画素の代わりに縦横3画素など他の領域を用いてもよいし、1画素だけを用いてもよい。
【0026】
注目領域内階調補正特性決定部4は、中心輝度値決定部3で決定された中心輝度値の近傍の階調を強調するための階調補正特性を作成する。図2は、注目領域内階調補正特性決定部4で作成される注目領域内階調補正特性の一例を示すグラフである。前述の図16と同様に、横軸は補正前輝度値(%)、縦軸は補正後輝度値(%)である。図中、cは注目領域内階調補正特性決定部4に入力される中心輝度値であり、wは予め設定した強調輝度幅である。aは予め設定した強調レベル(a>1)であり、入力輝度値がc−w/2からc+w/2の範囲において、傾きがaとなるように階調補正特性を定める。これによって、中心輝度値cの近傍の階調のコントラストが強調され、aの値が大きいほど強く強調される。横軸の残りの範囲では、全て傾きをbとし、bはaとwから次式を用いて算出する。
【0027】
b=(100−wa)/(100−w) ・・・式(1)
b<1となるため、傾きがbの階調範囲内では、コントラストが抑制される。階調補正特性のグラフは、3本の直線から成る折れ線によって作成する。折れ線全体として原点と(100,100)の2点を通り、かつ単調増加となるように作成する。ただし、bが0以上となるように、予めaとwを設定する必要がある。
【0028】
図3に、注目領域内階調補正特性決定部4での処理の流れの一例を示す。まず、中心輝度値c、強調輝度幅w、強調レベルaから、式(1)を用いて傾きbを算出する(ステップS1)。そして、前述の図2のグラフを構成する3直線の式を算出する(ステップS2)。この算出方法は明らかなので説明を省く。最後に、階調補正特性を記したルックアップテーブル(LUT)を作成し、出力する(ステップS3)。
【0029】
なお、c−w/2<0もしくはc+w/2>100となる場合は、修正が必要である。修正方法として、c−w/2<0の場合、例えばbの算出の際に、式(1)の代わりに次式を用いる。
【0030】
b={100−(c+w/2)a}/{100−(c+w/2)} ・・・式(2)
c−w/2<0の場合の階調補正特性の例を図4に示す。また、c+w/2>100の場合についても同様に修正を行う。修正方法は、この例に限らず、cやwの値を直接修正してもよい。
【0031】
図1において、注目領域内階調補正計算部5は、注目領域内の画素の輝度値に対して、注目領域内階調補正特性決定部4で作成した注目領域内階調補正特性が記録されたLUTに基づいて階調補正を行い、表示部8に出力する。補正方法はLUTに限定するものではなく、入出力の関係を示す関数を用いるなど他の方法を用いてもよい。
【0032】
次に、注目領域外の画素に対しては、注目領域外階調補正特性決定部6は、注目領域外(マスク画像の画素値が“0”)の画素値だけを統計的に分析し、注目領域外の階調補正特性を決定する。
【0033】
図5は、注目領域外階調補正特性決定部6で作成される注目領域外階調補正特性の一例を示すグラフである。図中、XmaxとXminは、それぞれ白飽和値、黒飽和値と呼び、画像の輝度分布から算出される特徴量である。傾きaは、強調レベルを表し、次式で算出する。
【0034】
a=100/(Xmax−Xmin) ・・・式(3)
階調補正特性のグラフは、3本の直線から成る折れ線によって作成する。入力輝度値がXminからXmaxの範囲の傾きをa、残りの範囲での傾きを0となるように定める。また、折れ線全体として、原点と(100,100)の2点を通り、かつ単調増加となるように作成する。これによって、中間輝度レベルでのコントラストが強調され、aの値が大きいほど強く強調される。残りの傾きが0の範囲では、出力輝度値の階調変化が抑制される。
【0035】
この注目領域外階調補正特性決定部6の処理の流れの一例を図6に示す。図6において、まず、注目領域外階調補正特性決定部6は、入力画像に設定された注目領域外の画素の輝度値のヒストグラムを作成する(ステップS11)。次に、輝度ヒストグラムに基づいて白飽和値Xmaxを算出する(ステップS12)。例えば、ヒストグラムの度数を輝度値の高いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第1の閾値を超えない最大の輝度値を白飽和値Xmaxとする。そして、輝度ヒストグラムに基づいて黒飽和値Xminを算出する(ステップS13)。例えば、ヒストグラムの度数を輝度値の低いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第2の閾値を超えない最小の輝度値を黒飽和値Xminとする。輝度ヒストグラムと白飽和値、黒飽和値、第1の閾値、第2の閾値の関係を図7に示す。
【0036】
次に、上記式(3)を用いて傾きaを算出する(ステップS14)。そして、前述の図5に示したグラフを構成する3直線の式を算出する(ステップS15)。最後に、階調補正特性を記したルックアップテーブル(LUT)を作成し、出力する(ステップS16)。
【0037】
なお、上記例では、入力輝度値がXmax以上かXmin以下の範囲での傾きを0としたが、0に限定するものではない。また、黒飽和値と白飽和値を基にして階調補正特性を決定したが、この例に限定するものではなく、画素値の統計量を用いた他のコントラスト調整手法を用いてもよい。また、画素値の統計量としてヒストグラムを用いたが、ヒストグラムに限定するものではなく、他の統計量を用いてもよい。
【0038】
注目領域外階調補正計算部7は、注目領域外の画素の輝度値に対して、注目領域外階調補正特性決定部6で決定した注目領域外階調補正特性を用いて階調補正を行い、補正後の画像を表示部8に出力する。
【0039】
そして、表示部8は、注目領域内階調補正計算部5と注目領域外階調補正計算部7とから出力された画像を合成し、この合成画像を表示出力する。この表示部8は例えばLCD(Liquid Crystal Display)などで構成される。
【0040】
なお、上記例では注目領域内階調補正特性決定部4と注目領域外階調補正特性決定部6において折れ線状グラフで表される階調補正特性を作成したが、折れ線に限定するものではなく、折れ線の折れ曲がり部分を修正して曲線状にしたり、最初から曲線状の特性を作成してもよい。また、上記例では輝度値を用いたコントラスト強調について述べたが、輝度値に限定するものでなく、明度など、明るさに関する他の指標を用いてもよい。
【0041】
上述のとおり、本実施形態の画像表示装置によれば、階調補正処理を行う画像領域と階調範囲の指定を可能とし、階調補正処理を注目領域の内部と外部とで独立に行うことで、ユーザが注目したい細部情報を的確に強調して表示することができる。
(第二の実施形態)
図8は、本発明の第二の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図であり、図中、9は注目領域内階調補正特性決定部を示す。第一の実施形態の図1の構成と異なるのは、注目領域内階調補正特性決定部9へ入力画像とマスク画像が入力される点である。本実施形態は、注目領域内階調補正特性の決定の際に、中心輝度値だけでなく、さらに画素値の統計量も考慮できるようにしたものである。
【0042】
