画像処理装置
【課題】 最適な閾値を算出するために最適処理すること、並びに閾値及びパラメータの設定に依存すること無しに、被検体を客観的に評価することのできる画像処理装置を提供する。
【解決手段】 画像処理装置は、演算部と、管理部と、評価部と、を備える。演算部は、被検体を撮像して得られる画像データが入力され、前記入力される画像データ毎、前記画像データから特徴量を算出する(ステップS4)。管理部は、特徴量を基に識別器を作成し管理する。評価部は、演算部に評価対象の画像データが入力された際、演算部が評価対象の画像データから算出した特徴量を識別器を用いて評価し(ステップS5)、評価した結果の情報を出力する(ステップS6)。
【解決手段】 画像処理装置は、演算部と、管理部と、評価部と、を備える。演算部は、被検体を撮像して得られる画像データが入力され、前記入力される画像データ毎、前記画像データから特徴量を算出する(ステップS4)。管理部は、特徴量を基に識別器を作成し管理する。評価部は、演算部に評価対象の画像データが入力された際、演算部が評価対象の画像データから算出した特徴量を識別器を用いて評価し(ステップS5)、評価した結果の情報を出力する(ステップS6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置として、超音波診断装置等が知られている。超音波診断装置は、超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。超音波診断装置を用いることにより、医師は、取得した画像から、肝臓等の臓器を対象とした疾病の重症度等、様々な診断情報を読み取ることができる。
【0003】
例えば、超音波により肝臓の診断を行う時、肝臓表面の滑らかさ、肝臓辺縁の角度、内部組織の粗さなどに指標がある。その中、肝臓内部組織の粗さは最も客観的に評価しにくい指標である。そこで、次に挙げるように、肝臓内部組織の粗さを定量的に評価するための技術が提案されている。
【0004】
タイプ1:肝臓内部の粗さ、不均一さなど肝臓組織の変化に注目した注目領域(関心領域(ROI:Region of Interest))を設定することにより、定量的に肝臓組織性状を判断する技術が提案されている。具体的には、設定した注目領域内の各画素の輝度値を抽出し、上下差の絶対値を肝臓表面から順に加算し、傾きを求め、これを評価値とし比較対象とする。傾きから正常肝、慢性肝炎、肝硬変を認定するものである。臨床では、患者間に個人差があるため、コントラストの調節が不可欠なものである。
【0005】
タイプ2:スペックルパターンの統計的性質を利用し、肝臓組織の細かさを定量化することにより、定量的に肝臓組織性状を評価する技術が提案されている。正常肝臓の信号振幅の確率密度関数が一定な分布(レイリー分布)に従い、硬変部では正常の分布から逸脱することを利用し、肝臓組織性状を判断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−46527号公報
【特許文献2】特開2003−61964号公報
【特許文献3】特開2004−41617号公報
【特許文献4】特開2004−321582号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「超音波信号の統計情報を利用したTissue Characterization」、MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.21 No.2 March 2003
【非特許文献2】「B-Mode Ultrasound With Algorithm Based on Statistical Analysis of Signals: Evaluation of Liver Fibrosis in Patients With Chronic Hepatitis C」、Ajr:193, October 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記タイプ1の技術では、隣合う画素間における輝度値の差に依存するため、同じ被検体に対して、超音波診断装置のパラメータ(コントラスト)を異なる値として設定すると、算出した傾きが異なる問題がある。
【0009】
また、上記タイプ2の技術では、閾値の設定は大きな問題として挙げられている。不適切な閾値の設定は間違えた組織の性状評価に直接導く。タイプ2の技術では、レイリー分布に従い、肝臓組織性状を判断する。この方法は、正常肝臓の標準偏差σに依存するが、正常肝臓の標準偏差σは患者の個人差、撮影時の超音波装置のパラメータの設定、注目領域(RIO)内に含まれた血管などの影響を非常に受けやすく、最適な閾値を求めることが非常に困難である。
【0010】
このため、最適な閾値を算出するために最適処理すること、並びに閾値及びパラメータの設定に依存すること無しに、被検体を客観的に評価することのできる画像処理装置が求められている。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、最適な閾値を算出するために最適処理すること、並びに閾値及びパラメータの設定に依存すること無しに、被検体を客観的に評価することのできる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係る画像処理装置は、
被検体を撮像して得られる画像データが入力され、前記入力される画像データ毎、前記画像データから特徴量を算出する演算部と、
前記特徴量を基に識別器を作成し管理する管理部と、
前記演算部に評価対象の画像データが入力された際、前記演算部が前記評価対象の画像データから算出した特徴量を前記識別器を用いて評価し、前記評価した結果の情報を出力する評価部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る超音波診断システムを示すブロック図である。
【図2】上記超音波診断システムを用いて肝臓内部組織を診断する場合の流れを説明するフロー図である。
【図3】肝臓内部組織の画像を表示した場合の表示部の画面を示す概略図である。
【図4】図3に示した表示部の画面を拡大して示す図であり、画像に選定した注目領域が重なっている状態を示す概略図である。
【図5】図1に示した管理部が作成し管理する識別器を示す概念図である。
【図6】上記管理部が作成し管理する識別器を示す他の概念図である。
【図7】局所的二値パターンの例を示す概念図である。
【図8】局所的二値パターンの他の例を示す概念図である。
【図9】局所的二値パターンの他の例を示す概念図である。
【図10】局所的二値パターンの他の例を示す概念図である。
【図11】局所的二値パターンの他の例を示す概念図である。