図9は、注目領域内階調補正特性決定部9で作成される注目領域内階調補正特性の一例を示すグラフである。図中、cは中心輝度値であり、wは予め設定した強調輝度幅である。aは予め設定した強調レベル(a>1)であり、入力輝度値がc−w/2からc+w/2の範囲において、傾きがaとなるように階調補正特性を定める。これによって、中心輝度値cの近傍の階調のコントラストが強調され、aの値が大きいほど強く強調される。白飽和値Xmaxと黒飽和値Xminは、画像の輝度分布から算出される特徴量である。入力輝度値がXmax以上の範囲とXmin以下の範囲では、傾きを0とし、出力輝度値の階調変化を抑制する。横軸の残りの範囲では、傾きをbとし、この傾きbは次式を用いて算出する。
【0043】
b=(100−wa)/(Xmax−Xmin−w) ・・・式(4)
このように、階調補正特性のグラフを5本の直線から成る折れ線として作成する。ただし、bが0以上となる範囲で、予めaとwを設定する必要がある。
【0044】
図10に、注目領域内階調補正特性決定部9での処理の流れの一例を示す。本例のステップS21からステップS23までは第一の実施形態での注目領域外階調補正特性決定部6の流れを示す図6と同様である。ステップS24では、上記式(4)を用いて傾きbを算出する。そして、前述の図9に示したグラフを構成する5直線の式を算出する(ステップ25)。最後に、階調補正特性を記したルックアップテーブル(LUT)を作成し、出力する(ステップS26)。
【0045】
なお、上記例では、入力輝度値がXmax以上かXmin以下の範囲での傾きを0としたが、0に限定するものではない。
【0046】
上述のとおり、本実施形態の画像表示装置によれば、ユーザが注目する領域のコントラストを強調し、かつ注目領域内でのコントラスト感を向上させることができる。
【0047】
(第三の実施形態)
図11は、本発明の第三の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図であり、図中、10は全体階調補正特性決定部、11は全体階調補正計算部、12は中心輝度値決定部、13は注目領域内階調補正特性決定部、14は注目領域内階調補正計算部、15は表示部を示す。本実施形態は、画像全体で階調補正を行った後に、注目領域内のみ再度階調補正を行う点が、第一の実施形態と異なる。
【0048】
まず、全体階調補正特性決定部10において、画像全体の画素値の統計量に基づいて全体階調補正特性を作成する。これは、第一の実施形態の注目領域外階調補正特性決定部6と同様の手法で、画像全体での画素値の統計量を算出して行う。全体階調補正計算部11では、全体階調補正特性に基づいて階調補正を行い、表示部15に出力する。
【0049】
中心輝度値決定部12では、第一の実施形態と同様の手法で中心輝度値を決定するが、既に全体階調補正計算部11で階調補正が行われた画像の輝度値から算出する点が異なる。
【0050】
注目領域内階調補正特性決定部13では、第一の実施形態と同様の手法で注目領域内の階調補正特性を作成する。注目領域内階調補正計算部14では、既に階調補正が行われた画像の注目領域内に対して、第一の実施形態と同様の手法で階調補正を行う。表示部15では、全体階調補正計算部11で出力された補正後画像の注目領域内の画素を、注目領域内階調補正計算部14から出力された補正後画像の画素値に置き換えて表示する。
【0051】
上述のとおり、本実施形態の画像表示装置によれば、ユーザが注目する領域のコントラストを強調し、かつ注目領域内でのコントラスト感を向上させることができる。
【0052】
(第四の実施形態)
図12は、本発明の第四の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図で、図中、16は修正係数取得部、17は注目領域内補正特性決定部を示す。本実施形態では、注目領域内階調補正特性を、第一の実施形態と同様に中心輝度値から決定した後に、さらに、修正係数をユーザの入力によって設定し、注目領域内階調補正特性を調整できるようにしたものである。
【0053】
修正係数取得部16は、ユーザからの入力により、注目領域内の階調補正特性の一例である輝度レベルを調整するための修正係数を取得し、注目領域内補正特性決定部17に出力する。注目領域内補正特性決定部17は、中心輝度値と修正係数に基づき、注目領域内階調補正特性を作成する。
【0054】
修正係数取得部16では、例えば、第一の実施形態で用いた強調レベルaを修正するための修正係数を取得する。表示部8に修正係数取得用画面を表示させ、ユーザがタッチパネルあるいはリモートコントローラの操作によって、画面上から「強く」あるいは「弱く」という入力を行う。これらの入力が行われると、修正係数取得部16は、予め指定した修正係数を設定する。この修正係数としては、例えば、入力が「強く」の場合は1.1、「弱く」の場合は0.9という値を予め指定しておく。注目領域内補正特性決定部17は、予め指定された固定の強調レベルaに修正係数を掛けた後、第一の実施形態と同様の手法で階調補正特性を作成する。これによって、注目領域内階調補正特性が調整される。
【0055】
ここで、ユーザが「強く」あるいは「弱く」の入力を複数回行うことで、その回数に応じて修正係数を複数回掛け合わせてもよい。また、修正係数の数値を直接入力する手段を備えてもよい。これにより補正のレベルをユーザの意図に合わせて自在に調整することができる。
【0056】
修正係数取得部16の他の例として、輝度レベルを補正する係数を取得するようにしてもよい。上記例と同様の手段で、ユーザは「明るく」あるいは「暗く」という入力を行う。これらの入力が行われると、修正係数取得部16は、予め指定した修正係数を設定する。例えば、入力が「明るく」の場合は+10、「暗く」の場合は−10という値を予め指定しておく。注目領域内補正特性決定部17は、第一の実施形態と同様の手法で作成した階調補正特性に対して、修正係数を加算する。図13に、修正された階調補正特性の一例を示す。修正係数の加算によって出力輝度値が100%を超えた場合は100に、0%未満になった場合は0にクリップ処理を行う。
【0057】
上述のとおり、本実施形態の画像表示装置によれば、画像に階調補正処理を行う場合に、ユーザの意図を取り入れ、補正の程度を調整することができる。
【0058】
(第五の実施形態)
図14は、本発明の第五の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図で、図中、18は動きベクトル検出部、19は注目領域追従部、20はフレームメモリ、21はメモリを示す。なお、図14において、注目領域位置取得部1、画像分割部2、中心輝度値決定部3、注目領域内階調補正特性決定部4、及び注目領域外階調補正特性決定部6の記載は省略しているものとする。
【0059】
この第五の実施形態では、入力画像が動画像の場合に、注目領域を画像の動きに合わせて追従する構成を追加したものである。注目領域追従部19は、入力画像のフレーム間における動きベクトルに基づいて、画像分割部2で設定した注目領域を追従する。ここでは、第一の実施形態で説明したように、画像表示装置はユーザが指定した注目領域内とそれ以外の注目領域外でそれぞれ階調補正を行う。その際、次の入力フレーム画像のために、前フレーム画像と前フレームマスク画像とをフレームメモリ20に記憶し、前フレーム画像の注目領域内階調補正特性と注目領域外階調補正特性とをメモリ21に記憶しておく。
【0060】
図14において、次の入力フレーム画像に対して、動きベクトル検出部18は、入力フレーム画像と前フレーム画像の間の各画素の動きベクトルを検出する。この動きベクトルの検出は、例えばブロックマッチングなどの公知技術を用いて行うことができる。次に、注目領域追従部19は、動きベクトル検出部18で求めた動きベクトルと前フレームマスク画像とから、入力フレーム画像におけるマスク画像を作成する。これは、前フレームマスク画像の画素値が“1”の各画素の座標に対して、その画素に対応する動きベクトルを加え、得られた座標について、入力フレーム画像のマスク画像の画素値を“1”にし、入力フレーム画像のマスク画像の残りの画素の画素値を“0”にする。このように、注目領域追従部19を備えることにより、注目領域を画像の動きに合わせて追従させることができる。
【0061】
そして、注目領域内階調補正計算部5及び注目領域外階調補正計算部7は、注目領域追従部19で作成したマスク画像を用いて、注目領域内と注目領域外とを区別し、それぞれの領域に対して前述の第一の実施形態と同様に階調補正を行う。ただし、注目領域内階調補正特性と注目領域外階調補正特性は、前フレーム画像で記憶した値をそのまま用いるほうが望ましい。これは、階調補正特性を変更すると補正の程度がフレーム間で変化してしまい、これにより見た目の滑らかさが失われることを防止するためである。
【0062】
上述のとおり、本実施形態の画像表示装置によれば、動画像に階調補正処理を行う場合に、画像の動きに合わせて、補正の程度を領域ごとに制御することができる。
【0063】
以上において、本発明の画像表示装置に係る各実施形態について説明したが、本発明は表示部を持たない画像処理装置の形態としてもよいことは言うまでもない。また、本発明の画像処理装置あるいは画像表示装置としての機能をコンピュータに実行させるためのプログラムとしての形態も、また、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体としての形態としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…注目領域位置取得部、2…画像分割部、3…中心輝度値決定部、4…注目領域内階調補正特性決定部、5…注目領域内階調補正計算部、6…注目領域外階調補正特性決定部、7…注目領域外階調補正計算部、8…表示部、9…注目領域内階調補正特性決定部、10…全体階調補正特性決定部、11…全体階調補正特性計算部、12…中心輝度値決定部、13…注目領域内階調補正特性決定部、14…注目領域内階調補正計算部、15…表示部、16…修正係数取得部、17…注目領域内階調補正特性決定部、18…動きベクトル検出部、19…注目領域追従部、20…フレームメモリ、21…メモリ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像表示装置に関し、より詳細には、入力画像信号に対して階調補正処理を行う機能を備えた画像処理装置及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の画像表示装置では、画質の向上を目的として、コントラスト強調などの階調補正処理が行われている。これらの処理の際には、画像信号の画素値を解析し、そのヒストグラムやその他の統計量などによって補正レベルを動的に変化させている。しかし、画像全体にわたってコントラスト感を向上させることは容易ではなく、特に、明暗が混在する画像に対しては、暗い領域や明るい領域において細部情報が消失しやすいという問題がある。
【0003】
上記の問題に対して、例えば、特許文献1には、画像内でユーザが注目する領域(以下、注目領域と呼ぶ)を定め、注目領域内のコントラストが良くなるように画像全体を調整するコントラスト調整装置が記載されている。
【0004】
図15は、従来のコントラスト調整装置の機能的構成の一例を示すブロック図で、図中、101は注目領域設定部、102は階調補正特性決定部、103は階調補正計算部を示す。注目領域設定部101は、入力画像の中央部の矩形領域を注目領域として設定する。階調補正係数決定部102は、入力画像の輝度値のヒストグラムを生成するが、単純な度数を用いるのではなく、注目領域外の画素には1より小さい係数をかけたものをヒストグラムの度数として加算する。このように作成された注目領域内の画素の寄与が大きいヒストグラムを用いて、階調補正の程度を制御する階調補正特性が算出される。階調補正計算部103は、入力画像に対して、作成した階調補正特性に基づきコントラスト強調を行う。
【0005】
図16は、図15に示した従来のコントラスト調整装置の階調補正特性の一例を示す。横軸は階調補正前の輝度値を示し、縦軸は階調補正後の輝度値を示す。なお、説明の便宜上、輝度値は正規化した値を示し、最小値を0%、最大値を100%とする。階調補正特性のグラフにおいて、傾きが1より大きい階調範囲内ではコントラストが強調され、傾きが1未満の階調範囲内では、コントラストが抑制される。この例では、横軸が77%以下では傾きが1.29の直線であり、この階調範囲内でのコントラストは強調される。横軸が77%以上では傾きが0の直線であり、この入力階調範囲内では、出力階調の変化が完全に抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−120030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図16の例から分かるように、コントラスト強調を行うと、コントラストが抑制される階調範囲が別に生じる。すなわち、傾きが1より大きい階調範囲を作ると、傾きが1未満になる階調範囲が別に生じる。このため、注目領域内に明暗が混在する画像に対して、図15に示した従来のコントラスト調整装置では、注目領域内にコントラストが抑制される階調範囲を含む場合がある。この場合、注目したい細部情報が消失してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、画像に階調補正処理を行う際に、階調補正処理を行う画像領域と階調範囲の指定を可能とし、階調補正処理を注目領域の内部と外部とで独立に行うことで、ユーザが注目したい細部情報を的確に強調する画像処理装置及び画像表示装置を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の技術手段は、入力画像に対して階調補正を行う画像処理装置であって、入力画像に対して注目領域を設定する注目領域設定部と、該設定した注目領域の中心画素値を取得する中心画素値取得部と、該取得した中心画素値に基づいて階調補正特性を決定する注目領域内階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記注目領域内の階調補正を行う注目領域内階調補正計算部と、前記注目領域設定部で設定した注目領域外の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量に基づいて階調補正特性を決定する注目領域外階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記注目領域外の階調補正を行う注目領域外階調補正計算部とを備えたことを特徴としたものである。