【図12】肝臓内部組織を評価した結果の情報を1次元で表示する場合の概念図である。
【図13】上記肝臓内部組織を評価した結果の情報を2次元で表示する場合の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る画像処理装置について詳細に説明する。本実施形態の画像処理装置は、超音波診断装置である。このため、本実施形態では、超音波診断装置(画像処理装置)を超音波診断システム(画像処理システム)に組み込んで使用する場合を例に説明する。
【0014】
図1に示すように、超音波診断システム1は、超音波診断装置2と、撮像部3と、設定部4と、表示部5とを備えている。超音波診断装置2は、演算部6と、管理部7と、評価部8とを備えている。
【0015】
撮像部3は、超音波を利用して被検体を撮像することにより画像データを得るものである。ここでは、被検体として患者の肝臓内部組織を例に挙げて説明する。演算部6には、被検体を撮像して得られる画像データが入力される。演算部6は、入力される画像データ毎、画像データから特徴量を算出するものである。管理部7は、演算部6が算出した特徴量を基に識別器を作成し管理するものである。
ここで、上記特徴量は、輝度レベルや色味等、画像データが持つ識別(テクスチャ識別)が可能な情報であればよい。
【0016】
評価部8は、演算部6に評価対象の画像データが入力された際、演算部6が評価対象の画像データから算出した特徴量を管理部7の識別器を用いて評価する。そして、評価部8は、評価した結果の情報を出力するものである。
【0017】
設定部4は、演算部6に入力される画像データの中から注目領域を選定し、演算部6に注目領域から特徴量を算出させるよう設定可能なものである。このため、評価部8は、演算部6に評価対象の画像データが入力された際、演算部6が評価対象の画像データの注目領域から算出した特徴量を管理部7の識別器を用いて評価し、評価した結果の情報を出力するものである。
【0018】
なお、注目領域は、隣合う複数の画素からなる少なくとも1つの画素群に対応している。また、設定部4は、選定した注目領域に対応する画素群のパラメータを自由に設定可能である。
【0019】
表示部5は、評価部8から評価した結果の情報が入力される。表示部5は、評価部8が評価した結果の情報を表示するものである。これにより、医師等(操作者)は、評価部8が評価した結果の情報を視認したりすることができる。その他、表示部5は、演算部6が被検体を撮像して得られる画像データを用い、被検体の画像を表示することもできる。
【0020】
次に、上記超音波診断システム1を用いて肝臓内部組織(被検体)を診断(評価)する場合の流れを説明する。
図1及び図2に示すように、超音波診断システム1を用いた肝臓内部組織の診断が開始されると、まず、ステップS1において、撮像部3は、撮像した肝臓内部組織の画像データを演算部6に入力する。続くステップS2において、設定部4は、演算部6に入力される画像データの中から注目領域を選定した後、ステップS3において、設定部4が選定した注目領域に対応する画素群のパラメータを設定する。
【0021】
次いで、ステップS4において、演算部6は、注目領域から特徴量を算出した後、ステップS5において、評価部8は、算出された特徴量を管理部7の識別器を用いて評価する。その後、ステップS6において、評価部8は、評価した結果の情報を表示部5に出力することにより、評価した結果の情報は表示部5に表示され(ステップS7)、これにより、超音波診断システム1を用いた肝臓内部組織の診断が終了する。
【0022】
次に、肝臓内部組織を診断する場合の管理部7の識別器について説明する。臨床では、医師は、主観判断で肝臓内部組織の粗さを4段階に分類している。そこで、管理部7は、主観判断で肝臓内部組織の粗さを4段階に分類するための指標を持つ識別器を作成し管理することができる。これにより、評価部8は、上記識別器を用いることにより、肝臓内部組織の粗さを客観的に判断することが可能となる。
【0023】
また、管理部7は、演算部6に評価対象の画像データが入力される毎、評価部8が評価した結果の情報を基に、識別器の持つ特徴量を評価するための指標を更新することが可能である。すなわち、診断結果を学習データとして管理部7の識別器に取り込むことで、医師の主観判断を定量化することができる。
【0024】
ここで、超音波により肝臓などの臓器に対する診断を行う時、肝臓表面の滑らかさ、肝臓辺縁の角度、肝臓内部組織の粗さなど指標がある。その中、肝臓内部組織の粗さは最も客観的に評価しにくい指標であるが、上述したように、管理部7が上記識別器を作成し管理することで、肝臓内部組織の粗さを客観的に評価することができる。また、管理部7が肝臓内部組織に限らず、肝臓表面の滑らかさ、肝臓辺縁の角度、及び肝臓以外の臓器に対応した識別器を作成し管理することで、各種の臓器を客観的に評価することができる。
【0025】
上述したように、図2を参照しながら、超音波診断システム1を用いて肝臓内部組織を診断する場合の流れを説明したが、次に、注目領域の選定手法、評価した結果の情報の表示手法等、肝臓内部組織を診断する場合の実質的な手法を説明する。
【0026】
図3は、超音波を利用して肝臓内部組織を撮像することにより得た画像データを用いて肝臓内部組織の画像を表示した場合の表示部5の画面を示す概略図である。図1及び図3に示すように、患者の肝臓内部組織を撮像した場合、表示される画像(画像データ)には、肝臓以外の臓器や背景等が含まれている。また、肝臓は血管豊富な臓器である。このため、医師は、表示部5に表示される画像を基に、設定部4が画像(画像データ)の中から肝臓以外の臓器、背景、肝臓の血管等を除いて注目領域を選定するよう、設定部4の動作を操作する。これにより、診断対象となる注目領域が選定される。
【0027】
図4は、図3に示した表示部5の画面を拡大して示す図であり、画像に選定した注目領域が重なっている状態を示す概略図である。
図4に示すように、注目領域R1は、それぞれ隣合う複数の画素からなる複数の画素群に対応している。詳しくは、注目領域R1は分断された複数の分割領域R2を有し、複数の分割領域R2が複数の画素群に対応している。ここでは、設定部4は、各画素群(分割領域R2)の形状を矩形状に、各画素群(分割領域R2)のサイズを30×30画素に設定している。
【0028】
図1及び図4に示すように、上記のように画素群のパラメータが設定されると、演算部6は、分割領域R2毎に特徴量(テクスチャ特徴量)を算出する。そして、評価部8は、算出された各特徴量を管理部7の識別器を用いて評価する。管理部7は、評価部8が評価した結果の情報を基に、識別器の持つ特徴量を評価するための指標を更新し、このように識別器に学習させる。
【0029】