【0010】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記注目領域内階調補正特性決定部は、前記注目領域設定部で設定した注目領域内の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量と、前記中心画素値取得部により取得した中心画素値とに基づいて、階調補正特性を決定することを特徴としたものである。
【0011】
第3の技術手段は、第1の技術手段において、入力画像全体の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量に基づいて階調補正特性を決定する全体階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記入力画像全体の階調補正を行う全体階調補正計算部とを備え、前記中心画素値取得部は、前記全体階調補正計算部で階調補正された前記入力画像全体に対して、前記注目領域設定部で設定された注目領域の中心画素値を取得することを特徴としたものである。
【0012】
第4の技術手段は、第1の技術手段において、ユーザによる入力に基づいて、前記注目領域内の階調補正特性を調整するための修正係数を取得する修正係数取得部を備え、前記注目領域内階調補正特性決定部は、前記中心画素値取得部により取得した中心画素値と、前記修正係数取得部により取得した修正係数とに基づいて、階調補正特性を決定することを特徴としたものである。
【0013】
第5の技術手段は、第1〜第4のいずれか1の技術手段において、前記注目領域設定部は、ユーザの操作入力に従って、前記入力画像に対して前記注目領域を設定することを特徴としたものである。
【0014】
第6の技術手段は、第1〜第5のいずれか1の技術手段において、前記統計量は、輝度ヒストグラムであることを特徴としたものである。
【0015】
第7の技術手段は、第1〜第6のいずれか1の技術手段において、入力画像のフレーム間における動きベクトルに基づいて、前記注目領域設定部により設定された注目領域を追従する注目領域追従部を備え、前記注目領域内階調補正計算部は、前記注目領域追従部により追従される注目領域内に対して、前記注目領域内階調補正特性決定部で決定された階調補正特性に基づく階調補正を行い、前記注目領域外階調補正計算部は、前記注目領域追従部により追従される注目領域外に対して、前記注目領域外階調補正特性決定部で決定された階調補正特性に基づく階調補正を行うことを特徴としたものである。
【0016】
第8の技術手段は、第1〜第7のいずれか1の技術手段において、前記注目領域内階調補正特性決定部で決定される注目領域内階調補正特性は、コントラストが強調される入力輝度範囲と、コントラストが抑制される入力輝度範囲とを含み、前記中心画素値取得部で取得される中心画素値は、前記コントラストが強調される入力輝度範囲に含まれることを特徴としたものである。
【0017】
第9の技術手段は、第6〜第8のいずれか1の技術手段において、前記注目領域外階調補正特性決定部は、前記輝度ヒストグラムの度数を輝度値の高いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第1の注目領域外閾値を超えない最大の輝度値を白飽和値として決定し、また、前記輝度ヒストグラムの度数を輝度値の低いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第2の注目領域外閾値を超えない最小の輝度値を黒飽和値として決定し、前記階調補正特性は、入力輝度値が前記黒飽和値以上で前記白飽和値以下の範囲でコントラストを強調する特性とすることを特徴としたものである。
【0018】
第10の技術手段は、第1〜第9のいずれか1の技術手段における画像処理装置と、入力画像を表示する表示部とを備えたことを特徴とする画像表示装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像に階調補正処理を行う際に、階調補正処理を行う画像領域と階調範囲の指定を可能とし、階調補正処理を注目領域の内部と外部とで独立に行うことで、ユーザが注目したい細部情報を的確に強調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図2】注目領域内階調補正特性決定部で作成される階調補正特性の一例を示す図である。
【図3】図1に示す注目領域内階調補正特性決定部の処理の流れの一例を説明するためのフロー図である。
【図4】注目領域内階調補正特性決定部で作成される階調補正特性の他の例を示す図である。
【図5】注目領域外階調補正特性決定部で作成される階調補正特性の一例を示す図である。
【図6】図1に示す注目領域外階調補正特性決定部の処理の流れの一例を説明するためのフロー図である。
【図7】注目領域外階調補正特性決定部で算出される注目領域外の輝度ヒストグラムの一例を示す図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図9】注目領域内階調補正特性決定部で作成される階調補正特性の他の例を示す図である。
【図10】図8に示す注目領域内階調補正特性決定部の処理の流れの一例を説明するためのフロー図である。
【図11】本発明の第三の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図12】本発明の第四の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図13】注目領域内階調補正特性決定部で作成される階調補正特性の一例を示す図である。
【図14】本発明の第五の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図15】従来のコントラスト調整装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【図16】従来のコントラスト調整装置で作成される階調補正特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の画像処理装置及び画像表示装置に係る好適な実施の形態について、画像処理装置と表示部とを備えた画像表示装置を例示して説明する。なお、各実施形態の各図面において同じ機能を有する部分については同じ符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0022】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図で、図中、1は注目領域位置取得部、2は画像分割部、3は中心輝度値決定部、4は注目領域内階調補正特性決定部、5は注目領域内階調補正計算部、6は注目領域外階調補正特性決定部、7は注目領域外階調補正計算部、8は表示部を示す。
【0023】