管理部7が、特徴量を基に主成分分析法(PCA:Principal Component Analysis)を用いて識別器を形成し、管理している場合、管理部7は識別器から特徴量を算出し、算出した特徴量を主成分分析法により分離度が最大となる評価軸を算出(抽出)することができる。
【0030】
図5は、識別器を示す概念図である。図5に示すように、識別器の持つ特徴量は、高次の空間に投影されている。高次の空間には、管理部7が算出した評価軸も示されている。このことから、特徴量が高次の情報であることが分かる。特徴量はクラス1からクラス4までの4つのクラスに分類されている。
ここで、評価軸は、高次の空間を形成する複数の軸から選定したものでもよく、また、新たに生成する軸であってもよい。
【0031】
図6は、識別器を示す他の概念図である。図6に示すように、図5に示す識別器の持つ特徴量を、評価軸上にのみ投影して示している。ここでは、クラス1に分類される特徴量は、正常の肝臓内部組織を撮像して得られた画像データから算出した特徴量であり、クラス2乃至4に分類される特徴量は、非正常(病変)の肝臓内部組織を撮像して得られた画像データから算出した特徴量である。
【0032】
上記のことから、評価対象の画像データから算出した特徴量を評価軸上に投影することにより、各クラスへの距離を算出することができ、算出した距離が最も短くなったクラスに分類することができる。このため、評価部8は、特徴量をクラスに分類することで、特徴量の評価を行うことができ、ひいては肝臓内部組織の診断を行うことができる。なお、各クラスへの距離の計算では、ユークリッド距離の計算や、マハラノビス距離の計算を利用することができる。
【0033】
そして、上述したように、評価軸は、特徴量の分離度が最大の軸であるため、評価対象の画像データから算出した特徴量を評価軸上に投影することは、評価部8が行う評価に好適である。
上記のように超音波診断システム1が形成されている。
【0034】
次に、上記画素群(分割領域R2)のパラメータについて説明する。これらのパラメータは、医師(操作者)の好みに合うよう、設定可能である。画素群の形状は、矩形状に限られるものではなく種々変形可能であり、例えば扇形状、円形状、楕円形状であってもよい。画素群のサイズは、30×30画素に限られるものではなく種々変形可能であり、例えば10×10画素であってもよい。
【0035】
次に、管理部7が、演算部6に評価対象の画像データが入力される毎に、識別器の持つ特徴量を評価するための指標を更新する場合の例について説明する。
肝臓内部組織の粗さに関して、評価部8が評価した結果(診断結果)に基づいて画像データを分類する。分類された画像データから特徴量を算出し、識別器を作成する。例えば、管理部7が、粗さに関して、2段階に分類された画像データから算出された8次元の特徴量を基に線形判別方法を用いて識別器を作成すると、識別器(学習データ)から線形判別式の係数項(8個)と定数項を算出することができる。この場合、算出した線形判別式を識別器として使用することができる。
【0036】
次に、設定部4について説明する。
上記設定部4は、評価部8が注目領域に関して評価した結果の情報を全て出力するよう設定したが、これに限らず、評価部8が注目領域に関して評価した結果の情報を一部だけ出力するよう設定することも可能である。
【0037】
例えば、医師が表示部5の画面上のある位置を指定し、パラメータを設定すると、指定した位置を中心座標とする注目領域を設定することができ、これにより、注目領域内の肝臓内部組織の粗さを評価した結果(診断結果)を出力(表示)することができる。この場合も、注目領域のパラメータを自由に設定することができ、例えば注目領域の形状は矩形状や円形状でも良い。また、肝臓内部組織の粗さを評価した結果を出力(表示)する際、正規化した範囲内の数値で出力(表示)したり、数値を色情報に変換して色情報を出力(表示)したりすることができる。
【0038】
次に、特徴量について説明する。
特徴量は、画素群毎に算出された高次局所特徴量や、低次局所特徴量であってもよい。高次局所特徴量としては、局所的二値パターン(LBP:Local Binary Pattern)特徴量や、高次局所自己相関(HLAC:Higher-order Local AutoCorrelation)特徴量を挙げることができる。
【0039】
例えば、高次局所特徴量(テクスチャ特徴量)の一つとして局所的二値パターン特徴量は、画像輝度変化、回転やスケール変換に対してロバスト性が高い、計算コストが低いなど特徴があるため、顔認識など分野でよく使われている。
【0040】
局所的二値パターン特徴量とは、画像中の注目点(着目点)と周囲点との輝度の差をベースにし、パターンヒストグラムを算出することで、画像のテクスチャ特徴情報を抽出する方法である。注目点と周囲点の位置及びスケールが異なる場合の局所的二値パターンの例を図7乃至図11に示す。
【0041】
図7において、周囲点は、注目点の周りに4個あり(P=4)、注目点から周囲点までの距離(半径)は1.0である(R=1.0)。図8乃至図11においても図7と同様であり、図8においてはP=8、R=1.0、図9においてはP=12、R=1.5、図10においてはP=16、R=2.0、図11においてはP=24、R=3.0である。
【0042】
例えば、演算部6は、超音波を利用して撮像した肝臓内部組織の画像に対して、画素群毎にシフトしなから局所的二値パターン特徴量を算出することができる。そして、評価部8は、算出された特徴量を基に肝臓内部組織の性状(粗さ)を評価することができる。
【0043】
次に、管理部7について説明する。
管理部7は、特徴量を基に線形判別方法又は非線形判別方法を用いて識別器を作成し管理することができる。線形判別方法としては、線形判別分析(LDA:Linear Discriminant Analysis)、サポートベクタマシン(SVM:Support Vector Machine)、主成分分析法等を挙げることができる。非線形判別方法としては、非線形判別分析(QDA:Quadratic Discriminant Analysis)等を挙げることができる。
【0044】
上記のことから、学習データから算出した特徴量に対して、主成分分析法により次元を圧縮し、分離度が最大にたる評価軸を抽出可能であることが分かる。また、事前に学習データを用いてサポートベクタマシンの訓練モデルを算出することも可能である。
【0045】
次に、評価部8について説明する。
評価部8は、特徴量の空間距離の長さ、又は類似度の程度に基づいて評価することができる。その他、評価部8は、他の指標により評価することもできる。上記のことから、評価部8が評価した結果の情報(新しい情報)が与えられる場合、上記情報から算出した特徴量を識別式に代入すると、判別の結果を算出することができる。
【0046】