注目領域位置取得部1は、ユーザからの入力により、注目領域位置を取得し、これを画像分割部2と中心輝度値決定部3に出力する。以下、注目領域の形状は円形を例示して説明する。円は、中心と半径によって指定することができるが、中心位置は、例えば、表示部8がタッチパネル機能を備えている場合は、画面上の表示画像においてユーザが注目したい領域の中心を、ユーザがタッチパネルを用いて指示することで取得される。また、例えば、リモートコントローラを用いてユーザが指示してもよい。または、図示しない視線検出装置によって検知したユーザの視線方向から算出した画像位置を用いてもよい。半径は、タッチパネルやリモートコントローラ、その他の図示しない入力装置によってユーザが指示してもよいし、予め設定した固定値としてもよい。なお、注目領域の形状は円形に限定するものではなく、楕円や四角形などの他の形状であってもよい。
【0024】
画像分割部2は、注目領域位置取得部1で取得された注目領域位置に基づいて、入力画像の全画素を、注目領域内と注目領域外の2つに分割する。円の中心と半径が入力された場合は、円周とその内部に含まれる画素を注目領域内とし、それ以外の画素を注目領域外とする。分割した結果は、例えば、注目領域内を“1”、注目領域外を“0”とする二値のマスク画像にして出力する。上記の注目領域位置取得部1及び画像分割部2は、注目領域設定部に相当する。
【0025】
中心輝度値決定部3は、中心画素値取得部に相当し、注目領域位置取得部1で取得された注目領域位置に基づき、入力画像の対応する画素値を取得し、中心輝度値を決定する。例えば、円の中心座標を中心とした縦横5画素(合計25画素)に対して、輝度値のメディアンを算出し、これを中心輝度値とする。メディアンの代わりに平均値や加重平均値などその他の統計量を用いてもよい。また、縦横5画素の代わりに縦横3画素など他の領域を用いてもよいし、1画素だけを用いてもよい。
【0026】
注目領域内階調補正特性決定部4は、中心輝度値決定部3で決定された中心輝度値の近傍の階調を強調するための階調補正特性を作成する。図2は、注目領域内階調補正特性決定部4で作成される注目領域内階調補正特性の一例を示すグラフである。前述の図16と同様に、横軸は補正前輝度値(%)、縦軸は補正後輝度値(%)である。図中、cは注目領域内階調補正特性決定部4に入力される中心輝度値であり、wは予め設定した強調輝度幅である。aは予め設定した強調レベル(a>1)であり、入力輝度値がc−w/2からc+w/2の範囲において、傾きがaとなるように階調補正特性を定める。これによって、中心輝度値cの近傍の階調のコントラストが強調され、aの値が大きいほど強く強調される。横軸の残りの範囲では、全て傾きをbとし、bはaとwから次式を用いて算出する。
【0027】
b=(100−wa)/(100−w) ・・・式(1)
b<1となるため、傾きがbの階調範囲内では、コントラストが抑制される。階調補正特性のグラフは、3本の直線から成る折れ線によって作成する。折れ線全体として原点と(100,100)の2点を通り、かつ単調増加となるように作成する。ただし、bが0以上となるように、予めaとwを設定する必要がある。
【0028】
図3に、注目領域内階調補正特性決定部4での処理の流れの一例を示す。まず、中心輝度値c、強調輝度幅w、強調レベルaから、式(1)を用いて傾きbを算出する(ステップS1)。そして、前述の図2のグラフを構成する3直線の式を算出する(ステップS2)。この算出方法は明らかなので説明を省く。最後に、階調補正特性を記したルックアップテーブル(LUT)を作成し、出力する(ステップS3)。
【0029】
なお、c−w/2<0もしくはc+w/2>100となる場合は、修正が必要である。修正方法として、c−w/2<0の場合、例えばbの算出の際に、式(1)の代わりに次式を用いる。
【0030】
b={100−(c+w/2)a}/{100−(c+w/2)} ・・・式(2)
c−w/2<0の場合の階調補正特性の例を図4に示す。また、c+w/2>100の場合についても同様に修正を行う。修正方法は、この例に限らず、cやwの値を直接修正してもよい。
【0031】
図1において、注目領域内階調補正計算部5は、注目領域内の画素の輝度値に対して、注目領域内階調補正特性決定部4で作成した注目領域内階調補正特性が記録されたLUTに基づいて階調補正を行い、表示部8に出力する。補正方法はLUTに限定するものではなく、入出力の関係を示す関数を用いるなど他の方法を用いてもよい。
【0032】
次に、注目領域外の画素に対しては、注目領域外階調補正特性決定部6は、注目領域外(マスク画像の画素値が“0”)の画素値だけを統計的に分析し、注目領域外の階調補正特性を決定する。
【0033】
図5は、注目領域外階調補正特性決定部6で作成される注目領域外階調補正特性の一例を示すグラフである。図中、XmaxとXminは、それぞれ白飽和値、黒飽和値と呼び、画像の輝度分布から算出される特徴量である。傾きaは、強調レベルを表し、次式で算出する。
【0034】
a=100/(Xmax−Xmin) ・・・式(3)
階調補正特性のグラフは、3本の直線から成る折れ線によって作成する。入力輝度値がXminからXmaxの範囲の傾きをa、残りの範囲での傾きを0となるように定める。また、折れ線全体として、原点と(100,100)の2点を通り、かつ単調増加となるように作成する。これによって、中間輝度レベルでのコントラストが強調され、aの値が大きいほど強く強調される。残りの傾きが0の範囲では、出力輝度値の階調変化が抑制される。
【0035】
この注目領域外階調補正特性決定部6の処理の流れの一例を図6に示す。図6において、まず、注目領域外階調補正特性決定部6は、入力画像に設定された注目領域外の画素の輝度値のヒストグラムを作成する(ステップS11)。次に、輝度ヒストグラムに基づいて白飽和値Xmaxを算出する(ステップS12)。例えば、ヒストグラムの度数を輝度値の高いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第1の閾値を超えない最大の輝度値を白飽和値Xmaxとする。そして、輝度ヒストグラムに基づいて黒飽和値Xminを算出する(ステップS13)。例えば、ヒストグラムの度数を輝度値の低いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第2の閾値を超えない最小の輝度値を黒飽和値Xminとする。輝度ヒストグラムと白飽和値、黒飽和値、第1の閾値、第2の閾値の関係を図7に示す。
【0036】
次に、上記式(3)を用いて傾きaを算出する(ステップS14)。そして、前述の図5に示したグラフを構成する3直線の式を算出する(ステップS15)。最後に、階調補正特性を記したルックアップテーブル(LUT)を作成し、出力する(ステップS16)。
【0037】
なお、上記例では、入力輝度値がXmax以上かXmin以下の範囲での傾きを0としたが、0に限定するものではない。また、黒飽和値と白飽和値を基にして階調補正特性を決定したが、この例に限定するものではなく、画素値の統計量を用いた他のコントラスト調整手法を用いてもよい。また、画素値の統計量としてヒストグラムを用いたが、ヒストグラムに限定するものではなく、他の統計量を用いてもよい。
【0038】
注目領域外階調補正計算部7は、注目領域外の画素の輝度値に対して、注目領域外階調補正特性決定部6で決定した注目領域外階調補正特性を用いて階調補正を行い、補正後の画像を表示部8に出力する。
【0039】
そして、表示部8は、注目領域内階調補正計算部5と注目領域外階調補正計算部7とから出力された画像を合成し、この合成画像を表示出力する。この表示部8は例えばLCD(Liquid Crystal Display)などで構成される。
【0040】
なお、上記例では注目領域内階調補正特性決定部4と注目領域外階調補正特性決定部6において折れ線状グラフで表される階調補正特性を作成したが、折れ線に限定するものではなく、折れ線の折れ曲がり部分を修正して曲線状にしたり、最初から曲線状の特性を作成してもよい。また、上記例では輝度値を用いたコントラスト強調について述べたが、輝度値に限定するものでなく、明度など、明るさに関する他の指標を用いてもよい。
【0041】
上述のとおり、本実施形態の画像表示装置によれば、階調補正処理を行う画像領域と階調範囲の指定を可能とし、階調補正処理を注目領域の内部と外部とで独立に行うことで、ユーザが注目したい細部情報を的確に強調して表示することができる。
(第二の実施形態)
図8は、本発明の第二の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図であり、図中、9は注目領域内階調補正特性決定部を示す。第一の実施形態の図1の構成と異なるのは、注目領域内階調補正特性決定部9へ入力画像とマスク画像が入力される点である。本実施形態は、注目領域内階調補正特性の決定の際に、中心輝度値だけでなく、さらに画素値の統計量も考慮できるようにしたものである。
【0042】
図9は、注目領域内階調補正特性決定部9で作成される注目領域内階調補正特性の一例を示すグラフである。図中、cは中心輝度値であり、wは予め設定した強調輝度幅である。aは予め設定した強調レベル(a>1)であり、入力輝度値がc−w/2からc+w/2の範囲において、傾きがaとなるように階調補正特性を定める。これによって、中心輝度値cの近傍の階調のコントラストが強調され、aの値が大きいほど強く強調される。白飽和値Xmaxと黒飽和値Xminは、画像の輝度分布から算出される特徴量である。入力輝度値がXmax以上の範囲とXmin以下の範囲では、傾きを0とし、出力輝度値の階調変化を抑制する。横軸の残りの範囲では、傾きをbとし、この傾きbは次式を用いて算出する。
【0043】
b=(100−wa)/(Xmax−Xmin−w) ・・・式(4)
このように、階調補正特性のグラフを5本の直線から成る折れ線として作成する。ただし、bが0以上となる範囲で、予めaとwを設定する必要がある。
【0044】
図10に、注目領域内階調補正特性決定部9での処理の流れの一例を示す。本例のステップS21からステップS23までは第一の実施形態での注目領域外階調補正特性決定部6の流れを示す図6と同様である。ステップS24では、上記式(4)を用いて傾きbを算出する。そして、前述の図9に示したグラフを構成する5直線の式を算出する(ステップ25)。最後に、階調補正特性を記したルックアップテーブル(LUT)を作成し、出力する(ステップS26)。
【0045】
なお、上記例では、入力輝度値がXmax以上かXmin以下の範囲での傾きを0としたが、0に限定するものではない。
【0046】
上述のとおり、本実施形態の画像表示装置によれば、ユーザが注目する領域のコントラストを強調し、かつ注目領域内でのコントラスト感を向上させることができる。
【0047】
(第三の実施形態)
図11は、本発明の第三の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図であり、図中、10は全体階調補正特性決定部、11は全体階調補正計算部、12は中心輝度値決定部、13は注目領域内階調補正特性決定部、14は注目領域内階調補正計算部、15は表示部を示す。本実施形態は、画像全体で階調補正を行った後に、注目領域内のみ再度階調補正を行う点が、第一の実施形態と異なる。
【0048】
まず、全体階調補正特性決定部10において、画像全体の画素値の統計量に基づいて全体階調補正特性を作成する。これは、第一の実施形態の注目領域外階調補正特性決定部6と同様の手法で、画像全体での画素値の統計量を算出して行う。全体階調補正計算部11では、全体階調補正特性に基づいて階調補正を行い、表示部15に出力する。
【0049】
中心輝度値決定部12では、第一の実施形態と同様の手法で中心輝度値を決定するが、既に全体階調補正計算部11で階調補正が行われた画像の輝度値から算出する点が異なる。
【0050】
注目領域内階調補正特性決定部13では、第一の実施形態と同様の手法で注目領域内の階調補正特性を作成する。注目領域内階調補正計算部14では、既に階調補正が行われた画像の注目領域内に対して、第一の実施形態と同様の手法で階調補正を行う。表示部15では、全体階調補正計算部11で出力された補正後画像の注目領域内の画素を、注目領域内階調補正計算部14から出力された補正後画像の画素値に置き換えて表示する。
【0051】
上述のとおり、本実施形態の画像表示装置によれば、ユーザが注目する領域のコントラストを強調し、かつ注目領域内でのコントラスト感を向上させることができる。
【0052】
(第四の実施形態)
図12は、本発明の第四の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図で、図中、16は修正係数取得部、17は注目領域内補正特性決定部を示す。本実施形態では、注目領域内階調補正特性を、第一の実施形態と同様に中心輝度値から決定した後に、さらに、修正係数をユーザの入力によって設定し、注目領域内階調補正特性を調整できるようにしたものである。
【0053】
修正係数取得部16は、ユーザからの入力により、注目領域内の階調補正特性の一例である輝度レベルを調整するための修正係数を取得し、注目領域内補正特性決定部17に出力する。注目領域内補正特性決定部17は、中心輝度値と修正係数に基づき、注目領域内階調補正特性を作成する。
【0054】
修正係数取得部16では、例えば、第一の実施形態で用いた強調レベルaを修正するための修正係数を取得する。表示部8に修正係数取得用画面を表示させ、ユーザがタッチパネルあるいはリモートコントローラの操作によって、画面上から「強く」あるいは「弱く」という入力を行う。これらの入力が行われると、修正係数取得部16は、予め指定した修正係数を設定する。この修正係数としては、例えば、入力が「強く」の場合は1.1、「弱く」の場合は0.9という値を予め指定しておく。注目領域内補正特性決定部17は、予め指定された固定の強調レベルaに修正係数を掛けた後、第一の実施形態と同様の手法で階調補正特性を作成する。これによって、注目領域内階調補正特性が調整される。
【0055】
ここで、ユーザが「強く」あるいは「弱く」の入力を複数回行うことで、その回数に応じて修正係数を複数回掛け合わせてもよい。また、修正係数の数値を直接入力する手段を備えてもよい。これにより補正のレベルをユーザの意図に合わせて自在に調整することができる。
【0056】