線形判別分析法を用いて識別器が作成及び管理されている場合、0より大きいのかどうかを検出することにより、評価した結果を分類することができる。また、マハラノビス距離を算出し、距離が小さい順番に、評価した結果を分類することもできる。それ以外の方法で評価した結果を分類することも可能である。
【0047】
次に、設定部4について説明する。
設定部4は、評価部8が評価した結果の情報を、評価部8に、1以上の次元の情報として出力させるよう、設定することができる。このため、評価した結果の情報は、1次元の情報(例えば、数値又は数値に対応する色味)で表示することができ、また、2次元や多次元で表示することもできる。
【0048】
例えば、図12は、肝臓内部組織を評価した結果の情報を1次元で表示する場合の概念図である。図12に示すように、肝臓内部組織を評価し、正常、慢性肝炎及び肝硬変の3段階に分類する場合、正常から肝硬変までの間の距離を0乃至1に正規化し、評価した結果の情報(評価データ)を定量的に表示することができる。
【0049】
図13は、上記の肝臓内部組織を評価した結果の情報を2次元で表示する場合の概念図である。図13に示すように、2次元で表示することにより、肝臓内部組織を評価した結果をより多角的に表示することが可能である。なお、図において、正常であることを示すデータは丸、慢性肝炎を示すデータは三角、肝硬変を示すデータはバツで示している。
【0050】
以上のように構成された超音波診断システム1によれば、超音波診断装置2は、演算部6と、管理部7と、評価部8とを備えている。演算部6は、被検体を撮像して得られる画像データが入力され、入力される画像データ毎、画像データから特徴量を算出するものである。管理部7は、特徴量を基に識別器を作成し管理するものである。評価部8は、演算部6に評価対象の画像データが入力された際、演算部6が評価対象の画像データから算出した特徴量を識別器を用いて評価し、評価した結果の情報を出力するものである。
【0051】
超音波診断装置2のパラメータ(コントラスト等)の設定に依存せず、閾値の設定や最適化処理を行うこと無しに、評価部8は、識別器を用いることにより、例えば肝臓内部組織の粗さを客観的に判断することが可能となる。
【0052】
また、管理部7は、演算部6に評価対象の画像データが入力される毎、評価部8が評価した結果の情報を基に、識別器の持つ特徴量を評価するための指標を更新することが可能である。すなわち、診断結果を学習データとして管理部7の識別器に取り込むことができる。管理部7の識別器は、医師や専門家等のノウハウも取り込むことができる。これにより、医師の主観判断を定量化することができる。
【0053】
上記のことから、最適な閾値を算出するために最適処理すること、並びに閾値及びパラメータの設定に依存すること無しに、被検体を客観的に評価することのできる超音波診断システム1を得ることができる。そして、医師の診断に役に立つ超音波診断システム1を得ることができる。
【0054】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0055】
例えば、超音波診断装置2自体が、撮像部3や表示部5を備えていてもよい。演算部6や表示部5に入力される画像データは、撮像部3以外の手段で取得したものであってもよい。
【0056】
本発明の画像処理システムは、上記超音波診断システム1に限らず、種々変形可能であり、他の超音波診断システム等各種の画像処理システムに適用することが可能である。また、被検体は、肝臓内部組織に限らず、種々変形可能であり、例えば、太陽光パネルやタービンであってもよい。太陽光パネルにおいては、サーモグラフィ画像を使用することにより、正常なパネルか劣化したパネルかを評価することができる。また、タービンにおいては、タービン表面の粗さを評価することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…超音波診断システム、2…超音波診断装置、3…撮像部、4…設定部、5…表示部、6…演算部、7…管理部、8…評価部、R1…注目領域、R2…分割領域。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置として、超音波診断装置等が知られている。超音波診断装置は、超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。超音波診断装置を用いることにより、医師は、取得した画像から、肝臓等の臓器を対象とした疾病の重症度等、様々な診断情報を読み取ることができる。
【0003】
例えば、超音波により肝臓の診断を行う時、肝臓表面の滑らかさ、肝臓辺縁の角度、内部組織の粗さなどに指標がある。その中、肝臓内部組織の粗さは最も客観的に評価しにくい指標である。そこで、次に挙げるように、肝臓内部組織の粗さを定量的に評価するための技術が提案されている。
【0004】
タイプ1:肝臓内部の粗さ、不均一さなど肝臓組織の変化に注目した注目領域(関心領域(ROI:Region of Interest))を設定することにより、定量的に肝臓組織性状を判断する技術が提案されている。具体的には、設定した注目領域内の各画素の輝度値を抽出し、上下差の絶対値を肝臓表面から順に加算し、傾きを求め、これを評価値とし比較対象とする。傾きから正常肝、慢性肝炎、肝硬変を認定するものである。臨床では、患者間に個人差があるため、コントラストの調節が不可欠なものである。
【0005】
タイプ2:スペックルパターンの統計的性質を利用し、肝臓組織の細かさを定量化することにより、定量的に肝臓組織性状を評価する技術が提案されている。正常肝臓の信号振幅の確率密度関数が一定な分布(レイリー分布)に従い、硬変部では正常の分布から逸脱することを利用し、肝臓組織性状を判断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−46527号公報
【特許文献2】特開2003−61964号公報
【特許文献3】特開2004−41617号公報
【特許文献4】特開2004−321582号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「超音波信号の統計情報を利用したTissue Characterization」、MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.21 No.2 March 2003
【非特許文献2】「B-Mode Ultrasound With Algorithm Based on Statistical Analysis of Signals: Evaluation of Liver Fibrosis in Patients With Chronic Hepatitis C」、Ajr:193, October 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記タイプ1の技術では、隣合う画素間における輝度値の差に依存するため、同じ被検体に対して、超音波診断装置のパラメータ(コントラスト)を異なる値として設定すると、算出した傾きが異なる問題がある。