修正係数取得部16の他の例として、輝度レベルを補正する係数を取得するようにしてもよい。上記例と同様の手段で、ユーザは「明るく」あるいは「暗く」という入力を行う。これらの入力が行われると、修正係数取得部16は、予め指定した修正係数を設定する。例えば、入力が「明るく」の場合は+10、「暗く」の場合は−10という値を予め指定しておく。注目領域内補正特性決定部17は、第一の実施形態と同様の手法で作成した階調補正特性に対して、修正係数を加算する。図13に、修正された階調補正特性の一例を示す。修正係数の加算によって出力輝度値が100%を超えた場合は100に、0%未満になった場合は0にクリップ処理を行う。
【0057】
上述のとおり、本実施形態の画像表示装置によれば、画像に階調補正処理を行う場合に、ユーザの意図を取り入れ、補正の程度を調整することができる。
【0058】
(第五の実施形態)
図14は、本発明の第五の実施形態に係る画像表示装置の概略構成例を示すブロック図で、図中、18は動きベクトル検出部、19は注目領域追従部、20はフレームメモリ、21はメモリを示す。なお、図14において、注目領域位置取得部1、画像分割部2、中心輝度値決定部3、注目領域内階調補正特性決定部4、及び注目領域外階調補正特性決定部6の記載は省略しているものとする。
【0059】
この第五の実施形態では、入力画像が動画像の場合に、注目領域を画像の動きに合わせて追従する構成を追加したものである。注目領域追従部19は、入力画像のフレーム間における動きベクトルに基づいて、画像分割部2で設定した注目領域を追従する。ここでは、第一の実施形態で説明したように、画像表示装置はユーザが指定した注目領域内とそれ以外の注目領域外でそれぞれ階調補正を行う。その際、次の入力フレーム画像のために、前フレーム画像と前フレームマスク画像とをフレームメモリ20に記憶し、前フレーム画像の注目領域内階調補正特性と注目領域外階調補正特性とをメモリ21に記憶しておく。
【0060】
図14において、次の入力フレーム画像に対して、動きベクトル検出部18は、入力フレーム画像と前フレーム画像の間の各画素の動きベクトルを検出する。この動きベクトルの検出は、例えばブロックマッチングなどの公知技術を用いて行うことができる。次に、注目領域追従部19は、動きベクトル検出部18で求めた動きベクトルと前フレームマスク画像とから、入力フレーム画像におけるマスク画像を作成する。これは、前フレームマスク画像の画素値が“1”の各画素の座標に対して、その画素に対応する動きベクトルを加え、得られた座標について、入力フレーム画像のマスク画像の画素値を“1”にし、入力フレーム画像のマスク画像の残りの画素の画素値を“0”にする。このように、注目領域追従部19を備えることにより、注目領域を画像の動きに合わせて追従させることができる。
【0061】
そして、注目領域内階調補正計算部5及び注目領域外階調補正計算部7は、注目領域追従部19で作成したマスク画像を用いて、注目領域内と注目領域外とを区別し、それぞれの領域に対して前述の第一の実施形態と同様に階調補正を行う。ただし、注目領域内階調補正特性と注目領域外階調補正特性は、前フレーム画像で記憶した値をそのまま用いるほうが望ましい。これは、階調補正特性を変更すると補正の程度がフレーム間で変化してしまい、これにより見た目の滑らかさが失われることを防止するためである。
【0062】
上述のとおり、本実施形態の画像表示装置によれば、動画像に階調補正処理を行う場合に、画像の動きに合わせて、補正の程度を領域ごとに制御することができる。
【0063】
以上において、本発明の画像表示装置に係る各実施形態について説明したが、本発明は表示部を持たない画像処理装置の形態としてもよいことは言うまでもない。また、本発明の画像処理装置あるいは画像表示装置としての機能をコンピュータに実行させるためのプログラムとしての形態も、また、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体としての形態としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…注目領域位置取得部、2…画像分割部、3…中心輝度値決定部、4…注目領域内階調補正特性決定部、5…注目領域内階調補正計算部、6…注目領域外階調補正特性決定部、7…注目領域外階調補正計算部、8…表示部、9…注目領域内階調補正特性決定部、10…全体階調補正特性決定部、11…全体階調補正特性計算部、12…中心輝度値決定部、13…注目領域内階調補正特性決定部、14…注目領域内階調補正計算部、15…表示部、16…修正係数取得部、17…注目領域内階調補正特性決定部、18…動きベクトル検出部、19…注目領域追従部、20…フレームメモリ、21…メモリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像に対して階調補正を行う画像処理装置であって、
入力画像に対して注目領域を設定する注目領域設定部と、該設定した注目領域の中心画素値を取得する中心画素値取得部と、該取得した中心画素値に基づいて階調補正特性を決定する注目領域内階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記注目領域内の階調補正を行う注目領域内階調補正計算部と、前記注目領域設定部で設定した注目領域外の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量に基づいて階調補正特性を決定する注目領域外階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記注目領域外の階調補正を行う注目領域外階調補正計算部とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、前記注目領域内階調補正特性決定部は、前記注目領域設定部で設定した注目領域内の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量と、前記中心画素値取得部により取得した中心画素値とに基づいて、階調補正特性を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、入力画像全体の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量に基づいて階調補正特性を決定する全体階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記入力画像全体の階調補正を行う全体階調補正計算部とを備え、前記中心画素値取得部は、前記全体階調補正計算部で階調補正された前記入力画像全体に対して、前記注目領域設定部で設定された注目領域の中心画素値を取得することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置において、ユーザによる入力に基づいて、前記注目領域内の階調補正特性を調整するための修正係数を取得する修正係数取得部を備え、前記注目領域内階調補正特性決定部は、前記中心画素値取得部により取得した中心画素値と、前記修正係数取得部により取得した修正係数とに基づいて、階調補正特性を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記注目領域設定部は、ユーザの操作入力に従って、前記入力画像に対して前記注目領域を設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記統計量は、輝度ヒストグラムであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像処理装置において、入力画像のフレーム間における動きベクトルに基づいて、前記注目領域設定部により設定された注目領域を追従する注目領域追従部を備え、前記注目領域内階調補正計算部は、前記注目領域追従部により追従される注目領域内に対して、前記注目領域内階調補正特性決定部で決定された階調補正特性に基づく階調補正を行い、前記注目領域外階調補正計算部は、前記注目領域追従部により追従される注目領域外に対して、前記注目領域外階調補正特性決定部で決定された階調補正特性に基づく階調補正を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記注目領域内階調補正特性決定部で決定される注目領域内階調補正特性は、コントラストが強調される入力輝度範囲と、コントラストが抑制される入力輝度範囲とを含み、前記中心画素値取得部で取得される中心画素値は、前記コントラストが強調される入力輝度範囲に含まれることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記注目領域外階調補正特性決定部は、前記輝度ヒストグラムの度数を輝度値の高いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第1の注目領域外閾値を超えない最大の輝度値を白飽和値として決定し、また、前記輝度ヒストグラムの度数を輝度値の低いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第2の注目領域外閾値を超えない最小の輝度値を黒飽和値として決定し、前記階調補正特性は、入力輝度値が前記黒飽和値以上で前記白飽和値以下の範囲でコントラストを強調する特性とすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像処理装置と、入力画像を表示する表示部とを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項1】
入力画像に対して階調補正を行う画像処理装置であって、
入力画像に対して注目領域を設定する注目領域設定部と、該設定した注目領域の中心画素値を取得する中心画素値取得部と、該取得した中心画素値に基づいて階調補正特性を決定する注目領域内階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記注目領域内の階調補正を行う注目領域内階調補正計算部と、前記注目領域設定部で設定した注目領域外の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量に基づいて階調補正特性を決定する注目領域外階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記注目領域外の階調補正を行う注目領域外階調補正計算部とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、前記注目領域内階調補正特性決定部は、前記注目領域設定部で設定した注目領域内の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量と、前記中心画素値取得部により取得した中心画素値とに基づいて、階調補正特性を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、入力画像全体の画素について画素値の統計量を算出し、該算出した画素値の統計量に基づいて階調補正特性を決定する全体階調補正特性決定部と、該決定した階調補正特性に基づいて前記入力画像全体の階調補正を行う全体階調補正計算部とを備え、前記中心画素値取得部は、前記全体階調補正計算部で階調補正された前記入力画像全体に対して、前記注目領域設定部で設定された注目領域の中心画素値を取得することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置において、ユーザによる入力に基づいて、前記注目領域内の階調補正特性を調整するための修正係数を取得する修正係数取得部を備え、前記注目領域内階調補正特性決定部は、前記中心画素値取得部により取得した中心画素値と、前記修正係数取得部により取得した修正係数とに基づいて、階調補正特性を決定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記注目領域設定部は、ユーザの操作入力に従って、前記入力画像に対して前記注目領域を設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記統計量は、輝度ヒストグラムであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像処理装置において、入力画像のフレーム間における動きベクトルに基づいて、前記注目領域設定部により設定された注目領域を追従する注目領域追従部を備え、前記注目領域内階調補正計算部は、前記注目領域追従部により追従される注目領域内に対して、前記注目領域内階調補正特性決定部で決定された階調補正特性に基づく階調補正を行い、前記注目領域外階調補正計算部は、前記注目領域追従部により追従される注目領域外に対して、前記注目領域外階調補正特性決定部で決定された階調補正特性に基づく階調補正を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記注目領域内階調補正特性決定部で決定される注目領域内階調補正特性は、コントラストが強調される入力輝度範囲と、コントラストが抑制される入力輝度範囲とを含み、前記中心画素値取得部で取得される中心画素値は、前記コントラストが強調される入力輝度範囲に含まれることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記注目領域外階調補正特性決定部は、前記輝度ヒストグラムの度数を輝度値の高いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第1の注目領域外閾値を超えない最大の輝度値を白飽和値として決定し、また、前記輝度ヒストグラムの度数を輝度値の低いものから順に加算していき、その合計度数が注目領域外の画素数に占める割合が、予め指定した第2の注目領域外閾値を超えない最小の輝度値を黒飽和値として決定し、前記階調補正特性は、入力輝度値が前記黒飽和値以上で前記白飽和値以下の範囲でコントラストを強調する特性とすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像処理装置と、入力画像を表示する表示部とを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−256536(P2010−256536A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105144(P2009−105144)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]