【0009】
また、上記タイプ2の技術では、閾値の設定は大きな問題として挙げられている。不適切な閾値の設定は間違えた組織の性状評価に直接導く。タイプ2の技術では、レイリー分布に従い、肝臓組織性状を判断する。この方法は、正常肝臓の標準偏差σに依存するが、正常肝臓の標準偏差σは患者の個人差、撮影時の超音波装置のパラメータの設定、注目領域(RIO)内に含まれた血管などの影響を非常に受けやすく、最適な閾値を求めることが非常に困難である。
【0010】
このため、最適な閾値を算出するために最適処理すること、並びに閾値及びパラメータの設定に依存すること無しに、被検体を客観的に評価することのできる画像処理装置が求められている。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、最適な閾値を算出するために最適処理すること、並びに閾値及びパラメータの設定に依存すること無しに、被検体を客観的に評価することのできる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係る画像処理装置は、
被検体を撮像して得られる画像データが入力され、前記入力される画像データ毎、前記画像データから特徴量を算出する演算部と、
前記特徴量を基に識別器を作成し管理する管理部と、
前記演算部に評価対象の画像データが入力された際、前記演算部が前記評価対象の画像データから算出した特徴量を前記識別器を用いて評価し、前記評価した結果の情報を出力する評価部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る超音波診断システムを示すブロック図である。
【図2】上記超音波診断システムを用いて肝臓内部組織を診断する場合の流れを説明するフロー図である。
【図3】肝臓内部組織の画像を表示した場合の表示部の画面を示す概略図である。
【図4】図3に示した表示部の画面を拡大して示す図であり、画像に選定した注目領域が重なっている状態を示す概略図である。
【図5】図1に示した管理部が作成し管理する識別器を示す概念図である。
【図6】上記管理部が作成し管理する識別器を示す他の概念図である。
【図7】局所的二値パターンの例を示す概念図である。
【図8】局所的二値パターンの他の例を示す概念図である。
【図9】局所的二値パターンの他の例を示す概念図である。
【図10】局所的二値パターンの他の例を示す概念図である。
【図11】局所的二値パターンの他の例を示す概念図である。
【図12】肝臓内部組織を評価した結果の情報を1次元で表示する場合の概念図である。
【図13】上記肝臓内部組織を評価した結果の情報を2次元で表示する場合の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る画像処理装置について詳細に説明する。本実施形態の画像処理装置は、超音波診断装置である。このため、本実施形態では、超音波診断装置(画像処理装置)を超音波診断システム(画像処理システム)に組み込んで使用する場合を例に説明する。
【0014】
図1に示すように、超音波診断システム1は、超音波診断装置2と、撮像部3と、設定部4と、表示部5とを備えている。超音波診断装置2は、演算部6と、管理部7と、評価部8とを備えている。
【0015】
撮像部3は、超音波を利用して被検体を撮像することにより画像データを得るものである。ここでは、被検体として患者の肝臓内部組織を例に挙げて説明する。演算部6には、被検体を撮像して得られる画像データが入力される。演算部6は、入力される画像データ毎、画像データから特徴量を算出するものである。管理部7は、演算部6が算出した特徴量を基に識別器を作成し管理するものである。
ここで、上記特徴量は、輝度レベルや色味等、画像データが持つ識別(テクスチャ識別)が可能な情報であればよい。
【0016】
評価部8は、演算部6に評価対象の画像データが入力された際、演算部6が評価対象の画像データから算出した特徴量を管理部7の識別器を用いて評価する。そして、評価部8は、評価した結果の情報を出力するものである。
【0017】
設定部4は、演算部6に入力される画像データの中から注目領域を選定し、演算部6に注目領域から特徴量を算出させるよう設定可能なものである。このため、評価部8は、演算部6に評価対象の画像データが入力された際、演算部6が評価対象の画像データの注目領域から算出した特徴量を管理部7の識別器を用いて評価し、評価した結果の情報を出力するものである。
【0018】
なお、注目領域は、隣合う複数の画素からなる少なくとも1つの画素群に対応している。また、設定部4は、選定した注目領域に対応する画素群のパラメータを自由に設定可能である。
【0019】
表示部5は、評価部8から評価した結果の情報が入力される。表示部5は、評価部8が評価した結果の情報を表示するものである。これにより、医師等(操作者)は、評価部8が評価した結果の情報を視認したりすることができる。その他、表示部5は、演算部6が被検体を撮像して得られる画像データを用い、被検体の画像を表示することもできる。
【0020】
次に、上記超音波診断システム1を用いて肝臓内部組織(被検体)を診断(評価)する場合の流れを説明する。
図1及び図2に示すように、超音波診断システム1を用いた肝臓内部組織の診断が開始されると、まず、ステップS1において、撮像部3は、撮像した肝臓内部組織の画像データを演算部6に入力する。続くステップS2において、設定部4は、演算部6に入力される画像データの中から注目領域を選定した後、ステップS3において、設定部4が選定した注目領域に対応する画素群のパラメータを設定する。
【0021】
次いで、ステップS4において、演算部6は、注目領域から特徴量を算出した後、ステップS5において、評価部8は、算出された特徴量を管理部7の識別器を用いて評価する。その後、ステップS6において、評価部8は、評価した結果の情報を表示部5に出力することにより、評価した結果の情報は表示部5に表示され(ステップS7)、これにより、超音波診断システム1を用いた肝臓内部組織の診断が終了する。
【0022】
次に、肝臓内部組織を診断する場合の管理部7の識別器について説明する。臨床では、医師は、主観判断で肝臓内部組織の粗さを4段階に分類している。そこで、管理部7は、主観判断で肝臓内部組織の粗さを4段階に分類するための指標を持つ識別器を作成し管理することができる。これにより、評価部8は、上記識別器を用いることにより、肝臓内部組織の粗さを客観的に判断することが可能となる。
【0023】
また、管理部7は、演算部6に評価対象の画像データが入力される毎、評価部8が評価した結果の情報を基に、識別器の持つ特徴量を評価するための指標を更新することが可能である。すなわち、診断結果を学習データとして管理部7の識別器に取り込むことで、医師の主観判断を定量化することができる。
【0024】
ここで、超音波により肝臓などの臓器に対する診断を行う時、肝臓表面の滑らかさ、肝臓辺縁の角度、肝臓内部組織の粗さなど指標がある。その中、肝臓内部組織の粗さは最も客観的に評価しにくい指標であるが、上述したように、管理部7が上記識別器を作成し管理することで、肝臓内部組織の粗さを客観的に評価することができる。また、管理部7が肝臓内部組織に限らず、肝臓表面の滑らかさ、肝臓辺縁の角度、及び肝臓以外の臓器に対応した識別器を作成し管理することで、各種の臓器を客観的に評価することができる。
【0025】
上述したように、図2を参照しながら、超音波診断システム1を用いて肝臓内部組織を診断する場合の流れを説明したが、次に、注目領域の選定手法、評価した結果の情報の表示手法等、肝臓内部組織を診断する場合の実質的な手法を説明する。
【0026】
図3は、超音波を利用して肝臓内部組織を撮像することにより得た画像データを用いて肝臓内部組織の画像を表示した場合の表示部5の画面を示す概略図である。図1及び図3に示すように、患者の肝臓内部組織を撮像した場合、表示される画像(画像データ)には、肝臓以外の臓器や背景等が含まれている。また、肝臓は血管豊富な臓器である。このため、医師は、表示部5に表示される画像を基に、設定部4が画像(画像データ)の中から肝臓以外の臓器、背景、肝臓の血管等を除いて注目領域を選定するよう、設定部4の動作を操作する。これにより、診断対象となる注目領域が選定される。
【0027】
図4は、図3に示した表示部5の画面を拡大して示す図であり、画像に選定した注目領域が重なっている状態を示す概略図である。
図4に示すように、注目領域R1は、それぞれ隣合う複数の画素からなる複数の画素群に対応している。詳しくは、注目領域R1は分断された複数の分割領域R2を有し、複数の分割領域R2が複数の画素群に対応している。ここでは、設定部4は、各画素群(分割領域R2)の形状を矩形状に、各画素群(分割領域R2)のサイズを30×30画素に設定している。
【0028】
図1及び図4に示すように、上記のように画素群のパラメータが設定されると、演算部6は、分割領域R2毎に特徴量(テクスチャ特徴量)を算出する。そして、評価部8は、算出された各特徴量を管理部7の識別器を用いて評価する。管理部7は、評価部8が評価した結果の情報を基に、識別器の持つ特徴量を評価するための指標を更新し、このように識別器に学習させる。
【0029】
管理部7が、特徴量を基に主成分分析法(PCA:Principal Component Analysis)を用いて識別器を形成し、管理している場合、管理部7は識別器から特徴量を算出し、算出した特徴量を主成分分析法により分離度が最大となる評価軸を算出(抽出)することができる。
【0030】
図5は、識別器を示す概念図である。図5に示すように、識別器の持つ特徴量は、高次の空間に投影されている。高次の空間には、管理部7が算出した評価軸も示されている。このことから、特徴量が高次の情報であることが分かる。特徴量はクラス1からクラス4までの4つのクラスに分類されている。
ここで、評価軸は、高次の空間を形成する複数の軸から選定したものでもよく、また、新たに生成する軸であってもよい。
【0031】
図6は、識別器を示す他の概念図である。図6に示すように、図5に示す識別器の持つ特徴量を、評価軸上にのみ投影して示している。ここでは、クラス1に分類される特徴量は、正常の肝臓内部組織を撮像して得られた画像データから算出した特徴量であり、クラス2乃至4に分類される特徴量は、非正常(病変)の肝臓内部組織を撮像して得られた画像データから算出した特徴量である。
【0032】
上記のことから、評価対象の画像データから算出した特徴量を評価軸上に投影することにより、各クラスへの距離を算出することができ、算出した距離が最も短くなったクラスに分類することができる。このため、評価部8は、特徴量をクラスに分類することで、特徴量の評価を行うことができ、ひいては肝臓内部組織の診断を行うことができる。なお、各クラスへの距離の計算では、ユークリッド距離の計算や、マハラノビス距離の計算を利用することができる。
【0033】
そして、上述したように、評価軸は、特徴量の分離度が最大の軸であるため、評価対象の画像データから算出した特徴量を評価軸上に投影することは、評価部8が行う評価に好適である。
上記のように超音波診断システム1が形成されている。
【0034】
次に、上記画素群(分割領域R2)のパラメータについて説明する。これらのパラメータは、医師(操作者)の好みに合うよう、設定可能である。画素群の形状は、矩形状に限られるものではなく種々変形可能であり、例えば扇形状、円形状、楕円形状であってもよい。画素群のサイズは、30×30画素に限られるものではなく種々変形可能であり、例えば10×10画素であってもよい。
【0035】
次に、管理部7が、演算部6に評価対象の画像データが入力される毎に、識別器の持つ特徴量を評価するための指標を更新する場合の例について説明する。
肝臓内部組織の粗さに関して、評価部8が評価した結果(診断結果)に基づいて画像データを分類する。分類された画像データから特徴量を算出し、識別器を作成する。例えば、管理部7が、粗さに関して、2段階に分類された画像データから算出された8次元の特徴量を基に線形判別方法を用いて識別器を作成すると、識別器(学習データ)から線形判別式の係数項(8個)と定数項を算出することができる。この場合、算出した線形判別式を識別器として使用することができる。
【0036】
次に、設定部4について説明する。
上記設定部4は、評価部8が注目領域に関して評価した結果の情報を全て出力するよう設定したが、これに限らず、評価部8が注目領域に関して評価した結果の情報を一部だけ出力するよう設定することも可能である。
【0037】
例えば、医師が表示部5の画面上のある位置を指定し、パラメータを設定すると、指定した位置を中心座標とする注目領域を設定することができ、これにより、注目領域内の肝臓内部組織の粗さを評価した結果(診断結果)を出力(表示)することができる。この場合も、注目領域のパラメータを自由に設定することができ、例えば注目領域の形状は矩形状や円形状でも良い。また、肝臓内部組織の粗さを評価した結果を出力(表示)する際、正規化した範囲内の数値で出力(表示)したり、数値を色情報に変換して色情報を出力(表示)したりすることができる。
【0038】
次に、特徴量について説明する。
特徴量は、画素群毎に算出された高次局所特徴量や、低次局所特徴量であってもよい。高次局所特徴量としては、局所的二値パターン(LBP:Local Binary Pattern)特徴量や、高次局所自己相関(HLAC:Higher-order Local AutoCorrelation)特徴量を挙げることができる。
【0039】
例えば、高次局所特徴量(テクスチャ特徴量)の一つとして局所的二値パターン特徴量は、画像輝度変化、回転やスケール変換に対してロバスト性が高い、計算コストが低いなど特徴があるため、顔認識など分野でよく使われている。
【0040】
局所的二値パターン特徴量とは、画像中の注目点(着目点)と周囲点との輝度の差をベースにし、パターンヒストグラムを算出することで、画像のテクスチャ特徴情報を抽出する方法である。注目点と周囲点の位置及びスケールが異なる場合の局所的二値パターンの例を図7乃至図11に示す。
【0041】
図7において、周囲点は、注目点の周りに4個あり(P=4)、注目点から周囲点までの距離(半径)は1.0である(R=1.0)。図8乃至図11においても図7と同様であり、図8においてはP=8、R=1.0、図9においてはP=12、R=1.5、図10においてはP=16、R=2.0、図11においてはP=24、R=3.0である。
【0042】
例えば、演算部6は、超音波を利用して撮像した肝臓内部組織の画像に対して、画素群毎にシフトしなから局所的二値パターン特徴量を算出することができる。そして、評価部8は、算出された特徴量を基に肝臓内部組織の性状(粗さ)を評価することができる。
【0043】
次に、管理部7について説明する。
管理部7は、特徴量を基に線形判別方法又は非線形判別方法を用いて識別器を作成し管理することができる。線形判別方法としては、線形判別分析(LDA:Linear Discriminant Analysis)、サポートベクタマシン(SVM:Support Vector Machine)、主成分分析法等を挙げることができる。非線形判別方法としては、非線形判別分析(QDA:Quadratic Discriminant Analysis)等を挙げることができる。
【0044】
上記のことから、学習データから算出した特徴量に対して、主成分分析法により次元を圧縮し、分離度が最大にたる評価軸を抽出可能であることが分かる。また、事前に学習データを用いてサポートベクタマシンの訓練モデルを算出することも可能である。
【0045】
次に、評価部8について説明する。
評価部8は、特徴量の空間距離の長さ、又は類似度の程度に基づいて評価することができる。その他、評価部8は、他の指標により評価することもできる。上記のことから、評価部8が評価した結果の情報(新しい情報)が与えられる場合、上記情報から算出した特徴量を識別式に代入すると、判別の結果を算出することができる。
【0046】
線形判別分析法を用いて識別器が作成及び管理されている場合、0より大きいのかどうかを検出することにより、評価した結果を分類することができる。また、マハラノビス距離を算出し、距離が小さい順番に、評価した結果を分類することもできる。それ以外の方法で評価した結果を分類することも可能である。
【0047】
次に、設定部4について説明する。
設定部4は、評価部8が評価した結果の情報を、評価部8に、1以上の次元の情報として出力させるよう、設定することができる。このため、評価した結果の情報は、1次元の情報(例えば、数値又は数値に対応する色味)で表示することができ、また、2次元や多次元で表示することもできる。
【0048】
例えば、図12は、肝臓内部組織を評価した結果の情報を1次元で表示する場合の概念図である。図12に示すように、肝臓内部組織を評価し、正常、慢性肝炎及び肝硬変の3段階に分類する場合、正常から肝硬変までの間の距離を0乃至1に正規化し、評価した結果の情報(評価データ)を定量的に表示することができる。
【0049】
図13は、上記の肝臓内部組織を評価した結果の情報を2次元で表示する場合の概念図である。図13に示すように、2次元で表示することにより、肝臓内部組織を評価した結果をより多角的に表示することが可能である。なお、図において、正常であることを示すデータは丸、慢性肝炎を示すデータは三角、肝硬変を示すデータはバツで示している。
【0050】
以上のように構成された超音波診断システム1によれば、超音波診断装置2は、演算部6と、管理部7と、評価部8とを備えている。演算部6は、被検体を撮像して得られる画像データが入力され、入力される画像データ毎、画像データから特徴量を算出するものである。管理部7は、特徴量を基に識別器を作成し管理するものである。評価部8は、演算部6に評価対象の画像データが入力された際、演算部6が評価対象の画像データから算出した特徴量を識別器を用いて評価し、評価した結果の情報を出力するものである。
【0051】
超音波診断装置2のパラメータ(コントラスト等)の設定に依存せず、閾値の設定や最適化処理を行うこと無しに、評価部8は、識別器を用いることにより、例えば肝臓内部組織の粗さを客観的に判断することが可能となる。
【0052】
また、管理部7は、演算部6に評価対象の画像データが入力される毎、評価部8が評価した結果の情報を基に、識別器の持つ特徴量を評価するための指標を更新することが可能である。すなわち、診断結果を学習データとして管理部7の識別器に取り込むことができる。管理部7の識別器は、医師や専門家等のノウハウも取り込むことができる。これにより、医師の主観判断を定量化することができる。
【0053】
上記のことから、最適な閾値を算出するために最適処理すること、並びに閾値及びパラメータの設定に依存すること無しに、被検体を客観的に評価することのできる超音波診断システム1を得ることができる。そして、医師の診断に役に立つ超音波診断システム1を得ることができる。
【0054】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0055】
例えば、超音波診断装置2自体が、撮像部3や表示部5を備えていてもよい。演算部6や表示部5に入力される画像データは、撮像部3以外の手段で取得したものであってもよい。
【0056】
本発明の画像処理システムは、上記超音波診断システム1に限らず、種々変形可能であり、他の超音波診断システム等各種の画像処理システムに適用することが可能である。また、被検体は、肝臓内部組織に限らず、種々変形可能であり、例えば、太陽光パネルやタービンであってもよい。太陽光パネルにおいては、サーモグラフィ画像を使用することにより、正常なパネルか劣化したパネルかを評価することができる。また、タービンにおいては、タービン表面の粗さを評価することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…超音波診断システム、2…超音波診断装置、3…撮像部、4…設定部、5…表示部、6…演算部、7…管理部、8…評価部、R1…注目領域、R2…分割領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を撮像して得られる画像データが入力され、前記入力される画像データ毎、前記画像データから特徴量を算出する演算部と、
前記特徴量を基に識別器を作成し管理する管理部と、
前記演算部に評価対象の画像データが入力された際、前記演算部が前記評価対象の画像データから算出した特徴量を前記識別器を用いて評価し、前記評価した結果の情報を出力する評価部と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記画像データの中から注目領域を選定し、前記演算部に前記注目領域から特徴量を算出させるよう設定可能な設定部をさらに備え、
前記評価部は、前記演算部に評価対象の画像データが入力された際、前記演算部が前記評価対象の画像データの注目領域から算出した特徴量を前記識別器を用いて評価し、前記評価した結果の情報を出力する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記注目領域は、隣合う複数の画素からなる少なくとも1つの画素群に対応し、
前記設定部は、前記選定した注目領域に対応する前記画素群のパラメータを自由に設定可能である請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記管理部は、前記演算部に評価対象の画像データが入力される毎に、前記識別器の持つ前記特徴量を評価するための指標を更新可能である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記評価部が前記注目領域に関して前記評価した結果の情報を、全て又は一部だけ出力するよう設定可能である請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記注目領域は、隣合う複数の画素からなる少なくとも1つの画素群に対応し、
前記特徴量は、前記画素群毎に算出された高次局所特徴量である請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記管理部は、前記特徴量を基に線形判別方法又は非線形判別方法を用いて識別器を作成し管理する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記評価部は、前記特徴量の空間距離の長さ、又は類似度の程度に基づいて前記評価する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記評価した結果の情報を、前記評価部に、1以上の次元の情報として出力させる設定部をさらに備えている請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記評価した結果の情報は、2次以上の情報であり、
前記設定部は、前記評価部に、前記評価した結果の情報を、前記2次以上の情報の中から選定した1次以上の情報として出力させる請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項1】
被検体を撮像して得られる画像データが入力され、前記入力される画像データ毎、前記画像データから特徴量を算出する演算部と、
前記特徴量を基に識別器を作成し管理する管理部と、
前記演算部に評価対象の画像データが入力された際、前記演算部が前記評価対象の画像データから算出した特徴量を前記識別器を用いて評価し、前記評価した結果の情報を出力する評価部と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記画像データの中から注目領域を選定し、前記演算部に前記注目領域から特徴量を算出させるよう設定可能な設定部をさらに備え、
前記評価部は、前記演算部に評価対象の画像データが入力された際、前記演算部が前記評価対象の画像データの注目領域から算出した特徴量を前記識別器を用いて評価し、前記評価した結果の情報を出力する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記注目領域は、隣合う複数の画素からなる少なくとも1つの画素群に対応し、
前記設定部は、前記選定した注目領域に対応する前記画素群のパラメータを自由に設定可能である請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記管理部は、前記演算部に評価対象の画像データが入力される毎に、前記識別器の持つ前記特徴量を評価するための指標を更新可能である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記評価部が前記注目領域に関して前記評価した結果の情報を、全て又は一部だけ出力するよう設定可能である請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記注目領域は、隣合う複数の画素からなる少なくとも1つの画素群に対応し、
前記特徴量は、前記画素群毎に算出された高次局所特徴量である請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記管理部は、前記特徴量を基に線形判別方法又は非線形判別方法を用いて識別器を作成し管理する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記評価部は、前記特徴量の空間距離の長さ、又は類似度の程度に基づいて前記評価する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記評価した結果の情報を、前記評価部に、1以上の次元の情報として出力させる設定部をさらに備えている請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記評価した結果の情報は、2次以上の情報であり、
前記設定部は、前記評価部に、前記評価した結果の情報を、前記2次以上の情報の中から選定した1次以上の情報として出力させる請求項9に記載の画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−55493(P2012−55493A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201408(P2010−201408)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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